説明

Vベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造

【課題】塵埃等の侵入を低減でき、車体の側方、パワーユニットの上方への張り出しを抑制できるVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造。
【解決手段】車両1の後輪6の側方にVベルト式無段変速機30を備えるパワーユニット5において、冷却シュラウド65で覆われた内燃機関2のシリンダ部52が、Vベルト式無段変速機の駆動プーリ33を取り付けたクランク軸51から車両前方に向けて設けられ、駆動プーリの外側面に設けられた冷却ファン93の側方に冷却風を導く冷却風通路90が、Vベルト式無段変速機を収納する変速室32と接続して車両前方へ延設された冷却風ダクト80内に連通して形成され、冷却風ダクトの上流側は、冷却シュラウドの側面に沿って上方に屈曲した後、後方に屈曲してコの字状に折り返し、車両後方に向けた冷却風取り入れ口82を備えたことを特徴とするVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の小型車両に搭載されるパワーユニットのVベルト式無段変速機における、冷却風取り入れ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の車両の後輪の側方に備えられた、パワーユニットのVベルト式無段変速機において、Vベルト式無段変速機を収納したパワーユニットケース内に冷却風を取り入れるに際し、塵埃等の異物が侵入することを防止するために、パワーユニットの上部に、車両後方に向けて冷却風取り入れ口が開口する冷却風導入通路を設けるものが、例えば、下記特許文献1などに示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−17695号公報(第4図、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されるような、パワーユニットの側方から上部に延出し、後ろ向きに冷却風取り入れ口を開口させた冷却風導入通路を設けたものは、車両前方からの泥水、塵埃等の侵入に対しては配慮されているものの、冷却風取り入れ口が後輪に近づくため後輪の巻き上げ塵埃に対しては更なる改善が望まれるものであった。また、車両の側方、パワーユニットの上方への張り出しが大きくなるものであった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決し、車両前方からの塵埃等のほか、後輪の巻き上げによる塵埃等の侵入を低減できるとともに、車体の側方、パワーユニットの上方への張り出しを抑制できるVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両の後輪の側方にVベルト式無段変速機を備えるパワーユニットにおいて、冷却シュラウドで覆われた内燃機関のシリンダ部が、前記Vベルト式無段変速機の駆動プーリを取り付けたクランク軸から車両前方に向けて設けられ、前記駆動プーリの外側面に設けられた冷却ファンの側方に冷却風を導く冷却風通路が、前記Vベルト式無段変速機を収納する変速室と接続して車両前方へ延設された冷却風ダクト内に連通して形成され、同冷却風ダクトの上流側は、前記冷却シュラウドの側面に沿って上方に屈曲した後、後方に屈曲してコの字状に折り返し、車両後方に向けた冷却風取り入れ口を備えたことを特徴とするVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造において、前記パワーユニットは、前記駆動プーリとギア結合された始動モータが、前記後輪と前記冷却風取り入れ口との間で前記駆動プーリの上方に配設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造において、前記冷却風ダクトは、前記冷却シュラウドに対して所定距離離間して配置され、同冷却風ダクトと同冷却シュラウドとの間にスロットルケーブルが保持されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造において、前記冷却風ダクトは、車両外方の側部をダクトカバーで覆われ、前記冷却風取り入れ口側の上流部が、前記ダクトカバーより上方へ延出して車両後方へ指向し、後方及び外側方に前記冷却風取り入れ口が開口したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造において、前記冷却風ダクトは、車両前方向きのその前側壁が斜め後上がりに、前記冷却シュラウドの下部から上部に亘って傾斜して配置され、同冷却風ダクトの上側壁が前記パワーユニットの上部に配置されたエアクリーナケースの前向きの吸入口に指向されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造において、前記冷却風ダクトの前記冷却風取り入れ口の開口縁と前記エアクリーナケースの吸入口縁とは、車体側面視で上下に近接して並んで配置されたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造において、前記変速室の外側殻を構成し、前記冷却ファンを覆う変速機外側ケースは、前記駆動プーリの車両前方側にケース開口部を備え、前記冷却風ダクトは、同ケース開口部との嵌合接続部を有し、同嵌合接続部において環状接続部材を介して前記ケース開口部にインロー嵌合され位置決めされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明のVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造によれば、冷却ダクトをシリンダ部の冷却シュラウドの側面に沿って配置したので、車体の側方、パワーユニットの上方への張り出しを抑制しながら、且つ、冷却風取り入れ口の後輪に対する距離が大きくなり、後輪の巻き上げによる塵埃等の冷却風取り入れ口への侵入が低減する。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、始動モータが高い位置に配置されて被水し難くなり、且つ、始動モータとその減速ギア部を覆う変速機外側ケースとそのサイドカバーの膨らみが、後輪からの塵埃侵入防止の効果を奏し、部材配置の有効活用がなされる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、スロットルケーブルのレイアウトスペースが確保される。
