説明

アライメント装置

【課題】ウエハ17に形成されたチップにおける電気的特性等の管理項目の検査に際し、当該ウエハ17の位置調整を行うアライメント装置10に関し、製造工程途中に微細なチップサイズを取る半導体チップの管理項目をモニタするためのウエハアライメントを可能とする。
【解決手段】ウエハ17を載置するウエハチャック11と、ウエハチャック11の下方に設けた下部固定カメラ13とを備え、ウエハ17は裏面にアライメントマーク18を有し、かつ、ウエハチャック11は下部固定カメラ13にてアライメントマーク18を観察可能な構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、ウエハと称する)に形成されたチップにおける電気的特性等の管理項目の検査に際し、当該ウエハの位置調整を行うアライメント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置や光情報処理などに使用される半導体レーザ等の半導体装置の製造工程において、当該半導体装置となる多数のチップがウエハの表面に一定間隔で配列形成される。各チップには、製造工程途中で管理項目である電気的特性の検査を行うパターンが含まれており、かつ測定のためのパッドを有している。そして、チップ内の各測定パッドに検査装置に対応するプローブ針を接触させることにより、当該チップの電気的特性を測定している。
【0003】
この種の検査には、自動化を図るためにプローブ装置が利用される。プローブ装置は、検査対象のウエハを保持し、かつ垂直方向に昇降可能なウエハチャックを備えている。ウエハチャックは、ステージにより支持され、かつ水平面内を移動可能となっている。
【0004】
プローブ装置を用いてチップの電気的特性の測定を自動的に行うためには、ウエハのアライメントと正確な位置の認識が不可欠である。現行のプローブ装置では、特許文献1に記載されているように、ウエハの表面側に具備した固定カメラによりチップ形状を認識して、ステージが移動することでアライメントを行っている。
【特許文献1】特開平5−198662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ウエハ単位面積当りのチップ取れ数増加の要望に伴い、半導体装置のチップサイズは小さくなってきている。しかしながら、ウエハの表面側に具備したカメラによりチップ形状を認識してアライメントする従来のアライメント装置では、アライメント可能なチップサイズが350μm以上となっている(例えば、東京エレクトロン社製21S、P-8XL)。このため、チップサイズが350μm未満と小さくなると、ウエハ毎に、測定開始位置である基点チップ位置がずれる可能性が大きくなるという課題があった。
【0006】
すなわち、従来のアライメントは、ウエハのエッジをハイトセンサで検出し、3点の検出したエッジからウエハの中心点を算出する。次に、ウエハの表面側に具備したカメラによって、ウエハ上の最初に検査するチップ位置(基点チップ位置)を取り込む。ウエハの中心点と基点チップ位置との位置関係を記憶しておき、2枚目以降のウエハの検査に際しては、ハイトセンサでウエハの中心点のみを算出し、上記記憶したウエハの中心点と基点チップ位置との位置関係を用いて、ウエハ上の最初に検査するチップ位置を自動で算出する。このように、2枚目以降のウエハにおいては、ウエハの表面側に具備したカメラによってウエハ上の最初に検査するチップ位置を取り込む手間が不要となり、ウエハの中心点を基準として基点チップ位置を認識している。
【0007】
しかし、ウエハのエッジは直角ではなく、緩やかに傾斜した形状をしているため、エッジに基づいてウエハの中心点を算出した場合に誤差が生じる。このように、ウエハの中心点の位置精度には限界があり、その結果、当該ウエハの中心点を基準とした基点チップ位置の認識精度にも限界が生じる。その限界としてアライメント可能なチップサイズが上記350μm以上ということであり、チップサイズが350μm未満になると、ウエハの中心点の位置誤差が許容値を超えることになり、正確な基点チップ位置の認識が行えなくなる。このため、製造工程途中で管理項目を正確にモニタできない問題が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアライメント装置は、ウエハを載置するウエハチャックと、前記ウエハチャックの下方に設けたカメラとを備え、前記ウエハは裏面にアライメントマークを有し、かつ、前記ウエハチャックは前記カメラにて前記アライメントマークを観察可能な構成としたものである。
【0009】
具体的には、前記ウエハチャックの中心部に、前記カメラにて前記アライメントマークを観察可能な空洞部や透明部材を設ける。
【0010】
本発明のアライメント装置によると、ウエハの裏面にアライメントマークを形成し、ウエハを載置したウエハチャックを介して下方に設けたカメラにてアライメントマークを観察することで、基点チップ位置の規定の基準となるウエハ裏面のアライメントマークが、従来例のウエハのエッジから算出したウエハの中心点に比べて高精度となり、微細なチップサイズを取る半導体チップの管理項目をモニタするためのウエハアライメントが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアライメント装置によると、製造工程途中に微細なチップサイズを取る半導体チップの管理項目をモニタするためのウエハアライメントが可能となり、製造工程でのチップの異常を即座に検知し、品質及び歩留りの向上に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について、図1および図2を参照しながら説明する。図1はアライメント装置の概略断面図、図2はアライメント装置のウエハチャックの概略上面図である。
【0013】
