説明

X線撮像機器、並びにX線撮像機器を校正する装置及び方法

X線撮像機器(100)を校正するための校正装置(140)が開示される。校正装置(140)は、X線撮像機器(100)の検出ユニット(108)によって基準条件下で捕捉された画像を受信する受信ユニット(200)と、捕捉された画像を分析して利得補正情報を取得する分析ユニット(201)と、ヒール効果の利得補正に関しない利得補正情報に基づいて、X線撮像機器(100)を校正するための校正情報を提供する校正ユニット(202)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮像機器を校正するための校正装置に関する。また、本発明はX線撮像機器に関する。さらに、本発明はX線撮像機器を校正する方法に関する。これ以外に、本発明はプログラムに関する。さらに、本発明はコンピュータ読み取り可能媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮像は、医療用途、荷物検査又は材料科学を含む数多くの技術分野において重要なものである。
【0003】
過去数年の間に、X線荷物検査は、操作者による相互作用に完全に依存していた単純なX線撮像システムから、自動的に特定種類の物質を認識して危険物の存在時に警報を発することが可能な、より洗練された自動化システムへと進化してきた。検査システムは、検査荷物を通過して或いはそれにより散乱されて検出器へと伝えられるX線を発生するX線放射線源を用いてきた。
【0004】
X線撮像機器を校正して精度を向上させることが有利となり得る。
【0005】
特許文献1は、3次元再構成ボリューム内のリング状アーチファクトを補正するように構成されたアーチファクト抑制手段を有する撮像システムを開示している。このアーチファクト抑制手段は、X線撮像機器の画像増強管の出力スクリーンの構造化ノイズを第1の補正用画像を用いて除去するように構成された第1段の補正手段を有する。第1の補正用画像は、予め計算されてコンピュータの好適記憶装置に格納され得る。先ず、患者の原(raw)画像が第1の補正用画像を用いて処理される。斯くして得られた利得補正画像は、好適な歪み解除関数が予め格納された画像変形補正手段に送られる。そして、得られた利得補正され且つ歪みを解かれた画像は、第2段の利得補正手段に利用可能にされ、そこで、この画像に第2の補正用画像が適用され、リング状アーチファクトが実質的に抑制された最終の画像セットが生成される。この最終画像セットは、当該最終画像セットを更に処理するように構成された画像再構成手段に利用可能にされ、その結果が検査目的でコンピュータモニタ上に可視化される。
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムは、不所望な状況下で不十分な利得補正能力を有するという問題を有し得る。
【特許文献1】国際公開第2005/006257号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、X線機器の適切な校正を可能にするような、X線撮像機器を校正する校正装置、X線撮像機器、X線撮像機器を校正する方法、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の典型的な一実施形態に従って、X線撮像機器を校正するための校正装置が提供される。当該装置は、X線撮像機器の検出ユニットによって基準条件下で捕捉された画像を受信する受信ユニットと、捕捉された画像を分析し、利得補正情報を取得する分析ユニットと、ヒール効果の利得補正に関しない利得補正情報に基づいて、X線撮像機器を校正するための校正情報を提供する校正ユニットとを有する。
【0009】
本発明の典型的な他の一実施形態に従って、関心対象の検査用のX線撮像機器が提供される。当該X線撮像機器は、関心対象にX線ビームを放射するX線源と、関心対象を貫通したX線ビームを検出する検出ユニットと、上述の特徴を有する校正装置により提供された校正情報を考慮に入れて、関心対象に関する構造情報を決定する決定ユニットとを有する。
【0010】
本発明の典型的な他の一実施形態に従って、X線撮像機器を校正する方法が提供される。当該方法は、X線撮像機器の検出ユニットによって基準条件下で捕捉された画像を受信する段階と、捕捉された画像を分析し、利得補正情報を取得する段階と、ヒール効果の利得補正に関しない利得補正情報に基づいて、X線撮像機器を校正するための校正情報を提供する段階とを有する。
【0011】
本発明の典型的な他の一実施形態に従って、X線撮像機器を校正するためのコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能媒体が提供される。このコンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるとき、上述の特徴を有する方法を制御あるいは実行するように適応されている。