特に、冷却風ダクトと冷却シュラウドとの間の冷却風ダクトの背面スペースをスロットルケーブル・クランパの基端部取り付け部として有効利用すれば、スロットルケーブルを、シリンダ部の冷却シュラウド側方の空間とその前方の車体フレームとの間でパワーユニットの揺動に対する撓みを確保して、適切にレイアウトすることが可能となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の効果に加え、ダクトカバーにより冷却風ダクトが保護されるとともに、冷却風取り入れ口周囲の通風が良好となり、冷却風取り入れ口への内燃機関の熱の侵入が防止される。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の効果に加え、コの字状に延出した冷却風ダクトの前側壁により、前輪で跳ね上げられた泥水等を遮る構造となり、エアクリーナケースの吸入口は前向きに設けられて後輪から遠ざけられるので、吸込口を大きくとれる。また、エアクリーナケースはパワーユニットの上部に設けられてクリーナ容量を増大でき、冷却風ダクトの上側壁が吸込口を指向することと相俟って、効率の良い内燃機関の吸気構造となる。
【0018】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、塵埃の侵入を防止するリヤフェンダ、インナフェンダ、車体カバー等の部材の配置において、防塵対象を1箇所に集中させることで、車両の車体構造に対する制約が低減し、外観等のデザイン性を高めることができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の効果に加え、変速機外側ケースのケース開口部を車両前方側に設けたことにより、冷却風ダクトの車体側方への張り出しが防止され、冷却風ダクトが環状接続部材を介してケース開口部にインロー嵌合され位置決めされるので、簡易な接続構造としながら、組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の全体左側面図である。
【図2】本実施形態に係る自動二輪車のパワーユニットの左側面図である。
【図3】本実施形態に係る自動二輪車のパワーユニットおよびエアクリーナケースの、左後方から見た外観斜視図である。
【図4】本実施形態のパワーユニットの冷却シュラウド、変速機外側ケース、冷却風ダクトおよびパワーユニットケース、ならびにエアクリーナケースを示す、要部左側面図である。
【図5】図4中V−V矢視で示す、本実施形態のパワーユニットの前半部の断面展開図である。
【図6】本実施形態の冷却風ダクトの、後側立面を示す説明図である。
【図7】本実施形態の冷却風ダクトの、右側立面を示す説明図である。
【図8】冷却風ダクトの嵌合接続部用のシール部材(環状接続部材)の説明図である。
【図9】本実施形態のダクトカバーの、外観を示す説明図である。
【図10】本実施形態の変速機外側ケースの、右側面図(内面図)である。
【図11】図2中XI矢視による、本実施形態に係るパワーユニットの底部の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るVベルト式無段変速機の冷却風取り入れ構造を、図1から図11に基づき説明する。
【0022】
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係るパワーユニットを、車両、特に自動二輪車等の小型車両に搭載した状態での車両の向きに従うものとする。図中、矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
また、図中、黒小矢印はVベルト式無段変速機の冷却風の流れを、白抜き小矢印はシリンダ部冷却風の流れを、模式的に示す。
【0023】
図1は、本実施形態に係る車両として、スクータ型の自動二輪車1の全体左側面を示す。自動二輪車1は、内燃機関2と後輪6への動力伝達ケース部3とが一体化されて、車体フレーム4に対して揺動自在に取り付けられ、駆動輪である後輪6を軸支するパワーユニット5を、車体フレーム4の下方に備えている。
【0024】
本実施形態の自動二輪車1では、前輪7を前輪軸7aを介して軸支する左右一対のフロントフォーク41が、車体フレーム4の前端部に位置するヘッドパイプ40に、ステアリングステム42を介して操舵可能に枢支される。
また、フロントフォーク41に支持されたフロントフェンダ8が、前輪7の上方を覆い、ヘッドパイプ40の周囲は、フロントフェンダ8と別体に構成された車体カバーであるフロントカバー9で覆われている。
【0025】
フロントカバー9は、ヘッドパイプ40を介して車体フレーム4側へ取り付けられ、その前部下方はフロントフェンダ8の上面に隣接して、上方を前方へ延出する棚状の延出部10をなしている。延出部10の先端側には、前面にヘッドライト11、側面にウインカ12が設けられている。
