TMO10モード共振器装置、発振器装置および送受信装置
電磁界の放射を抑圧し、高いQをもったTMO10モード共振器装置、発振器装置および送受信装置を提供する。 誘電体基板1の表面1Aと裏面1Bにそれぞれ円形状の共振器電極2A,2Bを互いに対向して設け、TMO10モード共振器2を形成する。また、誘電体基板1には、円形状の共振器電極2A,2Bに沿って内壁面3Aの電極が省かれた複数のスルーホール3を設け、これらのスルーホール3によって開放端を形成する。これにより、誘電体基板1内に形成される電磁界をスルーホール3と空気との境界で全反射させることができ、電磁界の放射を抑圧することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ波、ミリ波等の高周波の電磁波を発振するTMO10モード共振器装置、発振器装置および送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、通信機装置、レーダ装置等の送受信装置に用いられるTMO10モード共振器装置として、誘電体基板の両面に互いに対向した円形電極を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−98316号公報
【0004】
このような従来技術によるTMO10モード発振器装置では、誘電体基板の裏面に略全面に亘ってグランド電極が形成されたTMO1モード共振器装置に比べて、表面波モードであるTMOモードの電磁界と結合しない基板の厚みに対して約2倍の寸法まで誘電体基板の厚み寸法を大きくすることができるから、約2倍の大きさの導体損(Qc)や無負荷Q(Qo)を得ることができ、フィルタの低損失化が可能となっていた。
【0005】
ところで、上述した従来技術によるTMO10モード共振器装置では、誘電体基板の厚みをさらに増加させてQ(Quality factor)を高めるときには、誘電体基板内の電磁界がTMOモードと結合し、放射モードとして周囲に広がってしまう。このため、誘電体基板内部のエネルギ集中度が低下し、放射損(Qr)によってQが逆に劣化するから、厚みを増やして導体損(Qc)を上げる効果を相殺してしまうという問題がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は電磁界の放射を抑圧し、高いQをもったTMO10モード共振器装置、発振器装置および送受信装置を提供することにある。
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、前記誘電体基板には前記円形電極の周囲に沿って複数のスルーホールを貫通して設けると共に、該各スルーホールの内部は電極を省いた非電極形成部とし、前記円形電極の周囲には、前記複数のスルーホールを用いて電磁界の閉じ込め性を高めるための開放端を設けたことを特徴としている。
【0008】
このように構成したことにより、誘電体基板の内部のうち円形電極に対応した部位には、共振によって電磁界が形成されると共に、該電磁界を開放端を用いて全反射させることができる。このため、電磁界の放射を抑圧して無負荷Qを向上することができると共に、エネルギの閉じ込め性を高めることができる。
【0009】
また、本発明では、前記誘電体基板には前記円形電極の周囲に沿って複数のスルーホールを貫通して設けると共に、該各スルーホールの内部は電極を省いた非電極形成部とし、前記開放端は前記複数のスルーホールによって形成している。
【0010】
これにより、スルーホール内には空気が充填されるから、スルーホールの内壁面と空気との境界で電磁界を全反射させることができ、誘電体基板内のうち円形電極に対応した部位に形成される電磁界を閉じ込めることができる。
【0011】
本発明では、前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記隣合うスルーホールの間隔寸法はλg/4以下に設定するのが好ましい。これにより、隣合うスルーホールの間から電磁界が漏れるのを防止でき、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0012】
また、本発明は、誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、前記円形電極を取囲んで前記誘電体基板の両面または片面に設けられ前記円形電極との間に隙間を形成した状態で複数の短冊状電極を放射状に配置する構成としたことを特徴としている。
【0013】
この場合、誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、例えば短冊状電極の長さ寸法をλg/4に設定することによって、各短冊状電極の先端側(最外周端側)を擬似的に短絡することができる。また、例えば短冊状電極の長さ寸法をλg/2に設定することによって、各短冊状電極の先端側を擬似的に開放することができる。このとき、放射状に配置された複数の短冊状電極で円形電極を取囲むから、誘電体基板内のうち円形電極に対応した部位に形成された電磁界を、短絡端または開放端をなす短冊状電極の先端側で全反射させることができ、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。この結果、誘電体基板の厚さ寸法を大きくしても、電磁界が放射するのを抑圧することができるから、導体損と放射損とを一緒に向上させることができ、無負荷Qを有効に高めることができる。
【0014】
本発明では、前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記短冊状電極は放射状に延びる長さ寸法がλg/4となった矩形状に形成するのが好ましい。
【0015】
これにより、各短冊状電極の先端側(最外周端側)を擬似的に短絡することができる。このため、誘電体基板内のうち円形電極に対応した部位に形成された電磁界を、短絡端をなす短冊状電極の先端側で全反射させることができ、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0016】
本発明では、前記隣合う短冊状電極の間隔寸法はλg/4以下に設定するのが好ましい。これにより、隣合う短冊状電極の間から電磁界が漏れるのを防止でき、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0017】
また、本発明によるTMO10モード共振器装置を用いて発振器装置を構成してもよく、本発明による発振器装置を用いてレーダ装置、通信装置等の送受信装置を構成してもよい。
【0018】
本発明によるTMO10モード共振器装置を用いて発振器装置や送受信装置を構成した場合には、発振器装置等の構造を簡略化でき、通信機装置全体の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示す斜視図である。
【図2】図2は図1中のTMO10モード共振器装置を示す平面図である。
【図3】図3はTMO10モード共振器装置を図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
【図4】図4は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示す斜視図である。
【図5】図5は図4中のTMO10モード共振器装置を示す平面図である。
【図6】図6は図5中のa部に位置する短冊状電極を示す要部拡大平面図である。
【図7】図7は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器装置をキャビティ内に収容した状態を示す斜視図である。
【図8】図8は図7中のTMO10モード共振器装置とキャビティとの空間高さ寸法と共振周波数の変動率との関係を示す特性線図である。
【図9】図9は第1の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図10】図10は第2の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図11】図11は第3の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図12】図12は第4の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図13】図13は第5の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図14】図14は第6の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図15】図15は第7の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図16】第3の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示す平面図である。
【図17】図17は図16中のb部に位置する短冊状電極を示す要部拡大平面図である。
【図18】図18は第8の変形例による短冊状電極を示す図17と同様位置の要部拡大平面図である。
【図19】図19は第9の変形例による短冊状電極を示す図17と同様位置の要部拡大平面図である。
【図20】図20は第4の実施の形態による発振器装置を示す平面図である。
【図21】図21は図20中の発振器装置を示す電気回路図である。
