説明

アクリル系樹脂溶液、アクリル系粘着剤組成物、アクリル系粘着剤、光学部材用アクリル系粘着剤、粘着剤層付き光学部剤、アクリル系樹脂溶液の製造方法

【課題】 厚塗り塗工が可能で、厚膜の粘着剤層を得ることが可能な、架橋剤硬化タイプの溶剤系アクリル系粘着剤の提供する。
【解決手段】 (メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(a)を、60℃における酢酸ビニルの有機溶剤への連鎖移動定数が250以上となる有機溶剤(b)の存在下で重合して得られるアクリル系樹脂(A)を含有するアクリル系樹脂溶液であり、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が5万〜30万で、かつ樹脂溶液の固形分濃度が60%以上であることを特徴とするアクリル系樹脂溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系樹脂溶液、アクリル系粘着剤組成物、アクリル系粘着剤、光学部材用アクリル系粘着剤、粘着剤層付き光学部剤、アクリル系樹脂溶液の製造方法に関するものであり、詳しくは厚塗り塗工に適した非活性エネルギー線硬化型の溶剤系アクリル系粘着剤の製造に用いられるアクリル系樹脂溶液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクリル系粘着剤には、被着体を強固に長期間貼り合わせることを目的とする強粘着性の粘着剤や、貼り付け後に被着体から剥離することを前提とする剥離タイプの粘着剤など様々なタイプの粘着剤が存在しており、各種分野ごとに粘着物性が最適化された粘着剤が設計され、使用されている。
【0003】
近年では、粘着剤に要求される性能としては、粘着力等の粘着物性のみならず、液晶表示装置などでガラス基板の貼り合わせに用いられる際には、粘着剤層自身に透明性、耐衝撃吸収性が求められており、このような用途では、耐衝撃吸収性能を向上させるために、粘着剤層の厚みを厚くすることが提案されている。
【0004】
また、アクリル系樹脂を用いて粘着剤層を厚くする(厚膜塗工する)ための手法として、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、粘着剤を硬化させ、厚膜の粘着剤層を得る方法が知られている。(例えば、特許文献1および2参照。)
【0005】
上記活性エネルギー線硬化型の粘着剤は、一般的に、通常のアクリル系粘着剤で粘度調整のために用いられる溶剤を含有せず、光重合性の不飽和モノマーを希釈モノマーとして溶剤の代わりに用いる無溶剤系の粘着剤であるため、粘着剤の塗工後に溶剤をとばすための乾燥工程が必要なく、厚塗り塗工をした際においても短時間で効率的に粘着剤層を得ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−94191号公報
【特許文献2】特開2007−314618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に、粘着テープを曲面や凹凸面などに対して貼り付ける際には、被着体に対する追従性が求められるために、粘着テープにおいて粘着剤層が形成される支持体フィルムには、薄くて柔らかいものが用いられている。このような薄くて柔らかい支持体フィルムに対して、上記活性エネルギー線硬化型の粘着剤を用い活性エネルギー線を照射すると、熱などの影響により支持体フィルムが損傷を受けてしまう可能性があった。
【0008】
従って、このような曲面や凹凸面などに対して貼り付けを要する用途においては、厚膜の粘着剤層を得ようとしても、活性エネルギー線硬化型の粘着剤は用いることができず、架橋剤による架橋により粘着剤層が形成される溶剤タイプのアクリル系粘着剤を用いて、厚膜の粘着剤層を得る必要がある。
【0009】
そこで、本発明ではこのような背景下において、厚塗り塗工が可能で、厚膜の粘着剤層を得ることが可能で、更に粘着物性及び透明性に優れた架橋剤硬化タイプの溶剤型アクリル系粘着剤の製造に用いられるアクリル系樹脂溶液、それを用いたアクリル系粘着剤組成物、アクリル系粘着剤、粘着剤層付き光学部剤、並びに光学部剤用アクリル系粘着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系モノマー成分を特定の連鎖移動定数を示す有機溶剤中の存在下で重合することにより、比較的低分子量のアクリル系樹脂を得ることができ、かかるアクリル系樹脂を含有する樹脂溶液は固形分濃度を高くしても粘度が高くなりすぎないために、厚塗り塗工し粘着剤を得た際にも塗工時に液だれ等が発生せず、溶剤の乾燥が容易にでき、得られた粘着剤層が、粘着力、保持力、透明性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(a)を、60℃における酢酸ビニルの有機溶剤への連鎖移動定数が250以上となる有機溶剤(b)の存在下で重合して得られるアクリル系樹脂(A)を含有するアクリル系樹脂溶液であり、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が5万〜30万で、かつ樹脂溶液の固形分濃度が60%以上であることを特徴とするアクリル系樹脂溶液に関するものである。
更には、かかるアクリル系樹脂溶液を含有してなるアクリル系粘着剤組成物、該アクリル系粘着剤組成物を用いて得られるアクリル系粘着剤、光学部材用アクリル系粘着剤、粘着剤層付き光学部剤、並びにアクリル系樹脂溶液の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアクリル系樹脂溶液は、特定有機溶剤中で製造された重量平均分子量の低いアクリル系樹脂を含有しているために、通常の溶剤系のアクリル系粘着剤を製造するためのアクリル系樹脂溶液と比べて、固形分濃度をかなり高くすることが可能となり、かかるアクリル系樹脂溶液を用いて厚塗り塗工し、アクリル系粘着剤を得た際にも、塗工時に液だれや塗工筋等が発生せず、溶剤の乾燥が容易にできるものであり、更に、得られた粘着剤層の粘着力、保持力、透明性、耐腐食性等に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0014】
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を主成分とするモノマー成分(a)を60℃における酢酸ビニルの有機溶剤への連鎖移動定数が250以上となる有機溶剤(B)中で重合して得られるものである。
【0015】
モノマー成分(a)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の他に、必要に応じて、官能基含有モノマー(a2)、その他の共重合性モノマー(a3)を共重合成分として用いてもよいが、アクリル系樹脂(A)は、共重合成分として官能基モノマー(a2)を使用したものであることが、アクリル系樹脂(A)の架橋点となり、基材や被着体との密着性を更に上昇させる点で好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を主成分とする共重合体とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)をもっとも多く含む共重合体であり、全共重合成分に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)を50重量%以上、特には55重量%以上、更には60重量%以上含有することが好ましい。
