説明

アルカリ電池用セパレータ

本発明は、活性材料として銅酸化物を含有するカソード、並びにアルカリ電気化学電池で本発明のカソードと共に使用するためのアノード、電解質、及びセパレータを有する高容量電気化学電池に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2003年8月8日に出願された米国仮特許出願第60/493,695号、2003年12月10日に出願された米国仮特許出願第60/528,414号、及び2004年6月4日に出願された米国仮特許出願第60/577,292号に基づく優先権を主張し、その各々の開示内容は、全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(連邦後援調査又は開発に関するステートメント)
適用せず。
【背景技術】
【0003】
アルカリ電気化学電池は通常、細長い円筒形電池(例えばAA−、AAA−、C−、又はD−のサイズの電池)、又は平形電池(例えば角柱電池及びボタン電池)として構成される。一次アルカリ電池は、負電極(アノード)、正電極(カソード)、電解質、セパレータ、正側集電子、及び負側集電子を含む。従来の一次アルカリ電気化学電池のカソードは、水酸化カリウムなどの水溶性アルカリ電解質で湿潤した混合物の状態で二酸化マンガン(MnO2)と導電性炭素質材料(典型的には、合成黒鉛、天然黒鉛、又は膨張黒鉛或いは当該技術分野で広く認められているこれらの混合物などの黒鉛)を含む。円筒形電池では、カソードの混合物は、環状リングに圧縮されてバッテリ缶内に積層され、或いは該混合物は直接缶内に押し出し加工することができ、正側集電子として機能する。
【0004】
一次アルカリ電池のアノードは、カルボキシメチルセルロース(CMC)のようなゲル化剤及び界面活性剤のような他の添加剤と共に、水酸化カリウムなどのアルカリ電解質中に配置された種々の寸法及び形状の亜鉛又は亜鉛合金粒子を含む。負側集電子は、通常黄銅ピン又は釘であり、ゲル化アノードと電気接触して配置される。電極間に配置されるセパレータは、カソードとアノードとの間で電子ではなくイオンを移動させることができると同時に、材料が互いに直接接触して電気短絡を形成するのを防止する。従来的にセパレータは、電解質で湿潤した多孔性の不織繊維質材料である。セパレータは一般にカソードの半径方向内側に配置される。従来のアルカリ電池の他の態様はよく知られている。
【0005】
市場においてこれらの一次電池の商品化に成功したが、有効寿命が長く、貯蔵寿命が許容可能であり、一般的な携帯機器として動作する電圧特性を備えた電池設計に対する新しい方法が引き続き開発されている。
【0006】
しかしながら、従来の亜鉛二酸化マンガンアルカリ電気化学電池(必要な水の供給を設計者に要求する)の二酸化マンガン材料の低密度及び放電反応の間の水の消費により、亜鉛アノードの利用可能な空間が制約される(有効寿命を決定する)ので、比較的低い容積エネルギー密度につながる。認められた代替のカソード材料は酸化銅であり、これは材料密度が高く、2電子放電反応では水を消費せず、放電曲線が平坦で、容積エネルギー密度が高く、放電時の容積膨張がほとんどない。酸化銅は、有効寿命の長いバッテリの優れた候補と考えられるが、残念ながら、亜鉛アノード及び酸化銅カソードを有する従来のバッテリの動作電圧は、わずか約1.05Vに過ぎず、適度な電流排出で最新の電子機器を動作させるには低すぎる。どのような実質的な装置電流排出でも、動作電圧は1Vより有意に低下する可能性があり、機器をほとんど動作不能にする。
【0007】
CuOカソードを有するバッテリの動作電圧を高めるために硫黄化合物を使用することは公知である。しかしながら、当該技術分野では、アルカリ電解質の存在下で生成された可溶性硫黄種は、アノード性能と貯蔵寿命の両方に対して悪影響を及ぼすことが確認されている。従って商業用途が限定される。
【0008】
更に、最近の取り組みでは、有効寿命の長い電池を生成するために膨張黒鉛及び/又はCuOを備えた黒鉛ナノ繊維の使用を開示している。しかしながら、このようなシステムでの動作電圧は通常、0.7V近傍である。とりわけ従来手法の多くは、アノードに対して悪影響を及ぼす可能性のある可溶性銅種について言及しておらず、問題を軽減する手段を提供せず、電池放電電圧及び特性に関するCuO粒子の表面積又は粒子上の活性場所の意義を認めていない。従って、開示された技術は、適切な貯蔵寿命を備えた実行可能なバッテリをもたらさない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,814,419号公報
【非特許文献1】「水溶液中の元素の酸化状態及びこれらのポテンシャル」第2版、Wendell M. Latimer、Prentice Hall, Inc(1952年)
【発明の開示】
【0010】
本発明の1つの態様によれば、アノードと、カソード活性材料を含有するカソードと、アノードとカソードとの間にあるセパレータの少なくとも1つの層とを有する電気化学電池が提供される。アルカリ水溶液のバルク電解質が、アノード及びカソードと流体連通して、実質的に全ての流体連通がセパレータを通る。セパレータは、少なくとも50%の排除値を有する。
【0011】
別の態様によれば、アノード活性材料を有するアノードを含む電気化学電池が提供される。カソード活性材料と少なくとも1つのアノード汚染可溶性種とを含むカソードが提供される。セパレータの少なくとも1つの層は、カソードとアノードとの間にある。アルカリ水溶液のバルク電解質がアノード及びカソードと流体連通している。実質的に全ての流体連通はセパレータを通る。セパレータは、カソードからセパレータを通ってアノードへの少なくとも1つのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するように適合されている。
【0012】
更に別の態様では、長円の円筒形電気化学電池は、アノード、カソード、及びこれらの間に位置するセパレータを有する。バルクアルカリ水性電解質は、アノード及びカソード並びにカソード中の可溶性種と流体連通している。実質的に全ての流体連通はセパレータを通る。セパレータは、カソードから該セパレータを通ってアノードへのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限する。
【0013】
更に別の態様では、亜鉛アノードと、銅酸化物及びCuSを含有するカソードとを含む電気化学電池が提供される。セパレータは、アノードとカソードとの間に位置する。アルカリ水性電解質が、アノード及びカソードと流体連通している。セパレータは、(1)ポリビニールアルコール・フィルムを含み、(2)可溶性銅種と可溶性硫黄種がアノードへ移動するのを効果的に制限するように構成されている。
【0014】
本発明の1つの形態によれば、電気化学電池で使用するためのセパレータが提供される。セパレータは、相対する側部を有するポリマーフィルムを含み、該ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムの一方の側部から他方の側部への可溶性銅種の移動を効果的に制限する能力を有する。
【0015】
別の形態によれば、電気化学電池で使用するためのセパレータが提供される。セパレータは、相対する側部を有するポリマーフィルムを含み、該ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムの一方の側部から他方の側部への可溶性硫黄種の移動を効果的に制限する能力を有する。
【0016】
更に別の形態によれば、電気化学電池で使用するためのセパレータが提供される。ポリマーフィルムは、該ポリマーフィルムの一方の側部から他方の側部への可溶性銅種、可溶性銀種、及び可溶性硫黄種の移動を効果的に制限する能力を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
添付の請求項と共に種々の実施形態に関する以下の詳細な説明を考察すると、他の態様並びに利点が明らかになり、特定の改良、組成の変形、及び物理的特性のより完全な理解が得られるであろう。
【0018】
本発明は、アルカリ電気化学電池及びその構成部品に関する。代表的な従来の円筒形電池が図1に示されるが、本発明は図示の電池に限定されず、別の円筒形電池構成及び平形電池(角型電池及びボタン電池)などの他の非円筒形電池に適用されることは当業者であれば理解されるであろう。最初に図1を参照すると、軸方向に延びる円筒形電池18は、正端子21と、負端子23と、メッキされていない円筒形スチール製コンテナ20の形態の正側集電子とを有する。最初に、コンテナ20は、当業者により一般に理解されている通り、コンテナの負の端部が圧着されて電池18を閉じるように、正端子21に近接する正側の端部25では閉じており、負端子23に近接する端部では開いている。
【0019】
少なくとも1つ又はそれよりも多い円筒形環状カソードリング24は、外側の周縁側壁での外径が正側集電子の内径よりも僅かに大きくなるように形成されて、正側集電子内に押し込まれる。望ましくは炭素であるコーティング22をコンテナ20の半径方向内面に施工して、カソードリング24とコンテナとの間の電気的接触を強化することができる。カソードリングを取り付けることにより、コーティング22との圧力接触が形成される。カソード24は更に、円筒形電池の内部にアノード26が配置される中央に形成された空隙を定める内面27を提示する。
【0020】
セパレータ32は、アノード26とカソード24との間に配置される。カソードリング24の内側に配置されたアノード26は、一般に円筒形状であり、セパレータ32の内面を係合する外側周縁面を有し、本発明の少なくとも1つの態様によるゲル化亜鉛を含む。セパレータは、カソード24とアノード26との間の内壁27に隣接して配置される。通常、水酸化カリウム及び水を含むアルカリ性水性電解質は、アノード26、カソードリング24、及びセパレータ32を少なくとも部分的に湿潤させる。
【0021】
ビード30は、負の端部41の近くでコンテナ内に巻き込まれてシールディスクを支持する。負側集電子36が貫通して延びるシールディスク34は、コンテナ20の開放端部内に配置されてビード30と接触する。コンテナ20の負側の開放端部41は、シールディスク34の上に圧着され、従って、ディスクを圧着部とビード30との間で圧縮し、電池を閉じてシールする。中央開口を有する絶縁ワッシャ38は、負側集電子36の端部が開口を通って突出するように、電池の圧着された端部の上に配置される。接触バネ40は、負側集電子36の端部に付加される。負端子キャップ42及び正端子キャップ44は、それぞれ接触バネ40及び正側集電子20と接触して配置され、絶縁チューブ46及びスチールシェル48は、電池18の周りに配置され、これらの端部で圧着されて端子キャップを所定位置に保持することができる。活性成分が占有できる電池の内部容積を増加させるために、スチールシェル48及び絶縁チューブ46をなくすことができる点を理解されたい。このような構成は、Rayovac Corporationに譲渡された米国特許第5,814,419号に記載されており、その開示事項は、背景技術情報の目的で引用により本明細書に組み込まれる。
【0022】
広範な実施形態において、本発明の電池は、カソード活性材料として銅酸化物が含まれるカソードを含む。銅を含む適切な酸化物は、銅(II)酸化物、或いは、銅と還元性酸化状態を有する少なくとも1つの他の金属とを含む混合酸化化合物である。このようなカソードは、この2つからなる物理的な混合物、或いは2つ又はそれより多い元素が化学的に合成された複合酸化物を含むことができる。本発明はまた、カソードの他の成分、並びにアノード、セパレータ、及び電解質の他の成分に関連することができ、これらの成分を要求に応じて組み合わせて、本発明による放電特性及び有効寿命の特性が改善された電池を生成することができる。本明細書で具体的に記載されていない本発明の電池の他の態様は、従来技術のものとすることができる。
【0023】
本発明はまた、カソード、アノード、電解質、セパレータ/バリア、セパレータ/バリアシール、及びアルカリ電気化学電池を製造及び使用する方法に関する。
【0024】
カソードの材料及び設計
最初にカソードに注目すると、本発明の1つの態様では、酸化銅が、現在市販されているアルカリ電池と比較して有効寿命を有意に延ばす可能性を有する、高容量(例えば、1電子還元に対して約337mA/g、2電子還元に対して約674mAh/g)のカソード材料として知られていることを認める。しかしながら通常は、幾つかの問題によって、当業者が酸化銅を従来のZnゲル化アノード・アルカリ電池用のカソード材料として含めようとする可能性が最小限になる。1つの問題は、適正な電流排出において開路電圧約1.1V又は閉路電圧約1.0Vを上回ることを必要とする用途において酸化銅の動作電圧が低すぎる結果として生じる。本発明の種々の形態により、酸化銅を含有する電池の動作電圧を高めることができる。
【0025】
別の問題は、アルカリ電解質中に銅を含有するカソードから銅が溶解することである。特に、これらの材料による可溶性の化学種は、セパレータを通過してアノードまで移動できる場合には、アルカリ電池のゲル化亜鉛アノードの貯蔵及び放電に対して弊害をもたらす可能性がある。本発明の種々の態様は、この問題を軽減及び/又は対処して、有効寿命及び貯蔵寿命が改善されたバッテリを提供する方法を開示している。銀、ニッケル、ヨウ素、及び/又は硫黄を含有するカソード材料の場合も同様の問題が起きる。
【0026】
本発明の種々の形態は、カソード中に金属の酸化物、特に銅酸化物を含む電池の動作放電電圧をCuO単独よりも高いレベルまで高める物理的及び化学的方法を提供する。本発明の理論に限定されるものではないが、熱力学的及び運動的考察は開示された方法を支持するものと考えられる。カソードの動作電圧は、例えばEMD、CMD、NiO、NiOOH、Cu(OH)2、酸化コバルト、PbO2、AgO、Ag2O、AgCuO2、Cu2Mn24、Cu2Ag24、及びCu2Ag23などといった、CuOよりも動作電圧が高い少なくとも1つの追加のカソード活性材料でCuOを補足することにより高めることができる。従って、CuOと添加剤の組み合わせもまた、CuOよりも高い動作電圧を有する。
【0027】
或いは、放電電圧がCuOの放電電圧よりも低い少なくとも1つの添加剤でCuOを補足することにより、カソードの放電電圧を高めることができる。しかしながら、適切な添加剤をCuOと組み合わせると、この組み合わせは、添加剤又はCuO単独の場合よりも高い放電電圧を有する。CuO、添加剤、及びCuOと添加剤の組み合わせの開回路及び放電電圧は、勿論、当業者が実験的に決定することができる。或いは、本発明者らは、亜鉛に対する組み合わせのGibbs自由エネルギーの変化と、従ってGibbs自由エネルギー方程式を利用した還元反応の開路電圧を推定することで、実験を行うことなく複数の候補材料を選別することにより適切な添加剤を選ぶことができる点を認識している。詳細には、適切な添加剤は、亜鉛に対する組み合わせの還元反応のGibbs自由エネルギーの変化が、亜鉛に対する個々の成分の還元反応のGibbs自由エネルギーの変化に対してより高い場合に識別することができる。勿論、当業者には理解されるように、亜鉛アノードの代替物は、別のアノードを有するバッテリと置き換えることができる。開路電圧は熱力学的特性があるので、高い回路電圧の値が運動的考察により常に高い動作電圧を生成するものではないが、高い開路電圧は使用可能な適切な添加剤の候補であることを示す。Gibbs自由エネルギーの変化の計算に基づいて候補材料が選択されると、その組み合わせの放電電圧を設定するために簡単な実験を行うことができることを当業者は理解することであろう。この態様については、CuO/CuS混合物に関して以下で検討される。
【0028】
本発明の1つの態様は、放電電圧がCuOよりも高い活性材料を有すると共に、CuO電極の少なくとも60%の電池有効寿命をもたらすカソードを提供する。好適には、(1)第1のカソード活性材料よりも高い放電電圧、又は(2)第1のカソード活性材料よりも低い放電電圧を有するが、第1のカソード活性材料と組み合わせたときに第1のカソード活性材料よりも高い放電電圧を有する組み合わせをもたらすカソード添加剤を組み込むバッテリの放電電圧は、電池放電期間の少なくとも5%の間に(動作電圧が0.8Vのレベルに下がるまで連続して電池が放電した全時間長の最初の5%を意味する)、電流密度が5mA/gで1.05Vを超える放電電圧を生成する。従って、本発明の態様によって構成されたカソードは、最新の装置を動作させるには放電電圧の高さが十分でない酸化銅のカソード活性材料を含む従来の電池よりも高い放電電圧を実現する。
【0029】
1つの方法は、他の金属酸化物と銅酸化物の物理的な混合物を含むカソード活性材料を提供することである。第2の方法は、複数の成分を化合又は錯化させて、銅と少なくとも1つの他の金属又は非金属を含む新しいカソード活性材料を合成することを含む。第3の一般的な方法は、(例えば)CuOと硫化銅(CuS)のような添加材料との置換反応の結果として、亜鉛との反応全体のGibbs自由エネルギーが増大するように、少なくとも1つの添加材料と様々な方法で混合又は組み合わせたCuOを有するカソードを提供することである。更に、所望の結果を得るために、記載された一般的な方法の種々の組み合わせを使用できることは理解される。
【0030】
第1の方法では、当業者には公知の標準的な処理方法を使用して、カソードに使用するための所望の化学的特性(例えば粒径、表面積など)を有する化学成分を物理的に混合して均質にすることができる。使用時には、このような物理的カソードの混合物は、酸化物のより高い放電動作から銅酸化物の放電動作へと遷移する。銅酸化物に対して金属酸化物の補足的な添加剤は、放電の最初の部分で亜鉛に対して銅酸化物よりも高い動作電圧を単独で提供する、一般に公知の正電極材料の群から選ぶことができる。正電極の材料の適切な例は、限定ではないが、MnO2(EMD又はCMD)、NiO、NiOOH、Cu(OH)2、酸化コバルト、PbO2、AgO、Ag2O、Ag2Cu23、CuAgO2、CuMnO2及びこれらの適切な組み合わせを含むことができる。
【0031】
Mnは、現在最も広く使用されるカソード活性材料であるので、本明細書では実施例として使用される。従ってMnは、CuOと組み合わせて使用されてCuOの放電曲線の最初の部分を高めながら、CuOによって提供される長い有効寿命を維持する。Ni、Co、Pb、Agなど他の元素を使用した同様の方法を利用して、要求に応じた放電曲線の最初の部分の電圧を高めることができる。一般に、活性材料の酸化状態が高いほど放電電圧が高くなる。
【0032】
