説明

めっき金属の充填方法及びめっき金属の充填装置

【課題】基板の絶縁層の一面側に開口する複数個の微細孔の各々に、所望厚さの金属層が充填できたことを確認して、電解めっきを終了するめっき金属の充填方法を提供する。
【解決手段】基板14の金属層20と定電流源26の陰極とを電気的に接続すると共に、基板14の微細孔開口面と一面側が対向する陽極板24と定電流源26の陽極とを電気的に接続し、且つ基板14と別体に形成され、一面側が陽極板24の他面側と対向する位置の陰極板28を、基板14の金属層20と並列接続となるように定電流源26の陰極に電気的に接続した後、基板14の金属層20、陰極板28及び陽極板24に定電流源から直流電流を印加して、基板14の微細孔18内に電解めっきによってめっき金属を充填しつつ、基板14側に流れる電流値を検出してモニタし、前記モニタによって得た基板14側に流れる電流値の経時変化に基づいて、電解めっきを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっき金属の充填方法及びめっき金属の充填装置に関し、更に詳細には絶縁層の一面側に開口され、前記絶縁層の他面側に形成された金属層が底面に露出する複数個の微細孔が形成された基板を、電解めっき槽内に貯留されている電解めっき液に浸漬し、電解めっきによって前記基板の各微細孔内にめっき金属を充填するめっき金属の充填方法及びめっき金属の充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の分野におていは、配線基板を形成する絶縁層に形成した微細孔内に金属を充填してヴィアを形成することが行なわれている。
かかるヴィアを形成する際には、従来、図8に示す様に、絶縁層104の一面側に開口され、絶縁層104の他面側に形成された金属層106の一面側が底面に露出する複数個の微細孔108,108・・が形成された基板110を形成する。この基板110の金属層106の他面側は樹脂層112によって覆われている。
次いで、この基板110を、電解めっき槽100内に貯留されている電解めっき液102内に浸漬すると共に、基板110の微細孔108,108・・が開口されている微細孔開口面と一面側が対向するように陽極板114を電解めっき液102内に浸漬する。
かかる基板110の金属層106を直流電源116の陰極に電気的に接続すると共に、陽極板114を直流電源116の陽極に電気的に接続し、基板110の金属層106及び陽極板114に一定電流値の直流電流を印加して電解めっきを施す。
【0003】
この電解めっきでは、図9(a)に示す様に、絶縁層104の一面側に開口された微細孔108,108・・の各底面に露出する金属層106上にめっき金属層118が充填される。
かかる電解めっきを継続することによって、図9(b)に示す様に、微細孔108がめっき金属層118によって完全に充填される。更に、電解めっきを継続すると、図9(c)に示す様に、めっき金属層118の先端部は絶縁層104の一面側上に突出し、電解めっきの継続時間によれば、図9(d)に示す様に、絶縁層104の一面側上にめっき金属層118から成る大きな突出部を形成する。
図8に示すめっき金属の充填装置では、電解めっきの終了時期を決定すべく、予定していた電解めっき時間の途中で電解めっきを中断し、目視、顕微鏡や段差計等によって微細孔108内でのめっき金属層118による充填程度を観察し、めっき金属層118の充填が充分であると判断した場合は、その電解めっきを終了し、めっき金属層118の充填が不充分であると判断した場合は、電解めっきを再開する。
しかし、予定していた電解めっき時間の途中で電解めっきを中断して、微細孔108内へのめっき金属層118の充填程度を観察する方法では、電解めっきの中断と観察とを繰り返すことを要するため煩雑である。しかも、電解めっきの終了時期の判断を人が行なうため、微細孔108に充填されためっき金属層118の充填量(充填高さ)は、基板110間にバラツキが生じ易い。
このため、微細孔108内にめっき金属層118を形成した基板110の微細孔開口面側の平坦性を担保するには、基板110の微細孔開口面側に充分な研磨を施すことが必要となる。
