説明

ばね鋼線の製造方法及び製造装置

【課題】一度形成された酸化被膜が剥離することが少ないばね鋼線の製造装置を提供すること。
【解決手段】第1加熱コイル31で第1加熱工程を実施し、この第1加熱工程で加熱された線材1をそれより高い温度で第2加熱コイル32により再度加熱する第2加熱工程を実施する。第2加熱コイル31と冷却装置4との間のインライン上を通過する線材1にガス供給装置8から水蒸気と二酸化炭素とを略同時に投入する。これにより、酸化被膜の線材の母材からの剥離が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材を加熱コイルによって加熱した後に冷却するばね鋼線の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ばね鋼線を製造するために、巻戻しスタンドから巻戻される線材に加熱装置及び冷却装置を用いて焼入れ、及び焼戻しを施して巻取りスタンドへ巻き取ることが行われる。
焼入れ焼戻しされたばね鋼線をコイルばね形状に成形するために、コイリングマシンを用いる。このコイリングマシンでは、ばね鋼線の進行方向を複数のフインガ−ピンにより順次偏向させるよう案内してコイル状に巻回するが、鋼線とフインガ−ピンとの間に焼きつき現象が発生する。焼きつき現象が発生すると、巻回速度が不均一となるため仕上がったコイルばね形状が精密に所定とならず、製品寸法、従って、ばね定数、ばね特性にばらつきが生じることになる等、種々の問題がある。
【0003】
この問題を解決するために、巻戻しスタンドから巻戻される線材に加熱・冷却手段を用いた焼入れ、及び焼戻しを順次施して巻取りスタンドへ巻き取るばね鋼線の熱処理工程において、焼入れ用の急速加熱手段を通過した線材が急冷手段に至るまでの間に過熱水蒸気雰囲気内を通過するようにし、昇温した線材が表層全周に均一な所定厚みのFe3O4を主成分とした酸化被膜(スケール)を形成した従来例がある(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特公平6−2933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来例では、所望の酸化被膜を形成することができるが、巻取りスタンドへ線材をコイル状に巻回する際に、線材に曲げ応力がかかると、線材の表面に形成された酸化被膜が剥離するという課題が生じる。
線材がコイル状に巻回される際に、線材の表面に付着した酸化被膜が剥離すると、母材が露出することになり、線材がコイリングマシンとの間で焼きつくという不具合が生じる。
【0006】
本発明の目的は、一度形成された酸化被膜が剥離することが少ないばね鋼線の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のばね鋼線の製造方法は、加熱コイルによる加熱工程とこの加熱工程の後に実施される冷却工程とを備えたばね鋼線の製造方法において、前記加熱工程と前記冷却工程との間で前記線材を水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内において前記線材に酸化被膜をインラインにて形成することを特徴とする。
【0008】
本発明のばね鋼線の製造装置は、加熱コイルと冷却装置とがインライン上に配置されたばね鋼線の製造装置において、前記加熱コイルと前記冷却装置との間のインライン上を通過する線材に酸化被膜を形成するために水蒸気と二酸化炭素とを供給するガス供給装置と、このガス供給装置で供給された水蒸気と二酸化炭素とを前記線材の周囲に封止する封止部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
この構成の発明によれば、加熱コイルを用いて線材に加熱工程を実施した後、この線材を、冷却装置を用いた冷却工程を実施する前において、加熱工程で加熱された線材にガス供給装置から水蒸気と二酸化炭素とを封止部材に供給し、この封止部材の内部で線材を水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内に置く。線材を水蒸気の雰囲気下におくことによって、線材の表層全周に酸化被膜を形成し、しかも、二酸化炭素の雰囲気下におくことによって、この酸化被膜が線材の母材に確実に付着することになるので、酸化被膜の線材の母材からの剥離が少なくなる。
【0010】