一例として、適切な量(例えば5〜60%)のEMDMnO2を有するアノードは、初期動作電圧は高いが多少なだらかな放電曲線を有し、CuOと混合して、〜1VではCuO電極の特徴をより示す長い有効寿命を備えて、MnO2の高い初期動作電圧を示す混合カソードをもたらすことができる。MnO2が最初に放電した後、CuOが続き、これらの間は比較的急勾配に遷移する。約20%までMnO2を付加することによって、CuOとほぼ同じ放電容量(MnO2自体よりも大幅に高い)を得ることができ、EMDがCuOと種々の割合で物理的に混合されたときの動作電圧の増大を表す図2に示されるように、放電の最初の6時間の間に酸化マンガンの動作電圧が高いことの利点を有することも想定される。参考までに、約25時間で0.8Vまで供給したEMDの動作も図示されている。この実施例は、EMD自体よりも少なくとも50%高い容量を供給することができる簡単な混合カソード材料の可能性を立証するものである。所望の放電特性に適合するために2つの元素を広範囲の比率で提供することができる。Ni、Co、Ag、Pbなどのような他の成分との化合物も同様に用いることができる。
【0033】
MnO2とCuOの放電のメカニズムは全く異なる。標準的なZn/MnO2電池では、MnO2は、密度が4.5g/ccで、MnO21モル当たり水1モルを消費し、その構造体にプロトンを取り入れてMnOOH(不良電子伝導体及び低密度の材料)をもたらす。カソード反応で水を必要とすることにより、電池中で使用できる活性材料(例えば亜鉛)の量が制限され、比較的低い容積エネルギー密度となる。カソードはまた、1V未満では容量がほとんどない傾斜放電曲線を有する。一方では、密度が約6.3g/ccの酸化銅(CuO)は、第1の電子に対して放電された(僅かな容積膨張で)CuO1モル当たり僅か水1/2モルを消費し、極めて平坦な放電曲線を有し、電池内で高い容積エネルギー密度を提供する。
【0034】
MnO2とCuOの物理的な混合物を含有するカソードでは、恐らくは以下の理由により、MnO2含有量の増加に伴ってカソードのCuO部分の特性が悪化するようになる。このようなカソードでは、MnO2がその最初の電子を放電した後、CuO放電反応が支配的になる。しかしながら、効率的な反応においてCuOに対して十分でない電解質が利用可能であり、質量移動分極を生成する。放電の間のMnO2の容積膨張は、MnO2自体から及びカソード中に通常備えられている導電材料(例えば合成又は膨張黒鉛)からCuO粒子を分離する可能性がある。これはカソードのオーム抵抗を増大させ、電圧損失が付加されることになる。更に、アノードは、CuO放電が始まるときには既に部分的に放電されており、電池電圧にアノード分極をもたらす。これらのプロセスの想定される正味の影響は、CuO材料が他の場合よりも低い電圧で動作し、その結果、図2に示されるような望ましいバッテリ電圧よりも低くなることである。
【0035】
本発明の特定の態様(すなわち、カソード活性材料の重量比でCuO≧40%)はまた、複数のカソード活性材料を個別の層又はペレットとして(又は、酸化物の混合物を含むことができる別個の層)電池内に任意選択的に提供して、亜鉛アノード及び本発明のカソードを有する電池の動作電圧がZn/CuO電池の動作電圧よりも高くなるようにすることによって、異なる放電動作の有害な影響を緩和することを追求している。
【0036】
第2の一般的な方法では、液相化学配合又は可溶性カチオン元素を使用した合成で、1つ又はそれよりも多い相に存在する混合酸化化合物又は錯体を生成することによって、純粋なCuOよりも高い動作電圧と、上記の方法よりも平滑で連続する遷移とを得ることができる。適切な元素は、限定ではないが、Mn、Ni、Co、Fe、Sn、V、Mo、Pb、又はAg、或いはこれらの組み合わせを含むことができる。このような混合酸化化合物はまた、当業者であれば容易に分かるように、適切な温度で固相反応により生成することができる。
【0037】
本発明のこの態様によれば、本発明の銅ベースの混合酸化材料の一般式は、MxCuyz(式中、Mは上述のいずれかの好適な元素であり、1≦x≦5、1≦y≦5、1≦z≦5)である。一般式AMxCuyz(ここで、Aは、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Ca、Mg、Sr、及びBaとすることができる)を有する化合物はまた、カソード活性材料として使用するよう設計することができる。
【0038】
混合酸化物カソード材料を調製するプロセスの一例は、錯化剤及び還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、ギ酸ナトリウム、ギ酸、ホルムアルデヒド、フマル酸、又はヒドラジン)を加えて塩の混合溶液を化学還元し、金属を含有する化合物を生成することである。式AMxCuyの錯化合物はまた、この還元ステップで前駆物質として第3の金属塩を添加して調製することができる。結果として得られる生成物は、酸化剤(例えば、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過硫酸カリウム、塩素酸カリウム)を使用して酸性条件で酸化し、銅ベースの混合酸化物を生成することができる。
【0039】
例えば、このようにして調製されたCu/Mn化合物は、X線回折(XRD)分析によって新しい相の混合銅マンガン酸化物の化合物であることが確認された。この酸化物に相当するASTMカードはないが、その回折パターンはCu2Mn38のパターンと同様である。Cu2Mn25単独又はCuOとの組み合わせなどの他の化合物はまた、酸化プロセスの間に過酸化水素のpHがより酸性にされたときに検出される。酸化条件は、銅ベースの混合酸化物の結晶構造にかなり影響を与える。
【0040】
Cu/Mn化合物の酸化は、例えば、アルカリ溶液中又はpHが中性の溶液中で行い得ることも想定される。有機又は無機酸(又は基)を用いて、酸化液のpHを調整することができる。同様に、化合物は化学酸化の前に最初に熱処理することができる。更に、銅混合酸化化合物は、導電材料と混合される前に熱処理してカソードを形成することができる。
【0041】
化合物はまた、高エネルギーのボールミルを使用する公知の機械的合金形成法によって、或いはオーブン中での直接高温溶融によって調製することができる。MxCuyz又はAMxCuyzの銅ベースの混合酸化物材料は、金属塩溶液の混合物を共沈させた後、適当な条件下で該沈殿物を加熱することによって代替的に形成することができることは、更に想定される。
【0042】
図3は、このような混合酸化物材料の動作、並びに開放形電解質半電池のカソード材料の合成においてCu含有量が増大した影響を示す。通常新しいカソード材料は、開放形半電池器具で試験され、この場合、カソードにのみ焦点を当てるために、他のプロセスから複雑な問題が排除される。このような器具には過剰な電解質があり、アノードは、Niガーゼのような大きな表面積の不活性電極である。電圧は、アルカリ系では当業者には公知のHg/HgO対照を含む基準電極に対して記録される。図3で分かるように、Mnが存在することにより、初期放電電圧が高くなり、材料中のCuの割合が増えるにつれて放電容量もまた増大し、初期の高電圧に関する有害な影響が最小限になる。このようにして、組成を調整することによって、高い初期電圧と長い有効寿命を含めた所望の放電特性を得ることができる。
【0043】
混合金属酸化物を調製するための別のプロセスは、アルカリ溶液中の過マンガン酸カリウムにより、銅(I又はII)塩(例えば酢酸銅)などの可溶性の第1の金属塩を酸化する段階を含む。第1の金属は酸化されて高酸化状態になり、過マンガン酸中のMnは減少する。図4は、このようにして調製されたCu/Mnカソードの特性をCuOカソードと比較し、CuOよりも高い所望の初期電圧が達成できたことを明らかにしている。図4はまた、CuOの放電容量の約90%が活性カソード中で維持されることを示している。これらの特性は、合成物中のCuとMnの相対比率を調整することによって適応可能であることが想定される。更に、放電曲線の平坦な部分は、商業的に入手されたCuO材料よりも平均電圧が約30mV高いことを示している。活性材料の表面活動と表面積は、ここでも同様に特性に影響を及ぼす。析出した材料の形態学及び表面積はまた、より高い電圧放電に好適であると考えられている。
【0044】
別のプロセスを使用して、銅を含有するより高電圧のカソード材料を合成することができる。具体的には、+3状態の銅は、AgNO3とCu(NO32・3H2Oを使用して銀化合物中で合成され、その混合溶液が、K228を使用してKOHの存在下で酸化される。しかしながら、このようなKOH中の酸化物は、アノード汚染銅及び銀の化学種を生成することになる。従って本発明はまた、以下により詳細に説明されるように、この問題を克服して、適切な貯蔵寿命を有する実行可能なバッテリが得られるセパレータ系を提供する。
【0045】
関連する実施形態では、カソード活性材料は、物理的混和と化学合成物との組み合わせによって得ることができる。この組み合わせは、酸化マンガンの表面上に酸化銅を生じさせ、個々の化合物の相及び放電特性間の平滑な遷移を促進する。この組み合わせを用いて、図5に示される電圧特性を得ることが可能となる。この逆もまた適用することができ、これによりCuOの表面上にMnO2又は他の材料を得ることができる。
【0046】
この方法の実施形態により、CuOとAg2Oが、EMDの存在下のアルカリ媒体中でCuSO4とAgNO3からそれぞれ沈殿する。カソード材料は、例えばCuO64%、EMD35%、及び伝導性エンハンサーとして添加されたAgO2約1%を含有することができる。AgO2が最初に放電し、カソード中に高導電性の金属銀を生成する。当該技術分野でよく知られているような合成黒鉛、天然黒鉛、又は膨張黒鉛は、カソードに適切な電子伝導性及び完全性をもたらす。結果として得られるカソードは、図5に示されるように、初期電圧が有意に増大すると共に、MnO2よりも極めて大きな放電容量をもたらす。放電の平坦部分は、CuO単独の電圧よりも平均で約45mV高い。また、MnO2動作からCuO動作への遷移は、図2の遷移よりも図5の方がより平滑である。電池の放電容量が、放電率の範囲全体にわたって従来の電池よりも大きいことは本発明の利点である。
【0047】
第3の一般的な方法では、組み合わせのための補完添加剤もまた、CuOよりも低い放電電圧を有する元素又は化合物から選定することができるが、CuOと組み合わせると、いずれの成分単独よりも高い放電電圧を生成する。反応速度が適切に迅速であるときには、これらのペアの放電電圧も開路電圧と同様の傾向を辿る。このような材料の例には、限定ではないが、元素状態で存在する硫黄、セレン、テルル、硫化物、セレン化物、テルル化物、及びCuS、Ag2S、ZnS、B23、SnS、FeS、Fe23、CoS、NiS、CuSe、CuTe、CuAgS、CuAg3Sなどのヨウ素酸塩、並びにこれらの適切な化合物及び混合物を含むことができる。例えば、CuO/CuSの組み合わせの場合には、放電電圧は、CuOとCuS間の置換反応の結果として(すなわちCuSの放電電圧がCuOよりも低い)予想外に高いと考えられている。従って、純粋なCuS単独での放電電圧は亜鉛に対して低い(Znに対して0.7V)が、CuOとCuSの組み合わせは、いずれの材料単独よりも高い電圧で放電する。CuO/CuS系の例証に役立つ、関連した反応の理論的な開回路電圧が以下に示される。
【0048】
酸化銅の還元反応(反応1)
2CuO+2e+H2O→Cu2O+2OH-
ΔG=−50.2Kcal
理論OCV:Znに対して1.089V
【0049】
硫化銅の還元反応(反応2)
2CuS+2e+H2O→Cu2S+HS-+OH-
ΔG=−32.6Kcal
理論OCV:Znに対して0.708V
【0050】
酸化銅/硫化銅混合物の還元反応(反応3)
CuO+CuS+2e+H2O→Cu2S+2OH-
ΔG=−54.6Kcal
理論OCV:Znに対して1.183V
【0051】
上述の自由エネルギーと開路電圧の電荷を求めるために、使用されたアノード反応は以下の通りであった。
【0052】
Zn+2OH-→ZnO+H2O+2e
【0053】
得られた実験的OCV値は、理論値を極めてよく反映していることが分かった。更に、反応速度は十分に迅速であり、亜鉛に対するCuO又はCUS単独の放電電圧よりも高いCuO/CuSの組み合わせの放電電圧が得られることが判った。Gibbs自由エネルギーの変化は、「水溶液中の元素の酸化状態及びこれらのポテンシャル」第2版、Wendell M. Latimer、Prentice Hall, Inc(1952年)で入手可能な反応物質及び生成物の生成の自由エネルギーから計算され、該文献の開示事項は、本明細書に記載された種類の反応物質及び生成物の生成の自由エネルギーを考察する範囲で引用により本明細書に組み込まれる。開路電圧は、式ΔG=−nFEを利用して計算され、ここで、当業者が容易に認識するように、ΔGは反応の自由エネルギーの変化、nは反応に伴う電子の数、Fはファラデー定数(96500クーロン/モル)、Eは電圧(ボルト)である。
【0054】
CuO対CuSの比率は、放電電圧特性を決定付けると考えられる。例えば、CuO/CuS混合物中の過剰のCuSは、反応が2つのステップで進行することになり、この場合、反応3が最初にCuSが消費されるまで約1.18Vで進み、続いて反応1が亜鉛に対して約1.09Vで進行する。酸化銅/硫化銅の混合物の還元反応は、等モル量のCuO及びCuSを消費するので、1:1のモル比のCuO及びCuSを含有する混合物の使用は、上述のようにCuOが過剰なときに観測された低い放電の平坦状態がなく、容量全体に対し約1.1Vで放電特性をもたらす。1:1のモル比は、混合物では45/55のCuO/CuSの重量比を表している。図6は、Hg/HgO基準電極に対しての、純粋なCuOと半電池中のCuO/CuSの種々のモル比を含むカソード混合物との放電動作を示す。動作電圧が純粋なCuO単独よりも有意に高いことは注目に値する。更に本発明は、例えばMnO2よりも平坦で、CuOにより類似した電圧特性を有するカソード材料を提供する。
【0055】
本発明の種々の形態は、CuO/CuSが0.5:1と1:1.5の範囲内のモル比、0.5:1から1.5:1の間でCuOが1/10増分するモル比、及び約1:1の適切なモル比を含む。
【0056】
表1は、種々のCuO/CuSモル比の混合を含有するカソードから得ることができるHg/HgO基準電極に対する−0.9Vまでの理論容量を示す。




【0057】
表1

【0058】
環状円筒形カソードが原位置以外で又は原位置で形成される円筒形電池(AAA、AA、C、D)では、CuS材料の固有の特性を活用して、市販のアルカリバッテリではこれまで見られなかったタブレット密度を許容できることが分かった。現在の市販のアルカリバッテリのカソードの密度は、カソード容積の約3.2g/ccである。CuO、CuS、導電性炭素(例えば、約3%又はKS4及び/又は膨張黒鉛)の適切な選択(例えば約97%)、及び処理条件(例えば標準的な油圧又はペレット加圧を使用)により、カソード容積の約3.5g/ccから最大約4.5g/ccまでのカソード密度を達成することができる。これらの濃度とは異なるものでも規定のカソード濃度を生成できることは当業者であれば理解するであろう。これにより、かなり多くの活性材料を電池に詰め込むことが可能となり、これまで知られているものよりも有効寿命が長いバッテリを提供することができる。供給容量が約2.5−2.8Ahの現在市販されているアルカリバッテリと比べて大幅に改善された、最大4Ahまでの供給容量を備えたAA電池を生成することができる。
【0059】
本発明者らはまた、粒径を縮小し表面積を拡張するために商業的に入手可能なCuOをジェットミル加工することにより、高い動作電圧が得られることを認識している。表面積は、反応速度、従ってバッテリの動作電圧において重要な役割を果たす。本発明者らは、カソードに印加された電流がカソードの表面積全体にわたり分布される応力を生じさせることを認識している。従って、図8に示されるように、より大きな表面積のカソードは、小さな表面積のカソードよりも良好に動作する。
【0060】
CuOの表面積はまた、機械的な摩損及びエアジェットミル加工に加え、特に溶解法を用いる場合には、CuOの合成時にプロセス条件を修正することによっても拡大することができる。受け入れたままの市販のCuO(ミズーリ州セントルイス所在のSigma/Aldrichから)をジェットミル加工すると、BET表面積が2倍より大きい、〜1.27m2/gから〜5.57m2/gになることが示される。表面積が有意に大きい場合に溶液合成CuOを得ることができ、これによって分極のより小さい電極が提供される。粉体の表面積を求める一般に知られた方法は、BET法であり、粒子表面のガス吸着の原理を使用して表面積を推定する。商業的に入手可能なTrister3000ガス吸着分析器、及びジョージア州ノークロス所在のMicromeretics Corp.,のSmart prep Degasserが分析用に使用された。2時間ガス除去された後に1グラムのサンプルが使用された。表2に結果を示す。





【0061】
表2

【0062】
ナノCuOの化学合成された凝集体もまた、カソード用に使用することができる。このような材料は、アメリカ合衆国、カンサス州66502、マンハッタン、Research Park Drive1310、NanoScale Materials,Inc.から入手することができる。本発明の1つの実施形態によれば、粒径は、下限が0.1ミクロン以上から10ミクロン以下、上限が50ミクロン以上から150ミクロン以下の範囲内にある。本発明の別の態様によれば、CuOの表面積は、その下限が0.5m2/g、1m2/g、及び5m2/gを含めたこれらの間であり、その上限が20m2/g、30m2/g、60m2/g、70m2/g、及び100m2/gを含めたこれらの間の範囲にある。
【0063】
CuSの粒径、粒径分布(PSD)、及びBrunauer、Emmett及びTeller(BET)表面積は、所望のカソード充填密度及び完全性、並びに放電電圧特性を達成するのに重要な役割を果たすと考えられている。当業者によって理解されるように、CuO及びCuSの相対的なPSDもまた、ブレンドを形成する際の重要な考慮事項であると考えられている。
【0064】
