説明

Ni薄膜の製造方法

【課題】ポリイミド樹脂表面に密着性が良好なNi薄膜を製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂をアルカリ溶液で処理して表面に改質層を形成する改質工程;前記ポリイミド樹脂をNiイオン含有溶液で処理して、該Niイオンを改質層に吸着させる吸着工程;および前記Niイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Aをジメチルアミンボラン還元溶液で処理して、前記Niイオンを還元する還元工程;を含んでなり、改質層に吸着したときにジメチルアミンボラン還元溶液で還元され得る金属イオン(Mイオン)を改質層に吸着させた樹脂Bを、ポリイミド樹脂Aの還元処理に先だってまたは同時に、ジメチルアミンボラン還元溶液と接触させることを特徴とするNi薄膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂表面へのNi薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型携帯化により、フレキシブル配線基板の薄型、高密度配線化が進
行している。
フレキシブル配線基板の製造方法として、直接めっき法によるポリイミド金属積層板の研究が盛んに行われている(特許文献1および特許文献2)。
【0003】
特許文献1に示されている手順をフローチャート(図9)を用いて以下に示す。
(1)ポリイミド樹脂をアルカリ溶液(例えば5M KOH)で処理し、ポリイミド樹脂のイミド環を開環してカルボキシル基を生成する。
(2)生成したカルボキシル基を中和する。
(3)カルボキシル基を、銅またはパラジウム溶液で処理することにより、カルボキシル基の銅またはパラジウム塩を生成する。
(4)銅またはパラジウム塩を還元して、ポリイミド樹脂表面に銅またはパラジウム金属の被膜を形成する。
以上の工程で得られた金属皮膜上に、電解銅めっきにより配線板となる金属層を増膜し、フレキシブル配線板とする。
【0004】
特許文献2には、樹脂表面に特許文献1と同様の方法で金属皮膜を生成し、生成した被膜を他の樹脂基体に転写する方法が記載されている。特許文献2に記載されている樹脂表面上に生成する金属皮膜は、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sb,Te,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,Tl,Pb,Bi,Poと多岐に渡っている。還元剤として水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン等が記載されている。
【0005】
また、特許文献3では、めっき浴中に0.1ppm以上のCuイオンを含有したニッケル無電解めっき方法が開示されている。
特許文献4および特許文献5では、0.1ppm以上のCuイオンを含有したニッケル無電解めっき浴が開示されている。
特許文献6では、めっき浴中に0.002モル/L以上の銅の水溶性塩を含有したニッケル無電解めっき方法が提示されている。
特許文献7では、1ppm以上のCuイオンを含有したニッケル無電解めっき浴が開示されている。
特許文献8では、ニッケル無電解めっき浴に0.0001モル/L以上のCuイオンを含有させることが記載されている。
【特許文献1】特開2001−73159号公報
【特許文献2】特開2003−145674号公報
【特許文献3】特開昭62−109981号公報
【特許文献4】特開昭62−20152号公報
【特許文献5】特開昭62−20878号公報
【特許文献6】特開昭60−262973号公報
【特許文献7】特開昭62−274076号公報
【特許文献8】特開昭59−215474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているPdは貴金属であるため、製造コストが高くなるという欠点がある。また、Cuは安価ではあるが、フレキシブル配線基板として配線パターンを形成した後、イオン拡散により配線間がショートし、配線間の絶縁耐圧不良発生の原因となり易い。したがって、ポリイミド樹脂表面に形成する薄膜金属層は、イオン拡散を起こしにくい材料であるNiが適当である。Crは環境に悪影響を与える可能性があるため適当ではなく、Feは耐食性の問題があり、AgおよびPtは高価であり適当ではない。また、フレキシブル配線版として使用する際には、本金属薄膜上にCuを電解めっき法により形成する必要があるが、この電解Cuめっき膜の残留応力低減の観点からもCuの格子常数と近い格子常数をもつNiが最適である。
【0007】
特許文献2によるとNiもCuと同じ手法で薄膜形成が可能であるように記述されているが、還元剤に水素化ホウ素ナトリウムを用いた場合では、薄膜は形成されるものの形成されたNi薄膜層とポリイミド樹脂の密着性が悪く、フレキシブル配線板の製造に適用できるものとはならなかった。また、還元剤にジメチルアミンボランまたは次亜リン酸ナトリウムを用いた場合では、Ni薄膜の形成を確認することができなかった。
【0008】