図において、10はアライメント装置、11はウエハチャック、12は上部固定カメラ、13は下部固定カメラである。
【0014】
ウエハチャック11は、下部固定カメラ13により、ウエハ17の裏面に形成したアライメントマーク18を観察するために、中心に円形の空洞部14を形成したドーナツ形状をしている。また、上面の周方向所定間隔置きに、ウエハ17を固定するための複数の真空チャック部15が設けられている。さらに、ウエハチャック11はステージ(図示せず)により支持されており、ステージは水平方向(X,Y方向)ならびに高さ方向(Z方向)に慣用の駆動機構によって移動可能となっており、かつZ方向に平行な中心軸回りに慣用の回転機構によって回転可能となっている。
【0015】
上部固定カメラ12は、ウエハ17を表面側から観察する従来型と同様のカメラであって、ウエハチャック11の上方において、アライメントブリッジ等に固定設置されている。
【0016】
下部固定カメラ13は、ウエハ17を裏面側から観察するものであって、ウエハチャック11の下方において、アライメントブリッジ等に固定設置されている。下部固定カメラ13により、ウエハチャック11の空洞部14を通してウエハ17の裏面に形成したアライメントマーク18を観察可能となっており、もちろんステージ等によっても観察が妨害されないように構成されている。例えば、ステージにも、ウエハチャック11の空洞部14と同形状で同じ大きさの空洞部を空ければよい。
【0017】
下部固定カメラ13として使用するカメラの型は、光学カメラ等、上部固定カメラ12と同様の性能のカメラでよい。
【0018】
なお、上部固定カメラ12と下部固定カメラ13との配置関係は特に限定されるものではないが、互いの視野の中心が上下に一致するように配置する方がアライメント操作が容易に行えて好ましい。これは、ステージを動かした際に、ウエハの上下同一箇所と観察するためである。
【0019】
ウエハ17の裏面には、アライメントマーク18が刻まれている。アライメントマーク18は、プローブ装置により評価項目を行う前の任意の工程で掘り込むことが可能である。
【0020】
アライメントマーク18の掘り込みは、ステッパによりウエハ17のOF(オリエンテーション・フラット)を基準として暗室工程を経てエッチングを行うことにより実現される。例えば、ニコン製ステッパにおいては、OFを基準としたプリアライメントの再現性は25μm(3σ)程(σ:標準偏差)であるので、上部固定カメラ12によるアライメント可能チップサイズである350μmよりも十分に精度が良い。
【0021】
表面のチップサイズは、チップ数を多く取るために350μm以下と設定しても、裏面のチップサイズは、素子の配置等を考慮する必要が無く、カメラで認識するために十分な大きさを保って任意に設定することが可能である。
【0022】
アライメントマーク18の形状については、十字形、四角形等の角部を持つ図形であると下部固定カメラ13が位置を認識し易い。アライメントマーク18の大きさについては制限を設けないが、アライメント可能なサイズである350μmより大きく設定することが可能である。
【0023】
なお、図1には図示を省略しているが、ウエハ17の表面におけるチップの電気的特性を自動的に測定するプローブ装置や、ステージの駆動やウエハチャック11の吸着等の動作ならびに上部固定カメラ12,下部固定カメラ13,プローブ装置等を制御する制御装置等の公知の機構が設けられている。
【0024】
次に、アライメント装置10によるアライメント操作について説明する。
【0025】
まず、ウエハチャック11上に搬送されてきたウエハ17を載置する。ステージを駆動して、ウエハ17の裏面のアライメントマーク18が、下部固定カメラ13の視野の中心に位置するように位置決めする。そして、アライメントマーク18の映像の鮮明度が極大となるようにウエハチャック11の高さ調整を行い、アライメントマーク18が下部固定カメラ13の焦点に位置決めされる。この状態において、ウエハチャック11の位置座標X,Y,Zならびに回転座標θの各データが制御装置のメモリ等に記憶される。
【0026】
次に、ステージを水平方向(X,Y方向)に移動して、ウエハ17上の最初に検査されるチップが上部固定カメラ12によって取り込まれる。そして、取り込まれたチップの所定部分が上部固定カメラ12の視野の中心に位置するようにステージの位置座標X,Yの調整が行われ、かつ当該チップのパッドの配列等に合わせてステージの回転座標θの調整が行われ、基点チップ位置を得る。この状態において、ウエハチャック11の位置座標X,Y,Zならびに回転座標θの各データが制御装置のメモリ等に記憶される。
【0027】
以上のようにして得られたウエハ17の裏面のアライメントマーク18の位置と基点チップ位置とから両者の位置関係を算出して制御装置のメモリ等に記憶しておく。
【0028】
このようにして、アライメントしたウエハ17の最初に検査されるチップの各測定パッドにプローブ装置の対応するプローブ針を接触させることにより、当該チップの電気的特性を測定する。最初のチップの検査が終了すると、ウエハチャック11をチップ間隔に基づいて水平移動し、検査対象の全てのチップを順次プローブ装置にて検査する。検査対象の全てのチップの検査が終了すると、ウエハチャック11上から検査済みのウエハ17が取り除かれ、次のウエハ17が載置され、以降同様にしてアライメントと検査が行われる。
【0029】