【図22】図22は第5の実施の形態による通信機装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1,11 誘電体基板
2,12 TMO10モード共振器
2A,2B,12A,12B 共振器電極(円形電極)
3 スルーホール
13,14,21〜27,31〜33 短冊状電極
56 TMO10モード共振器装置
61 通信機装置(送受信装置)
76 発振器装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による発振器装置および通信装置を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図3は第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示し、図において、1はTMO10モード共振器装置の本体をなす誘電体基板で、該誘電体基板1は、例えば24程度の比誘電率εr(εr=24)をもったセラミックス材料等を用いて形成されている。また、誘電体基板1は、例えば略四角形の平板からなり、後述の共振器電極2A,2Bよりも一回り大きい程度の面積をもった小片状(チップ状)をなしている。
【0023】
2は誘電体基板1の中央部に設けられたTMO10モード共振器で、該TMO10モード共振器2は、誘電体基板1の中央に位置して表面1Aと裏面1Bとにそれぞれ設けられた円形電極からなる共振器電極2A,2Bによって構成されている。また、共振器電極2A,2Bは、金属材料等の導電性薄膜を用いて形成され、略円形状をなして互いに対向した位置に配置されると共に、その直径寸法Dが誘電体基板1内の共振周波数による波長λgに応じた値(例えばD=λg)に設定されている。
【0024】
そして、誘電体基板1内には、共振器電極2A,2B間に位置して誘電体基板1の厚さ方向に延びる電界Eが形成されると共に、共振器電極2A,2Bの中心位置に対して同心円状をなす磁界Hが形成される(図2、図3参照)。また、共振器電極2A,2Bには、その中心位置と外周縁との間に放射方向に沿った電流Iが流れるものである。
【0025】
3は共振器電極2A,2Bの周囲に沿って誘電体基板1を貫通して設けられた複数(例えば12個)のスルーホールで、該各スルーホール3の内壁面3A(内部)は、電極が省かれた非電極形成部となっている。また、誘電体基板1内の共振周波数による波長λgに対して、隣合うスルーホール3の間隔寸法P0(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P0≦λg/4)に設定されている。そして、これら複数のスルーホール3は、共振器電極2A,2Bを取囲んで配置され、全体として開放端を形成している。
【0026】
本実施の形態によるTMO10モード共振器装置は上述の如き構成を有するもので、TMO10モード共振器2の動作時には、共振器電極2A,2Bの中心位置と外周縁位置とに互いに逆向きの電界Eが形成されると共に、共振器電極2A,2Bの中心位置に対して同心円状をなす磁界Hが形成される。これにより、TMO10モード共振器2は、共振器電極2A,2Bの直径寸法Dを1波長とする周波数で共振する。
【0027】
然るに、TMO10モード自体は、一般的に放射モードであり、そのような特徴を活かしてアンテナ等のアプリケーションに用いられることが多い。しかし、TMO10モード共振器2として用いる場合、放射が大きいために放射損Qrが悪くなり、無負荷Q(Qo)自体も悪くなるという問題がある。
【0028】
これに対し、本実施の形態では、誘電体基板1には共振器電極2A,2Bの周囲に沿って内壁面3Aの電極が省かれた複数のスルーホール3を設けたから、共振器電極2A,2B間に形成された電磁界をスルーホール3の内壁面3Aと空気との境界で全反射させることができる。この結果、電磁界の放射を抑圧して無負荷Q(Qo)を高めることができると共に、エネルギ閉じ込め性を向上することができる。
【0029】
また、隣合うスルーホール3の間隔寸法P0を共振周波数の波長λgの1/4以下に設定したから、隣合うスルーホール3の間から電磁界が漏れるのを防止でき、電磁界の閉じ込め性を高めることができる。
【0030】
次に、図4ないし図6は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示し、本実施の形態の特徴は、誘電体基板の両面には、共振器電極を取囲んで複数の短冊状電極を放射状に配置したことにある。
【0031】
11は第1の実施の形態による誘電体基板1とほぼ同様の誘電体基板で、該誘電体基板11は、例えば25程度の比誘電率εr(εr=25)をもったセラミックス材料等を用いて略四角形の平板状に形成されている。
【0032】
12は誘電体基板11の中央部に設けられたTMO10モード共振器で、該TMO10モード共振器12は、第1の実施の形態によるTMO10モード共振器2とほぼ同様に、誘電体基板11の中央に位置して表面11Aと裏面11Bとにそれぞれ設けられた円形電極からなる共振器電極12A,12Bによって構成されている。また、共振器電極12A,12Bは、導電性薄膜を用いて互いに対向した位置に配置されると共に、その直径寸法Dが誘電体基板11内の共振周波数による波長λgに応じた値(例えばD=λg)に設定されている。
【0033】
そして、共振器電極12A,12Bの中心位置と外周縁位置とは擬似的に開放され、これらの位置には互いに逆向きの電界が形成される。また、共振器電極12A,12Bとの間には、共振器電極2A,2Bの中心位置に対して同心円状をなす磁界が形成される。これにより、TMO10モード共振器12は、共振器電極12A,12Bの直径寸法Dを1波長とする周波数で共振する。
【0034】
13,14は共振器電極12A,12Bを取囲んで誘電体基板11の表面11A、裏面11Bにそれぞれ設けられた短冊状電極で、該短冊状電極13は、共振器電極12Aとの間に微小な間隔寸法d(例えばd=50μm程度)をもった一定の隙間が形成されると共に、共振器電極12Aの周囲に放射状に複数個(例えば24個)配置されている。同様に、短冊状電極14は、共振器電極12Bとの間に間隔寸法dをもった一定の隙間が形成されると共に、共振器電極12Bの周囲に放射状に複数個配置されている。
【0035】
また、各短冊状電極13,14は、略矩形状をなすと共に、放射方向に向けて延びる長さ寸法Lが共振周波数による波長λgの1/4程度の値(L=λg/4)に設定されている。これにより、短冊状電極13,14の先端側(最外周端側)は擬似的に短絡されるから、複数の短冊状電極13,14によってTMO10モード共振器12を取囲む円環状の短絡端を形成することができる。
【0036】
さらに、短冊状電極13の先端側では、周方向に離間した隣合う短冊状電極13の間隔寸法P1(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定されている。同様に、短冊状電極14の先端側でも、隣合う短冊状電極14の間隔寸法P1(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定されている。
【0037】
なお、短冊状電極13,14は、誘電体基板11を挟んで互いに対向する位置に配置してもよく、周方向に位置ずれして配置してもよい。また、短冊状電極13,14の個数は、同じ個数としてもよく、互いに異なる個数としてもよい。
【0038】
本実施の形態によるTMO10モード共振器装置は上述の如き構成を有するもので、TMO10モード共振器12の基本的な作動は第1の実施の形態によるTMO10モード共振器2と変わるところはない。
【0039】
ここで、TMO10モード共振器12の無負荷Q(Qo)を向上させる方法は、放射損Qrを小さくする方法以外に、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくする方法がある。これは、導体損Qcが誘電体基板11の厚さ寸法tと表皮深さ寸法δとの比(Qc=t/δ)で表されるからである。例えば、誘電体基板11の厚さ寸法tを0.6mm(t=0.6mm)、表皮深さ寸法δを0.6μm(δ=0.6μm)とした場合には、導体損Qcは1000(Qc=1000)となる。このように、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくすれば、導体損Qcを向上させることができるものの、逆に放射損Qrが大きくなる傾向がある。
【0040】
この結果、例えば誘電体基板11をチップ状に形成し、その端面によって開放端を形成しても、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくしたときには、放射の影響でエネルギ閉じ込め性が悪化するという問題がある。
【0041】
これに対し、本実施の形態では、誘電体基板11の表面11Aと裏面11Bとには、共振器電極12A,12Bを取囲んで放射状に延びる複数の短冊状電極13,14を設けたから、短冊状電極13,14の先端側を擬似的に短絡させ、電界を共振器電極12A,12B間に集中させることができる。このため、本実施の形態では、磁界エネルギを閉じ込めることができ、電磁界の放射を抑圧することができる。
【0042】
このような短冊状電極13,14による放射の抑圧効果を確認するために、短冊状電極13,14を設けた共振器装置と短冊状電極13,14を省いた共振器装置とをそれぞれ略四角形の箱形状(空間)をなすキャビティ15内に収容した場合を仮定し(図7参照)、それぞれの共振器装置について、3次元電磁界シミュレーションを用いて、キャビティ15上部(誘電体基板11の表面11A側)の空間高さ寸法hを変化させたときの共振周波数の変動率Δf/f0を計算した。この結果を図8に示す。
