説明

イオン発生装置およびイオン発生装置を有する画像形成装置

【課題】オゾン発生量を大幅に抑制することのできるイオン発生装置およびイオン発生装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】誘電体4の一方の面に形成された2つの放電電極2は、それぞれ櫛歯状突起部2aが形成されている。誘導電極3は、放電電極2側から誘電体4側へ投影したときに、2つの放電電極2と重なることなく、かつ2つの放電電極2の櫛歯状突起部2aを取り囲むように形成されている。放電電極2の櫛歯状突起部2aから放出される沿面ストリーマコロナの進展を抑制し、オゾンの発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン発生装置およびこのイオン発生装置を有する複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の記録装置の中でも電子写真記録装置は、ノンインパクト記録方式であるため、(1)騒音が少ないこと、(2)文字が綺麗に記録できること、(3)記録速度が高速であること、(4)ランニングコストが比較的安いこと、などの特長をもっている。
【0003】
そのため、電子写真記録装置は、最近では複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像記録装置、カラー画像記録装置などの画像形成装置として利用されており、市場も急速に拡大している。この電子写真記録装置においては、感光体等の帯電、除電を行う帯電装置、転写装置および除電装置としてイオン発生装置が用いられている。また、このイオン発生装置は、IC基板除電器、イオンフロー記録用イオンヘッド等でも用いられる。
【0004】
このようなイオン発生装置には、感光体等に接触してその帯電または除電等を行う接触方式と、感光体等の帯電または除電等を非接触で行う非接触方式とがある。
【0005】
非接触方式は、接触方式に比べて優位な点としては、帯電音、帯電むらによる縞や感光体等の汚染がないという点である。この非接触方式としては、ワイヤを用いたコロナ放電方式(コロトロン、スコロトロン等)が広く用いられている。
【0006】
しかし、コロナ放電方式はコロナワイヤを1cm程度離したアルミニウムなどのケースで覆っているため、装置の小型化を考える場合には、その大きさが問題となる。特に電子写真記録方式のカラー化を考えた場合には、2cm角程度の大きさのスペースが必要となり、電子写真記録装置などに用いた場合には装置の小型化を著しく妨げることになる。
【0007】
このようなコロナ放電方式に対し、誘電体と、この誘電体を挟む誘導電極およびイオン発生電極とを有し、この誘導電極およびイオン発生電極の間に正弦波の交流電圧を印加することにより、イオン発生電極周辺に放電を起こしてイオンを発生する固体イオン発生装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0008】
また、誘電体を介して放電電極と誘導電極とを対向して配置し、放電電極と基準電位との間に直流バイアス電圧を印加し、放電電極と誘導電極との間に駆動用交流電圧を印加して基準電位側の放電電極からコロナイオンを放出させるよう構成したイオン発生装置が知られている(例えば特許文献2参照)。このイオン発生装置では、コロナ放電方式に比べ小型で、しかもオゾン発生量の低減が図れるとされている。
【特許文献1】特許第1634794号公報
【特許文献2】特開2002―237368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年の社会動向として、環境意識の向上がある。例えば、UL規格(アメリカ保険業者安全試験所規格)、TUV規格(ドイツ技術検査協会規格)、BAM規格など、多数の国、地域で複数の団体により電子写真方式の画像形成装置に対して、発生するオゾン量を規制するための規格が設定されている。
【0010】
しかしながら、従来の複写機やプリンタなどの画像形成装置では、イオン発生装置においてオゾン除去のために活性炭を塗布したオゾンフィルタなどを使用して、オゾン量(オゾン濃度)の基準を満たすようにしているものの、イオン発生装置の能力のみでクリアすることは困難であった。
【0011】
また、上記(特許文献1)に記載されている固体イオン発生装置では、装置を小型化できるなどの利点はあるものの、期待するほどオゾンなどの有害物質の低減を図ることができないという問題があった。
【0012】
さらに、上記(特許文献2)に記載されているイオン発生装置によればオゾン発生量を抑制することができるものの、健康に対する影響の観点からは、より一層のオゾン発生量の抑制が望まれている。さらには、臭いとして人間が感知できるオゾン濃度は0.02ppmであるので、より一層のオゾン発生量の抑制が望まれている。
【0013】