このように構成されたアライメント装置10によると、ウエハ17の表面のチップパターンが350μm未満の場合でも、ウエハ17内の複数点、複数枚のウエハ17の電気測定の評価を行うためのウエハアライメントが可能となる。具体的には、下部固定カメラ13にて測定する1枚目のウエハ17の裏面のアライメントマーク18の位置を検出し、測定する1枚目のウエハ17内の測定第1点(基点チップ位置)を上部固定カメラ12を通じたモニタを用いて手動設定し、ウエハ17内の複数点測定は制御装置であるPC(パーソナルコンピュータ)で作成した測定ショットマップに則ってステージを移動させることにより行う。例えば、ウエハ17の裏面のアライメントマーク18の位置と、ウエハ17内の基点チップ位置の位置関係が記憶される。2枚目以降の基点チップ位置は、記憶された1枚目のウエハ17の裏面のアライメントマーク18の位置と、ウエハ17内の基点チップ位置の位置関係により類推される。例えば、ニコン製ステッパにおけるOFを基準としたプリアライメントの再現性は25μm(3σ)程であるので、表面と裏面を合わせた再現性は50μm(3σ)程となり、素子のチップパターンが50μm以上であれば、上部固定カメラ12により補正可能である。この場合、最大50μmのアライメントずれが発生する可能性があるが、検査チップの電極サイズを100μm程に改定することで測定の安定化を実現できる(現状の検査チップの電極サイズは200μm以下としている)。
【0030】
また、裏面のアライメントマーク18は、特性評価後に研磨することにより消失するため、素子の特性に影響を与えることはない。
【0031】
図3に示したように、ウエハ17の表面17aの半導体レーザチップ19の配置領域に、半導体レーザチップ19と形状の異なる特性評価チップ20を多数配置した場合、上部固定カメラ12を使用してのアライメントでは形状の認識に影響を受ける。言い換えれば、パターンの異なるチップが含まれていると、上部固定カメラ12でパターンを認識できずにアライメントができない懸念があるが、下部固定カメラ13を使用してのアライメントでは影響を受けないという利点があり、表面の複数のウエハパターンを自由自在に配置しても、アライメントが可能となる利点もある。
【0032】
また、費用の面からも、本発明の方法の方が安価に実現可能である。なぜなら、ステッパ等の高価な光学系が不要であるからである。
【0033】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について、図4および図5を参照しながら説明する。図4はアライメント装置の概略断面図、図5はアライメント装置のウエハチャックの概略上面図である。なお、図1および図2に示した例と同一部分は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本実施の形態は、ウエハ17の裏面に形成したアライメントマーク18を下部固定カメラ13にて観察するために、ウエハチャック11の中心を円形の透明部材16で構成したものである。
【0035】
透明部材16の材質としてはITO(インジウムスズ酸化物)が考えられ、ウエハチャック11へは空洞部14を刳り抜いた後に保持される。
【0036】
透明部材16は素子の電気特性を測定するためにアースの取れる導電性を持つ材料が望まれる。透明部材16を用いる理由としては、化合物半導体のように強度の弱いウエハを用いた場合、真空チャックの際にウエハが破損するリスクを低減することができることが挙げられる。
【0037】
なお、前記実施の形態において、空洞部14や透明部材16は円形としたが、これに限るものではなく、ウエハ17の裏面に形成したアライメントマーク18の観察が可能であればよく、矩形やその他の形状であってもよい。
【0038】
また、本発明は、赤色、赤外、その他あらゆる波長の半導体レーザに適用可能である。また、二波長、多波長発振の半導体レーザにも適用可能である。さらに、半導体レーザに留まることなく、素子面積の小さい各種半導体素子にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ウエハに形成された光ディスク装置、光情報処理などに使用する半導体レーザ等において、製造工程途中で管理項目をモニタするためのアライメント装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるアライメント装置の概略断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるアライメント装置のウエハチャックの概略上面図
【図3】ウエハのチップ配置領域に特性評価チップを多数配置したウエハの模式図
【図4】本発明の第2の実施の形態におけるアライメント装置の概略断面図
【図5】本発明の第2の実施の形態におけるアライメント装置のウエハチャックの概略上面図
【符号の説明】
【0041】
10 アライメント装置
11 ウエハチャック
12 上部固定カメラ
13 下部固定カメラ
14 空洞部
15 真空チャック部
16 透明部材
17 ウエハ
18 アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを載置するウエハチャックと、前記ウエハチャックの下方に設けたカメラとを備え、
前記半導体ウエハは裏面にアライメントマークを有し、かつ、前記ウエハチャックは前記カメラにて前記アライメントマークを観察可能な構成としたアライメント装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエハアライメント装置であって、
前記ウエハチャックの中心部に、前記カメラにて前記アライメントマークを観察可能な空洞部を設けたことを特徴とするアライメント装置。
【請求項3】
請求項1記載のウエハアライメント装置であって、
前記ウエハチャックの中心部に、前記カメラにて前記アライメントマークを観察可能な透明部材を設けたことを特徴とするアライメント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−53624(P2008−53624A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230760(P2006−230760)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】