説明

アクチュエータ用駆動制御装置及びアクチュエータの駆動制御方法

【課題】アクチュエータが備える変位部材の移動距離及び移動時間を設定するだけで、変位部材の詳細な動作を決定し、該変位部材を精度よく変位させる。
【解決手段】アクチュエータ用駆動制御装置10は、変位部材16の移動距離を設定する移動距離領域30と、移動時間を設定する移動時間領域32と、移動距離及び移動時間に基づいて任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を演算する目標値演算部40と、変位部材16の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動電力Pを生成して、該駆動電力Pをアクチュエータ12に送る駆動制御部26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータが備える変位部材を所定位置に変位させるアクチュエータ用駆動制御装置及びアクチュエータの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、アクチュエータ用駆動制御装置の制御に従って、変位部材を変位させる駆動機構として構成される。アクチュエータ用駆動制御装置は、変位部材を所望の動作に従って変位させるために、種々の制御手段や回路等が設けられる(例えば、特許文献1、2参照)。これにより、変位部材を変位させる際の加速度、一定速度、減速度等の詳細な動作が設定され、変位部材を精度よく変位させることが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている速度指令発生装置は、移動機構の移動体を制御する構成として、定数入力手段、加速指令手段、定速指令発生手段、速度指令合成手段等を備え、各手段によって移動体の移動量に必要な速度指令を発生することで、電動機(アクチュエータ)の駆動制御を行っている。
【0004】
また、特許文献2に開示されているロボット制御装置は、ハードウェアとしてインターフェース、CPU、ROM等を備え、ロボットの基本駆動パターンをハードウェア内で設定し、この基本駆動パターンに沿ってロボットを動作させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−308282号公報
【特許文献2】特開平08−272422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された速度指令発生装置では、移動体の駆動制御において該移動体の全移動量、速度−位置変換定数、最大速度、電動機電流−速度変換定数、最大電動機電流及び加速時間を定数入力手段に入力しているが、これら各値は、移動機構が移動させる移動体の移動距離及び移動時間に基づいて、ユーザが予め計算しなければならない。
【0007】
また、特許文献2に開示されたロボット制御装置でも、ロボットの駆動を制御する基本条件として、移動時の設定最高速度、設定最高速度に到達するまでの設定加減速時間を入力する構成となっており、これら各値はユーザが予め計算する必要がある。
【0008】
しかしながら、アクチュエータの駆動制御において、ユーザが最初に決定する変位部材の移動距離や移動時間以外の詳細な駆動条件(例えば、変位部材の速度や速度にかかる時間等)の計算を、ユーザに対して要求することは、ユーザにとって大きな作業負担となる、或いは人為的な計算ミスが生じる等の課題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、アクチュエータが備える変位部材の移動距離及び移動時間を設定することで、変位部材の詳細な動作を決定し、該変位部材を精度よく変位させることができ、これによってユーザ側の作業負担が軽減し、しかも人為的ミスに起因する誤動作を回避することが可能なアクチュエータ用駆動制御装置及びアクチュエータの駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、アクチュエータが備える変位部材を所定位置に変位させるアクチュエータ用駆動制御装置であって、前記変位部材が移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動距離を設定する移動距離設定手段と、前記変位部材が前記移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動時間を設定する移動時間設定手段と、予め設定された前記変位部材が変位する際の変位速度に関わる情報に基づき、前記移動時間を加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間に自動的に分割し、前記分割した移動時間及び前記移動距離に基づいて任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算する目標値演算手段と、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御することで、前記変位部材を前記所定位置に変位させる駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記によれば、変位部材の移動距離及び移動時間を設定するだけで、移動時間を加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間に自動的に分割することになり、任意のタイミングにおける変位部材の変位量又は変位速度の目標値を得ることができる。これにより、アクチュエータの駆動制御において、変位部材を目標値に従って精度よく変位させることができる。例えば、変位部材によって所定位置までワークを搬送又は押圧する場合は、所望の時間内に該ワークを精確な位置に移動させることが可能となる。また、ユーザが変位部材の速度や速度にかかる時間等の詳細な駆動条件を計算することがなくなるため、ユーザの作業負担を大幅に軽減することができ、しかも人為的ミスに起因する誤動作を回避することができる。
【0012】
この場合、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比であり、前記目標値演算手段は、前記時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割する構成とすることができる。
【0013】
このように、変位部材が変位する際の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比を用いて、移動時間を自動的に分割することで、任意のタイミングにおける変位部材の変位量又は変位速度の目標値を容易に得ることができる。
【0014】
また、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間であり、前記目標値演算手段は、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間のうち少なくとも2つの時間を用いて、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間の時間比を求め、該時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割するようにしてもよい。
【0015】
このように、変位部材が変位する際の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間のうち少なくとも2つの時間を用いることで、変位部材の移動時間からもう1つの時間を求めることができる。その結果、加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比を算出して、変位部材の移動時間を簡単に分割することができる。
【0016】
また、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度、減速度であり、前記目標値演算手段は、前記加速度及び前記減速度によって前記移動時間を自動的に分割する構成としてもよい。
【0017】
変位部材が変位する際の加速度及び減速度が予め設定されていれば、移動速度と移動時間から一定速度を算出できる。また、変位部材が変位する際の加速度の時間、減速度の時間も算出できるため、任意のタイミングにおける変位部材の変位量又は変位速度の目標値を容易に得ることができる。
【0018】
さらに、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の一定速度であり、前記目標値演算手段は、前記一定速度によって前記移動時間を自動的に分割する構成としてもよい。
【0019】
変位部材が変位する際の一定速度が予め設定されていれば、移動速度と移動時間から変位部材の一定速度の時間を特定することができる。よって、この一定速度の時間と変位部材の移動時間から、変位部材が変位する際の加速度の時間及び減速度の時間の割合を求めることができるため、任意のタイミングにおける変位部材の変位量又は変位速度の目標値を容易に得ることができる。
【0020】
ここで、前記目標値演算手段は、前記変位速度に関わる情報、前記移動距離及び前記移動時間から前記変位部材の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度及び減速度の時間をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算する構成とすることができる。
【0021】
このように、変位部材の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度及び減速度の時間をそれぞれ算出することで、変位部材の詳細な動作を決定することが可能となり、任意のタイミングにおける変位部材の変位量又は変位速度の目標値を容易に得ることができる。
【0022】
そして、前記駆動制御手段は、前記変位部材の一度の変位において、前記変位速度が加速度、一定速度、減速度の順に変化するように、前記アクチュエータを駆動制御することが好ましい。
【0023】