そこで、本発明は、オゾン発生量を大幅に抑制することのできるイオン発生装置およびイオン発生装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するために、本発明のイオン発生装置は、誘電体と、該誘電体の一方の面に形成された誘導電極と、誘電体の他方の面に形成された放電電極とを備え、誘導電極と放電電極との間に交番電圧を印加することにより、放電電極近傍に放電に伴って荷電粒子を生成するイオン発生装置であって、放電電極は、櫛歯状または複数の山歯状の突起部が形成され、誘導電極は、放電電極側から誘電体側へ投影したときに、放電電極と重なることなく、放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部を取り囲むように形成されている構成としたものである。
【0015】
本発明の好ましい形態において、誘導電極は、放電電極側から誘電体側へ投影したときの投影面の内側に配置され、放電電極は、当該櫛歯状または複数の山歯状の突起部が投影面の内側に向いて配置されている。
【0016】
本発明のさらに好ましい形態において、放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部の長さは、当該突起部の幅の最大値よりも長く設定されている。
【0017】
また、この課題を解決するために、本発明のイオン発生装置は、誘電体と、該誘電体の一方の面に形成された誘導電極と、誘電体の他方の面に形成された放電電極とを備え、誘導電極と放電電極との間に交番電圧を印加することにより、放電電極近傍に放電に伴って荷電粒子を生成するイオン発生装置であって、放電電極側から誘電体側へ投影したときに、誘電電極と放電電極とが並行して、かつ誘導電極は放電電極と重なることなく配置され、放電電極側から誘電体側へ投影したときの投影面における、誘電電極および放電電極の並行する方向の単位長さあたりの面積に関し、誘電電極の面積は放電電極の面積よりも広く設定されている構成としたものである。
【0018】
本発明の好ましい形態において、誘導電極の面積は、放電電極の面積の約5倍以内である。
【0019】
本発明のさらに好ましい形態において、誘電体は、誘導電極が形成されている面が絶縁体で覆われている。
【0020】
本発明のさらに好ましい形態において、誘電体における放電電極が形成されている面および放電電極の表面が無機質のコーティング剤でコーティングされている。
【0021】
本発明のさらに好ましい形態において、誘電体は、偏平なマイカ鱗片を集成した集成マイカに接着剤を含浸させて半硬化したシートを積層して硬化した集成マイカ板である。
【0022】
さらに、この課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段とを有し、帯電手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有している構成としたものである。
【0023】
さらに、この課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段とを有し、転写手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有している構成としたものである。
【0024】
さらに、この課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段と、転写手段による転写が終了した後に、感光体に対する除電を行う除電手段とを有し、除電手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有している構成としたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、放電効率を低下させることなく、オゾンを多く生成する沿面ストリーマコロナの進展を防止することにより、オゾン発生量を大幅に抑制することができるという有効な効果が得られる。
【0026】
また、本発明によれば、放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部から放出される沿面ストリーマコロナの放出方向が内側になるようにして、沿面ストリーマコロナが外に広がることを防止することにより、オゾン発生量を更に抑制することができるという有効な効果が得られる。
【0027】
さらに、本発明によれば、沿面ストリーマコロナの進展を抑制する効果を増大させて、オゾン発生量を大幅に抑制することができるという有効な効果が得られる。
【0028】
さらに、本発明によれば、放電領域における沿面ストリーマコロナの割合を減少させることにより、コロナイオン生成量に対するオゾン発生量を相対的に減少させることができるという有効な効果が得られる。
【0029】
さらに、本発明によれば、画像生成のときに発生するオゾンの発生量を大幅に抑制することができるという有効な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の請求項1に記載の発明は、誘電体と、該誘電体の一方の面に形成された誘導電極と、誘電体の他方の面に形成された放電電極とを備え、誘導電極と放電電極との間に交番電圧を印加することにより、放電電極近傍に沿面放電に伴って荷電粒子を生成するイオ
