説明

アミド誘導体、重合体、化学増幅型感光性樹脂組成物、及びパターン形成方法

【課題】解像性に優れ、アルカリ水溶液で現像可能な感光性樹脂組成物の提供。
【解決手段】式(2)で表される繰返し構造単位を少なくとも一種有する重合体と光酸発生剤とからなる化学増幅型感光性樹脂組成物を用いる。


(R2は水素原子または酸により分解する基。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアミド誘導体、該アミド誘導体から誘導される重合体、該重合体を含有する化学増幅型感光性樹脂組成物、及び該組成物を用いたパターン形成方法に関し、詳しくは、半導体デバイスの層間絶縁膜や表面保護膜等に適用可能なアミド誘導体、重合体、感光性樹脂組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの層間絶縁膜や表面保護膜には、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れたポリイミド樹脂が用いられてきた。しかし、非感光性ポリイミド樹脂を層間絶縁膜等として用いる際には、パターン形成プロセスでポジ型レジストを用い、エッチング、レジスト除去工程等が必要となり、製造工程が複雑となるため、優れた感光性を有する感光性ポリイミド樹脂の検討がなされてきた。このような感光性ポリイミド樹脂組成物としては、特許文献1に記載されているポリイミド酸と芳香族ビスアジド系化合物及びアミン化合物からなるポジ型感光性樹脂組成物が挙げられる。しかし、感光性ポリイミド樹脂のパターン形成プロセスにおける現像工程では、N−メチル−2−ピロリドンやエタノールといった有機溶媒が必要となるため、安全性や環境への影響の点で問題となっていた。
【0003】
そこで、近年では、半導体の微細なパターン形成プロセスに使用されているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液といったアルカリ水溶液で現像可能なパターン形成材料として、ポジ型感光性樹脂組成物が開発されている。例えば、特許文献2では、ポリベンゾオキサゾール前躯体と感光剤であるジアゾキノン化合物とからなる非化学増幅型のポジ型感光性樹脂組成物が報告されている。非特許文献1では、ポリベンゾオキサゾール前躯体と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルとからなる非化学増幅型のポジ型感光性樹脂組成物が報告されている。また非特許文献2では、酸分解性基で保護したポリベンゾオキサゾール前躯体と光酸発生剤とからなる化学増幅型のポジ型感光性樹脂組成物が報告されている。
【0004】
このような感光性樹脂組成物は、加熱処理によって構造が変化し、ベンゾオキサゾール環が形成されるため、耐熱性や電気特性に優れたものとなる。例えば、非特許文献1に記載されているポリベンゾオキサゾール前躯体は、下記反応式A1及びA2に示すように、アルカリ現像後の加熱処理によりベンゾオキサゾール環が形成される。ベンゾオキサゾール環は安定な構造であるため、このポリベンゾオキサゾール前躯体からなる感光性組成物を用いた層間絶縁膜や表面保護膜は、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れたものとなる。
【0005】
【化1】

【0006】
【化2】

【0007】
近年、半導体デバイスの製造分野では、デバイスのより一層の高密度化や高集積化、配線パターンの微細化が要求されている。これに伴い、特に層間絶縁膜や表面保護膜等に用いられる感光性樹脂組成物に対する要求は厳しくなっているが、上記の各文献に記載のポジ型感光性樹脂組成物は、解像度の点からは充分満足のいくものではなかった。
【0008】
このため、従来の膜特性を維持しつつ、アルカリ現像が可能で、高解像度が得られる感光性樹脂組成物の開発が待たれている。
【0009】
【特許文献1】特公平3−36861号公報
【特許文献2】特公平1−46862号公報
【非特許文献1】M.Uedaら、ジャーナル オブ フォトポリマー サイエンス アンド テクノロジー(Journal of Photopolymer Science and Technology)、第16巻、第2号、第237〜242頁(2003年)
【非特許文献2】K.Ebaraら、ジャーナル オブ フォトポリマー サイエンス アンド テクノロジー(Journal of Photopolymer Science and Technology)、第16巻、第2号、第287〜292頁(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、感光性樹脂組成物の原料として好ましく用いることができるアミド誘導体及び重合体を提供することにある。第2の目的は、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れ、アルカリ現像が可能で、高解像度が得られる化学増幅型感光性樹脂組成物を提供することにある。第3の目的は、化学増幅型感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために検討した結果、新規化合物である特定構造のアミド誘導体を含む単量体組成物を重合して得られる重合体が、化学増幅型感光性樹脂組成物として優れており、アルカリ水溶液で現像可能で高解像度が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアミド誘導体である。
【0013】
【化3】

【0014】
(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または酸により分解する基、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは互いに連結して置換又は無置換の縮合芳香環を形成するが、少なくとも一つの縮合芳香環を形成する。)
【0015】
また、本発明は、前記一般式(1)で表されるアミド誘導体由来の下記一般式(2)で表される繰返し構造単位を1種以上含む重合体である。
【0016】
【化4】

【0017】
(式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または酸により分解する基、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは互いに連結して置換又は無置換の縮合芳香環を形成するが、少なくとも一つの縮合芳香環を形成する。)
【0018】
上記重合体は、一般式(2)で表される繰返し構造単位の一種以上と、当該構造単位と共重合可能なビニル系単量体由来の繰返し構造単位の一種以上とを有する。
【0019】
さらに、本発明は、下記一般式(3)で表される構造単位をさらに含むことを特徴とする上記の重合体である。
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、R7は水素原子またはメチル基を表し、R8はラクトン構造を有する有機基を表す。)
【0022】
上記重合体は、重量平均分子量が2,000〜200,000であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、少なくとも、上記の重合体と光酸発生剤とからなる化学増幅型感光性樹脂組成物である。
【0024】
さらに、本発明は、溶解阻止剤および/または密着性向上剤を含んでなる上記の化学増幅型感光性樹脂組成物である。
【0025】
該溶解阻止剤が下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする。
【0026】
【化6】

