説明

PFCガスの処理方法及び処理装置

【課題】
PFC分解ガスの洗浄後のガスを排気する排気ラインの腐食を抑制する。
【解決手段】
PFCの分解ガスを洗浄する洗浄塔の後段にミスト分離装置を設ける。洗浄ガス中からミストを除去することにより、排気ラインの腐食を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PFC(Perfluorocompounds)ガスの処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PFC(Perfluorocompounds)は、CF4 ,C26,C38,SF6 ,NF3などの総称である。PFCガスは、半導体エッチング用ガス,半導体クリーニング用ガス或いは絶縁ガスなどに使用されている。このPFCガスは、地球温暖化ガスであり、大気放出の規制対象になっている。このため、種々の分解方法が検討されている。その一つとして、特開平11−70322 号公報には、PFCガスを加水分解したのち、水或いはアルカリ水溶液で洗浄して排気することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−70322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、PFCガスを分解し、分解ガスを洗浄したのち排気するPFC処理方法について研究しているなかで、洗浄ガスを排気する排気ブロア或いは排気管が洗浄ガスによって腐食されることを知った。
【0005】
本発明は、PFCガスの処理方法及び処理装置において、PFC分解ガスを洗浄した後のガスによって、排気ブロア及び排気管が腐食されるのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、PFCの分解ガスを洗浄したのち、ガス中に含まれるミストを分離してから排気するようにしたことにある。
【0007】
本発明者は、排気管及び排気ブロアの腐食の原因が、洗浄工程で洗浄されなかったPFC分解ガスが、ミストに同伴して洗浄塔の塔外に流れ、ブロア或いは排気管に付着するためであることを究明した。そして、ミストを分離することにより、排気管及び排気ブロアの腐食を抑制することに成功した。
【0008】
洗浄後のガスに含まれるミストは、粒径10μm以上のものが大部分占めており、粒径1μm以下のものはせいぜい数十%にすぎない。このような粒径分布をもつミストを除去するには、サイクロン式の分離装置,フィルタ式の分離装置,電気集塵装置,活性炭吸着装置などが適する。特にサイクロン式の分離装置とフィルタ式の分離装置が、装置を小型化できるので望ましい。フィルタ式の分離装置を用いる場合には、孔径の異なる複数枚のフィルタを重ね合わせて、孔径の大きいフィルタで粒径の大きいミストを分離し、孔径の小さいフィルタで粒径の小さいミストを分離するようにするのが望ましい。孔径の小さいフィルタだけを用いると、ガスの通りが悪くなり、圧力損失が大きくなって、大型のブロアを使用しなければならなくなるので、あまり好ましくない。孔径の異なる複数枚のフィルタを組み合わせることにより、圧損を小さく抑えることが可能になる。
【0009】
本発明は、PFCガスを加水分解,酸化分解,燃焼或いは熱分解等により弗化水素を含むガスに分解してから洗浄して排気する方法に対して適用することができる。これらの方法以外でも、PFCを弗化水素を含むガスに分解する方法であれば、本発明の処理方法を適用することができる。PFCを弗化水素に転換することにより、水或いはアルカリ水溶液で洗浄することによって弗化水素を溶液中に吸収し、ガス中より除くことが可能になり、洗浄塔から排気されるガスを実質的に弗化物を含まないガスにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PFCガスの処理において、分解ガス洗浄塔の後流に設けられた排気管或いは排気ブロアが腐食されるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
SF6 或いはNF3 を加水分解する場合、理論的には式(1)及び式(2)の反応が進行する。
【0012】
SF6 +3H2O → SO3 +6HF (式1)
