説明

X線CT撮影装置

【課題】X線CT撮影における画像の解像度を向上する技術を提供すること。
【解決手段】X線コーンビームBX1を射出するX線発生器13とX線検出器21とを、互いに対向させた状態で、撮影対象領域CA(歯列弓の一部)の中心を回転中心として、180度にX線コーンビームBX1のファン角を加えた回転角分回転させて、投影データを収集する。この回転時において、X線発生器13と撮影対象領域CAとの間にX線の散乱度の高い高散乱領域HSRが介在するように、X線発生器13およびX線検出器21を回転させる。これにより、高散乱領域HSRにおけるX線の散乱によるX線画像の画質低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
X線を用いたCT撮影を行う技術に関し、特に、X線画像の画質を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野等において、X線を用いて被写体に対してX線を照射して投影データを収集し、得られた投影データをコンピュータ上で再構成して、所定のCT画像(断層面画像、ボリュームレンダリング画像等)を生成するX線CT撮影が行われている。
【0003】
このようなX線CT撮影装置は、X線発生器とX線検出器との間に、被写体を配置した状態で、X線発生器とX線検出器とを被写体周りにおよそ180度回転させつつ、X線発生器からコーン状のX線コーンビームを被写体に照射して、投影データを収集する(いわゆるハーフスキャン撮影)。
【0004】
ところで、医療分野におけるハーフスキャンを用いた撮影技術において、人体背面から放射線が照射されるようにX線発生部と2次元検出器に対する被写体を支持する支持部材の回転開始位置を設定する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、歯科のX線CT撮影装置において、X線発生器とX線検出器を対向配置した旋回アームを半回転つまり180度旋回させてCT撮影する構成が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−125174号公報
【特許文献2】特開2000−139902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の技術の目的は、組織荷重係数の小さい背面方向からX線を入射させて、人体中の前面または中央の組織のX線被曝量を低減させようとするものである。また、特許文献2に記載の技術は、単に撮影対象となる歯牙を180°の旋回アームの旋回でCT撮影できることの開示にとどまり、いずれも被写体に対する被写体中の撮影対象領域を透過したX線が散乱する度合いが高い領域にさらに入射するか否かについては何ら考慮されていない。そのため、撮影対象領域を透過したX線が散乱する度合いが高い領域にさらに入射することにより、鮮明なCT画像が得られないことがある。
【0008】
また、特許文献1においては、被写体に撮影対象領域のほかに、X線が散乱する度合いが高い領域が存在する場合自体が想定されておらず、その影響を回避する技術に係る思想は全く見受けられない。
【0009】
特許文献2に記載の技術においても、撮影対象領域のほかに、X線が散乱する度合いが高い領域が存在する場合に、その影響を回避する技術に係る思想は全く見受けられない。そのため、撮影対象領域を透過したX線が散乱する度合いが高い領域にさらに入射することにより、鮮明なCT画像が得られないことがある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、X線CT撮影における画像の解像度を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、X線CT撮影を行う装置において、被写体に向けてX線の束であるX線コーンビームを出射するX線発生器と、前記X線コーンビームを検出するX線検出器と、前記X線発生器と前記X線検出器とを、前記被写体を間に挟んで対向させるように支持する支持部と、前記支持部を旋回駆動する旋回駆動部と、前記旋回駆動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記支持部が旋回駆動されて、前記X線発生器および前記X線検出器を、180度以上360度未満の範囲の回転角で前記被写体の周りを旋回させるX線CT撮影が行われる際に、前記X線発生器と撮影対象領域との間のX線の散乱度が、前記X線検出器と前記撮影対象領域との間の散乱度よりも大きくなる軌道上を、前記X線発生器が移動するように前記旋回駆動部を制御する。
【0012】
また、第2の態様は、第1の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線CT撮影が前記X線コーンビームで前記被写体の一部を撮影する部分CT撮影である。
【0013】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係るX線CT撮影装置において、前記制御部は、前記X線発生器と前記X線検出器とを、それぞれ前記X線CT撮影の開始位置から前記被写体の撮影対象領域を挟んで対向する対向位置まで旋回させてX線CT撮影が行われるように、前記旋回駆動部を制御する。
【0014】
また、第4の態様は、第3の態様に係るX線CT撮影装置において、前記制御部は、前記X線発生器と前記X線検出器とを、それぞれのX線CT撮影の前記開始位置から180度に前記X線コーンビームの旋回方向の広がりの角度を加えた回転角で旋回させるX線CT撮影が行われるように、前記旋回駆動部を制御する。
【0015】
また、第5の態様は、第4の態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線発生器は、X線の通過を部分的に遮断することによって、前記X線コーンビームを成形するX線規制部を備え、前記X線CT撮影の際に、前記規制部が前記X線の通過を規制することよって、前記CT撮影領域内のいかなる点についても、丁度180度の範囲の各方向からのみ前記X線コーンビームが照射される。
【0016】
また、第6の態様は、第5の態様に係るX線CT撮影装置において、前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の開始時点から、前記支持部の旋回量に応じて、次第に前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射範囲を拡大するように前記X線の通過を規制する。
【0017】
また、第7の態様は、第5の態様に係るX線CT撮影装置において、前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の終了時点に近づくにつれて、前記支持部の旋回量に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小するように前記X線の通過を規制する。
【0018】
また、第8の態様は、第1から第7の態様までのいずれか1態様に係るX線CT撮影装置において、前記撮影対象領域が、少なくとも被撮影者の歯列弓の一部を含み、前記制御部は、前記X線CT撮影の際に、前記X線発生部が前記被撮影者の背後側を移動するように前記旋回駆動部を制御する。
【0019】
また、第9の態様は、第8の態様に係るX線CT撮影装置において、前記歯列弓の一部を撮影対象として、前記撮影対象領域の位置の指定を受け付ける領域設定部を備え、前記制御部が、指定された前記撮影対象領域の位置ごとに設定された前記X線発生器と前記X線検出器のそれぞれの前記X線CT撮影における旋回開始位置から旋回終了位置まで前記X線発生器と前記X線検出器が旋回するように前記旋回駆動部を制御する。
【0020】
また、第10の態様は、第1から第9の態様までのいずれか1態様に係るX線CT撮影装置において、前記X線発生器の旋回軌道の延長上に前記X線発生器と当接する機械的要素が存し、前記X線発生器から照射される前記X線コーンビームが、前記X線CT撮影の際に、前記X線発生器と前記撮影対象領域との間でX線の散乱度が前記X線検出器と前記撮影対象領域との間の散乱度よりも大きくなる領域を経由して旋回するように、前記X線発生器が前記機械的要素に近づくように旋回する。
【発明の効果】
【0021】
第1から第10の態様までに係るX線CT撮影装置によれば、X線CT撮影においてX線検出器とCT撮影領域の間に高散乱領域が介在することを抑制するように、X線発生器とX線検出器の旋回が制御されるので、比較的鮮明なCT画像を取得することができるという優れた効果を奏し得る。
【0022】
第2の態様に係るX線CT撮影装置によれば、被写体の一部である比較的小さな部分についてX線CT撮影を行うことができるため、X線被曝量を抑え、かつ鮮明なCT画像が得られるという優れた効果を奏し得る。
【0023】
第3の態様に係るX線CT撮影装置によれば、X線発生器とX線検出器のそれぞれがCT撮影の開始地点の対向する位置まで旋回するとCT撮影が完了するので、より撮影時間が短いCT撮影ができるという優れた効果を奏し得る。
【0024】
第4の態様に係るX線CT撮影装置によれば、X線発生器とX線検出器のそれぞれが180度とX線コーンビームの旋回方向の広がりの角度分旋回するX線CT撮影が行われる。これにより、撮影対象領域内のすべての点ついて、180度の範囲の各方向からX線照射した投影データを取得できるため、鮮明なCT画像を取得することができるという優れた効果を奏し得る。
【0025】
第5の態様から第7の態様までに係るX線CT撮影装置によれば、取得されるX線の投影データが、180°分のデータのみに制限されるので、被写体の被曝線量を低減しつつ、かつ、より解像度の高いCT画像を取得することができるという優れた効果を奏し得る。
【0026】
第8の態様に係るX線CT撮影装置によれば、歯列弓の鮮明なCT画像を取得できるという優れた効果を奏し得る。
【0027】
第9の態様に係るX線CT撮影装置によれば、指定された部位ごとに湾曲した歯列弓の鮮明なCT画像を取得することができるという優れた効果を奏し得る。
【0028】
第10の態様に係るX線CT撮影装置によれば、当接物が無い地点からX線発生器の旋回をスタートするので、助走距離を確保することが可能となるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】高散乱領域において、X線が散乱する様子を説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係るX線CT撮影装置を示す概略斜視図である。
【図3】旋回アーム及び上部フレームをその内部構造とともに示す部分断面図である。
【図4】上部フレームをその内部構造とともに示す部分断面図である。
【図5】X線発生部を示す縦断面図である。
【図6】ビーム成形機構を示す斜視図である。
【図7】旋回アームを示す正面図である。
【図8】検出器ホルダを示す斜視図である。
【図9】X線CT撮影装置の構成を示すブロック図である。
【図10】X線CT撮影装置によるX線CT撮影の動作を示す概念図である。
【図11】X線CT撮影時において、X線コーンビームの照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図12】X線CT撮影時において、その他の制御方法により、X線コーンビームの照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図13】照射開始時と照射終了時またはその双方において、X線コーンビームの照射範囲を制御する構成を普遍的に説明するための図である。
【図14】X線CT撮影時において、X線コーンビームの検出範囲を制御する様子を示す図である。
【図15】X線CT撮影時において、その他の制御方法により、X線コーンビームの検出範囲を制御する様子を示す図である。
【図16】情報処理本体部のCPUによって実現される機能ブロックを示す図である。
【図17】X線CT撮影装置によるX線CT撮影の動作を示す流れ図である。
【図18】指定画面を示す図である。
【図19】撮影対象領域について、X線CT撮影を行うX線CT撮影装置の概略上面図である。
【図20】所定の撮影対象領域について、X線CT撮影を行うX線CT撮影装置の概略上面図である。
【図21】他の歯牙を高散乱領域とする場合の、X線CT撮影方法を説明するための図である。
【図22】第2実施形態に係るX線CT撮影装置の概略を示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0031】
<1.第1実施形態>
<1.1.概要>
図1は、高散乱領域HSRにおいて、X線が散乱する様子を説明するための図である。なお、図1(a)は、撮影対象領域CA(撮影対象領域)とX線検出器21との間に、高散乱領域HSRが存在する場合を示しており、図1(b)は、X線発生器13と撮影対象領域CAとの間に、高散乱領域HSRが存在する場合を示している。
【0032】
本実施形態では、X線発生器13とX線検出器21との間に、被写体M1を、具体的には被写体M1の撮影対象領域CAを挟んだ状態で、X線発生器13とX線検出器21とが、撮影対象領域CAの中心C1を軸にして180度以上360度未満の範囲で回転移動する。この回転移動の間、X線発生器13からは角錐状や円錐状等のX線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに照射する。そして撮影対象領域CAを透過したX線コーンビームBX1が、X線検出器21にて検出されて、例えば電気信号に変換されて出力される。このようにしてX線の投影データが収集される。