特許文献3〜8では、めっき浴中にNiイオンやCuイオンが含有され、Ni薄膜の形成は基板表面上で行われるので、Ni薄膜と基板との密着性が十分ではなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリイミド樹脂表面に密着性が良好なNi薄膜を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
ポリイミド樹脂をアルカリ溶液で処理して表面に改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミド樹脂をNiイオン含有溶液で処理して、該Niイオンを改質層に吸着させる吸着工程;および
前記Niイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Aをジメチルアミンボラン還元溶液で処理して、前記Niイオンを還元する還元工程;
を含んでなり、
改質層に吸着したときジメチルアミンボラン還元溶液で還元され得る金属イオン(Mイオン)を改質層に吸着させた樹脂Bを、ポリイミド樹脂Aの還元処理に先だってまたは同時に、ジメチルアミンボラン還元溶液と接触させることを特徴とするNi薄膜の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るNi薄膜の製造方法により、ポリイミド樹脂表面に密着性が良好なNi薄膜を製造できる。すなわち、本発明では、直接めっき法が採用され、しかも改質層に吸着したときにジメチルアミンボラン還元溶液で還元され得る金属イオン(Mイオン)が改質層に吸着された状態でジメチルアミンボラン還元溶液に提供される。よって、ジメチルアミンボラン還元溶液の還元力を低下させることなく、吸着Mイオンが有効にジメチルアミンボランの酸化反応に寄与し、十分な電子が供給される。そのため、吸着Niイオンはポリイミド樹脂内部でNi核を有効に生成でき、ポリイミド樹脂中からのNi薄膜の形成が可能となる。その結果、アンカー効果が働き、ポリイミド樹脂とNi薄膜との密着性が向上する。
本発明に係るNi薄膜の製造方法を、フレキシブル配線板を製造する場合の電解Cuめっき下地としてのNi薄膜の形成に適用すると、配線間のリーク電流による不具合や絶縁耐圧不具合を起こすことなく、信頼性の高いフレキシブル配線板を得ることができる。
以上の効果により、本発明は、様々な分野におけるポリイミドフレキシブル配線板の汎用化に大いに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を図1を参照して説明する。
図1は、本発明に係るNi薄膜の製造方法の製造工程を示すフロー図の一例である。
【0013】
(Ni薄膜の製造方法)
本発明に係るNi薄膜の製造方法は以下の工程を含むものである;
ポリイミド樹脂をアルカリ溶液で処理して表面に改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミド樹脂をNiイオン含有溶液で処理して、該Niイオンを改質層に吸着させる吸着工程;および
前記Niイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Aをジメチルアミンボラン還元溶液で処理して、前記Niイオンを還元する還元工程。
【0014】
・改質工程
本工程では、ポリイミド樹脂をアルカリ溶液で処理して、イミド環が開環されたポリイミド改質層を表面に形成する(図1の工程(1a))。詳しくはポリイミド樹脂をアルカリ溶液に浸漬することで、表面に改質層を形成されたポリイミド樹脂を得、その後、水洗する。この工程により、ポリイミド樹脂表面におけるポリイミド分子のイミド環が加水分解によって開環し、カルボキシル基が生成すると同時に、カルボキシル基の水素イオンがアルカリ溶液中の金属イオンと置換され、改質層が形成される。例えば、化学式(1)で表されるポリイミドは、KOH水溶液で処理される場合、加水分解による開環によって生成したカルボキシル基の水素イオンがカリウムイオンと置換されて化学式(2)で表される構造を有するようになる。
【0015】
【化1】

【0016】
アルカリ溶液はポリイミドのイミド環を開環できる限り特に制限されるものではなく、例えば、KOH、NaOH等が挙げられる。アルカリ溶液に含有され、本工程で水素イオンと置換する金属イオンを以下、金属イオンAと呼ぶものとする。
【0017】
改質処理条件は特に制限されず、例えば、アルカリ溶液の濃度は3〜10M(mol/l)、溶液温度は20〜70℃、処理時間は1〜10分が一般的である。好ましくは、溶液温度は30〜50℃、処理時間は3〜7分である。処理温度が高すぎると、イミド環の開環以外の分子構造破壊が起こる可能性がある。
【0018】
改質層の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は1〜10μm、特に3〜5μmが好適である。
【0019】
改質処理後の水洗によって、ポリイミド樹脂表面に付着したアルカリ溶液を除去できる。従って、流水による水洗が望ましい。1〜5L/minの水量で、5分以上の水洗を行う。
【0020】
