説明

β−グルコセレブロシダーゼの活性増強による神経学的疾患の治療方法

野生型β-グルコセレブロシダーゼの安定性を増強する方法を提供する。中枢神経系におけるβ-グルコセレブロシダーゼの発現又は活性の増強が有用と考えられる、神経学的疾患を有する個体の治療及び/又は予防の方法を提供する。この方法は、β-グルコセレブロシダーゼ用の薬理学的シャペロンの有効量を投与することを含み、但し、個体は、β-グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子に変異を有さないことを条件とする。さらに、特異的な薬理学的シャペロンとして同定され、インビボで中枢神経系においてβ-グルコセレブロシダーゼの活性を増強することが示されるβ-グルコセレブロシダーゼインヒビターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2006年6月23日に申請した米国特許仮出願第60/815,952の特権を請求し、その開示内容は参考文献として全体的にここに含まれるものとする。
(技術分野)
本発明は、α-シヌクレイノパシー(α-synucleinopathies)、例えば、パーキンソン病の治療、及びニーマン-ピックC型の治療のための、リソソーム酵素β-グルコセレブロシダーゼの活性の増強方法に関する。本発明は、サイトゾル輸送及びβ-グルコセレブロシダーゼの酵素活性を、おそらく酵素を安定化することにより増加するβ-グルコセレブロシダーゼの特異的な薬理学的シャペロンを提供する。
【0002】
(背景技術)
神経変性疾患におけるタンパク凝集
ニューロンにおいて、損傷されるか、ミスホールドされるか又は過剰であるタンパクを分解することにより、プロテアソーム及びリソソーム系は、タンパクのホメオスタシスを維持するように作用する。タンパク又は脂質の病理的凝集と関連している多くの神経変性疾患は、プロテアソーム及びリソソームの機能の障害、例えばアルツハイマー疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ゴーシェ病、テイ-サックス、ファーバー、ニーマン-ピックA、B&C型、GM1ガングリオシド蓄積症、GM2ガングリオシド蓄積症及びMPS-Iを示す。ニューロンは、ニューロンのストレス又は凝集に関連する他の原因から生じるその後の神経変性又はアポトーシスを再生できないので、ニューロンにおけるタンパク凝集は、特に深刻である。
【0003】
タンパク凝集及びリソソーム
プロテアソームに分解が困難なタンパク凝集の蓄積を防止することにおいて、リソソーム系は重要である。タンパク凝集を分解することにおけるリソソームの重要性は、ヒトの脳に見い出されるタンパク凝集と同じ構造において共同局在化する(co-localizing)リソソームタンパク及び自己貧食マーカーの多くのレポートにより支持されている(Bjokoyら、J Cell Biol. 2005年;171(4):603〜14;Triblら、Mol Cell Proteomics、2005;4(7):945〜57;Wongら、Mol Genet Metab、2004年、82(3):192〜207頁;Zhou、J Biol Chem. 2004年、279(37):39155-64)。特に、酸性コンパートメント(リソソーム)の中和は、α-シヌクレイン(α-syn)凝集の蓄積を導き、有糸分裂後のニューロン細胞におけるα-syn毒性を増悪する(Lee, J Neurosci、2004年;24(8):1888〜96)。病理的α-syn凝集は、パーキンソン病及び他のα-シヌクレイノパシーに関連する。結論として、リソソーム機能不全は、α-synを蓄積する遺伝子組換えマウスで報告された(Meredithら、Brain Res, 2002年;956(1):156〜65;Rockensteinら、J Neurosci Res, 2005年;80(2):247〜59)。
【0004】
タンパク凝集及びプロテアソーム
プロテアソームは、サイトゾルタンパクの分解に不可欠である。プロテアソーム介在の分解は、ポリユビキチン鎖による基質の修飾で開始され、それは、26Sプロテアソーム、多触媒性プロテアーゼ複合体によるタンパク分解を標的とする。ユビキチンは、神経変性疾患に特徴的な多くのフィラメント包含体の成分であり、疾患プロセスのこのタイプにおいて一般的なニューロン応答の活性化を示唆しているということが、研究により示された(Loweら、Neuropathol Appl Neurobiol. 1990年:16:281〜91)。家族性パーキンソン(SNCA)に関連する遺伝子における変異体の同定、及び散発性パーキンソンにおける残りのドパミン作動性黒質ニューロンにおけるタンパク細胞質の包含の存在を含む、遺伝研究は、ユビキチン-プロテアソーム系及びこの疾患の異常なタンパク分解に関して重要な役割を示唆している(Betarbetら、Exp Neurol. 2005年;191 Suppll:S17-27)。
【0005】
ニューロンを含み細胞中の多くのミスホールドタンパク及び脂質の蓄積又は凝集は、小胞体及び細胞ストレスを導くことが十分確立されているので、細胞「ストレス」タンパクであるポリユビキチン量の増加は、プロテアソーム系の過活性化を示唆している。しかし、CNS凝集疾患におけるニューロンのホメオスタシスにおける破壊に関する他の理論は、ユビキチン/プロテアソーム経路の抑制によっている(Roccaら、Molecular Biology of the Cell. 2001年;12:1293〜1301)。インビボ及びインビトロの両方での研究で、α-syn凝集及び酸化的ストレス、パーキンソン病の両方の特徴が、損なわれたユビキチン-プロテアソーム系及びパーキンソン疾患の原因と結び付けられている(Levら、Neurosci Lett. 2006年;399(1-2);27-32)。特に、プロテアソーム阻害と組み合わされた反応性酸化種(ROS)への曝露により、プロテアソーム阻害単独を超えるα-syn凝集形成が増加した。さらに、潜在的細胞障害性の異常なタンパクの蓄積及び凝集を伴う、26/20Sプロテアソームにおける構造的及び機能的欠陥は、散発性パーキンソン病の患者の黒質緻密部に確認された(McKnaughtら、Ann Neurol. 2003; 53 Suppl 3:S73-84)。さらに、ミスホールドをタンパクに生じプロテアソームの分解に抵抗するSNCAにおける変異は、家族性パーキンソン病にかなり関連している。また、プロテアソームのサブユニットであるS6'と相互作用することにより、凝集したα-synがプロテアソーム機能を阻害することが示されている(Snyderら、J Mol Neurosci. 2004年; 24(3):425-42)。パーキンソン病の患者の脳、並びに、E3ユビキチンリガーゼであり、ユビキチンプロテアソーム系の不可欠な部分であるパーキンを欠く個体及び動物の脳において、プロテアソーム機能は、低下される。
【0006】
従って、プロテアソームにより処理されるタンパクにおける欠損が、パーキンソン病の散発性及び様々な家族系形態において、一般的な因子であることは明らかである。これと同じ結果は、タンパクのミスホールドを生じる薬剤とプロテアソームインヒビターのコンビネーションを、ドパミンニューロン培養物に加える実験から導かれた(Mytilineouら、J Neural Transm. 2004年;111(10-11):1237〜51)。ドパミンニューロンの優先的な損失及び細胞死は、その二つが組み合わされた時、著しく増加する。
【0007】
さらに少量のプロテアソーム阻害により、ユビキチンプロテアソーム系のダウンレギュレーション及びリソソーム系又は自食応答の活性化が導かれる(Dingら、J Neurochem, 2003年;86(2):489〜97;Iwataら、Proc Natl Acad Sci USA、2005年;102(37):13135〜40;Butlerら、Rejuvenation Res. 2005年;8(4):227〜37)。内因性ERシャペロンと傷害性/変性/ミスホールドタンパクの間の不均衡は、後者の蓄積を生じ、不均衡の深刻度に依存して、老化、プロテアソームの阻害(アポトーシスを導く)又は壊死を生じ得る(Sotiら、Aging Cell. 2003年;2:39〜45)。この仮説は、「毒性タンパク蓄積仮説」として参照される。
【0008】
脂質欠損及び神経変性疾患
脂質の蓄積は神経変性と関連していることはよく知られており、それは、リソソームの貯蔵疾患、例えば、ゴーシェ病、テイ-サックス、ファーバー、ニーマン-ピックA、B&C型、GM1ガングリオシド蓄積症及びMPS-I疾患から明らかである。しかし、リソソーム加水分解酵素に欠損のない神経学的疾患において、他の脂質蓄積が観察された。ある例では、ラクトシルセラミド、GlcCer、GMS-ガングリオシド及びアシアロ-GMSの病理学的蓄積は、リソソーム性コレステロール貯蔵疾患であるニーマン-ピックC型疾患(酵素をコード化する遺伝子において変異をミスセンスするために、欠損酸スフィンゴミエリナーゼと関連しない、リソソームのコレステロール貯蔵疾患である)に見い出される(Vanierら、Brain Pathology. 1998年;8:163〜74)。この蓄積は、他の機構、例えば欠陥のある脂質輸送により生じる可能性がある。健全なエンドソームの輸送系は、ニューロン機能に対して重要である(Buckleyら、J. Physiol, 2000年;525(Pt 1):11-9)。スフィンゴ糖脂質代謝、例えばGlcCerの破損は、細胞性輸送を害し、コレステロール隔絶及び蓄積を生じる(Paganoら、Traffic, 2000年;1(11):807〜15;Sillenceら、J. Lipid Res, 2002年;43(11):1837〜1845頁;Helmsら、Traffic, 2004年; 5(4):247〜54)。蓄積された糖脂質は、エンドソーム系の通常の輸送の維持に重要なタンパクを隔離し得る「脂質ラフト」を形成する(上記Pagano)。さらに、ニーマン-ピックC型細胞由来の線維芽細胞に観察される欠陥のある脂質輸送は、スフィンゴ糖脂質生合成の強力なインヒビターでの処理により逆転し(Lachmannら、Neurobiol Dis, 2004年;16(3):654-8)、さらに、この疾患の病理におけるGlcCer及び他の脂質をさらに強調することが可能である。
【0009】
さらに、脂質ラフトとの関連は、その本来の細胞の位置、シナプスにα-synの通常の局在化を必要とする(Fortinら、J Neurosci、2004年;24(30):6715〜23頁)。パーキンソン病の病理に関する変異は、この関連を妨害する。また、この関連を妨害する脂質ラフト組成物におけるこのような変化は、通常の局在化及び同様にα-synの分布を損なうことにより、パーキンソン病の一因となり得る。
【0010】
種子タンパク凝集に対するスフィンゴ糖脂質の補助
α-シヌクレインは、ガングリオシドに高い親和性を有し、また野生型α-synは、それらのコアにGlcCerを有するガングリオシドとSDS安定複合体を形成する(Zimranら、N Engl J Med、2005年;352(7):728〜31頁)。両方のα-syn及びβ-アミロイドタンパクの可溶型は、GM1と強力に結合し、潜在的に凝集の種をまく(ヤナギサワら、Neurobiol Aging、1998年;19(1 Suppl):S65-7;ヤナギサワら、Nat Med、1995年;1(10):1062-6;Leeら、J Biol Chem、2002年;277(1):671-8;ハヤシら、J Neurosci、2004年5月19日;24(20)4894-902頁)。近年、細胞ベースの実験は、リソソーム酵素β-グルコセレブロシダーゼ(GCase)の変異がパーキンソン病を発生するリスクを増加する可能性があることを示した(Aharon-Peretzら、N Engl J Med、2004年;351(19):1972〜7頁;Goker-Alpanら、J Med Genet、2004年;41(12):937〜40頁;クラークら、Mov Disord、2005年;20(1):100〜3;Eblanら、Mov Disord、2005年;31:31)。変異体の対立遺伝子のキャリヤーは、組織学的に有意なレベルのグルコシルセラミドを蓄積するとは思われないが、スフィンゴ糖脂質代謝における微妙な変化は、例えば、通常の凝集に対する自己貧食応答を破壊するか、又はプロテアソームを阻害することにより、これら個々におけるパーキンソン病へのリスクを増加し得る。さらに、I型ゴーシェ病(GCase欠損による)及びパーキンソニズム/痴呆の患者は、海馬のCA2-4ニューロンにおいてα-syn陽性が含まれることを示し;ある患者は、脳幹型及び皮質型レビー小体を有し、また、ある患者は黒質ニューロンの著しいニューロン損失を示した(Wongら、Mol. Genet. Metabol. 2004年;38:192〜207頁)。
【0011】
同様に、インビトロにおいて、脳脂質の大きな単層のベシクルは、可溶性N-末端ハンチントンエクソンIフラグメント、ハンチントン病において蓄積する病理的タンパク、及び変異体ハンチントン凝集物の刺激された原線維形成に容易に関連した(Suopankiら、J Neurochem. 2006年;96(3):870〜84頁)。近年、サンドホフ病(GM2 ガングリオシド蓄積症)に関するマウスモデルにおいて、α-syn及びβ-シヌクレインは、GM2 ガングリオシドの他にニューロンに蓄積する(スズキら、Neuroreport、2003年;14(4):551〜4)。従って、ガングリオシド代謝をマニュプレートすることは、凝集体を形成するためのタンパクの性向に影響可能である。
前記のものは、インビボにおける脂質の相互作用が、タンパクのミスホールドに影響し得、また、神経変性疾患の病因において明らかな役割を担っているかも知れないことを指摘している。
【0012】
脂質及び/又はタンパクの蓄積及び炎症
炎症は、パーキンソン病の病理に重要な役割を担っていると、徐々に認識されてきた。炎症及び免疫、又はさらに自己免疫、紅斑は、パーキンソン病患者の死後の脳に示されてきた。α-syn凝集は、ミクログリア細胞を活性化し、神経変性を導く慢性炎症を生じる(Wersingerら、Curr Med Chem. 2006年;13(5):591〜602頁)。
【0013】
特異的な酵素インヒビターから誘導される薬理学的シャペロン
変異体酵素のレスキュー及び野生型酵素の増強
LSDに関連する酵素の小分子インヒビターの結合により、変異体酵素及び対応する野生型酵素の両方の安定性を増強できることが以前より示されている(米国特許第6,274,597号;第6,583,158号;第6,589,964号;6,599,919号;第6,916,829号及び第7,141,582号を参照されたく、それらは参考文献として本明細書に含まれるものとする)。特に、幾つかの標的リソソーム酵素に関する特異的、選択的競合インヒビターである、グルコース及びガラクトースの小分子誘導体の投与は、インビトロにおける細胞の酵素の安定性を効果的に増強し、従って、酵素活性を測定することにより決定されるリソソーム中の酵素の量を増強することが見出された。従って、リソソーム中の酵素量を増加することにより、酵素基質の加水分解が増えることが予期される。この戦略の背景にある元の理論は、以下のようである:変異体酵素タンパクは、ERにおいて不安定であるので(イシイら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 1996年;220:812〜815頁)、酵素タンパクは、通常の輸送経路において遅延し(ER→ゴルジ体→エンドソーム→リソソーム)、中途で分解される。従って、結合し、変異体酵素の安定性を増強する化合物を、酵素に関する「シャペロン」として使用し、ERを出てリソソームに移動することができる量を増加してもよい。さらに、幾つかの野生型タンパクのフォールディング及び輸送が不完全であり、幾つかの例においてはそれらの最終的な細胞の位置に到達する前に、分解される幾つかの野生型のタンパクの70%までが分解されているので、野生型酵素を安定化し、ERを出ることができる酵素量を増加し、元の細胞の位置に輸送されるために、シャペロンを使用可能である。
【0014】
幾つかの酵素インヒビターは、酵素の触媒中心(活性部位)に特異的に結合し、その結果、インビトロにおいて酵素コンホメーションが安定化することが知られているので、これらのインヒビターは、いくらか逆説的に、ERからの退出、リソソームへの輸送及び加水分解活性の回復を手伝うことができるシャペロンを有効にすることが提案された。これらの特異的な薬理学的シャペロンは、「活性部位-特異的シャペロン(ASSCs)」又は「特異的な薬理学的シャペロン」と称され、それは、それらが特異的な様式で活性部位に結合し、全てのタンパクに一般的に影響しないからである。
【0015】
リソソームのGCaseに変異を有する個々のパーキンソン病の治療方法は、それ故に、GCase活性の減少が、2006年6月8日に出願された継続中の米国特許出願第11/449,528号に記載されている。変異リソソーム酵素のレスキューは、一定の疾患の病態を逆転することが可能であるが、特異的なリソソーム酵素変異体を含まず、リソソーム酵素の増加が有益と考えられる疾患の病態を低減する必要性が残っている。
【0016】
発明の概要
本発明は、個体における神経学的疾患の治療又は予防方法であって、その神経学的疾患が、中枢神経系の細胞内のタンパク及び脂質凝集と関連しており、その方法が、GCaseに関する特異的な薬理学的シャペロンの有効量を投与することによるが、その神経学的疾患が変異GCaseに関連していない、前記方法を提供する。
