説明

ごみ焼却炉用発電設備及びその制御方法

【課題】 余剰蒸気を熱利用設備に有効利用して発電設備全体のエネルギー効率を向上させつつ、タービントリップ発生時にも安全なごみ焼却炉用発電設備及びその制御方法を提供する。
【解決手段】 余剰蒸気発生時、高圧蒸気の一部を低圧蒸気溜めへ逃がすことにより蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力を所定値に保持しつつ、発電機の発電量が最大値に近づくように抽気蒸気の抽気量を制御するとともに、該抽気量の変動により低圧蒸気溜め内の圧力が変動した時に低圧蒸気溜め内の圧力を所定圧力範囲内に保持するように低圧蒸気溜めへ逃がす高圧蒸気の蒸気量を制御し、蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が所定値より高い所定上限値を超える場合に、タービンバイパスラインを開くとともに、ボイラーから蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が上限設定値以下となるようにタービンバイパスラインの蒸気量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却炉用発電設備の制御システム及び制御方法に係り、詳しくは、余剰蒸気を有効利用するためのごみ焼却炉用発電設備及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ焼却炉の廃熱を利用して発電するごみ焼却炉用発電設備は、一般の火力発電所と同様の機器で構成されており、蒸気を作動流体とするランキンサイクルを行うため、図3に示すように、主要機器として、焼却炉(不図示)で発生するごみの燃焼熱を吸収し圧力、温度の高い蒸気を発生するボイラー1及び過熱器2、蒸気の持つエネルギーを動力に変換する蒸気タービン3、蒸気タービン3に駆動されて電力を発生する発電機4、及び、蒸気タービン3で仕事を終えた圧力の低い蒸気を再び水に戻す低圧蒸気復水器5を備える。更に、ごみ焼却炉用発電設備は、付帯設備として、ボイラー給水ポンプ6、脱気器7、脱気器給水ポンプ8、蒸気式空気予熱器9、復水タンク10、蒸気タービン3から抽気した蒸気熱を利用する脱気器7や給湯設備や暖房設備などの余熱利用設備11、エコノマイザー12、高圧蒸気溜め13、低圧蒸気溜め14などを備える。
【0003】
ごみ焼却炉に付設される発電設備においては、一般に低質ごみから高質ごみに対応した発電設備を設置する必要がある。
【0004】
そのため、例えば、蒸気タービン3を最も発生蒸気量の多い高質ごみに合わせて設計し、低質ごみから高質ごみ時に発生する蒸気を全て蒸気タービンに飲み込ませるようにすると、年間を通じて最も出現頻度が高いと想定される基準ごみ程度のごみを焼却した場合、蒸気タービンは低負荷運転となり、発電出力や発電効率が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、図4に示すように、蒸気タービン3を基準ごみ或いは基準ごみよりやや高めのごみ質に合わせて設計し、余剰蒸気が発生した場合は、バイパスライン15を通じて低圧蒸気復水器5にて全量復水する構成のごみ焼却炉用発電設備が提案されている。しかしながら、この場合、余剰蒸気の持つエネルギーは大気に放出され、有効に利用されないという問題がある。
【0006】
そこで、図5及び図6に示されているように、蒸気タービン3に蒸気を供給する高圧蒸気供給ライン16における蒸気量が蒸気タービン3の最大飲み込み量を超えると、余剰蒸気の一部又は全部を脱気器7や余剰熱利用設備11等の熱利用設備にて有効利用し、蒸気タービン3の抽気蒸気の量を減らすことにより、発電機4の出力を増加させることを目的としたごみ焼却炉用発電設備が提案されている(特許文献1等)。
【0007】
図5のごみ焼却炉用発電設備では、余剰蒸気発生時には、抽気蒸気制御弁Vdを閉じ、余剰蒸気熱利用制御弁Vaを開き、余剰蒸気熱利用ライン17を通じて低圧蒸気溜め14へ蒸気を送る。低圧蒸気溜め14に送られた余剰蒸気は、余熱利用設備11及び脱気器7等の熱利用設備で有効に利用される。熱利用設備で利用される以上の余剰蒸気がある場合は、タービンバイパス制御弁Vbを開き、熱利用設備で利用される以上の余剰蒸気をタービンバイパスライン18を通じて低圧蒸気復水器5にて復水する。余剰蒸気を熱利用設備にて利用する分、抽気ライン19からの抽気蒸気を減らすことができ、発電機4の出力を増加することができ、場合により可能最大発電量を得ることができる。
