説明

うつ病治療のための三環系ジテルペンおよびその誘導体を含有する食品または医薬組成物

本発明は、損なわれた神経伝達と関係がある障害の治療のための薬物として使用するための式(I)および(II)、
【化1】


(式中、
は水素またはC1〜6−アルキルであり、Rはヒドロキシ、C3〜5−アシルオキシ、ヒドロキシメチル、1,3−ジヒドロキシプロピルまたはC1〜6−アルキルであり、RおよびRは互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、C1〜5−アシルオキシまたはC1〜6−アルコキシであり、RはC1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシまたはメトキシカルボニルであり、Rは水素、ヒドロキシメチル、メトキシ、オキソまたはC1〜5−アシルオキシであり、R10は水素であり、またはRおよびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、Rは水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、RおよびRは互いに独立してC1〜6−アルキル、カルボキシ、x−ヒドロキシ−Cx−アルキル(xは1〜6の整数である)、またはC1〜6−アルコキシカルボニルであるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはC1〜6−アルキルであり、R11およびR12はどちらも水素であり、またはR11およびR12は一緒になってオキソであるが、さらにただし式(I)ではRがヒドロキシであれば、RはC1〜6−アルキルである)の三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体、ならびに食品および医薬組成物およびそれらの使用に言及する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の簡単な説明]
本発明は、特に損なわれたまたは低下した神経伝達と関係がある障害を治療するための薬物として使用するための三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体、ならびにこのような三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体を含有する食品および医薬組成物およびそれらの使用に言及する。
【0002】
[発明の背景]
例えば神経伝達物質レベル低下などの損なわれた神経伝達は、うつ病および全般性不安障害(GAD)、およびストレスに対する感受性増大などの精神疾患と関係があることがよく知られている。
【0003】
脳内の神経伝達物質レベルを増大させ、ひいてはそれらの伝達を増強する化合物は、抗うつ特性ならびに多様なその他の精神障害に対する有益な効果を示すことができる(「神経伝達物質、薬剤および脳機能(Neurotransmitters,drugs and brain function)」、R.A.ウェブスター(Webster)編、John Wiley&Sons、New York、2001年、187〜211頁、289〜452頁、477〜498頁)。主要な神経伝達物質は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン(=ノルエピネフリン)、アセチルコリン、グルタメート、γ−アミノ−酪酸、ならびに神経ペプチドである。気分関連障害に特有の関連性がある神経伝達物質としては、セロトニン、ノルアドレナリンおよびドーパミンが挙げられる。増強または延長された神経伝達は、シナプス前神経終末内への再取り込みの阻害を通じて、またはモノアミンオキシダーゼ(MAO)−Aおよび−Bなどの分解酵素の阻害により神経伝達物質異化作用を防止することによって、シナプス間隙中の神経伝達物質濃度を増大させることで達成される。
【0004】
[抗うつ薬および気分関連障害]
イミプラミン、アミトリプチリンおよびクロミプラミンなどの三環系抗うつ薬化合物(TCA)は、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを阻害する。それらは入手できる最も効果的な抗うつ薬として一般に認識されるが、それらはムスカリン様アセチルコリン−、ヒスタミン−、およびセロトニン−受容体とさらに反応するため、いくつかの不都合を有する。このような活性に起因する副作用としては、起立性低血圧に加えて、口渇、かすみ目、便秘、および尿貯留が挙げられる。最も重要なことには、過量に摂取されるとTCAは安全でなく、急性心臓毒性を示すことが多い。
【0005】
別のクラスの抗うつ薬は、セロトニンの再取り込みによってセロトニン作動性神経伝達を終結する、高親和性塩化ナトリウム−依存神経伝達物質輸送体であるセロトニン輸送体(SERT)をブロックする、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、およびフルボキサミンを含む、いわゆるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)である。これらはTCAと同様、うつ病および不安の治療において効果的であることが立証されているが、通常、耐容性がより良い。これらの薬物投与は、典型的に低投薬量で開始され、それらが治療的レベルに達するまで増大される。一般的な副作用は悪心である。その他の可能な副作用としては、食欲減退、口渇、発汗、感染症、便秘、振戦、あくび、眠気、および性機能障害が挙げられる。
【0006】
さらにMAO−Aおよび−Bを阻害することでより広範に神経伝達物質の異化作用を防止する化合物も抗うつ効果を示す。MAOはセロトニン、ノルアドレナリン、およびドーパミンなどのアミン基含有神経伝達物質の酸化を触媒する。
【0007】
さらに神経伝達調節因子は、精神および認知機能に対して多面発現効果を発揮する。
【0008】
既知の抗うつ薬のネガティブな副作用を示さない、精神疾患および/または障害を治療または予防するための化合物に対する必要性がある。多くの患者は、高用量の薬剤と関連付けられている副作用を最小限に抑えて、相加的な臨床上の利点を生じることができる代案の治療法に関心を持っている。重度のうつ病は長期にわたる再発性の疾患であり、それは通常不十分に診断される。さらに多くの患者は、軽度のまたは中度のうつ病を患う。したがってリスクがある人々に使用されて、うつ病および気分変調などの精神疾患/障害を治療し、または精神疾患/障害の発生を予防し、気分を安定化して情動の均衡を達成するかもしれない化合物ならびに医薬品および/または食品組成物の開発に対する関心が高まっている。
【0009】
さらに患者は、うつ病の併存疾患として、またはそれ自体として全般性不安症候群(GAD)を患うことが多い。GADは一次医療において高度に蔓延している不安病状および慢性病である(患者の約10%)(Wittchenら、2005年、Eur.Neuropsychopharm.15:357〜376頁)。患者は複数の身体的症状を持って彼らの一次医療医師のもとを訪れる。GADは日常生活に支障を来たし制御不能であり、(情動不安、筋肉緊張、および睡眠問題を含む)特徴的な過覚醒状態症候群を伴う、慢性的緊張、および不安懸念および緊張(>6か月)によって特徴づけられる。治療されない場合、GADは慢性の変動する経過を取り、加齢に伴ってより重度になる傾向がある。GAD患者は亜症候群性うつを患い、あらゆる不安およびうつ病性障害の内、全体的に最も高い直接および間接的健康経済的負担に寄与する。高いGAD発生率にもかかわらず、診断され、薬物療法を処方され、または精神科医への紹介を受ける患者はわずかであり、患者認識およびモニタリングを助ける単純な診断ツールが必要である。特定の診断にかかわらず、医師は効果的なGAD−症状の治療法を必要とする。パロキセチンなどのSSRIは、GADの治療に効果的である(ストッキ(Stocchi)ら2003年、J Clin Psych、63(3):250〜258頁)。また系統的レビューおよびプラセボ対照RCT(無作為化臨床試験)は、いくつかのSSRI(エスシタロプラム、パロキセチンおよびセルトラリン)、SNRI(選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤)ベンラファキシン、いくつかのベンゾジアゼピン(アルプラゾラムおよびジアゼパム)、三環系イミプラミン、および5−HT1A部分作用薬ブスピロンが、急性処置において全て有効であることを示唆する。一般的には、治療効果は中程度であることが多く、治療期間が中断すると症状が再出現する。したがってSSRIよりも副作用が少なく、長期にわたって服用できる化合物を用いた連続的な長期療法または予防が、薬物療法よりも好ましいかもしれない。
【0010】
気分障害および職業上のストレスもまた、継続性睡眠障害、不眠症、低い睡眠の質、概日リズムの撹乱をもたらす。これらの病状は慢性であることが多く、長期にわたって持続し得る。また長時間飛行(時差ぼけ)ならびに交代勤務によって誘発される概日リズムの調節解除は、同様の症状および困難を引き起こすことがある。したがって認知機能および記憶障害、精神および身体的疲労、夢想などの睡眠障害と関連付けられている症状を改善し、予防するための食餌補給を用いた治療は、それを必要とする個人の全体的な生活の質を改善して、活力のためになることは確実である。
【0011】
[発明の詳細な説明]
式IおよびII、
【化1】


