説明

UV硬化性ポリウレタンに基づく水性床被覆物

本発明は、木製基材を被覆するための方法、320nm〜450nmの波長を有する放射線により硬化可能な被覆組成物、およびそのようにして製造された被覆生成物を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
UV硬化性被覆物は、被覆物工業において最も速い成長分野の1つである。近年、UV技術は、ファイバー光学、光学接着剤、感圧接着剤、UV硬化トップコートのような自動車用途、およびUV硬化性パウダー被覆物のような多くの市場区分に進出している。この発展の原動力は主に、被覆物および硬化方法の生産性における向上についての追求である。日曜大工用途におけるUVランプの使用に関連した安全性の関心ならびに経済的制約は、高強度光源の使用を恐らく不可能とする。電磁スペクトルのUV−A領域においてのみ放射する比較的安価な低強度ランプが用いられ、従って、新たな課題が樹脂開発者および配合業者にもたらされる。
【背景技術】
【0002】
UV硬化性被覆組成物は当業者に既知であり、米国特許第5684081号に放射線硬化性水性分散体が記載されているが、該参考文献には、用いるべき放射線の波長については記載されていない。また、極めて低いUV−B含量を有し、および実質的にUV−C含量を有さないUV放射線を用いて硬化可能な組成物も既知である(例えば米国特許出願公開第2003/0059555号および米国特許第6538044号参照)。米国特許第6538044号に記載の組成物は、ウレタン化学に基づかない、非水性の芳香ラッカー被覆物である。米国特許出願公開第2003/0059555号には、プライマーとして有用な溶媒系組成物が記載されている。該組成物は、非水性であり、UV放射線への暴露後およびその後の被覆部分の研磨前に、有機溶媒で被覆物を拭き取ることを必要とする。
【0003】
米国特許第6559225号には、ラッカーおよび被覆物に用いるための水性ポリウレタン分散体が記載されている。米国特許第6559225号には、UV硬化は記載されておらず、そこに記載の分散体は放射線硬化性バインダーと組み合わせることができることが示唆されている(第5欄17〜20行)。米国特許第6579932号には、ポリウレタン/アクリレートハイブリッド分散体および酸化乾燥基を有するポリウレタン樹脂の混合物である水性被覆組成物が記載されている。米国特許第6579932号にはUV硬化は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5684081号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0059555号明細書
【特許文献3】米国特許第6538044号明細書
【特許文献4】米国特許第6559225号明細書
【特許文献5】米国特許第6579932号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、被覆組成物をUV−A放射線を用いて安全かつ素早く硬化させ得る、木製基材、好ましくは木製床、より好ましくは予め設置された木製床を被覆するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水性被覆組成物を基材に塗布する工程、および該被覆基材を、320nm〜450nmの波長を有する放射線に前記組成物を硬化するのに十分な時間暴露する工程を含む、木製基材を被覆するための方法を対象とし、前記水性被覆組成物は、
A)a)ヒドロキシル基を含有し、および約40〜約240のOH価を有する、約25〜89.8重量%(好ましくは約30〜約80重量%)の1以上のアクリレートポリマー、
b)i)イソシアネート基に対して反応性の1および/または2の官能基化合物およびii)カチオン性および/またはアニオン性であり、および/またはエーテル基含有量に起因して分散作用を有する基を含有する、0.1〜約20重量%(好ましくは約2〜約15重量%)の1以上の化合物、
c)約10〜約50重量%(好ましくは約15〜約40重量%)の1以上のジ−および/またはポリイソシアネート、
d)約5000までの数平均分子量、1.2〜2.2のOH官能価を有し、カチオン性またはアニオン性である基を含有せず、分散作用を有するのに十分な量のエーテル基を含有せず、およびエチレン性不飽和基を含有しない、0〜約30重量%(好ましくは約0〜20重量%)のジ−および/またはポリオール、および
e)約31〜約1000の数平均分子量を有する、約0.1〜約10重量%(好ましくは約0.5〜約7重量%)の1以上のジ−および/またはポリアミン
を含み、重量%は成分a)乃至e)の全量を基準とし、および合計で100%となる、ポリウレタン分散体、
B)約0.1〜約10重量%の1以上の光開始剤、および
C)約20〜約60重量%の水または水および溶媒の混合物
を含み、成分B)の重量%は成分A)の重量を基準とし、成分C)の重量%は成分A)の固形分を基準とする。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のポリウレタン分散体は、
A)a)ヒドロキシル基を含有し、および約40〜約240のOH価を有する、約25〜89.8重量%(好ましくは約30〜約80重量%)の1以上のアクリレートポリマー、
b)i)イソシアネート基に対して反応性の1および/または2の官能基化合物およびii)カチオン性および/またはアニオン性であり、および/またはエーテル基含有量に起因して分散作用を有する基を含有する、0.1〜約20重量%(好ましくは約2〜約15重量%)の1以上の化合物、
