説明

PLL周波数シンセサイザ

【課題】ループフィルタの帯域幅切り替え時の周波数変動を低減することによって、高速に周波数切り替えが可能なPLL周波数シンセサイザを提供する。
【解決手段】PLL周波数シンセサイザは、基準発振器と、分周器と、位相比較器と、チャージポンプと、ループフィルタと、VCOとを備えている。ループフィルタは、チャージポンプとVCOとの間に互いに並列に設けられた第1経路および第2経路と、第1経路上に設けられた第1スイッチと、第2経路上に設けられた第2スイッチとを含み、第1スイッチおよび第2スイッチの双方がオフ状態であるとしたときに、それぞれの寄生容量が互いに同じであり、第1経路および第2経路それぞれの抵抗値が互いに異なり、第1スイッチおよび第2スイッチの一方がオン状態であるとき、他方がオフ状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL周波数シンセサイザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信量が増大している携帯電話システムでは、周波数利用効率が高いTDMA方式が採用されている。このTDMA方式では、複数のデータがガードバンドを介して時系列に配列されている。TDMA方式を利用した携帯電話システムに例えばGSMがある。このGSMでは、複数のデータがガードバンドを介して時系列に配列されていると共に、各データにはそれぞれ異なる周波数が割り振られる。このため、携帯電話基地局に用いられるPLL周波数シンセサイザは、ガードタイム時間内に、高速に周波数を切り替えられることが要求される。特許文献1には、この種のPLL周波数シンセサイザが記載されている。
【0003】
一般的なPLL周波数シンセサイザは、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)と、分周器と、位相比較器と、チャージポンプと、ループフィルタ(LPF)と、を備え、基準信号に同期し、且つ基準信号に比べて周波数の高い発振信号を出力する。
【0004】
一般的なPLL周波数シンセサイザの動作について以下に説明する。まず、電圧制御発振器が、制御電圧に応じた周波数にて発振し、これにより生成された発振信号を出力する。次に、分周器が、発振信号を分周し、これにより生成された分周信号を出力する。そして、位相比較器が、分周信号と基準信号とを比較することにより分周信号と基準信号との位相差を検出し、この検出した位相差を表す比較信号を出力する。さらに、チャージポンプが、比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を生成しこれを出力する。そして、ループフィルタが、充放電電流に応じて増減される制御電圧を出力端から出力する。このようにして、PLL周波数シンセサイザは、基準信号に同期し、且つ基準信号に比べて周波数の高い発振信号を出力することができる。
【0005】
ここで、特許文献1には、周波数を高速に切り替える際に、上記のループフィルタにおいて、抵抗素子とチャージポンプとの接続のオン/オフを切り替えるスイッチを備えており、その抵抗素子とチャージポンプとの接続のオン/オフをスイッチによって切り替えることで抵抗値を変更し、最適な時定数にしてループフィルタの帯域幅を変化させるPLL周波数シンセサイザが開示されている。
【特許文献1】特開平6−276096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、抵抗素子とチャージポンプとの接続のオン/オフを切り替える上記スイッチには、MOSトランジスタが用いられる。このMOSトランジスタは、そのサイズに比例した端子間容量を有している。すなわち、上記したようなスイッチは、MOSトランジスタの端子間容量に応じた寄生容量を有している。また、MOSトランジスタは、オン/オフの切り替え動作時に、その端子間容量が変化するため、これに伴い、スイッチの寄生容量も変化する。これにより、スイッチのオン/オフの切り替え前後にループフィルタにおいて容量の変化が生じ、容量から電荷の移動が行われることで電圧の変動が生じる。そのため、ループフィルタから出力される制御電圧が変動し、結果として電圧制御発振器から出力される発振信号の周波数を変動させてしまう。
【0007】
このように、従来のPLL周波数シンセサイザでは、カットオフ周波数を高く(ループフィルタの帯域幅を広く)して所望の周波数に高速に引き込んだ後、カットオフ周波数が低い(帯域幅の狭い)ループフィルタに切り替える際に、前述した制御電圧の変動に伴い発振信号の周波数がずれてしまう。このずれた周波数から所望の周波数へは、カットオフ周波数が低い状態で引き込むことになるため、所望の周波数にロックするまでの時間を短縮することが困難である。
【0008】
本発明は、ループフィルタの帯域幅切り替え時の周波数変動を低減することによって、高速に周波数切り替えが可能なPLL周波数シンセサイザを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明のPLL周波数シンセサイザは、制御電圧が印加され、この制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、発振信号が入力され、この発振信号を分周した分周信号を出力する分周器と、分周信号と基準信号とを比較することにより分周信号と基準信号との位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号を出力する位相比較器と、比較信号が入力され、この比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、充放電電流が入力端に入力され、この充放電電流に応じて増減される制御電圧を出力端から出力するループフィルタと、を備え、ループフィルタは、入力端と出力端との間に接続された第1経路および第1経路に並列に接続された第2経路と、第1経路上に設けられた第1スイッチと、第2経路上に設けられた第2スイッチと、出力端に一方の端子が接続された容量と、を含み、第1スイッチおよび第2スイッチがオフ状態であるときに第1スイッチおよび第2スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、第1スイッチおよび第2スイッチがオン状態であるときに第1経路および第2経路それぞれの抵抗値が異なり、第1スイッチまたは第2スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、ことを特徴とする。
【0010】
また、第1の発明におけるループフィルタは、第3経路および第3経路に並列に接続された第4経路と、第3経路上に設けられた第3スイッチと、第4経路上に設けられた第4スイッチと、第3経路および第4経路の一方の端に対して一方の端子が接続された容量と、を更に含み、第3経路の他方の端または容量の他方の端子のいずれか一方が入力端に接続され、第3スイッチおよび第4スイッチがオフ状態であるときに第3スイッチおよび第4スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、第3スイッチおよび第4スイッチがオン状態であるときに第3経路および第4経路それぞれの抵抗値が異なり、第3スイッチまたは第4スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態であることが好ましい。