(式中、
は水素またはC1〜6−アルキルであり、
はヒドロキシ、C3〜5−アシルオキシ、ヒドロキシメチル、1,3−ジヒドロキシプロピルまたはC1〜6−アルキルであり、
およびRは互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル(−CH−OH)、C1〜5−アシルオキシまたはC1〜6−アルコキシであり、
はC1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシ(COH)またはメトキシカルボニル(COCH)であり、
は水素、ヒドロキシメチル、メトキシ、オキソまたはC1〜5−アシルオキシであり、
10は水素であり、または
およびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、
またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、
は水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、
およびRは互いに独立してC1〜6−アルキル、カルボキシ、x−ヒドロキシ−C−アルキル(xは1〜6の整数である)またはC1〜6−アルコキシカルボニル(−CO(C1〜6−アルキル))であるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはC1〜6−アルキルであり、
11およびR12はどちらも水素であり、またはR11およびR12は一緒になってオキソであり、
さらにただし式IではRがヒドロキシであれば、RはC1〜6−アルキルである)
の三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体は、損なわれたまたは低下した神経伝達の治療のための薬物に使用できることが発見された。
【0012】
好ましいのは、ヒトセロトニン輸送体を形質移入された形質移入細胞内への、hSERT依存トリチウム化セロトニン取り込みの阻害について、ポジティブな結果を与える三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体である。
【0013】
特に好ましいのは、式IおよびII、
(式中、
は水素またはイソ−プロピルであり、
はヒドロキシまたはイソ−プロピルであり、
およびRは互いに独立して水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
はメチルまたはカルボキシであり、
は水素、オキソまたはメトキシであり、
10は水素であり、または
およびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、
は水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、
およびRは互いに独立してメチル、カルボキシ、ヒドロキシメチルまたはメトキシカルボニルであるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはメチルであり、
さらにただし式IではRがヒドロキシであれば、Rはイソ−プロピルである)
の三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体である。
【0014】
したがって一態様では、本発明は、損なわれたまたは低下した神経伝達と関係がある障害を治療するための薬物として使用するための、式IおよびII、
【化2】