【0033】
このような、X線コーンビームを用いたCT撮影によると、コーン状のX線コーンビームBX1を用いて撮影するため、X線発生器とX線検出器の旋回回数が1回ですみ、また360度未満の角度でCT撮影が実行できるため、撮影時間が短く、患者の負担も小さくなる。特に、180度から180度にX線コーンビームのファン角を加えた程度の旋回角度でCT撮影を行う、いわゆるハーフスキャンでは、撮影時間の短縮、患者負担の軽減の効率が高い。
【0034】
本実施形態において、高散乱領域HSRとは、周囲の領域に比べて比較的X線を散乱させる度合の強い領域をいう。より詳細には、X線発生器13と撮影対象領域CAとの間に在る領域でのX線の散乱度と、撮影対象領域CAとX線検出器21との間に在る領域でのX線の散乱度とを比較したときに、より散乱度の高い方の領域が高散乱領域HSRとされる。具体的に、人体の頭部においては、歯列の背後には脊髄や、脊髄以外の硬組織が多く存在する。頭部全体を2分して考えると、歯列が関心領域である場合、歯列の背後の領域全体が高散乱領域HSRとなり、歯列の前面の領域が低散乱領域LSRとなる。
【0035】
本実施形態では、上述したように、X線発生器13とX線検出器21との間に、被写体M1の撮影対象領域CAを挟んだ状態で、X線発生器13とX線検出器21とが、撮影対象領域CAの中心C1を軸にして回転移動する。
【0036】
X線発生器13とX線検出器21とが回転移動するために、X線発生器13と撮影対象領域CAの間に挟まれる領域は回転角度の変化に応じて刻々と変化する。
【0037】
いずれの領域を高散乱領域HSRとし、低散乱領域LSRとするか、設定のしかたは他にも考えうる。例えば、X線発生器13とX線検出器21とが回転移動可能な範囲内で、X線発生器13と撮影対象領域CAで挟まれる領域のうち、ある領域と別の領域に着目し、両者の散乱度を比較して、散乱度が高い領域を高散乱領域HSRとし、散乱度が低い領域を低散乱領域LSRとするように定めてもよい。
【0038】
図1(a)に示すように、撮影の関心領域ROIを含む円形の撮影対象領域CAとX線検出器21との間に高散乱領域HSR(ここでは、脊髄。頚部であるので頚椎。)が存在する場合、X線コーンビームBX1は、被写体M1の撮影対象領域CA(ここでは、前歯付近)を透過した後、X線検出器21に到達する前に高散乱領域HSRにおいて散乱される。すなわち、X線検出器21において、撮影対象領域CAを透過したX線を良好に検出することが困難となる。
【0039】
これに対し、図1(b)に示すように、X線発生器13と撮影対象領域CAとの間に高散乱領域HSRが存在する場合、X線コーンビームBX1が高散乱領域HSRを通過したとしても、撮影対象領域CAを透過したX線がX線検出器21に入射する。すなわち、図1(a)に示す場合よりも、比較的鮮明なX線画像を取得することが可能となる。
【0040】
そこで、本実施形態では、図1(b)に示すように、180度以上360度未満の範囲の回転角で被写体M1の周りを旋回させてX線CT撮影を行う際に、X線発生器13と撮影対象領域CAとの間のX線の散乱度が、X線検出器21と撮影対象領域CAとの間の散乱度よりも大きくなる軌道上を、X線発生器13とX線検出器21とが移動するように制御される。
【0041】
<1.2.X線CT撮影装置の構成および機能>
図2は、第1実施形態に係るX線CT撮影装置100を示す概略斜視図である。X線CT撮影装置100は、X線CT撮影を実行して、投影データを収集する本体部1と、本体部1において収集した投影データを処理して、各種画像を生成する情報処理装置8とに大別される。
【0042】
本体部1は、被写体M1に向けてX線の束で構成される角錐状のX線コーンビームBX1を出射するX線発生部10と、X線発生部10で出射されたX線を検出するX線検出部20と、X線発生部10とX線検出部20とをそれぞれ支持する支持部300(旋回アーム30)と、支持部300(旋回アーム30)を吊り下げ、支柱50に対して鉛直方向に昇降移動可能な昇降部40と、鉛直方向に延びる支柱50と本体制御部60とを備えている。
【0043】
X線発生部10およびX線検出部20は、旋回アーム30の両端部にそれぞれ吊り下げ固定されており、互いに対向するように支持されている。旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を介して、昇降部40に吊り下げ固定されている。
【0044】
本実施形態では、支持部300が旋回軸31回りに旋回する旋回アーム30で構成され、X線発生部10とX線検出部20とが、略直方体状の旋回アーム30両端のそれぞれに取り付けられているが、X線発生部10とX線検出部20とを支持する支持部300の構成は、これに限られるものではない。例えば円環状部分の中心を回転中心として回転する部材に、X線発生部10とX線検出部20とが対向するようにして支持されていてもよい。
【0045】
ここで、以下においては、旋回軸31の軸方向と平行な方向(ここでは、鉛直方向)を「Z軸方向」とし、このZ軸に交差する方向を「X軸方向」とし、さらにX軸方向およびZ軸方向に交差する方向を「Y軸方向」とする。X軸およびY軸方向は任意に定め得るが、ここでは、被写体M1である被検者がX線CT撮影装置100において位置決めされて支柱50に正対した時の被検者の左右の方向をX軸方向とし、被検者の前後の方向をY軸方向と定義する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、本実施形態では互いに直交するものとする。
【0046】
これに対して、旋回する旋回アーム30上の3次元座標については、X線発生部10とX線検出部20とが対向する方向を「y軸方向」とし、y軸方向に直交する水平方向を「x軸方向」とし、これらxおよびy軸方向に直交する鉛直方向を「z軸方向」とする。本実施形態およびそれ以降の実施形態においては、上記のZ軸方向はz軸方向と共通する同一の方向となっている。また本実施形態の旋回アーム30は、鉛直方向に延びる旋回軸31を軸に回転する。したがって、xyz直交座標系は、XYZ直交座標系に対してZ軸(=z軸)周りに回転することとなる。
【0047】
なお、図2に示すように、X線発生部10からX線検出部20へ向かう方向を(+y)方向とし、この(+y)方向に直交する水平な左手方向(被写体M1の背面側)を(+x)方向とし、鉛直方向上向きを(+z)方向とする。
【0048】
昇降部40は、鉛直方向に沿って延びるように立設された支柱50に係合している。昇降部40は、上部フレーム41と下部フレーム42とが、支柱50に係合する側の反対側に突出しており、略U字状の構造を有している。
【0049】
上部フレーム41には、旋回アーム30の上端部分が取り付けられている。このように旋回アーム30は、昇降部40の上部フレーム41に吊り下げされており、昇降部40が支柱50に沿って移動することによって、旋回アーム30が上下に移動する。
【0050】
下部フレーム42には、被写体M1(ここでは、人体の頭部)を左右から固定するイヤロッドや、顎を固定するチンレスト等で構成される被写体固定部421が設けられている。旋回アーム30は、被写体M1の身長に合わせて昇降されて適当な位置に合わせられ、その状態で被写体M1が被写体固定部421に固定される。
【0051】
図2に示すように、X線検出部20の内部には、本体部1の各構成の動作を制御する本体制御部60が備えられている。また、本体部1の各構成は、防X線室70内に収容されており、この防X線室70の壁の外側には、本体制御部60からの制御に基づいて、各種情報を表示する液晶モニタ等で構成された表示部61と、本体制御部60に対して各種の命令入力を実現するためのボタン等で構成された操作パネル62とが取り付けられている。操作パネル62は、生体器官等の撮影領域の位置等を指定すること等にも用いられる。
【0052】
情報処理装置8は、例えばコンピュータやワークステーション等で構成された情報処理本体部80を備えており、通信ケーブルによって本体部1との間で各種データを送受信することができる。ただし、本体部1と情報処理装置8との間で、無線的にデータのやり取りが行われてもよい。
【0053】
情報処理装置8は、本体部1で取得された投影データを加工して、ボクセルで表現される三次元データ(ボリュームデータ)を再構成する。例えば、三次元データ中に特定の面を設定し、その特定の面の断層面画像が再構成可能である。
【0054】
情報処理本体部80には、例えば液晶モニタ等のディスプレイ装置からなる表示部81およびキーボード、マウス等で構成される操作部82が接続されている。オペレータは、操作部82を介して情報処理装置8に対して各種指令を与えることができる。なお、表示部81は、タッチパネルで構成することも可能であり、この場合は、操作部82の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0055】
なお、図示を省略するが、昇降部40に固定されたアームの先に、セファロ撮影時に使用されるセファロスタットを設けた構造としてもよい。セファロスタットとしては、具体的には、特開2003−245277に開示されているセファロスタットを含む種々のものを採用することができる。このようなセファロスタットには、例えば、頭部を定位置に固定する固定具やセファロ撮影用のX線検出器が備えられている。
【0056】
図3は、旋回アーム30及び上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。また図4は、上部フレーム41をその内部構造とともに示す部分断面図である。なお図3は、X線CT撮影装置100を側方から見たときの旋回アーム30、上部フレーム41を示す図であり、図4は、上方から見たときの上部フレーム41を示す図である。
【0057】
上部フレーム41は、旋回アーム30を前後方向(Y軸方向)に移動するYテーブル35Y、及び、Yテーブル35Yに支持されて横方向(X軸方向)に移動するXテーブル35Xで構成されるテーブル35を備えている。また、上部フレーム41は、Yテーブル35Yを駆動するY軸モータ60Yと、Yテーブル35Yに対してXテーブル35XをX方向に移動させるX軸モータ60Xと、Xテーブル35Xと旋回アーム30とを連結する旋回軸31を中心として、旋回アーム30を旋回させる旋回用モータ60Rを備えている。なお、本実施形態では、旋回軸31が鉛直方向に沿って延びるように構成されているが、旋回軸は鉛直方向に対して任意の角度で傾いていてもよい。
【0058】
旋回軸31と旋回アーム30の間にはベアリング37が介在しており、旋回軸31に対する旋回アーム30の回転を容易にしている。旋回用モータ60Rは旋回アーム30の内部に固定されており、ベルト38により旋回軸31に回動力を伝達して、旋回アーム30を旋回させる。旋回軸31、ベアリング37、ベルト38及び旋回用モータ60Rは、旋回アーム30を旋回する旋回機構の1例であり、旋回アーム30の旋回機構はこのようなものに限定されない。
【0059】
X線CT撮影装置100では、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y及び旋回用モータ60Rの制御モータを、予め決められたプログラムに従って駆動することによって、旋回アーム30を旋回させながら、Xテーブル35X及びYテーブル35Yを前後(Y方向)及び左右(X方向)に移動できる。
【0060】
{X線発生部10}
図5は、X線発生部10を示す縦断面図である。また、図6は、ビーム成形機構16を示す斜視図である。図4に示すように、X線発生部10は、X線発生部10の備える各構成を収納するためのハウジング11を備えている。ハウジング11は、回転機構12を介して、旋回アーム30に連結されている。
【0061】
なお、旋回アーム30のハウジングとX線発生部10のハウジング11を一体とし、X線発生部10が回転機構12を介して旋回アーム30に連結された構造として、ハウジング11の内部で回転機構12によってX線発生器13が回動するようにしてもよい。
【0062】
回転機構12は、旋回アーム30の内部に固定されている回転モータ121と、旋回アーム30に固定された垂直軸122と、回転モータ121と垂直軸122とを連結する歯車機構123と、ハウジング11と垂直軸122に固定された固定部材124とを有する。
【0063】
ハウジング11は、後述の本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する回転モータ121の駆動によって、垂直軸122周りに水平面内で回転可能となるように構成されている。このような回転機構12は、例えばセファロ撮影時に使用される。
【0064】
なお、必ずしも回転モータ121でハウジング11を回動させつつX線ビームを照射させる構造とする必要はなく、例えば、X線発生部10が規定された方向を向いた後は回動を止め、後述するX線発生器13の前面のビーム成形板15を移動させてビーム通過孔152を移動させつつX線ビームで被写体M1を走査するようにしてもよい。すなわち、本願出願人の出願にかかる特開2003−245277に開示する構造のようなものでもよい。