【0008】
図6のごみ焼却炉用発電設備では、余剰蒸気発生時には、抽気蒸気制御弁を閉じ、余剰蒸気熱利用制御弁Va、Vfを開き、タービンバイパスライン20a、余剰蒸気熱利用ライン21を通じて低圧蒸気溜め14へ蒸気を送る。低圧蒸気溜め14に送られた余剰蒸気は、余熱利用設備11及び脱気器7等の熱利用設備で有効に利用される。熱利用設備で利用される以上の余剰蒸気がある場合は、タービンバイパス制御弁Vbを開き、タービンバイパスライン20bを通じて熱利用設備で利用される以上の余剰蒸気を低圧蒸気復水器5に逃がして復水する。余剰蒸気を熱利用設備にて利用する分、抽気ライン19からの抽気蒸気量を減らすことができ、蒸気タービン発電機4の出力を増加することができ、場合により可能最大発電量を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−284018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図5に示したごみ焼却炉用発電設備は、場合により可能最大発電量を得ることができるが、可能最大発電量を得ていない場合もあり、発電効率は必ずしも良くない。
【0011】
また、蒸気タービン3が稼働している状態での運転は可能であるが、蒸気タービンがトリップし急激にタービンバイパス蒸気量が増えた場合、余剰蒸気熱利用制御弁Vaを急開して余剰蒸気熱利用ライン17を通じて低圧蒸気溜め14に大量のタービンバイパス蒸気を送り、次いで、タービンバイパス制御弁Vbを急開して低圧蒸気溜め14に流れ込んだ大量の蒸気をタービンバイパスライン18を通じて低圧蒸気復水器5へ送る。この場合、余剰蒸気熱利用制御弁Vaとタービンバイパス制御弁Vbの流量特性及び動作特性が異なるため、両弁間にある低圧蒸気溜め14内の圧力が変動する。低圧蒸気溜め14内の圧力が変動すると、低圧蒸気溜め14の後段に設置されている機器の圧力も変動し、各所で安全弁(不図示)が作動したり、脱気器圧力が変動する恐れがある。
【0012】
図6に示すごみ焼却炉用発電設備でも、場合により可能最大発電量を得ることができるが、可能最大発電量を得ていない場合もあり、発電効率は必ずしも良くない。また、蒸気タービン3が稼働している状態での運転は可能であるが、タービントリップ時は余剰蒸気熱利用制御弁Va及びタービンバイパス制御弁Vbを急開し、タービンバイパスライン20a、20bを通じて大量のタービンバイパス蒸気を低圧蒸気復水器5へ送ることとなる。この場合、余剰蒸気熱利用制御弁Vaとタービンバイパス制御弁Vbの流量特性及び動作特性が異なるため、両弁間の配管内圧力が変動し、余剰蒸気熱利用制御弁Vfの入口圧力が変動する。余剰蒸気熱利用制御弁Vfの入口圧力が変動すると余剰蒸気熱利用制御弁Vf後段の低圧蒸気溜め14の圧力も変動する。低圧蒸気溜め14内の圧力が変動すると、低圧蒸気溜め14の後段に設置されている機器の圧力も変動し、各所で安全弁(不図示)が作動したり、脱気器圧力が変動する恐れがある。
【0013】
そこで、本発明は、蒸気タービンに供給される蒸気量が蒸気タービンの最大飲み込み量を超えた時にはその余剰蒸気を余熱利用設備や脱気器加熱等の熱利用設備に有効利用しつつ最大発電量を得て発電設備全体のエネルギー効率を向上させるとともに、タービントリップが発生した場合でも安全弁を作動させるような危険な状態を回避することのできる、ごみ焼却炉用発電設備及びその制御方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るごみ焼却炉用発電設備は、ごみ焼却炉の廃熱を利用するボイラーと、前記ボイラーからの高圧蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンによって発電する発電機と、前記蒸気タービンを通過した低圧蒸気を復水する復水器と、前記高圧蒸気の一部及び前記蒸気タービンの抽気蒸気