PARP阻害剤を用いる疾病の治療方法
【課題】本発明は、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを測定し、そしてPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定はPARPレベルに基づいて行われるという方法に関する。該方法は、PARPモジュレーターで前記被検体の疾病を治療することを更に含んで成る。前記方法は、疾病のアップレギュレートされたPARPを同定し、そしてPARP阻害剤による該疾病の治療に関する決定を行うことに関する。疾病のPARPアップレギュレーションの程度は、PARP阻害剤による治療の効果を調べる際にも役立ちうる。本発明は、PARPがアップレギュレート又はダウンレギュレートされており、そしてPARP阻害剤又はPARP活性剤で治療することができる、様々な疾病を開示する。その疾病の例として、癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系障害、内分泌及び神経内分泌の障害、尿路の障害、呼吸系の障害、女性生殖系の障害、及び男性生殖系の障害が挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本発明は、2006年6月12日出願の米国仮出願第60/804,563号及び2006年11月20日出願の米国仮出願第60/866,602号明細書に関連し、その全内容が参考として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)は、細胞増殖、分化、アポトーシス、DNA修復をはじめとする様々なDNA関連の機能に寄与し、そしてテロメア長や染色体安定性に対しても影響を与える(d'Adda di Fagagna他, 1999, Nature Gen., 23(1): 76-80)。酸化的ストレスにより誘導されるPARPの過剰活性化は、NAD+及び結果としてATPを消費し、細胞機能障害又はネクローシスをもたらす。この細胞自殺機構は、癌、脳卒中、心筋虚血、糖尿病、糖尿病性心血管機能不全、ショック、外傷性中枢神経系損傷、関節炎、大腸炎、アレルギー性脳脊髄炎、及び様々な他の形態の炎症の病理学的機序に関与している。PARPは、幾つかの転写因子の機能に関連があり、該機能を調節することも証明されている。PARPの多様な機能のため、それは様々な形態の癌及び神経変性病を包含する様々な重篤状態に対する標的となっている。
【0003】
乳癌は胸部の細胞から発生する悪性腫瘍である。それは皮膚癌以外に女性によく見られる癌であり、女性における癌関連の二番目の主な死亡原因である。節陽性乳癌はしばしばHER2/neu腫瘍遺伝子を過剰発現し、このことは細胞表面上に正常よりも多くのHER2タンパク質のコピーが存在したことを意味する。多数コピーのHER2遺伝子を有する乳癌女性は、拡大が最速であり、予後が良くなかった。この乳癌の一部は典型的にトラスツズマブ(Trastuzumab)と呼ばれるHer-2抗体で処置される。
【0004】
非機能的BRCA1及びBRCA2遺伝子並びにそれらの分子経路を担持する女性は、70才の年齢までに乳癌を発生する確率が85%まである。乳癌連携協会(Breast Cancer Linkage Consortium)の結論によると(1997)、BRCA1とBRCA2(600185)変異を担持しているという理由により癌にかかりやすい傾向にある女性の乳癌の組織学は、散発症例のものとは異なっており、そしてBRCA1変異とBRCA2変異のキャリヤーにおける乳癌の間には相違がある。
【0005】
PARP阻害剤は、BRCA1とBRCA2に欠陥がある人々において腫瘍細胞を殺すのに有効であり得る(Byrant他、2005, Nature 434 (7035): 913-7及びFarmer他, 2005, Nature 434 (7035): 917-21)。PARP阻害剤は、それらの遺伝子中に変異を有する患者の特定部分を助ける可能性がある。それらの変異は患者を早発型の癌にかかりやすくし、そして乳癌、卵巣癌、前立腺癌及び膵臓癌において見出されている。今日の早期発見法は、健康な専門家が、癌が高度に治療可能である極早期の段階で見つけることを意味する。例えば、大腸内視鏡検査法と呼ばれる単純なスクリーニング法は、癌性になる機会を有する前にポリープを発見することができる。しかしながら、癌の早期診断のより効率的且つ強固な方策が、癌の予防やより有効な治療にとって非常に有益となる。
【発明の概要】
【0006】
一観点では、本発明は、被検体においてPARP阻害剤により治療可能な疾病を同定する方法であって、前記被検体中のPARPのレベルを測定し、そして該被検体中でPARPがアップレギュレートされるならば、更にPARP阻害剤それ自体で又は別の剤もしくは治療法と組み合わせてPARP阻害剤での前記被検体の治療を提供することによる方法を提供する。
【0007】
本発明の一観点は、PARPモジュレーターにより処置可能な疾病又は疾病の一段階を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを測定し、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定がPARPの発現レベルに基づいて行われるという方法に関する。或る好ましい態様では、PARPレベルがアップレギュレートされる。本発明の一観点は、別の剤と組み合わせてPARPモジュレーターにより治療可能な疾病又は疾病の一段階を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを測定し、そして別の剤と組み合わせてPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関して決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定がPARPの発現レベルに基づいて行われるという方法に関する。
【0008】
本発明の別の観点は、被検体においてPARPモジュレーターにより疾病を治療する方法であって、該被検体の試料中のPARPのレベルを測定し、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関してPARPレベルに基づく決定を行い、そして該PARPモジュレーターにより前記被検体の病気を治療することを含んで成る方法に向けられる。好ましい態様では、前記PARPのレベルがアップレギュレートされている。
【0009】
或る態様では、前記疾病は、癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系の障害、内分泌及び神経内分泌の障害、尿路の障害、呼吸系の障害、女性生殖系の障害、及び男性生殖系の障害から成る群より選択される。或る好ましい態様では、前記癌は結腸腺癌、食道腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、島細胞腫、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞癌、乳頭癌、乳癌、腺管癌、小葉癌、腺管内癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒細胞腫、ムチン性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨の巨細胞腫、骨肉腫、咽頭癌、肺腺癌、腎臓癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から選択される。
【0010】
或る好ましい態様では、前記炎症は、ヴェグナー肉芽腫症、橋本甲状腺炎、血液細胞腫、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ過形成、変形性関節炎、潰瘍性大腸炎、及び乳頭癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、代謝性疾患は糖尿病又は肥満である。或る好ましい態様では、CVS病はアテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎、心筋梗塞、及び特発性肥大性心筋症から成る群より選択される。或る好ましい態様では、CNS病は、アルツハイマー病、コカイン乱用、統合失調症、及びパーキンソン病から成る群より選択される。或る好ましい態様では、血液リンパ系の障害は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球白血病、及び反応性リンパ過形成から成る群より選択される。
【0011】
或る好ましい態様では、内分泌及び神経内分泌の障害は、結節性過形成、橋本甲状腺炎、島細胞腫、及び乳頭癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、尿路の障害は、腎細胞癌、移行上皮癌、及びウィルムス腫瘍から成る群より選択される。或る好ましい態様では、呼吸系の障害は、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、及び巨細胞癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、女性生殖系の障害は、腺癌、平滑筋腫、ムチン性嚢胞腺癌、及び漿液性嚢胞腺癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、男性生殖系の障害は、前立腺癌、良性結節性過形成及びセミノーマから成る群より選択される。
【0012】
好ましい態様では、PARPレベルの同定がアッセイ技術を含んで成る。或る好ましい態様では、該アッセイ技術がPARP遺伝子の発現を測定する。或る態様では、試料がヒト正常試料、腫瘍試料、毛髪、血液、細胞、組織、器官、脳組織、血液、血清、痰、唾液、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳脊髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液、及び射精前液から成る群より選択される。或る好ましい態様では、PARPモジュレーターはPARPレベルがアップレギュレートされる。或る態様では、PARPレベルがダウンレギュレートされる。或る態様では、PARPモジュレーターがPARP阻害剤又は拮抗剤である。或る態様では、PARP阻害剤又は拮抗剤がベンズアミド、キノロン、イソキノロン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、及び3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル、環状ベンズアミド、ベンズイミダゾール及びインドールから成る群より選択される。
【0013】
或る態様では、当該方法が、病気に関する結論を患者、医療提供者又は医療管理者に提供することを更に含んで成り、ここで前記結論は前記決定に基づくものである。或る態様では、前記治療が経口投与、経粘膜投与、口腔投与、経鼻投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群より選択される。
【0014】
本発明の別の態様は、試料の分析結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能な媒体に関し、ここで前記媒体は、PARPモジュレーターにより治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成り、前記情報は、該被検体の試料中のPARPレベルを同定しそしてPARPモジュレーターにより該疾病を治療することに関する前記PARPレベルに基づく決定を行うことにより誘導される。或る態様では、前記方法の少なくとも1つの段階がコンピューターを使って実行される。
【0015】
本発明の別の観点は、PARP阻害剤での治療に対して三重陰性〔エストロゲン(ER陰性)及びプロゲステロン(PR陰性)ホルモン受容体並びにHER2タンパク質に対する受容体を欠いている〕である患者の選択に関する。一態様では、PARP阻害剤で治療する癌のタイプが、エストロゲン(ER陰性)ホルモン受容体を欠いている。別の態様では、PARP阻害剤で治療する癌のタイプがプロゲステロン(PR陰性)ホルモンを欠いている。更に別の態様では、PARP阻害剤で治療する癌のタイプがHER2タンパク質を欠いている。
【0016】
本発明の別の観点は、BRCA依存性経路の欠陥を有する患者の群の選択及びPARP阻害剤でのそれらの治療に関する。
【0017】
本発明の更に別の観点は、PARP阻害剤又はPARP拮抗剤により治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、そしてPARP阻害剤又はPARP拮抗剤により治療可能な乳癌を同定することに関してPARPレベルに基づく決定を行い、そして前記PARP阻害剤又はPARP拮抗剤により前記乳癌を治療することを含んで成る方法に関する。或る態様では、PARPレベルがアップレギュレートされる。或る態様では、前記被検体がダウンレギュレートされたBRCA遺伝子を有する。或る方法では、PARPレベルの増加がBRCA1及び/又はBRCA2欠陥の指標である。
【0018】
一観点は乳癌の診断及び/又は治療方法である。一態様は、PARB阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記乳癌がPARP阻害剤により治療可能であるかどうかに関する前記PARPレベルに基づいた決定を行う方法である。別の態様は、PARP阻害剤により被検体中の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記乳癌がPARP阻害剤により治療可能であるかどうかに関する前記PARPレベルに基づいた決定を行い;そして前記乳癌を前記PARP阻害剤で治療することを含んで成る方法である。更に別の態様は、被検体の乳癌を分類する方法であって、前記被検体からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し、そして前記腫瘍をPARPモジュレーターで治療することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定がPARPレベルに基づいて行われるという方法である。別の態様は、被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;PARPモジュレーターで前記腫瘍を治療することに関して前記PARPレベルに基づいた決定を行い;そして前記被検体中の前記腫瘍を前記PARPモジュレーターで治療することを含んで成る方法である。好ましくは、前記乳癌が浸潤性導管癌である。或る態様では、前記癌がER、Her2-neu及び/又はPRに対して陰性である。別の態様は、被検体の癌を治療する方法であって、前記被検体からの癌試料中のER、Her2-neu及びPRの存在又は不在を同定し、そして前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成り、ここで前記癌試料がER、Her2-neu及び/又はPRに対して陰性であるならば、前記治療が実施されるという方法である。
【0019】
別の観点では、乳癌の診断及び/又は治療方法が、診断又は治療の必要な患者からのPARPレベルを予め決められたPARPレベルと比較することを含む。一態様は、PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを調べ、それにより前記乳癌がPARPモジュレーターで治療可能であることを決定する方法である。別の態様は、PARP阻害剤により患者の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを調べ、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であることを決定し;そして前記患者に前記PARP阻害剤を投与することにより前記乳癌を治療することを含んで成る方法である。典型的には、被検体(患者)は、BRCA1又はBRCA2欠損でもある。或る被検体はBRCA遺伝子の発現レベルが減少している。別の態様は、患者の乳癌を分類する方法であって、前記患者からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARPモジュレーターで治療可能であるものとして分類する方法である。1つの方法は、被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記腫瘍がPARPモジュレーターで治療可能であることを決定し;そして前記患者中の前記腫瘍を治療することを含んで成る方法である。更に別の方法は、PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARP阻害剤で治療可能なものとして同定することを含んで成る方法である。別の方法は、PARP阻害剤で患者の乳癌を治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARPP阻害剤で治療可能であることを同定し;そして前記患者に前記PARP阻害剤を投与することにより前記乳癌を治療することを含んで成る方法である。典型的には、前記乳癌は浸潤性導管癌である。浸潤性導管癌の幾つかはER、Her2-neu及び/又はPRについて陰性である。好ましい方法は、患者の癌を治療する方法であって、前記患者からの癌試料中にER、Her2-neu及び/又はPRが存在するかどうかを決定し、そして前記患者からの前記試料中にER、Her2-neu及び/又はPRが存在しない時に前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成る方法である。
【0020】
一態様は、PARPモジュレーターで治療可能なPARP媒介疾病又はPARP媒介疾病の一段階を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病がPARPモジュレーターで治療できることを決定する方法である。別の態様は、患者にPARPモジュレーターを投与することにより疾病を治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病がPARPモジュレーターで治療できることを決定し;そして前記患者に前記PARPモジュレーターを投与することにより前記患者の前記疾病を治療することを含んで成る方法である。
【0021】
本発明の一観点は、試料の分析結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能な媒体であり、前記媒体がPARPモジュレーターで治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成り;前記情報が前記被検体からの前記試料中のPARPレベルを同定しそして前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病がPARPモジュレーターで治療できることを決定することを特徴とする媒体である。
【0022】
本発明の更に別の観点は、患者集団の分類及びPARP治療に対する応答の評価である。一態様は、PARP阻害剤療法について被検体を選択する方法であって、PARP阻害剤の投与前に前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し;前記試料中のPARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し;そして前記被検体をPARP阻害剤療法のために選択することを含んで成る方法である。更に別の態様は、被検体をPARP阻害剤で治療する方法であって、前記PARP阻害剤の投与前に、前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し、前記PARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し、そして前記被検体に前記PARP阻害剤を投与することを含んで成る方法である。別の態様は、PARP阻害剤での治療を受ける被検体において該治療に対する応答を評価する方法であって、少なくとも第一及び第二の時点において前記被検体中のPARPレベルを測定し、少なくとも第一のPARPレベル及び第二のPARPレベルを得、ここで前記第一のPARPレベルに比較した前記第二のPARPレベルの減少が、治療に対する陽性応答の指標であるという方法である。典型的には、前記第一の時点がPARP阻害剤での治療の開始前であり、そして前記第二の時点がPARP阻害剤での治療の開始後である。或る態様では、前記第一の時点がPARP阻害剤での治療の開始後であり、そして前記第二の時点が第一の時点より後の時点、例えば数日、数週間又は数週間後の時点である。別の態様は、その病状が高められたPARPレベルを生じる患者を治療する方法であって、ここで患者試料のPARPレベルが予め決められたPARPレベルより高く、PARP阻害剤の治療上有効な量を投与することを含んで成る方法である。
参考として組み込まれるもの
【0023】
本明細書中に言及される全ての刊行物及び特許出願は、その個々の刊行物又は特許出願が特異的に且つ個別に参考として組み込まれたものと同じ程度に、参考として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の新規特徴は添付の特許請求の範囲中に特に記載される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の理論を利用する代表的態様を記載した下記の詳細な説明と添付の図面への参照により得られるだろう。
【0025】
【図1】図1は、本明細書中に開示される方法の段階を示すフローチャートである。
【0026】
【図2】図2は、本明細書中に開示される方法に関連した特定の操作を実行するためのコンピューターを示す。
【0027】
【図3】図3は、原発性卵巣癌におけるBRCA1及びBRCA2の低発現とPARP1の高発現との相関関係を表す。
【0028】
【図4A】図4Aは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【図4B】図4Bは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【0029】
【図5A】図5Aは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【図5B】図5Bは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【0030】
【図6】図6は、悪性及び正常卵巣組織におけるPARP発現を表す。
【0031】
【図7】図7は、悪性及び正常子宮内膜組織におけるPARP発現を表す。
【0032】
【図8】図8は、悪性及び正常肺組織におけるPARP発現を表す。
【0033】
【図9】図9は、悪性及び正常前立腺組織におけるPARP発現を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
「阻害する」又はその文法的活用形、例えば「阻害性」という用語は、PARP活性の完全な低下を必要とすることを意図しない。このような低下は、阻害効果の不在下、例えば阻害剤の不在下、例えば本明細書中に開示されるPARP阻害剤の不存下における分子活性の好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%の低下である。最も好ましくは、該用語は、観察可能な又は計測可能な活性の低下のことを指す。治療計画では、好ましくは、阻害は、治療すべき疾病の治療的及び/又は予防的有効性を生じるのに十分なものである。
【0035】
本明細書中で用いる「試料」、「生物学的試料」という用語又はそれの文法的同等語は、或るレベルのPARPを発現していることが知られている又は疑われる材料を意味する。試験試料は、原料から得られるものを直接そのまま使用するか又は該試料の性質を変更するような前処理の後に使用することができる。該試料は任意の生物学的源、例えば組織又は抽出物、例えば細胞抽出物、及び生理学的液体、例えば全血、血漿、血清、唾液、水晶液、脳脊髄液、痰、尿、母乳、腹水、滑液、腹膜浸出液等から誘導することができる。該試料は、動物又はヒトから得られ、好ましくはヒトから得られる。該試料は、使用前に処理することができ、例えば血液から血漿を調製する処理、粘稠な液体を希釈する処理等を行うことができる。試料を処理する方法としては、濾過、蒸留、抽出、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加等を挙げることができる。
【0036】
本明細書中で用いる「被検体」という用語又はそれの文法的同等語は、温血動物、例えば健康であるか又は或る疾病を罹患しているもしくは罹患している疑いがある哺乳動物を指す。好ましくは、「被検体」はヒトを指す。
本明細書中で用いる「治療する」という用語又はそれの文法的同等語は、治療効果及び/又は予防効果を達成することを意味する。治療効果とは、治療すべき根本的な障害の撲滅又は緩和を意味する。また、治療効果は、患者がまだ根本的な障害を罹患していても患者に改善が観察されるような、根本的な障害に伴う1又は複数の生理的症状の撲滅又は緩和により達成される。予防効果については、組成物は特定の疾病を発生する危険性のある患者に、又はたとえこの疾病の診断が行われていなくても、1もしくは複数の生理的症状を報告している患者に、該組成物を投与することができる。
PARPモジュレーターにより治療可能な疾病又は疾病の段階を同定する方法
【0037】
本発明の一観点では、該方法はPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することであって、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定はPARPレベルに基づいて行われるという方法である。本発明の別の観点では、該方法はPARPモジュレーターにより被検体において疾病を治療することであって、該被検体の試料中のPARPレベルを同定し、前記PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関してPARPレベルに基づいた決定を行い、そして前記被検体の疾病を前記PARPモジュレーターにより治療することを含んで成る。本発明の別の観点では、該方法が疾病に関する結論を患者、医療提供者又は医療管理者に提供することを更に含んで成り、ここで前記結論は前記決定に基づいている。或る好ましい態様では、疾病が乳癌である。或る好ましい態様では、PARPレベルがアップレギュレートされる。或る好ましい態様では、PARPレベルがPARP遺伝子の発現を測定することによって検出される。
【0038】
本発明は、被検体の試料中のPARPレベルを同定する方法であって、ここでPARPレベルがアップレギュレートされる時、該被検体がPARP阻害剤又はPARP拮抗剤で処理されるという方法に関する。本発明は、疾病、例えば癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系の障害、内分泌及び神経分泌の障害、尿路の障害、呼吸系の障害、女性生殖系の障害、並びに男性生殖系の障害を同定する。従って、本発明は、それらの疾病をPARP阻害剤により治療可能であると同定する。好ましい態様では、本発明の方法で使用されるPARP阻害剤がPARP-1阻害剤である。本発明の方法で使用されるPARP阻害剤は、PARP、好ましくはPARP-1と直接又は間接的相互作用を介して作用することができる。ここで使用されるPARP阻害剤は、PARPをモジュレートすることができるか又はPARP経路中の1又は複数の存在物をモジュレートすることができる。PARP阻害剤は或る態様ではPARP活性を阻害することができる。
【0039】
本発明方法は、女性生殖系の癌を治療するのに特に有用である。BRCA1又はBRCA2遺伝子のいずれかの中に本質的欠陥がある女性の乳癌は、損傷したDNAを修復する特異的機構を失っているために起こる。BRCA1とBRCA2は相同組換えによるDNAの二本鎖破損修復にとって重要であり、それらの遺伝子中の変異は乳癌や他の癌にかかりやすくする。PARPは、DNA一本鎖破損の修復の経路である塩基切除修復に関与する。BRCA1又はBRCA2の機能不全は、細胞をPARP酵素活性の阻害に対して感受性にし、その結果染色体の不安定性、細胞周期の停止及びその後のアポトーシスを引き起こす。
【0040】
PARP阻害剤は、DNA修復のこの形態が欠損しており、そのためBRCA欠損腫瘍細胞及び他の同様な腫瘍細胞を殺傷するに際して効果的であるような細胞を殺傷する。正常細胞は、それらがこのDNA修復機能をまだ有することができるので、該薬剤により影響を受けないだろう。この治療は、BRCA欠損癌と同様に振る舞う乳癌の別形態にも応用できるかもしれない。典型的には、乳癌患者は腫瘍細胞を殺傷するが正常細胞もまた損傷する薬剤で治療される。悪心や脱毛といった辛い副作用をもたらし得る正常細胞への損傷がある。或る態様では、PARP阻害剤で治療することの利点は、それが標的指向されること、即ち腫瘍細胞が殺傷される一方で、正常細胞は影響を受けないようであるという点である。これはPARP阻害剤が一定の腫瘍細胞の特別な遺伝子修復を活用するためである。
【0041】
本発明は、BRCA遺伝子中に欠損のある被検体が、アップレギュレートされたPARPレベルを有することを開示する。図3は、原発性卵巣癌におけるPARPの高発現とBRCA1と2の低発現との相関関係を描写する。PARPアップレギュレーションは、別の欠損性DNA修復経路の指標及び未知のBRCA様遺伝的欠損の指標であるかもしれない。PARP-1遺伝子発現の評価は、PARP阻害剤に対する腫瘍感受性の指標である。よって、本発明は、PARPレベルを測定することにより、BRCA欠損患者における癌の早期発症を同定するための方法を提供する。PARP阻害剤により治療可能であるBRCA欠損患者は、PARPがアップレギュレートされるかどうかにより同定することができる。更に、そのようなBRCA欠損患者はPARP阻害剤により治療することができる。
【0042】
本発明の好ましい方法の幾つかの段階は、図1に描写される。本発明の範囲を限定することなく、それらの段階は互いに独立に又は一段階を別の段階の後に実施することができる。本発明の方法において1又は複数の段階を省略してもよい。段階101において疾病を患っている被検体から試料を採集する。好ましい態様では、試料がヒトの正常及び腫瘍試料、毛髪、血液及び他の生体液である。段階102において当業者に周知の技術によりPARPレベルが分析され、そして該PARPレベルに基づいて、例えばPARPがアップレギュレートされる時、段階103において該疾病をPARP阻害剤により治療可能であると同定する。段階104は、該疾病を患っている被検体をPARP阻害剤で治療することを含んで成る。本発明の範囲を限定することなく、試料収集、試料中のPARPの分析、及びPARP阻害剤での該疾病の治療のための別の技術が当業界で知られており、それらは本発明の範囲内である。
【0043】
本発明の一態様では、相同組換え欠損型である腫瘍が、PARP発現レベルを評価することにより同定される。PARPのアップレギュレーションが観察されるならば、そのような腫瘍はPARP阻害剤で治療することができる。別の態様は、相同組換え欠損型である癌を治療する方法であって、PARP発現レベルを評価し、そして過剰発現が観察されるならば、その癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成る方法である。
試料収集、調製及び分離
【0044】
本発明の生物学的試料は、様々な表現型状態、例えば様々な癌及び他の疾病の状態を有する個体から入手することができる。表現型状態の例には、罹患した被検体との比較のために利用できる正常な被検体の表現型も含まれる。或る態様では、疾病を有する被検体を、該疾病を表さない個体から得られた対照試料と比較する。
【0045】
試料は、哺乳動物、好ましくはヒトからの様々な源から収集することができ、例えば体液試料、又は組織試料を包含する。収集した試料は、ヒトの正常及び腫瘍試料、毛髪、血液、他の生体液、細胞、組織、器官又は体液であり、例として非限定的に、脳組織、血液、血清、唾液を含む痰、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳脊髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液、及び射精前液などが挙げられる。適当な組織試料としては、様々な型の腫瘍又は癌組織、又は器官組織、例えば生検で採取したものが挙げられる。
【0046】
試料は、長期的な期間に渡り(例えば約1日1回、1週間に1回、1か月に1回、半年に1回又は年1回)、個体から繰り返し収集することができる。一人の個体から一定期間に渡り多数の試料を得ることは、以前の検出からの結果を確認するため及び/又は例えば疾病の進行、薬剤の治療等の結果としての生物学的パターンにおける変化を同定するために利用できる。
【0047】
試料調製及び分離は、収集した試料及び/又はPARPの分析の種類に依存して、いずれの手順も含むことができる。そのような手順としては、例示目的でのみ、濃縮、希釈、pHの調整、多量のポリペプチド(例えばアルブミン、γグロブリン、及びトランスフェリン等)の除去、保存剤や校正剤の添加、タンパク質阻害剤の添加、変性剤の添加、試料の脱塩、試料タンパク質の濃縮、抽出、及び脂質の精製が挙げられる。
【0048】
試料調製は、非共有結合複合体として別のタンパク質(例えば担体タンパク質)に結合されている分子を単離することも可能である。この方法は、特定の担体タンパク質(例えばアルブミン)に結合したそれらの分子を単離することができ、又は更に一般的な方法を使用でき、例えば酸を使ったタンパク質変性により、全ての担体タンパク質から結合分子を遊離し、次いで担体タンパク質を除去することができる。
【0049】
不要なタンパク質(例えばヒトに豊富な、無益の、又は検出不可能なタンパク質)の試料からの除去は、高親和性試薬、高分子量フィルター、超遠心及び/又は電気透析を使って達成することができる。高親和性試薬としては、豊富なタンパク質に選択的に結合する抗体又は別の試薬(例えばアプタマー)が挙げられる。試料調製としては、イオン交換クロマトグラフィー、金属イオンアフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水性クロマトグラフィー、クロマト分画、吸着クロマトグラフィー、等電点電位泳動、及び関連技術を挙げることができる。分子量フィルターとしては、サイズ及び分子量に基づいて分子を分離する膜が挙げられる。そのようなフィルターは、更に逆浸透、ナノ濾過、限外濾過及び精密濾過を使用してもよい。
【0050】
超遠心は、試料から望ましくないポリペプチドを除去する方法である。超遠心は、光学系を使って粒子の沈降(またはそれの欠如)をモニタリングしながら、約15,000〜60,000 rpmで試料を遠心分離する方法である。電気透析は、電位勾配の影響下で半透膜を通してイオンを或る溶液から別の溶液へと移動させるという方法において半透膜又は電気膜を使用する方法である。電気透析において使用する膜は、正の又は負の電荷を有するイオンを選択的に輸送する能力を有するか、反対の電荷のイオンを拒絶するか、又は、サイズと電荷に基づいてイオン種が半透膜を通って移動できるようにするので、その結果電気透析を電解質の濃縮、除去又は分離に利用可能にする。
【0051】
本発明における分離及び精製は、当業界で既知の任意手法、例えばキャピラリー電気泳動(例えばキャピラリー中又はチップ上での)、又はクロマトグラフィー(例えばキャピラリー中、カラム中またはチップ上での)を包含する。電気泳動は、電界の影響下でイオン性分子を分離するために用いることができる方法である。電気泳動はゲル、キャピラリー中またはチップ上のマイクロチャンネル中で実施することができる。電気泳動に使われるゲルの例としては、デンプン、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アガロース、又はその組み合わせが挙げられる。ゲルは架橋により、界面活性剤もしくは変性剤の付加により、酵素もしくは抗体の固定(アフィニティー電気泳動)又は支持体の固定(ザイモグラフィー)により、及びpH勾配の導入により、改変することができる。電気泳動に用いられるキャピラリーの例としては、エレクトロスプレー法と連動するキャピラリーが挙げられる。
【0052】
キャピラリー電気泳動(CE)は、複雑な疎水性分子と高度に帯電した溶質とを分離するのに好ましい。CE技術はマイクロ(微小)流体チップ上で実施することもできる。使用するキャピラリーと緩衝液の種類に応じて、CEはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリー等速電気泳動(cITP)及びキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)といった分離技術に更に分けることができる。エレクトロスプレーイオン化法にCE技術を組み合わせた態様としては、揮発性溶液、例えば揮発性酸及び/又は塩基を含有する水性混合物と、有機物、例えばアルコールやアセトニトリルの使用が挙げられる。
【0053】
キャピラリー等速電気泳動(cITP)は、分析物が等速でキャピラリーを通過して移動するが、それにもかかわらずそれら各々の移動度により分離されるという技術である。キャピラリーゾーン電気泳動は(CZE)は、遊離溶液CE(FSCE)としても知られ、分子上の電荷により決定される分子種の電気泳動移動度、及び分子が移動中に遭遇する摩擦抵抗(これはしばしば分子のサイズに正比例する)の違いに基づく。キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)は、弱イオンに帯電可能な両性分子を、pH勾配中での電気泳動により分離できるようにする。CECは古典的な高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)とCEとの融合技術である。
【0054】
本発明で使われる分離及び精製技術は、当業界で既知の任意のクロマトグラフィー法を包含する。クロマトグラフィーは、移動相と固相との間の或る分析対象の示差的な吸着と溶出又は分配に基づくことができる。クロマトグラフィーの様々な例としては、非限定的に、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられる。
PARPレベルの同定
【0055】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、ポリ(ADP−リボース)シンターゼ及びポリADP−リボシルトランスフェラーゼとしても知られている。PARPは、核タンパク質に(並びにそれ自身にも)結合でき、ポリ(ADP−リボース)ポリマーの形成を触媒し、それによってそれらのタンパク質の活性を変更する。該酵素は、DNA修復を高める役割を果たし、その上恐らく核のクロマチンを調節する役割も果たす(例えば概説については、D. D'amours他、“Poly(ADP)-ribosylation reactions in the regulation of nuclear functions.” Biochem. J. 342:249-268 (1999) を参照のこと)。
【0056】
PARP-1は、N末端DNA結合領域、自己修飾領域及びC末端触媒領域、並びにPARP-1と相互作用する様々な細胞タンパク質を含む。N末端DNA結合領域は、2個の亜鉛フィンガーモチーフを含む。転写エンハンサー因子1(TEF-1)、レチノイドX受容体α、DNAポリメラーゼα、X線修復交差補完因子−1(XRCC1)及びPARP-1自身が、この領域でPARP-1と相互作用する。自己修飾領域は、タンパク質−タンパク質相互作用モジュールのうちの1つであるBRCTモチーフを含む。このモチーフは、最初BRCA1(乳癌感受性タンパク質1)のC末端において発見されたが、DNA修復、組換え、及び細胞周期チェックポイントの制御に関する様々なタンパク質中に存在する。POU−ホメオ領域含有オクタマー転写因子−1(Oct-1)、Yin Yang (YY)1及びユビキチン結合酵素9(ubc9)は、PARP-1中のこのBRCTモチーフと相互作用できる。
【0057】
PARPファミリーの遺伝子のうち15を超える構成員が哺乳動物ゲノムに存在する。PARPファミリータンパク質及びポリ(ADP)−リボースをADP−リボースへと分解するポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)は、DNA損傷応答や転写調節をはじめとする様々な細胞調節機能に関与し、そして多くの点で発癌及び癌の生物学に関与しうる。
【0058】
幾つかのPARPファミリータンパク質が同定されている。タンキラーゼ(Tankyrase)は、テロメア調節因子1(TRF-1)の相互作用タンパク質として発見され、そしてテロメア調節に関与する。ボールトPARP(VPARP)は、核−細胞質トランスポーターとして働くボールト複合体中の一成分である。PARP-2、PARP-3、及び2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン誘導性PARP(Ti PARP)も既に同定されている。従って、ポリ(ADP−リボース)代謝を様々な細胞調節機能に関連させることができる。
【0059】
この遺伝子ファミリーの一構成員はPARP-1である。PARP-1遺伝子産物は、細胞核において高レベルで発現され、そしてその活性化はDNA損傷に依存する。理論に束縛されることなく、PARP-1は、アミノ末端のDNA結合領域を介して一本鎖又は二本鎖のほつれに結合すると信じられている。この結合がカルボキシ末端の触媒領域を活性化し、そして標的分子上にADP−リボースポリマーの形成をもたらす。PARP-1は自身が、中心に位置する自己修飾領域のため、ポリADP−リボシル化の標的となる。PARP-1のリボシル化は、DNAからのPARP-1分子の解離を引き起こす。結合、リボシル化及び解離の全過程は非常に迅速に起こる。このPARP-1のDNA損傷部位への一時的結合が、DNA修復機構の動員をもたらすか、或いは修復機構の動員に十分な位、長く組換えを抑制する働きをするのかもしれないと示唆されている。
【0060】
PARP反応のためのADPリボースの源は、ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)である。NADは細胞のATP貯蔵庫から細胞内で合成されるので、PARP活性の高レベルの活性化は細胞エネルギー貯蔵庫の枯渇を迅速に導き得る。PARP活性の誘導は、細胞のNAD及びATPプールの枯渇と関連がある細胞死を引き起こし得ることが証明されている。PARP活性は酸化的ストレス又は炎症の間といった多くの事例で誘導される。例えば、虚血組織の再流入の間に反応性一酸化窒素が生じ、その一酸化窒素が、過酸化水素、ペルオキシニトレート及びヒドロキシル基をはじめとする追加の反応性酸素種の生成をもたらす。後者の酸素種は直接DNAを損傷することができ、そしてその結果生じた損傷がPARP活性の活性化を誘導する。しばしば、細胞のエネルギー貯蔵庫が枯渇しそして細胞が死ぬといったほどの、PARP活性の十分な活性化が起こるようである。炎症の間に同様な機構が生じ、内皮細胞と炎症前細胞が一酸化窒素を合成し、その一酸化窒素が周囲細胞に酸化的DNA損傷を引き起こし、続いてPARP活性の活性化を引き起こすと思われる。PARP活性化に起因する細胞死は、虚血性再流入障害又は炎症に由来する組織損傷の程度の主要な寄与因子であると思われる。
【0061】
PARP活性の阻害は、癌の治療に潜在的に有用である。DNアーゼの脱阻害(PARP-1阻害による)は、癌細胞に特異的であるDNA損傷を開始させ、そして癌細胞のみにおいてアポトーシスを誘導することができる。PARP小分子阻害剤は、イオン化放射線により又は或る種のDNA損傷化学療法剤により殺傷することに対して治療腫瘍細胞系を感受性にすることができる。PARP阻害剤による単独療法又は化学療法剤もしくは放射線との組み合わせ療法が効果的治療法である。化学療法剤との組み合わせ療法は、単独では無効である化学療法剤の濃度で腫瘍の退行を誘導することができる。更に、PARP-1変異マウス及びPARP-1変異細胞系は、放射線に対して及び同様なタイプの化学療法剤に対して感受性であるかもしれない。
【0062】
本発明の一観点は、PARP阻害剤のようなPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関し、ここで前記疾病の同定は、被検体のPARPレベルを同定することに基づく。好ましい態様では、PARPが被検体においてアップレギュレートされているならば、被検体をPARP阻害剤で処置する。前立腺癌と乳癌を有する患者におけるPARP-1発現の相対レベルは、正常被検体と比較してアップレギュレートされる。同様に、卵巣癌と子宮内膜癌を有する被検体のPARP-1発現の相対レベルも正常被検体と比較してアップレギュレートされる。様々な癌の中で、各々の癌型は互いに異なる程度へのアップレギュレーションを示す。例えば、異なる乳癌は異なる程度へのアップレギュレーションを示す。同様に、異なる卵巣癌は異なる程度へのアップレギュレーションを示す。それは、PARP-1アップレギュレーションが、PARP-1阻害剤により治療可能なPARP-1媒介疾病を同定することに役立つだけでなく、被検体のPARP-1のアップレギュレーションの程度に依存してPARP-1阻害剤による治療の効果を推定/測定することにも役立つ。PARP-1遺伝子発現の評価は、PARP-1阻害剤に対する腫瘍感受性の指標であることができる。それはアップレギュレートされたPARP-1のレベルに依存して被検体の投薬方式を個別化することにも役立つ。
【0063】
或る態様では、患者からの試料中のPARPレベルを、予め決められた標準試料に対して比較する。患者からの試料は、典型的には罹患組織、例えば癌細胞又は組織からのものである。標準試料は同一患者又は異なる患者からのものであることができる。標準試料は、典型的には正常な非罹患試料である。しかしながら、或る態様では、例えば疾病の病期決定又は治療の効果の評価には、標準試料が罹患組織からのものである。標準試料は数人の異なる被検体からの試料の組み合わせであることができる。或る態様では、患者からのPARPレベルが予め決められたレベルと比較される。この予め決められたレベルは、典型的には正常試料から得られる。本明細書中に記載されるような「予め決められたPARPレベル」とは、例としてのみであるが、治療用に選択することができる患者を評価するため、PARP阻害剤治療に対する応答を評価するため、PARP阻害剤と第二の治療剤治療の組み合わせに対する応答を評価するため、そして/又は癌、炎症、疼痛及び/又は関連症状について患者を診断するために用いられるPARPレベルのことである。予め決められたPARPレベルは全ての患者に等しく適用可能な単一の数であるか、又は予め決められたPARPレベルは患者の特定の部分集合に従って異なることができる。例えば、男性は女性よりも異なる予め決められたPARPレベルを有する可能性があり;非喫煙者は喫煙者よりも異なる予め決められたPARPレベルを有する可能性がある。患者の年齢、体重及び身長は個体の予め決められたPARPレベルに影響を及ぼし得る。更に、予め決められたPARPレベルは各患者に個別に決定されたレベルであることができる。予め決められたPARPレベルは、任意の適当な標準であることができる。例えば、予め決められたPARPレベルは、同一者又は患者選択が評価されることになっている他の異なる者より得ることができる。そのような方法では、患者の選択の進行を一定時間に渡りモニタリングすることができる。加えて、標準は、別のヒト又は複数のヒト、例えばヒトの選択群の評価から得ることもできる。そういった方法では、その選択が評価されることになっているヒトの選択の範囲を、別のヒト、例えば着目のヒトと同様な状況にある別のヒト、例えば類似の又は同一の状態を患っているヒトと比較することができる。
【0064】
本発明の或る態様では、予め決められたレベルからのPARPの変化が約0.5倍、約1.0倍、約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.0倍、約4.5倍、又は約5.0倍である。或る態様では、変化の倍数が約1未満、約5未満、約10未満、約20未満、約30未満、約40未満又は約50未満である。別の態様では、予め決められたレベルに比較したPARPレベルの変化が約1以上、約5以上、約10以上、約20以上、約30以上、約40以上、又は約50以上である。予め決められたレベルからの好ましいホールドチェンジは、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、及び約3.0である。
【0065】
下記に示す第I〜XXIII表は、癌、代謝性疾患、内分泌系及び神経内分泌系障害、心血管系疾病(CVS)、中枢神経系疾患(CNS)、男性生殖系の疾患、女性生殖系の疾患、呼吸系、尿路の障害、炎症、血液リンパ系の障害及び消化系の障害を患っている被検体におけるPARP-1遺伝子発現データを要約する、PARP経路としては、DNA損傷に応答したアポトーシスシグナル伝達、アポトーシスにおけるカスパーゼカスケード、D4-DGIシグナル伝達経路、FASシグナル伝達経路(CD95)、HIV-1 Nef:Fas及びTNFの陰性エフェクター、アポトーシスと細胞生存におけるAIFの正反対の役割、並びにTNFR1シグナル伝達経路が挙げられる。
【0066】
全ての表中、Cは対照であり、Eは実験試料であり、SDは標準偏差であり、そしてFCは発現レベルのフォールドチェンジである。第II表中の発現強度スケールは0、187.0、374.0、561.0及び748である。第IV表中の発現強度スケールは0、206.0、412.0、617.0及び823である。第VI表と第VII表中の発現強度スケールは0、97.0、194.0、291.0及び388である。第XV表中の発現強度スケールは0、139.0、278.0、417.0及び556である。第XVII表中の発現強度スケールは0、250.0、500.0、750.0及び999である。第XXII表中の発現強度スケールは0、132.0、264.0、397.0及び528である。第XXIII表中の発現強度スケールは0、180.0、360.0及び541.0である。
【0067】