ヘッドパイプ40に回動自在に支持されているステアリングステム42は、フロントカバー9の上方へ延出し、ハンドルカバー13で覆われるとともに、先端部がハンドルカバー13から側方へ延出して操舵用のステアリングハンドル14となっている。ハンドルカバー13内には上方に計器類15等が設けられている。
【0026】
車体フレーム4は、ヘッドパイプ40から斜め下がり後方へメインフレーム43が接続し、その下部において左右一対のメインフレーム43A、43Aに分岐してほぼ水平後方に延出して、ヘッドパイプ40と乗員用シート16との間を低部として跨ぎ易さを向上させた鞍部44を形成する。
鞍部44上には、ステップフロア17がフロントカバー9の下部後方と接続して設けられている。
【0027】
メインフレーム43A、43Aは、ステップフロア17の後方で屈曲部45をなして、左右一対の後部メインフレーム43B、43Bとして後方へ斜め上がりに延出した後、略水平後方に延出する。
後部メインフレーム43B、43Bには、乗員用シート16と荷台18等が支持されている。
左右対をなすメインフレーム43A、43A、後部メインフレーム43B、43Bはそれぞれ、車幅方向のフレームによって左右連結される。
【0028】
なお、図1中の符号19は、パワーユニット5に取り付けられ、後輪6の上部を覆うインナフェンダである。符号20はリヤフェンダ、21はテールライト、22は後部ウインカ、23はリヤクッション、24はスタータキックアーム、48はメインスタンド、49はサイドスタンドである。
サイドスタンド49は、自動二輪車1の後部メインフレーム43Bに取り付けられて、車体後部側方に設けられ、冷却風ダクト80の車両外方側に位置する。
【0029】
パワーユニット5は、その前部の内燃機関2と、後部左側で後輪6の左側方に配置される動力伝達ケース部3とを一体化して構成され、内燃機関2は、単気筒の4ストロークサイクルの強制空冷式内燃機関であり、パワーユニットケース50においてクランク軸51を自動二輪車1の車幅方向に配向させている。
また、内燃機関2は、パワーユニットケース50に、シリンダ部52としてシリンダブロック53とシリンダヘッド54が順次積み重ねられて、略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で、突出するように一体に締結されて設けられている(図5参照)。
【0030】
内燃機関2から後方にかけては、後輪6の左側方に位置して、動力伝達ケース部3に備えられる動力伝達機構としての、Vベルト式無段変速機30とその後部に設けられた歯車式の減速機構31とが備えられ、減速機構31に駆動輪としての後輪6が軸支される。
【0031】
図1、およびパワーユニット5等の要部を拡大して示す図2、図3においては、パワーユニット5は、Vベルト式無段変速機30を収納する後述の変速室32の外側殻体となる変速機外側ケース56(図56参照)が、Vベルト式無段変速機30の冷却風を取り入れるための冷却風ダクト80を取り付け、それらの外側をサイドカバー95とダクトカバー96で覆われた状態で示されている(図5参照)。
【0032】
パワーユニット5は、パワーユニットケース50の前方下部に左右一対のハンガー部55、55を備えており、一方、自動二輪車1のステップフロア17の後方において、メインフレーム43A、43Aの屈曲部45には、左右一対の支持ブラケット46、46が接合されている。
パワーユニット5は、その前方下部のハンガー部55、55において、それぞれ車両前後方向に延びる懸架リンク部47を介して、メインフレーム43A、43Aの支持ブラケット46、46に上下揺動可能に支持される。
一方、パワーユニット5の後部は、後輪6の後輪軸6aを軸支するとともに、リヤクッション23を介して後部メインフレーム43B、43Bに近接離反可能に支持される。
【0033】
後輪6の左側で、パワーユニット5の動力伝達ケース部3の上部には、エアクリーナケース26が支持されており、内燃機関2のシリンダヘッド54の上部から延出した吸気管27が後方に湾曲してスロットルボディ28を介してエアクリーナケース26に接続される。
また、シリンダヘッド54から下方に向けて図示しない排気管が取り付けられ、排気管は右側へ迂回して車体右側に配設された図示しないサイレンサに接続している。
【0034】
図4は、図1、図2に示されるパワーユニット5、エアクリーナケース26等の要部左側面図であるが、図1、2と異なり、サイドカバー95とダクトカバー96を外した状態で、シリンダ部52の冷却シュラウド65、変速機外側ケース56、冷却風ダクト80およびパワーユニットケース50の一部、ならびにエアクリーナケース26の左側面外観を示す。
図5は、図4中に示すV-V矢視による、パワーユニット5の前半部の断面展開図であり、冷却風ダクト80、サイドカバー95、ダクトカバー96は、略図示している。
【0035】
図5に示されるように、パワーユニットケース50は、左右割りの左ユニットケース50Lと右ユニットケース50Rとを合体して構成されるもので、右ユニットケース50Rは、クランクケースの右半体、すなわち右クランクケース部をなす。
【0036】
左ユニットケース50Lは、前部の左クランクケース部50La、中央の変速機内側ケース部50Lb、後部の減速機ケース部50Lc(図1参照)からなる。
前部の左クランクケース部50Laは右側が開放面をなし、右ユニットケース50Rと突き合わされて締結されて内燃機関2のクランクケースを構成する。
左クランクケース部50Laと右ユニットケース50Rによって形成されるクランクケースの下部は、オイルパン部110となっている(図2、図5参照)。
【0037】
中央の変速機内側ケース部50Lbは、左側が開放面をなし、開放面は、ともに変速室32の殻体をなす変速機外側ケース56により覆われ、変速室32の内部には、Vベルト式無段変速機30が収納される。