を供給可能に接続された低圧蒸気溜めと、該低圧蒸気溜めの蒸気の熱を利用する熱利用設備と、前記ボイラーからの高圧蒸気を前記蒸気タービンを迂回させて前記復水器に供給可能に接続するタービンバイパスラインと、蒸気量制御装置と、を備え、前記高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めに供給可能に接続する余剰蒸気熱利用ラインと前記タービンバイパスラインとが別系統とされ、前記蒸気量制御装置は、前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が所定値を超える場合に、該高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めへ逃がすことにより前記蒸気タービンに供給される前記高圧蒸気の圧力を前記所定値に保持しつつ、前記発電機の発電量が最大値に近づくように前記抽気蒸気の抽気量を制御するとともに、前記抽気量の制御に伴う抽気量の変動により前記低圧蒸気溜め内の圧力が変動した時に前記低圧蒸気溜め内の圧力を所定圧力範囲内に保持するように前記低圧蒸気溜めへ逃がす高圧蒸気の蒸気量を制御し、前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記所定値より高い所定上限値を超える場合に、前記タービンバイパスラインを開くとともに、前記ボイラーから前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記上限設定値以下となるように前記タービンバイパスラインの蒸気量を制御することを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るごみ焼却炉用発電設備の制御方法は、ごみ焼却炉の廃熱を利用するボイラーと、前記ボイラーからの高圧蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンにより発電する発電機と、前記蒸気タービンを通過した低圧蒸気を復水する復水器と、前記高圧蒸気の一部及び前記蒸気タービンの抽気蒸気を供給可能に接続された低圧蒸気溜めと、該低圧蒸気溜めの蒸気の熱を利用する熱利用設備と、前記ボイラーからの高圧蒸気を前記蒸気タービンを迂回させて前記復水器に供給可能に接続するタービンバイパスラインと、を備え、前記高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めに供給可能に接続する余剰蒸気熱利用ラインと前記タービンバイパスラインとが別系統とされたごみ焼却炉用設備の制御方法であって、前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が所定値を超える場合に、該高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めへ逃がすことにより前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力を前記所定値に保持しつつ、前記発電機の発電量が最大値に近づくように前記抽気蒸気の抽気量を制御するとともに、該抽気量の変動により前記低圧蒸気溜め内の圧力が変動した時に前記低圧蒸気溜め内の圧力を所定圧力範囲内に保持するように前記低圧蒸気溜めへ逃がす高圧蒸気の蒸気量を制御し、前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記所定値より高い所定上限値を超える場合に、前記タービンバイパスラインを開くとともに、前記ボイラーから前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記上限設定値以下となるように前記タービンバイパスラインの蒸気量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蒸気タービンに供給される高圧蒸気が蒸気タービンの最大飲み込み量を超えることにより、蒸気タービンに供給される圧力が所定値を超えた場合に、発電量を指標として蒸気タービンの抽気量を調整することで、蒸気タービンの抽気蒸気量を減少或いはゼロにしてその蒸気を蒸気タービン排気側へ流すことによって蒸気タービン発電機の発電量を増加させるとともに、発生する余剰蒸気の一部又は全部を低圧蒸気溜めを介して熱利用設備に供給するので、余剰蒸気を有効利用し、発電設備全体のエネルギー効率を向上させることができるとともに、タービントリップ時等においては、余剰蒸気熱利用ラインとは別系統のタービンバイパスラインを通じて高圧蒸気を逃がすので、余剰蒸気利用ラインの安全弁を作動させるような危険な状態を回避することができる。
