説明

ねじ鉄筋用取付具

【課題】ねじ鉄筋の軸線方向に対する移動が容易であると共に,簡単な操作で適宜任意の場所でねじ鉄筋上に固定することができる取付具を提供する。
【解決手段】ねじ鉄筋の節形成部73の外径に対して大径に形成された開孔4を有するスリーブ状本体2を有し,該本体2の前記開孔内周に,内周方向に膨出する突部5を形成する。この開孔4に挿入されたねじ鉄筋70と前記本体2を相対的に逆方向に回転させることで,螺旋節71間に突部5が嵌合された係止位置〔図6(A)参照〕と,平面部72,72外周に位置した可動位置〔図6(B)参照〕間で変位させ,移動及び固定を容易に行えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,「ねじ鉄筋」,あるいは「ねじ節鉄筋」と呼ばれる,螺旋状の節が外周に形成された鉄筋(本発明において,「ねじ鉄筋」という。)用の取付具に関し,より詳細には,ねじ鉄筋に取り付けて,該ねじ鉄筋を他部材に固定し,又は他部材をねじ鉄筋に固定等する際に使用する取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎工事等において,コンクリート構造物中に埋設する補強筋として,鉄製の棒を圧延し,表面にリブや節と呼ばれる凹凸の突起を設けた棒状の鋼材である異形鉄筋が一般的に使用されている。
【0003】
このような異形鉄筋において,例えば,長さ方向に複数本の異形鉄筋の連結等を行うために,前述のリブ乃至は節を鉄筋の外周に螺旋状に設けた,前述のねじ鉄筋が使用されており,このねじ鉄筋の外周に形成された螺旋節と螺合する雌ねじが内周に形成された円筒状のカプラーの一端を一のねじ鉄筋の端部に螺合すると共に,他のねじ鉄筋の端部を前記カプラーの他端に螺合することで,二本のねじ鉄筋の端部間を容易に連結することができるように構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
なお,ねじ鉄筋の外周に対して他の部材を取り付ける場合には,ねじ鉄筋に直接,他の部材を溶着するか,又は他の部材を取り付けるための接続具等を溶着し,これに他部材を取り付けることが一般に行われているが,溶着によらずにねじ鉄筋の外周と他部材間を固着する方法も提案されており,一例として,鋼管杭90の杭頭に,溶接によらずねじ鉄筋70を取り付け可能と成す接続具100として,ねじ鉄筋70と螺合する雌ねじが内周に設けられた円筒部101に,ボルト孔103の形成されたフランジ状の取付部102を設け,この取付部102を杭頭部の外周にボルト止めすると共に,円筒部101の内周にねじ鉄筋を螺合することで,ねじ鉄筋70を溶接等することなく杭頭部に取り付け可能としたものも提案されている(特許文献2:図13参照)。
【0005】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開2003−278316号公報
【特許文献2】特開平10−245855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように構成されたねじ鉄筋70にあっては,前述したようにその端部間の連結はカプラー等を使用することで比較的容易に行うことができるものの,このねじ鉄筋70の端部以外の箇所に他の部材を取り付けようとする場合には,以下のような問題点があった。
【0007】
ねじ鉄筋70の外周に対して直接他部材を溶着し,あるいは,ねじ鉄筋70の外周に他部材を固定するための接続具を直接溶着する方法にあっては,ねじ鉄筋70の外周上の適宜任意の場所にこれらを取り付けることができる点で便利ではあるものの,一旦取り付けが完了した後には,例え微調整であっても取付位置を移動させることができず,取り付けに際しては細心の注意が必要であると共に,正確さと熟練が要求される。
【0008】
また,この種のねじ鉄筋は,10m以上の長さでは,撓んでしまうため,ねじ鉄筋の長さ方向で,複数の他部材を取り付ける作業には極めて煩雑な作業を要した。
【0009】
また,高強度鋼製のねじ鉄筋70を使用する場合,このような高強度鋼は製造工程における熱処理やその際の温度管理等によって組織のミクロ化や析出物の制御を行って高強度化を得ているのが一般的であるために,ねじ鉄筋70に対して直接溶接を行うと,溶接の際の熱による影響で,このようにして高強度化のために与えられた組織や構造が消失してしまう場合が多く,その結果,溶接部分における強度が低下して,溶接部分を介して破断等が生じ易くなる。
【0010】
