説明

アライナー装置

【課題】ウェハのエッジを把持する方式のプリアライナーにおいて、ウェハのグリップ部分とリフタ部分の干渉を回避する。
【解決手段】ウェハの外周を把持する複数のクランプアームを有する把持機構と、前記把持機構を旋回させて、前記ウェハを所望の回転方向に回転させる旋回機構と、前記ウェハを前記把持機構の上方に移動させる複数のリフトアームを有するリフタ機構と、を少なくとも備えたアライナー装置において、複数のリフトアーム20が上昇するとき、複数のリフトアーム20のうち複数のクランプアーム11と干渉する位置にあるリフトアーム20が、前記把持機構に設けられた拘束部材13に係止されてその上昇が拘束されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造装置や検査装置に使用され、ウェハのセンタリングやノッチ等の角度合せを行うプリアライナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等において、プリアライナー装置は主にウェハハンドリングロボットと組み合わせて使用され、ロボットから移載されたウェハを旋回させることによって、ウェハの外周に予め施されているノッチやオリフラなどと呼ばれる切り欠きの特定形状部分を、プリアライナー装置に設けている検出センサで検知し、この情報をもとにウェハを所定の角度方向へアライメント(位置合わせ)する装置である。このプリアライナー装置は、昨今の半導体製造装置ではウェハハンドリングロボットとともに、フィルタを通過したダウンフローの気流下を箱体によって隔離した、所謂局所クリーン化された筐体内に設置される。また、筐体の側面には、ウェハを収納したカセット(FOUPなど)を開閉するカセットオープナ(PODオープナやFOUPオープナという)が設けられており、このオープナによって、筐体外の清浄でない雰囲気を筐体内に侵入させることなくカセットなどを開閉させている。そして、ウェハハンドリングロボットがカセット内のウェハをプリアライナーでアライメントさせながら、アライメントが終了したウェハを、筐体に隣接して設置されている処理装置へと搬送し、処理装置では、例えばCVD、エッチング、露光などといった所定の処理が行われる。そして、処理装置で処理が終わったウェハは再びカセットに収納される。この形態の場合、筐体はフロントエンド装置などと呼ばれる搬送装置を構成している。また、筐体の側面に、上記のカセットオープナが複数設けられ、これら複数のカセットオープナ上の複数のカセット間で、ウェハハンドリングロボットがアライナーでアライメントを行いながらウェハを移し変える筐体も開発されている。この筐体の形態はソーターなどと呼ばれる搬送装置である。いずれにしても、プリアライナーは、ウェハの位置や方向をそろえるため、半導体製造装置等には頻繁に使用されている。
【0003】
ところで、従来のプリアライナー装置におけるウェハの保持には、ウェハを真空吸着する方式が広く用いられていた。ところが、最近のウェハの大口径化とともにデザインルールの微細化がすすみ、ウェハの表面だけでなく裏面のパーティクルも問題視されてきたことから、真空吸着方式においてはウェハ裏面に吸着保持材が接触することによる汚染を避けられないため、ウェハのエッジ(外周部分)を把持するグリップアームを用いたプリアライナーが開発されている。
同様な理由において、ウェハハンドリングロボットにおいても、エンドエフェクターと呼ばれるウェハを載置搬送する部分のウェハ把持部でもこのエッジグリップ方式が主流となってきており、エッジを把持する方式のプリアライナーとともに組み合わされて使用されている。
そこで、エッジを把持する方式のプリアライナーとウェハハンドリングロボットを搬送装置に使用する場合は、いずれもウェハのエッジを把持しているために、プリアライナーのグリップアームと、ロボットのエンドエフェクターとが、ウェハの受け渡しの際に互いに干渉しないように、あらかじめ決められた互いの位置関係で受け渡しを行う必要がある。