【0011】
また、第2の発明のPLL周波数シンセサイザは、制御電圧が印加され、この制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、発振信号が入力され、この発振信号を分周した分周信号を出力する分周器と、分周信号と基準信号とを比較することにより分周信号と基準信号との位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号を出力する位相比較器と、比較信号が入力され、この比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、充放電電流が入力端に入力され、この充放電電流に応じて増減される制御電圧を出力端から出力するループフィルタと、を備え、ループフィルタは、第1経路および第1経路に並列に接続された第2経路と、第1経路上に設けられた第1スイッチと、第2経路上に設けられた第2スイッチと、第1経路および第2経路の一方の端に対して一方の端子が接続された容量と、を含み、第1経路の他方の端または容量の他方の端子のいずれか一方が入力端および出力端の間に接続され、第1スイッチおよび第2スイッチがオフ状態であるときに第1スイッチおよび第2スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、第1スイッチおよび第2スイッチがオン状態であるときに第1経路および第2経路それぞれの抵抗値が異なり、第1スイッチまたは第2スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、ことを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明のPLL周波数シンセサイザは、制御電圧が印加され、この制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、発振信号が入力され、この発振信号を分周した分周信号を出力する分周器と、分周信号と基準信号とを比較することにより分周信号と基準信号との位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号を出力する位相比較器と、比較信号が入力され、この比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、充放電電流が入力端に入力され、この充放電電流に応じて増減される制御電圧を出力端から出力するループフィルタと、を備え、ループフィルタは、入力端と出力端との間に接続された第1経路および第1経路に並列に接続された第2経路と、第1経路上に設けられた第1スイッチと、第2経路上に設けられた第2スイッチと、第3経路および第3経路に並列に接続された第4経路と、第3経路上に設けられた第3スイッチと、第4経路上に設けられた第4スイッチと、第3経路および第4経路の一方の端に対して一方の端子が接続された容量と、を含み、第3経路の他方の端または容量の他方の端子のいずれか一方が出力端に接続され、第1スイッチおよび第2スイッチがオフ状態であるときに第1スイッチおよび第2スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、第1スイッチおよび第2スイッチがオン状態であるときに第1経路および第2経路それぞれの抵抗値が異なり、第3スイッチおよび第4スイッチがオフ状態であるときに第3スイッチおよび第4スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、第3スイッチおよび第4スイッチがオン状態であるときに第3経路および第4経路それぞれの抵抗値が異なり、第1スイッチまたは第2スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態であると共に、第3スイッチまたは第4スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、ことを特徴とする。
【0013】
上記第1〜第3の発明のPLL周波数シンセサイザによれば、第1スイッチが設けられた第1経路(第3スイッチが設けられた第3経路)、第2スイッチが設けられた第2経路(第4スイッチが設けられた第4経路)、および容量によってループフィルタが構成される。第1スイッチおよび第2スイッチ(第3スイッチおよび第4スイッチ)は、双方がオフ状態であるとしたときに寄生容量が同じである。これにより、第1スイッチおよび第2スイッチ(第3スイッチおよび第4スイッチ)のオン/オフの切り替えを行った場合であっても、第1スイッチおよび第2スイッチ(第3スイッチおよび第4スイッチ)において寄生容量に変動が生じないので、容量に蓄えられた電荷の移動が生じない。従って、第1スイッチおよび第2スイッチ(第3スイッチおよび第4スイッチ)のオン/オフの切り替え動作時に、ループフィルタから電圧制御発振器へと出力される制御電圧の電位変動を低減することができ、発振信号の周波数変動を低減することができる。その結果、ループフィルタの帯域幅切り替え時の周波数変動を低減することができ、高速に周波数切り替えが可能となる。
【0014】
また、第1の発明における第1スイッチおよび第2スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、PMOSトランジスタPのソース端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、PMOSトランジスタPのドレイン端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、第1スイッチの第1端および第2端は第1経路上に設けられ、第2スイッチの第1端および第2端は第2経路上に設けられ、PMOSトランジスタP、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、NMOSトランジスタN、PMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号とが、互いに論理反転関係にある、ことが好ましい。
【0015】
また、第1の発明における第3および第4スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、PMOSトランジスタPのソース端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、PMOSトランジスタPのドレイン端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、第3スイッチの第1端および第2端は第3経路上に設けられ、第4スイッチの第1端および第2端は第4経路上に設けられ、PMOSトランジスタP、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、NMOSトランジスタN、PMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号と、が互いに論理反転関係にある、ことが好ましい。
【0016】
