説明

アクティブマトリクス装置、電気光学表示装置、および電子機器

【課題】優れた信頼性を有するとともに、開口率を向上させることができるアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置、および電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明のアクティブマトリクス装置10は、基板50の一方の面側に設けられた複数の画素電極8と、各画素電極8に対応して設けられ、画素電極8に接続された固定電極3と、固定電極3に対向して設けられ、固定電極3側へ変位可能な可動電極5と、可動電極5に静電ギャップを介して対向して設けられた駆動電極2とを備えるスイッチング素子1と、各可動電極5に接続された第1の配線11と、各駆動電極2に接続された第2の配線12とを有し、可動電極5は、シリコンを主材料として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス装置、電気光学表示装置、および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、アクティブマトリクス駆動方式を採用するLCD(Liquid Crystal Display)パネルには、複数の画素電極と、前記各画素電極に対応して設けられたスイッチング素子と、各スイッチング素子に接続された配線とを備えるアクティブマトリクス装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
一般に、アクティブマトリクス装置では、スイッチング素子としてTFTが用いられている。TFTは、その半導体層にa−Si薄膜やp−Si薄膜が用いられるが、これらは光導電性を有しているため、光が入射すると、光リークが生じ、TFTのオフ抵抗が低下したり、TFTの閾値がシフトしたりするおそれがある。
【0003】
前述したような光リークによる問題を解決するには、一般に、TFTへの光を遮光するブラックマトリクスのような遮光層を設ける手法が採られるが、このような遮光層を設けると、パネルの開口率が低くなり、パネルを通過する光量が少なくなってしまう。
そこで、特許文献1にかかるアクティブマトリクス装置(電気光学表示装置用バックプレーン)では、前述したようなTFTに代えてメカニカルなスイッチング素子を用いている。このようなメカニカルなスイッチング素子は光リークが生じない。そのため、遮光層を設ける必要がなく、開口率を大きくすることができる。また、メカニカルなスイッチング素子は、TFTのような温度による特性変動を生じないため、優れたスイッチング特性を有する。
【0004】
特許文献1にかかるスイッチング素子では、片持ばりにアクチュエータ電極が対向して設けられ、アクチュエータ電極に通電することにより、アクチュエータ電極と片持ばりとの間に静電引力を生じさせ、片持ばりを変位させて画素電極と接触させる。これにより、画素電極と配線とを導通状態とすることができる。
しかしながら、かかるアクティブマトリクス装置では、片持ばりが金属で構成されているため、長期使用により片持ばりに金属疲労(疲労破壊)が生じ、スイッチング素子のスイッチング特性が悪化するおそれがある。そのため、かかるアクティブマトリクス装置は、信頼性の低いものとなっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−6782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた信頼性を有するとともに、開口率を向上させることができるアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置、および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のアクティブマトリクス装置は、基板の一方の面側に設けられた複数の画素電極と、
前記各画素電極に対応して複数設けられ、前記画素電極に接続された固定電極と、前記固定電極に対して接触/離反するように変位可能に設けられた可動電極と、前記可動電極に静電ギャップを介して対向して設けられた駆動電極とを備えるスイッチング素子と、
前記各可動電極に接続された第1の配線と、
前記各駆動電極に接続された第2の配線とを有し、
前記可動電極と駆動電極との間に電圧を印加することにより、前記可動電極と駆動電極との間に静電引力を生じさせ、これにより、前記可動電極を変位させて、前記可動電極と前記固定電極とを接触させ、前記第1の配線と前記画素電極とを導通状態とするように構成され、
前記可動電極は、シリコンを主材料として構成されていることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有するとともに、開口率を向上させることができるアクティブマトリクス装置を提供することができる。
【0008】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極は、単結晶シリコンで構成されたシリコン層を有していることが好ましい。
これにより、可動電極は優れた機械的特性を有するものとなる。
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記シリコン層は、アモルファスシリコン材料を成膜した後にアニールすることにより形成されたものであることが好ましい。
これにより、可動電極を寸法精度よく形成することができる。また、スイッチング素子の小型化を図ることができる。
【0009】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極は、シリコンカーバイトで構成されていることが好ましい。
これにより、第1の配線の導電性を優れたものとすることができる。その結果、アクティブマトリクス装置の信頼性を向上させることができる。
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極には、その導電性を向上させる不純物がドーピングされていることが好ましい。
これにより、可動電極の導電性を向上させ、スイッチング素子の駆動電圧の低電圧化を図るとともに、スイッチング素子のスイッチング特性を向上させることがきる。
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極上には、シリコンよりも導電性に優れた材料で構成された薄膜が形成されていることが好ましい。
これにより、可動電極の導電性を向上させ、スイッチング素子の駆動電圧の低電圧化を図るとともに、スイッチング素子のスイッチング特性を向上させることがきる。
【0010】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記固定電極と前記可動電極と前記駆動電極とは、前記可動電極と前記駆動電極とが離間した状態のまま、前記可動電極が前記固定電極に接触するように配設されていることが好ましい。
