説明

アキシャルギャップ型エンジン駆動発電機

【課題】軸方向長がより短く軽量のアキシャルギャップ型発電機を提供すること。
【解決手段】回転軸100の軸方向に沿ってハウジング内に電機子および界磁が配されてなるアキシャルギャップ型発電機において、前記ハウジング内に固定支持され電機子コイルが取り付けられたコアレス型電機子110と、それぞれ永久磁石122が取り付けられた一対の回転円盤を有し、前記電機子を該電機子の厚み方向の両側から挟むように前記回転軸に取り付けられた一対の回転界磁120と、をそなえたアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を界磁に用いた発電機に係わり、とくに電機子、界磁を回転軸の軸方向に配したアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、永久磁石を界磁に用いたエンジン駆動発電機が普及しており、例えば特許文献1に示されるものが提供されている。これは、ネオジム−鉄−ホウ素系希土類磁石を界磁に用いたもので、軸方向長がそれ以前の発電機よりも大幅に短縮されている。
【特許文献1】特許第2679758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された発電機は、ラジアルギャップ構造である関係上、界磁と電機子とを径方向に並べて両者間に磁気ギャップを形成する。このため、磁気ギャップを形成するための界磁、電機子の配置の関係で軸方向の機器寸法が必要であり、駆動源であるエンジンの回転軸からさらに発電機が突出しており、この突出長がかなり大きなものとなっている。
【0004】
このことは、発電機の小型高出力化への要請に応えることが難しくなる点で問題である。そこで、アキシャルギャップ型のエンジン駆動型発電機が要望される。
【0005】
しかしながら、アキシャルギャップ型発電機であって小型、軽量のものを構成するには、種々の問題を解決する必要がある。まずは、電機子、界磁の何れを固定側とし他を可動側とするか、次に電機子、界磁をどのように構成するか、さらに小型化に伴う内部発熱をどのように放散させるか、等の基本的問題がある。
【0006】
また、電機子、界磁には磁気効率の点からコア(鉄心)を用いるのが通例であるが、コアを用いると重量が嵩み、軽量化を阻害する。
【0007】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、軸方向長がより短く軽量のアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明では、
エンジンによって駆動され、溶接用出力および交流電源用出力の少なくとも一方を形成するエンジン駆動発電機であって、回転軸の軸方向に沿ってハウジング内に電機子および界磁が配されてなるアキシャルギャップ型発電機において、
前記ハウジングに固定支持され、電機子コイルが取り付けられたコアレス型電機子と、
それぞれ永久磁石が取り付けられた一対の回転円盤を有し、前記電機子を該電機子の厚み方向の両側から挟むように前記回転軸に取り付けられた一対の回転界磁と、
をそなえたことを特徴とするアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上述のように、平面状のコアレス型電機子をハウジングに固定させてその軸方向両側に永久磁石による回転界磁を対で配したため、軸方向長が短くしかも軽量な発電機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の一実施例の縦断面構造を示したものである。図1は、図示右側に駆動源であるエンジンEが示され(想像線)、エンジンEから図示左方向に延び出した回転軸100に、本発明の一実施例が装着されている。
【0012】
すなわち、エンジンEの回転軸100に、円筒状のキー溝付きカップリングパイプ101が嵌装され、このカップリングパイプ101の総ネジ加工された外周上に、電機子110を軸方向両側から挟んで配された一対の界磁120−1,120−2が、一対の大型ナット102a,102bおよびスペーサ103によって軸方向の位置合わせがされて固定される。
【0013】
カップリングパイプ101は、エンジンEの回転軸100に対してキー溝を位置合わせし、キーを打ち込んで回転方向の固定を行って、エンドプレート104および留めボルト105により回転軸100の端面に固定される。
【0014】
電機子110は固定であり、ハウジング130における軸方向のほぼ中央に固定される。回転界磁120は、カップリングパイプ101に固定された界磁円盤121の、電機子110に対向する面に希土類材による永久磁石122が貼着され、その背面に冷却ファン123が配されている。
【0015】