ポリイミド樹脂としては、特に制限されず、可撓性を有するフィルム状のものから剛性を有するボード状のものまで、いかなるポリイミド基板も使用可能であるが、フレキシブル配線板を製造する観点からは、厚み10〜200μmの可撓性を有するフィルム状のものが好ましく使用される。
【0021】
ポリイミド基板は市販のものを使用することができ、例えば、アピカル(R)(カネカ製)、カプトン(R)(東レデュポン製)、ユーピレックス(R)(宇部興産製)等として入手可能である。
【0022】
・Niイオン吸着工程
本工程では、改質層を形成されたポリイミド樹脂を、Niをイオン形態で含有するNiイオン含有溶液で処理して、当該Niイオンを前記改質層に吸着させる(図1の工程(2a))。詳しくは、改質層を有するポリイミド樹脂を、Niイオン含有溶液に浸漬して、改質層中の金属イオンAを、Niイオンと置換させ、水洗する。Niイオンは金属イオンAよりもイオン交換反応の反応性が高いので比較的容易に金属イオンAと置換する。
【0023】
Niイオン含有溶液は、Niイオンを提供できる溶液であれば特に制限されず、例えば、硫酸ニッケル水溶液、塩化ニッケル水溶液、スルファミン酸ニッケル水溶液等を用いることができる。特に、硫酸ニッケル水溶液が好適である。
【0024】
吸着処理条件は特に制限されず、例えば、硫酸ニッケル水溶液を用いる場合、濃度は0.01〜0.1M(mol/l)、処理温度は20〜30℃、処理時間は5分以上が好適である。
【0025】
Niイオンの吸着量は所望厚みのNi薄膜を形成できる限り特に制限されない。
【0026】
吸着処理後の水洗によって、ポリイミド樹脂表面に付着したNiイオン含有溶液を除去できる。Niイオン含有溶液は酸性であるため、そのまま次工程に持ち込むと還元剤のpHの変動をもたらす原因となる。水洗は、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0027】
・Niイオン還元工程
本工程では、前記Niイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂(本明細書中、「ポリイミド樹脂A」という)をジメチルアミンボラン(DMAB)還元溶液で還元処理する(図1の工程(3a))。本発明ではその際、特定の金属イオンを吸着させた樹脂(本明細書中、「樹脂B」という)をDMAB還元溶液と接触させる。詳しくは、ポリイミド樹脂Aの還元処理に先だって、または当該処理と同時に、樹脂BをDMAB還元溶液と接触させる。
【0028】
具体的には、以下に示す実施形態(I)および(II)が挙げられる。
(I)樹脂BをDMAB還元溶液で処理した後、該処理に使用したDMAB還元溶液で前記ポリイミド樹脂Aを処理する。例えば、樹脂BをDMAB還元溶液に浸漬処理した後、該処理に使用したDMAB還元溶液に前記ポリイミド樹脂Aを浸漬処理する。DMAB還元溶液によるポリイミド樹脂Aの処理は、当該DMAB還元溶液に樹脂Bを浸漬したまま行ってもよいし、または樹脂Bを取り出した後で行ってもよい。
(II)樹脂Bとポリイミド樹脂Aを同時にDMAB還元溶液に浸漬する。
【0029】
樹脂Bに吸着する金属イオンは、樹脂、特に樹脂の改質層に吸着したとき、DMAB還元溶液で還元され得る金属イオン(本明細書中、「Mイオン」という)であり、例えば、Cuイオン、Coイオン、Pdイオン、Agイオン、PtイオンもしくはAuイオン、またはそれらの混合物である。コストの観点からCuイオンが好ましい。
【0030】
DMABは一般に、ポリイミド樹脂Aに吸着されたNiイオンに対しては還元剤として有効に機能しない。本発明において上記のようなMイオンを吸着させた樹脂BをDMAB還元溶液に接触させることによって、DMABの酸化反応が開始され、DMABは還元剤として有効に機能するようになる。そのため、そのようなDMAB還元溶液に対してポリイミド樹脂Aが接触することによって、ポリイミド樹脂A中のNiイオンが有効に還元され、ポリイミド樹脂の内部からNi薄膜が形成される。
【0031】
MイオンとしてCuイオンを用いた場合のNiイオンの還元メカニズムについて詳しく説明する。
ポリイミド樹脂に吸着された金属イオンが金属に還元されるためには、還元剤の酸化反応によって金属イオンの還元に十分な電子が供給されることが必要である。DMABの酸化反応は、以下の式で表される。
【0032】
(CHNHBH+4OH
(CHNH+BO+2HO+3/2H+3e (3)
あるいは
(CHNHBH+7OH
(CHNH+BO+5HO+6e (4)
【0033】
