説明

アレルゲン除去用粒子および該粒子を付与してなるアレルゲン除去用製品

【課題】近年、アレルゲンの除去に対するニーズが高まってきており、アレルゲン除去材の開発が進められている。一方、従来からカルボキシル基および架橋構造を有するビニル系重合体粒子については検討が進められてきており、高吸放湿性やpH緩衝性などの機能を発現させることができることなどが知られている。しかし、かかる重合体粒子について、アレルゲンを除去する機能があることは全く知られていなかった。本発明の目的はアレルゲン除去機能を有する粒子および該粒子を含有するアレルゲン除去用製品を提供することにある。
【解決手段】0.5〜12mmol/gのH型カルボキシル基および架橋構造を有するビニル系重合体からなるアレルゲン除去用粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアレルゲン除去機能を有する粒子および該粒子を付与して得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのアレルギー性疾患が増加傾向にあり、これら疾患の原因が花粉やダニ等から発生するアレルゲンであることが一般にも知られるようになってきている。このためアレルゲンの除去に対するニーズが高まってきており、アレルゲン除去材の開発が進められている。
【0003】
一方、従来からカルボキシル基および架橋構造を有するビニル系重合体粒子については検討が進められてきており、高吸放湿性(特許文献1)やpH緩衝性(特許文献2)などの機能を発現させることができることなどが知られている。しかし、かかる重合体粒子について、アレルゲンを除去する機能があることは全く知られていなかった。
【特許文献1】特開2001−11320号公報
【特許文献2】特開平10−237126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した現状に鑑みて創案されたものであり、その目的はアレルゲン除去機能を有する粒子および該粒子を含有するアレルゲン除去用製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、高吸放湿性、pH緩衝性などの機能を有することが知られているカルボキシル基および架橋構造を有するビニル系重合体粒子がアレルゲンを除去する機能を有することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1)0.5〜12mmol/gのH型カルボキシル基および架橋構造を有するビニル系重合体からなるアレルゲン除去用粒子。
(2)ビニル系重合体が、共重合成分としてビニル基を2以上有する化合物を用いて共重合することにより架橋構造を導入されたものであることを特徴とする(1)に記載のアレルゲン除去用粒子。
(3)ビニル系重合体が、共重合成分としてニトリル基を有する単量体を共重合し、該ニトリル基と1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物を反応させることにより架橋構造を導入されたものであることを特徴とする(1)に記載のアレルゲン除去用粒子。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のアレルゲン除去用粒子を固着させたことを特徴とするアレルゲン除去用製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアレルゲン除去用粒子は、花粉やダニなどから発生するアレルゲンを効率よく除去することができる。また、乾燥粉末状、水分散エマルジョン状、有機溶媒分散体状などの形態を取れるため、さまざまな用途、分野の製品に容易に適用でき、アレルゲン除去機能を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のアレルゲン除去用粒子はビニル系重合体からなるものであるが、該ビニル系重合体はH型カルボキシル基および架橋構造を有していることが必要である。本発明において、H型カルボキシル基はアレルゲンを除去する機能を発現させる要因となっていると考えられる。カルボキシル基の型としては、H型であることが重要であるが、金属塩型カルボキシル基が共存していてもよい。また、架橋構造は、カルボキシル基による重合体の親水性を抑制するのに有効である。重合体の親水性が高まれば、吸水して膨潤したり、溶出したりして形状を維持できなくなり、用途展開するうえで大きな支障となりうる。
【0009】
ビニル系重合体へのH型カルボキシル基の導入の方法としては、特に限定は無く、例えばH型カルボキシル基を有する単量体を単独重合又は共重合可能な他の単量体と共重合することによって重合体を得る方法、化学変性によりH型カルボキシル基を導入する方法、あるいはグラフト重合によりH型カルボキシル基を導入する方法等が挙げられる。
【0010】