【0012】
本発明の典型的な他の一実施形態に従って、X線撮像機器を校正するためのプログラムが提供される。当該プログラムは、プロセッサによって実行されるとき、上述の特徴を有する方法を制御あるいは実行するように適応されている。
【0013】
本発明の実施形態に従って実行され得る校正用のデータ処理は、コンピュータプログラムによって、すなわち、ソフトウェアによって、あるいは1つ又は複数の特別な最適化電子回路を用いることによって、すなわち、ハードウェアにて、あるいは複合形態にて、すなわち、ソフトウェア要素とハードウェア要素とによって、実現されることが可能である。
【0014】
典型的な一実施形態によれば、X線撮像機器は効率的に校正され得る。この目的のため、従来の利得補正手法より不具合を生じにくい利得補正手法が適用され得る。特に、実質的に2次元の検出器が方向を変えられ、回転され、あるいは移動されるとき、ヒール効果補償に起因するアーチファクトが効果的に抑圧され得る。
【0015】
この目的のため、検出器領域全体にわたって一定のX線被曝を有する、基準条件下での画像、すなわち、X線ビーム経路内に関心対象を有しない画像を受信することが可能である。言い換えると、基準測定は、X線源と検出器との間に物体がないようにされてもよいし、X線源と検出器との間に“中性の”物体(例えば、均一な材料から成る)が位置付けられてもよい。この方策を用いることにより、アクティブな検出器領域の全体にわたって、X線ビーム経路内の関心対象によって強度差が実質的に生じないことが確保され得る。
【0016】
そして、この基準画像は分析ユニットによって、例えば検出器の利得特性、回転対称成分、及び所謂ヒール(heel)効果に由来する1次元傾斜といった別々の成分を決定する種々の利得補正寄与に関して分析され得る。この分析は、アーチファクトへの種々の寄与に関する理論モデルを考慮して、捕捉された基準画像を指し示すフィッティングパラメータを取得するために、コンピュータフィッティングを実行することを含んでいてもよい。
【0017】
校正ユニットは、この分析の1つ以上の成分に基づいて実際の校正を行ってもよいが、ヒール効果の寄与を選択的に無視する。この方策を用いることにより、補償されないヒール効果によって僅かな強度プロファイルが残存するということになり得る。しかしながら、検出器の回転の場合には、ヒール効果補償を省略することにより、利得補正の精度が有意に向上され得る。
【0018】
用語“ヒール効果”(又は陽極傾斜効果)は、X線ビーム強度がその全体で均一にならないことに由来する。例えば、X放射線がターゲット領域から円錐状に放射されるとき、アノード方向の強度がカソード方向の強度より低くなることが起こり得る。強度がこのように変化するという事実により、検出スペクトルに生成される強度に視認可能な差異が発生し得る。この現象はヒール効果と呼ばれている。
【0019】
本発明の典型的な実施形態は、修正された手法でヒール効果を考慮に入れることにより、回転されるX線検出器の利得補正を改善することを可能にし得る。特に、この手法は、複数の補正成分を有するフラットパネルCT利得補正に役立つものである。
【0020】
フラットパネルX線検出器の分野においては、“利得補正”を行うことが一般的である。この目的のため、均一に曝された画像Gallが撮られ、基準として保存される。後の全てのX線画像はこの利得基準で除算される。この概念は、システム内に固定された正方形の検出器に適したものとなり得る。この補正を用いると、検出器の利得が補正されるだけでなく、幾何学的な要因による影響も同時に補正される。
【0021】
このような手法は、幾何学的な条件が過大に変化しない限り、効果的なものとなり得る。長方形の(異なる長さの辺を有する)検出器は、大抵、システムの幾何学構成に対して回転されることが可能であり、それにより、通常の利得補正では問題が生じ得る。本発明の典型的な実施形態は、このような問題を解決あるいは抑制するための手順に関する。
【0022】
allの詳細な分析により、3つの成分:
− Gdetector:検出器ハードウェアによる検出器利得特性。この検出器利得特性はストライプ状パターンを生じさせ得る(図3を参照)。
− Gradius:SID(ソース画像距離)及び画像中心からの半径に依存する利得の回転対称成分。この成分は、rを検出器中心からの距離として、r項、すなわち、長方形又は正方形の検出器素子に沿った強度の放射状分布をもたらし得る(図3を参照)。
− Gheel:X線管の“ヒール効果”に由来する1次元傾斜。この寄与分は、検出器素子の1つの軸の方向に強度差を生じさせるが、第2の次元方向には実質的に一定となり得る(図3を参照)。
【0023】
用語“Gall”は、具体的には、利得校正(平均)用の均一に曝された画像を意味する。Gallは画素当たり1つの数字を有するフル解像度のマトリクスである。