【0027】
(式中、R9およびR10は酸により分解する基を表し、R11およびR12は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状あるいは環状のアルキル基または芳香族炭化水素基であり、Zは直結合、−C(CF32−、−C(CH32−、−SO2−、−CO−、−O−または−CH2−を表す。)
【0028】
【化7】

【0029】
(式中、R13は2価の芳香族炭化水素基または環状脂肪族炭化水素基、R14およびR15は酸により分解する基を表し、R16およびR17は水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0030】
該密着性向上剤が有機ケイ素化合物であること、そして、その有機化合物が下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする。
【0031】
【化8】

【0032】
(式中、R18〜R23は1価の有機基を表し、X1およびX2は2価の有機基を表す。また、kは正の整数である。 )
【0033】
さらにまた、本発明は、少なくとも、下記工程からなることを特徴とするパターン形成方法である:
上記の化学増幅型感光性樹脂組成物を被加工基板上に塗布する工程;
プリベークを行う工程;
露光する工程;
露光後ベークを行う工程;
現像を行う工程;および
ポストベークを行う工程。
【0034】
また、本発明は、現像を行う工程とポストベークを行う工程との間に、さらにポスト露光工程を有することを特徴とする上記のパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明のアミド誘導体は、重合体を製造するための原料として好ましく用いることができ、この重合体は、化学増幅型感光性樹脂組成物を得るために好ましく用いることができる。また、本発明の化学増幅型感光性樹脂組成物及びパターン形成方法では、アルカリ現像液による現像が可能で、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れ、高解像度のパターンを形成することができる。
【0036】
さらに、本発明の重合体は、一般式(2)で表される繰返し構造単位を有するので、直接加熱処理したり、酸により酸分解性基を分解した後加熱処理したりすることで安定な構造であるオキサゾール環を形成することができる。
【0037】
そして、この重合体を含む本発明の化学増幅型感光性樹脂組成物を用いた層間絶縁膜や表面保護膜は、加熱処理によりオキサゾール環が形成されるので、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明のアミド誘導体、重合体、化学増幅型感光性樹脂組成物及びパターン形成方法について説明する。
【0039】
<アミド誘導体>
本発明のアミド誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0040】
【化9】

【0041】
式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または酸により分解する基、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基、あるいは互いに連結して置換又は無置換の縮合芳香環を形成するが、少なくとも一つの縮合芳香環を形成する。
【0042】
なお、酸により分解する基として、tert−ブチル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0043】
3〜R6が互いに連結して形成する縮合芳香環としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環、ピレン環等が挙げられる。このように形成された縮合芳香環は、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。
【0044】
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0045】
炭素数1〜4のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0046】
好ましくは、一般式(1)で表されるアミド誘導体として、以下に示すような、R3〜R6のうち隣接する2つの基が結合してナフタレン環を形成した一般式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0047】
【化10】

【0048】
(上記式中、R1、R2は、前記一般式(1)中のR1、R2と同じ意味を示し、R3〜R6,R24〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0049】
より具体的には、以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0050】
【化11】

【0051】
これらのアミド誘導体の単独での重合体または他の共重合可能な単量体との重合体は、パターン形成したのちに、加熱処理や、酸により酸分解性基を分解した後加熱処理することで安定なオキサゾール環を形成するので、耐熱性、機械特性及び電気特性等の優れた特性を持つ膜を形成することができる。
【0052】
一般式(1)で表されるアミド誘導体のうち、R1〜R4が水素原子、R5とR6が互いにつながりナフタレン環を形成している化合物は、例えば、1−アミノ−2−ナフトール塩酸塩と塩化アクリロイルを酢酸ナトリウム水溶液中で反応させることによって合成できる。
【0053】
<重合体>
本発明の重合体は、下記一般式(2)で表される繰返し構造単位を少なくとも1種含むものである。
【0054】
【化12】

【0055】
式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または酸により分解する基、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基、あるいは互いに連結して置換又は無置換の縮合芳香環を形成するが、少なくとも一つの縮合芳香環を形成する。
【0056】
酸により分解する基として、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0057】
3〜R6が互いに連結して形成する縮合芳香環としては、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。このように形成された縮合芳香環は、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。
【0058】
ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0059】
炭素数1〜4のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0060】
好ましくは、一般式(2)で表される繰返し構造単位として、以下に示すような、R3〜R6のうち隣接する2つの基が結合してナフタレン環を形成した一般式(2−1)〜(2−3)で表される構造単位が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0061】
【化13】

【0062】
(上記式中、R1、R2は、前記一般式(2)中のR1、R2と同じ意味を示し、R3〜R6,R24〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0063】
より具体的には、以下の構造単位が挙げられるが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0064】
【化14】

【0065】
本発明の重合体は、そのまま加熱処理したり、パターンを形成した後に加熱処理したり、パターン形成後に再度全面露光し、残存するパターン内の酸分解性基を酸により分解した後に加熱処理したりすると、閉環反応が起き、オキサゾール環が形成される。
【0066】
例えば、前記式(2−1)において、R1〜R4、R24〜R27が水素原子であるアミド系重合体は、下記反応式Bに示すように加熱処理することにより閉環反応が起き、ナフトオキサゾール環が形成される。R2が酸分解性基である場合も、酸により酸分解性基を分解することでR2が水素原子となる構造が得られる。
【0067】
【化15】