一方,特許文献2として紹介した前掲の接続具100のように,内周に前記ねじ鉄筋70と螺合する雌ネジが形成された円筒部101を設け,この円筒部101内にねじ鉄筋70を螺合することで,溶着等を行うことなく比較的容易にねじ鉄筋70の外周に取り付けるように構成した場合には(図13参照),溶接によらずに取り付けを行うことが可能であり,その結果,ねじ鉄筋70が高強度鋼である場合であっても,溶接の際の熱による強度低下等の問題が生じないものとなっている。
【0011】
また,クラウト等を注入して位置が固定される迄は,これを移動させて取付位置の微調整等も行うことができるものとなっており,前述したように直接溶接を行う際の問題を解消することができるものとなっている。
【0012】
しかし,前記構成の接続具では,これをねじ鉄筋70の軸線方向に移動させようとすると,接続具100を先ずねじ鉄筋70の端部に螺合した後,この接続具とねじ鉄筋70とを相対的に逆方向に回転させながら,螺旋の噛み合いによって僅かな距離ずつ移動させて目的の位置に取り付ける必要があり,この作業が繁雑であると共に,特に,長尺のねじ鉄筋70の中央寄りの位置まで接続具を移動させる作業には,多大な時間と労力が必要となる。
【0013】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,取付具によりねじ鉄筋70の外周に他部材を取り付ける構成を採用するものであり,従って直接溶着する場合の弊害を回避することができるものでありながら,ねじ鉄筋70の軸線方向に対する取付具の移動が容易であり,ねじ鉄筋70の外周上における適宜任意の場所に容易に固定することができ,しかも,一旦取り付けが完了した後であっても,その取付位置を変更することもできる取付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明のねじ鉄筋70用の取付具1は,
例えば,円柱の外周を長さ方向に連続して切り欠いて形成した,直径方向で対峙する平行な平面を成す平面部72,72を有する所定長さの前記円柱の平面部72,72を除く外周に,所定の螺旋軌道で螺旋節71が形成された節形成部73,73とを備えたねじ鉄筋70の外周に取り付ける取付具1であって,
前記節形成部73,73における前記ねじ鉄筋70の外径に対して大径に形成された開孔4を有し,前記ねじ鉄筋70を回転可能に収容するスリーブ状の本体2を有し,
前記ねじ鉄筋70の収容時における該ねじ鉄筋70と本体2との相対的に逆方向の回転により,前記螺旋節71間に嵌合して前記ねじ鉄筋70の軸線方向に対する前記本体2の相対的な移動を規制する係止位置〔図6(A)参照〕と,前記ねじ鉄筋70の平面部72,72外周に位置して前記ねじ鉄筋70の軸線方向に対する前記本体2の相対的な移動を可能とする可動位置〔図6(B)参照〕間で相対的に変位する突部5を,前記本体2の開孔4内に内周方向に突設したことを特徴とする(請求項1)。
【0015】
前記構成の取付具1は,さらに,前記係止位置において前記本体2の開孔4の内周と前記ねじ鉄筋70の平面部72間に圧挿される固定片6を備えたものとしても良い(請求項2)。
【0016】
さらに,前記本体2に他部材を取り付けるための取付部3を設けた構成としても良い(請求項3)。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明の構成より,本発明の取付具1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0018】
ねじ鉄筋70と前記本体2との相対的に逆方向の回転により,可動位置と係止位置間で両者の位置関係を調整することで,可動位置〔図6(B)参照〕では取付具1をねじ鉄筋70の軸線方向に移動させることができると共に,適宜任意に移動させた位置において係止位置〔図6(A)参照〕に回転させることで,ねじ鉄筋70の軸線方向における取付具1の位置を固定することができ,溶接によらずにねじ鉄筋70の外周上の適宜任意の位置に取り付けることができると共に,移動,係止が容易である取付具を得ることができた。
【0019】
取付具3に対する他部材の取り付けは,例えば前述したスリーブ状の本体2の外周に直接,他部材を溶着する等して取り付けても良いが,前記本体2に,他部材を取り付けるための例えば耳片等の取付部3を設け,この取付部3を介して他部材の取り付けを行うことで,例えばこの取付部3にボルト孔31等を設ける等しておくことにより,本体2と他部材との溶着等によらず,より簡単な方法で他部材の取り付けを行うことができる取付具1を得ることができた。