【0024】
radiusは、SID(ソース画像距離)及び画像中心からの半径に依存する利得の回転対称成分を意味する。Gradiusはx及びyに依存する多項式となり得る。
【0025】
heelは、X線管の“ヒール効果”による線形傾斜を意味する。Gheelはyのみに依存する多項式となり得る。
【0026】
用語“Gdetector”は、検出器ハードウェアによる検出器利得特性を意味する。GdetectorはGall/(Gradius・Gheel)から計算され得るフル解像度マトリクスである。
【0027】
allは、等式:
all=Gdetector・Gradius・Gheel
に従って決定される。
【0028】
従来、回転される検出器の利得補正Gallは、この等式を用いて行われることがあった。
【0029】
ヒール効果は、元の利得基準補正が90°回転された検出器からの画像に基づくとき、有意な画像アーチファクトを生じさせ得る。“新たな”ヒール効果は考慮に入れられず、利得補正によって全く補正されない。これに対し、逆の“古い”ヒール効果は底部から頂部へのパターンとして導入され、斜め方向の不均一性を生じさせる。
【0030】
本発明の典型的な一実施形態によれば、ヒール効果補正は意図的に実行されない。すなわち、検出器利得特性補正及び/又は回転対称利得補正のみが実行される。
【0031】
項Gradius及びGheelは、(実験的な)Gallデータへの(理論的な)フィッティングから:
radius: r(x,y)=r(x+y)+r√(x+y)+r
ただし、r、r、rは係数
heel: h(y)=h+h+h+h+hy+h
として得ることができる。
【0032】
元々のヒール効果は、利得補正:
利得補正係数=(1/Gall)・(Gheel/1)=1/(Gdetector・Gradius
の後に再導入され得る。
【0033】
真のヒール効果の画像例を図5に示す。この図は右から左への元々のヒール効果のみを示している。上下方向のヒール効果はもはや存在しない。この例において、半径依存項はやはり補正されている。この補正を省略することには別の1つの選択肢が存在し、検出器決定項のみが補正される結果がもたらされる。これは、未修正のX線プロファイルを示すCR画像プレートと同様の補正概念をもたらす。
【0034】
本発明の典型的な実施形態は、校正に関して検出器の空間的な向きへの依存性が実質的に存在しないという利点を有し得る。如何なる向きも同様に機能し、向きは知られる必要さえない(例えば、無線ポータブルX線検出器の場合のように)。
【0035】
さらに、補正された画像は“真のX線分布”を示し、局所的な信号が局所的なX線強度に関連付けられることになる。
【0036】
この他に、フラットパネル検出器からの画像は、CRプレートからの画像に一層似て見え得る。
【0037】
次に、本発明の典型的な更なる実施形態を説明する。以下では、校正装置の典型的な更なる実施形態を説明するが、これらの実施形態は、X線撮像機器、X線撮像機器を校正する方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能媒体にも適用されるものである。
【0038】
基準条件は、実質的に均一なX線被曝条件の下で画像を捕捉することを有していてもよい。言い換えると、X線放射線源と検出器との間には、検出器領域に明暗パターンを生じさせ得る有意に不均一な物体は設置されない。これとは対照的に、X線源と検出器との間には、如何なる物体も配置されないか、検出器への放射線の曝露に有意な影響を及ぼさない均一な基準物体が配置される。これにより、複数の利得補正寄与分の分析を可能にする基準パターンを検出することが可能にされ得る。
【0039】
分析ユニットは、前記検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正(Gdetector)、回転対称アーチファクトに起因する利得補正(Gradius)、及びヒール効果に起因する利得補正(Gheel)から成るグループのうちの少なくとも1つを考慮に入れて、利得補正情報を取得するように適応されてもよい。有利には、分析ユニットは3つ全ての寄与分を考慮に入れるが、特に、更なる寄与分は考慮に入れない。言い換えると、分析ユニットによって、これら3つの妨害効果のみの寄与を分離することが可能である。
【0040】
また、分析ユニットは、理論モデルを捕捉された画像にフィッティングすることによって利得補正情報を取得するように適応されてもよい。このようなコンピュータフィッティングは、測定スペクトルとフィッティングスペクトルとの間の二乗偏差を最小化する最小二乗適合アルゴリズムに基づいてもよい。この方策を用いることにより、理論モデルのコンテキストにおける利得補正への種々の寄与分のパラメータが抽出され得る。
【0041】