ある態様において、本発明は、細胞内のフォールディング及びプロセシング、及びそれ故に、GCaseに特異的な薬理学的シャペロンの有効量にニューロンを曝露することにより、野生型GCaseの活性を増強する方法を提供する。
【0017】
この態様のある実施態様において、治療されるべき神経学的疾患は、α-シヌクレイノパシーである。
特定の態様において、a-シヌクレイノパシーは、パーキンソン病、レビー小体疾患、多系統萎縮症、ハレルフォルデン・スパッツ病又は前頭側頭型痴呆である。
この態様の他の実施態様において、治療されるべき神経学的疾患は、パーキンソン病である。
この態様の他の実施態様において、治療されるべき神経学的疾患は、ニーマン・ピックタイプC型疾患(NPCD)である。
本発明のある態様において、薬理学的シャペロンは、GCaseの可逆的インヒビターである。
【0018】
本発明のこの実施態様の特定の態様において、薬理学的シャペロンは、イソファゴミン(isofagomine)化合物、例えば、イソファゴミン又はC-ノニル-イソファゴミン、C-ベンジルイソファゴミン又は本明細書に提供するようなイソファゴミンのN-アルキル誘導体である。他の特定の態様において、薬理学的シャペロンは、グルコイミダゾール化合物、例えばグルコイミダゾール、(5R、6R、7S、8S)-5-ヒドロキシメチル-2-オクチル-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオール又は(5R,6R,7S,8S)-5-ヒドロキシメチル-2-(3,3-ジメチルブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオールである。
【0019】
さらなる態様において、GCase酵素活性の増加は、基本レベル(basal level)の少なくとも1.2、1.5、2、3又は5倍であるが、それらに限定されない。
神経変性疾患がニーマン・ピックC型疾患である他の態様において、第二の治療剤は、アロプレガノロン、スタチン、フェノフィブレート、ナイアシン;エゼチミベ(ezetimibe)、結合樹脂、β-ヘキソサミニダーゼA又は酸β-ガラクトシダーゼ(acid β-galactosidase)に特異的な薬理学的シャペロン、2-N-アセチルアミノ-イソファゴミン、1,2-ジデオキシ-2-アセトアミド-ノジリマイシン、ナグスタチン(nagstatin)、4-エピ-イソファゴミン及び1-デオキシガラクトノジリマイシンからなる群より選ばれる。
【0020】
また、本発明は、神経変性疾患を有するか又はその発生の危険性のある個体において、神経変性疾患を治療又は予防する方法であって、その個体がGCaseをコードする遺伝子に変異を有さず、その方法がGCaseを結合する薬理学的シャペロンを個体に投与することによる、前記方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、神経学的疾患の治療のための、GCaseシャペロンと他の治療剤とのコンビネーション治療のための方法を提供する。さらに、本発明は、GCase薬理学的シャペロンと他の治療剤の混合物を含む物質の組成物を提供する。神経学的疾患が、パーキンソン病、パーキンソニズム又はレビー小体痴呆である態様において、第二の治療剤は、レボドパ、抗コリン剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)インヒビター、ドパミンレセプターアゴニスト、モノアミンオキシダーゼインヒビター(MAOI)、末梢デカルボキシラーゼインヒビター、及び抗炎症剤からなる群より選ばれる。
【0022】
詳細な説明
本発明は、特異的な薬理学的シャペロンが、凝集タンパク及び基質脂質の構築に関連する病態を、予防の点までも、阻害するのに十分なレベルに、野生型GCaseの活性を増強できるという発見に関する。次に、これは、神経学的因子、条件、又は中枢神経系の細胞内のそれらの基質タンパク及び脂質の凝集に関連する疾患を処理するために使用可能である。
特に、本発明は、GCase用の1以上の薬理学的シャペロンを、GCaseの活性の増加が好都合であり得る神経学的疾患を有するリスクがあるか、又はその疾患を有すると疑われると診断された個体に、投与する方法を提供する。好適な薬理学的シャペロンとしては、個体への投与の後、GCaseに特異的に結合し、GCaseの安定及び輸送を増強し、それによりリソソームにおけるGCase活性を増強するいずれかの化合物が挙げられ、ただし、神経学的疾患又は症候が、GCaseをコードする遺伝子における変異体と関連しないということを条件とする。おそらく、GCaseのより安定な細胞内形態の結果として、中枢神経系の細胞における酵素機能の増強は、細胞内のGCase-関連ペプチド及びGCase脂質基質の代謝を増強し、それらは神経学的疾患、例えば、パーキンソン病及びニーマンピックC型疾患の治療に有用であり、それらはいずれも欠損GCase活性に関連しない。
【0023】
本発明は、部分的に、ヒトにおいて明らかに増加する野生型タンパク活性を促進する、薬理学的シャペロンの能力の発見に基づいている。この現象は、全てのタンパクの発現に一般的に作用する方法とは対照的に、特異的な薬理学的シャペロンにより特異的に結合するタンパクに、高度に特異的である。本発明の元となる実験結果としては、薬理学的シャペロンが、少なくとも約20〜25%、ある場合は、少なくとも約50%、特定の態様においては少なくとも約90%、さらには100%まで、内因性野生型タンパク活性を増加可能であることが観察される。インビボにおける増加のこのレベルは、組織培養における細胞に観察されておらず、驚くべきことに、通常の生理学的プロセスが、インビボにおける薬理学的シャペロンの作用を緩衝すると考えられるという予想が与えられる。薬理学的シャペロンは、少なくとも20〜25%、特に、少なくとも約50%、ヒトのインビボにおける野生型タンパクの活性レベルを増強可能であるという予想には基づかなかった。以下に例示するように、健康な被験者へのイソファゴミンの投与は、GCase活性に用量依存的な増加を生じる(図2)。ルーチンの用量依存試験を使用して容易に試験されたある濃度において、酵素活性の増加レベルは、少なくとも50%〜100%に増加した。
【0024】
本発明は、リソソーム酵素の不完全性と神経学的疾患状態(例えば、2型及び3型のゴーシェ病)との公知の関連性、及びタンパク及び/又は脂質凝集及び神経死/分解が、多くの非LSD神経変性疾患、例えば、背景の部分に記載したようなものに観察されるという事実に由来していた。従って、本発明は、タンパク凝集、特に、タンパク(又はモノマーを含むそれらのフラグメント)がリソソーム酵素、例えばGlcCerを有するSCNAの脂質基質に関連する凝集のクリアランスを増加する、非欠損リソソーム酵素の活性を増強する可能性を、意外にも利用している。病理的タンパクが関連する、脂質基質を低減することは、病理的タンパクの凝集を低減すると思われ、それにより、神経学的症候を寛解し、及び/又は神経死又は神経変性を予防する。或いは、凝集を起こしやすいタンパクの分解をコントロール可能な細胞環境をその後よりよくする脂質の濃度を、GCase活性の増強により低減してもよい。
【0025】
また、本発明は、非欠損リソソーム酵素の活性を増加し、GCase活性の低減以外のメカニズム、或いは他のメカニズムによるか、細胞内脂質輸送の異常により、GlcCer、グルコシルスフィンゴシン(GlcSph;又は異常な脂質代謝のために、GCase活性への応答においてそれらのレベルが変化する他の脂質)の蓄積があるニューロンにおいて、脂質プロフィールを変化する能力を予想外に利用している。
【0026】
本発明による特異的な薬理学的シャペロンの使用には、GCaseを補足する他の方法、例えば、組換え酵素(ERT)の投与、又は例えばZavescaTMの使用での基質減少療法(substrate reduction therapy)(SRT)によるものを上回る潜在的な利点があり、それは、前者は、カテーテルを介して脳に直接投与されなければならず、また、後者は、多くの糖脂質の合成を阻害し、また、単にある特定の神経学的疾患に関して減少することが好都合であるかも知れないものではないからである。ZavescaTMは、深刻な副作用を有し、ERTを許容できない患者にその使用が制限されている。従って、これらの治療は、選択酵素のユビキチンによる加水分解活性を増強できる治療よりも有効性が低い。
【0027】
定義
生物学及び臨床
本明細書に使用される用語は、一般的に、本発明の内容及びそれぞれの用語が使用される特定の内容において、当技術分野に通常の意味を有する。一定の用語は、以下又は明細書中で論じ、本発明の組成物及び方法を記載することにおいて及び本発明をどのように製造及び使用するかについて、実務家にさらなる手引きを提供している。
【0028】
用語「神経学的疾患」又は「神経変性疾患」は、ニューロン又はグリア細胞欠損に関連する中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)疾患であって、以下のものに限定されないが、例えば、ニューロンの損失、ニューロン変性、ニューロン脱髄、グリオーシス(例えば、マクロ及びミクロのグリオーシス)、又はニューロン又は異常タンパク又は毒素の神経外の蓄積(例えば、β-アミロイド又はα-シヌクレイン)が挙げられる。神経学的疾患は、慢性又は急性であり得る。例示的な神経学的疾患としては、ゴーシェ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、ハンティントン病、フレドリック失調症、軽度認知機能障害、大脳アミロイド脈管障害、パーキンソン症候群、レビー小体疾患、前頭側頭型痴呆(FTD)多系統萎縮症(MSA)、進行性核上麻痺、及び運動疾患(例えば運動失調、脳性麻痺、舞踏アテトーゼ、筋緊張異常、トゥーレット症、核黄疸)及び振戦疾患及びロイコジストロフィー(例えば、副腎白質萎縮症、異染色性白質萎縮症、カナバン病、アレクサンダー病、ペリツェウス・メルツバッヘル病)、ニューロンセロイド脂褐素症、血管拡張性失調症及びレット症候群が挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
特に、用語「α-シヌクレイノパシー」は、α-synの異常な蓄積に関連する疾患、例えば、パーキンソン症候群、パーキンソン病、レビー小体疾患、多系統萎縮症、ハレルフォルデン・スパッツ病及び前頭側頭型痴呆が挙げられるがそれらに限定されない。
「リソソーム酵素における変異体に関連する神経学的疾患」は、神経学的疾患を持たない個体と比較して、神経学的疾患を有する個体において評価した場合、1以上のリソソーム遺伝子において変異がまた存在するいずれかの神経学的疾患を指す。ある、非制限的な例において、Gba変異体に関連する神経学的疾患は、リソソーム貯蔵疾患、例えば、ゴーシェ病、又はヘテロ接合性Gba変異体に関連する神経変性疾患、例えばパーキンソン病の患者のサブセットである。本発明のある態様は、Gbaに変異を含まない神経学的疾患の治療に関する。
【0030】
用語「リソソーム活性の増加」は、リソソーム酵素に特異的な薬理学的シャペロンと接触する細胞において、ER中の官能性コンホメーションをとるリソソーム酵素ペプチドの量を、リソソーム酵素に特異的な薬理学的シャペロンと接触しない(好ましくは同じ細胞型の)細胞におけるリソソーム酵素発現と比較して増加すること、従って、細胞中、リソソームにより介在される脂質及び/又はタンパク代謝の割合を、薬理学的シャペロンの投与前の割合と比較して増加することを指す。リソソーム中の単一のリソソーム酵素の活性の増加は、リソソーム活性の増加を生じると考えられるが、本発明は、リソソーム酵素の数の活性の増加を都合よく提供し、広い脂質及び/又はタンパク代謝を生じる。
【0031】
前記の用語は、また、ER由来の野生型リソソーム酵素ポリペプチドの、リソソーム酵素に特異的な薬理学的シャペロンと接触している細胞におけるリソソームへの輸送効率を、リソソーム酵素に特異的な薬理学的シャペロンと接触していない細胞(好ましくは同じ細胞型)における内因性野生型リソソーム酵素ポリペプチドの輸送効率と比較して、増加することを意味する。
【0032】
用語「リソソーム酵素」又は「リソソームの酵素」は、リソソームにおいて作用するいずれかの酵素を指す。リソソーム酵素とは、α-ガラクトシダーゼA;β-グルコシダーゼ;α-グルコシダーゼ;β-ヘキソサミニダーゼA;β-ヘキソサミニダーゼB;α-L-イズロニダーゼ;β-ガラクトシダーゼ;β-グルクロニダーゼ;α-グルクロニダーゼ;α-フコシダーゼ;スルファターゼ;酸セラミダーゼ;NPC1;酸スフィンゴミエリナーゼ;プロサポシン(サポシンA、B、C、D);カテプシン(A、D、H、S、Z);H(+)-ATPase;シアリダーゼ;β-ガラクトセレブロシダーゼ;アリールスルファターゼ;イズロネート-2-スルファターゼ;ヘパランN-スルファターゼ;α-N-アセチルグルコサミニダーゼ;α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ;N-アセチルグルコサミン-6-スルフェートスルファターゼ;N-アセチルガラクトサミン-6-スルフェートスルファターゼ;アリールスルファターゼB;酸α-マンノシダーゼ;酸β-マンノシダーゼ;酸α-L-フコシダーゼ;α-N-アセチル-ノイラミニダーゼ;β-N-アセチルグルコサミニダーゼ;及びα-N-アセチルガラクトサミニダーゼが挙げられるが、それらに限定されない。
【0033】
用語「野生型リソソーム酵素」は、正常な内因性リソソームポリペプチド、及びリソソーム酵素ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び(同じ官能特性及び前記ポリペプチドのような結合アフィニティを有する)リソソーム酵素ポリペプチドをコードするいずれかの他のヌクレオチド配列、例えば、健常な個体における対立遺伝子変異体であって、ERにおいて官能性コンホメーションを達成し、リソソーム局在化を達成し、また野生型活性を示す(即ち、リソソーム酵素基質濃度を減少する)能力を有するものを指す。野生型リソソーム酵素は、変異体又は変異体タンパク又は酵素ではない。しかし、本発明は、リソソーム酵素に関する1以上の野生型対立遺伝子であってもよい可能性を排除しない。従って、この用語は、リソソーム酵素の機能又は活性に有害な作用を持たない多形を含む。
【0034】
一定の試験は、その実際のインビボ機能に対応していても又はしていなくてもよいタンパクの属性を評価することができ、また、タンパク機能の代理であるにも関わらず、そのような試験における野生型の特性は、本発明のタンパクレスキュー又は強化技術の許容可能な結果である。本発明による、あるそのような活性は、小胞体からその元の位置であるリソソームへの、野生型リソソーム酵素の好適な輸送である。
【0035】
本明細書に使用する場合、用語「変異タンパク」又は「変異酵素」は、タンパク機能又は活性に有効性を有する野生型配列から変化したタンパク配列を生じる遺伝子変異を含有する遺伝子から翻訳されたタンパク又は酵素を指す。特定の態様において、そのような変異体は、ERに通常存在する条件下、安定なコンホメーションを達成するため、タンパクの不能を生じる。このコンホメーションの達成に失敗すると、細胞内でそれらの適当な位置に、タンパク輸送系におけるそれらの通常の経路を通して輸送されるよりもむしろ、崩壊又は凝集されるべきこれらのタンパクを生じる。コンホメーションの変異以外の変異は、酵素活性の低減又はより速い代謝回転を生じることが可能である。
【0036】
本明細書に使用する場合、用語「薬理学的シャペロン」又はある場合は「特異的な薬理学的シャペロン」(「SPC」)は、分子、例えば、小分子、タンパク、ペプチド、核酸、又は炭水化物であって、タンパクに特異的に結合し、また1以上の以下の効果を有する:(i)タンパクの安定な分子コンホメーションの形成の強化;(ii)ERから他の細胞の位置、好ましくは元の細胞の位置へのタンパクの輸送の誘導、即ち、タンパクのER介在性分解の予防;(iii)ミスホールドされたタンパクの凝集の予防;及び/又は(iv)タンパクへの少なくとも部分的な野生型機能及び/又は活性の回復又は増強。例えば、リソソーム酵素に特異的に結合する化合物は、それが結合し、リソソーム酵素においてシャペロン効果を発揮し、関連又は非関連の一般的な基ではないことを意味する。従って、リソソーム酵素用の薬理学的シャペロンは、そのリソソーム酵素に好適に結合する分子であり、その結果として、適当なフォールディング、輸送、非凝集及びリソソーム酵素の活性を生じる。本明細書に記載するように、この用語は、内因性シャペロン、例えばBiP、又は、様々なタンパクに対してシャペロン活性を示す非特異的な薬剤、例えばDMSO又は重水(deuterated water)を指さない。
【0037】
ある非制限的な態様において、薬理学的シャペロンは、インヒビター、又はGCaseの構造的に同様のそれらの類似体であってもよい。薬理学的シャペロンは、以下のリストから選ばれてもよいがそれらに限定されない;例えば、イソファゴミン;C-ノニル-イソファゴミン;C-ベンジル-イソファゴミン;N-ブチル-イソファゴミン;N-(3-シクロヘキシルプロピル)-イソファゴミン;N-(3-フェニルプロピル)-イソファゴミン;N-(2Z,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)-イソファゴミン;N-ドデシル-イソファゴミン(N-ドデシル-IFG);2-N-アセトアミド-イソファゴミン;2-ヒドロキシ-イソファゴミン;2-N-アセチルアミノ-イソファゴミン;及びそれらの類似体及び誘導体。
