説明

TFTアレイ検査装置およびTFTアレイ検査方法

【課題】点灯状態を判定するための設定値を、基板種やスキャン条件によって調整することを要することなく、パネルの点灯状態を判定する。
【解決手段】電子線を基板に形成されるパネル上を走査して得られる二次電子を検出することによりパネルのTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、パネルのTFTアレイに検査信号を印加して、パネル上に所定パターンの電位分布を形成する検査信号印加手段と、二次電子の検出強度を用いてパネルの点灯状態を判定する信号処理手段とを備える。二次電子の検出強度に対するデータ数から得られる強度分布を求め、この強度分布を正常に点灯した際に得られる強度分布と比較することによってパネルの点灯状態の正否を判定する。この強度分布による判定は基板種やスキャン条件に依存しないため、基板種やスキャン条件が変化した場合であっても判定のための調整は不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTFTアレイ基板の検査に使用するTFTアレイ検査装置に関し、特に基板のパネルの欠陥検出の際に、パネルに対する検査信号の印加の可否を識別する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TFTアレイ基板の電気的検査において、非接触で試料の電位を測定する技術として電位コントラストを用いた検査方法が知られている。この電位コントラストによれば、試料に電子線を照射することにより試料表面から放出される2次電子のエネルギーを測定することにより試料の電位を測定することができる。
【0003】
このTFTアレイ検査装置では、液晶ディスプレイや有機ELディスブレイなどに使われるTFTアレイ基板に所定パターンの検査信号を印加して所定の電位状態とし、この基板に電子線を照射してTFT基板から発生する2次電子を検出し、2次電子から得られる信号により基板のパネルに所定の電圧が印加されているかを測定し、その測定結果に基づいて短絡等のパネルの欠陥の判別を行う。このようなTFTアレイ検査装置として、例えば、特許文献1が知られている。
【0004】
また、TFTアレイ検査装置では、上記した電気的検査の他に、基板上に形成されたアレイを光学的に観察する外観検査を行って、アレイパターンの欠陥を光学的に検査することが行われる。
【0005】
パネル欠陥の検出において、欠陥種に応じた所定のパターンの検査信号を印加し、印加によって得られる電位状態を、検査信号のパターンに応じた電位状態と比較することによって欠陥検出を行う。
【0006】
この検査信号の印加において、検査信号がパネルに印加されているか否かを識別する必要がある。パネルへの検査信号の印加は、例えばプローバに設けたプローブピンを基板側の電極に接触させることによって行う。このプローブピンと電極との接触において、接触不良等によってパネルに検査信号が印加されない場合がある。このように、パネルに検査信号が印加されない場合にはパネルは不点灯状態となり、パネル欠陥検査を正しく行うことができない。
【0007】
従来、このパネルが点灯状態にあるか不点灯状態にあるかを識別するために、検出信号の信号強度を予め設定した信号強度と比較し、設定した信号強度よりも低い点の個数が予め設定した設定値よりも多く存在する場合に不点灯状態と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−228431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パネルの欠陥検査で得られる検出信号の信号強度は、欠陥検査を行う基板の種類や、パネルに電子線を照射する際のスキャン条件等に応じて変化する。そのため、パネルの点灯/不点灯状態を判定する設定値についても、欠陥検査を行う基板の種類や、パネルのスキャン条件等に応じて調整する必要があるという課題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決して、点灯状態を判定するための設定値を、基板種やスキャン条件によって調整することを要することなく、パネルの点灯状態を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のTFTアレイ検査装置は、電子線を基板に形成されるパネル上を走査して得られる二次電子を検出することによりパネルのTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、パネルのTFTアレイに検査信号を印加して、パネル上に所定パターンの電位分布を形成する検査信号印加手段と、二次電子の検出強度を用いてパネルの点灯状態を判定する信号処理手段とを備える。
【0012】