FCの正の値はアップレギュレートされたPARP-1を表し、そしてFCの負の値はダウンレギュレートされたPARP-1を表す。従って、本発明は、PARP-1により治療可能であるアップレギュレートされたPARP-1を有する様々な疾病を同定し、そして本発明はまた、PARP-1活性化剤又は作用剤で治療可能であるダウンレギュレートされたPARP-1を有する様々な疾病も同定する。第I表は、アップレギュレートされたPARP-1を有する様々な癌、例えば混合癌、ウィルムス腫瘍、重篤な腺癌等を示す。表Iはまた、ダウンレギュレートされたPARP-1を有する癌、例えば橋本甲状腺炎、良性結節過形成、腺扁平上皮癌、島細胞腫、胃の転移性腺癌等を示す。従って、本発明はPARP-1阻害剤により治療可能であるアップレギュレートされたPARP-1を有する様々な癌を同定し、そして本発明はPARP1活性化剤又は作用剤により治療可能であるダウンレギュレートされたPARP-1を有する様々な癌も同定する。
【0068】
第III表は、様々な乳癌についてのPARP-1のアップレギュレーションを示す、導管及び小葉混合型の浸潤性癌がダウンレギュレートされたPARP-1を示す。第VIII表は、治療中の被検体と治療中でない被検体についてのPARP-1レベルを示す。第X表は、アップレギュレートされたPARP-1を有する様々な呼吸系疾患を示す、原発型の腺扁平上皮癌がダウンレギュレートされたPARP-1を示す。第XII表は、対照被検体と炎症を患っている被検体におけるPARP-1発現を示し、そして罹患した患者におけるアップレギュレートされた及びダウンレギュレートされたPARP-1を表す。第XVI表は、対照被検体とCNS秒を患っている被検体におけるPARP-1発現を示し、罹患した被検体におけるアップレギュレート及びダウンレギュレートされたPARP-1を表す。第XIX表は、対照被検体と血液リンパ系障害を有する患者におけるPARP-1発現を示し、そして罹患した被検体におけるアップレギュレート及びダウンレギュレートされたPARP-1を表す。第XXI表は、対照被検体と内分泌及び神経内分泌系の様々な障害を患っている被検体におけるPARP-1発現を示し、そして罹患した被検体におけるアップレギュレートされた及びダウンレギュレートされたPARP-1を示す。
【0069】
本発明は、癌患者のPARPレベルを、癌又は抗腫瘍性治療の過程の間、及び好ましくは更に治療の開始前と開始時点においても、モニタリングすることができるというモニタリング法を提供する。癌を持たない正常個体のPARPレベルに比較した癌患者のPARPレベルの減少又は増加の測定が、患者の疾病進行及び/又は克服に関連した次の評価を可能にする:(i) より重篤な段階又は等級の癌;(ii) 疾病進行へのより短縮した時間;及び/又は(iii) 癌治療に対する患者の陽性応答、即ち有効な応答の欠如。例えば、正常レベルに比較した、並びにその患者自身の事前に決められたレベルに比較した、患者のPARPレベルの一定期間に渡るモニタリングに基づいて、治療計画を変更すべきかどうか、即ち、より集中的にするか又はあまり集中的でなくすべきかどうか;患者が彼もしくは彼女の治療に良く応答するかどうか;そして/又は病気状態、例えば癌の進行状態もしくは相、又は癌もしくは腫瘍性疾患の寛解、減少又は退行を決定するため;に関して決定を行うことができる。本発明は、PARP診断法及び該診断法の使用方法も包含する。
【0070】
患者のPARPレベルの分析は、医者が最良の治療法を選択できるようにするため、又はアップレギュレートされた又はダウンレギュレートされたPARPレベルに基づいて、より集中的な治療法及び治療計画を使用できるようにするため、特に有効で且つ有益である。より集中的治療又は組み合わせ治療及び計画は、あまり良くない患者の予後や全生存期間を打ち破るのに役立ち得る。この情報を携えて、医療実施者は、PARP阻害剤での治療、及び/又はより集中的な治療といった特定の治療タイプを提供することを選択できる。
【0071】
患者のPARPレベルを一定期間(数日、数週、数か月間であることができ、或る場合には数年間であるか、又は様々なその合間)に渡りモニタリングする場合、患者の体液試料、例えば血清又は血漿を、医師や臨床医のような医療実施者により定められた通りに、一定間隔で採集することができ、PARPレベルを測定し、そしてそれを治療過程もしくは病気過程に渡り正常個体のレベルと比較することができる。例えば、患者試料を採取し、毎月、2カ月毎、又は1,2もしくは3ヵ月間隔を組み合わせて、本発明に従ってモニタリングすることができる。その上、或る期間に渡って得られた患者のPARPレベルを、モニタリング期間の間、互いに又は正常な対照のPARP値と便利に比較することができ、それによって、長期PARPモニタリングのための内部対照又は個人的対照として、患者自身のPARP値を提供することができる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
【表11】
【0083】
【表12】
【0084】
【表13】
【0085】
【表14】
【0086】
【表15】
【0087】
【表16】
【0088】
【表17】
【0089】
【表18】
【0090】
【表19】
【0091】
【表20】
【0092】
【表21】
【0093】
【表22】
【0094】
【表23】
【0095】
【表24】
【0096】
【表25】
【0097】
【表26】
【0098】
【表27】
【0099】
【表28】
【0100】
【表29】
【0101】
【表30】
【0102】
【表31】
【0103】
【表32】
【0104】
【表33】
【0105】
【表34】
【0106】
【表35】
【0107】
【表36】
【0108】
【表37】
【0109】
【表38】
【0110】
【表39】
【0111】
【表40】
【0112】
【表41】
【0113】
【表42】
【0114】
【表43】
【0115】
【表44】
【0116】
【表45】
【0117】
【表46】
【0118】
【表47】
【0119】
【表48】
【0120】
【表49】
【0121】
【表50】
【0122】
【表51】
【0123】
【表52】
【0124】
【表53】
【0125】
【表54】
【0126】
【表55】
【0127】
【表56】
【0128】
【表57】
【0129】
【表58】
【0130】
【表59】
【0131】
【表60】
【0132】
【表61】
【0133】
【表62】
【0134】
【表63】
【0135】
【表64】
【0136】
【表65】
【0137】
【表66】
PARPの分析のための技術
【0138】
PARPの分析としては、PARPレベルのDNAもしくはRNA分析をはじめとするPARP遺伝子発現の分析及び/又はモノ−及びポリ−ADPリボシル化レベルを含むPARPの活性の分析を挙げることができる。本発明の範囲を限定することなく、当業界で既知である多数の技術をPARPの分析に使用することができ、それらの技術は全て本発明の範囲内である。そのような検出技術の幾つかの例を下記に与えるが、それらの技術は決して本発明に使用できる様々な検出技術に対する限定ではない。
遺伝子発現プロファイリング:
【0139】
遺伝子発現プロファイリング方法には、ポリヌクレオチド及びポリリボヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づいた方法、ポリヌクレオチド及びポリリボヌクレオチドの配列決定に基づいた方法、並びにプロテオミクスに基づいた方法が挙げられる。試料中のmRNA発現の定量に当業界で最も汎用される既知方法としては、ノーザンブロット法及びin situハイブリダイゼーション法(Parker & Barnes, Methods in Molecular Biology 106:247-283 (1999));RNアーゼ保護アッセイ(Hod, Biotechniques 13:852-854 (1992));並びにPCRに基づいた方法、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weis他、Trends in Genetics 8:263-264 (1992))が挙げられる。或いは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク質二本鎖といった特別な二本鎖を認識できる抗体を使用することができる。配列決定に基づいた遺伝子発現分析法の代表例としては、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、及び超並列特徴的配列シークエンシング(MPSS)による遺伝子発現分析、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、クロマチン免疫沈澱法(ChIP)、単一ヌクレオチド多形(SNP)及びSNPアレイ、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、タンパク質結合アレイ及びDNAマイクロアレイ(遺伝子又はゲノムチップ、DNAチップ、又は遺伝子アレイとしても一般に知られる)が挙げられる。
【0140】
逆転写酵素PCR(RT-PCR):
最も高感度で且つ最も柔軟性のある定量的PCRベースの遺伝子発現プロファイリング法はRT-PCRであり、この方法は、薬剤処置をした又は未処置の、正常及び腫瘍組織中の、異なる試料集団中のmRNAレベルを比較するため、遺伝子発現のパターンを特徴づけるため、密接に関連したmRNA間を区別するため、及びRNA構造を分析するために用いることができる。
【0141】
第一段階は標的試料からのmRNAの単離である。例えば、出発材料は、典型的にはヒト腫瘍又は腫瘍細胞系、及び対応する正常組織又は細胞系からそれぞれ単離された全RNAであることができる。RNAは様々な正常及び罹患した細胞及び組織、例えば腫瘍、例えば乳、肺癌、結腸直腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮等、又は腫瘍細胞系から単離することができる。もしmRNAの起源が原発性腫瘍であるならば、mRNAは例えば凍結又は保存した固定組織、例えばパラフィン包埋し固定した(例えばホルマリン固定した)組織試料から抽出できる。mRNA抽出の一般法は当業界で周知であり、Ausubel他、Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley & Sons (1997)をはじめとする分子生物学の標準参考書の中に開示されている。
【0142】
特に、RNAの単離は、製造業者の教示に従って、製造業者からの精製キット、緩衝液セット及びプロテアーゼを使って実施できる。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心により単離することができる。RNAがPCRの鋳型として働くことができない場合、RT-PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第一段階は、該RNAをcDNAに逆転写し、続いてPCR反応によりそれを指数的に増幅させることである。最も汎用される2つの逆転写酵素は、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)とモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写段階は、典型的には発現プロファイリングの目標及び状況に依存して、特定プライマー、ランダムヘキサマー又はオリゴdTプライマーを使って開始される。次いで誘導されたcDNAをその後のPCR反応の鋳型として使用することができる。
【0143】
誤差及び試料−試料間変動の影響を最小にするため、通常RT-PCRは内部標準を使って実施される。理想的な内部標準は、異なる組織間で一定レベルにて発現され、そして実験処置により影響を受けない。遺伝子発現のパターンを標準化するのに最も汎用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びβ−アクチン遺伝子のmRNAである。
【0144】
より最近のRT-PCR技術の変形は、二元標識された蛍光発生プローブを通してPCR生成物蓄積を測定する、リアルタイム定量的PCRである。リアルタイムPCRは、各標的配列に対する内部競合剤を標準化に使用する定量的競合PCRとも、試料内に含まれる標準遺伝子又はRT-PCR用のハウスキーピング遺伝子を使った定量的比較PCRとも互換性である。
【0145】
蛍光顕微鏡検査:
本発明の或る態様は、PARPの分析のための蛍光顕微鏡検査を包含する。蛍光顕微鏡検査は、観察される構造物の分子組成を、抗体のような高い化学的特異性の蛍光標識プローブの使用を通して同定できるようにする。それは蛍光団(フルオロフォア)をタンパク質に直接接合させ、そしてこれを細胞中に戻し入れることにより実施できる。蛍光類似体は天然タンパク質のように振る舞い、従ってこのタンパク質の細胞内の分布及び挙動を明らかにすることができる。NMR、赤外分光法、円二色法及び他の技術と一緒に、タンパク質固有の蛍光減衰及びそれに伴う蛍光異方性の観察、衝突消光及び共鳴エネルギー移動が、タンパク質検出のための技術である。自然蛍光タンパク質を蛍光プローブとして使用することができる。オワンクラゲAquorea victoriaは、緑色蛍光タンパク質(GFP)として知られる自然蛍光タンパク質を生産する。標的タンパク質へのそれらの蛍光プローブの融合は、蛍光顕微鏡検査による可視化とフローサイトメトリーによる定量を可能にする。
【0146】
例示目的にのみ、ある種の該プローブは、標識、例えばフルオレセイン及びその誘導体、カルボキシフルオレセイン、ローダミン及びそれらの誘導体、アト標識、赤色蛍光体及び橙色蛍光体:cy3/cy5、長寿命を有するランタニド錯体、800 nmまでの長波長標識、DYシアニン標識、及びフィコビリタンパク質である。例示目的でのみ、該プローブは接合体、例えばイソチオシアネート接合体、ストレプトアビジン接合体、及びビオチン接合体である。例示目的のみ、該プローブは酵素基質、例えば蛍光発生及び色素生成基質である。例示目的でのみ、該プローブは蛍光クロム、例えばFITC(緑色蛍光、励起/発光=506/529 nm)、ローダミンB(橙色蛍光、励起/発光=560/584 nm)、及びナイルブルーA(赤色蛍光、励起/発光=636/686 nm)である。蛍光ナノ粒子は様々なタイプのイムノアッセイに利用できる。蛍光ナノ粒子は異なる材料、例えばポリアクリロニトリル及びポリスチレン等に基づいている。蛍光分子ローターは、分子の回転が束縛されると蛍光になるミクロ環境制限のセンサーである。分子の束縛の例としては、色素の増加(凝集)、抗体への結合、又はアクチンの重合が挙げられる。IEF(等電点電気泳動)は、両性物質、主としてタンパク質を分離するための分析手段である。蛍光IEFマーカーを用いるIEF−ゲル電気泳動の利点は、勾配の形成を直接観察できることである。蛍光IEF−マーカーは280nm(20℃)でのUV吸収により検出することも可能である。
【0147】
ペプチドライブラリーは、固体支持体上でそして着色レセプターを使って合成することができ、次いで着色した固体支持体を1つずつ選択することができる。レセプターが何ら色を示さない場合、それらの結合抗体を染色することができる。該方法は、タンパク質レセプターについて使用できるだけでなく、合成した人工レセプターの結合性リガンドをスクリーニングする際と新たな金属結合性リガンドをスクリーニングする際にも同様に使用できる。HTS及びFACS(蛍光活性化細胞選別器)の自動化方法も使用できる。FACS機器は、最初にキャピラリー管を通して細胞を流し、次いでそれらの蛍光強度を検出することにより細胞を分類する。
【0148】
イムノアッセイ:
本発明の或る態様は、PARPの分析のためのイムノアッセイに関する。電気泳動的に分離したタンパク質のウエスタンブロットのような免疫ブロット法では、単一のタンパク質がそれの抗体により同定できる。イムノアッセイは、分析物(analyte)が抗体分子の限定プールを目当てに標識抗原と競争するという競合結合イムノアッセイ(例えばラジオイムノアッセイ、EMIT)であることができる。イムノアッセイは、抗体が過剰に存在しそして標識されている非競合型であることもできる。分析物の抗原複合体が増加すると、標識抗体−抗原複合体の量も増加しうる(例えばELISA)。実験動物中への抗原注射により生産されるならば、抗体はポリクローナルであり、細胞融合と細胞培養技術により生産されるならば、抗体はモノクローナルである。イムノアッセイでは、抗体は分析物である抗原のための特異的試薬として働くことができる。
【0149】
本発明の範囲及び内容を制限することなく、イムノアッセイの種類の非限定例としては、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(エンザイムリンクドイムノソルベントアッセイ)のようなエンザイムイムノアッセイ、EMIT(酵素増幅イムノアッセイ技術)、微粒子エンザイムイムノアッセイ(MEIA)、LIA(ルミネセントイムノアッセイ)、及びFIA(蛍光イムノアッセイ)が挙げられる。それらの技術は、検体中の生物学的物質を検出するために利用できる。一次又は二次抗体のいずれかとして使用される抗体は、放射性同位体(例えば125I)、蛍光色素(例えばFITC)、又は蛍光発生もしくは冷光発生反応を触媒し得る酵素(例えばHRP又はAP)で標識することができる。
【0150】
ビオチン、別名ビタミンHは、アビジンとストレプトアビジンに対する特異的親和性を有する補酵素である。この相互作用は、ビオチン化ペプチドを定性及び定量試験のための様々なバイオテクノロジーアッセイにおいて有用なツールにする。立体障害を最少にすることによりビオチン/ストレプトアビジン認識を改善するために、ビオチンとペプチド自体との距離を大きくすることが必要となり得る。これは、ビオチンとペプチドの間にスペーサー分子(例えば6−アミノヘキサン酸)を結合することにより達成できる。
【0151】
ビオチン化タンパク質についてのビオチン定量アッセイは、タンパク質上のビオチン標識の数を正確に測定する感受性蛍光アッセイを提供する。ビオチン化ペプチドは、少なくとも1つの結合相手をストレプトアビジンが被覆されたビーズ、膜、スライドガラス又はマイクロタイタープレート上に固定化することを必要とする、様々な生体医学スクリーニング系に広く利用されている。該アッセイは、試薬のビオチン結合部位からの消光色素による標識リガンドの置き換えに基づいている。立体的に制限されていて試薬に近づきにくい多重標識タンパク質中のビオチン基を暴露するために、タンパク質を消化するプロテアーゼで該タンパク質を処理することができる。
【0152】
EMITは、通常の分離段階を回避する競合結合イムノアッセイである。タンパク質が酵素で標識されており、そして酵素−タンパク質−抗体複合体が酵素的に不活性であるイムノアッセイ型は、未標識タンパク質の定量を可能にする。本発明の或る態様は、PARPを分析するためのELISAに関する。ELISAは、酵素反応と組み合わせた固定支持体上に取り付けた選択的抗体に基づいており、少量のタンパク質を検出可能にする系を生じる。それはエンザイムイムノアッセイ又はEIAとしても知られる。タンパク質がそれに対して作製された抗体、即ち、タンパク質がその抗原となるもの、により検出される。
【0153】
該試験は、抗体を固体表面、例えば試験管の内壁に固定し、そして酵素に連結した同一抗体を調製する必要がある場合がある。酵素は無色の基質から着色生成物を生成するもの(例えばβ−ガラクトシダーゼ)であることができる。試験は、例えば、アッセイすることになっている抗原溶液(例えばタンパク質)を試験管に充填することにより実施してもよい。存在する任意の抗原分子が、固定化された抗体分子に結合するだろう。抗体−酵素接合体を反応混合物に添加してもよい。該接合体の抗体部分が、予め結合されている任意抗原分子に結合し、抗体−抗原−抗体「サンドイッチ」を作製する。未結合の接合体を洗浄除去した後、基質溶液を添加する。一定時間の後、反応を停止させ(例えば1N NaOHの添加により)、そして形成した着色生成物の濃度を分光光度計中で測定する。色の強度は、結合した抗原の濃度に比例する。
【0154】
ELISAは抗体の濃度を測定するように改変することもでき、その場合には、ウエルを適当な抗原により被覆する。抗体を含有する溶液(例えば血清)を添加する。固定化抗原に結合するのに十分な時間の後、試験しようとする抗体に対する抗体から成る、酵素接合抗免疫グロブリンを添加することができる。未反応の四役を洗浄除去した後、基質を添加する。発生した色の強度が、結合した酵素標識抗体の量(すなわち試験しようとする抗体の濃度)に比例する。
【0155】
本発明の或る態様は、PARPを分析するためのラジオイムノアッセイを包含する。少量の化合物の生体内(in vivo)代謝、分布及び結合を調べるのに放射性同位体を利用できる。体内の1H,12C,31P,32S及び127Iの放射性同位体、例えば3H,14C,32P,35S及び125Iが用いられる。96ウエルプレート中でのレセプター固定法では、抗体又は化学的方法を使ってレセプターを各ウエルに固定し、そして放射性標識リガンドを各ウエルに添加して結合を誘導する。未結合のリガンドを洗い流し、次いで結合したリガンドの放射能又は洗浄されたリガンドの放射能の定量分析により、標準を測定することができる。次いで、スクリーニング標的化合物の添加により、レセプターとの競合結合反応を誘発させる。化合物が標準の放射性リガンドよりもレセプターに対して高い親和性を示すならば、放射性リガンドの大部分がレセプターに結合せず、溶液中に残っているのだろう。従って、結合した放射性リガンド(又は洗浄されたリガンド)の量を分析することにより、該レセプターに対する試験化合物の親和性を示すことができる。
【0156】
メンブランフィルター法は、レセプターを96ウエルプレートに固定できない場合、又はリガンド結合を液相にて実施しなければならない場合に必要である。言い換えれば、溶液中でのリガンド−レセプター結合反応の後、反応溶液をニトロセルロース濾紙を通して濾過すると、リガンドを含む小分子がそれを通過し、タンパク質レセプターのみが濾紙上に残るであろう。レセプターに強力に結合したリガンドのみが濾紙上に残るので、標準放射性リガンドの定量分析により、添加した化合物の相対親和性を同定することができる。
【0157】
本発明の或る態様は、PARPの分析のための蛍光イムノアッセイを包含する。蛍光免疫学的方法は、高度に特異的なレセプター部位への標識リガンドと未標識のものとの競合結合に基づいている。蛍光技術は、分析物の濃度変化に伴う蛍光寿命の変化に基づいたイムノアッセイに利用される。この技術は、エオシン(受容体)へのエネルギー移動により蛍光が消光されるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(供与体)のような短寿命の色素の場合に上手くいく。多数の光冷光化合物、例えば、シアニン、オキサジン、チアジン、ポルフィリン、フタロシアニン、赤外蛍光生成多核芳香族炭化水素、フィコビリタンパク質、スクアレン及び有機金属錯体、炭化水素並びにアゾ色素を用いることができる。
【0158】
蛍光免疫学的方法は、例えば、不均一又は均一であることができる。不均一イムノアッセイは、遊離型の標識分析物から結合型分析物の物理的分離を含んで成る。分析物又は抗体は、固体表面に取り付けてもよい。該技術は競合的(高選択性のため)又は非競合的(高感受性のため)であることができる。検出は直接(使用するのが1種の抗体のみ)又は間接(第二種の抗体を使用する)であることができる。均一イムノアッセイ技術は全く物理的分離を使用しない。二重抗体蛍光標識抗原粒子は、抗原と蛍光体の両方に対して向けられた抗体との平衡反応に参加する。標識抗原と未標識抗原が、限られた数の抗−抗原抗体を目当てに競争する。
【0159】
蛍光イムノアッセイ法の例としては、単純蛍光標識法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、時間分解蛍光(TRF)、及び走査型プローブ顕微鏡検査(SPM)が挙げられる。単純蛍光標識法は、レセプター−リガンド結合、瞬間蛍光の使用による酵素活性、並びに様々な生体内の生理学的変化、例えばpH、イオン濃度及び電圧の変化の蛍光インジケーターとして、使用することができる。TRFは、別の蛍光分子の発光が終わった後でランタニド系列の蛍光を選択的に測定する方法である。TRFはFRETと併用でき、そしてランタニド系列は供与体にも受容体にもなることができる。走査型プローブ顕微鏡検査では、例えば捕捉段階で、少なくとも1つのモノクローナル抗体が固相に付着され、そして走査型プローブ顕微鏡検査は、固相の表面上に存在する抗原/抗体複合体を検出するのに用いられる。走査型トンネル式顕微鏡検査法の使用は、多くのイムノアッセイ系で抗原/抗体複合体を検出するのに一般に用いられる標識を使用する必要を省く。
【0160】
タンパク質同定法:
タンパク質同定法の単なる例として、エドマン分解からの低処理性シークエンシング法、質量分析法、ペプチド質量フィンガープリント法、デノボ配列決定、及び抗体に基づくアッセイ法が挙げられる。タンパク定量アッセイとしては、蛍光色素ゲル染色、標識又は化学修飾法〔即ち、同位体コード親和性標識(ICATS)、組み合わせ分画診断クロマトグラフィー(COFRADIC)〕が挙げられる。精製タンパク質は三次元結晶構造の測定にも利用でき、その三次元結晶構造は分子内相互作用をモデル化するのに使用できる。三次元結晶構造を決定する一般法としては、X線結晶分析法及びNMR分光法が挙げられる。タンパク質の三次元構造を表す特徴は、質量分析法を用いて探査することができる。空間的に近くにあるが配列中では離れているタンパク質の部分を、化学的架橋結合を用いて連結することにより、全体構造についての情報を推論することができる。溶媒からの重水素によるアミドプロトンの交換を追跡することにより、該タンパク質の様々な部分の溶媒露出度を探査することが可能である。
【0161】
一態様では、蛍光活性化細胞選別法(FACS)がPARP発現細胞を同定するのに用いられる。FACSはフローサイトメトリーの特殊な型である。それは2以上の容器に生物学的細胞の異種混合物を選別する方法であって、各細胞の特異的な光散乱と蛍光特性に基づいて、一度に一細胞を選別する方法である。それは個々の細胞からの蛍光シグナルの定量的記録と、着目の特定細胞の物理的分別を提供する。別の態様では、PARP発現を評価するのにマイクロ流体系装置が用いられる。
【0162】
患者試料からのPARPを特徴づけるのに質量分析法も利用できる。全タンパク質のイオン化方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)の2つである。第一の場合、完全タンパク質が上述の2つの技術のいずれかによりイオン化され、次いで質量分析計に導入される。第二の場合、トリプシンやペプシンといった剤を使って、タンパク質が小ペプチドに酵素消化される。別のタンパク質分解消化剤も使用される。次いでペプチド生成物の収集物を質量分析計に導入する。これはしばしばタンパク質分析の「ボトムアップ」アプローチと呼ばれる。
【0163】
総タンパク質質量分析は、飛行時間型(TOF)MSか、フーリエ変換イオンサイクロ(登録商標)トロン共鳴(FT-ICT)のいずれかを使って実施される。ペプチド質量分析に使われる装置は、四重極イオントラップである。多重段階四重極飛行時間及びMALDI飛行時間装置は本出願での使用を見いだすだろう。
【0164】
2つの方法が、タンパク質を又は酵素消化からのそのペプチド生成物を分画するのに用いられる。第一の方法は、完全タンパク質を分画し、二次元ゲル電気泳動と呼ばれるものである。第二の方法は、高性能液体クロマトグラフィーであり、酵素消化後のペプチドを分画するのに用いられる。或る状況では、それらの技術の両方を組み合わせることが必要かもしれない。
【0165】
タンパク質を同定するのに使用できる2つの質量分析法がある。ペプチド質量は、既知タンパク質のリストの消化から生じる推定質量のデータベース検索への入力としてタンパク質分解ペプチドの質量を用いる。もし参照リスト中のタンパク質配列が、実験値と一致する有意な数の推定質量を与えるならば、このタンパク質が元の試料中に存在していたという幾らかの証拠となる。
【0166】
タンデムMSもタンパク質同定法の1つである。衝突誘起解離は、特定のペプチドイオンから断片セットを生じさせるのに主流な用途で用いられる。断片化法は主に、ペプチド結合を途中で切断する開裂生成物をもたらす。
【0167】
多数の様々なアルゴリズムアプローチが、タンデム質量分析法(MS/MS)、及びペプチドデノボ配列決定及び配列標識検索法から、ペプチド及びタンパク質を同定するために記載されている。データ分析特性の包括的範囲を組み合わせる1つのオプションは、PEAKSである。別の現存する質量分析法ソフトウェアとしては次のものが挙げられる:ペプチド断片フィンガープリントSEQUEST、Mascot、OMSSA及びX!Tandem。
【0168】
タンパク質は質量分析法により定量することもできる。典型的には、炭素(C13)又は窒素(N15)の安定した(例えば非放射性の)重い方の同位体を1つの試料に組み込み、そして他方の試料を対応する軽い同位体(例えばC12及びN14)で標識する。2つの試料を分析前に混合する。異なる試料から誘導されたペプチドは、それらの質量の差によって識別することができる。それらのピーク強度の比は、それらペプチド(及びタンパク質)の相対的存在量に相当する。同位体標識法は、SILAC(細胞培養物中のアミノ酸による安定同位体標識)、トリプシン触媒О18標識、ICAT(同位体コード化親和性標識)、ITRAQ(相対及び絶対的定量用の同位体標識)である。「半定量的」質量分析法は、試料を標識することなしに実施できる。典型的には、これはMALDI分析(直線モードでの)で行われる。この場合個々の分子(典型的にはタンパク質)のピーク強度又はピーク面積は、試料中のタンパク質の量に相関する。しかしながら、個々のシグナルはタンパク質の一次構造、試料の複雑さ、及び機器の設定に依存する。
【0169】
N末端配列決定は、既知タンパク質の同定に役立ち、組換えタンパク質の正体及び忠実性(解読枠、翻訳開始点など)を確かめ、NMR及び結晶学データの解釈を助け、タンパク質間の同一性度を証明し、又は抗体作製のための合成ペプチドのデザインにデータを提供する。N−末端配列決定は、エドマン分解化学を利用し、タンパク質のN末端からアミノ酸残基を順番に除去し、そしてそれらを逆相HPLCにより同定する方法である。感受性は数100フェントモルのレベルであることができ、しばしば数10ピコモルの出発物質から長い配列解読(20〜40残基)を得ることができる。純粋なタンパク質(>90%)は容易に解釈されるデータを生じるが、不十分に精製されたタンパク質混合物も有用なデータ、厳密なデータ解釈への題材を提供する場合がある。N末端修飾(特にアセチル化された)タンパク質は、遊離の第一アミノ基の不在がエドマン化学を妨害するので、直接には配列決定できない。しかしながら、保護されたタンパク質の制限タンパク質分解(例えば臭化シアンを使用)は、機器の各サイクルでアミノ酸混合物を生成できるようにし、有意な配列情報を解釈するためにそれをデータベース分析にかけることができる。C末端配列決定は、タンパク質の構造と活性に影響を及ぼす翻訳後修飾である。様々な病的状態が、正常に機能しないタンパク質プロセシングに関連づけられるので、C末端配列決定はタンパク質構造及びプロセシング機構の調査のための追加の手段を提供する。
PARP阻害剤で治療可能な疾病の同定
【0170】
本発明の或る態様は、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することであって、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、前記PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定はPARPレベルに基づいて行われる。PARPレベルの同定は、RNAの分析、PARPレベルの分析、及び/又はPARP活性の分析を含み得る。疾病の場合にPARPレベルがアップレギュレートされる時、該疾病をPARP阻害剤で治療することができる。或る態様では、PARPレベルが血管形成関連疾患を同定するために利用される。
【0171】
一態様では、PARPアップレギュレーションは、BRCA欠損癌の一具現化として用いられ、そしてPARPアップレギュレーションは、PARPモジュレーターにより治療可能なBRCA媒介癌を同定するためにも用いられる。別の態様では、PARPレベルの同定は、相同組換え(HR)による二本鎖切断のDNA修復の調節の変化のマーカーとして使用され、該RARPレベルはPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うために利用される。PARPレベルの同定は、参照試料との1又は複数の比較を伴うことがある。参照試料は、疾病を患っているかいないかいずれかである(例えば正常被検体)又は患者である、同一被検体から又は異なる被検体から得ることができる。参照試料は一人の被検体又は複数の被検体から得ることができ、或いは合成的に調製される。同定は、同定データとデータベースとの比較も含み得る。本発明の一態様は、疾病を患っている被検体のPARPレベルを同定し、そしてそれを正常被検体のPARPレベルと相関させることに関する。或る態様では、PARPレベルを相関させる段階は、ソフトウェアアルゴリズムにより実施される。好ましくは、生じたデータをコンピューター読み取り可能形式に変換し;そして、罹患患者のPARPレベルと正常被検体のPARPレベルを表すシグナルを検出するため、ユーザーが入力したパラメーターに従って、該データを分類するアルゴリズムを実行する。
【0172】
PARPレベルの同定及び分析は、数多くの治療及び診断用途を有する。臨床用途としては、例えば、疾病の検出、病的状態を識別し予後の情報を与えること、PARP阻害剤での処置といった治療法の選択、及び/又は治療応答の推定、病期診断、疾病過程の同定、治療効果の推定、患者軌跡のモニタリング(例えば病気の開始前)、拒絶応答の推測、治療に伴う効果と毒性のモニタリング、及び再発の検出が挙げられる。
【0173】
本発明に開示されるような、PARPレベルの同定及びその後のPARP阻害剤により治療可能な被検体の疾病の同定は、治療薬の医薬開発プロセスにおいて実施可能又は助成するのに使用できる。PARPレベルの同定は、臨床試験で処置を受けている患者の病態を指摘することができ、そして治療中の該病態の変化を示すことができる。PARPレベルの同定は、PARP阻害剤での治療の効果を示すことができ、そして様々な療法に対するそれらの応答に従って、患者を階層化するのに利用できる。
【0174】
本明細書に開示される方法は、患者の病態を同定するために使用できる。一態様では、該方法は該疾病の初期段階を検出するために用いられる。別の態様では、該方法は同定された疾病を等級付けするために用いられる。或る態様では、患者、医療提供者(例えば医師や看護婦)又は医療管理者が、診断、予後、及び/又は治療オプションの選択、例えばPARP阻害剤治療、を行うのに被検体のPARPレベルを使用することができる。
【0175】
別の態様では、本明細書に記載の方法は、特定の治療(例えばPARP阻害剤での治療)に対する任意個体についての応答の確率を推定し、治療を選択し、又は特定個体に対する治療で起こり得る副作用を先取りするために使用することができる。また、該方法は、一定期間に渡り治療効果を評価するのにも使用できる。例えば、生物学的試料を一人の患者から、該患者が治療を受けている期間に渡って入手することができる。異なる試料中のPARPレベルを互いに比較して、治療の効果を決定することができる。また、本明細書に記載の方法は、異なる疾病療法の効果及び/又は異なる集団(例えば民族、家族歴など)における1もしくは複数の治療に対する応答を比較するのに利用できる。
【0176】
或る好ましい態様では、本発明の方法の少なくとも1つの段階が、図2に描写されたようなコンピューターを使って実施される。図2は、本発明の方法に関連した特定の操作を実行するためのコンピューターを描写する。コンピューター200は、システムバス203を介して一組の入力/出力装置202に接続された中心の演算ユニット201を含む。入力/出力装置202は、キーボード、マウス、スキャナー、データポート、ビデオモニター、液晶ディスプレー、プリンター、などを含んでもよい。一次及び/又は二次メモリーの形のメモリー204もシステムバス203に接続される。図2のそれらの構成要素は、標準コンピューターを特徴づける。この標準コンピューターは本発明に従ってプログラムされる。特にコンピューター200は本発明の方法の様々な操作を実施するようにプログラムされる。
【0177】
コンピューター200のメモリー204は同定モジュール205を保存することができる。言い換えれば、同定モジュール205は、図1の段階102,103及び104に関連した操作を実施することができる。本明細書中で用いられる用語「同定モジュール」としては、非限定的に、被検体の試料中のPARPを分析し;所望により試験試料の該PARPレベルデータを参照試料と比較し;試料中のPARPレベルを同定し;疾病を同定し;そしてPARP阻害剤により治療可能な疾病を更に同定することが挙げられる。同定モジュールは決定モジュールも包含し、ここで前記決定モジュールは、PARP阻害剤で治療可能な疾病を同定することに関する決定を行う、及び/又は前記疾病に関する結論を患者、医療提供者もしくは医療管理者に提供する、実行可能命令を包含する。同定モジュール205の実行コードは、比較や診断を実施するために多数の技術を使用してもよい。
【0178】
本発明の或る態様は、PARPモジュレーターにより治療可能な被検体の疾病に関する情報を有するコンピューター読み取り可能な媒体を包含する。前記情報は、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を治療することに関してARPレベルに基づいた決定を行うことにより、誘導される。前記媒体は、試料中の1又は複数のPARPレベルの参照パターンを含む。この参照パターンを用いて、試験被検体から得られたパターンを比較し、そしてこの比較を基に該疾病の分析を行うことができる。この参照パターンは、正常被検体、即ち、疾病を持たない被検体、異なるレベルの疾病を有する被検体、様々な重症度の疾病を有する被検体からのものであることができる。それらの参照パターンは、被検体の疾病の診断、予後、治療効果の評価、及び/又は病態の重症度の決定に利用することができる。本発明の方法は、被検体の試料中のPARPレベルに関する情報及び/又は本発明のPARP阻害剤により治療可能な疾病を同定することに関する決定に関する情報を、例えばインターネットの使用により、1もしくは複数のコンピューター間に送信することも包含する。
疾病
【0179】
様々な疾病は、非限定的に、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆汁管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、成人CNS脳腫瘍、小児CNS脳腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、小児非ホジキンリンパ腫、直腸結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び下咽頭癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓癌、肺癌、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、精巣癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(成人軟組織癌)、黒色腫皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、胃癌、睾丸癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレーム・マクログロブリン血症、慢性リンパ球白血病、並びに反応性リンパ過形成を包含する。
【0180】
疾病として、癌の血管新生、炎症、変性疾患、CNS病、自己免疫疾患、及びHIVを含むウイルス性疾患が挙げられる。本明細書に記載の化合物は、病原体に対する細胞応答の調節にも有効である。本発明は、他の疾病、例えばウイルス疾患を治療する方法も提供する。ウイルス疾患の幾つかの例としては、非限定的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト単純ヘルペスウイルス1型及び2型、サイトメガロウイルス(CMV)、危険なHIV同時感染が挙げられる。
【0181】
疾患の幾つかの例を下記に記載するが、本発明の範囲を限定するものではなく、当業界で知られている他の疾患も存在し、それらは本発明の範囲に含まれる。
癌の例
【0182】
癌の例として、非限定的に、リンパ腫、癌腫及びホルモン依存性腫瘍(例えば、乳癌、前立腺癌又は卵巣癌)が挙げられる。成人又は小児のいずれかの治療可能な異常細胞増殖状態又は癌として、固相腫瘍/悪性腫瘍、限局性進行腫瘍、ヒト軟部肉腫、リンパ行性転移を含む転移性癌、多発性骨髄腫、急性及び慢性白血病並びにリンパ腫を含む血液細胞悪性腫瘍、口癌、喉頭癌及び甲状腺癌を含む頭頸部癌、小細胞癌及び非小細胞癌を含む肺癌、乳癌、小細胞癌及び腺管癌を含む乳癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸結腸癌及び結腸直腸の新生物に付随するポリープを含む消化管癌、膵癌、肝癌、膀胱癌及び前立腺癌を含む泌尿器癌、卵巣癌、子宮癌(子宮内膜腫を含む)及び卵胞の固形腫瘍を含む女性生殖器の悪性腫瘍、腎細胞を含む腎癌、内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、アストロサイトの脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系における転移性腫瘍細胞侵襲を含む脳癌、骨肉腫を含む骨癌、悪性黒色腫、ヒト皮膚角質細胞の腫瘍増殖、扁平上皮癌、基底細胞癌、血管周囲細胞腫及びカポジ肉腫を含む皮膚癌が挙げられる。
【0183】
本発明の幾つかの好ましい実施態様では、癌として、結腸腺癌、食道腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、島細胞腫、直腸腺癌、胃腸間質性腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞腺癌、乳頭癌、乳癌、腺管癌、小葉癌、乳管癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、粒状細胞腫、ムチン性嚢胞腺癌、頚部腺癌、外陰部扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0184】
本発明の更に好ましい実施態様では、癌として、子宮内膜のミュラー管混合腫瘍、導管及び小葉混合型浸潤性癌、ウィルムス腫瘍、卵巣のミュラー管混合腫瘍、漿液性嚢胞腺癌、卵巣腺癌(乳頭漿液型)、卵巣腺癌(類内膜型)、転移性浸潤性乳房小葉癌、精巣精上皮腫、前立腺良性結節性過形成、肺扁平上皮癌、肺巨大細胞癌、肺腺癌、子宮内膜腺癌(類内膜型)、浸潤性導管癌、皮膚基底細胞癌、胸部浸潤性小葉癌、線維嚢胞性疾患、線維腺腫、神経膠腫、慢性骨髄性白血病、肝細胞癌、粘液性癌、シュワン腫、腎臓移行上皮癌、橋本甲状腺炎、乳房の転移性浸潤性導管癌、食道腺癌、胸腺腫、葉状腫瘍、直腸腺癌、骨肉腫、結腸腺癌、甲状腺乳頭癌、平滑筋腫、及び胃腺癌が挙げられる。
浸潤性管癌:
【0185】
胸部の浸潤性導管癌(IDC)におけるPARP1の発現は正常のものに比較して上昇していた。IDC症例の三分の二以上で、PARP1発現が正常集団の95%信頼限界上限より上であった(「過剰発現」)。IDCのエストロゲン受容体(ER)陰性及びHer2-neu陰性サブグループは、腫瘍の約90%においてPARP1過剰発現の発生を有した。
【0186】
本発明の一観点では、IDCがPARP阻害剤で治療される。一態様では、PARP阻害剤の投与前に、PARP発現並びにER及び/又はプロゲステロン受容体(PR)及び/又はHer2-neu状態が評価される。好ましくは、IDCのエストロゲン受容体陰性及びHer2-neu陰性サブグループを治療するのにPARP阻害剤が用いられる。更により好ましくは、抗エストロゲンまたは抗Her2-neu療法について定性しない癌をPARP阻害剤が用いられる。好ましい態様では、三重陰性乳癌、例えば三重陰性湿潤性管癌を治療するのにPARP阻害剤が用いられる。
三重陰性癌:
【0187】
一態様では、三重陰性癌をPARP阻害剤で治療する。好ましくは、PARPレベルが三重陰性癌で高められており、そしてPARPの過剰発現が観察されるならば、その癌をPARP阻害剤で治療する。「三重陰性」乳癌とは、エストロゲン(ER陰性)、プロゲステロン(PR陰性)ホルモン及びHer2タンパク質のための受容体を欠いている腫瘍を意味する。これは、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤及びヘルセプチンのような幾つかの有力な癌撲滅薬に対して抵抗性にする。三重陰性癌の大部分の形態には外科手術や化学療法が標準的な治療法である。好ましい態様では、三重陰性癌を治療するためにそれらの標準治療法がPARP阻害剤と組み合わされる。
炎症の例
【0188】
炎症の例として、非限定的に、全身性炎症状態並びに単球、白血球及び好中球の遊走と誘引に局所的に関連付けられる状態が挙げられる。炎症は、病原性生物(グラム陽性菌、グラム陰性菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫、例えば原虫及び蠕虫類を含む)による感染、移植片拒絶(腎臓、肝臓、心臓、肺又は角膜などの固形器官の拒絶、並びに移植片対宿主病(GVHD)を含む骨髄移植片の拒絶)、又は限局性慢性もしくは急性自己免疫又はアレルギー反応から生じるものが挙げられる。自己免疫疾患としては、急性糸球体腎炎;リウマチ性又は反応性関節炎;慢性糸球体腎炎;炎症性腸疾患、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎及び壊死性腸炎;顆粒球輸血に付随する症候群;炎症性皮膚病、例えば接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬;全身性紅斑性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症;及び糖尿病の幾つかの型、又は被検体自身の免疫系による攻撃が病原性組織破壊を引き起こすという他の任意の自己免疫状態が挙げられる。アレルギー反応としては、アレルギー性喘息、慢性気管支炎、急性及び遅延型過敏症が挙げられる。全身性炎症性病態として、外傷、熱傷、虚血後の再灌流(例えば、心臓、脳、腸、又は末梢脈管構造における血栓の発生、例えば心筋梗塞及び脳卒中)、敗血症、AIDS又は多臓器機能障害症候群が挙げられる。炎症細胞の動員は、動脈硬化プラークにも起こる。
【0189】
幾つかの好ましい態様において、炎症には、非ホジキンリンパ腫、ウェグナー肉芽腫症、橋本甲状腺、肝細胞癌、胸腺萎縮症、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ組織増生、骨関節炎、潰瘍性大腸炎、乳頭癌、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、硬変、慢性唾液腺炎、腹膜炎、急性膵炎、慢性膵炎、慢性胃炎、腺筋症、子宮内膜症、急性子宮頸管炎、慢性子宮頸管炎、リンパ様過形成、多発性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病に対する続発性肥大、原発性IgA腎症、全身性紅斑性エリテマトーデス、乾癬、肺気腫、慢性腎盂腎炎、及び慢性膀胱炎が挙げられる。
内分泌及び神経内分泌障害の例
【0190】
内分泌障害の例として、副腎、乳房、生殖腺、膵臓、副甲状腺、下垂体、甲状腺の障害、小人症などが挙げられる。副腎障害として、非限定的に、アジソン病、多毛症、癌、多発性内分泌腫瘍、先天性副腎過形成、及び褐色細胞腫が挙げられる。乳房障害として、非限定的に、乳癌、乳腺線維嚢胞症、及び女性化乳房が挙げられる。生殖腺障害として、非限定的に、先天性副腎過形成、多嚢胞性卵巣症候群及びターナー症候群が挙げられる。膵臓障害として、非限定的に、糖尿病(I型及びII型)、低血糖症、及びインスリン抵抗性が挙げられる。副甲状腺障害として、非限定的に、副甲状腺機能亢進、及び副甲状腺機能低下症が挙げられる。下垂体疾患として、非限定的に、先端巨大症、クッシング症候群、尿崩症、トルコ鞍空洞症候群、下垂体機能低下症及びプロラクチン産生腺腫が挙げられる。甲状腺疾患として、非限定的に、癌、甲状腺腫、甲状腺機能亢進性、甲状腺機能低下性、小結節、甲状腺炎及びウィルソン症候群が挙げられる。神経内分泌障害の例として、非限定的に、うつ病及びホルモン不均衡に関連する不安障害、生理時のてんかん、閉経、月経性片頭痛、生殖内分泌疾患、胃腸障害、例えば、腸内分泌腺腫瘍、カルチノイド、ガストリン産生腫瘍、及びソマトスタチン産生腫瘍、食道アカラシア、及びヒルシュスプルング病が挙げられる。或る態様では、内分泌及び神経内分泌障害として、結節性過形成、橋本病、膵島腫瘍及び乳頭癌が挙げられる。
【0191】
小児における内分泌及び神経内分泌障害として、成長障害の内分泌学的状態及び尿崩症が挙げられる。成長遅延は、脳下垂体の先天性異所性位置又は形成不全/発育不全、全前脳症、中隔視神経異形成症及び基底脳ヘルニアにおいて観察される場合がある。後天性疾患、例えば頭蓋咽頭腫、視覚性/視床下部神経膠腫は、臨床的短期状態及び間脳症候群で呈する。思春期早発症及び過剰発育は、次の状態:くも膜嚢胞、水頭症、視床下部過誤腫及び胚細胞腫において見られる場合がある。下垂体腺腫による成長ホルモン及び副腎皮質刺激ホルモンの過剰分泌は、病理学的高身長症及び小児における体幹肥満を引き起こし得る。尿崩症は、ランゲルハンス細胞の組織球増殖症、結核、胚細胞腫、下垂体茎の外傷後/外科傷害後、及び低酸素虚血性脳症といった浸潤性プロセスに次いで二次的に生じることがある。
栄養障害及び代謝障害の例
【0192】