(式中、
は水素またはC1〜6−アルキルであり、
はヒドロキシ、C1〜5−アシルオキシ、ヒドロキシメチル、1,3−ジヒドロキシプロピルまたはC1〜6−アルキルであり、
およびRは互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、C1〜5−アシルオキシまたはC1〜6−アルキルオキシであり、
はC1〜6−アルキル、ヒドロキシメチルまたはカルボキシであり、
は水素、ヒドロキシメチル、メトキシ、オキソまたはC1〜5−アシルオキシであり、
10は水素であり、または
およびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、
またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、
は水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、
およびRは互いに独立してC1〜6−アルキル、カルボキシ、x−ヒドロキシ−C−アルキル(xは1〜6の整数である)、またはC1〜6−アルコキシカルボニルであるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはC1〜6−アルキルであり、
11およびR12はどちらも水素であり、またはR11およびR12は一緒になってオキソであり、
さらにただし式IではRがヒドロキシであれば、RはC1〜6−アルキルである)の三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体に関し、
好ましくは式IおよびII、
(式中、
は水素またはイソ−プロピルであり、
はヒドロキシまたはイソ−プロピルであり、
およびRは互いに独立して水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、
はメチルまたはカルボキシであり、
は水素、オキソまたはメトキシであり、
10は水素であり、または
およびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、
またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、
は水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、
およびRは互いに独立してメチル、カルボキシ、ヒドロキシメチルまたはメトキシカルボニルであるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはメチルであり、
およびさらにただし式IではRがヒドロキシであれば、Rはイソ−プロピルである)
の三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体に関し、
より好ましくは式III〜VIIおよびX〜XV(下の図1、2、および3参照)の化合物、
最も好ましくはカルノシン酸(式IIIの化合物)および7−オキソカリトリシン酸(式IVの化合物)に関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、損なわれたまたは低下した神経伝達と関係がある障害を治療するための組成物の製造、特に抗うつ薬、気分/活力改良剤、ストレス緩和剤、病状改良剤、不安低下剤、強迫性行動低下剤、弛緩薬、睡眠改良剤および/または不眠症軽減薬の製造のための上記の式IおよびIIの三環系ジテルペンおよびその誘導体の使用に関する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、上記の式IおよびIIの少なくとも1つの三環系ジテルペンまたはその誘導体を含有する食品組成物、ならびに上記の式IおよびIIの少なくとも1つの三環系ジテルペンまたはその誘導体と従来の薬学的キャリアとを含有する医薬組成物に関する。
【0017】
さらに本発明は、上記の式IおよびIIで表される効果的な用量の三環系ジテルペンおよび/またはその誘導体を、それを必要とするヒトを含む動物に投与するステップを含んでなる、ヒトを含む動物において損なわれたまたは低下した神経伝達と関係がある障害を治療する方法に関する。
【0018】
本発明の文脈で動物とは、ヒトを含み、哺乳類、魚類、および鳥類を包含する。好ましい「動物」は、ヒト、ペットおよびコンパニオンアニマル、および家畜である。ペットおよびコンパニオンアニマルの例は、イヌ、ネコ、鳥、観賞魚、モルモット、(ジャック)ウサギ、野ウサギ、およびフェレットである。家畜の例は、水産養殖魚、ブタ、ウマ、反芻動物(畜牛、ヒツジ、およびヤギ)、および家禽である。
【0019】
本発明の好ましい態様では、式Iの三環系ジテルペンおよびその誘導体は、
カルノシン酸(式IIIの化合物、図1参照)、
7−オキソカリトリシン酸(式IVの化合物、図1参照)、
トタロール(式Vの化合物、図1参照)、
16−ヒドロキシトタロール(式VIの化合物、図1参照)、
トタロール−19−カルボン酸メチルエステル(式VIIの化合物、図1参照)、
20−デオキソ−カルノソール(式Xの化合物、図2参照)、
7−メチルロスマノール(式XIの化合物、図2参照)、
セージョン(式XIIの化合物、図2参照)、
8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール(式XIIIの化合物、図2参照)、
ロイルエアノン酸(式XIVの化合物、図3参照)、
フェルギノール(式XVの化合物、図3参照)、および
カルノシン酸12−メチルエーテル(式XVIの化合物、図1参照)からなる群から選択される。
【0020】
式Iのより好ましい三環系ジテルペンは、カルノシン酸、7−オキソカリトリシン酸、および20−デオキソ−カルノソールである。さらにより好ましいのは、カルノシン酸および7−オキソカリトリシン酸であり、最も好ましいのは(4aR,10aS)−カルノシン酸である。
【0021】
「式IおよびIIの三環系ジテルペンならびにその誘導体」という用語はまた、植物の材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で、式IおよびIIで表されるこのような三環系ジテルペンおよびその誘導体を含有する任意の植物材料または抽出物も包含する。「植物の材料」および「植物材料」という用語は、本発明の文脈で植物の任意の部分を意味するのに使用される。
【0022】
「カルノシン酸」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4aR,10aS)−カルノシン酸または純粋な(4aS,10aR)−カルノシン酸、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。カルノシン酸はローズマリーおよびセージなどであるが、これに限定されるものではない植物から単離できる。「カルノシン酸」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)カルノシン酸の双方を意味する。カルノシン酸合成については、Chin Chem Lett 2001年、12(3)、203〜204頁(ISSN:1001−8417)に記載される。
【0023】
したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量でカルノシン酸を含有するローズマリーまたはセージのあらゆる材料または抽出物、またはあらゆるその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。
【0024】
「カルノシン酸12−メチルエーテル」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4aR,10aS)−カルノシン酸12−メチルエーテルまたは純粋な(4aS,10aR)−カルノシン酸12−メチルエーテル、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。カルノシン酸12−メチルエーテルは、セージ、ローズマリー、ヒプティス・マルティウシ(Hyptis martiusii)などであるが、これに限定されるものではない植物から単離できる。「カルノシン酸12−メチルエーテル」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)カルノシン酸12−メチルエーテルの双方を意味する。
【0025】
したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量でカルノシン酸12−メチルエーテルを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物、または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。
【0026】
「7−オキソカリトリシン酸」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(1S,4aS,10aR)−7−オキソ−カリトリシン酸または純粋な(1R,4aR,10aS)−7−オキソカリトリシン酸、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。7−オキソカリトリシン酸は、カルドン(Cynara cardunculus spp.Cardunculus)およびビャクシン(Juniperus chinensis)などであるが、これに限定されるものではない植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で7−オキソカリトリシン酸を含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「7−オキソカリトリシン酸」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)7−オキソカリトリシン酸の双方を意味する。
【0027】
「トタロール」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4bS,8aS)((+)−トタロール、トランス−トタロール)または純粋な(4bR,8aR)−トタロール、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。トタロールは、セージ、杜松、およびマキ属(Podocarpus sp)などであるが、これに限定されるものではない植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量でトタロールを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。
【0028】
「トタロール」とは「天然」(単離された)および「合成」(製造された)トタロールの双方を意味する。トタロール合成については、いくつかの論文、すなわちTetrah.Lett.2003、44(49):8831〜8835に記載される。
【0029】
「16−ヒドロキシトタロール」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(1S,4aS,10aR)−16−ヒドロキシトタロールまたは純粋な(1R,4aR,10aS)−16−ヒドロキシトタロール、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。16−ヒドロキシトタロールは、マキ属(Podocarpus species)およびその他の植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で16−ヒドロキシトタロールを含有する、これらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「16−ヒドロキシトタロール」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)16−ヒドロキシトタロールの双方を意味する。16−ヒドロキシトタロール合成については、いくつかの論文、すなわちJ.Chem Soc、1963年、(抄録)、1553〜1560頁、およびChem&Ind 1963年、44:1760〜1761頁に記載される。
【0030】
「トタロール−19−カルボン酸メチルエステル」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4aR,10aS)−トタロール−19−カルボン酸メチルエステルまたは純粋な(4aR,10aS)−トタロール−l9−カルボン酸メチルエステル、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。トタロール−19−カルボン酸メチルエステルは、マキ属(Podocarpus species)の木材およびその他の植物からから単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で、トタロール−19−カルボン酸メチルエステルを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「トタロール−19−カルボン酸メチルエステル」とは「天然」(単離された)および「合成」(製造された)トタロール−19−カルボン酸メチルエステルの双方を意味する。トタロール−19−カルボン酸メチルエステルは、Chem&Ind 1963年、44:1760〜1761頁に記載される工程に従って調製できる。
【0031】
「20−デオキソ−カルノソール」とは、ラセミ混合物ならびに純粋な(4aR,9S,10aS)−20−デオキソ−カルノソールまたは純粋な(4aS,9R,10aR)−20−デオキソ−カルノソールまたはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。20−デオキソ−カルノソールは、レペキニア・ウルバニアナ(Lepechinia urbaniana)、および野生セージなどであるが、これに限定されるものではない植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で20−デオキソ−カルノソールを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「20−デオキソ−カルノソール」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)20−デオキソ−カルノソールの双方を意味する。
【0032】
「7−メチルロスマノール」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4aR,9S,10S,10aS)−7−メチルロスマノールまたは純粋な(4aS,9R,10R,10aR)−7−メチルロスマノール、またはそれらの任意の混合物またはジアステレオ異性体を意味する。7−メチルロスマノールは、ローズマリー、ヒプチス・ジラタタ(Hyptis dilatata)、サリビア(Salivia)種、およびレペチニア(Lepechinia)種などであるが、これに限定されるものではない植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で、7−メチルロスマノールを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「7−メチルロスマノール」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)7−メチルロスマノールの双方を意味する。7−メチルロスマノールの合成については、例えばJ.Nat.Prod.2002年、65(7):986〜989頁に記載される。
【0033】
セージョンは、セージおよびその他のサルビア(Salvia)種などの植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量でセージョンを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「セージョン」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)セージョンの双方を意味する。セージョン合成については例えばJ Org Chem 1997年、62(20):6928〜6951頁に記載される。
【0034】
「8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4bR,8aS)−8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールまたは純粋な(4bS,8aR)−8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール、またはそれらの任意のジアステレオ異性体または混合物を意味する。8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールは、サリビア(Salivia)種を含む植物から単離できる。したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオールの双方を意味する。
【0035】
「ロイルエアノン酸」とは、ラセミ混合物、ならびに純粋な(4aR,10aS)−ロイルエアノン酸または純粋な(4aS,10aR)−ロイルエアノン酸、またはそれらの任意のジアステレオ異性体または混合物を意味する。ロイルエアノン酸はセージ(サルビア(Salvia)種)などを含むが、これに限定されるものではない植物から単離できる。
【0036】
したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量でロイルエアノン酸を含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「ロイルエアノン酸」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)ロイルエアノン酸の双方を意味する。
【0037】
「フェルギノール」とは、純粋な(4bS,8aS)−フェルギノールまたは純粋な(4bR,8aR)−フェルギノールまたはそれらの任意の立体異性体または混合物を意味する。フェルギノールは、日本杉(Cryptomeria sp.)、ジュニペルス(Juniperus)種、およびサルビア(Salvia)種を含むが、これに限定されるものではない植物から単離できる。
【0038】
したがって植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)の量で、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量で、フェルギノールを含有するこれらの植物の任意の材料または抽出物または任意のその他の植物材料または抽出物もまた、この表現に包含される。「フェルギノール」とは、「天然」(単離された)および「合成」(製造された)フェルギノールの双方を意味する。フェルギノール合成については、Org Let.2001年、3(11):1737〜1740頁に記載される。
【0039】
カルノシン酸、カルノシン酸12−メチルエーテル、7−オキソカリトリシン酸、トタロール、16−ヒドロキシトタロール、トタロール−19−カルボン酸メチルエステル、20−デオキソ−カルノソール、7−メチルロスマノール、セージョン、8,11,13−アビエタトリエン−l1,12,20−トリオール、ロイルエアノン酸、およびフェルギノールの(純粋な)化合物の他に、特に好ましいのは、植物材料/抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%)、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)のこれらの化合物を含有する植物材料および植物抽出物である。
【0040】