界磁円盤121には、外周面に永久磁石122の外周面を保持する保持リング124が嵌装されており、永久磁石122を遠心力に対して保持している。冷却ファン123は、独立した平板の円板に板状折り曲げ加工によるブレード123aが取り付けられた遠心式(ラジアル)ファンで界磁円板の磁石と反対側に取り付けられている。
【0016】
電機子110を保持するとともに、一対の回転界磁120を内部に収容するように、エンジン側カバー131、排風口付き外カバー132、吸気口付きのエンドカバー133により構成されるハウジング130が設けられる。このハウジング130は、エンジン側カバー131がエンジンEのケーシングに固定されて取り付けられる。
【0017】
そして、通しボルト134a、ナット134bおよびカラー135により電機子110をカップリングパイプ101上の所定位置に保持するとともに、電機子110および回転界磁120を収容するための内部空間をハウジング130内に形成する。
【0018】
この内部空間は、エンドカバー133の径方向中央に設けられた金網付きの吸気口、および排風口(図示せず)付きの外側カバー132により外部と連通しており、主として電機子110から発生される熱を冷却ファン123の作用により外部に放散するための通風が行われるように構成されている。
【0019】
図2(a),(b)は、図1に示した電機子110、回転界磁120の周りの各部構成を示した説明図である。図2(a)は、図1と反対方向から電機子110および回転界磁120を見た状態を示している。この図2(a)に示すように、電機子110を挟んで図示左側の回転界磁120−2には、界磁円盤121の径方向内方に冷却ファン123が設けられているのに対し、図示右側の回転界磁120−1には、界磁円盤121の径方向外方に冷却ファン123が設けられている。
【0020】
これにより、反エンジン側の冷却ファン123は、エンドカバー133の中央に設けられた金網付きの吸気口から吸い込んだ冷却風を径方向外方に向かう流れに変えて、ハウジング130内に取り込み、エンジン側の冷却ファン123は、ハウジング130内で径方向外方に向かい、電機子110の両面に沿って外部に流れる通風にする。
【0021】
図2(a)は、図2(b)の左横方向から見た状態を、上半分が電機子110を、下半分が回転界磁120の背面を示したものである。図2(a)は、電機子のコイル構成を示しており、全周で18個のコイルが配置されている。
【0022】
図2(a)の上部に描かれた電機子110は、この電機子110の支持板111の面における180度の範囲に9個のコアレスで平面状に形成された扇形コイル112が配されている。これは、図示しない界磁が18極構成であることに合わせたものである。コイル112を支持板111に固定するには、例えば樹脂によってコイル112を支持板111とともにモールドする。
【0023】
次に図2(a)の下半分に描かれた回転界磁120の背面には、冷却ファン123のブレード123aおよび通風穴123bが設けられ、回転界磁120の平面と直角方向への通風路が形成される。
【0024】
図3は、実施例1の主たる構成要素である、電機子110、回転界磁120、ならびにこれら構成要素を収容するハウジング130を構成するエンジン側カバー131、排風口付き外カバー132およびエンドカバー133を分解図示したもので、回転軸周りは図示省略している。
【0025】
電機子110および2つの回転界磁120−1,120−2の図示の関係から判るように、電機子110と回転界磁120−1,120−2とは電機子110を間に挟んで回転軸(図示せず)の上で対称配置されており、電磁的にも2つの回転界磁120−1,120−2による磁界を電機子110に同様に作用させる。
【0026】
この発電の際の電磁作用により生じる発熱は、回転界磁120の背面に設けられた冷却ファン123により形成される、ラジアルフローとしての冷却風によって、外カバー132の一部が開口されて形成された排風口132A(想像線図示)から外部に放出される。この排風口132Aは、電機子110で分離された2つの開口として形成されており、電機子110の両面から熱を排出するように構成されている。
【0027】
図4は、ハウジング内、外における冷却風の流れを示した図である。矢印付きの線で示すように、エンドカバー133の中央部に設けられた金網付きの吸気口から取り込まれた冷却風は、まず回転軸100の端部に向かい、次いで反エンジン側の冷却ファン123により径方向外方への流れに変えられるとともに、通風穴123bを通る軸方向の流れとなる。
【0028】
そして、この流れは、電機子110の反エンジン側およびエンジン側の各面に沿って径方向外方に流れ、電機子110の両面から熱を奪い排風口132Aに至る流れと、更にエンジン側の回転界磁120−1の通風穴123bを通りエンジン側カバー131の内壁に沿って径方向外方に向かい、排風口132Aに至る流れとに分かれる。また、この流れは、2つの回転界磁120−1,120−2の表面も冷却して排風口132Aに達する。