【0043】
なお、図8の結果は、共振周波数f0を38GHz(f0=38GHz)、誘電体基板11の比誘電率εrを25(εr=25)、誘電体基板11の厚さ寸法tを0.6mm(t=0.6mm)、略正方形状をなす誘電体基板11の一辺の長さ寸法L0を2.5mm(L0=2.5mm)、共振器電極12A,12Bの直径寸法Dを1.6mm(D=1.6mm)、短冊状電極13,14の長さ寸法Lを0.23mm(L=0.23mm)、短冊状電極13,14の幅寸法Wを0.1mm(W=0.1mm)、短冊状電極13,14の個数を24個、共振器電極12A,12Bと短冊状電極13,14との間の間隔寸法dを50μm(d=50μm)、略正方形状をなすキャビティ15の一辺の長さ寸法L1を3mm(L1=3mm)として計算した。
【0044】
また、誘電体基板11はキャビティ15の中央に浮遊状態で配置するものとした。実際には、TMO10モード共振器12の共振特性に影響を与えないように、誘電体基板11を低誘電率材料からなる支持台の上に載置する構成となる。
【0045】
図8の結果より、本実施の形態のように短冊状電極13,14を設けた場合は、短冊状電極13,14を省いた場合に比べて、キャビティ15の空間高さ寸法hを変化させたときでも共振周波数f0の変動が小さいことが分かる。即ち、短冊状電極13,14を設けた場合の方が省いた場合に比べて電磁界の放射が少ないから、キャビティ15の影響が少ないものと考えられ、短冊状電極13,14による放射の抑圧効果を確認することができた。
【0046】
かくして、本実施の形態では、誘電体基板11の表面11Aと裏面11Bとには共振器電極12A,12Bを取囲んで放射状に延びる複数の短冊状電極13,14を設けたから、短冊状電極13,14の長さ寸法Lを共振周波数による波長λgの1/4に設定することによって、各短冊状電極13,14の先端側を擬似的に短絡することができる。このとき、放射状に配置された複数の短冊状電極13,14で共振器電極12A,12Bを取囲むから、共振器電極12A,12B間に形成された電磁界を、短絡端をなす短冊状電極13,14の先端側で全反射させることができ、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0047】
この結果、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくしても、共振器電極12A,12B間の電磁界が放射するのを抑圧することができるから、導体損Qcと放射損Qrとを一緒に向上させることができ、TMO10モード共振器12の無負荷Q(Qo)を高めることができる。
【0048】
また、隣合う短冊状電極13,14の間隔寸法P1は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定したから、隣合う短冊状電極13,14の間から電磁界が漏れるのを防止でき、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0049】
なお、第2の実施の形態では、短冊状電極13,14の長さ寸法Lは共振周波数による波長λgの1/4に設定し、短冊状電極13,14の先端側を擬似的に短絡する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば短冊状電極の長さ寸法を共振周波数による波長λgの1/2に設定し、短冊状電極の先端側を擬似的に開放する構成としてもよい。また、短冊状電極の長さ寸法はこれらの値に限らず、その先端側が擬似的に短絡または開放される値であればよい。
【0050】
また、第2の実施の形態では、略矩形状(長方形状)の短冊状電極13,14を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図9ないし図15に示す第1ないし第7の変形例のように、略三角形状の短冊状電極21、略菱形状の短冊状電極22、略台形状の短冊状電極23、略六角形状の短冊状電極24、略五角形状の短冊状電極25、両端が円弧状をなす略長穴形状の短冊状電極26、略楕円形状の短冊状電極27等をそれぞれ用いる構成としてもよい。
【0051】
次に、図16および図17は第3の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示し、本実施の形態の特徴は、短冊状電極の長さ方向の途中位置でインピーダンスがステップ状に変化するステップインピーダンス形に形成したことにある。なお、本実施の形態では、第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
31は共振器電極12A,12Bを取囲んで誘電体基板11の表面11A、裏面11Bにそれぞれ設けられた短冊状電極で、該短冊状電極31は、第2の実施の形態による短冊状電極13,14とほぼ同様に、共振器電極12A,12Bとの間に微小な間隔寸法dをもった一定の隙間が形成されると共に、共振器電極12A,12Bの周囲に放射状に複数個(例えば24個)配置されている。
【0053】
また、短冊状電極31は、長さ方向の途中位置(中間位置)が広幅となり、両端が狭幅となった略十字形状をなし、長さ方向のインピーダンスがステップ状に変化すると共に、短冊状電極31の先端側(最外周端側)は擬似的に短絡される構成となっている。これにより、複数の短冊状電極31は、第2の実施の形態による短冊状電極13,14とほぼ同様に、TMO10モード共振器12を取囲む円環状の短絡端を形成している。さらに、短冊状電極31の先端側では、周方向に離間した隣合う短冊状電極31の間隔寸法P1(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定されている。
【0054】
なお、短冊状電極31は、誘電体基板11を挟んで互いに対向する位置に配置してもよく、周方向に位置ずれして配置してもよい。また、短冊状電極31の個数は、同じ個数としてもよく、互いに異なる個数としてもよい。
【0055】
本実施の形態によるTMO10モード共振器装置は上述の如き構成を有するもので、TMO10モード共振器12の基本的な作動は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器12と変わるところはない。
【0056】
しかし、本実施の形態では、長さ方向の途中位置でインピーダンスがステップ状に変化する略十字形状の短冊状電極31を用いるから、例えば第2の実施の形態にように略矩形状の短冊状電極13,14を用いた場合に比べて、長さ方向の寸法を短縮することができる。このため、共振器装置全体を小型化することができる。
【0057】
なお、第3の実施の形態では、ステップインピーダンス形として略十字形状の短冊状電極31を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す第8の変形例のように、長さ方向の両端が広幅となり、中間位置が狭幅となった略ダンベル形状の短冊状電極32を用いる構成としてもよい。また、例えば図19に示す第9の変形例のように、長さ方向の片端が広幅となり、他の部位が狭幅となった略T字形状の短冊状電極33を用いる構成としてもよい。
【0058】
また、第2および第3の実施の形態では、短冊状電極13,14,21〜27,31〜33は誘電体基板11の表面11Aと裏面11Bとの両面にそれぞれ設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば誘電体基板の表面と裏面とのうちいずれか一方の面にだけ短冊状電極を設ける構成としてもよい。この場合、電磁界の放射抑圧効果は半減するものと考えられる。
【0059】
さらに、前記第1ないし第3の実施の形態では、TMO10モード共振器2,12の共振器電極2A,2B,12A,12Bはいずれも円形状に形成するものとしたが、少なくともいずれか一方が円形状であれば足りるものである。
【0060】
また、前記第1ないし第3の実施の形態では、TMO10モード共振器装置の誘電体基板1,11は四角形状をなすものとしたが、例えば円形状、楕円形状等の他の形状に形成してもよい。
【0061】
次に、図20および図21は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、TMO10モード共振器装置を用いて発振器装置を構成したことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
41は誘電体材料からなる発振回路基板で、該発振回路基板41は、例えばTMO10モード共振器装置56の誘電体基板1に比べて低い誘電率をもったセラミックス材料、樹脂材料等を用いて形成され、略四角形の平板状をなしている。
【0063】
42は発振回路基板41の表面に設けられた発振回路部で、該発振回路部42は、電界効果トランジスタ43(以下、FET43という)、マイクロストリップ線路44、バイアス回路45等によって構成されている。そして、発振回路部42は、電源端子41Aを通じて電源電圧が供給され、TMO10モード共振器2によって設定された所定の発振周波数の信号を発振すると共に、この信号を出力端子41Bを通じて出力している。
【0064】