これにより、可動電極と駆動電極との固着を防止することができる。その結果、アクティブマトリクス装置の信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記可動電極は、片持ち支持され、その自由端側が変位するように構成され、前記固定電極は、前記可動電極の自由端側の端部に対向するように設置され、前記駆動電極は、前記固定電極よりも前記可動電極の固定端側の部分に対向するように設置されていることが好ましい。
これにより、スイッチング素子の構造を簡単なものとすることができる。また、駆動電極が可動電極の固定端側に対向するため、可動電極が駆動電極側に変位(曲げ変形)したときに、可動電極が元の状態に復帰しようとする反力が大きい。そのため、駆動電極と可動電極との固着を防止することができる。
【0012】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記複数の画素電極は、前記複数のスイッチング素子に対し前記基板の厚さ方向にて異なる位置に設けられ、前記各画素電極は、平面視したときに、対応する前記スイッチング素子を包含するように設置されていることが好ましい。
これにより、開口率を向上させることができる。
【0013】
本発明のアクティブマトリクス装置では、前記第1の配線は、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記第2の配線は、前記各第1の配線に交差するとともに、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記各スイッチング素子は、前記各第1の配線と前記各第2の配線との交点付近に設けられていることが好ましい。
これにより、マトリクス状に配列された複数の画素電極に対応して複数のスイッチング素子を配列することができる。
【0014】
本発明の電気光学表示装置は、本発明のアクティブマトリクス装置を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有するとともに、高品位な画像を表示することができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気光学表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有するとともに、高品位な画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置、および電子機器の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置を示す平面図、図2は、図1中のA−A線断面図、図3は、図2に示すスイッチング素子を説明するための斜視図、図4は、図2に示すスイッチング素子の作動を説明するための図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図1中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中および図4中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0016】
(アクティブマトリクス装置)
図1に示すアクティブマトリクス装置10は、複数の第1の配線11と、この複数の第1の配線11に交差するように設けられた複数の第2の配線12と、各第1の配線11と各第2の配線12との交点付近に設けられた複数のスイッチング素子1と、各スイッチング素子1に対応して設けられた複数の画素電極8とを有し、これらが基板50上に設けられている。
【0017】
基板50は、アクティブマトリクス装置10を構成する各部(各層)を支持するもの(支持体)である。
基板50には、例えば、ガラス基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
【0018】
また、基板50の平均厚さは、その構成材料等によって若干異なり、特に限定されないが、10〜2000μm程度であるのが好ましく、30〜300μm程度であるのがより好ましい。基板50の厚さが薄すぎると、基板50の強度が低下し、支持体としての機能が損なわれるおそれがあり、一方、基板50の厚さが厚過ぎると、軽量化の観点から好ましくない。
【0019】
複数の第1の配線11は、基板50に沿って互いに平行に設けられ、複数の第2の配線12は、各第1の配線11に交差するとともに、基板50に沿って互いに平行に設けられている。
本実施形態では、複数の第1の配線11と複数の第2の配線12は、互いに直交するように配列されている。そして、複数の第1の配線11は、行選択のためのものであり、複数の第2の配線12は、列選択のためのものである。すなわち、第1の配線11および第2の配線12のうち、一方がデータ線であり、他方が走査線である。このような複数の第1の配線11と複数の第2の配線12を用いて行選択および列選択を行うことにより、選択的に所望のスイッチング素子1を作動(可動電極5と駆動電極2との間に電圧を印加)させることができる。
このように配列された各第1の配線11と各第2の配線12との交点付近に各スイッチング素子1を設けることで、マトリクス状に配列された複数の画素電極8に対応して複数のスイッチング素子1を配列することができる。
【0020】
このような各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料は、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、PEDOT(poly−ethylenedioxythiophene)のようなポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の導電性高分子材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前述した導電性高分子材料は、通常、酸化鉄、ヨウ素、無機酸、有機酸、ポリスチレンサルフォニック酸などの高分子でドープされ導電性を付与された状態で用いられる。
【0021】
これらの中でも、各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料としては、それぞれ、Al、Au、Cr、Ni、Cu、Ptまたはこれらを含む合金を主とするものが好適に用いられる。これらの金属材料を用いると、電解あるいは無電解メッキ法を用いて、容易かつ安価に各第1の配線11および各第2の配線12を形成することができる。また、アクティブマトリクス装置10の特性を向上することができる。
【0022】
本実施形態では、基板50の一方の面(上面)上には、複数の第1の配線11が設けられていとともに、前述した複数の第1の配線11を覆うように第1の絶縁層4が設けられている。そして、第1の絶縁層4の基板50とは反対側の面(上面)上には、前述した複数の第2の配線12および導電層6が設けられているとともに、複数の第2の配線12および導電層6を覆うように第2の絶縁層7が設けられている。
【0023】
この第1の絶縁層4および第2の絶縁層7は、それぞれ、一部が除去されていて、後述するスイッチング素子1の駆動部分を収納する収納部(除去部)13が形成されている。