栄養障害及び代謝障害の例として、非限定的に、アスパラギン酸グルコサミン尿症、ビオチニダーゼ欠損症、炭水化物欠損糖タンパク質症候群(CDGS)、クリグラー・ナジャー症候群、シスチン症、尿崩症、ファブリー病、脂肪酸代謝障害、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症、グルタル酸性尿、フルラー症候群、フルラー−シェイエ症候群、ハンター症候群、低リン酸血症、I−セル、クラッベ病、乳酸アシドーシス、長鎖3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症(LCHAD)、リソソーム蓄積症、マンノース症、メープルシロップ尿症、マルトー-ラミー症候群、異染性白質萎縮症、ミトコンドリア病、モルキオ症候群、ムコ多糖症、神経-代謝性疾患、ニーマン−ピック病、有機物酸血症、プリン症、フェニルケトン尿症(PKU)、ポンペ病、偽フルラー症候群、ピルビン酸脱水素酵素欠損症、サンドホフ病、サンフィリポ病、シャイエ症候群、スライ病、テイサックス病、トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)、尿素サイクル異常症、ビタミンD欠乏性くる病、筋の代謝疾患、遺伝性代謝疾患、酸塩基平衡異常、アシドーシス、アルカローシス、アルカプトン尿症、α−マンノース症、アミロイド症、貧血、鉄欠乏症、アスコルビン酸欠乏症、ビタミン欠乏症、脚気、ビオチニダーゼ欠乏症、欠乏性糖タンパク症候群、カルニチン障害、シスチン症、シスチン尿症、ファブリー病、脂肪酸酸化障害、フコシドーシス、ガラクトース血症、ゴーシェ病、ギルバート病、グルコースリン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、グルタル酸血症、糖原病、ハートナップ病、ヘモクロマトーシス、ヘモシデローシス、肝レンズ核変性症、ヒスチジン尿症、ホモシスチン尿症、高ビリルビン血症、高カルシウム血症、高インスリン症、高カリウム血症、高脂血症、高シュウ酸尿症、ビタミンA過剰症、低カルシウム血症、低血糖症、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低ホスファターゼ血症、インスリン抵抗性、ヨード欠損症、鉄過剰症、黄疸、慢性特発性リー病、レッシュ・ナイハン症候群、ロイシン代謝障害、リソソーム蓄積症、マグネシウム欠乏症、メープルシロップ尿症、MELAS症候群、メンケス捻転毛症候群、内臓脂肪症候群、ムコ脂質症、ムコ多糖症、ニーマン・ピック病、肥満症、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ欠乏性疾患、骨軟化症、ペラグラ、ペルオキシソーム病、ポルフィリン症、赤血球新生、斑岩症(porphyries)、早老症、偽ゴーシェ病、レフサム病、ライ症候群、くる病、サンドホフ病、タンジール病、テイ・サックス病、テトラヒドロビオプテリン欠損症、トリメチルアミン尿症(魚匂症候群)、チロシン血症、尿素サイクル障害、水分電解質不均衡、ウェルニッケ脳症、ビタミンA欠乏症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB欠乏症、ウォルマン病、及びツェルウェガー症候群が挙げられる。
【0193】
或る好ましい態様では、代謝性疾患としては糖尿病及び肥満が挙げられる。
血液リンパ腫系の例
【0194】
血液リンパ腫系として血液疾患及びリンパ系疾患が挙げられる。「血液学的疾患」として、造血細胞もしくは組織を冒す疾病、障害又は状態が挙げられる。血液学的疾患として、異常な血液学的含量又は機能に関連した疾患、障害、又は病気が挙げられる。血液学的障害の例として、癌の化学療法処置又は骨髄放射線照射から生じる障害、悪性貧血、出血性 貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血、鉄芽球性貧血、慢性感染症、例えば、マラリア、トリパノソーマ症、HIV、肝炎ウイルス又は他のウイルスのような慢性感染に付随する貧血、髄欠損により引き起こされる骨髄癆性貧血、貧血から生じる腎不全、赤血球増加症、伝染性単核球症(IM)、急性非リンパ性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄単球性白血病(AMMoL)、真正赤血球増加症、リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、網膜芽細胞腫、血友病、血栓症のリスク増加に付随する障害、疱疹、サラセミア、抗体媒介性障害、例えば輸血反応及び赤芽球症、赤血球に対する機械的外傷、例えば、微小血管症性溶血性貧血、血栓性血小板減少性紫斑病及び播種性血管内凝固、原虫などの寄生虫による感染症、例えば鉛中毒などによる化学的損傷、並びに脾機能亢進が挙げられる。
【0195】
リンパ系疾患としては、非限定的に、リンパ節炎、リンパ管拡張症、リンパ管炎、リンパ浮腫、リンパ嚢腫、リンパ球増殖性疾患、皮膚粘膜リンパ節症候群、細網内皮症、脾臓疾患、胸腺過形成、胸腺腫瘍、結核、リンパ節、偽リンパ腫、及びリンパ管異常が挙げられる。
【0196】
或る好ましい態様では、血液リンパ系の障害として、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び反応性リンパ腫過形成が挙げられる。
CNS病の例
【0197】
CNS病の例として、非限定的に、神経変性疾患、薬物乱用、例えばコカイン乱用、多発性硬化症、統合失調症、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、脱髄性 遺伝病、脊髄損傷、ウイルス誘発性脱髄、進行性多巣性白質脳症、ヒトリンパT細胞ウイルスI(HTLVI)に関連したミエロパシー、及び栄養性代謝障害が挙げられる。
【0198】
或る好ましい態様では、CNS病としてパーキンソン病、アルツハイマー病、コカイン乱用、及び統合失調症が挙げられる。
神経変性疾患の例
【0199】
本発明の方法における神経変性疾患として、非限定的に、アルツハイマー病、ピック病、瀰漫性レヴィー小体病、進行性核上性麻痺(スティール−リチャードソン症候群)、多系統変性(シャイ−ドラガー症候群)、運動ニューロン疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、変性運動失調、大脳皮質基底核変性症、グアムのALS−パーキンソン認知症の合併症、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイン病(synucleinopathies)、原発性進行性失語症、線条体黒質変性症、マシャド・ジョセフ病/脊髄小脳失調症3型及びオリーブ橋小脳変性症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、延髄性及び仮性球麻痺、脊髄性及び球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、テイ・サック病、サンドホフ病、家族性痙性病、ウオールファルト・クーゲルベルク・ヴェランダー病、痙れん性不全対麻痺、進行性多巣性白質脳症、及びプリオン病(例えば、クロイツフェルト−ヤコブ、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、クールー病及び致死性家族性不眠症)、アレキサンダー病、アルパー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、カナバン病、コカイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病、レウィー小体認知症、マシャド・ジョセフ病、脊髄小脳失調症3型、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、レフサム病、シルダー病、スピールマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病、スティール・リチャードソン・オルツェウスキー病、及び脊髄癆が挙げられる。
尿路障害の例
【0200】
本発明の方法における尿路障害として、非限定的に、腎臓、尿管、膀胱及び尿道の障害が挙げられる。例えば、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎、先天性腎無形成、水腎症、多発性嚢胞腎、多嚢胞腎、下部尿路閉塞、膀胱外反症及び尿道上裂、尿道下裂、細菌尿、前立腺炎、腎臓内及び末梢性膿瘍、良性前立腺肥大、腎細胞癌、移行上皮癌、ウィルムス腫瘍、尿毒症、並びに糸球体腎炎である。
呼吸器疾患の例
【0201】
呼吸器疾患及び病気として非限定的に、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、大細胞癌、嚢胞性線維症(CF)、呼吸困難、肺気腫、喘鳴、肺高血圧症、肺線維症、応答性亢進気道、高いアデノシン又はアデノシン受容体レベル、肺気管支収縮、肺炎症及びアレルギー、及び界面活性物質の枯渇、慢性気管支炎、気管支収縮、呼吸困難、肺軌道の閉塞及び妨害、心臓機能についてのアデノシンテスト、肺血管収縮、呼吸閉塞、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特定の薬、例えばアデノシン及びアデノシンレベル増加薬の投与、及び他の薬、例えば上室性頻拍(SVT)を治療するための剤の投与、及びアデノシンストレス試験薬の投与、乳児性呼吸促迫症候群 (乳児性RDS)、疼痛、アレルギー疾患、肺界面活性物質の低下、ユビキノンレベルの低下、又は慢性気管支炎などが挙げられる。
女性生殖系の障害の例
【0202】
女性生殖系の障害として、外陰部、腟、子宮頚部、子宮体、卵管及び卵巣の疾病が挙げられる。その一例として、付属器疾患、例えば卵管病、卵巣病、平滑筋腫、ムチン性嚢胞腺癌、漿液性嚢胞腺癌、傍卵巣嚢胞、及び骨盤内炎症性疾患;子宮内膜症;生殖器腫瘍、例えば卵管腫、子宮腫、腟腫、外陰腫、及び卵巣腫;鎖陰;性器ヘルペス;不妊症;性機能不全、例えば性交疼痛症及び不能;結核;子宮疾患、例えば頚部病、子宮内膜増殖症、子宮内膜炎、子宮留血腫、子宮出血、子宮腫、子宮脱、子宮破裂及び子宮内反症;腟疾患、例えば性交疼痛症、腟留血症、腟瘻、腟腫、腟炎、腟分泌物及びカンジダ症、又は外陰腟;外陰部疾患、例えば萎縮症外陰部、そう痒症、外陰腫、外陰部炎及びカンジダ症;並びに泌尿生殖器疾患、例えば泌尿生殖器奇形及び泌尿生殖器腫が挙げられる。
男性生殖系の障害の例
【0203】
男性生殖系の障害として、非限定的に、精巣上体炎;生殖系腫、例えば陰茎腫瘍、前立腺腫及び精巣腫;血瘤;性器ヘルペス;水瘤;不妊症;陰茎疾患、例えば亀頭炎、尿道下裂、ペイロニー病、陰茎腫瘍、包茎及び持続勃起症;前立腺疾患、例えば前立腺肥大、前立腺腫及び前立腺炎;器質性性機能不全、例えば性交疼痛症及び不能;精索ねじれ;精液瘤;精巣疾患、例えば停留精巣、精巣炎、及び精巣腫瘍;結核;精索静脈瘤;泌尿生殖器 疾患、例えば泌尿生殖器奇形、及び泌尿生殖器腫;並びにフルニエ壊疽が挙げられる。
心血管障害(CVS)の例
【0204】
心血管障害として、虚血を引き起こすか、又は心臓の再灌流により引き起こされる障害が挙げられる。例として、非限定的に、粥状動脈硬化、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎(非肉芽腫性)、原発性肥大型心筋症、末梢血管病(PAD)、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心停止により引き起こされる心血管組織の損傷、心臓バイパスにより引き起こされる心血管組織損傷、心原性ショック、及び当業者により知られている関連疾病、或いは心臓もしくは脈管構造の組織損傷又は機能不全に関連する病気が挙げられ、特に非限定的に、PARP活性化に関連する組織損傷が挙げられる。
【0205】
本発明の或る好ましい態様では、CVS病として、粥状動脈硬化、肉芽腫性心筋炎、心筋梗塞、心臓弁膜症に続発する心筋線維症、梗塞を伴わない心筋線維症、原発性肥大型心筋症及び慢性心筋炎(非肉芽腫性)が挙げられる。
PARP阻害剤での治療方法
【0206】
PARP阻害剤は、様々な疾病、例えば心血管虚血、卒中、頭部外傷及び神経変性病の治療において独立に使用した時に、又は癌療法において化学療法剤、放射線、オリゴヌクレオチドもしくは抗体といった他の剤との併用療法として使用した時に、有効な治療効果を有する。本発明を限定することなく、様々なPARP阻害剤が当業界で知られており、それら全てが本発明の範囲内に含まれる。PARP阻害剤の幾つかの例を本明細書に開示するが、それらは本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0207】
数多くのPARP阻害剤の大きな有益性は、PARPの触媒部位において天然基質NADと競合的に結合する、ベンズアミドの類似体としてデザインされている。PARP阻害剤としては、非限定的に、ベンズアミド、キノロン及びイソキノロン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、及び3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル(米国特許第5,464,871号;米国特許第5,670,518号;米国特許第6,004,978号;米国特許第6,169,104号;米国特許第5,922,775号;米国特許第6,017,958号;米国特許第5,736,576号及び米国特許第5,484,951号;その全内容が本明細書に参考として組み込まれる)が挙げられる。PARP阻害剤としては、NAD部位での有力な阻害剤である様々な環状ベンズアミド類似体(即ちラクタム)が挙げられる。別のPARP阻害剤として、非限定的に、ベンズイミダゾール及びインドール(EP 841924;EP 1127052;US 6,100,283;US 6,310,082;US 2002/156050;US 2005/054631;WO 05/012305;WO 99/11628及びUS 2002/028815)が挙げられる。多数の低分子量PARP阻害剤は、DNA修復におけるポリADPリボシル化の機能的役割を推測するために使用されている。アルキル化剤で処理した細胞では、PARPの阻害がDNA鎖損傷及び細胞致死の顕著な増加を引き起こす(Durkacz他、1980, Nature 283:593-596;及びBerger, N.A., 1985, Radiation Research, 101:4-14)。続いて、そのような阻害剤が、潜在的に致死性損傷の修復を抑制することにより、放射性応答の効果を増強することが示された(Ben-Hur他、1984, British Journal of Cancer 49 (増補IV): 34-42; 及びSchlicker他、1999, Int. J. Radiat. Biol., 75:91-100)。PARP阻害剤は、放射線感受性偽腫瘍細胞において効果的であると報告されている(US 5,032,617; 5,215,738及び5,041,653)。更に、PARPノックアウト(PARP -/-)動物はアルキル化剤及びγ照射に応答してゲノム不安定性を示す(Wang他、1995, Genes Dev., 9:509-520;及びMenissier de Murcia他、1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:7303-7307)。
【0208】
DNAに鎖切断を引き起こし、その後PARPにより認識される酸素ラジカルDNA損傷は、PARP阻害剤研究により示されるような病気状態への主たる寄与因子である(Cosi他,1994, J. Neurosci. Res., 39:38-46 ; Said他, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:4688-4692)。哺乳動物細胞の効率的レトロウイルス感染がPARP活性の阻害により阻止されることも証明された。そのような組換えレトロウイルスベクター感染の阻害は、様々な異なる細胞型において起こることが示された(Gaken他、1996, J. Virology 70(6): 3992-4000)。従ってPARPの阻害は、抗ウイルス療法及び癌療法における使用に向けて開発されている(WO91/18591)。更に、PARP阻害剤はヒト繊維芽細胞における加齢特徴の開始を遅らせると推測されている(Rattan & Clark, 1994, Biochem Biophys. Res. Comm., 201(2): 665-672)。これは、PARPがテロメア機能を調節することにおいて果たす機能に関連するもかもしれない(d’Adda di Fagagna他、1999, Nature Gen. 23(1):76-80)。
【0209】
PARP阻害剤は次の構造的特徴を有する:1) アミド又はラクタム官能基;2) このアミド又はラクタム官能基のNHプロトンが効果的結合のために保存され得る;3) 芳香族環に取り付けられたアミド基又は芳香族環に融合したラクタム基;4) 芳香族面におけるアミドの光学的シス配置;及び5) ヘテロ多環式ラクタム中への束縛性モノアリールカルボキサミド(Constantino他、2001, J. Med. Chem. 44:3786-3794)。Virag他、2002, Pharmacol. Rev., 54:375-429, 2002は様々なPARP阻害剤を要約している。PARP阻害剤の幾つかの例としては、非限定的に、イソキノリノン及びジヒドロイソキノリノン(例えばUS 6,664,269及びWO 99/11624)、ニコチンアミド、3−アミノベンズアミド、モノアリールアミド、及び二、三又は四環式ラクタム、フェナントリジノン(Perkins他、2001, Cancer Res., 61:4175-4183)、3,4−ジヒドロ−5−メチルイソキノリン−1(2H)−オン及びベンズオキサゾール−4−カルボキサミド(Griffin他、1995, Anticancer Drug Des. 10:507-514; Griffin他、1998, J. Med. Chem. 41:5247-5256; 及びGriffin他、1996, Pharm. Sci. 2:43-48)、ジヒドロイソキノリン−1(2H)−ノン、1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン、キナゾリン−4(3H)−オン、チエノ〔3,4−c〕ピリジン−4(5H)−オン及びチエノ〔3,4−d〕ピリミジン−4(3H)−オン、1,5−ジヒドロキシイソキノリン、並びに2−メチルキナゾリン−4(3H)−オン(Yoshida他、1991, J. Antibiot(Tokyo) 44:111-112; White他、2000, J. Med. Chem. 43:4085-4097)、1,8−ナフタリミド誘導体及び(5H)フェナントリジン−6−オン(Banasik他、1992, J. Biol. Chem. 267:1569-1575 ; Watson他、1998, Bioorg. Med. Chem., 6:721-734; Soriano他、2001, Nat. Med., 7:108-113; Li他、2001, Bioorg. Med. Chem. Lett., 11:1687-1690 ; Jagtap他、2002, Crit Care Med., 30:1071-1082)、四環式ラクタム、1,11b−ジヒドロ−〔2H〕ベンゾピラノ〔4,3,2−デ〕イソキノリン−3−オン、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)(Zhang他、2000, Biochem. Biophys Res. Commum. 278:590-598;及びMazzon他、2001, Eur. J. Pharmacol. 415:85-94)が挙げられる。別のPARP阻害剤の例としては、非限定的に、次の特許明細書中に記載されたものが挙げられる:US 5,719,151 ; US 5,756,510 ; US 6,015,827 ; US 6,100,283 ; US 6,156,739 ; US 6,310,082 ; US 6,316,455 ; US 6,121,278 ; US 6,201,020 ; US 6,235,748 ; US 6,306,889 ; US 6,346,536 ; US 6,380,193 ; US 6,387,902 ; US 6,395,749 ; US 6,426,415 ; US 6,514,983 ; US 6,723,733 ; US 6,448,271 ; US 6,495,541 ; US 6,548,494 ; US 6,500,823 ; US 6,664,269 ; US 6,677,333 ; US 6,903,098 ; US 6,924,284 ; US 6,989,388 ; US 6,277,990 ; US 6,476,048 ; US 6,531,464。PARP阻害剤の追加の例としては、非限定的に、次の特許出願刊行物に記載されたものが挙げられる:US 2004/198693A1 ; US 2004/034078A1 ; US 2004/248879A1 ; US 2004/249841A1 ; US 2006/074073A1 ; US 2006/100198A1 ; US 2004/077667A1 ; US 2005/080096A1 ; US 2005/171101A1 ; US 2005/054631A1 ; WO 05054201A1 ; WO 05/054209A1 ; WO 05/054210A1 ; WO 05/058843A1 ; WO 06/003146A1 ; WO 06/003147A1 ; WO 06/003150A1 及び WO 05/97750A1が挙げられる。
【0210】
本発明の一態様では、PARP阻害剤が式(Ia)
【0211】
【化1】
【0212】
〔式中、R1,R2,R3,R4及びR5は独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル及びフェニルから成る群より選択され、ここで前記5つのR1,R2,R3,R4及びR5置換基のうちの少なくとも2つが常に水素であり、前記5つの置換基のうちの少なくとも1つが常に窒素であり、そしてその1つの窒素に隣接して位置する少なくとも1つの置換基が常にヨードである〕
で表される化合物、及び医薬上許容されるその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体もしくはプロドラッグである。R1,R2,R3,R4及びR5はハロゲン化物、例えばクロロ、フルオロ又はブロモであることもできる。式Iaの化合物に関する更なる詳細は、米国特許第5,464,871号明細書に与えられている。
【0213】
式Iaの好ましい化合物は式Iaの化合物:
【化2】
【0214】
〔式中、R2,R3,R4及びR5は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル及びフェニルから成る群より選択される〕
で表わされる化合物及び医薬上許容されるその塩であり、ここで前記5つのR1,R2,R3,R4及びR5置換基のうちの少なくとも2つが常に水素であり、前記5つの置換基のうちの少なくとも1つが常に窒素である。
【0215】
式Iaの好ましい化合物は
【化3】
4−ヨ―ド−3−ニトロベンズアミド(BA)である。
【0216】
或る好ましい態様では、式IIのベンゾピロン化合物が本発明の方法で使用される。式IIのベンゾピロン化合物は、次式
【0217】
【化4】
【0218】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、H、ハロゲン、置換されることがあるヒドロキシ、置換されることがあるアミン、置換されることがある低級アルキル、置換されることがあるフェニル、置換されることがあるC4〜C10ヘテロアリール、及び置換されることがあるC3〜C8シクロアルキルである〕
により表わされる化合物、又はそれの塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝産物もしくはプロドラックである(米国特許第5,484,951号明細書はその全内容が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0219】
或る態様は、次の化学式
【化5】
【0220】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル、ハロ及びフェニルから成る群より選択される〕
を有する化合物、及び医薬上許容されるその塩を使用し、ここで4つのR1,R2,R3及びR4置換基のうちの少なくとも3つが常に水素である。
【0221】
或る態様は、次の化学式
【化6】
【0222】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル、ハロ及びフェニルから成る群より選択される〕
を有する化合物、及び医薬上許容されるその塩を使用し、ここで4つのR1,R2,R3及びR4置換基のうちの少なくとも3つが常に水素である。
【0223】
或る態様は、次の化学式
【化7】
【0224】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル、ハロ及びフェニルから成る群より選択される〕
を有する化合物、及び医薬上許容されるその塩を使用し、ここで4つのR1,R2,R3及びR4置換基のうちの少なくとも3つが常に水素である。
【0225】
好ましい態様では、本発明は次の式IIのベンゾピロン化合物に関する:
【化8】
6−アミノ−5−ヨードベンゾピロン(BP)。
【0226】
更に別の態様では、本発明の方法で使用される化合物が次式
【化9】
により表わされる化合物である。
【0227】
ベンゾピロン化合物に関する更なる詳細は、米国特許第5,484,951号明細書に記載されており、その全内容が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0228】
最も有効で且つ効果的なPARP阻害剤(即ち、薬剤開発のための好ましい候補)は、科学文献中にまだ入手できず、臨床試験を行っているか、又は最終的に公開特許及び係属中の特許出願の様々なデータベースに浮上してくるかもしれない。そのようなPARP阻害剤の全てが本発明の範囲内である。選択的で有力なPARPの酵素的阻害に加えて、幾つかの追加のアプローチを細胞又は実験動物におけるPARPの細胞活性を阻害するために使用してよい。細胞内カルシウム移動の阻害は、胸腺細胞(Virag他、1999, Mol. Pharmacol. 56:824-833)及び腸上皮細胞(Karczewski他、1999, Biochem. Pharmacol., 57:19-26)において証明されるように、酸化剤により誘発されるPARP活性化、NAD+枯渇及び細胞壊死に対して保護する。カルシウムキレート剤と同様に、細胞内亜鉛キレート剤は、酸化剤媒介PARP活性化と細胞壊死に対して保護することが示されている(Virag他、1999, Br. J. Pharmacol., 126: 769-777)。細胞内プリン類(イノシン、ヒポキサンチン)は、様々な作用に加えて、PARP阻害剤としての生物学的作用を発揮することもできる(Virag他、2001, FASEB J., 15:99-107)。
【0229】
本発明により提供される方法は、PARP阻害剤単独の投与又は他の治療との組み合わせ投与を含みうる。本発明の組成物と同時投与することができる治療薬の選択は、一部は、治療される状態に左右されるだろう。例えば、急性骨髄性白血病の治療には、本発明の或る態様の化合物は、放射線療法、モノクローナル抗体療法、化学療法、骨髄移植、又はそれらの組合せと併用することができる。
【0230】
本明細書に開示されるPARP阻害剤の有効治療量は、PARP酵素又はPARP活性の阻害に関する薬理活性に作用するために、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与される。そのようなものとして、本発明のPARP阻害剤は、動物における様々な疾病及び不健康、例えば壊死又はアポトーシス、脳虚血や再灌流損傷又は神経変性病による細胞損傷又は細胞死から生じる神経組織損傷、を治療又は予防するのに有用である。その上、本発明の化合物は、有効量のPARP阻害剤を動物に投与することにより、該動物の心血管障害を治療するために使用することもできる。更に、本発明の化合物は、癌を治療するために及び腫瘍細胞を放射線増感又は化学増感させるために使用することができる。
【0231】
本発明の或る態様では、損傷したニューロンを調整し、神経再生を促進し、神経変性を予防し、そして/又は神経障害を治療するために、PARP阻害剤を使用することができる。該PARP阻害剤は、PARP活性を阻害し、従って動物における神経組織損傷、特に癌、心血管疾患、脳虚血、及び再灌流傷害又は神経変性病を治療するために有用である。本発明のPARP阻害剤は、心臓組織損傷、特に心臓虚血から生じるか又は患者の再灌流により引き起こされる損傷の治療に有用である。本発明の化合物は、次の群:冠動脈疾患、例えばアテローム性動脈硬化症;狭心症;心筋梗塞;心筋虚血及び心停止;心臓バイパス;及び心原性ショック、から選ばれる心臓血管障害を治療するために特に有用である。
【0232】
別の観点では、本発明のPARP阻害剤は、癌を治療するため、又は化学療法、放射線療法もしくは放射線と組み合わせて使用することができる。本発明のPARP阻害剤は「抗癌剤」であり、この用語は「抗腫瘍細胞増殖剤」及び「抗新生物剤」を包含する。例えば、本発明のPARP阻害剤は癌治療に、並びに癌の腫瘍細胞を放射線増感及び/又は化学増感するのに有用である。
【0233】
放射線増感剤は、電磁放射腺の毒性効果に対する癌性細胞の感受性を増加させることが知られている。多くの癌治療プロトコルは、現在、X線の電磁放射により活性化される放射腺増感剤を使用する。X線により活性化される放射線増感剤の例として、非限定的に、次のものが挙げられる: メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチン並びにそれらの治療上有効な類似体及び誘導体。
【0234】
癌の光力学療法(PDT)は、感作剤の放射線活性化因子として可視光を使用する。光力学的放射線増感剤の例として、非限定的に、以下のものが挙げられる:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、エチオポルフィリン錫SnET2、フェオボルビド−α、バクテリオクロロフィル−α、ナフタロシアニン、フタロシアニン、フタロシアニン亜鉛並びにそれらの治療上有効な類似体及び誘導体。
【0235】
放射線増感剤は、治療上有効な量の1又は複数の他のPARP阻害剤、例えば非限定的に次のものと組み合わせて投与することができる:非限定的に、標的細胞への放射線増感剤の取り込みを促進するPARP阻害剤;栄養分への治療薬の流れ及び/又は標的細胞への酸素の流れを調節するPARP阻害剤。同様に、化学増感剤も化学療法化合物の毒性効果に対する癌性細胞の感受性を増大させることが知られている。PARP阻害剤と組み合わせて使用できる化学療法剤の例として、非限定的に、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダカルバジン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン(α,β,γ)、インターロイキン2、イリノテカン、パクリタキセル、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、トポテカン、並びにそれらの治療上有効な類似体及び誘導体が挙げられる。更に、PARP阻害剤と組み合わせて使用できる別の治療薬として、非限定的に、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、5′−アミノ−5′−デオキシチミジン、酸素、カーボゲン、赤血球輸液、ペルフルオロカーボン(例えば、フルオソール−DA)、2,3−DPG、BW12C、カルシウムチャネル遮断薬、ペントキシフィリン、抗血管新生化合物、ヒドララジン、及びL-BSOが挙げられる。
【0236】
或る態様では、治療用の療法剤としては、PARPに結合し、それにより被検体のPARPレベルを低下させる抗体又は試薬が挙げられる。別の態様では、被検体のPARPレベル及び/又はPARP活性に影響を及ぼすために、細胞発現を変更することができる。治療用及び/又は予防用ポリヌクレオチド分子を、遺伝子輸送及び遺伝子療法技術を使って送達せしめることができる。更に別の剤としては、PARPに結合するか又はPARPと相互作用し、それによりその機能に影響を及ぼす小分子、及び、PARPをコードする核酸配列に結合するか又は相互作用し、それによりPARPレベルに影響を及ぼす小分子が挙げられる。それらの剤は単独で、又は当業者に既知であり且つ利用可能である他の型の治療法と組み合わせて、投与することができる。或る態様では、治療用のPARP阻害剤は、治療的か予防的かのいずれかで又はその両方で使用することができる。PARP阻害剤はPARPに対して直接作用するか、又はPARPレベルに影響を与える別の細胞成分を調節してもよい。好ましい態様では、PARP阻害剤はPARPの活性を阻害する。
【0237】
本明細書に開示される治療法は、経口投与、経粘膜投与、口腔投与、鼻腔投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、眼内投与、及び直腸投与によることができる。
【0238】
被検体におけるPARP阻害剤により治療可能な疾病の同定後の処置において使用するのに適当であるPARP阻害剤の医薬組成物は、活性成分が治療上又は予防上有効な量、即ち、治療又は予防効果を達成するのに有効な量で含まれる組成物である。特定用途に有効な実際の量は、特に、治療すべき状態及び投与経路に依存するだろう。有効量の決定は、当業者の能力の十分範囲内である。医薬組成物は、PARP阻害剤、1又は複数の医薬上許容される担体、希釈剤又は賦形剤、そして所望により追加の治療剤を含んで成る。該組成物は持続型又は徐放型放出のために処方することができる。
【0239】
組成物は局所、経口、経皮、直腸注射により、又は吸入により投与することができる。治療剤を投与する経口剤形としては、粉末、錠剤、カプセル、溶液又は乳液が挙げられる。有効量は、1回量で投与することができ、又は適当な間隔、例えば時間により分けられた一連の用量で投与することができる。医薬組成物は、医薬として使用できる製剤へと活性化合物を加工処理するのを容易にする賦形剤又は助剤を含んで成る、1又は複数の生理学的に許容される担体を使って、常法により製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。本発明の治療剤を含む医薬組成物の適当な調剤技術は、当業界で周知である。
【0240】
4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの好適な用量は、第1日に出発して一週間に2回、1時間に渡る4 mg/kg IVの投与である(4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの用量は好ましくは少なくとも2日間隔をあけられる)。4−ヨード−3−ニトロベンズアミド処置は好ましくは、28日周期で連続3週間の間、IVの点滴として一週間に2回与えられる。別の好ましい用量としては、単独療法又は組み合わせ療法のいずれかとして0.5,1.0,1.4,2.8及び4 mg/kgが挙げられる。
【0241】
活性化合物の、及び活性化合物を含んで成る組成物の適切な投与量は患者ごとに異なることが認識されるだろう。最適な用量の決定は、一般に、本発明の治療のいずれかの危険又は有害な副作用に対して治療効果のレベルをバランス調整することを包含する。選択された投与レベルは、特定のPARP阻害剤、投与経路、投与期間、化合物の排出速度、治療の持続期間、組み合わせ使用される別の薬剤、化合物及び/又は材料、並びに患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態及び前の病歴をはじめとする様々な要因に依存するだろう。一般に用量は、実質的に有害な又は有毒な副作用を引き起こすことなく、所望の効果を達成するような作用部位における局所濃度を達成する量であるだろうが、化合物の量及び投与経路は、最終的には医師の裁量であろう。
【0242】
生体内投与は、治療過程全体を通して1回で、連続的に又は断続的に(例えば適当な間隔で分割量にて)実施することができる。最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に用いられる製剤、治療の目的、処置される標的細胞、及び処置される被検体によって異なるであろう。1回又は複数回投与を実施できるが、用量レベルやパターンは治療を行う医師により選択されるだろう。
癌部位の治療基準
【0243】
別の態様において、PARP阻害剤は治療される癌についての一次治療基準と組み合わせて使用される。ここに記載するのは、或るタイプの癌についての一次治療基準である。或る態様では、PARP阻害剤がここに記載の治療基準と組み合わせて用いられる。
子宮内膜
【0244】
子宮内膜癌を治療するためには4つの一次治療基準がある:外科手術(子宮全摘出術、及び両側卵管卵巣摘出術、及び広範子宮摘出術)、放射線、化学療法及びホルモン療法。症例により前記療法に伴う術後補助療法も施される。
乳房
【0245】
現在の乳癌治療法として、乳房温存手術、タモキシフェンを使用又は不使用の放射線療法、タモキシフェンを使用又は不使用の乳房全切除術、放射線療法を伴わない乳房温存手術、乳癌のその後の再発を減らすためにタモキシフェンを投与しながらの、腋窩部リンパ節解離を伴わない予防的な両側性乳房全切除術、及び前記療法に伴う補助療法が挙げられる。
卵巣
【0246】
腫瘍が高分化型又は中分化型である場合、早期疾病を有する患者には複式子宮全摘出術及び大網摘出を伴う両側卵巣摘出術が適切である。III期及びIV期疾病と診断された患者は外科手術及び化学療法で治療される。
頸部
【0247】
子宮頸部病巣を治療するための方法としては、電気外科的ループ切除法(LEEP)、レーザー療法、円錐切除術及び凍結療法が挙げられる。I期及びII期腫瘍には、治療オプションとして卵巣全摘出術、円錐切除術、広範卵巣摘出術、単独の膣内放射線治療、リンパ節切除、術後全骨盤放射線療法と化学療法、及び放射線療法とシスプラチン又はシスプラチン/5-FUによる化学療法が挙げられる。III期及びIV期腫瘍の場合には、子宮頸癌の治療基準は、放射線療法及び/又はシスプラチン、イホスファミド、イホスファミド−シスプラチン、パクリタキセル、イリノテカン、パクリタキセル/シスプラチン、及びシスプラチン/ゲムシタビンといった薬剤による化学療法である。
精巣
【0248】
精上皮腫(セミノーマ)の治療基準は、1回量のカルボプラチン補助療法を伴うか又は用いない広範鼠径精巣摘出術、広範鼠径精巣摘出による精巣の切除に続く放射線療法、及び広範鼠径精巣摘出術に続く組合せ療法又は腹部及び骨盤リンパ節への放射線療法である。非精上皮腫患者の治療には、鼠径部を介した精巣の除去に続く後腹膜リンパ節解離、後腹膜リンパ節の切除を伴う又は伴わず、化学療法を伴うか又は伴わない生殖能力温存後腹膜リンパ節解離を伴うか又は伴わない広範鼠径精巣摘出術が挙げられる。
肺
【0249】
非小細胞肺癌(NSCLC)では、限局化した癌を除いて標準治療の結果は良くない。NSCLCを有すると新たに診断された患者は全て、新しい治療形態を評価する研究にとって有力な候補である。外科手術は最も有効に治癒的な治療オプションであり;放射線療法は少数の患者に治癒をもたらし、大部分の患者には緩和を生じることができる。補助的化学療法は、NSCLCが切除された患者に付加的効果を提供することができる。
皮膚
【0250】
基底細胞癌治療の典型的方法としては、凍結外科手術、放射線療法、電気乾燥と掻爬、及び単純切除術が挙げられる。皮膚の限局性扁平上皮癌は、治癒可能な疾病である。典型的な治療法としては、凍結外科手術、放射線療法、電気乾燥と掻爬、及び単純切除術が挙げられる。
肝臓
【0251】
肝細胞癌は、外科的切除により潜在的に治癒可能であるが、外科手術は、限局した疾病を有する患者のごく一部のみに選択される治療である。別の治療は、臨床試験段階のままであり、その例として全身又は動注化学療法、肺動脈連結又は塞栓療法、経皮エタノール注射、高周波アブレーション、凍結療法、及び放射線標識抗体が挙げられ、それらはしばしば外科的切除及び/又は放射線療法と併用される。
甲状腺
【0252】
甲状腺癌の標準治療オプションとしては、甲状腺全切除術、肺葉切除術、並びに前記外科手術とI131切除、放射線療法、チロキシンによる甲状腺刺激ホルモン抑制及び化学療法との組み合わせが挙げられる。
食道
【0253】
一次治療基準としては、外科手術のみ又は放射線療法を伴う化学療法が挙げられる。効果的な緩和は、外科手術、放射線療法、ステント挿入、光力学的療法、及びNd:YAGレーザーによる内視鏡治療の様々な組み合わせにより、個々の症例において得られるだろう。
腎臓
【0254】
外科的切除がこの疾病の治療の大黒柱である。播種性腫瘍を有する患者であっても、局所領域の治療形態が、原発性腫瘍の又は異所性ホルモン生産の症状を緩和するのに重要な役割を果たすだろう。全身療法は限定された有効性しか示していない。
【0255】
一態様では、PARP阻害剤が別の化学療法、例えばイリノテカン、トポテカン、シスプラチン、又はテモゾロミドと組み合わされ、それぞれ結腸直腸及び胃癌、黒色腫及び神経膠腫のような多数の癌の治療を改善する。別の態様では、PARP阻害剤は、進行性結腸直腸癌を治療するためにイリノテカンと、そして悪性黒色腫を治療するためにテモゾロミドと組み合わされる。
【0256】
癌患者では、放射線及び化学療法の治療効果を高めるためにPARP阻害が用いられる。別の態様では、腫瘍細胞がDNAそれ自体を修復しそして薬剤抵抗性を発生しないようにするためにPARPの標的指向が用いられ、それにより癌療法に対して一層感受性にすることができる。更に別の態様では、広範囲の腫瘍(例えば神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、結腸直腸癌、頭頸部癌)に対する様々な化学療法剤(例えばメチル化剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、シスプラチン等)並びに放射線の効果を高めるために、PARP阻害剤が用いられる。
キット
【0257】
更に別の観点では、本発明は、PARPモジュレーターにより治療可能な被検体の疾患を同定するためのキットを提供し、ここで該キットは被検体から得られた試料中のPARPレベルを検出するために使用される。例えば、該キットは、本明細書に記載されるような正常及び罹患組織中のPARPレベルを検出するために使用することができ、前記PARPレベルは罹患患者と正常被検体の試料中で異なるように存在する。一態様では、キットは、PARP及び/又はRNAを結合するのに適当である吸着剤を含んで成る支持体、及び、試料を前記吸着剤と接触させることによりPARP及び/又はPARPレベル及び/又はPAR(モノリボースとポリリボース)を同定し、そして前記吸着剤により保持されたPARPを検出するための使用説明書を含んで成る。別の態様では、該キットは、(a) PARPに特異的に結合するか又はPARPと特異的に相互作用する試薬;及び(b) 検出試薬を含んで成る。或る態様では、該キットが、標識の形又は別個の挿入物の形で、適当な操作パラメーターについての使用説明書を更に含んで成ってもよい。所望により、該キットは、前記試験試料を対照の情報標準と比較して、試料中のPARPの試験量が診断量であるかどうかを決定するような、標準又は対照の情報を更に含んで成ってもよい。
【0258】
或る態様では、治療用キットの中に別の容器中の別の組成物として治療剤を提供することもできる。適当なパッケージング及び追加の物品(例えば液体製剤用の計量カップ、空気への暴露を最少にするホイルラップなど)は当該技術分野で既知であり、そしてそれらを該キットに含めることができる。
【0259】
実施例1
GeneChipアレイは、生物医学研究の多数の領域でmRNA発現をモニタリングするのに広く用いられている。高密度のオリゴヌクレオチドアレイ技術は、それらが組織や細胞中で異なって発現されるので、研究者が一回のハイブリダイゼーション実験で数万の遺伝子をモニタリングできるようにした。遺伝子のmRNA分子の発現プロフィールは、遺伝子の配列の異なる部分をデータベースに問い合わせる長さ25 bpの11〜20のプローブ対オリゴヌクレオチドから成る、プローブセット中の各プローブからの総合強度情報により得られる。 遺伝子発現は、Affymetrixヒトゲノム遺伝子チップ(28,473 UniGeneクラスターをカバーする45,000個の遺伝子転写産物)を使って評価した。各試料からの約5μgの全RNAを、高収率の転写産物標識キットを使って標識し、標識されたRNAを製造業者の指示(Affymetrix, Inc, Santa Clara, CA)に従ってハイブリダイズし、洗浄し、そしてスキャンした。スキャンしたイメージからの転写産物シグナルレベルを評価するのに、Affimax Microarray Suite 5.0 ソフトウェア(MAS5)を使用した(Affymetrix)。各アレイ上のシグナルを、該シグナルの最低値2%と最高値2%を除外して、500のトリム平均値に標準化した。ユニークなGenbank配列を表すAffymetrixプローブセットを、以後、便宜上プローブ又は遺伝子と呼ぶ。像欠陥により引き起こされる発現中のいずれかのエラーを確かめるために、理想分布に対する各アレイの相関係数を求めた。ここで理想分布は全アレイの平均である。MAS5により報告された検出P値を使って、残りのアレイから遺伝子にフィルターをかける。アレイの95%でP>0.065を有する遺伝子を削除し、他の全てのシグナルをクラスの統計比較用に含める。
【0260】
実施例2
ヒト正常乳房及び浸潤性導管癌におけるPARP mRNAの発現
研究計画
正常胸部及び浸潤性導管癌試料を、ASCENTA(登録商標)システムについて定義された試料セットのメンバーであることをBioExpress(登録商標)システムにおいて同定した。各腫瘍試料をその%腫瘍注釈(アノテーション)についても評価し、それは処理試料に隣接して採取した切片からの顕微鏡スライド中に存在する悪性対非悪性有核細胞の比の、審査病理学者による定量測定である。
【0261】
合計237の独立した試料をこの実験で評価し、各々のIDC亜型に関する試料の数を表Aに表す。表Aは、腫瘍組織として観察された試料の割合(%)に基づいた各IDC亜型の試料数を表す。
【0262】
【表67】
【0263】
表Aは、IDC試料の>90%が50%以上の腫瘍組織から成り、そして全IDC試料の約2/3が75%以上の腫瘍組織から成ることを示し、これは腫瘍に富む試料の良好な表現モデルであることを示す。
【0264】
いずれのIDC試料も複数の亜型グループにおいて表現され得ることに注目すべきである。一例は、7つの選択されたIDC試料、それらの多重、単一又は無のIDC亜型における存在について表Bに示される。例えば、試料GID 7273はどの単一亜型にも分類されず、従って一般的IDC試料としてのみ評価される。試料GID 7287は唯一の亜型に分類され、従ってそれのII期クラス並びに一般的IDCクラスについての結果に寄与するだろう。試料GID 7387は2つの亜型に分類され、従ってそれらの亜型の両方と一般的IDCクラスについての結果に寄与するだろう。
【0265】
【表68】
【0266】
PARP遺伝子は、識別子“208644 at”を有する単一プローブセットによるHG-U133Aアレイ上に提示される。このレポートの全結果は、このプローブセットについてMASS発現シグナル強度に基づいて作成され、これを“PARP1”と称することにする。
【0267】
全試料セットの統計分析
正常及びIDC要約統計量
正常及び一般IDC試料クラスを、平均、標準偏差、標準誤差、及びt分布に基づいた幾つかの信頼区間上限により要約した。信頼区間上限(UCL)は、それらが或る数値を観察するのに確率の特定領域を同定するという点で標準偏差統計学と類似している。例えば、95%信頼区間上限は、試料の5%中に偶然期待される値と同種である。
【0268】
胸部正常データの場合、試料の数(n=68)は、t分布が限界値を設定するのに標準偏差のみを使用した時に得られた結果を近似するのに十分なほど大きい。例えば、平均+2 SDの標準胸部発現強度は365.06であり、この値は365.92の95%信頼限界に非常に近似している。これは、正常試料数が小さい時の臓器の場合には得られなかっただろう。
【0269】
表Cは、正常胸部及び一般IDC試料セットの各々についての要約統計量を示す。
【表69】
【0270】
従って、正常試料に関するIDCについての変化度は中程度であり、その変化は高度に有意である。
【0271】
個々の試料の評価
次に、一般IDC胸部試料セットと全てのIDC亜型からの各試料を、正常胸部試料分布に比較して個別に試験した。各々を90%、95%、99%及び99.9%信頼区間上限を超えるものとして定義した。64.6の90%信頼区間下限を下回ったIDC試料は1つも無かったので、LCL限界は提示されない。
【0272】
図4aは、胸部試料の各クラスについての結果の視覚的概要を示す。十字形(+)は、x軸上に示された亜型とy軸上のそれの発現強度に従った単一試料を示す。加えて、各点は、試料中に固有の腫瘍%により色づけされる。図4bは、IDCグループ内の最高の試料が最良のスケーリング解析に備えて除去されていること以外は、図4aと同一である。
【0273】
図4に基づいた結果は以下の通りである:
・IDC胸部試料中の高度なPARP1発現が正常胸部試料に比較して明らかである。
・IDC胸部試料のPARP1発現は、正常胸部試料のものよりもずっと高度の変動(即ちより大きい散らばり)を示す。
・2つの正常胸部試料は、その他の66試料よりも高いPARP1発現強度を有し、同じ基礎分布の一部でないようである。
・1つのIDC胸部試料は、非常に高い発現強度を有し、同じ基礎分布の一部でないようである。
・腫瘍%は、胸部IDC試料内で大きな程度には発現強度に影響しないようである。
【0274】
表Dは、IDCクラスとその亜型についての予め定められた信頼区間上限を超える試料の割合と数を要約する。
【0275】
【表70】
【0276】
上記要約表から得ることができる結果は次の通りである:
・IDCの大部分の亜型が95%UCLを超える試料の少なくとも30%を示したが、幾つかの顕著な例外があった:
・全てのIDC ER(+)セット
・IDC Her2-neu(+)
・全てのIDC PR(+)セット
・I期とIV期
【0277】
・PARP1発現のクラス比較
・IDC ER(-)>IDC ER(+)
・IDC Her2-neu(-)>IDC Her2-neu(+)
・IDC PR(-)>IDC PR(+)
・IDC p53(-)≒IDC p53(+)
・IDC II期,III期>IDC I期,IV期
【0278】
主要試料セット統計分析
正常及びIDC要約統計量