また、第2の発明における第1スイッチおよび第2スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、PMOSトランジスタPのソース端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、PMOSトランジスタPのドレイン端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、第1スイッチの第1端および第2端は第1経路上に設けられ、第2スイッチの第1端および第2端は第2経路上に設けられ、PMOSトランジスタP、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、NMOSトランジスタN、PMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号と、が互いに論理反転関係にある、ことが好ましい。
【0017】
また、第3の発明における第1〜第4スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、PMOSトランジスタPのソース端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、PMOSトランジスタPのドレイン端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、第1スイッチの第1端および第2端は第1経路上に設けられ、第2スイッチの第1端および第2端は第2経路上に設けられ、第3スイッチの第1端および第2端は第3経路上に設けられ、第4スイッチの第1端および第2端は第4経路上に設けられ、PMOSトランジスタP、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、NMOSトランジスタN、PMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号とが、互いに論理反転関係にある、ことが好ましい。
【0018】
PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタを含んで構成される第1〜第4スイッチでは、それぞれ第1〜第4のスイッチのオン/オフが切り替えられた際、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとの間で電荷の移動が生じることがある。このとき、スイッチに抵抗素子が接続されている場合には、その電荷の移動によって電流が発生することで抵抗素子において電圧の変動が生じ、結果として電圧制御発振器に入力される制御電圧の値に変動が生じる。そこで、上記のように第1〜第4スイッチを構成することで、そのスイッチのオン/オフの切り替えを行った際、PMOSトランジスタPおよびNMOSトランジスタNのソース端子・ゲート端子間の容量とドレイン端子・ゲート端子間の容量とに蓄えられた電荷を、PMOSトランジスタP,PおよびNMOSトランジスタN,Nに移動させることができる。これにより、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとの間における電荷の移動が低減される。これにより、周波数のずれを更に低減させることができる。その結果、より高速に周波数を切り替えることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ループフィルタの帯域幅切り替え時の周波数変動を低減することによって、高速に周波数切り替えが可能なPLL周波数シンセサイザを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。な
お、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るPLL周波数シンセサイザを示す回路ブロック図である。図1に示すPLL周波数シンセサイザ1は、基準発振器10と、分周器20と、分周器30と、位相比較器40と、チャージポンプ50と、ループフィルタ60と、VCO70と、制御部80とを備えている。
【0022】
基準発振器10は、例えば水晶発振器であり、高精度に安定化された一定な周波数を有する基準信号Crefを生成し出力する。基準発振器10の出力端子は、分周器20の入力端子に接続されている。
【0023】
分周器20は、基準発振器10から出力された基準信号Crefが入力され、この基準信号Crefを1/R(Rは1以上の数)に分周して分周基準信号Cdrefを生成し出力する。分周器20の出力端子は、位相比較器40の第1の入力端子に接続されている。
【0024】
分周器30は、VCO70から出力された発振信号Coutが入力され、この発振信号Coutを1/N(Nは1以上の数)に分周して分周信号Cを生成し出力する。分周器30の第1の出力端子は、位相比較器40の第2の入力端子に接続されている。なお、この分周器30の分周比1/Nを変更することによって、発振信号Coutを変更することができる。
【0025】
位相比較器40は、分周器30から出力された分周信号Cと、分周器20から出力された分周基準信号Cdrefとを比較し、これら分周信号Cと分周基準信号Cdrefとの位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号Sup,Sdownを出力する。例えば、位相比較器40は、分周基準信号Cdrefの位相に対して分周信号Cの位相が遅れている場合には、分周基準信号Cdrefと分周信号Cとの位相差を表す比較信号Supを生成する。一方、分周基準信号Cdrefの位相に対して分周信号Cの位相が進んでいる場合には、分周基準信号Cdrefと分周信号Cとの位相差を表す比較信号Sdownを生成する。位相比較器40の出力端子は、チャージポンプ50の入力端子に接続されている。
【0026】
チャージポンプ50は、位相比較器40から出力された比較信号Sup,Sdownが入力され、この比較信号Sup,Sdownが表す位相差に応じた量の充放電電流Sを出力する。例えば、チャージポンプ50は、比較信号Supを受けた場合には、比較信号Supのパルス幅に応じた充電電流Sをループフィルタ60における容量へ供給し、比較信号Sdownを受けた場合には、比較信号Sdownのパルス幅に応じた放電電流Sをループフィルタ60における容量から受け取る。なお、この「容量」は、容量値を有する容量成分であればよく、例えば、ディスクリート部品、パターン、寄生容量等であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。チャージポンプ50の出力端子は、ループフィルタ60の入力端子に接続されている。
【0027】
ループフィルタ60は、チャージポンプ50から出力された充放電電流Sが入力端子に入力され、この充放電電流Sの量に応じて増減される電圧値(制御電圧)を制御信号Sとして出力する。ループフィルタ60の出力端子は、VCO70の制御端子に接続されている。なお、ループフィルタ60の詳細は後述する。
【0028】
VCO70は、入力される電圧値により発振周波数を制御する電圧制御型の発振器である。VCO70は、ループフィルタ60から制御端子に入力される制御信号Sの値に応じた周波数を有する発振信号Coutを出力する。なお、このように出力された発振信号Coutは、例えばGSMなどでは900MHz帯、若しくは1.8GHz帯を含むマイクロ波帯の搬送波として用いられる。VCO70の出力端子は、分周器30の入力端子に接続されている。