また、第1の絶縁層4には、後述する導電層6との接続のための貫通孔(コンタクトホール)41が形成されている。また、第2の絶縁層7には、後述する画素電極8との接続のための貫通孔(コンタクトホール)71が形成されている。
【0024】
このような第1の絶縁層4および第2の絶縁層7の構成材料としては、それぞれ、絶縁性を有するものであれば、特に限定されず、各種有機材料(特に有機高分子材料)や、各種無機材料を用いることができる。
絶縁性を有する有機材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルフェニレン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリビニルフェノールあるいはノボラック樹脂のようなフェノール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテンなどのオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、絶縁性を有する無機材料としては、例えば、シリカ(SiO)、窒化珪素、酸化アルミ、酸化タンタル等の金属酸化物、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウムチタン酸鉛等の金属複合酸化物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
導電層6は、前述した固定電極3と画素電極8とを電気的に接続するためのものである。
このような導電層6は、前述した第1の絶縁層4の貫通孔41に挿通される貫通電極部61を有している。これにより、導電層6と後述する固定電極3とが電気的に接続されている。
この導電層6の構成材料としては、導電性を有していれば、特に限定されず、例えば、前述した各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料と同様のものを用いることができる。
【0026】
各画素電極8は、前述した基板50の一方の面側に設けられ、アクティブマトリクス装置10を用いて後述する液晶パネル100を構築した際に、各画素を駆動させるための電圧を印加する一方の電極を構成するものである。
本実施形態では、平面視にて、互いに隣接する2つの第1の配線11と、互いに隣接する2つの第2の配線12とで囲まれた領域内に、画素電極8が設けられている。
特に、複数の画素電極8は、複数のスイッチング素子1に対し基板50の厚さ方向にて異なる位置(上方)に設けられ、各画素電極8は、平面視したときに、対応するスイッチング素子1を包含するように設置されている。これにより、各画素電極8の面積を最大限大きくすることができ、開口率を向上させることができる。
【0027】
画素電極8の構成材料としては、例えば、Ni、Pd、Pt、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Co、Al、Cs、Rb等の金属、これらを含むMgAg、AlLi、CuLi等の合金、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、アクティブマトリクス装置10を後述するような透過型の液晶パネル100に組み込む場合には、画素電極8の構成材料としては、前述したものの中でも、透明材料が選択される。
【0028】
また、各画素電極8は、前述した第2の絶縁層7の貫通孔71に挿通される貫通電極部81を有している。これにより、画素電極8と導電層6とが電気的に接続されている。
また、各画素電極8の下面(基板50側の面)の一部は、前述した収納部13の壁面の一部を構成しており、各画素電極8には、後述する製造工程において収納部13を形成するに際しエッチング液を供給するための貫通孔82が形成されている。この貫通孔82は、封止層9によって封止されている。
【0029】
封止層9の構成材料は、貫通孔82を封止する機能を有するものであれば、特に限定されず、各種有機材料、各種無機材料を用いることができるが、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子材料を用いるのが好ましい。これにより、後述する液晶パネル100の配光膜を兼ねることができる。
【0030】
このような各画素電極8には、各画素電極8に対応して設けられたスイッチング素子1が前述した導電層6を介して接続されている。このスイッチング素子1の作動を制御することにより、後述する液晶パネル100において各画素の駆動が制御される。
各スイッチング素子1は、図2および図3に示すように、対応する第2の配線12に電気的に接続された駆動電極2と、対応する画素電極8に電気的に接続された固定電極3と、対応する第1の配線11に電気的に接続された可動電極(スイッチ片)5とを有している。
【0031】
以下、スイッチング素子1を構成する各部を順次詳細に説明する。
駆動電極2は、前述した各第2の配線12からその側方に突出するように形成されており、前述した基板50の一方の面(上面)上に設けられている。そして、駆動電極2は、可動電極5に静電ギャップを介して対向して設けられている。
この駆動電極2は、可動電極5との間に電圧を印加する(電位差を生じさせる)ことにより、可動電極5との間(静電ギャップ)に静電引力を生じさせるものである。
【0032】
このような駆動電極2は、前述した第2の配線12に電気的に接続されている。本実施形態では、第2の配線12も基板50の上面上(すなわち駆動電極2と同一面上)に形成されており、駆動電極2と第2の配線12とが一体的に形成されている。
このような駆動電極2の構成材料は、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料と同様のものを用いることができる。
また、駆動電極2の厚さは、それぞれ、特に限定されないが、10〜1000nm程度とするのが好ましく、50〜500nm程度とするのがより好ましい。
【0033】
固定電極3は、前述した駆動電極2に間隔を隔てて、前述した基板50の一方の面(上面)上に設けられている。
この固定電極3は、可動電極5と接触することにより、第1の配線12と電気的に接続されるものである。
このような固定電極3は、前述した導電層6を介して画素電極8に電気的に接続されている。
【0034】
このような固定電極3の構成材料は、導電性を有するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した各第1の配線11および各第2の配線12の構成材料と同様のものを用いることができる。
また、固定電極3の厚さは、特に限定されないが、10〜1000nm程度とするのが好ましく、50〜500nm程度とするのがより好ましい。
【0035】
可動電極5は、前述した各第1の配線11からその側方に突出するように形成され、前述した駆動電極2および固定電極3に対向するように設けられている。
この可動電極5は、帯状をなし、その長手方向での第1の絶縁層4側の端(図2にて左側の端)51が固定され、片持ち支持されている。これにより、可動電極5は、その自由端52側が駆動電極2および固定電極3側(下側)へ変位可能となっている。