【0017】
従来では蒸気タービンの最大飲み込み蒸気量は、ごみ質等の変動に伴う蒸発量の変動を考慮し、平均的に処理されるごみ(基準ごみ)に余裕を見込んだごみ質(例えば基準ごみの10%増)をタービン設計ごみ質として設定することが多かったが、本発明によれば、余剰蒸気が発生しても蒸気タービンによる発電機の発電量を増加させることができるので、蒸気タービン最大飲み込み蒸気量を基準ごみ程度で設計することが可能となり、その結果、蒸気タービンを従来よりコンパクトに設計でき、しかも基準ごみでの発電効率を向上させる設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るごみ焼却炉用発電設備の一実施形態を示すシステム図である。
【図2】図1のごみ焼却炉用発電設備の制御フローチャートである。
【図3】従来のごみ焼却炉用発電設備の一形態を示すシステム図である。
【図4】従来のごみ焼却炉用発電設備の他の形態を示すシステム図である。
【図5】従来のごみ焼却炉用発電設備の更に他の形態を示すシステム図である。
【図6】従来のごみ焼却炉用発電設備の更に他の形態を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るごみ焼却炉用発電設備およびその制御方法について、以下に図1及び図2を参照して説明する。なお、上記従来例を通じ、同様の構成部分には同符号を付した。
【0020】
図1に示すように、ごみ焼却炉用発電設備は、図外焼却炉の廃熱を利用するボイラー1と、ボイラー1と高圧蒸気供給ライン16で接続された蒸気タービン3と、蒸気タービン3により発電する発電機4と、発電機4の発電量を検出する発電量検出器Gと、蒸気タービン3と復水ライン22で接続された復水器5と、高圧蒸気供給ライン16に介在された高圧蒸気溜め13と、高圧蒸気溜め13と余剰蒸気熱利用ライン17で接続された低圧蒸気溜め14と、低圧蒸気溜め14と接続された脱気器7や給湯設備や暖房設備などの余熱利用設備11などの熱利用設備と、高圧蒸気供給ライン16と復水ライ22とを接続するタービンバイパスライン15と、蒸気タービン3から抽気して抽気蒸気を低圧蒸気溜め14に供給する抽気ライン19と、余剰蒸気熱利用ライン17に介在された余剰蒸気熱利用制御弁Vaと、タービンバイパスライン15に介在されたタービンバイパス制御弁Vbと、抽気ライン19に介在された抽気蒸気制御弁Vdと、高圧蒸気供給ライン16の蒸気圧を検出する第1圧力検出器PAと、低圧蒸気溜め14の蒸気圧を検出する第2圧力検出器PBと、第1圧力検出器PA、第2圧力検出器PB、及び発電量検出器Gから検出信号を受け取り、余剰蒸気熱利用制御弁Va、タービンバイパス制御弁Vb、及び抽気蒸気制御弁Vd等を制御する蒸気量制御装置23と、を備えている。余剰蒸気熱利用ライン17とタービンバイパスライン15とは、高圧蒸気溜め13から蒸気供給系統が別系統となっている。
【0021】
高圧蒸気供給ライン16のタービン入口付近には、通常、タービン入口遮断弁Veが設けられる。タービン入口遮断弁Veは、蒸気タービンの回転速度、軸振動、軸受部などに異常が生じた場合等に、図外の中央制御室或いは蒸気タービンが設置されている現場制御盤からの指令により、タービンへの蒸気の流入を遮断し、蒸気タービンを急速に停止させる。なお、蒸気タービンへの蒸気の流入を遮断し、蒸気タービンを急速に停止することを、タービントリップという。
【0022】
余剰蒸気熱利用制御弁Va、タービンバイパス制御弁Vb、及び抽気蒸気制御弁Vdは、開度調整が可能な制御弁、例えば比例制御弁である。
【0023】
蒸気量制御装置23による制御手順を、以下、図2の制御フローチャートを併せて参照しつつ説明する。
【0024】