この位置関係について、プリアライナーとハンドリングロボットとの一連の動作とともに説明する。ロボットからプリアライナー装置へウェハが渡される際は、ウェハのノッチ位置は任意の位置(どの位置にあるか不明な状態)にてプリアライナー装置に渡される。この際、エンドエフェクターとグリップアームは、先述のように互いの干渉を避けるため、グリップアームをあらかじめエンドエフェクタと干渉しないような位置に回転させている。すなわちウェハの授受の際には、互いに決められた所定の位置関係を保つ必要がある。ウェハを受け取ったプリアライナー装置は、ウェハを把持して旋回させることで装置の一部に設けてあるノッチ検出センサにてノッチ位置を検出し、ユーザが要求する所定の角度位置へノッチを回転移動させる。ところが、要求されたノッチ角度位置へ移動が完了した状態でのグリップアームの位置は、必ずしもハンドリングロボットがウェハを受け渡しできる所定の位置関係ではない場合がある。よって、アライメントが完了したウェハの位置はそのままで、グリップアームのみを所定の位置へ動作させる必要がある。そこで、ノッチの位置決め(アライメント)が完了しているウェハを一時かわし、グリップアームを所定の位置へ旋回させるために、ウェハをグリップアームの上方向へ一旦移動させるリフタを備えることが必要となる。グリップアームによるウェハの把持を一旦解放し、リフタにてグリップアーム上方向にウェハをかわし、グリップアームを所定の位置へ移動(回転)し、その後、リフトを再び下降してウェハをグリップアーム上に置くことで、ハンドリングロボットのエンドエフェクターの進入が可能となり、ハンドリングロボットがウェハをピックアップすることができる。これで一連の動作が完了する。
そして、当然このリフタにおいてもウェハのエッジ部分のみが接触個所として許容された個所である。しかしながら、このようにグリップアームおよびリフタにおいても接触領域はウェハのエッジで共通であり、ユーザが要求するノッチ角度合わせの位置に対してグリップアームは任意の位置にあるため、リフタを昇降させる場合にグリップアーム部分に干渉する場合が出てくる。すなわち、ノッチ角度位置合わせ終了後のリフタの昇降動作領域内にグリップアームが位置する場合が発生する。
上述のように、ハンドリングロボットへウェハを受け渡すためには、グリップアームは、あらかじめ決められた所定の位置へ移動(回転)させる必要があるため、この干渉を回避しないと搬送装置として動作の継続ができなくなる。
このグリップアームとリフタとの干渉を回避するための一例として特許文献1が開示されている。特許文献1においては、図11および図12に示すように、上下動する分割された複数の基板保持片を備えており、その基板保持片は回転中心に対して放射状に配置された他の基板保持片と一体的に形成された上下移動用保持体を構成し、この上下移動用保持体が複数配設され、それぞれ単独に上下動可能に構成するものである。すなわち複数の組のリフタを形成することで、ある組のリフタが上昇するとグリップアームに干渉する場合は、他の組のリフタを動作させて干渉を回避するというものである。
【特許文献1】特開2002−151577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1では、複数の分割された基板保持片を備えており、その基板保持片は回転中心に対して放射状に配置された他の基板保持片と一体的に形成された上下移動用保持体を構成し、この上下移動用保持体が複数配設されていることから、実際にその具現化のためには図11が示すように、それぞれを上下方向に配設する必要があり、装置が高さ方向に大きくなるという問題点があった。また、それぞれの基板保持片もしくは上下移動用保持体が、それぞれ単独に上下動可能に構成することから、それぞれの駆動源も必要で、構成が複雑で構成部品点数も多くなり装置が大きくなる他にコスト的にも高くなるというような問題もあった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、グリップアームとリフタの干渉回避を行いながらも装置の小型化、特に高さ方向に低くすることができ、構成が比較的単純で低コストなプリアライナー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1記載の発明は、ウェハの外周を把持する複数のクランプアームを有する把持機構と、前記把持機構を旋回させて、前記ウェハを所望の回転方向に回転させる旋回機構と、前記ウェハを前記把持機構の上方に移動させる複数のリフトアームを有するリフタ機構と、を少なくとも備え、前記把持機構の把持動作と、前記旋回機構の旋回動作とによって前記ウェハのアライメントを行うアライナー装置において、前記複数のリフトアームが上昇するとき、前記複数のリフトアームのうち前記複数のクランプアームと干渉する位置にある前記リフトアームが、前記把持機構に設けられた拘束部材に係止されてその上昇が拘束されるアライナー装置とするものである。