【0068】
このナフトオキサゾール環は、安定な構造であるので、この重合体を層間絶縁膜や表面保護膜に用いることにより、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れた層間絶縁膜や表面保護膜を形成することが可能である。
【0069】
本発明の重合体は、一般式(2)で表される繰返し構造単位を一種以上含む重合体を合成することができれば、その原料は特に制限されないが、一般式(1)で表されるアミド誘導体を好適に用いることができる。
【0070】
本発明の重合体は、一般式(1)で表されるアミド誘導体の一種を単独で重合して得たもの、一般式(1)で表されるアミド誘導体の2種以上を共重合させて得たものでもよいが、上述のアミド誘導体と共重合可能なコモノマーをさらに使用して共重合して得たものでもよい。なお、上述のアミド誘導体とコモノマーとを共重合して得られた共重合体は、コモノマーの特性が付加されるので、種々のコモノマーを用いることにより、この重合体を含む化学増幅型感光性樹脂組成物に有用な特性(解像度、感度)、感光性樹脂で形成される層間絶縁膜や表面保護膜に有用な特性(例えば、耐熱性、機械特性、電気特性等)を向上させることができる。
【0071】
コモノマーとしては、上記アミド誘導体と十分な重合性を有することから、ビニル系単量体が好ましい。ビニル系単量体としては、上記アミド誘導体以外の(メタ)アクリルアミド誘導体、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、エチレン誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が使用できる。
【0072】
エチレン誘導体として、エチレン、プロピレン、塩化ビニル等が挙げられ、スチレン誘導体として、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロスチレン、特開2001−172315号公報記載のスチレン誘導体等が挙げられる。
【0073】
ビニル系単量体の他に、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド誘導体等が使用可能であり、N−フェニルマレイミド誘導体として、N−フェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド等が挙げられる。これらのコモノマーは1種又は2種以上を用いることができる。
【0074】
上述の共重合体のコモノマーからの構造単位の具体的な例として、下記一般式(3)で表されるラクトン構造を有する(メタ)アクリルエステルに由来する構造単位が挙げられる。
【0075】
【化16】

【0076】
(式中、R7は水素原子またはメチル基を表し、R8はラクトン構造を有する有機基を表す。)
【0077】
一般式(3)で表される繰返し構造単位としては、以下のような例が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0078】
【化17】

【0079】
本発明の重合体を層間絶縁膜や表面保護膜に用いた場合に、優れた膜特性を発揮させるためは、一般式(2)で表される繰返し構造単位の重合体中に占める割合は、10〜100モル%が好ましく、40〜100モル%がより好ましい。
【0080】
なお、重合体の重量平均分子量(Mw)としては、通常、2,000〜200,000が好ましく、4,000〜100,000がより好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)が2,000未満の場合は、重合体を層間絶縁膜や表面保護膜に用いる場合に、膜を均一に形成することが困難となることがある。また、重合体の重量平均分子量が200,000を超える場合は、重合体を層間絶縁膜や表面保護膜に用いる場合に、解像度が悪くなることがある。
【0081】
このような重合体は、上記アミド誘導体を含む単量体組成物を、ラジカル重合、アニオン重合等の通常用いられている重合方法で重合することによって得ることができる。
【0082】
例えば、重合体をラジカル重合で得る場合、単量体組成物の乾燥テトラヒドロフラン溶液に、適当なラジカル重合開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等を加えた後に、アルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気下で、50〜70℃で0.5〜24時間攪拌することにより重合体を重合することできる。
【0083】
<化学増幅型感光性樹脂組成物>
本発明の化学増幅型の感光性樹脂組成物は、少なくとも上記一般式(2)で表される繰返し構造単位を含む重合体と光酸発生剤を含むものであり、通常、上記重合体と光酸発生剤とを混合することにより調製することができる。
【0084】
この化学増幅型感光性樹脂組成物に、後記化学線でパターン露光すると、露光部の化学増幅型感光性樹脂組成物を構成する光酸発生剤から酸が発生し、樹脂中の酸分解性基と反応し、酸分解性基が分解反応を起す。その結果、露光部ではアルカリ現像液に対して本発明の重合体は可溶となり、露光部と未露光部で溶解性の差(溶解コントラスト)が生じる。この化学増幅型感光性樹脂組成物を用いたパターン形成は、こうしたアルカリ現像液に対する溶解性の差を利用して行われる。
【0085】
本発明では、このような化学増幅型感光性樹脂組成物を構成するため、重合体中に少なくとも酸分解性基を有する必要があるが、酸分解性基は、一般式(2)のR2として導入してもよいし、一般式(2)以外の構造単位中に導入されていてもよい。酸分解性基を有する構造単位は、全構造単位中10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましい。又、100モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましい。一般式(2)のR2が水素である構造単位と一般式(2)のR2が酸分解性基である構造単位とを含む重合体が好ましい。また、本発明の化学増幅型感光性樹脂組成物を構成するために、酸分解性基を持たない重合体を用いる場合でも、溶解阻止剤を添加することによって、十分な溶解阻止効果が得られる場合には、そのような樹脂組成物の構成もとりうる。
【0086】
光酸発生剤としては、露光に用いる光の光照射により酸を発生する光酸発生剤であることが望ましく、本発明の重合体などとの混合物が有機溶媒に十分に溶解し、かつその溶液を用いて、スピンコートなどの製膜法で均一な塗布膜が形成可能なものであれば特に制限されない。また、光酸発生剤は、1種でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
光酸発生剤として、トリアリールスルホニウム塩誘導体、ジアリールヨ−ドニウム塩誘導体、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩誘導体、ニトロベンジルスルホナート誘導体、N−ヒドロキシナフタルイミドのスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシイミドのスルホン酸エステル誘導体等が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0088】
光酸発生剤の含有量は、化学増幅型感光性樹脂組成物の十分な感度を実現し、良好なパターン形成を可能とする観点から、重合体及び光酸発生剤の総和に対して0.2質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。一方、均一な塗布膜の形成を実現し、現像後の残渣(スカム)を抑制する観点から、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0089】
本発明の化学増幅型感光性樹脂組成物を調製する際に、必要に応じて、適当な溶剤を用いる。溶剤としては、化学増幅型感光性樹脂組成物が充分に溶解でき、その溶液をスピンコート法などの方法で均一に塗布できる有機溶媒等であれば特に制限されない。具体的には、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、2−ヘプタノン、酢酸2−メトキシブチル、酢酸2−エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等を使用することができる。これらは、単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。
【0090】
さらに、必要に応じて溶解促進剤、溶解阻止剤、密着性向上剤、界面活性剤、色素、安定剤、塗布性改良剤、染料などの他の成分を添加して、化学増幅型感光性樹脂組成物を調製することもできる。
【0091】
例えば、溶解阻止剤を化学増幅型感光性樹脂組成物に添加することで、感光性樹脂の未露光部のアルカリ現像液に対する溶解が抑制される。一方、露光部では、化学増幅型感光性樹脂組成物を構成する光酸発生剤から発生した酸の作用により溶解阻止剤の構造中にある酸分解性基も分解し、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する。その結果、露光部と未露光部の溶解コントラストが増大し、微細パターンが形成できる。
【0092】
溶解阻止剤を化学増幅型感光性樹脂組成物に添加する場合、その含有量は、化学増幅型感光性樹脂組成物の良好なパターン形成を可能とする観点から、重合体及び光酸発生剤の総和に対して1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、均一な塗布膜の形成を実現するため、70質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0093】
溶解阻止剤の具体的な例として、下記一般式(4)、または下記一般式(5)で表される化合物が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0094】
【化18】