グループ内のその他の試料より十分高い2つの正常試料と1つのIDC試料における増加発現の理由は、それら試料について分かることを基にしても明らかでなかった。ASCENTA(登録商標)と試料を定義するのにGene Logicにより実施された品質管理法は、多変量での異常値分析を含むが、アレイ上の全遺伝子セットを使用し、別の試料セットに対する具体的比較は実施しない。それらの試料は、HG-U133Aアレイ上で測定された遺伝子の全セットに照らして異常値であると最初は同定されなかった。この特定のデータセットに照らして該試料をより詳しく評価するために、本発明者らは、浸潤性導管癌から正常試料を識別するために選択された集中的遺伝子セットを使って、品質評価を実施した。
【0279】
IDCから正常胸部試料を識別する約17,00個の遺伝子のセットを選択し、そして主要成分分析と相関分析を実施した。選択された遺伝子の各々が少なくとも2のフォールドチェンジを示し、そして0.01未満のt−検定p値を有した。分析結果は、2つの異常値試料が誤って分類されているようであり、除去すべきであることを示した。図4aと4bに同定された2つの異常値試料の調査の一部として、237試料から成る大型セットの分析を実施した。それらの分析結果は、別の3つの正常試料と5つのIDC試料を分析から除去すべきであることを示す。それらの試料は誤って分類されているようであり、この分析のための適当な試料ではない。10個の異常試料の除去により、63の正常試料と164のIDC試料が得られる。各IDC亜型の残りの数の試料を下記の表Eに具体的に記載する。
【0280】
全ての亜型が依然として少なくとも5個の試料を有している。PARP1発現に関して異常値試料として同定された1つのIDC試料は、この品質評価では異常値であると思われなかった。この試料を分析に残した。
【0281】
除去した5つの正常試料は、正常発現範囲の上端にある傾向にあった。従って、それらの5試料の除去は全平均を下げるであろう。加えて、特に2つの異常値試料の除去は、結果としてより狭い信頼限界をもたらした。IDCカテゴリーによると、同定された5つの異常値試料は、IDC発現範囲の下方末端の所にある傾向にあった。それらの試料の除去により、わずかに増加した要約統計量値が得られた。アップデートした要約統計量を表Fに提供する。IDCグループ中の変化は、正常のもの程は有意でなかった。何故なら、試料数が増加したためと、除去した5試料のどれもPARP1の異常値試料ではないようであったからである。
【0282】
【表71】
【0283】
異常値試料の除去により、IDCと正常の平均強度の間のフォールドチェンジの増加が得られた。2グループ間の有意差についてのt検定は、減少したp値をもたらした。全体的に、異常値の除去は正常試料とIDCの間の平均強度に大きな差を与え、この差は非常に有意であった。
【0284】
【表72】
【0285】
各試料の評価
表Cから観察されるように、正常試料について算出された信頼区間上限は、異常値を除去すると減少した。これは、限定された様々な限界の外側に、より多数のIDC試料を与えた。図5aと5bは、試料の削減数及びその結果生じたより厳重な信頼限界を反映する。
【0286】
結果を図4aと4bと比較すると、正常試料の平均は200以下に減少し、信頼区間上限は全237試料の分析値よりもその平均値にずっと近似している。様々なクラス間の%腫瘍には明確な差はないままである。これは、>90%腫瘍として分類された数個の試料が、浸潤性導管癌範囲の下方末端にある傾向があり、そして25%〜50%腫瘍クラスの試料がより高いPARP1発現を有するという観察に基づく。加えて、50%〜75%及び75%〜90%クラスは、腫瘍試料の発現の範囲を越えて均一に分布される傾向にある。全体として、より多数のIDC試料が前の分析の時よりも各信頼限界の上にある。
【0287】
全試料の分析において観察されるように、PARP1発現は、ER(-)、PR(-)及びHer2-neu(-)クラスにおいて、それらの各(+)クラスに比較して僅かに高い傾向がある。この観察結果はp53クラス又は腫瘍病期クラスには観察されない。この分析で個々の試料が多カテゴリーを導いているという事実は、この結論に影響を及ぼし得る。補足データセットの再調査は、ER(-)グループ中の最高のRARP1発現体が、PR(-)及びHer2-neu(-)グループ中の同一の高発現体であることを明らかにする。同じことが(+)グループ中の最低発現体にも当てはまる。
【0288】
この項目で前に推定したように、異常値を除去すると正常UCLを上回るIDC試料の数が増加する。表Gは、浸潤性導管癌の様々なカテゴリーについての各信頼限界を超える試料の数を要約する。全体で164個のIDC試料では、74%及び45%の試料が、それぞれ前回の39%及び9%に比較して、90%及び99.9%UCLを上回る。ER, PR及びHer2-neuの(-)カテゴリーでは、それらの各(+)カテゴリーに比較して高められたままである。99.9%UCLレベルの所でグループ間を比較すると、差異は最も顕著である。PRカテゴリーでの差異はER及びHer2-neuグループのものより顕著でない。
【0289】
【表73】
【0290】
結論
浸潤性導管癌におけるPARP1の発現は、正常に比較して有意に増加される。図5a及び5bは、観察結果にも関わらず、IDC試料の全てが過剰発現されるわけではない。IDCグループにおけるこの広範分布及び高度発現の方へのシフトは、約70%のIDCが正常集団の95%信頼区間上限より高いPARP1発現を有することを示唆する。この知見は、BiParにより以前に観察された結果を指示する。IDC試料の様々な亜型についての更なる分析は、増加されたPARP1発現を有すると観察されたIDCの割合が、それらのER状態が陰性(-)であるか又はそれらのHer2-neu状態が陰性(-)である場合に88%〜89%に増加することを示す。正常の95%USLを上回るPR陰性試料の割合(79%)は、顕著ではないが依然として高められている。
【0291】
これは、PARP1の過剰発現を標的指向する任意療法が、ER、PR又はHer2-neu試験が陰性である場合に一層有効であり得ることを示唆する。
【0292】
要約すると:
1.PARP1発現は正常胸部組織よりも浸潤性導管癌において高い。
2.組織病理学スライドで観察される腫瘍の割合は、PARP1発現を測定する際の重要な因子ではないようである。
3.IDCグループ中の1つの異常値の存在は、数%の個体に異常に高い発現があることを示す可能性がある。
4.浸潤性導管癌の或る亜型は、別の亜型よりも高い発現を示すようである。特に、ER, Her2-neu及びPRの(-)亜型は、それらの各(+)亜型よりも正常UCLを上回る試料の比率が高かった。
【0293】
考察及び解釈
この実験の結果は、胸部浸潤性導管癌における増加したPARP1発現と一致する。IDC中のPARP1の過剰発現が正常胸部組織における95%信頼区間上限よりも高いレベルとして定義されるならば、浸潤性導管癌の約2/3がPARP1を過剰発現する。PARP1過剰発現がPARP1阻害に対する反応性の増加を示すならば、その結果は、IDCのかなりの割合がPARP1阻害剤による治療の理にかなった候補であることを暗示する。更に、エストロゲン受容体陰性及びHer2-neu陰性のIDC亜型において、一部のPARP1過剰発現腫瘍は、全IDC集団よりも一層高かった。このことは、(1) 標準実験室分析を使った臨床試験においてPARP1過剰発現腫瘍の特定のタイプに焦点をあわせることが有利であるかもしれないこと、(2) PARP1阻害が、抗エストロゲン又は抗Her2-neu治療を受けるに適していない癌の合理的アプローチであるかもしれないことを示唆する。
【0294】
実施例3
卵巣癌及び正常卵巣におけるPARP1の組織発現
研究計画
正常卵巣及び癌性卵巣試料は、ASCENTA(登録商標)システムで定義された試料セットのメンバーであるBioExpress(登録商標)システムから選択された。どの癌試料も複数の亜型グループで表わされることに注意すべきである。一例は、10個の選択した卵巣試料及び多数の亜型におけるそれらのメンバーシップについて表Hに示される。例えば、試料GID 8757は、類内膜型の癌、並びにそれの各々の年齢、CA125状態及び病期の亜型に分類される。幾つかの亜型は互いを除いており、その他は除いていない。任意の各試料について完全な分類体系を与える。
【0295】
【表74】
【0296】
PARP1遺伝子は、識別子“208644 at”を用いて単一プローブセットによりHG-U133Aアレイ上に表示される。このレポート中の全ての結果は、このプローブセットに対するMAS5発現シグナル強度に基づいて作製された。
【0297】
統計分析
正常及び癌の要約統計量
正常及び主要な癌試料クラスを、t分布に基づく平均、標準偏差、標準誤差及び幾つかの信頼区間上限により要約した。信頼区間上限(UCL)は、それらが或る数値を観察する際に確率の特定領域を同定するという点で標準偏差統計学と同様である。例えば、95%信頼区間上限は、5%の試料中に人が偶然に予想するだろう値を上回る値と同様である。
【0298】
卵巣正常データの場合、試料の数(n=88)は、表Iに要約されるような限界を設定するのに標準偏差のみを用いた時に得られる結果とt分布が密接に近似するほど十分な位大きい。例えば、正常卵巣発現強度の平均+2標準偏差は、224.18であり、この値は224.15の95%信頼限界に非常に近似している。これは、正常試料数が小さい場合の臓器の症例では起こらないであろう。
【0299】
【表75】
【0300】
卵巣癌はいずれも正常卵巣よりも多くの平均PARP1を発現した。明細胞腺癌及びムチン性嚢胞腺癌試料は、他の亜型が発現したのより相当少ないPARP1を発現し、発現の変動も図6に示された通りに低かった。
【0301】
表Jは、表Iからのアレイデータを使って測定された、比率に基づくホールドチェンジ及びスチューデントt検定結果を表す。
【0302】
【表76】
【0303】
顆粒膜細胞腫に観察されるように、ホールドチェンジが大きいものが幾つかあり、試料サイズが小さいものは有意でないp値を与え得ることに注目すべきである。或いは、乳頭漿液性腺癌は、多数の試料を含み、その比率変化が顆粒膜細胞腫グループについて観察されるものよりも小さいにも関わらず、非常に有意なp値を与える。サイズの効果と変動に基づく有意さの両方を、結果に影響を与える試料サイズ限界と共に評価する必要がある。
【0304】
各試料の評価
次に、全ての卵巣癌亜型からの各試料を、正常卵巣試料分布に比較して個別に試験した。各々は正常セットの90%、95%、99%及び99.9%信頼区間上限を超えるものとして定義された。癌性卵巣試料のどれも111.92の90%信頼区間下限より低かったので、LCL限界は提供されない。
【0305】
図6は、卵巣試料の各クラスについての結果の視覚的要約を示す。各記号は、x軸上に示される病気クラスとy軸上に示されるそれのPARP1発現強度に従ってプロットした単一試料を表す。90%、95%、99%及び99.9%正常UCLを示す基準線は、水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、水平の実線の基準線としてプロットされる。
【0306】
図6に基づいて幾つかの解釈を行うことができる:
・癌性卵巣試料中のPARP1発現の増加は、正常卵巣試料に比較して明らかである。
・癌性卵巣試料のPARP1は、正常卵巣試料のものよりずっと高度の変動率を示す。
・PARP1発現に関して正常卵巣試料セット内に異常値試料は1つも観察されなかった。
【0307】
表Kは、卵巣癌クラスについての予め決められた信頼区間上限を超える試料の割合及び数を要約する。
【0308】
【表77】
【0309】
簡易表から幾つかの結果を引き出すことができる。
・卵巣癌の大部分の病理学的亜型は、大部分の試料が95%UCLを超えることを示した。
・乳頭状漿液性、漿液性嚢胞腺癌、顆粒膜細胞腫及びミュラー管混合腫瘍は全て、同様な95%UCLを超える試料の高発生率を示した。
・類内膜腺癌では、試料の約半分が95%UCLより高かった。
・明細胞腺癌及びムチン性嚢胞腺癌では、三分の一又はそれ未満の試料が95%UCLより高かった。
・PARP1発現の臨床亜型比較は次のことを明らかにした:
・乳頭状漿液性腺癌I型は乳頭状漿液性腺癌III型と同様であった。
・CA125増加型乳頭状漿液性腺癌は乳頭状漿液性腺癌と同様であった。
【0310】
選択された遺伝子に対するPARP1の比較
PARP1発現をHG-U133A/Bアレイセット上で測定された別の遺伝子の発現に関連付けた。相関関係は、この分析用に選択された194試料の全セットに基づいた。表Lはこの分析の結果を要約する。
【0311】
【表78】
【0312】
正の相関性は、プローブセットがPARP1と同じ方向で変化することを示す。正常試料の場合のように、PARP1が低発現を有する時、それらの関連した遺伝子の発現も低いであろうと予想される。悪性試料の場合のように、PARP1が増加した発現を有する時、それらの関連遺伝子の発現が高められると予想される。
【0313】
結論
卵巣癌試料中のPARP1の発現は、正常に比較して高められる。図6は、この結果にも関わらず、卵巣癌試料の全部がこの過剰発現を示すわけではないことを示す。卵巣癌グループにおけるこの広範な分布及び高発現の方へのシフトは、〜75%の卵巣癌が正常な卵巣発現の95%信頼区間上限を上回るPARP1発現を有することを示す。卵巣癌試料の様々な亜型に対する更なる分析は、それらが乳頭状漿液性腺癌、漿液性嚢胞腺癌、ミュラー管混合腫瘍又は顆粒膜細胞癌の亜型のものである場合、増加したPARP1発現を有することが観察される卵巣癌試料の割合が〜90%に増加することを示す。明細胞腺癌及びムチン性嚢胞腺癌は、分析した試料の三分の一又はそれ未満で増加したPARP1発現を示した。
【0314】
要約すると、
1.PARP1発現が正常卵巣組織よりも卵巣癌において高い。
2.或る亜型の卵巣癌が、別の亜型よりも高い発現レベルを示すようである。より詳しくは、乳頭状漿液性腺癌、漿液性嚢胞腺癌、ミュラー管混合腫瘍及び顆粒膜細胞腫試料は、類内膜腺癌よりも正常UCLを上回る試料の割合が高く、一方で明細胞腺癌とムチン性嚢胞腺癌よりも正常UCLを上回る試料の割合が高いことを示した。
【0315】
考察及び解釈
卵巣癌におけるPARP1の過剰発現が、正常卵巣組織の発現の95%信頼区間上限よりも高いレベルとして定義されるならば、〜75%の卵巣癌試料がPARP1を過剰発現する。PARP1過剰発現がPARP1阻害に対する増加した応答性を示すならば、その結果は卵巣癌の実質的部分がPARP1阻害剤での治療の候補となりうることを暗示し、特に、乳頭状漿液性腺癌、漿液性嚢胞腺癌、ミュラー管混合腫瘍及び顆粒膜細胞腫の亜型でそうである。
【0316】
実施例4
悪性及び正常の子宮内膜、肺及び前立腺組織試料におけるPARP1の遺伝子発現
この研究は、ヒト正常子宮内膜(n=23)、肺(n=122)及び前立腺(n=57)並びにAffymetrix HG-U133A/Bアレイセット上で測定された子宮内膜(n=57)、肺(n=101)及び前立腺(n=57)の様々な癌の研究である。
【0317】
該研究の主な目標は、正常組織試料中のPARP1発現に基づいた客観的統計閾値を使うことによってPARP1 mRNAの「過剰発現」を定義し、次いでそれらの統計閾値を超える癌試料を同定し特徴づけることであった。
【0318】
癌におけるPARP1発現は、一般に正常組織に比較して増加した。PARP1発現は、全子宮内膜癌試料の約1/4、全肺癌試料の約3/4、及び全前立腺癌試料の約1/8において、正常集団の95%信頼区間上限より上であった(“過剰発現”)。ミュラー管混合腫瘍及び肺扁平上皮細胞癌は、増加PARP1発現の最高発生率を示した。前立腺癌におけるPARP1発現は、子宮内膜及び肺組織において評価された癌型についてよりも相当低かった。
【0319】
PARP1と他の全ての遺伝子との相関関係は、80%ほどの高いPARP1との相関性を有する遺伝子を同定した。子宮内膜及び肺試料の中で、両組織中で高度に相関がある(即ちトップ40)、細胞増殖に関係した遺伝子の共通セットが同定された。
【0320】
この分析実験は、Affimetrix HG-U133A/Bアレイセット上で測定されたヒト正常及び癌性子宮内膜、肺及び前立腺試料中のPARP1 mRNAの発現の調査である。この分析は次の目的に取り組む:
・同一の又は医学的に類似の組織型からの対照試料(即ち、正常)に対して比較した時の、個々の子宮内膜、肺及び前立腺の腫瘍試料に関するPARP1の発現の特徴づけ。
・HG-U133A/Bアレイセット上の全ての他の遺伝子の発現に比較したPARP1の発現の特徴づけ。
【0321】
実験計画
子宮内膜、肺及び前立腺組織からの各正常及び癌性試料を選択した。どの癌性試料も複数の亜型グループに表示することができる。一例は、10の選択された子宮内膜試料と多数の亜型におけるそれらのメンバーシップについて表Mに示される。
【0322】
【表79】
【0323】
PARP1遺伝子は、識別子“208644 at”を用いた単一プローブセットによりHG-U133Aアレイ上に表示される。全ての結果は、このプローブセットに対するMAS5発現シグナル強度に基づいて作製され、それを“PARP1”と呼称することにする。
【0324】
統計分析―子宮内膜結果
正常及び悪性試料クラスを、t分布に基づいた平均、標準偏差、標準誤差、及び幾つかの信頼区間上限により要約する。信頼区間上限(UCL)は、それらが1つの数値を観察する際に確率の特定領域を同定するという点で標準偏差統計と同様である。例えば、95%信頼区間上限は、試料の5%中に偶然に期待するであろう値より上の値と同様である。
【0325】
表Nは、正常及び類内膜癌試料セットについての要約統計量を示す。
【表80】
【0326】
子宮内膜癌の全てが、正常子宮内膜よりも高い平均PARP1シグナル強度を示した。ミュラー混合腫瘍試料は、他の亜型のものよりも相当高いPARP1を発現した。これは、下記の図7に視覚的に示される。
【0327】
表Oは、正常に比較した時のPARP1遺伝子発現の比率に基づく倍数変化とStudent両側t検定結果を示す。
【0328】
【表81】
【0329】
次に、全ての子宮内膜癌亜型からの各試料を、正常子宮内膜試料分布に比較して個別に試験した。各々は正常セットの90%、95%、99%及び99.9%信頼限界上限を超えるものとして定義された。
【0330】
図7は、子宮内膜試料の各クラスについての結果の視覚的要約を示す。各記号は、x軸上に示された病型とy軸上に示されたPARP1発現強度に従ってプロットした単一試料を表す。正常UCLは水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、水平の実線の参照線としてプロットされる。
【0331】
癌性子宮内膜試料中のPARP1の増加発現は、正常子宮内膜試料に比較して明らかである。癌性子宮内膜試料のPARP1発現は、正常子宮内膜試料のものよりもずっと高度の変化度(即ち、より大きい広がり)を示す。PARP1発現に関して正常子宮内膜試料内には異常値が全く観察されなかった。
【0332】
表Pは、子宮内膜癌型の予め決められた信頼限界上限を超える試料の割合と数を要約する。この表は、90%UCLを超える試料の最大発生率を有するクラスに関して分類されている。従って、表の上の方のクラスは、正常閾値を超える試料を最大比率含有する。
【0333】
【表82】
【0334】
子宮内膜癌の大部分の病理学的亜型では、大部分の試料が90%UCLを超えることを示した。特に着目されるのは、ミュラー管混合腫瘍が95%UCLを超える試料の最高率(85.7%)を有し、99.9%UCLでも最高(71.4%)のままであった。
【0335】
肺結果
正常及び異常試料クラスを、t分布に基づいて平均、標準偏差、標準誤差及び幾つかの信頼限界上限により要約した。信頼限界上限(UCL)は、それらが或る値を観察するに際して確率の特定領域を同定するという点で、標準偏差統計と類似している。例えば、95%信頼限界上限は、試料の5%中に偶然に期待するであろう値を上回る値と同様である。
【0336】
表Qは、正常及び肺癌試料セットの各々についての要約統計量を示す。
【0337】
【表83】
【0338】
全ての肺癌試料が正常肺よりも高い平均PARP1シグナル強度を示した。これは、図8に視覚的に示される。
【0339】
表Rは、正常に比較した時のPARP1遺伝子発現の、比率に基づくホールドチェンジとスチューデント両側t検定結果を表す。
【0340】
【表84】
【0341】
次に、全ての肺癌亜型からの各試料を、正常肺試料分布に比較して個別に分析した。各々を正常セットの90%、95%、99%及び99.9%信頼限界上限を超えるものとして定義した。正常セットの90%信頼限界下限を下回る肺癌試料は1つもなかったので、LCL限界は示さなかった。
【0342】
図8は、肺試料の各クラスについての結果の視覚的概要を示す。各記号は、x軸上に示された病型とy軸上のそれのPARP1発現強度に従ってプロットされた単一試料を表す。90%、95%、99%及び99.9%正常UCLを示す基準線は、水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、実線の水平基準線としてプロットされる。肺癌試料におけるPARP1の増加発現は正常肺試料に比較して明白である。肺癌試料のPARP1発現は、正常肺試料のものに比較して高い変動率(即ち、より大きい広がり)を示す。
【0343】
表Sは、肺癌クラスに対して予め決められた信頼限界上限を上回る試料の割合と数を要約する。この表は、90%UCLを超える試料の最大発生率を有するクラスに関して分類されている。従って、表の上の方のクラスは、正常閾値を超える試料を高い比率で含有する。
【0344】
【表85】
【0345】
前立腺結果
表Tは、正常及び癌性の各前立腺試料セットの要約統計量を示す。
【0346】
【表86】
【0347】
前立腺癌群は、正常前立腺群よりも幾分高い平均PARP1シグナル強度を示した。これは図9に視覚的に示される。
【0348】
表Uは、正常と比較した時のPARP1遺伝子発現の比率に基づくホールドチェンジとStudent両側t検定の結果を示す。
【0349】
【表87】
【0350】
図9は、前立腺試料の各クラスについての結果の視覚的概要を示す。各記号は、x軸上に示された病型とy軸上のそれのPARP1発現強度に従ってプロットされた単一試料を表す。90%、95%、99%及び99.9%正常UCLを示す基準線は、水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、実線の水平基準線としてプロットされる。正常前立腺試料に比較して前立腺癌試料におけるPARP1のわずかな増加発現が明白である。前立腺癌試料のPARP1発現は、正常前立腺試料のものに比較して類似の変動率(即ち、同等の広がり)を示す。
【0351】
表Vは、前立腺癌亜型に対して予め決められた信頼限界上限を上回る試料の割合と数を要約する。
【表88】
【0352】
60歳以上の前立腺癌での幾分高いPARP1発現は、90%、95%及び99%UCL閾値を超える試料のわずかに高い発生率において反映される。正常群と癌群の両方からの全ての試料が99.9%UCL限界の内側であった。
【0353】
それらの結果は、肺癌及び特定の子宮内膜癌のかなりの部分、特に、ミュラー管混合腫瘍及び肺の扁平上皮癌が、PARP1阻害剤による治療の合理的な候補となり得ることを示唆する。PARP1発現は、子宮内膜癌及び肺癌においてそれらの各正常組織よりも高い。或る亜型の子宮内膜癌及び肺癌は、他の型のよりも高い発現レベルを示すように見える。具体的には、ミュラー管混合腫瘍及び肺扁平上皮癌試料は、正常のUCLを上回る試料の割合が他の型のよりも高かった。
【0354】
実施例5
組織試料中のPARP発現のモニタリング
アッセイ説明及び方法
XP(登録商標)−PCRは、単一反応における複数遺伝子の発現分析を可能にする多重RT-PCR方法論である(Quin-Rong Chen, Gordon Vansant, Kahuku Oades, Maria Pickering, Jun S.Wei, Young K. Song, Joseph Monforte & Javed Khan: “Diagnosis of the Small Round Blue Cell Tumors Using Multiplex Polymerase Chain Reaction.”Journal of Molecular Diagnostics, 第9巻,第1号,2007年2月)。この反応に用いられる遺伝子特異的プライマーと万能プライマーの限定組み合わせが、一連の蛍光標識PCR生成物を生成し、それのサイズと量をキャピラリー電気泳動装置GeXPを使って測定する。
【0355】
試料処置
簡潔に言うと、精製したばかりの組織試料を1ウエルあたり6×106細胞数で24ウエルに入れる。試料の半分を即座に溶解し、もう半分をドライアイスとエタノール浴中で迅速に凍結させ、そして−80℃で24時間保存する。Promega SV96キット(カタログ番号Z3505)を使ったAlthea Technologies, Inc. SOP 全RNA単離法に従って、各試料から全RNAを単離する。各試料から得られたRNAの濃度は、03-XP-008 、the Quant-it Ribogreen RNA Assay Kit(カタログ番号R-11490)を使ったRNA定量を用いて得られる。各試料からのRNAの一部を5 ng/μlに調整し、次いでXP(登録商標)−PCRにかける。
【0356】
XPTM-PCR
25 ngの各試料の全RNAを使って、以前に記載されたプロトコル(Quin-Rong Chen, Gordon Vansant, Kahuku Oades, Maria Pickering, Jun S.Wei, Young K. Song, Joseph Monforte & Javed Khan: “Diagnosis of the Small Round Blue Cell Tumors Using Multiplex Polymerase Chain Reaction.”Journal of Molecular Diagnostics, 第9巻,第1号,2007年2月)を利用して多重RT-PCRを実施する。RT反応は、SOP 11-XP-002、cDNA Production from RNA with the Applied Biosystems 9700中に記載された通りに実施する。PCR反応は、SOP11-XP-003, XP(登録商標)-PCR with the Applied Biosystems 9700に従って各cDNA上で実施する。RT及びPCR反応の効率をモニタリングするために、0.24アトモルのカナマイシンRNAを各RT反応液中に投入する。2種類の正の対照RNAを使用する。別のアッセイ対照として、RNAの代わりに水を個々の反応液に添加する“鋳型なし”対照(NTC)及び逆転写酵素を用いない手順に試料RNAをかけるという“逆転写酵素不含有(RT-)”対照が挙げられる。
【0357】
発現分析及び計算
PCR反応をキャピラリー電気泳動により分析する。蛍光標識したPCR反応液を希釈し、Genome Labサイズ標準400(Beckman-Coulter, Part Number 608098)と混合し、変性させ、そしてSOP 11-XP-004,Operation and Maintenance of the CEQ 8800 Genetic Analysis System を使ってBeckman Coulter上に負荷する。前記8800から得られたデータを、発現分析ソフトウェアを用いて分析して、各遺伝子についての相対発現値を得る。シクロフィリンA、GAPDH又はβ−アクチンのいずれかの発現に比較した各標的遺伝子の発現を、複製の平均として報告する。それらの値に関連する標準偏差と変動係数率(%CV)も適切ならば報告されるだろう。
【0358】
統計分析法
この分析で使用するANOVAモデルの数式形は以下の通りである:
Yijkl=μ+αi+βj+γk+ωl(ijk)+εijkl
i=1....5、j=1....4、k=1....3、l=1....3
Cov(Yijkl,Yijkl)=σω2+σε2 Cov(Yijkl,Yijlk)=σσ2 Cov(Yijkl,Yijlk)
【0359】
ここで、Yijklは、lth回反復からのkth時点でのjth投与濃度のもとでith試料中に得られる標準化されたRfu比である。モデルパラメーターμは、総平均標準化Rfu比であり、未知の定数であり、αiは試料iによる固定効果であり、βjは投与濃度jによる固定効果であり、γkは時点kによる固定効果であり、そしてωl(ijk)は、kth時点でのjth投与濃度のもとでith試料中のlth反復によるランダム効果であり、これは平均0及び分散σω2で正規分布すると仮定される。εijklは、lth反復からのkth時点でのjth投与濃度のもとでのith試料中からの標準化Rfu比と関係づけられ、平均0と分散σε2で正規分布すると仮定される、ランダム誤差項である。
【0360】
R中のnlmeパッケージ中のlme関数は、上記モデルに関するデータを分析するのみ用いられるだろう。総用量効果(H0:β1=β2=β3=β4=β5=0に対して、H1:少なくとも1つのβiが異なる)は各遺伝子についてF検定で試験される。
【0361】
本発明の好ましい態様を示し本明細書中に記載してきたが、そのような態様は単に例によってのみ提供されることは当業者に明白であろう。本発明から逸脱することなく、当業者は多数の変更、改良及び置換を当業者は実施できるだろう。本明細書中に記載の本願発明の態様に対する様々な変更を、本発明を実施する際に使用してもよいと理解すべきである。次の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、それらの請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの同等物は本発明に包含されるものである。
【背景技術】
【0001】
関連出願
本発明は、2006年6月12日出願の米国仮出願第60/804,563号及び2006年11月20日出願の米国仮出願第60/866,602号明細書に関連し、その全内容が参考として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)は、細胞増殖、分化、アポトーシス、DNA修復をはじめとする様々なDNA関連の機能に寄与し、そしてテロメア長や染色体安定性に対しても影響を与える(d'Adda di Fagagna他, 1999, Nature Gen., 23(1): 76-80)。酸化的ストレスにより誘導されるPARPの過剰活性化は、NAD+及び結果としてATPを消費し、細胞機能障害又はネクローシスをもたらす。この細胞自殺機構は、癌、脳卒中、心筋虚血、糖尿病、糖尿病性心血管機能不全、ショック、外傷性中枢神経系損傷、関節炎、大腸炎、アレルギー性脳脊髄炎、及び様々な他の形態の炎症の病理学的機序に関与している。PARPは、幾つかの転写因子の機能に関連があり、該機能を調節することも証明されている。PARPの多様な機能のため、それは様々な形態の癌及び神経変性病を包含する様々な重篤状態に対する標的となっている。
【0003】
乳癌は胸部の細胞から発生する悪性腫瘍である。それは皮膚癌以外に女性によく見られる癌であり、女性における癌関連の二番目の主な死亡原因である。節陽性乳癌はしばしばHER2/neu腫瘍遺伝子を過剰発現し、このことは細胞表面上に正常よりも多くのHER2タンパク質のコピーが存在したことを意味する。多数コピーのHER2遺伝子を有する乳癌女性は、拡大が最速であり、予後が良くなかった。この乳癌の一部は典型的にトラスツズマブ(Trastuzumab)と呼ばれるHer-2抗体で処置される。
【0004】
非機能的BRCA1及びBRCA2遺伝子並びにそれらの分子経路を担持する女性は、70才の年齢までに乳癌を発生する確率が85%まである。乳癌連携協会(Breast Cancer Linkage Consortium)の結論によると(1997)、BRCA1とBRCA2(600185)変異を担持しているという理由により癌にかかりやすい傾向にある女性の乳癌の組織学は、散発症例のものとは異なっており、そしてBRCA1変異とBRCA2変異のキャリヤーにおける乳癌の間には相違がある。
【0005】
PARP阻害剤は、BRCA1とBRCA2に欠陥がある人々において腫瘍細胞を殺すのに有効であり得る(Byrant他、2005, Nature 434 (7035): 913-7及びFarmer他, 2005, Nature 434 (7035): 917-21)。PARP阻害剤は、それらの遺伝子中に変異を有する患者の特定部分を助ける可能性がある。それらの変異は患者を早発型の癌にかかりやすくし、そして乳癌、卵巣癌、前立腺癌及び膵臓癌において見出されている。今日の早期発見法は、健康な専門家が、癌が高度に治療可能である極早期の段階で見つけることを意味する。例えば、大腸内視鏡検査法と呼ばれる単純なスクリーニング法は、癌性になる機会を有する前にポリープを発見することができる。しかしながら、癌の早期診断のより効率的且つ強固な方策が、癌の予防やより有効な治療にとって非常に有益となる。
【発明の概要】
【0006】
一観点では、本発明は、被検体においてPARP阻害剤により治療可能な疾病を同定する方法であって、前記被検体中のPARPのレベルを測定し、そして該被検体中でPARPがアップレギュレートされるならば、更にPARP阻害剤それ自体で又は別の剤もしくは治療法と組み合わせてPARP阻害剤での前記被検体の治療を提供することによる方法を提供する。
【0007】
本発明の一観点は、PARPモジュレーターにより処置可能な疾病又は疾病の一段階を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを測定し、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定がPARPの発現レベルに基づいて行われるという方法に関する。或る好ましい態様では、PARPレベルがアップレギュレートされる。本発明の一観点は、別の剤と組み合わせてPARPモジュレーターにより治療可能な疾病又は疾病の一段階を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを測定し、そして別の剤と組み合わせてPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関して決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定がPARPの発現レベルに基づいて行われるという方法に関する。
【0008】
本発明の別の観点は、被検体においてPARPモジュレーターにより疾病を治療する方法であって、該被検体の試料中のPARPのレベルを測定し、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関してPARPレベルに基づく決定を行い、そして該PARPモジュレーターにより前記被検体の病気を治療することを含んで成る方法に向けられる。好ましい態様では、前記PARPのレベルがアップレギュレートされている。
【0009】
或る態様では、前記疾病は、癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系の障害、内分泌及び神経内分泌の障害、尿路の障害、呼吸系の障害、女性生殖系の障害、及び男性生殖系の障害から成る群より選択される。或る好ましい態様では、前記癌は結腸腺癌、食道腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、島細胞腫、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞癌、乳頭癌、乳癌、腺管癌、小葉癌、腺管内癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒細胞腫、ムチン性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨の巨細胞腫、骨肉腫、咽頭癌、肺腺癌、腎臓癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から選択される。
【0010】
或る好ましい態様では、前記炎症は、ヴェグナー肉芽腫症、橋本甲状腺炎、血液細胞腫、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ過形成、変形性関節炎、潰瘍性大腸炎、及び乳頭癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、代謝性疾患は糖尿病又は肥満である。或る好ましい態様では、CVS病はアテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎、心筋梗塞、及び特発性肥大性心筋症から成る群より選択される。或る好ましい態様では、CNS病は、アルツハイマー病、コカイン乱用、統合失調症、及びパーキンソン病から成る群より選択される。或る好ましい態様では、血液リンパ系の障害は、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球白血病、及び反応性リンパ過形成から成る群より選択される。
【0011】
或る好ましい態様では、内分泌及び神経内分泌の障害は、結節性過形成、橋本甲状腺炎、島細胞腫、及び乳頭癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、尿路の障害は、腎細胞癌、移行上皮癌、及びウィルムス腫瘍から成る群より選択される。或る好ましい態様では、呼吸系の障害は、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、及び巨細胞癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、女性生殖系の障害は、腺癌、平滑筋腫、ムチン性嚢胞腺癌、及び漿液性嚢胞腺癌から成る群より選択される。或る好ましい態様では、男性生殖系の障害は、前立腺癌、良性結節性過形成及びセミノーマから成る群より選択される。
【0012】
好ましい態様では、PARPレベルの同定がアッセイ技術を含んで成る。或る好ましい態様では、該アッセイ技術がPARP遺伝子の発現を測定する。或る態様では、試料がヒト正常試料、腫瘍試料、毛髪、血液、細胞、組織、器官、脳組織、血液、血清、痰、唾液、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳脊髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液、及び射精前液から成る群より選択される。或る好ましい態様では、PARPモジュレーターはPARPレベルがアップレギュレートされる。或る態様では、PARPレベルがダウンレギュレートされる。或る態様では、PARPモジュレーターがPARP阻害剤又は拮抗剤である。或る態様では、PARP阻害剤又は拮抗剤がベンズアミド、キノロン、イソキノロン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、及び3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル、環状ベンズアミド、ベンズイミダゾール及びインドールから成る群より選択される。
【0013】
或る態様では、当該方法が、病気に関する結論を患者、医療提供者又は医療管理者に提供することを更に含んで成り、ここで前記結論は前記決定に基づくものである。或る態様では、前記治療が経口投与、経粘膜投与、口腔投与、経鼻投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群より選択される。
【0014】
本発明の別の態様は、試料の分析結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能な媒体に関し、ここで前記媒体は、PARPモジュレーターにより治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成り、前記情報は、該被検体の試料中のPARPレベルを同定しそしてPARPモジュレーターにより該疾病を治療することに関する前記PARPレベルに基づく決定を行うことにより誘導される。或る態様では、前記方法の少なくとも1つの段階がコンピューターを使って実行される。
【0015】
本発明の別の観点は、PARP阻害剤での治療に対して三重陰性〔エストロゲン(ER陰性)及びプロゲステロン(PR陰性)ホルモン受容体並びにHER2タンパク質に対する受容体を欠いている〕である患者の選択に関する。一態様では、PARP阻害剤で治療する癌のタイプが、エストロゲン(ER陰性)ホルモン受容体を欠いている。別の態様では、PARP阻害剤で治療する癌のタイプがプロゲステロン(PR陰性)ホルモンを欠いている。更に別の態様では、PARP阻害剤で治療する癌のタイプがHER2タンパク質を欠いている。
【0016】
本発明の別の観点は、BRCA依存性経路の欠陥を有する患者の群の選択及びPARP阻害剤でのそれらの治療に関する。
【0017】
本発明の更に別の観点は、PARP阻害剤又はPARP拮抗剤により治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、そしてPARP阻害剤又はPARP拮抗剤により治療可能な乳癌を同定することに関してPARPレベルに基づく決定を行い、そして前記PARP阻害剤又はPARP拮抗剤により前記乳癌を治療することを含んで成る方法に関する。或る態様では、PARPレベルがアップレギュレートされる。或る態様では、前記被検体がダウンレギュレートされたBRCA遺伝子を有する。或る方法では、PARPレベルの増加がBRCA1及び/又はBRCA2欠陥の指標である。
【0018】
一観点は乳癌の診断及び/又は治療方法である。一態様は、PARB阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記乳癌がPARP阻害剤により治療可能であるかどうかに関する前記PARPレベルに基づいた決定を行う方法である。別の態様は、PARP阻害剤により被検体中の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記乳癌がPARP阻害剤により治療可能であるかどうかに関する前記PARPレベルに基づいた決定を行い;そして前記乳癌を前記PARP阻害剤で治療することを含んで成る方法である。更に別の態様は、被検体の乳癌を分類する方法であって、前記被検体からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し、そして前記腫瘍をPARPモジュレーターで治療することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定がPARPレベルに基づいて行われるという方法である。別の態様は、被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;PARPモジュレーターで前記腫瘍を治療することに関して前記PARPレベルに基づいた決定を行い;そして前記被検体中の前記腫瘍を前記PARPモジュレーターで治療することを含んで成る方法である。好ましくは、前記乳癌が浸潤性導管癌である。或る態様では、前記癌がER、Her2-neu及び/又はPRに対して陰性である。別の態様は、被検体の癌を治療する方法であって、前記被検体からの癌試料中のER、Her2-neu及びPRの存在又は不在を同定し、そして前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成り、ここで前記癌試料がER、Her2-neu及び/又はPRに対して陰性であるならば、前記治療が実施されるという方法である。
【0019】
別の観点では、乳癌の診断及び/又は治療方法が、診断又は治療の必要な患者からのPARPレベルを予め決められたPARPレベルと比較することを含む。一態様は、PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを調べ、それにより前記乳癌がPARPモジュレーターで治療可能であることを決定する方法である。別の態様は、PARP阻害剤により患者の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを調べ、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であることを決定し;そして前記患者に前記PARP阻害剤を投与することにより前記乳癌を治療することを含んで成る方法である。典型的には、被検体(患者)は、BRCA1又はBRCA2欠損でもある。或る被検体はBRCA遺伝子の発現レベルが減少している。別の態様は、患者の乳癌を分類する方法であって、前記患者からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARPモジュレーターで治療可能であるものとして分類する方法である。1つの方法は、被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記腫瘍がPARPモジュレーターで治療可能であることを決定し;そして前記患者中の前記腫瘍を治療することを含んで成る方法である。更に別の方法は、PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARP阻害剤で治療可能なものとして同定することを含んで成る方法である。別の方法は、PARP阻害剤で患者の乳癌を治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARPP阻害剤で治療可能であることを同定し;そして前記患者に前記PARP阻害剤を投与することにより前記乳癌を治療することを含んで成る方法である。典型的には、前記乳癌は浸潤性導管癌である。浸潤性導管癌の幾つかはER、Her2-neu及び/又はPRについて陰性である。好ましい方法は、患者の癌を治療する方法であって、前記患者からの癌試料中にER、Her2-neu及び/又はPRが存在するかどうかを決定し、そして前記患者からの前記試料中にER、Her2-neu及び/又はPRが存在しない時に前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成る方法である。
【0020】
一態様は、PARPモジュレーターで治療可能なPARP媒介疾病又はPARP媒介疾病の一段階を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病がPARPモジュレーターで治療できることを決定する方法である。別の態様は、患者にPARPモジュレーターを投与することにより疾病を治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病がPARPモジュレーターで治療できることを決定し;そして前記患者に前記PARPモジュレーターを投与することにより前記患者の前記疾病を治療することを含んで成る方法である。
【0021】
本発明の一観点は、試料の分析結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能な媒体であり、前記媒体がPARPモジュレーターで治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成り;前記情報が前記被検体からの前記試料中のPARPレベルを同定しそして前記PARPレベルが予め決められたPARPレベルより上であるかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病がPARPモジュレーターで治療できることを決定することを特徴とする媒体である。
【0022】
本発明の更に別の観点は、患者集団の分類及びPARP治療に対する応答の評価である。一態様は、PARP阻害剤療法について被検体を選択する方法であって、PARP阻害剤の投与前に前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し;前記試料中のPARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し;そして前記被検体をPARP阻害剤療法のために選択することを含んで成る方法である。更に別の態様は、被検体をPARP阻害剤で治療する方法であって、前記PARP阻害剤の投与前に、前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し、前記PARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し、そして前記被検体に前記PARP阻害剤を投与することを含んで成る方法である。別の態様は、PARP阻害剤での治療を受ける被検体において該治療に対する応答を評価する方法であって、少なくとも第一及び第二の時点において前記被検体中のPARPレベルを測定し、少なくとも第一のPARPレベル及び第二のPARPレベルを得、ここで前記第一のPARPレベルに比較した前記第二のPARPレベルの減少が、治療に対する陽性応答の指標であるという方法である。典型的には、前記第一の時点がPARP阻害剤での治療の開始前であり、そして前記第二の時点がPARP阻害剤での治療の開始後である。或る態様では、前記第一の時点がPARP阻害剤での治療の開始後であり、そして前記第二の時点が第一の時点より後の時点、例えば数日、数週間又は数週間後の時点である。別の態様は、その病状が高められたPARPレベルを生じる患者を治療する方法であって、ここで患者試料のPARPレベルが予め決められたPARPレベルより高く、PARP阻害剤の治療上有効な量を投与することを含んで成る方法である。
参考として組み込まれるもの
【0023】
本明細書中に言及される全ての刊行物及び特許出願は、その個々の刊行物又は特許出願が特異的に且つ個別に参考として組み込まれたものと同じ程度に、参考として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の新規特徴は添付の特許請求の範囲中に特に記載される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の理論を利用する代表的態様を記載した下記の詳細な説明と添付の図面への参照により得られるだろう。
【0025】
【図1】図1は、本明細書中に開示される方法の段階を示すフローチャートである。
【0026】
【図2】図2は、本明細書中に開示される方法に関連した特定の操作を実行するためのコンピューターを示す。
【0027】
【図3】図3は、原発性卵巣癌におけるBRCA1及びBRCA2の低発現とPARP1の高発現との相関関係を表す。
【0028】