請求項2記載の発明は、前記複数のクランプアームの各々は、その下部近傍に設けられた拘束部材を備え、前記複数のリフトアームの各々は、装置内部に立設されたリフトアーム支柱によって上下動作が可能に案内されると共に、前記拘束部材と係合できる拘束部材受けを備え、前記リフトアームが上昇する際、前記拘束部材と前記拘束部材受けが上下で対向する位置にあるとき、前記拘束部材に前記拘束部材受けが係止されて、前記リフトアームの上昇動作が拘束される請求項1記載のアライナー装置とするものである。
請求項3記載の発明は、前記複数のリフトアームの各々には、前記ウェハの外周を傾斜した面で支持するリフトツメが設けられた請求項2記載のアライナー装置とするものである。
請求項4記載の発明は、前記リフタ機構は、前記複数のリフトアームの各々に設けられた結合分離機構と係合する昇降リングと、前記昇降リングの一部に連結されて前記昇降リングを昇降動作させるリフト昇降用シリンダと、からなり、前記昇降リングが昇降することによって前記複数のリフトアームの全てを同時に昇降させる請求項1記載のアライナー装置とするものである。
請求項5記載の発明は、前記結合分離機構は、第一の係合部を有する連結部材と、前記連結部材を前記リフトアームに対して回転自在に連結するベアリングと、前記連結部材を所定の方向に常に付勢するバネと、を備え、前記昇降リングは、その内周に第一のリング係合部を備え、前記昇降リングが下降しているときは、前記第一の係合部の下部に前記第一のリング係合部が位置するよう構成され、前記昇降リングが上昇すると、前記バネの付勢によって前記第一の係合部と前記第一のリング係合部とが接触しながら前記リフトアームを上昇させ、前記拘束部材受けと前記拘束部材とが接触すると、前記バネの付勢を超えて前記第一の係合部が前記第一のリング係合部から外れて、前記リフトアームの上昇が拘束される請求項4記載のアライナー装置とするものである。
請求項6記載の発明は、前記第一のリング係合部の上面と前記第一の係合部の下面には、前記昇降リングの中央に向かって傾斜する傾斜面が設けられている請求項5記載のアライナー装置とするものである。
請求項7記載の発明は、前記連結部材は、前記第一の係合部の下部に更に第二の係合部を備え、前記昇降リングは、前記第一のリング係合部の下部に更に第二のリング係合部を備え、前記昇降リングが下降しているときは、前記第一のリング係合部が前記第一と第二の係合部の間に位置し、かつ前記第二のリング係合部が前記第二の係合部の下部に位置するよう構成され、前記昇降リングが上昇して、前記バネの付勢を超えて前記第一の係合部が前記第一のリング係合部から外れたあと、前記第二の係合部と前記第二のリング係合部とが接触し、前記第一と第二の係合部の間が前記第一のリング係合部に向かう方向のまま前記連結部材を保持する請求項5記載のアライナー装置とするものである。
請求項8記載の発明は、前記複数のリフトアームの数は、前記複数のクランプアームの数より少なくとも3箇所多く設けられている請求項1記載のアライナー装置とするものである。
請求項9記載の発明は、ウェハを収納するカセットと、前記カセットの蓋を開閉するカセットオープナと、前記カセットオープナが開放した前記カセットから前記ウェハを授受するウェハハンドリングロボットと、前記ウェハハンドリングロボットと前記ウェハを授受しながら前記ウェハのアライメントを行うアライナー装置と、を備えたウェハの搬送装置において、前記アライナー装置が請求項1記載のアライナー装置であるウェハの搬送装置とするものである。
請求項10記載の発明は、請求項9記載のウェハの搬送装置を備えた半導体製造装置とするものである。

【発明の効果】
【0006】
本発明によると、従来の干渉回避の一例である特許文献1のように複数のリフタ機構を装置内に組み込む必要がなく、構成部品点数を少なくすることができることから、装置の小型化、特に高さ方向に低くすることができ、低コストなプリアライナー装置を提供することができる。