【0038】
酵素の「競合的インヒビター」とは、基質とほぼ同じ位置において酵素を結合する酵素基質の化学構造及び分子ジオメトリーと構造的に似ている化合物を指し得る。従って、インヒビターは、基質分子と同じ活性部位について競合し、従って、Kmを増加する。もし十分な基質分子がインヒビターを置換するために入手可能ならば、競合的阻害は通常可逆的であり、即ち、競合的インヒビターは可逆的に結合可能である。従って、酵素阻害の量は、インヒビター濃度、基質濃度、活性部位に関するインヒビター及び基質の相対的親和性に依存する。
非古典的な競合的阻害は、活性部位から離れた部位にインヒビターが結合する場合に生じ、基質がそれに結合し得ない酵素におけるコンホメーション変化を生じる。非古典的な競合的阻害において、活性部位における基質の結合は、別の部位でのインヒビターの結合を妨げ、またその逆もある。これは、アロステリック阻害を含む。
【0039】
「非競合的インヒビター」は、酵素との強力な結合を形成する化合物を指し、過剰な基質の添加により置換されなくてもよく、即ち、非競合的インヒビターは不可逆であってもよい。非競合的インヒビターは、酵素又はタンパクの活性部位、その近く又は遠くで結合していてもよく、酵素との連結において、Kmに影響しないが、Vmaxを減少する。
不競合的阻害は、インヒビターがES複合体にのみ結合する状況を指す。酵素は、インヒビターが結合する場合に不活性となる。これは、基質の不在下で酵素に結合し得る非古典的競合的インヒビターとは異なる。
【0040】
用語「Vmax」は、酵素触媒反応、即ち飽和基質レベルでの最大初速度を指す。
用語「Km」は、1/2Vmaxを達成するために要求される基質濃度である。
酵素「エンハンサー」は、リソソーム酵素に結合し、酵素反応速度を増加する化合物である。
【0041】
用語「リソソーム酵素を安定化する」は、野生型又は官能性上同等のリソソーム酵素タンパクのコンホメーションを誘導又は安定化する薬理学的シャペロンの能力を指す。用語「官能性上同等」とは、コンホメーションにおいて少ないバリエーションであってもよい(ほとんど全てのタンパクは生理学的状態においていくつかのコンホメーション柔軟性を示している)が、コンホメーション柔軟性は以下のものを生じない;(1)タンパク凝集、(2)小胞体介在分解経路を介する除去、(3)タンパク機能の機能障害、例えば損傷、ミスホールド又は過剰なタンパクの崩壊、及び/又は(4)細胞内の不適当な輸送、例えば、野生型タンパクのものよりも多いか又は少ない程度へのサイトゾル内のリソソームへの局在化。安定化は、以下のもののいずれか一つにより測定することができる;(i)細胞内の酵素半減期の増加;(ii)リソソーム内における酵素の増加レベル;又は(ii)人工的基質を使用する細胞性ライセートにおいて測定されるような加水分解活性の増加。
【0042】
本明細書に使用する場合、用語「輸送の効率」は、細胞、細胞膜、又は細胞外環境内におけるその元の位置への小胞体外への変異体タンパクの輸送能力を指す。リソソーム酵素に関する元の位置は、リソソームである。
【0043】
本明細書に使用する場合、用語「患者」又は「患者母集団」は、神経学的疾患を有するか又は神経学的疾患の発生リスクがあると診断された個体を指す。神経学的疾患の診断は、神経学的機能減少の症候の同定を含む。症候としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない;振戦、手、腕、脚、顎及び顔;肢及び体幹の固縮又は硬直;運動緩徐又は運動の緩慢;姿勢の不安定、又は障害性の平衡及び協調;健忘症;失語症;失行症;失認;人格変化;抑うつ;幻覚;及び妄想。神経学的疾患の診断方法は、当業者に公知である。ある態様において、神経学的症候は、変異体遺伝型に関連しない散発性であってもよい。他の態様において、神経学的疾患は、リソソーム加水分解酵素において欠乏性ではない、即ち、酵素活性の低減を生じるリソソーム加水分解酵素をコードする遺伝子において変異を持たない患者のCNS又はPNSの細胞内において、リソソーム酵素基質、又は他のタンパク又はそれらのフラグメントの凝集の増加によってもよい。これらの患者は、非リソソーム酵素における変異体、例えば、凝集を促進するα-synを有していてもよい。或いは、非制限的態様、神経学的疾患は、使用されるシャペロンのいずれか一つ又はコンビネーションにより取り組まれない遺伝的基礎を有していてもよい。例えば、患者は、官能性タンパクが製造されないリソソーム酵素に関してホモ接合性無しの変異体からなる遺伝型を有していてもよい。他の活性を増強するこの場合において、本発明の方法による非変異体リソソーム酵素は、欠損したリソソーム酵素を補ってもよい。
【0044】
「応答者」は、中枢神経系の細胞においてタンパク及び脂質凝集に関連した神経学的疾患で診断され、1以上の臨床的症候の改善、寛解又は予防、又は1以上の代理の臨床マーカーの改善又は逆転を示す、現在請求されている方法により治療される個体である。特定の態様において、結晶中のα-シヌクレインの量の変化(通常のコントロールと比較した増加及び減少を含む)は、GCase用の薬理学的シャペロンに対する陽性の応答に関する代理マーカーである。
【0045】
用語「治療有効量」及び「有効量」は、治療応答を生じるのに十分な特異的な薬理学的シャペロンの量を指す。治療応答は、実務家(例えば、臨床医)が治療に対する効果的な応答として認識すると考えられるいずれの応答であってもよく、前記症候及び代理の臨床マーカーを含む。従って、一般的に、治療応答は、前記のような疾患又は症候の1以上の症状の寛解と考えられる。
【0046】
フレーズ「医薬的に許容され得る」は、ヒトに投与される場合に生理学的に容認可能であり、一般的に有害な反応を生じない分子全体及び組成物を指す。好ましくは、本明細書に使用する場合、用語「医薬的に許容され得る」は、連邦又は合衆国政府の管理機関に承認されるか、又は米国薬局方又は他の一般的に認識される動物、より具体的にはヒトに用いるための薬局方に挙げられることを意味する。用語「キャリヤー」は、化合物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。そのような医薬的キャリヤーは、滅菌液、例えば水又は油であってもよい。水又は水溶液食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液は、キャリヤー、特に注入用溶液として好ましく使用される。好適な医薬キャリヤーは、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」第18版に記載されている。
【0047】
用語「約」及び「ほぼ」は、一般的に、測定の性質又は精度を示して測定される量に関して許容される程度の誤差を意味する。一般的に、誤差の程度の例は、示される値又は値の範囲の20パーセント(%)、好ましくは10%、より好ましくは5%である。或いは、生物学的系において特に、用語「約」及び「ほぼ」は、大きさのオーダー、好ましくは示す値の5倍、より好ましくは2倍の値を意味してもよい。本明細書に示す数値的な量は、特に規定しない限り、明らかに示されていない場合は、用語「約」及び「ほぼ」が推測され得る意味に近い。
【0048】
化学
用語「アルキル」は、単に、炭素原子及び水素原子からなる直鎖又は分岐のC1-C20炭化水素基(不飽和を含む)であって、単結合により分子の残基に結合するもの、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)を指す。本明細書に使用されるアルキルは、好ましくは、C1-C8アルキルである。
用語「アルケニル」は、少なくとも1の炭素-炭素二重結合を含むC2-C20脂肪族炭化水素基であって、直鎖又は分岐鎖であってもよく、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソ-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニルを指す。
【0049】
用語「アルキニル」は、1以上の三重結合を有する、1価の、非分岐又は分岐の炭化水素鎖を指す。アルキニル基の三重結合は、他の不飽和基と非共役又は共役であってもよい。好適なアルキニル基としては、(C2-C8)アルキニル基、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4-メチル-1-ブチニル、4-プロピル-2-ペンチニル-、及び4-ブチル-2-ヘキシニルが挙げられるが、それらに限定されない。アルキニル基は、非置換であるか、又は1又は2の好適な置換基で置換されていることが可能である。
用語「シクロアルキル」は、不飽和、非芳香族の単環又は多環の炭化水素環系であり、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルを示す。多環のシクロアルキル基の例としては、ペルヒドロナフチチル(perhydronapththyl)、アダマンチル及びノルボルニル基であって、環状基又はスピロ二環基を架橋したもの、例えばスピロ(4,4)ノン-2-イルが挙げられる。
【0050】
用語「シクロアルキルアルキル」は、前記定義のようなアルキル基に直接結合した前記のようなシクロアルキルを指し、安定な構造、例えばシクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチルを作成する。
用語「アルキルエーテル」は、アルキル鎖に包含された少なくとも1の酸素を有する前記定義のアルキル基又はシクロアルキル基、例えば、メチル、エチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランを指す。
用語「アルキルアミン」は、少なくとも1の窒素原子を有する前記定義のようなアルキル基又はシクロアルキル基、例えばn-ブチルアミン及びテトラヒドロオキサジンを指す。
【0051】
用語「アリール」は、炭素数約6〜14の芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニルを指す。
用語「アリールアルキル」は、前記のようなアルキル基に直接結合する前記のようなアリール基、例えば-CH2C6H5及び-C2H4C6H5を指す。
【0052】
用語「複素環」は、炭素原子及び窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群より選ばれる1〜5のヘテロ原子からなる安定な3〜15員の環基を指す。本発明の目的に関して、複素環基は、単環、二環又は三環系であってもよく、それらとしては、縮合され、架橋されるか又はスピロ環系が挙げられてもよく、複素環基中の窒素、リン、炭素、酸素又は硫黄原子は、様々な酸化状態に所望により酸化されていてもよい。さらに、窒素原子は、所望により四級化されていてもよく;また環基は、部分的又は完全に飽和されていてもよい(即ち、複素環式芳香族又はヘテロアリール芳香族)。そのような複素環基の例としては、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフルニル、カルバゾイル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル、イミダゾリル、テトラヒドロイソウイノリル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル(pyrrolyl)、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサソリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソキサゾリル、イソキサソリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフルチル(tetrahydrofurtyl)、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシドチアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
複素環基は、安定構造を生じるいずれかのヘテロ原子又は炭素原子において主構造に結合してもよい。
用語「ヘテロアリール」は、環が芳香族である複素環を指す。
用語「ヘテロアリールアルキル」は、アルキル基に直接結合する前記のようなヘテロアリール環基を指す。ヘテロアリールアルキル基は、安定構造を生じるアルキル基からいずれかの炭素原子において主構造に結合していてもよい。
用語「ヘテロシクリル」は、前記定義のような複素環基を指す。ヘテロシクリル環基は、安定構造を生じるいずれかのヘテロ原子又は炭素原子において主構造に結合していてもよい。
用語「ヘテロシクリルアルキル」は、アルキル基に直接結合した前記定義のような複素環基を指す。ヘテロシクリルアルキル基は、安定構造を生じるアルキル基の炭素原子で主構造に結合していてもよい。
【0054】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルカルキル」、「置換シクロカルケニル(cyclocalkenyl)」、「置換アリールアルキル」、「置換アリール」、「置換複素環」、「置換ヘテロアリール環」、「置換ヘテロアリールアルキル」、又は「置換ヘテロシクリルアルキル環」における置換基は、同じか異なる、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)、又は所望により以下のものから選ばれる置換基から選ばれる1以上を有し、同じでも異なっていてもよい;アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環、-COORx、-C(O)Rx、-C(S)Rx、-C(O)NRxRy、-C(O)ONRxRy、-NRxCONRyRz、-N(Rx)SORy、-N(Rx)SO2Ry、-(=N-N(Rx)Ry)、-NRxC(O)ORy、-NRxRy、-NRxC(O)Ry-、-NRxC(S)Ry、-NRxC(S)NRyRz、-SONRxRy、-SO2NRxRy、-ORx、ORxC(O)NRyRz、-ORxC(O)ORy-、-OC(O)Rx、-OC(O)NRxRy、-RxNRyRz、-RxRyRz、-RxCF3、-RxNRyC(O)Rz、-RxORy、-RxC(O)ORy、-RxC(O)NRyRz、-RxC(O)Rx、-RxOC(O)Ry、-SRx、-SO2Rx、-ONO2(式中、前記基中のRx、Ry及びRzは、水素原子、置換又は非置換のアルキル、ハロアルキル、置換又は非置換のアリールアルキル、置換又は非置換のアリール、置換又は非置換のシクロアルキル、置換又は非置換のシクロアルカルキル置換又は非置換の複素環、置換又は非置換のヘテロシクリルアルキル、置換又は非置換のヘテロアリール又は置換又は非置換のヘテロアリールアルキル。
【0055】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の基を指す。
用語「短い柔軟なリンカー」とは、約6Å〜約12Å、好ましくは約9Åの長さの線状のリンカーを指す。短い柔軟なリンカーは、互いに結合される分子、例えば、炭素に結合する炭素、ヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄に結合する炭素を含み、一緒に結合した分子は、結合の軸の周りを回転することができる。特別な態様において、柔軟なリンカーは、異なるコンホメーション及び配向に適合可能であり、短い柔軟なリンカーにより連結された分子ドメイン間の距離を変えることができる。
【0056】
神経変性疾患用のシャペロン療法
一連の態様において、小分子薬理学的シャペロンは、ERにおける非変異体GCaseの安定性を増強し、リソソームへの輸送を増強し、また、リソソーム中のタンパクの安定化により酵素半減期を増加する。この戦略により、リソソーム中の酵素活性又は酵素機能の増加を生じ、それ故に、リソソーム活性を増強する。従って、脂質代謝、例えばGlcCer代謝は、GCase活性を増強することにより調節され、シャペロンと接触しない細胞と比較した場合、細胞中のGlcCer量の低減を導く。前記のように、この戦略により、α-synの量の減少が予期され、及び/又はGlcCer又は細胞、特にニューロン中のGlcCerを含むいずれかの分裂的な脂質不均衡の病理学的蓄積を寛解すると考えられる。
【0057】
GCase用のシャペロン
GCaseの活性を増強することによる、リソソーム活性を増加するための薬理学的シャペロンとして、単独又はコンビネーションにおいて使用され得る多くの化合物がある。前記のように、GCase用の競合的インヒビターは、GCase活性を増強することが以前に示されている。従って、GCaseのこれら及び他のインヒビターは、おそらくリソソーム中のGCase活性を増強することにより、α-synの量を低減するために有用かも知れないと予測されるが、他のメカニズムも可能である。
【0058】
イソファゴミン(IFG;(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-3,4-ピペリジンジオール)は、以下の構造を有する化合物を指す:
【0059】
【化1】