【0016】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、アルキル基の炭素数が、通常1〜20、特には1〜12、更には1〜8であることが好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂肪族アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0017】
かかる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の中でも、共重合性、粘着物性、取り扱いやすさ及び原料入手しやすさの点で、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、更に好ましくは耐久性に優れる点でn−ブチル(メタ)アクリレートが用いられる。
【0018】
共重合成分中における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)の含有割合は、好ましくは50〜99.9重量%、特に好ましくは60〜99.8重量%、更に好ましくは70〜99.7重量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)が少なすぎると、例えば粘着剤として使用した場合は、粘着力が不足する傾向にある。
【0019】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)としては、メチルアクリレートを、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)全体に対して、好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%含有することも高い粘着力が得られやすい点で好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を有するモノマーを、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a1)全体に対して、好ましくは1〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%含有することも、各種被着体への密着が得られやすい点で好ましい。
【0020】
官能基含有モノマー(a2)としては、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等が挙げられ、これらの中でも、効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。
【0021】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0022】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2%以下、殊には0.1%以下のものを使用することが好ましい。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0023】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸等が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。
【0024】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等が挙げられ、中でも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。る。
【0026】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0027】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等が挙げられる。
これら官能基含有モノマー(a2)は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよく、特には、カルボキシル基含有モノマーとアミノ基含有モノマーの組合わせ、水酸基含有モノマーとアミノ基含有モノマーの組み合わせが、架橋反応が早くなるためシート形成性に優れる点で好ましい。
【0028】
アクリル系樹脂(A)の共重合成分中における官能基含有モノマー(a2)の含有割合は、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.2〜25重量%、更に好ましくは0.3〜20重量%であり、官能基含有モノマー(a2)が少なすぎると、架橋時の架橋点が少なくなりすぎるため、架橋後の凝集力が不足する傾向があり、多すぎると粘着力が下がりすぎる傾向がある。ただし、官能基含有モノマー(a2)として水酸基含有モノマーを用いる場合には、アクリル系樹脂(A)の共重合成分中における含有割合としては、耐湿熱性や透明性に優れる点で、20重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは20〜50重量%である。
【0029】
その他の共重合性モノマー(a3)としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基およびオキシアルキレン基を含有するモノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
【0030】
共重合成分中におけるその他共重合性モノマー(a3)の含有割合は、好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜30重量%、更に好ましくは0〜25重量%であり、共重合性モノマー(a3)が多すぎると粘着特性が低下しやすい傾向がある。
【0031】
本発明で用いられる有機溶剤(b)は、60℃における酢酸ビニルの有機溶剤への連鎖移動定数が250以上となるものであることが必要である。
ここで、本発明における連鎖移動定数Cとは、60℃において酢酸ビニルモノマーを重合させる際に、酢酸ビニルの生長末端ラジカルの酢酸ビニルと有機溶剤への反応速度定数をそれぞれkp、ktrとした時に、下記式で計算されるものである。
【0032】
(数1)
C=(ktr/kp)×10
上記連鎖移動定数としては、好ましくは300以上、特に好ましくは400以上、更に好ましくは500以上であり、通常上限は10000である。かかる連鎖移動定数が小さすぎるとアクリル樹脂の分子量が高くなり、厚膜塗工が困難になる傾向がある。
【0033】
有機溶剤(b)としては、有機溶剤(b)の連鎖移動定数が250以上であれば、有機溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上の有機溶剤を組み合わせて用いてもよい。ここで、有機溶剤(b)が2種以上の有機溶剤を含む場合は、有機溶剤(b)の連鎖移動定数は平均連鎖移動定数で表わされる。
2種以上の有機溶剤を用いる際の平均連鎖移動定数は、