変位部材の一度の変位において、変位速度が加速度、一定速度、減速度の順に変化する構成とすれば、駆動開始時には徐々に加速していき、駆動の中間時には所定の速度で安定的に変位させ、駆動停止時には緩やかに停止させるという基本的な動作に従って変位部材を変位させることができる。
【0024】
この場合、前記目標値演算手段は、前記加速度の時間が前記減速度の時間よりも短くなるように、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算するように構成してもよい。
【0025】
このように、変位部材の一度の変位において、加速度の時間が前記減速度の時間よりも短くなるように目標値を演算することで、アクチュエータの駆動開始時には、一定速度に達するまで変位部材を急激に加速させ、変位部材が所定位置に近づいた付近では緩やかに減速させることができ、変位部材を所定位置に一層精度よく変位させることができる。
【0026】
ここで、前記駆動制御手段は、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動信号を生成することで、前記アクチュエータを駆動制御する構成であり、複数の種類又は機種からなるアクチュエータの仕様データとして、抵抗値、推力定数、前記変位部材の重量、前記変位部材のストロークのうち少なくとも1つの値が予め記憶されているデータベースの中から、制御される前記アクチュエータの仕様データを設定する仕様データ設定手段と、設定された前記仕様データに基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る仕様データ用ゲイン調整手段と、を備えてもよい。
【0027】
上記のように、抵抗値、推力定数、変位部材の重量、変位部材のストロークの仕様データに基づいて、アクチュエータを駆動制御させる駆動信号のゲインの調整を行うことで、アクチュエータの仕様に応じて最適な駆動力を変位部材に伝達することが可能となる。したがって、例えば、実際に駆動制御されるアクチュエータの抵抗値が他のアクチュエータと比べて高い場合は、アクチュエータに送る駆動信号を増加させるように調整することができる。
【0028】
また、前記駆動制御手段は、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動信号を生成することで、前記アクチュエータを駆動制御する構成であり、前記変位部材の変位にともなって所定の作用をさせるワークの情報として、重量、姿勢、負荷のうち少なくとも1つの値を設定するワーク情報設定手段と、設定された前記ワークの情報に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号又は駆動電力を調整するためのゲイン調整信号を送るワーク情報用ゲイン調整手段と、を備えてもよい。
【0029】
上記のように、重量、姿勢、負荷のワークの情報に基づいて、アクチュエータを駆動制御させる駆動信号のゲインの調整を行うことで、ワークの情報に応じて最適な駆動力を変位部材に伝達することが可能となる。したがって、例えば、変位部材によって搬送するワークが重い場合は、アクチュエータに送る駆動信号又は駆動電力を増加させるように調整することができる。
【0030】
さらに、前記駆動制御手段は、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動信号を生成することで、前記アクチュエータを駆動制御する構成であり、前記移動距離設定手段が設定した前記移動距離、又は前記移動時間設定手段が設定した前記移動時間に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る移動情報用ゲイン調整手段を備えていてもよい。
【0031】
このように、移動距離又は移動時間に基づいて、アクチュエータを駆動制御させる駆動信号のゲインの調整を行うことで、移動距離又は移動時間に応じて最適な駆動力を変位部材に伝達することが可能となる。例えば、変位部材の移動距離が長い一方でその移動時間が短い場合は、駆動信号にオーバーシュートが発生しやすくなり、変位部材を所定位置に精度よく変位させられない可能性がある。このようなオーバーシュート等の発生を防ぐために、移動情報用ゲイン調整手段は、アクチュエータに送る駆動信号又は駆動電力を減少させるように調整することができる。
【0032】
またさらに、前記加速度の時間、前記一定速度の時間及び前記減速度の時間が異なる動作モードが予め複数記憶されるとともに、前記アクチュエータを駆動制御するときに、前記複数の動作モードのうちいずれか1つを設定する動作モード設定手段を備え、前記目標値演算手段は、設定された前記動作モードに基づいて、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算してもよい。
【0033】
加速度の時間、一定速度の時間及び減速度の時間が異なる動作モードが記憶されていることで、ユーザはアクチュエータの駆動制御を実施する場合に、複数の動作モードの中から所望の動作モードを簡単に選択することができる。そして、この選択された動作モードと、変位部材の移動距離及び移動時間とによって、任意のタイミングにおける変位部材の変位量又は変位速度の目標値を容易に演算することができる。
【0034】
この場合、前記複数の動作モードには、前記所定位置での前記変位部材の速度が設定されてもよい。このように所定位置での前記変位部材の速度が設定されることで、変位部材を所定位置まで変位させた後、さらに変位部材を変位させる等の駆動制御を実施することができる。
【0035】
また、前記の目的を達成するために、本発明は、アクチュエータが備える変位部材を所定位置に変位させるアクチュエータの駆動制御方法であって、前記変位部材が移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動距離を設定する移動距離設定ステップと、前記変位部材が前記移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動時間を設定する移動時間設定ステップと、予め設定された前記変位部材が変位する際の変位速度に関わる情報に基づき、前記移動時間を加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間に自動的に分割し、前記分割した移動時間及び前記移動距離に基づいて任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算する目標値演算ステップと、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御することで、前記変位部材を前記所定位置に変位させる駆動制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0036】
この場合、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比であり、前記目標値演算ステップでは、前記時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割するようにしてもよい。
【0037】
また、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間であり、前記目標値演算ステップでは、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間のうち少なくとも2つの時間を用いて、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間の時間比を求め、該時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割するようにしてもよい。
【0038】
さらに、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度、減速度であり、前記目標値演算ステップは、前記加速度及び前記減速度によって前記移動時間を自動的に分割するようにしてもよい。
【0039】
またさらに、前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の一定速度であり、前記目標値演算ステップは、前記一定速度によって前記移動時間を自動的に分割するようにしてもよい。
【0040】
ここで、前記目標値演算ステップでは、前記変位速度に関わる情報、前記移動距離及び前記移動時間から前記変位部材の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度及び減速度の時間をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することが好ましい。
【0041】
また、前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の一度の変位において、前記変位速度が加速度、一定速度、減速度の順に変化するように前記アクチュエータを駆動制御する構成としてもよい。
【0042】
この場合、前記目標値演算ステップでは、前記加速度の時間が前記減速度の時間よりも短くなるように、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することもできる。
【0043】
前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する駆動信号を生成し、複数の種類又は機種からなるアクチュエータの仕様データとして、抵抗値、推力定数、前記変位部材の重量、前記変位部材のストロークのうち少なくとも1つの値が予め記憶されているデータベースの中から、制御される前記アクチュエータの仕様データを設定する仕様データ設定ステップと、設定された前記仕様データに基づいて、前記駆動制御ステップにおいて生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る仕様データ用ゲイン調整ステップと、を備えてもよい。
【0044】