図8は、電流が5mAから35mAの間で漸次的ステップ状に変化した開放形半電池においてジェットミル加工したCuO/CuSカソードの速度性能に対するCuS粒径の影響を示している。20mA以上の電流では、粒径が25マイクロメートルよりも小さなCuSを含む電極は、直径が25マイクロメートルよりも大きなCuS粒子を含むカソードよりも有意に低い分極(より高電圧)を示す。同じ質量では粒径が小さいほど大きな粒径よりも表面積が大きくなるので、この結果は、CuO/CuSを含むカソードにおいてより大きな表面積のCuSが優れた通電能力(速度特性)を提供することを示している。当業者は、カソードを含む全ての材料の物理的な特徴を最適化して、バッテリの所望の物理的堅牢性及び放電特性を達成する必要があることを認識するであろう。商業的に入手可能なCuSは通常、約0.5m2/gから約1.2m2/gまでのBET表面積を有する。表面積の増加は、電極の構造及び性能に対して有利である。50又は100m2/gほどに表面積を増加させると、電気化学電池に所望の利点が得られるようになると考えられている。表面積は、例えばエアジェットミル加工などの幾つかの従来方法によって増加させることができる。当業者はまた、CuS材料の製造中に合成条件を適切に管理することによって表面積を増大させることができる点を認識するであろう。更に、CuSのプレート状構造により材料を適切な処理条件の下で剪断することが可能となり、これにより大きな表面積で小さな粒径を提供すると共に、カソードの他の成分とのより良好なブレンド及び充填を可能にすることが見出された。
【0065】
本発明の1つの態様によれば、CuSの粒径は、その下限が0.1ミクロン以上で10ミクロン以下、その上限が50ミクロン以上で150ミクロン以下の範囲にある。本発明の別の態様によれば、CuSの表面積は、その下限が0.5m2/g、1m2/g、及び5m2/gを含めたこれらの間であり、その上限が20m2/g、30m2/g、60m2/g、70m2/g、及び100m2/gを含めたこれらの間の範囲にある。
【0066】
カソード中に混合物を含有する硫黄又は硫化物の1つの問題は、アルカリ電解質(KOHなどの)中での硫黄種の溶解性、及び硫黄種の亜鉛アノードへの移動であり、ここでは、この硫黄種がアノードの反応を汚染して妨害し、不動態化、自己放電、又は条件によってはアノードの電圧を低下させる他の望ましくない状況につながる可能性がある。従って、適切な貯蔵寿命を有する実用的なバッテリを生成するために、化学種の発生及び移動のこのプロセスを妨げ、停滞させ、又は鈍化させるのが望ましい。本発明の種々の態様では、特別なセパレータ材料の使用並びにセパレータシームの調製及びシール処理を実施して、高い動作電圧を利用して更に適切な貯蔵寿命を有するバッテリを生成することができるようにする方法を教示する。
【0067】
本発明の種々の形態は、CuSの実際の良好な潤滑特性及び高い導電率を認める。従って、混合物にCuSを使用することにより、カソード内の導電性炭素を低減又は除去することができ、活性材料に約5−7重量%の追加の余地を提供し、これにより電池容量が更に増大する。関連する態様では、CuSの導電性及び潤滑特性を利用して、アルカリバッテリにおける缶の内部表面上に現在使用されている導電性炭素コーティング22を置き換えることができる(図1参照)。
【0068】
CuO/CuSのこの組み合わせの初期電圧は、MnO2、NiO、NiCOOH、CuAg24及び同様のものなどの高電圧のカソード活性材料を存在させることによって更に高めることができる。残念なことに、個々の材料の特性が適正に一致しない場合には、放電中又はその前後のどのような不一致によっても、上記の放電材料の特性は図2に示される正常な放電動作よりも劣ることになる。これは特に、第1の放電材料が、放電時にかなりの容積又は密度変化がある場合、水又は電解質を消費する場合、又は電子伝導性が低い放電生成物を生成する場合である。これが生じるときには、第2の放電材料はその放電の理想条件をもはや有さないので、電池の全体の動作が損なわれ、2つの材料の混合の利点がなくなる。
【0069】
これは図2の実施例で実証されているが、可溶性の硫黄種又は硫化物がMnO2との混合物中に存在する場合、及び該硫黄種がMnO2のプロトンのインターカレーションとの干渉が現れ、これによりMnO2部分の動作電圧が大幅に低下する状況で更に例証される。MnO2がCuOとCuSの混合物から分離される場合、又は硫黄種がMnO2との接触を妨げられる場合には、この悪影響は最小になると考えられている。従って、上述の理由(物理的及び/又は化学的)のいずれかに起因する動作電圧の低下を阻止するための方法が提供され、これにより異なる活性材料は共に混合されることがない。むしろ、不一致を有する個々の活性材料は別個の層又はペレットの状態に維持されており、これにより最低限1つの材料だけが第2の放電材料の動作に影響を与えることになる。
【0070】
各層又はペレットは、全く異なるカソード活性材料か、又は本発明と組み合わせて使用するのに適した材料の物理的な混合物のいずれかを含む。別個のカソードの層又はペレットが提供される場合には、少なくとも1つの層又はペレットは別の添加剤(例えば酸化金属又は硫化物)と酸化銅の物理的な混合物を含むことができると共に、別の層又はペレットは混合化合物を含むことができることは、特に企図される。同様に、層又はペレットは、混合酸化化合物と添加剤(例えば別の酸化金属又は硫化物)との物理的混合物を含むことができる。
【0071】
CuOとMnO2の場合の概念が図9に示される。特に、EMDとCuOの均質な物理的混合物が示されており、ここでは初期のEMD放電及び遷移の後に、同様に図示されている純粋なCuOの放電よりも有意に低い電圧でCuOの放電が生じる。 EMDとCuOが図10のように互いの上部の別々の層にある層状カソードの使用は、EMDとCuOとの間の相互作用が引き起こす問題を有意に軽減する。
【0072】
カソードがディスク形状であるボタン電池のバッテリでは、活性材料は、図10に示されるように、一方が他方の上にある層状であるか、又は一方が他方の内部にある同心状(ディスク)とすることができる。活性材料はまた、互いに並んで配置された半円形のセグメントの形態にすることができる。
【0073】
外部から加圧挿入されるか又は缶内にその場で製作される円筒形カソードを缶内に使用する長円の円筒形バッテリ配置では、図11に示されるように材料を分離したまま維持するために同じ概念を使用することができる。材料は、接触しているが共に混合又は混和されてはいない。
【0074】
カソード中のCuOとCuSの混合物は、アルカリ溶液中のカソードの動作電圧をCuO単独を含むカソードに比べて高くすることができることは認識される。しかしながら、CuOとCuSの混合物は、アルカリ溶液中に貯蔵されると反応して、アノードへの移動が許容される場合には亜鉛アノードの特性に悪影響を及ぼす可能性がある可溶性の硫黄種を生成することが判っている。本明細書の目的において、亜鉛アノードの特性に悪影響を与えるこれらの化学種は、アノード汚染種と呼ばれる。アノード汚染種の例には、当業者にはよく知られているが、種々のCu、Ag、S、Fe、Ni、及びSbの化学種が含まれる。
【0075】
例えば、カソードが硫黄を含有する場合、硫化物、硫酸塩、亜硫酸塩、又はチオ硫酸塩などの1つ又はそれよりも多い硫黄種を生成することができ、これらがアノードに移動することによりアノードを汚染する傾向があることが認識されている。こうした状況では、アノードを汚染する硫黄種の能力を低下させる添加剤を更に提供するのが望ましい。添加剤は、アノード、カソード、電解質、又はセパレータに含めることができ、アノード汚染種が生成されることになる場所で作用し、又は汚染種がセパレータを通って移動することになるセパレータで作用し、或いはアノード汚染種がカソードからセパレータを通ってアノードに移動した後で且つ汚染種がアノードと相互作用してアノードを汚染する前に作用する。添加剤は、硫黄種と結合又は化学的に相互作用する(例えば酸化、還元、錯化、又は配位など)ことによって作用して、硫化金属又は可溶性が低下した非アノード汚染硫酸塩などの非アノード汚染生成物を形成することができる。更に添加剤は、電極内部の局部的な水酸化物イオン濃度を調整することによって、アノード汚染可溶性種の影響を低下させることができる。沈殿は、可溶性を低下させることによって溶液から可溶性種を除去するための媒介物である。溶解度はこれらのKsp値によって表される。添加剤とアノード汚染可溶性種との間の反応生成物の溶解度積が低いことは有利であることが判った。1つのこのような有利な溶解度積は、2×10-25以下であることが分かった。添加剤はまた、アルカリ電解質中に存在する種々の硫黄種間に触媒作用により不均化を生じて、これらをアノード汚染の少ない種に転化し、これにより汚染を低減させることができる。添加剤は、カソードからアノードへの硫黄の移動を効果的に制限し、及び/又は硫黄種と反応することによってアノード汚染を緩和して、無害の生成物又は汚染がより少ない生成物を形成することができることは理解される。本発明の種々の形態は、適切な添加剤が、限定ではないが酸化ビスマス(BiO3)、水酸化ビスマス(Bi(OH)3)、及び酸化亜鉛(ZnO)を含むことを認識している。例えば以下の実施例9では、CuO/CuSカソード中のZnO添加剤の効果を説明している。これらの化学物質の各々は、硫黄含有カソードに添加されたときに、硫黄種と反応することによって、又は硫黄種がセパレータを通ってカソードに移動するのを効果的に制限することによって、アノードを汚染する硫黄種の能力を低下させることが分かった。同様の機能を行う添加剤はまた、アノード汚染可溶性銅種を対象とすることができる点を当業者は認識するであろう。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、エタノールアミン、シュウ酸又はクエン酸などのような錯化剤は、溶液中の金属イオンと相互作用する。
【0076】
アノード
アルカリ電池に使用するための高容量アノード配合物がまた提供される。上述のように、従来のアルカリ電池のカソードは、例えばそのカソード活性成分がMnO2であるカソードであり、アノード反応(すなわち亜鉛アノードと電解質の反応)で生成されるよりも多くの水をカソードの反応により消費する。従って、電池全体の反応は、以下に示されるように水を消費するので「水消費」と言われる。
【0077】
Zn+MnO2+H2O→ZnO+MnOOH
【0078】
従って従来のアルカリ電池の亜鉛アノードは、カソード中の水消費反応を適切に持続するためにアノードが十分な量の電解質を含有しないので、より多くの亜鉛装填が効率的に放電しないことに起因して、一般に重量比で70%未満のアノードの亜鉛濃度に制限される。更に、従来の粒径分布による高い亜鉛装填は、早期のアノードの不動態化及び早期不良につながるこれらのアノードの多孔性が低いことに起因して、高い質量移動分極を生じる結果となる。
【0079】
実施形態に従って提供されたアノードは、カソードが従来のアルカリ二酸化マンガン電池よりも少ない水を消費する電気化学電池で使用することができ、従来の電池と比較して高い放電効率を達成する。酸化銅及びカソードの混合酸化銅の活性材料の水の消費量が少ないので、アノードで必要とされる電解質の量は、従来の亜鉛二酸化マンガンアルカリ電池に対して低減される。水の消費が少ない反応は、有利には、アノード内に装填する亜鉛を増大させて、これにより電池の有効寿命をより長くすることができる。
【0080】
CuO含有カソードは、アルカリ二酸化マンガン電池よりも水の消費量が少ないカソードの一例であることが明らかになった。亜鉛/空気バッテリのカソードは、反応が水を消費せず、アノードが、アノードの全重量(電解質を含めた)に対して重量比で68%から76%までのアノード亜鉛装填で効率的に作用する一例であり、これは従来のアルカリマンガン電池の場合よりも有意に高い。
【0081】
従って、本発明に従って構成されたアノードは、従来の電気化学電池よりも「ドライ」とすることができ、これは、アノードは、以下のアノード電池反応で与えられる低電解質濃度で効率的に放電することができる高装填の亜鉛粒子を有することを意味する。
【0082】
Zn+4OH-→Zn(OH)42-+2e-
【0083】
従来のアルカリバッテリでは、中程度又は高い連続放電率(例えばサイズAA電池では250mAを超える)の間に水酸化物イオンの枯渇が顕著になり、このような場合にはアノード不具合による性能の低下を誘起する可能性がある。更に、電解質が上記の反応で生成された亜鉛酸塩Zn(OH)42-で飽和されると、亜鉛酸塩が沈殿して酸化亜鉛を形成し、これが亜鉛アノードを不動態化することにより電池の性能を低下させる。従来の亜鉛粉体は、数ミクロンから約1000ミクロンまでの範囲にわたる広い粒径分布の粒子を含有し、大部分の粒径分布は25ミクロンから500ミクロンの範囲にわたる。従って、このような従来の亜鉛粉体の適正な放電を実現するために、34%を超えるKOH濃度が従来使用され必要とされている。
【0084】
本発明者らは、以下に更に詳細に説明される細い粒径分布により、従来のアルカリバッテリよりも有意に低い濃度の電解質を使用することが可能となることを見出した。これは、電解質への低いCu溶解性が少なく、カソード表面の濡れ性が良好であることにとって有利であり、カソードの放電効率を助ける。
【0085】
具体的には、従来の電池で生じたはずの早期の不動態化を回避しながら、本発明の原理を使用して、36%未満のKOH濃度(例えば25%から34%の間のKOH濃度)が望ましい。
【0086】
本発明の種々の態様は、以下に更に詳細に説明されるように、亜鉛の粒径分布(「PSD」)は、低亜鉛装填アノードでの放電の有効性を高める役割を果たすことを認める。特に、より低い電解濃度の使用を可能にする一方で、高い亜鉛装填で効率的な放電に必要なアノードの多孔性を提供する幾つかのPSDが特定された。
【0087】
本発明者らは、アノードに対する物理的な修正による単独で又は上述の化学的な改質と組み合わせることで電池の有効寿命を改善することができることを認識していた。例えば、水酸化イオンの拡散抵抗を低減させることによって、電解質において従来の電池で使用できる水酸化イオン濃度よりも有利に低い濃度を有する電池を効率的に放電させることができる。これは、例えば、亜鉛粒径分布を調整してアノード中で同様の亜鉛粒径の狭い分布を提供し、これにより水酸化イオン輸送用の多孔性(拡散経路)を高めることによって実現することができる。ゲル化アノードマトリクス中の質量輸送の改善に加えて、本発明の粒径分布はまた、多孔性の増大を提供し、亜鉛粒子表面上でのZnOの沈殿をより少なくし、これにより従来の電池で通常見られる粒径分布と比較してアノードの不動態化を遅らせることができる。この方法は、本発明の種々の態様のアノードで使用するのに効果的であり、単独で又は本明細書で開示された他の改善と組み合わせて使用することができる。
【0088】
同様に、適切な亜鉛粒径分布は、粒子の少なくとも約70%が100ミクロン寸法の範囲内に標準メッシュで篩い分けされた粒径を有し、分布モードが約100ミクロンから約300ミクロンの間のものである。粒子の70%が100ミクロンよりも更に細かく、例えば50ミクロン又は40ミクロン又はそれよりも小さい寸法の分布範囲で分布するのが望ましい。
【0089】
本明細書に説明された好適なゲル化アノードは、金属合金粉体(望ましくは合金化亜鉛粉体)、ゲル化剤、及びアルカリ電解質を含む。当業者であれば、好適な亜鉛粉体(In、Bi、Ca、Al、Pbなどと合金化された)を容易に選定することができる。本明細書で使用される「亜鉛」とは、亜鉛粒子を意味し、当業者によく知られている亜鉛合金を含むことができる。本明細書に説明された電気化学電池の別の態様は、アノードが水銀を僅かに含有するか又は全く含有しない(例えば重量比で約0.025%未満)ものである。本発明の種々の態様での使用には、望ましいポリアクリル酸ナトリウムゲル化剤以外の既知のゲル化剤が好適である点が留意される。このようなゲル化剤には、カルボキシメチル・セルロース、架橋型分岐状ポリアクリレート酸、天然ゴムなどが含まれる。
【0090】
本発明者らは、電池特性を制御する別の要因がアノードの表面積に関連することを認識している。より具体的には、活性アノード電極の表面積が増加することにより、高い放電率でのカソード反応に対応するのに必要とされる十分な活性反応場所が提供される。従って、アノードゲルに添加された所定量の亜鉛粒子(亜鉛又は亜鉛合金の形態のいずれかとすることができる)を有する電池が提供される。本発明の1つの実施形態によれば、約75ミクロン(−200メッシュサイズ)未満、すなわち、200メッシュのスクリーンサイズを通過する亜鉛粒子が、アノード中の全亜鉛(粗い亜鉛粒子を含む)に対して重量比で約10%未満、望ましくは1%と10%の範囲内、又は1%と8%の間、或いは4%と8%の間の量でアノード中に存在することが企図され、粒子が細かいほどアノードの有効表面積を更に増加させることが理解される。メッシュサイズは、本明細書では粒径の範囲を指定するために示される。例えば−200メッシュは、75ミクロンよりも小さな粒子を示し、+200メッシュは、75ミクロンよりも大きな粒子を示す。或いは、直径が75ミクロンから105ミクロン(+75と−140メッシュサイズ)の間の亜鉛粒子が、アノードに存在する全亜鉛に対して重量比で1%と50%の間、より好適には10%と40%の間でどこでも存在することができるときには、10%を超える量の亜鉛微粉を使用して望ましい結果を得ることもできる。
【0091】
本発明の種々の態様は、75から105ミクロン(+200と−140メッシュサイズ)の間の粒子と75ミクロン(−200メッシュサイズ)未満の亜鉛微粉を含む、直径105ミクロン(−140メッシュサイズ)未満の複数の範囲の亜鉛粒子を用いて、電池特性を向上させることができることを認める。例えば、アノードは、75ミクロンから105ミクロンの間の亜鉛粒子を含むことができ、アノードゲルが濃度30%未満、又は20%から30%の間の電解質(KOH)を有するときに電池特性を向上させる利点を有する。亜鉛微粉の寸法が20から75マイクロメートル(+625と−200メッシュサイズ)の間、又は38から75マイクロメートル(+400と−200メッシュサイズ)の間の範囲を有する場合、KOH濃度が30%から40%の間、望ましくは33%から38%の間であると電池特性を特に向上させることができる。更に別の適切な範囲は、20%から34%の間、又は25%から33%の間、又は25%から30%の間である。本発明の開示で使用される「低KOH濃度」とは、上述の範囲のいずれか以内又は未満のKOH濃度を意味する。
【0092】
電池特性の改善が亜鉛微粉の使用と低いKOH濃度との組み合わせによって得ることができることは知られているが、亜鉛微粉の使用と低いKOH濃度の個別の使用による利点も当業者であれば認めるであろう。
【0093】