上記DMABの酸化反応は、一般には還元剤と還元対象金属との間の電極電位差に基づいて起こる。しかし、本発明において還元されるNiイオン等の金属イオンは樹脂に吸着した金属イオンであって、この吸着金属イオン、特に吸着Niイオンはポリイミド樹脂が改質されてイミド環が開環された際のカルボキシル基と結びついているので、イオンと金属の中間的な結合状態にある。よって、本発明において上記DMABの酸化反応は還元剤と吸着金属イオンとの間の電極電位差に基づいて起こるものと考えられる。本発明において還元対象の吸着NiイオンはDMABとの電極電位差が小さすぎるため上記DMABの酸化反応が起こらず、還元され得ないものと考えられる。一方、Cuイオンを吸着した樹脂をDMAB還元溶液に浸漬すると、直ちに吸着Cuイオンの還元処理が始まる。つまり、吸着CuイオンはDMABとの電極電位差が十分に大きいため上記DMABの酸化反応が開始されるものと考えられる。上記式(3)による反応が生じており、このことは、溶液を観察していると水素の気泡が発生していることからも明らかである。DMABの酸化反応は、吸着Cuイオンが金属Cuに還元された後もしばらく継続する。例えば、Cuイオンを吸着した樹脂を還元完了前に引き上げた後も、しばらくの間は水素の気泡発生が継続している。そのため、Niイオン吸着を行ったポリイミド樹脂AのDMAB還元処理に先だって、或いは同時に、Cuイオンを吸着させた樹脂BをDMAB還元溶液と接触させて、吸着Cuイオンの還元処理を行うと、DMABの酸化反応により生成された電子が吸着Niイオンの金属への還元に寄与して、Ni金属の析出が始まるものと考えられる。一旦、吸着Niイオンの還元が始まると、析出したNiはDMABの触媒活性を持つため、Niの析出が継続して起こる。
【0034】
特に本発明は所望の金属イオンを直接的に改質層に吸着させて析出させる、いわゆる直接めっき法を採用するので、還元溶液は、無電解めっき法のように還元剤の分解速度がゆっくりとなるような調整が成されない。そのため、吸着Cuイオンの還元が開始されると、DMABの酸化速度が早く、金属析出よりDMABの酸化速度が上回る状態になるので、吸着Cuイオンの還元が終了したり、あるいは当該還元の途中でCuイオン吸着樹脂を取り除いたりしても、還元溶液はDMABの酸化反応で生じた電子が余剰に存在する状態にある。よって、吸着Niイオンの金属への還元が有効に達成される。
【0035】
例えば、Cuイオン(例えばCuSO)を吸着させることなく、DMAB還元溶液中にそのまま入れておいた場合(Cuの無電解めっき液相当)には、触媒活性のある金属等が還元溶液に浸漬されない限り、DMABの酸化反応はほとんど起こらないので、Ni薄膜は形成されない。Cuイオンは、前記した吸着Cuイオンとは異なり、DMABとの電極電位差が小さいため、DMABの酸化反応が起こらないものと考えられる。
【0036】
また例えば、Cuイオンを吸着させることなく、DMAB還元溶液中、触媒活性のある金属等の存在下で含有させると、DMABの酸化反応が進み、Cuイオンは還元される。そのようなCuイオンの還元段階でDMABの酸化反応が進み、DMABの分解が進むと、DMAB還元溶液は、次段階で吸着Niイオンを還元するための還元力が失われる、或いは、還元力が非常に弱くなる。還元力が弱いと還元速度が遅くなり、NiイオンのNi核生成よりもNi核成長速度が速くなる。つまり、ポリイミド樹脂の最表面で生成されたNi核が成長してNi金属薄膜を形成してしまい、ポリイミド内部でのNi核生成が阻害される。よって、ポリイミド樹脂中からのNi薄膜形成が達成されず、アンカー効果が得られない。そのような現象はCuイオン含有量が0.1ppm以上のとき特に顕著である。
【0037】
前記実施形態(I)における樹脂BのDMAB還元溶液による処理、および該処理に使用したDMAB還元溶液によるポリイミド樹脂Aの処理、ならびに前記実施形態(II)における樹脂Bおよびポリイミド樹脂AのDMAB還元溶液による処理のための条件は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は、それぞれ独立して以下の範囲内から選択される。
DMAB還元溶液の濃度は0.02〜0.5M(mol/l)、処理温度は30〜50℃、処理時間は5〜30分である。
DMAB還元溶液は、必要に応じてpH調整剤や錯化剤等の添加成分を加えても良いが、工程管理の観点から、DMABと水とからなっていることが好ましい。
【0038】
3〜7分の改質工程〜Niイオン吸着工程〜Niイオン還元工程を1回行うと、通常は200〜500nmの厚みのNi薄膜が形成可能である。Niイオン吸着工程〜Niイオン還元工程を2回以上繰り返して行うことによって、Ni薄膜をさらに厚くすることができる。
【0039】
Niイオン還元工程を実施した後は、通常、水洗および乾燥を行う。
水洗によって、ポリイミド樹脂A表面に付着した還元溶液を除去できる。水洗は通常は1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
乾燥条件は通常は温度が100〜120℃、時間が30〜60分である。得られたNi薄膜の酸化防止のため、窒素ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気、真空雰囲気で加熱処理することが望ましい。
【0040】
(樹脂Bの製造方法)
前記Niイオン還元工程で使用する樹脂Bは好ましくはポリイミド樹脂からなる。すなわち樹脂Bは前記Mイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂(本明細書中、「ポリイミド樹脂B」という)であることが好ましい。
【0041】
ポリイミド樹脂Bは、ポリイミド樹脂に対して改質工程およびMイオン吸着工程を実施することによって製造できる。
【0042】
・改質工程
本工程は、前記改質工程(1a)と同様の方法で実施すればよい(図1の工程(1b))。