スタート時、即ち蒸気タービン3が停止している初期状態では、余剰蒸気熱利用制御弁Va及びタービンバイパス制御弁Vbは開いており、タービン入口遮断弁Ve、及び、抽気蒸気制御弁Vdは閉じている。
【0025】
蒸気量制御装置23は、図2(a)に示すように、第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)が、蒸気タービン運転可能下限設定圧力(P0)以上か否かを判断する(ステップS1)。ここで、P0は例えば3.6MPaである。
【0026】
蒸気量制御装置23は、ステップS1において第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)が、蒸気タービン運転可能下限設定圧力(P0)より小さい(即ち、Pa<P0)と判断した場合、前記初期状態を維持する。なお、初期状態では、低圧蒸気溜め14内の蒸気圧力が低圧蒸気だめ14に関連して設定された所定値(P2)となるように、第2圧力検出器PBの検出圧力(Pb)に基づいて、余剰蒸気熱利用制御弁Vaを制御する。この所定値(P2)は、例えば低圧蒸気溜め14の定格圧力であり、例えば0.5MPaである。
【0027】
蒸気量制御装置23は、ステップS1において第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)が、蒸気タービン運転可能下限設定圧力(P0)以上(即ち、Pa≧P0)と判断した場合、検出圧力(Pa)が蒸気タービンに関連して設定された所定値(P1)未満か否かを判断する(ステップS2)。所定値(P1)は、例えばタービン定格圧力であり、例えば3.7MPaである。
【0028】
蒸気量制御装置23は、ステップS2において第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)が所定値(P1)未満(即ち、Pa<P1)と判断した場合、通常運転モードで制御する(ステップS3)。
【0029】
通常運転モードでは、基本操作として、余剰蒸気熱利用制御弁Va及びタービンバイパス制御弁Vbを閉じ、タービン入口遮断弁Veを開く。また、低圧蒸気溜め14内の蒸気圧力(Pb)が所定値(P2)となるように、第2圧力検出器PBの検出圧力(Pb)に基づいて、抽気蒸気制御弁Vdが制御される。
【0030】
高圧蒸気の蒸気量が増し、ステップS2において第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)が所定値(P1)以上(即ち、Pa≧P1)と蒸気量制御装置23が判断した場合、蒸気量制御装置23は運転モードを通常運転モードから余剰蒸気利用運転モードに切り替える(ステップS4)。
【0031】
余剰蒸気利用運転モードでは、蒸気タービン3の最大飲み込み蒸気量を確保しつつ、発電量が最大となる点まで抽気量を少なくし、余剰蒸気熱利用ラインを介して余剰蒸気を熱利用設備に供給するように制御する。
【0032】
なお、蒸気タービン3へ供給される蒸気量は、第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)から導出することができ、蒸気タービンの最大飲み込み蒸気量は、蒸気タービンの定格圧力に対応する蒸気量である。従って、余剰蒸気利用運転モードでは、第1圧力検出器PAの検出圧力(Pa)が、蒸気タービン3の定格圧力以上の圧力を確保しつつ、抽気量を絞り、余剰蒸気熱利用制御弁Vaの開度を増加させて余剰蒸気を低圧蒸気溜め14に供給する。
【0033】
余剰蒸気利用運転モードでは、一旦、初期状態にセットされる。余剰蒸気利用運転モードの初期状態は、通常運転モードと同じ状態、即ち、余剰蒸気熱利用制御弁Va及びタービンバイパス制御弁Vbを閉じ、タービン入口遮断弁Veを開き、低圧蒸気溜め14内の蒸気圧力(Pb)が所定値(P2)となるように抽気蒸気制御弁Vdの開度が制御される状態である。
【0034】
余剰蒸気利用運転モードにおいて、蒸気量制御装置23は、発電量が最大となるように抽気蒸気量を調整するため、先ず、抽気蒸気制御弁Vdの開度を少しだけ所定度合減少させる(ステップS5)。その結果、発電量検出器Gの発電量が増加したか否かを判定し(ステップS6)、発電量が増加した場合、さらに抽気蒸気制御弁Vdの開度を所定度合だけ減少させる。この操作を、発電量が増加しなくなる(即ち、発電量が最大となる)まで行う。