【0065】
また、回動用モータ121を駆動するのではなく、旋回用モータ60Rを駆動することによって、旋回アーム30を旋回させつつ、セファロ撮影が行われてもよい。
【0066】
ハウジング11の内部には、X線発生器13が収納されている。X線発生器13は、X線発生源であるX線管9と、X線管9をX線検出部20に対向する部分(図4中、左側)を除いて覆うX線遮断ケース14とによって構成されている。X線遮断ケース14のX線検出部20に対向する領域には、ビーム成形板15が備えられている。このビーム成形板15は、ビーム成形機構16に取り付けられている。
【0067】
図6に示すように、ビーム成形機構16は、複数のガイドローラ161を介して複数の垂直ガイドレール162に沿って昇降自在に支持されたブロック163を有する。ブロック163は、X線管9から出射されたX線をX線検出部20に向けて案内するX線通過孔164(図5参照)を備えている。
【0068】
ブロック163は、ハウジング11に固定された昇降モータ165にネジ機構を介して連結されている。昇降モータ165を駆動することにより、X線発生部10は、X線の照射角度をZ軸方向に移動できる。これにより、X線発生部10を上下動させることなく、X線の照射角度を上下に移動できる。
【0069】
ブロック163の前方(X線通過孔164の外部)には、X線管9から出射されたX線コーンビームを成形する複数のX線を通過させる開口が設けられたビーム成形板15が配置されている。このビーム成形板15は、X線の通過を部分的に遮断し、照射範囲を規制するX線規制部となっている。ビーム成形板15は、ブロック163の前面に固定された複数の案内ローラ166によって水平方向に移動可能に支持されている。
【0070】
ビーム成形板15の一端には、連結アーム167が連結されている。連結アーム167には、ナット168が取り付けられている。ブロック163は、ビーム成形板15の長手方向に伸びるネジ軸169を回転自在に支持する。ナット168はネジ軸169に螺合されており、ネジ軸169がブロック163に固定されたモータ170に連結されている。
【0071】
ビーム成形板15は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作するモータ170の駆動によって、ブロック163の前部を水平方向の一方向に、すなわちX線コーンビームと交差する方向に移動する。
【0072】
本実施形態において、ビーム成形板15には、3種類のX線通過開口(一次スリット、コリメータ)が形成されている。これら3種類のX線通過開口には、X線コーンビームをコーン状(角錐状の場合も含む。)に成形するための長方形又は正方形のX線CT撮影用のビーム通過孔151と、X線ビームを細長い帯状に成形して細隙ビームとするための縦長のパノラマ撮影用のビーム通過孔153と、同じく縦長のセファロ撮影用のビーム通過孔152とが含まれる。
【0073】
例えばX線CT撮影用のビーム通過孔151をX線管9に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて角錐台状に広がるX線のコーンビームが出射される。なお、X線CT撮影用のビーム通過孔151の縦長と横長が同じとすると、X線コーンビームはX線の進行方向と直交する横断面が略正方形を有することとなる。
【0074】
また、パノラマ撮影用のビーム通過孔153又はセファロ撮影用のビーム通過孔152をX線管9に対向させた場合、X線発生部10からX線検出部20に向けて、横断面が縦長の略平坦な板状(ただし、厳密には角錐台)のX線コーンビームが出射される。
【0075】
またビーム成形板15の前面には、水平方向に移動して、ビーム通過孔151の開口を部分的に遮断する遮蔽板171が設けられている。遮蔽板171は、水平移動機構(図示せず)に接続されており、ビーム成形板15に対して水平方向に移動可能に構成されている。ビーム成形機構16は、本体制御部60による制御信号に基づいて、遮蔽板171を水平方向に移動させることにより、ビーム通過孔151を通過するX線を部分的に遮断する。これにより、X線コーンビームの水平方向の広がり(幅)が規制される。なお、このX線の透過を規制する機能は、X線CT撮影であって、比較的小さい範囲を撮影するモードを実行する際に使用される。以上のように、本実施形態では、ビーム成形機構16によって、X線の透過を規制する規制部が構成されている。
【0076】
なお、前述のブロック163のX線通過孔164の水平方向の幅を、ビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅とし、モータ170の駆動によるビーム成形板15の移動によりコーンビームの水平方向の広がりの開度を調整してもよい。
【0077】
この場合、コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅で照射させるためには、ビーム成形板15のビーム通過孔151が、X線通過孔164と重なることで、X線通過孔164を通過するX線を全く妨げない位置にくるように、ビーム成形板15をブロック163に対して変位させればよい。
【0078】
また、ビーム成形板15のビーム通過孔151がX線通過孔164を通過するX線を規制する位置に配置されるように、ビーム成形板15をブロック163に対して変位させることにより、X線コーンビームの水平方向の広がり幅を最大幅より限定した幅で照射できる。このように、X線コーンビームの水平方向の広がりはビーム成形板15の位置によって制御される。
【0079】
また、図示しないが、ビーム成形板15の前後のいずれかに別のビーム成形板を設けてもよい。具体的には、本願出願人の出願にかかる実公平7−15524の図3に開示のある複数のマスク板4、5の重ね合わせでX線の規制を行うX線絞り装置のような構造のものを用いることができる。
【0080】
詳細には、もう一つのビーム成形板に所定形状のビーム通過孔を設け、ビーム成形板のビーム通過孔の水平方向の幅を、ビーム成形板15のビーム通過孔151の水平方向の幅と同じ幅またはそれ以上の幅とし、ビーム成形板15に対して、別のビーム成形板を相対的に変位可能に構成する。ビーム通過孔151と他のビーム形成板のビーム通過孔との位置関係を制御することによって、X線コーンビームの水平方向の広がりが制御される。
【0081】
{X線検出部20}
図7は、旋回アーム30を示す正面図である。なお、図7では、X線検出部20の内部も一部図示している。X線検出部20は、X線検出部20の各構成を収納するためのハウジング200を備えている。
【0082】
ハウジング200には、X線を検出するためのX線検出器21と、X線検出器21を内部に保持する検出器ホルダ22と、検出器ホルダ22を水平方向にスライド移動可能に支持するガイドレール23と、ハウジング200に取り付けられた移動モータ24とを備えている。
【0083】
X線検出器21は、X線を検出する検出素子である半導体撮像素子を縦方向及び横方向に2次元に平面状に配列することによって構成された検出面を構成するX線センサを備えている。なお、X線センサとしては、例えばMOSセンサやCCDセンサのようなものが考えられるが、これらに限られるものではなく、CMOSセンサ等のフラットパネルディテクタ(FPD)やX線蛍光増倍管(XII)、その他の固体撮像素子等、様々なものを採用することができる。
【0084】
検出器ホルダ22は、移動モータ24の回転軸に取り付けたローラに当接している。検出器ホルダ22は、本体制御部60からの制御信号に基づいて動作する移動モータ24により駆動されて、ガイドレール23に沿って水平方向に移動する。
【0085】
図8は、検出器ホルダ22を示す斜視図である。検出器ホルダ22は、X線発生部10に対向する側に、ビーム通過孔(2次成形用スリットないしコリメータ)221,222を有する。ビーム通過孔221,222は、上述のビーム通過孔151,152のそれぞれの形状に対応しており、例えば、ビーム通過孔151を通過するX線コーンビームは、ビーム通過孔221でより高い精度で成形されてX線検出器21に投射される。
【0086】
なお、ビーム通過孔221,222を設けた部材は、省略することも可能である。
【0087】
X線検出器21は、略矩形のビーム通過孔151に対応するように矩形状に撮像素子が配列されて構成された検出素子群211と、縦長のビーム通過孔152に対応するように縦長に撮像素子が配列されて構成された検出素子群212とを備えている。X線検出器21は、検出器ホルダ22が形成するスロット224の内部に挿入される。
【0088】
スロット224にX線検出器21がセットされると、略矩形のビーム通過孔221の背後位置に、略正方形の検出素子群211が配置される。また、ビーム通過孔222の背後位置に検出素子群212が配置される。
【0089】
X線CT撮影時には、検出素子群211がビーム通過孔151を通過したX線が入射してくる位置に、パノラマ撮影時には、検出素子群212がビーム通過孔153を通過したX線に照射される位置に配置されるように、検出器ホルダ22の移動が制御される。
【0090】
なお、本実施形態ではX線検出器21に検出素子群211,212を設けているが、検出素子群211のみを設けて、X線CT撮影においてもパノラマ撮影においてもビーム通過孔151とビーム通過孔153の選択のみを行って同じ検出素子群211でX線を検出するようにしてもよい。その際、X線で照射される範囲のみの素子を読み出すように制御すると、画像信号送信の効率がよい。
【0091】
図9は、X線CT撮影装置100の構成を示すブロック図である。図9に示すように、旋回用モータ60R、X軸モータ60X、Y軸モータ60Y、及び被写体固定部421は、所定位置の被写体M1に対して旋回アーム30を相対的に移動させる駆動源となる駆動部65を構成している。そして駆動部65及び被写体固定部421は、X線管9を含むX線発生部10及びX線検出器21を含むX線検出部20を、被写体M1に対して相対的に移動させる移動機構として機能する。駆動部65は、旋回用モータ60Rを主要な要素として、旋回アーム30を旋回駆動する旋回駆動部の一例である。
【0092】
本実施形態では、XYテーブル35で構成される水平移動機構に旋回軸31を取り付けることによって、旋回アーム30を被写体M1に対して水平方向に移動させているが、例えば、被写体保持部421を椅子等で構成し、これを水平移動機構に接続することによって、旋回アーム30に対して被写体M1を相対的に移動させてもよい。また、旋回軸31及び被写体保持部421のそれぞれに、水平移動機構を設けて、それぞれを水平方向に移動可能に構成してもよい。
【0093】
ここで、X線CT撮影の際に、X線発生部10とX線検出部20を、被写体M1に対して旋回させる構成について付言する。
【0094】
X線CT撮影のために、X線発生部10とX線検出部20を、被写体M1に対して旋回させる構成は、旋回軸31を特定の位置に固定して旋回アーム30を旋回軸31の軸周りに旋回させるものに限らない。
【0095】
X線CT撮影においては、Xテーブル35X、Yテーブル35Yによって、旋回軸31を二次元平面(個々では水平面)内の特定の位置まで移動させた後、旋回軸31を当該位置に固定し、旋回アーム30を旋回軸31の軸周りに旋回させ、X線発生部10とX線検出部20を回転することができる。この場合、X線発生部10とX線検出部20の回転軸の位置は、旋回軸31の位置と一致することとなる。
【0096】
さらに、X線CT撮影において、Xテーブル35XとYテーブル35Yとの駆動によって、旋回軸31を2次元平面内で移動させながら、同時に、旋回アーム30を旋回軸31周りに旋回させることができる。このような旋回軸31の移動による旋回アーム30の水平面内の移動と、旋回軸31周りの旋回アーム30の旋回との合成運動によって、X線発生部10とX線検出部20とを、旋回軸31の位置とは別の位置に設定される特定の回転軸の軸周りに回転させることができる。このように、機械的な旋回軸31とは別の箇所にX線発生部10とX線検出部20の回転軸を設定する例としては、特開2007−29168に記載されたX線CT撮影装置の構成を含む種々の技術を適宜利用することが可能である。
【0097】
本体制御部60は、駆動部65を制御するプログラムPG1を含む各種制御プログラムを実行するCPU601と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG1を記憶する記憶部602と、ROM603と、RAM604とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0098】
CPU601は、記憶部602に記憶されたプログラムPG1をRAM604上で実行することによって、各種の撮影モードに合わせて、X線発生部10を制御するX線発生部制御部601a及びX線検出部20を制御するX線検出部制御部601bとして機能する。
【0099】
なお、本体制御部60を構成するCPU601と情報処理本体部80を構成するCPU801とは、総合的に制御系を構成している。
【0100】