検査信号印加手段は、パネルのTFTアレイに検査信号を印加して、パネル上に所定パターンの電位分布を形成するものであり、パネル上で電子線を走査することで得られる二次電子によってこの電位分布を検出することによってパネルの欠陥検出を行う。
【0013】
本発明のTFTアレイ検査装置は、検査信号として例えばパネル上に格子状パターンの電位分布を形成する信号パターンや、パネル上において隣接する列の電位が異なる列パターンの電位分布、又は隣接する行の電位が異なる行パターンの電位分布を形成する信号パターン等を用いることができる。
【0014】
この所定の信号パターンの検査信号を印加して点灯した際にパネルに形成される電位分布と、検査信号の印加の不調によって不点灯となった際にパネルに形成される電位分布とでは、その電位分布を検出して得られる検出信号の強度分布が異なる。
【0015】
本発明は、この検査信号を印加した際にパネルから検出される検出信号の強度分布が、点灯時と不点灯時とでは異なることを利用することによって、パネルが点灯状態にあるかあるいは不点灯状態にあるかを判定する。
【0016】
信号処理手段は、二次電子の検出強度に対するデータ数から得られる強度分布を求め、この強度分布を正常に点灯した際に得られる強度分布と比較することによってパネルの点灯状態の正否を判定する。この強度分布による判定は基板種やスキャン条件に依存しないため、基板種やスキャン条件が変化した場合であっても判定のための調整は不要である。
【0017】
信号処理手段による判定処理は、例えば、強度分布のピークを含む強度範囲を指標として行うことができる。正常に点灯した際に得られる検出信号の強度分布のピークを含む強度範囲、あるいは不点灯時に得られる検出信号の強度分布のピークを含む強度範囲を予め求めておき、検査対象に基板のパネルから得られる検出信号の強度分布のピークが現れる強度範囲と比較することによって行うことができる。正規化された強度分布を用いることによって、基板種やスキャン条件によって検出信号の強度が変化した場合であっても、ピークが現れる強度範囲を比較することによって点灯状態あるいは不点灯状態を判定することができる。
【0018】
信号処理手段は、二次電子の複数の検出強度を正規化し、正規化した強度データに対するピクセル数から強度分布を求めることができる。
【0019】
また、より詳細には、信号処理手段は、二次電子の検出強度をパネルの各ピクセルに割り付け、割り付けた複数の検出強度を正規化して各ピクセルについて一つの強度データを求め、求めた強度データに対するピクセル数から強度分布を求めることができる。
【0020】
本発明のTFTアレイ検査方法は、電子線を基板に形成されるパネル上を走査して得られる二次電子を検出することによりパネルのTFTアレイを検査するTFTアレイ検査方法であり、TFTアレイに検査信号を印加して、パネル上に所定パターンの電位分布を形成する検査信号印加工程と、二次電子の検出強度を用いてパネルの点灯状態を判定する判定工程とを備える。判定工程は、二次電子の検出強度に対するデータ数から得られる強度分布について正常なパネルから得られる強度分布と比較し、この比較結果に基づいてパネルの点灯状態の正否を判定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、点灯状態を判定するための設定値を、基板種やスキャン条件によって調整することを要することなく、パネルの点灯状態を判定することができる。
【0022】
また、本発明のTFTアレイ検査装置によれば、光学的検査と電気的検査とを行う基板アレイ検査装置において、基板アレイ検査のスループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための概略図である。
【図2】本発明の点灯/不点灯の判定処理について説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の点灯/不点灯の判定処理について説明するための動作説明図である。
【図4】検査信号の印加によってパネルの各ピクセルが格子状に駆動される場合の駆動状態と強度分布を示す図である。
【図5】検査信号の印加によってパネルの各ピクセルがストレイプ状に駆動される場合の駆動状態と強度分布を示す図である。
【図6】検査信号の印加によってパネルの全ピクセルが同様に駆動される場合の駆動状態と強度分布を示す図である。
【図7】強度分布パターンによる点灯状態と不点灯状態との判別の一例を示すフローチャートである。
【図8】パネルのゲート線とソース線の関係を説明するための図である。
【図9】格子状の電位分布を形成する検査信号の例である。
【図10】ストライプの電位分布を形成する検査信号の例である。