本発明に従って、R〜R12の定義および選択が上の通りである、式IおよびIIの三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体それ自体だけでなく、植物材料または抽出物の総重量を基準にして、少なくとも30重量%(すなわち30〜100重量%)の量で、好ましくは少なくとも50重量%(すなわち50〜100重量%)の量で、より好ましくは少なくとも70重量%(すなわち70〜100重量%の量で)、最も好ましくは少なくとも90重量%(すなわち90〜100重量%)の量でそれらを含有する植物材料および抽出物、ならびにそれらを含有する食品および医薬組成物もまた、特に損なわれたまたは低下した神経伝達と関係がある障害を治療するための薬物として使用できる。
【0041】
本発明の文脈で「治療」とはまた、同時治療ならびに予防も包含する。「予防」は、最初の発生の予防(一次予防)または再発の予防(二次予防)であることができる。
【0042】
したがって本発明はまた、効果的な用量の式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはその誘導体を、それを必要とするヒトを含む動物に投与するステップを含んでなる、ヒトを含む動物において損なわれた神経伝達と関係がある障害を予防する方法にも関する。この点において、効果的なとは、特に精神の健康を維持し、均衡の取れた認知機能を維持し、気分変動リスクの低下を助け、前向きな気分の維持を助け、認知性の健康を支持し、良好な睡眠の質の維持を助けるために使用されてもよい。
【0043】
本発明の文脈では、「障害」という用語はまた、疾患も包含する。
【0044】
損なわれた神経伝達と関係がある障害を治療するための薬物/組成物は、抗うつ薬、気分/活力改良剤、ストレス緩和剤、病状改良剤、不安低下剤および強迫性行動低下剤、弛緩薬、睡眠改良剤および/または不眠症軽減薬を包含する。それらは全て、特に中枢神経系において、生理学的神経伝達を改善し、増強し、支持するので、精神機能障害を改善する。
【0045】
抗うつ薬は、例えば単極性うつ病、双極性うつ病、急性うつ病、慢性うつ病、亜慢性うつ病、気分変調、分娩後うつ病、月経前不快気分/症候群(PMS)、更年期うつ症状、攻撃性、注意欠陥障害(ADS)、社会不安障害、季節性気分障害、全般性不安障害(GAD)などの不安(障害)、線維筋肉痛症候群、心的外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害、むずむず脚症候群、神経質、片頭痛/原発性頭痛および一般的疼痛、嘔吐、過食症、神経性食欲不振症、過食症障害、胃腸障害、燃え尽き症候群、および被刺激性などの精神、行動および情動/感情、神経性、神経変性、摂食およびストレス関連障害を治療するための薬物/組成物である。
【0046】
抗うつ薬はまた、神経認知障害の一次および二次予防および/または治療(のための組成物の製造)のためにも使用できる。さらにそれらはまた、心臓血管疾患、卒中、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびその他の慢性疾患における併存疾患として発生する神経伝達障害に関連したうつ症状またはその他の症状の治療においても効果的である。
【0047】
したがってR〜R12の定義および選択が上の通りである、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体は、一般にヒトを含む動物、好ましくはヒト、愛玩動物、および家畜のための抗うつ薬として使用できる。
【0048】
本発明のさらに別の実施態様では、三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体は、一般的気分改良剤としての、ならびにこのような使用のための組成物製造のための用途がある。「気分改良剤」または「情緒的健康増幅剤」または「活力改良剤」とは、それによって治療された個人の気分が向上して、自尊心が高まりおよび/またはネガティブな思考および/またはネガティブな緊張が減少することを意味する。それはまた、情動の均衡が取れおよび/または一般的な、特に精神の健康および活力が改善または維持され、ならびに気分変動のリスクが低下される(のを助け)、前向きな気分が保たれる(のを助ける)ことも意味する。
【0049】
〜R12の定義および選択が上の通りである、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体はまた、一般にヒトを含む動物、好ましくはヒト、愛玩動物、および家畜のための「不安低下剤」および/または「強迫性行動低下剤」としても使用できる。
【0050】
「不安低下剤」とは、慢性的緊張および不安懸念および緊張が改善または緩和されることを意味する。情動不安、筋肉緊張、および睡眠問題を含む過覚醒状態症候群は、低下または緩和される。社会恐怖症およびその他の恐怖症は、低下または緩和される。一般的には、社会環境がより威嚇的でないものとして経験される。個人は情動的にリラックスして、快適さを経験し、仲間およびその他の人々との接触を楽しむ。
【0051】
「弛緩薬」、「睡眠改良剤」または「不眠症軽減薬」とは、睡眠開始を改善して個人が容易に眠りにつけるよう助け、夜通し乱されない睡眠を維持することを意味する。これはまた、時差ぼけまたは交代勤務に起因する概日リズム関連睡眠障害が正されて、不眠と関連付けられている症状、すなわち認知機能および記憶の障害、精神および身体的疲労、夢想が消滅しまたは緩和されて、全体的に生活の質および活力が改善されることも意味する。
【0052】
さらに式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体は、ストレス関連症状の治療、予防、および改善のため、作業過負荷、疲労および/または燃え尽きに関連する症状の治療、予防、および改善のため、ストレスに対する抵抗性または耐性増大のため、および/または正常な健康な個人におけるリラクセーションを支持して容易にするために有用であり、すなわちこのような組成物は「ストレス緩和剤」としての効果を有する。
【0053】
本発明のさらに別の実施態様は、「病状改良剤」としての、すなわち疾患のあるまたは正常な個人において、被刺激性および倦怠感を低下させ、肉体および精神疲労を低下させまたは防止または改善し、およびより総括的にエネルギーを増大させ、特に脳エネルギー産生を増大させる手段としての、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体の使用に関する。さらに一般的認知力改善のため、特に注意および集中力と、記憶および想起能力と、学習能力と、言語処理と、問題解決と、知的機能とを維持または改善するため、短期記憶を改善するため、精神的敏捷性を増大させるため、精神的覚醒を増強するため、精神疲労を低下させるため、認知健康を支持するため、均衡が取れた認知機能を維持するため、空腹および満腹感を制御するため、ならびに運動能を制御するため。
【0054】
[獣医学用途]
愛玩動物および家畜は、本発明によって提供できる増強されたまたは改善された神経伝達を必要とする病状であることができる。動物はストレス性の状況に対する有害行動および/または生理学的反応を示すことがあり、量産環境で飼育される、または好ましくない条件で輸送される動物は、肉またはミルクの量または質に減退を示すことがあり、ストレスがたまった家禽は、毛引き、産卵低下、および共食いに訴えることがある。多くの動物は、有害な収容条件または輸送条件下で攻撃的になり、または常同的−、不安−、および強迫性−行動を示すことがある。
【0055】
したがって本発明の別の態様は、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体の食品/医薬組成物の獣医学用途である。
【0056】
本発明の好ましい実施態様では、食肉処理への輸送中の家畜および量産家畜飼育ストレスを予防するため、および/またはこのような状況下における前記家畜の肉質の損失を防止するために、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体が投与される。家畜は、好ましくは家禽、畜牛、ヒツジ、ヤギ、およびブタである。
【0057】
本発明の別の好ましい実施態様では、例えば肉質および産卵数の損失をもたらす毛引きおよび共食いを防止するために、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体が家禽に投与される。
【0058】
本発明の別の態様は、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体を、それを必要とする動物に投与するステップを含んでなる、水産養殖におけるストレスを予防および/または改善する方法であり、動物は魚またはエビである。
【0059】
本発明の別の好ましい実施態様では、離別、飼い主の変更または喪失、休暇中の離別、およびいわゆる「動物ホテル」における飼育および動物シェルターまたは避難所における飼育などのストレス性の条件下において、示されるストレス、緊張および攻撃性および強迫性行動を低下させるために、式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはそれらの誘導体が、ペットまたはコンパニオンアニマルに投与される。
【0060】
本発明のさらに別の態様は、好ましくはミンク、キツネ、およびノウサギである、毛皮産業で使用される動物において、ストレス性条件と関連付けられている症状を防止する/減少させる方法である。
【0061】
「食品組成物」という用語は、臨床栄養、および栄養補助食品もまた含む、任意のタイプの(強化)食物/飼料および飲料を含んでなる。本発明に係る食品組成物はまた、保護親水コロイド、バインダー、フィルム形成剤、封入剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着材、キャリア、充填材、共化合物、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶剤)、流動剤、味覚マスキング剤、増量剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤、および抗菌剤もさらに含んでもよい。
【0062】
薬学的に許容可能なキャリアおよび式IおよびIIで表される少なくとも1つの三環系ジテルペンまたはその誘導体の他に、本発明に係る医薬組成物は、従来の製薬添加剤およびアジュバント、賦形剤または希釈剤、着香剤、保存料、安定剤、乳化剤、緩衝液、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填材、などを含有してもよい。キャリア材料は、経口/非経口/注射投与に適した有機または無機不活性キャリア材料であることができる。
【0063】
本発明に係る食品および医薬組成物は、人体を含む動物身体への投与に適した任意のガレヌス形態であってもよく、特に例えば食物または飼料(のための添加剤/栄養補給剤)、食物または飼料プレミックス、強化食物または飼料、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣丸、カプセル、および粉末および錠剤などの発泡性製剤などの固形形態、または例えば飲料、ペースト、および油性懸濁液などの溶液、エマルジョンまたは懸濁液などの液体形態など、経口投与のために慣習的な任意の形態であってもよい。ペーストは、硬質または軟質シェルカプセルに充填されてもよい。その他の適用形態の例は、経皮、非経口または注射投与のための形態である。食品および医薬組成物は、制御(遅延)放出製剤の形態であってもよい。
【0064】
強化食物の例は、シリアルバー、およびケーキおよびクッキーなどのベーカリー製品である。
【0065】
飲料は、非アルコールおよびアルコール飲料、ならびに飲用水および液体食物への添加用の液体調製品を包含する。非アルコール飲料は、例えば清涼飲料、スポーツ飲料、果汁、レモネード、ニアウォーター飲料(すなわち低カロリーを含有する水ベースの飲料)、茶およびミルクベースの飲料である。液体食物は、例えばスープおよび乳製品(例えばミューズリー飲料)である。
【0066】
ヒトのために適切な一日量は、1日あたり0.001mg/kg体重〜約20mg/kg体重の範囲内であってもよい。より好ましいのは、約0.01〜約10mg/kg体重の一日量であり、特に好ましいのは、約0.05〜5.0mg/kg体重の一日量である。式IおよびIIで表されるこのような三環系ジテルペンまたはその誘導体を含有する植物材料または植物抽出物の量は、適宜に計算できる。
【0067】
ヒトのための固形投薬単位製剤では、式IおよびIIで表される三環系ジテルペンまたはその誘導体は、適切に、投薬単位あたり約0.1mg〜約1000mgの範囲内、好ましくは約1mg〜約500mgの範囲内の量で存在する。
【0068】
食品組成物中では、特にヒト用食物および飲料中では、式IおよびIIで表される三環系ジテルペンまたはその誘導体は、適切に、食物または飲料の総重量を基準にして、約0.0001(1mg/kg)〜約5重量%(50g/kg)、好ましくは約0.001%(10mg/kg)〜約1重量%、(10g/kg)より好ましくは約0.01(100mg/kg)〜約0.5重量%(5g/kg)の範囲内である量で存在する。
【0069】
本発明の好ましい実施態様中の食物および飲料中では、式IおよびIIで表される三環系ジテルペンまたはその誘導体の量は、一食あたり10〜30mg、すなわち食物または飲料1kgあたり120mgの範囲内である。
【0070】
ヒトを除く動物では、式IおよびIIで表される三環系ジテルペンまたはその誘導体の適切な一日量は、1日あたり0.001mg/kg体重〜約1000mg/kg体重の範囲内であってもよい。より好ましいのは約0.1mg〜約500mg/kg体重の範囲内の一日量であり、特に好ましいのは約1mg〜100mg/kg体重の範囲内の一日量である。
【0071】
本発明を、続く実施例によってさらに例示する。
【0072】
[実施例]
下述の実験で使用したカルノシン酸は、英国SK13 7RYダービーシャー州オールドグロソップ、ウェスリー通り(Wesley Street,Old Glossop,Derbyshire SK13 7RY,UK)のFluorochemから得た。7−オキソカリトリシン酸は、独国14473ポツダム(14473 Potsdam,Germany)Hermannswerder Haus 17のAnalytiCon Discovery GmbHから、トタロールは米国ウィスコンシン州53233ミルウォーキー、ウェスト・セント・ポール通り1001のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー・インコーポレーテッド(Aldrich Chemical Company,Inc.(1001 West Saint Paul Avenue,Milwaukee,WI 53233,USA))から得た。16−ヒドロキシトタロールおよびトタロール−19−カルボン酸メチルエステルは、米国コネチカット州ゲイローズビル、ジョージ・ワシントン・プラザ21(21 George Washington Plaza,Gaylordsville,CT 06755 USA)のMicroSource Discovery Systems Inc.から得た。
【0073】
モノアミン神経伝達物質、セロトニンおよびドーパミンの作用は、原形質膜輸送タンパク質によって、それらの迅速な取り込みおよびシナプスの接合部からのクリアランスを通じて調節される。中枢モノアミン作動性ニューロン中のモノアミン輸送体は90%までの放出神経伝達物質回収率の原因であり、コカイン、アンフェタミン、および抗うつ薬などのいくつかの向精神剤の高親和性標的である。これらの薬剤は輸送体をブロックし、結果的にニューロンの取り込みを防止することで、中枢および末梢神経系の双方における細胞外神経伝達物質濃度のレベルを上昇させ、それらの行動効果および自律神経系効果に寄与する。したがって対象とする1つ以上の化合物による、セロトニンおよびドーパミン取り込みの阻害が、以下の2つの実施例によって例示される。
【0074】
[実施例1]
[式Iの三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体によるセロトニン取り込み阻害]
ヒトセロトニン再取り込み輸送体(hSERT)を安定して発現するHEK−293細胞を米国のバンダービルト大学(Vanderbilt University)のR.ブレイクリー(Blakely)から得た。細胞を10%ウシ胎仔血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミン、および抗生物質G418を含有するダルベッコの修正イーグル培地(Bioconcept)中で慣例的に生育させ、トリプシン処理によって継代培養した。アッセイの当日、80%集密のフラスコからの細胞を暖かいリン酸緩衝食塩水(PBS)での穏やかな洗浄によって収集した。次に遠心分離によって細胞を1回洗浄し、160μlの緩衝液中に細胞10,000個の濃度で、シグマ(Sigma)からの35μMパージリン、2.2mM CaCl、1mMアスコルビン酸、および5mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸を添加したクレブスリンゲル炭酸水素塩緩衝液(「Hepes」と称される緩衝液)に再懸濁し、コーニング(Corning)からの丸底ポリプロピレン96ウェルマイクロタイタープレート内でウェルあたり10,000個の細胞に等分した。放射性標識[H]セロトニン(GE Healthcare)を20nMの濃度で添加し、穏やかに振盪しながら37℃で40分間インキュベーションして、細胞内へのセロトニン取り込みを判定した。この期間の終わりに、Tomtec Mach III M細胞収穫器を使用して、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)からのUnifilter 96 GF/Bプレートを通した濾過によって、組み込まれなかった標識を除去した。プレート上に保持された組み込みセロトニンをパーキン・エルマーからのMicroscint−40/Topcountを使用して液体シンチレーション計数によって定量化した。
【0075】
H]セロトニンの添加10分前および添加最中の特定濃度範囲(三環系ジテルペンでは0.003〜100μM、フルオキセチンでは0.03nM〜1μM)におけるアッセイで、式Iの三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体、および基準化合物フルオキセチンのセロトニン取り込みに対する効果をそれらの包含によって判定した。輸送体を通じたセロトニン取り込みは、式Iの三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体によって用量に応じて阻害された。式Iの三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体、およびフルオキセチンによるセロトニン取り込み阻害について計算したIC50値を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
[実施例2]
[カルノシン酸によるドーパミン取り込み阻害]
ヒトドーパミン輸送体(hDAT)を発現するCHO−Ki/hDAT細胞をアッセイ前に播種した。50nM[H]ドーパミンの添加20分前に、細胞(2×l0/ml)を修正トリス−HEPES緩衝液、pH7.1中でカルノシン酸および/またはビヒクルと共に25℃で10分間インキュベートした。10μMのノミフェンシン(ドーパミン再取り込み阻害剤)存在下で、特異的シグナルを判定した。次に細胞を1%SDS溶解緩衝液で可溶化した。ビヒクル対照と比較して50%以上(≧50%)の[H]ドーパミン取り込みの低下は、顕著な阻害活性を示唆した。化合物(ノミフェンシンおよびカルノシン酸)を0.00316、0.01、0.0316、0.1、0.316、1、3.16、10、31.6および100μMの10種の100μMまでの濃度でスクリーニングした。これらの同一濃度を別々の細胞群に同時に適用し、顕著な取り込み阻害が観察された場合にのみ、可能な化合物誘発性細胞毒性について評価した。
【0078】
【表2】