一般により低い電池電位に関連するCuO含有電池中の電池動作電圧を高めることが特に望ましく、本発明の特定の態様が銅を含む酸化物を含有するカソードを提供することは理解されるであろうが、ここではカソードはCuO単独ではなく、他の酸化物、硫化物、又は混合酸化銅材料と組み合わせたCuOを含有している。特定の実施形態では、カソードが他よりも多くの水を消費する場合がある。カソードの組成に応じて、当業者であれば、アノードに対してこのようなカソードの水消費量の低減に対応する許容可能な修正を求めることができるであろう。
【0094】
CuOを含有する系では、反応速度を改善し、銅イオンの溶解(従ってアノード中への移動)を低減し、高い動作電圧を実現するために、電解質濃度が低いことが望ましい。カソードを予め湿潤させるために低濃度(アノード中の電解質濃度に対して)の電解質を使用することで、カソードの湿潤性が改善されることに起因して特性の改善が得られることになると考えられている。亜鉛への銅イオンの移動が少ないことにより、貯蔵中のアノードでの自己放電とガス発生が低減され、これは貯蔵寿命の改善をもたらす。アノードの分極化が少ないこともまた、電池中の所望の閉路電圧を達成するのに寄与する。
【0095】
本明細書で説明された種々の形態は、典型的なZn/MnO2アルカリ電池で使用可能な従来のアノードと比較したときに当該技術分野における幾つかの進歩をもたらす。
【0096】
これらの進歩は以下のものを含む。
1.従来のZn/MnO2アルカリ電池と比較して水の消費量が少ないカソード反応の利点を生かす高亜鉛装填。従来のアルカリ電池中の亜鉛装填を増やした場合には、通常は、カソードの利用可能な電解質が少なく(水がより少ない)なり、これによりカソードの放電特性が阻害されることになる。従って、水消費量が多い化学的性質は、従来の電池における電池設計全体を制約する。加えて、CuOの高い容量及び/又は密度は、MnO2カソードよりも少ない容積で高容量カソードを充填することを可能にし、電池内により多くの量のアノードを配置できるようにすると同時に、依然として電池が必要とする電解質レベルを維持する。これは、アノード容量対電池容積の比(Ah/cc)を従来のアルカリ電池と比較してこれまでは達成可能であることが知られていなかった範囲にまで有意に増大させる。例えば、従来の市販のアルカリ電池は、MnO2の1.33電子還元に基づく820mAh/gの亜鉛容量及び400mAh/gのMnO2容量に基づいて、〜0.5Ah/ccのアノード容量/内部電池容積比にまで制限されている。本発明の種々の態様に従って構成された電池は、>0.5Ah/cc、0.55と0.9Ah/ccの間、及び更に0.55と0.7Ah/ccの間のアノード容量/内部電池容積比を実現する。本発明のPSD、粒子形状、及び電解質濃度は、高亜鉛装填のアノードの高効率の放電を可能にする。これはより高い電池容量をもたらす。
【0097】
2.本発明の亜鉛粉体PSDを適切に選定することにより、従来のアルカリ電池中の標準的な粉体で発生するはずの早期の不動態化を生じることなく、より低い電極濃度の使用が可能となる。特に不動態化は、アノード反応が亜鉛酸化物を生成するときには電気化学電池中で一般に発生し、該亜鉛酸化物は、アノード中に残存する亜鉛を覆い、KOHが残存する亜鉛に到達して反応するのを阻止する。従来のPSDを有する従来のMnO2アルカリ電池のアノードは、低濃度の電解質が使用される場合には早期に不動態化することがよく知られている。従来のアノードの粒径は、本発明者らによって想定された100から150ミクロンまでの狭い範囲ではなく、45−500ミクロンの間、従って455ミクロンの広い範囲内に分布される。
【0098】
別の実施形態によれば、本明細書で好ましいものとして開示された亜鉛PSDは、200ミクロン、或いは150ミクロンの狭い領域内に分布させることができ、すなわちこれは、重量比で90%以上から95%以下、最大で100%までの粒径が、150又は200ミクロンの領域内にあり、特に100μm、175μm、及び250μm更に300μm(すなわち、90%以上から95%以下で最大100%までの亜鉛粒子が指定された寸法近傍を中心とする粒径を有することを意味する)近傍を実質的に中心とする緊密な分布であることを意味する。当業者であれば、これらの粒子に相当するメッシュサイズをASTM指定B214−99を使用して識別できることを認識するであろう。本明細書のPSDは、亜鉛アノードの多孔性を高め、これにより不動態化が低減される。100μm近傍を中心とする緊密なPSDを有する亜鉛粉体が、例えば図12に示されている。本発明は、上述のように175μmと250μm近傍を中心とする同様の分布を含む。図12に示された亜鉛粉体は、当業者が理解するように、ビスマス、インジウム、及び鉛を含む添加剤を含む。
【0099】
3.PSDは、より低い電解質濃度と組み合わせると、通常は、より高い電池動作電圧を生じる。特に図13では、(1)電解質濃度が37%(電解質混合物に対するKOHの重量比の濃度)、アノード中の酸化亜鉛濃度が2%、及び従来の分布のアノードを有する第1の制御電池と、(2)30%のKOH濃度での電解質、及びアノード中に重量比で2%の亜鉛酸化物濃度、及び本明細書で説明されたアノード分布を有する、本明細書で考察された原理に従って構成された第2の電池とに関しての電池特性を示す。従って図13は、本明細書で説明されたアノードが亜鉛CuO電池で使用されたときの動作電圧の増大を示している。電池放電前のアノード中の初期の酸化亜鉛濃度は、重量比で0.5%と6%の間とすることができ、ZnOの溶解度がKOH濃度の関数であるので、酸化亜鉛濃度は電解質濃度の関数であることを理解されたい。具体的には、電解質濃度が減少すると、酸化亜鉛の濃度が増大し、逆もまた同様である。
【0100】
4.より低い電解質濃度は、銅イオンの溶解性を低下させ、アノードへの銅イオンの移動が低下する結果となると考えられる。図14を参照すると、濃度30%のKOH及び濃度35%のKOHの電解質は、(1)室温及び(2)60℃でCuOと混合される。両方の場合において、KOH中のCuOの溶解度は、KOH濃度の増加に伴って高くなる。電池中の平衡KOH濃度の低下は、アノード中の銅イオンの溶解を低下させることになる。理論に制約されなければ、銅イオン溶解と移動の低下は、アノードでの低い自己放電及びガス発生を生じ、これがバッテリの貯蔵寿命を改善すると考えられる。
【0101】
5.電解質濃度が低いこともまた、CuO含有カソードの湿潤性を改善し、これがより良好な反応速度をもたらすと考えられる。CuOは、図15に見ることができるEMD MnO2よりも疎水性があり、カソードの湿潤性を改善するための事前湿潤の低いKOH濃度の使用は、CuO/Zn電池特性の改善をもたらす。
【0102】
セパレータ
適切なセパレータ材料の1つの形態は、直鎖、分鎖、又はこれらの変形形態から形成されたポリマー主鎖を有する。適切なセパレータを提供することが判っているこのような主鎖を有する材料の例には、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリ(エチレン・コ・ビニールアルコール−EVOH)、ポリスチレンの共重合体、これらのブレンド又は共押し出し、及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び上述の変形形態などの材料を有する同様の材料がある。追加の適切なセパレータ材料は、セロファン及びその変形形態などのセルロースフィルムを含む。しかしながら、このようなポリマーの全てが適しているとは限らない。むしろ適切なポリマーは、セパレータ内に電解質を保持し、セパレータ内で保持された電解質がカソード及びアノード内で見られるバルク電解質よりも低いpH値を有するものである。セパレータに保持された電解質は、好ましくはバルク電解質のpHよりも0.5〜3pH単位低いpH値を有する。セパレータ内で電解質が保持される範囲、及び保持された電極のpHがバルク電解質のpHから変動することができる範囲は、主鎖上に提供されるポリマー側基によって調整することができる。アルコール側基は好適であり、単純な水酸基からより複雑な側鎖にまでわたり、該側鎖は、炭素、窒素、酸素、硫黄、シリコン、及び同様のものを含むことができる線形、環状、及び分岐側鎖を含めた少なくとも1つのアルコール部分を含む。カルボキシル酸官能基などの他の側基は、セパレータ上に提供されて、セパレータ内の電解質を保持し、又はpHを増強又は阻止することができる。セパレータは、従来の電池のようにバルクアルカリ水性電解質によって水和されるが、水和セパレータ内に保持された電解質は、バルク電解質よりも低い固有のpHを有する。
【0103】
セパレータは、フィルムとすることができ、任意選択的にカソード上に形成され、又は電池製造中に電池内に挿入される。特に適切なフィルムは、可能な限り小さな断面厚さを有すると共に、製造加工性(例えば可撓性、機械的安定性、処理温度における完全性、電池内部の完全性、及び同様のもの)、適切な電解質吸収性、並びに本明細書で指摘された有利な特性を保持する。適切な乾燥フィルムの厚さは、通常約10から約250ミクロンの範囲である。本発明者らは、バルク電解質のpH値とセパレータ内に保持された電解質のpH値との間の差に応じて、フィルムセパレータの厚さを選択的に最適化し、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限することができる点を認識している。
【0104】
本発明の1つの形態は、上述のタイプのゲル化亜鉛アノードと上述の銅、硫黄、又はその両方の可溶性種を含有するカソードとの間に配置された、電気化学電池用シールセパレータ系を含む。従って、本明細書では、用語「シールセパレータ系」は、電池のアノードをカソードから物理的に分離して、水酸基イオン及び水のアノードとカソードとの間での移動を可能にし、シームと底部シールによって材料自体を通る以外の輸送を制限し、銅、銀、ニッケル、ヨウ素塩酸、及び硫黄種などの他の可溶性種のセパレータを通るカソードからアノードへの移動を効果的に制限する構造を定めるのに使用されることは理解されたい。
【0105】
本発明の原理に従って構成されたアルカリ電気化学電池の有用性は、カソードからアノード区画へのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限し、一方で水酸基イオンの移動を許容する改善されたバリアセパレータ系を電池中に提供することによって有意に向上させることができる。CuO、CuS、CuAg24、Cu2Ag23などの特定のカソード材料では、生成されたCu、Ag、S、及び同様のものなどの可溶性種の移動に対するバリアを利用したセパレータ系を使用するのが有利である(本明細書で説明された試験において、移動は少なくとも約50%、或いは少なくとも約60%、最終的には少なくとも約70%低減された)。このようなバリア材料は、PVA(ポリビニールアルコール)フィルム、修飾又は架橋PVA(ポリビニールアルコール)フィルム、EVOH(エチルビニールアルコール)、セルロース型フィルム、及びこのようなフィルムの積層又は非積層の組み合わせ若しくは合成混成物を含むことができる。これらの材料により、貯蔵寿命が改善されたバッテリを生成するために本発明の態様によるカソード活性材料として、より広い範囲の酸化物、硫化物、及び錯塩を使用することが可能になる。
【0106】
セパレータは更に、構造及び伝導性強化剤を組み込むことができる。セパレータは、電気化学電池で使用するための共形セパレータとすることができ、該セパレータは、可溶性種がそこを通過するのを効果的に制限する(すなわち、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、少なくとも約70%、最終的には少なくとも約90%)材料を含む。
【0107】
本発明のカソードは、可溶性種と相互作用させることによって、カソードからアノードへアノード汚染可溶性種が移動するのを効果的に制限する作用剤を備えることもできる。ポリビニールアルコール、活性炭、天然及び合成粘土、及びLaponiteのようなケイ酸塩、及び同様のものなどの作用剤は、イオン種を吸収又は遮る能力を示した。
【0108】
このように本発明の態様は、カソード中に可溶性カソード材料を有する電池に関連する少なくとも幾つかの問題を克服する。
【0109】
これらの問題は以下のものを含む。
1.カソードからの可溶性の銅又は銀種は、拡散してアノード側に移動し、金属の形態で析出する傾向があり、ブリッジ短絡、アノードのガス発生、又はアノードの不動態化を引き起こす可能性がある。ブリッジ短絡は、酸化亜鉛、銅、又は銀などの材料が析出してセパレータを貫通して、アノードとカソードとの間にブリッジを形成するときに生じ、これによりバッテリ寿命が短くなる。アノードの不動態化は、アノード抵抗の増大(従ってバッテリの内部抵抗が高くなる)からアノード反応の完全な停止までにわたる、様々な程度のアノード汚染をもたらす可能性がある。
【0110】
硫黄種はまた、硫化物の添加剤、又は添加剤中で可溶性の硫黄種を形成するために存在する他の硫黄含有化合物、或いはアルカリ電解質中で可溶性の硫黄種を形成するために存在する他の硫黄含有化合物から溶解することができる。これらの化学種は更に、互いに、及び電解質中に溶解している他のイオンと反応して、セパレータ内か又はセパレータと電極の境界で沈殿し、これによりカソードとアノードとの間の電解質の輸送を妨げ、或いはブリッジ短絡を引き起こす可能性がある。
【0111】
2.カソードが硫化物として又は金属酸化物と混合した硫黄として硫黄を含有する場合には、硫化物及び硫黄はアルカリ及びアルカリ土類水酸化物と反応して、溶液中で硫化物、ポリ硫化物、チオ硫酸塩、及び亜硫酸塩を形成し、これらは電池のアノード側に拡散及び/又は移動することができ、これによりアノードを不動態化して放電反応を妨げると共に、貯蔵寿命に悪影響を及ぼす。
【0112】
3. 上述の化学種は、互いに及び電解質中に溶解している他のイオンと反応し、セパレータ内又はセパレータと電極の境界で沈殿し、これによりカソードとアノードとの間の望ましいイオン及び電解質輸送を遮断する可能性がある。
【0113】
4. セパレータ材料が可溶性の銅種、銀種、硫化物、ポリ硫化物、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ヨウ素酸塩、又は同様のアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限する場合でさえも、円筒形電池のセパレータは、適切にシールされていない場合にこれらの種にアノード中に拡散して移動するための手段を提供することができるシーム(特に、円筒形電池のセパレータの1つ又はそれよりも多い端部及び側面に沿ったもの)を有することは理解されたい。従来の円筒形電池のセパレータは、このような可溶性種がアノード区画中に移動するのを適切に制限することはできない。「側面のシーム」は、本明細書では、円筒形セパレータの重なり端部(場合によっては隣接端部)に配置されたシームとして定義される。「端部シーム」とは、本明細書では、円筒形電池のセパレータの開放端部の1つに配置されたシームとして定義される。従って、用語「正極端」と「負極端」は、セパレータが電池に取り付けられた後の、円筒形電池の正極端と負極端の近位にそれぞれ配置されたセパレータの端部を意味する。「周縁端部シーム」とは、本明細書では、平坦で且つ円形、正方形、又は矩形であって、ボタン形又は角形電池に取り付けられたときにシールされることになるセパレータの外側周縁として定義される。
【0114】
本発明の種々の態様は、銅、銀、及び硫化物などの種々のアノード汚染種を有し又は生成する電気化学電池において、上述の問題の多くを克服するセパレータの組み合わせ及び構成を提供する。
【0115】
セパレータ材料及び組み合わせ
問題1、2、及び3は、適切なセパレータ材料又は材料の組み合わせを選定することによって対処することができる。
【0116】
本発明の種々の態様によれば、ゲル化亜鉛アノードとカソード中に銅、銀、及び硫化物イオンとを有するアルカリ電池に効果的な幾つかの材料及び材料の組み合わせが見出された。これらの材料は、どの材料特性がアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するかを判定するために更に評価された。
【0117】
セパレータのアノード側からカソード側にセパレータを貫通して延びる開細孔の形態での物理的多孔性が比較的高いことは、セパレータにおいては望ましくないことが確認された。例えば、以下の実施例1−3に関して図示及び説明されるように、セロファン、PVA、EVOH、TiO2充填高分子量のポリエチレン(HMWPE)膜、及び同様のものが期待される。HMWPEのサンプルは、マサチューセッツ州ビレリカ所在のAdvanced Membrane Systemsから入手可能であり、TiO2を充填してセパレータ細孔の多孔性を低下させ、ねじれ性を高めることができる多孔性の薄膜である。
【0118】
PVA、EVA、及びEVOH(その各々は架橋することができる)などのポリマーがコーティング又は含浸した、本明細書では「ハイブリッドセパレータ」として定義されるPVAフィルム又は織布は、多孔性が最小又は解消される場合には、以下の実施例6に関連して説明されるように、アノード汚染可溶性種の移動を制限するのに効果的であることも確認された。
【0119】
適切なポリマー状PVA又はEVAがコーティング又は含浸した不織布基材は、Cu、Ag、及びSの移動を制限するのに効果的であり、材料の厚さを薄くして、またこのような材料を使用して比較的不透過性のフィルムを形成するのが望ましい。この点に関してPVAフィルムは、基材上に水性溶液から直接キャストすることができ、これから乾燥したフィルムを容易に剥がすことができる。10%のPVA溶液(テキサス州ダラスのCelanese Ltd.,からのCelvolグレード350PVA)が70℃でマイラー基材/リリースフィルム上にキャストされる。規定の排除試験法に準拠した実験は、フィルムが、銅、銀、及び硫化物種の移動に対して望ましいバリア特性を有していることを示している。商業的に入手可能なPVAフィルムも評価され、同様の傾向を示している。このようなPVAフィルムの製造業者の一例は、インディアナ州ポーテッジに所在のMonosol LLCである。Monosolからの幾つかのサンプルが評価され、一部は加工助剤及び/又は可塑剤を含有していた。濃縮KOH中のフィルムの抵抗値も測定され、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限する能力が改善されるにつれてイオン抵抗値が増大することを示した。一般に、相当な量の可塑剤を含有するPVAフィルムのサンプルは、可溶性種の移動を制限する段階ではあまり効果がないが、許容可能な低いイオン抵抗を維持する。可溶性種の移動の効果的な制限は、化学組成、分子量、分子量分布、添加剤を含めたポリマー特性を選定することにより、及び適切な架橋を行うことによって達成できることは当業者には理解することができるだろう。