2NF3 +3H2O → NO+NO2 +6HF (式2)
分解生成物であるSO3 ,HF,NF3 ,H2O は、洗浄塔で、水あるいはアルカリ水溶液により洗浄されることによってガス中より除去される。しかし、除去できなかった一部のHF,SO3 ,NO2 などは、H2O を同伴してミストとなって洗浄塔を通過する。例えばSO3 1molはH2O を約250mol同伴することが分かった。これらのミストが排気ラインに排出されると、排気ガスの温度が露点以下となった所で凝縮し、排気管の内面に固着して閉塞を引き起こす。また、排気ブロアの内部に付着してブロアを使用不可能にする。NF3 を処理する場合にも、洗浄時に硝酸のミストが生成して、これが排気ラインに流れて排気管等を腐食させることがある。炭素系のPFCガスを処理する場合は、排気管或いは排気ブロアを腐食するガスは、主としてHFである。
【0013】
洗浄塔を通過した排ガスに含まれるミストはどのくらいの粒径になっているのかを、インパクター方式の粒径測定器を用いて調べた。その結果、ミストの粒径は11μm以上のものが約60%であり、1μm以下のものが約30%であった。残りは、1−10μmのものであった。
【0014】
サイクロン式のミスト分離装置は、遠心力を用いて気流中の小さな固体粒子や液滴を除去する装置である。サイクロン式の分離装置の概略図を図2Aと図2Bに示す。図2Aは平面図、図2Bは側面の断面図である。このサイクロン式のミスト分離装置21は、ミストを含んだ気体がガス入口22から高速度でサイクロン内部に導入される。サイクロン内部に導入されたミストは遠心力により外側に放出されて円筒の内壁23にあたる。内壁23にあたったミストは下部の液排出口24から排出される。ミストが除かれた気体は上昇し内筒26を通って上部のガス排出口から抜ける。内筒26を通り抜けたガスに含まれる液は、液排出口25から排出される。サイクロンの大きさ(内壁23の最大径部分の大きさ)は、除去する液滴の粒径によって決めるのがよい。ガス入口22の内径が小さく、ガスの入口速度が大きいと遠心力が大きくなり、小さいミストを除去できる。例えば1μm程度のミストを捕集するには、ガス入口の半径を1cm程度、入口ガス速度を20m/sec 程度にするのがよい。サイクロンの入口ガス流速は10〜30m/sec にすることが望ましい。この範囲にすれば、高いミスト除去率が得られる。入口速度が大きくなるほどミスト除去率は増大するが圧損は大きくなる。サイクロンの材質としては、耐食性が優れた塩化ビニル,アクリルなどが好ましい。
【0015】
フィルタ式のミスト分離装置は、細かい細孔(ポア)を有するフィルタを用いることによってガス流れ中のミストを捕獲するものである。フィルタ式ミスト分離装置の概略図を図3に示す。図3は、孔径が異なる2枚のフィルタ32,33を重ね合せた例を示している。このフィルタ式ミスト分離装置30は、筒内のほぼ中央部にフィルタ32,33を設け、ガスを下部より導入し、上部から排出するようにしたものである。フィルタ32,33はパッキン34,フランジ35によって筒に固定されている。フィルタを通り抜けたガスに同伴する液は、液排出口36から筒外へ排出される。
【0016】
フィルタでのガス速度が5〜25cm/sec の場合、1μmのミストを除去するには250μm以下のポアサイズのフィルタを使用することが好ましく、特に160μm以下のフィルタを使用することが好ましい。フィルタを用いる場合でも、ポアサイズが大きいとミストの除去率が低下し、小さいと除去率は高いが圧損が大きくなる。フィルタの材質は、市販されているガラス製のものでよいが、ガス中にHFなどの酸性ガスが含まれる場合には、セラミックス製のものが好ましい。フィルタを使用する場合は、排ガス洗浄塔内に設置することもできる。たとえばスプレー式洗浄塔のスプレーノズルよりも上方にフィルタを設置し、洗浄されたガスに含まれるミストを除去する。
【0017】