後方の減速機ケース部50Lcは右側が開放面をなし、開放面は、減速機カバーにより覆われ、内部に歯車式の減速機構31(図1参照)が収納される。
すなわち、変速機内側ケース部50Lbと減速機ケース部50Lcとが、内燃機関2に対する動力伝達ケース3となる。
【0038】
Vベルト式無段変速機30が収納される変速機外側ケース56の前方には、前方に向けて突出する筒状部91が形成され、その前端が、略矩形のケース開口部92となっている。
ケース開口部92には、変速機外側ケース56内、すなわち変速室32内と連通する冷却風ダクト80が取り付けられ、Vベルト式無段変速機30に冷却風を導く冷却風通路90が、冷却風ダクト80内と変速室32とを連通して形成される。
【0039】
また、冷却風ダクト80の車両外方の側部を覆うダクトカバー96が、変速機外側ケース56に締結されて取り付けられ、変速機外側ケース56の外側には、図示しない防音材を介装してサイドカバー95が取り付けられており、サイドカバー95はダクトカバー96の締結部96aも覆っている。
なお、図1〜図3においては、パワーユニット5は、サイドカバー91とダクトカバー96を取り付けた左側面の外観が示されている。
【0040】
左クランクケース部50Laと右ユニットケース50Rとを殻体とするクランクケース内には、クランク軸51が車幅方向に配向されて、左右の主ベアリング57、57に回転自在に支持されており、クランク軸51から車両前方に向けてシリンダ部52が設けられ、シリンダブロック53のシリンダライナ58内を往復動するピストン59とクランク軸51のクランクピン51aとをコネクティングロッド60が連結している。
【0041】
クランク軸51の左右水平方向に延びた延出部のうち、右延出部には、ACジェネレータ61が設けられ、左延出部にはカムチェーン駆動スプロケット62とVベルト式無段変速機30の駆動プーリ33が設けられる。
【0042】
右ユニットケース50Rの右側面に設けられるACジェネレータ61は、右ユニットケース50Rの中央円筒部50Raより突出するクランク軸51の端部にACGボス61aを介して碗状のアウタロータ61bが固着され、その内周面に周方向に亘って磁石61cが配設される。磁石61cの内周側には、ステータコイル61dの巻回されたステータ61eが、中央円筒部50Raに固定されている。
【0043】
アウタロータ61bの右側面には、強制空冷ファン63が取り付けられ、その右側方をファンカバー64が覆う。ファンカバー64に連接されて、シリンダ部52、すなわちシリンダブロック53とシリンダヘッド54の周囲を覆う冷却シュラウド65が設けられる。
【0044】
ファンカバー64には、強制冷却ファン63に対向してシリンダ部冷却風入口64aが設けられている。強制冷却ファン63によってシリンダ部冷却風入口64aから吸引されたシリンダ部冷却風は、冷却シュラウド65の内部でシリンダ部52、すなわちシリンダブロック53およびシリンダヘッド54の周囲を巡り、シリンダ部52を冷却したのち、シリンダ部冷却風入口64aと反対側、すなわち冷却シュラウド65においてシリンダ部52の左下方側に設けられたシリンダ部冷却風排出口66(図4参照)から、温風となって、放出される。
【0045】
クランク軸51の左右水平方向に延びた延出部のうち、左延出部には、駆動プーリ33が設けられる。
クランク軸51の左端部の駆動プーリ33は、固定側プーリ半体33Aと可動側プーリ半体33Bとからなる。固定側プーリ半体33Aは、クランク軸51の左端部にスプライン嵌合しボス34を介して固着され、その右側に可動側プーリ半体33Bがクランク軸51にボスを介して軸支され、可動側プーリ半体33Bは軸方向に摺動して固定側プーリ半体33Aに接近・離反することができ、両プーリ半体34A、34B間にVベルト35が挟まれて巻き掛けられる。
【0046】
なお、駆動プーリ33の固定側プーリ半体33Aの外側面には、冷却ファン93が設けられており、駆動プーリ33の回転に伴って、冷却風を後述のように変速室32内に吸引するものとなる。
また、固定側プーリ半体33Aの外周には、始動モータ69(図4参照)の回転動力が伝動されるスタータ被動ギア94が設けられている。
【0047】
可動側プーリ半体33Bの右側で円環状シール部材36に近接した固定位置にカムプレート37が設けられており、その外周端に設けたスライドピース37aが可動側プーリ半体33Bの外周端に軸方向に形成したカムプレート摺動ボス部33Baに摺動自在に係合している。
可動側プーリ半体33Bのカムプレート37側側面は、カムプレート37側に向けてテーパしており、同テーパ面内側にカムプレート37に挟まれてドライウエイトローラ37bが収納されている。
【0048】
したがってクランク軸51の回転速度が増加すると、可動側プーリ半体33Bとカムプレート37間にあって共に回転するドライウエイトローラ37bが、遠心力により遠心方向に移動し、可動側プーリ半体33Bはドライウエイトローラ37bに押圧されて左方に移動して固定側プーリ半体33Aに接近し、両プーリ半体34A、34B間に挟まれたVベルト35を遠心方向に移動させ巻き掛け径を大きくするように構成されている。
【0049】
駆動プーリ33の巻き掛け径の変化に伴い、従動軸38(図5参照)側の従動プーリ39(図10参照)の巻き掛け径が逆に変化し、伝達回転速度の無段変速が行われることとなるが、Vベルト式無段変速機30の構造自体は公知のものであるので詳しい説明を省略する。
また、Vベルト式無段変速機30の従動軸38は、歯車式の減速機構31の入力軸となり、減速機構31の出力軸は後輪6の後輪軸6aと一体に結合される。
【0050】