特に、請求項1記載の発明は、複数あるリフトアームのうち、クランプアームと干渉するリフトアームだけが上昇しない構成なので、部品同士が干渉せずに安全にクランプアームからウェハを上方にかわすことができ、クランプアームは確実に所定の位置まで回転できる。
特に、請求項2記載の発明は、拘束部材によって拘束部材受けが係止するだけで目的が簡単に達成できる構成となる。
特に、請求項3記載の発明は、リフトアームがリフトツメでウェハを把持しても、その外周部分のエッジと接触するだけなので粉塵が発生しにくい。
特に、請求項4記載の発明は、昇降リングによって、複数準備したリフトアームを一度に昇降できる。
特に、請求項5記載の発明は、拘束部材受けと拘束部材とが接触すると、連結部材をバネで一定方向に付勢しているので、さらに昇降リングが上昇すると、連結部材の第一の係合部が第一のリング係合部と外れるので、確実にリフトアームの上昇が拘束(ストップ)できる。
特に、請求項6記載の発明は、拘束部材受けと拘束部材とが接触したときの、第一の係合部が第一のリング係合部と外れる動作をスムーズにできる。
特に、請求項7記載の発明は、拘束部材受けと拘束部材とが接触し、第一の係合部が第一のリング係合部と外れて、その後昇降リングが下降しても、もとの状態にスムーズに戻ることができる。
特に、請求項8記載の発明は、複数のリフトアームのうち、全ての数のクランプアームがリフトアームを拘束しても、リフトアームの数をクランプアームの数よりも多く設けておけば、必ずリフトアームがウェハをクランプアームから上昇回避できる。
特に、請求項9及び10記載の発明は、ウェハ搬送装置と半導体製造装置において、本発明のアライナーを使えば、小型の低コストな装置が構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態の一例について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0008】
図1(a)は、本発明のプリアライナー装置と、プリアライナー装置にウェハを載置するウェハハンドリングロボットのエンドエフェクターの上面図である。図1(b)は、(a)におけるプリアライナー装置の側面図である。図2は、本発明のプリアライナー装置の側面断面図で、おもに旋回機構部に関する図である。図3は、本発明のプリアライナー装置の側面断面図で、おもにリフタ機構部に関する図である。図4は、本発明のプリアライナー装置のリフタ機構を示すための上面図である。図5は、リフタ機構が下降している状態の部分側面図であり、一つのリフトアーム部について描いたものである。図6は、リフタ機構が上昇している状態の部分側面図である。図7は、リフタが上昇した際の側面図であるが、リフトアームが上昇しない状態となったときを示した図である。図8は、リフタの動作途中の状態を示した側面図で、特に結合分離機構の分離直前の状態もしくは結合直後の状態を示したのものである。図9は、リフトアーム部および結合分離機構の上面の部分断面図である。図10は、リフトアーム部および結合分離機構の上面の断面図である。
【0009】
以下、本発明の構成を上記各図を用いて説明する。本装置は、概ね、ウェハの外周を把持するクランプアームなどを含んだグリップ機構と、グリップ機構が把持したウェハを旋回させる旋回機構と、旋回機構が回転させるウェハの外周部分のノッチやオリフラなどの特定形状を読み取るセンサ機構と、上述のようにアライメントが終了した時のグリップアームを、ウェハハンドリングロボットのエンドエフェクターと干渉させないため、グリップアームのみを所定の位置まで回転させるのに一時的にウェハをかわす(持ち上げる)ためのリフタ機構と、から構成される。
【0010】
まず、グリップ機構と旋回機構とについて説明する。図1、図2において1は本装置がアライメントを行うウェハである。2は旋回ベースで、旋回ベース2の下側の円筒中空状の回転軸3と連結されると共に、回転軸3と同芯軸上に配置された中空穴を有するプーリ5とともにベアリング4にてアライナー本体50に対して回転可能に支持されている。プーリ5はサーボモータなど位置検出が可能な旋回用モータ6の出力軸端にあるプーリ7と、タイミングベルト8を介して接続されている。よって、旋回用モータ6の回転により、旋回ベース2が旋回できる構成となっている。これらが旋回機構である。