【図4A】図4Aは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【図4B】図4Bは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【0029】
【図5A】図5Aは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【図5B】図5Bは、浸潤性導管癌亜型におけるPARP発現を表す。
【0030】
【図6】図6は、悪性及び正常卵巣組織におけるPARP発現を表す。
【0031】
【図7】図7は、悪性及び正常子宮内膜組織におけるPARP発現を表す。
【0032】
【図8】図8は、悪性及び正常肺組織におけるPARP発現を表す。
【0033】
【図9】図9は、悪性及び正常前立腺組織におけるPARP発現を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
「阻害する」又はその文法的活用形、例えば「阻害性」という用語は、PARP活性の完全な低下を必要とすることを意図しない。このような低下は、阻害効果の不在下、例えば阻害剤の不在下、例えば本明細書中に開示されるPARP阻害剤の不存下における分子活性の好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%の低下である。最も好ましくは、該用語は、観察可能な又は計測可能な活性の低下のことを指す。治療計画では、好ましくは、阻害は、治療すべき疾病の治療的及び/又は予防的有効性を生じるのに十分なものである。
【0035】
本明細書中で用いる「試料」、「生物学的試料」という用語又はそれの文法的同等語は、或るレベルのPARPを発現していることが知られている又は疑われる材料を意味する。試験試料は、原料から得られるものを直接そのまま使用するか又は該試料の性質を変更するような前処理の後に使用することができる。該試料は任意の生物学的源、例えば組織又は抽出物、例えば細胞抽出物、及び生理学的液体、例えば全血、血漿、血清、唾液、水晶液、脳脊髄液、痰、尿、母乳、腹水、滑液、腹膜浸出液等から誘導することができる。該試料は、動物又はヒトから得られ、好ましくはヒトから得られる。該試料は、使用前に処理することができ、例えば血液から血漿を調製する処理、粘稠な液体を希釈する処理等を行うことができる。試料を処理する方法としては、濾過、蒸留、抽出、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加等を挙げることができる。
【0036】
本明細書中で用いる「被検体」という用語又はそれの文法的同等語は、温血動物、例えば健康であるか又は或る疾病を罹患しているもしくは罹患している疑いがある哺乳動物を指す。好ましくは、「被検体」はヒトを指す。
本明細書中で用いる「治療する」という用語又はそれの文法的同等語は、治療効果及び/又は予防効果を達成することを意味する。治療効果とは、治療すべき根本的な障害の撲滅又は緩和を意味する。また、治療効果は、患者がまだ根本的な障害を罹患していても患者に改善が観察されるような、根本的な障害に伴う1又は複数の生理的症状の撲滅又は緩和により達成される。予防効果については、組成物は特定の疾病を発生する危険性のある患者に、又はたとえこの疾病の診断が行われていなくても、1もしくは複数の生理的症状を報告している患者に、該組成物を投与することができる。
PARPモジュレーターにより治療可能な疾病又は疾病の段階を同定する方法
【0037】
本発明の一観点では、該方法はPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することであって、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定はPARPレベルに基づいて行われるという方法である。本発明の別の観点では、該方法はPARPモジュレーターにより被検体において疾病を治療することであって、該被検体の試料中のPARPレベルを同定し、前記PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関してPARPレベルに基づいた決定を行い、そして前記被検体の疾病を前記PARPモジュレーターにより治療することを含んで成る。本発明の別の観点では、該方法が疾病に関する結論を患者、医療提供者又は医療管理者に提供することを更に含んで成り、ここで前記結論は前記決定に基づいている。或る好ましい態様では、疾病が乳癌である。或る好ましい態様では、PARPレベルがアップレギュレートされる。或る好ましい態様では、PARPレベルがPARP遺伝子の発現を測定することによって検出される。
【0038】
本発明は、被検体の試料中のPARPレベルを同定する方法であって、ここでPARPレベルがアップレギュレートされる時、該被検体がPARP阻害剤又はPARP拮抗剤で処理されるという方法に関する。本発明は、疾病、例えば癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系の障害、内分泌及び神経分泌の障害、尿路の障害、呼吸系の障害、女性生殖系の障害、並びに男性生殖系の障害を同定する。従って、本発明は、それらの疾病をPARP阻害剤により治療可能であると同定する。好ましい態様では、本発明の方法で使用されるPARP阻害剤がPARP-1阻害剤である。本発明の方法で使用されるPARP阻害剤は、PARP、好ましくはPARP-1と直接又は間接的相互作用を介して作用することができる。ここで使用されるPARP阻害剤は、PARPをモジュレートすることができるか又はPARP経路中の1又は複数の存在物をモジュレートすることができる。PARP阻害剤は或る態様ではPARP活性を阻害することができる。
【0039】
本発明方法は、女性生殖系の癌を治療するのに特に有用である。BRCA1又はBRCA2遺伝子のいずれかの中に本質的欠陥がある女性の乳癌は、損傷したDNAを修復する特異的機構を失っているために起こる。BRCA1とBRCA2は相同組換えによるDNAの二本鎖破損修復にとって重要であり、それらの遺伝子中の変異は乳癌や他の癌にかかりやすくする。PARPは、DNA一本鎖破損の修復の経路である塩基切除修復に関与する。BRCA1又はBRCA2の機能不全は、細胞をPARP酵素活性の阻害に対して感受性にし、その結果染色体の不安定性、細胞周期の停止及びその後のアポトーシスを引き起こす。
【0040】
PARP阻害剤は、DNA修復のこの形態が欠損しており、そのためBRCA欠損腫瘍細胞及び他の同様な腫瘍細胞を殺傷するに際して効果的であるような細胞を殺傷する。正常細胞は、それらがこのDNA修復機能をまだ有することができるので、該薬剤により影響を受けないだろう。この治療は、BRCA欠損癌と同様に振る舞う乳癌の別形態にも応用できるかもしれない。典型的には、乳癌患者は腫瘍細胞を殺傷するが正常細胞もまた損傷する薬剤で治療される。悪心や脱毛といった辛い副作用をもたらし得る正常細胞への損傷がある。或る態様では、PARP阻害剤で治療することの利点は、それが標的指向されること、即ち腫瘍細胞が殺傷される一方で、正常細胞は影響を受けないようであるという点である。これはPARP阻害剤が一定の腫瘍細胞の特別な遺伝子修復を活用するためである。
【0041】
本発明は、BRCA遺伝子中に欠損のある被検体が、アップレギュレートされたPARPレベルを有することを開示する。図3は、原発性卵巣癌におけるPARPの高発現とBRCA1と2の低発現との相関関係を描写する。PARPアップレギュレーションは、別の欠損性DNA修復経路の指標及び未知のBRCA様遺伝的欠損の指標であるかもしれない。PARP-1遺伝子発現の評価は、PARP阻害剤に対する腫瘍感受性の指標である。よって、本発明は、PARPレベルを測定することにより、BRCA欠損患者における癌の早期発症を同定するための方法を提供する。PARP阻害剤により治療可能であるBRCA欠損患者は、PARPがアップレギュレートされるかどうかにより同定することができる。更に、そのようなBRCA欠損患者はPARP阻害剤により治療することができる。
【0042】
本発明の好ましい方法の幾つかの段階は、図1に描写される。本発明の範囲を限定することなく、それらの段階は互いに独立に又は一段階を別の段階の後に実施することができる。本発明の方法において1又は複数の段階を省略してもよい。段階101において疾病を患っている被検体から試料を採集する。好ましい態様では、試料がヒトの正常及び腫瘍試料、毛髪、血液及び他の生体液である。段階102において当業者に周知の技術によりPARPレベルが分析され、そして該PARPレベルに基づいて、例えばPARPがアップレギュレートされる時、段階103において該疾病をPARP阻害剤により治療可能であると同定する。段階104は、該疾病を患っている被検体をPARP阻害剤で治療することを含んで成る。本発明の範囲を限定することなく、試料収集、試料中のPARPの分析、及びPARP阻害剤での該疾病の治療のための別の技術が当業界で知られており、それらは本発明の範囲内である。
【0043】
本発明の一態様では、相同組換え欠損型である腫瘍が、PARP発現レベルを評価することにより同定される。PARPのアップレギュレーションが観察されるならば、そのような腫瘍はPARP阻害剤で治療することができる。別の態様は、相同組換え欠損型である癌を治療する方法であって、PARP発現レベルを評価し、そして過剰発現が観察されるならば、その癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成る方法である。
試料収集、調製及び分離
【0044】
本発明の生物学的試料は、様々な表現型状態、例えば様々な癌及び他の疾病の状態を有する個体から入手することができる。表現型状態の例には、罹患した被検体との比較のために利用できる正常な被検体の表現型も含まれる。或る態様では、疾病を有する被検体を、該疾病を表さない個体から得られた対照試料と比較する。
【0045】
試料は、哺乳動物、好ましくはヒトからの様々な源から収集することができ、例えば体液試料、又は組織試料を包含する。収集した試料は、ヒトの正常及び腫瘍試料、毛髪、血液、他の生体液、細胞、組織、器官又は体液であり、例として非限定的に、脳組織、血液、血清、唾液を含む痰、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳脊髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液、及び射精前液などが挙げられる。適当な組織試料としては、様々な型の腫瘍又は癌組織、又は器官組織、例えば生検で採取したものが挙げられる。
【0046】
試料は、長期的な期間に渡り(例えば約1日1回、1週間に1回、1か月に1回、半年に1回又は年1回)、個体から繰り返し収集することができる。一人の個体から一定期間に渡り多数の試料を得ることは、以前の検出からの結果を確認するため及び/又は例えば疾病の進行、薬剤の治療等の結果としての生物学的パターンにおける変化を同定するために利用できる。
【0047】
試料調製及び分離は、収集した試料及び/又はPARPの分析の種類に依存して、いずれの手順も含むことができる。そのような手順としては、例示目的でのみ、濃縮、希釈、pHの調整、多量のポリペプチド(例えばアルブミン、γグロブリン、及びトランスフェリン等)の除去、保存剤や校正剤の添加、タンパク質阻害剤の添加、変性剤の添加、試料の脱塩、試料タンパク質の濃縮、抽出、及び脂質の精製が挙げられる。
【0048】
試料調製は、非共有結合複合体として別のタンパク質(例えば担体タンパク質)に結合されている分子を単離することも可能である。この方法は、特定の担体タンパク質(例えばアルブミン)に結合したそれらの分子を単離することができ、又は更に一般的な方法を使用でき、例えば酸を使ったタンパク質変性により、全ての担体タンパク質から結合分子を遊離し、次いで担体タンパク質を除去することができる。
【0049】
不要なタンパク質(例えばヒトに豊富な、無益の、又は検出不可能なタンパク質)の試料からの除去は、高親和性試薬、高分子量フィルター、超遠心及び/又は電気透析を使って達成することができる。高親和性試薬としては、豊富なタンパク質に選択的に結合する抗体又は別の試薬(例えばアプタマー)が挙げられる。試料調製としては、イオン交換クロマトグラフィー、金属イオンアフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水性クロマトグラフィー、クロマト分画、吸着クロマトグラフィー、等電点電位泳動、及び関連技術を挙げることができる。分子量フィルターとしては、サイズ及び分子量に基づいて分子を分離する膜が挙げられる。そのようなフィルターは、更に逆浸透、ナノ濾過、限外濾過及び精密濾過を使用してもよい。
【0050】
超遠心は、試料から望ましくないポリペプチドを除去する方法である。超遠心は、光学系を使って粒子の沈降(またはそれの欠如)をモニタリングしながら、約15,000〜60,000 rpmで試料を遠心分離する方法である。電気透析は、電位勾配の影響下で半透膜を通してイオンを或る溶液から別の溶液へと移動させるという方法において半透膜又は電気膜を使用する方法である。電気透析において使用する膜は、正の又は負の電荷を有するイオンを選択的に輸送する能力を有するか、反対の電荷のイオンを拒絶するか、又は、サイズと電荷に基づいてイオン種が半透膜を通って移動できるようにするので、その結果電気透析を電解質の濃縮、除去又は分離に利用可能にする。
【0051】
本発明における分離及び精製は、当業界で既知の任意手法、例えばキャピラリー電気泳動(例えばキャピラリー中又はチップ上での)、又はクロマトグラフィー(例えばキャピラリー中、カラム中またはチップ上での)を包含する。電気泳動は、電界の影響下でイオン性分子を分離するために用いることができる方法である。電気泳動はゲル、キャピラリー中またはチップ上のマイクロチャンネル中で実施することができる。電気泳動に使われるゲルの例としては、デンプン、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アガロース、又はその組み合わせが挙げられる。ゲルは架橋により、界面活性剤もしくは変性剤の付加により、酵素もしくは抗体の固定(アフィニティー電気泳動)又は支持体の固定(ザイモグラフィー)により、及びpH勾配の導入により、改変することができる。電気泳動に用いられるキャピラリーの例としては、エレクトロスプレー法と連動するキャピラリーが挙げられる。
【0052】
キャピラリー電気泳動(CE)は、複雑な疎水性分子と高度に帯電した溶質とを分離するのに好ましい。CE技術はマイクロ(微小)流体チップ上で実施することもできる。使用するキャピラリーと緩衝液の種類に応じて、CEはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリー等速電気泳動(cITP)及びキャピラリー電気クロマトグラフィー(CEC)といった分離技術に更に分けることができる。エレクトロスプレーイオン化法にCE技術を組み合わせた態様としては、揮発性溶液、例えば揮発性酸及び/又は塩基を含有する水性混合物と、有機物、例えばアルコールやアセトニトリルの使用が挙げられる。
【0053】
キャピラリー等速電気泳動(cITP)は、分析物が等速でキャピラリーを通過して移動するが、それにもかかわらずそれら各々の移動度により分離されるという技術である。キャピラリーゾーン電気泳動は(CZE)は、遊離溶液CE(FSCE)としても知られ、分子上の電荷により決定される分子種の電気泳動移動度、及び分子が移動中に遭遇する摩擦抵抗(これはしばしば分子のサイズに正比例する)の違いに基づく。キャピラリー等電点電気泳動(CIEF)は、弱イオンに帯電可能な両性分子を、pH勾配中での電気泳動により分離できるようにする。CECは古典的な高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)とCEとの融合技術である。
【0054】
本発明で使われる分離及び精製技術は、当業界で既知の任意のクロマトグラフィー法を包含する。クロマトグラフィーは、移動相と固相との間の或る分析対象の示差的な吸着と溶出又は分配に基づくことができる。クロマトグラフィーの様々な例としては、非限定的に、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられる。
PARPレベルの同定
【0055】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、ポリ(ADP−リボース)シンターゼ及びポリADP−リボシルトランスフェラーゼとしても知られている。PARPは、核タンパク質に(並びにそれ自身にも)結合でき、ポリ(ADP−リボース)ポリマーの形成を触媒し、それによってそれらのタンパク質の活性を変更する。該酵素は、DNA修復を高める役割を果たし、その上恐らく核のクロマチンを調節する役割も果たす(例えば概説については、D. D'amours他、“Poly(ADP)-ribosylation reactions in the regulation of nuclear functions.” Biochem. J. 342:249-268 (1999) を参照のこと)。
【0056】
PARP-1は、N末端DNA結合領域、自己修飾領域及びC末端触媒領域、並びにPARP-1と相互作用する様々な細胞タンパク質を含む。N末端DNA結合領域は、2個の亜鉛フィンガーモチーフを含む。転写エンハンサー因子1(TEF-1)、レチノイドX受容体α、DNAポリメラーゼα、X線修復交差補完因子−1(XRCC1)及びPARP-1自身が、この領域でPARP-1と相互作用する。自己修飾領域は、タンパク質−タンパク質相互作用モジュールのうちの1つであるBRCTモチーフを含む。このモチーフは、最初BRCA1(乳癌感受性タンパク質1)のC末端において発見されたが、DNA修復、組換え、及び細胞周期チェックポイントの制御に関する様々なタンパク質中に存在する。POU−ホメオ領域含有オクタマー転写因子−1(Oct-1)、Yin Yang (YY)1及びユビキチン結合酵素9(ubc9)は、PARP-1中のこのBRCTモチーフと相互作用できる。
【0057】
PARPファミリーの遺伝子のうち15を超える構成員が哺乳動物ゲノムに存在する。PARPファミリータンパク質及びポリ(ADP)−リボースをADP−リボースへと分解するポリ(ADP−リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG)は、DNA損傷応答や転写調節をはじめとする様々な細胞調節機能に関与し、そして多くの点で発癌及び癌の生物学に関与しうる。
【0058】
幾つかのPARPファミリータンパク質が同定されている。タンキラーゼ(Tankyrase)は、テロメア調節因子1(TRF-1)の相互作用タンパク質として発見され、そしてテロメア調節に関与する。ボールトPARP(VPARP)は、核−細胞質トランスポーターとして働くボールト複合体中の一成分である。PARP-2、PARP-3、及び2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン誘導性PARP(Ti PARP)も既に同定されている。従って、ポリ(ADP−リボース)代謝を様々な細胞調節機能に関連させることができる。
【0059】
この遺伝子ファミリーの一構成員はPARP-1である。PARP-1遺伝子産物は、細胞核において高レベルで発現され、そしてその活性化はDNA損傷に依存する。理論に束縛されることなく、PARP-1は、アミノ末端のDNA結合領域を介して一本鎖又は二本鎖のほつれに結合すると信じられている。この結合がカルボキシ末端の触媒領域を活性化し、そして標的分子上にADP−リボースポリマーの形成をもたらす。PARP-1は自身が、中心に位置する自己修飾領域のため、ポリADP−リボシル化の標的となる。PARP-1のリボシル化は、DNAからのPARP-1分子の解離を引き起こす。結合、リボシル化及び解離の全過程は非常に迅速に起こる。このPARP-1のDNA損傷部位への一時的結合が、DNA修復機構の動員をもたらすか、或いは修復機構の動員に十分な位、長く組換えを抑制する働きをするのかもしれないと示唆されている。
【0060】
PARP反応のためのADPリボースの源は、ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)である。NADは細胞のATP貯蔵庫から細胞内で合成されるので、PARP活性の高レベルの活性化は細胞エネルギー貯蔵庫の枯渇を迅速に導き得る。PARP活性の誘導は、細胞のNAD及びATPプールの枯渇と関連がある細胞死を引き起こし得ることが証明されている。PARP活性は酸化的ストレス又は炎症の間といった多くの事例で誘導される。例えば、虚血組織の再流入の間に反応性一酸化窒素が生じ、その一酸化窒素が、過酸化水素、ペルオキシニトレート及びヒドロキシル基をはじめとする追加の反応性酸素種の生成をもたらす。後者の酸素種は直接DNAを損傷することができ、そしてその結果生じた損傷がPARP活性の活性化を誘導する。しばしば、細胞のエネルギー貯蔵庫が枯渇しそして細胞が死ぬといったほどの、PARP活性の十分な活性化が起こるようである。炎症の間に同様な機構が生じ、内皮細胞と炎症前細胞が一酸化窒素を合成し、その一酸化窒素が周囲細胞に酸化的DNA損傷を引き起こし、続いてPARP活性の活性化を引き起こすと思われる。PARP活性化に起因する細胞死は、虚血性再流入障害又は炎症に由来する組織損傷の程度の主要な寄与因子であると思われる。
【0061】
PARP活性の阻害は、癌の治療に潜在的に有用である。DNアーゼの脱阻害(PARP-1阻害による)は、癌細胞に特異的であるDNA損傷を開始させ、そして癌細胞のみにおいてアポトーシスを誘導することができる。PARP小分子阻害剤は、イオン化放射線により又は或る種のDNA損傷化学療法剤により殺傷することに対して治療腫瘍細胞系を感受性にすることができる。PARP阻害剤による単独療法又は化学療法剤もしくは放射線との組み合わせ療法が効果的治療法である。化学療法剤との組み合わせ療法は、単独では無効である化学療法剤の濃度で腫瘍の退行を誘導することができる。更に、PARP-1変異マウス及びPARP-1変異細胞系は、放射線に対して及び同様なタイプの化学療法剤に対して感受性であるかもしれない。
【0062】
本発明の一観点は、PARP阻害剤のようなPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関し、ここで前記疾病の同定は、被検体のPARPレベルを同定することに基づく。好ましい態様では、PARPが被検体においてアップレギュレートされているならば、被検体をPARP阻害剤で処置する。前立腺癌と乳癌を有する患者におけるPARP-1発現の相対レベルは、正常被検体と比較してアップレギュレートされる。同様に、卵巣癌と子宮内膜癌を有する被検体のPARP-1発現の相対レベルも正常被検体と比較してアップレギュレートされる。様々な癌の中で、各々の癌型は互いに異なる程度へのアップレギュレーションを示す。例えば、異なる乳癌は異なる程度へのアップレギュレーションを示す。同様に、異なる卵巣癌は異なる程度へのアップレギュレーションを示す。それは、PARP-1アップレギュレーションが、PARP-1阻害剤により治療可能なPARP-1媒介疾病を同定することに役立つだけでなく、被検体のPARP-1のアップレギュレーションの程度に依存してPARP-1阻害剤による治療の効果を推定/測定することにも役立つ。PARP-1遺伝子発現の評価は、PARP-1阻害剤に対する腫瘍感受性の指標であることができる。それはアップレギュレートされたPARP-1のレベルに依存して被検体の投薬方式を個別化することにも役立つ。
【0063】
或る態様では、患者からの試料中のPARPレベルを、予め決められた標準試料に対して比較する。患者からの試料は、典型的には罹患組織、例えば癌細胞又は組織からのものである。標準試料は同一患者又は異なる患者からのものであることができる。標準試料は、典型的には正常な非罹患試料である。しかしながら、或る態様では、例えば疾病の病期決定又は治療の効果の評価には、標準試料が罹患組織からのものである。標準試料は数人の異なる被検体からの試料の組み合わせであることができる。或る態様では、患者からのPARPレベルが予め決められたレベルと比較される。この予め決められたレベルは、典型的には正常試料から得られる。本明細書中に記載されるような「予め決められたPARPレベル」とは、例としてのみであるが、治療用に選択することができる患者を評価するため、PARP阻害剤治療に対する応答を評価するため、PARP阻害剤と第二の治療剤治療の組み合わせに対する応答を評価するため、そして/又は癌、炎症、疼痛及び/又は関連症状について患者を診断するために用いられるPARPレベルのことである。予め決められたPARPレベルは全ての患者に等しく適用可能な単一の数であるか、又は予め決められたPARPレベルは患者の特定の部分集合に従って異なることができる。例えば、男性は女性よりも異なる予め決められたPARPレベルを有する可能性があり;非喫煙者は喫煙者よりも異なる予め決められたPARPレベルを有する可能性がある。患者の年齢、体重及び身長は個体の予め決められたPARPレベルに影響を及ぼし得る。更に、予め決められたPARPレベルは各患者に個別に決定されたレベルであることができる。予め決められたPARPレベルは、任意の適当な標準であることができる。例えば、予め決められたPARPレベルは、同一者又は患者選択が評価されることになっている他の異なる者より得ることができる。そのような方法では、患者の選択の進行を一定時間に渡りモニタリングすることができる。加えて、標準は、別のヒト又は複数のヒト、例えばヒトの選択群の評価から得ることもできる。そういった方法では、その選択が評価されることになっているヒトの選択の範囲を、別のヒト、例えば着目のヒトと同様な状況にある別のヒト、例えば類似の又は同一の状態を患っているヒトと比較することができる。
【0064】
本発明の或る態様では、予め決められたレベルからのPARPの変化が約0.5倍、約1.0倍、約1.5倍、約2.0倍、約2.5倍、約3.0倍、約3.5倍、約4.0倍、約4.5倍、又は約5.0倍である。或る態様では、変化の倍数が約1未満、約5未満、約10未満、約20未満、約30未満、約40未満又は約50未満である。別の態様では、予め決められたレベルに比較したPARPレベルの変化が約1以上、約5以上、約10以上、約20以上、約30以上、約40以上、又は約50以上である。予め決められたレベルからの好ましいホールドチェンジは、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、及び約3.0である。
【0065】
下記に示す第I〜XXIII表は、癌、代謝性疾患、内分泌系及び神経内分泌系障害、心血管系疾病(CVS)、中枢神経系疾患(CNS)、男性生殖系の疾患、女性生殖系の疾患、呼吸系、尿路の障害、炎症、血液リンパ系の障害及び消化系の障害を患っている被検体におけるPARP-1遺伝子発現データを要約する、PARP経路としては、DNA損傷に応答したアポトーシスシグナル伝達、アポトーシスにおけるカスパーゼカスケード、D4-DGIシグナル伝達経路、FASシグナル伝達経路(CD95)、HIV-1 Nef:Fas及びTNFの陰性エフェクター、アポトーシスと細胞生存におけるAIFの正反対の役割、並びにTNFR1シグナル伝達経路が挙げられる。
【0066】
全ての表中、Cは対照であり、Eは実験試料であり、SDは標準偏差であり、そしてFCは発現レベルのフォールドチェンジである。第II表中の発現強度スケールは0、187.0、374.0、561.0及び748である。第IV表中の発現強度スケールは0、206.0、412.0、617.0及び823である。第VI表と第VII表中の発現強度スケールは0、97.0、194.0、291.0及び388である。第XV表中の発現強度スケールは0、139.0、278.0、417.0及び556である。第XVII表中の発現強度スケールは0、250.0、500.0、750.0及び999である。第XXII表中の発現強度スケールは0、132.0、264.0、397.0及び528である。第XXIII表中の発現強度スケールは0、180.0、360.0及び541.0である。
【0067】
FCの正の値はアップレギュレートされたPARP-1を表し、そしてFCの負の値はダウンレギュレートされたPARP-1を表す。従って、本発明は、PARP-1により治療可能であるアップレギュレートされたPARP-1を有する様々な疾病を同定し、そして本発明はまた、PARP-1活性化剤又は作用剤で治療可能であるダウンレギュレートされたPARP-1を有する様々な疾病も同定する。第I表は、アップレギュレートされたPARP-1を有する様々な癌、例えば混合癌、ウィルムス腫瘍、重篤な腺癌等を示す。表Iはまた、ダウンレギュレートされたPARP-1を有する癌、例えば橋本甲状腺炎、良性結節過形成、腺扁平上皮癌、島細胞腫、胃の転移性腺癌等を示す。従って、本発明はPARP-1阻害剤により治療可能であるアップレギュレートされたPARP-1を有する様々な癌を同定し、そして本発明はPARP1活性化剤又は作用剤により治療可能であるダウンレギュレートされたPARP-1を有する様々な癌も同定する。
【0068】
第III表は、様々な乳癌についてのPARP-1のアップレギュレーションを示す、導管及び小葉混合型の浸潤性癌がダウンレギュレートされたPARP-1を示す。第VIII表は、治療中の被検体と治療中でない被検体についてのPARP-1レベルを示す。第X表は、アップレギュレートされたPARP-1を有する様々な呼吸系疾患を示す、原発型の腺扁平上皮癌がダウンレギュレートされたPARP-1を示す。第XII表は、対照被検体と炎症を患っている被検体におけるPARP-1発現を示し、そして罹患した患者におけるアップレギュレートされた及びダウンレギュレートされたPARP-1を表す。第XVI表は、対照被検体とCNS秒を患っている被検体におけるPARP-1発現を示し、罹患した被検体におけるアップレギュレート及びダウンレギュレートされたPARP-1を表す。第XIX表は、対照被検体と血液リンパ系障害を有する患者におけるPARP-1発現を示し、そして罹患した被検体におけるアップレギュレート及びダウンレギュレートされたPARP-1を表す。第XXI表は、対照被検体と内分泌及び神経内分泌系の様々な障害を患っている被検体におけるPARP-1発現を示し、そして罹患した被検体におけるアップレギュレートされた及びダウンレギュレートされたPARP-1を示す。
【0069】
本発明は、癌患者のPARPレベルを、癌又は抗腫瘍性治療の過程の間、及び好ましくは更に治療の開始前と開始時点においても、モニタリングすることができるというモニタリング法を提供する。癌を持たない正常個体のPARPレベルに比較した癌患者のPARPレベルの減少又は増加の測定が、患者の疾病進行及び/又は克服に関連した次の評価を可能にする:(i) より重篤な段階又は等級の癌;(ii) 疾病進行へのより短縮した時間;及び/又は(iii) 癌治療に対する患者の陽性応答、即ち有効な応答の欠如。例えば、正常レベルに比較した、並びにその患者自身の事前に決められたレベルに比較した、患者のPARPレベルの一定期間に渡るモニタリングに基づいて、治療計画を変更すべきかどうか、即ち、より集中的にするか又はあまり集中的でなくすべきかどうか;患者が彼もしくは彼女の治療に良く応答するかどうか;そして/又は病気状態、例えば癌の進行状態もしくは相、又は癌もしくは腫瘍性疾患の寛解、減少又は退行を決定するため;に関して決定を行うことができる。本発明は、PARP診断法及び該診断法の使用方法も包含する。
【0070】
患者のPARPレベルの分析は、医者が最良の治療法を選択できるようにするため、又はアップレギュレートされた又はダウンレギュレートされたPARPレベルに基づいて、より集中的な治療法及び治療計画を使用できるようにするため、特に有効で且つ有益である。より集中的治療又は組み合わせ治療及び計画は、あまり良くない患者の予後や全生存期間を打ち破るのに役立ち得る。この情報を携えて、医療実施者は、PARP阻害剤での治療、及び/又はより集中的な治療といった特定の治療タイプを提供することを選択できる。
【0071】
患者のPARPレベルを一定期間(数日、数週、数か月間であることができ、或る場合には数年間であるか、又は様々なその合間)に渡りモニタリングする場合、患者の体液試料、例えば血清又は血漿を、医師や臨床医のような医療実施者により定められた通りに、一定間隔で採集することができ、PARPレベルを測定し、そしてそれを治療過程もしくは病気過程に渡り正常個体のレベルと比較することができる。例えば、患者試料を採取し、毎月、2カ月毎、又は1,2もしくは3ヵ月間隔を組み合わせて、本発明に従ってモニタリングすることができる。その上、或る期間に渡って得られた患者のPARPレベルを、モニタリング期間の間、互いに又は正常な対照のPARP値と便利に比較することができ、それによって、長期PARPモニタリングのための内部対照又は個人的対照として、患者自身のPARP値を提供することができる。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
【表11】
【0083】
【表12】
【0084】
【表13】
【0085】
【表14】
【0086】
【表15】
【0087】
【表16】
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【表17】
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【表18】
【0090】
【表19】
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【表20】
【0092】
【表21】
【0093】
【表22】
【0094】
【表23】
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【表24】
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【表25】
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【表26】
【0098】
【表27】
【0099】
【表28】
【0100】
【表29】
【0101】
【表30】
【0102】
【表31】
【0103】
【表32】
【0104】
【表33】
【0105】
【表34】
【0106】
【表35】
【0107】
【表36】
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【表37】
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【表38】
【0110】
【表39】
【0111】
【表40】
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【表41】
【0113】
【表42】
【0114】
【表43】
【0115】
【表44】
【0116】
【表45】
【0117】
【表46】
【0118】
【表47】
【0119】
【表48】
【0120】
【表49】
【0121】
【表50】
【0122】
【表51】
【0123】
【表52】
【0124】
【表53】
【0125】
【表54】
【0126】
【表55】
【0127】
【表56】
【0128】
【表57】
【0129】
【表58】
【0130】
【表59】
【0131】
【表60】
【0132】
【表61】
【0133】
【表62】
【0134】
【表63】
【0135】
【表64】
【0136】
【表65】
【0137】
【表66】
PARPの分析のための技術
【0138】
PARPの分析としては、PARPレベルのDNAもしくはRNA分析をはじめとするPARP遺伝子発現の分析及び/又はモノ−及びポリ−ADPリボシル化レベルを含むPARPの活性の分析を挙げることができる。本発明の範囲を限定することなく、当業界で既知である多数の技術をPARPの分析に使用することができ、それらの技術は全て本発明の範囲内である。そのような検出技術の幾つかの例を下記に与えるが、それらの技術は決して本発明に使用できる様々な検出技術に対する限定ではない。
遺伝子発現プロファイリング:
【0139】
遺伝子発現プロファイリング方法には、ポリヌクレオチド及びポリリボヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づいた方法、ポリヌクレオチド及びポリリボヌクレオチドの配列決定に基づいた方法、並びにプロテオミクスに基づいた方法が挙げられる。試料中のmRNA発現の定量に当業界で最も汎用される既知方法としては、ノーザンブロット法及びin situハイブリダイゼーション法(Parker & Barnes, Methods in Molecular Biology 106:247-283 (1999));RNアーゼ保護アッセイ(Hod, Biotechniques 13:852-854 (1992));並びにPCRに基づいた方法、例えば逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weis他、Trends in Genetics 8:263-264 (1992))が挙げられる。或いは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク質二本鎖といった特別な二本鎖を認識できる抗体を使用することができる。配列決定に基づいた遺伝子発現分析法の代表例としては、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、及び超並列特徴的配列シークエンシング(MPSS)による遺伝子発現分析、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、クロマチン免疫沈澱法(ChIP)、単一ヌクレオチド多形(SNP)及びSNPアレイ、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、タンパク質結合アレイ及びDNAマイクロアレイ(遺伝子又はゲノムチップ、DNAチップ、又は遺伝子アレイとしても一般に知られる)が挙げられる。
【0140】
逆転写酵素PCR(RT-PCR):
最も高感度で且つ最も柔軟性のある定量的PCRベースの遺伝子発現プロファイリング法はRT-PCRであり、この方法は、薬剤処置をした又は未処置の、正常及び腫瘍組織中の、異なる試料集団中のmRNAレベルを比較するため、遺伝子発現のパターンを特徴づけるため、密接に関連したmRNA間を区別するため、及びRNA構造を分析するために用いることができる。
【0141】
第一段階は標的試料からのmRNAの単離である。例えば、出発材料は、典型的にはヒト腫瘍又は腫瘍細胞系、及び対応する正常組織又は細胞系からそれぞれ単離された全RNAであることができる。RNAは様々な正常及び罹患した細胞及び組織、例えば腫瘍、例えば乳、肺癌、結腸直腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮等、又は腫瘍細胞系から単離することができる。もしmRNAの起源が原発性腫瘍であるならば、mRNAは例えば凍結又は保存した固定組織、例えばパラフィン包埋し固定した(例えばホルマリン固定した)組織試料から抽出できる。mRNA抽出の一般法は当業界で周知であり、Ausubel他、Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley & Sons (1997)をはじめとする分子生物学の標準参考書の中に開示されている。
【0142】
特に、RNAの単離は、製造業者の教示に従って、製造業者からの精製キット、緩衝液セット及びプロテアーゼを使って実施できる。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心により単離することができる。RNAがPCRの鋳型として働くことができない場合、RT-PCRによる遺伝子発現プロファイリングの第一段階は、該RNAをcDNAに逆転写し、続いてPCR反応によりそれを指数的に増幅させることである。最も汎用される2つの逆転写酵素は、ニワトリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV-RT)とモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV-RT)である。逆転写段階は、典型的には発現プロファイリングの目標及び状況に依存して、特定プライマー、ランダムヘキサマー又はオリゴdTプライマーを使って開始される。次いで誘導されたcDNAをその後のPCR反応の鋳型として使用することができる。
【0143】
誤差及び試料−試料間変動の影響を最小にするため、通常RT-PCRは内部標準を使って実施される。理想的な内部標準は、異なる組織間で一定レベルにて発現され、そして実験処置により影響を受けない。遺伝子発現のパターンを標準化するのに最も汎用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びβ−アクチン遺伝子のmRNAである。
【0144】
より最近のRT-PCR技術の変形は、二元標識された蛍光発生プローブを通してPCR生成物蓄積を測定する、リアルタイム定量的PCRである。リアルタイムPCRは、各標的配列に対する内部競合剤を標準化に使用する定量的競合PCRとも、試料内に含まれる標準遺伝子又はRT-PCR用のハウスキーピング遺伝子を使った定量的比較PCRとも互換性である。
【0145】
蛍光顕微鏡検査:
本発明の或る態様は、PARPの分析のための蛍光顕微鏡検査を包含する。蛍光顕微鏡検査は、観察される構造物の分子組成を、抗体のような高い化学的特異性の蛍光標識プローブの使用を通して同定できるようにする。それは蛍光団(フルオロフォア)をタンパク質に直接接合させ、そしてこれを細胞中に戻し入れることにより実施できる。蛍光類似体は天然タンパク質のように振る舞い、従ってこのタンパク質の細胞内の分布及び挙動を明らかにすることができる。NMR、赤外分光法、円二色法及び他の技術と一緒に、タンパク質固有の蛍光減衰及びそれに伴う蛍光異方性の観察、衝突消光及び共鳴エネルギー移動が、タンパク質検出のための技術である。自然蛍光タンパク質を蛍光プローブとして使用することができる。オワンクラゲAquorea victoriaは、緑色蛍光タンパク質(GFP)として知られる自然蛍光タンパク質を生産する。標的タンパク質へのそれらの蛍光プローブの融合は、蛍光顕微鏡検査による可視化とフローサイトメトリーによる定量を可能にする。
【0146】
例示目的にのみ、ある種の該プローブは、標識、例えばフルオレセイン及びその誘導体、カルボキシフルオレセイン、ローダミン及びそれらの誘導体、アト標識、赤色蛍光体及び橙色蛍光体:cy3/cy5、長寿命を有するランタニド錯体、800 nmまでの長波長標識、DYシアニン標識、及びフィコビリタンパク質である。例示目的でのみ、該プローブは接合体、例えばイソチオシアネート接合体、ストレプトアビジン接合体、及びビオチン接合体である。例示目的のみ、該プローブは酵素基質、例えば蛍光発生及び色素生成基質である。例示目的でのみ、該プローブは蛍光クロム、例えばFITC(緑色蛍光、励起/発光=506/529 nm)、ローダミンB(橙色蛍光、励起/発光=560/584 nm)、及びナイルブルーA(赤色蛍光、励起/発光=636/686 nm)である。蛍光ナノ粒子は様々なタイプのイムノアッセイに利用できる。蛍光ナノ粒子は異なる材料、例えばポリアクリロニトリル及びポリスチレン等に基づいている。蛍光分子ローターは、分子の回転が束縛されると蛍光になるミクロ環境制限のセンサーである。分子の束縛の例としては、色素の増加(凝集)、抗体への結合、又はアクチンの重合が挙げられる。IEF(等電点電気泳動)は、両性物質、主としてタンパク質を分離するための分析手段である。蛍光IEFマーカーを用いるIEF−ゲル電気泳動の利点は、勾配の形成を直接観察できることである。蛍光IEF−マーカーは280nm(20℃)でのUV吸収により検出することも可能である。
【0147】
ペプチドライブラリーは、固体支持体上でそして着色レセプターを使って合成することができ、次いで着色した固体支持体を1つずつ選択することができる。レセプターが何ら色を示さない場合、それらの結合抗体を染色することができる。該方法は、タンパク質レセプターについて使用できるだけでなく、合成した人工レセプターの結合性リガンドをスクリーニングする際と新たな金属結合性リガンドをスクリーニングする際にも同様に使用できる。HTS及びFACS(蛍光活性化細胞選別器)の自動化方法も使用できる。FACS機器は、最初にキャピラリー管を通して細胞を流し、次いでそれらの蛍光強度を検出することにより細胞を分類する。
【0148】
イムノアッセイ:
本発明の或る態様は、PARPの分析のためのイムノアッセイに関する。電気泳動的に分離したタンパク質のウエスタンブロットのような免疫ブロット法では、単一のタンパク質がそれの抗体により同定できる。イムノアッセイは、分析物(analyte)が抗体分子の限定プールを目当てに標識抗原と競争するという競合結合イムノアッセイ(例えばラジオイムノアッセイ、EMIT)であることができる。イムノアッセイは、抗体が過剰に存在しそして標識されている非競合型であることもできる。分析物の抗原複合体が増加すると、標識抗体−抗原複合体の量も増加しうる(例えばELISA)。実験動物中への抗原注射により生産されるならば、抗体はポリクローナルであり、細胞融合と細胞培養技術により生産されるならば、抗体はモノクローナルである。イムノアッセイでは、抗体は分析物である抗原のための特異的試薬として働くことができる。
【0149】
本発明の範囲及び内容を制限することなく、イムノアッセイの種類の非限定例としては、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(エンザイムリンクドイムノソルベントアッセイ)のようなエンザイムイムノアッセイ、EMIT(酵素増幅イムノアッセイ技術)、微粒子エンザイムイムノアッセイ(MEIA)、LIA(ルミネセントイムノアッセイ)、及びFIA(蛍光イムノアッセイ)が挙げられる。それらの技術は、検体中の生物学的物質を検出するために利用できる。一次又は二次抗体のいずれかとして使用される抗体は、放射性同位体(例えば125I)、蛍光色素(例えばFITC)、又は蛍光発生もしくは冷光発生反応を触媒し得る酵素(例えばHRP又はAP)で標識することができる。
【0150】
ビオチン、別名ビタミンHは、アビジンとストレプトアビジンに対する特異的親和性を有する補酵素である。この相互作用は、ビオチン化ペプチドを定性及び定量試験のための様々なバイオテクノロジーアッセイにおいて有用なツールにする。立体障害を最少にすることによりビオチン/ストレプトアビジン認識を改善するために、ビオチンとペプチド自体との距離を大きくすることが必要となり得る。これは、ビオチンとペプチドの間にスペーサー分子(例えば6−アミノヘキサン酸)を結合することにより達成できる。
【0151】
ビオチン化タンパク質についてのビオチン定量アッセイは、タンパク質上のビオチン標識の数を正確に測定する感受性蛍光アッセイを提供する。ビオチン化ペプチドは、少なくとも1つの結合相手をストレプトアビジンが被覆されたビーズ、膜、スライドガラス又はマイクロタイタープレート上に固定化することを必要とする、様々な生体医学スクリーニング系に広く利用されている。該アッセイは、試薬のビオチン結合部位からの消光色素による標識リガンドの置き換えに基づいている。立体的に制限されていて試薬に近づきにくい多重標識タンパク質中のビオチン基を暴露するために、タンパク質を消化するプロテアーゼで該タンパク質を処理することができる。
【0152】
EMITは、通常の分離段階を回避する競合結合イムノアッセイである。タンパク質が酵素で標識されており、そして酵素−タンパク質−抗体複合体が酵素的に不活性であるイムノアッセイ型は、未標識タンパク質の定量を可能にする。本発明の或る態様は、PARPを分析するためのELISAに関する。ELISAは、酵素反応と組み合わせた固定支持体上に取り付けた選択的抗体に基づいており、少量のタンパク質を検出可能にする系を生じる。それはエンザイムイムノアッセイ又はEIAとしても知られる。タンパク質がそれに対して作製された抗体、即ち、タンパク質がその抗原となるもの、により検出される。
【0153】
該試験は、抗体を固体表面、例えば試験管の内壁に固定し、そして酵素に連結した同一抗体を調製する必要がある場合がある。酵素は無色の基質から着色生成物を生成するもの(例えばβ−ガラクトシダーゼ)であることができる。試験は、例えば、アッセイすることになっている抗原溶液(例えばタンパク質)を試験管に充填することにより実施してもよい。存在する任意の抗原分子が、固定化された抗体分子に結合するだろう。抗体−酵素接合体を反応混合物に添加してもよい。該接合体の抗体部分が、予め結合されている任意抗原分子に結合し、抗体−抗原−抗体「サンドイッチ」を作製する。未結合の接合体を洗浄除去した後、基質溶液を添加する。一定時間の後、反応を停止させ(例えば1N NaOHの添加により)、そして形成した着色生成物の濃度を分光光度計中で測定する。色の強度は、結合した抗原の濃度に比例する。
【0154】
ELISAは抗体の濃度を測定するように改変することもでき、その場合には、ウエルを適当な抗原により被覆する。抗体を含有する溶液(例えば血清)を添加する。固定化抗原に結合するのに十分な時間の後、試験しようとする抗体に対する抗体から成る、酵素接合抗免疫グロブリンを添加することができる。未反応の四役を洗浄除去した後、基質を添加する。発生した色の強度が、結合した酵素標識抗体の量(すなわち試験しようとする抗体の濃度)に比例する。
【0155】
本発明の或る態様は、PARPを分析するためのラジオイムノアッセイを包含する。少量の化合物の生体内(in vivo)代謝、分布及び結合を調べるのに放射性同位体を利用できる。体内の1H,12C,31P,32S及び127Iの放射性同位体、例えば3H,14C,32P,35S及び125Iが用いられる。96ウエルプレート中でのレセプター固定法では、抗体又は化学的方法を使ってレセプターを各ウエルに固定し、そして放射性標識リガンドを各ウエルに添加して結合を誘導する。未結合のリガンドを洗い流し、次いで結合したリガンドの放射能又は洗浄されたリガンドの放射能の定量分析により、標準を測定することができる。次いで、スクリーニング標的化合物の添加により、レセプターとの競合結合反応を誘発させる。化合物が標準の放射性リガンドよりもレセプターに対して高い親和性を示すならば、放射性リガンドの大部分がレセプターに結合せず、溶液中に残っているのだろう。従って、結合した放射性リガンド(又は洗浄されたリガンド)の量を分析することにより、該レセプターに対する試験化合物の親和性を示すことができる。