【0060】
酒石酸イソファゴミンは、2007年5月23日に出願された一般的に所有されている米国特許出願第11/752,658号に最近記載されており、CAS番号第919364-56-0が与えられた。また、イソファゴミンは、様々な有機酸及び無機酸で作られた他の酸付加塩の形態において製造されていてもよい。そのような塩としては、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸及び様々な他のもので形成されるものが挙げられる(例えば、硝酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩等)。そのような塩は、当業者に公知なように形成することができる。
【0061】
イソファゴミンのN-アルキル誘導体は、また、本発明の使用のために企図される。そのような化合物は、クリスチャンセンらの米国特許第6,046,214号、及びシルクスらの第5,844,102号に記載されている。さらなる態様において、イソファゴミン誘導体は、以下の一般式Iを有するか、又は医薬的に許容され得るそれらの塩である:
【0062】
【化2】

【0063】
{式中、Rは、C1-7ハロアルキル、C1-10アルキル、C3-7アルケニルアルキル、C2-7アルコキシアルキル、C1-7カルバモイルアルキル又はX-Ar1であり;
Xは、-(CH)n-又はC2-C3アルケニレンであり;
nは、整数の0〜3であり;
Ar1は、以下の一般式により表され;
【0064】
【化3】

【0065】
(式中、R1及びR2は、水素、ハロ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、アミノ、ニトロ、ヘテロアリール、アリール又はシアノから独立して選ばれ;YがC、N、O又はSの場合、X及びZは、独立してC、N、O又はSであるか;又は、YがX及びZを連結する単結合の場合、X及びZは独立してC、N-R3、O又はSであり、R3はC1-3アルキル又は水素である)}。
【0066】
さらなる態様において、イソファゴミン誘導体は、以下の一般式Iaを有するか、又は医薬的に許容され得るそれらの塩である:
【0067】
【化4】

【0068】
{式中、Rは、C1-10アルキル、C3-7アルケニルアルキル、C2-7アルコキシアルキル、又はX-Arであり;
Xは、-(CH)n-又はC2-C3アルケニレンであり;
nは、整数の0〜3であり;
Arは、以下の一般式により表される;
【0069】
【化5】

【0070】
(式中、X及びZは、C、N、O又はSであり;Yは、C、N、O、S又はXとZを連結する単結合であり;R1は、水素、ハロ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、アミノ、ニトロ、アリール又はシアノである)}。
【0071】
特定のN-アルキル誘導体としては、N-ドデシルイソファゴミン及び以下の表1に提供されるものが挙げられる:
【0072】
【化6】

【0073】
【表1】

【0074】
化合物は以下のように命名される:(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-プロピルピペリジン-3,4-ジオール(1);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-ペンチルピペリジン-3,4-ジオール(2);(3R,4R,5R)-1-ヘプチル-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(3);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(3-メチルブト-2-エニル)ピペリジン-3,4-ジオール(4);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(メトキシエチル)ピペリジン-3,4-ジオール(5);(3R,4R,5R)-1-ベンジル-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(6);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(2-メチルベンジル)ピペリジン-3,4-ジオール(7);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(3-メチルベンジル)ピペリジン-3,4-ジオール(8);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(4-メチルベンジル)ピペリジン-3,4-ジオール(9);(3R,4R,5R)-1-(4-フルオロベンジル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(10);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(4-メトキシベンジル)ピペリジン-3,4-ジオール(11);(3R,4R,5R)-1-(4-アミノベンジル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(12);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(2-フェニルエチル)ピペリジン-3,4-ジオール(13);(3R,4R,5R)-1-(ビフェニル-4-イルメチル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(14);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-((テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル)ピペリジン-3,4-ジオール(15);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(ピペリジン-4-イルメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(16);(3R,4R,5R)-1-(フラン-2-イルメチル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(17);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(チオフェン-2-イルメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(18);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(ピリジン-4-イルメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(19);(3R,4R,5R)-1-シクロヘキシル-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(20);(3R,4R,5R)-1-(シクロヘキシルメチル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(21);(3R,4R,5R)-1-(2-シクロヘキシルエチル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(22);(3R,4R,5R)-1-(シクロペンチルメチル)-5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール(23);(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(4-メチルペンチル)ピペリジン-3,4-ジオール(24);及び(3R,4R,5R)-5-(ヒドロキシメチル)-1-(4-ニトロベンジル)ピペリジン-3,4-ジオール(25)。
【0075】
GCaseに向けたこれらの化合物に関するさらなる阻害データ、及び又はGCaseに関する幾つかの細胞増強データを、以下の表2に提供する:
【0076】
【表2】

nd=測定せず
【0077】
イソファゴミン及び幾つかの誘導体の合成方法は、よく知られており、また以下のものに記載されている:Jespersenら、Angew.Chem.,Int. ed. Engl. 1994年;33:1778〜9;Dongら、Biochem. 1996年;35:2788;Lundgrenら、Diabetes. 1996年;45:S2 521;Schusterら、Bioorg Med Chem Lett. 1999年;9(4):615〜8;Anderschら、Chem. Eur. J. 2001年;7:3744〜3747;Jakobsenら、Bioorg Med Chem.2001年;9:733〜44;36:435;Pandyら、Synthesis. 2001年:1263〜1267;Zhouら、Org Lett. 2001年;3(2):201〜3;Bestら、Can. J. Chem/Rev. Can. Chim. 2002年;80(8):857〜865;Huizhenら、J. Carbohydr Chem. 2004年;23:223〜238;Mehtaら、Tetrahedron Letters 2005;41(30):5747-5751;Ouchiら、J Org Chem. 2005;70(13):5207〜14;及び最近では、Melonceliら、Australian Journal of Chemistry 2006年;59(11)827〜833。L立体異性体の合成は、Panfilら、J. Carbohydr Chem. 2006年;25:673〜84に記載されている。
【0078】
特に、前記のN-アルキルイソファゴミン誘導体は、二級アミンをアルキル化するために当技術分野に公知の経路、例えばメシレートのそれらの置換(対応する市販のアルコール由来のもの)又は還元アミノ化のいずれかにより作成できる。これらの方法の簡潔な記載を以下に提供する。
【0079】
アルキル化の一般的な方法
アルコール1当量及びトリエチルアミン1.5当量をCH2Cl2に溶解した後、塩化メタンスルホニル(1.2当量)を、反応混合物に、0℃で滴下して加えた。反応混合物をRTで2時間攪拌し、その後、水に注ぎ、CH2Cl2で抽出した。溶媒を除去し、粗生成物を得、次の工程に直接使用した。
【0080】
前工程由来の粗生成物3当量及び5-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4-ジオール1当量及びK2CO3(5当量)を、DMFに懸濁し、混合物を攪拌し、70℃で3日間加熱した。反応混合物をろ過し、溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物及びシリカゲルをMeOH.HCl溶液に懸濁し、RTで30分間攪拌した。溶媒を除去し、固形物を得、それをシリカゲルカラムの先端に詰めた。最終的な化合物を、酢酸エチル/MeOH/アンモニア水(9/1/0.2)により溶出した。
【0081】
還元アミノ化の一般的な方法
アルデヒド又はケトン3当量及び5-(ヒドロキシメチル)-ピペリジン-3,4-ジオール1当量を、メタノールに懸濁し、その後Na(CN)BH3(6eq)を加えた。反応混合物を、RTで3日間攪拌した。反応混合物をろ過し、溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物及びシリカゲルをMeOH.HCl溶液に懸濁し、RTで30分攪拌した。溶媒を除去し、固形物を得、シリカゲルカラムの先端に詰めた。最終化合物を酢酸エチル/MeOH/アンモニア水(9/1/0.2)により溶出した。
【0082】
ニトロ還元の一般的な方法
5-(ヒドロキシメチル)-1-(4-ニトロベンジル)ピペリジン-3,4-ジオール及び亜鉛(10当量)を、MeOH.HCl溶液中、RTで1時間攪拌した。溶媒を除去し、粗生成物を得、シリカゲルカラムにより精製した。
これらの化合物は、特異的にGCaseに結合し、増強するので、それらは、また、ゴーシェ病及びGCaseにおいて変異体に関連する他の神経学的疾患の治療のために使用可能である。
【0083】
GCaseに関する他のシャペロンとしては、グルコイミダゾール、ポリヒドロキシシクロアルキルアミン及び誘導体、及びヒドロキシルピペリジン誘導体であって、継続中の米国公開出願2005/0130972及び2005/0137223、及び対応するPCT公開WO 2005/046611及びWO 2005/046612に記載されており、全て2004年11月12に出願されており、参考文献としてここに含まれるものとする。グルコイミダゾール及び誘導体は、以下の一般式IIにより表される:
【0084】
【化7】