本体制御部60に接続された操作パネル62は、複数の操作ボタン等で構成されている。なお、操作パネル62に代わる、もしくは操作パネル62に併用される入力装置としては、操作ボタンのほか、キーボード、マウス、タッチペン等を採用することができる。また、音声による指令をマイク等で受け付けて認識するようにしてもよい。つまり、操作パネル62は操作手段の一例である。したがって、操作手段としては、操作者の操作を受け付けることができるのであればどのようなものでも構わない。また、表示部61をタッチパネルで構成することも可能であり、この場合、表示部61が操作パネル62の機能の一部または全部を備えることとなる。
【0101】
表示部61には、本体部1の操作に必要な各種情報を文字や画像等で表示される。ただし、情報処理装置8の表示部81に表示されている表示内容を、表示部61にも表示されるようにしてもよい。また、表示部61に表示される文字や画像の上でマウス等によるポインタ操作等を通して本体部1に各種の指令ができるようにしてもよい。
【0102】
本体部1は、操作パネル62、あるいは情報処理装置8からの指令に従って、被写体M1の関心領域(生体器官等)ROIを局所的に撮影する。また、本体部1は、各種指令や座標データ等を情報処理装置8から受信する一方、撮影して取得したX線の投影データを情報処理装置8に送信する。
【0103】
情報処理本体部80は、各種プログラムを実行するCPU801と、ハードディスク等の固定ディスクで構成され、各種データやプログラムPG2を記憶する記憶部802とROM803と、RAM804とを、バスラインに接続した一般的なコンピュータとしての構成を有している。
【0104】
CPU801は、記憶部802に記憶されたプログラムPG2をRAM804上で実行することによって、操作部82で指定した領域の座標を算出して、撮影対象領域CAを特定する撮影領域設定部801aと、投影データから三次元データを再構成する等の演算処理を行う演算処理部801bとして機能する。
【0105】
なお、プログラムPG1,PG2は、所定のネットワーク回線等を介して本体制御部60または情報処理本体部80が取得するようにしてもよいし、あるいは可搬性のメディア(CD−ROM等)に保存されたプログラムPG1,PG2を、所定の読取装置にて読み取ることで取得する様に構成してもよい。
【0106】
本実施形態では、オペレータにより、操作パネル62または操作部82を介して、撮影対象領域CAが指定される。具体的には、生体の一部又は全体を表示する画面(イラストやパノラマ画像等)が表示部61または表示部81に表示され、オペレータが撮影したい領域を操作パネル62または操作部82を介して指定することで、撮影対象領域CAが指定される。なお、画面上に領域特定用の画面を表示することなく、操作パネル62もしくは操作部82から部位の名称の入力やコード入力等で直接部位の指定を行うようにしてもよい。
【0107】
なお、操作パネル62にも制御部を設けて、本体制御部60の制御の一部を分担させてもよいし、操作パネル62に全面的に本体制御60を設けるようにしてもよい。
【0108】
<1.3.X線CT撮影装置の動作>
次に、X線CT撮影装置の動作について説明する。なお、以下に説明するX線CT撮影装置100の動作は、特に断らない限り、本体制御部60または情報処理本体部80によって制御されるものとする。
【0109】
<1.3.1 X線CT撮影の概要>
まず、本実施形態におけるX線CT撮影装置100によるX線CT撮影の概要について図10を参照しつつ説明する。図10は、X線CT撮影装置100によるX線CT撮影の動作を示す概念図である。図10に示す位置L0、L1および位置L2は、X線管9のX線を発生させる焦点の位置に相当する。また、図10は、X線発生部10、X線コーンビームB1、X線検出部20等を旋回アーム30の旋回軸31の軸方向から見た様子を示している。
【0110】
本実施形態では、X線CT撮影が行われる場合、駆動部65を駆動することによって、旋回アーム30が旋回する。このとき図10に示すように、X線発生部10からX線コーンビームBX1を出射されるが、このX線コーンビームBX1が、撮影対象領域CAの中心である中心C1を回転軸として回転するように、旋回アーム30が旋回する。
【0111】
被写体M1の位置付けでは、関心領域が撮影対象領域にくるように被写体M1と旋回アーム30とを相対的に移動調整する。
【0112】
なお、X線は電磁波の一種であるため、常に空間中を移動してとどまることのない成分であるが、X線コーンビームBX1はX線の束で構成されており、一定の形状に形成されて照射される。そこで、このX線束が回転することを、X線コーンビームBX1の回転という。
【0113】
撮影対象領域CAの全体を一定の拡大率で撮影するためには、X線発生器13と中心C1とX線検出器21との距離を、照射開始時から照射終了時まで維持する必要がある。そのため、X線CT撮影の際には、本体制御部60は、中心C1を中心にX線コーンビームBX1を回転させる。ここで、図10に示すように、旋回軸31の位置が中心C1上に配置されていない場合は、本体制御部60は、旋回用モータ60Rを駆動して、旋回軸31周りに旋回アーム30を回転させるとともに、X軸モータ60X及びY軸モータ60Yを制御して、旋回軸31を回転運動させる。この旋回軸31の回転運動と、旋回アーム30の回転運動との合成運動によって、中心C1を回転中心とするX線コーンビームBX1の回転運動が実現される。
【0114】
むろん、旋回軸31の位置を中心C1上に配置させるべく、Xテーブル35X、Yテーブル35Yにより、旋回軸31を移動させて、特定の位置で停めて、旋回アーム30を軸周りに旋回させてX線検出部13とX線検出器21とを回転させてもよい。
【0115】
また、X線CT撮影を安定して行うためには、旋回アーム30が一定の回転速度となるまでの助走区間が設けられることが望ましい。そこで、例えばX線発生器13については、図10に示す位置L0よりも少し手前から回転移動が開始することとなる。なお、この助走区間を移動するX線発生器13の移動軌跡は、必ずしもX線CT撮影時の軌道を通る円上に設定される必要はない。
【0116】
X線CT撮影装置100は、X線コーンビームBX1の回転させている間、あらかじめ定められた回数分、X線検出部20にて投影データを収集する。具体的には、本体制御部60が旋回用モータ60Rを監視して、旋回アーム30が所定の角度分回転する毎に、X線検出器21でのX線の検出データを投影データとして収集する。本実施形態では、旋回アーム30が回転する間、X線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに常に照射するように構成されている。ただし、X線の照射は、このようなものに限られるものではなく、例えば、X線検出部20にてX線を検出するタイミングで、X線発生器13がX線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに向けて出射するように構成されていてもよい。この場合、被写体M1に対して、X線が間欠的に照射されることとなるため、被曝線量を低減することができる。
【0117】
収集された投影データは、逐次情報処理装置8に転送され、例えば記憶部802に記憶される。そして収集された投影データは、演算処理部801bにおいて加工され、三次元データに再構成される。演算処理部801bにおける再構成の演算処理は、所定の前処理、フィルタ処理、逆投影処理等で構成される。これらの演算処理については、周知技術を含む各種演算処理技術を適用することが可能である。
【0118】
また、図10に示すように、本実施形態では、1回のX線CT撮影におけるX線コーンビームBX1の回転角は、180度にX線コーンビームBX1の旋回方向の広がりの角度(以下、ファン角θ1と称する。)を加算した角度(ただし、360度未満)となっている。X線コーンビームB1の回転中心C1周りの回転角は、中心C1を回転軸とするX線発生器13とX線検出器21の軸周りの回転角でもある。
【0119】
X線発生器13は、位置L0から位置L1まで回転移動する。なお、ここでいうファン角θ1は、X線発生器13から出射したX線コーンビームBX1が撮影対象領域CAの全部を通るとともに、X線検出部20にて検出可能な範囲の該X線コーンビームBX1の広がりの角度である。また、位置L0、L1は厳密にはX線管9のX線が発生する原点である焦点の位置である。
【0120】
X線コーンビームB1(すなわち、X線発生器13とX線検出器21)は、X線CT撮影の開始から終了までの間、180度にファン角θ1を加えた角度分回転する。
【0121】
X線コーンビームBX1の旋回範囲については、撮影対象領域CA(X線CT撮影領域)を透過したX線コーンビームBX1が高散乱領域HSRをさらに透過しないようにCT撮影できればよいので、180度以上360度未満で任意に設定できる。例えば180度ちょうど旋回させるのみでも診断には支障が無い程度のX線CT画像が得られるが、ファン角θ1を加算した角度とするとより良好なX線CT画像が得られる。この旋回範囲を180度にファン角を加えた角度とするX線CT撮影については後述する。
【0122】
また、X線コーンビームBX1の旋回範囲を、225度、270度、315度等、45度の整数倍で設定してもよいし、180度、240度、300度等、60度の整数倍に設定してもよいし、200度、250度、300度、350度等、50度の整数倍等、きりの良い角度に設定してもよく、その設定はX線撮影装置の構造、制御方法、演算上の便宜、生成されるCT画像の鮮明度合等より適宜に設定できる。
【0123】
ここで、仮に回転角を180度にした場合、X線発生器13は、位置L0から位置L2まで回転する。この場合、位置L0から出射されたX線コーンビームBX1の外縁と撮影対象領域CAの外縁との交点P1については、投影角180度よりも小さい範囲しかX線の照射を受けていない。投影データにおいて、180度の範囲の各方向からX線の照射を受けていない点が撮影対象領域CAに存在する場合、再構成した三次元データから、高精度なCT画像を生成することが困難となる。
【0124】
そこで、本実施形態の如くX線発生器13の回転角を180度にファン角を加えた角度とした場合、図10に示す交点P1についても、180度の範囲の各方向からX線を照射することができる。すなわち、撮影対象領域CA内の全ての点について、180度の範囲の各方向からX線照射した投影データを収集する事ができるため、三次元データから、撮影対象領域CA内の生体器官等の輪郭や形状が鮮明な高精度のCT画像を生成することが可能となる。
【0125】
ここで、投影角の概念について説明する。本実施形態における投影角とは、X線の照射開始時点(具体的には、X線発生器13が位置L0に到達した時点)における、撮影対象領域CA内の特定の地点を通過するX線の進行方向に対して、X線CT撮影の各時点における、上記特定の地点を通過するX線の進行方向が成す角度をいう。以下に、上記特定の地点を、X線コーンビームBX1の回転中心である中心C1上の地点PS1とした場合を具体例に挙げて説明する。
【0126】
X線コーンビームBX1の照射開始時点においては、地点PS1において、位置L0のX線発生器13からX線検出器21に向けて進行方向DR1のX線が通過する。ここで、1回のX線CT撮影においてN回分の投影データが取得されるとして、n番目(ただし、nは1〜Nまでの整数値)に投影データが取得される時点Tnにおいて、地点PS1を通過するX線の進行方向DRnとする。進行方向DR1に対してこの進行方向DRnの成す角度が、投影角PRnとなる。
【0127】
言い換えると、X線コーンビームBX1は中心C1を回転中心として回転しつつ撮影対象領域CAを照射するのであるが、撮影対象領域CA内の特定の地点(例えば、地点PS1)について、旋回軸31の軸方向から見て、基準となる直線(具体的には、進行方向DR1に平行な直線LS)に対し、或る時点におけるX線検出器21に投影される上記特定の地点に入射する(もしくは、通過する)X線の成す角度が投影角となる。具体的に、地点PS1については、X線発生器13が各位置L0,L1,L2に在るときのX線の投影角PRnは、位置L0で投影角0度、位置L2で投影角180度、位置L1で投影角(180度+θ1)となる。
【0128】
仮に、X線コーンビームBX1が1度ずつ回転する(すなわち、支持部300が1度ずつ回転する)ごとに1つの投影データが取得されるものと仮定すると、地点PS1についての上記投影角PRnが1度増加するごとに、1つの投影データが取得されることとなる。そして、図10に示すように、X線発生器13が位置L0から位置L2にまで移動すると、地点PS1における投影角が180度となる。すなわち、X線発生器13が位置L2にあるとき、照射開始時点(X線発生器13が位置L0にある時点)でのX線撮影を含めて、181個の投影データが取得されることとなる。
【0129】
繰り返しになるが、ここで、仮にX線CT撮影におけるX線発生器13の回転角を180度とした場合、X線発生器13は、位置L0から位置L2まで回転する。この場合、位置L0から出射されたX線コーンビームBX1の外縁と撮影対象領域CAの外縁との交点P1については、投影角180度分よりも小さい範囲の方向からしかX線の照射を受けていない。投影データにおいて、投影角180度分の範囲の各方向からX線の照射を受けていない点が撮影対象領域CAに存在する場合、再構成した三次元データから、高精度なCT画像を生成することが困難となる。
【0130】