【0020】
さらに,前記係止位置〔図6(A)参照〕において,前記本体2の開孔4の内周と前記ねじ鉄筋70の平面部72間に圧挿される固定片6を備えた構成にあっては,この固定片6の圧挿によりねじ鉄筋70と取付具1とが相対的に逆方向に回転しないように固定することができ,これによりねじ鉄筋70の軸線方向における取付具1の取付位置を固定することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に,本発明の実施形態について添付図面を参照しながら以下説明する。
【0022】
ねじ鉄筋
本発明の取付具1を説明するに先立ち,まず,この取付具1が取り付けられるねじ鉄筋70の構成について説明する。
【0023】
本発明の取付具1の取付対象となるねじ鉄筋70は,図12に示すようにその外周に形成された節(螺旋節71)が,このねじ鉄筋70の全長に亘り共通の螺旋軌道上に形成されており,このねじ鉄筋70の一端側よりナット等を螺合させてこれを回転すると,ねじ鉄筋70の外周に螺合したナットが,ねじ鉄筋70の軸線方向に移動して最終的には他端まで移動させることができるようになっている。
【0024】
このねじ鉄筋70には,その外周の一部が切り欠かれて,並行を成す一組の平面部72,72が形成されており,この平面部72,72によってレンチ等のヘッド部分にねじ鉄筋70を挿入することで,ねじ鉄筋70をレンチのヘッド内に回転させることなく挟持,固定することができるように構成されている。
【0025】
なお,本明細書において,前述のようにねじ鉄筋70の外周部分において,前述のようにして形成された一対の平面部分を「平面部」と,この平面部の形成部分を除き,前述した螺旋節が形成されている部分を「節形成部」として説明する。
【0026】
取付具
本発明の取付具1は,以上で説明したようなねじ鉄筋70に使用され,ねじ鉄筋70に対して取り付けて,このねじ鉄筋70に他部材を取り付ける際の基台となるものであり,開孔4内にねじ鉄筋70を挿入することにより,ねじ鉄筋70の外周に取り付けられるスリーブ状の本体2を備え,図1〜4に示す実施形態にあっては,この本体2に対して他部材を取り付けるための取付部3を,本体より突出形成している。
【0027】
図1〜4に示す実施形態にあっては,この取付部3として円筒状の本体2の両端開口縁より同一平面上で各々反対方向に突出した耳片3,3を設け,この耳片3,3を介して他部材の取り付けを行うことができるように構成しているが,取付部3は必ずしも設ける必要はなく,前述のように例えばスリーブ状の本体2の例えば外周に直接溶着等によって他部材を取り付けても良く,その構成は図示の実施形態に限定されない。
【0028】
このスリーブ状の本体2は,その内径を前述の節形成部73におけるねじ鉄筋70の外径よりも僅かに大きく形成されており,ねじ鉄筋70をこの本体2の開孔4内に挿入することができるように構成されている。
【0029】
この本体2の内周には,図2に示すように内周方向に突出する突部5が設けられ,この突部5を螺旋状に形成された前述の螺旋節71間に嵌合することで,ねじ鉄筋70の長さ方向における取付具1の位置が固定され,取付具1のねじ鉄筋70の長さ方向への移動を規制する。
【0030】
この突部5を図1〜4に示すように複数箇所に亘って設ける場合には,複数の突部5をねじ鉄筋70に形成された螺旋節71の捩れ角と同一角度となるように配列して設け,形成された全ての突部5が,同時に,該部に外嵌したねじ鉄筋70の螺旋節71間の間隔に嵌合されるように構成する。
【0031】
なお,本実施形態にあっては,突部5の形状を例えば図3に示す平面形状において円形に形成しているが,この構成に代えて,図5に示すように内周方向に膨出する突条として形成しても良く,ねじ鉄筋70の螺旋節間の各間隔内に嵌合してねじ鉄筋70の軸線方向に対する移動を規制可能なものであれば,如何なる形状に形成しても良い。
【0032】
この突部5は,図2及び図6に示すように,本体2の円周方向全周に亘って設けることはせず,これを円周方向に間欠的に設けることで,取付具1をねじ鉄筋70を中心として所定角度で相対的に逆方向に回転させることで,突部5を螺旋節71間に嵌合した係止位置〔図6(A)参照〕と,平面部の外周に位置した可動位置〔図6(B)参照〕間で変位させることができるように構成されている。
【0033】