【0120】
また、他のポリマー溶液を使用して、不織布又はセロハンセパレータをコーティング又は含浸し、亜鉛アノードと、アノード汚染可溶性種を含有するカソードとを有する電気化学電池用セパレータとして使用される場合にPVAで見られたのと同様の効果を達成できることは、当業者であれば理解するであろう。或いは、ポリマー溶液は、アノード又はカソードを直接コーティングすることができ、これにより共形のセパレータを提供する。従って、ハイブリッドセパレータの部分(例えば、ポリマーがコーティングされ又は含浸された不織布セパレータ)を形成する、以下に説明されるポリマー溶液の多くは、代替として内側カソード表面又は外側カソード表面に直接施行して、水酸イオンを輸送できる共形のセパレータを提供すると共に、可溶性の銅、銀、及び硫化物種の移動を効果的に制限することができる点は理解されたい。このタイプのセパレータはまた、別の側面シーム又は底部シールの必要性を最小にすることもできる。
【0121】
他のこのようなポリマーは、エチルビニールアセテート(EVA)エマルジョン(ビニールアセテートモノマーを含む)、ビニールアセテートエチレン共重合体、及びビニールアセテートポリマーであり、これらは不織布セパレータ上にコーティング又は含浸して、以下の実施例7で説明されるように、例えば、銅、銀、硫化物、ポリ硫化物、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、ヨウ素酸塩、ヨウ化物、リン酸塩、ケイ酸塩、又は炭酸塩などのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限することができる。別の適切なポリマーはEVOHである。
【0122】
また、Laponite、Betonite、又はスメクタイト粘度、又は粘土状材料などの有機又は無機材料をポリマー溶液に取り入れて、構造体を提供し、又はイオン輸送或いはイオン伝導性を高めることによって、ポリマーコーティングのセパレータの特性を更に強化することができる。357サイズの電池の架橋PVAコーティングの不織布F3T23セパレータに取り入れられたLaponiteを有するセパレータの特性は、以下の実施例8で図示及び説明される。
【0123】
更に、セパレータは、アノード汚染可溶性硫化物種の移動を効果的に制限する第2のグループ(グループII)のセパレータ材料(例えば、PVCフィルム又はPVAを不織布セパレータ上にコーティングした又は不織布セパレータ中に含浸したPVA、架橋は有っても無くてもよい)と組み合わせて、アノード汚染可溶性の銅及び銀種の移動を効果的に制限する第1のグループ(グループI)のセパレータ材料(例えば、セロハン、TiO2を充填したHMWPEなど)を含むことができることが判った。この組み合わせは、可溶性の銅、銀、又は硫化物種を効果的に制限する。従って、グループIとグループIIの組み合わせを含むセパレータは、上述の問題1、2、及び3を最小限にするのに有効である。このようなセパレータは、以下の実施例5及び6で試験される。2つのセパレータ材料は、種々の組み合わせでスタックし、積層し、又はコーティングすることができる。例えば、グループIの材料は、グループIIの不織布セパレータのアノードに向いた面又はカソードに向いた面(又は好適な不織布セパレータの層)上にコーティングすることができ、又は代替として、PVAがコーティングされた不織布セパレータの隣接する層間に配置することができ、或いは好適な不織布セパレータを組み合わせたものであってもよい。
【0124】
アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するセパレータの適合性の1つの尺度は、セパレータの空気透過度である。空気透過度は、当業者が理解するように、Gurley秒で測定することができる。Gurley試験は、所定容積の空気をセパレータに通すのに要する時間の長さを測定し、より長い時間の測定値は空気透過度が低いことを示す。上述の電気化学電池での使用には、Gurleyの空気透過度が500Gurley秒以上であるセパレータが好適であると同時に、問題1、2、及び3を克服することが分かった。Gurley測定は、ニューヨーク州トロイに所在のGurley Instrumentsから商業的に入手可能な型式番号4150Nを使用して行われ、1平方インチ面積を通過する10ccの空気を移動させるための圧力低下が水柱で12.2インチであった。Gurleyの空気透過度は高いほど良い。Gurleyの空気透過度が比較的高いフィルムセパレータは、存在する場合には、僅かな開細孔を有することを当業者は認識するであろう。
【0125】
アノード汚染可溶性種を含有する電解質で湿潤されたときには、空気透過度が必ずしもセパレータの透過度の正確な指標ではないことは理解されるべきである。従って、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するためのセパレータの適合性のより直接的な測定は、以下に説明される排除試験のような直接測定分析の結果を使用するものである。
【0126】
セパレータはまた、カソード、アノード、及び電解質の構造並びに化学的性質の既知の変形形態及び改善形態に適合性があるが、金属の一元酸化物又は硫化物、金属の二元酸化物又は硫化物、金属の三元酸化物又は硫化物、或いは金属の四元酸化物又は硫化物の少なくとも1つを含む1つ又はそれよりも多いカソード活性材料を含有したカソードを有する電池に対して特定の利点があり、ここで金属は、マンガン、銅、ニッケル、鉄、及び銀から選定され、これらは溶解して、非限定的にイオン金属種及び硫化物種を含む1つ又はそれよりも多いアノード汚染可溶性種を形成する場合があり、不都合なことにカソード及びアノードの両方と流体連通したバルク電解質の流体においてカソードからアノードに移動する可能性がある。本明細書で使用される「二元」、「三元」、及び「四元」とは、2つ、3つ、又は4つの特定の化学種を含有することを意味する。カソード活性材料としての有用性のある材料には、限定ではないが、二酸化マンガン、硫化銅、酸化銅、水酸化銅、オキシ水酸化ニッケル、酸化銀、ヨウ素酸塩銅、ヨウ素酸塩ニッケル、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、銅−銀酸化物、銅−マンガン酸化物、及びこれらの組み合わせを含む。カソード活性材料の組み合わせは、カソード内に混合物又は別個の構成要素として提供することができる。
【0127】
本発明の様々な態様では、セパレータのシームを含む、カソードとアノードとの間の流体連通の経路がシールされて、セパレータ材料を通る以外の流体連通(例えばバルク電解質の)が最低限にされるか又は無くされ、その経路の少なくとも1つの層が形成される。更に、バルク電解質中の実質的に全てのアノード汚染可溶性種は、望ましくはセパレータのカソード側に保持されてアノードに移動しない。このようにセパレータは、セパレータを通ってカソードからアノードへ移動するのが阻止された可溶性種の百分率を意味する「排除値」と関連付けられる。「実質的に全て」とは、本発明で開発され説明される試験方法に準拠して、セパレータの排除値が、少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約85%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は少なくとも約97%、最終的には少なくとも約99%を表すものとする。
【0128】
しかしながら、電池のアノードの活性材料が可溶性種を許容する限り、電池はセパレータを通るアノード汚染可溶性種の幾らかの移動を許容できることは理解されるであろう。従って、一般にアノードの活性材料が汚染されることなく許容することができるよりも少ない種をセパレータが通過させる場合には、適切なセパレータはアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限している。しかしながら、実質的にはより少ない量の可溶性種が望ましい。
【0129】
同様に、セパレータ内に保持された電解質の実質的な部分(例えば少なくとも約50%)は、ポリマーの主鎖又はその側基と関連付けられる(通常非共有結合的に関連付けられる)。このような関連付けの適切な評価は、セパレータ材料を分析してセパレータ内に保持された水が凍結した後に溶融した温度を求めることによって得られる。ポリマー中に保持されているが物理的には関連付けられていない自由水が約0℃で溶融するのに対して、より低い溶融温度はポリマーと関連付けられていることを示し、従って望ましいセパレータである。セパレータに保持された水が液相へ遷移する温度を求める適切な方法は、単純な示差走査熱量(DSC)試験を利用する。セパレータ材料の適切な寸法のサンプルが水中で1時間膨潤され、次いで、凍結するまで液体窒素中に浸漬される。凍結したサンプルは、低温DSC装置(デラウエア州ニューアークのTA Instrumentsから商業的に入手可能)内で1分間につき2℃の速度で溶融され、少なくとも約−30℃から約20℃までの温度範囲で溶融温度が観測される(添付の図16を参照のこと)。
【0130】
また、電池中の適切なセパレータ材料は、水酸化イオンによって、及び水酸化イオンから可溶性種まで水を輸送するのが望ましい。添付の図16は、種々の候補セパレータ材料を通って輸送された水とKOHの相対量を表し、本明細書に記載されたセパレータが、電池の放電中に電解質のOH-及びH2Oの濃度を再平衡させるときに、該セパレータがシールセパレータ材料を越えて水とKOHを輸送する相対的能力を示している。
【0131】
セパレータの構成及びシームと底部のシール
上述の問題4(セパレータ側部及び/又は端部シームを通るイオン透過度を含む)は、以下の方法及び対応する装置によって対処される。
【0132】
シールセパレータは、全てのバッテリシステムに適用可能であるが、1つの電極からの可溶性種が他の電極に移動することにより特性又は貯蔵寿命を劣化させる可能性のある場合の、本明細書で説明されたようなシステムに対して特定の適用性がある。これらは一般に、アノード汚染可溶性種と呼ばれる。このような場合、実質的に不透過性のシールが設けられない限り、可溶性種がセパレータのシーム又は端部の近傍で移動することができるので、セパレータ材料単独では不十分な可能性がある。
【0133】
上述のように、セパレータまわりの経路を介したカソードとアノードとの間の流体連通は、セパレータをシールすることによって最低限にされ、又は無くされ、セパレータを通る経路を介する以外はアノードがカソードから実質的に流体隔離されるようになるのが望ましい。セパレータ材料をシールする方法は、接着シール、ヒートシール、超音波シール、及び同様のものを含む既知の方法によって実現することができる。このようにして形成されたセパレータは、閉鎖端部を有するチューブの形状をとることができる。ポリビニールアルコールを含む水溶性のセパレータ材料では、多少の量の水を使用して材料を軟化させ、次いで熱又は圧力或いはその両方を利用してシールすることによりシールを形成することができる。通常は、溶融セパレータシールがカソードとアノードとの間の直接の流体連通の望ましくないチャネルの可能性を制限するので、この構成は望ましいものである。
【0134】
ボタン又は角形の平坦電池では、絶縁グロメットなどの相対する部材によってセパレータが平坦面(例えばディスク状又は角形形状の電極)に密接に押しつけられるので、一般に、アノード汚染可溶性種がセパレータ近傍で浸透するのを効果的に制限するよう良好なシールが得られる。しかしながら、円筒形電池では、製造の容易さ、速度、及びコストのために、セパレータが一般に回旋状、すなわち螺旋状の巻線形チューブとしてキャビティ内に挿入或いは交差配置され、シームをシールすることが困難であるので良好なシールが簡単には実現されない。
【0135】
外側周縁部と第1及び第2の端部を有する円筒形のセパレータを提供することができる。電池の正端子端部に近位に配置されることになるセパレータの端部は、セパレータの組立時に(すなわち押し出し成形、溶融ブロー成形、及び同様のものにより)シームレスにすることができ、或いは、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限する化学的又は物理的手段によってシールすることができる。化学的シール法は、接着剤の使用を含み、化学結合を伴うものもあれば、伴わないものもある。物理的シール法は、熱(溶着)、振動(例えば超音波接合)、及び加圧、又はこれらの組み合わせを含む。選択した材料に応じて化学的及び/又は物理的シール法の種々の組み合わせを適用することもでき、例えば、PVAフィルムをそれ自体に接合するために、熱、水、及び/又は圧力を使用することで、効果的なシール/ジョイントを生成することができる。
【0136】
化学的シール法の中でもこのようなシールを形成する1つの方法は、架橋可能ポリマー及び架橋剤を使用して、少なくともシームシール及び底部シール、更に望ましくは頂部シールを提供する(ゲル化アノードをセパレータキャビティに採用した後で)ことである。
【0137】
シームシール及び底部シールのセパレータ構成は、外部で製作した後電池内に挿入することができ、或いは、螺旋状巻線形の回旋状又は交差配置のチューブを電池キャビティ内に挿入した後にその場で製作することができる。
【0138】
架橋結合は、ポリマーを所定位置に固定して、バッテリの寿命全体を通して損なわれないシールを生成する。ポリマーの単純な凝結又は高pH環境での沈殿は通常、ゼラチン状の塊を生成し、これが、動作中又は通常の取り扱いもしくは輸送における物理的又は機械的衝撃の際の膨張又は収縮によって移動又は変位する可能性があり、これによりシールが損なわれる。架橋結合の無い接着性ポリマーを使用してもよく、勿論、生成されるシールがバッテリ電解質中でバッテリの寿命にわたり安定しており、シーム又は底部シールでのセパレータ材料自体より多くのアノード汚染可溶性種の輸送を許容しないことは求められる。
【0139】
材料を適切に選定することにより、架橋結合及び凝結の両方を有効とすることができる。2つの適切なセパレータ材料が原位置外(ex−situ)シールの例として呈示される。1つの材料がセロハン、他方の材料は、PVAがコーティングされた不織布を含むハイブリッドセパレータであり、該PVAは架橋剤を用いて架橋される。空気に対して実質的に非透過性であり、Gurley空気透過度が500秒を超える不織紙を作るためには、PVAの十分な装填(>5g/m2)が必要である。空気透過度が低いことは、バッテリ中でポリマーが電解質を吸収して膨潤すると、材料を通ってアノード汚染可溶性種を輸送する経路が実質的に存在しないことが保証される。シームをシールするために、粘性のPVA溶液(例えば重量比で2−10%の水溶液)の層がシームの近傍に加えられて、2つの表面が一つに合わされた後、ホウ酸ナトリウム又は他の当該技術分野で公知の他のものなどの架橋結合剤の薄層が施工される。シール領域は直ちに架橋され、一方ではまた2つの表面が共に結合される。濃縮KOH電解質中に5日間浸漬する簡単な試験では、シームは損なわれることなく、物理的に引き裂くことができず、バッテリ中で良好な動作特性を示唆することが示された。アノード汚染可溶性種を効果的に制限するシールの有効性は、本明細書で説明された排除試験を使用して試験することができる。接着剤として好適であり又は使用される他の架橋可能ポリマーには、限定ではないが、ポリエチレングリコール、ポリビニルブチラール、及びポリビニルピロリドンが含まれる。
【0140】
下部シールを生成するために、巻線形セパレータチューブの一方端が層間で少なくとも幾らか部分的に重なって(内部のマンドレルと共に)折り畳まれて、マンドレルの端面上に配置された同じ又は別のセパレータのディスク形状部分の上にカップを形成し、続いて架橋可能ポリマー(例えばPVA)の小滴を形成する。十分な架橋剤が添加されると、架橋された粘着性の複合材が折り畳まれた底部が形成され、これがアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限する。次にチューブ形状のセパレータを使用して、従来的方法でバッテリを生成することができる。
【0141】
上述の原位置外シールは極めて有効であるが、シールされたチューブとカソードのキャビティとの間に間隙が存在する場合が多いので、バッテリ設計及び特性の観点から最も望ましい訳ではない。この空間はアノードとカソードとの間に湿潤が不十分な境界を生成する可能性があり、特に長期間貯蔵を経過後のバッテリ性能劣化につながる。この問題に対する1つの解決策は、電解質を吸収すると大きく膨潤して乾燥チューブとカソードとの間に存在していた空間を充填するセパレータを使用することである。挿入された後に膨張することのできるひだ付きのチューブ形状のセパレータも使用することができる。この問題に対する別の解決策は、架橋可能ポリマーコーティングの不織セパレータの場合において、以下に説明されるように螺旋巻線形チューブ(例えば)が挿入された後にこのようなシールを原位置で生成することである。原位置態様の特定の利点は、シールされていない螺旋巻線形チューブ又は交差配置セパレータがキャビティ内に挿入されるときに、利用可能な容積内に膨張して、自己とカソード材料との間の間隙を低減し、良好な境界を生成する可能性を有することである。これは更に、巻線形チューブの場合において、シームがまだシールされていないので、セパレータをキャビティ内に膨張可能にする或いは膨張させるために反対方向へ僅かにねじるか又はガス噴射を制御することによって挿入マンドレルを取り除くプロセスの助けとなる可能性がある。
【0142】
従って所望の実施形態では、原位置のシールを得るために、架橋可能ポリマー(例えばPVA)と架橋結合剤(例えばホウ酸塩誘導体)の混合物を十分装填して不織セパレータをコーティングし、これを実質的に不透過性(Gurley空気透過度>500秒)にすることができる。架橋結合剤は、直ちにPVAを架橋しない(すなわち、適切に活性化されるまで休止状態を維持する)ように選定される。このようなホウ酸塩誘導体架橋結合剤の1つの例はホウ酸である。この特定の実施例では、架橋結合は、(KOH)電解質がセパレータと接触してこれにより架橋結合剤を活性化した後に、バッテリのpHが7を超えるときに生じることになる。実質的に乾燥のPVA/ホウ酸をコーティングしたセパレータは、層間で少なくとも幾らかの重なりを有してマンドレルの周りに巻かれる(現在のアルカリ電池製造の場合のように)。一方端が折り返されてカップ状底部が形成され、カソードキャビティ内にチューブが挿入される。上述のような架橋可能ポリマー及び架橋結合剤でコーティングされた同じか又は異なるセパレータ材料から構成される底部ディスクは、次にチューブ中に挿入されて、巻線形セパレータチューブの折り返された底部の内側にあるようにされる。セパレータチューブ内に電解質の予備注入が導入され、又は電解質を含有するZnゲルが添加されると、ホウ酸の存在下でPVAの架橋が引き起こされ、同時にまた、セパレータの隣接する層、底部ディスク及びチューブ、並びに重なり領域のシーム間のシール又は結合が形成される。