これに対し、本実施形態の如く、X線CT撮影におけるX線発生器13の回転角を180度にファン角を加えた角度とした場合、図10に示す交点P1についても、投影角180度分の各方向からX線を照射することができる。すなわち、撮影対象領域CA内の全ての点について、投影角180度分の各方向からX線照射した投影データを収集することができるため、三次元データから、撮影対象領域CA内の生体器官等の輪郭や形状が鮮明な高精度のCT画像を生成することが可能となる。
【0131】
なお、従来のX線CT撮影装置で取得されたCT画像においては、縦方向、横方向もしくは斜め方向にそって、縞状の模様がアーチファクトとして発生する場合がある。この発生要因を探ったところ、三次元データを再構成する際に、180度を超える各方向からX線を照射して得た投影データが原因となってアーチファクトが発生することがあることが分かった。
【0132】
そこで、本実施形態のX線CT撮影装置100では、撮影対象領域CA内の全ての点について、180度の範囲の各方向からX線を照射したデータのみから三次元データを再構成する。しかしながら、図10に示すようにX線コーンビームBX1を照射し続けて、回転させた場合、撮影対象領域CA内において、180度を超える各方向からX線照射した投影データを取得する部分が生じる。そこで、X線CT撮影装置100では、次に述べる制御を実行することにより、余分な投影データを取得することを排除している。
【0133】
{X線発生器13の照射範囲の制御}
図11は、X線CT撮影時において、X線コーンビームBX1の照射範囲を制御する様子を示す図である。なお図11の(a)〜(e)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものであり、(a)はX線コーンビームBX1の回転中心C1を中心にした、位置L0を起点とするX線発生器13の回転の回転角が、(180°−θ1)であるとき、(b)は回転角が(180°−θ1)以上180°以下のとき、(c)は回転角が180°のとき、(d)は回転角が180°以上(180°+θ1)以下のとき、そして(e)は回転角が(180°+θ1)のときをそれぞれ図示している。X線発生器13は支持部300で回転されるので、X線発生器13の回転角は支持部300の旋回角でもある。
【0134】
図11(a)に示すように、X線発生器13が撮影対象領域(X線CT撮影領域)R1の周りを所定方向(ここでは右回り)に位置L0から位置L01まで回転移動しつつ、撮影対象領域CAにX線コーンビームBX1を照射すると、投影角180度分丁度(投影角が0度から180度まで)の範囲の各方向からのX線照射が完了する地点P2が撮影対象領域CAに生じる。ここで、位置L01は、幾何学的に、回転角が180度からファン角θ1を減算した値であり、また、地点P2は、位置L01から出射されたX線コーンビームBX1の回転方向の外縁と撮影対象領域CAの外縁の交点である。
【0135】
より一般化すると、撮影対象領域CAのうち、X線発生器13の位置L0と照射中の各位置とを結んだ線分よりも、X線発生器13が移動する側の部分(図11(a)〜(e)中、斜線ハッチングで示す領域)については、投影角180度分の方向のX線の照射が完了していることとなる。
【0136】
例えば図11(b)に示すように、X線発生器13が位置L02にある場合には、撮影対象領域CAのうち、位置L0と位置L02とを結んだ線分LN1よりも外側の領域R2については、投影角180度分の各方向のX線照射が既に行われている。そこで、本実施形態では、図11(b)に示すように、領域R2についてはX線が照射されないように、X線コーンビームBX1の照射範囲が縮小制御される。なお、線分LN1は、位置L02、L03、・・・といったように、位置L01以降のX線発生器13の位置βと位置L01のX線発生器13の位置αを結ぶ線分である。
【0137】
この縮小制御は、X線発生部制御部601aが、図5に示すビーム通過孔151に対して遮蔽板171を移動させることによって、ビーム通過孔151を通過するX線が徐々に遮断されることで実現される。またX線コーンビームBX1の遮蔽度合については、X線発生器13が位置L01にあるときを基準(=回転角がゼロ)として、X線発生器13の回転角をωとしたとき、X線コーンビームBX1のファン角がθ1から(ω/2)を減算した値となるように制御される。
【0138】
別の角度からこの制御を説明すると、位置L01のX線発生器13の位置をαとし、位置L02、L03、・・・のように、位置L01以降のX線発生器13の位置をβとし、位置L0の位置のX線発生器13の位置をγとする。∠αγβ(角αγβ)を角度ψとすると、X線コーンビームBX1のファン角が(θ1−ψ)の値となるように制御される。また、円周角の定理により、∠αγβ(=ψ)の値は、∠αC1β(=ω)の値の半分であるω/2となる。
【0139】
例えば、図11(c)に示す状態では、X線発生器13の位置L01からの回転角がθ1(=一切規制を受けないX線コーンビームBX1のファン角)であるため、X線コーンビームBX1のファン角が(θ1/2)(=θ1−(θ1/2))となる。そしてX線発生器13が、図11(d)に示す位置L04を通過して図11(e)に示す位置L1まで到達すると、X線コーンビームBX1が完全に遮断される。このようにして、撮影対象領域CA内の全ての点について、投影角180度分の各方向からX線照射した投影データのみを収集することができる。
【0140】
以上のように、この制御では、X線照射の終了時点に到達する前の時点において、X線コーンビームBX1の照射範囲を縮小するように制御する。この第1の制御は、X線コーンビームBX1の照射の終了時点が近づくにつれて、支持部300の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小させる場合の制御である。
【0141】
また、以上のように、X線の照射範囲を回転角に応じて規制する制御を行うことによって、撮影対象領域CA内のいずれの点についても、投影角180度分丁度の範囲の各方向のみからX線照射した投影データを取得することができる。なお、この投影角180度分丁度の範囲とは、途中で中断することのない、連続した範囲(0度〜180度)の角度である。このような投影データから三次元データを再構成した場合、投影角180度分を超える方向からX線照射した投影データについての補正処理を必要としなくてよい。したがって、CT画像におけるアーチファクトの発生を低減でき、CT画像の画質を向上することができる。これにより、画像診断を正確に行うことが可能となり得る。
【0142】
図12は、X線CT撮影時において、その他の制御方法により、X線コーンビームBX1の照射範囲を制御する様子を示す図である。なお図12の(a)〜(f)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものである。図12(a)は中心C1を中心にして、位置L0を起点とするX線発生器13の回転の回転角が(0°)のとき、(b)は回転角が0°以上θ1以下のとき、(c)は回転角がθ1のとき、(d)は回転角がθ1以上(2・θ1)以下のとき、そして(e)は回転角が(2・θ1)のとき、(f)は回転角が(180°+2・θ1)のときをそれぞれ示している。また、図12に示すX線発生器13の位置L01A〜位置L04Aは、図10に示す位置L0,L1と同様に、X線管9のX線の焦点の位置に相当する。
【0143】
図12に示す制御方法では、照射開始時点である(a)に示す状態から(e)の段階に至るまでは、X線発生器13の旋回量に応じて、X線コーンビームBX1のファン角がゼロからθ1まで次第に増大するように制御される。そして、図12(e)に示す状態から(f)に示す照射終了の状態では、X線コーンビームBX1のファン角がθ1とされる。
【0144】
図12(a)は、X線発生器13が撮影対象領域CAに対するX線照射の開始時点の位置L0にある状態を示している。このとき、遮蔽板171は、X線管9から射出されたX線を完全に遮断する位置に配置されており、撮影対象領域CAに対してX線コーンビームBX1が照射されないように規制される。
【0145】
そして、X線発生器13の回転量が増大するにつれて、撮影対象領域CAのうち、X線発生器13の位置とX線照射の終了位置(位置L1)とを結んだ線分LN2(図12中、一点鎖線で示す。)が通過する部分に対して、X線が照射されるように、X線コーンビームBX1の照射範囲が増大される。具体的には、X線発生器13の回転に伴って、遮蔽板171が所定方向に移動されることにより、ビーム通過孔151を介して次第にX線の通過量が増大される。なお、LN2は、位置L0以降のX線発生器13の位置β1(位置L01A〜L04A)とX線発生器13の位置L1(γ1)を結ぶ線分である。
【0146】
図12(b)は、具体的にはX線発生器13が位置L0から(θ1)/2の角度分回転して位置L01Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームBX1のファン角は、幾何学的に回転角の半分である(θ1/4)となる。また図12(c)は、X線発生器13が位置L0からθ1の角度分回転して位置L02Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームBX1のファン角は(θ1/2)となる。
【0147】
別の観点から、このX線コーンビームBX1の制御を説明すると、X線発生器13の位置L0をα1とし、位置L0以降の位置L01A〜L04をβ1とし、位置L1をγ1とすると、∠α1γ1β1の角度θ3(α1とγ1とを結んだ線と、γ1とβ1とを結んだ線の成す角)にX線コーンビームBX1のファン角が一致するよう制御される。
【0148】
また、図12(d)は、具体的にはX線発生器13が位置L0から(θ1+(θ1/2))の角度分回転して位置L03Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームBX1のファン角は、((θ1/2)+(θ1/4))となる。換言すれば、X線コーンビームBX1のファン角が∠α1γ1β1の角度θ3に一致するように制御される。
【0149】
さらに図12(e)は、X線発生器13が位置L0から(2・θ1)の角度分回転して位置L04Aに到達した状態を示している。このとき、X線コーンビームBX1のファン角はθ1となり、撮影対象領域CAの全範囲にX線が照射されることとなる。そして図12(f)は、X線発生器13が位置L0から(180度+θ1)の角度分回転して位置L1に到達した状態を示している。X線発生器13は、位置L04Aから位置L1に到達するまでの間、ファン角θ1のX線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに照射し、位置L1に到達した後、X線の照射を終了する。
【0150】
以上のようにX線コーンビームBX1の照射開始時点からX線の照射範囲の制御を行った場合においても、図11に示すように制御した場合と同様に、1回のX線CT撮影において、撮影対象領域CA内の全ての点についても、180度丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データを取得することができる。
【0151】
図12に示した制御に関する上記説明は、X線コーンビームBX1の照射の開始時点において、支持部30の旋回角に応じて、次第にX線コーンビームBX1の照射範囲を拡大させる場合の説明である。
【0152】
X線コーンビームBX1の遮蔽度合の制御については、図11に示す制御におけるX線発生器13の回転角ωに合わせて、ファン角をω分遮蔽することと同様の制御を応用することができる。図11に示す制御ではX線照射の終了時点において制御しているのに対し、図12に示す制御ではX線照射の開始時点の制御である点で異なる。
【0153】
なお、図11に示す制御ではX線照射の終了時点が近づくにつれて、X線コーンビームBX1の照射範囲を縮小するように制御し、図12に示す制御ではX線照射の開始時点から、X線コーンビームBX1の照射範囲を増大するように制御している。しかしながら、照射の開始時点でX線コーンビームBX1の照射範囲を増大し、終了時点で照射範囲を縮小するように制御しても構わない。この場合、照射開始時からX線発生器13が回転角θ1分回転するまでの間(すなわち、回転角が0°の位置(図12(a)の位置L0)からθ1の位置(図12(c)の位置L02A)に到達するまでの間)と、照射終了時までにX線発生器13が回転角θ1分回転するまでの間(すなわち、回転角が180°(図11(c)の位置L03)〜(180°+θ1)(図11(e)の位置L1)までの間)とにおいて、X線の照射範囲が制御される。
【0154】
より具体的には、照射開始時には、X線コーンビームBX1の照射がない状態から出発し、X線発生部の回転角が0°の位置からθ1の位置に到達するまでの間、X線発生器13が回転した回転角度分だけX線コーンビームBX1のファン角を増大しつつX線コーンビームBX1を照射させる制御を行う。これにより、X線発生器13がθ1回転する間に、ファン角がゼロからθ1まで増大する。その後は、ファン角θ1のX線コーンビームBX1を撮影対象領域に照射する。そして、照射終了時には、X線発生器13が、回転角が180度の位置から(180°+θ1)の位置に到達するまでの間、回転した回転角度分だけ、X線コーンビームBX1のファン角を減少させる制御を行う。これにより、X線発生部が回転角θ1分回転する間に、ファン角がθ1からゼロまで減少する、すなわちX線コーンビームBX1の照射が終了することとなる。このような制御を行うことによっても、投影角180度分の投影データを得るだけのX線照射のみを行うことができる。