また、校正ユニットは、検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正(Gdetector)、及び回転対称アーチファクトに起因する利得補正(Gradius)から成るグループのうちの少なくとも1つを考慮に入れて、取得された利得補正情報に基づいて、校正情報を提供するように適応されてもよい。しかしながら、校正ユニットは、検出器の動き(例えば、回転)により生じ得るアーチファクトを抑制するため、ヒール効果に由来する如何なる寄与分(Gheel)をも無視してもよい。典型的な一実施形態によれば、検出ユニットのハードウェア特性の影響、及び回転対称アーチファクトに起因する利得補正が考慮に入れられる。典型的な他の一実施形態によれば、ヒール効果だけでなく回転対称アーチファクトに起因する利得補正をも無視し、検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正のみが考慮される。
【0042】
校正ユニットは、検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正を指し示す利得補正係数と回転対称のアーチファクトを指し示す利得補正係数とを乗算して利得補正係数を計算することによって、校正情報を提供するように適応されてもよい。この方策を用いることにより、これら2つの寄与分は考慮されるが、ヒール効果は選択的に無視される。
【0043】
校正ユニットは、検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正の利得補正係数を計算することによって、校正情報を提供するように適応されてもよい。この実施形態によれば、検出ユニットのハードウェア特性のみが利得補正に用いられ、それにより、小さい計算負荷で比較的良好な利得補正が可能になる。
【0044】
以下では、X線撮像機器の典型的な更なる実施形態を説明する。しかしながら、これらの実施形態は、校正装置、校正方法、プログラム及びコンピュータ読み取り可能媒体にも適用されるものである。
【0045】
X線撮像機器は回転可能なガントリーを有してもよく、X線源(例えば、X線管)及び検出ユニット(例えば、ダイオードアレイを有するシンチレーション検出器、又はCCDカメラ)はガントリーに配置されてもよい。故に、ガントリーは関心対象(例えば、患者又は荷物)の周りを回転してもよく、場合により(螺旋スキャン又は円形スキャンの何れが望まれるかに応じて)、回転するガントリーに対する対象の並進運動が可能にされる。回転可能なガントリーに搭載された検出ユニットを、回転可能ガントリーの回転軸とは異なる回転軸の周りで回転させることも可能である。このような移動可能な検出器構成は、このようなX線撮像機器を用いる際の柔軟性を増大させ得る。本発明の典型的な一実施形態に従った利得補正手法を用いる場合、従来システムとは異なり、このような回転はこのスペクトルに更なるアーチファクトを導入しないため、ガントリーに対する検出ユニットのこのような回転が可能にされる。
【0046】
X線撮像機器はコンピュータ断層撮影装置として適応されてもよい。コンピュータ断層撮影装置は、デジタル処理を用いて、単一の回転軸の周りで撮影された一連の2次元X線画像から対象の内部の3次元画像を生成する装置を意味し得る。CT画像の再構成は、適切なアルゴリズムを適用することによって行うことができる。例えば、CT装置はCSCT装置(“コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影装置”)であってもよい。
【0047】
X線撮像機器は、荷物検査装置、医療用装置、材料試験装置又は材料科学分析装置として適応されてもよい。しかしながら、本発明との関係において、その他全ての用途も可能である。
【0048】
検出ユニットは電磁放射線源に対して移動可能であってもよい。言い換えると、ガントリーに対して回転可能な検出ユニット構成に加えて、あるいは代えて、検出器ユニットは電磁放射線源に対して移動可能であってもよい(例えば、並進運動及び/又は回転運動を用いる)。本発明の典型的な実施形態に従って校正に関してヒール効果を除外することにより、従来においてこのような移動に由来していたアーチファクトを抑制することが可能になり得る。
【0049】
検出ユニットは正方形を除く長方形であってもよい。正方形の検出ユニットも可能であるが、移動可能な検出ユニットと正方形以外の長方形の検出ユニットとの組み合わせは、システムの柔軟性を増大させ得るため、特に有利となり得る。
【0050】
本発明のこれら及び更なる態様は、以下の実施形態の例から明らかであり、それら実施形態の例を参照して説明される。
【0051】
以下、実施形態の例を参照して本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれら実施形態の例に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