旋回ベース2上には、クランプアーム11A、11Bが各2本ずつ配置され、クランプアーム11A、11Bは、旋回ベース2及び回転軸3の内部にクランプ駆動機構を設けることで、同一直線上をお互いに接近、離隔動作できる構成となっており、クランプアーム上11A、11Bに設けたクランプツメ12A、12Bにて、お互いに挟みこむ方向に直線動作することで、ウェハ1のエッジ部分を把持する構成としている。なお、このクランプ駆動機構については、本出願人がPCT/JP2006/310433にて国際出願して開示している。クランプツメ12A、12Bは、クランプアーム11A、11Bの直動動作によって、ウェハ1を把持した時に、把持状態におけるウェハ中心と、旋回ベース2の旋回中心とが一致するように配設している。これらがグリップ機構である。
また、センサ機構として、グリップ機構が把持したウェハが旋回機構で回転したとき、そのウェハの外周部分のノッチやオリフラなど特定部分を検出できる位置にノッチ検出センサ14が配設されている。
以上の旋回機構、グリップ機構、及びセンサ機構は公知の構成である。
そして、本発明では、クランプアーム11A、11Bの下部に、クランプアームの幅と同じ、もしくはそれ以上の幅を持つ拘束部材13が設けられており、後述のリフタの拘束部材受け21の上下動作範囲内の高さに位置するように設けられている。拘束部材13は、通常時(後述の昇降リング23が下降しているとき)は拘束部材受け21の上側に位置するよう構成されていて、通常時はクランプアーム11A、11Bとともに拘束部材13が旋回しても拘束部材受け21と干渉することは無い。なお、この拘束部材13の設置については、本装置を図1(a)のように上面からみたとき、クランプアーム11A、11Bの下方側に配置するようにすれば、クランプアーム11A、11Bの下部の位置に限定されるものではなく、旋回ベース2など他の個所に設けても良い。
【0011】
次に、本発明のリフタ機構について説明する。図3、図4、に示すように、ほぼウェハの外周の位置に、複数のリフトアーム20が、装置本体内部に立設されたリフトアーム支柱25に対して上下に動作可能に配設されている。各リフトアーム20は、案内溝が形成されたリフトアーム支柱25に対し、上下方向へ動作可能になっている。各リフトアーム20は、結合分離機構30と拘束部材受け21とウェハのエッジ部を支持するリフトツメ24から成る。リフトツメ24についてはウェハ1の裏面に接触することがないように、ツメには傾斜が設けられており、裏面に接触することなくウェハのエッジのみを支持するような形状になっている。リフトアーム20は、クランプアーム11A,11Bが旋回しても衝突する事が無いように、クランプアーム11A,11Bの旋回動作範囲の外側に配置されている。そして、これら複数のリフトアーム20は、各々が、図4のように環状の昇降リング23と、後述する結合分離機構30によって係合するように配設されている。昇降リング23は、リフトアーム20の結合分離機構30と係合するよう、その内周全域に、第一のリング係合部41と第二のリング係合部42とで示すような、少なくとも2つの突起が設けてある。第一のリング係合部41の上面にはその全域に、リングの中心に向かって傾斜する傾斜面が形成されている。また、昇降リング23の一部にはリフト昇降用シリンダ22が接続されており、昇降リング23は図3において上下に昇降可能である。従って、昇降リング23と各リフトアーム20とは、結合分離機構30によって係合しながら、リフトアーム20らはリフト昇降用シリンダ22の動作によって、上下動できる構成となっている。
【0012】
各リフトアーム20の結合分離機構30と、昇降リング23との係合についてさらに説明する。図5、図9、図10に示すように、結合分離機構30は、連結部材31とバネ32とベアリング33とから構成されている。リフトアーム20に対し、連結部材31はベアリング33によって回転可能に支持されており、リフトアーム20と連結部材31との間に設けられているバネ32の引っ張り荷重により、連結部材31は図5において常に時計回りの方向に付勢されている。そして、連結部材31には、第一の係合部43と第二の係合部44とが上下に対向するように形成されている。通常時(昇降リング23が下降している状態)は、第一の係合部43の下面と昇降リング23の第一のリング係合部41の傾斜面とが接触するように構成されている。また、第一の係合部43と第二の係合部44との間に、第一のリング係合部41が位置しており、第二の係合部44のさらに下部に第二のリング係合部42が位置するように構成されている。