【0004】
一方、下記特許文献1には、図10に示すめっき金属の充填装置を用いた充填方法が提案されている。図10に示す充填装置では、図8に示す充填装置と同一部材については、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
かかる図10に示す充填装置では、直流電源116の陰極と基板110の金属層106との間に、電流密度調整部120が設けられている。この電流密度調整部120では、三種類の抵抗120a,120b,120cが設けられており、スイッチ120dによって選択される。
図10に示す充填装置を用い、微細孔108,108・・の各々に電解めっきによってめっき金属118を充填する際に、電解めっきを中断してめっき金属層118の厚さを測定し、めっき金属層118の充填速度を算出し、この充填速度に基づいて電流密度を調整すべく、電流密度調整部120のスイッチ120によって適当な抵抗を選択する。
しかし、図10に示す充填装置を用いた充填方法でも、電解めっきを中断してめっき金属層118の厚さを測定するため、その煩雑さは依然として残っている。しかも、既に充填されためっき金属層118の厚さから充填速度を算出するため、微細孔108が深い場合には、算出された充填速度の算出誤差が、その後のめっき金属層118の充填量に大きく影響するおそれもある。
【0005】
また、下記特許文献2には、図11に示すめっき金属の充填装置を用いた充填方法が提案されている。図11に示す充填装置では、図8に示す充填装置と同一部材については、同一番号を付して詳細な説明を省略する。
図11に示す充填装置に用いられる基板110は、微細孔108,108・・が開口された基板110の微細孔開口面に、微細孔108の開口縁に一端が至る検出電極126が形成されている。更に、直流電源116の陰極と基板110の金属層106との間にリレー130が形成され、金属層106と電極126との間に、交流電源135、インピーダンス測定回路136及び抵抗137が直列に接続されている。このインピーダンス測定回路136は、測定されたインピーダンスが所定値未満となったとき、リレー130を開放して電解めっきを停止する。
【特許文献1】特開2001−177238号公報
【特許文献2】特開2001−168524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図11に示すめっき金属の充填装置を用いた充填方法では、微細孔108にめっき金属層118が充填され、検出電極126の微細孔108の開口縁に臨む一端に接触したとき、インピーダンス測定回路136によって測定されるインピーダンスが所定値未満となり、リレー130を開放し、電解めっきを終了する。
かかる充填方法によれば、電解めっきを中断して基板110を取り出すことを要しないため、電解めっきの途中で微細孔108に充填されためっき金属層118の厚さを測定する等の煩雑な作業を中止でき、微細孔108内にめっき金属層118を充填する電解めっきをスムーズに進行できる。
しかしながら、この充填方法では、基板110の微細孔開口面に検出電極126を形成することを要するため、基板110を製造する工程数が増加すると共に、適用できる基板110の種類も限定される。
しかも、検出電極126は、抵抗137によって直流電流が実質的に流れないようにされ、陰極としての金属層106と陽極板114との間に、電解めっき回路から独立して設けられているため、バイポーラ現象によって、検出電極126にめっき金属が析出したり或いは析出しためっき金属が溶解したりする懸念が存在する。