【0085】
(式中、Bは、水素、ヒドロキシ、アセトアミノ及びハロゲンからなる基から選ばれる;
所望により存在するR1及びR2は、鎖長約6Å〜約12Å、好ましくは約9Åの短く、屈曲性のリンカーである。R1及びR2は、また、独立して、以下のものからなる群より選ばれる;NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる基から選ばれる1以上の成分が所望によりついているC2-C6の置換又は非置換アルキル;NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる基から選ばれる1以上の成分が所望によりついているC2-C6の置換又は非置換アルケニル;NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる基から選ばれる1以上の成分が所望によりついているC2-C6の置換又は非置換アルキニル、ここでmは1又は2である;R3は、水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル;置換又は非置換アルケニル;置換又は非置換シクロアルキル;置換又は非置換シクロアルケニル;置換又は非置換アリール;置換又は非置換アリールアルキル;置換又は非置換ヘテロアリール;置換又は非置換複素環;置換又は非置換ヘテロシクリ(heterocyclyalkyl)アルキル;置換又は非置換ヘテロアリールアルキルからなる群からのそれぞれのものから独立して選ばれる。
さらに、R1-L1及び/又はR2-L2は、水素であり得る。
R5は、水素、ヒドロキシ又はヒドロキシメチルを示す;
L1及びL2は、C3-C12の置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル;置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換シクロアルケニル;置換又は非置換アリール;置換又は非置換アリールアルキル;置換又は非置換ヘテロアリール;置換又は非置換複素環;置換又は非置換ヘテロシクロアルキル;置換又は非置換ヘテロアリールアルキルからなる群より選ばれる親油性の基である。)
【0086】
特定の態様において、GIZ化合物は、GIZ、(5R,6R,7S,8S)-5-ヒドロキシメチル-2-オクチル-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオール及び(5R,6R,7S,8S)-
5-ヒドロキシメチル-2-(3,3-ジメチルブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオールを含む。
前記の合成は以下のように達成できる:
【0087】
a. (5R,6R,7S,8S)-5-ヒドロキシメチル-2-n-オクチル-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオール(GCaseのIC50=〜0.07nM)
THF/EtOH(2:1)(3ml)中の(5R,6R,7S,8S)-6,7,8-トリス(ベンジルオキシ)-5-[ベンジルオキシ)メチル]-2-(1-オクチニル)-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン(120mg、0.179mmol)を、Pd(OH)2/C(0.1g)と、水素雰囲気下、14h、素早く攪拌した。触媒の濾過後、有機溶液をロートバップ(rotovap)で濃縮し、残渣をCH2Cl2(10ml)に溶解した。溶液を、アセトン-乾燥氷浴中で冷却し、CH2Cl2中にBCl3(1.0M)を含む溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を室温に温め、3時間攪拌した。反応混合物を、水を加えた氷水浴中で、0.5時間冷却した。ほとんど溶媒を、ロートバップを使用して除去し、粗生成物をクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH/H2O 64:25:4)により精製した。水からの凍結乾燥により白色泡として表題の化合物を得た。1H NMR(400MHz、CD3OD):δ7.22(s, 1H)、4,56(d, 1H, J=8Hz)、4.20-4.16(m, 1H)、3.98-3.93(m, 2H)、3.83(t, 1H, J=8.4Hz)、3.70(dd, 1H, J=8.8Hz及び10Hz)、2.60(t, 2H, J=7.2Hz)、1.67-1.63(m, 2H)、1.35-1.30(m,10H)、0.90(t, 3H, J=6.8Hz)。MS(ES+):313[M+1]。
【0088】
b. (5R,6R,7S,8S)-6,7,8-トリス(ベンジルオキシ)-5-[(ベンジルオキシ)メチル]-2-(3,3-ジメチルビト-1-イニル(3,3-dimethylbyt-1-ynyl))-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン(GCaseのIC50=〜1.1nM)
aに記載のものと同様の方法において、(5R,6R,7S,8S)-6,7,8-トリス(ベンジルオキシ)-5-[(ベンジルオキシ)メチル]-2-ヨード-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジンを、表題の化合物に転換した。1H NMR(300MHz、CDCl3):δ7.41-7.14(m, 20H)、7.13(s, 1H)、5.10(d, 1H, J=11.4Hz)、4.81-4.66(m, 3H)、4.62(d, 1H, J=11.4Hz)、4.49-4.42(m, 3H)、4.18-4.13(m, 1H)、4.11-4.06(m, 2H)、3.84-3.77(m, 2H)、3.71(dd, 1H, J=4.8Hz及び10.5Hz)、1.31(s, 9H)。MS(ES+):641[M+1]。
【0089】
c. (5R,6R,7S,8S)-5-ヒドロキシメチル-2-(3,3-ジメチルブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオール(GCaseのIC50=〜0.03nM)
(b)に記載のものと同様の方法において、(5R,6R,7S,8S)-6,7,8-トリス(ベンジルオキシ)-5-(ベンジルオキシ)メチル]-2-(3,3-ジメチル-1-ブチニル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-イミダゾ[1,2-a]ピリジンを、表題の化合物に転換した。1H NMR(400MHz、CD3OD):δ6.97(s, 1H)、4.41(d, 1H, J=8Hz)、4.09(dd, 1H, J=2.4Hz及び12Hz)、3.86(dd, 1H, J=4.0Hz及び12Hz)、3.79-3.71(m, 2H)、3.61(dd, 1H, J=8.4Hz及び9.2Hz)、2.48-2.44(m, 2H)、1.50-1.47(m, 2H)、0.89(s, 9H)。MS(ES+):285[M+1]。
【0090】
本発明における使用が企図されるポリヒドロキシシクロアルキルアミン(PHCA)誘導体としては、以下の一般式IIIにより表される化合物、及び医薬的に許容され得る塩及びそれらのプロドラッグが挙げられる:
【0091】
【化8】

【0092】
{式中、Bは水素、ヒドロキシ、N-アセトアミノ及びハロゲンからなる群より選ばれる。
R1は、以下のものからなる群よりそれぞれ生じるものから独立して選ばれる:水素;置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換シクロアルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換複素環、置換又は非置換ヘテロシクリアルキル(heterocyclyalkyl)、置換又は非置換ヘテロアリールアルキル、-C(O)R3及び-S(O)mR3であり(式中、mは1又は2である)、R3は、以下のものからなる群よりそれぞれ生じるものから独立して選ばれる:水素;置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換シクロアルケニル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換アリールアルキル、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換複素環、置換又は非置換ヘテロシクリアルキル、置換又は非置換ヘテロアリールアルキル、及びC1-C6の置換又は非置換アルキルに結合している-C(O)。
所望により存在するR2は、鎖長約6Å〜約12Å、好ましくは約9Åの短く、屈曲性のリンカーである。R2は、また、以下のものからなる群より選ばれる;NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる基から選ばれる1以上の成分が所望によりついているC2-C6置換又は非置換アルキル;NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる群より選ばれる1以上の成分が所望によりついているC2-C6置換又は非置換アルケニル;NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる群より選ばれる1以上の成分が所望によりついているC2-C6置換又は非置換アルキニル、ここでmは1又は2である;R3は、以下のものからなる群からのそれぞれのものから独立して選ばれる:水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル;置換又は非置換アルキニル;置換又は非置換シクロアルキル;置換又は非置換シクロアルケニル;置換又は非置換アリール;置換又は非置換アリールアルキル;置換又は非置換ヘテロアリール;置換又は非置換複素環;置換又は非置換ヘテロシクリアルキル(heterocyclyalkyl);置換又は非置換ヘテロアリールアルキル、及びC1-C6置換又は非置換アルキルに結合している-C(O)}。
【0093】
Lは、以下のものからなる群より選ばれる親油性の基である;C3-C12の置換又は非置換アルキル、置換又は非置換アルケニル、置換又は非置換アルキニル;置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換シクロアルケニル;置換又は非置換アリール;置換又は非置換アリールアルキル;置換又は非置換ヘテロアリール;置換又は非置換複素環;置換又は非置換ヘテロシクロアルキル;置換又は非置換ヘテロアリールアルキル。
これらの化合物は、公開された米国特許出願2005/130972号に記載される方法により製造可能である。
【0094】
Gbaが変異されている本発明における使用に企図されるヒドロキシピペリジン誘導体は、以下の一般式IVにより表される。
【0095】
【化9】

【0096】
(式中、Aは炭素又は窒素を表し:
Bは、水素、ヒドロキシ、N-アセトアミド又はハロゲンであり;
R1は、水素、置換又は非置換の:アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクリアルキル又はヘテロアリールアルキル;-C(O)R3又は-S(O)mR3である。好ましくは、R1は、H又は炭素数1〜12の有機成分を含む;
R2は、鎖長約6Å〜約12Åの短く、屈曲性のリンカーである。或いは、R2は、NH、NHCOO、NHCONH、NHCSO、NHCSNH、CONH、NHCO、NR3、O、S、S(O)m及び-S(O)mNR3からなる群より選ばれる1以上の成分が所望によりついている、C1-C6の置換又は非置換のアルキル、アルケニル又はアルキニルである。
R3は、水素、又は置換又は非置換の:アルキル、アルケニル;アルキニル;シクロアルキル、シクロアルケニル;アリール;アリールアルキル;ヘテロアリール;複素環;ヘテロシクリアルキル;又はヘテロアリールアルキルである。好ましくは、R3は、H又は炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6の有機成分を含む。
mは、1又は2であり;
R5は、水素、ヒドロキシ又はヒドロキシメチルである。
Lは水素、置換又は非置換の:アルキル、アルケニル、アルキニル;シクロアルキル、シクロアルケニル;アリール;アリールアルキル;ヘテロアリール;複素環;ヘテロシクロアルキル;又はヘテロアリールアルキルを含む炭素数1〜12の親油性基である)。
【0097】
ある態様において、R2は、以下のものからなる群より選ばれる;NH、NR3及びOからなる群より選ばれる1以上の成分が所望によりついている、C2-C6の置換又は非置換アルキル;NH、NR3及びOからなる群より選ばれる1以上の成分が所望によりついている、C2-C6の置換又は非置換アルケニル;NH、NR3及びOからなる群より選ばれる1以上のヘテロ原子が所望によりついている、C2-C6の置換又は非置換アルケニル;NH、NR3及びOからなる群より選ばれる1以上のヘテロ原子が所望によりついている、C2-C6の置換又は非置換アルケニル。
【0098】
他の態様において、R2は、以下のものからなる群より選ばれる;
【0099】
【化10】

