説明

アミン系揮発物質の透過防止方法

【課題】アミン系揮発物質の透過を防止する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるキシリレンジアミン骨格構造を、40重量%以上含有する高ガスバリア性のエポキシ樹脂硬化物からなる層を、少なくとも1層含むガスバリア性材料を使用することにより、アミン系揮発物質の透過を防止することができる。またこのエポキシ樹脂硬化物からなる層は、酸素透過係数1.0ml・mm/m2・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性も併せ持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン系揮発物質の透過防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニアやトリメチルアミンといったアミン系揮発物質の揮散を防止する場合、ガラスや金属、プラスチックなどの各種ガスバリア材料が使用される。ガスバリア性能に着目した場合、ガラスや金属はプラスチック材料と比較して非常に優れているが、成形性や軽量性、リサイクル性、透明性等を考慮した場合、バリア性能を有するプラスチック材料が好適であり、多くのガスバリアプラスチック材料が使用されている。
【0003】
一般に熱可塑性プラスチック材料のガスバリア性はそれほど高いものではないことから、これらのプラスチック材料にガスバリア性を付与する手段としては従来、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂をコーティングする手法が主に用いられてきた。しかし、この手法で作製されるPVDCコートプラスチック材料はハロゲン原子を含有しているため、焼却時にダイオキシンなどの有害ガスを発生することが問題となっている。
【0004】
これに代わる技術としてエチレン-酢酸ビニル共重合けん化物(EVOH)樹脂やポリビニルアルコール(PVA)コーティング樹脂、熱可塑性ポリマーフィルムにシリカやアルミナなどを蒸着した樹脂などが知られているが、EVOH樹脂やPVAコート樹脂は高湿度下で水分に暴露されたり、煮沸処理やレトルト処理を施すとその酸素バリア性が著しく低下するという問題が、また、無機物を蒸着した樹脂はガスバリア層が硬い無機化合物の蒸着により形成されるため、屈曲によりガスバリア層にクラックが発生し、ガスバリア性が著しく低下するという問題がある。さらに、このような真空蒸着樹脂の製造はコーティングに比べ、大掛かりな製造装置を必要とし、製造コストの面では非常に不利である。
【0005】
一方、非ハロゲン系コーティング技術として、高アミン窒素含有のポリアミン−ポリエポキシドコーティングが知られている(特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、このコート材のガスバリア性は十分に高いものではなく、また高湿度条件下でバリア性が低下することからさらなる改良が望まれる。
【特許文献1】特公平7−91367号公報
【特許文献2】特公平7−91368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アミン系揮発物質の透過を防止する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のエポキシ樹脂組成物を主成分とする高ガスバリア性樹脂組成物を用いた材料を使用することにより、アミン系揮発物質の透過を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)式の骨格構造を40重量%以上含有するエポキシ樹脂硬化物からなる層を少なくとも1層含むバリア性材料を用い、アミン系揮発物質の透過を防止することを特徴とするアミン系揮発物質の透過防止方法に関するものである。
【化2】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アミン系揮発物質の透過を防止する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においてアミン系揮発物質とは、アンモニア、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン及び含窒素複素環式芳香族化合物から選ばれる1種以上の化合物である。脂肪族アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、デシルアミン、ジデシルアミン、トリデシルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどが挙げられる。脂環式アミンとしては、ピペリジン、モルホリン、N―メチルピペリジン、N―メチルモルホリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。芳香族アミンとしては、アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリンなどが挙げられる。また、含窒素複素環式芳香族化合物としては、イミダゾール、N―メチルイミダゾール、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ビピリジン、テルピリジンなどが挙げられる。
【0011】
本発明の透過防止方法において使用するバリア性材料は、エポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物が硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物からなる層(バリア層)を少なくとも1層含むものであり、該エポキシ樹脂硬化物中に上記(1)式の骨格構造が40重量%以上、好ましくは45重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有される。エポキシ樹脂硬化物中に上記(1)式の骨格構造が高いレベルで含有されることにより、前記バリア層にアミン系揮発物質に対する高いバリア性が発現する。この高いバリア性により、アミン系揮発物質の透過を防ぐことができる。また、前記バリア層は酸素バリア性も併せ持つものであり、酸素透過係数1.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性を示すこともできる。