【0079】
[実施例3]
[式Iの三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体によるモノアミンオキシダーゼ阻害]
モノアミンオキシダーゼA(MAO−A)およびB(MAO−B)酵素の基質として、有機アミンであるp−チラミンまたはベンジルアミンをそれぞれ使用した。西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)により触媒されるバニリン酸との反応により、この反応によって生成されるHを定量化した。
【0080】
反応はポリスチレンマイクロタイタープレート内で実施した。MAO酵素(最終濃度2U/ml)を必要に応じてシグマからのp−チラミン(最終濃度0.5mM)またはシグマからのベンジルアミン(最終濃度0.5mM)のどちらか、および0.2Mカリウムリン酸緩衝液、pH7.6中の色素産生溶液(フルカ(Fluka)からのバニリン酸、フルカからの4−アミノアンチピリン、およびシグマからの西洋わさびペルオキシダーゼをそれぞれ最終濃度0.25mM、0.125mM、および1U/mlで含有する)と混合した。反応を例えばMolecular Devices CorporationからのSpectramax M5などのマイクロタイタープレート吸光度読取り装置内で追跡した。40分間にわたり15秒毎に495nmでの吸光度を読取り、Molecular Devices CorporationからのSOFTmaxProを使用して、直線回帰によって初期反応速度を計算した。
【0081】
基質とのインキュベーション10分前および添加最中の0.03〜100μMの特定濃度範囲におけるアッセイで、式Iで表される三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体のモノアミンオキシダーゼ酵素に対する効果をそれらの包含によって判定した。反応のHRP触媒部分に対する化合物の効果を判定するために、MAO酵素をモレキュラープローブス(Molecular Probes)からのH(最終濃度0.2mM)で置換した。MAO−AおよびMAO−Bを含有する反応はどちらも、式Iで表される三環系ジテルペンおよびそれらの誘導体によって用量に応じて阻害されたのに対し、対照反応は影響されなかった。カルノシン酸、カルノシン酸−12−メチルエーテル、および20−デオキソ−カルノソールによるモノアミンオキシダーゼ活性阻害について測定されたIC50値を表3に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
[実施例4]
[Porsolt水泳試験]
強制水泳試験(FST)は、ラットにおける抗うつ薬様化合物のスクリーニングのために1977年に最初に報告され(Porsoltら、1977年、Nature 266:730〜732頁)、後にマウスを試験するために修正された(Porsoltら、Arch.Int.Pharmacodynamie、229:327〜336頁)。ラットまたはマウスは、逃げられない水の入ったシリンダー内で泳ぐことを強制されると最初は活発な逃避に向けた活動を示すが、次第に頭を水の上に保つのに必要な最少の動きだけするようになるという「絶望行動」が実証された。試験は、うつ病に対して既知の治療的活性がある一連の薬剤に感応性であることが示され、そのいくつかは、それまで既存の行動モデルにおいて有効性が示されていなかった。
【0084】
[カルノシン酸]
マウスを個別に、13.5cmの深さの水(22±0.5℃)を含有するシリンダー(24.5cm高さ、19.5cm内径)に6分間入れ、最初の2分間は活発な活動を含むので、試験の最後の4分間において対象とする行動パラメーターを分析した。6本のシリンダーをパースペックス(Perspex)箱に入れることで、6匹のマウスを同時に試験できるようにした。
【0085】
ドイツ国バートホンブルク(Bad Homburg,Germany)のTSE Technical and Scientific Equipment GmbHからのVideoMot2ソフトウェアの使用を通じて、水泳試験の自動モニタリングを可能にした。全ての実験はモノクロCCDカメラを通じて観察した。ソフトウェアプログラム中に設定されたパラメーターにより判定される休息:移動運動、および停止:開始閾値は、動きが記録されるために変化しなくてはならないピクセル数を判定して、マウスが泳いでいるかまたは休息しているかをソフトウェアが判定できるようにした。自動的に記録されるパラメーターには、休息時間および移動運動時間(ms)、%休息および%移動運動、移動距離(cm)、移動速度(cm/s)、および停止数が含まれる。
【0086】
カルノシン酸は、10、20、および30mg/kg(i.p.、試験30分前)および200mg/kg(p.o.、試験24、5、および1時間前)で評価し、ビヒクル対照群および選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)フルオキセチン(10mg/kg)および三環系抗うつ薬イミプラミン(32mg/kg)の2種の基準化合物と比較した。米国ノースカロライナ州カリーのSASインスティテュート・インコーポレーテッド(SAS Institute Inc.(Cary,NC,USA))からのフィッシャー(Fisher)のPLSD法(Stat View)を使用して、処置群と未処置対照群とを比較してデータを分析した。
【0087】
[結果]
【0088】
【表4】