【0100】
他の態様において、R2は存在せず、Lは水素、非置換のC1-C12アルキルであるか、又は
非置換のC6-C12アルキル、例えば、非置換のC6アルキル、非置換C7アルキル、非置換のC8アルキル、C9アルキル又はベンジルである。
【0101】
特別な態様において、本発明における使用に企図されるヒドロキシピペリジン化合物は、(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ヘキシル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ヘプチル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-オクチル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ノニル-3,4-ジヒドロキシピペリジンである。
【0102】
他の特別な態様において、本発明における使用に企図されるヒドロキシピペリジン化合物としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ブチル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ヘキシル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ヘプチル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-オクチル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-n-ノニル-3,4-ジヒドロキシピペリジン;(3R,4R,5R,6S/6R)-5-(ヒドロキシメチル)-6-ベンジル-3,4-ジヒドロキシピペリジン。
【0103】
GCaseに関するさらに他のシャペロンは、Fanらの米国特許第6,599,919号に記載されており、以下のものが挙げられる:カリステジンA3、カリステジンA5、カリステジンB1、カリステジンB2、カリステジンB3、カリステジンB4、カリステジンC1、N-メチル-カリステジンB2、DMDP、DAB、カスタノスペルミン(castanospermine)、1-デオキシノジリマイシン、N-ブチル-デオキシノジリマイシン、1-デオキシノジリマイシン亜硫酸水素酸塩、N-ブチル-イソファゴミン、N-(3-シクロヘキシルプロピル)-イソファゴミン、N-(3-フェニルプロピル)-イソファゴミン及びN-(2Z,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)-イソファゴミン。
【0104】
本発明の化合物としては、前記構造の医薬的に許容され得る塩及びプロドラッグが挙げられる。医薬的に許容され得る塩としては以下のものが挙げられる;無機塩基、例えばLi、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Zn、Mnから誘導される塩;有機塩基、例えばN,N'-ジアセチルエチレンジアミン、グルカミン、トリエチルアミン、コリン、ヒドロキシド、ジシクロヘキシルアミン、メトホルミン、ベンジルアミン、トリアルキルアミン、チアミンの塩;きらる塩基、例えばアルキルフェニルアミン、グリシノール、フェニルグリシノール、天然アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、チロシン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、オミチン、リジン、アルギニン、セリンの塩;非天然アミノ酸、例えば、D-異性体又は置換アミノ酸;グアニジン、置換グアニジンであって、置換基はニトロ、アミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アンモニウム又は置換アンモニウム塩及びアルミニウム塩から選ばれる。塩としては、酸付加塩が挙げられ、好適なものとしては硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、ヒドロハライド、酢酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、パルミチン酸塩(palmoate)、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタル酸塩。医薬的に許容され得る溶媒としては、水和物であってもよく、他の結晶化の溶媒、例えばアルコールを含んでいてもよい。
【0105】
プロドラッグは、インビボにおいて活性型に変換される化合物である(例えば、R.B.Silverman、1992年、「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」、Academic Press、Chp.8を参照されたい)。プロドラッグは、体内分布(例えば、プロテアーゼの反応部位を一般的に入れないと考えられる化合物を与えるため)又は特定の化合物に関する薬物動態を変えるために使用可能である。例えば、カルボン酸基、例えばエステルを生じるためのメチル基又はエチル基を有するものを、エステル化できる。エステルを被験者に投与する場合、アニオン基を示すために、酵素的又は非酵素的、還元的、酸化的又は加水分解的にエステルは切断される。活性化合物を生じるためにその後分解される中間体化合物を現すために切断される成分(例えば、アシルオキシメチルエステル)とアニオン基はエステル化され得る。
【0106】
プロドラッグの例及びそれらの使用は当業者に公知である(例えば、Bergeら、(1977年)「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci.66:1-19を参照されたい)。プロドラッグは、化合物の最終的な単離及び精製の間に、又は好適な誘導化剤と精製化合物を別々に反応させることにより、その場で製造可能である。例えば、ヒドロキシ基は、カルボン酸(carboxilic acid)との処理により、触媒の存在において、エステルに変換可能である。切断可能なアルコールプロドラッグ成分の例としては、以下のものが挙げられる;置換及び非置換の、分岐又は非分岐の低級アルキルエステル成分、(例えば、エチルエステル)、低級アルケニルエステル、ジ-低級アルキル-アミノ低級-アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール-低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、置換(例えば、メチル、ハロ又はメトキシ置換基)アリール及びアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ-低級アルキルアミド、及びヒドロキシアミド。
【0107】
特異的な薬理学的シャペロンの配合、用量及び投与
神経細胞に効果を発揮するために化合物が血液濃関門を通過する必要があるので、全身投与を可能にする投与形態において、特異的な薬理学的シャペロンを投与することを、本発明は提供する。ある態様において、特異的な薬理学的シャペロンは、単独療法として、好ましくは経口投与形態において(さらに以下の記載する)投与されるが、他の投与形態も企図される。経口投与としては、分割された投与量において、又は制御放出製剤、又は即時的又は持続的-放出投与形態のより頻度の低い投与により、日毎の投与が挙げられる。特異的な薬理学的シャペロンに関する配合、用量及び投与経路を以下に詳述する。
【0108】
配合
特異的な薬理学的シャペロンは、投与経路に好適ないずれかの形態、例えば、錠又はカプセル又は液体の形態で経口的に、又は注入用滅菌水溶液において投与可能である。特異的な薬理学的シャペロンが、経口投与用に配合される場合、錠又はカプセルを医薬的に許容され得る賦形剤、例えば結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はグリコール酸ナトリウムデンプン(sodium starch glycolate);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いた従来の方法により製造可能である。錠は、当技術分野に公知の方法により被覆されていてもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁剤の形態をとっていてもよく、又は、それらは使用前に、水又は他の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として存在してもよい。そのような液体製剤は、医薬的に許容され得る添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンドオイル、油状エステル、エチルアルコール又は分別植物油);及び保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル又はソルビン酸)を用いて従来の方法により製造してもよい。また、製剤は、バッファー塩、矯味矯臭剤、着色剤及び甘味剤を好適に含んでいてもよい。経口投与用製剤は、特異的な薬理学的シャペロンの制御又は持続的放出を与えるために好適に配合してもよい。
【0109】
非経口/注入の使用に好適な特異的な薬理学的シャペロンの医薬配合物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)、又は滅菌注入溶液又は分散剤(dispersions)の即時製剤用の分散及び滅菌粉末を含む。すべての場合において、形態は、滅菌でなければならず、また、簡単なシリンガビリティー(syringability)が存在する範囲まで液体でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、また、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に反して保存されなければならない。キャリヤーは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒体であってもよい。適切な流動性を、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散剤の場合において要求される粒度の維持により、また界面活性剤の使用により維持することができる。微生物作用の予防は、様々な抗生物質及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸等により行うことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが合理的と考えられる。注入可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延する薬剤の組成物、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンにおける使用により行うことができる。
【0110】
滅菌注入用溶液は、前に列挙した他の様々な成分を含む好適な溶媒中、要求される量において特異的な薬理学的シャペロンを導入することにより、必要に応じて、その後、フィルター又は末端の滅菌により製造される。一般的に、分散剤は、様々な滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体及び前記列挙のものから要求される他の成分を含む滅菌ビヒクルに導入することにより製造される。滅菌注入用溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それらは、活性成分の粉末と予め滅菌濾過されたそれらの溶液からいずれかの追加的な所望の成分を生じる。
【0111】
配合物は、賦形剤を含んでいてもよい。配合物に含まれてもよい医薬的に許容され得る賦形剤は、バッファー、例えば、シトレートバッファー、ホスフェートバッファー、アセテートバッファー、及びビカルボネートバッファー、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質;タンパク質、例えば、血清アルブミン、コラーゲン及びゼラチン;塩、例えば、EDTA又はEGTA、及び塩化ナトリウム;リポソーム;ポリビニルピロリドン;糖、例えばデキストラン、マンニトール、ソルビトール及びグリセロール;プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000、PEG-6000);グリセロール;グリシン又は他のアミノ酸;及び脂質である。配合物での使用のためのバッファー系としては、シトレート;アセテート;ビカーボネート;及びホスフェートバッファーが挙げられる。ホスフェートバッファーが好ましい態様である。
【0112】
また、配合物は、非イオン性清浄剤を含んでいてもよい。好ましい非イオン性清浄剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX-100、トリトンX-114、Nonidet P-40、オクチルα-グルコシド、オクチルβ-グルコシド、Brij 35、Pluronic及びTween20が挙げられる。
【0113】
投与
特異的な薬理学的シャペロンの投与経路は、経口(好ましい)又は非経口であってもよく、例えば、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼用、筋肉内、口内、直腸内、膣内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、脳室内、クモ膜下腔内、嚢内、関節内、肺内、鼻腔内、粘膜間(transmucosal)、経皮又は吸入が挙げられる。
【0114】
特異的な薬理学的シャペロンの前記の非経口的な配合物の投与は、製剤のボーラスの周期的な注入によっていてもよく、又は外部(例えば、i.v.バッグ)又は内部(例えば、バイオエロダブル(bioerodable)インプラント)の貯蔵器から静脈内又は腹腔内投与により行われてもよい。例えば、米国特許第4,407,957号及び第5,798,113号を参照されたく、それらは参考文献としてここに含まれるものとする。肺内送達方法及び装置は、例えば米国特許第5,654,007号、第5,780,014号及び第5,814,607号に記載されており、それらはそれぞれ参考文献としてここに含まれるものとする。他の有用な非経口送達システムとしては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、インプラント可能なインフュージョン系、ポンプ送達、カプセル化したセル送達、リポソーム送達、ニードル送達注入、ニードルレス注入、ネブライザー、エアロゾライザー、エレクトロポレーション及び経皮パッチが挙げられる。ニードルレスインジェクター装置は、米国特許第5,879,327号;第5,520,639号;第5,846,233号及び第5,704,911号に記載されており、それらの明細書は参考文献としてここに含まれるものとする。前記配合のいずれかは、これらの方法を使用して投与可能である。
【0115】
皮下注入は、自己投与を可能にするという利点があるが、また、静脈内投与に比較して血漿半減期を延長する。さらに、患者の利便性のためにデザインされた様々な装置、例えば、補充用注入ペン及びニードルレス注入装置は、本明細書に論じるように、本発明の配合物と使用されてもよい。
【0116】
用量
内因性変異体リソソーム酵素をレスキューするために有効な特異的な薬理学的シャペロンの量は、当業者により個別に決定可能である。薬物動態及び薬力学、例えば半減期(t1/2)、ピーク血漿濃度(Cmax)、ピーク血漿濃度の時間(tmax)、曲線下面積(AUC)により測定された曝露、及び置換タンパク及び特異的な薬理学的シャペロンの両方の組織分布、並びに特異的な薬理学的シャペロン/リソソーム酵素結合に関するデータ(親和性一定、会合及び解離一定、及び結合価)は、当技術分野に公知の通常の方法を使用して得られ、その活性を阻害することなく、置換タンパクを安定化するために要求される適合可能な量を決定し、従って治療効果を与えることができる。
【0117】
細胞培養アッセイ又は動物実験から得られたデータを使用し、ヒト及び非ヒトの動物における使用のための治療投与範囲を決定した。本発明の治療方法に使用される化合物の用量は、好ましくは、ED50濃度(試験人口の50%に有効)であって毒性が少しもない循環濃度範囲内である。いずれかの治療に使用される特定の用量は、使用される特定の投与形態、利用される投与経路、個々(例えば、患者)の状態等のような因子により変更してもよい。
【0118】
治療有効量は、細胞培養アッセイ及び動物モデルにおける配合から初期に見積もられ、循環濃度範囲を達成してもよく、それらは、共に、時間に関して細胞に観察されるEC50を超え、時間に関して観察されるIC50より低いと考えられる。化合物のEC50濃度は、酵素活性における1/2最大増加を達成する濃度であり(例えば、細胞培養アッセイから測定される)、IC50は、酵素活性の1/2最大阻害を達成する濃度である。特定の個体、例えばヒトの患者における使用のための好適な用量は、その後、以下に記載されるようなそのような情報を使用してより正確に決定されてもよい。
【0119】
血漿における化合物の測定は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)又はガスクロマトグラフィのような技術により、個体、例えば患者において日常的に測定してもよい。
組成物の毒性及び治療有効性は、標準的な医薬的方法、例えば、細胞培養アッセイにおいて、又は実験動物を使用して測定し、LD50及びED50を決定してもよい。パラメータLD50及びED50は、当技術分野において公知であり、それぞれ、人口の50%に致死であり、人口の50%に治療有効である化合物の量を指す。毒性と治療有効の間の用量比率は、治療インデックスと称され、比率:LD50/ED50と表されてもよい。大きな治療指標を示す特異的な薬理学的シャペロンが好ましい。
【0120】
シャペロンがインヒビターの場合、特異的な薬理学的シャペロンの最適な量は、酵素の阻害を維持することなく、インビボにおいて、組織又は循環において、GCase、例えばリソソーム酵素を安定化するために要求される量に従って決定される。これは、組織又は循環において、特異的な薬理学的シャペロンのバイオアベイラビリティ、及び期間延長のための組織又は循環における特異的な薬理学的シャペロンの薬物動態学及び薬力学に依存すると考えられる。インヒビターの濃度は、酵素用の特異的なシャペロンのEC50及びIC50値を計算することにより測定され、そのため、投与される量は、共に、(i)リソソームに対する最大輸送を可能にするためにいつかEC50を超える血漿濃度を達成し、また、(ii)一旦、そのような基質が加水分解され得るリソソーム中にあるならば、いつかIC50より低く、その血漿濃度が低下する。
【0121】
この測定は、薬物動態学的因子、例えば血液及び組織におけるシャペロンの半減期、Tmax、及びCmax、及びリソソーム酵素の半減期に依存すると考えられる。薬理学液シャペロンに関する投与レジメを評価するための合理性は、2007年4月27日に出願された米国特許仮出願第60/914,288号にさらに記載されており、それは参考文献として全体として本明細書に含まれるものとする。この出願は、GCaseインヒビターに関する「ピーク及び窪み(trough)」投与を記載し、初期「負荷投与量」が、日常的に酵素の安定化及びリソソームへの輸送を最大にし、その後、毎日ではない投与間隔により、インヒビターの解離及び基質の加水分解を可能にする。しかし、また、他の投与レジメが企図される。
【0122】
コンビネーション薬物治療
薬理学的シャペロンは、その疾患を治療するために使用される他の薬剤とのコンビネーションにおいて、神経学的疾患の患者を治療するために使用可能である。パーキンソン病の従来の薬物治療としては、以下のものが挙げられるがそれらに限定されない;RNAi及び薬理学的薬剤、例えば、レボドパ、抗コリン剤、COMT(カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ)インヒビター、ドパミンレセプターアゴニスト、MAOI(モノアミンオキシダーゼインヒビター)、末梢デカルボキシラーゼインヒビター。
【0123】
GCaseに関する薬理学的シャペロン(類)は、また、アロプレグナノロン、低コレステロール食餌、又はコレステロール低下剤、例えばスタチン類(例えばリピトールTM);フィブレート、例えば、フェノフィブレート(LipidilTM);ナイアシン、エゼチミベ(ZetiaTM)及び/又は結合樹脂、例えば、コレスチラミン(クエストランTM)との組み合わせにおいて、患者を治療するために使用可能である。
【0124】
さらに、薬理学的シャペロンは、遺伝子治療とのコンビネーションにおいて使用可能である。遺伝子治療は、置換遺伝子、例えばGba、又はSNCA遺伝子に関する阻害的RNA(siRNA)の両方で企図される。遺伝子治療は、2004年2月17日に出願された一般的に所有されている特許出願第10/781,356号に詳細に記載されている。
他の企図されているコンビネーション療法としては、特異的な薬理学的シャペロンと、ワクチン療法、例えばα-syn及びアジュバントを含むワクチンとのコンビネーション(Pilcherら、Lancet Neurol. 2005年;4(8):458-9)、又はGCaseシャペロンとα-syn、例えばHsp70に関するシャペロン又は特異的な薬理学的シャペロンとのコンビネーション、又は、抗炎症剤、例えばイブプロフェン又は他のNSAIDS、又は神経変性疾患において保護されてもよい他の薬剤、例えばデキストロメトルファン(Liら、FASEB J. 2005年;Apr;19(6):489-96)、ゲニステイン(Wangら、Neuroreport. 2005年; Feb 28;16(3):267-70)、又はミノサイクリン(Blumら、Neurobiol Dis. 2004年);Dec;17(3):359-66)とのコンビネーションが挙げられる。
【0125】
また、企図されているものは、GCaseに関する基質インヒビター、例えば、N-ブチル-デオキシノジリマイシン(ZavescaTM)とのコンビネーション療法である。
最後に、GCaseシャペロンと他のリソソーム酵素に関する一以上のシャペロンのコンビネーションが、また、企図される。ある態様において、シャペロンが投与されるリソソーム酵素においていずれの変異体も有さない個体に、シャペロンは投与される。他の態様において、個体は、GCaseよりもリソソーム酵素において変異を有し、GCaseシャペロンとのコンビネーションにおいて、その酵素に関する特異的なシャペロンを投与する。以下のものは、リソソーム酵素に関する可能なシャペロンを示す表である。
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
ある特定の態様において、ニーマン-ピックC型疾患は、この疾患が、GlcCerの他にGM2-ガングリオシド及びGM1-ガングリオシドの蓄積により特徴づけられるため、β-ヘキソサミニダーゼAに関する特異的な薬理学的シャペロン及び/又はβ-酸ガラクトシダーゼに関する特異的な薬理学的シャペロンとの組み合わせにおいて、GCaseに関する特異的な薬理学的シャペロンで治療される。
【0129】
シャペロン療法に対する応答の測定
前記のように、神経変性疾患の患者は、神経学的症候が特徴的である。例えば、パーキンソン病の患者は、振戦、硬直、運動緩徐及び姿勢のアンバランスを経験する。レビ小体痴呆の患者は、強い精神病性症候(幻視)、さらに、精神的減退、例えば記憶喪失及び簡単な仕事を行うことの不能状態を経験する。薬理学的シャペロン療法による症候の観察可能な改善、又は疾患の発生のリスクのある患者における一定の症候の開始の遅延、又は疾患の進行の遅延は、シャペロン療法に対する好都合な応答の証拠と考えられる。
【0130】
さらに、測定可能な代理のマーカーは、また、シャペロン療法に対する応答を評価するために有用かも知れない。例えば、ある研究者は、α-synのより高いレベルを検出することを報告するか又はα-synのオリゴマー形態がパーキンソン疾患の患者の血漿に検出され(Leeら、J Neural Transm. 2006年;113(10):1435〜9;El-Agnafら、FASEB. J. 2006年;20(3):419〜25)、一方、あるものは、通常のコントロールと比較してパーキンソン病患者において血漿α-synが減少したことを報告した(Liら、Exp Neurol. 2007年;204(2):583-8)。
【0131】
実施例
本発明は、さらに、以下に示す実施例の方法により記載される。そのような例の使用が単に説明されており、決して本発明又は例示した用語の範囲及び意味を制限するものではない。同様に、本発明は、ここに記載する特定の好ましい態様を制限するものではない。実際、本発明のいずれかの修飾及び変更は、本明細書を読むことにより当業者に自明であると思われる。従って、本発明は、特許請求の範囲が与えるものと同等の範囲全体に従って、添付する特許請求の範囲の用語により単に制限されるべきである。
【0132】
実施例1:IFGでの治療によるマウスにおけるインビボGCase活性
あるGCaseシャペロン、IFGを、野生型GCaseを発現する通常のマウスに投与し、GCase活性を評価した。
【0133】
方法
薬物投与。この実施例は、マウスにおけるイソファゴミン、GCase特異的シャペロンの効果に関するインフォメーションを提供する。IFGを200mg/kg/日でマウスに投与した;器官及び血漿を研究の開始後4週間、回収した。グループ当たり10匹の雄性C57BL6(25g)マウスを使用した。薬剤は飲み水中において与え、従って、水消費量を毎日モニターした。
コントロールグループ(0mg/kg/日)において、マウスに、飲み水(薬なし)を毎日投与し、二つのグループに分けた。10匹の動物を処理の4週後に安楽死させ、血液を下行する大動脈及び大静脈から回収し、組織を収集し、その後剖検した。
【0134】
試験グループにおいて、10匹のマウスを200mg/kg/日の投与目的で、飲み水中に毎日投与した。
血液サンプルを、リチウムヘパリンに引き、血漿のためにスピン(spun)させた。失血の後、脾臓、肺、脳及び肝臓を取り出し、バイアルに置いた。そのバイアルを、素早く凍結するために、乾燥アイスに入れた。組織及び血漿を、その後GCaseの組織レベルについて分析した。
【0135】
組織プレパレーション。組織の小部分を取り出し、溶解バッファー(20mMクエン酸ナトリウム及び40mMリン酸水素二ナトリウム、pH4.0、0.1%トリトンX-100を含む)500μlに加えた。その後、組織を、短時間、ミクロホモジナイザーを使用してホモジナイズし、その後、4℃で10分間10,000rpmで遠心分離した。上清を新しいチューブに移し、酵素アッセイ用に使用した。
【0136】