n種類の有機溶剤(X1、X2…Xnを)用いる際に、
各有機溶剤の連鎖移動定数をA1、A2…An、
各有機溶剤の含有割合(重量%)をB1、B2…Bn
とすると、下記式で計算されるものである。
【0034】
(数2)
平均連鎖移動定数=A1×(B1/100)+A2×(B2/100)+
…+An×(Bn/100)
【0035】
通常一般的にアクリル系粘着剤に配合される主な有機溶剤の連鎖移動定数としては、例えば、メチルエチルケトン(738)、トルエン(208.9)、アセトン(117)、酢酸エチル(33)である。
なお、( )内の数値は、J.brandrup,E.H.Immergut編“Polymer Handbook”,p.II−91,Interscience(1965)に基づく値である。
【0036】
本発明では、アクリル系樹脂(A)の分子量を調整しやすい点で、有機溶剤(b)の50重量%以上がメチルエチルケトンであることが好ましく、特に好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上がメチルエチルケトンである。メチルエチルケトンが少なすぎると、アクリル系樹脂溶液の粘度が高くなりすぎ、塗工しにくい傾向がある。かかるメチルエチルケトンと組み合わせる溶剤としては、好ましくは、トルエン、アセトン、酢酸エチル等が挙げられ、良好な塗工面が得られやすい点で特に好ましくはトルエンである。
【0037】
本発明においては、上記モノマー成分(a)を有機溶剤(b)の存在下で重合反応を行なうものである。
【0038】
かかる重合にあたっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合などの従来公知の方法により行なうことができる。
例えば、有機溶剤(b)中に、モノマー成分(a)、重合開始剤を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜98℃で通常2〜20時間重合する。
【0039】
有機溶剤(b)の配合量としては、モノマー成分(a)100重量部に対して、10〜70重量部であることが好ましく、特に好ましくは15〜60重量部、更に好ましくは20〜50重量部である。
かかる配合量が少なすぎると重合中の粘度が高くなりすぎ、製造が困難になる傾向があり、多すぎると固形分が低くなってしまい、厚膜化が困難になる傾向がある。
【0040】
上記重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系重合開始剤等が具体例として挙げられる。
【0041】
本発明においては、上記で得られるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が、5万〜30万であることが、アクリル系樹脂溶液の粘度が低くなり厚膜の粘着剤層を得るために必要な高固形分化を行ないやすくなる点で必要であり、好ましくは6万〜25万、特に好ましくは7万〜20万、殊に好ましくは8万〜18万である。重量平均分子量が小さすぎると、凝集力が不足し、大きすぎるとアクリル系樹脂溶液の粘度が高くなるため、きれいな塗工面が得られ難くなる。
【0042】
アクリル系樹脂(A)の数平均分子量については、通常3,000〜15万、好ましくは5,000〜13万、特に好ましくは8,000〜10万、殊に好ましくは1万〜8万である。数平均分子量が小さすぎると、凝集力が不足する傾向があり、大きすぎるとアクリル系樹脂溶液の粘度が高くなるため、きれいな塗工面が得られ難くなる傾向がある。
【0043】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には10以下が好ましく、更には7以下が好ましく、殊には4以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、耐久性試験を行なった際に発泡等が発生しやすくなる傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常2である。
【0044】
更に、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、通常−75〜−10℃、好ましくは−70〜−15℃、更に好ましくは−60〜−20℃であり、ガラス転移温度が高すぎると粘着特性が得がたい傾向があり、低すぎると粘着力が低下する傾向がある。
【0045】
尚、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10、分離範囲:100〜2×10、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度(Tg)は以下のFoxの式より算出されるものである。
【0046】
【数3】

Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0047】
また、本発明のアクリル系粘着剤を電子部材、特に精密電子部材に貼り合わせて用いる情報ラベル用途や、電子部材固定用途で使用する際には、耐腐食性が求められるため、この場合は、上記アクリル系樹脂(A)が酸性基を含有しないものであることが好ましい。
【0048】
かくして、本発明のアクリル系樹脂(A)を含有してなるアクリル系樹脂溶液が得られるわけであるが、本発明では、かかるアクリル系樹脂溶液が特定範囲の固形分濃度を有していることが、後述の架橋剤(B)を配合したアクリル系粘着剤組成物として、基材に塗工する際に、厚塗りでの塗工が可能となるため非常に重要である。
【0049】
本発明のアクリル系樹脂溶液は、固形分濃度が60重量%以上であることが必要であり、好ましくは65重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、更に好ましくは75重量%以上であり、かかる固形分濃度の上限としては、通常90重量%である。
かかる固形分濃度が低すぎると、厚塗り塗工が困難になり厚膜の粘着剤層が得られにくい傾向がある。
ここで、アクリル系樹脂溶液の固形分濃度(重量%)は、例えば、アルミ箔に試料1gを精秤し、ケット(赤外線乾燥機、185W、高さ5cm)で45分加熱後の残量により算出することができる。
【0050】
本発明では、アクリル系樹脂溶液においては、全固形分に対して60重量%以上がアクリル系樹脂(A)であることが凝集力を担保できる点で好ましく、特に好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上がアクリル系樹脂(A)である。通常、全固形分に対するアクリル系樹脂(A)の含有割合の上限としては、100重量%である。
【0051】
また、本発明のアクリル系樹脂溶液は、粘度が20,000mPa・s/25℃以下であることが塗工性の点から好ましく、特に好ましくは18,000mPa・s/25℃以下、更に好ましくは15,000mPa・s/25℃以下である。通常、かかる粘度の下限値としては、100mPa・s/25℃である。
かかる粘度が高すぎると、塗工筋が出やすくなったりする等により、塗工が困難になる傾向がある。
【0052】
本発明においては、上記アクリル系樹脂溶液に、更に架橋剤(B)を配合し、アクリル系粘着剤組成物とすることが好ましく、アクリル系粘着剤組成物とした後、かかるアクリル系粘着剤組成物が、架橋剤(B)により架橋されることでアクリル系粘着剤となるのである。