そこで、本発明の課題は、適用できる基板の種類を限定することなく、基板の絶縁層の一面側に開口する複数個の微細孔の各々に、電解めっきによって所望厚さのめっき金属層が充填できたことを確認して、電解めっきを終了するめっき金属の充填方法及びその充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく検討した結果、所定電流の直流電流を流す定電流源の陽極に電解めっき液に浸漬した陽極板を電気的に接続すると共に、定電流源の陰極に電解めっき液に浸漬した基板の金属層と陰極板とを並列接続となるように電気的に接続し、定電流源から直流電流を基板の金属層、陰極板及び陽極板に印加して電解めっきを施す際に、基板の金属層に印加される直流電流の電流値をモニタしていると、基板の絶縁層の一面側に開口する微細孔内に充填しためっき金属層の金属面が絶縁層の一面側に到達したとき、基板の金属層に流れる直流電流の電流値が急激に増加することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、絶縁層の一面側に開口され、前記絶縁層の他面側に形成された金属層が底面に露出する複数個の微細孔が形成された基板を、電解めっき槽内に貯留されている電解めっき液に浸漬し、電解めっきによって前記基板の各微細孔内にめっき金属を充填する際に、該電解めっき液に浸漬した前記基板の金属層と定電流源の陰極とを電気的に接続すると共に、前記微細孔が開口する基板の微細孔開口面と一面側が対向するように電解めっき液に浸漬した陽極板と前記定電流源の陽極とを電気的に接続し、且つ前記基板と別体に形成し、一面側が前記陽極板のいずれかの面と対向する位置に電解めっき液に浸漬した陰極板を、前記基板の金属層と並列接続となるように前記定電流源の陰極に電気的に接続した後、前記基板の金属層、陰極板及び陽極板に定電流源から直流電流を印加して、前記基板の微細孔内に電解めっきによってめっき金属を充填しつつ、前記基板の金属層に流れる電流値を直接的又は間接的に検出してモニタし、前記モニタによって得た基板の金属層に流れる電流値の経時変化に基づいて、前記電解めっきを停止することを特徴とするめっき金属の充填方法にある。
【0009】
また、本発明は、絶縁層の一面側に開口され、前記絶縁層の他面側に形成された金属層が底面に露出する複数個の微細孔が形成された基板を、電解めっき槽内に貯留されている電解めっき液に浸漬し、電解めっきによって前記基板の各微細孔内にめっき金属を充填するめっき金属の充填装置において、該基板の微細孔が開口された微細孔開口面と一面側が対向するように、前記電解めっき槽内の電解めっき液に浸漬された陽極板と、前記基板の金属層が陰極と電気的に接続されていると共に、前記陽極板が陽極と電気的に接続されている定電流源と、前記基板と別体に形成され、一面側が前記陽極板のいずれかの面と対向する位置に電解めっき液に浸漬されていると共に、前記定電流源の陰極に前記基板の金属層と並列接続となるように電気的に接続された陰極板と、前記基板の金属層、陰極板及び陽極板に前記定電流源から直流電流を印加し、前記基板の微細孔内に電解めっきによってめっき金属を充填する際に、前記基板の金属層に流れる電流値を直接的又は間接的に検出する電流検出装置と、前記電流検出装置によって検出された電流値をモニタするモニタ装置とを具備し、前記モニタ装置によって得られた、前記基板の金属層に流れる電流値の経時変化に基づいて、前記電解めっきを停止する電解めっき停止手段が設けられていることを特徴とするめっき金属の充填装置でもある。
【0010】
かかる本発明において、電解めっきの停止を、基板の金属層に流れる電流値が急激に増加開始した時点で行なうことによって、絶縁層の微細孔開口面が平坦な基板を得ることができる。
この電解めっきの開始及び停止を、基板の金属層、陰極板及び陽極板への定電流源からの直流電流を印加して電解めっきを開始し、前記直流電流の印加を遮断して電解めっきを停止するスイッチによって容易に行なうことができる。
また、陰極板としては、基板に形成された微細孔の開口面積の合計よりも大面積の陰極板を用いることによって、微細孔内に緻密なめっき金属層を形成できる。
更に、定電流源と基板の金属層との間及び前記定電流源と陰極板との間に電流計を設置することによって、基板の金属層に流れる電流値を正確に測定できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定電流の直流電流を流す定電流源の陽極に電解めっき液に浸漬した陽極板を電気的に接続すると共に、定電流源の陰極に電解めっき液に浸漬した基板の金属層と陰極板とを並列接続となるように電気的に接続して電解めっきを施す。