【0156】
メンブランフィルター法は、レセプターを96ウエルプレートに固定できない場合、又はリガンド結合を液相にて実施しなければならない場合に必要である。言い換えれば、溶液中でのリガンド−レセプター結合反応の後、反応溶液をニトロセルロース濾紙を通して濾過すると、リガンドを含む小分子がそれを通過し、タンパク質レセプターのみが濾紙上に残るであろう。レセプターに強力に結合したリガンドのみが濾紙上に残るので、標準放射性リガンドの定量分析により、添加した化合物の相対親和性を同定することができる。
【0157】
本発明の或る態様は、PARPの分析のための蛍光イムノアッセイを包含する。蛍光免疫学的方法は、高度に特異的なレセプター部位への標識リガンドと未標識のものとの競合結合に基づいている。蛍光技術は、分析物の濃度変化に伴う蛍光寿命の変化に基づいたイムノアッセイに利用される。この技術は、エオシン(受容体)へのエネルギー移動により蛍光が消光されるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(供与体)のような短寿命の色素の場合に上手くいく。多数の光冷光化合物、例えば、シアニン、オキサジン、チアジン、ポルフィリン、フタロシアニン、赤外蛍光生成多核芳香族炭化水素、フィコビリタンパク質、スクアレン及び有機金属錯体、炭化水素並びにアゾ色素を用いることができる。
【0158】
蛍光免疫学的方法は、例えば、不均一又は均一であることができる。不均一イムノアッセイは、遊離型の標識分析物から結合型分析物の物理的分離を含んで成る。分析物又は抗体は、固体表面に取り付けてもよい。該技術は競合的(高選択性のため)又は非競合的(高感受性のため)であることができる。検出は直接(使用するのが1種の抗体のみ)又は間接(第二種の抗体を使用する)であることができる。均一イムノアッセイ技術は全く物理的分離を使用しない。二重抗体蛍光標識抗原粒子は、抗原と蛍光体の両方に対して向けられた抗体との平衡反応に参加する。標識抗原と未標識抗原が、限られた数の抗−抗原抗体を目当てに競争する。
【0159】
蛍光イムノアッセイ法の例としては、単純蛍光標識法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、時間分解蛍光(TRF)、及び走査型プローブ顕微鏡検査(SPM)が挙げられる。単純蛍光標識法は、レセプター−リガンド結合、瞬間蛍光の使用による酵素活性、並びに様々な生体内の生理学的変化、例えばpH、イオン濃度及び電圧の変化の蛍光インジケーターとして、使用することができる。TRFは、別の蛍光分子の発光が終わった後でランタニド系列の蛍光を選択的に測定する方法である。TRFはFRETと併用でき、そしてランタニド系列は供与体にも受容体にもなることができる。走査型プローブ顕微鏡検査では、例えば捕捉段階で、少なくとも1つのモノクローナル抗体が固相に付着され、そして走査型プローブ顕微鏡検査は、固相の表面上に存在する抗原/抗体複合体を検出するのに用いられる。走査型トンネル式顕微鏡検査法の使用は、多くのイムノアッセイ系で抗原/抗体複合体を検出するのに一般に用いられる標識を使用する必要を省く。
【0160】
タンパク質同定法:
タンパク質同定法の単なる例として、エドマン分解からの低処理性シークエンシング法、質量分析法、ペプチド質量フィンガープリント法、デノボ配列決定、及び抗体に基づくアッセイ法が挙げられる。タンパク定量アッセイとしては、蛍光色素ゲル染色、標識又は化学修飾法〔即ち、同位体コード親和性標識(ICATS)、組み合わせ分画診断クロマトグラフィー(COFRADIC)〕が挙げられる。精製タンパク質は三次元結晶構造の測定にも利用でき、その三次元結晶構造は分子内相互作用をモデル化するのに使用できる。三次元結晶構造を決定する一般法としては、X線結晶分析法及びNMR分光法が挙げられる。タンパク質の三次元構造を表す特徴は、質量分析法を用いて探査することができる。空間的に近くにあるが配列中では離れているタンパク質の部分を、化学的架橋結合を用いて連結することにより、全体構造についての情報を推論することができる。溶媒からの重水素によるアミドプロトンの交換を追跡することにより、該タンパク質の様々な部分の溶媒露出度を探査することが可能である。
【0161】
一態様では、蛍光活性化細胞選別法(FACS)がPARP発現細胞を同定するのに用いられる。FACSはフローサイトメトリーの特殊な型である。それは2以上の容器に生物学的細胞の異種混合物を選別する方法であって、各細胞の特異的な光散乱と蛍光特性に基づいて、一度に一細胞を選別する方法である。それは個々の細胞からの蛍光シグナルの定量的記録と、着目の特定細胞の物理的分別を提供する。別の態様では、PARP発現を評価するのにマイクロ流体系装置が用いられる。
【0162】
患者試料からのPARPを特徴づけるのに質量分析法も利用できる。全タンパク質のイオン化方法は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)の2つである。第一の場合、完全タンパク質が上述の2つの技術のいずれかによりイオン化され、次いで質量分析計に導入される。第二の場合、トリプシンやペプシンといった剤を使って、タンパク質が小ペプチドに酵素消化される。別のタンパク質分解消化剤も使用される。次いでペプチド生成物の収集物を質量分析計に導入する。これはしばしばタンパク質分析の「ボトムアップ」アプローチと呼ばれる。
【0163】
総タンパク質質量分析は、飛行時間型(TOF)MSか、フーリエ変換イオンサイクロ(登録商標)トロン共鳴(FT-ICT)のいずれかを使って実施される。ペプチド質量分析に使われる装置は、四重極イオントラップである。多重段階四重極飛行時間及びMALDI飛行時間装置は本出願での使用を見いだすだろう。
【0164】
2つの方法が、タンパク質を又は酵素消化からのそのペプチド生成物を分画するのに用いられる。第一の方法は、完全タンパク質を分画し、二次元ゲル電気泳動と呼ばれるものである。第二の方法は、高性能液体クロマトグラフィーであり、酵素消化後のペプチドを分画するのに用いられる。或る状況では、それらの技術の両方を組み合わせることが必要かもしれない。
【0165】
タンパク質を同定するのに使用できる2つの質量分析法がある。ペプチド質量は、既知タンパク質のリストの消化から生じる推定質量のデータベース検索への入力としてタンパク質分解ペプチドの質量を用いる。もし参照リスト中のタンパク質配列が、実験値と一致する有意な数の推定質量を与えるならば、このタンパク質が元の試料中に存在していたという幾らかの証拠となる。
【0166】
タンデムMSもタンパク質同定法の1つである。衝突誘起解離は、特定のペプチドイオンから断片セットを生じさせるのに主流な用途で用いられる。断片化法は主に、ペプチド結合を途中で切断する開裂生成物をもたらす。
【0167】
多数の様々なアルゴリズムアプローチが、タンデム質量分析法(MS/MS)、及びペプチドデノボ配列決定及び配列標識検索法から、ペプチド及びタンパク質を同定するために記載されている。データ分析特性の包括的範囲を組み合わせる1つのオプションは、PEAKSである。別の現存する質量分析法ソフトウェアとしては次のものが挙げられる:ペプチド断片フィンガープリントSEQUEST、Mascot、OMSSA及びX!Tandem。
【0168】
タンパク質は質量分析法により定量することもできる。典型的には、炭素(C13)又は窒素(N15)の安定した(例えば非放射性の)重い方の同位体を1つの試料に組み込み、そして他方の試料を対応する軽い同位体(例えばC12及びN14)で標識する。2つの試料を分析前に混合する。異なる試料から誘導されたペプチドは、それらの質量の差によって識別することができる。それらのピーク強度の比は、それらペプチド(及びタンパク質)の相対的存在量に相当する。同位体標識法は、SILAC(細胞培養物中のアミノ酸による安定同位体標識)、トリプシン触媒О18標識、ICAT(同位体コード化親和性標識)、ITRAQ(相対及び絶対的定量用の同位体標識)である。「半定量的」質量分析法は、試料を標識することなしに実施できる。典型的には、これはMALDI分析(直線モードでの)で行われる。この場合個々の分子(典型的にはタンパク質)のピーク強度又はピーク面積は、試料中のタンパク質の量に相関する。しかしながら、個々のシグナルはタンパク質の一次構造、試料の複雑さ、及び機器の設定に依存する。
【0169】
N末端配列決定は、既知タンパク質の同定に役立ち、組換えタンパク質の正体及び忠実性(解読枠、翻訳開始点など)を確かめ、NMR及び結晶学データの解釈を助け、タンパク質間の同一性度を証明し、又は抗体作製のための合成ペプチドのデザインにデータを提供する。N−末端配列決定は、エドマン分解化学を利用し、タンパク質のN末端からアミノ酸残基を順番に除去し、そしてそれらを逆相HPLCにより同定する方法である。感受性は数100フェントモルのレベルであることができ、しばしば数10ピコモルの出発物質から長い配列解読(20〜40残基)を得ることができる。純粋なタンパク質(>90%)は容易に解釈されるデータを生じるが、不十分に精製されたタンパク質混合物も有用なデータ、厳密なデータ解釈への題材を提供する場合がある。N末端修飾(特にアセチル化された)タンパク質は、遊離の第一アミノ基の不在がエドマン化学を妨害するので、直接には配列決定できない。しかしながら、保護されたタンパク質の制限タンパク質分解(例えば臭化シアンを使用)は、機器の各サイクルでアミノ酸混合物を生成できるようにし、有意な配列情報を解釈するためにそれをデータベース分析にかけることができる。C末端配列決定は、タンパク質の構造と活性に影響を及ぼす翻訳後修飾である。様々な病的状態が、正常に機能しないタンパク質プロセシングに関連づけられるので、C末端配列決定はタンパク質構造及びプロセシング機構の調査のための追加の手段を提供する。
PARP阻害剤で治療可能な疾病の同定
【0170】
本発明の或る態様は、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することであって、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、前記PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定はPARPレベルに基づいて行われる。PARPレベルの同定は、RNAの分析、PARPレベルの分析、及び/又はPARP活性の分析を含み得る。疾病の場合にPARPレベルがアップレギュレートされる時、該疾病をPARP阻害剤で治療することができる。或る態様では、PARPレベルが血管形成関連疾患を同定するために利用される。
【0171】
一態様では、PARPアップレギュレーションは、BRCA欠損癌の一具現化として用いられ、そしてPARPアップレギュレーションは、PARPモジュレーターにより治療可能なBRCA媒介癌を同定するためにも用いられる。別の態様では、PARPレベルの同定は、相同組換え(HR)による二本鎖切断のDNA修復の調節の変化のマーカーとして使用され、該RARPレベルはPARPモジュレーターにより治療可能な疾病を同定することに関する決定を行うために利用される。PARPレベルの同定は、参照試料との1又は複数の比較を伴うことがある。参照試料は、疾病を患っているかいないかいずれかである(例えば正常被検体)又は患者である、同一被検体から又は異なる被検体から得ることができる。参照試料は一人の被検体又は複数の被検体から得ることができ、或いは合成的に調製される。同定は、同定データとデータベースとの比較も含み得る。本発明の一態様は、疾病を患っている被検体のPARPレベルを同定し、そしてそれを正常被検体のPARPレベルと相関させることに関する。或る態様では、PARPレベルを相関させる段階は、ソフトウェアアルゴリズムにより実施される。好ましくは、生じたデータをコンピューター読み取り可能形式に変換し;そして、罹患患者のPARPレベルと正常被検体のPARPレベルを表すシグナルを検出するため、ユーザーが入力したパラメーターに従って、該データを分類するアルゴリズムを実行する。
【0172】
PARPレベルの同定及び分析は、数多くの治療及び診断用途を有する。臨床用途としては、例えば、疾病の検出、病的状態を識別し予後の情報を与えること、PARP阻害剤での処置といった治療法の選択、及び/又は治療応答の推定、病期診断、疾病過程の同定、治療効果の推定、患者軌跡のモニタリング(例えば病気の開始前)、拒絶応答の推測、治療に伴う効果と毒性のモニタリング、及び再発の検出が挙げられる。
【0173】
本発明に開示されるような、PARPレベルの同定及びその後のPARP阻害剤により治療可能な被検体の疾病の同定は、治療薬の医薬開発プロセスにおいて実施可能又は助成するのに使用できる。PARPレベルの同定は、臨床試験で処置を受けている患者の病態を指摘することができ、そして治療中の該病態の変化を示すことができる。PARPレベルの同定は、PARP阻害剤での治療の効果を示すことができ、そして様々な療法に対するそれらの応答に従って、患者を階層化するのに利用できる。
【0174】
本明細書に開示される方法は、患者の病態を同定するために使用できる。一態様では、該方法は該疾病の初期段階を検出するために用いられる。別の態様では、該方法は同定された疾病を等級付けするために用いられる。或る態様では、患者、医療提供者(例えば医師や看護婦)又は医療管理者が、診断、予後、及び/又は治療オプションの選択、例えばPARP阻害剤治療、を行うのに被検体のPARPレベルを使用することができる。
【0175】
別の態様では、本明細書に記載の方法は、特定の治療(例えばPARP阻害剤での治療)に対する任意個体についての応答の確率を推定し、治療を選択し、又は特定個体に対する治療で起こり得る副作用を先取りするために使用することができる。また、該方法は、一定期間に渡り治療効果を評価するのにも使用できる。例えば、生物学的試料を一人の患者から、該患者が治療を受けている期間に渡って入手することができる。異なる試料中のPARPレベルを互いに比較して、治療の効果を決定することができる。また、本明細書に記載の方法は、異なる疾病療法の効果及び/又は異なる集団(例えば民族、家族歴など)における1もしくは複数の治療に対する応答を比較するのに利用できる。
【0176】
或る好ましい態様では、本発明の方法の少なくとも1つの段階が、図2に描写されたようなコンピューターを使って実施される。図2は、本発明の方法に関連した特定の操作を実行するためのコンピューターを描写する。コンピューター200は、システムバス203を介して一組の入力/出力装置202に接続された中心の演算ユニット201を含む。入力/出力装置202は、キーボード、マウス、スキャナー、データポート、ビデオモニター、液晶ディスプレー、プリンター、などを含んでもよい。一次及び/又は二次メモリーの形のメモリー204もシステムバス203に接続される。図2のそれらの構成要素は、標準コンピューターを特徴づける。この標準コンピューターは本発明に従ってプログラムされる。特にコンピューター200は本発明の方法の様々な操作を実施するようにプログラムされる。
【0177】
コンピューター200のメモリー204は同定モジュール205を保存することができる。言い換えれば、同定モジュール205は、図1の段階102,103及び104に関連した操作を実施することができる。本明細書中で用いられる用語「同定モジュール」としては、非限定的に、被検体の試料中のPARPを分析し;所望により試験試料の該PARPレベルデータを参照試料と比較し;試料中のPARPレベルを同定し;疾病を同定し;そしてPARP阻害剤により治療可能な疾病を更に同定することが挙げられる。同定モジュールは決定モジュールも包含し、ここで前記決定モジュールは、PARP阻害剤で治療可能な疾病を同定することに関する決定を行う、及び/又は前記疾病に関する結論を患者、医療提供者もしくは医療管理者に提供する、実行可能命令を包含する。同定モジュール205の実行コードは、比較や診断を実施するために多数の技術を使用してもよい。
【0178】
本発明の或る態様は、PARPモジュレーターにより治療可能な被検体の疾病に関する情報を有するコンピューター読み取り可能な媒体を包含する。前記情報は、被検体の試料中のPARPレベルを同定し、PARPモジュレーターにより治療可能な疾病を治療することに関してARPレベルに基づいた決定を行うことにより、誘導される。前記媒体は、試料中の1又は複数のPARPレベルの参照パターンを含む。この参照パターンを用いて、試験被検体から得られたパターンを比較し、そしてこの比較を基に該疾病の分析を行うことができる。この参照パターンは、正常被検体、即ち、疾病を持たない被検体、異なるレベルの疾病を有する被検体、様々な重症度の疾病を有する被検体からのものであることができる。それらの参照パターンは、被検体の疾病の診断、予後、治療効果の評価、及び/又は病態の重症度の決定に利用することができる。本発明の方法は、被検体の試料中のPARPレベルに関する情報及び/又は本発明のPARP阻害剤により治療可能な疾病を同定することに関する決定に関する情報を、例えばインターネットの使用により、1もしくは複数のコンピューター間に送信することも包含する。
疾病
【0179】
様々な疾病は、非限定的に、副腎皮質癌、肛門癌、再生不良性貧血、胆汁管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移、成人CNS脳腫瘍、小児CNS脳腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、小児非ホジキンリンパ腫、直腸結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌及び下咽頭癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓癌、肺癌、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、精巣癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(成人軟組織癌)、黒色腫皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、胃癌、睾丸癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレーム・マクログロブリン血症、慢性リンパ球白血病、並びに反応性リンパ過形成を包含する。
【0180】
疾病として、癌の血管新生、炎症、変性疾患、CNS病、自己免疫疾患、及びHIVを含むウイルス性疾患が挙げられる。本明細書に記載の化合物は、病原体に対する細胞応答の調節にも有効である。本発明は、他の疾病、例えばウイルス疾患を治療する方法も提供する。ウイルス疾患の幾つかの例としては、非限定的に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト単純ヘルペスウイルス1型及び2型、サイトメガロウイルス(CMV)、危険なHIV同時感染が挙げられる。
【0181】
疾患の幾つかの例を下記に記載するが、本発明の範囲を限定するものではなく、当業界で知られている他の疾患も存在し、それらは本発明の範囲に含まれる。
癌の例
【0182】
癌の例として、非限定的に、リンパ腫、癌腫及びホルモン依存性腫瘍(例えば、乳癌、前立腺癌又は卵巣癌)が挙げられる。成人又は小児のいずれかの治療可能な異常細胞増殖状態又は癌として、固相腫瘍/悪性腫瘍、限局性進行腫瘍、ヒト軟部肉腫、リンパ行性転移を含む転移性癌、多発性骨髄腫、急性及び慢性白血病並びにリンパ腫を含む血液細胞悪性腫瘍、口癌、喉頭癌及び甲状腺癌を含む頭頸部癌、小細胞癌及び非小細胞癌を含む肺癌、乳癌、小細胞癌及び腺管癌を含む乳癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸結腸癌及び結腸直腸の新生物に付随するポリープを含む消化管癌、膵癌、肝癌、膀胱癌及び前立腺癌を含む泌尿器癌、卵巣癌、子宮癌(子宮内膜腫を含む)及び卵胞の固形腫瘍を含む女性生殖器の悪性腫瘍、腎細胞を含む腎癌、内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、アストロサイトの脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系における転移性腫瘍細胞侵襲を含む脳癌、骨肉腫を含む骨癌、悪性黒色腫、ヒト皮膚角質細胞の腫瘍増殖、扁平上皮癌、基底細胞癌、血管周囲細胞腫及びカポジ肉腫を含む皮膚癌が挙げられる。
【0183】
本発明の幾つかの好ましい実施態様では、癌として、結腸腺癌、食道腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、島細胞腫、直腸腺癌、胃腸間質性腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞腺癌、乳頭癌、乳癌、腺管癌、小葉癌、乳管癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、粒状細胞腫、ムチン性嚢胞腺癌、頚部腺癌、外陰部扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0184】
本発明の更に好ましい実施態様では、癌として、子宮内膜のミュラー管混合腫瘍、導管及び小葉混合型浸潤性癌、ウィルムス腫瘍、卵巣のミュラー管混合腫瘍、漿液性嚢胞腺癌、卵巣腺癌(乳頭漿液型)、卵巣腺癌(類内膜型)、転移性浸潤性乳房小葉癌、精巣精上皮腫、前立腺良性結節性過形成、肺扁平上皮癌、肺巨大細胞癌、肺腺癌、子宮内膜腺癌(類内膜型)、浸潤性導管癌、皮膚基底細胞癌、胸部浸潤性小葉癌、線維嚢胞性疾患、線維腺腫、神経膠腫、慢性骨髄性白血病、肝細胞癌、粘液性癌、シュワン腫、腎臓移行上皮癌、橋本甲状腺炎、乳房の転移性浸潤性導管癌、食道腺癌、胸腺腫、葉状腫瘍、直腸腺癌、骨肉腫、結腸腺癌、甲状腺乳頭癌、平滑筋腫、及び胃腺癌が挙げられる。
浸潤性管癌:
【0185】
胸部の浸潤性導管癌(IDC)におけるPARP1の発現は正常のものに比較して上昇していた。IDC症例の三分の二以上で、PARP1発現が正常集団の95%信頼限界上限より上であった(「過剰発現」)。IDCのエストロゲン受容体(ER)陰性及びHer2-neu陰性サブグループは、腫瘍の約90%においてPARP1過剰発現の発生を有した。
【0186】
本発明の一観点では、IDCがPARP阻害剤で治療される。一態様では、PARP阻害剤の投与前に、PARP発現並びにER及び/又はプロゲステロン受容体(PR)及び/又はHer2-neu状態が評価される。好ましくは、IDCのエストロゲン受容体陰性及びHer2-neu陰性サブグループを治療するのにPARP阻害剤が用いられる。更により好ましくは、抗エストロゲンまたは抗Her2-neu療法について定性しない癌をPARP阻害剤が用いられる。好ましい態様では、三重陰性乳癌、例えば三重陰性湿潤性管癌を治療するのにPARP阻害剤が用いられる。
三重陰性癌:
【0187】
一態様では、三重陰性癌をPARP阻害剤で治療する。好ましくは、PARPレベルが三重陰性癌で高められており、そしてPARPの過剰発現が観察されるならば、その癌をPARP阻害剤で治療する。「三重陰性」乳癌とは、エストロゲン(ER陰性)、プロゲステロン(PR陰性)ホルモン及びHer2タンパク質のための受容体を欠いている腫瘍を意味する。これは、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤及びヘルセプチンのような幾つかの有力な癌撲滅薬に対して抵抗性にする。三重陰性癌の大部分の形態には外科手術や化学療法が標準的な治療法である。好ましい態様では、三重陰性癌を治療するためにそれらの標準治療法がPARP阻害剤と組み合わされる。
炎症の例
【0188】
炎症の例として、非限定的に、全身性炎症状態並びに単球、白血球及び好中球の遊走と誘引に局所的に関連付けられる状態が挙げられる。炎症は、病原性生物(グラム陽性菌、グラム陰性菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫、例えば原虫及び蠕虫類を含む)による感染、移植片拒絶(腎臓、肝臓、心臓、肺又は角膜などの固形器官の拒絶、並びに移植片対宿主病(GVHD)を含む骨髄移植片の拒絶)、又は限局性慢性もしくは急性自己免疫又はアレルギー反応から生じるものが挙げられる。自己免疫疾患としては、急性糸球体腎炎;リウマチ性又は反応性関節炎;慢性糸球体腎炎;炎症性腸疾患、例えばクローン病、潰瘍性大腸炎及び壊死性腸炎;顆粒球輸血に付随する症候群;炎症性皮膚病、例えば接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬;全身性紅斑性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性甲状腺炎、多発性硬化症;及び糖尿病の幾つかの型、又は被検体自身の免疫系による攻撃が病原性組織破壊を引き起こすという他の任意の自己免疫状態が挙げられる。アレルギー反応としては、アレルギー性喘息、慢性気管支炎、急性及び遅延型過敏症が挙げられる。全身性炎症性病態として、外傷、熱傷、虚血後の再灌流(例えば、心臓、脳、腸、又は末梢脈管構造における血栓の発生、例えば心筋梗塞及び脳卒中)、敗血症、AIDS又は多臓器機能障害症候群が挙げられる。炎症細胞の動員は、動脈硬化プラークにも起こる。
【0189】
幾つかの好ましい態様において、炎症には、非ホジキンリンパ腫、ウェグナー肉芽腫症、橋本甲状腺、肝細胞癌、胸腺萎縮症、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ組織増生、骨関節炎、潰瘍性大腸炎、乳頭癌、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性胆嚢炎、慢性胆嚢炎、硬変、慢性唾液腺炎、腹膜炎、急性膵炎、慢性膵炎、慢性胃炎、腺筋症、子宮内膜症、急性子宮頸管炎、慢性子宮頸管炎、リンパ様過形成、多発性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病に対する続発性肥大、原発性IgA腎症、全身性紅斑性エリテマトーデス、乾癬、肺気腫、慢性腎盂腎炎、及び慢性膀胱炎が挙げられる。
内分泌及び神経内分泌障害の例
【0190】
内分泌障害の例として、副腎、乳房、生殖腺、膵臓、副甲状腺、下垂体、甲状腺の障害、小人症などが挙げられる。副腎障害として、非限定的に、アジソン病、多毛症、癌、多発性内分泌腫瘍、先天性副腎過形成、及び褐色細胞腫が挙げられる。乳房障害として、非限定的に、乳癌、乳腺線維嚢胞症、及び女性化乳房が挙げられる。生殖腺障害として、非限定的に、先天性副腎過形成、多嚢胞性卵巣症候群及びターナー症候群が挙げられる。膵臓障害として、非限定的に、糖尿病(I型及びII型)、低血糖症、及びインスリン抵抗性が挙げられる。副甲状腺障害として、非限定的に、副甲状腺機能亢進、及び副甲状腺機能低下症が挙げられる。下垂体疾患として、非限定的に、先端巨大症、クッシング症候群、尿崩症、トルコ鞍空洞症候群、下垂体機能低下症及びプロラクチン産生腺腫が挙げられる。甲状腺疾患として、非限定的に、癌、甲状腺腫、甲状腺機能亢進性、甲状腺機能低下性、小結節、甲状腺炎及びウィルソン症候群が挙げられる。神経内分泌障害の例として、非限定的に、うつ病及びホルモン不均衡に関連する不安障害、生理時のてんかん、閉経、月経性片頭痛、生殖内分泌疾患、胃腸障害、例えば、腸内分泌腺腫瘍、カルチノイド、ガストリン産生腫瘍、及びソマトスタチン産生腫瘍、食道アカラシア、及びヒルシュスプルング病が挙げられる。或る態様では、内分泌及び神経内分泌障害として、結節性過形成、橋本病、膵島腫瘍及び乳頭癌が挙げられる。
【0191】
小児における内分泌及び神経内分泌障害として、成長障害の内分泌学的状態及び尿崩症が挙げられる。成長遅延は、脳下垂体の先天性異所性位置又は形成不全/発育不全、全前脳症、中隔視神経異形成症及び基底脳ヘルニアにおいて観察される場合がある。後天性疾患、例えば頭蓋咽頭腫、視覚性/視床下部神経膠腫は、臨床的短期状態及び間脳症候群で呈する。思春期早発症及び過剰発育は、次の状態:くも膜嚢胞、水頭症、視床下部過誤腫及び胚細胞腫において見られる場合がある。下垂体腺腫による成長ホルモン及び副腎皮質刺激ホルモンの過剰分泌は、病理学的高身長症及び小児における体幹肥満を引き起こし得る。尿崩症は、ランゲルハンス細胞の組織球増殖症、結核、胚細胞腫、下垂体茎の外傷後/外科傷害後、及び低酸素虚血性脳症といった浸潤性プロセスに次いで二次的に生じることがある。
栄養障害及び代謝障害の例
【0192】
栄養障害及び代謝障害の例として、非限定的に、アスパラギン酸グルコサミン尿症、ビオチニダーゼ欠損症、炭水化物欠損糖タンパク質症候群(CDGS)、クリグラー・ナジャー症候群、シスチン症、尿崩症、ファブリー病、脂肪酸代謝障害、ガラクトース血症、ゴーシェ病、グルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症、グルタル酸性尿、フルラー症候群、フルラー−シェイエ症候群、ハンター症候群、低リン酸血症、I−セル、クラッベ病、乳酸アシドーシス、長鎖3−ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症(LCHAD)、リソソーム蓄積症、マンノース症、メープルシロップ尿症、マルトー-ラミー症候群、異染性白質萎縮症、ミトコンドリア病、モルキオ症候群、ムコ多糖症、神経-代謝性疾患、ニーマン−ピック病、有機物酸血症、プリン症、フェニルケトン尿症(PKU)、ポンペ病、偽フルラー症候群、ピルビン酸脱水素酵素欠損症、サンドホフ病、サンフィリポ病、シャイエ症候群、スライ病、テイサックス病、トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)、尿素サイクル異常症、ビタミンD欠乏性くる病、筋の代謝疾患、遺伝性代謝疾患、酸塩基平衡異常、アシドーシス、アルカローシス、アルカプトン尿症、α−マンノース症、アミロイド症、貧血、鉄欠乏症、アスコルビン酸欠乏症、ビタミン欠乏症、脚気、ビオチニダーゼ欠乏症、欠乏性糖タンパク症候群、カルニチン障害、シスチン症、シスチン尿症、ファブリー病、脂肪酸酸化障害、フコシドーシス、ガラクトース血症、ゴーシェ病、ギルバート病、グルコースリン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、グルタル酸血症、糖原病、ハートナップ病、ヘモクロマトーシス、ヘモシデローシス、肝レンズ核変性症、ヒスチジン尿症、ホモシスチン尿症、高ビリルビン血症、高カルシウム血症、高インスリン症、高カリウム血症、高脂血症、高シュウ酸尿症、ビタミンA過剰症、低カルシウム血症、低血糖症、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低ホスファターゼ血症、インスリン抵抗性、ヨード欠損症、鉄過剰症、黄疸、慢性特発性リー病、レッシュ・ナイハン症候群、ロイシン代謝障害、リソソーム蓄積症、マグネシウム欠乏症、メープルシロップ尿症、MELAS症候群、メンケス捻転毛症候群、内臓脂肪症候群、ムコ脂質症、ムコ多糖症、ニーマン・ピック病、肥満症、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ欠乏性疾患、骨軟化症、ペラグラ、ペルオキシソーム病、ポルフィリン症、赤血球新生、斑岩症(porphyries)、早老症、偽ゴーシェ病、レフサム病、ライ症候群、くる病、サンドホフ病、タンジール病、テイ・サックス病、テトラヒドロビオプテリン欠損症、トリメチルアミン尿症(魚匂症候群)、チロシン血症、尿素サイクル障害、水分電解質不均衡、ウェルニッケ脳症、ビタミンA欠乏症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB欠乏症、ウォルマン病、及びツェルウェガー症候群が挙げられる。
【0193】
或る好ましい態様では、代謝性疾患としては糖尿病及び肥満が挙げられる。
血液リンパ腫系の例
【0194】
血液リンパ腫系として血液疾患及びリンパ系疾患が挙げられる。「血液学的疾患」として、造血細胞もしくは組織を冒す疾病、障害又は状態が挙げられる。血液学的疾患として、異常な血液学的含量又は機能に関連した疾患、障害、又は病気が挙げられる。血液学的障害の例として、癌の化学療法処置又は骨髄放射線照射から生じる障害、悪性貧血、出血性 貧血、溶血性貧血、再生不良性貧血、鎌状赤血球貧血、鉄芽球性貧血、慢性感染症、例えば、マラリア、トリパノソーマ症、HIV、肝炎ウイルス又は他のウイルスのような慢性感染に付随する貧血、髄欠損により引き起こされる骨髄癆性貧血、貧血から生じる腎不全、赤血球増加症、伝染性単核球症(IM)、急性非リンパ性白血病(ANLL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性骨髄単球性白血病(AMMoL)、真正赤血球増加症、リンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、網膜芽細胞腫、血友病、血栓症のリスク増加に付随する障害、疱疹、サラセミア、抗体媒介性障害、例えば輸血反応及び赤芽球症、赤血球に対する機械的外傷、例えば、微小血管症性溶血性貧血、血栓性血小板減少性紫斑病及び播種性血管内凝固、原虫などの寄生虫による感染症、例えば鉛中毒などによる化学的損傷、並びに脾機能亢進が挙げられる。
【0195】
リンパ系疾患としては、非限定的に、リンパ節炎、リンパ管拡張症、リンパ管炎、リンパ浮腫、リンパ嚢腫、リンパ球増殖性疾患、皮膚粘膜リンパ節症候群、細網内皮症、脾臓疾患、胸腺過形成、胸腺腫瘍、結核、リンパ節、偽リンパ腫、及びリンパ管異常が挙げられる。
【0196】
或る好ましい態様では、血液リンパ系の障害として、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び反応性リンパ腫過形成が挙げられる。
CNS病の例
【0197】
CNS病の例として、非限定的に、神経変性疾患、薬物乱用、例えばコカイン乱用、多発性硬化症、統合失調症、急性散在性脳脊髄炎、横断性脊髄炎、脱髄性 遺伝病、脊髄損傷、ウイルス誘発性脱髄、進行性多巣性白質脳症、ヒトリンパT細胞ウイルスI(HTLVI)に関連したミエロパシー、及び栄養性代謝障害が挙げられる。
【0198】
或る好ましい態様では、CNS病としてパーキンソン病、アルツハイマー病、コカイン乱用、及び統合失調症が挙げられる。
神経変性疾患の例
【0199】
本発明の方法における神経変性疾患として、非限定的に、アルツハイマー病、ピック病、瀰漫性レヴィー小体病、進行性核上性麻痺(スティール−リチャードソン症候群)、多系統変性(シャイ−ドラガー症候群)、運動ニューロン疾患、例えば筋萎縮性側索硬化症、変性運動失調、大脳皮質基底核変性症、グアムのALS−パーキンソン認知症の合併症、亜急性硬化性全脳炎、ハンチントン病、パーキンソン病、シヌクレイン病(synucleinopathies)、原発性進行性失語症、線条体黒質変性症、マシャド・ジョセフ病/脊髄小脳失調症3型及びオリーブ橋小脳変性症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、延髄性及び仮性球麻痺、脊髄性及び球脊髄性筋萎縮症(ケネディ病)、原発性側索硬化症、家族性痙性対麻痺、ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルク・ヴェランダー病、テイ・サック病、サンドホフ病、家族性痙性病、ウオールファルト・クーゲルベルク・ヴェランダー病、痙れん性不全対麻痺、進行性多巣性白質脳症、及びプリオン病(例えば、クロイツフェルト−ヤコブ、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、クールー病及び致死性家族性不眠症)、アレキサンダー病、アルパー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、カナバン病、コカイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病、レウィー小体認知症、マシャド・ジョセフ病、脊髄小脳失調症3型、多発性硬化症、多系統萎縮症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッハ病、レフサム病、シルダー病、スピールマイヤー・フォークト・シェーグレン・バッテン病、スティール・リチャードソン・オルツェウスキー病、及び脊髄癆が挙げられる。
尿路障害の例
【0200】
本発明の方法における尿路障害として、非限定的に、腎臓、尿管、膀胱及び尿道の障害が挙げられる。例えば、尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎、先天性腎無形成、水腎症、多発性嚢胞腎、多嚢胞腎、下部尿路閉塞、膀胱外反症及び尿道上裂、尿道下裂、細菌尿、前立腺炎、腎臓内及び末梢性膿瘍、良性前立腺肥大、腎細胞癌、移行上皮癌、ウィルムス腫瘍、尿毒症、並びに糸球体腎炎である。
呼吸器疾患の例
【0201】
呼吸器疾患及び病気として非限定的に、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、大細胞癌、嚢胞性線維症(CF)、呼吸困難、肺気腫、喘鳴、肺高血圧症、肺線維症、応答性亢進気道、高いアデノシン又はアデノシン受容体レベル、肺気管支収縮、肺炎症及びアレルギー、及び界面活性物質の枯渇、慢性気管支炎、気管支収縮、呼吸困難、肺軌道の閉塞及び妨害、心臓機能についてのアデノシンテスト、肺血管収縮、呼吸閉塞、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、特定の薬、例えばアデノシン及びアデノシンレベル増加薬の投与、及び他の薬、例えば上室性頻拍(SVT)を治療するための剤の投与、及びアデノシンストレス試験薬の投与、乳児性呼吸促迫症候群 (乳児性RDS)、疼痛、アレルギー疾患、肺界面活性物質の低下、ユビキノンレベルの低下、又は慢性気管支炎などが挙げられる。
女性生殖系の障害の例
【0202】
女性生殖系の障害として、外陰部、腟、子宮頚部、子宮体、卵管及び卵巣の疾病が挙げられる。その一例として、付属器疾患、例えば卵管病、卵巣病、平滑筋腫、ムチン性嚢胞腺癌、漿液性嚢胞腺癌、傍卵巣嚢胞、及び骨盤内炎症性疾患;子宮内膜症;生殖器腫瘍、例えば卵管腫、子宮腫、腟腫、外陰腫、及び卵巣腫;鎖陰;性器ヘルペス;不妊症;性機能不全、例えば性交疼痛症及び不能;結核;子宮疾患、例えば頚部病、子宮内膜増殖症、子宮内膜炎、子宮留血腫、子宮出血、子宮腫、子宮脱、子宮破裂及び子宮内反症;腟疾患、例えば性交疼痛症、腟留血症、腟瘻、腟腫、腟炎、腟分泌物及びカンジダ症、又は外陰腟;外陰部疾患、例えば萎縮症外陰部、そう痒症、外陰腫、外陰部炎及びカンジダ症;並びに泌尿生殖器疾患、例えば泌尿生殖器奇形及び泌尿生殖器腫が挙げられる。
男性生殖系の障害の例
【0203】
男性生殖系の障害として、非限定的に、精巣上体炎;生殖系腫、例えば陰茎腫瘍、前立腺腫及び精巣腫;血瘤;性器ヘルペス;水瘤;不妊症;陰茎疾患、例えば亀頭炎、尿道下裂、ペイロニー病、陰茎腫瘍、包茎及び持続勃起症;前立腺疾患、例えば前立腺肥大、前立腺腫及び前立腺炎;器質性性機能不全、例えば性交疼痛症及び不能;精索ねじれ;精液瘤;精巣疾患、例えば停留精巣、精巣炎、及び精巣腫瘍;結核;精索静脈瘤;泌尿生殖器 疾患、例えば泌尿生殖器奇形、及び泌尿生殖器腫;並びにフルニエ壊疽が挙げられる。
心血管障害(CVS)の例
【0204】
心血管障害として、虚血を引き起こすか、又は心臓の再灌流により引き起こされる障害が挙げられる。例として、非限定的に、粥状動脈硬化、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎(非肉芽腫性)、原発性肥大型心筋症、末梢血管病(PAD)、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、心停止により引き起こされる心血管組織の損傷、心臓バイパスにより引き起こされる心血管組織損傷、心原性ショック、及び当業者により知られている関連疾病、或いは心臓もしくは脈管構造の組織損傷又は機能不全に関連する病気が挙げられ、特に非限定的に、PARP活性化に関連する組織損傷が挙げられる。
【0205】
本発明の或る好ましい態様では、CVS病として、粥状動脈硬化、肉芽腫性心筋炎、心筋梗塞、心臓弁膜症に続発する心筋線維症、梗塞を伴わない心筋線維症、原発性肥大型心筋症及び慢性心筋炎(非肉芽腫性)が挙げられる。
PARP阻害剤での治療方法
【0206】
PARP阻害剤は、様々な疾病、例えば心血管虚血、卒中、頭部外傷及び神経変性病の治療において独立に使用した時に、又は癌療法において化学療法剤、放射線、オリゴヌクレオチドもしくは抗体といった他の剤との併用療法として使用した時に、有効な治療効果を有する。本発明を限定することなく、様々なPARP阻害剤が当業界で知られており、それら全てが本発明の範囲内に含まれる。PARP阻害剤の幾つかの例を本明細書に開示するが、それらは本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0207】
数多くのPARP阻害剤の大きな有益性は、PARPの触媒部位において天然基質NADと競合的に結合する、ベンズアミドの類似体としてデザインされている。PARP阻害剤としては、非限定的に、ベンズアミド、キノロン及びイソキノロン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、及び3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル(米国特許第5,464,871号;米国特許第5,670,518号;米国特許第6,004,978号;米国特許第6,169,104号;米国特許第5,922,775号;米国特許第6,017,958号;米国特許第5,736,576号及び米国特許第5,484,951号;その全内容が本明細書に参考として組み込まれる)が挙げられる。PARP阻害剤としては、NAD部位での有力な阻害剤である様々な環状ベンズアミド類似体(即ちラクタム)が挙げられる。別のPARP阻害剤として、非限定的に、ベンズイミダゾール及びインドール(EP 841924;EP 1127052;US 6,100,283;US 6,310,082;US 2002/156050;US 2005/054631;WO 05/012305;WO 99/11628及びUS 2002/028815)が挙げられる。多数の低分子量PARP阻害剤は、DNA修復におけるポリADPリボシル化の機能的役割を推測するために使用されている。アルキル化剤で処理した細胞では、PARPの阻害がDNA鎖損傷及び細胞致死の顕著な増加を引き起こす(Durkacz他、1980, Nature 283:593-596;及びBerger, N.A., 1985, Radiation Research, 101:4-14)。続いて、そのような阻害剤が、潜在的に致死性損傷の修復を抑制することにより、放射性応答の効果を増強することが示された(Ben-Hur他、1984, British Journal of Cancer 49 (増補IV): 34-42; 及びSchlicker他、1999, Int. J. Radiat. Biol., 75:91-100)。PARP阻害剤は、放射線感受性偽腫瘍細胞において効果的であると報告されている(US 5,032,617; 5,215,738及び5,041,653)。更に、PARPノックアウト(PARP -/-)動物はアルキル化剤及びγ照射に応答してゲノム不安定性を示す(Wang他、1995, Genes Dev., 9:509-520;及びMenissier de Murcia他、1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:7303-7307)。
【0208】
DNAに鎖切断を引き起こし、その後PARPにより認識される酸素ラジカルDNA損傷は、PARP阻害剤研究により示されるような病気状態への主たる寄与因子である(Cosi他,1994, J. Neurosci. Res., 39:38-46 ; Said他, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:4688-4692)。哺乳動物細胞の効率的レトロウイルス感染がPARP活性の阻害により阻止されることも証明された。そのような組換えレトロウイルスベクター感染の阻害は、様々な異なる細胞型において起こることが示された(Gaken他、1996, J. Virology 70(6): 3992-4000)。従ってPARPの阻害は、抗ウイルス療法及び癌療法における使用に向けて開発されている(WO91/18591)。更に、PARP阻害剤はヒト繊維芽細胞における加齢特徴の開始を遅らせると推測されている(Rattan & Clark, 1994, Biochem Biophys. Res. Comm., 201(2): 665-672)。これは、PARPがテロメア機能を調節することにおいて果たす機能に関連するもかもしれない(d’Adda di Fagagna他、1999, Nature Gen. 23(1):76-80)。
【0209】
PARP阻害剤は次の構造的特徴を有する:1) アミド又はラクタム官能基;2) このアミド又はラクタム官能基のNHプロトンが効果的結合のために保存され得る;3) 芳香族環に取り付けられたアミド基又は芳香族環に融合したラクタム基;4) 芳香族面におけるアミドの光学的シス配置;及び5) ヘテロ多環式ラクタム中への束縛性モノアリールカルボキサミド(Constantino他、2001, J. Med. Chem. 44:3786-3794)。Virag他、2002, Pharmacol. Rev., 54:375-429, 2002は様々なPARP阻害剤を要約している。PARP阻害剤の幾つかの例としては、非限定的に、イソキノリノン及びジヒドロイソキノリノン(例えばUS 6,664,269及びWO 99/11624)、ニコチンアミド、3−アミノベンズアミド、モノアリールアミド、及び二、三又は四環式ラクタム、フェナントリジノン(Perkins他、2001, Cancer Res., 61:4175-4183)、3,4−ジヒドロ−5−メチルイソキノリン−1(2H)−オン及びベンズオキサゾール−4−カルボキサミド(Griffin他、1995, Anticancer Drug Des. 10:507-514; Griffin他、1998, J. Med. Chem. 41:5247-5256; 及びGriffin他、1996, Pharm. Sci. 2:43-48)、ジヒドロイソキノリン−1(2H)−ノン、1,6−ナフチリジン−5(6H)−オン、キナゾリン−4(3H)−オン、チエノ〔3,4−c〕ピリジン−4(5H)−オン及びチエノ〔3,4−d〕ピリミジン−4(3H)−オン、1,5−ジヒドロキシイソキノリン、並びに2−メチルキナゾリン−4(3H)−オン(Yoshida他、1991, J. Antibiot(Tokyo) 44:111-112; White他、2000, J. Med. Chem. 43:4085-4097)、1,8−ナフタリミド誘導体及び(5H)フェナントリジン−6−オン(Banasik他、1992, J. Biol. Chem. 267:1569-1575 ; Watson他、1998, Bioorg. Med. Chem., 6:721-734; Soriano他、2001, Nat. Med., 7:108-113; Li他、2001, Bioorg. Med. Chem. Lett., 11:1687-1690 ; Jagtap他、2002, Crit Care Med., 30:1071-1082)、四環式ラクタム、1,11b−ジヒドロ−〔2H〕ベンゾピラノ〔4,3,2−デ〕イソキノリン−3−オン、1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)(Zhang他、2000, Biochem. Biophys Res. Commum. 278:590-598;及びMazzon他、2001, Eur. J. Pharmacol. 415:85-94)が挙げられる。別のPARP阻害剤の例としては、非限定的に、次の特許明細書中に記載されたものが挙げられる:US 5,719,151 ; US 5,756,510 ; US 6,015,827 ; US 6,100,283 ; US 6,156,739 ; US 6,310,082 ; US 6,316,455 ; US 6,121,278 ; US 6,201,020 ; US 6,235,748 ; US 6,306,889 ; US 6,346,536 ; US 6,380,193 ; US 6,387,902 ; US 6,395,749 ; US 6,426,415 ; US 6,514,983 ; US 6,723,733 ; US 6,448,271 ; US 6,495,541 ; US 6,548,494 ; US 6,500,823 ; US 6,664,269 ; US 6,677,333 ; US 6,903,098 ; US 6,924,284 ; US 6,989,388 ; US 6,277,990 ; US 6,476,048 ; US 6,531,464。PARP阻害剤の追加の例としては、非限定的に、次の特許出願刊行物に記載されたものが挙げられる:US 2004/198693A1 ; US 2004/034078A1 ; US 2004/248879A1 ; US 2004/249841A1 ; US 2006/074073A1 ; US 2006/100198A1 ; US 2004/077667A1 ; US 2005/080096A1 ; US 2005/171101A1 ; US 2005/054631A1 ; WO 05054201A1 ; WO 05/054209A1 ; WO 05/054210A1 ; WO 05/058843A1 ; WO 06/003146A1 ; WO 06/003147A1 ; WO 06/003150A1 及び WO 05/97750A1が挙げられる。
【0210】
本発明の一態様では、PARP阻害剤が式(Ia)
【0211】
【化1】
【0212】
〔式中、R1,R2,R3,R4及びR5は独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル及びフェニルから成る群より選択され、ここで前記5つのR1,R2,R3,R4及びR5置換基のうちの少なくとも2つが常に水素であり、前記5つの置換基のうちの少なくとも1つが常に窒素であり、そしてその1つの窒素に隣接して位置する少なくとも1つの置換基が常にヨードである〕