ばね鋼線の製造方法の発明において、前記加熱工程は、前記線材を加熱する第1加熱工程と、この第1加熱工程で加熱された線材を再度加熱する第2加熱工程とを備え、前記第2加熱工程と前記冷却工程との間で線材を、水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内に略同時にする構成としてもよい。
ばね鋼線の製造装置の発明において、前記加熱コイルは、前記線材を加熱する第1加熱コイルと、この第1加熱コイルで加熱された線材を再度加熱する第2加熱コイルとを備え、前記ガス供給装置は前記第2コイルと前記冷却装置との間を通過する線材に水蒸気と二酸化炭素とを供給する構成としてもよい。
【0011】
この構成の発明では、線材の加熱を2段階にすることで、焼入れ温度を短時間で高温にすることができる。そのため、十分に加熱された線材を水蒸気と二酸化炭素との雰囲気下に置くことができるので、酸化被膜の形成を迅速に行うことができる。
【0012】
さらに、ばね鋼線の製造方法の発明において、前記第1加熱工程は前記線材を900℃以上の温度で前記線材を加熱するものであり、前記第2加熱工程は前記第1加熱工程の加熱温度より50℃〜100℃高い温度で前記線材を加熱する構成が好ましい。
この構成の発明では、低温、例えば、700℃で加熱する場合に比べて酸化被膜の生成量が多い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態にかかるばね鋼線の製造装置の概略を示す図である。
図1において、ばね鋼線の製造装置は、加工対象の線材1が予め巻き取られている巻戻しスタンド2と、この巻戻しスタンド2から巻戻される線材1を洗浄する洗浄装置(図示せず)と、この洗浄装置で洗浄された線材1を加熱する加熱装置3と、この加熱装置3で加熱された線材1を冷却する冷却装置4と、この冷却装置4で冷却された線材1を焼き戻しする焼戻しコイル5と、この焼戻しコイル5で焼き戻された線材1を冷却する冷却ジャケット6と、冷却ジャケット6で冷却した線材1を巻き取る巻取りスタンド7と、加熱装置3と冷却装置4との間を通過する線材1にガスを供給するガス供給装置8とを備えている。
線材1は、炭素鋼や合金鋼等、ばね鋼線に適した材料から形成されている。ばね鋼線の製造装置には線材1を送る送り機構(図示せず)が設けられており、この送り機構によって線材1が所定速度、例えば、70mm/sec〜350mm/secで移動する。
巻戻しスタンド2及び巻取りスタンド7は従来と同じ構造である。
【0014】
加熱装置3は、線材1を焼入れのために加熱するもので、第1加熱コイル31と、この第1加熱コイル31で加熱された線材1を再度加熱する第2加熱コイル32とを備えている。これらの第1加熱コイル31及び第2加熱コイル32は、図示しない電源と接続されている。この電源は図示しない制御装置に接続され、この制御装置によって第1加熱コイル31及び第2加熱コイル32に通電する電圧を制御することで、加熱温度が調整される。
第1加熱コイル31と第2加熱コイル32との間には送りロール10が配置されている。このロール10と第1加熱コイル31との間にはシールドパイプ11が配置され、ロール10と第2加熱コイル32との間にはシールドパイプ12が配置されている。これらのシールドパイプ11,12の内部は空気が遮断されており、かつ、線材1が挿通される。これらのシールドパイプ11,12には必要に応じて水蒸気等が導入される。
【0015】
冷却装置4は、従来と同様の構造であり、その内部に線材1が通過することで、加熱装置3で加熱された線材1を冷却するものである。
焼戻しコイル5は線材1を焼き戻すために加熱するもので、図示しない電源と接続されている。この電源は図示しない制御装置に接続され、この制御装置によって焼戻しコイル5に通電する電圧を制御する。
冷却ジャケット6は焼戻しコイル5で加熱された線材1を再度冷却させるものであり、その内部を線材1が通過することで、線材1が冷却される。
【0016】
冷却装置4と第2加熱コイル32との間には封止部材としてのシールドパイプ13が配置されている。このシールドパイプ13は、その内部空間で空気が遮断されており、かつ、線材1が挿通される。
焼戻しコイル5と冷却ジャケット6との間にはシールドパイプ14が配置されている。このシールドパイプ14は、その内部空間で空気が遮断されており、かつ、線材1が挿通される。
ガス供給装置8は、シールドパイプ13の内部に水蒸気を供給する水蒸気供給ライン81と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給ライン82とを備えている。
【0017】