かかる電解めっきにおいて、定電流源から所定電流の直流電流が基板の金属層と陰極板とに印加された直後では、基板の電流が流れる面積は、各微細孔の底面に露出する金属層の露出面であるため、陰極板側に流れる電流値が基板の金属層に流れる電流値(以下、基板側に流れる電流値と称することがある)よりも大となる。
かかる直流電流の印加を継続していると、次第に各微細孔の底面に露出する金属層の露出面に積層されるめっき金属層が厚くなり、めっき金属層の金属面が絶縁層の一面側に到達したとき、基板側の電流が流れる面積が急激に拡大し、基板側に流れる電流値が急激に増大する。
基板側に流れる電流値が急激に増大した時点で、電解めっきを終了する場合には、絶縁層の微細孔開口面側が平坦な基板を得ることができる。
一方、基板側に流れる電流値が急激に増大した時点から更に電解めっきを所定時間継続すると、絶縁層の微細孔開口面側にめっき金属層が突出した基板を得ることができる。
この様に、本発明によれば、基板側に流れる電流値の経時変化に基づいて電解めっきを終了できるため、微細孔内に充填しためっき金属層の厚さ等に関して基板間のバラツキを可及的に少なくできる結果、得られた基板の微細孔開口面側の研磨等を不要又は著しく軽減できる。
また、本発明では、基板の絶縁層の微細孔開口面側に検知電極を形成することを要しないため、基板の絶縁層の微細孔開口面側に検知電極を形成することが困難な基板の微細孔にもめっき金属を充填できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るめっき金属の充填装置の一例を図1に示す。図1に示す充填装置の電解めっき槽10に貯留された電解めっき液12に浸漬されている基板14は、絶縁層16の一面側に開口され、絶縁層16の他面側に形成された金属層20の一面側が底面に露出する複数個の微細孔18,18・・が形成されている。かかる金属層20の他面側は、樹脂層22によって覆われている。この基板14は、シリコン基板を利用して形成できる。先ず、シリコン基板を貫通する複数個の微細孔18,18・・を形成した後、シリコン基板の一面側に銅箔等の金属箔を接着剤によって接着して金属層20を形成し、次いで、金属層20の露出面をソルダレジスト等の樹脂層22によって覆うことによって基板14を形成できる。
【0013】
得られた基板14と陽極板24とを電解めっき槽10に貯留されている電解めっき液12内に浸漬する。その際に、基板14の微細孔18,18・・が開口されている微細孔開口面を陽極板24の一面側と対向するように、基板14と陽極板24とを位置決めする。
かかる陽極板24と定電流源26の陽極とを電気的に接続すると共に、基板14の金属層20と定電流源26の陰極とを電気的に接続する。この陽極板24としては、微細孔18に充填するめっき金属の種類によって異なるが、銅を充填する場合には、銅板を用いることが好ましい。
また、図1に示す充填装置では、陽極板24の他面側と対向する様に、陰極板28を電解めっき液12内に浸漬し、基板14の金属層20と並列接続となるように定電流源26の陰極と電気的に接続する。
この定電流源26とは、出力電流が一定の直流電流を出力する電源のことであり、出力電流の設定値を所望の電流値に設定できる。
陰極板28としては、使用する電解めっき液に溶解し難く且つ微細孔18に充填するめっき金属に置換され難い金属から成る金属板を用いることができる。ここで、電解めっき液として硫酸が添加された電解銅めっき液を用い、微細孔18内に銅を充填しようとする場合には、白金、銅合金又はステンレスから成る陰極板28を用いることができる。
かかる陰極板28の大きさは、基板14の微細孔18,18・・の開口面積の合計面積よりも大面積、特に3〜10倍の面積とすることによって、微細孔18内に緻密なめっき金属層を充填できる。