組織酵素アッセイ。上清2.5μl(96穴プレート)に、反応バッファー17.5μl(クエン酸リン酸バッファー、pH4.5、トリトンX-100なし)、及び4-メチルウンベリフェロン(4-methyl umbelliferone)(4-MU)-標識基質50μl、β-グルコピラノシド、又は標識ネガティブコントロール(α-グルコピラノシド又はα-ガラクトピラノシド(galacatopyranoside)を加えた。プレートを37℃で1時間、その後終止バッファー(0.4M グリシン-NaOH、pH 10.6)70μlの添加によりインキュベートした。穴当たり1秒の読み取り時間を使用して(ビクター2マルチラベルカウンター-Wallac)、355nmで興奮させることにより460nmでの発光を測定することにより、GCaseの活性を測定した。酵素活性を、加えたライセートのμlにおける量に通常化し、ライセートのμl当たりの酵素活性を評価した。増強比率は、化合物なしの活性を超える化合物での活性と等しい。
【0137】
結果
図1に示すように、GCaseレベルは、肝臓(1)、脾臓(2)、脳(3)及び肺(4)において、IFGでの処理2週間を行って増強した。同様の結果は、それぞれ10のマウスを0、1、10又は100mg/kg/日IFG遊離塩基で処理した別々の実験において観察された;野生型GCase活性は、IFG遊離塩基で直線用量依存増加を示した。
これらの結果により、特異的な薬理学的シャペロンが、インビボ、特に脳において、非変異体GCaseの活性を増強できることが確認された。
これらの結果により、特異的な薬理学的シャペロンが、インビボ、特に脳において、非変異体GCaseの活性を増強できることが確認された。
【0138】
実施例2:β-グルコセレブロシダーゼ酵素活性における安全性、耐性、薬物動態及び効果を評価するためのIFGの多(mutiple)用量の投与
DGJ、α-ガラクトシダーゼAに関する薬理学的シャペロン、他のリソソーム酵素は、50mg b.i.d及び150mg b.i.dで健康ボランティアの白血球におけるα-ガラクトシダーゼA活性において、用量依存増加を生じることが、前に示された。
この例は、健康なボランティアにおけるIFGの安全性、耐性、薬物動態及び薬力学を評価するための、IFGの経口投与の二重盲検プラセボ-コントロール第I相試験を記載している。
【0139】
研究デザイン及び期間。first-in-humanの単一の上昇(ascending)用量研究(1a)において、8、25、75、150(2同齢集団)及び300mgを投与した(各同齢集団において6活性物質、2プラセボ)。多くの上昇用量研究(1b)において、25、75及び225mgの量を毎日7日間投与した(各同齢集団において6活性物質、2プラセボ)。各グループの8被験者の両方の研究において、6は、酒石酸IFGを受けるためにランダム化され、2被験者はプラセボを受けた。被験者は、投与完了後、24時間まで、1日目の夕方から制限された。第1a相試験において、投与後、被験者は48時間(PKサンプリング)及び7日間(セーフティフォローアップ)で回復した。1b相試験において、最終投与後、被験者は48時間(PKサンプリング)、7日間(PDサンプリング及びセーフティフォローアップ)、及び14日間(PDサンプリング)で回復した。
【0140】
研究母集団。被験者は、一般社会のメンバーからなる19〜55歳(含む)の健康な男性及び女性ボランティアであった。
安全性及び耐性評価。安全性は、バイタルサイン、研究室パラメータ(血清化学、血液学及び検尿)、理学的検査により、また治療期間の有害作用を記録することにより測定した。
薬物動態サンプリング。投与後48時間、1a相について、規則的な間隔で投与を測定する前に、EDTAを含む血液回収チューブに、血液サンプル(各10mL)を回収した。1b相研究において、完全な酒石酸IFG薬物動態プロフィールは、最初の投与後24時間で測定し、Cmin値は、6日及び7日における予投与で得られ、さらに完全なプロフィールは、最終、7日の投与後、24時間に測定した。
【0141】
GCase酵素活性サンプリング。GCase活性は、1、3、5、7、9、14及び21日における予投与で測定した。血液サンプルを氷浴中で冷却し、できる限り冷蔵下で遠心分離した。血漿サンプルを2つのアリコートに分け、20±10℃で分析まで貯蔵した。研究の最後に、全てのサンプルを、分析のためにMDS Pharma Services Analytical Laboratories(Lincoln)に移した。完全な尿素排出を、IFGの分析のために各被験者から回収し、1及び7日での酒石酸IFGの投与後、最初の12時間の尿クリアランスを測定した。
統計分析。研究室評価、理学的検査、有害事象、ECGモニタリング及びバイタルサイン評価を含む安全性データを、処理グループ及び回収時点によりまとめた。記述統計学(相加平均、標準偏差、平均、最低値及び最大値)は、定量的安全性データ並びにベースラインに対する差異について計算した。頻度数は、定性的安全性データの分類について集めた。
【0142】
結果
薬物動態。両方の研究において、酒石酸イソファゴミンは、一般的に、全ての用量において十分耐性であり、また両方の研究における治療上発生する有害事象はほとんど緩和である。深刻な有害事象は発生しなかった。
酒石酸イソファゴミンは、経口投与を介して良好な全身曝露を示した。単回投与研究において、血漿AUC及びCmax値は、投与量に直線状に相関した。3.4時間(SEM:0.6hr)での平均血漿レベル及び血漿排出半減期は14時間(SEM:2時間)であった。多用量研究において、経口投与の7日後、薬物動態反応は、酒石酸イソファゴミンの予期せぬ蓄積なしに、用量に線状であることが見い出された。Tmax及び半減期値は、単回投与研究に観察されるものと同様であった。
【0143】
IFG25〜225mgの繰り返し投与を健康な男性及び女性の被験者に投与した後、平均半減期は5.14〜19.9時間であった。IFGの最少蓄積は、1日目及び7日目のAUC及びCmax比較をベースとして、繰り返し投与の後に観察した。評価されたいずれの薬物動態学的パラメータに、性別による差異は観察されなかった。
IFGを受けた健康成人被験者により最も多く報告された有害作用としては、接触性皮膚炎、頭痛、悪心、血清ビリルビンの増加、眩暈、瘡蓋、充血及び穿刺部位痛が挙げられる。深刻な有害作用はなく、また、有害作用により治療を中断した被験者もなかった。
【0144】
GCase活性。IFGを受ける全ての被験者において、治療期間中、GCaseレベルの増加は著しく、その後、薬物の除去で低減し、IFGの最終投与後21日、2週間でベースラインレベル近くに戻った。酵素レベルの増加は、用量依存的に、前記ベースラインの約3〜5倍に到達した(図2)。これらの結果は、経口投与されたIFGが、ヒトのインビボにおいてその目的とする標的GCaseのレベルを増加する可能性を有している。
【0145】
実施例3:α-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスにおけるIFGの評価
この例は、α-シヌクレインを過剰発現する遺伝子組換えマウスへのIFGの投与結果を記載している。野生型ヒトα-シヌクレインの神経発現は、α−シヌクレインの進行性の蓄積、ユビキチネート(ubiquinated)免疫反応性含有物、例えば核及び細胞質、新皮質中のニューロン、CA3海馬、及び2ヶ月齢の黒質を生じる(Masliahら、Science.2000年;287:1269)。マウス及びヒトにおいて野生型GCseの活性を増強するIFGの能力をベースとして、これらのマウスにおけるGCaseの増加は、α-シヌクレイン過剰発現を補い、封入を低減又は排除することが予測された。
【0146】
方法
マウス。48遺伝子組換え動物(雄性及び雌性)を、ベースライン及び3〜4週間に関して5〜6週齢において6グループ(n=8)に割り当て、それぞれ、治療開始において全て他の治療グループに関連している。ある群の遺伝子組換え動物をベースライングループとして使用し(5週齢)、0日で未処理で屠殺した。あるグループの遺伝子組換え動物は、ビヒクルで処理した。
治療。マウス(3〜4週齢)を1日1回(経口的に)、酒石酸IFG2mg/kg;20mg/kg;又は200mg/kgのいずれかで、3ヶ月間治療した。また、あるグループは、隔日1回20mg/kgで治療した。
【0147】
組織プレパレーション。ベースライングループの動物を5週齢で屠殺した。全ての他の動物を3ヶ月の治療期間の終わりに屠殺し、血清及びマクロファージ、並びに肺、脳及びCSFのプレパレーション用血液を抽出した。従って、全てのマウスを、標準的な吸入麻酔(イソフルラン、バクスター)により鎮静させた。脳脊髄液を、平滑解剖及び大後頭孔の暴露により得た。曝露において、パスツールピペットを、大後頭孔にほぼ0.3〜1mmの深さに挿入した。CSFは、吸引及びキャピラリー作用により、流れが完全に止まるまで回収した。CSFを直ちに凍結し、-80℃に維持した。
CSFのサンプリングの後、それれのマウスを背もたれに置き、胸郭を開き、1ccシリンジに付着させた26ゲージ針を右心室に挿入した。軽い吸引を針に行った。血液を2部に分けた。一部を、3.8%クエン酸ナトリウムに回収し、血漿及びマクロファージを得、一部は血清を得た。マウスに生理食塩水(0.9%)をトランスカルディアリー(transcardially)に還流させ、肺組織及び脳を素早く取り出した。肺を冷PBS(外側のみ)中で濯ぎ、血液を除去し、その後、素早く凍結させた。
【0148】
脳を取り出し、二等分した。全てのマウスの右半分を、室温で1時間、新鮮に製造した4%パラホルムアルデヒド/PBS(pH7.4)中に浸して固定した。その後、凍結保護を確実にするために、24時間、15%サクロースPBS溶液に、脳を移した。次の日、脳を液体イソペンタンに凍結し、組織学的調査のために使用するまで、-80℃で貯蔵した。グループ当たり8動物から酒石酸IFG処理の効果を測定するために、10μm厚さの凍結切片を、α-シヌクレイン病理の測定のためにカットした。述べた全ての器官及び組織をサンプル化し、特定の脳領域、即ち、海馬、中脳、前頭皮質及び一方の半脳の線条体を抽出し、凍結した。他の脳の半分は、組織学的評価のために加工した。
【0149】
染色。α-シヌクレイン陽性細胞及びレビー小体様包含物の数の評価のため、免疫組織化学的染色を、モノクローナルヒトα-シヌクレイン特定抗体(AlexisTM;Cat# 804-258-L001)を使用して行い、五分の一希釈を二級Cy2抗体で検出した(Jackson ImmunoresearchTM)。五つの異なる相におけるα-シヌクレイン陽性細胞の数(相当たり1切片)を、海馬全体及び皮質別々における評価に関して計数した。
【0150】
簡単に、サンプルを室温でPBSで10分間洗い、その後、室温で4%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、その後、室温でそれぞれPBSで5分間2回洗った。プロテイナーゼK-処理セクションのため、セクションを10μg/mlプロテイナーゼ-Kを含むPBS中で、10分間、室温でインキュベートした。次に、サンプルを15分間、室温で、内因性ペルオキシダーゼを遮断するため遮断溶液でインキュベートし、その後、PBSでさらに2回5分間洗った。その後、サンプルを室温で60分間、遮断剤でインキュベートし、非特異的結合を遮断し、その後PBSでさらに2回5分間洗った。その後、サンプルを、室温で5分間M.O.M.希釈物でインキュベートし、その後、室温で60分間、一級抗体(M.O.M.希釈物中五分の一希釈)でインキュベーションした。
【0151】
1時間後、サンプルを室温でPBSで5分間、2回洗い、遮断剤で、室温でさらに60分間インキュベートした。2回の洗浄後、サンプルを室温で60分間、二級AbCy 2-Goat Anti-Rat(M.O.M中、200分の1希釈)で、ライトなしでインキュベートした。その後、サンプルをPBSで5分間、無菌の、分子生物学グレード水で洗い、ポリビニルアルコールで覆った。
【0152】
脳α-シヌクレイン病理の測定。α-シヌクレイン免疫反応の評価のために、特殊化されたイメージ分析ソフトウエア(Image Pro Plus、バージョン4.5.1.29)を使用した。各蛍光イメージは、400msにセットした同じ曝露時間を使用して記録した。100倍拡大率での100の単一イメージまで、それぞれを、1イメージに集め(実物サイズ約3×1m)、IR数に関して高画質解像を保証した。全て集めたイメージを手動で対比し、全ての測定における検出のため
、同じ強度のベース閾値を使用した。30μm2の最少サイズまでのサイズ制限は、非常に鋭い(acuity)相及び隣接相の間の単に一つを計数することを確実にするためにセットした。マクロベースの評価方法の間に、目的の計数の概要を保存した。
【0153】
さらなる工程において、全て測定したオブジェクトを、保存した概要を使用して元の(コントラストフリー)の像から抽出し、選別したオブジェクト像における目的のサイズにより集めた。選別したオブジェクト像を、丸形制限(底部制限:1;上部制限1.5)を使用して再評価し、バイアスオブジェクトからα-シヌクレイン陽性細胞を分割した。これらの自動オブジェクト計数は、可視的に制限され、十分に円形でないか又は広げたシートにおける背景から分離されない全ての明示的な細胞を加えることにより、計数が自動的に補正され、最終的な細胞数が導かれる。
【0154】
以下のパラメータを評価し、計数した:
・各スライスにおける皮質及び海馬の測定領域;及び
・特定の脳領域の海馬及び皮質の測定領域当たりのIR陽性細胞の数
【0155】
結果
定性。処理及び未処理マウス間の差異は、コントロール動物の病理と比較して、低減した免疫反応性細胞数なしのバックグラウンド低減に対して、幾つかの酒石酸IFG(毎日2及び20mg/kg体重)において、強力に低減したバックグラウンド及び低減したα-シヌクレイン陽性細胞数とは異なる程度において定性上可視的であった(図3A-C、皮質;図4A-C、海馬)。ヒトα-シヌクレイン過剰発現マウスにおけるバックグラウンドの強度は、神経突起及び樹状突起のプロセス並びにシナプスにおける細胞内α-シヌクレインから誘導され、従って、バックグラウンドの低減は、これらの神経構造におけるタンパク発現の低減と同等である。
【0156】
ビヒクルコントロールで処理されたマウス由来のセクションの染色により証明されるように、このマウスモデルがα-シヌクレインを凝集させたことが第一に示された(図5A)。α-シヌクレインの染色の前のプロテインキナーゼ-Kによるセクションの予処理は、モノマー性α-シヌクレインの消化による凝集α-シヌクレインの存在を示す(図5C)。IFGでのマウスの予処理は、α-シヌクレイン凝集を低減することを表した。プロテイナーゼKの予処理の非存在又は存在において、酒石酸IFG20mg/kgに対して応答したデータについて、イメージは、単一の動物のみの分析を示す(それぞれ図5B及びD)。α-シヌクレイン凝集は、プロテイナーゼKの消化に対して耐性なので、調査された期間に渡る動物モデルにおいてα-シヌクレインの凝集が蓄積され、屠殺前3ヶ月の酒石酸IFGでの処理がこれらα-シヌクレイン凝集の蓄積を防ぐことが、予処理により示された。
定量。酒石酸IFGでの処理は、測定された両方の脳領域におけるα-シヌクレイン病理の低減を導くが、効果は海馬においてより明らかであり(図5B)、皮質において有意なレベルに到達しなかった(図6A)。用量応答は、海馬において明らかに、皮質において潜在的に可視的であった。最も低い用量、酒石酸IFG2mg/kgは、最も有効であり、ビヒクル処理コントロールに明らかに対する海馬において、免疫応答細胞の数を低減した(p<0.05)(図6B)。より高い用量は、α-シヌクレイノパシーの統計学的に明らかな低減を導かなかった。20mg酒石酸IFGでの毎日又は隔日処理の差異はなく、平均は同じレベルであった。しかし、20mg用量は、コントロールに対して有効ではなく、従って、毎日又は隔日処理が同じ有効性を有するという結果は、正確でないかも知れない。
【0157】
ベースライン基における評価は、以下の結果を導く:第一に、5週齢において、海馬中のα-シヌクレイン充填細胞(filled cells)の出現に関し、個々のマウスにおいて変化があり、海馬の病理及び高い統計的標準偏差を生じる。さらに、皮質中の免疫反応細胞の数は、この齢で一定して低かった。従って、加齢の間の病理の増加は、皮質中の全て調査した基に対して明らかであったが、ベースライングループ中のこの領域における個々の差異により、海馬中の有意なレベルには到達しなかった。
【0158】
動物当たり、全体の調査した量を増加するのと等しい、個々の平均に対する両方の領域を平均化した後、全てのグループは、最も有効な量、2mg酒石酸IFGで処理したマウス(p>0.05)を除いて、ベースライン(p<0.01)に対して明らかにより高いα-シヌクレイン陽性細胞負荷を有していた。これは、酒石酸IFG2mg/kgの用量が、病理の年齢付随的増加からマウスを防ぐという、結論を可能にする。
【0159】
これらのデータは、GCase増加が、α-シヌクレイン量を低減し、オリゴマー凝集へのα-シヌクレインモノマーの凝集を防ぐかもしれないことを支持している。この発見に関するさらなる支持は、血漿α-syn(ELISAにより検出された)の上昇レベルは、通常のコントロール(p=0.027)に比較して、ゴーシェ病(即ちGCase活性が低減している)を有する患者に観察されたという最近の結果に由来する。ゴーシェ病の53の雄性及び雌性(タイプ3の1雄性を含む)の血漿を評価した。
【0160】
実施例4:α-シヌクレインの蓄積及びGCase活性の低減したマウスの脳におけるパーキンソン症候群表現型の発生
この例は、GCase活性の低減した遺伝子組換え変異体ノックインマウス及びコンデュリトール(conduritol)-β-エポキシド(CBE)、GCaseの不可逆的インヒビターで処理したV394Lホモ接合性ノックインマウスの脳におけるα-シヌクレインの免疫組織化学的分析から生じる。脳中のGCase活性が低減し、グルコシルセラミドが蓄積した遺伝子組換えマウスモデル
(Sunら、2005年、Journal of lipid reserch)は、また、ユビキチネートされ凝集されたα-シヌクレインを蓄積する。脳中のグルコシルセラミド又はα-シヌクレインを蓄積しないが、GCaseの不可逆的インヒビターであるコンデュリトール-β-エポキシド(CBE)の処理により、グルコシルセラミド及びα-シヌクレインの蓄積を誘導可能であることを、ゴーシェ病の遺伝子組換えマウスモデルは展開した。
【0161】
方法
マウス。点変異体D409H又はV394Lに関するマウスホモ接合性及びプロサポシンノックアウトバックグラウンドにおいて低レベルのサポシンCの発現により、脳中のα-シヌクレインの蓄積を分析した。これらのマウスは、脳においてグルコシルセラミドを蓄積することが報告された。点変異体V394Lのみに関するマウスホモ接合性は、CBE処理の有無でα-シヌクレイン蓄積を分析した。これらのマウスは、もしCBEでの処理がなければ、脳中にグルコシルセラミドを蓄積しない。腹腔内注入により毎日、30連続日、マウスにCBEを投与し(マウスの全体重から計算した500μM)、脳を、α-シヌクレインの蓄積に関して免疫組織化学的に分析した。
【0162】
組織プレパレーション及び染色。脳組織を凍結し、4%パラホルムアルデヒドで免疫組織化学的に固定し、連続切片を、抗ヒトα-シヌクレイン(ab1903;Abcam、ケンブリッジ、MA)及びウサギ抗ユビキチン(ab7780;Abcam、ケンブリッジ、MA)で共標識(co-labelled)した。
【0163】
結果
Gba変異体(D409H又はV394L)をGCase活性タンパクプロサポシンCの低減した発現と合わせて有するマウスの脳由来の連続切片を、α-シヌクレイン及びユビキチンについて染色した。10週齢オールドマウスにおいて、α-シヌクレイン凝集の明らかな数は、海馬、基底核(尾状核、被殻、黒質、視床下部の核)、脳幹及び皮質及び小脳領域に観察された。また、ユビキチン化凝集物は、これらの領域及び幾つかのα-シヌクレインでの共局在化において見い出された。しかし、α-シヌクレイン凝集物は、V394Lマウスに(通常のプロサポシンで)観察されなかった。しかし、30日間、CBEでのV394Lマウスの処理は、脳においてα-シヌクレインの蓄積を生じた。合わせると、脳内のGCase活性を低減すること及びグルコシルセラミドレベルを増加することは、α-シヌクレイン蓄積の増加を導くかもしれないことをこれらの結果は示している。
【0164】
本発明は、本明細書に記載の特定の態様により、範囲を制限するものではない。実際、本明細書に記載されるものの他に、本発明の様々な変更は、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
特許、特許出願、公開物、製造物の記述及びプロトコールは、この出願全体に渡って記載されており、これらの開示内容は、全ての目的に関して、全体的に参考文献として本明細書に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0165】
特許又は特許出願のファイルは、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含む。カラーの図面を含む特許又は特許出願の公開のコピーは、請求及び必要な料金の支払いにより特許庁により提供されると思われる。
【図1】4週間、酒石酸イソファゴミン(IFG:AT2101)200mg/kg/日で処理された、正常なC57BL6マウスの脾臓、肺、脳及び肝臓におけるGCaseの増強を示している。
【図2】酒石酸イソファゴミンを健康なボランティアに投与した後のGCase活性の変化を示している。
【図3A】酒石酸IFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの皮質におけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の結果を示している。図3Aは、ビヒクル処理したコントロール由来の結果を示している。
【図3B】酒石酸IFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの皮質におけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の結果を示している。図3Bは、3ヶ月間、毎日2mg/kgで処理したマウス由来の結果を示している。
【図3C】酒石酸IFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの皮質におけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の結果を示している。図3Cは、3ヶ月間、毎日2mg/kgで処理したマウス由来の結果を示している。
【図4A】酒石酸IFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの海馬におけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。図4Aは、ビヒクル処理コントロール由来の結果を示している。
【図4B】酒石酸IFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの海馬におけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。図4Bは、3ヶ月間、毎日2mg/kgで処理したマウス由来の結果を示している。
【図4C】酒石酸IFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの海馬におけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。図4Cは、3ヶ月間、毎日2mg/kgで処理したマウス由来の結果を示している。
【図5A】ある遺伝子組換えマウスの脳由来のプロテイナーゼKで予処理したサンプルにおけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。
【図5B】ある遺伝子組換えマウスの脳由来のプロテイナーゼKで予処理したサンプルにおけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。
【図5C】ある遺伝子組換えマウスの脳由来のプロテイナーゼKで予処理したサンプルにおけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。
【図5D】ある遺伝子組換えマウスの脳由来のプロテイナーゼKで予処理したサンプルにおけるα-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定性的結果を示している。
【図6A】3ヶ月間示した濃度のIFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの皮質(A)及び海馬(B)における、α-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定量的結果を示している。mm2辺りのα-シヌクレイン陽性細胞の数を求めた。
【図6B】3ヶ月間示した濃度のIFGで処理されるか又は未処理のα-シヌクレイン過剰発現遺伝子組換えマウスの皮質(A)及び海馬(B)における、α-シヌクレインに関する免疫組織化学的染色の定量的結果を示している。mm2辺りのα-シヌクレイン陽性細胞の数を求めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患を有するか又はその発生の危険性のある個体においてβ-グルコセレブロシダーゼの活性を増強する方法であって、
該個体が、β-グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子に変異を有さず、
該方法が、該個体におけるグルコセレブロシダーゼ活性を増強するために有効な量のβ-グルコセレブロシダーゼに結合する薬理学的シャペロンを、該個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
神経変性疾患がα-シヌクレイノパシーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
α-シヌクレイノパシーが、パーキンソン病、レビー小体疾患、多系統萎縮症、ハレルフォルデン・スパッツ病及び前頭側頭型痴呆である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薬理学的シャペロンが、β-グルコセレブロシダーゼの競合的インヒビターである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
薬理学的シャペロンがイソファゴミン化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
薬理学的シャペロンが酒石酸イソファゴミンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
薬理学的シャペロンが、以下の構造の化合物、又は医薬的に許容され得るそれらの塩である、請求項5に記載の方法。
【化1】