【0089】
したがってFSTで試験した全ての用量のカルノシン酸は、i.p.およびp.o.双方の投与に続いて、双方の基準化合物と比較できる程度に不動行動を顕著に低下させ、したがって抗うつ薬様活性が示唆された。
【0090】
[実施例5]
[ガラス玉覆い隠し試験]
「防御的覆い隠し」行為は、不快な味の液体で充填された給水口(Wilkieら、1979年、J.Exp.Anal Behav、31:299〜306頁)または電気ショック棒(Pinelら、1978年、J.Comp.Phys.Physchol.92:708〜712頁)などの侵害性の対象物を埋めるラットによって示される。ガラス玉覆い隠し試験は、このような試験の修正法として考案された。Polingら、1981年、J.Exp.Anal.of Behav.35:31〜44頁では、10または21日間連続して、ラットを毎日それぞれ25個のガラス玉を入れた個々のケージに曝露した。10日間にわたり毎日、または21日間の曝露の24時間後に埋められたガラス玉の数を数えた。著者らは、ガラス玉の覆い隠しが、目新しさによって、またはあらゆる侵害性の刺激に起因して決まるのではないことを報告した。
【0091】
マウスによるガラス玉覆い隠し行為は、鎮静を誘発しない用量において、SSRI(例えばフルボキサミン、フルオキセチン、シタロプラム)、三環系抗うつ薬(例えばイミプラミン、デシプラミン)、および選択的ノルアドレナリン取り込み阻害剤(例えばレボキセチン)に加えて、一連のマイナー(例えばジアゼパム)およびメジャー(例えばハロペリドール)トランキライザーに感応性であることが報告されている(Broekkampら、1986年、Eur.J.Pharma.126:223〜229頁)。モデルは、不安様または強迫性行動のどちらかを反映してもよい(DE BOERら、2003年、Eur.J.Pharmacol.463:145〜161頁参照)。
【0092】
ここで適用される方法は、前出のBroekkampらに記載される方法に従う。床上に5cmのおがくず、ケージ中央にまとめて25個のガラス玉(直径1cm)を入れた透明プラスチックケージ(33×21×18cm)に、マウス(処置群あたりn=15匹)を個別に入れた。第2のひっくり返されたケージを蓋にした。30分の試験期間の終わりに、おがくずで(少なくとも3分の2)覆われたガラス玉の数を数えた。試験は、薬剤処置プロトコルに関して何も知らない研究者によって実施された。
【0093】
試験の前に、10匹の未感作マウスを各ケージに15分間入れておくことで、全ての試験ケージおよびガラス玉を「含浸」した。
【0094】
カルノシン酸(3、10、および30mg/kg)および20−デオキシ−カルノソール(30、100、および200mg/kg)を試験の30分前に腹腔内投与(i.p.)して、ビヒクル対照群と比較した。同一実験条件下で、選択的セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害剤であるフルオキセチン(32mg/kg)およびベンラファキシン(16mg/kg)を投与し、基準物質として使用した。
【0095】
独立スチューデントt検定を使用して処置群とビヒクル対照とを比較し、データを分析した。
【0096】
[結果]
【0097】
【表5】