かかる陰極板28の設置によって、定電流源26からの出力電流のうち、微細孔18,18・・のめっき金属の充填に必要な電流は基板14の金属層20に流れるが、めっき金属の充填に用いられなかった電流は陰極板28に流れる。このため、基板14の金属層20に流れる電流値(以下、基板14側に流れる電流値と称することがある)を測定することによって、めっき金属の充填に必要な電流値を測定できる。更に、基板14側に流れる電流値を、めっき金属の充填に必要な電流値を超えて流れることを防止でき、過剰電流による焼けめっき現象等も防止できる。
【0014】
図1に示す充填装置では、基板14の金属層20と定電流源26の陰極との間及び陰極板28と定電流源26の陰極との間には、基板14側に流れる直流電流値を直接的に検出する電流計30aが設けられていると共に、陰極板28と定電流源26の陰極との間にも、陰極板28側に流れる電流値を検出する電流計30bが設けられている。この様に、電流計30a,30bを設けることによって、定電流源26から基板14に至る間の抵抗値と、定電流源26から陰極板28に至る間の抵抗値を略等しくすることができ、基板14に形成した微細孔108のめっき金属層による充填程度を正確に検出できる。
更に、基板14側に流れる電流値を検出する電流計30aには、電流計30aで検出した電流値をモニタするモニタ装置32が設けられており、基板14側に流れる電流値の経時変化を測定できる。
【0015】
また、図1に示す充填装置には、モニタ装置32によって得られた、基板14側に流れる電流値の経時変化に基づいて、電解めっきを停止する電解めっき停止手段が設けられている。
かかる電解めっきの停止手段としては、定電流源26から基板14の金属層20及び陰極板28への直流電流の印加を同時にON−OFFできる位置に設けたスイッチ31である。
図1に示す充填装置を用い、スイッチ31をONにして電解めっきを施し、基板14の微細孔18,18・・にめっき金属を充填した。この際に、モニタ装置32によってモニタした基板14側に流れる電流値の経時変化と、微細孔18に充填されためっき金属層38の厚さとの関係を調査して、その結果を図2のグラフに示す。
【0016】
図2に示すグラフでは、縦軸に基板14側に流れる電流値を示し、横軸にはめっき時間を示す。
かかるグラフによれば、電解めっき開始してから暫くは、基板14側に流れる電流値がめっき時間の経過と共に徐々に増加する。この期間内では、微細孔18に充填されためっき金属層38の表面は、図2の基板14の部分断面図(a)(b)に示す様に、微細孔18内に位置する。このため、微細孔18内のめっき金属層38の厚さが厚くなるに従ってめっき面積が徐々に拡大して、基板14側に流れる電流値が徐々に増加するものと考えられる。
かかる期間内に電解めっきを停止すると、微細孔18は充分にめっき金属によって充填されておらず、絶縁層16の微細孔開口面に凹部が形成される。従って、電解めっきを停止する時期を調整することによって、所望深さの凹部が絶縁層16の微細孔開口面に形成された基板14を得ることができる。
【0017】
更に、電解めっきを続行すると、基板14側に流れる電流値が急激に増加する。この時点では、図2の部分断面図(c)に示す様に、微細孔18に充填されためっき金属層38の表面は絶縁層16の微細孔開口面と面一となっている。従って、この時点で電解めっきを停止することによって、絶縁層16の微細孔開口面が平坦面に形成された基板14を得ることができる。
この様に、微細孔18に充填されためっき金属層38の表面が絶縁層16の微細孔開口面と面一となったとき、基板14側に流れる電流値が急激に増加する現象は、電解めっきに関与するめっき面積が急激に拡大するためと考えられる。
基板14側に流れる電流値が急増する状態で電解めっきを続行すると、図2の部分断面図(d)に示す様に、めっき金属層38の先端部は絶縁層16の微細孔開口面から突出して突出部を形成する。従って、基板14側に流れる電流値が急激に増加する時点から所定時間経過後に電解めっきを停止すると、所望高さの突出部を具備するめっき金属層38が形成された基板14を得ることができる。
【0018】