【0095】
式(4)中、R9およびR10は酸により分解する基を表し、R11およびR12は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状あるいは環状のアルキル基または芳香族炭化水素基であり、Zは直結合、−C(CF32−、−C(CH32−、−SO2−、−CO−、−O−または−CH2−を表す。
【0096】
なお、酸により分解する基としては、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0097】
炭素数1〜10の直鎖状、分枝状あるいは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、5−ノルボルネン−2−イル基等が挙げられ、また芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0098】
【化19】

【0099】
式(5)中、R13は2価の芳香族炭化水素基または環状脂肪族炭化水素基、R14およびR15は酸により分解する基を表し、R16およびR17は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0100】
なお、2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。2価の環状脂肪族炭化水素基としては、シクロヘキサンジイル基、ノルボルネンジイル基、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基等が挙げられる。
【0101】
酸により分解する基としては、t−ブチル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−プロポキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0102】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
【0103】
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0104】
又、例えば、有機ケイ素化合物からなる密着性向上剤を化学増幅型感光性樹脂組成物に添加することで、感光性樹脂の基板上へ密着性が向上できる。
【0105】
有機ケイ素化合物としては例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、特許第3422703号に記載の有機ケイ素化合物、または下記一般式(6)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。これらのみに限定されるものではない。
【0106】
【化20】

(式中、)
【0107】
式(6)中、R18〜R23は1価の有機基を表し、X1およびX2は2価の有機基を表す。また、kは正の整数である。
【0108】
なお、1価の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基などが挙げられる。
【0109】
1およびX2で表される2価の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0110】
18およびR19で表される1価の有機基としては、具体的には、下記構造で表されるイミド結合(−N−C(=O)−)またはアミド結合を有する1価の有機基が挙げられる。kとしては1であることが好ましい。
【0111】
【化21】