【0013】
次に、以上で構成された本発明のアライナー装置の動作について説明する。
図1のように、ウェハハンドリングロボットのエンドエフェクター9から、ウェハ1がクランプアーム11A、11Bに置かれると、クランプアーム11A、11Bが互いに接近する方向に直線動作し、クランプツメ12A、12Bによって、ウェハ1のエッジを把持する。この把持動作によって、ウェハ1はその位置が決定される。把持後、ウェハ1を旋回機構によって旋回させて、ウェハ1の外周にあるノッチもしくはオリエンテーションフラットをノッチ検出センサ14で検出し、さらにノッチ等をユーザが要求する所定の位置へと回転させる。この回転動作によって、ウェハの回転方向の位置が決定される。その後、クランプアーム11A,11Bが離れる方向に離隔動作し、ウェハ1を解放するとともに、昇降用シリンダ22を動作させることで、昇降リング23を上昇させ、これに伴い各リフトアーム20が上昇することで、リフトツメ24にウェハ1を載置させながら上昇させる(図5から図6の状態となる)。このときクランプツメ12A、12Bからウェハ1が若干量離れる。すなわち、昇降用シリンダ22のロッドを引き込むことで、昇降リング23を上昇させ、昇降リング23の第一のリング係合部41と結合分離機構30の第一の係合部43とが接触しているので、各リフトアーム20が上昇し、ウェハ1をリフトツメ24にて支持し上昇させる。
そして、このようにウェハ1とリフタ機構とが上昇位置にある時に、クランプアーム11A、11Bは、エンドエフェクター9と受け渡しが可能なあらかじめ決められた所定の角度位置へと回転する。なお、本実施例では、図1に示すエンドエフェクター9とクランプアーム11A、11Bの位置関係となる。所定の位置関係は、当然ながらエンドエフェクターとクランプアームの形状によって適宜決定される。
そして、再びリフタ機構が下降してクランプアーム11A、11B 上にウェハ1を置き、ウェハハンドリングロボットがウェハ1を受け取ることで、一連の動作が完了する。
【0014】
次に、リフタ機構の複数のリフトアーム20がウェハ1を上昇させる際に、クランプアーム11Aもしくは11Bが、これら複数のうち数箇所のリフトアーム20の上方位置にあり、これらが互いに干渉する場合について図5、図7、図8を用いて説明する。
クランプアーム11Aもしくは11B が、複数のうちのいくつかのリフトアーム20の上方位置にあると、クランプアーム11A、11Bの下部に配設している拘束部材13と該当するリフトアーム20に配設している拘束部材受け21とが上下方向に対向する位置となる。
このとき、昇降用シリンダ22が動作し、昇降リング23が上昇すると、これに伴い複数存在する全てのリフトアーム20は一旦上昇し始める(図5)が、クランプアームと上下に対向する位置にあるリフトアーム20だけは、その拘束部材受け21が、拘束部材13にすぐに当接する(図8)。一方、ばね32によって付勢されて昇降リング23と第一の係合部43で係合されていた連結部材31は、昇降用シリンダ22の動作によって昇降リング23がさらに上昇すると、ばね32の付勢力を超えるので、第一の係合部43が第一のリング係合部41の傾斜面から外れ、当該リフトアーム20は落下し、空隙45を介して拘束部材13との接触が無くなる。ところが、連結部材31の第二の係合部44の下面が、そのまま上昇してきた昇降リング23の第二のリング係合部42の上面と当接して連結部材31を反時計回りに押し上げるので、連結部材31は、ばね32が伸びた状態となって、第一の係合部43と第二の係合部44との間が、第一のリング係合部41に向かう方向で保持されたままの状態となる(図7)。そして、昇降シリンダ22の引き込み動作の限界によって昇降リング23は停止する。また、このとき、クランプアーム11A、11Bらと上下に対向する位置になかったその他のリフトアームらは、昇降リング23と第一の係合部43との接触によって上昇したまま、ウェハ1の外周をリフトツメ24で保持している。
こうして本発明ではクランプアーム11Aもしくは11Bと当該リフトアーム20との干渉を回避でき、この状態(その他のリフトアームがウェハを持ち上げた状態)で、グリップ機構を旋回機構によってエンドエフェクター9と受け渡しが可能なあらかじめ決められた所定の角度位置へと回転することができる。