かかる図2から明らかな様に、モニタ装置32によって検出された基板14側に流れる電流値の経時変化と微細孔18に充填されるめっき金属層38の厚さとが密接に関連する。このため、図1に示す充填装置を用いて基板14の微細孔18,18・・にめっき金属を充填する際に、モニタ装置32により検出された基板14側に流れる電流値の経時変化に、微細孔18内に所望厚さのめっき金属層38が形成された場合に対応する電流値の経時変化が出現したとき、スイッチ31をOFFにして電解めっきを停止することによって、微細孔18,18・・の各々に所望の厚さのめっき金属層38を形成できる。
特に、基板14側に流れる電流値が急激に増加する時点[図2(c)の状態]は明確であるため、別の基板14を用いても再現性も良好である。このため、基板14側に流れる電流値が急激に増加する時点で電解めっきを停止すると、微細孔18に充填しためっき金属層38の厚さについて基板14間のバラツキを可及的に小さくできる。
【0019】
図1に示す充填装置では、基板14と陰極板28との間に陽極板24を配設したが、図3に示す様に、基板14を形成する絶縁層16の微細孔開口面と対向する陽極板24の対向面と対向するように、陰極板28を配設してもよい。
図3に示す充填装置では、図4に示す様に、基板14と陰極板28との間に仕切板41を設けることによって、基板14の電流分布の乱れを可及的に少なくでき好ましい。
また、図1に示す充填装置では、基板14の金属層20と定電流源26の陰極との間に電流計30aを設置していると共に、陰極板28と定電流源26の陰極との間にも電流計30bを設置しているが、電流計30a,30bのいずれか一方を設置することであってもよい。
但し、陰極板28と定電流源26の陰極との間のみに電流計30bを設置する場合には、モニタ装置32によってモニタする電流値としては、電流計30bで検知された電流値を基にして間接的に検出した、基板14の金属層20に流れる電流値[定電流源26からの出力電流から電流計30bで検知された電流値(陰極板28に流れる電流値)を引いた電流値]である。
【0020】
図1に示す充填装置では、電解めっき停止手段として、手動によって電解めっきを停止するスイッチ31を設けているが、自動的に電解めっきを停止する電解めっき停止手段を設けてもよい。かかる自動的に電解めっきを停止する電解めっき停止手段を具備しためっき金属の充填装置の一例を図5に示す。
図5において、図1に示すめっき金属の充填装置と同一部材については、図1と同一番号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示す充填装置に設けられた電解めっき停止手段は、定電流源26から基板14の金属層20及び陰極板28への直流電流の印加を同時にON−OFFできる位置に設けたリレースイッチ36と、モニタ装置32によってモニタされた基板14の金属層20に流れる電流値の経時変化を監視する監視部34とが設けられている。
監視部34からは、基板14の金属層20に流れる電流値の経時変化に、予め設定された電解めっきを停止すべき経時変化が出現したとき、リレースイッチ36をOFFとする信号が発信される。
従って、予め監視部34に電解めっきを停止する、基板14側に流れる電流値の経時変化状態を予め設定しておくことによって、その経時変化が出現したとき、電解めっきを停止しでき、微細孔18,18・・の各々に所望の厚さのめっき金属層38を形成できる。
【実施例1】
【0021】
(1)基板14
基板14は、絶縁層16としての厚さ150μmのシリコン基板に、開口径が60μmの貫通孔を穿設した後、このシリコン基板の一面側に接着剤を塗布して金属層20としての銅箔を貼着した。この銅箔の表面の全面には、ソルダレジストを塗布して樹脂層22とした。基板14の絶縁層16の他面側に開口する微細孔18,18・・の各底面には金属層20が露出している。
この基板14の絶縁層16の他面側(微細孔開口面)に開口する微細孔18,18・・の開口面積の合計は0.2289cm2であった。
(2)電解めっき液12
電解めっき槽10内に貯留する電解めっき液12としては、硫酸120g/リットルと硫酸銅5水和物200g/リットルとが配合された電解銅めっき液を用いる。
(3)充填装置
充填装置としては、図1に示す充填装置を用い、電解めっき槽10には上記(2)で準備した電解銅めっき液を貯留した。