電気集塵装置は、ガスを強度の電場中に流し帯電させて反対の電極部分にミストを集める装置である。電気集塵装置の概略図を図4に示す。この電気集塵装置40は、上下に配置された放電極支持棒41,42によって放電極44を支持し、放電極に対向して円筒状の集塵極43を設けたものである。放電極と集塵極は高電圧電源45に接続されている。被処理ガスは、下部のガス入口から入り上部へ抜ける。又、ガス中より分離された液は液排出口46から排出される。電気集塵装置の場合、8kV以上の電圧をかけることが望ましい。また、電極部にミストが付着しないように空気等を流すことが望ましい。ミストが電極に付着すると、短絡によって電圧が上がらない。電気集塵の電極にはタングステン線,SUS線などが使用可能である。
【0018】
活性炭吸着装置は、ミストを活性炭上へ吸着させる方式である。活性炭吸着装置の概略図を図5に示す。図5の活性炭吸着装置は、活性炭59を充填した2つの吸着・再生塔51,52を有し、一方が吸着過程にあるときに他方が再生過程にあるようにされる。吸着時には、ガスは活性炭59の下方から吸着・再生塔内に入り、活性炭を通り抜けて上部へ抜ける。再生時には、水10を注入口53より塔内に供給し、活性炭に附着しているミストを洗い流して液排出口54より塔外に排出する。その後、活性炭を乾燥するために、吸気口55から空気を塔内に供給し、吸気ブロア57により排気口56から抜き出して排気58する。活性炭層でのガスの空間速度は、300〜400h-1が好ましい。処理ガス流量が75l/min 程度の場合、10〜15L程度の活性炭で十分である。活性炭の再生のために流す水は、常に流しておいてもよいし、或いは塔内に水を溜めておいて活性炭の再生時に流すようにしてもよい。ミストがSO3 等を含む場合は、活性炭上に硫酸が吸着する。この活性炭の再生処理で使用した水には硫酸が溶け込むが、SO2 を吸収することができるため、排ガス洗浄塔へ戻すことができる。ただし、pHが下がるとSO2 を吸収できなくなるので、pHの管理が要求される。
【0019】
サイクロン,フィルタ等のミスト除去装置によってミストを除去する場合には、ミスト除去装置に導入されるガスの流量管理も重要である。PFC分解装置に導入されるガス量が減少し、その結果、ミスト除去装置に導入されるガスの流量が減少する場合には、インリークガスを加えるなどしてガス流量を所定流量(ミスト分解装置の設計時に使用した設定流量)に合わせることが望ましい。活性炭吸着装置の場合は、ガス流量が減っても、接触時間が長くなるためミスト除去性能は下がらないので、流量管理は必要ない。
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の実施態様を説明する。但し、本発明は、以下に述べるものに限定されるわけではない。
【0021】
図1は、半導体のエッチング炉に本発明の処理装置を敷設した例を示している。
【0022】
エッチング炉99では、減圧したエッチング炉内でSF6 などのPFCガス100によって半導体ウェハのエッチングが行われる。エッチングが終了したならば、炉内を真空ポンプ(図示せず)で吸引してPFCが排出される。このときに、ポンプの保護のためにポンプにN2 を流し、PFCの濃度を数%に希釈する。
【0023】
エッチング炉の排出ガスは、PFC分解塔1に導入する前に、プラスチック等の粒を充填した充填塔101で固形物を除去し、スプレー塔102で水溶成分を除去する。スプレー塔102を通過したガスは、予熱器2でPFC分解温度まで加熱する。本実施例のPFC分解塔1は、PFCを加水分解する方式のものであるので、予熱器2には、空気3とイオン交換樹脂103を通した水10が供給される。水10は予熱器2で気化される。予熱器2出口でのPFCの濃度は約0.1〜1%が望ましく、水蒸気はフッ素化合物のmol 数に対し、25〜100倍となるよう調節されるのが望ましい。空気3は、反応ガス中における酸素濃度が4%程度になるように添加されるのがよい。これらの混合ガスすなわち反応ガスは、予熱器2の出口に設置されたPFC分解塔1に導入される。本実施例では、PFCがSF6或いはSF6を含むガスであることを想定して、PFC分解塔1にPFC分解触媒8と有害成分除去触媒9とが充填してある。ここでの有害成分とは、CO,SO22などである。混合ガスは、たとえば空間速度1,000h-1 、反応温度650〜850℃の条件で触媒と接触される。なお、空間速度(h-1)は、反応ガス流量(ml/h)/触媒量(ml)で求められる値である。PFC分解塔では、電気炉などのヒーター6により触媒或いは反応ガスを加熱するとよい。