図5に示されるように、シリンダブロック53に重ねて締結されたシリンダヘッド54は、さらにその上に被せられるシリンダヘッドカバー70との合せ面54aの内周側において、ピストン59の頂面が対向する燃焼室71の天井壁部分が大きく突出して、左右対をなす軸受壁72L、72Rが、互いに対向して形成されている。
【0051】
軸受壁72L、72Rは、合わせ面54aよりも大きく突出しており、この左右の軸受壁72L、72RにSOHC型式のバルブシステムからなる動弁機構73が設けられる。
シリンダヘッド54は水平に近い状態にまで大きく前傾しているので、左右の軸受壁72L、72Rは、合せ面54aより前方に突出しており、カムシャフト76が回転自在に、左右水平方向に指向して架設され、シリンダヘッド54の左側壁と左側の軸受壁72Lとの間にカムチェーン室74が形成されている。カムシャフト76のカムチェーン室74に突出した左端部に被動スプロケット77が嵌着されている。
【0052】
一方、クランク軸51に嵌着されたカムチェーン駆動スプロケット62と被動スプロケット77との間にカムチェーン78が、左クランクケース部50La,シリンダブロック53,シリンダヘッド54に連通して設けられるカムチェーン室74を貫通して架渡されて、クランク軸51の回転が半分の回転速度でカムシャフト76に伝達され、動弁機構73が駆動される。
動弁機構73自体は公知のものなので、説明を省略する。
【0053】
なお、シリンダヘッド54において、カムチェーン室74と反対側(右側)から燃焼室71に向かって斜めに点火プラグ79が嵌挿され、点火プラグ79にはプラグキャップ79aが装着されて斜め前方に突設される。
【0054】
以上のように構成されたパワーユニット5において、左ユニットケース50Lの変速機内側ケース部50Lbと、変速機外側ケース56とを殻体として形成される変速室32内に収容されるVベルト式無段変速機30を、冷却するための冷却風取り入れ構造を以下説明する。
本実施形態のVベルト式無段変速機30は、冷却風が変速室32内に強制的に流されることによりを冷却されており、冷却風を取り入れる構成が変速機外側ケース56の前部に設けられている。
【0055】
図5に、変速機内側ケース部50Lbの前部と変速機外側ケース56、および冷却風ダクト80の周辺の断面が示されるように、Vベルト式無段変速機30を収容した変速室32は、左側が、変速機外側ケース56で覆われて形成される。変速機外側ケース56は、変速機内側ケース部50Lbとの合わせ面56aから側壁56bが左方(外方)に膨出している。
図10に右内側面を示すように、変速機外側ケース56は、概ね長円状をなす側壁56bの周囲を周壁56cが囲む構造をしており、周壁56cの端面が変速機内側ケース部50Lbとの合わせ面56aである。なお、図5中に示される変速機外側ケース56は、図10中のV−V矢視に相当する。
【0056】
変速機外側ケース56の前方の周壁56cには、前方に向けて突出する筒状部91が形成され、その前端に、変速室32への冷却風導入口となる略矩形のケース開口部92が形成される。
一方、冷却風ダクト80は、図6、図7に示されるように、ケース開口部92との嵌合接続部81を有し、嵌合接続部81において、図8に示される略矩形の環状シール部材(環状接続部材)83を介してケース開口部92にインロー嵌合され位置決めされている。
【0057】
冷却風ダクト80は、外側に配置されるダクト部85と、ダクト部85の裏側(車体中心側)に組み合わされる裏カバー部86とで構成され、両者の間にダクト内冷却風通路92Aが形成される。
ダクト出口開口としての嵌合接続部81は、ダクト部85において、後方に向けて突出し略矩形の開口を形成する。
【0058】
冷却風ダクト80は、変速機外側ケース56のケース開口部92に接続された状態で、嵌合接続部81から車両前方に向けて延出した後、その上流側は冷却シュラウド65の側面に沿って上方に屈曲して、さらに後方に屈曲してコの字状に折り返し、車両後方に向けたダクト入口開口である冷却風取り入れ口82を備えている。
【0059】
したがって、冷却風ダクト80がシリンダ部52の冷却シュラウド65の側面に沿って配置されたので、車体の側方、パワーユニット5の上方への張り出しが抑制され、冷却風取り入れ口82の後輪6に対する距離が大きくなり、後輪6の巻き上げによる塵埃等の冷却風取り入れ口82への侵入が低減する。
【0060】
一方、図5に示されるように、変速機外側ケース56の筒状部91は、変速室32内の駆動プーリ33の固定側プーリ半体33Aの外側面に設けられた冷却ファン93の側方に指向しており、変速室内冷却風通路90Bが形成される。
そうして、変速室32内の冷却ファン93の側方に冷却風を導く冷却風通路90(90A、90B)が、冷却風ダクト80内と、Vベルト式無段変速機30を収納する変速室32とを連通して形成される。
【0061】
ケース開口部92から導かれる変速室内冷却風通路90Bは、冷却ファン93の回転中心より車両前方側の周壁56cに位置しているが、冷却ファン93の左側方には変速機外側ケース56の内面との間に、冷却ファン93の回転中心と同芯の吸入開口97aを備えたガイド板97が備えられており、ケース開口部92から変速機外側ケース56内に取り込まれた冷却風は、ガイド板94によって、冷却ファン93の回転中心周りまで導かれてからから吸入されるので、遠心ファンである冷却ファン93の機能を十分に発揮できるように構成されている。
【0062】
なお、図6、図7に示されるように、冷却風ダクト80のダクト部85の周縁部85aは、裏カバー部86の周縁部86aのシール溝86bにシール材87を介して嵌合し、組立てボルト80aで互いに固定されて、ダクト内冷却風通路90Aの気密性を保っている。
また、ダクト内冷却風通路90Aの上流端、すなわち冷却風取り入れ口82においては、ダクト部85側から複数のリブ85bが、裏カバー部86の内面に向かって設けられており、冷却風取り入れ口82から取り込まれた冷却風中の異物が冷却風ダクト80に侵入することが防止される。