また、陽極板24としては銅板を用い、陰極板28としては銅合金(スズ、鉄等が含有)から成る金属板を用いた。この陰極板28は、電解銅めっき液に溶解されることがなく且つ微細孔18に充填する銅と置換され難いものである。
尚、陰極板28の面積は1cm2であり、基板14の微細孔18,18・・の開口面積を合計した合計面積の約5倍である。
【0022】
次いで、図1に示す充填装置のスイッチ31をONにして電解銅めっきを施した。この際の電解銅めっき条件としては、定電流源26からの出力電流を43mAとし、電解銅めっき液12を空気撹拌で撹拌した。
かかる電解銅めっきの際に、モニタ装置32によってモニタされた、基板14側に流れる電流値の経時変化は、図6に示すパターンであった。
図6に示す基板14側に流れる電流値の経時変化パターンは、電解銅めっき開始してから暫くは、基板14側に流れる電流値がめっき時間の経過と共に徐々に増加した後、急激に増加し、電解銅めっき開始してから3時間37分後にスイッチ31をOFFとした。
【実施例2】
【0023】
実施例1において、基板14側に流れる電流値が急激な増加を開始した図6に示すA時点でスイッチ31をOFFとした他は、実施例1と同様にして電解銅めっきを基板14に施した。
得られた基板14の断面の顕微鏡写真をトレースした図面を図7(a)に示す。微細孔18に充填されためっき金属層38としての銅層の先端面は、絶縁層16の表面と同一面であり、絶縁層16の微細孔18,18・・が開口されている絶縁層16の微細孔開口面を平坦面に形成できる。
【実施例3】
【0024】
実施例1において、基板14側に流れる電流値が急激な増加を開始した図6に示すA時点から所定時間後のB時点(図6)でイッチ31をOFFとした他は、実施例1と同様にして電解銅めっきを基板14に施した。
得られた基板14の断面の顕微鏡写真をトレースした図面を図7(b)に示す。微細孔18に充填されためっき金属層38としての銅層の先端部は、絶縁層16の表面から突出する突出部に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るめっき金属の充填装置の一例を説明する概略図である。
【図2】図1に示す充填装置を用いて基板14に電解めっきを施した際に、基板14の微細孔18内に充填されるめっき金属層38の厚さと、基板14の金属層20に流れる電流値の経時変化との関係を説明する説明図である。
【図3】本発明に係るめっき金属の充填装置の他の例を説明する概略図である。
【図4】本発明に係るめっき金属の充填装置の他の例を説明する概略図である。
【図5】本発明に係るめっき金属の充填装置の他の例を説明する概略図である。
【図6】図1に示す充填装置を用いて基板14に電解銅めっきを施した際に、基板14の金属層20に流れる電流値の経時変化を示すグラフである。
【図7】図1に示す充填装置を用いて電解銅めっきを施した基板14の断面の顕微鏡写真をトレースしたトレース図である。
【図8】従来の充填装置の概略を説明する概略図である。
【図9】基板110の微細孔108内を充填して形成されるめっき金属層118の形成状況を説明する部分断面図である。
【図10】改良された充填装置の一例の概略を説明する概略図である。
【図11】改良された充填装置の他の例の概略を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0026】
10 電解めっき槽
12 電解めっき液
14 基板
16 絶縁層
18 微細孔
20 金属層
22 樹脂層
24 陽極板
26 定電流源
28 陰極板
30a,30b 電流計
31 スイッチ
32 モニタ装置
38 金属層
41 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の一面側に開口され、前記絶縁層の他面側に形成された金属層が底面に露出する複数個の微細孔が形成された基板を、電解めっき槽内に貯留されている電解めっき液に浸漬し、電解めっきによって前記基板の各微細孔内にめっき金属を充填する際に、