また、前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する駆動信号を生成し、前記変位部材の変位にともなって所定の作用をさせるワークの情報として、重量、姿勢、負荷のうち少なくとも1つの値を設定するワーク情報設定ステップと、設定された前記ワークの情報に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送るワーク情報用ゲイン調整ステップと、を備えてもよい。
【0045】
さらに、前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する駆動信号を生成し、移動距離設定ステップで設定した前記移動距離、又は前記移動時間設定ステップで設定した前記移動時間に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る移動情報用ゲイン調整ステップを備えてもよい。
【0046】
さらにまた、前記加速度の時間、前記一定速度の時間及び前記減速度の時間が異なる複数の動作モードのうちいずれか1つを設定する動作モード設定ステップを備え、前記目標値演算ステップでは、設定された前記動作モードに基づいて、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算するように構成することもできる。
【0047】
この場合、前記複数の動作モードには、前記所定位置での前記変位部材の速度が設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、アクチュエータが備える変位部材の移動距離及び移動時間を設定することで、変位部材の詳細な動作を決定し、該変位部材を精度よく変位させることができる。これにより、ユーザが、変位部材の速度や速度にかかる時間等の詳細な駆動条件を計算することがなくなるため、ユーザの作業負担を大幅に軽減することができ、しかも人為的ミスに起因する誤動作を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係るアクチュエータ用駆動制御装置、アクチュエータ及びコンピュータを示すブロック図である。
【図2】第1の動作モードによる変位部材の変位量又は変位速度の目標値を説明するためのグラフである。
【図3】第2の動作モードによる変位部材の変位量又は変位速度の目標値を説明するためのグラフである。
【図4】図4A及び図4Bは、変位部材の変位速度の目標値を演算する他の方法を説明する時間と速度の関係を示すグラフである。
【図5】アクチュエータ用駆動制御装置によって変位部材を変位させるときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】駆動信号に対しゲイン調整を実施するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係るアクチュエータ用駆動制御装置及びアクチュエータの駆動制御方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るアクチュエータ用駆動制御装置10は、アクチュエータ12、コンピュータ14又はPLC(Programmable Logic Controler)15にケーブルを介して接続される。ユーザは、コンピュータ14(又はPLC15)からアクチュエータ用駆動制御装置10にデータ入力や駆動開始等の制御指示を行い、これによりアクチュエータ用駆動制御装置10はアクチュエータ12の駆動制御を実施する。
【0052】
アクチュエータ12は、駆動制御によって直線状に変位自在な変位部材16を有し、該変位部材16に駆動力を伝達する駆動部18と、該変位部材16の変位量を検出する変位検出部20と、を備える。
【0053】
駆動部18は、変位部材16に駆動力を伝達する機構として、例えば、コイル及び永久磁石によって変位部材16を直線状にスライド(変位)させるリニアモータを適用することができる。駆動部18は、アクチュエータ用駆動制御装置10から供給される駆動電源の電力量に応じて、コイルに生じる電磁力が変化し、この電磁力に比例して変位部材16の変位量や変位速度を制御する。また、駆動部18は、アクチュエータ用駆動制御装置10の切換信号によって、変位部材16の直線状の移動方向(進出、後退)が切り換えられるようになっている。なお、駆動部18として、他にもステッピングモータ、モータブラシ付DCモータ、ブラシレスDCモータ等のサーボモータを適用し、モータの回転駆動力を変位部材16に伝達させるように構成してもよいことは勿論である。
【0054】
変位部材16は、上述したように駆動部18の駆動力が伝達されることで、直線状(ガイド部材等が案内する方向)に変位自在となっている。この変位部材16としては、ワークを積載することができるステージ(スライダ体)、或いはワークを押圧するピストン等によって構成することができる。
【0055】
一方、アクチュエータ12の変位検出部20は、変位部材16の変位速度を検出し、その検出値をアクチュエータ用駆動制御装置10にフィードバックさせる。変位部材16の変位速度の検出値は、例えば、変位部材16に変位センサを取り付けて時間経過に伴う変位量を検出し、該検出した変位量と時間から得ることができる。アクチュエータ用駆動制御装置10は、この検出値に基づいて、駆動部18に供給する駆動信号(駆動電源)を補正し、変位部材16の変位をフィードバック制御することができる。なお、変位検出部20は、駆動部18にサーボモータを適用している場合は、エンコーダやレゾルバ等を用いることができる。また、変位検出部20はアクチュエータ12と別体に設けられていてもよい。
【0056】
アクチュエータ12は、以上のように構成されることで、接続されているアクチュエータ用駆動制御装置10によって、駆動部18が駆動制御され、変位部材16の変位量や変位速度が制御される。これにより、例えば、アクチュエータ12の本体を固定した状態で、変位部材16を所定位置に精度よく位置決め(変位)させること等が可能となる。
【0057】
なお、本実施の形態に係るアクチュエータ用駆動制御装置10は、リニアモータによって変位部材16を変位させるアクチュエータ12を適用しているが、制御対象となるアクチュエータ12はこれに限定されるものではない。例えば、電動シリンダや、ボールねじによって変位部材16を変位させる変位機構等をアクチュエータ用駆動制御装置10に接続して駆動制御を実施することもできる。
【0058】
アクチュエータ用駆動制御装置10は、装置本体(図示せず)内部に、記憶部22、演算部24、駆動制御部26が設けられている。また、装置本体には外部から電源(DC電源)28が供給される。
【0059】
記憶部22は、ROM及びRAMによって構成され、アクチュエータ12の駆動制御に必要な制御プログラムが予めROMに記憶されるとともに、アクチュエータ12の駆動制御に用いられるデータを記憶するための複数のデータ領域がRAM上のアドレス空間に割り振られている。また、記憶部22には、前回変位部材16を変位させたときの変位部材16の変位位置等も記憶される。記憶部22のデータ領域としては、移動距離領域30、移動時間領域32、仕様データ領域34、ワーク情報領域36、動作モード領域38が設けられている。
【0060】
これらの領域のうち、移動距離領域30、移動時間領域32、ワーク情報領域36には、コンピュータ14を介してユーザから入力されたデータが記憶される。すなわち、移動距離領域30には、変位部材16が移動開始点から所定位置に移動するまでの移動距離データ(変位量)が記憶される。また、移動時間領域32には、変位部材16が移動開始点から所定位置に移動するまでの移動時間データが記憶される。さらに、ワーク情報領域36には、変位部材16が搬送や押圧等の作用を行う対象(ワーク)の情報として、重量、姿勢、負荷等のデータが記憶される。ユーザは、アクチュエータ12を駆動制御する前に、変位部材16の所望の移動距離及び移動時間、又は変位部材16によって搬送又は押圧されるワークの情報(重量、姿勢、負荷等)を入力する。これによりアクチュエータ12を駆動制御する際に、変位部材16の移動距離、移動時間、ワークの情報が設定されることになり、記憶された各データが演算部24によって読み出される。なお、変位部材16によってワークの搬送や押圧を行わない場合、或いは変位部材16の変位に対してワークがほとんど影響を与えない場合等は、ワークの情報を設定しなくてもよい。また、ワークの情報(重量、姿勢、負荷等)は、ユーザによって設定されるだけでなく、アクチュエータ12にセンサを内蔵し、該センサを用いて検出する構成としてもよい。
【0061】
一方、仕様データ領域34には、複数の種類又は機種からなるアクチュエータ12の仕様データとして、抵抗値、推力定数、変位部材16の重量、変位部材16のストローク等のデータがデータベース化されて予め記憶されている。ユーザは、アクチュエータ12を駆動制御する前に、仕様データ領域34に記憶されているデータベースから実際に制御されるアクチュエータ12の種類又は機種を選択する。これにより、アクチュエータ12の仕様データが設定されることになり、この仕様データが演算部24によって読み出される。なお、アクチュエータ12の仕様データの選択はユーザが行うだけでなく自動的に実施されてもよい。すなわち、複数の種類又は機種からなるアクチュエータ12に固有の識別情報を設定しておき、アクチュエータ用駆動制御装置10にアクチュエータ12を接続することにより、この識別情報を自動的に読み取り、仕様データ領域34に記憶されるように構成することもできる。
【0062】
また、動作モード領域38には、任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を模式化した動作モードのデータが予め複数記憶される。ここで、動作モードとは、アクチュエータ12の駆動制御における変位部材16の変位(動作)パターンである。例えば、図2又は図3に示すような加速度の時間、一定速度の時間及び減速度の時間の時間比が異なる動作モード、或いは所定位置での変位部材16の速度が異なる動作モード等、種々の動作モードを記憶させておくことできる。
【0063】