【0143】
同じ目的を達成する別の方法は、実質的に透過性(Gurley空気透過度>500秒)にするために、例えばPVA(架橋結合剤は無い)である架橋可能ポリマーの十分な量を上にコーティングした不織紙で始めることである。折り返された底部が生成され、上述されたようにカソードのキャビティ内に挿入され、続いて、PVAがコーティング又は含浸された底部カップが挿入される。次いで、架橋結合剤(例えばホウ酸塩ナトリウム)が、挿入されたセパレータチューブに付加され、これによりセパレータチューブの隣接する層、底部カップに対する底部、及び重なり部のシール領域を同時に架橋及びシールする。架橋結合のこのプロセスは、架橋剤を適用する前にセパレータが予め湿潤されるか又は水がスプレーされる場合により効率的になることが分かった。正しいプロセスのステップ及び条件は、架橋可能ポリマーと架橋剤の特性に基づいて最適化すべきであることは理解されたい。
【0144】
同じ最終結果を実現するために他のポリマー及び/又は架橋結合剤を使用することができる。非限定的な実施例では、カルボン酸基をPVAに導入し、グルタルアルデヒドと架橋して、PVA又は修飾PVA上にコーティング又は積層されたセルロースを再生できるフィルム特性を改善することができる。PVAは、アクリル酸と共重合してイオン抵抗を有意に低下させることができる。アセチル化PVAフィルムは、ポリアクリル酸と修飾することができる。アクリル又はメタアクリル酸グラフト化PVAもまた使用することができる。同様に、ポリエチレン又はポリプロピレン薄膜上のグラフト化メタアクリル酸もセパレータとして好適である。
【0145】
別の態様では、原位置外及び原位置プロセスの組み合わせも使用することができる。例えば、PVAは、最初に巻線形セパレータのシーム及び適切なセパレータ材料の底部に適用することができ、続いて電池キャビティに挿入される。ホウ酸ナトリウム(又は他のもの)架橋結合剤の必要な量をチューブ内に適用して、アセンブリを架橋させて所定位置でシールを行うようにする。
【0146】
本発明の別の態様は、Laponite、ヒュームドシリカ、Bentoniteなどのような伝導性及び構造強化充填剤をポリマーコーティングのプロセス中にセパレータ内に任意的に取り込むものである。従来の電池の場合よりも高いPVAの装填が不織層を不透過性にするために必要とされるので、これは、セパレータの電気抵抗を高めることができる。適切な充填剤を取り込むことは、伝導性を更に許容可能なレベルまで向上させる傾向があり、バッテリの放電特性が改善されるようになる。
【0147】
シールセパレータを生成する第2の一般的な方法は、PVA、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及び同様のものなどのヒートシール可能なポリマー材料を使用した物理的方法である。シールは、連続フィルム又は多孔性繊維フィルムの形態のポリマー材料の層を提供し、その層をシールされることになる領域(例えば、サイズAAの電池が取り付けられるべきセパレータの外側周縁部)に挿入することによって形成される。次にセパレータは、圧力を印加してもしなくても良いが、加熱制御下でシールを形成することができる。また、ヒートシール可能なポリマー層をセパレータ層の1つの面(ヒートシールが可能であってもなくてもよい)に施工して、その後円筒に巻き付け、重なり領域が別のセパレータ層と連結するシール可能なポリマー材料の層を含むようにする。従って、ヒートシール可能なポリマー材料は、加熱制御条件下で他のセパレータ層と接してシールされることになる。ポリマー材料は更に、セパレータを円筒に形成する前に、外側周縁部又は内側周縁部の円筒形セパレータに隣接して位置付けることができる。或いはポリマー材料は、円筒形セパレータの2つの重なり端部の境界に適用することができる(他の方法では互いに接合されない)。従ってポリマーシールは、加熱制御条件下で2つの重なり端部を共に接合してシールを形成することになる。適切に形作られたポリマー層はまた、加熱制御条件によりポリマー材料がセパレータの外側周縁部をシールするように、ボタン電池に取り付けられるべきセパレータのいずれかの側部に積層又はコーティングすることもできる。
【0148】
自己又は他の材料に対して材料を溶融させるために超音波振動を使用することは、(例えば)PVAフィルムでの良好なシールの生成に効果的であることが分かった。
【0149】
シールを形成する第3の方法は、高温のワックス、又はエポキシ樹脂、又は他の接着剤型のシーラントをシームに塗布することである。重要な態様は、ここで使用される材料(ワックス又はエポキシ)がバッテリの強アルカリ環境に対して耐性があり、シール特性を維持することである。
【0150】
代替として、押出成形、射出成形、又はブロー成形/インフレートフィルムなどの種々のポリマー加工法を使用したシームレスのセパレータチューブを使用することができる。同様に、例えば、繊維材料などのシーム付き材料を適切なセパレータで完全にコーティングして再生セルロースなどのポリマーを形成し、その結果シームがセパレータには存在せず、下にある材料に存在するようにすることによって、シームレスのチューブを作製することができる。本明細書で説明されたセパレータの構造は、上述の材料のどのような数の層をも含み、アノード汚染可溶性種の移動を更に効果的に制限することができる点は理解すべきである。
【0151】
更に別の代替形態は、架橋可能ポリマーを架橋結合剤と共にセロハンなどのセパレータ上にコーティング又は積層することによって、ヒートシールとポリマー架橋結合を組み合わせることである。セパレータは、従来の配置方法を使用して所定位置に配置することができる。電解質単独又はアノード中での導入は、ポリマーを架橋してシールセパレータを形成することになる。
【0152】
セパレータの正側及び負側の端部はまた、アノード汚染可溶性種のアノードへの移動を効果的に制限するのに十分な方法でシールするのが望ましいことは理解されたい。円筒形電池は通常、アノードの漏出を防ぐために、カソード及びセパレータに接して軸方向又は半径方向のいずれかに圧縮された負側の電池端子端部に近接して配置される環状グロメットを含む。セパレータの負側の端部は、負側の端部にあるセパレータ周縁部にポリマーを供給して、加熱制御条件下でグロメットに対してポリマーをシールすることによって、グロメットに対して当接してシールすることができる。また、シールを形成するために架橋結合を含めた化学結合を使用してもよい。セパレータの負側の端部もまた、適切に設計されたセパレータロックを有するグロメット又は同様のものを使用して機械的にシールすることができる。或いは、亜鉛アノードの上部端部に物理的シールを施して、アノードへのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限することができる。負側の端部はまた、架橋可能ポリマーでコーティングされたディスク形のキャップを使用してシールすることができ、該キャップは、ポリマーが架橋されたときにシーム及び底部がシールされた円筒形セパレータに接してシールすることになる。或いは、カソードの頂面及び縁部を適切な架橋可能ポリマー又はポリマーゲルによって覆い、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限することができる。或いは、アノードの頂面は、適切な架橋可能ポリマー又はポリマーゲルによって覆い、カソードからのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限することができる。
【0153】
第4の方法では、マンドレル及びシュー機構を使用して、側面(シーム)シールを形成するために材料を超音波溶融して側部シールを作製することができる。PVAフィルムの切断片が、マンドレルの周りに包まれてシューによって係留されている。処理の目的でフィルムの十分な重なりが維持され、約3mmのシール重なり部が目標にされる。マンドレル/シュー機構は、速度がプログラム可能なスライド上に配置され、該スライドは、次にバネ付勢のプレートに取り付けられる。次いでスライド及びプレートは、望ましくは20kHzから40kHzの間で動作する超音波溶着ホーンの下に配置される。ホーンとマンドレル上のPVAフィルムとの間にプレートが作用する力(望ましくは3−10lbf、又は4−7lbf、或いは5−6lbf)は、異なるバネ定数のバネを使用して調整可能である。溶着されたシームの品質は、スライドの速度、ホーンに対するフィルムの圧力、溶着機の振幅、及び溶着プロセス中のフィルムの水分含有率/温度に左右される。21℃における水分含有率は、望ましくは1−25%、又は3−10%、或いは更に5−7%である。溶着が完了すると、最終チューブは、超音波溶着(図17)により誘起された熱が不十分であるか又は過剰であることによって引き起こされた、実質的に多孔性でない(ベースフィルム材料よりは多い)連続したシール円筒体のはずである。過剰な重なりは、円筒形チューブから切り取ることができる。
【0154】
シールセパレータチューブ又はバッグを生成するために、側面が完全にシールされた円筒体の端部の少なくとも一部をシールする必要がある。インパルスヒートシール装置(Fuji FS−315)を使用して、側部シールのラインに実質的に垂直なラインで(図18)円筒体の端部の少なくとも一部がシールされる。次いで、シールされた端部は折り畳まれて、複数の方法によって円筒形状に形成することができ、その結果、内部バッグ容積が最大化され、チューブは、該チューブが後で挿入される缶の底部の形状を与えられるようになる(図19)。アノード汚染可溶性種のアノードへ移動が効果的に制限される限りは、他のどのような適切な端部シール法でも説明されたように使用することができる。
【0155】
実質的に漏れのないシールチューブを生成することは、適切に動作する電池を提供するため望ましい。定性試験を用いて、以下の方法でシール品質が判断される。外径(OD)がPVAバッグの内径(ID)よりも約0.005インチだけ小さい中空チューブが、ガス供給源(望ましくはアルゴン又は窒素)に接続される。高さが円筒形電池に必要な高さよりも有意に高いPVAバッグが、中空チューブに挿入され、その結果、電池に挿入されることになるバッグの全高は、依然として中空チューブの底部よりも低い。次にエラストマーのO−リングが、中空チューブに接してバッグをシールするような方法でPVAバッグの上に配置される。2−3psigのガス圧がチューブに供給され、バッグをガスで充填して2−3psigの最終圧力に達するまで十分な時間が与えられる。バッグが膨らむ(PVAバッグに対してはどのような寸法変形もなく)と、EtOH(ペンシルバニア州ピッツバーグに所在のFisher Scientificの95.2%の)の槽に入れられ、EtOHを通るガス気泡の存在がバッグの漏れを表し、バッグを使用不能にする。
【0156】
最終的に、本明細書で上述されたように適切なセパレータが構成されると、アノード汚染可溶性種の拡散を効果的に制限することができる。簡単な実験を行い、ボタン電池又は他の試験用媒介物の種々のサンプル材料を直接選別し、ある期間にわたって開路電圧(OCV)をモニタすることができる。電池中の他の全ての成分はOCV減衰を通常は引き起こさないことが分かっているので、OCVの減衰は、電極の1つの表面の変化、最も可能性があるのはアノード汚染可溶性種の移動結果の指標である。より定量的なセパレータ材料の選別及び選定のため、並びに特定の材料に対して行われた改善及び/又は修正の評価を行うためには、特別に設計された設備での「電池外試験」(本明細書で説明された排除試験のような)がより望ましい。排除試験は、以下のように行って、セパレータ材料の適合性を判定し、シールの有効性を確認した。
【0157】
O−リングサイズが−112(ニュージャージー州のヴィンランドに所在のAce Glass)の2つのL字形のO−リングシールジョイントによって分割された、第1の端部(側部A)と第2の端部(側部B)とを有するガラスチューブが提供された。セパレータ又はセパレータサンプルのシールされたシームは、O−リングシールジョイント間のチューブの中央に配置された。ガラスチューブの側部Aは、0.25gのCuOと0.25gのCuSの混合物を含有する34重量%のKOH10mLで満たされた。これにより、実験の持続時間に対するこれらの条件下で実質的に平衡濃度に近いバルク溶液中で可溶性の銅と硫化物種の一定の供給があることが保証される。側部Bは、CuO、CuS、又はCuOとCuSとの混合物が実質的に存在しない34重量%のKOH10mLで満たされた。電解質中に固体カソード材料を含有するバッテリにおいて主流となっている条件に極めて類似していることから、側部Aでの可溶性の銅及び硫化物種の既知の濃度の使用よりもCuO及びCuS粒子の使用が選定された。銀を排除する実験では、側部Aで0.25gのAgOが使用された。側部Bに対する側部A上の化学種の濃度の差は、セパレータを通るアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するセパレータの能力の尺度となる排除値を提供した。ガラスチューブの側部AのKOH中に配置されたCuO又はCuS粉体のような非溶解性の材料で開始する場合、この実験はまた、非溶解性材料からの可溶性種の可溶性を表すことになる。高濃度のKOH(例えば34%)は、アノード汚染可溶性種の迅速で有意な可溶性を保証するので望ましい。上述の実験は、60℃で5日間行われた。
【0158】
A.ボタン電池の試験
試験されることになるセパレータを含むA357サイズのボタン電池が提供された。カソードは、92%の活性材料、5%の黒鉛、2.5%の電解質、及び0.5%のポリエチレンのバインダを含む。アノードは、68%の篩にかけられた亜鉛と共に、31.5%の34−2電解質及び0.75%のゲル化剤と防錆剤の組み合わせを含む。電池は、60℃の温度のオーブン内に貯蔵された。電池の開路電圧(OCV)、インピーダンス、及び電池の膨張がモニタされた。電池のインピーダンスは、周波数応答分析器(例えばSchlumberger Inc.の型式12)を使用して測定された。OCVの減少は、1つ又は両方の電極の電位がその熱力学的な値から低下していることを意味し、アノード汚染可溶性種がセパレータを通して移動していることを表している。電池のインピーダンスの増加は、2つの電極間の抵抗値の増加を意味し、これはまた、セパレータの遮断或いはアノード汚染種の拡散又は移動による亜鉛アノード表面の不動態化によっても引き起こされる。電池の膨張は、ガス生成による内部圧力の増大の兆候であり、これはまた、銅イオンがセパレータを通って移動して亜鉛アノードと接触する場合に予想される結果である。膨張は、組み立てられた電池の外側の高さの増大を長期間にわたってモニタすることにより測定することができる。従って、これらの特徴をモニタするのは、特定のセパレータ材料の有効性又はその品質を理解し且つ評価する上で、或いは幾つかの候補材料又は組み合わせを選別する上で極めて教示的なものである。
【0159】
B.排除試験
より定量的な方法は、問題のセパレータのいずれかの側部上でのアノード汚染種の濃度の直接測定を含む。測定設備は、ガラスチューブの頂部をシールして電解質の蒸発を制限した状態で5日間オーブン内で60℃で保管された。次に、本明細書で説明されたように特定のイオン濃度に関して両側部の電解質が分析された。
【0160】
側部B上の特定のイオン濃度が側部A上の濃度よりも低いときには、セパレータ又はシールが、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限していると考えられる。表4の結果は、本明細書に更に詳細に説明されるように排除試験の結果を示している。
【0161】
可溶性のCu種は、Thermo Electron Corporation(マサチューセッツ州ウオルサム)から供給されたThermo Iris Intrepid II(ラジアルユニット)を利用した標準の誘電結合プラズマ(ICP)分析法を用いてKOH中で分析された。通常、サンプルは、分析の前に10%硝酸溶液で50mlに希釈した1gの電解質サンプルを使用して調製された。較正曲線は、全ての溶液が10%硝酸である、ブランク、0.5ppm、及び1ppmの3つの溶液からなる。銅は1000ppmのSpex標準を使用して較正された。銅の測定は、4つの波長(223.0、224.7、324.7、327.3)の平均値を使用して行われた。Scandiumの内部標準は、各サンプル及び測定された標準液(20ppm)で使用された。
【0162】
可溶性硫黄種は、Thermo Electron Corporation(マサチューセッツ州ウオルサム)から供給されたThermo Iris Intrepid II(ラジアルユニット)を利用して、標準の誘電結合プラズマ(ICP)分析手法を使用してKOH中で分析された。通常、サンプルは、分析の前に10%硝酸溶液で50mlに希釈した1gの電解質サンプルを使用して調製された。通常は、本技法において適切な結果をもたらすために容積で測定された追加の5:50又は10:50の希釈が行われた。較正曲線は、全ての溶液が10%硝酸である、ブランク、0.5ppm、及び1ppmの3つの溶液からなる。硫黄は、SpexSO4(K2SO4開始ソース)標準から調製された標準を使用して較正された。硫黄の測定は、2つの波長(180.7、182.0)の平均を使用して行われた。Scandiumの内部標準は、各サンプル及び測定された標準液(20ppm)で使用された。
【0163】
ポリビニールアルコールなどのフィルムの製造時に使用される可塑剤又は加工助剤は、電池中でセパレータとして使用されるときにアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するフィルムの性能に悪影響を与える可能性があり、このため、十分な量の1つ又はそれよりも多い可塑剤で調製されたフィルムが好ましくないことも注目される。本発明に従って使用するためのフィルムセパレータは、重量比で約15%より少ない可塑剤を含有するのが望ましく、或いは重量比で約10%又は約5%より少ない可塑剤を含有するのが望ましい。特に、適切なフィルムセパレータは、重量比で約3%以下の可塑剤を含有する。
【0164】