【0098】
試験したカルノシン酸の最高用量(30mg/kg)は、SSRIフルオキセチンと同様にガラス玉覆い隠し行為を明らかにかつ顕著に低下させたので、抗不安薬様活性が示唆された。
【0099】
【表6】

【0100】
20−デオキシ−カルノソールはガラス玉覆い隠し行為をSSRIフルオキセチンと同様に、および選択的セロトニン/ノルアドレナリン−再取り込み阻害剤であるベンラファキシンと同程度に、用量に応じてかつ顕著に低下させたので、抗不安薬様活性が示唆される。
【0101】
[実施例6]
[マウスの明暗箱試験における、亜慢性経口胃管栄養法後のカルノシン酸の効果]
抗不安活性を検出する本方法は、Crawley、1981年、Pharmacol.Biochem.Behav.、15:695〜699頁に記載された方法に従う。抗不安薬は明区画で過ごされる時間を増大させる。
【0102】
動物を半分(25×27×27cm)が明るく開放され、別の半分(20×27×27cm)が暗く閉鎖された2区画箱の明区画に入れた。3分間の試験中に、各区画で過ごされる時間ならびに動物が横断して別の側に行く回数を評点した。群あたり15匹のマウスを試験した。試験は盲検で実施した。
【0103】
試験の24、5、および1時間前に経口胃管栄養法(p.o.)によって投与される3種の用量(100、200、400mg/kg体重)でカルノシン酸を評価し、ビヒクル対照群(コーン油)と比較した。カルノシン酸をコーン油(「ビヒクル」)に溶解させた。試験の1時間前にクロバザム(32mg/kg、p.o.)を投与して基準物質として使用した。実験の盲検化を維持するために、この群のマウスは試験の24および5時間前にビヒクルの追加的投与を受けた。
【0104】
【表7】

【0105】
カルノシン酸(100、200および400mg/kg)は、ビヒクル対照(それぞれ+19%、+10%、および+38%)と比較して、明区画で過ごされる時間を全体的に増大させ、400mg/kg(p<0.05)で顕著に増大させた。これは横断数に影響しなかった。
【0106】
[実施例7]
[軟ゼラチンカプセルの調製]
次の成分を含んでなる軟ゼラチンカプセル(500mg)を調製する。
【0107】
【表8】

【0108】
軽度慢性気分変調の治療のために、3ヶ月間にわたり毎日2個のカプセルをヒト成人に投与してもよい。
【0109】
[実施例8]
[軟ゼラチンカプセルの調製]
次の成分を含んでなる軟ゼラチンカプセル(600mg)を調製する。
【0110】
【表9】

【0111】
月経前症候群および月経前不快気分障害の治療のために、月経サイクルの好ましくは後半に、14日間にわたり毎日1個のカプセルを服用すべきである。
【0112】
[実施例9]
[錠剤の調製]
次の成分を含んでなる400mgの錠剤を調製する。
【0113】
【表10】