ン発生装置であって、放電電極は、櫛歯状または複数の山歯状の突起部が形成され、誘導電極は、放電電極側から誘電体側へ投影したときに、放電電極と重なることなく、放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部を取り囲むように形成されているイオン発生装置であり、放電効率を低下させることなく、オゾンを多く生成する沿面ストリーマコロナの進展を防止することにより、オゾン発生量を大幅に抑制することができるという作用を有する。
【0031】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、誘導電極は、放電電極側から誘電体側へ投影したときの投影面の内側に配置され、放電電極は、当該櫛歯状または複数の山歯状の突起部が投影面の内側に向いて配置されているイオン発生装置であり、放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部から放出される沿面ストリーマコロナの放出方向が内側になるようにして、沿面ストリーマコロナが外に広がることを防止することにより、オゾン発生量を更に抑制することができるという作用を有する。
【0032】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部の長さは、当該突起部の幅の最大値よりも長く設定されているイオン発生装置であり、沿面ストリーマコロナの進展を抑制する効果を増大させて、オゾン発生量を大幅に抑制することができるという作用を有する。
【0033】
本発明の請求項4に記載の発明は、誘電体と、該誘電体の一方の面に形成された誘導電極と、誘電体の他方の面に形成された放電電極とを備え、誘導電極と放電電極との間に交番電圧を印加することにより、放電電極近傍に沿面放電に伴って荷電粒子を生成するイオン発生装置であって、放電電極側から誘電体側へ投影したときに、誘電電極と放電電極とが並行して、かつ誘導電極は放電電極と重なることなく配置され、放電電極側から誘電体側へ投影したときの投影面における、誘電電極および放電電極の並行する方向の単位長さあたりの面積に関し、誘電電極の面積は放電電極の面積よりも広く設定されているイオン発生装置であり、放電領域における沿面ストリーマコロナの割合を減少させることにより、コロナイオン生成量に対するオゾン発生量を相対的に減少させることができるという作用を有する。
【0034】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4記載の発明において、誘導電極の面積は、放電電極の面積の約5倍以内であるイオン発生装置であり、放電に関与しない無駄な交流電流を抑え、放電効率の低下を防止することができるという作用を有する。
【0035】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、誘電体は、誘導電極が形成されている面が絶縁体で覆われているイオン発生装置であり、誘導電極側での不用な放電を防止することができるという作用を有する。
【0036】
本発明の請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、誘電体における放電電極が形成されている面および放電電極の表面が無機質のコーティング剤でコーティングされているイオン発生装置であり、放電による放電電極や誘電体の劣化を防止することができるという作用を有する。
【0037】
本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の発明において、誘電体は、偏平なマイカ鱗片を集成した集成マイカに接着剤を含浸させて半硬化したシートを積層して硬化した集成マイカ板であるイオン発生装置であり、絶縁破壊強度の高い安価なイオン発生装置を提供することができるという作用を有する。
【0038】
本発明の請求項9に記載の発明は、感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナー
を所望の極性に帯電させた現像剤を静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段とを有し、帯電手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有している画像形成装置であり、画像生成のときに発生するオゾンの発生量を大幅に抑制することができるという作用を有する。
【0039】
本発明の請求項10に記載の発明は、感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段とを有し、転写手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有している画像形成装置であり、画像生成のときに発生するオゾンの発生量を大幅に抑制することができるという作用を有する。
【0040】