1つの可能なセパレータは、冷水に非可溶性で且つ非架橋性であり、重量比で3%よりも少ない可塑剤を含むポリビニールアルコールのフィルムセパレータである。2つのこのような適切なポリビニールアルコールのフィルムは、M−1000とM−2000(Monosol)である。
【0165】
本発明のセパレータは、説明されたように提供することができるが、セパレータは、他の従来の方法で従来の不織布層と任意選択的に結合する(例えば積層又はスタックして)ことができる。
【0166】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を説明している。添付の請求項の範囲内にある他の実施形態は、本明細書で説明された本発明の明細書又は慣行を考察すれば当業者には理解されるであろう。実施例と共に本明細書は単に例示的なものとみなされ、本発明の範囲と精神は添付の請求項によって示されるものとする。
【実施例】
【0167】
(実施例1)
これは、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するための種々のセパレータ性能の有効性を示す実施例である。OCVは、種々のセパレータを使用して作られた複数の357個の電池に対して初期状態と1日室温保管後の両方で比較された。カソードは、CuO(Aldrichから商業的に入手可能)であり、電池アノードは、従来の亜鉛と電解質濃度とを有する従来のアルカリ亜鉛ゲルアノードであった。
【0168】
ほとんどの場合、セパレータの2つの層は電池中で使用され、1つはカソードに面し(「カソード側のセパレータ」)、他方はアノードに面した(「アノード側のセパレータ」)。以下の表3に示されたOCVデータは、所与の電池形式の2つの電池の平均値を含む。OCVの減少がアノード汚染可溶性銅種のアノードへの移動の増加を示すことを理解されたい。
【0169】
表3

【0170】
注:
350P00:英国UCB Film Inc.から商業的に入手可能。
SC216及びSF586:イリノイ州Viskase Corporationから商業的に入手可能。
FASマイクロ多孔性薄膜サンプルは、マサチューセッツ州Advanced Membrane Systemから提供された。
サンプルFは、メリーランド州W.L.Gore.& Associates, Inc.,から提供された。
サンプルGは、マサチューセッツ州Aporousから提供された。
Celgard 3407:ノースカロライナ州Hoechst Celenese Corporationから商業的に入手可能。
FS2213:ドイツのFreudenbergから商業的に入手可能。
F3T23:日本国大阪Kuraray Co. LTD.,から商業的に入手可能。
【0171】
表3に示されるように、OCVの劣化により、セロハン及びTiO2充填HMWPE(高分子量のポリエチレン)薄膜は、微孔性型薄膜(例えばCelgard 3407 PE、B10ab Nylon、及びExcellerator Alkaline PTFEなど)よりも性能が優れており、アノード汚染銅種の移動の制限においてより効果的であることを示しているのが分かる。
【0172】
(実施例2)
これは、効果的にアノード汚染種の移動を制限する種々のセパレータの能力を示す実施例である。他の箇所で説明されているように、ガラスチューブ器具の側部Aは、既知の濃度の銅イオンを有する34%のKOHが充填され、銅イオンのない電解質が区画Bに添加された。側部B上の銅錯イオン濃度は、室温で1週間後に測定された。
【0173】
ここで表4を参照すると、種々のセパレータに対して排除試験を行い、温度60℃で保管後の可溶性の銅、銀、及び硫黄種の排除値を求めた。ガラス器具の側部Aは、0.25gのCuO(酸化銅)と0.25gのCuS粉体を含む34%のKOH溶液が充填され、列2及び4に示された可溶性の銅及び硫黄種の濃度を生じた。銀の排除を求めるために、器具の側部Aで使用されたAgOの側部Aで0.25gのAgOが使用され、列6に示された銀の濃度を生成した。要約した結果が以下の表4に示される。
【0174】
表4:60℃で54日後の可溶性銅、銀、及び硫黄種の排除試験結果

【0175】
条件:フィルムの各側面10mL34%KOH、0.25gCuOから銅、0.25gCuSから硫黄、0.25gAgOから銀、60℃で5日間保管、
*10.6%PVA溶液からのPVAフィルムキャスト(Celvol350)
【0176】
上記の表4の結果は、60℃における可溶性銅及び硫黄種の移動の制限において、セパレータの複数の層が同じセパレータ材料の単一の層よりも効果的であることを示している。この結果はまた、PVAフィルムの可溶性銅、銀、及び硫黄種の排除の適合性を示している。
【0177】
(実施例3)
これは、保管された357サイズのボタン電池のアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限する有用性を示す実施例である。ここで図20を参照すると、CuOカソードを有する4つの電池が室温で5日間保管され、続いて、60℃で電池が機能しなくなるまで(上述のようにOCV、インピーダンス、及び膨張によって決定される)保管された。OCVは、保管の最初の日から各電池について継続して測定された。図20は、CuOカソードを含有する電池においてセロハンセパレータがFAS 350Zセパレータよりも良好なことを示す。また、厚いセロハンセパレータ(3ミル厚さのSF−586)が薄いセパレータ(両方とも1ミル厚さの350P00、及びSC216)よりも優れており、排除試験の実験から結果が確認される。
【0178】
(実施例4)
これは、本明細書で説明される本発明の材料で作られた電池の有用性を示す実施例である。ここで図21を参照すると、2組の電池が提供された。各組の電池は、(1)セパレータが、F3T23不織布上に架橋PVAを含むハイブリッドセパレータの層と組み合わせられた層状のViskaseセロハン(SC−216)を含有する1つの電池と、(2)セパレータが、Viskaseセロハンの2つの層を含む第2の電池を含んでいた。第1の組の電池(電池541と543)は、電池が製作直後に5mAで放電した。第2の組の電池(電池540と542)は、17時間後に5mAで放電した。
【0179】
図21は、2層のViskaseセロハンセパレータ(SC−216)で構成された電池が、直ちに放電する場合には全容量まで放電するが、17時間の休止後には放電すると極めて短い容量しかないことを示している。1層のViskaseセロハンセパレータと1層のハイブリッド(F3T23上に架橋PVAをコーティングした)セパレータで構成された電池は、17時間の休止後でも全容量まで放電した。セパレータ材料は適切な排除値を実証できるが、ボタン電池などのバッテリのシールがアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するその能力に影響を及ぼし得ることが当業者には容易に理解されるであろう。
【0180】
すなわち、実施例4は、セロハンとハイブリッドセパレータの組み合わせが、2層のSC 216セロハンよりも可溶性の銅及び硫黄種の移動の制限においてより効果的であることを示している。
【0181】
上記で使用されたハイブリッドセパレータ層は、F3T23不織セパレータ表面上で水溶液中の2%PVAと5%のホウ酸ナトリウム溶液との架橋結合によって作られたことは理解すべきである。ハイブリッドセパレータ中のPVA装填は、約10g/m2であり、その空気透過度は、乾燥状態が1800Gurley秒であった。ハイブリッド層は、セパレータ構造体のアノードゲル側に配置された。空気透過度は、上述のGurley精密計測器テスターを使用して測定された。
【0182】
(実施例5)
これは、本発明の種々の態様のセパレータ及びカソード材料を使用して作られた電池の有用性を示す実施例である。ここで図22を参照すると、CuOとCuSを含むカソードを有する1組の電気化学電池が提供された。電池は、17時間の休止後に放電した。第1の電池は、ハイブリッドセパレータの2つの層の間に配置されたViskaseセロハンの層を含むセパレータを有していた。従ってハイブリッド層は、外側に面しており、すなわちアノードに向かう方とカソードに向かう方である。図22は、図21と同様にCuOとCuSの混合物において、セロハンセパレータとハイブリッドセパレータ(F3T23に架橋PVAをコーティングした)の組み合わせは、セロハン単独の2層よりも効果的であることを示している。
【0183】
(実施例6)
これは、本発明の1つの態様を表すのに作られた電池の有用性を示す実施例である。図23を参照すると、1組の電池は、5日後に5mAで放電した。各電池は、2層のハイブリッドセパレータ(F3T23に架橋PVAをコーティングした)を有するCuO及びCuSを含むカソードを含んでいた。電池の1つは、カソード中にPVAバインダを含有し、他方は含んでいなかった。図23は、CuO/CuSの混合物を含むカソードでは、2層のハイブリッドセパレータは、5日後でさえもアノード汚染可溶性銅及び硫黄種の移動の制限において効果的であり、これにより電池が全容量まで放電できるようになることを示している。更に、カソードに0.2重量%のPVAを添加すると、カソード容量のより良好な利用が可能になることで、電池の放電容量が拡張されることが示される。
【0184】
(実施例7)
これは、本明細書に説明されたセパレータ及びカソード材料の有用性を示す実施例である。ここで図24を参照すると、1組のサイズ357ボタン電池が提供された。カソードは、モル比が1:1のCuOとCuSの混合物で作られた。第1の電池は、1組のハイブリッド層(F3T23に架橋PVAをコーティングした)を含むセパレータを有していた。他の電池は、F3R23(Kurarayから商業的に入手可能)にコーティングされたEVAエマルジョンの1つの層を有していた。第1の電池は、5日後に5mAで放電した。第2の電池は、4日後に5mAで放電した。図24は、試験の前に更に1日経過した後でも、F3T23に架橋PVAをコーティングしたものがF3R23にEVAをコーティングしたものよりも性能が優れていることを示す。また、EVAをコーティングしたF3R23セパレータは、SC216のセロハン(実施例6)の2層で先に指摘された性能不足を示さなかったことも示されている。
【0185】
(実施例8)
これは、本発明の種々の態様に従って作られた電池のアノード汚染可溶性種の移動を制限する有効性を示す実施例である。ここで図25を参照すると、モル混合が1:1のCuO及びCuSを含有するカソードを各々が有する1組の電池が提供された。第1の電池は、Laponiteが含浸されたハイブリッドセパレータの1つの層を有していた。第2の電池は、ハイブリッド(F3T23に架橋PVAをコーティングした)の2つの層の間に挟まれたViskaseセロハンの層を有していた。第1の電池は、4日後に5mAで放電した。第2の電池は、1日後に5mAで放電した。図25は、両方のセパレータが可溶性硫黄と銅種のアノードへの移動の制限において効果的であったことを示している。
【0186】
(実施例9)
この実施例は、銅及び硫黄種のアノードを汚染する能力を低下させるためにカソード中にZnOなどの添加剤を使用する効果を示している。2つの357サイズのボタン電池は、1つのボタン電池のカソードがカソードとブレンドされた2%ZnOを含有していたことを以外は同様の方法で構成された。カソード混合物は、ジェットミル加工されたCuOと、カソードの組成が95%の活性剤、3%の黒鉛、及び2%のZnOとなるようにKS4黒鉛及びZnO添加剤が乾式ブレンドされた、受け入れられたままのCuSとの1:1のモル比で生成された。ZnO添加剤を除く電池のカソードの組成は、95%の活性剤と5%のKS4黒鉛であった。68%の篩にかけられたBIPアノードとセパレータとからなるアノードは、単一プライのM2000 PVAフィルムであった。両方の電池は、7日間周囲環境で保管した後に放電した。両方の電池は、12.5mA電流を1時間流した後に開回路休止を1日につき4回繰り返される間欠的な試験形態に曝された。以下の表5に示された結果は、2%ZnOの電池がZnOのない制御電池の場合僅か100mAh/gだったのに比べて、240mA/gの放電容量を出力したことを実証している。結果は、添加ZnOのバッテリ貯蔵寿命に対する有利な態様を実証している。
表5

【0187】
(実施例10)
図26を参照すると、この実施例は、セパレータサンプル中の自由水と結合水の相対量を特定するために使用される方法を示している。直径が0.11インチのセパレータ材料のサンプルが調製され、乾燥雰囲気条件(相対湿度<1%)で24時間試験準備された。次にサンプルは、脱イオン水に1時間浸漬され、相対湿度<1%の雰囲気下で取り出され、Kimwipeで吸い取られた。また、相対湿度<1%の雰囲気中でサンプルの皿の風袋が計られ、調製されたサンプルは、次にサンプル皿に挿入された。次いで、調製されたサンプルは、計量されて計量値が記録された。次にサンプル蓋が皿に圧着された。サンプルの容器は、直ちに液体窒素に浸漬されてサンプル中に存在するあらゆる水を凍結させた。示差走査熱量試験装置(デラウエア州キャッスルに所在のTA Instruments of New Castleから入手可能なモデルQ100)が使用されて、サンプルが評価された。システムは、1分間に2℃で傾斜し、−80℃から50℃までの温度範囲を走査するようにプログラムされた。結合水の量は、発生した熱流量曲線を評価し、−1℃よりも低い範囲にある曲線と−1℃よりも高い範囲ある部分の割合を求めることによって割り出された。材料の溶融曲線が、50%を越える溶融のエネルギー(J/g)が−1℃よりも低いことを示したときには、材料は、セパレータ中に自由水よりも多くの結合水を持つように判定された。自由水よりも多くの結合水を持つことは、材料が、アノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するためにセパレータに必要な特性を提供するのに適切である表示である。
【0188】
(実施例11)
この実施例は、PVAセパレータサンプルの相対溶融点を特定するために使用される方法を示している。直径が0.11インチのセパレータ材料のサンプルが調製され、相対湿度50%の雰囲気条件で24時間試験準備された。同様に相対湿度50%の雰囲気でサンプル皿の風袋が計られ、調製されたサンプルが、次にサンプル皿に挿入された。次に調製されたサンプルは、計量されて計量値が記録された。次いでサンプル蓋が皿に圧着された。サンプルの容器は、サンプルを評価するのに使用される示差走査熱量試験装置(デラウエア州キャッスルに所在のTA Instruments of New Castleから入手可能なモデルQ100)に入れられた。システムは、1分間に5℃で傾斜し、30℃から300℃の温度範囲を走査するようにプログラムされた。材料の溶融点は、当業者によって理解されているように、熱流量曲線(W/g)の最初の顕著なピークから求められた(図27参照)。材料の溶融曲線が215℃よりも高い溶融点を示す場合には、本明細書で説明されているように、PVA材料は、アノード汚染可溶性種の移動の効果的な制限に使用するために好適な材料であると判定される。
【0189】
(実施例12)
この実施例は、セパレータ中に保持される電解質の相対的なpH値を特定するのに使用される方法を示している。セパレータ材料のサンプルは、乾燥雰囲気条件(相対湿度<1%)で最低24時間試験準備された。サンプルは、0.0001g最近で計量された。Monosl M2000、M1000、及びM1030のPVAフィルムが、10mLの34.0%KOH中に23℃で24時間浸漬された。浸漬後にフィルムはメタノール中に浸されて、表面のKOHと水が除去され、ジクロロメタンで洗って残留溶剤が除去された。KOHを吸収したサンプルは、23℃で5分間放置することによって残留ジクロロメタンを蒸発させ、0.0001gまで重量が記録された。次にフィルムは、70℃の脱イオン水25mL中で溶解するまで蒸解された。計測の間溶液の温度と共にpHが記録された。溶液のpHと温度データを使用して標準の化学計算法により、各フィルム中に保持された電解質の23℃でのpHが計算された。試験される材料の複製物を使用し、これらをpH7の脱イオン水溶液だけに曝して対照サンプルを試験した。pH7からの変動は、対応するサンプルから補償され(加算又は減算され)、サンプルセパレータ内に保持された電解質の正規化されたpHを得た。表6は、適切な排除値を示すセパレータでは、これらのセパレータ中に保持された電解質のpH値がバルク電解質中のpH値よりも低いことを示している。
表6

標準の34−0のバルク電解質のpH値は15.5であった。
【0190】
上記のことを考慮して、本発明の幾つかの利点が達成され、他の有利な結果が得られることが分かるであろう。上記のプロセス及び複合材において本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができるので、上記の説明に含まれ、添付図面で図示された全ての事項は、例証として解釈され、限定を意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】円筒形電気化学電池の側断面図である。
【図2】ジェットミル加工CuO、34−2電解質、及び5mA放電を用いた条件下における、357ボタン電池の亜鉛に対するEMD/CuO及びCuO単独の物理的/機械的混合の動作を表すグラフを示す。
【図3】開放形半電池において5mA連続放電、28−2電解質を用いた条件下でのカソード材料対純CuOにおいて、化学合成されたCu/Mn混合酸化物の銅の割合を増加させた影響を表すグラフを示す。
【図4】開放形半電池において5mA放電を用いた条件下で化学合成されたCuO+MnO2カソードの特性を表すグラフを示す。
【図5】5mAの放電条件下で市販のMnO2(EMD)上へのCuOの機械的混合及び化学合成/沈殿の組み合わせによって、EMD/CuO遷移の平滑化動作を表すグラフを示す。
【図6】半電池対Hg/HgOの基準電極において、純CuOと種々のCuO/CuS混合物の放電動作をプロットしたグラフである。
【図7】放電電圧上でより大きな表面積を使用した影響を示すグラフである。
【図8】電流が5mAから35mAの間で漸次的ステップ状に変化した、開放形半電池中のジェットミル加工したCuO/CuSカソードの速度性能に対するCuS粒径の影響を示すグラフである。
【図9】ジェットミル加工CuO、66%BIP篩い分けされたアノード、34−2電解質及び25−0予備湿潤電解質、並びに5mA放電を用いた条件下で、(EMD)MnO2+CuOを含有する層状カソードの放電動作を表すグラフを示す。
【図10】ボタン電池の平坦カソードの電極構成の3つの実施例を示す。