【0112】
密着性向上剤を化学増幅型感光性樹脂組成物に添加する場合、その含有量は、密着性が優れたパターンの形成を可能とする観点から、重合体及び光酸発生剤の総和に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。良好な解像性を可能とするため、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0113】
本発明の化学増幅型感光性樹脂組成物は、パターンの解像度に優れ、アルカリ現像液で現像処理が可能であり、本発明の化学増幅型感光性樹脂組成物からなる膜は、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れている。したがって、このような化学増幅型感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜や表面保護膜の形成用に好適に使用できる。
【0114】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、塗布工程、プリベーク工程、露光工程、露光後ベーク工程、現像工程およびポストベーク工程から少なくともなるものであり、詳しくは、上記の化学増幅型感光性樹脂組成物を被加工基板上に塗布する塗布工程、該化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜を被加工基板上に定着させるプリベーク工程、該化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜を選択的に露光する露光工程、露光後の化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜をベークする露光後ベーク工程、該化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜の露光部を溶解除去してパターンを形成する現像工程およびパターンが形成された化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜を硬化させるポストベーク工程から少なくともなっている。さらに本発明のパターン形成方法は現像工程とポストベーク工程の間に、ポスト露光工程を含んでいても良い。
【0115】
塗布工程は、上記化学増幅型感光性樹脂組成物を、被加工基板、例えば、シリコンウェハ、セラミック基板等に塗布する工程である。その塗布方法として、スピンコータを用いた回転塗布、スプレーコータを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等を用いることができる。
【0116】
プリベーク工程は、被加工基板上に塗布された化学増幅型感光性樹脂組成物を乾燥して溶剤を除去し、被加工基板上に化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜を定着させるための工程である。プリベーク工程は、通常、60〜150℃で行われる。
【0117】
露光工程は、フォトマスクを介して化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜を選択的に露光し、露光部と未露光部を生じさせて、フォトマスク上のパターンを化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜に転写する工程である。パターン露光に用いる化学線としては、紫外線、可視光線、エキシマレーザ、電子線、X線等があり、180〜500nmの波長の化学線が好ましい。
【0118】
露光後ベーク工程は、露光により発生した酸と重合体の酸分解性基との反応を促進させる工程である。露光後ベーク工程は、通常60〜150℃で行われる。
【0119】
現像工程は、化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜の露光部をアルカリ現像液で溶解除去し、パターンを形成する工程である。上記の露光工程により、化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜の露光部と未露光部での重合体のアルカリ現像液に対する溶解性の差(溶解コントラスト)が生じる。この溶解コントラストを利用することにより、化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜の露光部が溶解して除去され、パターンが形成された化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜(以下、単に「パターン」という)が得られる。アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四アンモニウム塩基の水溶液、さらにメタノール、エタノール等の水溶性アルコール類、界面活性剤等を適当量添加した水溶液等を用いることができる。現像方法としては、パドル、浸漬、スプレー等の方法が可能である。現像工程後、形成したパターンを水でリンスする。
【0120】
ポストベーク工程は、得られたパターンに、空気中又は不活性ガス雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で、加熱処理を行い、パターンと被加工基板との密着性を高め、パターンを硬化させる工程である。このポストベーク工程では、化学増幅型感光性樹脂組成物で形成されたパターンを加熱することにより、化学増幅型感光性樹脂組成物を構成する重合体の構造が変化し(変性し)、オキサゾール環が形成され、そのパターンが硬化する。このようにして、耐熱性、機械特性及び電気特性等の膜特性に優れたパターンを得ることが可能となる。ポストベーク工程は、通常、100〜380℃で行われる。また、ポストベーク工程は、一段階で行ってもよいし多段階で行ってもよい。
【0121】
ポスト露光工程は、パターンが形成された化学増幅型感光性樹脂組成物塗膜を全面に露光し、その後のポストベーク工程でのパターンの硬化を促進させる工程である。ポスト露光に用いる化学線としては、上記露光工程で使用する化学線と同様でよく、180〜500nmの波長の化学線が好ましい。
【実施例】
【0122】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0123】
(実施例1)
下記構造のアミド誘導体、即ち、一般式(1−1)において、R1〜R4、R24〜R27が水素原子であるアミド誘導体を合成した。
【0124】
【化22】

【0125】
1−アミノ−2−ナフトール塩酸塩30gを水400mlに分散させ、氷冷した。そこに酢酸ナトリウム56.6gを加え、さらに塩化アクリロイル34.692gを滴下した。室温で6時間攪拌後、析出している結晶をろ別し、水で洗浄する。結晶を酢酸エチルに溶解し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下溶媒を留去し、残渣を酢酸エチル/メタノール混合溶媒から再結することで目的物を7.92g得た(収率24%)。
【0126】
得られた化合物の1H−NMR(THF−d8)の測定結果は次の通りであった:δが5.81(1H,dd)、6.49(1H,d)、6.70(1H,dd)、7.19(1H,d)、7.30−7.34(1H,m)、7.43−7.47(1H,m)、7.69(1H,d)、7.79(1H,d)、7.89(1H,d)、8.96(1H,s)、9.70(1H,br)。
【0127】
(実施例2)
下記構造のアミド誘導体、即ち、一般式(1−1)において、R1、R3、R4が水素原子、R2がエトキシメチル基、R24〜R27が水素原子であるアミド誘導体を合成した。
【0128】
【化23】

【0129】
実施例1で得られたアミド誘導体5gとN,N−ジイソプロピルエチルアミン4.55gをN−メチルピロリドン(NMP)50mlに溶解し、そこにクロロメチルエチルエーテル2.66gを加え、室温で攪拌した。3日後、水500mlに注ぎ、有機層を酢酸エチル200mlで抽出し、0.2N塩酸、食塩水、3%水酸化ナトリウム水溶液、食塩水の順で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧下留去し、残渣をヘキサン/酢酸エチルで再結して、目的物3.435gを得た(収率54%)。
【0130】
得られた化合物の1H−NMR(THF−d8)の測定結果は次の通りであった:δが1.18(3H,t)、3.71(2H,q)、5.25(2H,s)、5.76(1H,dd)、6.44(1H,d)、6.69(1H,dd)、7.1−7.4(3H,m)、7.64(1H,d)、7.71(1H,d)、7.8(1H,d)、9.05(1H,br)。
【0131】
(実施例3)
下記構造のアミド誘導体、即ち、一般式(1−2)において、R1〜R3、R6、R28〜R31が水素原子であるアミド誘導体を合成した。
【0132】
【化24】

【0133】
3−アミノ−2−ナフトール5gと塩化リチウム1.465gをNーメチル−2−ピロリドン50mlに溶解し、そこに氷冷下塩化アクリロイル2.985gを滴下する。氷冷下6時間撹拌後、反応混合物を水に注ぎ、有機層を酢酸エチル200mlで抽出する。有機層を0.2N塩酸、食塩水の順で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、酢酸エチルを減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=2/1)で分離精製することで目的物3.28gを得た(収率49%)。
【0134】
(実施例4)
下記構造の重合体、即ち、一般式(2−1)において、R1〜R4、R24〜R27が水素原子である構造単位が100モル%である重合体を合成した。
【0135】
【化25】