c)約10〜約50重量%(好ましくは約15〜約40重量%)の1以上のジ−および/またはポリイソシアネート、
d)約5000までの数平均分子量、1.2〜2.2のOH官能価を有し、カチオン性またはアニオン性である基を含有せず、分散作用を有するのに十分な量のエーテル基を含有せず、およびエチレン性不飽和基を含有しない、0〜約30重量%(好ましくは約0〜20重量%)のジ−および/またはポリオール、および
e)約0.1〜約10重量%(好ましくは約0.5〜約7重量%)の、約31〜約1000の数平均分子量を有する1以上のジ−および/またはポリアミン
を含む成分から調製されるポリウレタン水性分散体を含み、重量%は成分a)乃至e)の全量を基準とし、および合計で100%となる。
【0008】
アクリレートポリマーa)はポリカルボン酸またはその無水物(例えばアジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸およびフタル酸等)、ジ−および/またはより高い官能性ポリオール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、アルコキシル化ジ−またはポリオール等)およびアクリル酸および/またはメタクリル酸から誘導された重縮合生成物である。重縮合後、過剰のカルボキシル基を、エポキシドと反応させ得る。ヒドロキシル基を含有するアクリレートポリマーa)の製造は、米国特開4206205号、独国特許出願公開第4040290号、独国特許出願公開第3316592号および独国特許出願公開第3704098号および「UV & EB Curing Formulations for Printing Inks, Coatings & Paints」、R. Holman and P. Oldring編集、SITA Technologyにより出版、ロンドン(英国)、1988年、p.36以下参照に記載されている。反応は、OH価が約40〜約240の範囲内になると終了させるべきである。ヒドロキシル基を含有するポリエポキシアクリレートポリマーまたはヒドロキシル基を含有するポリウレタンアクリレートポリマーを用いることも可能である。C=C%は一般的に成分a)の重量を基準として0.1〜10モル/kgの範囲であってよい。
【0009】
分散作用がカチオン的に、アニオン的におよび/またはエーテル基により行われる化合物b)は、例えばスルホニウム基、アンモニウム基、カルボキシレート基、スルホネート基および/またはポリエーテル基を含有し、かつイソシアネート反応性基を有する化合物である。好適なイソシアネート反応性基はヒドロキシル基およびアミン基である。化合物b)の代表例は、ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、2−アミノエチルアミノエタンスルホン酸、アルコールで開始したポリオキシエチレングリコールおよびポリオキシプロピレン/オキシエチレングリコールが挙げられる。ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸およびポリエチレングリコールモノメチルエーテルは特に好ましい。
【0010】
成分c)は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式ジ−および/またはポリイソシアネートおよびそのようなイソシアネートの混合物であってよい。好ましいものは、式R(NCO)(式中、Rは炭素原子4〜12個を有する脂肪族炭化水素残基、炭素原子6〜15個を有する脂環式炭化水素残基、炭素原子6〜15個を有する芳香族炭化水素残基または炭素原子7〜15個を有する芳香脂肪族炭化水素残基を示す)で示されるジイソシアネートである。適当なイソシアネートの特定の例として、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,3,3−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート、1−ジイソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチル−m−または−p−キシリレンジイソシアネート、およびトリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネートならびにそれらの混合物を包含する。
【0011】
イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、ウレチジオン(uretidione)基またはカルボジイミド基を有するポリイソシアネートはまた、イソシアネート成分として有用である。そのようなポリイソシアネートは、3以上のイソシアネート官能価を有し得る。そのようなイソシアネートは、ジイソシアネートの三量化またはオリゴマー化またはジイソシアネートとヒドロキシル基またはアミン基を含有する多官能性化合物との反応によって調製される。好ましいものは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートである。さらに適当な化合物は、ブロックトポリイソシアネート、例えば1,3,5−トリス−[6−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノ)ヘキシル]−2,4,6−トリオキソ−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン等である。