なお、図6、図7中の符号80bは、冷却風ダクト80を変速機外側ケース56に固定するための固定ボルト孔である。
【0063】
また、冷却風ダクト80の嵌合接合部81は、変速機外側ケース56の筒状部91の端部91aを、環状シール部材83を介してインロー嵌合し、ケース開口部92と気密的に連通する構造となっている。
環状シール部材83は、図8に示されるように、嵌合接合部81の内周面と筒状部91の端部91aの外周面との間に介装される矩形環状部83aと、その四隅に設けられ筒状部91の端部91aの四隅を挟持する挟持部83bとを有し、略矩形の嵌合接合部81の内周面81a(図6参照)に装着される。
【0064】
そのため、冷却風ダクト80を変速機外側ケース56に取り付ける際には、嵌合接合部81内に挿入される筒状部91の端部91aが、図8中に2点鎖線と網掛けで示されるように、環状シール部材83の挟持部83bで容易に位置決めされるとともに、矩形環状部83aで気密的に内嵌されるので、連通する開口を狭めることが無く、また簡易な接続構造でありながら、組み立ての容易さ、正確さが得られ、組立性が向上する。
しかる後、固定ボルト孔80bにおいて冷却風ダクト80を変速機外側ケース56に締結固定すれば、インロー嵌合と相俟って、容易に堅固な取り付けが可能となる。
【0065】
また、図4において、符号67は、変速機外側ケース56に設けられたスタータピニオンギア・カバー部である。
スタータピニオンギア68は、駆動プーリ33の固定側プーリ半体33Aの外周に設けられたスタータ被動ギア(図5参照)94と噛み合い、始動モータ69の回転動力を伝動するものである。
スタータピニオンギア68は、Vベルト35や冷却風通路90(90A、90B)との干渉を避けるため、スタータ被動ギア94とその上方で噛合うように配置されている。すなわち、駆動プーリ33の上方に配置されている。
したがって、スタータピニオンギア68と噛合う始動モータ69も、駆動プーリ33の上方に配置されている。
【0066】
よって、変速機外側カバー56において、スタータピニオンギア68を軸支して覆うスタータピニオンギア・カバー部67は、上方に膨出した部分となっている。
そのため、図1から図3に示されるように、変速機外側ケース56を覆うサイドカバー95においても、駆動プーリ33の上方側に膨出部95aが形成されている。
【0067】
すなわち、図4に示されるように、本実施形態のパワーユニット5においては、駆動プーリ33とスタータピニオンギア68を介してギア結合された始動モータ69が、後輪6と冷却風取り入れ口82との間で駆動プーリ33の上方に配設されているので、始動モータ69が高い位置に配置され、被水し難くなる。
また、始動モータ69とその減速ギアであるスタータピニオンギア68を覆う変速機外側ケース56のスタータピニオンギア・カバー部67をさらに覆って、上方に膨出するサイドカバー95の膨出部95aが、後輪6からの塵埃侵入防止の効果を奏し、部材配置の有効活用がなされる。
【0068】
また、図6、図7に示されるように、冷却風ダクト80の裏カバー部86の背面86cには、スロットルケーブル・クランパ88の基端部取り付け部86dが設けられている。
図5に示されるように、冷却風ダクト80は、冷却シュラウド65に対して所定距離離間して配置されており、冷却風ダクト80と冷却シュラウド65との間のスペース89に、スロットルケーブル・クランパ88が位置して、それにスロットルケーブル29が保持される。
【0069】
すなわち、図2に示されるように、スロットルケーブル29はその前端側が車体前方において車体フレーム4に固定される。また、その後端側は車体フレーム4に対して揺動するパワーユニット5上のスロットルボディ28に固定される。したがって、スロットル操作の抵抗を軽減するためには、スロットルケーブル29の適切な撓みを許す保持が必要となる。
そこで、冷却風ダクト80の背面86cにスロットルケーブル・クランパ88の基端部取り付け部86dを設ければ、図示のように、スロットルケーブル29を、冷却シュラウド65側方のスペース89(図5参照)とその前方の車体フレーム4との間でパワーユニット5の揺動に対する撓みを確保して、適切にレイアウトすることができる。
【0070】
また、図1から図3に示されるように、冷却風ダクト80はその前方へ延出する部分が、車両外方の側部をダクトカバー96で覆われ、冷却風取り入れ口82側の上流部が、ダクトカバー96より上方へ延出して車両後方へ指向し、冷却風取り入れ口82が後方及び外側方に開口している。
したがって、ダクトカバー96により冷却風ダクト80が保護される一方、ダクトカバー96に覆われない冷却風取り入れ口82の周囲の通風が良好となり、冷却風取り入れ口82への内燃機関2の熱の侵入が防止される。
【0071】
ダクトカバー96は、図9に示されるように、変速機外側ケース56の前端側外面に沿う形状の後部96bと、前方に突出する突出部96cとからなり、後部96bの締結部96aにおいて、変速機外側ケース56に締結される。
突出部96cは、上記のように変速機外側ケース56の筒状部91と冷却風ダクト80の下流側および嵌合接続部81を覆うように位置する。(図4参照)
したがって、ダクトカバー96は、冷却風ダクト80の保護のみならず、嵌合接続部81等を覆うことで、パワーユニット5前部の形態、外観を整え、美観を向上させる。
【0072】
図4に示されるように、パワーユニット5の上部にはエアクリーナケース26が配置され、取り付けられているが、その吸気口26aは、エアクリーナケース26の前端側に開口している。
吸気口26aから吸い込まれた吸気は、エアクリーナケース26内の図示しないクリーナエレメントを通過して浄化され、図示しない吸気チューブを介して、スロットルボディ28に送られる。