【0136】
実施例1で得られたアミド誘導体4gをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、そこに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.062gを加え、アルゴン雰囲気下、4時間加熱還流させた。放冷後、ジエチルエーテル200mlに再沈し、析出したポリマーをろ別し、もう一度再沈精製することで目的のポリマーを3.12g得た(収率78%)。またGPC分析により測定した重量平均分子量(Mw)は26500(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は2.78であった。
【0137】
(実施例5)
下記構造の重合体、即ち、一般式(2−1)において、R1〜R4、R24〜R27が水素原子である構造単位が50モル%と、一般式(2−1)において、R1、R3、R4が水素原子、R2がエトキシメチル基、R24〜R27が水素原子である構造単位が50モル%である重合体を合成した。
【0138】
【化26】

【0139】
実施例1で得られたアミド誘導体3gと実施例2で得られたアミド誘導体3.82gをテトラヒドロフラン33mlに溶解し、そこに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.092gを加え、アルゴン雰囲気下、4時間加熱還流させた。放冷後、ジエチルエーテル500mlに再沈し、析出したポリマーをろ別し、もう一度再沈精製することで目的のポリマーを4.77g得た(収率70%)。またGPC分析により測定した重量平均分子量(Mw)は29800(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は3.11であった。
【0140】
(実施例6)
下記構造の重合体、即ち、一般式(2−1)において、R1〜R4、R24〜R27が水素原子である構造単位が30モル%と一般式(2−1)において、R1、R3、R4が水素原子、R2がエトキシメチル基、R24〜R27が水素原子である構造単位が50モル%、スチレンに基づく構造単位20モル%である重合体を合成した。
【0141】
【化27】

【0142】
実施例1で得られたアミド誘導体3gと実施例2で得られたアミド誘導体6.36gとスチレン0.977gをテトラヒドロフラン50mlに溶解し、そこに2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.154gを加え、アルゴン雰囲気下、4時間加熱還流させた。放冷後、ジエチルエーテル500mlに再沈し、析出したポリマーをろ別し、もう一度再沈精製することで目的のポリマーを8.68g得た(収率84%)。またGPC分析により測定した重量平均分子量(Mw)は25600(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は2.88であった。
【0143】
(実施例7)
下記構造の重合体、即ち、一般式(2−1)において、R1〜R4が水素原子であり、R24〜R27が水素原子である構造単位が30モル%と一般式(2−1)において、R1、R3、R4が水素原子、R2がエトキシメチル基、R24〜R27が水素原子である構造単位が50モル%、一般式(3)において、R7が水素原子、R8が2,6−ノルボルナンカルボラクトンである5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトンに基づく構造単位20モル%である重合体を合成した。
【0144】
【化28】

【0145】
実施例6と同様に、但し、スチレン0.977gに代えて5−アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン1.95gを用いて重合した(収率87%)。またGPC分析により測定した重量平均分子量(Mw)は30500(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は2.67であった。
【0146】
(実施例8)
下記構造の重合体、即ち、一般式(2−2)において、R1〜R3、R6、R28〜R31が水素原子である構造単位が50モル%と、一般式(2−1)において、R1、R3、R4が水素原子、R2がエトキシメチル基、R24〜R27が水素原子である構造単位が50モル%である重合体を合成した。
【0147】
【化29】

【0148】
実施例5と同様に、但し実施例1で得られたアミド誘導体に代えて実施例3で得られたアミド誘導体を用いて重合した(収率82%)。またGPC分析により測定した重量平均分子量(Mw)は30800(ポリスチレン換算)、分散度(Mw/Mn)は3.04であった。
【0149】
(合成例1)
下記構造の溶解阻止剤、即ち、一般式(4)において、R9、R10がエトキシメチル基、R11、R12がフェニル基、Zが−C(CF32−である化合物を合成した。
【0150】
【化30】

【0151】
2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10gをNMP60mlに溶解し、そこに塩化リチウム2.546gを加え氷冷する。そこに塩化ベンゾイル8.06gを加え、氷冷下1時間、室温で一晩攪拌する。反応混合物を水600mlに注ぎ、析出した沈殿をろ別し、水で洗浄することで、2,2−ビス(3−ベンズアミド−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを12g得た。次に2,2−ビス(3−ベンズアミド−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを10gとN,N−ジイソプロピルエチルアミン6.75gをNMP60mlに溶解し、そこにクロロメチルエチルエーテル3.62gを加え、室温で攪拌する。1日後、水600mlに注ぎ、有機層をジエチルエーテル300mlで抽出し、0.06N塩酸、食塩水、3%水酸化ナトリウム水溶液、食塩水の順で洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥後、ジエチルエーテルを減圧下留去し、残渣をヘキサン/酢酸エチル(5/4)で再結することで目的物を7.8g得た(白色固体、収率65%)。
【0152】
得られた化合物の1H−NMR(THF−d8)の測定結果は次の通りであった:δが1.22(3H,t)、3.79(2H,q)、5.39(2H,s)、7.12(1H,d)、7.27(1H,d)、7.45−7.55(3H,m)、7.9−7.93(2H,m)、8.73(1H,s)、8.84(1H,s)。
【0153】
(合成例2)
下記構造の化合物(一般式(5)において、R13がフェニレン基、R14、R15がエトキシメチル基、R16、R17が水素原子である化合物、下記式)の合成
【0154】
【化31】