このようにして、可動電極5は、固定電極3に対して接触/離反するように変位可能に設けられている。
【0036】
このような可動電極5は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、シリコンカーバイトのようなシリコン材料を主材料として構成されている。このような可動電極5は、導電性を有するとともに、弾性変形可能である。
シリコン材料は金属のような疲労を生じない。したがって、可動電極5をシリコンを主材料として構成することにより、スイッチング素子1は長期にわたり安定したスイッチング特性を発揮することができる。
また、可動電極5は、その本体が単結晶シリコンで構成されているのが好ましい。言い換えすれば、可動電極5は、単結晶シリコンで構成されたシリコン層を有しているのが好ましい。これにより、可動電極5は優れた機械的特性を有するものとなる。
【0037】
単結晶シリコンで構成されたシリコン層は、後述するようにアモルファスシリコン材料を成膜した後にアニールすることにより形成することができる。このようにして単結晶シリコンで構成されたシリコン層を形成すると、可動電極5を寸法精度よく形成することができる。また、スイッチング素子1の小型化を図ることができる。
また、このようにシリコンを主材料として構成された可動電極5には、ボロンやリンなどの不純物をドープすることができる。この場合、可動電極5の導電性を向上させ、スイッチング素子1の駆動電圧の低電圧化を図るとともに、スイッチング素子1のスイッチング特性を向上させることがきる。
【0038】
また、可動電極5の面上(シリコン層上)に前述した第1の配線11の構成材料のような導電性に優れた材料(シリコンよりも導電性に優れた材料)で薄膜を形成しても、可動電極5の導電性を向上させ、スイッチング素子1の駆動電圧の低電圧化を図るとともに、スイッチング素子1のスイッチング特性を向上させることがきる。この場合、薄膜を構成する材料としては、前述した第1の配線11の構成材料のような材料の中でも、第1の配線11と同種の材料を用いるのが好ましい。これにより、比較的簡単に、当該薄膜と第1の配線11との境界部における機械的強度を優れたものとすることができる。
本実施形態では、前述したような駆動電極2、固定電極3、および可動電極5は、画素電極8と基板50との間に形成された収納部13内に収納されている。
収納部13内は、減圧状態としてもよいし、非酸化性のガスを充填してもよし、絶縁性の液体を充填してもよい。
【0039】
このような各スイッチング素子1では、可動電極5と駆動電極2との間に電圧が印加されていないときには、図2および図3に示すように、可動電極5と固定電極3とが離間していて第1の配線11から画素電極8への通電が遮断状態となっている。
そして、可動電極5と駆動電極2との間に電圧が印加されることにより、可動電極5と駆動電極2との間に静電引力を生じさせ、図4に示すように、可動電極5と固定電極3とを接触させて第1の配線11から画素電極8への通電を導通状態とする。
【0040】
このようなメカニカルなスイッチング素子1は、TFTに比し優れた耐光性を有する。また、かかるスイッチング素子1は、TFTのような光リークを生じない。そのため、スイッチング素子1を遮光するためのブラックマトリクスのような遮光層を設ける必要がなく、アクティブマトリクス装置10における開口率を大きくすることができる。また、かかるスイッチング素子1は、温度による特性変動がないため、アクティブマトリクス装置10の冷却機構を簡易化することができる。さらに、かかるスイッチング素子1は、TFTに比し高速にスイッチング動作させることができる。
その上、前述したように可動電極5をシリコンを主材料として構成することにより、スイッチング素子1は長期にわたり安定したスイッチング特性を発揮することができる。
その結果、アクティブマトリクス装置10は、優れた信頼性を有するとともに、開口率を向上させることができる。
【0041】
ここで、前述したように、可動電極5は、片持ち支持され、その自由端52側が変位するように構成され、固定電極2は、可動電極5の自由端52側の端部に対向するように設置され、駆動電極3は、固定電極2よりも可動電極5の固定端51側の部分に対向するように設置されている。そして、固定電極2と駆動電極3と可動電極5とは、図4に示すように、可動電極5と駆動電極2とが離間した状態のまま、可動電極5が固定電極3に接触するようになっている。これにより、可動電極5と駆動電極5との固着を防止することができる。
【0042】
特に、前述したように可動電極5を片持ち支持した構造とすることにより、スイッチング素子1の構造を簡単なものとすることができる。また、駆動電極2が可動電極5の固定端側に対向するため、可動電極5が駆動電極2側に変位(曲げ変形)したときに、可動電極5が元の状態に復帰しようとする反力が大きい。そのため、駆動電極2と可動電極5との固着を確実に防止することができる。
【0043】
<アクティブマトリクス装置の製造方法>
次に、図5、図6を参照しつつ、第1実施形態のアクティブマトリクス装置10の製造方法の一例を説明する。
図5および図6は、それぞれ、図1および図2に示すアクティブマトリクス装置の製造方法(各スイッチング素子の製造方法)を説明するための図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図5および図6中の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0044】
アクティブマトリクス装置10の製造方法は、[A]基板50上に駆動電極2および固定電極3を形成する工程と、[B]第1の絶縁層4となるべき第1の絶縁膜を形成する工程と、[C]第1の絶縁膜上に可動電極5および導電層6を形成する工程と、[D]第2の絶縁層7となるべき第2の絶縁膜を形成する工程と、[E]第2の絶縁膜上に画素電極8を形成する工程と、[F]第1の絶縁膜および第2の絶縁膜の一部を除去(収納部13を形成)して第1の絶縁層4および第2の絶縁層7を形成する工程と、[G]封止層9を形成する工程とを有する。
【0045】
以下、各工程を順次詳細に説明する。
[A]
まず、図5(a)に示すように、基板50を用意する。そして、この基板50上に、図5(b)に示すように、駆動電極2および固定電極3を形成する。また、図示しないが、駆動電極2および固定電極3の形成と同時に、第2の配線12も形成する。なお、以下では、駆動電極2と固定電極3と第2の配線12とを「駆動電極2および固定電極3等」と言う。
【0046】
例えば、駆動電極2および固定電極3等を形成するに際しては、まず、基板50上に、金属膜(金属層)を形成する。
この金属膜の構成材料としては、特に限定されず、前述した駆動電極2および固定電極3の構成材料を用いることができる。
また、この金属膜は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等により形成することができる。
【0047】