【0073】
コの字状に延出した冷却風ダクト80は、車両前方向きのその前側壁80cが斜め後上がりに、冷却シュラウド65の下部から上部に亘って傾斜して配置されている。また、冷却風ダクト80の上側壁80dは、パワーユニット5の上部に配置されたエアクリーナケース26の前向きの吸入口26aに指向されている。
【0074】
そのため、冷却風ダクト80の前側壁80cにより、前輪7で跳ね上げられた泥水等が遮られる構造となり、エアクリーナケース26の吸入口26aを前向きに設けることが可能となる。したがって、吸入口26aを後輪6から遠ざけられるので、吸込口26aを大きくとれる。
また、エアクリーナケース26はパワーユニットの上部に設けられたので、クリーナ容量が増大され、冷却風ダクト80の上側壁80dが吸込口26aを指向しているので吸気性が向上することと相俟って、効率の良い内燃機関の吸気構造となる。
【0075】
また、冷却風ダクト80の冷却風取り入れ口82の開口縁82aと、エアクリーナケース26の吸入口26aの縁部26bとは、車体側面視で上下に近接して並んで配置されているので、防塵対象が1箇所に集中しており、塵埃の侵入を防止するリヤフェンダ20、インナフェンダ19や、各車体カバー等の部材の配置において、車両の車体構造に対する制約が低減し、外観等のデザイン性を高めることができる。
【0076】
以上のような本実施形態において、クランク軸51が回転して冷却ファン93が回転すると、冷却風が強制的に吸引され、冷却風取り入れ口82からの冷却風がダクト内冷却風通路90A、ダクト出口開口としての嵌合接続部81、ケース開口部92を通るとともに筒状部91経由、変速機外側ケース56内に入る。
図5、図10に示されるように、変速機外側ケース56内に入った冷却風は、変速室内冷却風通路90Bにおいてガイド板97の吸入開口97aから、冷却ファン93側方の回転中心周りに吸入され、冷却ファン93によって変速室32内に押し込まれる。
【0077】
変速室32内に押し込まれた冷却風は、駆動プーリ33、Vベルト35および従動軸38に取り付けられた従動プーリ39(図10参照)を冷却しつつ、変速室32内を後方に流れるとともに、後部の従動プーリ39の回転(図10中、R矢印方向)によって変速室32上方に捲き上げられるが、変速機外側ケース56内面(変速室32左側内面)に立設された誘導リブ56d(図10参照)に誘導され、変速機外側ケース56左側中央部(変速室32左側中央部)に設けられ、その下流端において変速機外側ケース56下部で外部に開口する冷却風排出孔98を通り、変速室32外へ、すなわちパワーユニット5外へ排出される。
【0078】
また、図10にも示されるように、変速機外側ケース56の後端側、すなわち従動プーリ39周囲にも、2箇所、冷却風排出口99が設けられ、すでに冷却により加熱された冷却風の排出を促進している。
なお、冷却風排出口99は、変速機外側ケース56の外側を覆って取り付けられるサイドカバー95で、間隔を空けて覆われるので、外部から変速室30内への異物の侵入が防止されている。
【0079】
図11に示されるように、パワーユニット5の底部には、左ユニットケース50Lと右ユニットケース50Rにそれぞれ設けられたメインスタンド取り付け左ボス部100L、メインスタンド取り付け右ボス部100Rに、車幅方法水平に指向して、メインスタンド支持軸101が挿通され、メインスタンド48がメインスタンド取り付け左ボス部100L、メインスタンド取り付け右ボス部100Rの間に揺動自在に軸支されている。
そして、メインスタンド48は非使用時には図示しないばね装置で、図1、2に示されるように、後方上部に跳ね上げられて停止している。
メインスタンド支持軸101は、その一端に抜け止めフランジ101aを備え、他端には抜け止めピン孔101bを備えて、抜け止めピン102を装着することによって、メインスタンド取り付け左ボス部100L、メインスタンド取り付け右ボス部100Rから外れないようになっている。
【0080】
本実施形態のパワーユニット5においては、メインスタンド支持軸101が比較的後方に設置されているので、パワーユニット5の底部前方、すなわち左クランクケース部50Laと右ユニットケース50Rによって形成されるクランクケースの下部の、オイルパン部110を下方から保護するため、スキッドプレートとも呼ばれる保護プレート104が設けられている。
すなわち、パワーユニット5の底部は、メインスタンド48と保護プレート104で保護される。
【0081】
保護プレート104の左側後端に設けられた左位置決め穴105Lが、メインスタンド取り付け左ボス部100Lと抜け止めフランジ101aとの間に挟まれてメインスタンド支持軸101を挿通させ、右側後端に設けられた右位置決め穴105Rが、メインスタンド取り付け右ボス部100Rと抜け止めピン102との間に挟まれてメインスタンド支持軸101を挿通させ、保護プレート104が位置決めされている。
そして、左側前方において、2個の取付けボルト106Lによって左ユニットケース50Lに締結され、右側前方において、1個の取付けボルト106Rによって右ユニットケース50Rに締結されている。
【0082】
また、図11に示されるように(図2、図4も参照)、左ユニットケース50Lの底部には、後輪6用の後輪ブレーキチューブ6bを保持するブレーキチューブ・クランパ108が取り付けられ、2箇所のクランプ部108aで後輪ブレーキチューブ6bを保持している。
そして、ブレーキ・クランパ108には2箇所のクランプ部108aの間に、車体外方(左方)に延出するパッド部108bが備えられている。
【0083】
バッド部108bは、図11に示されるように(図4も参照)、変速機外側ケース56の下方に開口する冷却風排出孔98の開口部98aの下方に対峙するように配置されており、路面等下方からの異物が冷却風排出孔98内に侵入することを防止している。