PFC分解塔1を出た分解ガスは、冷却室11に導入され、スプレーノズルから噴霧される水10によって冷却される。冷却室を通過したガスは、排ガス洗浄塔13でHF及び水溶成分を水10に吸収させることによって除去し、その後、ミスト除去装置に導入される。本実施例では、排ガス洗浄塔13に吸着剤などの充填材12を入れて、ガスと水との接触効率を高めている。また、サイクロン式のミスト分離装置21を備えている。ミストが除去されたガスは、ブロワ16で吸引して排ガス17として大気中に放出する。排ガス洗浄塔13でHFなどを吸収した排水20は排水タンク18に溜められたのち、排水ポンプ19によって排出される。排水20は半導体工場に既設の排液処理設備で無害化してもよい。また、サイクロンで分離したミストも、排水タンクに溜めるようにするとよい。
【0024】
PFC分解触媒8には、例えばAlと、Zn,Ni,Ti,Fe,Sn,Co,Zr,Ce,Si,Pt,Pdのうちから選ばれた少なくとも1種とを含む触媒を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらのPFC分解触媒は、酸化物,金属,複合酸化物等の形で用いることができる。Al23と、Ni,Zn,Tiの少なくとも1種とからなる触媒は、高い分解性能を有しており、非常に好ましい。
【0025】
洗浄塔としては、水あるいはアルカリ水溶液をスプレーする方式、これらの液中に分解生成ガスをバブリングする方式或いは洗浄塔内に吸着剤或いはKOH,NaOH,Ca(OH)2,Mg(OH)2などのアルカリ性の固体を充填して分解ガスを補足する方式のものなどがいずれも適用可能である。これらの中では、スプレー方式の洗浄塔が、効率が高く、洗浄塔内で結晶析出などによる閉塞が起こりにくいので最も好ましい。
【0026】
洗浄塔からの排気ラインには、腐食性ガスが流れるので、塩化ビニール或いはアクリル樹脂などのように耐食性が高い材質の物で作るか、或いはこれらの材質を内面にコーテイングしたもので作ることが望ましい。排気ブロアも同様である。
【0027】
(実施例1)
図1のPFC処理装置から、エッチング炉99,充填塔101,スプレー塔102を除いたもので、SF6 の処理を行った。SF6 に窒素を添加してSF6 の濃度を約5000ppm に希釈した。この希釈ガスに、空気3を添加し、予熱器2で加温した。水蒸気はイオン交換水を理論量の33〜37倍となるよう予熱器2に導入して気化させた。このようにして調整した反応ガスを、ヒーター6により加熱されているPFC分解塔1に導入し、SF6 分解触媒及びSO22分解触媒と接触させた。SF6 分解触媒には、NiとAl23からなる触媒を用い、SO22分解触媒にはPdとLa及びAl23からなる触媒を用いた。これらの触媒の温度は700〜800℃に保持した。反応ガスの空間速度は1000h-1とした。排ガス洗浄塔を出たガスは、入口速度が約20m/sec の条件で、内径(最大径部分)24mm,高さ111mmのサイクロン式のミスト分離装置21に導入した。サイクロン式ミスト分離装置には、図2A及び図2Bに示す構造のものを使用した。液排出口24の内径は14mmである。排気ブロワのインペラ部分はエポキシ系の耐食性材質でコーティングした。
【0028】
サイクロン式ミスト分離装置の前後におけるガス中のSO3 濃度を測定し、ミスト除去率を算出した。なお、SO3 濃度は、液体捕集法で測定したSOx濃度から、ガスクロマトグラフで測定したSO2 濃度を差し引いた値とした。その結果、ミスト分離装置の手前ではSO3 濃度が153ppm であったものが、ミスト分離装置通過後は30ppm になり、80%のミストが除去された。試験後1日放置して排気ブロワ16を解体したが腐食は認められなかった。
【0029】
試験に供した触媒の調製法は、以下のとおりである。
【0030】
Ni含有Al23触媒:
市販のベーマイト粉末を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末200gに、硝酸ニッケル6水和物210.82g を溶かした水溶液を添加し、混練した。混練後、250〜300℃で約2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。焼成物を粉砕、篩い分けして0.5−1mm粒径とした。完成後の触媒組成は原子比でAl:Ni=80:20(mol%)であった。