この金属膜上に、フォトリソグラフィー法により、駆動電極2および固定電極3等の形状に対応する形状のレジスト層を形成する。このレジスト層をマスクとして用いて、金属膜の不要部分を除去する。
この金属膜の除去には、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
その後、レジスト層を除去することにより、図5(b)に示すように、駆動電極2および固定電極3等が得られる。
なお、駆動電極2および固定電極3等は、それぞれ、例えば、導電性粒子を含有するコロイド液(分散液)、導電性ポリマーを含有する液体(溶液または分散液)等の液状材料を基板50上に供給して被膜を形成した後、必要に応じて、この被膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施すことにより形成することもできる。
【0049】
[B]
次に、図5(c)に示すように、駆動電極2および固定電極3等を覆うように、貫通孔41を有する第1の絶縁膜4Aを形成する。
この第1の絶縁膜4Aは、後述する工程[F]により第1の絶縁層4となるものである。
【0050】
例えば、第1の絶縁膜4Aを有機絶縁材料で構成する場合、第1の絶縁膜4Aは、有機絶縁材料またはその前駆体を含む溶液駆動電極2および固定電極3等を覆うように塗布(供給)した後、必要に応じて、この塗膜に対して後処理(例えば加熱、赤外線の照射、超音波の付与等)を施し、その後、貫通孔41に対応する部分に開口を有するマスクを前述した工程[B]と同様にフォトリソグラフィー法を用いて形成し、このマスクを介してエッチングすることにより形成することができる。
【0051】
有機絶縁材料またはその前駆体を含む溶液を有機半導体層5上へ塗布(供給)する方法としては、例えば、塗布法、印刷法等を用いることができる。
また、第1の絶縁膜4Aを無機材料で構成する場合、第1の絶縁膜4Aは、例えば、熱酸化法、CVD法、SOG法等により形成することができる。また、原材料にポリシラザンを用いることで、第1の絶縁膜4Aとして、シリカ膜、窒化珪素膜を湿式プロセスで成膜することが可能である。
【0052】
[C]
次に、図5(d)に示すように、第1の配線11と可動電極5と導電層6とを形成する。このとき、貫通孔41内に導電層6の貫通電極部61が形成され、固定電極3と導電層6とが電気的に接続される。なお、以下では、第1の配線11と可動電極5と導電層6とを「可動電極5および導電層6等」と言う。
【0053】
可動電極5および導電層6等は、前述した工程[A]と同様の方法を用いて形成することができるが、シリコンを主材料として構成された可動電極5を形成するに際しては、例えば、Al−Si(2%)材料をスパッタリングし、α−Si(アモルファスシリコン)材料をスパッタリングした後に300℃程度でアニールすることにより、前記Al−Siを通じてその下層にシリコン単結晶膜の結晶化をすすめ、その後上層に移動したAl−Siをエッチング除去することでシリコン単結晶膜を形成し、このシリコン単結晶膜を前述した工程[A]と同様の方法を用いてエッチングすることにより可動電極5を形成することができる。
【0054】
[D]
次に、図6(a)に示すように、可動電極5および導電層6等を覆うように、貫通孔71を有する第2の絶縁膜7Aを形成する。
この第2の絶縁膜7Aは、後述する工程[F]により第2の絶縁層7となるものである。
このような第2の絶縁膜7Aは、前述した工程[B]と同様の方法を用いて形成することができる。
【0055】
[E]
次に、図6(b)に示すように、貫通孔82を有する画素電極8を形成する。
画素電極8は、前述した工程[A]と同様の方法を用いて形成することができる。
[F]
次に、図6(c)に示すように、画素電極8の貫通孔82が露出するように開口141を有するマスク14を形成し、このマスク14を介してウェットエッチングすることにより、第1の絶縁膜4Aおよび第2の絶縁膜7Aの一部を除去して、第1の絶縁層4および第2の絶縁層7を形成する。これにより、駆動電極2と固定電極3と可動電極5とを収容する収納部13が形成される。
【0056】
[G]
次に、マスク14を除去した後、図6(d)に示すように、複数の画素電極8を覆うように封止層9を形成する。これにより、アクティブマトリクス装置10(スイッチング素子1)を得る。
以上説明したようにして、アクティブマトリクス装置10を製造することができる。
【0057】
(電気光学表示装置)
次に、本発明の電気光学表示装置の一例として、前述したアクティブマトリクス装置10を備える液晶パネルを説明する。
図7は、本発明の電気光学表示装置を液晶パネルに適用した場合の実施形態を示す縦断面図である。
【0058】
図7に示すように、電気光学表示装置である液晶パネル100は、前述したアクティブマトリクス装置10と、アクティブマトリクス装置10に接合された配向膜60と、液晶パネル用対向基板20と、液晶パネル用対向基板20に接合された配向膜40と、配向膜60と配向膜40との空隙に封入された液晶よりなる液晶層90と、アクティブマトリクス装置(液晶駆動装置)10の外表面(上面)側に接合された偏光膜70と、液晶パネル用対向基板20の外表面(下面)側に接合された偏光膜80とを有している。
【0059】
液晶パネル用対向基板20は、マイクロレンズ基板201と、かかるマイクロレンズ基板201の表層202上に設けられ、開口203が形成されたブラックマトリックス204と、表層202上にブラックマトリックス204を覆うように設けられた透明導電膜(共通電極)209とを有している。
マイクロレンズ基板201は、凹曲面を有する複数(多数)の凹部(マイクロレンズ用凹部)205が設けられたマイクロレンズ用凹部付き基板(第1の基板)206と、かかるマイクロレンズ用凹部付き基板206の凹部205が設けられた面に樹脂層(接着剤層)207を介して接合された表層202とを有しており、また、樹脂層207では、凹部205内に充填された樹脂によりマイクロレンズ208が形成されている。
【0060】
ここで、アクティブマトリクス装置10は、液晶層90の液晶を駆動する装置である。
このアクティブマトリクス装置10のスイッチング素子1は、図示しない制御回路に接続され、画素電極8へ供給する電流を制御する。これにより、画素電極8の充放電が制御される。
配向膜60は、アクティブマトリクス装置10の画素電極8に接合されており、配向膜40は、液晶パネル用対向基板20の液晶層90にされている。ここで、配向膜60は、前述したアクティブマトリクス装置10の封止層9を兼ねている。
【0061】
配向膜40、60は、それぞれ、液晶層90を構成する液晶分子の(電圧無印加時における)配向状態を規制する機能を有する。
配向膜40、60は、特に限定されないが、通常、主として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン等の高分子材料で構成されたものである。前記高分子材料の中でも特に、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。配向膜40、60が、主として、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂で構成されたものであると、製造工程において簡便に高分子膜を形成できるとともに、耐熱性、耐薬品性などに優れた特性を有するものとなる。