【0084】
以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明の態様が上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0085】
1…自動二輪車、2…内燃機関、3…動力伝達ケース部、4…車体フレーム、5…パワーユニット、6…後輪、7…前輪、26…エアクリーナケース、26a…吸入口、26b…縁部、28…スロットルボディ、29…スロットルケーブル、30…Vベルト式無段変速機、31…減速機構、32…変速室、33…駆動プーリ、39…従動プーリ、48…メインスタンド、50…パワーユニットケース、50L…左ユニットケース、50La…左クランクケース部、50Lb…変速機内側ケース部、50Lc…減速機ケース部、50R…右ユニットケース、51…クランク軸、52…シリンダ部、53…シリンダブロック、54…シリンダヘッド、56…変速機外側ケース、65…冷却シュラウド、67…スタータピニオンギア・カバー部、68…スタータピニオンギア、69…始動モータ、80…冷却風ダクト、80c…前側壁、80d…上側壁、81…嵌合接続部、82…冷却風取り入れ口、82a…開口縁、83…環状シール部材(環状接続部材)、88…スロットルケーブル・クランパ、90…冷却風通路、90A…ダクト内冷却風通路、90B…変速室内冷却風通路、91…筒状部、92…ケース開口部、93…冷却ファン、94…スタータ被動ギア、95…サイドカバー、95a…膨出部、96…ダクトカバー、98…冷却風排出孔、99…冷却風排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の後輪(6)の側方にVベルト式無段変速機(30)を備えるパワーユニット(5)において、
冷却シュラウド(65)で覆われた内燃機関(2)のシリンダ部(52)が、前記Vベルト式無段変速機(30)の駆動プーリ(33)を取り付けたクランク軸(51)から車両前方に向けて設けられ、
前記駆動プーリ(33)の外側面に設けられた冷却ファン(93)の側方に冷却風を導く冷却風通路(90)が、前記Vベルト式無段変速機(30)を収納する変速室(32)と接続して車両前方へ延設された冷却風ダクト(80)内に連通して形成され、
同冷却風ダクト(80)の上流側は、前記冷却シュラウド(65)の側面に沿って上方に屈曲した後、後方に屈曲してコの字状に折り返し、車両後方に向けた冷却風取り入れ口(82)を備えたことを特徴とするVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。
【請求項2】
前記パワーユニット(5)は、前記駆動プーリ(33)とギア結合された始動モータ(69)が、前記後輪(6)と前記冷却風取り入れ口(82)との間で前記駆動プーリ(33)の上方に配設されていることを特徴とする請求項1記載のVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。
【請求項3】
前記冷却風ダクト(80)は、前記冷却シュラウド(65)に対して所定距離離間して配置され、同冷却風ダクト(80)と同冷却シュラウド(65)との間にスロットルケーブル(29)が保持されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。
【請求項4】
前記冷却風ダクト(80)は、車両外方の側部をダクトカバー(96)で覆われ、前記冷却風取り入れ口(82)側の上流部が、前記ダクトカバー(96)より上方へ延出して車両後方へ指向し、後方及び外側方に前記冷却風取り入れ口(82)が開口したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。
【請求項5】
前記冷却風ダクト(80)は、車両前方向きのその前側壁(80c)が斜め後上がりに、前記冷却シュラウド(65)の下部から上部に亘って傾斜して配置され、同冷却風ダクト(80)の上側壁(80d)が前記パワーユニット(5)の上部に配置されたエアクリーナケース(26)の前向きの吸入口(26a)に指向されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。
【請求項6】
前記冷却風ダクト(80)の前記冷却風取り入れ口(82)の開口縁(82a)と前記エアクリーナケース(26)の吸入口(26a)の縁部(26b)とは、車体側面視で上下に近接して並んで配置されたことを特徴とする請求項5記載のVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。
【請求項7】
前記変速室(32)の外側殻を構成し、前記冷却ファン(93)を覆う変速機外側ケース(56)は、前記駆動プーリ(33)の車両前方側にケース開口部(92)を備え、前記冷却風ダクト(80)は、同ケース開口部(92)との嵌合接続部(81)を有し、同嵌合接続部(81)において環状接続部材(83)を介して前記ケース開口部(92)にインロー嵌合され位置決めされたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載のVベルト式無断変速機の冷却風取り入れ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−136200(P2012−136200A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291486(P2010−291486)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】