【0012】
ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートおよびそれらの混合物は、現在好ましいイソシアネートである。
【0013】
ジ−および/またはポリオールd)として、5000までの分子量を有する物質を用いることが可能である。適当なジオールとして、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。より高分子量のポリオールの例は、約1.8〜約2.2の平均OH官能価を有すべきである周知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールである。適切な場合には、単官能性アルコール、例えばエタノールおよびブタノールを使用することも可能である。
【0014】
ジ−および/またはポリアミンe)を用いて分子量を増加させる。この反応が水性溶媒中で進行するので、ジ−および/またはポリアミンは、水と比べてイソシアネート基に対してより反応性でなければならない。記載し得る化合物は、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−および1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、アミノ官能性ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド(商標名Jeffamineで市販)、トリエチレンテトラミンおよびヒドラジンである。エチレンジアミンが特に好ましい。また、特定の割合でモノアミンを加えることも可能であり、例としてブチルアミンおよびエチルアミンが挙げられる。
【0015】
本発明によるポリエステルアクリレート/ウレタン分散体は、先行技術から知られている任意の方法、例えば乳化/剪断力、アセトン、プレポリマー混合、溶融/乳化、ケチミンおよび固体自然分散法またはそれらの派生方法を用いて製造し得る(「Methoden der Organischen Chemie」、Houben−Weyl、第4巻、volume E20/パート2、第1682頁、Georg Thieme Verlag、シュトゥットガルト、1987年参照)。実験はアセトン法が最も適当であることを示す。
【0016】
成分a)、b)およびd)を、中間体(ポリエステルアクリレート/ウレタン溶液)を製造するために反応器へ最初に導入し、イソシアネート基に対して不活性であるが水混和性の溶媒で希釈し、比較的高温、特に50℃〜120℃の範囲に加熱する。適当な溶媒は、アセトン、ブタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリルおよび1−メチル−2−ピロリドンである。イソシアネート付加反応を促進させる既知の触媒、例えばトリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、錫ジオクトエートまたはジブチル錫ジラウレートを最初に導入し得る。ポリイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート類をそれら混合物に添加する。全てのイソシアネート基のモルに対する全てのヒドロキシル基のモルの比は、一般的に0.3および0.95の間、特に0.4および0.9の間である。
【0017】
ポリエステルアクリレート/ウレタン溶液がa)、b)、c)およびd)から製造されると、アニオン性またはカチオン性分散作用を有する成分b)は、塩の形成が出発分子中で既に起こっていない限り、塩を形成する。アニオン含有成分の場合には、塩基、例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムを有利に用い得、カチオン含有成分の場合には、硫酸ジメチルエステルまたはコハク酸を有利に用い得る。成分b)が充分な量のエーテル基を含有する場合には、中和段階は省略される。
【0018】
最終反応段階では、分子量における増加およびポリエステルアクリレート/ウレタン分散体の形成が水性媒体中で起こり、成分a)、b)、c)およびd)から調製されたポリエステルウレタン溶液を成分e)を含有する分散水中に激しく撹拌導入するか、または逆に水/成分e)混合物をポリエステルウレタン溶液中に撹拌導入する。次いで、分子量はアミン水素と未だ存在するイソシアネート基との反応によって増加し、分散体も形成される。用いる成分e)の量は、未だ存在する未反応イソシアネート基に依存する。
【0019】
必要に応じて、溶媒を蒸留によって除去し得る。次いで、分散体は、約20〜約60%、好ましくは約30〜約55重量%の固形分を有する。
【0020】
光開始剤
光開始剤は、実質的に任意の光開始剤であってよい。種々の光開始剤を、本発明の放射線硬化性組成物に使用することができる。通常の光開始剤は、放射線エネルギーに暴露された場合にフリーラジカルを生成する種類である。適当な光開始剤として、例えば芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノン等が挙げられる。さらに適当な化合物として、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、アントラキノンおよびそれらの誘導体、ベンジルケタールおよびヒドロキシアルキルフェノンが挙げられる。