【図11】全面の同一の電位分布を形成する検査信号の例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明のTFTアレイ検査装置の構成を説明するための概略図である。
図1において、TFTアレイ検査装置1は、電子線源6から電子線を基板10上のパネル(図示していない)に照射し、パネルから放出された二次電子を二次電子検出器7で検出することによってTFTアレイの欠陥検出を行う検査装置の一構成例を示している。
【0026】
基板10はXYステージ5上に載置され、X方向およびY方向に移動自在としている。走査制御回路3は、このXYステージ5のX/Y方向の移動と、電子線源6から照射される電子線の偏向を制御することによって電子線を基板上で走査させ、パネル全面に電子線を照射する。なお、走査制御回路3は、TFTアレイ検査装置1の装置全体を制御する検査制御回路2によって制御される。
【0027】
TFTアレイの欠陥を検出する際には、パネルのTFTアレイに検査信号を印加してパネル上に所定パターンの電位状態を形成し、この電位状態を電子線の走査によって検出する。検査信号印加回路4は、検査信号をTFTアレイに印加する。検査信号は、TFTアレイの検出する欠陥種に応じた信号パターンを有している。
【0028】
本発明のTFTアレイ検査装置1は信号処理回路8を備え、二次電子検出器7で検出した検出信号を入力して、TFTアレイの欠陥を検出する信号処理を行う他、検査信号の印加が正常に行われているか否かの点灯状態および不点灯状態を判定する信号処理を行う。
【0029】
図1に示す信号処理回路8は一回路例を示している。信号処理回路8は、二次電子検出器7で検出した検出信号を入力して検出データを形成する検出部8a、検出データをパネルのピクセルに割り付ける割り付け部8b、検出データを正規化する正規化部8cを備える。
【0030】
信号処理回路8は、TFTアレイの欠陥を検出する構成として、正規化した信号強度を正常なピクセルで得られるしきい値と比較する比較部8f、比較部8fの比較結果に基づいて欠陥ピクセルを検出する欠陥ピクセル検出部8gを備える。
【0031】
本発明は、TFTアレイの欠陥を検出する構成の他に、点灯状態/不点灯状態を判定する構成として、正規化した信号強度の強度分布を形成する強度分布形成部8d、強度分布部布分布を用いて、パネルが点灯状態にあるいか不点灯状態にあるかを判定する点灯/不点灯判別部8eを備える。出力部8hは、欠陥ピクセル検出部8gの検出結果および点灯/不点灯判別部8eの判定結果を出力する。
【0032】
検査信号が正常に印加されてパネルが点灯状態にあるか、あるいは検出信号の印加が正常に行われずパネルが不点灯状態にあるかの判定を行う場合には、信号処理回路8は、検出部8aにおいて検出信号から検出データを形成し、正規化部8dにおいて検出データを正規化し、強度分布形成部8dにおいて正規化した検出データから検出強度に対するデータ数を求めて強度分布を形成し、点灯/不点灯判別部8eにおいて強度分布に基づいてパネルが点灯状態にあるか不点灯状態にあるかを判定する。
【0033】
なお、正規化部8cは、検出部8aで検出した検出データをそのまま使用して正規化データを形成する他、検出部8aで検出した検出データをパネルの各ピクセルに割り付けて、各ピクセルを代表する検出データを求め、この各ピクセルに割り付けられた検出データから正規化データを形成してもよい。
【0034】
また、信号処理回路8において欠陥ピクセルを特定する場合には、割り付け部8cによって各ピクセルに割り付けられた検出データを正規化部8cで正規化し、比較部8fにおいて検出データをしきい値と比較し、欠陥ピクセル検出部8gにおいて比較結果に基づいて欠陥ピクセルを抽出する。
【0035】
本発明によれば、欠陥ピクセルの検出を行う前の段階において、パネルの不点灯状態を検出することによって、本来行う必要がない欠陥ピクセルの抽出処理を省くことができる。
【0036】
なお、信号処理回路8の各構成8a〜8hは、本発明のTFTアレイ検査による機能を説明するために示したものであり、必ずしもこれらの機能を実現する個別の構成部を有するものではなく、CPUやメモリ等で構成される回路と各機能を実行させるソフトによって構成してもよい。
【0037】
以下、図2のフローチャートおよび図3の動作説明図を用いて本発明の点灯/不点灯の判定処理について説明する。
【0038】
はじめに、基板のパネル上を電子線で走査して二次電子を検出して、検出のデータを取得する。この検出データは、パネル上において電子線が照射された点での電位状態を表している。この検出データは二次電子検出器毎に検出される。図3に示す3個の生データは、3つの電子線源および二次電子検出器によって検出される各検出データを示し、これらの生データを組み合わせることで基板全面の検出データが形成される。
【0039】