水蒸気供給ライン81は、蒸気発生装置810と、この蒸気発生装置810に一端が接続され他端がシールドパイプ13に開口される水蒸気供給管811と、この水蒸気供給管811に流通する水蒸気の流量を調整する流量調整弁812と、水蒸気供給管811から分岐され先端がシールドパイプ14に開口される分岐管813と、この分岐管813流通する水蒸気の流量を調整する流量調整弁814とを備えている。
水蒸気発生装置180はボイラ等で水を沸騰させて水蒸気を発生させるものであり、この水蒸気発生装置180で発生した水蒸気を、所定の流量、例えば、62リットル/分〜310リットル/分(水換算で50cc/分〜250cc/分)で水蒸気供給管811及び分岐管813を通じてシールドパイプ13及びシールドパイプ14に供給する。
本実施形態では、水蒸気発生装置180は、水を水蒸気供給管811及び分岐管813を通じてシールドパイプ13及びシールドパイプ14に供給し、これらのシールドパイプ13及びシールドパイプ14の内部を通る線材1に水が接触し、この水が線材1の温度で気化して水蒸気を発生させるものでもよい。
【0018】
二酸化炭素供給ライン82は二酸化炭素が充填されたボンベ820と、このボンベ820に一端が接続され他端がシールドパイプ13に開口される二酸化炭素供給管821と、この二酸化炭素供給管821に流通する二酸化炭素の流量を調整する流量調整弁822とを備えている。
ボンベ820は二酸化炭素を所定の流量、例えば、10リットル/分〜50リットル/分だけシールドパイプ13の内部に供給する。
図2に拡大して示される通り、水蒸気供給管811と二酸化炭素供給管821とのシールドパイプ13への開口部は近接配置されている。シールドパイプ13の内部は水蒸気と二酸化炭素とが所定時間、例えば、60秒以下封止されるようになっている。
【0019】
次に、本実施形態にかかるばね鋼線の製造方法を説明する。
まず、巻戻しスタンド2から線材1を繰り出し、洗浄装置で洗浄した後、加熱装置3に送る。この加熱装置3によって加熱工程が行われる。
加熱工程は、まず、線材1を第1加熱コイル31で加熱して第1加熱工程を実施し、その後、第2加熱コイル32で第1加熱コイル31での加熱温度より高い温度で再度加熱して第2加熱工程を実施する。ここで、第1加熱工程は線材1を900℃以上の温度で加熱し、第2加熱工程は第1加熱工程の加熱温度より50℃〜100℃高い温度で線材1を加熱する。なお、第1加熱コイル31を通過した線材1は送りロール10で第2加熱コイル32に送られ、この第2加熱コイル32で線材1が再度加熱される。
【0020】
第2加熱コイル32から送られた線材1は第2加熱コイル32と冷却装置4との間に配置されたシールドパイプ13の内部に送られる。ここでは、ガス供給装置8が作動されているので、シールドパイプ13に水蒸気、二酸化炭素が略同時に投入される。これにより、線材1はシールドパイプ13の内部に位置している間は水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内にあることになる。
シールドパイプ13から送られた線材1の表面には均一な所定厚みのFe3O4を主成分とした酸化被膜が形成される。
その後、加熱された線材1は冷却装置4で冷却された後、焼戻しコイル5で焼戻しされる。
焼戻しされた線材1は水蒸気雰囲気下にあるシールドパイプ14を通過した後に冷却ジャケット6に送られ、さらに、巻取りスタンド7で巻き取られる。
【実施例】
【0021】
次に、実施例について説明する。
実施例及び比較例で使用される線材1の化学成分を表1に示し、線材1の構成を表2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
また、熱処理条件として、線材1を190mm/secで送る。
[実施例1]
以上の条件の下、実施例1では、第2加熱コイル32と冷却装置4との間に配置されたシールドパイプ13に水蒸気、二酸化炭素を同時に導入した。第1加熱コイル31における線材1の加熱温度は700℃であり、第2加熱コイル32における線材1の加熱温度は950℃である。焼戻しコイル5と冷却ジャケット6との間に配置されたシールドパイプ14に水蒸気を導入した。冷却ジャケット6で冷却された線材1を所定長さに渡って切断し、試験片とした。
[実施例2]
実施例2は、実施例1とは第2加熱工程の温度が相違するのみで他の条件は実施例1と同じである。つまり、実施例2では、第1加熱コイル31における線材1の加熱温度は700℃であり、第2加熱コイル32における線材1の加熱温度は1000℃である。
【0025】
[実施例3]