【0155】
図13は、照射開始時と照射終了時またはその双方において、X線コーンビームBX1の照射範囲を制御する構成を普遍的に説明するための図である。
【0156】
図13では、X線発生器13が中心C1を回転軸にして照射開始位置L0から回転角T1分回転して、位置L02Bに到達するまでの間に、ファン角をゼロからθ1まで一定の割合で増大させるとともに、位置L03Bから回転角T2分回転してX線の照射終了位置である位置L1に到達するまでの間に、X線コーンビームBX1のファン角をθ1からゼロにまで一定の割合で減少させる制御を行っている。
【0157】
なお、図13に示す位置L01Bは、X線コーンビームBX1の照射範囲が増大している途中のX線発生器13の位置であって、X線コーンビームBX1の全照射の状態(ファン角がθ1の状態)に対して、X線発生器13の回転方向の反対側半分(鉛直方向上方から見たとき、X線発生器13からX線検出器21に向かって左側半分であり、ファン角がθ1/2。)のみの照射が行われるときの位置を示している。さらに、位置L04Bは、X線コーンビームBX1の照射範囲が減少している途中の状態のX線発生器13の位置であって、全照射の状態に対して、X線発生器13の回転方向側半分(鉛直方向上方から見たとき、X線発生器13からX線検出器21に向かって左側半分であり、ファン角がθ1/2。)のみの照射が行われるときの位置を示している。
【0158】
図13に示すように、X線発生器13が位置L02Bから、回転角(180°−θ1)分回転して、位置L03Bに到達した時点で、図11(a)に示す地点P2と同様に、地点P2Bについては、投影角180度分の範囲の各方向からX線の照射が完了する。この、位置L0から位置03BまでのX線発生器13の回転角(∠L0,C1,L03B)は、∠L02B,C1,L03Bが180°−θ1であることから、(180°−θ1+T1)となる。
【0159】
また、位置L0から位置L03BまでのX線発生器13の回転角は、位置L0から位置L1までの回転角(180°+θ1)から、回転角T2を減算した値(=180°+θ1−T2)となる。以上をまとめると、以下の等式が成立する。
∠L0,C1,L03B=180°−θ1+T1=180°+θ1−T2・・・(1)
また、上記式(1)より、以下の等式が導かれる。
T2=2・θ1−T1・・・(2)
【0160】
上記式(2)によると、X線照射開始地点である位置L0からX線発生部が回転角T1分回転するまでの間、回転方向の反対側からファン角をゼロからθ1まで一定の割合で増大させた場合、X線発生器13が位置L0から回転角(180°−θ1+T1)分回転した位置L03Bから回転角(2・θ1−T1)(=T2)分回転して位置L1に到達するまで、回転方向の反対側からファン角をθ1からゼロまで一定の割合で減少させる。これにより、撮影対象領域CA内の全ての点について、投影角180°分丁度のX線照射した投影データのみを取得することができる。
【0161】
ここで、図11で説明した制御方法は、T1=0,T2=2・θ1に相当するものとなっており、図12で説明した制御方法は、T1=2・θ1,T2=0の場合に相当するものとなっている。
【0162】
なお、X線コーンビームBX1のファン角を、必ずしも一定の割合で増大または減少させる必要はなく、投影角180°分丁度の照射制御ができる範囲において、適宜変更することも可能である。
【0163】
{X線検出器21の検出範囲の制御}
また、上記の制御方法では、X線発生部制御部601aがX線コーンビームBX1の照射範囲を制御することによって、取得する投影データの範囲を制限している。しかし、投影データの取得範囲を制限する制御方法は、上記のものに限られるものではない。次に説明する制御では、X線検出部制御部601bがX線検出器21におけるX線の検出可能範囲を制御することによって、投影データの取得範囲を制限する。
【0164】
図14は、X線CT撮影時において、X線コーンビームBX1の検出範囲を制御する様子を示す図である。なお、図14の(a)〜(c)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものである。図14中、X線発生器13の位置L0,L01,L03,L1については、図11中に示した位置L0,L01,L03,L1のそれぞれと一致している。
【0165】
この制御方法においても、図11において説明した場合と同様に、X線発生器13は、撮影対象領域CAの中心C1を回転軸として、180度にファン角θ1を加えた角度分回転移動しつつ、X線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに照射する。ただし、X線発生器13については、X線コーンビームBX1が撮影対象領域CAの全部に常に照射され、また、X線検出器21については、撮影対象領域CAのうち、180度の各方向についてのX線の照射が完了した部分については、その部分を通過したX線を検出しないように制御される。
【0166】
具体的に、図14(a)に示すように、X線発生器13が位置L01に到達すると、点P2については、すでに180度の範囲の各方向からX線を照射して得た投影データが取得される。したがって、点P2については、これ以上投影データを取得する必要がないため、X線検出器21は、この部分のX線の検出機能を無効化する。
【0167】
さらに図14(b)に示すように、X線発生器13が位置L03に到達した時点で、撮影対象領域CAのうち、位置L03と位置L0とを結んだ線分の右側の領域R3については、180度丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データの取得が既に完了する。したがってこの時点では、この領域R3を透過するX線を検出する部分の機能が無効化されることとなる。そして図14(c)に示すように、X線発生器13が位置L1に到達すると、X線の検出可能範囲(図14中、太線で示す。)が消失し、X線の検出が行われなくなる。
【0168】
以上のように、X線検出器21の検出面の検出可能範囲を制限することによって、撮影対象領域CA内のいずれの点についても、180度丁度の範囲の各方向からX線照射して得た投影データのみを取得することができる。
【0169】
また、X線CT撮影の終了時点(すなわち、X線発生器13が位置L1に到達する時点)に近づくにつれて、X線検出器21によるX線の検出可能範囲を制限する制御を行っているが、検出可能範囲の制御方法はこれに限られるものではない。
【0170】
次に説明する制御方法では、X線コーンビームBX1の照射開始時点から、X線の検出可能範囲を制御することによって、撮影対象領域CAのいかなる点についても、180度丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを取得するように構成されている。
【0171】
図15は、X線CT撮影時において、その他の制御方法により、X線コーンビームBX1の検出範囲を制御する様子を示す図である。なお、図15の(a)〜(c)は、X線CT撮影の状況を時系列順に並べて図示したものである。図15中、X線発生器13の位置L0,L02A,L04A,L1については、それぞれ図12中に示す位置L0,L02A,L04A,L1と一致している。
【0172】
この制御方法では、X線発生器13は、撮影対象領域CAの中心C1を回転軸にして、180度にファン角θ1を加えた角度分回転移動しつつ、ファン角がθ1のX線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに照射する。ただし、図15(a)に示すように、X線照射の開始時点では、X線検出器21は、X線を検出しないように制御される。そして、X線発生器13が回転移動して、位置L04Aに到達するまでの間に、次第にX線検出器21のX線の検出可能範囲(図15中、太線で示す。)が拡大される。具体的には、撮影対象領域CAのうち、位置L1と、X線検出器21の位置とを結んだ線分の左側の領域R4を透過するX線を検出する部分について、X線の検出機能が有効化される。
【0173】
このように、X線の照射開始時点から、旋回アーム(支持部)30の旋回量に応じて、検出面におけるX線の検出可能範囲が次第に拡大するようにX線検出器21を制御することによって、撮影対象領域CAのいずれの点についても、180度丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを取得することができる。
【0174】
なお、X線の検出範囲を制限する制御方法の場合(図14,15)、X線CT撮影において、X線コーンビームBX1が撮影対象領域CAに常に照射することとなる。一方、X線の照射範囲を制限する制御方法の場合(図11,12)、被写体M1の被曝線量が必要最低限に抑えることができる。すなわち、被曝線量を低減するという観点からは、X線の照射範囲を制限する制御方法の方が有利である。
【0175】
以上のように、X線の照射範囲、または、X線の検出可能範囲を、X線発生器13の旋回量に応じて規制する制御を行うことによって、撮影対象領域CA内のいずれの点についても、180度丁度の範囲の各方向のみからX線照射した投影データを取得することができる。このような投影データから三次元データを再構成した場合、180度を超える方向からX線照射した投影データについての補正処理を必要としなくて済む。したがって、CT画像におけるアーチファクトの発生を低減でき、CT画像の画質を向上することができる。これにより、CT画像に基づく各種診断を正確に行うことが可能となる。
【0176】
また、図14、図15で説明したX線検出器21の制御は、図11、図12において、X線発生器13から照射されるX線コーンビームB1の検出を行っているX線検出器21の検出範囲のみを有効化することと等価である。したがって、図13で詳細に説明したように、X線の照射開始時点においてX線の検出範囲を増大させ、またX線の照射終了時点に到達する前の時点において、X線の検出範囲を狭めるようにX線検出器21を制御することによっても、撮影対象領域R1のいずれの点について、投影角180度分丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを取得することができることは言うまでもない。
【0177】
{投影データの排除}
なお、次に説明する方法によっても、投影角180度丁度の範囲の各方向からX線照射した投影データのみを有効に取得することが可能である。
【0178】
図16は、情報処理本体部80のCPU801によって実現される機能ブロックを示す図である。この制御方法においても、上記の場合と同様に、X線発生器13が180度にファン角θ1を付加した角度分回転移動しつつ、撮影対象領域CAにX線コーンビームBX1を照射する。ただし、X線発生器13は、常にファン角θ1のX線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに照射し、かつ、X線検出器21は、撮影対象領域CA内の全ての点を透過するX線を検出する。これにより、X線の投影データを収集されるが、この投影データには、撮影対象領域CA内の一部の点について、投影角が180度の範囲を超える方向からX線照射した投影データ(以下、「余剰投影データ」と称する。)が含まれることとなる。
【0179】
図16に示すように、情報処理本体部80は、CPU801の代わりに、プログラムPG2にしたがって動作することによりデータ除外部801cとしても機能するCPU801Aを備えている。このデータ除外部801cは、上述の余剰投影データを、全投影データから排除する機能を有する。したがって、データ除外部801cによって取得される投影データは、撮影対象領域CAの全ての点について、投影角180度丁度の範囲の各方向からX線を照射して得た投影データのみが含まれることとなる。このようにして、投影角180度丁度の各方向からの前記X線コーンビームを照射して得られる投影データのみを再構成演算の処理対象とすることが可能となる。
【0180】
<1.3.2.撮影対象領域の設定について>
次に、撮影対象領域の設定について説明する。なお、以下の説明においては、被写体M1を人体の頭部とし、関心領域ROIが歯列弓の一部である場合を具体例に挙げて説明する。ただしX線CT撮影装置100の撮影対象はこのようなものに限定されるものではなく、他の生体器官に適用することが可能である。
【0181】
図17は、X線CT撮影装置100によるX線CT撮影の動作を示す流れ図である。また、図18は、指定画面W1を示す図である。本体制御部60は、オペレータからX線CT撮影を開始する操作入力があった場合、表示部61または表示部81において、図18に示すように、撮影対象領域CAを指定するための指定画面W1を表示する(ステップS1)。本実施形態では、指定画面W1に、撮影対象領域CAのモデル画像DIが表示される。
【0182】
図18に示すように、指定画面W1には、モデル画像DIとして、歯列弓のイラスト画像が表示されている。この例では、モデル画像DIが、歯列弓を上方から見た二次元形状を表現したイラスト画像となっているが、3次元的に表現された立体モデルが表示されてもよい。立体モデルで表示した場合、オペレータが所定の操作を行って、該立体モデルを回転させたりするように構成されてもよい。