【0031】
Pd,La含有Al23触媒:
市販の2−4mm粒径の粒状Al23(住友化学製,NKHD−24)を0.5−1mmに破砕し、120℃で1h乾燥した。その後、硝酸ランタン6水和物を溶かした水溶液をLa23重量が10wt%となるよう含浸した。即ち、Al23100gに、硝酸ランタン6水和物26.84g を純水に溶かして含浸した後、120℃で2時間乾燥し、焼成した。これをLa含有Al23とする。焼成後のLa含有Al23に、硝酸パラジウム溶液をPd重量が0.5wt% となるよう含浸した。具体的には、La含有Al23100gに対し、4.439wt% 硝酸パラジウム溶液11.26g を純水に溶かして含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、焼成した。
【0032】
[比較例]
実施例1においてミスト分離装置を用いず、またブロワのコーティングを除いた状態で同様の実験を行った。その結果、ブロワ内にミストが入り、吸排気口にSO3 が溶け込んだ酸性水が溜まった。試験を終了し、1日放置したところ、ブロワに腐食生成物が発生し、ガス流路の閉塞が見られた。また腐食生成物が固着しブロワが起動しなくなった。
【0033】
(実施例2)
実施例1において、ミスト分離装置に図3に示すフィルター式のものを用いて同様の実験を行った。フィルタ式ミスト分離装置は、筒の内径が79mm,高さが500mmの円筒型のものであり、そのほぼ中心(250mmの高さ)にフランジを設けフィルタ32,33を設置した。使用したフィルタは市販のガラス製で、細孔の径が100〜160μmのフィルタ32と孔径が160〜250μmのフィルタ33の2枚を重ねた。フィルタの厚さは2枚合わせて10mmである。フィルタ部のガス速度は24cm/sec とした。この結果、ミスト分離装置に入る前のSO3濃度は138ppmであったものが、ミスト分離装置通過後は16ppm になり、ミスト除去率は88%になった。試験後、1日放置して排気ブロワを解体したが、腐食は認められなかった。
【0034】
(実施例3)
ミスト除去装置に図4に示す構造の電気集塵装置を用いて、実施例1と同様の実験を行った。
【0035】
電気集塵装置は、内径45mmの塩化ビニル製円筒内に、内径35mm,長さ110mmのパイプ状のSUS製集塵極を置いた。また、直径0.148mm のタングステン製放電極を円筒の中心に設置した。放電極は、直径3mmのSUS製放電極支持棒を用いて上下で支えた。直流高電圧電源(10kV,100μA)を、放電極及び集塵極につないだ。
【0036】
電圧を8kVとして、実施例1と同様にSF6 の分解処理を行った結果、洗浄塔出口のSO3 濃度は140ppmであったものが、電気集塵装置出口では42ppmになり、ミスト除去率は70%であった。試験後、1日放置して排気ブロワを解体したが、腐食は認められなかった。
【0037】
(実施例4)
ミスト除去装置に図5に示す2塔式の活性炭吸着装置を使用して実施例1と同様の実験を行った。
【0038】
吸着・再生塔は、円筒型で内径が200mm,高さが1000mのものである。活性炭層での空間速度は450h-1とした。この結果、洗浄塔出口のSO3 濃度は148ppm であったものが、吸着装置出口では33ppmになり、ミスト除去率は78%であった。試験後、1日放置して排気ブロワを解体したが、腐食は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のPFC処理装置を半導体エッチング炉に敷設した例を示す概略図。
【図2】サイクロン式ミスト分離装置を示すもので、図2Aは平面図、図2Bは側面の断面図。
【図3】フィルタ式ミスト分離装置の概略断面図。
【図4】ミスト分離に使用される電気集塵装置の概略図。
【図5】ミスト分離に使用される活性炭吸着装置の概略図。
【符号の説明】
【0040】
1…PFC分解塔、13…排ガス洗浄塔、21…サイクロン式ミスト分離装置、30…フィルタ式ミスト分離装置、40…電気集塵装置、51…吸着・再生塔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PFCガスの分解により生じたガスを洗浄したのち排気するようにしたPFCガスの処理方法において、前記洗浄後のガスに含まれるミストを分離したのち排気するようにしたことを特徴とするPFCガスの処理方法。