【0053】
かかる架橋剤(B)は、主としてアクリル系樹脂(A)の構成モノマーである官能基含有モノマー(a2)由来の官能基と反応することで、優れた粘着力を発揮するものであり、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。
これらの中でも、基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられる。
【0054】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、およびこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられるが、これらの中でも、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリオール化合物とのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体が好ましく用いられ、トリメチロールプロパンの2,4−トリレンジイソシアネート付加物、トリメチロールプロパンの2,6−トリレンジイソシアネート付加物、または、それらの混合物が特に好ましく用いられる。
【0055】
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エテレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシングリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等があげられる。
【0056】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N′−ジフェニルメタン−4,4′−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N′−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0057】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0058】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0059】
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
【0060】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
【0061】
また、これらの架橋剤(B)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記架橋剤(B)の含有量は、通常は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜15重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。架橋剤(B)が少なすぎると、凝集力が不足し、充分な耐久性が得られない傾向がみられ、多すぎると柔軟性および粘着力が低下しやすくなる傾向がみられる。
【0063】
また、厚塗り塗工する場合のシート形成性に優れる点で、架橋剤(B)と共に、架橋促進剤(架橋触媒)を用いることも好ましい。かかる架橋促進剤(架橋触媒)としては、ベンジルメチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルー4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、パラトルエンスルホン酸、リン酸等の酸触媒、錫や亜鉛の金属酸化物等が挙げられる。
【0064】
また、アクリル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、更にシランカップリング剤、帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の配合剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができる。これら添加剤の配合量は、組成物全体の30重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは20重量%以下であり、配合剤として分子量が1万よりも低い低分子成分は極力含まないことが耐久性に優れる点で好ましい。
【0065】
また、上記配合剤の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0066】
上記アクリル系粘着剤組成物が架橋剤(B)により硬化されて(架橋されて)アクリル系粘着剤が得られるのである。
【0067】
本発明のアクリル系粘着剤は、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層と基材とを含有する粘着シートに用いることが好ましい。
【0068】
かかる粘着シートは、公知一般の粘着シートの製造方法に従って製造することができ、例えば、アクリル系粘着剤組成物を基材上に設けた後、乾燥、養生することにより得られるものである。
【0069】
上記アクリル系粘着剤組成物を設ける基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材は、単層体として又は2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0070】
また、本発明においては、上記アクリル系粘着剤を光学部材用アクリル系粘着剤として用いることが好ましく、かかるアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0071】
かかる光学部材としては、ITO電極膜等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、ARフィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明電極膜であるときが本発明の効果を顕著に発揮でき、高い粘着力が得られる点で好ましく、特に好ましくはITO(インジウムチンオキサイド)電極膜である。
ここで、アクリル系樹脂(A)が、酸性基を含有しない場合には、特に腐食が起こりにくく好ましい。
【0072】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体を貼合することとなる。かかる離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0073】
上記離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を作製するに際して、アクリル系粘着剤組成物を架橋させる方法については、〔1〕光学部材上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、離型シートを貼合し、エージング処理を行う方法、〔2〕離型シート上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布し、乾燥した後、光学部材を貼合し、エージング処理を行なう方法により行なうことができる。これらの中でも、〔2〕の方法が光学部材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0074】