改質処理条件は特に制限されず、前記改質工程と同様の範囲内で適宜選択されればよい。
ポリイミド樹脂Bにおける改質層の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は1〜10μm、特に3〜5μmが好適である。
【0043】
・Mイオン吸着工程
本工程では、改質層を形成されたポリイミド樹脂を、Mイオン含有溶液で処理して、当該Mイオンを前記改質層に吸着させる(図1の工程(2b))。詳しくは、改質層を有するポリイミド樹脂を、Mイオン含有溶液に浸漬して、改質層中の金属イオンAを、Mイオンと置換させ、水洗する。本工程で吸着するMイオンは、前記Niイオン還元工程でDMABの酸化反応を開始させるために必要なものである。改質工程で生成されたすべてのカルボキシル基についてイオン交換を行う必要はないが、好ましくはすべてのカルボキシル基についてイオン交換を行う。Mイオンは金属イオンAよりもイオン交換反応の反応性が高いので比較的容易に金属イオンAと置換する。
【0044】
Mイオン含有溶液は、Mイオンを提供できる溶液であれば特に制限されず、例えば、CuSO水溶液、CoSO水溶液、PdSO水溶液、AgNO水溶液、HAuCl水溶液、HPtCl水溶液等を用いることができる。
【0045】
吸着処理条件は特に制限されず、例えば、CuSO水溶液を用いる場合、濃度は0.01〜0.1M(mol/l)、処理温度は20〜30℃、処理時間は1分以上が好適である。
【0046】
吸着処理後の水洗によって、ポリイミド樹脂表面に付着したMイオン含有溶液を除去できる。Mイオン含有溶液は酸性であるため、そのままNiイオン還元工程に持ち込むと還元剤のpHの変動をもたらす原因となる。水洗は、1〜5L/minの水量で、5分以上の条件で行う。
【0047】
樹脂BにおけるMイオンの吸着量は、Niイオン還元工程においてDMABの酸化反応を開始し、吸着Niイオンの還元を達成できる十分量であればよい。通常は、樹脂AにおけるNiイオンの吸着量と同量で良い。
【0048】
以上に説明したNi薄膜の製造方法においては、Niイオンを吸着させたポリイミド樹脂Aと、Mイオンを吸着させた樹脂Bとを別々に準備して用いたが、樹脂Bがポリイミド樹脂からなる場合、当該ポリイミド樹脂Bとポリイミド樹脂Aとを一体化させて用いることができる。この場合、前記Niイオン還元工程において実施形態(II)を選択することになる。これによって、ポリイミド樹脂Bの還元時間が短縮でき、さらに廃棄物を出すことなく、密着性に優れたNi薄膜をDMABによって形成できる。
【0049】
樹脂Bが、Mイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Bであり、かつポリイミド樹脂Aとポリイミド樹脂Bとが一体化されて使用される場合、それらの一体化物をDMAB還元溶液に浸漬することによって、Ni薄膜を製造できる。
【0050】
ポリイミド樹脂Aとポリイミド樹脂Bとの一体化物は、Niイオンを吸着させたポリイミド樹脂A領域およびMイオンを吸着させたポリイミド樹脂B領域を有するものである。
そのような一体化物の還元処理は、当該一体化物を用いること以外、前記Niイオン還元工程における実施形態(II)と同様の方法によって行えばよい。
【0051】
詳しくは、ポリイミド樹脂Aとポリイミド樹脂Bとの一体化物を用いてNi薄膜を製造する場合、以下の工程を実施する。
ポリイミド樹脂をアルカリ溶液で処理して表面に改質層を形成する改質工程(1c);
前記ポリイミド樹脂の一部をNiイオン含有溶液で処理して、該Niイオンを改質層に吸着させる吸着工程(2c−x);
前記ポリイミド樹脂の残部における少なくとも一部をMイオン含有溶液で処理して、該Mイオンを改質層に吸着させる吸着工程(2c−y);および
前記NiイオンおよびMイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Aとポリイミド樹脂Bとの一体化物をジメチルアミンボラン還元溶液で処理して、前記Niイオンを還元する還元工程(3c)。
【0052】
吸着工程(2c−x)および吸着工程(2c−y)は逆の順序で実施されてよい。この場合、先に実施した吸着工程(2c−y)による処理領域の残部における少なくとも一部に対して吸着工程(2c−x)が実施されればよい。
【0053】
改質工程(1c)は前記改質工程(1a)と同様の方法で実施すればよい。
吸着工程(2c−x)は、マスク等を用いて所定の領域に対して選択的に吸着処理を行うこと以外、前記Niイオン吸着工程(2a)と同様の方法で実施すればよい。
吸着工程(2c−y)は、マスク等を用いて所定の領域に対して選択的に吸着処理を行うこと以外、前記Mイオン吸着工程(2b)と同様の方法で実施すればよい。
還元工程(3c)は、改質工程(1c)、吸着工程(2c−x)および吸着工程(2c−y)を経て得られたポリイミド樹脂Aとポリイミド樹脂Bとの一体化物を還元処理に供すること以外、前記Niイオン還元工程(3a)における実施形態(II)と同様の方法で実施すればよい。
【実施例】
【0054】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