H型カルボキシル基を有する単量体を重合してH型カルボキシル基を導入する方法としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボキシル基を含有するビニル系単量体の単独重合、あるいは2種以上の該単量体からなる共重合、あるいは、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合により、共重合体を得る方法が挙げられる。
【0011】
化学変性によりH型カルボキシル基を導入する方法としては、例えば化学変性処理すればカルボキシル基を得られるような官能基を有する単量体よりなる重合体を得た後に、加水分解によって塩型またはH型カルボキシル基に変性し、塩型カルボキシル基の場合にはイオン交換樹脂等でH型カルボキシル基に変換する方法が挙げられる。このような方法をとることのできる単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等の誘導体などが挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ノルマルプロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等のエステル化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水物、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、モノエチル(メタ)アクリルアミド、ノルマル−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物等が例示できる。
【0012】
このほかにも、二重結合、ハロゲン基、水酸基、アルデヒド基等の酸化可能な極性基を有する重合体に酸化反応によりH型カルボキシル基を導入する方法も用いることができる。この酸化反応については、通常用いられる酸化反応を用いることができる。
【0013】
上述のようにしてビニル系重合体にH型カルボキシル基を導入することができるが、該ビニル系重合体においては上記の単量体だけでなく、これらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のビニリデン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびこれらの塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メチルイソブテニルケトン、メチルイソプロペニルケトン等の不飽和ケトン類;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ジクロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、モノフルオロ酢酸ビニル、ジフルオロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリルアミドおよびそのアルキル置換体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート、ビニルステアリン酸、ビニルスルフィン酸等のビニル基含有酸化合物、またはその塩、その無水物、その誘導体等;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンおよびそのアルキルまたはハロゲン置換体;アリルアルコールおよびそのエステルまたはエーテル類;N一ビニルフタルイミド、N一ビニルサクシノイミド等のビニルイミド類;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N一ビニルピロリドン、N一ビニルカルバゾール、ビニルピリジン類等の塩基性ビニル化合物;アクロレイン、メタクリロレイン等の不飽和アルデヒド類;グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができる。
【0014】
導入するH型カルボキシル基の量としては、実用上効果があるレベルとするため、アレルゲン除去用粒子に対して、0.5mmol/g以上、好ましくは1mmol/g以上とするのが望ましい。一方、粒子の膨潤や形状維持の観点から、H型カルボキシル基量は12mmol/g以下、好ましくは10mmol/g以下であることが望ましい。
【0015】
また、本発明に採用する架橋構造は特に限定はなく、共有結合による架橋、イオン架橋、ポリマー分子間相互作用または結晶構造による架橋等いずれの構造のものでもよい。架橋構造を導入する量としては、上述したH型カルボキシル基量および最終的に得られるアレルゲン除去用粒子に必要なその他の特性を勘案して決定すればよい。すなわち、高いアレルゲン除去性能が必要であれば、架橋構造を少なくし、できるだけ多くのH型カルボキシル基を導入することが望ましいし、形態安定性が求められるならば、架橋構造を多くすることが望ましい。
【0016】
また、架橋構造を導入する方法においても、特に限定はなく、骨格となる重合体の重合段階における架橋性単量体による架橋、重合体を得た後での後架橋、物理的なエネルギーによる架橋構造の導入など、一般に用いられる方法によることができる。特に、骨格となる重合体の重合段階で架橋性単量体を用いる方法、および重合体を得た後の後架橋による方法では、共有結合による強固な架橋を導入することが可能である。