本実施形態にあっては,図6(A)中に補助的に記載した二点鎖線で示すように,取付具1の本体2を,その軸芯を中心として円周方向に90度ずつの等間隔で4等分した際,このうちの対向する一対の区分の範囲内にのみ突部5が形成されるようにその形成位置を調整して,各突部5がねじ鉄筋70各螺旋節71の節間に嵌合された係止位置から,ねじ鉄筋70を軸芯を中心に90度回転させることにより,この突部がねじ鉄筋70の節間より抜け出して,平面部72の外周位置に相対的に移動することにより,ねじ鉄筋70の螺旋節71間と突部5との係合が解除されて,取付具1をねじ鉄筋70の軸線方向に移動させることができるようになっている。
【0034】
このような取付具1のスリーブ状の本体2は,一例として金属板を湾曲加工して円筒状に丸めることによって形成することができ,このようにして円筒状に加工する前の金属板の状態を図7に示す。
【0035】
図7に示す実施形態にあっては,本体1となる矩形状の部分と,取付部となる耳片3を一体的に形成した金属板に,突部5となる半球状の突起を,例えばプレス成形等によって形成したもので,この金属板を長さ方向に筒状に湾曲させると共に,長さ方向の両端を成す二辺を突き合わせて溶着,その他の方法で接合して円筒状に形成する。
【0036】
前述の耳片3には,図3〜5に示すように,本実施例にあっては該耳片3の突出方向を長さ方向とする長孔状のボルト孔31を形成し,このボルト孔31を介して挿入されたボルトを,取付対象とする他部材に形成されたボルト孔に挿入すると共に先端部分にナット等を螺合することにより,又は取付対象とする他部材に直接溶着したナットに螺合し,又は他部材に立設したボルトにナットを螺合する等して,この取付具1を他部材に取付可能としている。
【0037】
〔使用方法〕
以上,図1〜7を参照して説明した取付具1の使用方法の一例を,図8及び図9を参照して説明する。
【0038】
図8に示す鉄筋籠80は,例えば鋼管杭の中空空間内に軸線方向に挿入されてコンクリート内に埋設されて補強筋となるもので,この鉄筋籠80の縦筋として,複数本(図示の実施形態にあっては4本)のねじ鉄筋70を使用すると共に,これら複数本のねじ鉄筋70の外周側に配置され,これらを束ねるフープ筋81と,前記複数のねじ鉄筋70の内周側において前記ねじ鉄筋70と連結されるフラットバー82を交互に配置した構成であり,これにより全体として円筒状を成す鉄筋籠80として構成されている。
【0039】
前述のフラットバー82は,帯板状の金属板の長さ方向両端を連結して無端環状に形成したもので,このフラットバー82の外周上にねじ鉄筋70を取り付けるために,図1〜7を参照して説明した前述の取付具1が使用される。
【0040】
この取付具1による鉄筋籠80の組み立てに際しては,前述の取付具1を耳片3を介して予め前述のフラットバー82の外周上の所定の位置に,図示の実施例では円周方向に90度毎の等間隔で取り付ける。
【0041】
前記耳片3に形成されたボルト孔31は,長孔状に形成されていることから,ボルトを緩めた状態では,このボルト孔31の長さに対応して取付具1をフラットバー82上で移動させることができ,取り付け位置の調整等が行えるように構成しても良い。
【0042】
そして,前記フープ筋81の開孔内に通したねじ鉄筋70を,前記フラットバー82の外周に取り付けた取付具1の本体2内に前記突部5と螺旋節71とが干渉しないよう挿入し〔図9(A)〕,この作業を繰り返して所定数のフープ筋81及びフラットバー82を取り付ける。
【0043】
必要に応じてねじ鉄筋70とフープ筋81とは,これを鉄線等で結束して取付位置にずれが生じないように固定する。
【0044】
このようにして,取付具1の本体2内に挿入された前述のねじ鉄筋70は,これをレンチ等を使用して90度回転させると,ねじ鉄筋70の外周に形成された螺旋節71間に,取付具1のスリーブ状の本体内周に膨出した前述の突部5が嵌合して,ねじ鉄筋70を前記取付具1の本体2内より抜き取ることができなくなる〔図9(B)〕。
【0045】
このようにして,ねじ鉄筋70の螺旋節71と,取付具1の突部5とが嵌合した状態で,ねじ鉄筋70の平面部72と取付具1の本体内周間に金属板等によって構成される固定片6を挿入し,これによりねじ鉄筋70の回転止めをして,取付具1に係止されたねじ鉄筋70の抜け止めを行う〔図9(C)〕。
【0046】
このようにして回転止めがされた取付具1の開孔4内には,さらに必要に応じてグラウトを注入する等してより強固に固定するものとしても良い。
【0047】
このようにして,使用本数分のねじ鉄筋70を取付具1のスリーブ状に形成された本体2内に抜き取り不能に固定して,図8に示すような鉄筋籠の組み立てが完了し,組み立てられた鉄筋籠80は,中空杭の中空空間内に挿入されてこの中空空間内でコンクリート中に埋設されて一体化し,該中空杭の補強材等として使用される。