【0029】
制御部80は、分周器30に接続されている。制御部80は、発振信号Coutの周波数設定値を切り替える際に、ループフィルタ60の時定数を小さくさせる切り替え信号St1を生成し、発振信号Coutの周波数が所望の周波数に引き込まれた後には、ループフィルタ60の時定数を大きくさせる切り替え信号St2を生成する。より詳細に説明すると、発振信号Coutの周波数を切り替える際には、ループフィルタ60のカットオフ周波数を高く(ループ帯域を広く)し、発振信号Coutの周波数が所望の周波数に引き込まれた後には、ループフィルタ60のカットオフ周波数を低く(ループ帯域を狭く)するようにループフィルタ60におけるスイッチを制御する。制御部80は、後述するスイッチの制御端子に接続されている。
【0030】
次に、ループフィルタ60について詳細に説明する。図2は、ループフィルタを示す回路図である。
【0031】
図2に示すループフィルタ60は、第1ループフィルタ61と、第2ループフィルタ62とから構成されている。第1ループフィルタ61は、第1抵抗素子63と、第1容量64とを有している。第1抵抗素子63と第1容量64とは、第2ループフィルタ62の入力端子と接地電位GND1との間に直列に接続されている。第1ループフィルタ61は、ラグリードフィルタとして機能する。なお、接地電位GND1は電圧源であってもよい。
【0032】
第2ループフィルタ62は、第1スイッチ65と、第2スイッチ66と、第2抵抗素子67と、第3抵抗素子68と、第2容量69とを有している。第1スイッチ65および第2スイッチ66は、双方がオフ状態であるときに、寄生容量が互いに同一になるように設定されている(なお、ここで言う「同一」には半導体素子の製造上に発生するばらつきの範囲等も含む)。また、第2抵抗素子67および第3抵抗素子68は、抵抗値が互いに異なるように設定されている。本実施形態では、第3抵抗素子68が第2抵抗素子67よりも抵抗値が大きく設定されている。
【0033】
第1スイッチ65および第2抵抗素子67は、チャージポンプ50の出力端子側から直列に接続されており、第1経路L1を形成している。第2スイッチ66および第3抵抗素子68は、チャージポンプ50の出力端子側から直列に接続されており、第1経路L1に並列に接続される第2経路L2を形成している。すなわち、第1経路L1と第2経路L2とは、チャージポンプ50の出力端子(ループフィルタ60の入力端子)とVCO70の制御端子(ループフィルタ60の出力端子)との間に互いに並列に接続されている。第2容量69は、VCO70の制御端子と接地電位GND2との間に接続されている。第1スイッチ65と第2スイッチ66とは、制御部80から出力される切り替え信号St1,St2によって差動でオン/オフの動作をする。具体的には、第1スイッチ65は、制御部80から切り替え信号St1が出力されるとオン状態となり、このとき第2スイッチ66は、オフ状態となる。また、第2スイッチ66は、制御部80から切り替え信号St2が出力されるとオン状態となり、このとき第1スイッチ65は、オフ状態となる。なお、接地電位GND2は電圧源であってもよい。
【0034】
図3は、第1スイッチおよび第2スイッチの詳細を示す回路図である。第1スイッチ65および第2スイッチ66は、ゲート端子(制御端子)、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含んで構成されている。なお、PMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nは、各々のスイッチ間の寄生容量が同一となるよう、同一ロット品であることが望ましく、より好ましくは同一の集積回路(同一のチップ)上に配置されていることが望ましい。PMOSトランジスタPは、PMOSトランジスタP,Pの間に接続されており、NMOSトランジスタNは、NMOSトランジスタN,Nの間に接続されている。
【0035】
第1スイッチ65および第2スイッチ66それぞれは、PMOSトランジスタPのソース端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子とが互いに接続されてチャージポンプ50の出力端子側の第1端Tをなしている。同様に、PMOSトランジスタPのドレイン端子と、PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、NMOSトランジスタNのドレイン端子と、NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子とが互いに接続されてVCO70の制御端子側の第2端Tをなしている。第1端Tは、チャージポンプ50の出力端子に接続されている。第2端Tは、第2抵抗素子67および第3抵抗素子68それぞれに接続されている。
【0036】
また、第1スイッチ65のPMOSトランジスタPのゲート端子に入力される信号及びNMOSトランジスタNのゲート端子に入力される信号と、第2スイッチ66のPMOSトランジスタPのゲート端子に入力される信号及びNMOSトランジスタNのゲート端子に入力される信号と、は互いに論理反転関係にある。これにより第1スイッチ65と第2スイッチ66との間で交互にスイッチを切り替えることができる。なお、前述したように、MOSトランジスタはオン/オフで容量値が変動する。このような容量値の変動は、電荷を移動させてしまい、更に、各スイッチの各経路が異なる抵抗値を有しているため、出力される制御電圧を変動させてしまう。そこで、本実施形態では、このような容量変動を抑えるために、各々のスイッチにPMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPと、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNと、を設けている。これらの容量値は、PMOSトランジスタP(NMOSトランジスタN)がオンでPMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタP(又はNMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタN)がオフの場合と、PMOSトランジスタP(NMOSトランジスタN)がオフでPMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタP(又はNMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタN)がオンの場合と、が同一になるよう設定するのが望ましい。
【0037】
ここで、PMOSトランジスタP、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNそれぞれと、NMOSトランジスタN、PMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPそれぞれとは、切り替え信号St1,St2の伝達経路等によってオン/オフの切り替えのタイミングにずれが生じることがある。そのため、オン/オフの切り替えのタイミングを、例えばインバータによって所定のタイミング遅延させることが好ましい。これにより、オン/オフの切り替えを同時に行うことができる。
【0038】
次に、PLL周波数シンセサイザ1の動作について説明する。以下では、発振信号Coutの周波数f1を周波数f2に切り替える場合について説明する。