【0012】
本発明の透過防止方法は、前記バリア性材料を利用してアミン系揮発物質の透過を防止することを特徴とする。例えば、前記エポキシ樹脂組成物を接着剤として使用した、前記バリア層を有する積層フィルムや積層シート、該フィルムを製袋した袋状の容器や、該シートあるいはフィルムを成形したチューブ、ボトル、カップ等のバリア性材料によりアミン系揮発物質を含有する物品を密封することにより、アミン系揮発物質の系外への揮散を防止できる。また、前記エポキシ樹脂組成物からなる塗料を、そのまま、または必要に応じて溶剤や着色顔料、体質顔料などの各種顔料を混合して、金属、コンクリート、樹脂、紙等の各種材料に塗布することで、アミン系揮発物質が該材料に接触することを防止し、該材料の腐食や劣化を防止できる。
【0013】
以下に、前記エポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤について説明する。
【0014】
本発明におけるエポキシ樹脂は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物または複素環式化合物のいずれであってもよいが、高いバリア性の発現を考慮した場合には芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂がより好ましい。具体的にはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基および/またはグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが使用できるが、中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0015】
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0016】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0017】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−およびテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0018】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類およびアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましい。
【0019】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、または複素環式化合物のいずれであってもよく、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物、またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、ラミネートフィルムの使用用途およびその用途における要求性能に応じて選択することが可能である。
具体的には、ポリアミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン;メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環式アミン;ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。また、これらを原料とするエポキシ樹脂、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロルヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、および一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0020】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多置換基モノマー、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
また、酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらのカルボン酸などが使用できる。
【0021】
高いバリア性の発現を考慮した場合には、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤が好ましく、上記(1)式の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤がより好ましい。
具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との反応生成物、炭素数2〜4のアルキレンオキシドとの反応生成物、エピクロロヒドリンとの反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類とのとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することがより好ましい。
【0022】
高いバリア性および良好な接着性を考慮した場合には、エポキシ樹脂硬化剤として、下記の(A)および(B)の反応生成物、または(A)、(B)および(C)の反応生成物を用いることが特に好ましい。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