【0048】
このように,取付具1を介してフラットバー82をねじ鉄筋70に取り付けることにより,溶接によらずに両者の固着を行うことができることから,ねじ鉄筋70が溶接熱の影響を受けることはなく,ねじ鉄筋70が高強度鋼製である場合であっても,接合部分において強度低下が生じることがない。
【0049】
また,ねじ鉄筋70の軸線方向に取付具1を移動させるに際してねじ鉄筋70又は取付具1を長時間に亘り連続的に回転させる必要がないことから,その取り付けが容易である。
【0050】
その他の実施例
以上で説明した取付具1にあっては,スリーブ状の本体2と,ねじ鉄筋70に取り付けられる他部材を固定するための取付部として,前述した耳片3を設け,かつ,この耳片3を前記本体2と一体的に形成した例について説明したが,ねじ鉄筋70に対して他部材を取り付ける前記取付部3の構成は,図1〜7を参照して説明した前述の耳片3の構成に限定されず,ねじ鉄筋70に対して取り付けられる部材の形状,及びねじ鉄筋70の用途等,実施に対応して,各種の構成に適宜変更が可能である。
【0051】
図10に示す取付具1は,ねじ鉄筋70を鋼管杭90の上端縁に仮止めするために使用形態を例示したものであり,このようにして杭頭に取り付けられたねじ鉄筋70は,この杭頭上に構築される構造物の基礎内に突設されて,この基礎内に埋設される補強筋等と連結されて,基礎杭と基礎間を連結するために使用される。
【0052】
鋼管杭の杭頭部に対して杭頭上に構築される構造物の基礎中に埋設される補強筋を取り付ける場合,一例として図11に示すように,建て込みが完了した鋼管杭上に,上端縁に前述の補強筋が取り付けられた比較的短尺の鋼管杭90を載置,溶着することにより取り付けられる。
【0053】
このように,杭頭部を構成する短尺の鋼管杭90の取り付けに際しては,この鋼管杭90と,この鋼管杭90内に挿入された鉄筋籠80とが共にクレーン等で吊るされて,建て込み済みの鋼管杭内に挿入され,この杭頭部内に生コンを打設して杭頭部を強化することが行われるが,この鋼管杭90の上端縁に,上方に突出する補強筋の全てを予め溶着してしまうと,この鋼管杭90内に鉄筋籠80を挿入する際,取り付け済みの補強筋が鉄筋籠80と干渉して挿入作業が困難となることから,前記補強筋の全部,又は一部(図11に示す実施例にあっては,4本中の2本)については,これを溶着することなく本発明の取付具1で仮止めしておき,鉄筋籠80の挿入時にはこれを除去,又は位置をずらせておくと共に,その後,再度仮止めして溶着することで,鋼管90に対する鉄筋籠の挿入を比較的容易に行うことができるように構成した。
【0054】
このように,補強筋を鋼管の上端縁に仮止めするための本実施例の取付具1は,図10に示すように図1〜図7を参照して説明した実施例の取付具1における本体2と同様の構成の本体2を備えている点では共通しているが,図1〜図7を参照して説明した取付具1にあっては,他部材の取付部として,前記本体2と一体的に形成された耳片3を備えるものであったのに対し,本実施例の取付具1にあっては,本体に対して溶着された金属板によって,この取付部3を形成している。
【0055】
この取付部3は,本実施形態にあっては,前記本体2の外周に溶着された固着板32と,この固着板32に対して平行を成す平行板33間を,前記両板体に対して直交方向を成す連結板34で連結して,全体をアングル状とし,本体2内に挿入されたねじ鉄筋70と前記平行板33間に,鋼管杭90の杭頭部における開口縁を挿入可能に構成した(図10参照)。
【0056】
なお,前述したようにスリーブ状の本体2を直接,前記取付部3の平行板33に溶着した図示の構造に代えて,前記図1〜7を参照して説明した取付具1同様,前記本体2の開孔縁より突出する耳片を形成しておき,この耳片に形成したボルト孔31を介して前記固着板32にボルト止めなどしても良い。
【0057】
以上のようにして本体2に取り付けられた取付部3の前記平行板33には,ボルト孔35が形成されていると共に,このボルト孔35内に,先端を前記ねじ鉄筋70に向けて突出するボルト36を挿入乃至は螺合して,このボルト36の先端で鋼管製既製杭の内周を押圧して,ボルト先端とねじ鉄筋70間で鋼管の肉厚を挟持することにより,この鋼管に対してねじ鉄筋70を仮止めすることができるように構成されている。
【0058】
