説明

X線断層写真合成装置

【課題】短期間内で大きい検査域のスライス画像を形成できるトモシンセシス装置及び方法を提供する。
【解決手段】X線源(1)と、X線検出器(2)と、検査されるべき対象物(4)の一連のX線投影画像の捕捉中に撮像面(A)に対して平行な移動面(B)で対象物(4)を移動する移動装置(3)と、X線投影画像の捕捉及び移動装置(3)を制御する制御装置(5)とを有し、断層写真合成方法を用いてX線投影画像から対象物のスライス画像を形成するX線装置で、大きい対象物のスライス画像の形成を短い期間内で可能にするために、X線源(1)及びX線検出器(2)は、X線投影画像の捕捉中に静止され、制御装置(5)は、対象物(4)を検査域中の撮像されるべき全ての点が少なくとも10、好ましくは、50の異なるX線投影画像において撮像されるように移動速度、及び、上記X線投影画像の捕捉の瞬間が選択されるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線源と、X線検出器と、検査されるべき対象物の一連のX線投影画像の捕捉中に撮像面に対して平行な移動面において検査されるべき対象物を移動する移動装置と、X線投影画像の捕捉及び移動装置を制御する制御装置とを含み、検査されるべき対象物のスライス画像が断層写真合成方法を用いてX線投影画像から形成される、検査されるべき対象物のスライス画像を形成するX線装置に関わる。本発明は、検査されるべき対象物のスライス画像を形成する対応する方法にも関わる。
【背景技術】
【0002】
断層写真合成(tomosynthesis)法を用いてスライス画像を形成することは、長い間公知である。X線源及びX線検出器は、平行な面の間に置かれる検査されるべき対象物のX線投影画像を捕捉するためにこの平行な面において両方向に移動される。このような移動は、X線源とX線検出器との間の投影線、つまり、X線源の焦点とX線検出器の中心との間の接続線が、各X線投影画像に関して検査されるべき対象物の同じ点を通って延在するようにして実施される。異なるスライス画像は、異なるX線投影画像において検査されるべき対象物の撮像されるべきスライスのボクセルと関連のある画像値を単に加えることで形成され得る。検査されるべき対象物自体は、X線投影画像の捕捉中移動されない。
【0003】
DE19756697A1は、小包をX線断層写真合成する装置を開示する。ここでは、小包は、移動装置を手段としてX線システムの中を直線的に移動され、このX線システムは、小包が異なる角で同時に照射されるようにしてファンビームが構成されるX線走査ユニットを少なくとも3つ含む。
【0004】
公知の方法によると、全ての場合において検査されるべき対象物の非常に限定された部分の検査だけが可能である。より大きい対象物の検査及びそのスライス画像の形成に関して、このような公知の方法は、検査されるべき対象物の異なる領域において何回か行われなくてはならず、その後、所望であれば別々に形成されたスライス画像は組み合わされ得る。しかしながら、方法を一回実行するだけで検査されるべき対象物の大きい面積の検査を可能にし、最短の可能な期間内で大きい面積のスライス画像、例えば、患者の身体全体のスライス画像、又は、手荷物検査用法の場合には大きい手荷物のスライス画像の形成を可能にすることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、短期間内で大きい検査域のスライス画像を形成できる点で改善されたX線装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、前述の種類のX線装置及び前述の種類の方法に基づき、X線源とX線検出器とがX線投影画像の捕捉中に静的になるよう配置され、検査されるべき対象物の検査域中の撮像されるべき全ての点が少なくとも10の、好ましくは少なくとも50の異なるX線投影画像において撮像されるように検査されるべき対象物の移動速度及びX線投影画像の捕捉の瞬間が選択されるようにして制御装置が構成されることで実現される。
【0007】