図2及び図3は、変位部材16を変位させたときの時間と変位量の関係(上側グラフ)及び時間と速度の関係(下側グラフ)を模式的に示している。ここで、具体的に図2及び図3に示す動作モードを説明すると、図2に示す動作モード(以下、第1の動作モードともいう)は、変位部材16を一度の駆動で所定位置まで変位(移動)させる変位パターンである。この場合、変位部材16は、動作停止状態から加速度を増していき、一定速度に達すると所定時間速度を保ち、所定位置付近では減速度(マイナスの加速度)を増していくことで、最終的には所定位置で停止する。
【0064】
一方、図3に示す動作モード(以下、第2の動作モードともいう)は、変位部材16を所定位置まで変位させた後、さらに一定速度で変位させる変位パターンである。この第2の動作モードは、例えば、所定位置にワークを載置しておき、変位部材16を所定位置まで移動した後に任意の速度でワークを押し出す動作をさせる場合等に選択するとよい。
【0065】
また、第1及び第2の動作モードの中でも、加速度の時間(以下、加速期間ともいう)、一定速度の時間(以下、定速期間ともいう)、減速度の時間(以下、減速期間ともいう)の比率が変わると変位部材16の変位パターンも変わるため、各期間の時間比が異なる動作モードを複数用意することが好ましい。或いは、各期間の時間比はユーザによって設定されるようにしてもよい。これにより、アクチュエータ12を駆動制御する際には、時間経過に従って変位部材16をより詳細に変位させることができる。
【0066】
ユーザは、アクチュエータ12を駆動制御する前に、動作モード領域38に記憶されている複数の動作モードの中から所望の動作モードを選択する。これにより、選択された動作モードが設定され、この動作モードが演算部24によって読み出される。ユーザに選択される複数の動作モードは、図2及び図3に示すように、時間と変位量の関係又は時間と速度の関係を模式化したグラフとしてコンピュータ14のモニタ(図示せず)に表示されることが好ましい。このように動作モードをグラフで表示することで、ユーザは目的とする動作モードを容易に選択することができる。
【0067】
なお、アクチュエータ用駆動制御装置10は、上記のように動作モードを選択しなくとも、予め設定された基本の動作モード(例えば、第1の動作モード)に従って変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を演算する構成としてもよい。
【0068】
演算部24は、マイクロコンピュータ等を用いて構成することができ、記憶部22から必要なデータを読み出して演算処理を実施し、アクチュエータ12を駆動制御する際の制御指示信号(変位制御指示信号X、ゲイン調整信号G)を駆動制御部26に送信する。この演算部24には、目標値演算部(目標値演算手段)40、ゲイン調整部(ゲイン調整手段)42、移動距離設定部(移動距離設定手段)47a、移動時間設定部(移動時間設定手段)47b、仕様データ設定部(仕様データ設定手段)47c、ワーク情報設定部(ワーク情報設定手段)47d、動作モード設定部(動作モード設定手段)47eが設けられている。
【0069】
目標値演算部40は、変位部材16の移動距離データを移動距離領域30から読み出すとともに、変位部材16の移動時間データを移動時間領域32から読み出す。そして、読み出した移動距離データ及び移動時間データに基づいて、変位部材16の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度及び減速度の時間をそれぞれ算出し、この算出結果から任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を演算する。
【0070】
ここで、目標値演算部40において算出される変位部材16の加速度a、加速度の時間t、一定速度v、一定速度の時間t、減速度a及び減速度の時間tは、変位部材16を精度よく変位させるために必要なパラメータとなる。すなわち、通常、アクチュエータ12が変位部材16を変位させる場合は、駆動開始後、動作停止状態から一定の速度になるまで変位部材16を加速させていき、所定の速度に達した後は速度を一定に保ったまま変位部材16を変位させ、その後、移動状態から動作停止状態まで変位部材16を減速させる(図2に示す第1の動作モードを参照)。したがって、変位部材16の加速度a、加速度の時間t、一定速度v、一定速度の時間t、減速度a及び減速度の時間tを算出することで、変位部材16の変位において必要な一連の変位速度及び変位時間を全て決定することができる。その結果、任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を容易に求めることが可能となる。
【0071】
目標値演算部40において演算された、任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値は、例えば、図2及び図3に示すようなグラフとして形成し、コンピュータ14のモニタ等に表示してもよい。この任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値の演算方法(グラフの形成方法)については後述する。
【0072】
目標値演算部40によって演算された任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値は、時間経過にともなう連続的な変位制御指示信号Xとして駆動制御部26に送信される。
【0073】
一方、ゲイン調整部42は、ユーザによって選択されたアクチュエータ12に関わる仕様データを仕様データ領域34から読み出す第1調整部(仕様データ用ゲイン調整手段)44と、ユーザによって入力されたワークの情報(ワーク情報データ)をワーク情報領域36から読み出す第2調整部(ワーク情報用ゲイン調整手段)45と、移動距離データ及び移動時間データを移動距離領域30及び移動時間領域32から読み出す第3調整部(移動情報用ゲイン調整手段)46とを備える。このゲイン調整部42は、駆動制御部26において駆動信号の電圧値又は電流値を変化させるゲイン調整信号Gを生成する。
【0074】
ここで、例えば、実際に駆動制御されるアクチュエータ12の抵抗値が他のアクチュエータ12の抵抗値と比べて高い場合は、アクチュエータ12の駆動制御に必要となる駆動電力が足りなくなり、変位部材16を所定位置まで精度よく変位させることができない。したがって、第1調整部44では、読み出したアクチュエータ12の仕様データの抵抗値に基づいて、アクチュエータ12に送る駆動信号値を増加させるための第1調整信号を生成する。逆に、実際に駆動制御されるアクチュエータ12の抵抗値が他のアクチュエータ12と比べて低い場合は、アクチュエータ12に送る駆動信号値を減少させるための第1調整信号を生成する。
【0075】
また、例えば、変位部材16によって搬送するワークが重い場合は、変位部材16に対して負荷をかけることになるため、変位部材16を所定位置まで精度よく変位させることができない。したがって、第2調整部45では、読み出したワークの重量に基づいて、アクチュエータ12に送る駆動信号値を増加させるための第2調整信号を生成する。逆に、変位部材16によって搬送するワークが軽い場合は、アクチュエータ12に送る駆動信号値を減少させるための第2調整信号を生成する。
【0076】
さらに、例えば、変位部材16の移動距離が長い一方でその移動時間が短い場合は、駆動信号にオーバーシュートが発生しやすくなり、変位部材16を所定位置に精度よく変位させられない可能性がある。したがって、第3調整部46では、読み出した変位部材16の移動距離及び移動時間に基づいて、アクチュエータ12に送る駆動信号値を減少させるための第3調整信号を生成する。逆に、変位部材16の移動距離が短くて移動時間が長い場合は、変位部材16が確実に変位するように駆動信号値を増加させるための第3調整信号を生成する。
【0077】
第1〜3調整部44、45、46によって生成された第1〜3調整信号は、ゲイン調整部42内において統合されてゲイン調整信号Gとして駆動制御部26に送信される。なお、ゲイン調整部42は、アクチュエータ12の仕様データ、搬送するワークの情報、移動距離や移動時間以外にも、変位部材16の変位に影響を与える種々の要因に基づいてゲイン調整信号Gを生成してよいことは勿論である。また、アクチュエータ用駆動制御装置10は、ゲイン調整を行わずに、アクチュエータ12の駆動制御を実施することもできる。
【0078】
一方、演算部24の各設定部47a〜47eは、コンピュータ14から入力又は選択された制御用の各データを記憶部22の各領域に記憶させる機能を有している。すなわち、移動距離設定部47aは、コンピュータ14を介してユーザから入力された移動距離データを移動距離領域30に記憶させる。同様に、移動時間設定部47bは、ユーザから入力された移動時間データを移動時間領域32に記憶させる。また、仕様データ設定部47cは、コンピュータ14を介してユーザが選択したアクチュエータ12の仕様データを仕様データ領域34に記憶させる。さらに、ワーク情報設定部47dは、ユーザから入力されたワーク情報データをワーク情報領域36に記憶させる。さらにまた、動作モード設定部47eは、ユーザが選択した動作モードを動作モード領域38に記憶させる。
【0079】
アクチュエータ用駆動制御装置10の駆動制御部26は、演算器48、PID調整器50、電力増幅器52を備え、演算部24によって送信されてきた変位制御指示信号X及びゲイン調整信号Gに基づいて、アクチュエータ12を制御する駆動電力Pを生成する。
【0080】
演算器48は、例えば、オペアンプ等の回路によって構成することができ、アクチュエータ12の変位検出部20から送られてきた検出値(フィードバック信号)が負帰還されることで、目標値演算部40から出力される変位制御指示信号Xの補正を行う。これにより、本実施の形態に係るアクチュエータ用駆動制御装置10は、アクチュエータ12の駆動(すなわち、変位部材16の変位)をフィードバック制御することができる。
【0081】
PID調整器50は、演算器48の出力側に設けられ、演算器48から出力される補正後の変位制御指示信号X’が入力される。PID調整器50では、補正後の変位制御指示信号X’を変位部材16の変位速度の目標値に従った駆動信号Dに近似させる比例制御を実施するとともに、微分制御、積分制御等によって駆動信号Dを安定化させて電力増幅器52に出力する。
【0082】