実施例3は、実施例1とは第1加熱工程の温度が相違するのみで他の条件は実施例1と同じである。
つまり、実施例3では、第1加熱コイル31における線材1の加熱温度は900℃であり、第2加熱コイル32における線材1の加熱温度は950℃である。
[実施例4]
実施例4は、実施例1とは第1加熱工程と第2加熱工程の温度が相違するのみで他の条件は実施例1と同じである。
つまり、実施例4では、第1加熱コイル31における線材1の加熱温度は900℃であり、第2加熱コイル32における線材1の加熱温度は1000℃である。
【0026】
[比較例1]
比較例1は、シールドパイプ11,12,13にそれぞれ窒素を封入した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
[比較例2]
比較例2は、シールドパイプ11に窒素を封入し、シールドパイプ12,13にそれぞれ水蒸気を封入した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
[比較例3]
比較例3は、シールドパイプ11,12にそれぞれ窒素及び黒鉛粉を封入し、シールドパイプ13に窒素を封入した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
[比較例4]
比較例4は、シールドパイプ11,12にそれぞれ窒素及び黒鉛粉を封入し、シールドパイプ13に水蒸気を封入した例である。それ以外の条件は実施例1と同じである。
[比較例5]
比較例5は、シールドパイプ13に二酸化炭素及び黒鉛粉を同時に導入した。それ以外は実施例1と同じである。
以上において説明した実施例1〜4及び比較例1〜5の条件を表3に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
[実験結果]
試験片に付着した酸化被膜(スケール)の厚さを光学顕微鏡で測定した。表4は実施例1〜4及び比較例1〜5で測定された酸化被膜の厚さを示す。
試験片を直角に折り曲げ、酸化被膜の付着性を目視で評価した。
比較例1,2は、いずれも試験片の折曲部分を中心として酸化被膜の剥離が多く認められた。比較例4も酸化被膜の剥離が認められた。比較例3は比較例1,2,4に比べて少ないものの、酸化被膜の剥離が認められた。比較例5も試験片の折曲部分を中心に酸化被膜の剥離が多く認められた(表4において「×」で示す)。
これに対して、実施例1〜4はいずれも酸化被膜の剥離が比較例1〜4に比べて極めて少ない。特に、試験片の折曲部分に形成された酸化被膜の色調変化も非常に少ない。
実施例1,2は試験片の直線部分に形成された酸化被膜の色調は若干の剥離で僅かに変化しているが、その影響が少ない(表4において「○」で示す)、実施例3,4は直線部分の色調変化は直線部分と同様に少ない(表4において「◎」で示す)。
【0029】
【表4】

【0030】
また、酸化被膜の剥離状況を確認するために、内径2D巻き付け実験を実施した。この実験は、試験片の直径の2倍の軸に試験片自体を巻き付け、その際の酸化被膜の剥離が許容できる範囲にあるか否かを確認するものである。この実験を複数行い、この複数回の実験のうち、剥離量が多くて許容範囲外にある確率が評価基準である。
水蒸気と二酸化炭素とをシールドパイプ13に同時投入した実験例では、剥離率が20〜50%であった。これに対して、水蒸気をシールドパイプ13に投入した比較例では、剥離率が60〜90%であった。
【0031】
以上の実施例により、本実施形態では、次の作用効果を奏することができる。
(1)第2加熱コイル32を用いて線材1に加熱工程を実施した後、この線材1を冷却装置4を用いた冷却工程を実施する前において、加熱工程で加熱された線材1にガス供給装置8から水蒸気と二酸化炭素とをシールドパイプ13に供給し、このシールドパイプ13の内部で線材1を水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内に置く構成とした。そのため、線材1の表層全周に酸化被膜が形成され、しかも、二酸化炭素の雰囲気下におくことによって、この酸化被膜が線材1の母材に確実に付着することになるので、酸化被膜の母材からの剥離を少なくすることができる。
【0032】
(2)加熱工程を、第1加熱コイル31で実施する第1加熱工程と、この第1加熱工程で加熱された線材をそれより高い温度で第2加熱コイル32により再度加熱する第2加熱工程とから構成し、第2加熱工程と冷却工程との間で、線材1に水蒸気と二酸化炭素とを略同時に投入した。そのため、線材1の加熱を2段階にすることで、1段で加熱工程を行う場合に比べて、焼入れ温度を短時間(例えば、60秒以下)で迅速に高温にすることができることになり、酸化被膜の形成を迅速に行うことができる。