【0023】
前記(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの誘導体が好ましい。
【0024】
また、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などの炭素数1〜8の一価のカルボン酸およびそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などを上記多官能性化合物と併用して開始ポリアミンと反応させてもよい。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高いバリア性および良好な接着強度が得られる。
【0025】
前記 (A)および(B)、または(A)、(B)および(C)の反応モル比は、(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)に含有される反応性官能基の数の比、または(A)に含有されるアミノ基の数に対する(B)および(C)に含有される反応性官能基の合計数の比として、0.3〜0.97の範囲が好ましい。0.3より少ない比率では、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成せず、高いレベルのバリア性および接着性が発現しない。また、エポキシ樹脂硬化剤中に残存する揮発性分子の割合が高くなり、得られる硬化物からの臭気発生の原因となる。また、エポキシ基とアミノ基の反応により生成する水酸基の硬化反応物中における割合が高くなるため、高湿度環境下でのバリア性が著しく低下する要因となる。一方、0.97より高い範囲ではエポキシ樹脂と反応するアミノ基の量が少なくなり優れた耐衝撃性や耐熱性などが発現せず、また各種有機溶剤あるいは水に対する溶解性も低下する。得られる硬化物の高いバリア性、高い接着性、臭気発生の抑制および高湿度環境下での高いバリア性を特に考慮する場合には、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比が0.6〜0.97の範囲がより好ましい。より高いレベルの接着性の発現を考慮した場合には、本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤中に、該硬化剤の全重量を基準として、少なくとも6重量%のアミド基が含有されることが好ましい。
【0026】
前記エポキシ樹脂組成物からなる接着剤を使用して作製したラミネートフィルムは、ラミネート直後(エージング前)に300mm/minの剥離速度でのラミネート強度が30g/15mm以上であることが好ましく、40g/15mm以上であることがより好ましく、50g/15mm以上であることが特に好ましい。このラミネート強度が十分でない場合、ラミネートフィルムのトンネリングやフィルムを巻き取る際の巻きズレなどの問題が発生する。
【0027】
高いずり強度の発現を考慮した場合には、例えばエポキシ樹脂硬化剤であるメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミンと、該ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物の反応比を、ポリアミン成分に対する多官能性化合物のモル比で0.6〜0.97、好ましくは0.8〜0.97、特に好ましくは0.85〜0.97の範囲とし、反応生成物であるオリゴマーの平均分子量を高くしたエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。
より好ましいエポキシ樹脂硬化剤は、メタキシリレンジアミンと、アクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体との反応生成物である。ここで、メタキシリレンジアミンに対するアクリル酸、メタクリル酸および/またはそれらの誘導体の反応モル比は0.8〜0.97の範囲が好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数の比が0.2〜5.0、好ましくは0.2〜3.0の範囲である。この範囲とすることにより、良好な密着性とバリア性を発現できる。また、エポキシ基の数と活性アミン水素の数の比を0.2〜1.4、好ましくは0.3〜1.3、より好ましくは0.4〜1.2の範囲とすることにより、アミン系揮発物質の捕捉能を発現させることもできる。
【0029】
前記エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリアクリル系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を混合してもよい。
【0030】
前記エポキシ樹脂組成物には各種材料に塗布時の表面の湿潤を助けるために、必要に応じてシリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK340、BYK347、BYK348、BYK354、BYK380、BYK381などがある。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。
【0031】
前記エポキシ樹脂組成物には塗布直後の各種材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0032】
前記エポキシ樹脂組成物中には必要に応じ、低温硬化性を増大させるための例えば三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジ-n-ブチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素のエーテル錯体、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、安息香酸、サリチル酸、N-エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0033】