また、ステップS5において抽気蒸気制御弁Vdの開度を減少させた結果、発電量検出器Gが検出する発電量が減少した場合、抽気蒸気制御弁Vdの開度を所定度合増加させる(ステップS7)。その結果、余剰蒸気熱利用制御弁Vaが全閉になったか否かを判定し(ステップS8)、余剰蒸気熱利用制御弁Vaが全閉でなければ、発電量検出器Gの検出する発電量が増加したか否かを判定し(ステップS9)、発電量が増加した場合はステップS7に戻って更に抽気蒸気制御弁Vdの開度を所定度合だけ増加させ、発電量が増加しなかった場合は、ステップS5に戻って抽気蒸気制御弁Vdの開度を減少させる。
【0035】
上記のように抽気蒸気制御弁Vdの開度を調整することで、発電量が最大となるポイントを探すように制御する。
【0036】
ステップS5、S7において抽気蒸気制御弁Vdの開度を増減させることにより、低圧蒸気溜め14内の圧力が増減するが、蒸気量制御装置23は、余剰蒸気熱利用制御弁Vaの開度を調整することにより、低圧蒸気溜め14の検出圧力(Pb)が設定値P2となるように制御される。
具体的には、ステップS5において、抽気蒸気を絞ることにより低圧蒸気溜めに供給される蒸気が減少し低圧蒸気溜め14内の圧力(Pb)が設定値(P2)以下となった場合は余剰蒸気熱利用制御弁Vaの開度を増加する。また、ステップS7において、抽気蒸気量が増加して低圧蒸気溜め14内の圧力(Pb)が設定値(P2)を超えた場合は余剰蒸気熱利用制御弁Vaの開度を減少させる。
【0037】
ステップS7において余剰蒸気熱利用制御弁Vaの開度が減少することにより、ステップS8において余剰蒸気熱利用制御弁Vaが全閉と判定した場合、即ち余剰蒸気量がゼロになった場合は、再びスタート地点に戻り、ステップS1、S2を経て、通常運転モード(ステップS3)又は余剰蒸気利用運転モード(ステップS4)となる。
【0038】
なお、通常運転モード(ステップS3)では、低圧蒸気溜め14の圧力(Pb)は、抽気蒸気制御弁Vdの開度調整により設定値P2となるように制御され、余剰蒸気熱利用制御弁Vaは全閉を基本とするが、蒸気タービン3が部分負荷運転となり、抽気ライン19から供給される抽気蒸気圧が下がると、抽気蒸気制御弁Vdを全開としても低圧蒸気溜め14内の圧力(Pb)が設定値P2より低くなる場合があるので、その場合には、余剰蒸気熱利用制御弁Vaの開度を増加させ、低圧蒸気溜め14に蒸気を供給することで低圧蒸気溜め14の蒸気圧力を設定値P2に戻すように制御する。
【0039】
蒸気量制御装置23は、図2(b)に示すように、タービン入口圧力(Pa)が余剰蒸気利用運転モードの開始条件である設定値(P1)より高い所定上限値としての設定値P3(例えば3.8MPa)以下か否かを判定し(ステップS10)、所定上限値としての設定値P3を超えるとタービンバイパス制御弁Vbの開度を増加させ(ステップS11)、設定値P3より低くなると設定値P3を超えないようにタービンバイパス制御弁Vbの開度を減少させる(ステップS12)。
【0040】
タービントリップ時は、タービン入口遮断弁Veが遮断される。タービン入口遮断弁Veの急閉によりタービン入口圧力(Pa)が急上昇し、設定値(P3)を超えるため、蒸気量制御装置23は、タービンバイパス制御弁Vbを急速に開き(ステップS12)、タービンバイパスライン15を通じて復水器5へバイパス蒸気を逃がす。タービンバイパスライン15は、低圧蒸気溜め14を経由していないため、高圧蒸気をタービンバイパスライン15を介して復水器5に逃がしても、低圧蒸気溜め14の後段に設置されている機器の安全弁(不図示)を作動させず、また、脱気器圧力の変動も抑制し得る。
【符号の説明】
【0041】
1 ボイラー
3 蒸気タービン
5 復水器
13 高圧蒸気溜め
14 低圧蒸気溜め
15 タービンバイパスライン