また、PID調整器50は、ゲイン調整部42から送信されてきたゲイン調整信号Gが入力されることで、このゲイン調整信号Gに基づいて駆動信号値(電圧値又は電流値)の調整が行われる。これにより、PID調整器50から出力される駆動信号Dは、制御するアクチュエータ12の仕様データ、搬送又は押圧するワークの情報、変位部材16の移動距離及び移動時間に応じた最適な信号値となる。
【0083】
電力増幅器52は、電圧増幅回路及び電流増幅回路によって構成され、PID調整器50から出力された駆動信号Dの電圧値又は電流値を増幅して、駆動電力Pとしてアクチュエータ12に供給する。アクチュエータ12は、供給される駆動電力Pによって駆動部18の駆動が制御され、変位部材16を変位させることができる。なお、電力増幅器52はアクチュエータ用駆動制御装置10内に設けずに、外部に設けてもよい。
【0084】
また、本実施の形態では、アクチュエータ用駆動制御装置10によってアクチュエータ12に駆動電力Pを供給する構成となっているが、アクチュエータ12は、アクチュエータ用駆動制御装置10を介さずに外部から電源が直接供給される電源部を備える構成とすることもできる。この場合、アクチュエータ用駆動制御装置10は、アクチュエータ12に対し供給電源を制御する駆動信号D’を送り、外部から供給される電源の電力量を制御する構成とすればよい。
【0085】
アクチュエータ用駆動制御装置10に接続されるコンピュータ14は、CPU、メモリ、キーボード、モニタ等(ともに図示せず)を備える汎用コンピュータを使用することができる。コンピュータ14は、アクチュエータ制御用のプログラムが記憶されており、このプログラムが実行されるとモニタにアクチュエータ制御用の入力画面が表示される。ユーザは、この入力画面から変位部材16の移動距離データ、移動時間データ、ワーク情報のデータを入力するとともに、制御されるアクチュエータ12を選択し、さらに変位部材16の動作モードを選択することができる。入力画面に入力された各データは、アクチュエータ用駆動制御装置10に送信され記憶部22の各領域に記憶される。
【0086】
PLC15は、アクチュエータ用駆動制御装置10に対し、アクチュエータ12の駆動制御を行う信号や任意のステップデータを選択する信号等の送受信をパラレルに行えるように接続される。ここで、ステップデータとは、変位部材16の動作モードを簡易化したデータであり、変位部材16の移動距離データ(又は所定位置のデータ)及び移動時間データ等の情報を有している。この場合、PLC15は、ステップデータを選択する信号と、アクチュエータ12の駆動制御を行う信号とを同時に送信することができ、該アクチュエータ12の駆動制御の容易化を図ることができる。また、例えば4ビット(16点)のステップデータを同時に送信すること等も可能となる。
【0087】
アクチュエータ12を駆動制御する際には、コンピュータ14(又はPLC15)からアクチュエータ用駆動制御装置10に駆動開始信号Bを送信することで、アクチュエータ12の駆動制御が実施される。また、アクチュエータ12の駆動制御が終了する際には、アクチュエータ用駆動制御装置10から動作完了信号Fがコンピュータ14(又はPLC15)に送信される。さらに、アクチュエータ12の駆動制御にエラーがあった場合には、アクチュエータ用駆動制御装置10からエラー信号Eがコンピュータ14(又はPLC15)に送信される。
【0088】
なお、アクチュエータ用駆動制御装置10とコンピュータ14(又はPLC15)が送受信する信号は、駆動開始信号B、動作完了信号F、エラー信号Eに限定されるものではない。例えば、変位部材16の現在位置、変位部材16の変位速度、アクチュエータ12に出力している駆動電力Pの電流量等の情報をアクチュエータ用駆動制御装置10からコンピュータ14に送信し、コンピュータ14のモニタに表示させることができる。また、変位部材16の移動をオフする信号、所定位置の近傍で変位部材16の移動をオンする信号、変位部材16の変位速度の目標値近傍でオンする信号、変位部材16の目標推力の近傍でオンする信号等をコンピュータ14から出力することもできる。
【0089】
さらに、PLC15を用いる場合は、このPLC15により、移動距離データ(又は所定位置のデータ)及び移動時間データをステップデータとしてまとめて設定するように構成することができる。例えば、ユーザがPLC15中の複数のステップデータを選択すると、この選択された複数のステップデータはPLC15からアクチュエータ用駆動制御装置10に送信され、個々のステップデータ毎に移動距離データ及び移動時間データが移動距離領域30及び移動時間領域32に記憶される。この場合、アクチュエータ用駆動制御装置10は、複数のステップデータ(移動距離及び移動時間)に基づいて、変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を複数演算する。そして、特定のステップデータ(目標値)が選択された状態で、PLC15からアクチュエータ12の駆動制御を行う信号を送ることで、アクチュエータ12の駆動制御を開始することができる。
【0090】
本実施の形態に係るアクチュエータ12、アクチュエータ用駆動制御装置10、コンピュータ14(又はPLC15)は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、実際にアクチュエータ12の駆動制御を実施する場合に、目標値演算部40によって演算される、任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値について説明する。
【0091】
アクチュエータ用駆動制御装置10は、既述したように、図2、図3に示すような複数の動作モードが動作モード領域38に記憶されており、ユーザが任意に1つの動作モードを選択することで、変位部材16の時間経過にともなう変位量又は変位速度を容易に設定することができる。
【0092】
なお、変位部材16を変位させる動作の前には、変位部材16を移動開始点に移動させるように駆動制御を行う。例えば、移動開始点はアクチュエータ12に予め設定された原点位置(アクチュエータ12のストローク端、又は内蔵された変位センサの原点信号位置)とすることができる。アクチュエータ用駆動制御装置10による変位部材16の原点位置までの変位は、第1の動作モードによって変位部材16を所定位置まで変位させるときと同様の制御を実施すればよい。
【0093】
また、前回変位部材16を変位させたときの変位位置が、記憶部22に記憶可能な構成である場合、アクチュエータ用駆動制御装置10は、この前回の変位位置に基づいて変位部材16をユーザが設定する移動開始点に移動させることもできる。すなわち、移動開始点が原点位置以外の位置では、ユーザから移動開始点の位置が入力された後、前回の変位位置から移動開始点までの距離を算出し、移動距離に基づいて変位部材16を移動開始点まで変位させるとよい。
【0094】
変位部材16が移動開始点に移動した後は、ユーザが選択した動作モードに応じて、任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を演算する。本実施の形態の説明では、図2に示す第1の動作モード及び図3に示す第2の動作モードにおける目標値の演算方法について説明する。
【0095】
目標値演算部40は、変位部材16が変位する際の変位速度に関わる情報に基づき、移動時間を加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間に自動的に分割するようにプログラミングされている。変位速度に関わる情報が加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比、a(加速度の時間の割合):b(一定速度の時間の割合):c(減速度の時間の割合)の場合は、第1の動作モードが選択されると、該動作モードが設定している各速度の時間比a:b:cに基づいて、移動時間領域32から読み出した移動時間tを分割する。この場合、移動時間tに基づく加速度の時間tは下記の(1)式で算出することができ、一定速度の時間tは下記の(2)式で算出することができ、減速度の時間tは下記の(3)式で算出することができる。
=a・t/(a+b+c) …(1)
=b・t/(a+b+c) …(2)
=c・t/(a+b+c) …(3)
【0096】
このように、変位部材16が変位する際の加速度の時間t、一定速度の時間t、減速度の時間tを、上記(1)〜(3)式のとおり時間比a:b:cを用いて算出することで、移動時間tを自動的に分割することができる。
【0097】
なお、変位速度に関わる情報が変位部材16の加速度の時間t、一定速度の時間t、減速度の時間tの場合は、これら各時間のうち少なくとも2つの時間が予め設定されていれば、変位部材16の全体の移動時間tからもう1つの時間を求めることができるため、加速度の時間t、一定速度の時間t、減速度の時間tの時間比a:b:cを容易に算出することができる。よって、この場合も変位部材16の移動時間tを簡単に分割することができる。
【0098】
また、アクチュエータ12の駆動制御において、変位部材16を変位させる際に必要なパラメータとなる加速度a、一定速度v(定速期間の加速度aは速度が一定のためゼロとなる)、減速度aは、以下に示す数式1の計算式によって求めることができる。
【0099】
【数1】

【0100】
数式1に示すように、加速期間における変位部材16の移動距離Sは上記(4)式によって算出することができ、定速期間における変位部材16の移動距離Sは上記(5)式によって算出することができ、減速期間における変位部材16の移動距離Sは上記(6)式によって算出することができる。
【0101】
また、変位部材16を所定位置まで変位させた際の全体の移動距離(変位量)Sは、S+S+Sとなる。よって、移動距離Sは上記(7)式のように(4)、(5)、(6)式を加算して求めることができる。さらに、この(7)式から上記(8)式に変形することで一定速度vを求める式となるため、移動距離領域30から読み出した移動距離データを代入することで、一定速度vを算出することができる。
【0102】
また、加速期間の加速度aは、上記(9)式で表すことができる。したがって、(9)式に求めた一定速度vを代入することでの加速度aの算出が可能となる。
【0103】