図3において、3個の生データは、基板の左方に配置した電子線源および二次電子検出器によって検出される走査領域から検出される検出データと、基板の中央に配置した電子線源および二次電子検出器によって検出される走査領域から検出される検出データと、基板の右方に配置した電子線源および二次電子検出器によって検出される走査領域から検出される検出データを示している(S1)。
【0040】
上記した電子線の照射点は、パネルのピクセルに対して一対一に対応するものではなく、例えば一ピクセルに対して複数の照射点を対応させることで検出精度を高める場合がある。そこで、複数の照射点で得られる検出データ(生データ)を各ピクセルに対応付ける。この検出データ(生データ)のピクセルへの対応付けを割り付け処理という。図3では、割り付け処理によって、4個の検出データ(生データ)を一つのピクセルに対応付けしている(S2)。
【0041】
次に、ピクセルに割り付けられた検出データの信号強度を正規化して、各ピクセルを代表する信号強度を求める。正規化することによって、基板種やスキャン条件が変化することによる信号強度の変動を除去することができる(S3)。
【0042】
次に、S3の工程で取得した正規化された信号強度に基づいて強度分布を形成する。ここで、強度分布は信号強度に対するピクセルの個数で表される。検出データが正規化されているため、強度分布の信号強度の値は正規化されている。したがって、基板種やスキャン条件が変化して場合であっても強度分布は変動しない(S4)。
【0043】
S4の工程で求めた強度分布を正常に点灯したときの強度分布と比較することによって、点灯状態と不点灯状態の判定を行う。この判定は、正常に点灯したときに得られる強度分布のパターンと、点灯が正常に行われずに不点灯状態となったときに得られる強度分布パターンとでは、その強度分布パターンが異なることに基づくものである(S5)。
【0044】
強度分布パターンが正常に点灯したときに得られる強度分布パターンと一致した場合には(S6)、正常点灯と判定する(S7)。一方、強度分布パターンが正常に点灯したときに得られる強度分布パターンと一致しなかった場合には(S6)、不点灯と判定する(S8)。
【0045】
なお、正常に点灯せずに不点灯状態となったときに得られる強度分布パターンと一致した場合に(S6)、不点灯と判定してもよい(S8)。
【0046】
図4は検査信号の印加によってパネルの各ピクセルが格子状に駆動される場合を示している。
【0047】
図4(a)は検査信号の印加によって、ピクセルが格子状に駆動されたときのピクセルの点灯状態を示し、図4(b)はこの点灯状態で得られる強度分布を模式的に示している。なお、図4(a)では、斜線で示すピクセルは点灯状態において暗いピクセルを示し、白地で示すピクセルは点灯状態において明るいピクセルを示している。
【0048】
図4(b)に示す強度分布において、Aの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の暗いピクセルの分布を示し、Bの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の明るいピクセルの分布を示している。
【0049】
したがって、格子状に駆動する検査信号を印加して点灯状態にある場合には、パネルの強度分布は2つのピーク領域を有する強度分布パターンを示す。
【0050】
一方、図4(c)は検査信号の印加した際に、ピクセルが不点灯状態にある場合を示し、図4(d)はこの不点灯状態で得られる強度分布を模式的に示している。なお、図4(c)に示すピクセルは不点灯状態を示している。
【0051】
図4(d)に示す強度分布において、Cの強度信号範囲で示すピーク領域は不点灯状態のピクセルの分布を示し、画像上ではグレーで表示される。
【0052】
したがって、ピクセルが不点灯状態にある場合には、パネルの強度分布は1つのピーク領域を有する強度分布パターンを示す。
【0053】
図5は検査信号の印加によってパネルの各ピクセルがストライプ状に駆動される場合を示している。ストライプ状の電位分布は、パネル上において隣接する列の電位が異なる列パターンの電位分布、あるいは隣接する行の電位が異なる行パターンの電位分布である。
【0054】
図5(a)は検査信号の印加によって、ピクセルが列状に駆動されたときのピクセルの点灯状態を示し、図5(b)はこの点灯状態で得られる強度分布を模式的に示している。なお、図5(a)では、斜線で示すピクセルは点灯状態において暗いピクセルを示し、白地で示すピクセルは点灯状態において明るいピクセルを示している。
【0055】
図5(b)に示す強度分布において、Aの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の暗いピクセルの分布を示し、Bの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の明るいピクセルの分布を示している。