以下に説明する工程により、ポリイミド樹脂表面へNi薄膜を形成した。
対象ポリイミド樹脂は、125μm厚のポリイミドフィルムを用いた。ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン社のカプトン500Hを使用した(図2の1)。試料のサイズは、2cm×10cmとした。
【0056】
(改質工程)
ポリイミド樹脂を50℃のKOH水溶液に5分間浸漬し、改質工程を実施した。この際、KOH水溶液は、5M(mol/l)の濃度に設定した。その後、2リットル/分の流水で5分間水洗を実施した。この工程により、ポリイミド樹脂の両面についてポリイミド分子中のイミド環の加水分解が行われ、ポリイミド表面の改質層2には、カルボキシル基にカリウムイオンが配位したカルボン酸カリウム塩が形成された(図3)。改質層2の厚さは、ポリイミド樹脂の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することにより、約5μmであることが判った。
【0057】
上記の手順で改質処理を行ったポリイミド樹脂を、2枚作成した。便宜上、各々をポリイミド樹脂−A、ポリイミド樹脂−Bと呼ぶ。
【0058】
(Niイオン吸着工程)
ポリイミド樹脂−Aについて、Niイオン吸着のための浸漬処理を実施した。Niイオン吸着には、硫酸ニッケル水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、処理時間は12分である。なお、溶液は攪拌している。その後、ポリイミド樹脂−Aについて、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。本工程で吸着されるNiイオンの量は、約7.4×10―5molである。
【0059】
(Cuイオン吸着工程)
ポリイミド樹脂−Bについて、Cuイオン吸着のための浸漬処理を実施した。Cuイオン吸着には、硫酸銅水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、処理時間は12分である。なお、溶液は攪拌している。その後、ポリイミド樹脂−Bについて、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。本工程で吸着されるCuイオンの量は、約7.4×10―5molである。
【0060】
(Niイオン還元工程)
まず、Cuイオンを吸着したポリイミド樹脂−Bについて、浸漬による還元処理を行った。還元溶液は、ジメチルアミンボラン水溶液であり、濃度は0.05M(mol/l)、温度は50℃、処理時間は10分とした。なお、還元溶液は攪拌を行っている。10分後、ポリイミド樹脂−Bをジメチルアミンボラン還元溶液から取り出し、水洗処理を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
【0061】
次に、ポリイミド樹脂−Bを取り出したジメチルアミンボラン還元溶液に、Niイオンを吸着したポリイミド樹脂−Aを浸漬した。処理条件は、温度が50℃、処理時間は15分とした。なお、還元溶液は、攪拌を行っている。その後、ポリイミド樹脂−Aについて、水洗処理を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。次に、ポリイミド樹脂−Aについて、乾燥処理を行った。乾燥処理は、窒素ガス雰囲気中で、温度が120℃、時間は1時間実施した。
【0062】
(評価)
得られたNi薄膜形成ポリイミド樹脂の模式図を図4に示す。ポリイミド樹脂の表面にNi金属薄膜3が形成されていることを示す。また、図5に、実際のポリイミド樹脂の断面をSEMにより観察した像を示す。Ni薄膜の厚さは約200〜350nmであった。
また、図6に、図5中のA点をEDX(エネルギー分散X線分析)分析して得られたチャートを示す。得られた金属薄膜はNiであり、ポリイミド樹脂表面4より内部に存在していることが判る。即ち、ポリイミド樹脂中からNiが析出したことを示している。
さらに、Ni薄膜とポリイミド樹脂との密着強度を測定するために後述の方法により引っ張り試験を実施した。引っ張り強度は、12〜14N/mmを示した。破断面は、引っ張り試験用治具とNi薄膜の界面であり、この強度は樹脂の接着強度を示している。よって、形成されたNi薄膜とポリイミド樹脂の密着強度は、12〜14N/mm以上であると言える。
【0063】
[実施例2]
Cuイオンを吸着したポリイミド樹脂−Bを予めジメチルアミンボラン還元溶液に浸漬する代わりに、Niイオンを吸着したポリイミド樹脂−Aと同時にジメチルアミンボラン還元溶液に浸漬する以外は、実施例1と同様の方法でNi薄膜を形成した。
【0064】
(評価)
得られたNi薄膜形成ポリイミド樹脂のSEMによる断面観察、EDX分析および引っ張り試験を実施例1と同様の方法により行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。Ni薄膜の厚さは約200〜350nmであった。
【0065】
[実施例3]
本実施例では、ジメチルアミンボラン還元溶液の酸化反応を開始するために必要なCuイオンを吸着したポリイミド樹脂−Bを、Ni薄膜形成対象であるポリイミド樹脂−Aと一体化させた例について述べる。