同様に、減速期間の減速度aは、上記(11)式によって表すことができ、この(11)式を変形した上記(12)式に一定速度vを代入することで減速度aを算出することができる。
【0104】
以上のように、一度の駆動で変位部材16を所定位置まで変位(移動)させる第1の動作モードにおいて、目標値演算部40は、変位部材16の加速度a、加速度の時間t、一定速度v、一定速度の時間t、減速度a、減速度の時間tの値を容易に算出することができる。
【0105】
これにより、目標値演算部40は、上記算出された各値に基づいて、変位部材16の移動時間と変位量の関係からなるグラフ(図2の上側グラフ参照)、又は変位部材16の移動時間と変位速度の関係からなるグラフ(図2の下側グラフ参照)を形成することできる。よって、第1の動作モードの任意のタイミングにおいて駆動制御すべき変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を得ることが可能となる。
【0106】
なお、第1の動作モードにおいて、加速度の時間tが減速度の時間tよりも短くなるように目標値を演算することで、アクチュエータ12の駆動開始時には、一定速度vに達するまで変位部材16を急激に加速させ、変位部材16が所定位置に近づいた付近では緩やかに減速させることが可能となる。これにより、変位部材16を所定位置により精度よく移動させることができる。
【0107】
また、目標値演算部40は、図3に示す第2の動作モードが選択されると、動作モードが設定している加速度の時間t、一定速度の時間t、減速度の時間tの時間比a:b:cに基づいて、第1の動作モードと同様に、上記(1)、(2)、(3)式によって加速度の時間t、一定速度の時間t、減速度の時間tを算出することができる。
【0108】
また、アクチュエータ12の駆動制御において、変位部材16を変位させる際に必要なパラメータとなる加速度a、一定速度v、減速度aは、以下に示す数式2の計算式によって求めることができる。
【0109】
【数2】

【0110】
数式2に示すように、加速期間における変位部材16の移動距離Sは数式1に記載の(4)式によって算出することができ、定速期間における変位部材16の移動距離Sも数式1に記載の(5)式によって算出することができる。一方、減速期間における変位部材16の移動距離Sは上記(13)式によって算出することができる。ここで、(13)式にある記号vは、変位部材16が所定位置に移動した後にさらに移動する際の変位速度(一定速度)であり、このvはユーザが自由に設定することができる。
【0111】
したがって、変位部材16を減速期間が終了する所定位置まで変位させた際の全体の移動距離(変位量)Sは、上記(14)式によって求められる。この(14)式から上記(15)式に変形することで一定速度vを求める式となるため、移動距離領域30から読み出した移動データを代入することで、一定速度vを算出することができる。
【0112】
また、第2の動作モードの加速期間の加速度aは、数式1に記載の(9)式に(15)式で算出した一定速度vを代入することによって上記(16)式で算出することが可能となる。
【0113】
同様に、減速期間の減速度aは、上記(17)式によって表すことができる。よって、この(17)式を変形した(18)式に一定速度vを代入することで減速度aを算出することができる。
【0114】
以上のように、変位部材16を所定位置まで変位させた後、さらに一定速度で変位させる第2の動作モードにおいても、目標値演算部40は、変位部材16の加速度a、加速度の時間t、一定速度v、一定速度の時間t、減速度a、減速度の時間tの値を容易に算出することができる。
【0115】
目標値演算部40は、上記算出された各値に基づいて、変位部材16の移動時間と変位量の関係からなるグラフ(図3の上側グラフ参照)、又は変位部材16の移動時間と変位速度の関係からなるグラフ(図3の下側グラフ参照)を形成することできる。これにより、変位部材16の詳細な変位動作を決定することが可能となり、第2の動作モードの任意のタイミングにおいて駆動制御すべき変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を容易に得ることができる。
【0116】
なお、目標値演算部40は、他の方法(算出原理)によって、任意のタイミングにおいて駆動制御すべき変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を容易に得てもよいことは勿論である。
【0117】
図4A及び図4Bは、変位部材16の変位速度の目標値を演算する他の方法を説明する時間と速度の関係を示すグラフである。アクチュエータ用駆動制御装置10は、変位速度に関わる情報が変わることで、上述した目標値の演算方法以外にも、次の方法をもって任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を得ることができる。
【0118】
例えば、変位速度に関わる情報が変位部材16の加速度a、減速度aである場合は、図4Aのグラフ中における加速度、減速度を示す傾斜が一定となる。また、変位部材16の移動距離Sは、全体の移動時間t及び変位速度によって形成される台形の面積に当たる(図4Aの斜線部分を参照)。すなわち、変位部材16の移動距離S、移動時間t、加速度a、減速度aが設定されることで、移動時間tと変位速度によって形成される台形の形状が特定できるため、他のパラメータ(加速度の時間t、一定速度v、一定速度の時間t、減速度の時間t)を算出することができる。
【0119】
また、変位部材16の移動距離Sが大きくなる場合は、図4A中の一点鎖線で示すように、加速度の時間t及び減速度の時間tを長くして、一定速度vの値を変えることで(この場合、一定速度の時間tは短くなる)、予め設定された加速度a、減速度aを変更することなく変位部材16の変位に必要な目標値を演算することができる。このように、目標値演算部40は、変位速度に関わる情報が変位部材16の加速度a、減速度aでも、変位部材16の移動時間tを自動的に分割することができる。
【0120】
一方、変位速度に関わる情報が変位部材16の一定速度vである場合は、図4Bのグラフ中における移動時間t及び変位速度によって形成される台形の高さが一定となる。したがって、変位部材16の移動距離S、移動時間t、一定速度vが設定されることで、一定速度の時間tを特定することができる。そして、この一定速度の時間tと移動時間tから、変位部材16が変位する際の加速度の時間t及び減速度の時間tの割合を求めることができ、その割合に応じた加速度a及び減速度aを算出することができる。
【0121】
また、変位部材16の移動距離Sが大きくなる場合は、図4B中の一点鎖線で示すように、一定速度の時間tを長くして、加速度a、加速度の時間t、減速度a、減速度の時間t等の値を変えることで、予め設定された一定速度vを変更することなく変位部材16の変位に必要な目標値を演算することができる。このように、目標値演算部40は、変位速度に関わる情報が変位部材16の一定速度vでも、変位部材16の移動時間tを自動的に分割することができる。
【0122】
なお、アクチュエータ用駆動制御装置10は、変位部材16の変位において、加速度aが一定に増加する、又は減速度aが一定に減少する構成(すなわち、図2〜図4に示す時間と速度のグラフにおいて加速度a及び減速度aが直線的に変化する構成)ではなく、徐々に加速度a又は減速度aを変えるようにすることもできる。例えば、加速度a又は減速度aを予め設定された2次関数によって曲線的に増減させるように構成することもできる。
【0123】
次に、アクチュエータ用駆動制御装置10によって変位部材16を変位させるときの処理の流れを図5のフローチャートを参照して説明する。
【0124】
変位部材16を変位させる場合、先ず、演算部24の動作モード設定部47eが、任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を模式化した複数の動作モードの中から、1つの動作モードを設定する(ステップS10:動作モード設定ステップ)。すなわち、図2、図3等に示すような動作モードがユーザによって選択され、該動作モードを記憶部22の動作モード領域38に記憶(設定)する。これにより、演算部24は選択された動作モードを必要に応じて読み出すことができる。
【0125】
次いで、演算部24は、移動距離設定部47aにより、変位部材16が移動開始点から所定位置に移動するまでの移動距離を設定する(ステップS11:移動距離設定ステップ)。変位部材16の移動距離は、ユーザが所定位置を入力することで自動的に移動距離データが算出される。そして、算出された移動距離データが移動距離設定部47aによって移動距離領域30に記憶されることで設定され、演算部24は該移動距離データを必要に応じて読み出すことができる。なお、ユーザによって移動距離データを直接入力して移動距離領域30に記憶させるようにしてもよいことは勿論である。
【0126】
次いで、演算部24は、移動時間設定部47bにより、変位部材16が移動開始点から所定位置に移動するまでの移動時間を設定する(ステップS12:移動時間設定ステップ)。変位部材16の移動時間は、ユーザによって移動時間データが移動時間領域32に記憶されることで設定され、演算部24はこの移動時間データを必要に応じて読み出すことができる。
【0127】
さらに、演算部24は、ステップS10において選択された動作モードから変位部材16を変位させる際の加速度の時間、一定速度の時間及び減速度の時間の時間比を設定する(ステップS13)。
【0128】
ステップ13の後、演算部24は、コンピュータ14からアクチュエータ12の駆動制御を実施する駆動開始信号Bの受信の有無を判別する(ステップS14)。
【0129】
そして、コンピュータ14から駆動開始信号Bを受信すると、目標値演算部40は、設定された変位部材16が変位する際の変位速度に関わる情報(この処理フローでは時間比)、移動距離データ及び移動時間データから、上述した算出原理を用いて、変位部材16の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度、減速度の時間を算出する(ステップS15:目標値演算ステップ(1))。このように駆動開始信号Bを受信したときに変位部材16の変位速度等を算出することで、駆動開始信号Bを受信した位置を移動開始点として所定位置までの移動距離を算出することができる。