図面における例示は概略的なものである。相異なる図において、類似あるいは同一の要素には同一の参照符号を用いる。
【0053】
以下、図1を参照して、本発明の典型的な一実施形態に従ったコンピュータ断層撮影装置100を説明する。
【0054】
図1に示したコンピュータ断層撮影装置100はファンビームCTスキャナである。図1に示したスキャナはガントリー101を有し、ガントリー101は回転軸102の周りを回転可能である。ガントリー101はモータ103によって駆動される。参照符号104は、例えばX線源などの放射線源を指し示しており、この放射線源は、本発明の一態様に従って、多色の放射線又は実質的に単色の放射線を放射し得る。
【0055】
参照符号105は、放射線源104から放射された放射線ビームを扇状の放射線ビーム106に成形する開口系を指し示している。ファンビーム106は、ガントリー101の中心、すなわち、スキャナ100の検査領域、に配置された関心対象107を貫通し、さらには検出器108に突き当たるように方向付けられる。検出器108は、図1から理解され得るように、検出器108の表面がファンビーム106によって照らされるように、放射線源104に対向してガントリー101に配置されている。図1に示した検出器108は複数の検出素子123を有しており、各検出素子123は、関心対象107を貫通したX線をエネルギー分解的に検出することが可能である。
【0056】
関心対象107のスキャン中、放射線源104、開口系105及び検出器108はガントリー101とともに、矢印116で指し示される向きに回転させられる。放射線源104、開口系105及び検出器108を備えるガントリー101の回転のため、モータ103はモータ制御ユニット117に接続されており、モータ制御ユニット117は計算ユニットすなわち決定ユニット118に接続されている。
【0057】
図1において、関心対象107はコンベヤベルト(図示せず)上に配置された荷物である。関心対象107のスキャン中、ガントリー101は荷物107の周りを回転し、コンベヤベルトは関心対象107をガントリー101の回転軸102と平行な方向に移動させる。これにより、関心対象107は螺旋スキャン経路に沿ってスキャンされる。コンベヤベルトは、スキャン中、単一断面を測定するように停止されてもよい。コンベヤベルトを設ける代わりに、例えば、関心対象107が患者である医療用途においては、可動テーブルが用いられてもよい。なお、説明される何れの場合においても、回転軸102に平行な方向への移動が存在せずに回転軸102の周りのガントリー101の回転のみが存在する円形スキャンを実行することも可能である。
【0058】
図1に示すように、本発明はファンビーム構成によって実現されることができる。プライマリ・ファンビームを生成するよう、開口系105はスリットコリメータとして構成される。
【0059】
検出器108は決定ユニット118に接続されている。決定ユニット118は、検出結果すなわち検出器108の検出素子123からの出力を受け取り、これらの出力に基づいてスキャン結果を決定する。さらに、計算ユニット118はモータ制御ユニット117と信号伝達し、モータ103を用いてガントリー101の動作を調整するとともに、モータ120を用いてコンベヤベルトの動作を調整する。
【0060】
決定ユニット118は、トモグラフィ再構成を用いて、検出器108の出力から画像を再構成するように適応され得る。計算ユニット118によって作成された再構成画像は、表示ユニット130によって出力されてもよい。
【0061】
決定ユニット118は、検出器108の検出素子123からの出力を処理するデータプロセッサによって実現されてもよい。
【0062】
さらに、図1から理解され得るように、決定ユニット118は、例えば荷物107内に不審物を検出した場合に自動的に警報を発するよう、スピーカ121に接続されていてもよい。
【0063】
図1から更に理解され得るように、X線撮像機器100を校正するために校正装置140が設けられている。
【0064】
校正装置140は、データ通信のために決定ユニット118に結合されており、決定ユニット118に校正情報を提供し得る。関心対象107の3次元構造を決定する決定ユニット118は、校正装置140によって提供される校正情報を考慮に入れ、画像を決定することにおける品質又は精度を向上させ得る。
【0065】
X線機器100の概略図を示す図2を参照して、校正装置140の機能を更に詳細に説明する。
【0066】
X線撮像機器100を校正するための校正装置140は、基準条件下でX線撮像機器100の検出ユニット108によって捕捉された画像を受信する受信ユニット200を有する。この基準条件は、実質的に均一なX線被曝条件の下で画像を捕捉することを有する。言い換えると、アーチファクトやアンダーグラウンドのような妨害成分“のみ”を有する基準画像を捕捉するため、X線管104と検出器108との間に関心対象107を配置せずに基準画像が捕捉される。