さらなる適当な光開始剤の例として、2,2−ジエトキシアセトフェノン;2−または3−または4−ブロモアセトフェノン;3−または4−アリル−アセトフェノン;2−アセトナフトン;ベンズアルデヒド;ベンゾイン;アルキルベンゾインエーテル;ベンゾフェノン;ベンゾキノン;1−クロロアントラキノン;p−ジアセチル−ベンゼン;9,10−ジブロモアントラセン;9,10−ジクロロアントラセン;4,4−ジクロロベンゾフェノン;チオキサントン;イソプロピルチオキサントン;メチルチオキサントン;α,α,α−トリクロロ−パラ−t−ブチルアセトフェノン;4−メトキシベンゾフェノン;3−クロロ−8−ノニルキサントン;3−ヨード−7−メトキシキサントン;カルバゾール;4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン;フルオレン(fluoroene);フルオレノン(fluoroenone);1,4−ナフチルフェニルケトン;1,3−ペンタンジオン;2,2−ジ−sec−ブトキシアセトフェノン;ジメトキシフェニルアセトフェノン;プロピオフェノン;イソプロピルチオキサントン;クロロチオキサントン;キサントン;マレイミドおよびそれらの誘導体;およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの適当な光開始剤は、Cibaから市販されており、これには、Irgacure 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、Irgacure 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド)、Irgacure 1850(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルフェニル−ホスフィンオキシドおよび1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンの50/50混合物)、Irgacure 1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルフェニル−ホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの25/75混合物)、Irgacure 907(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホロノプロパン−1−オン)、Darocur MBF(フェニルグルコキシル酸メチルエステル)およびDarocur 4265(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの50/50混合物)が含まれる。上記のリストは例証にすぎず、任意の適当な光開始剤を除外するものではない。
【0021】
当業者には、光開始剤を有効に用いる濃度が知られており、その濃度は通常、放射線硬化性被覆組成物の約10重量%を越えない。
【0022】
光化学の当業者であれば、光活性化剤を前述の光開始剤と組み合わせて用いてよいこと、およびこのような組み合わせを用いる場合に相乗作用が時に得られることを十分認識している。光活性化剤は当該分野でよく知られており、それらがどのような化合物であるか、およびそれらの有効な濃度を示すためにさらに説明する必要はない。それでもなお、適当な光活性化剤の具体例として、メチルアミン、トリブチルアミン、メチルジエタノールアミン、2−アミノエチルエタノールアミン、アリルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンタジエニルアミン、ジフェニルアミン、ジトリルアミン、トリキシリルアミン、トリベンジルアミン、n−シクロヘキシルエチレンイミン、ピペリジン、N−メチルピペラジン、2,2−ジメチル−1,3−ビス(3−N−モルホリニル)−プロピオニルオキシプロパン、およびそれらの混合物を挙げることができる
【0023】
他の添加剤
当該分野で知られているように、および被覆物についての用途に応じて、さらなる添加剤を用いることができる。このような添加剤として、乳化剤、分散剤、流動助剤、増粘剤、消泡剤、脱気剤、顔料、充填剤、均展剤および湿潤剤が挙げられる。さらに、被覆すべき物品が、被覆部分が放射線に曝露され得ないような形状である場合には、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基または水分により架橋する物質を添加することが可能である。このような物質は当業者に既知であり、これらとして、カルボジイミド、アジリジン、多価カチオン、メラミン/ホルムアルデヒド、エポキシド、およびイソシアネートが挙げられる。適当なカルボジイミドは既知であり、例えば米国特許第5104928号、同第5574083号、同第5936043号、同第6194522号、同第6300409号および同第6566437号(これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。適当な親水性イソシアネートはまた、当該分野において既知であり、市販されている。市販のイソシアネートの1つは、Bayhydur 2336(Bayer Polymers LLC社製の親水性ポリエーテル変性ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー)である。このような架橋剤を用いる場合、成分A)の合計重量を基準として0.1〜35重量%の量で用いるべきである。
【0024】
塗布および硬化