【0039】
先ず、分周器30の分周比1/Nが変更され、分周信号Cの周波数設定値が変更される。すると、位相比較器40では、基準信号Crefが1/Rに分周された分周基準信号Cdrefと分周信号Cとの位相差を検出し、その位相差を表す比較信号Sup,Sdownが生成される。そして、チャージポンプ50から、比較信号Sup,Sdownが表す位相差に応じた量の充放電電流Sがループフィルタ60に出力され、ループフィルタ60では、充放電電流Sの量に応じて増減される電圧値を制御信号SとしてVCO70に出力する。これにより、VCO70では、発振信号Coutの周波数が変更される。このように、分周器30、位相比較器40、チャージポンプ50、ループフィルタ60およびVCO70の帰還ループ処理によって、比較信号Sup,Sdownのパルス幅が小さくなるように制御され、発振信号Coutの周波数がf1からf2へと切り替えられる。
【0040】
ところで、分周器30の分周比1/Nが変更される際、制御部80からの切り替え信号St1,St2に応じて、第2ループフィルタ62の第1スイッチ65および第2スイッチ66が差動でオン/オフ切り替えられる。具体的には、第1スイッチ65をオン状態とし、第2スイッチ66をオフ状態とする。これにより、抵抗値が変化することで第2ループフィルタ62のカットオフ周波数が高く(ループ帯域が広く)なるので、発振信号Coutの周波数をf1からf2に高速に引き込むことができる。
【0041】
図4は、周波数切り替え時の発振信号の周波数変化を示す図である。図4には、第1スイッチ65がオン状態、第2スイッチ66がオフ状態であるとき、すなわちカットオフ周波数が高いときの発振信号Coutの周波数引き込み特性101と、第1スイッチ65がオフ状態、第2スイッチ66がオン状態であるとき、すなわちカットオフ周波数が低いときの発振信号の周波数引き込み特性102とが示されている。同図に示すように、第1スイッチ65をオン状態、第2スイッチ66をオフ状態にすることで、発振信号Coutの周波数を高速に引き込むことができる。
【0042】
次に、発振信号Coutの周波数をf2に引き込んだ後には、制御部80からの切り替え信号St1,St2に応じて、第1スイッチ65がオフ状態、第2スイッチ66がオン状態となるように、差動でスイッチが切り替えられる。これにより、カットオフ周波数が低くなる(ループ帯域が狭くなる)ので、スプリアスを低減することができる。
【0043】
図5は、発振信号のスペクトルを示す図である。図5には、第1スイッチ65がオン状態、第2スイッチ66がオフ状態であるとき、すなわちカットオフ周波数が高いとき発振信号Coutのスペクトル103と、第1スイッチ65がオフ状態、第2スイッチ66がオン状態であるとき、すなわちカットオフ周波数が低いときの発振信号Coutのスペクトル104とが示されている。同図に示すように、第1スイッチ65をオフ状態、第2スイッチ66をオン状態にすることで、発振信号Coutのスプリアスを低減することができる。
【0044】
ここで、本実施形態のPLL周波数シンセサイザ1の特徴を明確にするために、従来のPLL周波数シンセサイザの一例と対比して説明する。
【0045】
図6に、従来のPLL周波数シンセサイザのループフィルタの回路図を示す。図6に示すループフィルタ60Xは、スイッチ61Xと、第1抵抗素子62Xと、第2抵抗素子63Xと、容量64Xとを有している。スイッチ61Xは、第1抵抗素子62Xと直列に接続されており、第1抵抗素子62Xおよび第2抵抗素子63Xは、チャージポンプとVCOとの間に並列に接続されている。図6に示す従来のPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタ60Xは、第2抵抗素子63Xに接続されるスイッチ(本実施形態における第2スイッチ66)を有していない点で本実施形態と異なる。従来のPLL周波数シンセサイザでは、以下のような不具合が生じる。
【0046】
スイッチ61Xに用いられるMOSトランジスタは、MOSトランジスタのサイズに比例した端子間容量を有し、そのスイッチのオン/オフが切り替えられた際に端子間容量が変動する。これにより、スイッチのオン/オフの切り替え前後にループフィルタ60Xにおいて容量の変化が生じ、容量64Xから電荷の移動が行われることでループフィルタ60Xにおいて電圧の変動が生じる。そのため、ループフィルタ60Xから出力される制御信号の値が変動し、VCOから出力される発振信号の周波数が変動してしまう。
【0047】
図7は、従来のPLL周波数シンセサイザにおける周波数切り替え時および周波数切り替え後の発振信号の周波数変移を示す図である。図7に示すように、周波数を所望の周波数に引き込んだ後にスイッチのオン/オフの切り替えを行うと、寄生容量に起因して発振信号の周波数がずれてしまう。このずれた周波数から所望の周波数へは、カットオフ周波数が低い状態で引き込むことになるため、所望の周波数にロックするまでの時間を要してしまう。その結果、周波数を高速で切り替えることが困難になってしまう。
【0048】
これに対し、本実施形態の第2ループフィルタ62は、第1スイッチ65が設けられた第1経路L1、および第2スイッチ66が設けられた第2経路L2によって構成されている。第1スイッチ65と第2スイッチ66とは、双方がオフ状態であるとしたときに寄生容量が同じである。これにより、第1スイッチ65および第2スイッチ66のオン/オフの切り替えを行った場合であっても、第1スイッチ65および第2スイッチ66において寄生容量に変動が生じないので、第1容量64および第2容量69に蓄えられた電荷の移動が生じない(もしくは非常に少ない)。従って、第1スイッチ65および第2スイッチ66のオン/オフの切り替え動作時に、ループフィルタ60からVCO70へと出力される制御信号Sの電位変動を低減することができ、発振信号Coutの周波数変動を低減することができる。その結果、ループフィルタ60の帯域幅切り替え時の周波数変動を低減することができ、所望の周波数への引き込み時間が短縮されることで、高速に周波数切り替えが可能となる。
【0049】
また、第1スイッチ65および第2スイッチ66それぞれは、PMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含んで構成されている。PMOSトランジスタPは、ソース端子とゲート端子とが接続されたPMOSトランジスタP,Pの間に接続されている。このPMOSトランジスタP,Pは、ドレイン・ソース間が短絡しており、ゲート電圧に応じて容量が変化する電圧可変キャパシタとして動作する。また、NMOSトランジスタNは、ソース端子とゲート端子とが接続されたNMOSトランジスタN,Nの間に接続されている。NMOSトランジスタN,Nについても同様に、ドレイン・ソース間が短絡しており、ゲート電圧に応じて容量が変化する電圧可変キャパシタとして動作する。そして、PMOSトランジスタP、NMOSトランジスタNおよびNMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、NMOSトランジスタN、PMOSトランジスタPおよびPMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号とが互いに論理反転関係にある。
【0050】