{式中、Rは、C1-7ハロアルキル、C1-10アルキル、C3-7アルケニルアルキル、C2-7アルコキシアルキル、C1-7カルバモイルアルキル又はX-Ar1であり;
Xは、-(CH)n-又はC2-C3アルケニレンであり;
nは、整数の0〜3であり;
Ar1は、以下の一般式により表され;
【化2】

(式中、R1及びR2は、水素、ハロ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、アミノ、ニトロ、ヘテロアリール、アリール及びシアノから独立して選ばれ;YがC、N、O又はSの場合、X及びZは、独立してC、N、O又はSであるか;又は、YがX及びZを連結する単結合の場合、X及びZは独立してC、N-R3、O又はSであり、R3はC1-3アルキル又は水素である)}。
【請求項8】
イソファゴミン化合物が、イソファゴミン;N-ブチル-イソファゴミン;N-(3-シクロヘキシルプロピル)-イソファゴミン;N-(3-フェニルプロピル)-イソファゴミン;N-((2Z,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)-イソファゴミン;及びN-ドデシル-イソファゴミン(N-ドデシル-IFG)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
薬理学的シャペロンが、グルコイミダゾール化合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
シャペロンが、グルコイミダゾール、(5R、6R、7S、8S)-5-ヒドロキシメチル-2-オクチル-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオール又は(5R,6R,7S,8S)-5-ヒドロキシメチル-2-(3,3-ジメチルブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
基本レベルの少なくとも1.2倍にβ-グルコセレブロシダーゼ活性を増強するのために有効な量において、薬理学的シャペロンを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基本レベルの少なくとも1.5倍にβ-グルコセレブロシダーゼ活性を増強するために有効な量において、薬理学的シャペロンを投与することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基本レベルの少なくとも2倍にβ-グルコセレブロシダーゼ活性を増強するために有効な量において、薬理学的シャペロンを投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
神経変性疾患を有するか又はその発生の危険性のある個体において、神経変性疾患を治療又は予防する方法であって、
該個体が、β-グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子に変異を有さず、
該方法が、該疾患を治療又は予防するために有効な量のβ-グルコセレブロシダーゼに結合する薬理学的シャペロンを、該個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
神経変性疾患が、α-シヌクレイノパシーである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
α-シヌクレイノパシーが、パーキンソン病、レビー小体疾患、多系統萎縮症、ハレルフォルデン・スパッツ病及び前頭側頭型痴呆である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
薬理学的シャペロンが、β-グルコセレブロシダーゼの競合的インヒビターである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
薬理学的シャペロンがイソファゴミン化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
薬理学的シャペロンが酒石酸イソファゴミンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
薬理学的シャペロンが、以下の構造の化合物、又は医薬的に許容され得るそれらの塩である、請求項18に記載の方法。
【化3】

{式中、Rは、C1-7ハロアルキル、C1-10アルキル、C3-7アルケニルアルキル、C2-7アルコキシアルキル、C1-7カルバモイルアルキル又はX-Ar1であり;
Xは、-(CH)n-又はC2-C3アルケニレンであり;
nは、整数の0〜3であり;
Ar1は、以下の一般式により表され;
【化4】

(式中、R1及びR2は、水素、ハロ、C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、アミノ、ニトロ、ヘテロアリール、アリール又はシアノから独立して選ばれ;YがC、N、O又はSの場合、X及びZは、独立してC、N、O又はSであるか;又は、YがX及びZを連結する単結合の場合、X及びZは独立してC、N-R3、O又はSであり、R3はC1-3アルキル又は水素である)}。
【請求項21】
イソファゴミン化合物が、イソファゴミン;N-ブチル-イソファゴミン;N-(3-シクロヘキシルプロピル)-イソファゴミン;N-(3-フェニルプロピル)-イソファゴミン;N-((2Z,6Z)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)-イソファゴミン及びN-ドデシル-イソファゴミン(N-ドデシル-IFG)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
薬理学的シャペロンが、グルコイミダゾール化合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
シャペロンが、グルコイミダゾール、(5R、6R、7S、8S)-5-ヒドロキシメチル-2-オクチル-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオール又は(5R,6R,7S,8S)-5-ヒドロキシメチル-2-(3,3-ジメチルブチル)-5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6,7,8-トリオールである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
薬理学的シャペロンの有効量が、β-グルコセレブロシダーゼの活性を増強する、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
薬理学的シャペロンの有効量が、基本レベルの少なくとも1.2倍にβ-グルコセレブロシダーゼ活性を増強する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
基本レベルの少なくとも1.5倍にβ-グルコセレブロシダーゼ活性を増強するために有効な量において、薬理学的シャペロンを投与することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
基本レベルの少なくとも2倍にβ-グルコセレブロシダーゼ活性を増強するために有効な量において、薬理学的シャペロンを投与することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薬理学的シャペロンの有効量が、個体の血漿中のα-シヌクレインのレベルを調節する、請求項14に記載の方法。
【請求項29】
第二の治療剤と、薬理学的シャペロンを同時投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項30】
神経変性疾患が、パーキンソン病、パーキンソニズム又はレビー小体痴呆であり、第二の治療剤が、レボドパ、抗コリン剤、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)インヒビター、ドパミンレセプターアゴニスト、モノアミンオキシダーゼインヒビター(MAOI)、末梢デカルボキシラーゼインヒビター、及び抗炎症剤からなる群より選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
神経変性疾患がニーマン・ピックC型疾患であり、第二の治療剤が、アロプレガノロン、スタチン、フェノフィブレート、ナイアシン、エゼチミベ及び結合樹脂からなる群より選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
神経変性疾患が、ニーマン・ピックC型疾患であり、第二の治療剤が、β-ヘキソサミニダーゼA又は酸β-ガラクトシダーゼに特異的な薬理学的シャペロンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
β-ヘキソサミニダーゼA用のシャペロンが、2-N-アセチルアミノ-イソファゴミン、1,2-ジデオキシ-2-アセトアミド-ノジリマイシン及びナグスタチンからなる群より選ばれる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
酸β-ガラクトシダーゼ用のシャペロンが、4-エピ-イソファゴミン又は1-デオキシガラクトノジリマイシンである、請求項32に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公表番号】特表2009−541489(P2009−541489A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518489(P2009−518489)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/072016
【国際公開番号】WO2007/150064
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508340916)アミークス セラピューティックス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】