通常、成分A)を調製し、次いで、成分C)および任意の他の添加剤をそこに添加する。本発明の組成物は、噴霧、ロール塗、ナイフ塗布、流し込み、はけ塗り、浸漬により、非常に多様な基材上に塗布し得る。次いで、存在する水を、通常のオーブン中で、約20〜約110℃、好ましくは約35〜約60℃の温度で、約1〜約10分間、好ましくは約4〜8分間加熱することにより蒸発除去する。水を、赤外線またはマイクロ波のような放射線源を用いて蒸発除去することもできる。
【0025】
水を加熱乾燥すると、被覆基材を、少なくとも300nmの波長を有するUV放射線、好ましくは約320〜約450nmの波長を有する放射線に暴露する。表面と放射線源との間の距離は、光源の強度に依存し、通常3フィート以下とすべきである。被覆基材を放射線に暴露する時間の長さは、放射線の強度および波長、放射線源からの距離、処方物中の含水量、硬化環境の温度および湿度に依存するが、通常10分未満であり、わずか0.1秒程度であってよい。
【0026】
硬化被覆物は、そのサンドアビリティ(sandability)により区別される。
【0027】
上記の通り、本発明の組成物は、少なくとも300nm、好ましくは約320〜約450nmの波長を有する放射線源を用いて硬化可能である。放射線は、任意の適当な供給源、例えば減少した赤外線放射を有するUVランプあるいは赤外線放射を除くフィルターを有するUVランプまたは記述の波長で放射線を放射するいわゆるLED(発光素子)によって供すことができる。特に有用な市販の装置として、次のものが挙げられる:Panacol UV H−254ランプ(Panacol−Elosol GmbHから市販)−320〜450nmのスペクトル波長を有する250Wオゾンフリー鉄ドープ金属ハライドランプ;Panacol UVF−450(用いる黒色、青色または透明フィルターに応じて320nm〜450nm);Honle UVA HAND 250 CUL(Honle UV America Incから市販)〜320〜390nmの最大強度UVA範囲を放射;PMP 250ワット金属ハライドランプ(Pro Motor Car Products Incから市販);Cure−Tek UVA−400(H&S Autoshotから市販)(これは400ワット金属ハライド球を有し、該ランプアセンブリは、青色、淡青色または透明のような異なったフィルターを取り付けてランプ源からの赤外線を制御/排除することができる);Cure−Tek UVA−1200(H&SAutoshotから市販)(これは1200ワット金属ハライド球を有し、該ランプアセンブリは、青色、淡青色または透明のような異なったフィルターを取り付けてランプ源からの赤外線を制御/排除することができる);Con−Trol−Cure Scarab−250 UV−Aショップランプシステム(UV Process Supply Incから市販−320〜450nmのスペクトル波長出力を有する250W鉄ドープ金属ハライドランプを有する);Con−Trol−Cure−UV LED Cure−All 415(UV Process Supply Inc.から市販−2.5〜7.95Wの作動ワット数範囲で415nmのスペクトル波長);Con−Trol−Cure−UV LED Cure−All 390(UV Process Supply Inc.から市販−2.76〜9.28Wの作動ワット数範囲で390nmのスペクトル波長);UV H253 UVランプ(UV Light Technologiesから入手可能−黒色ガラスフィルターを取り付けて300と400nmの間のスペクトル波長を生じさせる、250W鉄ドープ金属ハライドランプを含むユニット)。
【0028】
本発明の組成物の急速な硬化速度により、「ウォークビハインド型」ランプを用いることも可能であり、これは、作業者が被覆組成物を木製床にその場で塗布し、作業者が床を通過する場合、ランプの後ろを歩き、硬化物を硬化させ、直ぐに硬化表面上を歩くことを可能とする。
【0029】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を説明することを意図する。特記のない限り、全てのパーセンテージおよび部は重量による。
【実施例】
【0030】
実施例では、以下の物質を用いた:
〔B348〕
Byk 348、BYK−Chemie USAから市販のポリエーテルシロキサン流動助剤。
【0031】
〔LW44〕
Borchers LW44、Borchersから市販の、非イオン性ポリウレタンをベースとする増粘剤。
【0032】
〔D1293〕
Dehydran 1293、Cognis Corporationから市販のポリシロキサン消泡および脱気剤。
【0033】
〔IRG819〕
Irgacure 819DW、Ciba Specialty Chemicalsから市販の光開始剤。
【0034】
PU分散剤A:31.81部のIPDIおよび15.9部のHDIの混合物を、133.12部のポリエステルアクリレート(BASFから市販のOH価82を有するLaromer LR 8799)、3.24部のネオペンチルグリコール、8.34部のジメチロールプロピオン酸、0.19部のジブチル錫ジラウレートおよび48.16部のアセトンの還流混合物へ添加する。該溶液を撹拌しながら5時間還流する。混合物を冷却後、5.04部のトリエチルアミンを40℃で添加する。室温に冷却後、該溶液を2.99部のエチレンジアミンを含有する水299.32部中で激しく撹拌する。次いで、分散体が自然に形成される。イソシアネート基が完全に反応すると、溶媒を真空蒸留により除去する。得られた分散体は39.13重量%の固形分を有する。
【0035】