ここで、FET43のゲート端子Gは、マイクロストリップ線路44の基端側に接続されている。また、FET43のソース端子Sは、ソース側のバイアス回路45に接続されると共に、帰還周波数を制御するインダクタとしての誘導性スタブ46に接続されている。
【0065】
一方、FET43のドレイン端子Dは、誘導性スタブ47Aとコンデンサ47Bとからなるフィルタ回路47とバイアス抵抗48とを介して電源端子41Aに接続されると共に、直流成分を遮断するためのカップルドライン49を介して出力端子41Bに接続されている。また、電源端子41Aにはサージ除去用のコンデンサ50が接続されている。
【0066】
さらに、マイクロストリップ線路44の先端側には終端抵抗51が接続されると共に、長さ方向途中位置には後述の誘電体基板1に向けて略T字状に分岐して延び、その先端側がTMO10モード共振器2を励振する励振電極44Aとなっている。
【0067】
52は発振回路基板41の表面に設けられた周波数制御回路部で、該周波数制御回路部52は、誘電体基板1を挟んで発振回路部42の反対側に配置されている。また、周波数制御回路部52は、一端側がTMO10モード共振器2の近傍に配置されたマイクロストリップ線路53と、該マイクロストリップ線路53の他端側に接続された変調素子としての可変容量ダイオード54(バラクタダイオード)とによって大略構成されている。
【0068】
ここで、可変容量ダイオード54は、そのカソード端子がマイクロストリップ線路53に接続されると共に、アノード端子がグランドに接続されている。また、可変容量ダイオード54のカソード端子はチョークコイルをなす誘導性スタブ55を介して制御入力端子41Cが接続されている。さらに、マイクロストリップ線路53の先端側はTMO10モード共振器2を励振する励振電極53Aとなっている。
【0069】
そして、周波数制御回路部52は、制御入力端子41Cに印加される制御電圧に応じて可変容量ダイオード54の静電容量を変化させて、発振周波数(共振周波数)を制御している。
【0070】
56は発振回路部42と周波数制御回路部52との間に設けられた第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置で、該TMO10モード共振器装置56の誘電体基板1は、発振回路部42と周波数制御回路部52との間に位置して発振回路基板41の表面側に積み重ねて取付けられている。
【0071】
また、TMO10モード共振器2の共振器電極2A,2Bのうち誘電体基板1の裏面側に設けられた共振器電極2Bは、発振回路基板41の表面に設けられたランド(図示せず)等を通じてグランドに接続されている。そして、TMO10モード共振器2は、マイクロストリップ線路44,53の励振電極44A,53Aを介して発振回路部42と周波数制御回路部52に接続されている。
【0072】
本実施の形態による発振器装置は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0073】
電源端子41Aに駆動電圧が印加されると、FET43のゲート端子Gには、TMO10モード共振器2の共振周波数に応じた信号が入力される。これにより、発振回路部42とTMO10モード共振器装置56とは帯域反射型発振回路を構成するから、FET43は、TMO10モード共振器2の共振周波数に応じた信号を増幅し、出力端子41Bを通じて外部に向けて出力する。
【0074】
また、TMO10モード共振器装置56には可変容量ダイオード54からなる周波数制御回路部52が接続されているから、制御入力端子41Cに印加する制御電圧の値に応じて、TMO10モード共振器2の共振周波数を可変に設定することができる。これにより、発振器装置全体は電圧制御発振器(VCO)として機能する。
【0075】
かくして、本実施の形態では、第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置56を用いて発振器装置を構成したから、TMO10モード共振器2の電磁界が外部に放射されるのを抑圧することができ、例えばTMO10モード共振器装置56を取囲むキャビティを省くことができる。このため、発振器装置の低背化、簡略化を図ることができ、製造コストを低減することができる。
【0076】
なお、第4の実施の形態では、TMO10モード共振器装置56として第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を用いる構成としたが、第2または第3の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を用いる構成としてもよい。
【0077】
次に、図22は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、本発明のTMO10モード共振器装置を備えた発振器装置を用いて送受信装置としての通信機装置を構成したことにある。
【0078】
61は本実施の形態による通信機装置で、該通信機装置61は、例えば信号処理回路62と、信号処理回路62に接続され高周波の信号を出力または入力する高周波モジュール63と、該高周波モジュール63に接続して設けられアンテナ共用器64(デュプレクサ)を介して高周波の信号を送信または受信するアンテナ65とによって構成されている。
【0079】
そして、高周波モジュール63は、信号処理回路62の出力側とアンテナ共用器64との間に接続された帯域通過フィルタ66、増幅器67、ミキサ68、帯域通過フィルタ69、電力増幅器70によって送信側が構成されると共に、アンテナ共用器64と信号処理回路62の入力側に接続された帯域通過フィルタ71、低雑音増幅器72、ミキサ73、帯域通過フィルタ74、増幅器75によって受信側が構成されている。そして、ミキサ68,73には例えば第4の実施の形態のように本発明のTMO10モード共振器装置を用いた発振器装置76が接続されている。
【0080】
本実施の形態による通信機装置は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0081】
まず、送信時には、信号処理回路62から出力された中間周波信号(IF信号)は、帯域通過フィルタ66で不要な信号が除去された後、増幅器67によって増幅されてミキサ68に入力される。このとき、ミキサ68は、この中間周波信号と発振器装置76からの搬送波とを掛け合わせて高周波信号(RF信号)にアップコンバートする。そして、ミキサ68から出力された高周波信号は、帯域通過フィルタ69で不要な信号が除去された後、電力増幅器70によって送信電力に増幅された後、アンテナ共用器64を介してアンテナ65から送信される。
【0082】
一方、受信時には、アンテナ65から受信された高周波信号は、アンテナ共用器64を介して帯域通過フィルタ71に入力される。これにより、高周波信号は、帯域通過フィルタ71で不要な信号が除去された後、低雑音増幅器72によって増幅されてミキサ73に入力される。このとき、ミキサ73は、この高周波信号と発振器装置76からの搬送波とを掛け合わせて中間周波信号にダウンコンバートする。そして、ミキサ73から出力された中間周波信号は、帯域通過フィルタ74で不要な信号が除去され、増幅器75によって増幅された後、信号処理回路62に入力される。
【0083】
かくして、本実施の形態によれば、放射が抑圧された本発明のTMO10モード共振器装置からなる発振器装置76を用いて通信機装置を構成するから、発振器装置76の構造を簡略化でき、通信機装置全体の製造コストを低減することができる。
【0084】
なお、前記第5の実施の形態では、本発明によるTMO10モード共振器装置を用いた発振器装置76を通信機装置61に適用した場合を例を挙げて説明したが、例えばレーダ装置等に適用してもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ波、ミリ波等の高周波の電磁波を発振するTMO10モード共振器装置、発振器装置および送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、通信機装置、レーダ装置等の送受信装置に用いられるTMO10モード共振器装置として、誘電体基板の両面に互いに対向した円形電極を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−98316号公報
【0004】
このような従来技術によるTMO10モード発振器装置では、誘電体基板の裏面に略全面に亘ってグランド電極が形成されたTMO1モード共振器装置に比べて、表面波モードであるTMOモードの電磁界と結合しない基板の厚みに対して約2倍の寸法まで誘電体基板の厚み寸法を大きくすることができるから、約2倍の大きさの導体損(Qc)や無負荷Q(Qo)を得ることができ、フィルタの低損失化が可能となっていた。
【0005】
ところで、上述した従来技術によるTMO10モード共振器装置では、誘電体基板の厚みをさらに増加させてQ(Quality factor)を高めるときには、誘電体基板内の電磁界がTMOモードと結合し、放射モードとして周囲に広がってしまう。このため、誘電体基板内部のエネルギ集中度が低下し、放射損(Qr)によってQが逆に劣化するから、厚みを増やして導体損(Qc)を上げる効果を相殺してしまうという問題がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は電磁界の放射を抑圧し、高いQをもったTMO10モード共振器装置、発振器装置および送受信装置を提供することにある。