該電解めっき液に浸漬した前記基板の金属層と定電流源の陰極とを電気的に接続すると共に、前記微細孔が開口する基板の微細孔開口面と一面側が対向するように電解めっき液に浸漬した陽極板と前記定電流源の陽極とを電気的に接続し、
且つ前記基板と別体に形成し、一面側が前記陽極板のいずれかの面と対向する位置に電解めっき液に浸漬した陰極板を、前記基板の金属層と並列接続となるように前記定電流源の陰極に電気的に接続した後、
前記基板の金属層、陰極板及び陽極板に定電流源から直流電流を印加して、前記基板の微細孔内に電解めっきによってめっき金属を充填しつつ、前記基板の金属層に流れる電流値を直接的又は間接的に検出してモニタし、
前記モニタによって得た基板の金属層に流れる電流値の経時変化に基づいて、前記電解めっきを停止することを特徴とするめっき金属の充填方法。
【請求項2】
電解めっきの停止を、基板の金属層に流れる電流値が急激に増加開始した時点で行なう請求項1記載のめっき金属の充填方法。
【請求項3】
陰極板として、基板に形成された微細孔の開口面積の合計よりも大面積の陰極板を用いる請求項1又は請求項2記載のめっき金属の充填方法。
【請求項4】
定電流源と基板の金属層との間及び前記定電流源と陰極板との間に電流計を設置する請求項1〜3のいずれか一項記載のめっき金属の充填方法。
【請求項5】
絶縁層の一面側に開口され、前記絶縁層の他面側に形成された金属層が底面に露出する複数個の微細孔が形成された基板を、電解めっき槽内に貯留されている電解めっき液に浸漬し、電解めっきによって前記基板の各微細孔内にめっき金属を充填するめっき金属の充填装置において、
該基板の微細孔が開口された微細孔開口面と一面側が対向するように、前記電解めっき槽内の電解めっき液に浸漬された陽極板と、
前記基板の金属層が陰極と電気的に接続されていると共に、前記陽極板が陽極と電気的に接続されている定電流源と、
前記基板と別体に形成され、一面側が前記陽極板のいずれかの面と対向する位置に電解めっき液に浸漬されていると共に、前記定電流源の陰極に前記基板の金属層と並列接続となるように電気的に接続された陰極板と、
前記基板の金属層、陰極板及び陽極板に前記定電流源から直流電流を印加し、前記基板の微細孔内に電解めっきによってめっき金属を充填する際に、前記基板の金属層に流れる電流値を直接的又は間接的に検出する電流検出装置と、
前記電流検出装置によって検出された電流値をモニタするモニタ装置とを具備し、
前記モニタ装置によって得られた、前記基板の金属層に流れる電流値の経時変化に基づいて、前記電解めっきを停止する電解めっき停止手段が設けられていることを特徴とするめっき金属の充填装置。
【請求項6】
電解めっきの停止手段が、基板の金属層に流れる電流値が急激に増加開始した時点で電解めっきを停止する電解めっきの停止手段である請求項5記載のめっき金属の充填装置。
【請求項7】
電解めっきの停止手段が、基板の金属層、陰極板及び陽極板への定電流源からの直流電流を印加して電解めっきを開始し、前記直流電流の印加を遮断して電解めっきを停止するスイッチである請求項5又は請求項6記載のめっき金属の充填装置。
【請求項8】
陰極板が、基板に形成された微細孔の開口面積の合計よりも大面積の陰極板である請求項5〜7のいずれか一項記載のめっき金属の充填装置。
【請求項9】
電流検出装置が、電流計であって、前記電流が定電流源と基板の金属層との間及び前記定電流源と陰極板との間に設置されている請求項5〜8のいずれか一項記載のめっき金属の充填装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−46070(P2007−46070A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228627(P2005−228627)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【特許番号】特許第3881687号(P3881687)
【特許公報発行日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】