【0056】
したがって、列状に駆動する検査信号を印加して点灯状態にある場合には、パネルの強度分布は2つのピーク領域を有する強度分布パターンを示す。
【0057】
図5(c)は検査信号の印加によって、ピクセルが行状に駆動されたときのピクセルの点灯状態を示し、図5(d)はこの点灯状態で得られる強度分布を模式的に示している。なお、図5(c)では、斜線で示すピクセルは点灯状態において暗いピクセルを示し、白地で示すピクセルは点灯状態において明るいピクセルを示している。
【0058】
図5(d)に示す強度分布において、Aの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の暗いピクセルの分布を示し、Bの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の明るいピクセルの分布を示している。
【0059】
したがって、行状に駆動する検査信号を印加して点灯状態にある場合には、パネルの強度分布は2つのピーク領域を有する強度分布パターンを示す。
【0060】
なお、図5において、点灯する列および行を入れ替えて駆動した場合にも同様の強度分布が得られる。
【0061】
図6は検査信号の印加によってパネルの全ピクセルが同じ明るさで駆動した場合を示している。なお、図6は、点灯状態において全ピクセルが暗いピクセルである場合を示している。
【0062】
図6(a)は検査信号の印加によって、全ピクセルが駆動して暗いピクセルとして点灯状態にある場合を示し、図6(b)はこの点灯状態で得られる強度分布を模式的に示している。
【0063】
図6(b)に示す強度分布において、Aの強度信号範囲で示すピーク領域は点灯状態の暗いピクセルの分布を示している。なお、全ピクセルが駆動して明るいピクセルとして点灯状態にある場合には、Bの強度信号範囲で示すピーク領域が現れる。
【0064】
全ピクセルが同様の明るさで点灯状態にある場合には、パネルの強度分布は1つのピーク領域を有する強度分布パターンを示す。
【0065】
したがって、点灯状態にあるときの強度分布パターンと不点灯状態にあるときの強度分布パターンとは識別可能であるため、この強度分布パターンの違いから点灯状態あるいは不点灯状態を判別することができる。
【0066】
図7は、強度分布パターンによる点灯状態と不点灯状態との判別の一例を示すフローチャートである。なお、以下では、図4〜図6で示して強度分布における強度範囲A,B,Cを用いて説明する。
【0067】
強度分布パターンにおいて、強度範囲A,B,Cを設定し(S11)、得られた強度分布について、設定した強度範囲A,B,Cに含まれるピクセルの個数Na、Nb、Ncを算出する。なお、ここでは、Naは強度範囲Aに含まれるピクセルの個数を示し、Nbは強度範囲Bに含まれるピクセルの個数を示し、Ncは強度範囲Cに含まれるピクセルの個数を示している(S12)。
【0068】
算出したピクセルの個数Na、Nb、Ncを比較し、Na>NcあるいはNb>Ncである場合には(S13)、正常な点灯状態であると判定する(S14)。一方、Nc>Na、Nbである場合には(S13)、不点灯状態であると判定する(S15)。
【0069】
また、Na、Nb、Ncの間で大小関係が明確に判定できない場合には、正常な点灯状態にないと判定する。
【0070】
なお、パネルに格子状の電位分布やストライプ状の電位分布、あるいは全面に同一の電位分布を形成する検査信号例について、図8〜図11を用いて説明する。
【0071】
図8は、パネルのゲート線とソース線の関係を説明するための図である。パネルのゲート線およびソース線に所定パターンの検査信号を印加することによって、パネルに格子状の電位分布やストライプ状の電位分布、あるいは全面に同一の電位分布を形成することができる。
【0072】
図8において、パネルの各ピクセルはITO電極を有し、各TFTをスイッチ素子とし、ゲート線の信号による開閉制御によってソース線から検査信号の電圧が印加される。ここで、ゲート線Goとゲート線Geが交互に配線され、ソース線Soとソース線Seが交互に配線される。
【0073】
図9は格子状の電位分布を形成する検査信号の例である。図9(a),(b)はゲート信号を示し、図9(c),(d)はソース信号を示している。図9(a),(b)のゲート信号と図9(c),(d)のソース信号との組み合わせによって、TFTアレイのピクセルに対して格子状に正電圧(ここでは10v)と負電圧(ここでは−10v)を交互に印加する。
【0074】
図10はストライプ状の電位分布を形成する検査信号の例である。図10(a),(b)はゲート信号を示し、図10(c),(d)はソース信号を示している。図10(a),(b)のゲート信号と図10(c),(d)のソース信号との組み合わせによって、TFTアレイのピクセルに対してストライプ状に正電圧(ここでは10v)と負電圧(ここでは−10v)を交互に印加する。