なお、アクリル系粘着剤組成物に架橋剤(B)を用いる場合には、上記方法を用いて粘着剤層付き光学部材を製造した後にエージング処理を施すことが好ましい。かかるエージング処理は、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、好ましくは、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
【0075】
上記アクリル系粘着剤組成物の塗布(塗工)に際しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0076】
ここまで、一旦離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を製造した後に、かかる上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体(その他光学部材)を貼合する粘着剤の使用方法について説明したが、本発明においては、上記アクリル系粘着剤を用いて両面粘着シートを作製することも好ましく、かかる両面粘着シートを用いて光学部材どうしを貼合する方法を用いてもよい。
【0077】
かかる両面粘着シートとしては、上記アクリル系粘着剤を用いて公知一般の構成の両面粘着シートを適用すればよいが、特には透明性に優れ、構成する厚みに対しての粘着力が高い点で基材レス両面粘着シートとすることが好ましい。かかる基材レス両面粘着シートは、離型シート上に上記アクリル系粘着剤からなる粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の離型シートのない側に、更に別の離型シートを貼合することにより得ることができる。使用方法は、一方の離型シートを剥がして被着体に貼合した後、他方の離型シートを剥がして被着体に貼合すればよい。
【0078】
上記粘着シートの粘着剤層、粘着剤層付き光学部材の粘着剤層、および両面粘着シートの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から30〜98%であることが好ましく、特には40〜95%が好ましく、殊には50〜90%であることが好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足になる傾向がある。また、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下してしまう傾向がある。
【0079】
なお、粘着シートの粘着剤層、光学部材用粘着剤及び両面粘着シートの粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。
【0080】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の、トルエン浸漬前の粘着剤層に対する、重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0081】
上記粘着シート、粘着剤層付き光学部材、両面粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、通常3〜200μmであることが好ましく、特には5〜150μmであることが好ましく、更には10〜100μmであることが好ましい。
かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると光学部材全体の厚みが増しすぎてしまう傾向がある。
【0082】
なお、本発明のアクリル系粘着剤組成物においては、前述の通り、該組成物が含有するアクリル系樹脂溶液の固形分濃度が高く、かつ低粘度なものであるために、通常一般に用いられている低粘度化のために溶剤で希釈された固形分濃度の低いアクリル系粘着剤組成物では塗工、乾燥して得ることが不可能であった、厚膜の粘着剤層を得ることが可能となるのである。
【0083】
上記厚膜の粘着剤層を得る場合には、80μm以上の膜厚で塗工することが好ましく、特に好ましくは110μm以上、更に好ましくは140μm以上であり、乾燥後に得られる粘着剤層の膜厚で、50μm以上であることが好ましく、特に好ましくは80μm以上、更に好ましくは100μm以上である。
かかる膜厚の上限としては、塗工時の膜厚で通常3000μm、乾燥後の膜厚で通常2000μmである。
また、特に衝撃吸収や空気層等の空隙を埋めるための用途に用いる場合には、乾燥後の粘着剤層の膜厚が100μm以上であることが好ましく、特に好ましくは120μm以上であり、上限としては通常2000μmである。
【0084】
本発明の粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定されるが、例えば、ガラス基板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ITO層を蒸着したPETシートに貼着する場合には、5N/25mm〜500N/25mmの粘着力を有することが好ましく、更には10N/25mm〜100N/25mmが好ましい。
【0085】
なお、上記粘着力(N/25mm)は、つぎのようにして算出される。厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に乾燥後の厚みが25μmとなるように粘着剤層が形成された粘着剤層付きPETシートを、幅25mm幅に裁断する。次いで、離型シートを剥離して、25mm×100mmの上記粘着剤層付きPETシートの粘着剤層側を、ソーダガラス等に23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置する。その後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、得られる値を粘着力(N/25mm)とする。
【0086】
本発明の粘着剤層の全光線透過率は、90%以上であることが好ましく、特に好ましくは92%以上である。かかる全光線透過率が低すぎると、透過性が低いためディスプレイ用途で使用しにくい傾向がある。なお、全光線透過率の上限は通常95%である。
【0087】
本発明の粘着剤層のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、特に好ましくは2%以下である。かかるヘイズ値が高すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、画像が不鮮明になる傾向がある。なお、ヘイズ値の下限は通常0.00%である。
【0088】
ここで、上記の全光線透過率およびヘイズ値はJIS K7361−1に準拠したヘイズメーターを使用して測定した値である。
例えば、粘着剤層の全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠した、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定することができる。