【図11】円筒形電極構成の2つの実施例を示す。
【図12】篩い分けされた亜鉛合金アノード粒子の粒径分布をプロットしたグラフである。
【図13】第1の電池が低い電極濃度で篩い分けされた亜鉛を含有し、第2の電池が高い電極濃度で従来分布の亜鉛を含有する、CuOを含有する電気化学電池の電池特性をプロットしたグラフである。
【図14】電解質濃度と貯蔵時間の関数としてKOH電解質中のCuOの溶解度をプロットしたグラフである。
【図15】電解質濃度の関数としてEMDと比較したCuOの湿潤性をプロットしたグラフである。
【図16】種々のセパレータ材料を通る4時間のKOHと水の輸送をプロットしたグラフである。
【図17】超音波溶着技術を使用した、PVAフィルムの完全溶着側面シームの図である。
【図18】インパルスヒートシール装置を使用してシールされた端部を有するシームがシールされた円形セパレータ部材を示す。
【図19】チューブが挿入されることになる電池缶の底部の形状に形成された、シームがシールされ且つ底部がシールされたPVAセパレータチューブの底部を示す。
【図20】CuOカソード及び種々のセパレータを有する複数の電池の開路電圧をプロットしたグラフである。
【図21】CuO/CuSカソードと種々のセパレータ並びに組み合わせを有する電池の放電特性をプロットしたグラフである。
【図22】CuO/CuSカソードと種々のセパレータを有する一組の電池の放電特性をプロットしたグラフである。
【図23】カソード中にPVAを含む影響を図示するためのCuO/CuSカソードを有する一組の電池の放電特性をプロットしたグラフである。
【図24】CuO/CuSカソードと種々のセパレータを有する一組の電池の放電特性をプロットしたグラフである。
【図25】CuO/CuSカソードと種々のセパレータを有する一組の電池の放電特性をプロットしたグラフである。
【図26】種々のセパレータ材料の最初の水の取り込みを比較したグラフである。
【図27】種々のセパレータ材料の溶融曲線と対応する溶融点を示すグラフである。
【符号の説明】
【0192】
18 円筒形電池
20 コンテナ
21 正端子
22 コーティング
23 負端子
24 カソードリング
25 正端子
26 アノード
30 ビード
32 セパレータ
34 シールディスク
36 負側集電子
38 絶縁ワッシャ
40 接触バネ
41 負の開口端子
42 負端子キャップ
44 正端子キャップ
46 絶縁チューブ
48 スチールシェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソード活性材料を含有するカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間にあるセパレータの少なくとも1つの層と、
前記アノード及び前記カソードと流体連通して、実質的に全ての前記流体連通が前記セパレータを通るアルカリ水溶液のバルク電解質と、
を含み、
前記セパレータは、少なくとも50%の排除値を有することを特徴とする電気化学電池。
【請求項2】
前記電池は、円筒形電池であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項3】
前記電池は、平形電池であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項4】
前記カソード活性材料は、金属の酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項5】
前記金属は、マンガン、銅、ニッケル、鉄、及び銀の少なくとも1つからなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の電気化学電池。
【請求項6】
前記カソード活性材料は、二酸化マンガン、酸化銅、及びこれらの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の電気化学電池。
【請求項7】
前記カソード活性材料は、金属の硫化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項8】
前記金属は、マンガン、銅、ニッケル、鉄、及び銀のうちの少なくとも1つからなる群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の電気化学電池。
【請求項9】
前記カソード活性材料は、二酸化マンガン、硫化銅、酸化銅、水酸化銅、オキシ水酸化ニッケル、酸化銀、ヨウ素酸塩銅、ヨウ素酸塩ニッケル、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、銅−銀酸化物、銅−マンガン酸化物、及びこれらのいずれかの混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項10】
前記カソードは、前記セパレータによって前記アノードから少なくとも部分的に排除された可溶性種を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項11】
前記可溶性種は、金属種であることを特徴とする請求項10に記載の電気化学電池。
【請求項12】
前記金属種は、金属の酸化物であることを特徴とする請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項13】
前記金属種は、金属の硫化物であることを特徴とする請求項11に記載の電気化学電池。
【請求項14】
前記カソードは、銅種、硫黄種、ニッケル種、鉄種、及び銀種からなる群から選ばれる可溶性種を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項15】
前記ポリマーセパレータ材料は、ポリマー材料とその中に保持されたアルカリ水性電解質とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項16】
前記セパレータは、ポリマー主鎖と該主鎖に結合された電解質を保持する側基とを含むことを特徴とする請求項15に記載の電気化学電池。
【請求項17】
記保持電解質のpH値は、前記バルク電解質のpH値よりも低いことを特徴とする請求項16に記載の電気化学電池。
【請求項18】
前記電解質を保持する側基は、前記バルク電解質のpHに対して該保持電解質のpH値を調整することを特徴とする請求項16に記載の電気化学電池。
【請求項19】
前記電解質を保持する側基は、アルコール部分、線形側鎖、環状側鎖、及び分岐側鎖から選定され、前記側鎖は、少なくとも1つのアルコール部分を含むことを特徴とする請求項16に記載の電気化学電池。
【請求項20】
前記ポリマー主鎖は、直鎖型ポリマー主鎖と分岐ポリマー主鎖から選定されることを特徴とする請求項16に記載の電気化学電池。
【請求項21】
前記ポリマーセパレータ材料は、ポリビニールアルコール、ポリエチルビニールアルコール、及びセロハンからなる群から選ばれるポリマーであることを特徴とする請求項15に記載の電気化学電池。
【請求項22】
前記セパレータ材料内に保持された水は、示差走査熱量試験において0℃よりも低い温度で溶融することを特徴とする請求項21に記載の電気化学電池。
【請求項23】
前記セパレータ材料内に保持された水の少なくとも約50%は、前記ポリマーセパレータ材料に結合されることを特徴とする請求項22に記載の電気化学電池。
【請求項24】
前記セパレータは、約10ミクロンから約250ミクロンの間の乾燥断面厚さを有することを特徴とする請求項22に記載の電気化学電池。
【請求項25】
前記セパレータ材料は、フィルムであることを特徴とする請求項15に記載の電気化学電池。
【請求項26】
前記セパレータ材料は、フィルムに結合された不織布であることを特徴とする請求項15に記載の電気化学電池。
【請求項27】
前記セパレータ材料は、重量比で約15%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項25に記載の電気化学電池。
【請求項28】
前記セパレータ材料は、重量比で約10%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項25に記載の電気化学電池。
【請求項29】
前記セパレータ材料は、重量比で約5%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項25に記載の電気化学電池。
【請求項30】
前記セパレータ材料は、重量比で約3%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項25に記載の電気化学電池。
【請求項31】
前記セパレータ材料は、重量比で約1%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項25に記載の電気化学電池。
【請求項32】
前記セパレータは、不織布を更に含むことを特徴とする請求項25に記載の電気化学電池。
【請求項33】
前記不織布は、フィルムに結合されることを特徴とする請求項32に記載の電気化学電池。
【請求項34】
前記不織布は、フィルムに積層されることを特徴とする請求項32に記載の電気化学電池。
【請求項35】
前記不織布は、フィルムに貼着されることを特徴とする請求項32に記載の電気化学電池。
【請求項36】
前記フィルムは、前記不織布の少なくとも一部分上に形成されることを特徴とする請求項32に記載の電気化学電池。
【請求項37】
前記バルク電解質及び前記保持電解質は、水酸化カリウムを含むことを特徴とする請求項15に記載の電気化学電池。
【請求項38】
前記保持電解質のpH値は、前記バルク電解質のpH値よりも0.5から3pH単位だけ低いことを特徴とする請求項15に記載の電気化学電池。
【請求項39】
前記セパレータは、少なくとも75%の排除値を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項40】
前記セパレータは、少なくとも80%の排除値を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項41】
前記セパレータは、少なくとも90%の排除値を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項42】
前記セパレータは、少なくとも95%の排除値を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項43】
前記セパレータは、少なくとも97%の排除値を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項44】
前記セパレータは、少なくとも99%の排除値を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項45】
前記カソードと前記アノードとの間のバルク電解質の前記セパレータを通る以外の流体連通を阻止するセパレータシールを更に含むことを特徴とする電気化学電池。
【請求項46】
前記セパレータシールの少なくとも一部分は、ヒートシール又は溶着シールであることを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項47】
前記セパレータシールの少なくとも一部分は、接着シールであることを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項48】
前記セパレータは、活性状態で水及び水酸化イオンを輸送することを特徴とする請求項45に記載の電気化学電池。
【請求項49】
前記セパレータは、可溶性電解質種に対して水及び水酸化イオンの拡散を優先的に可能にすることを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項50】
前記カソード活性材料は電圧を有し、前記カソードは更に、前記活性材料の電圧よりも低い電圧を有する添加剤を含み、前記活性材料と前記添加剤の組み合わせは、前記活性材料又は前記添加剤の単独の電圧よりも高い電圧を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項51】
前記添加剤は、元素状態の硫黄、セレニウム、テルル、及びこれらの化合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項50に記載の電気化学電池。
【請求項52】
前記添加剤は、銅硫化物を含むことを特徴とする請求項51に記載の電気化学電池。
【請求項53】
前記カソードは更に、銅酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学電池。
【請求項54】
アノード活性材料を含むアノードと、
カソード活性材料と少なくとも1つのアノード汚染可溶性種とを含むカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間にあるセパレータの少なくとも1つの層と、
前記アノード及び前記カソードと流体連通したアルカリ水溶液のバルク電解質と、
を含み、
前記流体連通の実質的に全てが前記セパレータを通り、前記セパレータは、前記カソードから前記セパレータを通って前記アノードへの前記少なくとも1つのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限するように適合されていることを特徴とする電気化学電池。
【請求項55】
前記カソード活性材料は、ヨウ素酸塩、Ag2Cu24、及びAg2Cu23からなる群から選ばれることを特徴とする請求項54に記載の電気化学電池。
【請求項56】
前記セパレータは、主鎖を有する直鎖ポリマーと、前記主鎖に結合された電解質保持アルコール側基とを含み、前記保持されたアルカリ水性電解質のpH値は、前記バルク電解質のpH値よりも高いことを特徴とする請求項54に記載の電気化学電池。
【請求項57】
前記ポリマーは、ポリビニールアルコールであることを特徴とする請求項56に記載の電気化学電池。
【請求項58】
前記セパレータは、重量比で約15%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項57に記載の電気化学電池。
【請求項59】
前記セパレータは、重量比で約10%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項57に記載の電気化学電池。
【請求項60】
前記セパレータは、重量比で約5%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項57に記載の電気化学電池。
【請求項61】
前記セパレータは、重量比で約3%以下の可塑剤を含むことを特徴とする請求項56に記載の電気化学電池。
【請求項62】
前記セパレータ上に溶着シール又はヒートシールを更に含むことを特徴とする請求項56に記載の電気化学電池。
【請求項63】
前記カソード活性材料は、銅酸化物を含むことを特徴とする請求項54に記載の電気化学電池。
【請求項64】
アノード、カソード、これらの間に位置するセパレータ、前記アノード及び前記カソードと流体連通するバルクアルカリ水性電解質、及び前記カソード内の可溶性種を含む長円の円筒形電気化学電池において、
前記セパレータは、前記カソードから前記セパレータを通って前記アノードへのアノード汚染可溶性種の移動を効果的に制限し、実質的に全ての流体連通は、前記セパレータを通るようにする改良を含むことを特徴とする電気化学電池。
【請求項65】
前記セパレータは、主鎖を有するポリマーと、前記主鎖に結合された電解液保持側基とを含み、前記保持電解質のpH値は、前記バルク電解質のpH値よりも低いことを特徴とする請求項64に記載の電気化学電池。
【請求項66】
前記セパレータは、シールを含むことを特徴とする請求項64に記載の電気化学電池。
【請求項67】
前記シールの少なくとも一部分は、ヒートシール又は溶着シールであることを特徴とする請求項66に記載の電気化学電池。
【請求項68】
前記シールの少なくとも一部分は、接着シールであることを特徴とする請求項66に記載の電気化学電池。
【請求項69】
亜鉛アノードと、
銅酸化物とCuSとを含有するカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に位置するセパレータと、
前記アノード及び前記カソードと流体連通しているアルカリ水性電解質と、を含み、
前記セパレータは、(i)ポリビニールアルコール・フィルムを含み、(ii)可溶性銅種及び可溶性硫黄種が前記アノードへ移動するのを効果的に制限するように構成されていることを特徴とする電気化学電池。
【請求項70】
前記セパレータ内に位置する前記電解質のpH値は、前記アノード及び前記カソード中に位置している電解質のpH値よりも低いことを特徴とする請求項69に記載の電気化学電池。
【請求項71】
実質的に全ての流体連通は、前記セパレータを通ることを特徴とする請求項69に記載の電気化学電池。
【請求項72】
電気化学電池で使用するのに好適なセパレータであって、
相対する側部を有するポリマーフィルムを含み、前記ポリマーフィルムが、前記ポリマーフィルムの一方の側部から他方の側部への可溶性銅種の移動を効果的に制限する能力を有することを特徴とするセパレータ。
【請求項73】
電気化学電池で使用するのに好適なセパレータであって、
相対する側部を有するポリマーフィルムを含み、前記ポリマーフィルムが、前記ポリマーの一方の側部から他方の側部への可溶性硫黄種の移動を効果的に制限する能力を有することを特徴とするセパレータ。
【請求項74】
電気化学電池で使用するのに好適なセパレータであって、
相対する側部を有するポリマーフィルムを含み、前記ポリマーフィルムが、前記ポリマーの一方の側部から他方の側部への可溶性銅種、可溶性銀種、及び可溶性硫黄種の移動を効果的に制限する能力を有することを特徴とするセパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2007−502007(P2007−502007A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523304(P2006−523304)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/025894
【国際公開番号】WO2005/015662
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506044720)ロヴカル インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】