なお,前記平行板33に形成されたボルト孔35には,該ボルト孔35の位置に対応してナットを溶着等しておいても良く,又は,ボルト36の突出端側よりナットを螺合して,このナットと平行板33との当接によりナットの後退を規制して,既製杭の外周面にこれを当接するように構成しても良い。
【0059】
このようにして,鋼管製の杭頭上端開口部に,本発明の取付具1によって仮止めされたねじ鉄筋70は,前記ボルト36の締め,緩めにより着脱,乃至は取付位置の移動が容易であると共に,本体2内に挿入されたねじ鉄筋70は,その螺旋節71間に,本体2内周より膨出した突部5が嵌合した係止状態から,このねじ鉄筋70を90度回転させて,螺旋節71間より前記突部5が脱落した状態とすると,このねじ鉄筋70を軸線方向に移動させることができ,これによりねじ鉄筋70の突出長さの調整が比較的容易である。
【0060】
以上のように,ねじ鉄筋70の突出長を調整すると共に,鋼管上端縁に対する取り付け位置を決定して仮止めした状態で,ねじ鉄筋70を鋼管外周に溶着する。
【0061】
鋼管に対するねじ鉄筋70の溶着後,前記取付具1はこれを取り外して回収しても良く,又は取付具を取り付けたまま,その後に行われるコンクリートの打設等の作業を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】取付具の正面図。
【図2】取付具の左側面図。
【図3】取付具の平面図。
【図4】取付具の低面図。
【図5】突部の変更例を示す取付具の平面図。
【図6】ねじ鉄筋の取付状態における取付具の軸直交方向の断面図であり,(A)は係止位置,(B)は可動位置をそれぞれ示す。
【図7】湾曲加工により取付具となる金属板の平面図。
【図8】本発明の取付具を使用して組み立てた鉄筋籠の斜視図。
【図9】ねじ鉄筋に対する取付具の取付工程の説明図であり,(A)は取付具にねじ鉄筋を挿入する工程,(B)はねじ鉄筋を停止位置に回転させる工程,(C)は固定片により回転を係止する工程。
【図10】本発明の別の取付具の使用状態を示す説明図。
【図11】図10の取付具を使用して杭頭補強の施工状態を示す説明図。
【図12】ネジ鉄筋の説明図であり,(A)は正面図,(B)は(A)のB−B線断面図。
【図13】従来の接続具の使用状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0063】
1 取付具
2 本体(取付具の)
3 取付部(耳片又は金属板)
31,35 ボルト孔
32 固着板
33 平行板
34 連結板
36 ボルト
4 開孔
5 突部
6 固定片
70 ねじ鉄筋
71 螺旋節
72 平面部
73 節形成部
80 鉄筋籠
81 フープ筋
82 フラットバー
90 鋼管杭
100 接続具
101 円筒部
102 取付部
103 ボルト孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径方向で対峙する平行な平面を成す平面部を有する所定長さの円柱の前記平面部を除く前記円柱外周に,所定の螺旋軌道で螺旋節が形成された節形成部を備えたねじ鉄筋に対してその外周に取り付ける取付具であって,
前記節形成部における前記ねじ鉄筋の外径に対して大径に形成された開孔を有すると共に,前記ねじ鉄筋を回転可能に収容するスリーブ状の本体を有し,
前記ねじ鉄筋の収容時における該ねじ鉄筋と前記本体との相対的に逆方向の回転により,前記螺旋節間に嵌合して前記ねじ鉄筋の軸線方向に対する前記本体の相対的な移動を規制する係止位置と,前記ねじ鉄筋の平面部外周に位置して前記ねじ鉄筋の軸線方向に対する前記本体の相対的な移動を可能とする可動位置間で変位する突部を前記本体の開孔内に内周方向に突設したことを特徴とするねじ鉄筋用の取付具。
【請求項2】
前記係止位置における前記本体の開孔内周と前記ねじ鉄筋の平面部間に圧挿される固定片を備えることを特徴とする請求項1記載のねじ鉄筋用取付具。
【請求項3】
前記本体に他部材を取り付けるための取付部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のねじ鉄筋用取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−2076(P2009−2076A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165045(P2007−165045)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(506019290)株式会社播磨商事 (7)
【出願人】(506019304)
【Fターム(参考)】