で表される化合物、及び医薬上許容されるその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝物、類似体もしくはプロドラッグである。R1,R2,R3,R4及びR5はハロゲン化物、例えばクロロ、フルオロ又はブロモであることもできる。式Iaの化合物に関する更なる詳細は、米国特許第5,464,871号明細書に与えられている。
【0213】
式Iaの好ましい化合物は式Iaの化合物:
【化2】
【0214】
〔式中、R2,R3,R4及びR5は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル及びフェニルから成る群より選択される〕
で表わされる化合物及び医薬上許容されるその塩であり、ここで前記5つのR1,R2,R3,R4及びR5置換基のうちの少なくとも2つが常に水素であり、前記5つの置換基のうちの少なくとも1つが常に窒素である。
【0215】
式Iaの好ましい化合物は
【化3】
4−ヨ―ド−3−ニトロベンズアミド(BA)である。
【0216】
或る好ましい態様では、式IIのベンゾピロン化合物が本発明の方法で使用される。式IIのベンゾピロン化合物は、次式
【0217】
【化4】
【0218】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、H、ハロゲン、置換されることがあるヒドロキシ、置換されることがあるアミン、置換されることがある低級アルキル、置換されることがあるフェニル、置換されることがあるC4〜C10ヘテロアリール、及び置換されることがあるC3〜C8シクロアルキルである〕
により表わされる化合物、又はそれの塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝産物もしくはプロドラックである(米国特許第5,484,951号明細書はその全内容が参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0219】
或る態様は、次の化学式
【化5】
【0220】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル、ハロ及びフェニルから成る群より選択される〕
を有する化合物、及び医薬上許容されるその塩を使用し、ここで4つのR1,R2,R3及びR4置換基のうちの少なくとも3つが常に水素である。
【0221】
或る態様は、次の化学式
【化6】
【0222】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル、ハロ及びフェニルから成る群より選択される〕
を有する化合物、及び医薬上許容されるその塩を使用し、ここで4つのR1,R2,R3及びR4置換基のうちの少なくとも3つが常に水素である。
【0223】
或る態様は、次の化学式
【化7】
【0224】
〔式中、R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、ヒドロキシ、アミノ、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C7)シクロアルキル、ハロ及びフェニルから成る群より選択される〕
を有する化合物、及び医薬上許容されるその塩を使用し、ここで4つのR1,R2,R3及びR4置換基のうちの少なくとも3つが常に水素である。
【0225】
好ましい態様では、本発明は次の式IIのベンゾピロン化合物に関する:
【化8】
6−アミノ−5−ヨードベンゾピロン(BP)。
【0226】
更に別の態様では、本発明の方法で使用される化合物が次式
【化9】
により表わされる化合物である。
【0227】
ベンゾピロン化合物に関する更なる詳細は、米国特許第5,484,951号明細書に記載されており、その全内容が参考として本明細書中に組み込まれる。
【0228】
最も有効で且つ効果的なPARP阻害剤(即ち、薬剤開発のための好ましい候補)は、科学文献中にまだ入手できず、臨床試験を行っているか、又は最終的に公開特許及び係属中の特許出願の様々なデータベースに浮上してくるかもしれない。そのようなPARP阻害剤の全てが本発明の範囲内である。選択的で有力なPARPの酵素的阻害に加えて、幾つかの追加のアプローチを細胞又は実験動物におけるPARPの細胞活性を阻害するために使用してよい。細胞内カルシウム移動の阻害は、胸腺細胞(Virag他、1999, Mol. Pharmacol. 56:824-833)及び腸上皮細胞(Karczewski他、1999, Biochem. Pharmacol., 57:19-26)において証明されるように、酸化剤により誘発されるPARP活性化、NAD+枯渇及び細胞壊死に対して保護する。カルシウムキレート剤と同様に、細胞内亜鉛キレート剤は、酸化剤媒介PARP活性化と細胞壊死に対して保護することが示されている(Virag他、1999, Br. J. Pharmacol., 126: 769-777)。細胞内プリン類(イノシン、ヒポキサンチン)は、様々な作用に加えて、PARP阻害剤としての生物学的作用を発揮することもできる(Virag他、2001, FASEB J., 15:99-107)。
【0229】
本発明により提供される方法は、PARP阻害剤単独の投与又は他の治療との組み合わせ投与を含みうる。本発明の組成物と同時投与することができる治療薬の選択は、一部は、治療される状態に左右されるだろう。例えば、急性骨髄性白血病の治療には、本発明の或る態様の化合物は、放射線療法、モノクローナル抗体療法、化学療法、骨髄移植、又はそれらの組合せと併用することができる。
【0230】
本明細書に開示されるPARP阻害剤の有効治療量は、PARP酵素又はPARP活性の阻害に関する薬理活性に作用するために、患者、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与される。そのようなものとして、本発明のPARP阻害剤は、動物における様々な疾病及び不健康、例えば壊死又はアポトーシス、脳虚血や再灌流損傷又は神経変性病による細胞損傷又は細胞死から生じる神経組織損傷、を治療又は予防するのに有用である。その上、本発明の化合物は、有効量のPARP阻害剤を動物に投与することにより、該動物の心血管障害を治療するために使用することもできる。更に、本発明の化合物は、癌を治療するために及び腫瘍細胞を放射線増感又は化学増感させるために使用することができる。
【0231】
本発明の或る態様では、損傷したニューロンを調整し、神経再生を促進し、神経変性を予防し、そして/又は神経障害を治療するために、PARP阻害剤を使用することができる。該PARP阻害剤は、PARP活性を阻害し、従って動物における神経組織損傷、特に癌、心血管疾患、脳虚血、及び再灌流傷害又は神経変性病を治療するために有用である。本発明のPARP阻害剤は、心臓組織損傷、特に心臓虚血から生じるか又は患者の再灌流により引き起こされる損傷の治療に有用である。本発明の化合物は、次の群:冠動脈疾患、例えばアテローム性動脈硬化症;狭心症;心筋梗塞;心筋虚血及び心停止;心臓バイパス;及び心原性ショック、から選ばれる心臓血管障害を治療するために特に有用である。
【0232】
別の観点では、本発明のPARP阻害剤は、癌を治療するため、又は化学療法、放射線療法もしくは放射線と組み合わせて使用することができる。本発明のPARP阻害剤は「抗癌剤」であり、この用語は「抗腫瘍細胞増殖剤」及び「抗新生物剤」を包含する。例えば、本発明のPARP阻害剤は癌治療に、並びに癌の腫瘍細胞を放射線増感及び/又は化学増感するのに有用である。
【0233】
放射線増感剤は、電磁放射腺の毒性効果に対する癌性細胞の感受性を増加させることが知られている。多くの癌治療プロトコルは、現在、X線の電磁放射により活性化される放射腺増感剤を使用する。X線により活性化される放射線増感剤の例として、非限定的に、次のものが挙げられる: メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5−ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5−ヨードデオキシウリジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシ尿素、シスプラチン並びにそれらの治療上有効な類似体及び誘導体。
【0234】
癌の光力学療法(PDT)は、感作剤の放射線活性化因子として可視光を使用する。光力学的放射線増感剤の例として、非限定的に、以下のものが挙げられる:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、エチオポルフィリン錫SnET2、フェオボルビド−α、バクテリオクロロフィル−α、ナフタロシアニン、フタロシアニン、フタロシアニン亜鉛並びにそれらの治療上有効な類似体及び誘導体。
【0235】
放射線増感剤は、治療上有効な量の1又は複数の他のPARP阻害剤、例えば非限定的に次のものと組み合わせて投与することができる:非限定的に、標的細胞への放射線増感剤の取り込みを促進するPARP阻害剤;栄養分への治療薬の流れ及び/又は標的細胞への酸素の流れを調節するPARP阻害剤。同様に、化学増感剤も化学療法化合物の毒性効果に対する癌性細胞の感受性を増大させることが知られている。PARP阻害剤と組み合わせて使用できる化学療法剤の例として、非限定的に、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダカルバジン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、インターフェロン(α,β,γ)、インターロイキン2、イリノテカン、パクリタキセル、ストレプトゾトシン、テモゾロミド、トポテカン、並びにそれらの治療上有効な類似体及び誘導体が挙げられる。更に、PARP阻害剤と組み合わせて使用できる別の治療薬として、非限定的に、5−フルオロウラシル、ロイコボリン、5′−アミノ−5′−デオキシチミジン、酸素、カーボゲン、赤血球輸液、ペルフルオロカーボン(例えば、フルオソール−DA)、2,3−DPG、BW12C、カルシウムチャネル遮断薬、ペントキシフィリン、抗血管新生化合物、ヒドララジン、及びL-BSOが挙げられる。
【0236】
或る態様では、治療用の療法剤としては、PARPに結合し、それにより被検体のPARPレベルを低下させる抗体又は試薬が挙げられる。別の態様では、被検体のPARPレベル及び/又はPARP活性に影響を及ぼすために、細胞発現を変更することができる。治療用及び/又は予防用ポリヌクレオチド分子を、遺伝子輸送及び遺伝子療法技術を使って送達せしめることができる。更に別の剤としては、PARPに結合するか又はPARPと相互作用し、それによりその機能に影響を及ぼす小分子、及び、PARPをコードする核酸配列に結合するか又は相互作用し、それによりPARPレベルに影響を及ぼす小分子が挙げられる。それらの剤は単独で、又は当業者に既知であり且つ利用可能である他の型の治療法と組み合わせて、投与することができる。或る態様では、治療用のPARP阻害剤は、治療的か予防的かのいずれかで又はその両方で使用することができる。PARP阻害剤はPARPに対して直接作用するか、又はPARPレベルに影響を与える別の細胞成分を調節してもよい。好ましい態様では、PARP阻害剤はPARPの活性を阻害する。
【0237】
本明細書に開示される治療法は、経口投与、経粘膜投与、口腔投与、鼻腔投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、眼内投与、及び直腸投与によることができる。
【0238】
被検体におけるPARP阻害剤により治療可能な疾病の同定後の処置において使用するのに適当であるPARP阻害剤の医薬組成物は、活性成分が治療上又は予防上有効な量、即ち、治療又は予防効果を達成するのに有効な量で含まれる組成物である。特定用途に有効な実際の量は、特に、治療すべき状態及び投与経路に依存するだろう。有効量の決定は、当業者の能力の十分範囲内である。医薬組成物は、PARP阻害剤、1又は複数の医薬上許容される担体、希釈剤又は賦形剤、そして所望により追加の治療剤を含んで成る。該組成物は持続型又は徐放型放出のために処方することができる。
【0239】
組成物は局所、経口、経皮、直腸注射により、又は吸入により投与することができる。治療剤を投与する経口剤形としては、粉末、錠剤、カプセル、溶液又は乳液が挙げられる。有効量は、1回量で投与することができ、又は適当な間隔、例えば時間により分けられた一連の用量で投与することができる。医薬組成物は、医薬として使用できる製剤へと活性化合物を加工処理するのを容易にする賦形剤又は助剤を含んで成る、1又は複数の生理学的に許容される担体を使って、常法により製剤化することができる。適切な製剤は、選択される投与の経路に依存する。本発明の治療剤を含む医薬組成物の適当な調剤技術は、当業界で周知である。
【0240】
4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの好適な用量は、第1日に出発して一週間に2回、1時間に渡る4 mg/kg IVの投与である(4−ヨード−3−ニトロベンズアミドの用量は好ましくは少なくとも2日間隔をあけられる)。4−ヨード−3−ニトロベンズアミド処置は好ましくは、28日周期で連続3週間の間、IVの点滴として一週間に2回与えられる。別の好ましい用量としては、単独療法又は組み合わせ療法のいずれかとして0.5,1.0,1.4,2.8及び4 mg/kgが挙げられる。
【0241】
活性化合物の、及び活性化合物を含んで成る組成物の適切な投与量は患者ごとに異なることが認識されるだろう。最適な用量の決定は、一般に、本発明の治療のいずれかの危険又は有害な副作用に対して治療効果のレベルをバランス調整することを包含する。選択された投与レベルは、特定のPARP阻害剤、投与経路、投与期間、化合物の排出速度、治療の持続期間、組み合わせ使用される別の薬剤、化合物及び/又は材料、並びに患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態及び前の病歴をはじめとする様々な要因に依存するだろう。一般に用量は、実質的に有害な又は有毒な副作用を引き起こすことなく、所望の効果を達成するような作用部位における局所濃度を達成する量であるだろうが、化合物の量及び投与経路は、最終的には医師の裁量であろう。
【0242】
生体内投与は、治療過程全体を通して1回で、連続的に又は断続的に(例えば適当な間隔で分割量にて)実施することができる。最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に用いられる製剤、治療の目的、処置される標的細胞、及び処置される被検体によって異なるであろう。1回又は複数回投与を実施できるが、用量レベルやパターンは治療を行う医師により選択されるだろう。
癌部位の治療基準
【0243】
別の態様において、PARP阻害剤は治療される癌についての一次治療基準と組み合わせて使用される。ここに記載するのは、或るタイプの癌についての一次治療基準である。或る態様では、PARP阻害剤がここに記載の治療基準と組み合わせて用いられる。
子宮内膜
【0244】
子宮内膜癌を治療するためには4つの一次治療基準がある:外科手術(子宮全摘出術、及び両側卵管卵巣摘出術、及び広範子宮摘出術)、放射線、化学療法及びホルモン療法。症例により前記療法に伴う術後補助療法も施される。
乳房
【0245】
現在の乳癌治療法として、乳房温存手術、タモキシフェンを使用又は不使用の放射線療法、タモキシフェンを使用又は不使用の乳房全切除術、放射線療法を伴わない乳房温存手術、乳癌のその後の再発を減らすためにタモキシフェンを投与しながらの、腋窩部リンパ節解離を伴わない予防的な両側性乳房全切除術、及び前記療法に伴う補助療法が挙げられる。
卵巣
【0246】
腫瘍が高分化型又は中分化型である場合、早期疾病を有する患者には複式子宮全摘出術及び大網摘出を伴う両側卵巣摘出術が適切である。III期及びIV期疾病と診断された患者は外科手術及び化学療法で治療される。
頸部
【0247】
子宮頸部病巣を治療するための方法としては、電気外科的ループ切除法(LEEP)、レーザー療法、円錐切除術及び凍結療法が挙げられる。I期及びII期腫瘍には、治療オプションとして卵巣全摘出術、円錐切除術、広範卵巣摘出術、単独の膣内放射線治療、リンパ節切除、術後全骨盤放射線療法と化学療法、及び放射線療法とシスプラチン又はシスプラチン/5-FUによる化学療法が挙げられる。III期及びIV期腫瘍の場合には、子宮頸癌の治療基準は、放射線療法及び/又はシスプラチン、イホスファミド、イホスファミド−シスプラチン、パクリタキセル、イリノテカン、パクリタキセル/シスプラチン、及びシスプラチン/ゲムシタビンといった薬剤による化学療法である。
精巣
【0248】
精上皮腫(セミノーマ)の治療基準は、1回量のカルボプラチン補助療法を伴うか又は用いない広範鼠径精巣摘出術、広範鼠径精巣摘出による精巣の切除に続く放射線療法、及び広範鼠径精巣摘出術に続く組合せ療法又は腹部及び骨盤リンパ節への放射線療法である。非精上皮腫患者の治療には、鼠径部を介した精巣の除去に続く後腹膜リンパ節解離、後腹膜リンパ節の切除を伴う又は伴わず、化学療法を伴うか又は伴わない生殖能力温存後腹膜リンパ節解離を伴うか又は伴わない広範鼠径精巣摘出術が挙げられる。
肺
【0249】
非小細胞肺癌(NSCLC)では、限局化した癌を除いて標準治療の結果は良くない。NSCLCを有すると新たに診断された患者は全て、新しい治療形態を評価する研究にとって有力な候補である。外科手術は最も有効に治癒的な治療オプションであり;放射線療法は少数の患者に治癒をもたらし、大部分の患者には緩和を生じることができる。補助的化学療法は、NSCLCが切除された患者に付加的効果を提供することができる。
皮膚
【0250】
基底細胞癌治療の典型的方法としては、凍結外科手術、放射線療法、電気乾燥と掻爬、及び単純切除術が挙げられる。皮膚の限局性扁平上皮癌は、治癒可能な疾病である。典型的な治療法としては、凍結外科手術、放射線療法、電気乾燥と掻爬、及び単純切除術が挙げられる。
肝臓
【0251】
肝細胞癌は、外科的切除により潜在的に治癒可能であるが、外科手術は、限局した疾病を有する患者のごく一部のみに選択される治療である。別の治療は、臨床試験段階のままであり、その例として全身又は動注化学療法、肺動脈連結又は塞栓療法、経皮エタノール注射、高周波アブレーション、凍結療法、及び放射線標識抗体が挙げられ、それらはしばしば外科的切除及び/又は放射線療法と併用される。
甲状腺
【0252】
甲状腺癌の標準治療オプションとしては、甲状腺全切除術、肺葉切除術、並びに前記外科手術とI131切除、放射線療法、チロキシンによる甲状腺刺激ホルモン抑制及び化学療法との組み合わせが挙げられる。
食道
【0253】
一次治療基準としては、外科手術のみ又は放射線療法を伴う化学療法が挙げられる。効果的な緩和は、外科手術、放射線療法、ステント挿入、光力学的療法、及びNd:YAGレーザーによる内視鏡治療の様々な組み合わせにより、個々の症例において得られるだろう。
腎臓
【0254】
外科的切除がこの疾病の治療の大黒柱である。播種性腫瘍を有する患者であっても、局所領域の治療形態が、原発性腫瘍の又は異所性ホルモン生産の症状を緩和するのに重要な役割を果たすだろう。全身療法は限定された有効性しか示していない。
【0255】
一態様では、PARP阻害剤が別の化学療法、例えばイリノテカン、トポテカン、シスプラチン、又はテモゾロミドと組み合わされ、それぞれ結腸直腸及び胃癌、黒色腫及び神経膠腫のような多数の癌の治療を改善する。別の態様では、PARP阻害剤は、進行性結腸直腸癌を治療するためにイリノテカンと、そして悪性黒色腫を治療するためにテモゾロミドと組み合わされる。
【0256】
癌患者では、放射線及び化学療法の治療効果を高めるためにPARP阻害が用いられる。別の態様では、腫瘍細胞がDNAそれ自体を修復しそして薬剤抵抗性を発生しないようにするためにPARPの標的指向が用いられ、それにより癌療法に対して一層感受性にすることができる。更に別の態様では、広範囲の腫瘍(例えば神経膠腫、黒色腫、リンパ腫、結腸直腸癌、頭頸部癌)に対する様々な化学療法剤(例えばメチル化剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、シスプラチン等)並びに放射線の効果を高めるために、PARP阻害剤が用いられる。
キット
【0257】
更に別の観点では、本発明は、PARPモジュレーターにより治療可能な被検体の疾患を同定するためのキットを提供し、ここで該キットは被検体から得られた試料中のPARPレベルを検出するために使用される。例えば、該キットは、本明細書に記載されるような正常及び罹患組織中のPARPレベルを検出するために使用することができ、前記PARPレベルは罹患患者と正常被検体の試料中で異なるように存在する。一態様では、キットは、PARP及び/又はRNAを結合するのに適当である吸着剤を含んで成る支持体、及び、試料を前記吸着剤と接触させることによりPARP及び/又はPARPレベル及び/又はPAR(モノリボースとポリリボース)を同定し、そして前記吸着剤により保持されたPARPを検出するための使用説明書を含んで成る。別の態様では、該キットは、(a) PARPに特異的に結合するか又はPARPと特異的に相互作用する試薬;及び(b) 検出試薬を含んで成る。或る態様では、該キットが、標識の形又は別個の挿入物の形で、適当な操作パラメーターについての使用説明書を更に含んで成ってもよい。所望により、該キットは、前記試験試料を対照の情報標準と比較して、試料中のPARPの試験量が診断量であるかどうかを決定するような、標準又は対照の情報を更に含んで成ってもよい。
【0258】
或る態様では、治療用キットの中に別の容器中の別の組成物として治療剤を提供することもできる。適当なパッケージング及び追加の物品(例えば液体製剤用の計量カップ、空気への暴露を最少にするホイルラップなど)は当該技術分野で既知であり、そしてそれらを該キットに含めることができる。
【0259】
実施例1
GeneChipアレイは、生物医学研究の多数の領域でmRNA発現をモニタリングするのに広く用いられている。高密度のオリゴヌクレオチドアレイ技術は、それらが組織や細胞中で異なって発現されるので、研究者が一回のハイブリダイゼーション実験で数万の遺伝子をモニタリングできるようにした。遺伝子のmRNA分子の発現プロフィールは、遺伝子の配列の異なる部分をデータベースに問い合わせる長さ25 bpの11〜20のプローブ対オリゴヌクレオチドから成る、プローブセット中の各プローブからの総合強度情報により得られる。 遺伝子発現は、Affymetrixヒトゲノム遺伝子チップ(28,473 UniGeneクラスターをカバーする45,000個の遺伝子転写産物)を使って評価した。各試料からの約5μgの全RNAを、高収率の転写産物標識キットを使って標識し、標識されたRNAを製造業者の指示(Affymetrix, Inc, Santa Clara, CA)に従ってハイブリダイズし、洗浄し、そしてスキャンした。スキャンしたイメージからの転写産物シグナルレベルを評価するのに、Affimax Microarray Suite 5.0 ソフトウェア(MAS5)を使用した(Affymetrix)。各アレイ上のシグナルを、該シグナルの最低値2%と最高値2%を除外して、500のトリム平均値に標準化した。ユニークなGenbank配列を表すAffymetrixプローブセットを、以後、便宜上プローブ又は遺伝子と呼ぶ。像欠陥により引き起こされる発現中のいずれかのエラーを確かめるために、理想分布に対する各アレイの相関係数を求めた。ここで理想分布は全アレイの平均である。MAS5により報告された検出P値を使って、残りのアレイから遺伝子にフィルターをかける。アレイの95%でP>0.065を有する遺伝子を削除し、他の全てのシグナルをクラスの統計比較用に含める。
【0260】
実施例2
ヒト正常乳房及び浸潤性導管癌におけるPARP mRNAの発現
研究計画
正常胸部及び浸潤性導管癌試料を、ASCENTA(登録商標)システムについて定義された試料セットのメンバーであることをBioExpress(登録商標)システムにおいて同定した。各腫瘍試料をその%腫瘍注釈(アノテーション)についても評価し、それは処理試料に隣接して採取した切片からの顕微鏡スライド中に存在する悪性対非悪性有核細胞の比の、審査病理学者による定量測定である。
【0261】
合計237の独立した試料をこの実験で評価し、各々のIDC亜型に関する試料の数を表Aに表す。表Aは、腫瘍組織として観察された試料の割合(%)に基づいた各IDC亜型の試料数を表す。
【0262】
【表67】
【0263】
表Aは、IDC試料の>90%が50%以上の腫瘍組織から成り、そして全IDC試料の約2/3が75%以上の腫瘍組織から成ることを示し、これは腫瘍に富む試料の良好な表現モデルであることを示す。
【0264】
いずれのIDC試料も複数の亜型グループにおいて表現され得ることに注目すべきである。一例は、7つの選択されたIDC試料、それらの多重、単一又は無のIDC亜型における存在について表Bに示される。例えば、試料GID 7273はどの単一亜型にも分類されず、従って一般的IDC試料としてのみ評価される。試料GID 7287は唯一の亜型に分類され、従ってそれのII期クラス並びに一般的IDCクラスについての結果に寄与するだろう。試料GID 7387は2つの亜型に分類され、従ってそれらの亜型の両方と一般的IDCクラスについての結果に寄与するだろう。
【0265】
【表68】
【0266】
PARP遺伝子は、識別子“208644 at”を有する単一プローブセットによるHG-U133Aアレイ上に提示される。このレポートの全結果は、このプローブセットについてMASS発現シグナル強度に基づいて作成され、これを“PARP1”と称することにする。
【0267】
全試料セットの統計分析
正常及びIDC要約統計量
正常及び一般IDC試料クラスを、平均、標準偏差、標準誤差、及びt分布に基づいた幾つかの信頼区間上限により要約した。信頼区間上限(UCL)は、それらが或る数値を観察するのに確率の特定領域を同定するという点で標準偏差統計学と類似している。例えば、95%信頼区間上限は、試料の5%中に偶然期待される値と同種である。
【0268】
胸部正常データの場合、試料の数(n=68)は、t分布が限界値を設定するのに標準偏差のみを使用した時に得られた結果を近似するのに十分なほど大きい。例えば、平均+2 SDの標準胸部発現強度は365.06であり、この値は365.92の95%信頼限界に非常に近似している。これは、正常試料数が小さい時の臓器の場合には得られなかっただろう。
【0269】
表Cは、正常胸部及び一般IDC試料セットの各々についての要約統計量を示す。
【表69】
【0270】
従って、正常試料に関するIDCについての変化度は中程度であり、その変化は高度に有意である。
【0271】
個々の試料の評価
次に、一般IDC胸部試料セットと全てのIDC亜型からの各試料を、正常胸部試料分布に比較して個別に試験した。各々を90%、95%、99%及び99.9%信頼区間上限を超えるものとして定義した。64.6の90%信頼区間下限を下回ったIDC試料は1つも無かったので、LCL限界は提示されない。
【0272】
図4aは、胸部試料の各クラスについての結果の視覚的概要を示す。十字形(+)は、x軸上に示された亜型とy軸上のそれの発現強度に従った単一試料を示す。加えて、各点は、試料中に固有の腫瘍%により色づけされる。図4bは、IDCグループ内の最高の試料が最良のスケーリング解析に備えて除去されていること以外は、図4aと同一である。
【0273】
図4に基づいた結果は以下の通りである:
・IDC胸部試料中の高度なPARP1発現が正常胸部試料に比較して明らかである。
・IDC胸部試料のPARP1発現は、正常胸部試料のものよりもずっと高度の変動(即ちより大きい散らばり)を示す。
・2つの正常胸部試料は、その他の66試料よりも高いPARP1発現強度を有し、同じ基礎分布の一部でないようである。
・1つのIDC胸部試料は、非常に高い発現強度を有し、同じ基礎分布の一部でないようである。
・腫瘍%は、胸部IDC試料内で大きな程度には発現強度に影響しないようである。
【0274】
表Dは、IDCクラスとその亜型についての予め定められた信頼区間上限を超える試料の割合と数を要約する。
【0275】
【表70】
【0276】
上記要約表から得ることができる結果は次の通りである:
・IDCの大部分の亜型が95%UCLを超える試料の少なくとも30%を示したが、幾つかの顕著な例外があった:
・全てのIDC ER(+)セット
・IDC Her2-neu(+)
・全てのIDC PR(+)セット
・I期とIV期
【0277】
・PARP1発現のクラス比較
・IDC ER(-)>IDC ER(+)
・IDC Her2-neu(-)>IDC Her2-neu(+)
・IDC PR(-)>IDC PR(+)
・IDC p53(-)≒IDC p53(+)
・IDC II期,III期>IDC I期,IV期
【0278】
主要試料セット統計分析
正常及びIDC要約統計量
グループ内のその他の試料より十分高い2つの正常試料と1つのIDC試料における増加発現の理由は、それら試料について分かることを基にしても明らかでなかった。ASCENTA(登録商標)と試料を定義するのにGene Logicにより実施された品質管理法は、多変量での異常値分析を含むが、アレイ上の全遺伝子セットを使用し、別の試料セットに対する具体的比較は実施しない。それらの試料は、HG-U133Aアレイ上で測定された遺伝子の全セットに照らして異常値であると最初は同定されなかった。この特定のデータセットに照らして該試料をより詳しく評価するために、本発明者らは、浸潤性導管癌から正常試料を識別するために選択された集中的遺伝子セットを使って、品質評価を実施した。
【0279】
IDCから正常胸部試料を識別する約17,00個の遺伝子のセットを選択し、そして主要成分分析と相関分析を実施した。選択された遺伝子の各々が少なくとも2のフォールドチェンジを示し、そして0.01未満のt−検定p値を有した。分析結果は、2つの異常値試料が誤って分類されているようであり、除去すべきであることを示した。図4aと4bに同定された2つの異常値試料の調査の一部として、237試料から成る大型セットの分析を実施した。それらの分析結果は、別の3つの正常試料と5つのIDC試料を分析から除去すべきであることを示す。それらの試料は誤って分類されているようであり、この分析のための適当な試料ではない。10個の異常試料の除去により、63の正常試料と164のIDC試料が得られる。各IDC亜型の残りの数の試料を下記の表Eに具体的に記載する。
【0280】
全ての亜型が依然として少なくとも5個の試料を有している。PARP1発現に関して異常値試料として同定された1つのIDC試料は、この品質評価では異常値であると思われなかった。この試料を分析に残した。
【0281】
除去した5つの正常試料は、正常発現範囲の上端にある傾向にあった。従って、それらの5試料の除去は全平均を下げるであろう。加えて、特に2つの異常値試料の除去は、結果としてより狭い信頼限界をもたらした。IDCカテゴリーによると、同定された5つの異常値試料は、IDC発現範囲の下方末端の所にある傾向にあった。それらの試料の除去により、わずかに増加した要約統計量値が得られた。アップデートした要約統計量を表Fに提供する。IDCグループ中の変化は、正常のもの程は有意でなかった。何故なら、試料数が増加したためと、除去した5試料のどれもPARP1の異常値試料ではないようであったからである。
【0282】
【表71】
【0283】
異常値試料の除去により、IDCと正常の平均強度の間のフォールドチェンジの増加が得られた。2グループ間の有意差についてのt検定は、減少したp値をもたらした。全体的に、異常値の除去は正常試料とIDCの間の平均強度に大きな差を与え、この差は非常に有意であった。
【0284】
【表72】
【0285】
各試料の評価
表Cから観察されるように、正常試料について算出された信頼区間上限は、異常値を除去すると減少した。これは、限定された様々な限界の外側に、より多数のIDC試料を与えた。図5aと5bは、試料の削減数及びその結果生じたより厳重な信頼限界を反映する。
【0286】
結果を図4aと4bと比較すると、正常試料の平均は200以下に減少し、信頼区間上限は全237試料の分析値よりもその平均値にずっと近似している。様々なクラス間の%腫瘍には明確な差はないままである。これは、>90%腫瘍として分類された数個の試料が、浸潤性導管癌範囲の下方末端にある傾向があり、そして25%〜50%腫瘍クラスの試料がより高いPARP1発現を有するという観察に基づく。加えて、50%〜75%及び75%〜90%クラスは、腫瘍試料の発現の範囲を越えて均一に分布される傾向にある。全体として、より多数のIDC試料が前の分析の時よりも各信頼限界の上にある。
【0287】
全試料の分析において観察されるように、PARP1発現は、ER(-)、PR(-)及びHer2-neu(-)クラスにおいて、それらの各(+)クラスに比較して僅かに高い傾向がある。この観察結果はp53クラス又は腫瘍病期クラスには観察されない。この分析で個々の試料が多カテゴリーを導いているという事実は、この結論に影響を及ぼし得る。補足データセットの再調査は、ER(-)グループ中の最高のRARP1発現体が、PR(-)及びHer2-neu(-)グループ中の同一の高発現体であることを明らかにする。同じことが(+)グループ中の最低発現体にも当てはまる。
【0288】
この項目で前に推定したように、異常値を除去すると正常UCLを上回るIDC試料の数が増加する。表Gは、浸潤性導管癌の様々なカテゴリーについての各信頼限界を超える試料の数を要約する。全体で164個のIDC試料では、74%及び45%の試料が、それぞれ前回の39%及び9%に比較して、90%及び99.9%UCLを上回る。ER, PR及びHer2-neuの(-)カテゴリーでは、それらの各(+)カテゴリーに比較して高められたままである。99.9%UCLレベルの所でグループ間を比較すると、差異は最も顕著である。PRカテゴリーでの差異はER及びHer2-neuグループのものより顕著でない。
【0289】
【表73】
【0290】
結論
浸潤性導管癌におけるPARP1の発現は、正常に比較して有意に増加される。図5a及び5bは、観察結果にも関わらず、IDC試料の全てが過剰発現されるわけではない。IDCグループにおけるこの広範分布及び高度発現の方へのシフトは、約70%のIDCが正常集団の95%信頼区間上限より高いPARP1発現を有することを示唆する。この知見は、BiParにより以前に観察された結果を指示する。IDC試料の様々な亜型についての更なる分析は、増加されたPARP1発現を有すると観察されたIDCの割合が、それらのER状態が陰性(-)であるか又はそれらのHer2-neu状態が陰性(-)である場合に88%〜89%に増加することを示す。正常の95%USLを上回るPR陰性試料の割合(79%)は、顕著ではないが依然として高められている。
【0291】
これは、PARP1の過剰発現を標的指向する任意療法が、ER、PR又はHer2-neu試験が陰性である場合に一層有効であり得ることを示唆する。
【0292】
要約すると:
1.PARP1発現は正常胸部組織よりも浸潤性導管癌において高い。
2.組織病理学スライドで観察される腫瘍の割合は、PARP1発現を測定する際の重要な因子ではないようである。
3.IDCグループ中の1つの異常値の存在は、数%の個体に異常に高い発現があることを示す可能性がある。
4.浸潤性導管癌の或る亜型は、別の亜型よりも高い発現を示すようである。特に、ER, Her2-neu及びPRの(-)亜型は、それらの各(+)亜型よりも正常UCLを上回る試料の比率が高かった。
【0293】
考察及び解釈
この実験の結果は、胸部浸潤性導管癌における増加したPARP1発現と一致する。IDC中のPARP1の過剰発現が正常胸部組織における95%信頼区間上限よりも高いレベルとして定義されるならば、浸潤性導管癌の約2/3がPARP1を過剰発現する。PARP1過剰発現がPARP1阻害に対する反応性の増加を示すならば、その結果は、IDCのかなりの割合がPARP1阻害剤による治療の理にかなった候補であることを暗示する。更に、エストロゲン受容体陰性及びHer2-neu陰性のIDC亜型において、一部のPARP1過剰発現腫瘍は、全IDC集団よりも一層高かった。このことは、(1) 標準実験室分析を使った臨床試験においてPARP1過剰発現腫瘍の特定のタイプに焦点をあわせることが有利であるかもしれないこと、(2) PARP1阻害が、抗エストロゲン又は抗Her2-neu治療を受けるに適していない癌の合理的アプローチであるかもしれないことを示唆する。
【0294】
実施例3
卵巣癌及び正常卵巣におけるPARP1の組織発現
研究計画
正常卵巣及び癌性卵巣試料は、ASCENTA(登録商標)システムで定義された試料セットのメンバーであるBioExpress(登録商標)システムから選択された。どの癌試料も複数の亜型グループで表わされることに注意すべきである。一例は、10個の選択した卵巣試料及び多数の亜型におけるそれらのメンバーシップについて表Hに示される。例えば、試料GID 8757は、類内膜型の癌、並びにそれの各々の年齢、CA125状態及び病期の亜型に分類される。幾つかの亜型は互いを除いており、その他は除いていない。任意の各試料について完全な分類体系を与える。
【0295】
【表74】
【0296】
PARP1遺伝子は、識別子“208644 at”を用いて単一プローブセットによりHG-U133Aアレイ上に表示される。このレポート中の全ての結果は、このプローブセットに対するMAS5発現シグナル強度に基づいて作製された。
【0297】
統計分析
正常及び癌の要約統計量
正常及び主要な癌試料クラスを、t分布に基づく平均、標準偏差、標準誤差及び幾つかの信頼区間上限により要約した。信頼区間上限(UCL)は、それらが或る数値を観察する際に確率の特定領域を同定するという点で標準偏差統計学と同様である。例えば、95%信頼区間上限は、5%の試料中に人が偶然に予想するだろう値を上回る値と同様である。
【0298】
卵巣正常データの場合、試料の数(n=88)は、表Iに要約されるような限界を設定するのに標準偏差のみを用いた時に得られる結果とt分布が密接に近似するほど十分な位大きい。例えば、正常卵巣発現強度の平均+2標準偏差は、224.18であり、この値は224.15の95%信頼限界に非常に近似している。これは、正常試料数が小さい場合の臓器の症例では起こらないであろう。
【0299】
【表75】
【0300】
卵巣癌はいずれも正常卵巣よりも多くの平均PARP1を発現した。明細胞腺癌及びムチン性嚢胞腺癌試料は、他の亜型が発現したのより相当少ないPARP1を発現し、発現の変動も図6に示された通りに低かった。
【0301】
表Jは、表Iからのアレイデータを使って測定された、比率に基づくホールドチェンジ及びスチューデントt検定結果を表す。
【0302】
【表76】
【0303】
顆粒膜細胞腫に観察されるように、ホールドチェンジが大きいものが幾つかあり、試料サイズが小さいものは有意でないp値を与え得ることに注目すべきである。或いは、乳頭漿液性腺癌は、多数の試料を含み、その比率変化が顆粒膜細胞腫グループについて観察されるものよりも小さいにも関わらず、非常に有意なp値を与える。サイズの効果と変動に基づく有意さの両方を、結果に影響を与える試料サイズ限界と共に評価する必要がある。
【0304】
各試料の評価
次に、全ての卵巣癌亜型からの各試料を、正常卵巣試料分布に比較して個別に試験した。各々は正常セットの90%、95%、99%及び99.9%信頼区間上限を超えるものとして定義された。癌性卵巣試料のどれも111.92の90%信頼区間下限より低かったので、LCL限界は提供されない。
【0305】
図6は、卵巣試料の各クラスについての結果の視覚的要約を示す。各記号は、x軸上に示される病気クラスとy軸上に示されるそれのPARP1発現強度に従ってプロットした単一試料を表す。90%、95%、99%及び99.9%正常UCLを示す基準線は、水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、水平の実線の基準線としてプロットされる。
【0306】
図6に基づいて幾つかの解釈を行うことができる:
・癌性卵巣試料中のPARP1発現の増加は、正常卵巣試料に比較して明らかである。
・癌性卵巣試料のPARP1は、正常卵巣試料のものよりずっと高度の変動率を示す。
・PARP1発現に関して正常卵巣試料セット内に異常値試料は1つも観察されなかった。
【0307】
表Kは、卵巣癌クラスについての予め決められた信頼区間上限を超える試料の割合及び数を要約する。
【0308】
【表77】
【0309】
簡易表から幾つかの結果を引き出すことができる。
・卵巣癌の大部分の病理学的亜型は、大部分の試料が95%UCLを超えることを示した。
・乳頭状漿液性、漿液性嚢胞腺癌、顆粒膜細胞腫及びミュラー管混合腫瘍は全て、同様な95%UCLを超える試料の高発生率を示した。
・類内膜腺癌では、試料の約半分が95%UCLより高かった。
・明細胞腺癌及びムチン性嚢胞腺癌では、三分の一又はそれ未満の試料が95%UCLより高かった。
・PARP1発現の臨床亜型比較は次のことを明らかにした:
・乳頭状漿液性腺癌I型は乳頭状漿液性腺癌III型と同様であった。
・CA125増加型乳頭状漿液性腺癌は乳頭状漿液性腺癌と同様であった。
【0310】
選択された遺伝子に対するPARP1の比較
PARP1発現をHG-U133A/Bアレイセット上で測定された別の遺伝子の発現に関連付けた。相関関係は、この分析用に選択された194試料の全セットに基づいた。表Lはこの分析の結果を要約する。
【0311】
【表78】
【0312】
正の相関性は、プローブセットがPARP1と同じ方向で変化することを示す。正常試料の場合のように、PARP1が低発現を有する時、それらの関連した遺伝子の発現も低いであろうと予想される。悪性試料の場合のように、PARP1が増加した発現を有する時、それらの関連遺伝子の発現が高められると予想される。
【0313】
結論
卵巣癌試料中のPARP1の発現は、正常に比較して高められる。図6は、この結果にも関わらず、卵巣癌試料の全部がこの過剰発現を示すわけではないことを示す。卵巣癌グループにおけるこの広範な分布及び高発現の方へのシフトは、〜75%の卵巣癌が正常な卵巣発現の95%信頼区間上限を上回るPARP1発現を有することを示す。卵巣癌試料の様々な亜型に対する更なる分析は、それらが乳頭状漿液性腺癌、漿液性嚢胞腺癌、ミュラー管混合腫瘍又は顆粒膜細胞癌の亜型のものである場合、増加したPARP1発現を有することが観察される卵巣癌試料の割合が〜90%に増加することを示す。明細胞腺癌及びムチン性嚢胞腺癌は、分析した試料の三分の一又はそれ未満で増加したPARP1発現を示した。
【0314】
要約すると、
1.PARP1発現が正常卵巣組織よりも卵巣癌において高い。
2.或る亜型の卵巣癌が、別の亜型よりも高い発現レベルを示すようである。より詳しくは、乳頭状漿液性腺癌、漿液性嚢胞腺癌、ミュラー管混合腫瘍及び顆粒膜細胞腫試料は、類内膜腺癌よりも正常UCLを上回る試料の割合が高く、一方で明細胞腺癌とムチン性嚢胞腺癌よりも正常UCLを上回る試料の割合が高いことを示した。
【0315】
考察及び解釈
卵巣癌におけるPARP1の過剰発現が、正常卵巣組織の発現の95%信頼区間上限よりも高いレベルとして定義されるならば、〜75%の卵巣癌試料がPARP1を過剰発現する。PARP1過剰発現がPARP1阻害に対する増加した応答性を示すならば、その結果は卵巣癌の実質的部分がPARP1阻害剤での治療の候補となりうることを暗示し、特に、乳頭状漿液性腺癌、漿液性嚢胞腺癌、ミュラー管混合腫瘍及び顆粒膜細胞腫の亜型でそうである。
【0316】
実施例4
悪性及び正常の子宮内膜、肺及び前立腺組織試料におけるPARP1の遺伝子発現
この研究は、ヒト正常子宮内膜(n=23)、肺(n=122)及び前立腺(n=57)並びにAffymetrix HG-U133A/Bアレイセット上で測定された子宮内膜(n=57)、肺(n=101)及び前立腺(n=57)の様々な癌の研究である。
【0317】
該研究の主な目標は、正常組織試料中のPARP1発現に基づいた客観的統計閾値を使うことによってPARP1 mRNAの「過剰発現」を定義し、次いでそれらの統計閾値を超える癌試料を同定し特徴づけることであった。
【0318】
癌におけるPARP1発現は、一般に正常組織に比較して増加した。PARP1発現は、全子宮内膜癌試料の約1/4、全肺癌試料の約3/4、及び全前立腺癌試料の約1/8において、正常集団の95%信頼区間上限より上であった(“過剰発現”)。ミュラー管混合腫瘍及び肺扁平上皮細胞癌は、増加PARP1発現の最高発生率を示した。前立腺癌におけるPARP1発現は、子宮内膜及び肺組織において評価された癌型についてよりも相当低かった。
【0319】
PARP1と他の全ての遺伝子との相関関係は、80%ほどの高いPARP1との相関性を有する遺伝子を同定した。子宮内膜及び肺試料の中で、両組織中で高度に相関がある(即ちトップ40)、細胞増殖に関係した遺伝子の共通セットが同定された。
【0320】
この分析実験は、Affimetrix HG-U133A/Bアレイセット上で測定されたヒト正常及び癌性子宮内膜、肺及び前立腺試料中のPARP1 mRNAの発現の調査である。この分析は次の目的に取り組む:
・同一の又は医学的に類似の組織型からの対照試料(即ち、正常)に対して比較した時の、個々の子宮内膜、肺及び前立腺の腫瘍試料に関するPARP1の発現の特徴づけ。
・HG-U133A/Bアレイセット上の全ての他の遺伝子の発現に比較したPARP1の発現の特徴づけ。
【0321】
実験計画
子宮内膜、肺及び前立腺組織からの各正常及び癌性試料を選択した。どの癌性試料も複数の亜型グループに表示することができる。一例は、10の選択された子宮内膜試料と多数の亜型におけるそれらのメンバーシップについて表Mに示される。
【0322】
【表79】
【0323】
PARP1遺伝子は、識別子“208644 at”を用いた単一プローブセットによりHG-U133Aアレイ上に表示される。全ての結果は、このプローブセットに対するMAS5発現シグナル強度に基づいて作製され、それを“PARP1”と呼称することにする。
【0324】
統計分析―子宮内膜結果
正常及び悪性試料クラスを、t分布に基づいた平均、標準偏差、標準誤差、及び幾つかの信頼区間上限により要約する。信頼区間上限(UCL)は、それらが1つの数値を観察する際に確率の特定領域を同定するという点で標準偏差統計と同様である。例えば、95%信頼区間上限は、試料の5%中に偶然に期待するであろう値より上の値と同様である。
【0325】
表Nは、正常及び類内膜癌試料セットについての要約統計量を示す。
【表80】
【0326】
子宮内膜癌の全てが、正常子宮内膜よりも高い平均PARP1シグナル強度を示した。ミュラー混合腫瘍試料は、他の亜型のものよりも相当高いPARP1を発現した。これは、下記の図7に視覚的に示される。
【0327】
表Oは、正常に比較した時のPARP1遺伝子発現の比率に基づく倍数変化とStudent両側t検定結果を示す。
【0328】
【表81】
【0329】
次に、全ての子宮内膜癌亜型からの各試料を、正常子宮内膜試料分布に比較して個別に試験した。各々は正常セットの90%、95%、99%及び99.9%信頼限界上限を超えるものとして定義された。
【0330】
図7は、子宮内膜試料の各クラスについての結果の視覚的要約を示す。各記号は、x軸上に示された病型とy軸上に示されたPARP1発現強度に従ってプロットした単一試料を表す。正常UCLは水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、水平の実線の参照線としてプロットされる。
【0331】
癌性子宮内膜試料中のPARP1の増加発現は、正常子宮内膜試料に比較して明らかである。癌性子宮内膜試料のPARP1発現は、正常子宮内膜試料のものよりもずっと高度の変化度(即ち、より大きい広がり)を示す。PARP1発現に関して正常子宮内膜試料内には異常値が全く観察されなかった。
【0332】
表Pは、子宮内膜癌型の予め決められた信頼限界上限を超える試料の割合と数を要約する。この表は、90%UCLを超える試料の最大発生率を有するクラスに関して分類されている。従って、表の上の方のクラスは、正常閾値を超える試料を最大比率含有する。
【0333】
【表82】
【0334】
子宮内膜癌の大部分の病理学的亜型では、大部分の試料が90%UCLを超えることを示した。特に着目されるのは、ミュラー管混合腫瘍が95%UCLを超える試料の最高率(85.7%)を有し、99.9%UCLでも最高(71.4%)のままであった。
【0335】
肺結果
正常及び異常試料クラスを、t分布に基づいて平均、標準偏差、標準誤差及び幾つかの信頼限界上限により要約した。信頼限界上限(UCL)は、それらが或る値を観察するに際して確率の特定領域を同定するという点で、標準偏差統計と類似している。例えば、95%信頼限界上限は、試料の5%中に偶然に期待するであろう値を上回る値と同様である。
【0336】
表Qは、正常及び肺癌試料セットの各々についての要約統計量を示す。
【0337】
【表83】
【0338】
全ての肺癌試料が正常肺よりも高い平均PARP1シグナル強度を示した。これは、図8に視覚的に示される。
【0339】
表Rは、正常に比較した時のPARP1遺伝子発現の、比率に基づくホールドチェンジとスチューデント両側t検定結果を表す。
【0340】
【表84】
【0341】
次に、全ての肺癌亜型からの各試料を、正常肺試料分布に比較して個別に分析した。各々を正常セットの90%、95%、99%及び99.9%信頼限界上限を超えるものとして定義した。正常セットの90%信頼限界下限を下回る肺癌試料は1つもなかったので、LCL限界は示さなかった。
【0342】
図8は、肺試料の各クラスについての結果の視覚的概要を示す。各記号は、x軸上に示された病型とy軸上のそれのPARP1発現強度に従ってプロットされた単一試料を表す。90%、95%、99%及び99.9%正常UCLを示す基準線は、水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、実線の水平基準線としてプロットされる。肺癌試料におけるPARP1の増加発現は正常肺試料に比較して明白である。肺癌試料のPARP1発現は、正常肺試料のものに比較して高い変動率(即ち、より大きい広がり)を示す。
【0343】
表Sは、肺癌クラスに対して予め決められた信頼限界上限を上回る試料の割合と数を要約する。この表は、90%UCLを超える試料の最大発生率を有するクラスに関して分類されている。従って、表の上の方のクラスは、正常閾値を超える試料を高い比率で含有する。
【0344】
【表85】
【0345】
前立腺結果
表Tは、正常及び癌性の各前立腺試料セットの要約統計量を示す。
【0346】
【表86】
【0347】
前立腺癌群は、正常前立腺群よりも幾分高い平均PARP1シグナル強度を示した。これは図9に視覚的に示される。