また、前記エポキシ樹脂組成物により形成されるバリア層のバリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤を添加しても良い。
バリア性材料の透明性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0034】
また、前記エポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。
【0035】
さらに、前記エポキシ樹脂組成物により形成されるバリア層の接着性を向上させるために、エポキシ樹脂組成物の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0036】
前記エポキシ樹脂組成物からなる接着剤は好適な接着性能に加え、高いバリア性を有する事を特徴としており、低湿度条件から高湿度条件に至る広い範囲において高いバリア性を示す。このことから、本発明における接着剤を使用したラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのバリア性が発現する。さらに、これら従来のガスバリア性材料とシーラント材料とを貼り合せる接着剤として併用することにより、得られるフィルムのバリア性を著しく向上させることもできる。
【0037】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリビニルアルコールコートフィルム、無機フィラーを分散させたポリビニルアルコールコートフィルム、メタキシレンアジパミド(N-MXD6)フィルムなどのガスバリア性フィルムは、高湿度条件下では、そのガスバリア性が低下するという欠点があるが、本発明における接着剤を使用して、これらのガスバリア性フィルムを含むラミネートフィルムを作製すると、この欠点を解消することができる。
【0038】
さらに、前記エポキシ樹脂硬化物は、靭性、耐湿熱性に優れることから、耐衝撃性、耐煮沸処理性、耐レトルト処理性などに優れたバリア性ラミネートフィルムが得られる。
【0039】
本発明の透過防止方法において、アミン系揮発物質を密封する際に使用するバリア性積層フィルムとしては、少なくとも熱可塑性樹脂もしくは紙からなる外層(基材)、エポキシ樹脂硬化物からなる接着剤層、およびヒートシール性を有する熱可塑性樹脂層(シーラント層)からなるラミネートフィルムが好ましい。製袋する際には、基材は袋外面、シーラント層は袋内面に用いられる。
【0040】
前記基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、メタキシリレンアジパミド(N-MXD6)などのポリアミド系フィルム、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系フィルム、ポリアクリロニトリル系フィルム、ポリ(メタ)アクリル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム等のプラスチックフィルム、カートンなどの紙類、アルミや銅などの金属箔、およびこれらの基材として用いられる各種材料にポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂やポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物系樹脂、アクリル系樹脂などの各種ポリマーによるコーティングを施したフィルム、シリカ、アルミナ、アルミなどの各種無機化合物あるいは金属を蒸着させたフィルム、無機フィラーなどを分散させたフィルム、酸素捕捉機能を付与したフィルムなどが使用できる。また、コーティングする各種ポリマーについても無機フィラーを分散させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどが挙げられるが、モンモリロナイトなどの層状珪酸塩が好ましく、またその分散方法としては例えば押出混錬法や樹脂溶液への混合分散法など従来公知の方法が使用できる。酸素捕捉機能を付与させる方法としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を含む組成物を少なくとも一部に使用する方法等が挙げられる。
これらのフィルム等の材料の厚さとしては10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度が実用的であり、プラスチックフィルムの場合は一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。また、フィルムの表面には火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
【0041】
前記シーラント層としては可撓性ポリマーフィルムを使用することが好ましく、良好なヒートシール性の発現を考慮し、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルムを選択することが好ましい。これらのフィルムの厚さは、10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度が実用的であり、フィルムの表面には火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。
【0042】
また、前記バリア性積層フィルムの外層および内層の表面には印刷処理が施されていても良い。印刷処理を施す場合には、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等の従来の熱可塑性樹脂フィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷設備が同様に適用され得る。また、印刷層を形成するインキについても、アゾ系、フタロシアニン系などの顔料、ロジン、ポリアミド樹脂、ポリウレタンなどの樹脂、メタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの溶剤等から形成される従来の熱可塑性樹脂フィルムへの印刷層に用いられてきたインキが同様に適用され得る。