【0062】
また、配向膜40、60としては、通常、上記のような材料で構成された膜に、液晶層90を構成する液晶分子の配向を規制する配向機能を付与するための処理が施されたものが用いられる。配向機能を付与するための処理法としては、例えば、ラビング法、光配向法等が挙げられる。
このような配向膜は、その平均厚さが20〜120nmであるのが好ましく、30〜80nmであるのがより好ましい。
【0063】
液晶層90は液晶分子を含有しており、画素電極8の充放電に対応して、かかる液晶分子、すなわち液晶の配向が変化する。
かかる液晶分子としては、ネマチック液晶、スメクチック液晶など配向し得るものであればいかなる液晶分子を用いても構わないが、TN型液晶パネルの場合、ネマチック液晶を形成させるものが好ましく、例えば、フェニルシクロヘキサン誘導体液晶、ビフェニル誘導体液晶、ビフェニルシクロヘキサン誘導体液晶、テルフェニル誘導体液晶、フェニルエーテル誘導体液晶、フェニルエステル誘導体液晶、ビシクロヘキサン誘導体液晶、アゾメチン誘導体液晶、アゾキシ誘導体液晶、ピリミジン誘導体液晶、ジオキサン誘導体液晶、キュバン誘導体液晶等が挙げられる。さらに、これらネマチック液晶分子にモノフルオロ基、ジフルオロ基、トリフルオロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基などのフッ素系置換基を導入した液晶分子も含まれる。
このような液晶パネル100では、通常、1個のマイクロレンズ208と、かかるマイクロレンズ208の光軸Qに対応したブラックマトリックス204の1個の開口203と、1個の画素電極8と、かかる画素電極8に接続された1個のスイッチング素子1とが、1画素に対応している。
【0064】
液晶パネル用対向基板20側から入射した入射光Lは、マイクロレンズ用凹部付き基板206を通り、マイクロレンズ208を通過する際に集光されつつ、樹脂層207、表層202、ブラックマトリックス204の開口203、透明導電膜209、液晶層90、画素電極8、基板50を透過する。このとき、マイクロレンズ基板201の入射側に偏光膜80が設けられているため、入射光Lが液晶層90を透過する際に、入射光Lは直線偏光となっている。その際、この入射光Lの偏光方向は、液晶層90の液晶分子の配向状態に対応して制御される。したがって、液晶パネル100を透過した入射光Lを偏光膜70に透過させることにより、出射光の輝度を制御することができる。
【0065】
このような液晶パネル100は、前述したようにマイクロレンズ208を有しており、しかも、マイクロレンズ208を通過した入射光Lは、集光されてブラックマトリックス204の開口203を通過する。一方、ブラックマトリックス204の開口203が形成されていない部分では、入射光Lは遮光される。したがって、液晶パネル100では、画素以外の部分から不要光が漏洩することが防止され、かつ、画素部分での入射光Lの減衰が抑制される。このため、液晶パネル100は、画素部で高い光の透過率を有する。
【0066】
以上説明したようなアクティブマトリクス装置10を備える液晶パネル100によれば、優れた信頼性を有するとともに、高品位な画像を表示することができる。
なお、本発明の電気光学表示装置は、このような液晶パネルへの適用に限定されるものではなく、電気泳動表示装置、有機または無機EL表示装置等に適用することもできる。
【0067】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の例として、前述した液晶パネル100を備える電子機器を図8ないし図11に示す第1〜4の例に基づき説明する。
(第1の例)
図8は、本発明の電子機器の第1の例であるモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0068】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が、前述の液晶パネル100と、図示しないバックライトとを備えている。バックライトからの光を液晶パネル100に透過させることにより画像(情報)を表示し得るものである。
【0069】
(第2の例)
図9は、本発明の電子機器の第2の例である携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、前述の液晶パネル100と、図示しないバックライトとを備えている。
【0070】
(第3の例)
図10は、本発明の電子機器の第3の例であるディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0071】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、前述の液晶パネル100と、図示しないバックライトとが設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、液晶パネル100は、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0072】
撮影者が液晶パネル100に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0073】
(第4の例)
図11は、本発明の電子機器の第4の例である投射型表示装置(液晶プロジェクター))の光学系を模式的に示す図である。
同図に示すように、投射型表示装置300は、光源301と、複数のインテグレータレンズを備えた照明光学系と、複数のダイクロイックミラー等を備えた色分離光学系(導光光学系)と、赤色に対応した(赤色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)240と、緑色に対応した(緑色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)250と、青色に対応した(青色用の)液晶ライトバルブ(液晶光シャッターアレイ)260と、赤色光のみを反射するダイクロイックミラー面211および青色光のみを反射するダイクロイックミラー面212が形成されたダイクロイックプリズム(色合成光学系)210と、投射レンズ(投射光学系)220とを有している。
【0074】
また、照明光学系は、インテグレータレンズ302および303を有している。色分離光学系は、ミラー304、306、309、青色光および緑色光を反射する(赤色光のみを透過する)ダイクロイックミラー305、緑色光のみを反射するダイクロイックミラー307、青色光のみを反射するダイクロイックミラー(または青色光を反射するミラー)308、集光レンズ310、311、312、313および314とを有している。
【0075】
液晶ライトバルブ250は、前述した液晶パネル100を備えている。液晶ライトバルブ240および260も、液晶ライトバルブ250と同様の構成となっている。これら液晶ライトバルブ240、250および260が備えている液晶パネル100は、図示しない駆動回路にそれぞれ接続されている。