【0155】
o−アミノフェノール27.548gと塩化リチウム11.484gをN−メチル−2−ピロリドン260mlに溶解する。そこに氷冷下、イソフタロイルクロリド25gを加え、さらに室温で一晩撹拌する。反応混合物を水に注ぎ、析出した沈殿をろ別し、水で洗浄する。次にテトラヒドロフラン500mlに溶解し、硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を減圧下、留去することでN,N’−ジ(2−ヒドロキシフェニル)イソフタルアミドを40g得た。次にN,N’−ジ(2−ヒドロキシフェニル)イソフタルアミド40gとN,N−ジイプロピルエチルアミン44.52gをN−メチル−2−ピロリドン200mlに溶解し、そこにクロロメチルエチルエーテル23.88gを加え、室温で3日攪拌する。反応混合物を水に加え、有機層をジエチルエーテル300mlで抽出する。有機層を0.06N塩酸、食塩水、3%水酸化ナトリウム水溶液、食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を減圧下留去し、残渣をヘキサン/酢酸エチル(1/1)で2回再結することで目的に化合物を26g得た(白色固体、収率49%)。
【0156】
1 H−NMR(THF−d8、δ値):1.21(12H,t)、3.78(8H,q)、5.35(8H,s)、6.99−7.08(8H,m)、7.24(4H,dd)、7.64(2H,s)、8.12(4H,dd)、8.45(4H,dd)、8.52(2H,s)、9.00(2H,brs)。
【0157】
(合成例3)
下記構造の有機ケイ素化合物(一般式(6)において、R20〜R23がメチル基であり、X1およびX2がプロピレン基であり、R18およびR19がフェニルマレイミド基であり、kが1である化合物)の合成
【0158】
【化32】

【0159】
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン8.389gをNMP50mlに溶解し、そこに無水フタル酸10gを氷冷下滴下し、室温で1日撹拌した。反応混合物に酢酸エチル300mlを加え、食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。次に固化した残渣18.389gを無水酢酸80mlに溶解し、そこに酢酸ナトリウム8.309gを加え、90℃で5時間反応した。放冷後氷水に注ぎ、1時間攪拌した。析出した結晶をろ別し、水で洗浄した。得られた結晶を酢酸エチル200mlに溶解し、5%炭酸ナトリウム、食塩水、水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、残渣にヘキサン150mlを加え、攪拌洗浄した。さらにヘキサン/酢酸エチル(5/3)から再結晶して、目的物8.68gを得た(白色固体、トータル収率71%)。
【0160】
1H−NMR(THF−d8、δ値):0.81(12H,s)、0.56−0.61(4H,m)、1.67−1.75(4H,m)、3.6−3.65(4H,m)、7.72−7.76(4H,m)、7.78−7.82(4H,m)。
【0161】
(合成例4)
下記構造の有機ケイ素化合物(一般式(6)において、R20〜R23がメチル基であり、X1およびX2がプロピレン基であり、R18およびR19がベンズアミド基であり、kが1である化合物、下記式)の合成
【0162】
【化33】