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、前記誘電体基板には前記円形電極の周囲に沿って複数のスルーホールを貫通して設けると共に、該各スルーホールの内部は電極を省いた非電極形成部とし、前記円形電極の周囲には、前記複数のスルーホールを用いて電磁界の閉じ込め性を高めるための開放端を設けたことを特徴としている。
【0008】
このように構成したことにより、誘電体基板の内部のうち円形電極に対応した部位には、共振によって電磁界が形成されると共に、該電磁界を開放端を用いて全反射させることができる。このため、電磁界の放射を抑圧して無負荷Qを向上することができると共に、エネルギの閉じ込め性を高めることができる。
【0009】
また、本発明では、前記誘電体基板には前記円形電極の周囲に沿って複数のスルーホールを貫通して設けると共に、該各スルーホールの内部は電極を省いた非電極形成部とし、前記開放端は前記複数のスルーホールによって形成している。
【0010】
これにより、スルーホール内には空気が充填されるから、スルーホールの内壁面と空気との境界で電磁界を全反射させることができ、誘電体基板内のうち円形電極に対応した部位に形成される電磁界を閉じ込めることができる。
【0011】
本発明では、前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記隣合うスルーホールの間隔寸法はλg/4以下に設定するのが好ましい。これにより、隣合うスルーホールの間から電磁界が漏れるのを防止でき、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0012】
また、本発明は、誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、前記円形電極を取囲んで前記誘電体基板の両面または片面に設けられ前記円形電極との間に隙間を形成した状態で複数の短冊状電極を放射状に配置する構成としたことを特徴としている。
【0013】
この場合、誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、例えば短冊状電極の長さ寸法をλg/4に設定することによって、各短冊状電極の先端側(最外周端側)を擬似的に短絡することができる。また、例えば短冊状電極の長さ寸法をλg/2に設定することによって、各短冊状電極の先端側を擬似的に開放することができる。このとき、放射状に配置された複数の短冊状電極で円形電極を取囲むから、誘電体基板内のうち円形電極に対応した部位に形成された電磁界を、短絡端または開放端をなす短冊状電極の先端側で全反射させることができ、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。この結果、誘電体基板の厚さ寸法を大きくしても、電磁界が放射するのを抑圧することができるから、導体損と放射損とを一緒に向上させることができ、無負荷Qを有効に高めることができる。
【0014】
本発明では、前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記短冊状電極は放射状に延びる長さ寸法がλg/4となった矩形状に形成するのが好ましい。
【0015】
これにより、各短冊状電極の先端側(最外周端側)を擬似的に短絡することができる。このため、誘電体基板内のうち円形電極に対応した部位に形成された電磁界を、短絡端をなす短冊状電極の先端側で全反射させることができ、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0016】
本発明では、前記隣合う短冊状電極の間隔寸法はλg/4以下に設定するのが好ましい。これにより、隣合う短冊状電極の間から電磁界が漏れるのを防止でき、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0017】
また、本発明によるTMO10モード共振器装置を用いて発振器装置を構成してもよく、本発明による発振器装置を用いてレーダ装置、通信装置等の送受信装置を構成してもよい。
【0018】
本発明によるTMO10モード共振器装置を用いて発振器装置や送受信装置を構成した場合には、発振器装置等の構造を簡略化でき、通信機装置全体の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示す斜視図である。
【図2】図2は図1中のTMO10モード共振器装置を示す平面図である。
【図3】図3はTMO10モード共振器装置を図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
【図4】図4は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示す斜視図である。
【図5】図5は図4中のTMO10モード共振器装置を示す平面図である。
【図6】図6は図5中のa部に位置する短冊状電極を示す要部拡大平面図である。
【図7】図7は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器装置をキャビティ内に収容した状態を示す斜視図である。
【図8】図8は図7中のTMO10モード共振器装置とキャビティとの空間高さ寸法と共振周波数の変動率との関係を示す特性線図である。
【図9】図9は第1の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図10】図10は第2の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図11】図11は第3の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図12】図12は第4の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図13】図13は第5の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図14】図14は第6の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図15】図15は第7の変形例による短冊状電極を示す図6と同様位置の要部拡大平面図である。
【図16】第3の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示す平面図である。
【図17】図17は図16中のb部に位置する短冊状電極を示す要部拡大平面図である。
【図18】図18は第8の変形例による短冊状電極を示す図17と同様位置の要部拡大平面図である。
【図19】図19は第9の変形例による短冊状電極を示す図17と同様位置の要部拡大平面図である。
【図20】図20は第4の実施の形態による発振器装置を示す平面図である。
【図21】図21は図20中の発振器装置を示す電気回路図である。
【図22】図22は第5の実施の形態による通信機装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1,11 誘電体基板
2,12 TMO10モード共振器
2A,2B,12A,12B 共振器電極(円形電極)
3 スルーホール
13,14,21〜27,31〜33 短冊状電極
56 TMO10モード共振器装置
61 通信機装置(送受信装置)
76 発振器装置
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による発振器装置および通信装置を、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図3は第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示し、図において、1はTMO10モード共振器装置の本体をなす誘電体基板で、該誘電体基板1は、例えば24程度の比誘電率εr(εr=24)をもったセラミックス材料等を用いて形成されている。また、誘電体基板1は、例えば略四角形の平板からなり、後述の共振器電極2A,2Bよりも一回り大きい程度の面積をもった小片状(チップ状)をなしている。
【0023】
2は誘電体基板1の中央部に設けられたTMO10モード共振器で、該TMO10モード共振器2は、誘電体基板1の中央に位置して表面1Aと裏面1Bとにそれぞれ設けられた円形電極からなる共振器電極2A,2Bによって構成されている。また、共振器電極2A,2Bは、金属材料等の導電性薄膜を用いて形成され、略円形状をなして互いに対向した位置に配置されると共に、その直径寸法Dが誘電体基板1内の共振周波数による波長λgに応じた値(例えばD=λg)に設定されている。
【0024】
そして、誘電体基板1内には、共振器電極2A,2B間に位置して誘電体基板1の厚さ方向に延びる電界Eが形成されると共に、共振器電極2A,2Bの中心位置に対して同心円状をなす磁界Hが形成される(図2、図3参照)。また、共振器電極2A,2Bには、その中心位置と外周縁との間に放射方向に沿った電流Iが流れるものである。
【0025】
3は共振器電極2A,2Bの周囲に沿って誘電体基板1を貫通して設けられた複数(例えば12個)のスルーホールで、該各スルーホール3の内壁面3A(内部)は、電極が省かれた非電極形成部となっている。また、誘電体基板1内の共振周波数による波長λgに対して、隣合うスルーホール3の間隔寸法P0(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P0≦λg/4)に設定されている。そして、これら複数のスルーホール3は、共振器電極2A,2Bを取囲んで配置され、全体として開放端を形成している。