【0067】
この画像データは、利得構築情報を得るために捕捉画像を分析する分析ユニット201によって解釈される様式となるよう、受信ユニット200によって前処理され得る。分析ユニット201はこの基準画像を分析し、この画像から種々の利得補正源の寄与、特に、検出ユニット108のハードウェア特性に起因する利得補正寄与(Gdetector)、回転対称のアーチファクトに起因する利得補正寄与(Gradius)、及びヒール効果に起因する利得補正(Gheel)を引き出す。分析ユニット201は、捕捉された基準画像へのこれら寄与ごとに理論モデルをフィッティングしてもよく、例えば(マルクワルトフィットのような)最小二乗適合を適用してフィッティングパラメータを取得してもよい。
【0068】
抽出された利得補正成分は分析ユニット201から校正ユニット202に供給され得る。校正ユニット202は、ヒール効果の利得補正に関しない利得補正情報に基づいてX線撮像機器を校正するための校正情報を生成する。言い換えると、校正ユニット202によって計算される利得補正係数は、Gdetector及び/又はGradiusの成分のみを含み、Gheelを考慮しないものとし得る。この方策を用いることにより、例えば図2の紙面に直交する平面内での検出器108の回転に由来する更なるアーチファクトの導入が改善され得る。
【0069】
そして、得られた利得校正情報は校正ユニット202から決定ユニット118に提供され、高精度の関心対象107の(真の)画像を決定するために、決定ユニット118によって考慮され得る。X線管104と検出器108との間のビーム経路内に対象107を配置して捕捉されたX線画像は、この校正ユニット202によって見積もられた利得基準で除算され得る。
【0070】
続いて、本発明の典型的な一実施形態に従った校正手法を更に詳細に説明する。
【0071】
システムの検出器は、未修正の基準画像Gallを用いて従来のように補正されてもよい。この基準と同一の条件でのX線画像は全体的に均一となり得る。すなわち、局所的な信号値はどこでも同じである。ソース画像距離(SID)変化に伴うアーチファクトは従来から既知であり、許容される。校正による値を下回る、あるいは上回る管(チューブ)電圧は、ヒール効果の過大あるいは過小な補償をもたらす。
【0072】
しかしながら、図4に示す画像プレートを参照して説明されるように、従来の補正手法は、回転される検出器に伴う問題を発生させ得る。
【0073】
ヒール効果は、90°回転された検出器からの画像に元々の利得基準Gallが適用されるときに、有意な画像アーチファクトを生じさせ得る。図4の右から左への“新たな”ヒール効果は利得補正によって全ては補正されないが、逆の“古い”ヒール効果は、反比例して、底部から頂部へのパターンとして導入され、補正された画像(SID=110cm)の斜め方向の不均一性を生じさせる。
【0074】
利得補正係数=1/Gall
この図4を参照しての説明は、従来においてアーチファクトは、補正手順に利得効果を含める方法に起因して導入され得ることを示している。
【0075】
縦及び横の画像方向に関する個々の校正はシステムのオプションである。システムは検出器が適正な利得基準を有し、選択するのが何れの方向であるかを知ることができた。しかしながら、このことは自由な曝露モードにおける移動可能な検出器の場合には妥当ではない。
【0076】
本発明の典型的な一実施形態によれば、通常の利得基準画像Gallの詳細分析は、上述の3つの成分Gdetector、Gradius及びGheelを示す。次の等式:
all=Gdetector・Gradius・Gheel
が成り立つ。
【0077】
図3は、検出器利得の寄与Gdetector301、r項の寄与Gradius302及びヒール効果の項Gheel303の組み合わせから得られる結果的な利得パターン300を示している。
【0078】
本発明の典型的な一実施形態に従って、補正又は校正パラメータの計算に項Gdetector又は積Gdetector・Gradiusのみが使用され、Gheelは使用されない
この手順においてヒール効果補正は行われない。しかしながら、最初に、Gallをモデル化するフィッティング関数が定められる。適切な選択は:
f(x,y)=ay+by+cy+dx+ey+fx+gy+hx+iy+j
である。
【0079】
項Gradius及びGheelはGallデータへのフィッティング:
radius: r(x,y)=r(x+y)+r√(x+y)+r
ただし、r、r、rは係数
heel: h(y)=h+h+h+h+hy+h
から得られる。
【0080】
これは、通常の利得補正の後に元々のヒール効果を再導入すること(利得乗数=(1/Gall)・(Gheel/1))、又は検出器の項及び半径固有の項に関してのみ補正すること(利得乗数=1/(Gdetector・Gradius))と数学的に等価である。