使用したポリイミド樹脂の種類は、実施例1と同じである。
【0066】
(改質工程)
ポリイミド樹脂を50℃のKOH水溶液に5分間浸漬し、改質工程を実施した。この際、KOH水溶液は、5M(mol/l)の濃度に設定した。次に、ポリイミド樹脂を、2リットル/分の流水で5分間水洗を実施した。
【0067】
(Cuイオン吸着工程)
次に、ポリイミド樹脂の一部にCuイオンを吸着するため、吸着部を残して他の部分にマスク処理を行った。マスク処理を行う前にポリイミド樹脂表面を乾燥させておく必要があるため、高圧窒素ガスによるブローで水分を吹き飛ばし、60℃のオーブンで10分間乾燥処理を行った。その後、テフロンテープによりマスクを行った。マスクする面積は、ポリイミド樹脂の半分とした。
【0068】
次に、マスク処理を行ったポリイミド樹脂について、Cuイオン吸着のための浸漬処理を実施した。Cuイオン吸着には、硫酸銅水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、処理時間は12分である。なお、溶液は攪拌している。その後、水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。本工程で吸着されるCuイオンの量は、約3.7×10―5molである。
【0069】
(Niイオン吸着工程)
次に、ポリイミド樹脂に施したマスクを取り除き、先程Cuイオン吸着の処理を実施した領域にマスクを施した。マスクを行う前には、前述の乾燥処理を行った。
次に、マスクを施したポリイミド樹脂にNiイオンを吸着させた。Niイオン吸着には、硫酸ニッケル水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、処理時間は12分である。なお、溶液は攪拌している。その後、ポリイミド樹脂の水洗を行った後、マスクを取り除いた。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。本工程で吸着されるNiイオンの量は、約3.7×10―5molである。
【0070】
(Niイオン還元工程)
次に、ポリイミド樹脂について、浸漬による還元処理を行った。還元溶液は、ジメチルアミンボラン水溶液であり、濃度は0.05M、温度は50℃、処理時間は15分とした。15分後、ポリイミド樹脂をジメチルアミンボラン還元溶液から取り出し、水洗処理を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
次に、ポリイミド樹脂の乾燥処理を行った。乾燥処理は、窒素ガス雰囲気中で、温度が120℃、時間は1時間実施した。
【0071】
(評価)
得られたNi薄膜形成ポリイミド樹脂のSEMによる断面観察、EDX分析および引っ張り試験を実施例1と同様の方法により行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。Ni薄膜の厚さは約200〜350nmであった。
【0072】
(比較例1)
比較例1では、実施例1を基本とし、還元溶液として水素化ホウ素ナトリウムを使用した場合の、ポリイミド樹脂表面へのNi薄膜形成方法について説明する。
以下に説明する工程により、ポリイミド樹脂表面へNi薄膜を形成した。
対象ポリイミド樹脂は、実施例1と同様、125μm厚のポリイミドフィルムを用いた。ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン社のカプトン500Hを使用した。試料のサイズは、2cm×10cmとした。
【0073】
(改質工程)
まず、ポリイミド樹脂を50℃のKOH水溶液に5分間浸漬し、改質工程を実施した。この際、KOH水溶液は、5M(mol/l)の濃度に設定した。
次に、ポリイミド樹脂を、2リットル/分の流水で5分間水洗を実施した。
(Niイオン吸着工程)
次に、ポリイミド樹脂に、Niイオン吸着の処理を実施した。Niイオン吸着には、硫酸ニッケル水溶液を用いた。処理条件は、濃度が0.05M(mol/l)、温度は25℃、処理時間は12分である。なお、溶液は攪拌している。
次に、ポリイミド樹脂の水洗を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
【0074】
(Niイオン還元工程)
次に、ポリイミド樹脂について、浸漬による還元処理を行った。還元溶液は、水素化ホウ素ナトリウム水溶液であり、濃度は0.005M(mol/l)、温度は25℃、処理時間は20分とした。なお、還元溶液は攪拌を行っている。20分後、ポリイミド樹脂を水素化ホウ素ナトリウム還元溶液から取り出し、水洗処理を行った。水洗は、2リットル/分の流水で5分間実施した。
次に、ポリイミド樹脂の乾燥処理を行った。乾燥処理は、窒素ガス雰囲気中で、温度が120℃、時間は1時間実施した。
【0075】
(評価)
得られたNi薄膜形成ポリイミド樹脂の模式図を図7に示す。ポリイミド樹脂の表面にNi金属薄膜301が形成されていることを示す。また、図8に、実際のポリイミド樹脂の断面をSEMにより観察した像を示す。得られたNi金属薄膜は、ポリイミド樹脂表面401上に存在しており、ポリイミド樹脂中からNiが析出していないことを示している。