【0130】
さらに、目標値演算部40は、算出された加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度、減速度の時間の各値から任意のタイミングにおける変位部材16の変位量又は変位速度の目標値を演算する(ステップS16:目標値演算ステップ(2))。これにより、時間と変位量の関係からなるグラフ(例えば、図2の上側グラフ)、又は時間と変位速度のグラフ(例えば、図2の下側グラフ)等を形成する。
【0131】
その後、演算部24の目標値演算部40は、ステップS16によって得た変位部材16の目標値に応じて、時間経過にともなう変位制御指示信号Xを生成し、この変位制御指示信号Xを駆動制御部26に出力する(ステップS17)。
【0132】
駆動制御部26では、変位制御指示信号Xが演算器48によって補正され、さらにPID調整器50によって目標値に沿った駆動信号Dを生成し出力する(ステップS18:駆動制御ステップ)。この駆動信号Dは電力増幅器52に入力されることで増幅され、駆動電力Pとしてアクチュエータ12に出力される。
【0133】
その後、演算部24が時間経過を判別することで、変位部材16が所定位置に到達したかを判断する(ステップS19)。変位部材16が所定位置に到達していない場合は、ステップS17に戻り、再度時間経過にともなう変位制御指示信号Xを出力する。
【0134】
一方、変位部材16が所定位置に到達したと判断した場合は、変位制御指示信号Xを停止することで、駆動電力の供給を停止する(ステップS20)。これにより変位部材16を所定位置に停止させることができる。また、変位部材16の停止にともなってコンピュータ14に動作完了信号Fが送信され、コンピュータ14のモニタ等に変位部材16の変位終了が表示される。アクチュエータ用駆動制御装置10は、以上のステップによって変位部材16を所定位置まで精度よく変位させることができる。
【0135】
また、アクチュエータ用駆動制御装置10によって変位部材16を変位させる際に、駆動信号Dのゲイン調整を行う場合は、図6に示す処理フローを実施する。
【0136】
ステップS30(仕様データ設定ステップ)では、複数の種類又は機種からなるアクチュエータ12の仕様データ(抵抗値、推力定数、変位部材16の重量、変位部材16のストローク等)が記憶されているデータベースの中から、制御されるアクチュエータ12の仕様データを設定する。すなわち、ユーザによって実際に使用されているアクチュエータ12が選択されると、仕様データ設定部47cが該アクチュエータ12の仕様データを仕様データ領域34に記憶(設定)する。これにより、演算部24はこの仕様データを必要に応じて読み出すことができる。
【0137】
次いで、第1調整部44が、ステップ30で設定した仕様データに基づいて、駆動信号を調整するための第1調整信号を生成する(ステップS31:仕様データ用ゲイン調整ステップ)。
【0138】
また、ステップ32(ワーク情報設定ステップ)では、演算部24のワーク情報設定部47dが、変位部材16の変位にともなって所定の作用をさせるワークの情報として、重量、姿勢、負荷等の値をワーク情報領域36に記憶(設定)する。これにより、演算部24はこれら重量、姿勢、負荷等の値を必要に応じて読み出すことができる。
【0139】
次いで、第2調整部45が、ステップ32で設定されたワークの情報に基づいて、駆動信号を調整するための第2調整信号を生成する(ステップ33:ワーク情報用ゲイン調整ステップ)。
【0140】
さらに、ステップ34(移動情報用ゲイン調整ステップ)では、演算部24の移動距離設定部47aが設定した移動距離、又は移動時間設定部47bが設定した移動時間を読み出して、設定された移動距離及び移動時間に基づいて、第3調整部46において駆動信号を調整するための第3調整信号を生成する。
【0141】
その後、演算部24は、第1〜第3調整信号を統合して、ゲイン調整部42から出力するゲイン調整信号Gを生成し、このゲイン調整信号Gを駆動制御部26に送る(ステップ35)。
【0142】
駆動制御部26は、ゲイン調整信号Gを受信して、ステップS18において生成する駆動信号Dを適宜調整することができ、この調整された駆動信号Dからなる駆動電力Pをアクチュエータ用駆動制御装置10から出力させることで、変位部材16を精度よく変位させることが可能となる。
【0143】
以上のように、本実施の形態に係るアクチュエータ用駆動制御装置10によれば、アクチュエータ12が備える変位部材16の移動距離及び移動時間を設定することで、変位部材16の詳細な動作を決定し、該変位部材16を精度よく変位させることができる。よって、例えば、変位部材16によって所定位置までワークを搬送又は押圧する作業を行う場合は、所望の時間内に該ワークを精確に所定位置に変位させることが可能となる。また、ユーザが変位部材16の速度や速度にかかる時間等の詳細な駆動条件を計算することがなくなるため、ユーザの作業負担を大幅に軽減することができる。
【0144】
また、アクチュエータ用駆動制御装置10は、変位部材16の動作条件をデータ入力する目的でコンピュータ14を使用しているため、コンピュータ14内において変位部材16の目標値を演算して変位部材16の制御を行う場合と比較して、データ送信量を少なくすることができ、送信量が少ない低廉なシリアル伝送用の接続ケーブル等を適用することができる。
【0145】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【0146】
例えば、本実施の形態に係るアクチュエータ用駆動制御装置10では、目標値演算部40において、変位部材16の変位を制御する信号として変位制御指示信号Xを生成する構成としているが、目標値演算部40は、変位部材16の変位速度を制御するように速度制御指示信号を生成するように構成し、この速度制御指示信号に応じて変位部材16を変位させるようにしてもよい。
【0147】
また、図6に示すアクチュエータ用駆動制御装置10の処理フローでは、変位部材16の移動距離及び移動時間を駆動開始信号Bを受信した後に算出しているが、これに限定されず、例えば、変位部材16が変位する際の所定位置や移動時間が入力された時に算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0148】
10…アクチュエータ用駆動制御装置 12…アクチュエータ
14…コンピュータ 16…変位部材
18…駆動部 20…変位検出部
22…記憶部 24…演算部
26…駆動制御部 28…電源
40…目標値演算部 42…ゲイン調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータが備える変位部材を所定位置に変位させるアクチュエータ用駆動制御装置であって、
前記変位部材が移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動距離を設定する移動距離設定手段と、
前記変位部材が前記移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動時間を設定する移動時間設定手段と、
予め設定された前記変位部材が変位する際の変位速度に関わる情報に基づき、前記移動時間を加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間に自動的に分割し、前記分割した移動時間及び前記移動距離に基づいて任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算する目標値演算手段と、
前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御することで、前記変位部材を前記所定位置に変位させる駆動制御手段と、
を備えることを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比であり、
前記目標値演算手段は、前記時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の制御装置において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間であり、
前記目標値演算手段は、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間のうち少なくとも2つの時間を用いて、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間の時間比を求め、該時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1記載の制御装置において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度、減速度であり、
前記目標値演算手段は、前記加速度及び前記減速度によって前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1記載の制御装置において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の一定速度であり、
前記目標値演算手段は、前記一定速度によって前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記目標値演算手段は、前記変位速度に関わる情報、前記移動距離及び前記移動時間から前記変位部材の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度及び減速度の時間をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記変位部材の一度の変位において、前記変位速度が加速度、一定速度、減速度の順に変化するように、前記アクチュエータを駆動制御することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の制御装置において、