【0017】
例えば、架橋性単量体を用いる方法では、既述の架橋性ビニル化合物を、カルボキシル基を有する、あるいはカルボキシル基に変性できる官能基を有する単量体と共重合することにより共有結合に基づく架橋構造を導入することができる。なお、カルボキシル基に変性できる官能基を有する単量体を採用する場合には、架橋構造導入後に加水分解処理などによってカルボキシル基への変性を行うことになるので、かかる処理において損なわれることのない架橋構造を導入できる架橋性単量体を採用することが望ましい。
【0018】
このような方法により導入される架橋構造としては、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物により誘導されたものを挙げることができ、なかでもトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミドによる架橋構造は、カルボキシル基を導入するための加水分解等の際にも化学的に安定であるので望ましい。
【0019】
具体的な例としては、架橋性単量体としてジビニルベンゼン、カルボキシル基に変性できる官能基を有する単量体としてアクリロニトリルを採用する例が挙げられる。共重合組成については、最終的に得られるアレルゲン除去用粒子に求められるアレルゲン除去性能、すなわち、上述したH型カルボキシル基量や形態安定性等を考慮して、適宜設定すればよく、例えば、ジビニルベンゼンを10重量%以上、アクリロニトリルを50重量%以上使用する例が挙げられる。
【0020】
また、後架橋による方法としても特に限定はなく、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーを共重合させたニトリル系重合体の含有するニトリル基と、ヒドラジン系化合物またはホルムアルデヒドを反応させる後架橋法を挙げることができる。なかでもヒドラジン系化合物による方法は酸、アルカリに対しても安定であり、好ましく採用できる。なお、該方法により得られる架橋構造に関しては、その詳細は同定されていないが、トリアゾール環あるいはテトラゾール環構造に基づくものと推定されている。
【0021】
ここでいうニトリル基を有するビニルモノマーとしては、ニトリル基を有する限りにおいては特に限定はなく、具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。なかでも、コスト的に有利であり、また、単位重量あたりのニトリル基量が多いアクリロニトリルが最も好ましい。
【0022】
後架橋による方法の具体的な例としては、アクリロニトリル系重合体とヒドラジン系化合物との反応により架橋構造を導入する例が挙げられる。かかる例においては、アクリロニトリル系重合体の共重合組成については、最終的に得られるアレルゲン除去用粒子に求められるアレルゲン除去性能、すなわち、上述したH型カルボキシル基量や形態安定性等を考慮して、適宜設定すればよいが、アクリロニトリル50重量%以上を採用することが望ましい。また、架橋構造の導入量に関わるヒドラジン系化合物との反応条件については、アクリロニトリル系重合体をヒドラジン系化合物濃度が5〜60重量%の水溶液中で、50〜150℃、5時間以内で処理する条件などを挙げることができる。
【0023】
なお、ここに使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネイト等のヒドラジンの塩類、およびエチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のヒドラジン誘導体を例示することができる。
【0024】
次に、加水分解反応によりH型カルボキシル基を導入する方法については、既知の加水分解条件を利用することができる。例えば、上述のようにして得られた架橋構造を有するニトリル系重合体に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物やアンモニア等の塩基性水溶液、或いは硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸または、蟻酸、酢酸等の有機酸を添加し、加熱処理する手段等が挙げられる。なお、前記の架橋導入と同時に加水分解反応を行うこともできる。
【0025】
また、本発明のアレルゲン除去用粒子の形態は、乾燥粉末状、水分散エマルジョン状、有機溶媒分散状など用途に応じて任意に選定できる。粒子径が5μm以下の場合、取り扱いおよび安定性の点から、水に分散したエマルジョン状のものが有利である。
【0026】
本発明において採用する重合方法としては、特に限定はないが、懸濁重合や乳化重合などを挙げることができる。上述したアクリロニトリルを用いたニトリル系重合体の場合、重合体自体の凝集力が強いため乳化重合が難しい場合があるが、重合温度100℃以上の高温高圧下での乳化重合を行うことにより良好なエマルジョンを得ることができる。
【0027】