【0026】
本実施の形態によるTMO10モード共振器装置は上述の如き構成を有するもので、TMO10モード共振器2の動作時には、共振器電極2A,2Bの中心位置と外周縁位置とに互いに逆向きの電界Eが形成されると共に、共振器電極2A,2Bの中心位置に対して同心円状をなす磁界Hが形成される。これにより、TMO10モード共振器2は、共振器電極2A,2Bの直径寸法Dを1波長とする周波数で共振する。
【0027】
然るに、TMO10モード自体は、一般的に放射モードであり、そのような特徴を活かしてアンテナ等のアプリケーションに用いられることが多い。しかし、TMO10モード共振器2として用いる場合、放射が大きいために放射損Qrが悪くなり、無負荷Q(Qo)自体も悪くなるという問題がある。
【0028】
これに対し、本実施の形態では、誘電体基板1には共振器電極2A,2Bの周囲に沿って内壁面3Aの電極が省かれた複数のスルーホール3を設けたから、共振器電極2A,2B間に形成された電磁界をスルーホール3の内壁面3Aと空気との境界で全反射させることができる。この結果、電磁界の放射を抑圧して無負荷Q(Qo)を高めることができると共に、エネルギ閉じ込め性を向上することができる。
【0029】
また、隣合うスルーホール3の間隔寸法P0を共振周波数の波長λgの1/4以下に設定したから、隣合うスルーホール3の間から電磁界が漏れるのを防止でき、電磁界の閉じ込め性を高めることができる。
【0030】
次に、図4ないし図6は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示し、本実施の形態の特徴は、誘電体基板の両面には、共振器電極を取囲んで複数の短冊状電極を放射状に配置したことにある。
【0031】
11は第1の実施の形態による誘電体基板1とほぼ同様の誘電体基板で、該誘電体基板11は、例えば25程度の比誘電率εr(εr=25)をもったセラミックス材料等を用いて略四角形の平板状に形成されている。
【0032】
12は誘電体基板11の中央部に設けられたTMO10モード共振器で、該TMO10モード共振器12は、第1の実施の形態によるTMO10モード共振器2とほぼ同様に、誘電体基板11の中央に位置して表面11Aと裏面11Bとにそれぞれ設けられた円形電極からなる共振器電極12A,12Bによって構成されている。また、共振器電極12A,12Bは、導電性薄膜を用いて互いに対向した位置に配置されると共に、その直径寸法Dが誘電体基板11内の共振周波数による波長λgに応じた値(例えばD=λg)に設定されている。
【0033】
そして、共振器電極12A,12Bの中心位置と外周縁位置とは擬似的に開放され、これらの位置には互いに逆向きの電界が形成される。また、共振器電極12A,12Bとの間には、共振器電極2A,2Bの中心位置に対して同心円状をなす磁界が形成される。これにより、TMO10モード共振器12は、共振器電極12A,12Bの直径寸法Dを1波長とする周波数で共振する。
【0034】
13,14は共振器電極12A,12Bを取囲んで誘電体基板11の表面11A、裏面11Bにそれぞれ設けられた短冊状電極で、該短冊状電極13は、共振器電極12Aとの間に微小な間隔寸法d(例えばd=50μm程度)をもった一定の隙間が形成されると共に、共振器電極12Aの周囲に放射状に複数個(例えば24個)配置されている。同様に、短冊状電極14は、共振器電極12Bとの間に間隔寸法dをもった一定の隙間が形成されると共に、共振器電極12Bの周囲に放射状に複数個配置されている。
【0035】
また、各短冊状電極13,14は、略矩形状をなすと共に、放射方向に向けて延びる長さ寸法Lが共振周波数による波長λgの1/4程度の値(L=λg/4)に設定されている。これにより、短冊状電極13,14の先端側(最外周端側)は擬似的に短絡されるから、複数の短冊状電極13,14によってTMO10モード共振器12を取囲む円環状の短絡端を形成することができる。
【0036】
さらに、短冊状電極13の先端側では、周方向に離間した隣合う短冊状電極13の間隔寸法P1(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定されている。同様に、短冊状電極14の先端側でも、隣合う短冊状電極14の間隔寸法P1(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定されている。
【0037】
なお、短冊状電極13,14は、誘電体基板11を挟んで互いに対向する位置に配置してもよく、周方向に位置ずれして配置してもよい。また、短冊状電極13,14の個数は、同じ個数としてもよく、互いに異なる個数としてもよい。
【0038】
本実施の形態によるTMO10モード共振器装置は上述の如き構成を有するもので、TMO10モード共振器12の基本的な作動は第1の実施の形態によるTMO10モード共振器2と変わるところはない。
【0039】
ここで、TMO10モード共振器12の無負荷Q(Qo)を向上させる方法は、放射損Qrを小さくする方法以外に、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくする方法がある。これは、導体損Qcが誘電体基板11の厚さ寸法tと表皮深さ寸法δとの比(Qc=t/δ)で表されるからである。例えば、誘電体基板11の厚さ寸法tを0.6mm(t=0.6mm)、表皮深さ寸法δを0.6μm(δ=0.6μm)とした場合には、導体損Qcは1000(Qc=1000)となる。このように、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくすれば、導体損Qcを向上させることができるものの、逆に放射損Qrが大きくなる傾向がある。
【0040】
この結果、例えば誘電体基板11をチップ状に形成し、その端面によって開放端を形成しても、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくしたときには、放射の影響でエネルギ閉じ込め性が悪化するという問題がある。
【0041】
これに対し、本実施の形態では、誘電体基板11の表面11Aと裏面11Bとには、共振器電極12A,12Bを取囲んで放射状に延びる複数の短冊状電極13,14を設けたから、短冊状電極13,14の先端側を擬似的に短絡させ、電界を共振器電極12A,12B間に集中させることができる。このため、本実施の形態では、磁界エネルギを閉じ込めることができ、電磁界の放射を抑圧することができる。
【0042】
このような短冊状電極13,14による放射の抑圧効果を確認するために、短冊状電極13,14を設けた共振器装置と短冊状電極13,14を省いた共振器装置とをそれぞれ略四角形の箱形状(空間)をなすキャビティ15内に収容した場合を仮定し(図7参照)、それぞれの共振器装置について、3次元電磁界シミュレーションを用いて、キャビティ15上部(誘電体基板11の表面11A側)の空間高さ寸法hを変化させたときの共振周波数の変動率Δf/f0を計算した。この結果を図8に示す。
【0043】
なお、図8の結果は、共振周波数f0を38GHz(f0=38GHz)、誘電体基板11の比誘電率εrを25(εr=25)、誘電体基板11の厚さ寸法tを0.6mm(t=0.6mm)、略正方形状をなす誘電体基板11の一辺の長さ寸法L0を2.5mm(L0=2.5mm)、共振器電極12A,12Bの直径寸法Dを1.6mm(D=1.6mm)、短冊状電極13,14の長さ寸法Lを0.23mm(L=0.23mm)、短冊状電極13,14の幅寸法Wを0.1mm(W=0.1mm)、短冊状電極13,14の個数を24個、共振器電極12A,12Bと短冊状電極13,14との間の間隔寸法dを50μm(d=50μm)、略正方形状をなすキャビティ15の一辺の長さ寸法L1を3mm(L1=3mm)として計算した。
【0044】
また、誘電体基板11はキャビティ15の中央に浮遊状態で配置するものとした。実際には、TMO10モード共振器12の共振特性に影響を与えないように、誘電体基板11を低誘電率材料からなる支持台の上に載置する構成となる。
【0045】
図8の結果より、本実施の形態のように短冊状電極13,14を設けた場合は、短冊状電極13,14を省いた場合に比べて、キャビティ15の空間高さ寸法hを変化させたときでも共振周波数f0の変動が小さいことが分かる。即ち、短冊状電極13,14を設けた場合の方が省いた場合に比べて電磁界の放射が少ないから、キャビティ15の影響が少ないものと考えられ、短冊状電極13,14による放射の抑圧効果を確認することができた。
【0046】
かくして、本実施の形態では、誘電体基板11の表面11Aと裏面11Bとには共振器電極12A,12Bを取囲んで放射状に延びる複数の短冊状電極13,14を設けたから、短冊状電極13,14の長さ寸法Lを共振周波数による波長λgの1/4に設定することによって、各短冊状電極13,14の先端側を擬似的に短絡することができる。このとき、放射状に配置された複数の短冊状電極13,14で共振器電極12A,12Bを取囲むから、共振器電極12A,12B間に形成された電磁界を、短絡端をなす短冊状電極13,14の先端側で全反射させることができ、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0047】