【0043】
本発明において、接着剤塗布面はプライマー(メジウム)層を形成していてもよい。その場合、基材との密着性を有している限り1液系、2液系とも様々な化学構造のプライマーが使用可能であり、好ましくは接着剤の主溶剤として好適に用いられるメタノールなどのアルコールの浸透性が低いポリエステル系プライマーが実用的である。またプライマー層の厚さは0.01〜20μm、好ましくは0.1〜5μmが実用的である。0.01μm未満では十分な密着性が発揮し難く、一方20μmを超えると均一な厚みのプライマー層を形成することが困難になる。
【0044】
前記バリア性積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる外層やヒートシール性を有する熱可塑性樹脂層などを積層したものであり、積層フィルムを構成する各層を積層するに際し、少なくとも1層の接着層が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする積層用接着剤で接着される。該積層用接着剤を使用する接着層以外の接着層については、ポリウレタン系接着剤等、他の接着剤を使用してもよいし、樹脂同士を溶着させてもよい。
【0045】
前記ガスバリア性積層フィルムあるいはシートは、前記エポキシ樹脂硬化物からなるバリア層を少なくとも1層含むものであればよく、他の層は前記基材として使用される各種材料から選択することができる。例えば、エポキシ樹脂硬化物を接着剤層としたポリオレフィン/エポキシ樹脂硬化物/ポリオレフィンからなる3層構成などが挙げられるが、これに限定はされない。
【0046】
前記エポキシ樹脂組成物からなる接着剤を使用して、各種フィルム材料をラミネートする場合には、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出しラミネート等公知のラミネート法を用いることが可能であるが、本発明においては、ドライラミネートが好ましい。
【0047】
前記接着剤を各種材料に塗布し、ラミネートする場合には、接着剤層となるエポキシ樹脂硬化物を得るのに十分なエポキシ樹脂組成物の濃度および温度で実施されるが、これは開始材料およびラミネート方法の選択により変化し得る。すなわち、エポキシ樹脂組成物の濃度は選択した材料の種類およびモル比、ラミネート方法などにより、溶剤を用いない場合から、ある種の適切な有機溶剤および/または水を用いて約5重量%程度の組成物濃度に希釈して塗布液を調製する場合までの様々な状態をとり得る。使用される有機溶剤としては、接着剤との溶解性を有するあらゆる溶剤が使用し得る。例えばトルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンなどの非水溶性系溶剤、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノールなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどのアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。
【0048】
溶剤で希釈した接着剤(塗布液)は、そのザーンカップ(No.3)粘度が5〜30秒(25℃)の範囲となるような濃度で希釈され得る。ザーンカップ(No.3)粘度が5秒未満では接着剤が被塗物に十分塗布されず、ロールの汚染などの原因となる。またザーンカップ(No.3)粘度が30秒を超えると、接着剤がロールに十分移行せず、均一な接着剤層を形成するのは困難となる。たとえばドライラミネートではザーンカップ(No.3)粘度はその使用中に10〜20秒(25℃)であることが好ましい。
【0049】
本発明における塗布液を調製する際に塗布液の泡立ちを抑えるために、塗布液の中に、シリコンあるいはアクリル系化合物といった消泡剤を添加しても良い。適切な消泡剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK019、BYK052、BYK065、BYK066N、BYK067N、BYK070、BYK080、などがあげられるが、特にBYK065が好ましい。また、これら消泡剤を添加する場合には、塗布液中のエポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜3.0重量%の範囲が好ましく、0.02重量%〜2.0重量%がより好ましい。
【0050】
また、溶剤を使用した場合には、接着剤を塗布後の溶剤乾燥温度は20℃から140℃までの様々なものであってよいが、溶剤の沸点に近く、被塗物への影響が及ばない温度が望ましい。乾燥温度が20℃未満ではラミネートフィルム中に溶剤が残存し、接着不良や臭気の原因となる。また乾燥温度が140℃を超えると、ポリマーフィルムの軟化などにより、良好な外観のラミネートフィルムを得るのが困難となる。例えば接着剤を延伸ポリプロピレンフィルムに塗布する際は、40℃〜120℃が望ましい。
【0051】
接着剤を塗布する際の塗装形式としては、ロール塗布やスプレー塗布、エアナイフ塗布、浸漬、はけ塗りなどの一般的に使用される塗装形式のいずれも使用され得る。ロール塗布またはスプレー塗布が好ましい。例えば、ポリウレタン系接着剤成分をポリマーフィルムに塗布し、ラミネートする場合と同様のロールコートあるいはスプレー技術および設備が適用され得る。
【0052】