【0183】
図17に戻って、被写体M1が所定の撮影位置へ位置付けされる(ステップS2)。すなわち、被写体M1が、X線CT撮影装置100の被写体固定部421に固定される。そして、モデル画像と被写体との位置関係が調整される(ステップS3)。詳細には、モデル画像DIと表示上のX線CT撮影領域表示指標の間の位置関係と、実際の歯列弓とX線CT撮影領域の間の位置関係との合致をさせる調整(校正)が行われる。
【0184】
なお、ステップS1〜ステップS3については、特開2002−315746号公報に記載された設定方法等を適用することができる。
【0185】
モデル画像DIと被写体M1との間の位置関係が調整されると、撮影対象領域CAが設定される(ステップS4)。詳細には、オペレータが、モデル画像DI上に対し、撮影したい関心領域ROIの略中心である関心点POIを設定する。この関心点POIは、操作パネル62または操作部82を介した所定操作(例えばマウスの移動操作とクリック操作)により指定される。撮影点P1が設定されると、X線CT撮影装置100は、この関心点POIを含む略円形の撮影対象領域CAを設定する。
【0186】
この撮影対象領域CAの設定については、モデル画像DIに対して、あらかじめ定められた複数の撮影対象領域CAのうちから、関心点POIを含む特定の撮影対象領域CAが選択されることで実現される。具体的に、X線CT撮影の対象が歯列弓である場合、例えば歯ごとに、撮影対象領域CAがあらかじめ設定され、そして、関心点POIが設定された歯に対応する撮影対象領域CAが選択される。もちろん、歯以外の部分に対しても、撮影対象領域が設定されていてもよい。また、設定される撮影対象領域CAの大きさは、歯ごと、もしくは部位ごとにそれぞれ異なっていてもよい。
【0187】
なお、関心点POIを指定する代わりに、領域を指定するための領域指定ツールを用意しておき、オペレータがモデル画像DI上から一定範囲の領域を選択して、選択された領域を撮影対象領域CAに設定されるように構成してもよい。なお、以上のステップS1〜ステップS4までの動作は、撮影領域設定部801aの制御により実現される。
【0188】
次に、設定された撮影対象領域CAに基づいて、X線CT撮影を行う際の旋回アーム30の旋回位置が設定される(ステップS5)。この旋回位置は、複数の撮影対象領域CAの位置ごとに、あらかじめ定められており、旋回位置情報として記憶部802等に格納されている。
【0189】
この旋回位置情報は、例えば、「関心点POIがN番目(ただしN=1から32までの整数)の歯(もしくは部位)である場合、X線発生部10(X線発生器13)を照射開始位置(照射開始地点)LSから照射終了位置(照射終了地点)LEまで旋回させる。」といったように、各歯(もしくは各部位)ごとに、X線照射の開始位置および終了位置に関する情報が関連づけられて保存されている。ここで、照射開始位置LSや照射終了位置LEは、例えば、所定の基準位置からN番目の歯の位置を中心に、角度θNS,θNE回転した位置であるといったように、回転角で定義される。ただし、照射開始位置LSや照射終了位置LEが、二次元位置情報として定義されていてもよい。
【0190】
また、角度θNSと角度θNEとの差分は、180度にファン角θ1を加えた角度(ただし、360度未満)とされる。X線発生器13およびX線検出器21が、180度以上360度未満の範囲の回転角で被写体M1の周りを旋回させるX線CT撮影が行われる。
【0191】
また、X線CT撮影の際には、高散乱領域HSRによる散乱の影響を抑制するため、X線発生器13が被写体M1である被撮影者の背後側を移動するように照射開始位置LSおよび照射終了位置LEが設定される。ここで、このような照射開始位置LSおよび照射終了位置LEの設定の仕方について説明する。
【0192】
図19は、撮影対象領域CAについて、X線CT撮影を行うX線CT撮影装置100の概略上面図である。図19では、前歯周辺部が撮影対象領域CAとして設定されている。この撮影対象領域CAについて、旋回位置を設定する場合、図19(a)に示すように、まず、撮影対象領域CAの中心と、高散乱領域HSRの中心とを結ぶ直線LM1を想定する。なお、この高散乱領域HSRは、モデル画像DI上に対応して、あらかじめ登録されているものとする。
【0193】
そして、この直線LM1に垂直に交わるとともに、撮影対象領域CAの中心を通る直線LM2を算出する。この直線LM2で分離される両側の領域(図19(a)では、上の領域と下の領域)のうち、高散乱領域HSRが含まれる領域側を、X線CT撮影の間、X線発生器13が通過するように、照射開始位置LSおよび照射終了位置LEが設定される。
【0194】
なお、照射開始位置LSおよび照射終了位置LEの設定方法は他にも考え得る。例えば、図19(b)に示すように、標準的骨格の頭部におけるパノラマ断層の位置または、実測で測った個別の歯列弓におけるパノラマ断層の位置を示す曲線PLを座標計算上設定する。そして、照射開始位置LSにおけるX線コーンビームBX1の旋回方向の広がりの左辺BLと、照射終了位置LEにおけるX線コーンビームBX1の旋回方向の広がりの右辺BRとが、曲線PLに接する接線TRと平行になるように、照射開始位置LSおよび照射終了位置LEが設定されるように構成されていてもよい。
【0195】
以上のように照射開始位置LSおよび照射終了位置LEが設定された場合、X線CT撮影の間、X線発生器13と撮影対象領域CAとの間に、X線の散乱度の大きい高散乱領域HSR(骨髄等)が介在するが、撮影対象領域CAとX線検出器21との間には、図19における図示は省略するが、ほとんど散乱の起こらない低散乱領域LSRが介在することとなる。すなわち、X線発生器13と撮影対象領域CAにおけるX線の散乱度が、X線検出器21と撮影対象領域CAとの間の散乱度よりも大きくなる軌道上を、X線発生器13およびX線検出器21が移動することとなる。
【0196】
なお、上記ステップS5の旋回位置の設定は、オペレータによってその都度指定されるように構成されてもよい。この場合、オペレータが、操作部82や操作パネル62を介して照射開始位置または照射終了位置をモデル画像DIに対して手動で指定する。なお、この指定の際に、上述した直線LM1や直線LM2がモデル画像DI上に表示されるように構成してもよい。
【0197】
以上のようにして、X線発生器13およびX線検出器21の照射開始位置LSおよび照射終了位置LEを良好に設定することができる。なお、旋回方向については、X線発生器13およびX線検出器21を、右回りまたは左回りのどちらの方向に設定してもよいが、本体部1の構造によっては、装置構成の制約上、この旋回方向が一方向に限定される場合がある。この点について、図20を参照しつつ説明する。
【0198】
図20は、所定の撮影対象領域CAについて、X線CT撮影を行うX線CT撮影装置100を示す概略上面図である。なお、図20中、(a)は、X線発生器13およびX線検出器21を右回りに旋回させる場合を示しており、(b)は、左周りに旋回させる場合を示している。ここでは、図20に示すX線CT撮影装置100には、機械的要素(支柱50)が図示のように、X線発生器13XやX線検出器21が、旋回時に通過し得る円軌道上に配置されているものとする。
【0199】
撮影対象領域CAとX線検出器21との間の距離は、撮影対象領域CAとX線発生器13との間の距離よりも小さい。この配置により、X線検出器21が撮影対象領域CAに近づいており、関心領域ROIを大きく撮像できるという利点がある。
【0200】
上述したように、X線発生器13を一定速で旋回させて、安定したX線CT撮影を実行するためには、助走区間が必要であり、照射開始位置LSより少し手前の位置(旋回開始位置LS0)から旋回が開始される。ここで図20(a)に示すように、旋回終了位置LEが、支柱50の手前となるように、照射開始位置LSが設定されている場合、旋回方向とは逆方向の少し手前に、旋回開始位置LS0を設定することが可能となっている。
【0201】
ところが、図20(b)に示すように、旋回開始位置LSが支柱50に近接した位置に設定された場合、旋回開始位置LS0が支柱50に重なってしまうこととなる。すなわち、X線発生器13の旋回軌道の延長上に、X線発生器13と当接する機械的要素(支柱50)が存在することとなる。この、図20(b)のような場合は、物理的に旋回開始位置LSにX線発生器13を配置することができなくなる。したがって、図20(a)に示す旋回方向で、X線発生器13およびX線検出器21が旋回するように設定される。
【0202】
つまり、X線発生器13の旋回軌道上、X線発生器13が、X線コーンビームの照射を終了する地点を、照射を開始する地点よりも機械的要素(支柱50)の近くに設定し、X線コーンビームの照射を開始する地点よりも前の地点からX線発生器13の旋回移動を開始する。
【0203】
X線発生器13の旋回軌道上の旋回の終点は、X線発生器13が機械的要素50に衝突しないように、X線発生器13の旋回軌道の延長上、機械的要素50よりも前に位置する。X線CT撮影中、X線発生器13が機械的要素50に近づくように旋回することで、X線発生器13から照射されるX線コーンビームXB1が高散乱領域HSRを経由して旋回する。また、X線CT撮影中、X線発生器13と撮影対象領域CAの間を高散乱領域HSRが通過していく。
【0204】
再び図17に戻って、上述したように、旋回位置が設定され、旋回開始位置LS0が算出される(ステップS6)。そして、X線CT撮影が実行される(ステップS7)。詳細には、算出された旋回開始位置LS0にX線発生部13が移動され、その後、X線発生器13とX線検出器21とを対向させた状態で、撮影対象領域CAの中心を回転軸とする旋回を開始する。そして、X線発生器13が照射開始位置LSに到達してから照射終了位置LEに到達するまでの間、X線コーンビームBX1を撮影対象領域CAに照射し、これをX線検出器21にて検出することで、X線の投影データが収集される。
【0205】
本実施形態によれば、X線CT撮影においてX線検出器21と撮影対象領域CAの間に、高散乱領域HSRが介在することを抑制するように、X線発生器13とX線検出器21の旋回が制御されるため、散乱光の影響を抑えつつ、鮮明なCT画像を取得することができる。
【0206】
なお、画質に優れたX線画像を取得するには、上述したように、X線発生器13およびX線検出器21が、180度にX線コーンビームBX1のファン角を加えた角度分旋回させて、X線CT撮影することが望ましい。例えば、図10から図15に示される位置L0を照射開始位置LSに設定し、図10から図15に示される位置L1を照射終了位置LEに設定する構成である。しかし、丁度180度のみ旋回してX線CT撮影が行われるようにしてもよい。この場合、X線発生器13とX線検出器21とが、それぞれX線CT撮影の開始位置から丁度180度旋回して被写体M1の撮影対象領域CAを挟んで対向する対向位置まで旋回させるX線CT撮影が行われることとなる。
【0207】
このようなX線CT撮影の場合、撮影対象領域CAのうちの一部の点については、180度未満の方向からX線照射した投影データしか取得することができないため、上記のファン角余計に旋回させる場合に比べて、画質の点で劣るCT画像となる。しかしながら、診断するに足りる画質のCT画像を取得することは可能である。このようなX線CT撮影の場合、180度の範囲のみの旋回でよいため、撮影時間を短縮することも可能であり、また、最低限の被曝線量によるX線CT撮影を実現することができる。
【0208】
なお、本実施形態に示すように、X線コーンビームBX1は被写体M1の一部(詳細には、人体頭部の歯列弓の一部)を撮影する部分X線CT撮影(部分CT撮影)である。このように撮影領域を一部分に限定することによって、被曝線量を必要最小限に抑えることができる。
【0209】
また、本実施形態のX線CT撮影装置100は、モデル画像DIを指定画面W1に表示して、撮影対象領域CAを設定するように構成されているが、例えば特開2004−329293号公報に記載されているように、2以上の位置からX線で被写体を透過撮影して取得した2以上のX線画像の二次元位置から、三次元位置を算出することによって、設定した撮影対象領域CAの実際の位置をより正確に特定するように構成されていてもよい。また、国際公開第2006/109808号パンフレットに記載されているように、歯牙のパノラマ画像上において、撮影対象領域CAを設定できるように構成されていてもよい。
【0210】
なお、被写体M1のうち、高散乱領域HSRがどの領域になるかは適宜調整ないし設定し得る。ここで、ある特定の歯牙を撮影対象領域CAとする場合に、別の歯牙を高散乱領域HSRに設定する場合について、図21を参照しつつ、具体的に説明する。
【0211】
図21は、他の歯牙を高散乱領域HSRとする場合の、X線CT撮影方法を説明するための図である。図21では、頭部右側の奥歯周辺を撮影対象領域CAとしている。
【0212】
図21(a)は、頭部の右側の位置にあるX線発生器13から頭部の左側にあるX線検出器21に向けてX線コーンビームBX1が照射されている状態を示している。この場合、X線コーンビームBX1は撮影対象領域CAである右側の奥歯を透過して、左側の奥歯周辺を経てX線検出器21に入射する。この状態では、図21(a)に高散乱領域HSR1で示す頚椎ほどの影響ではないとしても、左側の奥歯周辺が高散乱領域HSR2となる。
【0213】