【0015】
次に、昇降リングが23上昇位置から下降する場合について説明する。昇降リング23が上昇位置にあるとき、連結部材31は、未だばね32が伸びた状態であって、第一の係合部43と第二の係合部44との間が、第一のリング係合部41に向かって保持されたままの状態であるので、昇降リング23が下降し始めると、第一のリング係合部41は、再び連結部材31の第一の係合部43と第二の係合部44との間に入り込みながら、第二のリング係合部42と第二の係合部44とが離れると、第一のリング係合部41の傾斜面と、第一の係合部43の上面とが接触を始め、再び当初(昇降リング23が下降した状態)の状態に戻ることができる。一方、その他のリフトアームらは、保持していたウェハを再び所定の角度位置へと回転が終了しているクランプアームに戻す。よって、ウェハハンドリングロボットはエンドエフェクター9をクランプアームと干渉させることなくウェハを取り去ることができる。
【0016】
以上説明したように、リフトアーム20は、その上部にクランプアーム11Aもしくは11Bが無い場合はそのまま上昇することができ、その上部にクランプアーム11Aもしくは11Bがある場合は上昇できないよう構成されている。そして、リフトアーム20の数については、クランプアームの数より最低3箇所多く設けるなどして、リフトアームがクランプアームの数量分上昇できなかった場合を考慮した数と配置とすればよい。これは、例えば本実施例のようにクランプアームが4つの場合、リフトアームを最低4+3の合計7箇所設け、それらをクランプアームの構成に応じて適宜配置することにより、4つのクランプアームによって4つのリフトアームが上昇できなかったことを考慮し、ウェハを残りの3つのリフトアームで安定的に保持できるように構成すればよい。こうすることで、クランプアームとリフトアームとの衝突をさけながら、安定的にウェハを保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明のプリアライナー装置と、ウェハハンドリングロボットのエンドエフェクターの上面図。(b)は(a)におけるプリアライナー装置の側面図
【図2】本発明のプリアライナー装置の側面断面図で、おもに旋回機構部に関する図
【図3】本発明のプリアライナー装置の側面断面図で、おもにリフタ機構部に関する図
【図4】本発明のプリアライナー装置のリフタ機構を示すための上面図
【図5】リフタ機構が下降している状態の部分側面図であり、一つのリフトアーム部について描いたもの
【図6】リフタ機構が上昇している状態の部分側面図
【図7】リフタ機構が上昇した際の上昇しないリフトアームを示した図
【図8】リフタの動作途中の状態を示した側面図で、特に結合分離機構の分離直前の状態もしくは結合直後の状態を示したのもの
【図9】リフトアーム部および結合分離機構の上面の部分断面図
【図10】リフトアーム部および結合分離機構の上面図
【図11】従来のプリアライナー装置を示す斜視図
【図12】図10におけるプリアライナー装置を示す側面図
【符号の説明】
【0018】
1 ウェハ
2 旋回ベース
3 回転軸
4 ベアリング
5 プーリ
6 旋回用モータ
7 プーリ
8 タイミングベルト
9 エンドエフェクター
11A,11B クランプアーム
12A,12B クランプツメ
13 拘束部材
14 ノッチ検出センサ
20 リフトアーム
25 リフトアーム支柱
21 拘束部材受け
22 昇降用シリンダ
23 昇降リング
24 リフトツメ
41 第一のリング係合部
42 第二のリング係合部
43 第一の係合部
44 第二の係合部
45 空隙
30 結合分離機構
31 連結部材
32 バネ
33 ベアリング
50 プリアライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの外周を把持する複数のクランプアームを有する把持機構と、前記把持機構を旋回させて、前記ウェハを所望の回転方向に回転させる旋回機構と、前記ウェハを前記把持機構の上方に移動させる複数のリフトアームを有するリフタ機構と、を少なくとも備え、前記把持機構の把持動作と、前記旋回機構の旋回動作とによって前記ウェハのアライメントを行うアライナー装置において、