続いて、各ラミネート方法での具体的な操作について説明する。ドライラミネート法の場合には、基材を含むフィルム材料に前記塗布液をグラビアロールなどのロールにより塗布後、溶剤を乾燥させ直ちにその表面に新たなフィルム材料をニップロールにより貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。接着剤を調製する際の溶剤としては、溶解性が良く、比較的沸点が低い、炭素数3以下のアルコールを含む溶剤であることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上を主成分とする溶剤が例示される。さらに、エポキシ樹脂とポリアミンとの反応を遅延し接着剤の増粘を抑え作業時間を長くする効果があるエステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有する溶剤を混合した混合液であることが好ましい。エステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有する溶剤を混合した混合液としては、比較的沸点が低い、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を混合した混合液が例示される。得られるラミネートフィルムに残留する溶剤量が少ないフィルムを得るために、エステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有する溶剤の含有量は、全溶剤中の20重量%以下が好ましい。ここで、ラミネートフィルムに残留する溶剤が多い場合、悪臭の原因となるため、残留する溶剤量は7mg/m以下が実用的であり、7mg/mより多い場合は、フィルムから異臭が感じられる原因となる。フィルムの臭気を厳密に管理する場合には5mg/m以下が好ましく、3mg/m以下が特に好ましい。
【0053】
ドライラミネート法において、接着剤は、シーラント層に塗布することも可能であり、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルムに塗布、乾燥後、延伸ポリプロピレン、ポリアミド系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材を貼りあわせる事により、ラミネートフィルムを製造することができる。
【0054】
ニップロールにより貼り合せる場合、ニップロールは20℃〜120℃に加熱して貼り合せることができるが、40〜100℃が望ましい。
【0055】
この場合、ラミネート後に必要に応じて20℃〜60℃で一定時間のエージングを行ない、硬化反応を完了することが望ましい。一定時間のエージングを行なうことにより、十分な反応率でエポキシ樹脂硬化物が形成され、高いガスバリア性が発現する。エージングが20℃以下もしくはエージングなしでは、エポキシ樹脂組成物の反応率が低く、十分なガスバリア性及び接着力が得られない。また60℃以上のエージングはポリマーフィルムのブロッキングや添加剤の溶出などの問題が起こり得る。
【0056】
また、ノンソルベントラミネート法の場合には、基材を含むフィルム材料に予め40℃〜100℃程度に加熱しておいた前記接着剤を40℃〜120℃に加熱したグラビアロールなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。この場合もドライラミネート法の場合と同様にラミネート後に必要に応じて一定時間のエージングを行うことが望ましい。
【0057】
押出しラミネート法の場合には、基材を含むフィルム材料に接着補助剤(アンカーコート剤)として前記接着剤の主成分であるエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤の有機溶剤および/または水による希釈溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、20℃〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
これらのラミネート法およびその他の一般的に使用されうるラミネート法は必要に応じて組み合わせることも可能であり、用途や形態に応じてラミネートフィルムの層構成は変化し得る。
【0058】
前記接着剤を各種材料等に塗布、乾燥、貼り合わせ、熱処理した後の接着剤層の厚さは0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μmが実用的である。0.1μm未満では十分なガスバリア性および接着性が発揮し難く、一方100μmを超えると均一な厚みの接着剤層を形成することが困難になる。
【0059】
前記ラミネートフィルムは優れたラミネート強度を有する。熱処理後の300mm/minの剥離速度でのラミネート強度は、基材やシーラント層の材質により異なるが、例えば、基材が延伸ポリプロピレンの場合は、80g/15mm以上が好ましく、100g/15mm以上がより好ましく、特に好ましくは120g/15mm以上である。一方、基材が延伸ナイロンやポリエチレンテレフタレートの場合は、シーラント層が低密度ポリエチレンであれば600g/15mm以上が好ましく、700g/15mm以上がより好ましく、特に好ましくは800g/15mm以上であり、シーラント層が無延伸ポリプロピレンであれば300g/15mm以上が好ましく、400g/15mm以上がより好ましく、特に好ましくは500g/15mm以上である。
【0060】
本発明におけるバリア性材料は、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。すなわち、本発明におけるラミネートフィルムをそのままアミン系揮発物質を保存するバリア性材料として使用することもできるし、必要に応じて酸素吸収層や熱可塑性樹脂フィルム層、紙層、金属箔層などを前記ラミネートフィルムにさらにラミネートさせることもできる。この際、前記接着剤を用いてラミネートさせても良いし、他の接着剤やアンカーコート剤を用いてラミネートさせても良い。
【0061】