また、本発明のアレルゲン除去用粒子は、これをさまざまな製品に含有させることにより、その用途がより広範となる。例えば、紙、不織布、織物、編み物、シート、発泡体などに含有させた場合、気体との接触面積が大きく、かつ形態保持性が優れていることより、アレルゲン除去用製品として有用なものが得られる。
【0028】
本発明のアレルゲン除去用粒子を含有させる方法としては、特に制限はなく、さまざまな方法を採用することができる。例えば、該粒子を紙、不織布、織物、編み物、シート、発泡体等に対して、製造過程で混入する方法やバインダーとともに塗布する方法が挙げられ、エマルジョン状であれば、そのまま含浸、塗布する方法も可能である。
【0029】
上記バインダーとして使用できるものとしては特に限定はされず、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリメタクリレート樹脂系、ポリビニルアルコール系バインダー等を例示することができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例中、部及び百分率は特に断りのない限り重量基準で示す。
【0031】
<アレルゲン除去性能の評価(1):ダニアレルゲン不活化率>
精製ダニ抗原Der fII(生化学工業社製)10ngを含むリン酸緩衝液200μL中に測定試料を加えたもの、および、コントロールとして測定試料を加えないものを30℃×24時間処理し、これらの上澄み液について酵素免疫測定法(ELISA)でダニアレルゲン量を測定した。
【0032】
具体的には、まず、一次抗体のモノクローナル抗体15E11(生化学工業(株)製)をマイクロプレートの各ウェルに50μLずつ分注して室温で3時間静置させた後、プレートをPBS−T(PBS(リン酸緩衝生理食塩水、0.01mol/l、pH7.2〜7.4)の0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(和光純薬(株)製、Tween20相当品)溶液)で3回洗浄した。続いて、1%BSA(ナカライテスク(株)製、ウシ血清アルブミン(F−V)、pH5.2)を含むPBS−Tを各ウェルに300μLずつ分注し、4℃で12時間静置させた後、PBS−Tで3回洗浄した。次に、上述の上澄み液を各ウェルに50μLずつ分注し、室温で2時間静置させた後、PBS−Tで3回洗浄した。続いて二次抗体のペルオキシターゼ標識したモノクローナル抗体13A4(生化学工業(株)製)を各ウェルに50μLずつ分注し、室温で2時間静置させた後、PBS−Tで4回洗浄した。次にTMB試薬(フナコシ(株)製)を各ウェルに100μLずつ分注し、5分間反応させた。その後1Mの塩酸を各ウェルに100μLずつ分注し、反応を停止させてマイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories Inc 製)で吸光度(測定波長490nm)を測定した。得られた測定値から検量線を用いて上澄み液中のダニアレルゲン濃度を求め、不活化率を次式により算出した。

不活化率(%)={1−(A/B)}×100
(A=試料を加えた場合のアレルゲン濃度、B=コントロールのアレルゲン濃度)

【0033】
<アレルゲン除去性能の評価(2):スギ花粉アレルゲン不活化率>
上記のアレルゲン除去性能の評価(1)において、精製ダニ抗原Der fII(生化学工業社製)10ngに代えて、精製スギ花粉抗原Cry J1(生化学工業社製)20ngを用いたこと、並びに、一次抗体としてモノクローナル抗体013(生化学工業社製)、二次抗体としてペルオキシターゼ標識したモノクローナル抗体053(生化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして測定を行い、スギアレルゲン不活化率を求めた。なお、実用上有効なアレルゲン除去効果を得るためには、上記アレルゲン除去性能の評価のおいて、少なくともダニアレルゲンまたはスギ花粉アレルゲンのいずれかに対して不活化率30%以上を有することが望ましい。
【0034】
<H型カルボキシル基量の測定>
純水100mlに固形分(C[%])のエマルジョン状のアレルゲン除去用粒子(D[g])を加え、スターラーで攪拌しながら0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(E[ml])を求め、次式によってカルボキシル基量を算出した。

H型カルボキシル基量[mmol/g]=0.1×E/(D×C×0.01)

【0035】
<実施例1〜3>
アクリロニトリル58%、アクリル酸メチル9%、ジビニルベンゼン30%、及びp−スチレンスルホン酸ナトリウム3%からなるモノマー混合物30部を、モノマー比で1.2%の過硫酸アンモニウムを含む水溶液70部に添加し、攪拌機つきの重合槽に仕込んだ後に135℃、25分間重合した。得られた重合体エマルジョン90部に40%水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、95℃で加水分解を行った。この時の反応時間を表1のように調整することでアレルゲン除去用粒子のカルボキシル基量を調整した。得られたエマルジョンを陽イオン交換樹脂によりpH2.5に調整することでカルボキシル基をH型とし、エマルジョン状のアレルゲン除去用粒子を得た。このエマルジョンを120℃の乾燥機で3時間乾燥させて得られたアレルゲン除去用粒子10mgを用いてアレルゲン除去性能を評価した結果を表1に示す。