これに対し、図21(b)では、頭部左側の位置にあるX線発生器13から頭部の右側にあるX線検出器21に向けてX線コーンビームBX1が照射されている。この場合、X線コーンビームBX1は左側の奥歯周囲を経た上で撮影対象領域CAである右側の奥歯を透過して、図示の平面視した例では左回りにX線検出器21に照射される。この状態では、X線コーンビームBX1は撮影対象領域CAを透過した後は高散乱領域HSR2を通過しなくてすむ。
【0214】
このように、CT撮影中にできるだけ図21(b)のようにX線コーンビームBX1が撮影対象領域CAを透過した後に高散乱領域HSR2を通過しない状態を維持できるよう、X線発生器13およびX線検出器21の旋回制御をすることが望ましい。
【0215】
図21(c)はその思想を発展させた例を示す図である。図21(c)に示す例では、図20(a)に示す例と同様、X線発生器13の旋回軌道の延長上に、X線発生器13と当接する機械的要素(支柱50)が存在する。
【0216】
ここで、撮影対象領域CAである右奥歯をCT撮影するとき、他の部位のうち、頚椎からなる高散乱領域HSR1、左の奥歯と顎骨からなる高散乱領域HSR2、右の顎骨からなる高散乱領域HSR3が高散乱領域HSRとなり得る。
【0217】
また、頭部全体を高散乱領域HSRと低散乱領域LSRに分けて考えることもできる。すなわち、概ね図21(c)に示す境界線BDで別たれる被撮影者の背後側BAに高散乱領域HSR1、HSR2、HSR3が集中している。そのため、背後側BA全体が高散乱領域HSRとなり、前方側FA全体を、散乱度が高散乱領域HSRよりも低い低散乱領域LSRと考えてもよい。
【0218】
X線発生器13の照射開始位置LSと照射終了位置LEの位置設定の際には、なるべくX線検出器21と撮影対象領域CAとの間に、高散乱領域HSR1、HSR2、HSR3のいずれもが出現しないようにするか、もしくは。出現したとしてもその範囲ないし度合いが小さくなるように設定される。
【0219】
X線CT撮影中、X線発生器13は、機械的要素50に近づくように旋回し、X線発生器13から照射されるX線コーンビームXB1がX線発生器13と撮影対象領域CAとの間で高散乱領域HSRを経由して旋回する。この点は図20(a)と同様であるため、詳細は省略する。
【0220】
そして図21(c)に示す例では、照射開始位置LSにおけるX線コーンビームBX1の旋回方向の広がりの右辺BRと、照射終了位置LEにおけるX線コーンビームBX1の旋回方向の広がりの左辺BLとが、高散乱領域HSR2と高散乱領域HSR3に接する接線TRと平行になるように設定されている。
【0221】
なお、接線TRは、高散乱領域HSR1〜HSR3の全てを含む領域と、それらを含まない領域とを分離する境界線であり、かつ、撮影対象領域CAの中心を通る直線である。この接線TRを境界として、高散乱領域HSR1〜HSR3を含む側を高散乱領域HSRとし、反対側の領域を低散乱領域LSRと捉えることもできる。
【0222】
このようにして、撮影対象領域CAを透過したX線コーンビームBX1が、なるべく高散乱領域HSR1、HSR2、HSR3からなる高散乱領域HSRを透過しないように旋回開始位置LSや旋回終了位置LEが設定される。
【0223】
いずれの部位を高散乱領域HSRとするかは、例えば頭部全体のうち、少なくとも体軸を横切る範囲に歯列弓を含んだ領域を、低出力のパルスのX線コーンビームで予備撮影し、単位空間中の骨密度が一定の値以上であるか否かにより、演算で定められる。もちろん、標準的骨格の頭部を想定し、経験的なデータより予め人為的に高散乱領域HSRが設定されてもよい。また、その領域設定も、大人と子供の区別を含めた年齢ごと、性別ごと等に細かく準備するようにしてもよい。
【0224】
こうして設定された領域がX線発生器13とX線検出器21の旋回軌道の設定に用いられる。上述したように、高散乱領域HSRは、撮影対象領域CAをいずれの部位にするかによって変化し得るものである。
【0225】
<2.第2実施形態>
第2実施形態に係るX線CT撮影装置100Aについて説明する。
【0226】
図22は、第2実施形態に係るX線CT撮影装置100Aの概略を示す全体図である。図22(a)は、X線CT撮影装置100Aの正面図であり、図22(b)は、X線CT撮影装置100Aの側面図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0227】
図22に示すように、本実施形態のX線CT撮影装置100Aは、二つの支柱50Aによって両側端部が支えられた上部フレーム41Aの中央の位置に、旋回アーム30が吊り下げ保持された構成を有している。したがって、本実施形態では、第1実施形態の支柱50のような機械的要素に旋回アーム30が干渉するおそれがなく、旋回アーム30を360度の範囲で旋回させることが可能に構成されている。上部フレーム41Aの両側端部は、支柱50Aの内部のプーリーに架け渡されたベルト51に接続されており、図示しないモータを駆動してベルト51を回すことによって、上部フレーム41Aを鉛直方向に沿って上下に移動させることができる。
【0228】
また、X線CT撮影装置100Aは、被写体M1である人体の頭部を固定するヘッドレスト等を備え、シート状に形成された被写体固定部421Aが設けられている。被写体固定部421Aは、被写体M1を坐位の姿勢で固定する。被写体固定部421Aは、鉛直方向に昇降する昇降部63によって下方側から支持されている。
【0229】
旋回アーム30は、上部フレーム41Aに内蔵されたXYテーブル35(Xテーブル35XおよびYテーブル35Yで構成される。)に旋回軸31によって接続されており、上部フレーム41に対して水平方向に移動することができる。また、被写体固定部421Aは、XYテーブル35と同様の機能を有するXYテーブル64に接続されており、上部フレーム41に対して水平方向に移動可能に構成されている。
【0230】
このような構成のX線CT撮影装置100Aにおいても、本願発明を実施することは有効である。
【0231】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0232】
例えば上記実施形態では、X線CT撮影において、矩形状に開口したビーム通過孔151を透過させることによって、角錐状のX線ビームを撮影対象領域に照射しているが、ビーム通過孔151を円形に形成することによって、円錐状のX線ビームを照射するように構成してもよい。この場合、撮影対象領域は球状となる。
【0233】
また、上記実施形態に示した機能ブロックは、ソフトウェアにより実現されると説明したが、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路によりハードウェアとして実現してもよい。
【0234】
また、上記実施形態のX線CT撮影装置100は、床に垂直に立設する構造を有しているが、被写体M1である被検者が寝た姿勢でX線CT撮影が行われる構造に応用することが可能であることは言うまでもなく、例えば、旋回軸31を水平に設定し、被写体保持部421を、患者を水平に載置する寝台等で構成してもよい。
【0235】
さらに、上記各実施形態及び変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0236】
θ1 ファン角
100,100A X線CT撮影装置
1 本体部
10 X線発生部
13 X線発生器
15 ビーム成形板
151,152,153 ビーム通過孔
16 ビーム成形機構
171 遮蔽板
20 X線検出部
21 X線検出器
211,212 検出素子群
300 支持部
35 XYテーブル
35X Xテーブル
35Y Yテーブル
421,421A 被写体固定部
60 本体制御部
601 CPU
601a X線発生部制御部
601b X線検出部制御部
602 記憶部
60R 旋回用モータ
60X X軸モータ
60Y Y軸モータ
61 表示部
62 操作パネル
8 情報処理装置
80 情報処理本体部
801,801A CPU
801a 撮影領域設定部
801b 演算処理部
801c データ除外部
802 記憶部
81 表示部
82 操作部
BX1 X線コーンビーム
CA 撮影対象領域
DI モデル画像
HSR 高散乱領域
LE 照射終了位置
LS 照射開始位置
LS0 旋回開始位置
M1 被写体
PG1,PG2 プログラム
POI 関心点
ROI 関心領域
W1 指定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT撮影を行う装置において、
被写体に向けてX線の束であるX線コーンビームを出射するX線発生器と、
前記X線コーンビームを検出するX線検出器と、
前記X線発生器と前記X線検出器とを、前記被写体を間に挟んで対向させるように支持する支持部と、
前記支持部を旋回駆動する旋回駆動部と、
前記旋回駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記支持部が旋回駆動されて、前記X線発生器および前記X線検出器を、180度以上360度未満の範囲の回転角で前記被写体の周りを旋回させるX線CT撮影が行われる際に、前記X線発生器と撮影対象領域との間のX線の散乱度が、前記X線検出器と前記撮影対象領域との間の散乱度よりも大きくなる軌道上を、前記X線発生器が移動するように前記旋回駆動部を制御するX線CT撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線CT撮影が前記X線コーンビームで前記被写体の一部を撮影する部分CT撮影であるX線CT撮影装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のX線CT撮影装置において、
前記制御部は、
前記X線発生器と前記X線検出器とを、それぞれ前記X線CT撮影の開始位置から前記被写体の撮影対象領域を挟んで対向する対向位置まで旋回させてX線CT撮影が行われるように、前記旋回駆動部を制御するX線CT撮影装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線CT撮影装置において、
前記制御部は、
前記X線発生器と前記X線検出器とを、それぞれのX線CT撮影の前記開始位置から180度に前記X線コーンビームの旋回方向の広がりの角度を加えた回転角で旋回させるX線CT撮影が行われるように、前記旋回駆動部を制御するX線CT撮影装置。
【請求項5】
請求項4に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線発生器は、X線の通過を部分的に遮断することによって、前記X線コーンビームを成形するX線規制部を備え、
前記X線CT撮影の際に、前記規制部が前記X線の通過を規制することよって、前記CT撮影領域内のいかなる点についても、丁度180度の範囲の各方向からのみ前記X線コーンビームが照射されるX線CT撮影装置。
【請求項6】
請求項5に記載のX線CT撮影装置において、
前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の開始時点から、前記支持部の旋回量に応じて、次第に前記被写体に対する前記X線コーンビームの照射範囲を拡大するように前記X線の通過を規制するX線CT撮影装置。
【請求項7】
請求項5に記載のX線CT撮影装置において、
前記規制部が、前記被写体に対するX線コーンビームの照射の終了時点に近づくにつれて、前記支持部の旋回量に応じて、次第にX線コーンビームの照射範囲を縮小するように前記X線の通過を規制するX線CT撮影装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のX線CT撮影装置において、
前記撮影対象領域が、少なくとも被撮影者の歯列弓の一部を含み、
前記制御部は、前記X線CT撮影の際に、前記X線発生部が前記被撮影者の背後側を移動するように前記旋回駆動部を制御するX線CT撮影装置。
【請求項9】
請求項8に記載のX線CT撮影装置において、
前記歯列弓の一部を撮影対象として、前記撮影対象領域の位置の指定を受け付ける領域設定部を備え、前記制御部が、指定された前記撮影対象領域の位置ごとに設定された前記X線発生器と前記X線検出器のそれぞれの前記X線CT撮影における旋回開始位置から旋回終了位置まで前記X線発生器と前記X線検出器が旋回するように前記旋回駆動部を制御するX線CT撮影装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のX線CT撮影装置において、
前記X線発生器の旋回軌道の延長上に前記X線発生器と当接する機械的要素が存し、
前記X線発生器から照射される前記X線コーンビームが、前記X線CT撮影の際に、前記X線発生器と前記撮影対象領域との間でX線の散乱度が前記X線検出器と前記撮影対象領域との間の散乱度よりも大きくなる領域を経由して旋回するように、前記X線発生器が前記機械的要素に近づくように旋回するX線CT撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−194032(P2011−194032A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64070(P2010−64070)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】