前記目標値演算手段は、前記加速度の時間が前記減速度の時間よりも短くなるように、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動信号を生成することで、前記アクチュエータを駆動制御する構成であり、
複数の種類又は機種からなるアクチュエータの仕様データとして、抵抗値、推力定数、前記変位部材の重量、前記変位部材のストロークのうち少なくとも1つの値が予め記憶されているデータベースの中から、制御される前記アクチュエータの仕様データを設定する仕様データ設定手段と、
設定された前記仕様データに基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る仕様データ用ゲイン調整手段と、
を備えることを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動信号を生成することで、前記アクチュエータを駆動制御する構成であり、
前記変位部材の変位にともなって所定の作用をさせるワークの情報として、重量、姿勢、負荷のうち少なくとも1つの値を設定するワーク情報設定手段と、
設定された前記ワークの情報に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送るワーク情報用ゲイン調整手段と、
を備えることを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記駆動制御手段は、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて駆動信号を生成することで、前記アクチュエータを駆動制御する構成であり、
前記移動距離設定手段が設定した前記移動距離、又は前記移動時間設定手段が設定した前記移動時間に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る移動情報用ゲイン調整手段を備えることを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の制御装置において、
前記加速度の時間、前記一定速度の時間及び前記減速度の時間が異なる動作モードが予め複数記憶されるとともに、前記アクチュエータを駆動制御するときに、前記複数の動作モードのうちいずれか1つを設定する動作モード設定手段を備え、
前記目標値演算手段は、設定された前記動作モードに基づいて、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項13】
請求項12記載の制御装置において、
前記複数の動作モードには、前記所定位置での前記変位部材の速度が設定されていることを特徴とするアクチュエータ用駆動制御装置。
【請求項14】
アクチュエータが備える変位部材を所定位置に変位させるアクチュエータの駆動制御方法であって、
前記変位部材が移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動距離を設定する移動距離設定ステップと、
前記変位部材が前記移動開始点から前記所定位置に移動するまでの移動時間を設定する移動時間設定ステップと、
予め設定された前記変位部材が変位する際の変位速度に関わる情報に基づき、前記移動時間を加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間に自動的に分割し、前記分割した移動時間及び前記移動距離に基づいて任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算する目標値演算ステップと、
前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御することで、前記変位部材を前記所定位置に変位させる駆動制御ステップと、
を備えることを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項15】
請求項14記載の駆動制御方法において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間の時間比であり、
前記目標値演算ステップでは、前記時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項16】
請求項14記載の駆動制御方法において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度の時間、一定速度の時間、減速度の時間であり、
前記目標値演算ステップでは、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間のうち少なくとも2つの時間を用いて、前記加速度の時間、前記一定速度の時間、前記減速度の時間の時間比を求め、該時間比に基づいて前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項17】
請求項14記載の駆動制御方法において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の加速度、減速度であり、
前記目標値演算ステップは、前記加速度及び前記減速度によって前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項18】
請求項14記載の駆動制御方法において、
前記変位速度に関わる情報は、前記変位部材の一定速度であり、
前記目標値演算ステップは、前記一定速度によって前記移動時間を自動的に分割することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項19】
請求項14〜18のいずれか一項に記載の駆動制御方法において、
前記目標値演算ステップでは、前記変位速度に関わる情報、前記移動距離及び前記移動時間から前記変位部材の加速度、加速度の時間、一定速度、一定速度の時間、減速度及び減速度の時間をそれぞれ算出し、算出結果に基づいて前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれか一項に記載の駆動制御方法において、
前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の一度の変位において、前記変位速度が加速度、一定速度、減速度の順に変化するように前記アクチュエータを駆動制御することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項21】
請求項20に記載の駆動制御方法において、
前記目標値演算ステップでは、前記加速度の時間が前記減速度の時間よりも短くなるように、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項22】
請求項14〜21のいずれか一項に記載の駆動制御方法において、
前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する駆動信号を生成し、
複数の種類又は機種からなるアクチュエータの仕様データとして、抵抗値、推力定数、前記変位部材の重量、前記変位部材のストロークのうち少なくとも1つの値が予め記憶されているデータベースの中から、制御される前記アクチュエータの仕様データを設定する仕様データ設定ステップと、
設定された前記仕様データに基づいて、前記駆動制御ステップにおいて生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る仕様データ用ゲイン調整ステップと、
を備えることを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項23】
請求項14〜22のいずれか一項に記載の駆動制御方法において、
前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する駆動信号を生成し、
前記変位部材の変位にともなって所定の作用をさせるワークの情報として、重量、姿勢、負荷のうち少なくとも1つの値を設定するワーク情報設定ステップと、
設定された前記ワークの情報に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送るワーク情報用ゲイン調整ステップと、
を備えることを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項24】
請求項14〜23のいずれか一項に記載の駆動制御方法において、
前記駆動制御ステップでは、前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値に基づいて前記アクチュエータを駆動制御する駆動信号を生成し、
移動距離設定ステップで設定した前記移動距離、又は前記移動時間設定ステップで設定した前記移動時間に基づいて、前記駆動制御手段において生成される駆動信号を調整するためのゲイン調整信号を送る移動情報用ゲイン調整ステップを備えることを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項25】
請求項14〜24のいずれか一項に記載の駆動制御方法において、
前記加速度の時間、前記一定速度の時間及び前記減速度の時間が異なる複数の動作モードのうちいずれか1つを設定する動作モード設定ステップを備え、
前記目標値演算ステップでは、設定された前記動作モードに基づいて、前記任意のタイミングにおける前記変位部材の変位量又は変位速度の目標値を演算することを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。
【請求項26】
請求項25記載の駆動制御方法において、
前記複数の動作モードには、前記所定位置での前記変位部材の速度が設定されていることを特徴とするアクチュエータの駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−108608(P2012−108608A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255122(P2010−255122)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】