さらに、Ni薄膜とポリイミド樹脂の密着強度を測定するために引っ張り試験を実施した。引っ張り強度は、3〜4N/mmを示した。破断面は、Ni薄膜とポリイミド樹脂の界面であり、本事例によるNi薄膜形成法ではポリイミド樹脂とNi薄膜との密着強度が低いことを示している。
【0076】
(引っ張り試験)
引き剥がし強さ(密着強度)の測定方法について述べる。密着強度は、引っ張り試験機により測定した。Ni薄膜が形成されたポリイミド樹脂を、適当な金属板に貼り付ける。貼り付けは、市販のエポキシ系接着剤を用いた。接着剤が硬化後、ポリイミド樹脂表面のNi薄膜部に引っ張り試験用の治具を取り付ける。治具は、引っ張り試験機のロードセルとワイヤーで結合できるよう、穴が設けられている。本治具を、市販のエポキシ系接着剤でNi薄膜に接着する。接着剤が硬化後、ポリイミド樹脂が貼り付けられた金属板を引っ張り試験機のステージに固定し、引っ張り試験用の治具の穴にワイヤーを通して、引っ張り試験機のロードセルと接続する。この後、引っ張り試験を行い、引き剥がし強度(密着強度)を求める。なお、引き剥がされた箇所の面積は、顕微鏡写真により求めた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明はフレキシブル配線板の製造に利用可能であり、片面フレキシブル配線板、両面フレキシブル配線板を複数枚積層した多層フレキシブル配線板や、ガラスエポキシ基板などの硬質基板とも合わせて積層したリジッド−フレキシブル配線板の製造などにも広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明によるNi薄膜の製造方法を示すフロー図である。
【図2】本発明に用いたポリイミド樹脂の概略断面模式図である。
【図3】本発明によるポリイミド樹脂表面改質後の概略断面模式図である。
【図4】本発明によるポリイミド樹脂表面へのNi薄膜形成後の概略断面模式図である。
【図5】本発明によるポリイミド樹脂表面へのNi薄膜形成後の断面のSEM写真である。
【図6】本発明によるポリイミド樹脂表面へのNi薄膜形成後のEDX分析チャートである。
【図7】比較例によるポリイミド樹脂表面へのNi薄膜形成後の概略断面模式図である。
【図8】比較例によるポリイミド樹脂表面へのNi薄膜形成後の断面のSEM写真である。
【図9】従来例(特開2001−73159号公報)の実施例2における金属薄膜形成までのフロー図である。
【符号の説明】
【0079】
1:ポリイミド樹脂、2:改質層、3:ポリイミド樹脂中に析出したNi薄膜、4:還元剤がジメチルアミンボランの場合のポリイミド樹脂表面、301:ポリイミド樹脂表面に析出したNi薄膜、401:還元剤が水素化ホウ素ナトリウムの場合のポリイミド樹脂表面、A:EDX分析箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂をアルカリ溶液で処理して表面に改質層を形成する改質工程;
前記ポリイミド樹脂をNiイオン含有溶液で処理して、該Niイオンを改質層に吸着させる吸着工程;および
前記Niイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Aをジメチルアミンボラン還元溶液で処理して、前記Niイオンを還元する還元工程;
を含んでなり、
改質層に吸着したときジメチルアミンボラン還元溶液で還元され得る金属イオン(Mイオン)を改質層に吸着させた樹脂Bを、ポリイミド樹脂Aの還元処理に先だってまたは同時に、ジメチルアミンボラン還元溶液と接触させることを特徴とするNi薄膜の製造方法。
【請求項2】
還元工程において、樹脂Bをジメチルアミンボラン還元溶液で処理した後、該処理に使用したジメチルアミンボラン還元溶液で前記ポリイミド樹脂Aを処理する請求項1に記載のNi薄膜の製造方法。
【請求項3】
還元工程において、樹脂Bとポリイミド樹脂Aを同時にジメチルアミンボラン還元溶液に浸漬する請求項1に記載のNi薄膜の製造方法。
【請求項4】
樹脂Bが、Mイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Bである請求項1〜3のいずれかに記載のNi薄膜の製造方法。
【請求項5】
樹脂Bが、Mイオンを改質層に吸着させたポリイミド樹脂Bであり、
ポリイミド樹脂Aとポリイミド樹脂Bとが一体化されており、
還元工程において、それらの一体化物をジメチルアミンボラン還元溶液に浸漬する請求項1に記載のNi薄膜の製造方法。
【請求項6】
MイオンがCuイオン、Coイオン、Pdイオン、Agイオン、PtイオンもしくはAuイオン、またはそれらの混合物である請求項1〜5のいずれかに記載のNi薄膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−75146(P2008−75146A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257289(P2006−257289)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】