そのため、第1スイッチ65および第2スイッチ66のオン/オフの切り替えを行った際、PMOSトランジスタPのソース端子・ゲート端子間の容量とドレイン端子・ゲート端子間の容量とに蓄えられた電荷を、PMOSトランジスタP,Pに移動させることができる。NMOSトランジスタNも同様に、ソース端子・ゲート端子間の容量とドレイン端子・ゲート端子間の容量とに蓄えられた電荷を、NMOSトランジスタN,Nに移動させることができる。これにより、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとの間における電荷の移動が低減されることになる。従って、周波数のずれを更に低減させることができる。その結果、より高速に周波数を切り替えることが可能となる。
【0051】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2実施形態に係るPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタを示す回路図である。図8に示すように、第2実施形態に係るループフィルタ90は、第1スイッチ91と、第2スイッチ92と、第1抵抗素子93と、第2抵抗素子94と、第1容量95とを有している。
【0052】
第1スイッチ91および第2スイッチ92は、第1実施形態と同様に、双方がオフ状態であるときに、寄生容量が互いに同一になるように設定されている。また、第1抵抗素子93および第2抵抗素子94は、抵抗値が互いに異なるように設定されている。本実施形態では、第2抵抗素子94が第1抵抗素子93よりも抵抗値が大きく設定されている。
【0053】
第1スイッチ91および第1抵抗素子93は、ループフィルタ90の入力端子及び出力端子から直列に接続されており、第1経路L3を形成している。第2スイッチ92および第2抵抗素子94は、ループフィルタ90の入力端子及び出力端子から直列に接続されており、第2経路L4を形成している。第1経路L3と第2経路L4とは、並列に設けられており、その一端は、VCO70の制御端子(ループフィルタ90の出力端子)に接続されている。第1容量95は、第1経路L3および第2経路L4の他端と接地電位GND2との間に接続されている。このようなループフィルタ90を有するPLL周波数シンセサイザ1Aにおいても、上記第1実施形態と同様の動作を行うので、PLL周波数シンセサイザ1と同様の効果を奏することができる。
【0054】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態に係るPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタを示す回路図である。図9に示すように、第3実施形態に係るループフィルタ60Aは、第1実施形態に係る第2ループフィルタ62と、第2実施形態に係るループフィルタ90とによって構成されている。
【0055】
具体的には、チャージポンプ50の出力端子(ループフィルタ60Aの入力端子)とVCO70の入力端子(ループフィルタ60Aの出力端子)との間に並列に接続された第1経路L1と第2経路L2とのチャージポンプ50の出力端子側の一端に、互いに並列に設けられた第1経路(第3経路)L3および第2経路(第4経路)L4の一端が接続されている。そして、第1容量95は、第1経路L3および第2経路L4の他端と接地電位GND2との間に接続されている。
【0056】
次に、ループフィルタ60Bの動作について説明する。ループフィルタ60Aでは、制御部80から出力される切り替え信号St1,St2,St3,St4に応じて、第2ループフィルタ62の第1スイッチ65および第2スイッチ66が差動でオン/オフ動作し、ループフィルタ90の第1スイッチ(第3スイッチ)91および第2スイッチ(第4スイッチ)92が差動でオン/オフ動作する。具体的には、第1スイッチ65がオン状態のときは、第2スイッチ66がオフ状態となり、第1スイッチ65がオフ状態のときは、第2スイッチ66がオン状態となる。また、第1スイッチ91がオン状態のときは、第3スイッチ92がオフ状態となり、第1スイッチ91がオフ状態のときは、第2スイッチ92がオン状態となる。
【0057】
このように、第1スイッチ65および第2スイッチ66と、第1スイッチ91および第2スイッチ92とをそれぞれ差動でオン/オフ動作を行わせることで、発振信号Coutの周波数設定値を切り替える際に、最適な時定数(カットオフ周波数)に設定することができる。なお、第1スイッチ65及び第2スイッチ66と、第1スイッチ91及び第2スイッチ92と、は連動してオン/オフを制御してもよいし、独立してオン/オフを制御してもよい。さらに、上記第1実施形態および第2実施形態と同様に、第1スイッチ65および第2スイッチ66は、双方がオフ状態であるときに、寄生容量が互いに同一になるように設定されている。また、第1スイッチ91および第2スイッチ92も、双方がオフ状態であるときに、寄生容量が互いに同一になるように設定されている。そのため、ループフィルタ60Aを有するPLL周波数シンセサイザ1Bにおいても、第1実施形態および第2実施形態のPLL周波数シンセサイザ1,1Aと同様の効果を奏することができる。
【0058】
[第4実施形態]
図10は、本発明の第4実施形態に係るPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタを示す回路図である。図10に示すように、第4実施形態に係るループフィルタ60Bにおける第2ループフィルタ110は、第1実施形態に係る第2ループフィルタ62の一部と、第2実施形態に係るループフィルタ90とによって構成されている。
【0059】
具体的には、チャージポンプ50の出力端子(ループフィルタ60Bの入力端子)とVCO70の制御端子(ループフィルタ60Bの出力端子)との間に並列に接続された第1経路L1と第2経路L2とのVCO70の制御端子側の一端に、互いに並列に設けられた第3経路L5および第4経路L6の一端が接続されている。そして、第1容量95は、第3経路L5および第4経路L6の他端と接地電位GND2との間に接続されている。
【0060】
次に、第2ループフィルタ110の動作について説明する。第2ループフィルタ110では、制御部80から出力される切り替え信号St1,St2,St3,St4に応じて第1スイッチ65および第2スイッチ66が差動でオン/オフ動作し、第3スイッチ111および第4スイッチ112が差動でオン/オフ動作する。具体的には、第1スイッチ65がオン状態のときは、第2スイッチ66がオフ状態となり、第1スイッチ65がオフ状態のときは、第2スイッチ66がオン状態となる。第3スイッチ111がオン状態のときは、第4スイッチ112がオフ状態となり、第3スイッチ111がオフ状態のときは、第4スイッチ112がオン状態となる。
【0061】
このように、第1スイッチ65および第2スイッチ66と、第3スイッチ111および第4スイッチ112とをそれぞれ差動でオン/オフ動作を行わせることで、発振信号Coutの周波数設定値を切り替える際に、最適な時定数(カットオフ周波数)に設定することができる。なお、第1スイッチ65及び第2スイッチ66と、第1スイッチ111及び第2スイッチ112と、は連動してオン/オフを制御してもよいし、独立してオン/オフを制御してもよい。さらに、上記第1実施形態および第2実施形態と同様に、第1スイッチ65および第2スイッチ66は、双方がオフ状態であるときに、端子間容量が互いに同一になるように設定されている。また、第3スイッチ111および第4スイッチ112も、双方がオフ状態であるときに、端子間容量が互いに同一になるように設定されている。そのため、第2ループフィルタ110を有するPLL周波数シンセサイザ1Cにおいても、第1実施形態および第2実施形態のPLL周波数シンセサイザ1,1A,1Bと同様の効果を奏することができる。