また、粘着剤層の拡散透過率も同様に、例えば、JIS K7361−1に準拠した、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定することができる。粘着剤層のヘイズ値は、得られた全光線透過率及び拡散透過率の値から、ヘイズ値(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100として算出できる。
【0089】
なお、本発明における、ヘイズ、全光線透過率の測定は、粘着層のみを、光学PET(全光線透過率=91.6%、ヘイズ値=0.7%)に貼着し測定した値である。
【0090】
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤は、両面粘着シート、特には基材を有しない(基材レス)両面粘着シートとして好適に用いることができ、特には、粘着力が高く、耐熱信頼性や耐衝撃信頼性に優れ、高い光透過性を有し、ヘイズを発生させにくく、ガラスやITO透明電極シート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の光学シート類、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学部材貼り付け用途に有用である。更に、これら光学部材を含んでなるタッチパネルに対して好適に用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは
、重量基準を意味する。
【0092】
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂溶液(以下、「アクリル系樹脂溶液(I)」と記載することがある。)を調製した。なお、アクリル系樹脂溶液(I)の重量平均分子量、数平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
【0093】
なお、アクリル系樹脂溶液(I)の固形分濃度は、アルミ箔にアクリル樹脂溶液1〜2gを取り、ケット(赤外線乾燥機、185W、高さ5cm)で45分間加熱乾燥し、乾燥前後の重量変化を測定し算出した。アクリル系樹脂溶液(I)の粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0094】
〔アクリル樹脂溶液(I)の調製〕(表1参照。)
【0095】
[アクリル系樹脂溶液(I−1)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内にメチルエチルケトン(b)28部、トルエン(b)8部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったらブチルアクリレート(a1)98部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)2部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)2部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させ、アクリル系樹脂溶液(I−1)(固形分濃度72.5%、粘度4000mPa・s/25℃、重量平均分子量131,000、数平均分子量49,200、分散度2.66、ガラス転移温度−54.3℃)を得た。
【0096】
[アクリル系樹脂溶液(I−2)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内にメチルエチルケトン(b)28部、トルエン(b)8部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったらブチルアクリレート(a1)83部、メチルアクリレート(a1)10部、アクリロイルモルフォリン(a3)5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)2部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)2部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させアクリル系樹脂溶液(I−2)(固形分濃度72.5%、粘度13,000mPa・s/25℃、重量平均分子量124,000、数平均分子量50,500、分散度2.46、ガラス転移温度−43.7℃)を得た。
【0097】
[アクリル系樹脂溶液(I−3)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内にメチルエチルケトン(b)30部、トルエン(b)10部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったらブチルアクリレート(a1)55部、メチルアクリレート(a1)40部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)5部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)2部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させアクリル系樹脂溶液(I−3)(固形分濃度70%、粘度8200mPa・s/25℃、重量平均分子量154,000、数平均分子量51,500、分散度2.99、ガラス転移温度−31.5℃)を得た。
【0098】
[アクリル系樹脂溶液(I−4)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内にメチルエチルケトン(b)21部、トルエン(b)19部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったらブチルアクリレート(a1)88部、メチルアクリレート(a1)10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)2部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)13部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させアクリル系樹脂溶液(I−4)(固形分濃度65%、粘度7,800mPa・s/25℃、重量平均分子量262,000、数平均分子量84,500、分散度3.12、ガラス転移温度−49.3℃)を得た。
【0099】
[アクリル系樹脂溶液(I−5)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内にメチルエチルケトン(b)28部、トルエン(b)8部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったらブチルアクリレート(a1)82.8部、メチルアクリレート(a1)10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)2部に、ジメチルアミノエチルアクリレート(a2)0.2部、アクリロイルモルフォリン(a3)5部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)2部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させアクリル系樹脂溶液(I−5)(固形分濃度72.5%、粘度6,800mPa・s/25℃、重量平均分子量97,000、数平均分子量37,000、分散度2.62、ガラス転移温度−43.7℃)を得た。
