説明

アブレーション加工方法

【課題】レーザーを用いた除去加工において、除去したワークの屑がワークの被加工面に付着することを防止する。
【解決手段】ワークWの被加工面W1にパルスレーザー3aを照射して被加工面をアブレーション加工する場合において、ワークWの被加工面W1を下に向けて被加工面W1の下側に空間20を有した状態でワークWの外周を保持する保持し、被加工面W1の反対面からワークWを透過する波長のパルスレーザー3aを被加工面W1で焦点を結ぶように照射することによって被加工面W1の一部をアブレーション加工して加工屑6を落下させ、加工屑6が被加工面W1に付着しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークをパルスレーザーを用いて加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、表面に格子状に配列されたストリート(切断ライン)によって区画された領域にIC、LSI等の回路が形成されている略円板形状の半導体ワークをストリートに沿って切断することによって回路毎に分割し、個々の半導体チップを製造している。
【0003】
半導体ワークのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと称されている切削装置によって行われているが、レーザー光を照射して切断する加工方法も試みられている(例えば特許文献1参照)。また、ワークを透過する波長のパルスレーザーを用いた加工も実用化されている(例えば特許第3408805号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特許第3408805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のブレードを用いた除去加工には切削液を用いるのに対し、レーザーを用いた除去加工は、切削液を使用しないドライプロセスであるため、除去したワークの屑がワークの被加工面に付着するという問題があった。
【0006】
本発明は、これらの事実に鑑みてなされたものであって、その主な技術的課題は、レーザーを用いた除去加工においても除去したワークの屑がワークの被加工面に付着することが抑えられた加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ワークの被加工面にパルスレーザーを照射して被加工面をアブレーション加工するアブレーション加工方法に関するもので、ワークの被加工面を下に向けて被加工面の下側に空間を有した状態でワークの外周を保持する保持工程と、ワークの被加工面の反対面からワークを透過する波長のパルスレーザーを被加工面で焦点を結ぶように照射することによって被加工面の一部をアブレーション加工する加工工程とを少なくとも含んで構成される。
【0008】
ワークが被加工面側に分割予定ラインを有しているものである場合は、加工工程の前に、被加工面の反対面から照射したワークを透過する波長の光を検出することによって分割予定ラインの位置を検出する検出工程が含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、被加工面を下に向け、被加工面の下方に空間が存在する状態で、当該被加工面に対してその反対面側からパルスレーザーを照射してアブレーション加工するようにしたことにより、除去された加工屑が落下するため、加工屑がウェーハのデバイスに付着するのを防止することができる。また、パルスレーザーの照射は、被加工面の反対面側からワークを透過させて行うため、加工屑がパルスレーザーの照射部に付着して汚れる心配もない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レーザー加工装置の一例を示す斜視図である。
【図2】保持テーブルにおいてワークを保持した状態を略示的に示す断面図である。
【図3】分割予定ラインを検出する状態を略示的に示す断面図である。
【図4】アブレーション加工を行う状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すレーザー加工装置1は、保持テーブル2に保持されたワークWに対して加工ヘッド3からレーザー光を照射してワークを加工する装置である。
【0012】
図2に示すように、保持テーブル2の表面には凹状の空間20が形成されている。また、保持テーブル2の内部には、空間20の外周側において上方に開口し吸引手段22に連通する吸引路21が形成されている。空間20は、保持するワークWよりも小径に形成されている。
【0013】
図1に示すように、保持手段2は、X方向送り部4によってX軸方向に移動可能に支持されているとともに、Y方向送り部5によってX軸方向に対して水平方向に直交するY軸方向に移動可能に支持されている。
【0014】
X方向送り部4は、X軸方向の軸心を有するボールネジ40と、ボールネジ40に平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の一端に連結されたモータ42と、図示しない内部のナットがボールネジ40に螺合すると共に下部がガイドレール41に摺接するスライド部43とから構成され、モータ42に駆動されてボールネジ40が回動するのに伴い、スライド部43がガイドレール41上をX軸方向に摺動する構成となっている。
【0015】
スライド部43には、保持手段2をY軸方向に移動させるY方向送り部5が配設されている。Y方向送り部5は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50に平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の一端に連結されたパルスモータ52と、図示しない内部のナットがボールネジ50に螺合すると共に下部がガイドレール51に摺接する移動基台53とから構成され、パルスモータ52に駆動されてボールネジ50が回動するのに伴い、移動基台53がガイドレール51上をY軸方向に摺動する構成となっている。移動基台53には、パルスモータを内部に備え保持手段2を回転させる回転駆動部54が配設されている。