【0036】
<比較例1>
アクリロニトリル58%、アクリル酸メチル9%、ジビニルベンゼン30%、及びp−スチレンスルホン酸ナトリウム3%からなるモノマー混合物30部を、モノマー比で1.2%の過硫酸アンモニウムを含む水溶液70部に添加し、攪拌機つきの重合槽に仕込んだ後に135℃、25分間重合した。得られた重合体エマルジョンを120℃の乾燥機で3時間乾燥させて得られた粒子10mgを用いてアレルゲン除去性能を評価した結果を表1に示す。
【0037】
<比較例2>
アクリロニトリル58%、アクリル酸メチル9%、ジビニルベンゼン30%、及びp−スチレンスルホン酸ナトリウム3%からなるモノマー混合物30部を、モノマー比で1.2%の過硫酸アンモニウムを含む水溶液70部に添加し、攪拌機つきの重合槽に仕込んだ後に135℃、25分間重合した。得られた重合体エマルジョン90部に40%水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、95℃で8時間加水分解を行った。得られたエマルジョンを陽イオン交換樹脂によりpH9に調整して、残留水酸化ナトリウムを除去し、カルボキシル基の大部分がNa型であるエマルジョン状の粒子を得た。このエマルジョンを120℃の乾燥機で3時間乾燥させて得られた粒子10mgを用いてダニアレルゲン除去性能を評価した結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例1〜3においては、良好なダニアレルゲン除去性能が発現された。比較例1ではカルボキシル基を有しておらず、低いダニアレルゲン不活化率となった。また、比較例2ではH型カルボキシル基は存在するが少量であり、大部分がNa型カルボキシル基であるため、低いダニアレルゲン不活化率となった。また、実施例3および比較例2については、スギ花粉アレルゲン除去性能も評価した。実施例3では不活化率95%、比較例2では不活化率20%未満となり、ダニアレルゲンの場合と同様の傾向となった。
【0040】
<実施例4>
実施例3で得たエマルジョン状のアレルゲン除去用粒子(固形分10%)90部にバインダーとしてエピオールG−100(日本油脂製)10部を混ぜたものをアレルゲン除去用粒子量が16g/mとなるように濾紙(アドバンテック東洋(株)製、定性濾紙No.101)に塗布し、アレルゲン除去紙を作製した。該アレルゲン除去紙を4cmに切断してダニアレルゲン除去性能を評価した結果を表2に示す。
【0041】
<実施例5>
実施例3で得たエマルジョン状のアレルゲン除去用粒子(固形分10%)90部にバインダーとしてCarbodilite V−02(日清紡績製)10部を混ぜたものをアレルゲン除去用粒子量が14g/mとなるように濾紙(アドバンテック東洋(株)製、定性濾紙No.101)に塗布し、アレルゲン除去紙を作製した。該アレルゲン除去紙を4cmに切断してダニアレルゲン除去性能を評価した結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例4および5においては、良好なアレルゲン除去性能が発現された。このように、本発明のアレルゲン除去用粒子はバインダーと混ぜた状態でもアレルゲン除去性能を発現することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜12mmol/gのH型カルボキシル基および架橋構造を有するビニル系重合体からなるアレルゲン除去用粒子。
【請求項2】
ビニル系重合体が、共重合成分としてビニル基を2以上有する化合物を用いて共重合することにより架橋構造を導入されたものであることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン除去用粒子。
【請求項3】
ビニル系重合体が、共重合成分としてニトリル基を有する単量体を共重合し、該ニトリル基と1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物を反応させることにより架橋構造を導入されたものであることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン除去用粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のアレルゲン除去用粒子を樹脂により固着させたことを特徴とするアレルゲン除去性能を有する製品。

【公開番号】特開2009−160563(P2009−160563A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23945(P2008−23945)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【Fターム(参考)】