なお、投射型表示装置300では、ダイクロイックプリズム210と投射レンズ220とで、光学ブロック200が構成されている。また、この光学ブロック200と、ダイクロイックプリズム210に対して固定的に設置された液晶ライトバルブ240、250および260とで、表示ユニット230が構成されている。
【0076】
以下、投射型表示装置300の作用を説明する。
光源301から出射された白色光(白色光束)は、インテグレータレンズ302および303を透過する。この白色光の光強度(輝度分布)は、インテグレータレンズ302および303により均一にされる。光源301から出射される白色光は、その光強度が比較的大きいものであるのが好ましい。これにより、スクリーン320上に形成される画像をより鮮明なものとすることができる。また、投射型表示装置300では、耐光性に優れた液晶パネル100を用いているため、光源301から出射される光の強度が大きい場合であっても、優れた長期安定性が得られる。
【0077】
インテグレータレンズ302および303を透過した白色光は、ミラー304で図11中左側に反射し、その反射光のうちの青色光(B)および緑色光(G)は、それぞれダイクロイックミラー305で図11中下側に反射し、赤色光(R)は、ダイクロイックミラー305を透過する。
ダイクロイックミラー305を透過した赤色光は、ミラー306で図11中下側に反射し、その反射光は、集光レンズ310により整形され、赤色用の液晶ライトバルブ240に入射する。
【0078】
ダイクロイックミラー305で反射した青色光および緑色光のうちの緑色光は、ダイクロイックミラー307で図11中左側に反射し、青色光は、ダイクロイックミラー307を透過する。
ダイクロイックミラー307で反射した緑色光は、集光レンズ311により整形され、緑色用の液晶ライトバルブ250に入射する。
また、ダイクロイックミラー307を透過した青色光は、ダイクロイックミラー(またはミラー)308で図11中左側に反射し、その反射光は、ミラー309で図11中上側に反射する。前記青色光は、集光レンズ312、313および314により整形され、青色用の液晶ライトバルブ260に入射する。
【0079】
このように、光源301から出射された白色光は、色分離光学系により、赤色、緑色および青色の三原色に色分離され、それぞれ、対応する液晶ライトバルブに導かれ、入射する。
この際、液晶ライトバルブ240が有する液晶パネル100の各画素(スイッチング素子1とこれに接続された画素電極8)は、赤色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路(駆動手段)により、スイッチング制御(オン/オフ)、すなわち変調される。
【0080】
同様に、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ250および260に入射し、それぞれの液晶パネル100で変調され、これにより緑色用の画像および青色用の画像が形成される。この際、液晶ライトバルブ250が有する液晶パネル100の各画素は、緑色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路によりスイッチング制御され、液晶ライトバルブ260が有する液晶パネル100の各画素は、青色用の画像信号に基づいて作動する駆動回路によりスイッチング制御される。
これにより赤色光、緑色光および青色光は、それぞれ、液晶ライトバルブ240、250および260で変調され、赤色用の画像、緑色用の画像および青色用の画像がそれぞれ形成される。
【0081】
前記液晶ライトバルブ240により形成された赤色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ240からの赤色光は、面213からダイクロイックプリズム210に入射し、ダイクロイックミラー面211で図11中左側に反射し、ダイクロイックミラー面212を透過して、出射面216から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ250により形成された緑色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ250からの緑色光は、面214からダイクロイックプリズム210に入射し、ダイクロイックミラー面211および212をそれぞれ透過して、出射面216から出射する。
また、前記液晶ライトバルブ260により形成された青色用の画像、すなわち液晶ライトバルブ260からの青色光は、面215からダイクロイックプリズム210に入射し、ダイクロイックミラー面212で図11中左側に反射し、ダイクロイックミラー面211を透過して、出射面216から出射する。
【0082】
このように、前記液晶ライトバルブ240、250および260からの各色の光、すなわち液晶ライトバルブ240、250および260により形成された各画像は、ダイクロイックプリズム210により合成され、これによりカラーの画像が形成される。この画像は、投射レンズ220により、所定の位置に設置されているスクリーン320上に投影(拡大投射)される。
以上説明したような液晶パネル100を備える電子機器によれば、優れた信頼性を有するとともに、高品位な画像を表示することができる。
【0083】
なお、本発明の電子機器は、図8のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図9の携帯電話機、図10のディジタルスチルカメラ、図11の投射型表示装置の他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータなどが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部、モニタ部として、前述した本発明の電気光学表示装置が適用可能なことは言うまでもない。
以上のようにアクティブマトリクス装置10を備えた電子デバイスや電子機器は、優れた信頼性を有する。
【0084】
以上、本発明のアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のアクティブマトリクス装置、電気光学表示装置および電子機器では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0085】
また、前述した実施形態では、投射型表示装置(電子機器)は、3個の液晶パネルを有するものであり、これらの全てに本発明の電気光学表示装置を適用したものについて説明したが、少なくともこれらのうち1個が、本発明にかかる電気光学表示装置(液晶パネル)であればよい。この場合、少なくとも、青色用の液晶ライトバルブに用いられる液晶パネルに本発明を適用するのが好ましい。
また、前述した実施形態では、透過型の電気光学表示装置に本発明を適用した例を説明したが、本発明は、これに限定されず、LCOS(Liquid crystal on silicon)のような反射型の電気光学表示装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態にかかるアクティブマトリクス装置を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図2に示すスイッチング素子を説明するための斜視図である。