この結果、誘電体基板11の厚さ寸法tを大きくしても、共振器電極12A,12B間の電磁界が放射するのを抑圧することができるから、導体損Qcと放射損Qrとを一緒に向上させることができ、TMO10モード共振器12の無負荷Q(Qo)を高めることができる。
【0048】
また、隣合う短冊状電極13,14の間隔寸法P1は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定したから、隣合う短冊状電極13,14の間から電磁界が漏れるのを防止でき、エネルギ閉じ込め性を高めることができる。
【0049】
なお、第2の実施の形態では、短冊状電極13,14の長さ寸法Lは共振周波数による波長λgの1/4に設定し、短冊状電極13,14の先端側を擬似的に短絡する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば短冊状電極の長さ寸法を共振周波数による波長λgの1/2に設定し、短冊状電極の先端側を擬似的に開放する構成としてもよい。また、短冊状電極の長さ寸法はこれらの値に限らず、その先端側が擬似的に短絡または開放される値であればよい。
【0050】
また、第2の実施の形態では、略矩形状(長方形状)の短冊状電極13,14を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図9ないし図15に示す第1ないし第7の変形例のように、略三角形状の短冊状電極21、略菱形状の短冊状電極22、略台形状の短冊状電極23、略六角形状の短冊状電極24、略五角形状の短冊状電極25、両端が円弧状をなす略長穴形状の短冊状電極26、略楕円形状の短冊状電極27等をそれぞれ用いる構成としてもよい。
【0051】
次に、図16および図17は第3の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を示し、本実施の形態の特徴は、短冊状電極の長さ方向の途中位置でインピーダンスがステップ状に変化するステップインピーダンス形に形成したことにある。なお、本実施の形態では、第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
31は共振器電極12A,12Bを取囲んで誘電体基板11の表面11A、裏面11Bにそれぞれ設けられた短冊状電極で、該短冊状電極31は、第2の実施の形態による短冊状電極13,14とほぼ同様に、共振器電極12A,12Bとの間に微小な間隔寸法dをもった一定の隙間が形成されると共に、共振器電極12A,12Bの周囲に放射状に複数個(例えば24個)配置されている。
【0053】
また、短冊状電極31は、長さ方向の途中位置(中間位置)が広幅となり、両端が狭幅となった略十字形状をなし、長さ方向のインピーダンスがステップ状に変化すると共に、短冊状電極31の先端側(最外周端側)は擬似的に短絡される構成となっている。これにより、複数の短冊状電極31は、第2の実施の形態による短冊状電極13,14とほぼ同様に、TMO10モード共振器12を取囲む円環状の短絡端を形成している。さらに、短冊状電極31の先端側では、周方向に離間した隣合う短冊状電極31の間隔寸法P1(ピッチ)は共振周波数による波長λgの1/4以下(P1≦λg/4)に設定されている。
【0054】
なお、短冊状電極31は、誘電体基板11を挟んで互いに対向する位置に配置してもよく、周方向に位置ずれして配置してもよい。また、短冊状電極31の個数は、同じ個数としてもよく、互いに異なる個数としてもよい。
【0055】
本実施の形態によるTMO10モード共振器装置は上述の如き構成を有するもので、TMO10モード共振器12の基本的な作動は第2の実施の形態によるTMO10モード共振器12と変わるところはない。
【0056】
しかし、本実施の形態では、長さ方向の途中位置でインピーダンスがステップ状に変化する略十字形状の短冊状電極31を用いるから、例えば第2の実施の形態にように略矩形状の短冊状電極13,14を用いた場合に比べて、長さ方向の寸法を短縮することができる。このため、共振器装置全体を小型化することができる。
【0057】
なお、第3の実施の形態では、ステップインピーダンス形として略十字形状の短冊状電極31を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図18に示す第8の変形例のように、長さ方向の両端が広幅となり、中間位置が狭幅となった略ダンベル形状の短冊状電極32を用いる構成としてもよい。また、例えば図19に示す第9の変形例のように、長さ方向の片端が広幅となり、他の部位が狭幅となった略T字形状の短冊状電極33を用いる構成としてもよい。
【0058】
また、第2および第3の実施の形態では、短冊状電極13,14,21〜27,31〜33は誘電体基板11の表面11Aと裏面11Bとの両面にそれぞれ設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば誘電体基板の表面と裏面とのうちいずれか一方の面にだけ短冊状電極を設ける構成としてもよい。この場合、電磁界の放射抑圧効果は半減するものと考えられる。
【0059】
さらに、前記第1ないし第3の実施の形態では、TMO10モード共振器2,12の共振器電極2A,2B,12A,12Bはいずれも円形状に形成するものとしたが、少なくともいずれか一方が円形状であれば足りるものである。
【0060】
また、前記第1ないし第3の実施の形態では、TMO10モード共振器装置の誘電体基板1,11は四角形状をなすものとしたが、例えば円形状、楕円形状等の他の形状に形成してもよい。
【0061】
次に、図20および図21は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、TMO10モード共振器装置を用いて発振器装置を構成したことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
41は誘電体材料からなる発振回路基板で、該発振回路基板41は、例えばTMO10モード共振器装置56の誘電体基板1に比べて低い誘電率をもったセラミックス材料、樹脂材料等を用いて形成され、略四角形の平板状をなしている。
【0063】
42は発振回路基板41の表面に設けられた発振回路部で、該発振回路部42は、電界効果トランジスタ43(以下、FET43という)、マイクロストリップ線路44、バイアス回路45等によって構成されている。そして、発振回路部42は、電源端子41Aを通じて電源電圧が供給され、TMO10モード共振器2によって設定された所定の発振周波数の信号を発振すると共に、この信号を出力端子41Bを通じて出力している。
【0064】
ここで、FET43のゲート端子Gは、マイクロストリップ線路44の基端側に接続されている。また、FET43のソース端子Sは、ソース側のバイアス回路45に接続されると共に、帰還周波数を制御するインダクタとしての誘導性スタブ46に接続されている。
【0065】
一方、FET43のドレイン端子Dは、誘導性スタブ47Aとコンデンサ47Bとからなるフィルタ回路47とバイアス抵抗48とを介して電源端子41Aに接続されると共に、直流成分を遮断するためのカップルドライン49を介して出力端子41Bに接続されている。また、電源端子41Aにはサージ除去用のコンデンサ50が接続されている。
【0066】
さらに、マイクロストリップ線路44の先端側には終端抵抗51が接続されると共に、長さ方向途中位置には後述の誘電体基板1に向けて略T字状に分岐して延び、その先端側がTMO10モード共振器2を励振する励振電極44Aとなっている。
【0067】
52は発振回路基板41の表面に設けられた周波数制御回路部で、該周波数制御回路部52は、誘電体基板1を挟んで発振回路部42の反対側に配置されている。また、周波数制御回路部52は、一端側がTMO10モード共振器2の近傍に配置されたマイクロストリップ線路53と、該マイクロストリップ線路53の他端側に接続された変調素子としての可変容量ダイオード54(バラクタダイオード)とによって大略構成されている。
【0068】
ここで、可変容量ダイオード54は、そのカソード端子がマイクロストリップ線路53に接続されると共に、アノード端子がグランドに接続されている。また、可変容量ダイオード54のカソード端子はチョークコイルをなす誘導性スタブ55を介して制御入力端子41Cが接続されている。さらに、マイクロストリップ線路53の先端側はTMO10モード共振器2を励振する励振電極53Aとなっている。
【0069】
そして、周波数制御回路部52は、制御入力端子41Cに印加される制御電圧に応じて可変容量ダイオード54の静電容量を変化させて、発振周波数(共振周波数)を制御している。
【0070】
56は発振回路部42と周波数制御回路部52との間に設けられた第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置で、該TMO10モード共振器装置56の誘電体基板1は、発振回路部42と周波数制御回路部52との間に位置して発振回路基板41の表面側に積み重ねて取付けられている。
【0071】
また、TMO10モード共振器2の共振器電極2A,2Bのうち誘電体基板1の裏面側に設けられた共振器電極2Bは、発振回路基板41の表面に設けられたランド(図示せず)等を通じてグランドに接続されている。そして、TMO10モード共振器2は、マイクロストリップ線路44,53の励振電極44A,53Aを介して発振回路部42と周波数制御回路部52に接続されている。