【0062】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0063】
上記各実施形態では、第1スイッチ65に直列に接続される第2抵抗素子67を設けているが、第1経路L1および第2経路L2の抵抗値が異なれば、第2抵抗素子67を設けなくてもよい。同様に、第1経路L3(第3経路L5)および第2経路L4(第4経路L6)の抵抗値が異なれば、第1抵抗素子93を設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係るPLL周波数シンセサイザを示す回路ブロック図である。
【図2】ループフィルタを示す回路図である。
【図3】第1スイッチおよび第2スイッチの詳細を示す回路図である。
【図4】周波数切り替え時の発振信号の周波数変化を示す図である。
【図5】発振信号のスペクトルを示す図である。
【図6】従来のPLL周波数シンセサイザのループフィルタの回路図を示す。
【図7】従来のPLL周波数シンセサイザにおける周波数切り替え時および周波数切り替え後の発振信号の周波数変移を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタを示す回路図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタを示す回路図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係るPLL周波数シンセサイザにおけるループフィルタを示す回路図である。
【符号の説明】
【0065】
1,1A,1B,1C…PLL周波数シンセサイザ、30…分周器、40…位相比較回路、50…チャージポンプ、60,60A,60B,90…ループフィルタ、65,91…第1スイッチ、66,92…第2スイッチ、69…第2容量、95…第1容量、70…VCO(電圧制御発振器)、111(91)…第3スイッチ、112(92)…第4スイッチ、L1,L3…第1経路、L2,L4…第2経路、L5…第3経路、L6…第4経路、P〜P…PMOSトランジスタ、N〜N…NMOSトランジスタ、Cout…発振信号、C…分周信号、Cref…基準信号、Sup,Sdown…比較信号、S…充放電電流、S…制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧が印加され、この制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記発振信号が入力され、この発振信号を分周した分周信号を出力する分周器と、
前記分周信号と基準信号とを比較することにより前記分周信号と基準信号との位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号を出力する位相比較器と、
前記比較信号が入力され、この比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、
前記充放電電流が入力端に入力され、この充放電電流に応じて増減される前記制御電圧を出力端から出力するループフィルタと、
を備え、
前記ループフィルタは、
前記入力端と前記出力端との間に接続された第1経路および当該第1経路に並列に接続された第2経路と、前記第1経路上に設けられた第1スイッチと、前記第2経路上に設けられた第2スイッチと、前記出力端に一方の端子が接続された容量と、を含み、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオフ状態であるときに前記第1スイッチおよび前記第2スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオン状態であるときに前記第1経路および前記第2経路それぞれの抵抗値が異なり、前記第1スイッチまたは前記第2スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、
ことを特徴とするPLL周波数シンセサイザ。
【請求項2】
前記ループフィルタは、
第3経路および当該第3経路に並列に接続された第4経路と、前記第3経路上に設けられた第3スイッチと、前記第4経路上に設けられた第4スイッチと、前記第3経路および前記第4経路の一方の端に対して一方の端子が接続された容量と、を更に含み、
前記第3経路の他方の端または前記容量の他方の端子のいずれか一方が前記入力端に接続され、
前記第3スイッチおよび前記第4スイッチがオフ状態であるときに前記第3スイッチおよび前記第4スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチがオン状態であるときに前記第3経路および前記第4経路それぞれの抵抗値が異なり、前記第3スイッチまたは前記第4スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、
ことを特徴とする請求項1記載のPLL周波数シンセサイザ。
【請求項3】
制御電圧が印加され、この制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記発振信号が入力され、この発振信号を分周した分周信号を出力する分周器と、
前記分周信号と基準信号とを比較することにより前記分周信号と基準信号との位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号を出力する位相比較器と、
前記比較信号が入力され、この比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、
前記充放電電流が入力端に入力され、この充放電電流に応じて増減される前記制御電圧を出力端から出力するループフィルタと、
を備え、
前記ループフィルタは、
第1経路および当該第1経路に並列に接続された第2経路と、前記第1経路上に設けられた第1スイッチと、前記第2経路上に設けられた第2スイッチと、前記第1経路および前記第2経路の一方の端に対して一方の端子が接続された容量と、を含み、
前記第1経路の他方の端または前記容量の他方の端子のいずれか一方が前記入力端および出力端の間に接続され、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオフ状態であるときに前記第1スイッチおよび前記第2スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオン状態であるときに前記第1経路および前記第2経路それぞれの抵抗値が異なり、前記第1スイッチまたは前記第2スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、
ことを特徴とするPLL周波数シンセサイザ。
【請求項4】
制御電圧が印加され、この制御電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記発振信号が入力され、この発振信号を分周した分周信号を出力する分周器と、