前記バリア性材料は袋状容器であってもよい。該袋状容器は、前記バリア性積層フィルムを使用し、そのヒートシール性樹脂層の面を対向して重ね合わせ、しかる後、その周辺端部をヒートシールしてシール部を形成して製造することができる。その製袋方法としては、例えば、前記バリア性積層フィルムを折り曲げるかあるいは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、更にその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールする方法が挙げられる。該袋状容器は使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。その他、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0062】
前記袋状容器にその開口部からアミン系揮発物質を充填し、しかる後、その開口部をヒートシールすることで、アミン系揮発物質の揮散防止をすることができる。
【実施例】
【0063】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0064】
<エポキシ樹脂硬化剤a>
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。滴下終了後120℃で1時間攪拌し、さらに、生成するメタノールを留去しながら3時間で160℃まで昇温した。100℃まで冷却し、固形分濃度が70重量%になるように所定量のメタノールを加え、エポキシ樹脂硬化剤aを得た。エポキシ樹脂硬化剤a中のアミド基の含有率は21重量%であった。
【0065】
また、酸素透過率、ラミネート強度等の評価方法は以下の通りである。
<酸素透過率 (ml/m・day・MPa)>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN10/50A)を使用して、ラミネートフィルムの酸素透過率を23℃、相対湿度60%の条件下で測定した。
<ラミネート強度 (g/15mm)>
JISK−6854に指定されている方法を用い、ラミネートフィルムのラミネート強度をT型剥離試験により300mm/minの剥離速度で測定した。
<バリア性試験>
ラミネートフィルムを5cm×5cmの寸法の袋を作製し、この袋に0.1Nに調整したアンモニア水溶液を2ml密封し、この密封袋をガラス容器に密封して、温度23℃、相対湿度60%で1〜14日保存した。各経時毎に官能試験により臭気漏れの有無を確認した。バリア性が保たれているものを○、若干の臭気漏れが確認されるものを△、明らかな臭気漏れが確認されるものを×とした。
【0066】
<実施例1>
メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD−X)を50重量部およびエポキシ樹脂硬化剤aを107重量部含むメタノール/酢酸エチル=9/1溶液(固形分濃度;35重量%)を作製し、シリコン系消泡剤(ビックケミー社製;BYK065)を0.08重量部加えよく攪拌し、ザーンカップ(No.3)粘度14秒(25℃)の塗布液を得た。
この塗布液を厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(東洋紡績(株)製;ハーデンN1102)に110線/inch深さ95μmグラビアロールを使用して接着剤を塗布し(塗布量:3.8 g/m(固形分))、次いで60℃(入り口付近)〜90℃(出口付近)の乾燥オーブンで乾燥させた後、厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東セロ(株)製TUX−MCS)を70℃に加熱したニップロールにより貼り合わせ、巻取り速度120m/minで巻取り、40℃で2日間エージングすることにより積層フィルムAを得た。初期粘着力は70 g/15mm、接着層(エポキシ樹脂硬化物)中の(1)式の骨格構造の含有率は62.0重量%であった。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例2>
エポキシ樹脂硬化剤aを80重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0068】
<実施例3>
厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(東洋紡績(株)製;ハーデンN1102)の代わりに厚み12μmの延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製;E5100)を使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0069】
<実施例4>
厚み15μmの延伸ナイロンフィルム(東洋紡績(株)製;ハーデンN1102)の代わりに厚み20μmの延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製;P2161)を使用した以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例5>
エポキシ樹脂硬化剤aを160重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0071】
<比較例1>
エポキシ樹脂硬化剤aを1330重量部用いた以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式の骨格構造を40重量%以上含有するエポキシ樹脂硬化物からなる層を少なくとも1層含むバリア性材料を用い、アミン系揮発物質の透過を防止することを特徴とするアミン系揮発物質の透過防止方法。
【化1】

【請求項2】
前記エポキシ樹脂硬化物が酸素透過係数1.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下の酸素バリア性を有する請求項1記載のアミン系揮発物質の透過防止方法。

【公開番号】特開2008−222761(P2008−222761A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59693(P2007−59693)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】