【0016】
加工ヘッド3は、基台30に固定されており、鉛直方向の光軸を有するレーザー光を照射する機能を有している。また、基台30には、保持手段2に保持されたワークを撮像するカメラを有しレーザー光を照射すべき位置を検出する位置検出部31が固定されている。
【0017】
次に、レーザー加工装置1を用いて、ワークの被加工面にパルスレーザーを照射してアブレーション加工を行う場合について説明する。ワークは特に限定はされないが、例えばシリコンウェーハ、ガリウム砒素等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、LCDドライバー等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0018】
(1)保持工程
図2に示すように、加工対象のワークWは、分割予定ラインSによって区画されてデバイスDが形成されて構成されたものであり、デバイスDが形成された表面W1を下に向けた状態で、すなわちデバイスDが形成されていない裏面W2が露出した状態で、ワークWの外周部分が保持テーブル2に保持される。このとき、被加工面W1の下側に空間20が位置しており、すべての分割予定ラインSは保持テーブル2に接触することなく空間20の上方に位置している。
【0019】
(2)検出工程
こうしてワークWが保持テーブル2に保持されると、図1に示したX方向送り部4によって保持テーブル2がX軸方向に駆動され、ワークWが位置検出部31の下方に移動する。そして、図3に示すように、位置検出部31によって加工すべき分割予定ラインSが検出される。ここで、分割予定ラインSは表面W1側に形成されているため、ワークWが例えばシリコンウェーハである場合は、裏面W2側からウェーハWを透過する波長の光、例えば赤外光31aをウェーハWに向けて発光し、ウェーハWの内部を透過させて赤外光31aを表面W1にあてることにより、その反射波を位置検出部31の内部のカメラにおいて撮像し、分割予定ラインSを検出する。一方、ウェーハWが、例えばガラスウェーハのように可視光を透過させるウェーハである場合は、可視光を用いて分割予定ラインSを検出する。
【0020】
(3)加工工程
次に、X方向送り部4及びY方向送り部5によって保持テーブル2が駆動され、検出された分割予定ラインSが加工ヘッド3の直下に移動する。そして、X方向送り部4によって保持テーブル2をX軸方向に送りながら、図4に示すように、表面W1の反対面である裏面W2側からワークWを透過する波長のパルスレーザー3a、例えば波長が1064[nm]のYAGレーザーを、表面W1で焦点を結ぶように照射する。すなわち表面W1が被加工面となる。このときのパルスレーザーの焦点位置3bは、目的とする層を加工できるように、表面W1を基準として上下に例えば±20μmの範囲で上下させる。このように、表面W1付近で焦点を結ぶようにして照射レーザーの照射を行いながら、保持手段2をX軸方向に移動させると、表面W1における1本の分割予定ラインSに沿って集光した部分の材料が除去されてアブレーション溝Gが形成される。
【0021】
また、図1に示したY方向送り部5によって分割予定ラインSの間隔ずつ保持テーブル2をインデックス送りし、同様のアブレーション加工を行うと、一方向のすべての分割予定ラインSにアブレーション溝Gが形成される。更に、図1に示した回転駆動部54の駆動により保持テーブル2を90度回転させてから同様のアブレーション加工を行うと、すべての分割予定ラインSにアブレーション溝Gが形成される。
【0022】
かかるアブレーション加工では、図4に示すように加工屑6が発生するが、ウェーハWは被加工面である表面W1が下を向いた状態で保持されており、かつ、表面W1の下には空間20が存在するため、加工屑6は落下し、デバイスDに付着することがない。したがって、デバイスDが加工屑6によって汚染されるのを抑止することができる。
【0023】
また、被加工面が上を向いた状態でアブレーション加工を行うと、加工屑が加工ヘッド3にも付着することがあるが、被加工面が下を向いた状態でアブレーション加工を行うことにより、加工屑が加工ヘッド3に付着することがない。
【符号の説明】
【0024】
1:レーザー加工装置
2:保持テーブル
20:空間 21:吸引路 22:吸引手段
3:加工ヘッド 3a:パルスレーザー 3b:焦点位置
30:基台 31:位置検出部 31a:赤外光
4:X方向送り部
40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:モータ 43:スライド部
5:Y方向送り部
50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:パルスモータ 53:移動基台
54:回転駆動部
6:加工屑
W:ワーク
W1:表面(被加工面) S:分割予定ライン D:デバイス
W2:裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被加工面にパルスレーザーを照射して該被加工面をアブレーション加工するアブレーション加工方法であって、
ワークの該被加工面を下に向けて該被加工面の下側に空間を有した状態で該ワークの外周を保持する保持工程と、
該ワークの該被加工面の反対面から該ワークを透過する波長のパルスレーザーを該被加工面で焦点を結ぶように照射することによって該被加工面の一部をアブレーション加工する加工工程と、
を含むアブレーション加工方法。
【請求項2】
前記ワークは被加工面側に分割予定ラインを有しており、
前記加工工程の前に、該被加工面の反対面から照射したワークを透過する波長の光を検出することによって該分割予定ラインの位置を検出する検出工程を含む請求項1に記載の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−161477(P2011−161477A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26321(P2010−26321)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】