【請求項2】
PFCガスを分解し、分解により生じたガスを洗浄したのち排気するようにしたPFCガスの処理方法において、前記洗浄後のガス中からミストを除去したのち排気するようにしたことを特徴とするPFCガスの処理方法。
【請求項3】
PFCを加水分解,酸化分解,燃焼及び熱分解から選ばれた何れかの方法によって分解するPFC分解工程と、該PFC分解工程で生じたガスに水とアルカリ水溶液の少なくとも一方を接触させて該ガスを洗浄する洗浄工程とを有するPFCガスの処理方法において、前記洗浄後のガス中に含まれるミストを除去するミスト除去工程を有することを特徴とするPFCガスの処理方法。
【請求項4】
PFCを窒素で希釈した希釈ガスを空気と水の存在下で分解触媒に接触させて該PFCを分解するPFC分解工程と、該分解工程で得られたガスに水とアルカリ水溶液の少なくとも一方を接触させて該ガスを洗浄する洗浄工程とを有するPFCガスの処理方法において、前記洗浄後のガス中からミストを分離するミスト分離工程を有することを特徴とするPFCガスの処理方法。
【請求項5】
PFCの分解ガスに水とアルカリ水溶液の少なくとも一方を散布するガス洗浄塔と、該ガス洗浄塔で洗浄されたガスを排気する排気ブロアとを有するPFCガスの処理装置において、前記洗浄塔で洗浄されたガスよりミストを分離するミスト分離装置を備えたことを特徴とするPFCガスの処理装置。
【請求項6】
PFCを弗化水素を含むガスに分解する分解装置と、該分解装置で得られたガスに水とアルカリ水溶液の少なくとも一方を接触させる分解ガス洗浄装置とを具備するPFCガスの処理装置において、前記洗浄装置で洗浄されたガスからミストを分離するミスト除去装置を備えたことを特徴とするPFC処理装置。
【請求項7】
PFCを加水分解と酸化分解と燃焼及び熱分解のいずれかによって分解する方式の分解塔と、該分解塔で得られたガスに水とアルカリ水溶液の少なくとも一方を接触させるガス洗浄塔と、該ガス洗浄塔で洗浄されたガスを塔外に排気するブロアとを具備するPFCガスの処理装置において、前記洗浄塔で洗浄されたガスが前記ブロアに到達する前の位置に該ガスからミストを分離するミスト除去装置を設けたことを特徴とするPFCガスの処理装置。
【請求項8】
PFC分解触媒が充填された反応塔を有し、該反応塔に窒素によって希釈されたPFC含有ガスと水と空気とが導入されてPFCの加水分解反応が生じるようにされた触媒反応塔と、
該触媒反応塔でPFCが分解されることによって生じたガスに水とアルカリ水溶液の少なくとも一方を接触させるガス洗浄塔と、
該ガス洗浄塔で洗浄されたガスを塔外に排気する排気ブロワとを備えたPFCガスの処理装置において、
前記ガス洗浄塔で洗浄されたガスからミストを分離するミスト分離装置を前記排気ブロワよりも前段に備えたことを特徴とするPFCガスの処理装置。
【請求項9】
請求項5に記載のPFCガスの処理装置において、前記ミスト分離装置が、ガス中に含まれるミストが遠心力によって分離されるように構成されたサイクロン式のミスト分離装置よりなることを特徴とするPFCガスの処理装置。
【請求項10】
請求項5に記載のPFCガスの処理装置において、前記ミスト分離装置が、孔径の異なる複数枚のフィルタが重ね合わされ、該フィルタによりガス中に含まれるミストが分離されるようにしたフィルタ式分離装置からなることを特徴とするPFCガスの処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−307556(P2007−307556A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147612(P2007−147612)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【分割の表示】特願平11−335468の分割
【原出願日】平成11年11月26日(1999.11.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】