実施例1:
250mlビーカー中において、60gのポリウレタン分散体Aと、0.50gのByK 348および0.80グラムのDehydran 1293とを、Dispermat CV分散機を1000rpmで用いて撹拌下で組み合わせた。該混合容器に、添加前に組み合わせたBorchigel LW−44(0.09グラム)および水道水(36.8グラム)の溶液を添加(1500rpmにて撹拌下)した。該溶液を10分間混合し、lrgacure 819−DW(1.2グラム)を混合容器に500rpmでの撹拌下で添加し、該溶液を5分間混合して、均質性を確保した。該処方物をプラスチック瓶にろ過投入し、一晩寝かせて消泡させた。
【0036】
被覆すべき木製パネルを、VM&P ナフサ/イソプロパノール溶液(1:1)で湿らせた紙タオルで拭き取ることにより清掃した。次いで、処方UV硬化性被覆物を、パネルに約4ミル(湿潤膜厚)で塗装用刷毛を用いて塗布した。
【0037】
被覆物塗布後、パネルを50℃で10分間フラッシュして水を除去した。該被覆物を、H&S Autoshot製1200ワットUV−Aランプを用いて硬化した。ランプを、コンベヤベルトから1.5インチのところに設置した。硬化の性能を、1分あたり40フィートおよび60フィートの両方でベルトを稼働することにより試験した。これはそれぞれ、250mJ/cmおよび200mJ/cmの全エネルギー密度を生じさせる。
【0038】
上記の処方物を、ペンジュラム硬度、耐化学薬品性(MEK二重摩擦)、耐摩耗性(Taber CS−10)および黒色足跡耐性(BHMR)においてその場塗布した現在の木製床用2成分水性被覆物と比較した。その結果を以下に示す:
【0039】
【表1】

【0040】
本発明による系の硬度は、UV硬化直後に得られるが、現在の2成分技術は、辛うじて同等の硬度を得るのに1週間を必要とする。本発明による系の耐化学薬品性は、摩耗および「0」〜「5」の等級でのBHMR性能(「0」は、ヒールまたはFormula 409(登録商標)クリーナーによる足跡の除去後に表面損傷または光沢低下を示さず、「5」は、被覆物破壊および/または基材からの層間剥離を示す)において実質的な変化を伴わずに3倍向上する。
【0041】
例示の目的で本発明を上記に詳しく説明したが、そのような詳細は、単なる例示目的にすぎず、請求の範囲によって限定され得ることを除き、本発明の精神および範囲から逸脱せずに当業者によって変更され得ると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性被覆組成物を基材に塗布する工程、および該被覆基材を320nm〜450nmの波長を有する放射線に前記組成物を硬化するのに十分な時間暴露する工程を含む、木製基材を被覆するための方法であって、前記水性被覆組成物は、
A)a)ヒドロキシル基を含有し、および約40〜約240のOH価を有する、約25〜89.8重量%(好ましくは約30〜約80重量%)の1以上のアクリレートポリマー、
b)i)イソシアネート基に対して反応性の1および/または2の官能基化合物およびii)カチオン性および/またはアニオン性であり、および/またはエーテル基含有量に起因して分散作用を有する基を含有する、0.1〜約20重量%(好ましくは約2〜約15重量%)の1以上の化合物、
c)約10〜約50重量%(好ましくは約15〜約40重量%)の1以上のジ−および/またはポリイソシアネート、
d)約5000までの数平均分子量、1.2〜2.2のOH官能価を有し、カチオン性またはアニオン性である基を含有せず、分散作用を有するのに十分な量のエーテル基を含有せず、およびエチレン性不飽和基を含有しない、0〜約30重量%(好ましくは0〜約20重量%)のジ−および/またはポリオール、および
e)約31〜約1000の数平均分子量を有する、約0.1〜約10重量%(好ましくは約0.5〜約7重量%)の1以上のジ−および/またはポリアミン
を含み、重量%は成分a)乃至e)の全量を基準とし、および合計で100%となる、ポリウレタン分散体、
B)約0.1〜約10重量%の1以上の光開始剤、および
C)約20〜約60重量%の水または水および溶媒の混合物
を含み、成分B)の重量%は成分A)の重量を基準とし、成分C)の重量%は成分A)の固形分を基準とする、前記方法。
【請求項2】
成分a)を約30〜約80重量%の量で用い、成分b)を約2〜約15重量%の量で用い、成分c)を約15〜約40重量%の量で用い、成分d)を約0〜約20重量%の量で用い、および成分e)を約0.5〜約7重量%の量で用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分a)は、成分a)の重量を基準として約0.1〜約10モル/kgのC=C結合を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
成分A)は、約30〜約55重量%の固形分を有する、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−517705(P2011−517705A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549657(P2010−549657)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/001363
【国際公開番号】WO2009/111015
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】