【0075】
図11は全面に一様の電位分布を形成する検査信号の例である。図11(a),(b)はゲート信号を示し、図11(c),(d)はソース信号を示している。図11(a),(b)のゲート信号と図11(c),(d)のソース信号との組み合わせによって、TFTアレイのピクセルに対して全面に正電圧(ここでは+10v)と負電圧(ここでは−10v)を交互に印加する。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、基板の欠陥の有無検出、欠陥種の検出の他、検出した欠陥を修復するリペア装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 TFTアレイ検査装置
2 検査制御回路
3 走査制御回路
4 検査信号印加回路
5 ステージ
6 電子線源
7 二次電子検出器
8 信号処理回路
8a 検出部
8b 割り付け部
8c 正規化部
8d 強度分布形成部
8e 点灯/不点灯判別部
8f 比較部
8g 欠陥ピクセル検出部
8h 出力部
10 基板
A,B,C 強度範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を基板に形成されるパネル上を走査して得られる二次電子を検出することによりパネルのTFTアレイを検査するTFTアレイ検査装置において、
前記パネルのTFTアレイに検査信号を印加して、パネル上に所定パターンの電位分布を形成する検査信号印加手段と、
前記二次電子の検出強度を用いてパネルの点灯状態を判定する信号処理手段とを備え、
前記信号処理手段は、
前記二次電子の検出強度に対するデータ数から得られる強度分布について正常なパネルから得られる強度分布と比較することによってパネルの点灯状態の正否を判定することを特徴とする、TFTアレイ検査装置。
【請求項2】
前記信号処理手段は、
前記強度分布のピークを含む強度範囲を指標とし、正常な点灯状態で得られる強度分布のピークを含む強度範囲と比較することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項3】
前記信号処理手段は、
前記強度分布のピークを含む強度範囲を指標とし、不点灯状態で得られる強度分布のピークを含む強度範囲と比較することを特徴とする請求項1に記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項4】
前記検査信号は、パネル上に格子状パターンの電位分布を形成する信号パターンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項5】
前記検査信号は、パネル上に隣接する列の電位が異なる列パターンの電位分布、又は隣接する行の電位が異なる行パターンの電位分布を形成する信号パターンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項6】
前記信号処理手段は、
前記二次電子の複数の検出強度を正規化し、正規化した強度データに対するピクセル数から強度分布を求めることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項7】
前記信号処理手段は、
前記二次電子の検出強度をパネルの各ピクセルに割り付け、当該割り付けた複数の検出強度を正規化して各ピクセルについて一つの強度データを求め、求めた強度データに対するピクセル数から強度分布を求めることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載のTFTアレイ検査装置。
【請求項8】
電子線を基板に形成されるパネル上を走査して得られる二次電子を検出することによりパネルのTFTアレイを検査するTFTアレイ検査方法において、
前記TFTアレイに検査信号を印加して、パネル上に所定パターンの電位分布を形成する検査信号印加工程と、
前記二次電子の検出強度を用いてパネルの点灯状態を判定する判定工程とを備え、
前記判定工程は、
前記二次電子の検出強度に対するデータ数から得られる強度分布について正常なパネルから得られる強度分布と比較し、当該比較結果に基づいてパネルの点灯状態の正否を判定することを特徴とする、TFTアレイ検査方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−243401(P2010−243401A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94114(P2009−94114)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】