【0081】
真のヒール効果を図5のスキーム500に示す。
【0082】
図5の画像例は、右から左への元々のヒール効果のみを示している。上下方向のヒール効果はもはや存在しない。この例において、半径依存項はやはり補正されている。この補正を省略することには別の1つの選択肢が存在し、検出器依存項のみが補正される結果がもたらされる。これは、未修正のX線プロファイルを示し得るCR画像プレートと同様の補正概念をもたらす。
【0083】
続いて、図6を参照して、本発明の典型的な一実施形態に従った校正方法を示すブロック図600を説明する。
【0084】
この利得校正手法610においては、利得基準画像615が捕捉される。そして、この利得補正画像615は、ブロック620によって指し示されるように、従来のようにして、すなわち、Gdetector、Gradius及びGheelを考慮することによって評価され得る。しかしながら、本発明の一実施形態は、ブロック625によって指し示されるように、モデル関数f(x,y)を用いたフィッティングを実行することを可能にする。このフィッティングの結果は、ブロック630にて指し示されるように、スペクトルを3つの成分に分解することを可能にする。これにより、検出器の寄与Gdetector635と半径の寄与Gradius640とヒール効果の寄与Gheel645とを区別することが可能になる。
【0085】
1つの選択肢によれば、ブロック650にて指し示されるように、Gdetectorのみに基づく補正が行われる。代替的に、ブロック655にて指し示されるように、Gdetector及びGradiusを考慮に入れた補正が行われてもよい。
【0086】
図7は、本発明に従った方法の一実施形態を実行するための本発明に従ったデータ処理装置700の典型的な一実施形態を示している。
【0087】
図7に示したデータ処理装置700は、関心対象(例えば患者又は荷物など)を描写する画像又は基準画像を格納するメモリ702に接続された中央演算処理装置(CPU)又は画像プロセッサ701を有する。データプロセッサ701は、複数の入力/出力ネットワーク、又は例えばCT装置などの診断装置に接続され得る。データプロセッサ701は更に、データプロセッサ701にて計算あるいは適応された情報又は画像を表示する例えばコンピュータモニタといった表示装置703に接続されてもよい。操作者又はユーザは、キーボード704、及び/又は図7には示されていないその他の出力装置を介してデータプロセッサ701とやり取りしてもよい。さらに、バスシステム705を介して、画像処理・制御プロセッサ701を、例えば、関心対象の動きを監視する動きモニタに接続することも可能である。例えば、患者の肺が撮像される場合、動きセンサは呼気センサとしてもよい。心臓が撮像される場合、動きセンサは心電計(ECG)としてもよい。
【0088】
本発明が有利に適用され得る典型的な技術分野には、荷物検査、医療用途、材料試験、及び材料科学が含まれる。画質の向上及び計算量の削減が小さい努力で達成され得る。また、本発明は心疾患を検出する心臓スキャンの分野に適用されることができる。
【0089】
なお、用語“有する”はその他の要素又は特徴を排除するものではなく、“或る(a又はan)”は複数であることを排除するものではない。また、相異なる実施形態に関連して説明された要素が組み合わされてもよい。
【0090】
さらに、請求項中の参照符号は請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の典型的な一実施形態に従ったコンピュータ断層撮影装置を示す図である。
【図2】コンピュータ断層撮影装置を、本発明の典型的な一実施形態に従った校正装置の細部とともに示す図である。
【図3】利得補正への異なる寄与、及び対応するアーチファクトを示す図である。
【図4】利得補正への異なる寄与、及び対応するアーチファクトを示す図である。
【図5】利得補正への異なる寄与、及び対応するアーチファクトを示す図である。
【図6】本発明の典型的な一実施形態に従ったX線撮像機器の校正方法を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るシステムに実装されるデータ処理装置の典型的な一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮像機器を校正するための校正装置であって:
前記X線撮像機器の検出ユニットによって基準条件下で捕捉された画像を受信する受信ユニット;
前記基準条件下で捕捉された画像を分析し、利得補正情報を取得する分析ユニット;及び
ヒール効果の利得補正に関しない利得補正情報に基づいて、前記X線撮像機器を校正するための校正情報を提供する校正ユニット;
を有する校正装置。
【請求項2】