【0100】
[アクリル系樹脂溶液(I−6)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内にメチルエチルケトン(b)30部、トルエン(b)10部を仕込み、攪拌しながら昇温し、90℃になったらブチルアクリレート(a1)70部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)30部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.16部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)2部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させアクリル系樹脂溶液(I−6)(固形分濃度70%、粘度9,500mPa・s/25℃、重量平均分子量107,000、数平均分子量40,200、分散度2.66、ガラス転移温度−44.4℃)を得た。
【0101】
[アクリル系樹脂溶液(I−7)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に酢酸エチル(b)60部を仕込み、攪拌しながら昇温し、78℃になったらブチルアクリレート(a1)90部、酢酸ビニル(a3)5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)5部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN))0.05部を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、トルエン(b)6部にAIBN0.05部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させ、その後トルエン(b)84部で希釈しアクリル系樹脂溶液(I−7)(固形分濃度40%、粘度7,500mPa・s/25℃、重量平均分子量752,000、数平均分子量176,900、分散度4.25、ガラス転移温度−50.1℃)を得た。
【0102】
[アクリル系樹脂溶液(I−8)]
温度計、攪拌機、滴下ロート及び還流冷却器を備えた反応器内に酢酸エチル(b)60部、メチルエチルケトン(b)10部を仕込み、攪拌しながら昇温し、75℃になったらブチルアクリレート(a1)55部、メチルアクリレート(a1)40部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)5部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.06部、を溶解させた混合物を2時間にわたって滴下した。更に重合途中に、酢酸エチル(b)10部にAIBN0.06部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させ、その後トルエン86部で希釈し、アクリル系樹脂溶液(I−8)(固形分濃度37.5%、粘度7,800mPa・s/25℃、重量平均分子量570,000、数平均分子量122,100、分散度4.67、ガラス転移温度−31.5℃)を得た。
【0103】
なお、アクリル系樹脂溶液(I−1)〜(I−8)中の、有機溶剤(b)の種類および重量比、連鎖移動定数、および配合量(部)を、表1に示す。

【0104】
【表1】

【0105】
ただし、表1において各略号は以下のとおりである。
BA:ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
VAc:酢酸ビニル
ACM:アクリロイルモルホリン
Tol:トルエン
AcOEt:酢酸エチル
MEK:メチルエチルケトン
【0106】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B−1)として、以下のものを用意した。
・トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)
【0107】
〔実施例1〜6、比較例1、2〕
上記のようにして調製,準備したアクリル系樹脂溶液(I)に、架橋剤(B)を下記の表2に示す割合で配合することによりアクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0108】
そして、上記で得られたアクリル系粘着剤組成物を、ポリエステル系離型シートに、厚み250μmで塗布し、90〜120℃で3分間乾燥し、乾燥後の膜厚が175μmの粘着剤層を形成した。その後、形成された粘着剤層側をポリエステル系離型シートで貼り合わせ40℃の条件下で10日間エージングさせて基材レス両面粘着シートを得た。
【0109】
上記で得られた基材レス両面粘着シートを用いて、以下の通り粘着剤層付きPETフィルムを作製し、ゲル分率、粘着力、保持力、耐腐食性を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記の表2に併せて示した。
【0110】
[粘着剤層付きPETフィルムの作製]
前記基材レス両面粘着シートの粘着剤から一方の面の離型シートを剥がし、膜厚が100μmのPETフィルムに押圧し、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0111】
〔ゲル分率〕
上記粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに裁断した後、離型シートを剥がし、粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の、トルエン浸漬前後の粘着剤層の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行なった。
【0112】
[粘着力]
上記粘着剤層付きPETフィルムについて、幅25mm×長さ100mmに裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側をポリカーボネート(PC)フィルムまたはソーダガラスに23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0113】
[保持力]
上記粘着剤層付きPETフィルムを、25mm×25mmになるよう裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側を研磨SUS板に貼着し、80℃の条件下にて1kgの荷重をかけて、JIS Z 0237の保持力の測定法に準じてズレを評価した。評価基準は下記の通りである。
(評価)
○・・・1440分経過後でズレを生じない
△・・・1440分経過後でズレを生じる
×・・・1440分経過するまでに落下する
【0114】
〔外観〕