本発明は、X線投影画像の捕捉中、X線源及びX線検出器の代わりに検査されるべき対象物、つまり、患者或いは検査されるべき手荷物を移動することが有利であるといった認識に基づく。X線投影画像の捕捉の瞬間及び検査されるべき対象物の移動速度は、検査されるべき対象物における撮像されるべき検査域の各点が少なくとも最小限の数のX線投影画像に現れるよう、この場合ディジタルタイプであることが好ましい関連のある断層写真合成方法に対して最適化され、上記最小限の数は、十分な画像の質を実現するよう少なくとも10であるが、少なくとも50又は100乃至200となることさえ好ましい。しかしながら、この数は、検査されるべき対象物のタイプ、状態、及び、大きさに非常に依存する。これにより、本発明による方法の単一の実行後に大きい対象物のスライス画像、例えば、外傷走査に必要となる患者の身体全体のスライス画像を形成することも可能となる。更に、本発明によるX線装置及び方法は、材料を試験するため、及び、手荷物を検査するためにも使用され得、既存の一連の処理に組み込まれることが可能となる。
【0008】
断層撮影角(tomosynthesis angle)、つまり、検査されるべき対象物を横切り、X線検出器に入射する、X線源から出射するX線ビームの開口角を最適化するためには、X線源とX線検出器との間の距離は本発明による一実施例において変えられ得る。X線検出器が静的となるよう配置される間に撮像面に対応する検出面に対して垂直な方向にあるX線源の位置を適合することが特に可能とならなくてはならない。その結果、断層撮影角は、画像の質が最適となるように最適化され得る。断層撮影角が大きいほど、画像の質は良くなる。しかしながら、X線源の位置は、X線投影画像の捕捉中、変化されないことが好ましい。
【0009】
更なる好ましい実施例では、毎回異なる位置をX線源が占有する間、少なくとも2つのシリーズのX線投影画像が捕捉される。X線源は、検出器に対して非対称的に、つまり、例えば、第1のシリーズの捕捉中は検出器の左エッジ域に面し、第2のシリーズの捕捉中は検出器の右エッジ域に面すようにして配置されることが好ましい。この実施例は、断層撮影角、従って、画像の質を更に最適化することを可能にする。
【0010】
断層撮影角は、本発明の更なる実施例に含まれ、第1のX線検出器に隣接して配置される少なくとも一つの更なるX線検出器を用いて更に最適化され得る。
【0011】
本発明によると、移動装置は、X線投影画像の捕捉に関して不規則な速度で、異なる、変化する方向に移動されることが好ましい。スライス画像中のアーチファクトの形成は、X線投影画像の捕捉中に検査されるべき対象物がX線ビームの中を同じ速度で直接的に且つ連続的に移動されず、移動速度及び方向が絶え間なく変化する間に「無秩序」的に移動されるとき減少されるか回避され得ることが分かる。発生する撮像結果及びアーチファクトが最少となるため、移動装置を手動で且つ完全に不規則的に移動することが有利となる。
【0012】
更なる有利な実施例は、従属項に記載される。本発明によるスライス画像の形成方法は、本発明によるX線装置に対して上記する、且つ、請求項1に関連する従属項に記載するような同一の又は同様の方法で詳しく述べることができ、且つ、そのようなバージョンで実現されてもよいことに注意する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるX線装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明によるX線装置の更なる実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0015】
図1に示すX線装置には、X線源1と、好ましくは平坦の二次元X線検出器2(イメージインテンシファイアでもよい)とが設けられ、X線源とX線検出器2との間で患者4が移動装置3上に配置され、移動装置は、この場合患者台である。患者4が上におかれた移動装置3は、X線投影画像の捕捉のために移動面Bにおいて、つまり、X方向及び/又はy方向に移動され、それにより、円錐形のX線ビーム6は患者4の異なる領域を連続的に横切り、上記領域はX線検出器2上の撮像面Aにおいて撮像される。患者4の移動は、X線源1及びX線検出器2のように制御装置5によって制御される。X線源1及びX線検出器2は、X線投影画像を捕捉するために静的であるよう配置される。しかしながら、X線源1の位置は、断層撮影角αを最適化するためにz方向に変化され得る。
【0016】
断層写真合成法を用いて形成されるスライス画像の画像の質は、断層撮影角αと、検査域中の撮像されるべき点に対してデータ捕捉中に形成されるX線投影画像の数nとに本質的に依存する。断層撮影角αは、検出器の幅w=2w、及び、検出器2とX線源1との間の距離d=d+dから、
【0017】
【数1】