【0348】
表Uは、正常と比較した時のPARP1遺伝子発現の比率に基づくホールドチェンジとStudent両側t検定の結果を示す。
【0349】
【表87】
【0350】
図9は、前立腺試料の各クラスについての結果の視覚的概要を示す。各記号は、x軸上に示された病型とy軸上のそれのPARP1発現強度に従ってプロットされた単一試料を表す。90%、95%、99%及び99.9%正常UCLを示す基準線は、水平の破線としてプロットされる。正常試料の平均は、実線の水平基準線としてプロットされる。正常前立腺試料に比較して前立腺癌試料におけるPARP1のわずかな増加発現が明白である。前立腺癌試料のPARP1発現は、正常前立腺試料のものに比較して類似の変動率(即ち、同等の広がり)を示す。
【0351】
表Vは、前立腺癌亜型に対して予め決められた信頼限界上限を上回る試料の割合と数を要約する。
【表88】
【0352】
60歳以上の前立腺癌での幾分高いPARP1発現は、90%、95%及び99%UCL閾値を超える試料のわずかに高い発生率において反映される。正常群と癌群の両方からの全ての試料が99.9%UCL限界の内側であった。
【0353】
それらの結果は、肺癌及び特定の子宮内膜癌のかなりの部分、特に、ミュラー管混合腫瘍及び肺の扁平上皮癌が、PARP1阻害剤による治療の合理的な候補となり得ることを示唆する。PARP1発現は、子宮内膜癌及び肺癌においてそれらの各正常組織よりも高い。或る亜型の子宮内膜癌及び肺癌は、他の型のよりも高い発現レベルを示すように見える。具体的には、ミュラー管混合腫瘍及び肺扁平上皮癌試料は、正常のUCLを上回る試料の割合が他の型のよりも高かった。
【0354】
実施例5
組織試料中のPARP発現のモニタリング
アッセイ説明及び方法
XP(登録商標)−PCRは、単一反応における複数遺伝子の発現分析を可能にする多重RT-PCR方法論である(Quin-Rong Chen, Gordon Vansant, Kahuku Oades, Maria Pickering, Jun S.Wei, Young K. Song, Joseph Monforte & Javed Khan: “Diagnosis of the Small Round Blue Cell Tumors Using Multiplex Polymerase Chain Reaction.”Journal of Molecular Diagnostics, 第9巻,第1号,2007年2月)。この反応に用いられる遺伝子特異的プライマーと万能プライマーの限定組み合わせが、一連の蛍光標識PCR生成物を生成し、それのサイズと量をキャピラリー電気泳動装置GeXPを使って測定する。
【0355】
試料処置
簡潔に言うと、精製したばかりの組織試料を1ウエルあたり6×106細胞数で24ウエルに入れる。試料の半分を即座に溶解し、もう半分をドライアイスとエタノール浴中で迅速に凍結させ、そして−80℃で24時間保存する。Promega SV96キット(カタログ番号Z3505)を使ったAlthea Technologies, Inc. SOP 全RNA単離法に従って、各試料から全RNAを単離する。各試料から得られたRNAの濃度は、03-XP-008 、the Quant-it Ribogreen RNA Assay Kit(カタログ番号R-11490)を使ったRNA定量を用いて得られる。各試料からのRNAの一部を5 ng/μlに調整し、次いでXP(登録商標)−PCRにかける。
【0356】
XPTM-PCR
25 ngの各試料の全RNAを使って、以前に記載されたプロトコル(Quin-Rong Chen, Gordon Vansant, Kahuku Oades, Maria Pickering, Jun S.Wei, Young K. Song, Joseph Monforte & Javed Khan: “Diagnosis of the Small Round Blue Cell Tumors Using Multiplex Polymerase Chain Reaction.”Journal of Molecular Diagnostics, 第9巻,第1号,2007年2月)を利用して多重RT-PCRを実施する。RT反応は、SOP 11-XP-002、cDNA Production from RNA with the Applied Biosystems 9700中に記載された通りに実施する。PCR反応は、SOP11-XP-003, XP(登録商標)-PCR with the Applied Biosystems 9700に従って各cDNA上で実施する。RT及びPCR反応の効率をモニタリングするために、0.24アトモルのカナマイシンRNAを各RT反応液中に投入する。2種類の正の対照RNAを使用する。別のアッセイ対照として、RNAの代わりに水を個々の反応液に添加する“鋳型なし”対照(NTC)及び逆転写酵素を用いない手順に試料RNAをかけるという“逆転写酵素不含有(RT-)”対照が挙げられる。
【0357】
発現分析及び計算
PCR反応をキャピラリー電気泳動により分析する。蛍光標識したPCR反応液を希釈し、Genome Labサイズ標準400(Beckman-Coulter, Part Number 608098)と混合し、変性させ、そしてSOP 11-XP-004,Operation and Maintenance of the CEQ 8800 Genetic Analysis System を使ってBeckman Coulter上に負荷する。前記8800から得られたデータを、発現分析ソフトウェアを用いて分析して、各遺伝子についての相対発現値を得る。シクロフィリンA、GAPDH又はβ−アクチンのいずれかの発現に比較した各標的遺伝子の発現を、複製の平均として報告する。それらの値に関連する標準偏差と変動係数率(%CV)も適切ならば報告されるだろう。
【0358】
統計分析法
この分析で使用するANOVAモデルの数式形は以下の通りである:
Yijkl=μ+αi+βj+γk+ωl(ijk)+εijkl
i=1....5、j=1....4、k=1....3、l=1....3
Cov(Yijkl,Yijkl)=σω2+σε2 Cov(Yijkl,Yijlk)=σσ2 Cov(Yijkl,Yijlk)
【0359】
ここで、Yijklは、lth回反復からのkth時点でのjth投与濃度のもとでith試料中に得られる標準化されたRfu比である。モデルパラメーターμは、総平均標準化Rfu比であり、未知の定数であり、αiは試料iによる固定効果であり、βjは投与濃度jによる固定効果であり、γkは時点kによる固定効果であり、そしてωl(ijk)は、kth時点でのjth投与濃度のもとでith試料中のlth反復によるランダム効果であり、これは平均0及び分散σω2で正規分布すると仮定される。εijklは、lth反復からのkth時点でのjth投与濃度のもとでのith試料中からの標準化Rfu比と関係づけられ、平均0と分散σε2で正規分布すると仮定される、ランダム誤差項である。
【0360】
R中のnlmeパッケージ中のlme関数は、上記モデルに関するデータを分析するのみ用いられるだろう。総用量効果(H0:β1=β2=β3=β4=β5=0に対して、H1:少なくとも1つのβiが異なる)は各遺伝子についてF検定で試験される。
【0361】
本発明の好ましい態様を示し本明細書中に記載してきたが、そのような態様は単に例によってのみ提供されることは当業者に明白であろう。本発明から逸脱することなく、当業者は多数の変更、改良及び置換を当業者は実施できるだろう。本明細書中に記載の本願発明の態様に対する様々な変更を、本発明を実施する際に使用してもよいと理解すべきである。次の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義し、それらの請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの同等物は本発明に包含されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PARP媒介疾病の治療法を特定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARP媒介疾病の治療に関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記治療決定が前記PARPレベルに基づいて行われるという方法。
【請求項2】
前記治療決定がPARPモジュレーターでの治療に関する決定である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PARPモジュレーターによる疾病の治療方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;PARPモジュレーターによる疾病の治療に関する決定を行い、ここで前記決定が前記PARPレベルに基づいており;そして前記PARPモジュレーターにより前記被検体の前記疾病を治療することを含んで成り、ここで前記治療が前記治療決定に基づいているという方法。
【請求項4】
前記PARPレベルの同定がアッセイ技術を含んで成る、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アッセイ技術がPARP遺伝子の発現を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイ技術がPARP-1遺伝子の発現を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイ技術がポリメラーゼ連結反応である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、ヒト正常試料、腫瘍試料、毛髪、血液、細胞、組織、器官、脳組織、全血、血清、痰、唾液、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液及び射精前液から成る群より選択される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PARPレベルがアップレギュレートされ、そして前記治療決定がPARP阻害剤により前記疾病を治療するための決定である、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PARPレベルがダウンレギュレートされ、そして前記治療決定がPARP阻害剤により前記疾病を治療するための決定である、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PARP阻害剤がベンズアミド、キノロン、ベンズアミド、キノロン、イソキノリン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル、環状ベンズアミド、ベンズイミダゾール及びインドールから成る群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、患者、医療提供者又は医療管理者に前記疾病に関する結論を提供することを更に含んで成り、前記結論が前記決定に基づいている、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔投与、経鼻投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与及び直腸投与から成る群より選択される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PARP媒介疾病が、癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系の障害、内分泌及び神経内分泌の障害、尿路の障害、呼吸器系の障害、女性生殖系の障害並びに男性生殖系の障害から成る群より選択される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が、結腸腺癌、食道腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、島細胞腫、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞腺癌、乳頭癌、乳癌、導腺管癌、小葉癌、腺管内癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒細胞腫、ムチン性嚢胞腺癌、子宮頸部腺癌、外陰扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨の巨細胞腫、骨肉腫、咽頭癌、肺腺癌、腎臓癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症が、非ホジキンリンパ腫、ウェグナー肉芽腫症、橋本甲状腺炎、血液細胞腫、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ過形成、変形性関節炎、潰瘍性大腸炎、及び乳頭癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記代謝性疾患が糖尿病又は肥満である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記CVS病が、アテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎、心筋梗塞、及び特発性肥大性心筋症から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記CNS病が、アルツハイマー病、コカイン乱用、統合失調症、及びパーキンソン病から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記血液リンパ系の障害が、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び反応性リンパ過形成から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記内分泌及び神経内分泌の障害が、結節性過形成、橋本甲状腺炎、島細胞腫、及び乳頭癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記尿路の障害が、腎細胞癌、尿路移行上皮癌、及びウィルムス腫瘍から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記呼吸系の障害が、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、及び巨細胞癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記女性生殖系の障害が、腺癌、平滑筋腫、ムチン性嚢胞腺癌、及び漿液性嚢胞腺癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記男性生殖系の障害が、前立腺癌、良性結節性過形成及びセミノーマから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記PARPモジュレーターが4−ヨード−3−ニトロベンズアミドである、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
PARPモジュレーターで治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成る試料の分析結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能媒体であって、前記情報が、前記被検体からの前記試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPモジュレーターにより前記疾病を治療することに関して前記PARPレベルに基づく決定を行うことにより誘導されることを特徴とする、コンピューター読み取り可能媒体。
【請求項29】
少なくとも1段階がコンピューターを用いて実施される、請求項1,2又は28のいずれか一項の方法。
【請求項30】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記乳癌が前記PARP阻害剤で治療可能かどうかに関して前記PARPレベルに基づく決定を行うことを含んで成る方法。
【請求項31】
被検体の乳癌をPARP阻害剤により治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記乳癌が前記PARP阻害剤で治療可能かどうかに関して前記PARPレベルに基づく決定を行い;そして前記乳癌を前記PARP阻害剤で治療することを含んで成る方法。
【請求項32】
前記PARPレベルがアップレギュレートされる、請求項30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記被検体がBRCA遺伝子に欠損を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記被検体がダウンレギュレートされたBRCA遺伝子を有する、請求項30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記PARPがPARP-1である、請求項1,2,28,30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
被検体の乳癌を分類する方法であって、前記被検体からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し、そしてPARPモジュレーターで前記腫瘍を治療することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定が前記PARPレベルに基づいて行われるという方法。
【請求項37】
被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記腫瘍をPARPモジュレーターで治療することに関して前記PARPレベルに基づいた決定を行い;そして前記被検体の前記腫瘍を前記PARPモジュレーターで治療することを含んで成る方法。
【請求項38】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記浸潤性導管癌がER、Her2-neu及びPRについて陰性である、請求項39に記載の方法。
【請求項40】
前記PARPレベルの同定がアッセイ技術を含んで成る、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項41】
前記アッセイ技術がPARP遺伝子の発現を測定する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記試料が、ヒト正常試料、腫瘍試料、毛髪、血液、細胞、組織、器官、脳組織、全血、血清、痰、唾液、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液及び射精前液から成る群より選択される、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記PARPレベルがアップレギュレートされる、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記PARP阻害剤がベンズアミド、キノロン、イソキノロン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル、環状ベンズアミド、ベンズイミダゾール及びインドールから成る群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、前記疾病に関する結論を患者、医療提供者又は医療管理者に提供することを更に含んで成り、前記結論が前記決定に基づいている、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔投与、経鼻投与、吸入、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群より選択される、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARP阻害剤による前記乳癌の治療に関して前記PARPレベルに基づく決定を行うことを含んで成る方法。
【請求項49】
PARP阻害剤により被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;PARP阻害剤により前記乳癌を治療することに関して前記PARPレベルに基づく決定を行い;そして前記乳癌を前記PARP阻害剤で治療することを含んで成る方法。
【請求項50】
前記PARPレベルがアップレギュレートされる、請求項48又は49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項48又は49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記浸潤性導管癌がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
被検体の癌を治療する方法であって、前記被検体からの癌試料中のER, Her2-neu及びPRの存在又は不在を同定し;そして前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成り、ここで前記癌試料がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性であるならば前記治療が実施されるという方法。
【請求項54】
PARPモジュレーターで治療可能なPARP媒介疾患を又はPARP媒介疾患の病期を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回り、それにより前記PARP媒介疾患をPARPモジュレーターで治療すべきであると決定することを含んで成る方法。
【請求項55】
患者へのPARPモジュレーターの投与により疾病を治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾患をPARPモジュレーターで治療すべきであることを決定し;そして前記患者に前記PARPモジュレーターを投与することにより前記患者の前記疾病を治療することを含んで成る方法。
【請求項56】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項54又は55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記PARPがPARP-1である、請求項54又は55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
試料の分析の結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能媒体であって、前記媒体はPARPモジュレーターで治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成り;前記情報が予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病をPARPモジュレーターで治療すべきであると決定することにより誘導される、コンピューター読み取り可能媒体。
【請求項59】
少なくとも1つの段階がコンピューターを用いて実行される、請求項54,55又は58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、患者からの試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARPモジュレーターで治療可能であると決定することを含んで成る方法。
【請求項61】
患者の乳癌をPARP阻害剤で治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であると決定し;そして前記PARP阻害剤を前記患者に投与することにより前記乳癌を治療することを含んで成る方法。
【請求項62】
前記被検体がBRCA1又はBRCA2欠損である、請求項60又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記被検体がBRCA遺伝子の減少した発現レベルを有する、請求項60又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記PARPがPARP-1である、請求項60又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
患者の乳癌を分類する方法であって、前記患者からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARPモジュレーターで治療可能なものとして分類することを含んで成る方法。
【請求項66】
被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARPモジュレーターで治療可能であると決定し;そして前記被検体の前記腫瘍を前記PARPモジュレーターで治療することを含んで成る方法。
【請求項67】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項66又は67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記浸潤性導管癌がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性である、請求項68に記載の方法。
【請求項69】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項66又は67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であると決定することを含んで成る方法。
【請求項71】
患者の乳癌を治療する方法であって、ER, Her2-neu及び/又はPRが前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であると決定し;そして前記PARP阻害剤を前記患者に投与することを含んで成る方法。
【請求項72】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項71又は72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記浸潤性導管癌がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性である、請求項73に記載の方法。
【請求項74】
患者の癌を治療する方法であって、ER, Her2-neu及び/又はPRが前記患者からの癌試料中に存在するかどうかを決定し;そしてER, Her2-neu及び/又はPRが前記患者からの前記試料中に存在しない場合に、前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成る方法。
【請求項75】
PARP阻害剤での治療のために被検体を選択する方法であって、
PARP阻害剤の投与前に前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し、前記試料中の前記PARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し、そして前記PARP阻害剤での治療のために該被検体を選択することを含んで成る方法。
【請求項76】
PARP阻害剤で被検体を治療する方法であって、
前記PARP阻害剤の投与前に前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し、前記試料中の前記PARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し、そして前記被検体に前記PARP阻害剤を投与することを含んで成る方法。
【請求項77】
PARP阻害剤での治療を受けている被検体において治療に対する応答を評価する方法であって、少なくとも第一及び第二の時点で前記被検体のPARPレベルを測定して、第一のPARPレベル及び第二のPARPレベルを獲得することを含んで成り、ここで前記第一のPARPレベルに比較した前記第二のPARPレベルの減少が、治療に対する陽性応答の指標であることを特徴とする方法。
【請求項78】
患者の状態が増加したPARPレベルを引き起こしている患者を治療する方法であって、ここで患者試料のPARPレベルは予め決められたPARPレベルより高く、前記患者にPARP阻害剤の治療上有効量を投与することを含んで成る方法。
【請求項1】
PARP媒介疾病の治療法を特定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARP媒介疾病の治療に関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記治療決定が前記PARPレベルに基づいて行われるという方法。
【請求項2】
前記治療決定がPARPモジュレーターでの治療に関する決定である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PARPモジュレーターによる疾病の治療方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;PARPモジュレーターによる疾病の治療に関する決定を行い、ここで前記決定が前記PARPレベルに基づいており;そして前記PARPモジュレーターにより前記被検体の前記疾病を治療することを含んで成り、ここで前記治療が前記治療決定に基づいているという方法。
【請求項4】
前記PARPレベルの同定がアッセイ技術を含んで成る、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アッセイ技術がPARP遺伝子の発現を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アッセイ技術がPARP-1遺伝子の発現を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記アッセイ技術がポリメラーゼ連結反応である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、ヒト正常試料、腫瘍試料、毛髪、血液、細胞、組織、器官、脳組織、全血、血清、痰、唾液、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液及び射精前液から成る群より選択される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PARPレベルがアップレギュレートされ、そして前記治療決定がPARP阻害剤により前記疾病を治療するための決定である、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PARPレベルがダウンレギュレートされ、そして前記治療決定がPARP阻害剤により前記疾病を治療するための決定である、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PARP阻害剤がベンズアミド、キノロン、ベンズアミド、キノロン、イソキノリン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル、環状ベンズアミド、ベンズイミダゾール及びインドールから成る群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、患者、医療提供者又は医療管理者に前記疾病に関する結論を提供することを更に含んで成り、前記結論が前記決定に基づいている、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔投与、経鼻投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与及び直腸投与から成る群より選択される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PARP媒介疾病が、癌、炎症、代謝性疾患、CVS病、CNS病、血液リンパ系の障害、内分泌及び神経内分泌の障害、尿路の障害、呼吸器系の障害、女性生殖系の障害並びに男性生殖系の障害から成る群より選択される、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が、結腸腺癌、食道腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、膵臓腺癌、島細胞腫、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質癌、濾胞腺癌、乳頭癌、乳癌、導腺管癌、小葉癌、腺管内癌、粘液性癌、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒細胞腫、ムチン性嚢胞腺癌、子宮頸部腺癌、外陰扁平上皮癌、基底細胞癌、前立腺腺癌、骨の巨細胞腫、骨肉腫、咽頭癌、肺腺癌、腎臓癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症が、非ホジキンリンパ腫、ウェグナー肉芽腫症、橋本甲状腺炎、血液細胞腫、慢性膵炎、関節リウマチ、反応性リンパ過形成、変形性関節炎、潰瘍性大腸炎、及び乳頭癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記代謝性疾患が糖尿病又は肥満である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記CVS病が、アテローム動脈硬化症、冠動脈疾患、肉芽腫性心筋炎、慢性心筋炎、心筋梗塞、及び特発性肥大性心筋症から成る、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記CNS病が、アルツハイマー病、コカイン乱用、統合失調症、及びパーキンソン病から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記血液リンパ系の障害が、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、及び反応性リンパ過形成から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記内分泌及び神経内分泌の障害が、結節性過形成、橋本甲状腺炎、島細胞腫、及び乳頭癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記尿路の障害が、腎細胞癌、尿路移行上皮癌、及びウィルムス腫瘍から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記呼吸系の障害が、腺癌、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、及び巨細胞癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記女性生殖系の障害が、腺癌、平滑筋腫、ムチン性嚢胞腺癌、及び漿液性嚢胞腺癌から成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記男性生殖系の障害が、前立腺癌、良性結節性過形成及びセミノーマから成る群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記PARPモジュレーターが4−ヨード−3−ニトロベンズアミドである、請求項1又は3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
PARPモジュレーターで治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成る試料の分析結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能媒体であって、前記情報が、前記被検体からの前記試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPモジュレーターにより前記疾病を治療することに関して前記PARPレベルに基づく決定を行うことにより誘導されることを特徴とする、コンピューター読み取り可能媒体。
【請求項29】
少なくとも1段階がコンピューターを用いて実施される、請求項1,2又は28のいずれか一項の方法。
【請求項30】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記乳癌が前記PARP阻害剤で治療可能かどうかに関して前記PARPレベルに基づく決定を行うことを含んで成る方法。
【請求項31】
被検体の乳癌をPARP阻害剤により治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記乳癌が前記PARP阻害剤で治療可能かどうかに関して前記PARPレベルに基づく決定を行い;そして前記乳癌を前記PARP阻害剤で治療することを含んで成る方法。
【請求項32】
前記PARPレベルがアップレギュレートされる、請求項30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記被検体がBRCA遺伝子に欠損を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記被検体がダウンレギュレートされたBRCA遺伝子を有する、請求項30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記PARPがPARP-1である、請求項1,2,28,30又は31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
被検体の乳癌を分類する方法であって、前記被検体からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し、そしてPARPモジュレーターで前記腫瘍を治療することに関する決定を行うことを含んで成り、ここで前記決定が前記PARPレベルに基づいて行われるという方法。
【請求項37】
被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記腫瘍をPARPモジュレーターで治療することに関して前記PARPレベルに基づいた決定を行い;そして前記被検体の前記腫瘍を前記PARPモジュレーターで治療することを含んで成る方法。
【請求項38】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記浸潤性導管癌がER、Her2-neu及びPRについて陰性である、請求項39に記載の方法。
【請求項40】
前記PARPレベルの同定がアッセイ技術を含んで成る、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項41】
前記アッセイ技術がPARP遺伝子の発現を測定する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記試料が、ヒト正常試料、腫瘍試料、毛髪、血液、細胞、組織、器官、脳組織、全血、血清、痰、唾液、血漿、乳頭吸引液、滑液、脳髄液、汗、尿、糞便、膵液、骨梁液、脳脊髄液、涙、気管支洗浄液、ぬぐい液、気管支吸引液、精液、前立腺液、前脳液、膣液及び射精前液から成る群より選択される、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記PARPレベルがアップレギュレートされる、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記PARP阻害剤がベンズアミド、キノロン、イソキノロン、ベンゾピロン、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシフェノキシ)安息香酸メチル、3,5−ジヨード−4−(4′−メトキシ−3′,5′−ジヨードフェノキシ)安息香酸メチル、環状ベンズアミド、ベンズイミダゾール及びインドールから成る群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、前記疾病に関する結論を患者、医療提供者又は医療管理者に提供することを更に含んで成り、前記結論が前記決定に基づいている、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔投与、経鼻投与、吸入、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群より選択される、請求項36又は37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARP阻害剤による前記乳癌の治療に関して前記PARPレベルに基づく決定を行うことを含んで成る方法。
【請求項49】
PARP阻害剤により被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;PARP阻害剤により前記乳癌を治療することに関して前記PARPレベルに基づく決定を行い;そして前記乳癌を前記PARP阻害剤で治療することを含んで成る方法。
【請求項50】
前記PARPレベルがアップレギュレートされる、請求項48又は49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項48又は49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記浸潤性導管癌がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
被検体の癌を治療する方法であって、前記被検体からの癌試料中のER, Her2-neu及びPRの存在又は不在を同定し;そして前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成り、ここで前記癌試料がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性であるならば前記治療が実施されるという方法。
【請求項54】
PARPモジュレーターで治療可能なPARP媒介疾患を又はPARP媒介疾患の病期を同定する方法であって、被検体からの試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回り、それにより前記PARP媒介疾患をPARPモジュレーターで治療すべきであると決定することを含んで成る方法。
【請求項55】
患者へのPARPモジュレーターの投与により疾病を治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾患をPARPモジュレーターで治療すべきであることを決定し;そして前記患者に前記PARPモジュレーターを投与することにより前記患者の前記疾病を治療することを含んで成る方法。
【請求項56】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項54又は55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記PARPがPARP-1である、請求項54又は55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
試料の分析の結果の伝達に適当なコンピューター読み取り可能媒体であって、前記媒体はPARPモジュレーターで治療可能な被検体の疾病に関する情報を含んで成り;前記情報が予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記PARP媒介疾病をPARPモジュレーターで治療すべきであると決定することにより誘導される、コンピューター読み取り可能媒体。
【請求項59】
少なくとも1つの段階がコンピューターを用いて実行される、請求項54,55又は58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、患者からの試料中のPARPレベルを同定し;そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARPモジュレーターで治療可能であると決定することを含んで成る方法。
【請求項61】
患者の乳癌をPARP阻害剤で治療する方法であって、前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であると決定し;そして前記PARP阻害剤を前記患者に投与することにより前記乳癌を治療することを含んで成る方法。
【請求項62】
前記被検体がBRCA1又はBRCA2欠損である、請求項60又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記被検体がBRCA遺伝子の減少した発現レベルを有する、請求項60又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記PARPがPARP-1である、請求項60又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
患者の乳癌を分類する方法であって、前記患者からの腫瘍試料中のPARPレベルを同定し、そして前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARPモジュレーターで治療可能なものとして分類することを含んで成る方法。
【請求項66】
被検体の乳癌を治療する方法であって、前記被検体からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌をPARPモジュレーターで治療可能であると決定し;そして前記被検体の前記腫瘍を前記PARPモジュレーターで治療することを含んで成る方法。
【請求項67】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項66又は67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記浸潤性導管癌がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性である、請求項68に記載の方法。
【請求項69】
前記PARPモジュレーターがPARP阻害剤である、請求項66又は67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
PARP阻害剤で治療可能な乳癌を同定する方法であって、患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であると決定することを含んで成る方法。
【請求項71】
患者の乳癌を治療する方法であって、ER, Her2-neu及び/又はPRが前記患者からの試料中のPARPレベルを同定し;前記PARPレベルが予め決められたレベルを上回るかどうかを決定し、それにより前記乳癌がPARP阻害剤で治療可能であると決定し;そして前記PARP阻害剤を前記患者に投与することを含んで成る方法。
【請求項72】
前記乳癌が浸潤性導管癌である、請求項71又は72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記浸潤性導管癌がER, Her2-neu及び/又はPRについて陰性である、請求項73に記載の方法。
【請求項74】
患者の癌を治療する方法であって、ER, Her2-neu及び/又はPRが前記患者からの癌試料中に存在するかどうかを決定し;そしてER, Her2-neu及び/又はPRが前記患者からの前記試料中に存在しない場合に、前記癌をPARP阻害剤で治療することを含んで成る方法。
【請求項75】
PARP阻害剤での治療のために被検体を選択する方法であって、
PARP阻害剤の投与前に前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し、前記試料中の前記PARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し、そして前記PARP阻害剤での治療のために該被検体を選択することを含んで成る方法。
【請求項76】
PARP阻害剤で被検体を治療する方法であって、
前記PARP阻害剤の投与前に前記被検体から収集した生物学的試料中のPARPレベルを測定し、前記試料中の前記PARPレベルが予め決められた値より高いことを決定し、そして前記被検体に前記PARP阻害剤を投与することを含んで成る方法。
【請求項77】
PARP阻害剤での治療を受けている被検体において治療に対する応答を評価する方法であって、少なくとも第一及び第二の時点で前記被検体のPARPレベルを測定して、第一のPARPレベル及び第二のPARPレベルを獲得することを含んで成り、ここで前記第一のPARPレベルに比較した前記第二のPARPレベルの減少が、治療に対する陽性応答の指標であることを特徴とする方法。
【請求項78】
患者の状態が増加したPARPレベルを引き起こしている患者を治療する方法であって、ここで患者試料のPARPレベルは予め決められたPARPレベルより高く、前記患者にPARP阻害剤の治療上有効量を投与することを含んで成る方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2010−504079(P2010−504079A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516634(P2009−516634)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/071053
【国際公開番号】WO2008/147418
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(507401258)バイパー サイエンシズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/071053
【国際公開番号】WO2008/147418
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(507401258)バイパー サイエンシズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】
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