【0029】
これにより、電機子110および回転界磁120−1,120−2により発生する熱は、効果的に外部に排出される。
【具体的構成】
【0030】
上記実施例では、磁石として一般的に永久磁石と説明したが、具体的には温度−減磁率特性等を考慮して、例えばネオジム−鉄−ホウ素系希土類磁石を用いればよい。
【0031】
また、通風路の構成、とくに排風口は外カバーに1箇所設ける例を示したが、複数箇所設けてもよい。
【0032】
さらに、上記実施例では、界磁が18極構成の例を示したが、極数は発電機の相数、回転数などにより最も効率のよいものを選べばよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す縦断面図。
【図2】図1に示した実施例における電機子および回転界磁の構造を示すもので、図2(a)は部分縦断面図、図2(b)は側面図。
【図3】図1に示した実施例の構造を示す分解斜視図。
【図4】図1に示した実施例における冷却風の流れを示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
E エンジン、100 回転軸、101 カップリングパイプ、
102 大型ナット、103 スペーサ、104 エンドプレート、
105 留めボルト、110 電機子、111 コイル支持板、
112 電機子コイル、120 回転界磁、121 界磁円盤、
122 永久磁石、123 冷却ファン、123a 冷却ファンのブレード、123b 通風穴、124 保持リング、125 通風口、
130 ハウジング、131 エンジン側カバー、
132 排風口付き外カバー、132A 排風口、133 エンドカバー、
134a 通しボルト、134b ナット、135 カラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンによって駆動され、溶接用出力および交流電源用出力の少なくとも一方を形成するエンジン駆動発電機であって、回転軸の軸方向に沿ってハウジング内に電機子および界磁が配されてなるアキシャルギャップ型発電機において、
前記ハウジングに固定支持され、電機子コイルが取り付けられたコアレス型電機子と、
それぞれ永久磁石が取り付けられた一対の回転円盤を有し、前記電機子を該電機子の厚み方向の両側から挟むように前記回転軸に取り付けられた一対の回転界磁と、
をそなえたことを特徴とするアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機。
【請求項2】
請求項1記載のアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機において、
前記コアレス型電機子は、平面構成の電機子コイルをそなえたことを特徴とするアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機。
【請求項3】
請求項1記載のアキシャルギャプ型エンジン駆動発電機において、
前記一対の回転円盤それぞれに取り付けられた一対のラジアルファンをそなえたことを特徴とするアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機。
【請求項4】
請求項1記載のアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機において、
前記コアレス型電機子の厚み方向の両側であって前記ラジアルファンの径方向外方に、それぞれ排風口が設けられたことを特徴とするアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機。
【請求項5】
請求項1記載のアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機において、
前記ハウジングの径方向中心部に設けられた吸気口と、
前記一対の回転円盤および前記一対のラジアルファンを貫通する通風穴と、
をそなえたことを特徴とするアキシャルギャップ型エンジン駆動発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−245356(P2008−245356A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78721(P2007−78721)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(592122719)株式会社森山電機製作所 (4)
【出願人】(000109819)デンヨー株式会社 (88)
【Fターム(参考)】