【0114】
一般的健康、元気づけ、およびストレス改善のためには、3ヶ月間にわたり毎日2回1個の錠剤を服用する。
【0115】
[実施例10]
[即席着香清涼飲料の調製]
【0116】
【表11】

【0117】
全ての成分を混合して500μmのふるいを通した。得られた粉末を適切な容器に入れて、管状配合機上で少なくとも20分間混合した。飲料を調製するために、125gの得られた混合粉末を取って水を充填して1リットルの飲料にする。
【0118】
即席飲料清涼飲料は、一食あたり(250ml)約30mgのカルノシン酸を含有する。
【0119】
一般的健康のための強化剤として、1日あたり2食(240ml)を飲用すべきである。
【0120】
[実施例11]
[強化ノンベークドシリアルバーの調製]
【0121】
【表12】

【0122】
カルノシン酸を脱脂粉乳と予め混合して、遊星形ボールミキサーに入れた。コーンフレークおよびライスクリスピーを添加して、全てを穏やかに混合した。次に乾燥させ切断したリンゴを添加した。第1の調理鍋中で、糖、水、および塩を上記の量で混合した(溶液1)。第2の調理鍋中で、グルコース、転化糖シロップ、およびソルビトールシロップを上記の量で混合した(溶液2)。ベーキング油脂、パーム核油、レシチン、および乳化剤の混合物が脂肪相である。溶液1を110℃に加熱する。溶液2を113℃に加熱して、次に冷水浴中で冷却する。その後溶液1および2を合わせる。脂肪相を水浴中で75℃で溶解する。脂肪相を溶液1および2を合わせた混合物に添加する。リンゴ香料およびクエン酸を液体糖−脂肪ミックスに添加する。液体塊を乾燥成分に添加して、遊星形ボールミキサー内で良く混合する。塊を大理石板上にのせて、所望の厚さに伸ばす。塊を室温に冷却して裁断する。ノンベークドシリアルバーは、一食(30g)あたり約25mgのカルノシン酸を含有する。一般的健康および元気づけのために、1日あたり1〜2個のシリアルバーを摂食すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】式III〜VIIおよびXVIの化合物を示す。
【図2】式X〜XIIIの化合物を示す。
【図3】式XIVおよびXVの化合物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IおよびII、
【化1】


(式中、
は水素またはC1〜6−アルキルであり、Rはヒドロキシ、C3〜5−アシルオキシ、ヒドロキシメチル、1,3−ジヒドロキシプロピルまたはC1〜6−アルキルであり、RおよびRは互いに独立して水素、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、C1〜5−アシルオキシまたはC1〜6−アルコキシであり、RはC1〜6−アルキル、ヒドロキシメチル、カルボキシまたはメトキシカルボニルであり、Rは水素、ヒドロキシメチル、メトキシ、オキソまたはC1〜5−アシルオキシであり、R10は水素であり、またはRおよびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、Rは水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、RおよびRは互いに独立してC1〜6−アルキル、カルボキシ、x−ヒドロキシ−C−アルキル(xは1〜6の整数である)、またはC1〜6−アルコキシカルボニルであるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはC1〜6−アルキルであり、R11およびR12はどちらも水素であり、またはR11およびR12は一緒になってオキソであり、さらにただし式IではRがヒドロキシであれば、RはC1〜6−アルキルである)の少なくとも1種の三環系ジテルペンまたはその誘導体を含有する、食品または医薬組成物。
【請求項2】
式IおよびII、(式中、Rは水素またはイソ−プロピルであり、Rはヒドロキシまたはイソ−プロピルであり、RおよびRは互いに独立して水素、ヒドロキシまたはメトキシであり、Rはメチルまたはカルボキシであり、Rは水素、オキソまたはメトキシであり、R10は水素であり、またはRおよびRは一緒になって−CH−O−または−O−CH−であり、またはRおよびR10は一緒になって−CO−O−、−O−CO−、−CH−O−または−O−CH−であり、Rは水素であり、またはRおよびRは一緒になって結合を形成し、RおよびRは互いに独立してメチル、カルボキシ、ヒドロキシメチルまたはメトキシカルボニルであるが、ただしRおよびRの少なくとも1つはメチルであり、さらにただし式IではRがヒドロキシであればRはイソ−プロピルである)の少なくとも1種の三環系ジテルペンまたはその誘導体を含有する、請求項1に記載の食品または医薬組成物。
【請求項3】
式IおよびIIの三環系ジテルペンおよびその誘導体が、カルノシン酸、カルノシン酸12−メチルエーテル、7−オキソカリトリシン酸、トタロール、16−ヒドロキシトタロール、トタロール−19−カルボン酸メチルエステル、20−デオキソ−カルノソール、7−メチルロスマノール、セージョン、8,11,13−アビエタトリエン−11,12,20−トリオール、ロイルエアノン酸、およびフェルギノールからなる群から選択され、好ましくは三環系ジテルペンがカルノシン酸または7−オキソカリトリシン酸であり、より好ましくはそれがカルノシン酸である、請求項1に記載の食品または医薬組成物。
【請求項4】
乳製品(ヨーグルト)などの食物の形態の、シリアルバー、およびケーキおよびクッキーなどのベーカリー製品などの強化食物の形態の、錠剤、丸薬、顆粒、糖衣丸、カプセル、および発泡性製剤などの栄養補助食品の形態の、清涼飲料、スポーツ飲料、果汁、レモネード、ニアウォーター飲料、茶およびミルクベース飲料などの非アルコール飲料の形態の、スープおよび乳製品(ミューズリー飲料)などの液体食物の形態の、請求項1〜3のいずれか一項に記載の食品組成物。
【請求項5】
抗うつ薬、気分/活力改良剤、ストレス緩和剤、病状改良剤、不安低下剤、強迫性行動低下剤、弛緩薬、睡眠改良剤および/または不眠症軽減薬としての、請求項1〜4のいずれか一項に記載の食品組成物、または請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
薬物として使用するための請求項1〜3のいずれか一項に記載の式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはその誘導体。
【請求項7】
損なわれた神経伝達と関係がある障害を治療するための薬物として使用するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはその誘導体。
【請求項8】
抗うつ薬、気分/活力改良剤、ストレス緩和剤、病状改良剤、不安低下剤、強迫性行動低下剤、弛緩薬、睡眠改良剤および/または不眠症軽減薬として使用するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはその誘導体。
【請求項9】
損なわれたまたは低下した神経伝達と関係がある障害を治療するための組成物の製造のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式IおよびIIの三環系ジテルペンまたはその誘導体の使用。
【請求項10】
組成物が抗うつ薬、気分/活力改良剤、ストレス緩和剤、病状改良剤、不安低下剤、強迫性行動低下剤、弛緩薬、睡眠改良剤および/または不眠症軽減薬である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の式IおよびIIで表される効果的な用量の三環系ジテルペンおよび/またはその誘導体を、それを必要とするヒトを含む動物に投与するステップを含んでなる、ヒトを含む動物において損なわれた神経伝達と関係がある障害を治療する方法。
【請求項12】
動物がヒト、愛玩動物または家畜である請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−509925(P2010−509925A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537544(P2009−537544)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010132
【国際公開番号】WO2008/061754
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】