前記分周信号と基準信号とを比較することにより前記分周信号と基準信号との位相差を検出して、この検出した位相差を表す比較信号を出力する位相比較器と、
前記比較信号が入力され、この比較信号が表す位相差に応じた充放電電流を出力するチャージポンプと、
前記充放電電流が入力端に入力され、この充放電電流に応じて増減される前記制御電圧を出力端から出力するループフィルタと、
を備え、
前記ループフィルタは、
前記入力端と前記出力端との間に接続された第1経路および当該第1経路に並列に接続された第2経路と、前記第1経路上に設けられた第1スイッチと、前記第2経路上に設けられた第2スイッチと、第3経路および当該第3経路に並列に接続された第4経路と、前記第3経路上に設けられた第3スイッチと、前記第4経路上に設けられた第4スイッチと、前記第3経路および前記第4経路の一方の端に対して一方の端子が接続された容量と、を含み、
前記第3経路の他方の端または前記容量の他方の端子のいずれか一方が前記出力端に接続され、
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオフ状態であるときに前記第1スイッチおよび前記第2スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオン状態であるときに前記第1経路および前記第2経路それぞれの抵抗値が異なり、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチがオフ状態であるときに前記第3スイッチおよび前記第4スイッチそれぞれの寄生容量が互いに同じであり、前記第3スイッチおよび前記第4スイッチがオン状態であるときに前記第3経路および前記第4経路それぞれの抵抗値が異なり、前記第1スイッチまたは前記第2スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態であると共に、前記第3スイッチまたは前記第4スイッチのうちいずれか一方がオン状態であるときに他方がオフ状態である、
ことを特徴とするPLL周波数シンセサイザ。
【請求項5】
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、
前記PMOSトランジスタPのソース端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、
前記PMOSトランジスタPのドレイン端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、
前記第1スイッチの第1端および第2端は前記第1経路上に設けられ、前記第2スイッチの第1端および第2端は前記第2経路上に設けられ、
前記PMOSトランジスタP、前記NMOSトランジスタNおよび前記NMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、前記NMOSトランジスタN、前記PMOSトランジスタPおよび前記PMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号とが、互いに論理反転関係にある、
ことを特徴とする請求項1記載のPLL周波数シンセサイザ。
【請求項6】
前記第3および第4スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、
前記PMOSトランジスタPのソース端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、
前記PMOSトランジスタPのドレイン端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、
前記第3スイッチの第1端および第2端は前記第3経路上に設けられ、前記第4スイッチの第1端および第2端は前記第4経路上に設けられ、
前記PMOSトランジスタP、前記NMOSトランジスタNおよび前記NMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、前記NMOSトランジスタN、前記PMOSトランジスタPおよび前記PMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号と、が互いに論理反転関係にある、
ことを特徴とする請求項2に記載のPLL周波数シンセサイザ。
【請求項7】
前記第1スイッチおよび前記第2スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、
前記PMOSトランジスタPのソース端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、
前記PMOSトランジスタPのドレイン端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、
前記第1スイッチの第1端および第2端は前記第1経路上に設けられ、前記第2スイッチの第1端および第2端は前記第2経路上に設けられ、
前記PMOSトランジスタP、前記NMOSトランジスタNおよび前記NMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、前記NMOSトランジスタN、前記PMOSトランジスタPおよび前記PMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号と、が互いに論理反転関係にある、
ことを特徴とする請求項3記載のPLL周波数シンセサイザ。
【請求項8】
前記第1〜第4スイッチそれぞれは、ゲート端子、ソース端子およびドレイン端子を各々有するPMOSトランジスタP〜PおよびNMOSトランジスタN〜Nを含み、
前記PMOSトランジスタPのソース端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第1端をなし、
前記PMOSトランジスタPのドレイン端子と、前記PMOSトランジスタPのソース端子およびドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのドレイン端子と、前記NMOSトランジスタNのソース端子およびドレイン端子と、が互いに接続されて第2端をなし、
前記第1スイッチの第1端および第2端は前記第1経路上に設けられ、前記第2スイッチの第1端および第2端は前記第2経路上に設けられ、
前記第3スイッチの第1端および第2端は前記第3経路上に設けられ、前記第4スイッチの第1端および第2端は前記第4経路上に設けられ、
前記PMOSトランジスタP、前記NMOSトランジスタNおよび前記NMOSトランジスタNそれぞれのゲート端子に入力される信号と、前記NMOSトランジスタN、前記PMOSトランジスタPおよび前記PMOSトランジスタPそれぞれのゲート端子に入力される信号とが、互いに論理反転関係にある、
ことを特徴とする請求項4に記載のPLL周波数シンセサイザ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−50738(P2010−50738A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213157(P2008−213157)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】