【0072】
本実施の形態による発振器装置は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0073】
電源端子41Aに駆動電圧が印加されると、FET43のゲート端子Gには、TMO10モード共振器2の共振周波数に応じた信号が入力される。これにより、発振回路部42とTMO10モード共振器装置56とは帯域反射型発振回路を構成するから、FET43は、TMO10モード共振器2の共振周波数に応じた信号を増幅し、出力端子41Bを通じて外部に向けて出力する。
【0074】
また、TMO10モード共振器装置56には可変容量ダイオード54からなる周波数制御回路部52が接続されているから、制御入力端子41Cに印加する制御電圧の値に応じて、TMO10モード共振器2の共振周波数を可変に設定することができる。これにより、発振器装置全体は電圧制御発振器(VCO)として機能する。
【0075】
かくして、本実施の形態では、第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置56を用いて発振器装置を構成したから、TMO10モード共振器2の電磁界が外部に放射されるのを抑圧することができ、例えばTMO10モード共振器装置56を取囲むキャビティを省くことができる。このため、発振器装置の低背化、簡略化を図ることができ、製造コストを低減することができる。
【0076】
なお、第4の実施の形態では、TMO10モード共振器装置56として第1の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を用いる構成としたが、第2または第3の実施の形態によるTMO10モード共振器装置を用いる構成としてもよい。
【0077】
次に、図22は本発明の第5の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、本発明のTMO10モード共振器装置を備えた発振器装置を用いて送受信装置としての通信機装置を構成したことにある。
【0078】
61は本実施の形態による通信機装置で、該通信機装置61は、例えば信号処理回路62と、信号処理回路62に接続され高周波の信号を出力または入力する高周波モジュール63と、該高周波モジュール63に接続して設けられアンテナ共用器64(デュプレクサ)を介して高周波の信号を送信または受信するアンテナ65とによって構成されている。
【0079】
そして、高周波モジュール63は、信号処理回路62の出力側とアンテナ共用器64との間に接続された帯域通過フィルタ66、増幅器67、ミキサ68、帯域通過フィルタ69、電力増幅器70によって送信側が構成されると共に、アンテナ共用器64と信号処理回路62の入力側に接続された帯域通過フィルタ71、低雑音増幅器72、ミキサ73、帯域通過フィルタ74、増幅器75によって受信側が構成されている。そして、ミキサ68,73には例えば第4の実施の形態のように本発明のTMO10モード共振器装置を用いた発振器装置76が接続されている。
【0080】
本実施の形態による通信機装置は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0081】
まず、送信時には、信号処理回路62から出力された中間周波信号(IF信号)は、帯域通過フィルタ66で不要な信号が除去された後、増幅器67によって増幅されてミキサ68に入力される。このとき、ミキサ68は、この中間周波信号と発振器装置76からの搬送波とを掛け合わせて高周波信号(RF信号)にアップコンバートする。そして、ミキサ68から出力された高周波信号は、帯域通過フィルタ69で不要な信号が除去された後、電力増幅器70によって送信電力に増幅された後、アンテナ共用器64を介してアンテナ65から送信される。
【0082】
一方、受信時には、アンテナ65から受信された高周波信号は、アンテナ共用器64を介して帯域通過フィルタ71に入力される。これにより、高周波信号は、帯域通過フィルタ71で不要な信号が除去された後、低雑音増幅器72によって増幅されてミキサ73に入力される。このとき、ミキサ73は、この高周波信号と発振器装置76からの搬送波とを掛け合わせて中間周波信号にダウンコンバートする。そして、ミキサ73から出力された中間周波信号は、帯域通過フィルタ74で不要な信号が除去され、増幅器75によって増幅された後、信号処理回路62に入力される。
【0083】
かくして、本実施の形態によれば、放射が抑圧された本発明のTMO10モード共振器装置からなる発振器装置76を用いて通信機装置を構成するから、発振器装置76の構造を簡略化でき、通信機装置全体の製造コストを低減することができる。
【0084】
なお、前記第5の実施の形態では、本発明によるTMO10モード共振器装置を用いた発振器装置76を通信機装置61に適用した場合を例を挙げて説明したが、例えばレーダ装置等に適用してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、
前記誘電体基板には前記円形電極の周囲に沿って複数のスルーホールを貫通して設けると共に、該各スルーホールの内部は電極を省いた非電極形成部とし、
前記円形電極の周囲には、前記複数のスルーホールを用いて電磁界の閉じ込め性を高めるための開放端を設けたことを特徴とするTMO10モード共振器装置。
【請求項2】
前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記隣合うスルーホールの間隔寸法はλg/4以下に設定してなる請求項1に記載のTMO10モード共振器装置。
【請求項3】
誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、前記円形電極を取囲んで前記誘電体基板の両面または片面に設けられ前記円形電極との間に隙間を形成した状態で複数の短冊状電極を放射状に配置する構成としたことを特徴とするTMO10モード共振器装置。
【請求項4】
前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記短冊状電極は放射状に延びる長さ寸法がλg/4となった矩形状に形成してなる請求項3に記載のTMO10モード共振器装置。
【請求項5】
前記隣合う短冊状電極の間隔寸法はλg/4以下に設定してなる請求項3または4に記載のTMO10モード共振器装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のTMO10モード共振器装置を用いた発振器装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載のTMO10モード共振器装置を用いた送受信装置。
【請求項1】
誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、
前記誘電体基板には前記円形電極の周囲に沿って複数のスルーホールを貫通して設けると共に、該各スルーホールの内部は電極を省いた非電極形成部とし、
前記円形電極の周囲には、前記複数のスルーホールを用いて電磁界の閉じ込め性を高めるための開放端を設けたことを特徴とするTMO10モード共振器装置。
【請求項2】
前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記隣合うスルーホールの間隔寸法はλg/4以下に設定してなる請求項1に記載のTMO10モード共振器装置。
【請求項3】
誘電体基板と、該誘電体基板の両面に設けられた電極とからなり、該両面の電極のうち少なくとも一方が円形電極によって形成してなるTMO10モード共振器装置において、前記円形電極を取囲んで前記誘電体基板の両面または片面に設けられ前記円形電極との間に隙間を形成した状態で複数の短冊状電極を放射状に配置する構成としたことを特徴とするTMO10モード共振器装置。
【請求項4】
前記誘電体基板内の共振周波数による波長をλgとしたときに、前記短冊状電極は放射状に延びる長さ寸法がλg/4となった矩形状に形成してなる請求項3に記載のTMO10モード共振器装置。
【請求項5】
前記隣合う短冊状電極の間隔寸法はλg/4以下に設定してなる請求項3または4に記載のTMO10モード共振器装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のTMO10モード共振器装置を用いた発振器装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載のTMO10モード共振器装置を用いた送受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【国際公開番号】WO2005/006483
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511508(P2005−511508)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009539
【国際出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/009539
【国際出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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