【図4】図2に示すスイッチング素子の作動を説明するための図である。
【図5】図1に示すアクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図6】図1に示すアクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明の電気光学表示装置の一例たる液晶パネルの構成を示す縦断面図である。
【図8】本発明の電子機器の第1の例であるモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器の第2の例である携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器の第3の例であるディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の電子機器の第4の例である投射型表示装置の光学系を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1……スイッチング素子 2……駆動電極 3……固定電極 4……第1の絶縁層 4A……第1の絶縁膜 41……貫通孔 5……可動電極 50……基板 51……固定端 52……自由端 6……導電層 61……貫通電極部 7……第2の絶縁層 7A……第2の絶縁膜 71……貫通孔 8……画素電極 81……貫通電極部 82……貫通孔 9……封止層 10……アクティブマトリクス装置 11……第1の配線 12……第2の配線 13……収納部 14……マスク 100……液晶パネル 90……液晶層 60……無機配向膜 40……無機配向膜 209……透明導電膜 70……偏光膜 80……偏光膜 201……マイクロレンズ基板 206……マイクロレンズ用凹部付き基板 205……凹部 208……マイクロレンズ 202……表層 207……樹脂層 20……液晶パネル用対向基板 204……ブラックマトリックス 203……開口 141……開口 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ 300……投射型表示装置 301……光源 302、303……インテグレータレンズ 304、306、309……ミラー 305、307、308……ダイクロイックミラー 310〜314……集光レンズ 320……スクリーン 200……光学ブロック 210……ダイクロイックプリズム 211、212……ダイクロイックミラー面 213〜215……面 216……出射面 220……投射レンズ 230……表示ユニット 240〜260……液晶ライトバルブ L……入射光 Q……光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面側に設けられた複数の画素電極と、
前記各画素電極に対応して複数設けられ、前記画素電極に接続された固定電極と、前記固定電極に対して接触/離反するように変位可能に設けられた可動電極と、前記可動電極に静電ギャップを介して対向して設けられた駆動電極とを備えるスイッチング素子と、
前記各可動電極に接続された第1の配線と、
前記各駆動電極に接続された第2の配線とを有し、
前記可動電極と駆動電極との間に電圧を印加することにより、前記可動電極と駆動電極との間に静電引力を生じさせ、これにより、前記可動電極を変位させて、前記可動電極と前記固定電極とを接触させ、前記第1の配線と前記画素電極とを導通状態とするように構成され、
前記可動電極は、シリコンを主材料として構成されていることを特徴とするアクティブマトリクス装置。
【請求項2】
前記可動電極は、単結晶シリコンで構成されたシリコン層を有している請求項1に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項3】
前記シリコン層は、アモルファスシリコン材料を成膜した後にアニールすることにより形成されたものである請求項2に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項4】
前記可動電極は、シリコンカーバイトで構成されている請求項1に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項5】
前記可動電極には、その導電性を向上させる不純物がドーピングされている請求項1ないし4のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項6】
前記可動電極上には、シリコンよりも導電性に優れた材料で構成された薄膜が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項7】
前記固定電極と前記可動電極と前記駆動電極とは、前記可動電極と前記駆動電極とが離間した状態のまま、前記可動電極が前記固定電極に接触するように配設されている請求項1ないし6のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項8】
前記可動電極は、片持ち支持され、その自由端側が変位するように構成され、前記固定電極は、前記可動電極の自由端側の端部に対向するように設置され、前記駆動電極は、前記固定電極よりも前記可動電極の固定端側の部分に対向するように設置されている請求項7に記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項9】
前記複数の画素電極は、前記複数のスイッチング素子に対し前記基板の厚さ方向にて異なる位置に設けられ、前記各画素電極は、平面視したときに、対応する前記スイッチング素子を包含するように設置されている請求項1ないし8のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項10】
前記第1の配線は、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記第2の配線は、前記各第1の配線に交差するとともに、前記基板に沿って互いに平行に複数設けられ、前記各スイッチング素子は、前記各第1の配線と前記各第2の配線との交点付近に設けられている請求項1ないし9のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のアクティブマトリクス装置を備えることを特徴とする電気光学表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の光学表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−122144(P2009−122144A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292610(P2007−292610)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】