【0033】
(3)第1加熱工程は線材1を900℃の温度で加熱し、第2加熱工程は線材1を950℃〜1000℃で加熱することで、700℃で線材1の第1加熱工程を実施した場合に比べて酸化被膜の生成量をより多くできる。
【0034】
〔変形例〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、焼入れのための加熱工程を、第1加熱工程と第2加熱工程の2段階から構成したが、本発明では、3段階、あるいは4段階以上から構成したものでもよい。
【0035】
さらに、封止部材はシールドパイプ13から構成したが、他の部材、例えば、内部が中空の球体から構成してもよい。
また、前記実施形態では、送られる線材1の上流側から二酸化炭素を投入し、下流側から水蒸気を投入したが、本発明では、これらの二酸化炭素及び水蒸気が略同時に投入されるものであれば、その投入の前後を問わず、例えば、送られる線材1の上流側から水蒸気を投入し、下流側から二酸化炭素を投入するものであってもよい。さらに、両気体の投入割合は適宜設定される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ばね鋼線の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るばね鋼線の製造装置の概略構成図。
【図2】前記実施形態の要部を示す概略図。
【符号の説明】
【0038】
1…線材、2…巻戻しスタンド、3…加熱装置、4…冷却装置、7…巻取りスタンド、8…ガス供給装置、31…第1加熱コイル、32…第2加熱コイル、13…シールドパイプ(封止部材)、11,12,14…シールドパイプ、81…水蒸気供給ライン、82…炭酸供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱コイルによる加熱工程とこの加熱工程の後に実施される冷却工程とを備えたばね鋼線の製造方法において、
前記加熱工程と前記冷却工程との間で前記線材を水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内において前記線材に酸化被膜をインラインにて形成することを特徴とするばね鋼線の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたばね鋼線の製造方法において、
前記加熱工程は、前記線材を加熱する第1加熱工程と、この第1加熱工程で加熱された線材を再度加熱する第2加熱工程とを備え、前記第2加熱工程と前記冷却工程との間で前記線材を水蒸気と二酸化炭素との雰囲気内に略同時に置くことを特徴とするばね鋼線の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載されたばね鋼線の製造方法において、
前記第1加熱工程は前記線材を900℃以上の温度で前記線材を加熱するものであり、前記第2加熱工程は前記第1加熱工程の加熱温度より50℃〜100℃高い温度で前記線材を加熱することを特徴とするばね鋼線の製造方法。
【請求項4】
加熱コイルと冷却装置とがインライン上に配置されたばね鋼線の製造装置において、
前記加熱コイルと前記冷却装置との間のインライン上を通過する線材に酸化被膜を形成するために水蒸気と二酸化炭素とを供給するガス供給装置と、このガス供給装置で供給された水蒸気と二酸化炭素とを前記線材の周囲に封止する封止部材と、を有することを特徴とするばね鋼線の製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたばね鋼線の製造装置において、
前記加熱コイルは、前記線材を加熱する第1加熱コイルと、この第1加熱コイルで加熱された線材を再度加熱する第2加熱コイルとを備え、前記ガス供給装置は前記第2コイルと前記冷却装置との間を通過する線材に水蒸気と二酸化炭素とを供給することを特徴とするばね鋼線の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−308719(P2008−308719A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156557(P2007−156557)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】