23 蒸気量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却炉の廃熱を利用するボイラーと、前記ボイラーからの高圧蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンによって発電する発電機と、前記蒸気タービンを通過した低圧蒸気を復水する復水器と、前記高圧蒸気の一部及び前記蒸気タービンの抽気蒸気を供給可能に接続された低圧蒸気溜めと、該低圧蒸気溜めの蒸気の熱を利用する熱利用設備と、前記ボイラーからの高圧蒸気を前記蒸気タービンを迂回させて前記復水器に供給可能に接続するタービンバイパスラインと、蒸気量制御装置と、を備え、前記高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めに供給可能に接続する余剰蒸気熱利用ラインと前記タービンバイパスラインとが別系統とされ、
前記蒸気量制御装置は、
前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が所定値を超える場合に、該高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めへ逃がすことにより前記蒸気タービンに供給される前記高圧蒸気の圧力を前記所定値に保持しつつ、前記発電機の発電量が最大値に近づくように前記抽気蒸気の抽気量を制御するとともに、前記抽気量の制御に伴う抽気量の変動により前記低圧蒸気溜め内の圧力が変動した時に前記低圧蒸気溜め内の圧力を所定圧力範囲内に保持するように前記低圧蒸気溜めへ逃がす高圧蒸気の蒸気量を制御し、
前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記所定値より高い所定上限値を超える場合に、前記タービンバイパスラインを開くとともに、前記ボイラーから前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記上限設定値以下となるように前記タービンバイパスラインの蒸気量を制御することを特徴とする、ごみ焼却炉用発電設備。
【請求項2】
ごみ焼却炉の廃熱を利用するボイラーと、前記ボイラーからの高圧蒸気により駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンにより発電する発電機と、前記蒸気タービンを通過した低圧蒸気を復水する復水器と、前記高圧蒸気の一部及び前記蒸気タービンの抽気蒸気を供給可能に接続された低圧蒸気溜めと、該低圧蒸気溜めの蒸気の熱を利用する熱利用設備と、前記ボイラーからの高圧蒸気を前記蒸気タービンを迂回させて前記復水器に供給可能に接続するタービンバイパスラインと、を備え、前記高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めに供給可能に接続する余剰蒸気熱利用ラインと前記タービンバイパスラインとが別系統とされたごみ焼却炉用設備の制御方法であって、
前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が所定値を超える場合に、該高圧蒸気の一部を前記低圧蒸気溜めへ逃がすことにより前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力を前記所定値に保持しつつ、前記発電機の発電量が最大値に近づくように前記抽気蒸気の抽気量を制御するとともに、該抽気量の変動により前記低圧蒸気溜め内の圧力が変動した時に前記低圧蒸気溜め内の圧力を所定圧力範囲内に保持するように前記低圧蒸気溜めへ逃がす高圧蒸気の蒸気量を制御し、
前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記所定値より高い所定上限値を超える場合に、前記タービンバイパスラインを開くとともに、前記ボイラーから前記蒸気タービンに供給される高圧蒸気の圧力が前記上限設定値以下となるように前記タービンバイパスラインの蒸気量を制御することを特徴とする、ごみ焼却炉用発電設備の制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2393(P2013−2393A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135464(P2011−135464)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】