【0163】
1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン7.467gとN,N−ジイプロピルエチルアミン9.71gをテトラヒドロフラン80mlに溶解し、そこにベンゾイルクロリド8.87gを氷冷下滴下し、室温で1日撹拌した。反応混合物を水に注ぎ、ジエチルエーテル200mlで有機層を抽出する。有機層を0.2N塩酸、食塩水、3%水酸化ナトリウム水溶液、食塩水の順で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去した。
【0164】
得られた目的物は粘性液体であったが冷蔵庫で放置することで固化した。目的物の収量は8gであった(収率58%)。
【0165】
(実施例9)
下記の組成からなる化学増幅型感光性樹脂組成物を調製した。
(a)実施例5で得られた重合体:4g
(b)光酸発生剤(N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフタルイミド、みどり化学(株)社製、商品名:NAI−101):0.096g
(c)溶解阻止剤(合成例1の化合物):0.8g
(d)密着性向上剤(合成例3の化合物):0.12g
(d)γ−ブチロラクトン:6g
【0166】
以上の混合物を0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターを用いてろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。5インチシリコン基板上に、上記感光性樹脂をスピンコート塗布し、オーブン中、100℃で20分間ベークし、膜厚10μmの薄膜を形成した。次に、フォトマスクを介して、紫外線(波長λ=350〜450nm)でパターン露光した。露光後、オーブン中、90℃で10分間ベークし、その後室温の2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で3分間浸漬法による現像を行い、続けて2分間純水でリンス処理をそれぞれおこなった。その結果、感光性樹脂膜の露光部分のみが現像液に溶解除去され、ポジ型のパタ−ンが得られた。得られたパターンをSEM観察した結果、露光量700mJ/cm2にて露光した時に、10μmのスルーホールパターンが解像できていることが分かった。次に、パターンが形成されたウェハー全面に露光量1000mJ/cm2にて紫外線(波長λ=350〜450nm)で露光し、さらに窒素雰囲気下、95℃で30分、240℃で1時間、それぞれオーブン中でベークすることで、ナフトオキサゾール環を形成させ、硬化後の膜厚が8μmの耐熱性等に優れた最終パターンを得た。形成されたパターンをSEM観察した結果、パターンにクラックや剥離は観測されなかった。
【0167】
同様にして実施例6、実施例7、実施例8で得た重合体を用いた感光性樹脂組成物についても評価した。その結果、それぞれ露光量600mJ/cm2の時、10μmのスルーホールパターンが解像できた。次に、パターンが形成されたウェハー全面に露光量1000mJ/cm2にて紫外線(波長λ=350〜450nm)で露光し、さらに得られたパターンを窒素雰囲気下、95℃で30分、240℃で1時間、それぞれオーブン中でベークすることで、ナフトオキサゾール環を形成させ、耐熱性等に優れた最終パターンを得た。形成されたパターンをSEM観察した結果、パターンにクラックや剥離は観測されなかった。
【0168】
(実施例10)
下記の組成からなる化学増幅型感光性樹脂組成物を調製した。
(a)実施例8で得られた重合体:4g
(b)光酸発生剤(N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフタルイミド、みどり化学(株)社製、商品名:NAI−101):0.096g
(c)溶解阻止剤(合成例2の化合物):1.2g
(d)密着性向上剤(合成例4の化合物):0.12g
(d)γ−ブチロラクトン:6g
【0169】
以上の混合物を0.45μmのテフロン(登録商標)フィルターを用いてろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。5インチシリコン基板上に、上記感光性樹脂をスピンコート塗布し、オーブン中、100℃で20分間ベークし、膜厚10μmの薄膜を形成した。次に、フォトマスクを介して、紫外線(波長λ=350〜450nm)でパターン露光した。露光後、オーブン中、90℃で10分間ベークし、その後室温の2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で3分間浸漬法による現像を行い、続けて2分間純水でリンス処理をそれぞれ行った。その結果、感光性樹脂膜の露光部分のみが現像液に溶解除去され、ポジ型のパタ−ンが得られた。得られたパターンをSEM観察した結果、露光量700mJ/cm2にて露光した時に、7μmのスルーホールパターンが解像できていることが分かった。次に、パターンが形成されたウェハー全面に露光量1000mJ/cm2にて紫外線(波長λ=350〜450nm)で露光し、さらに窒素雰囲気下、95℃で30分、240℃で1時間、それぞれオーブン中でベークすることで、ナフトオキサゾール環を形成させ、硬化後の膜厚が8μmの耐熱性等に優れた最終パターンを得た。形成されたパターンをSEM観察した結果、パターンにクラックや剥離は観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0170】
以上の説明から明らかなように、感光性樹脂組成物において、本発明のアミド誘導体を含む高分子前駆体を重合して得られる重合体を用いることで、アルカリ水溶液により現像可能で、かつ解像性に優れた感光性樹脂組成物が得られ、半導体素子の層間絶縁膜や表面保護膜等に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミド誘導体。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または酸により分解する基、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表すか、あるいは互いに連結して置換又は無置換の縮合芳香環を形成するが、少なくとも一つの縮合芳香環を形成する。)
【請求項2】
下記一般式(1−1)、(1−2)または(1−3)で表される請求項1に記載のアミド誘導体。
【化2】

(上記式中、R1、R2は、前記一般式(1)中のR1、R2と同じ意味を示し、R3〜R6,R24〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項3】
下記一般式(2)で表される繰返し構造単位を一種以上含む重合体。
【化3】

(式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は水素原子または酸により分解する基、R3〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基、あるいは互いに連結して置換又は無置換の縮合芳香環を形成するが、少なくとも一つの縮合芳香環を形成する。)
【請求項4】
一般式(2)で表される繰返し構造単位が、下記一般式(2−1)、(2−2)または(2−3)で表される繰返し構造単位である請求項3に記載の重合体。
【化4】

(上記式中、R1、R2は、前記一般式(2)中のR1、R2と同じ意味を示し、R3〜R6,R24〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項5】
一般式(2)で表される繰返し構造単位の一種以上と、当該構造単位と共重合可能なビニル系単量体由来の繰返し構造単位の一種以上とを有する請求項3または4に記載の重合体。
【請求項6】
下記一般式(3)で表される構造単位を、さらに含むことを特徴とする請求項3または4に記載の重合体。
【化5】

(式中、R7は水素原子またはメチル基を表し、R8はラクトン構造を有する有機基を表す。)
【請求項7】
重量平均分子量が2,000〜200,000であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項8】
少なくとも、請求項3ないし7のいずれか1項に記載の重合体と光酸発生剤とからなる化学増幅型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、溶解阻止剤および/または密着性向上剤を含んでなる請求項8に記載の化学増幅型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
溶解阻止剤が下記一般式(4)または下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項9に記載の化学増幅型感光性樹脂組成物。
【化6】

(式中、R9およびR10は酸により分解する基を表し、R11およびR12は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状あるいは環状のアルキル基または芳香族炭化水素基であり、Zは直結合、−C(CF32−、−C(CH32−、−SO2−、−CO−、−O−または−CH2−を表す。)
【化7】

(式中、R13は2価の芳香族炭化水素基または環状脂肪族炭化水素基、R14およびR15は酸により分解する基を表し、R16およびR17は水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【請求項11】
密着性向上剤が有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項9に記載の化学増幅型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
有機ケイ素化合物が下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の化学増幅型感光性樹脂組成物。
【化8】

(式中、R18〜R23は1価の有機基を表し、X1およびX2は2価の有機基を表す。また、kは正の整数である。 )
【請求項13】
少なくとも、下記工程からなることを特徴とするパターン形成方法:
請求項8ないし12のいずれかに記載の化学増幅型感光性樹脂組成物を被加工基板上に塗布する工程;
プリベークを行う工程;
露光する工程;
露光後ベークを行う工程;
現像を行う工程;および
ポストベークを行う工程。
【請求項14】
現像を行う工程とポストベークを行う工程との間に、さらにポスト露光工程を有することを特徴とする請求項13に記載のパターン形成方法。

【公開番号】特開2007−186680(P2007−186680A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329513(P2006−329513)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】