上記で得られたアクリル系粘着剤組成物を、ポリエステル系離型シートに、厚み250μmで塗布し、90〜100℃で3分間乾燥し、乾燥後の膜厚が175μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層の状態を目視で観察した。
(評価)
○・・・塗膜に気泡の発生が見られない。
△・・・上記条件では、塗膜に僅かに気泡が発生するが、更に100℃で2分間乾燥すると、気泡がなくなる。
×・・・塗膜に気泡が発生する。乾燥時間を延長しても気泡がなくならない。
【0115】
〔耐腐食性評価方法〕
上記粘着剤層付きPETフィルムを、5mm×12mmになるよう裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側を銅板に貼り合わせた後、60℃、相対湿度90%の雰囲気下で7日間保存した。その後、PETフィルム側から銅箔の表面を目視で観察して、銅板表面の腐食の有無を確認した。評価基準は下記の通りである。
(評価)
○・・・腐食が認められない
×・・・腐食が認められる
【0116】
上記で得られた基材レス両面粘着シートを用いて、以下の通り粘着剤層付き光学PETフィルムを作製し、全光線透過率、ヘイズ値を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記の表2に併せて示した。
【0117】
[粘着剤層付き光学PETフィルムの作製]
上記基材レス両面粘着シートを3cm×4cmに裁断し、一方の面の離型シートを剥がし、粘着剤層側を光学PETフィルムに押圧して、さらに他方の離型シートを剥離して、全光線透過率及びヘイズ値測定用サンプルを得た。
【0118】
[全光線透過率]及び[ヘイズ値]
前記粘着剤層付き光学PETフィルムの離型シートを剥離して、拡散透過率及び全光線透過率を、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。なお、本機はJIS K7361−1に準拠している。
なお、ヘイズ値は、得られた拡散透過率と全光線透過率の値を下記式に代入して算出した。
ヘイズ値(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
【0119】
なお、光学PETフィルムのみについて、上記全光線透過率、ヘイズ値を測定した際の値は、全光線透過率=91.6%、ヘイズ値=0.7%である。
【0120】
【表2】

【0121】
ただし、表2中の( )内の数値は配合重量部である。また、表2中の「※」は、光学PETフィルム上に形成した粘着剤層が、多くの気泡を含むものであるために試験が行なえなかったことを表す。
【0122】
実施例1〜6のアクリル系樹脂溶液を硬化して得られる粘着剤層は、通常よりも厚く塗工して得られる厚膜の粘着剤層であるにも関わらず、いずれも良好な塗面が得られ、全光線透過率やヘイズ等の光学物性に優れ、かつ粘着物性にも優れるものである。
一方、比較例1および2では、アクリル系樹脂溶液が含有するアクリル系樹脂の分子量が高く粘度が高いものであるため、塗工可能な粘度まで有機溶剤で希釈しなければならず、アクリル系樹脂溶液は固形分濃度が低いものとなっている。そのため、実施例と同様に厚く塗工しても、乾燥時に有機溶剤をとばしきることができずに、生成した粘着剤層の塗面には気泡が多数発生してしまい、光学物性に劣るものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤は、両面粘着シート、特には基材を有しない(基材レス)両面粘着シートとして好適に用いることができ、特には、接着力が高く、耐熱信頼性や耐衝撃信頼性に優れ、高い光透過性を有し、ヘイズを発生させにくく、金属や金属酸化物等に対して腐食を発生させない点で、ガラスやITO透明電極シート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の光学シート類、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学部材貼り付け用途に有用である。更に、これら光学部材を含んでなるタッチパネルに対して好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(a)を、60℃における酢酸ビニルの有機溶剤への連鎖移動定数が250以上となる有機溶剤(b)の存在下で重合して得られるアクリル系樹脂(A)を含有するアクリル系樹脂溶液であり、
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が5万〜30万で、かつ樹脂溶液の固形分濃度が60%以上であることを特徴とするアクリル系樹脂溶液。
【請求項2】
アクリル系樹脂溶液の粘度が20,000mPa・s/25℃以下であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系樹脂溶液。
【請求項3】
アクリル系樹脂(A)が酸性基を含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載のアクリル系樹脂溶液。
【請求項4】
有機溶剤(b)の50重量%以上が、メチルエチルケトンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のアクリル系樹脂溶液。
【請求項5】
アクリル系樹脂溶液中の全固形分に対して60重量%以上がアクリル系樹脂(A)であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のアクリル系樹脂溶液。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載のアクリル系樹脂溶液を含有してなることを特徴とするアクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
架橋剤(B)を含有してなることを特徴とする請求項6記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項6又は7記載のアクリル系粘着剤組成物が、架橋されてなることを特徴とするアクリル系粘着剤。
【請求項9】
請求項8記載のアクリル系粘着剤を用いてなる光学部材用アクリル系粘着剤。
【請求項10】
請求項9記載のアクリル系粘着剤を含む粘着剤層、及び光学部材を含む、粘着剤層付き光学部材
【請求項11】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを主成分として含有するモノマー成分(a)を、60℃における酢酸ビニルの有機溶剤への連鎖移動定数が250以上となる有機溶剤(b)の存在下で重合して得られるアクリル系樹脂(A)を含有するアクリル系樹脂溶液の製造方法であり、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が5万〜30万で、かつ樹脂溶液の固形分濃度が60%以上であることを特徴とするアクリル系樹脂溶液の製造方法。

【公開番号】特開2012−21142(P2012−21142A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117251(P2011−117251)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】