として得られる。
【0018】
投影画像の数nは、撮像されるべき点がX線ビーム内にある時間t、及び、検出器の撮像率fから、
【0019】
【数2】

として得られる。
【0020】
時間tは、移動装置の速度v、及び、X線源とX線検出器との間の接続軸7の方向にある点の位置zから、
【0021】
【数3】

として得られる。
【0022】
最大速度vmaXは、撮像率f、及び、必要な数nのX線投影画像に依存し、
【0023】
【数4】

となる。
【0024】
これは、例に基づいて以下に詳細に説明する。患者の最大の高さdがd=50センチメートル(cm)であり、zがz=d−dとして定義されると仮定する。検出器の撮像率fは、毎秒f=25画像と仮定され、検出器の寸法は30×40cmであると仮定される。十分な画像の質を実現するためには、患者の各点は、上記値が仮定されているとき少なくともn=100回撮像されるべきである。以下の表は、患者を移動するために使用され得る最大の速度、及び、前述の種類の検出器に対する結果となる断層撮影角を含む。
【0025】
【表1】

到達することができる断層撮影角が高品質の断層X線写真又はスライス画像を形成するのに常に十分に大きくはないため、記載した構成に更なる変更を加えてもよい。例えば、図2に示すように、X線源及びX線検出器の非対称的な配置が選択され得る。第1のシリーズのX線投影画像を捕捉するためには、X線源1は検出器2の右側のエッジ域21に面すよう配置され(図2のaに示すように)、第2のシリーズのX線投影画像を捕捉するためには、X線源1は検出器2の左側のエッジ域22に面すよう配置される。移動装置3の移動方向は、第2の段階において逆にされる。断層撮影角αは、このような配置を使用するとき2倍にされ得る。原則として、断層撮影角をより広げるために2つ以上のシリーズのX線投影画像を捕捉することも可能である。
【0026】
単一の検出器を使用する代わりに、検出器の面積を増分するよう一つ以上の更なる検出器が使用されてもよい。これは、図1に示す構成、並びに、図2に示す構成に対して行われてもよく、図2に示す構成において、2つの検出器からなる構成に対して90°(d=100mmに対して)乃至62°(d=500mmに対して)の最大の断層撮影角が得られる一方で、4つの検出器からなる構成に対して107°(d=100mmに対して)乃至78°(d=500mmに対して)の断層撮影角が得られる。
【0027】
アーチファクトの形成を回避するために、投影画像の捕捉中の患者の動きに対してモータ制御を使用する代わりに、患者を上において患者台を手動で且つ完全に不規則的に、つまり、任意の移動方向に移動することも可能であり、当然のことながら、撮像されるべき患者の全ての点は、X線ビームによって十分な回数横切られるべきである。
【0028】
患者用の移動装置の瞬間的な位置を測定する手段(これら手段は図示されない)が設けられることも好ましい。このような手段は、移動装置自体に、例えば、電位差計の形態で設けられることが好ましく、電位差計の測定された値は、台の瞬間的な位置に比例する。このような位置測定は、検査されるべき対象物の動きを制御し、X線投影画像の捕捉の瞬間を制御するために使用される。
【0029】
本発明は、医学目的だけでなく、材料を試験すること、又は、手荷物を検査することにも好適であり、例えば、コンベアベルト又は移動システムに対する製造処理に組み込まれ得る。
【符号の説明】
【0030】
1 X線源
2 X線検出器
3 移動装置
4 患者
5 制御装置
6 X線ビーム
7 接続軸
21 検出器の右側エッジ域
22 検出器の左側エッジ域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、X線検出器と、検査されるべき対象物の一連のX線投影画像の捕捉中に撮像面に対して平行な移動面で検査されるべき対象物を移動する移動装置と、上記X線投影画像の捕捉及び上記移動装置を制御する制御装置とを有し、上記検査されるべき対象物のスライス画像が断層写真合成方法を用いて上記X線投影画像から形成される、検査されるべき対象物のスライス画像を形成するX線装置であって、
上記X線源及び上記X線検出器は、上記X線投影画像の捕捉中に静的であるよう配置され、
上記制御装置は、上記検査されるべき対象物の検査域中の撮像されるべき全ての点が少なくとも10の、好ましくは、少なくとも50の異なるX線投影画像において撮像されるように上記検査されるべき対象物の移動速度、及び、上記X線投影画像の捕捉の瞬間が選択されるようにして構成されることを特徴とするX線装置。
【請求項2】
上記検査されるべき対象物の上記移動速度、及び、上記X線投影画像の捕捉の瞬間は、上記検査されるべき対象物の検査域中の撮像されるべき全ての点が100乃至200の異なるX線投影画像において撮像されるようにして調節されることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項3】
上記X線源と上記X線検出器との間の距離は変えることができることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項4】
スライス画像を形成するよう少なくとも2つのシリーズのX線投影画像が捕捉され、上記X線源が上記シリーズを捕捉するために異なる位置に配置されることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項5】
上記X線源は、第1のシリーズを捕捉するために上記X線検出器の第1のエッジ域に面し、第2のシリーズを捕捉するために上記X線検出器の第2のエッジ域に面するよう配置され、上記第1のエッジ域は上記第2のエッジ域に面するように位置することを特徴とする請求項4記載のX線装置。
【請求項6】
X線投影画像の捕捉に関して、上記第1のX線検出器に隣接して少なくとも一つの更なるX線検出器が配置されることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項7】
上記移動装置は、手動で、又は、モータを用いて移動され得、台の位置を測定する手段が設けられることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項8】
上記X線投影画像の捕捉に関して、上記移動装置は、不規則な速度で異なる変化する方向に好ましくは手動で移動されることを特徴とする請求項1記載のX線装置。
【請求項9】
X線源と、X線検出器と、検査されるべき対象物の一連のX線投影画像の捕捉中に撮像面に対して平行な移動面で検査されるべき対象物を移動する移動装置と、上記X線投影画像の捕捉及び上記移動装置を制御する制御装置とを手段として検査されるべき対象物のスライス画像を形成し、上記検査されるべき対象物のスライス画像が断層写真合成方法を用いて上記X線投影画像から形成される、方法であって、
上記X線源及び上記X線検出器は、上記X線投影画像の捕捉中に静的であるよう配置され、
上記検査されるべき対象物の移動速度及び上記X線投影画像の捕捉の瞬間は、上記検査されるべき対象物の検査域中の撮像されるべき全ての点が少なくとも10の、好ましくは、少なくとも50の異なるX線投影画像において撮像されるように選択されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−183731(P2009−183731A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91687(P2009−91687)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【分割の表示】特願2002−8954(P2002−8954)の分割
【原出願日】平成14年1月17日(2002.1.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】