前記複数のリフトアームが上昇するとき、前記複数のリフトアームのうち前記複数のクランプアームと干渉する位置にある前記リフトアームが、前記把持機構に設けられた拘束部材に係止されてその上昇が拘束されることを特徴とするアライナー装置。
【請求項2】
前記複数のクランプアームの各々は、その下部近傍に設けられた拘束部材を備え、
前記複数のリフトアームの各々は、装置内部に立設されたリフトアーム支柱によって上下動作が可能に案内されると共に、前記拘束部材と係合できる拘束部材受けを備え、前記リフトアームが上昇する際、前記拘束部材と前記拘束部材受けが上下で対向する位置にあるとき、前記拘束部材に前記拘束部材受けが係止されて、前記リフトアームの上昇動作が拘束されることを特徴とする請求項1記載のアライナー装置。
【請求項3】
前記複数のリフトアームの各々には、前記ウェハの外周を傾斜した面で支持するリフトツメが設けられたことを特徴とする請求項2記載のアライナー装置。
【請求項4】
前記リフタ機構は、前記複数のリフトアームの各々に設けられた結合分離機構と係合する昇降リングと、前記昇降リングの一部に連結されて前記昇降リングを昇降動作させるリフト昇降用シリンダと、からなり、前記昇降リングが昇降することによって前記複数のリフトアームの全てを同時に昇降させることを特徴とする請求項1記載のアライナー装置。
【請求項5】
前記結合分離機構は、第一の係合部を有する連結部材と、前記連結部材を前記リフトアームに対して回転自在に連結するベアリングと、前記連結部材を所定の方向に常に付勢するバネと、を備え、
前記昇降リングは、その内周に第一のリング係合部を備え、
前記昇降リングが下降しているときは、前記第一の係合部の下部に前記第一のリング係合部が位置するよう構成され、
前記昇降リングが上昇すると、前記バネの付勢によって前記第一の係合部と前記第一のリング係合部とが接触しながら前記リフトアームを上昇させ、前記拘束部材受けと前記拘束部材とが接触すると、前記バネの付勢を超えて前記第一の係合部が前記第一のリング係合部から外れて、前記リフトアームの上昇が拘束されることを特徴とする請求項4記載のアライナー装置。
【請求項6】
前記第一のリング係合部の上面と前記第一の係合部の下面には、前記昇降リングの中央に向かって傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項5記載のアライナー装置。
【請求項7】
前記連結部材は、前記第一の係合部の下部に更に第二の係合部を備え、
前記昇降リングは、前記第一のリング係合部の下部に更に第二のリング係合部を備え、
前記昇降リングが下降しているときは、前記第一のリング係合部が前記第一と第二の係合部の間に位置し、かつ前記第二のリング係合部が前記第二の係合部の下部に位置するよう構成され、
前記昇降リングが上昇して、前記バネの付勢を超えて前記第一の係合部が前記第一のリング係合部から外れたあと、前記第二の係合部と前記第二のリング係合部とが接触し、前記第一と第二の係合部の間が前記第一のリング係合部に向かう方向のまま前記連結部材を保持することを特徴とする請求項5記載のアライナー装置。
【請求項8】
前記複数のリフトアームの数は、前記複数のクランプアームの数より少なくとも3箇所多く設けられていることを特徴とする請求項1記載のアライナー装置。
【請求項9】
ウェハを収納するカセットと、前記カセットの蓋を開閉するカセットオープナと、前記カセットオープナが開放した前記カセットから前記ウェハを授受するウェハハンドリングロボットと、前記ウェハハンドリングロボットと前記ウェハを授受しながら前記ウェハのアライメントを行うアライナー装置と、を備えたウェハの搬送装置において、
前記アライナー装置が請求項1記載のアライナー装置であることを特徴とするウェハの搬送装置。
【請求項10】
請求項9記載のウェハの搬送装置を備えたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−103544(P2008−103544A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285103(P2006−285103)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】