前記基準条件は、実質的に均一なX線被曝条件の下で前記画像を捕捉することを有する、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項3】
前記分析ユニットは、前記検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正、回転対称のアーチファクトに起因する利得補正、及びヒール効果に起因する利得補正から成るグループのうちの少なくとも1つを考慮に入れて、前記利得補正情報を取得するように適応されている、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項4】
前記分析ユニットは、前記基準条件下で捕捉された画像への理論モデルのフィッティングを実行することによって、前記利得補正情報を取得するように適応されている、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項5】
前記校正ユニットは、前記検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正、及び回転対称のアーチファクトに起因する利得補正から成るグループのうちの少なくとも1つを考慮に入れて、取得された前記利得補正情報に基づいて、前記校正情報を提供するように適応されている、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項6】
前記校正ユニットは、前記検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正を指し示す利得補正係数と回転対称のアーチファクトを指し示す利得補正係数とを乗算して利得補正係数を計算することによって、前記校正情報を提供するように適応されている、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項7】
前記校正ユニットは、前記検出ユニットのハードウェア特性に起因する利得補正を指し示す利得補正係数を計算することによって、前記校正情報を提供するように適応されている、
請求項1に記載の校正装置。
【請求項8】
関心対象の検査用のX線撮像機器であって:
前記関心対象にX線ビームを放射するX線源;
前記関心対象を貫通したX線ビームを検出する検出ユニット;及び
請求項1に記載の校正装置により提供された校正情報を考慮に入れて、検出されたX線ビームに基づいて、前記関心対象に関する構造情報を決定する決定ユニット;
を有するX線撮像機器。
【請求項9】
回転可能なガントリーを有し、前記X線源及び前記検出ユニットは前記ガントリーに配置されている、
請求項8に記載のX線撮像機器。
【請求項10】
コンピュータ断層撮影装置として適応されている、
請求項8に記載のX線撮像機器。
【請求項11】
荷物検査装置、医療用装置、材料試験装置及び材料科学分析装置から成るグループのうちの1つとして構成されている、
請求項8に記載のX線撮像機器。
【請求項12】
前記検出ユニットは前記X線源に対して移動可能である、
請求項8に記載のX線撮像機器。
【請求項13】
前記検出ユニットは長方形であり且つ異なる長さの2辺を有する、
請求項8に記載のX線撮像機器。
【請求項14】
X線撮像機器を校正する方法であって:
前記X線撮像機器の検出ユニットによって基準条件下で捕捉された画像を受信する段階;
前記基準条件下で捕捉された画像を分析し、利得補正情報を取得する段階;及び
ヒール効果の利得補正に関しない利得補正情報に基づいて、前記X線撮像機器を校正するための校正情報を提供する段階;
を有する方法。
【請求項15】
X線撮像機器を校正するためのコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ読み取り可能媒体であって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されるとき、請求項14に記載の方法を制御あるいは実行するように適応されている、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項16】
X線撮像機器を校正するためのプログラムであって、プロセッサによって実行されるとき、請求項14に記載の方法を制御あるいは実行するように適応されているプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−538670(P2009−538670A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512729(P2009−512729)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051925
【国際公開番号】WO2007/141689
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】