本発明の請求項11に記載の発明は、感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段と、転写手段による転写が終了した後に、感光体に対する除電を行う除電手段とを有し、除電手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有している画像形成装置であり、画像生成のときに発生するオゾンの発生量を大幅に抑制することができるという作用を有する。
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0042】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置を有する画像形成装置の構成を示す構成図、図2は本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置の構成を示す図、図3は図2に示したイオン発生装置における誘電体を放電電極側から投影した図、図4は図2に示したイオン発生装置に放電が発生した様子を示す図である。
【0043】
図1に示すように、画像形成装置は、粉体現像剤を用いる乾式電子写真装置であり、感光体ドラム100、帯電装置(帯電手段)101、露光装置(露光手段)102、現像器(現像手段)103、記録紙105を搬送する給紙ローラ104、転写チャージャ(転写手段)106、剥離チャージャ107、クリーニングブレード108、消去ランプ109、およびヒートローラ110を有する定着器111を備えている。
【0044】
この実施の形態1では、帯電装置(帯電手段)101、転写チャージャ(転写手段)106および剥離チャージャ107に、後述するイオン発生装置1を用いている。また、消去ランプ(除電手段)109に後述するイオン発生装置1を用いることもできる。
【0045】
感光体ドラム100の表面は、後述するイオン発生装置1を有する帯電装置101によって、例えばマイナス800ボルト程度のマイナス電荷でその全面が一様に帯電される。
【0046】
画像信号に応じて露光装置102から発振されたレーザ光102Aが感光体ドラム100に照射されると、感光体ドラム100は光が照射された部分のみ抵抗値が減少するので、レーザ光102Aが照射された部分のマイナス電荷が消去され静電潜像が形成される。
【0047】
なお、通常はレーザには1個の半導体レーザが使用され、画像信号に応じて変調された光は、図示しない回転多面鏡(ポリゴンミラー)によって走査される。
【0048】
このようにして形成された静電潜像は、現像器103によって現像される。つまり感光体ドラム100上の静電潜像のマイナス電荷が消去された部分に、反転現像によってマイナスに帯電した着色微粒子であるトナーが、マイナス300ボルト程度のバイアスを与えられて付着し、静電潜像の可視化が行われる。
【0049】
給紙ローラ104によって図示しない紙カセットから取り出された記録紙105は、矢印A方向に画像信号とタイミングを合わせて搬送され、矢印B方向に回転する感光体ドラム100と接触する。これにより、可視化されたトナー像が記録紙105に転写される。
【0050】
このとき、後述するイオン発生装置1を有する転写チャージャ106では、例えば記録紙105の裏側からプラスの電荷を与える。これによって、感光体ドラム100上のマイナスに帯電したトナーによって現像された画像(トナー像)が、プラスの電荷が与えられた記録紙105上に引き付けられ、転写される。
【0051】
画像が転写された記録紙105は、後述するイオン発生装置1を有する剥離チャージャ107によって感光体ドラム100から剥離される。最後に、定着器111でトナーが加熱・加圧されて記録紙105上に定着し、記録が終了する。
【0052】
なお、感光体ドラム100上には記録紙105に転写されずに残った残留トナーが存在しているため、これらの残留トナーをクリーニングブレード108から構成されるクリーナでこすり落として感光体ドラム100の清掃を行った後、LED等から構成される消去ランプ109で全面露光して、感光体ドラム100上の電荷を消去している。このようなクリーニング工程を行うことで、感光体ドラム100の繰り返しの使用が可能となる。
【0053】
次に、イオン発生装置1について、図2および図3を参照して説明する。
【0054】
図2および図3において、イオン発生装置1は、誘電体4の一方の面に放電電極2が形成され、誘電体4の他方の面に2つの放電電極2が形成されている。2つの放電電極2には、基準電位Vrとの間に直流バイアス電圧8が印加されている。2つの放電電極2と誘導電極3との間には駆動用交流電圧7が印加されている。
【0055】
誘電体4は、マイカ鱗片を接着剤で固めた集成マイカ板を使用している。集成マイカ板は、マイカを細かく粉砕した偏平なマイカ鱗片を集成した集成マイカに接着剤を含浸させて半硬化し、半硬化シートを積層して硬化し、板状にしたものであり、絶縁破壊電圧が非常に高いという特徴がある。マイカ燐片のサイズは、通常、厚み1〜10μm、平均径100〜200μmである。
【0056】
なお、誘電体4には、生マイカ(きマイカ)やセラミック等を使用することが考えられるが、生マイカは広面積なものを得ることが非常に難しく、また高価である。一方セラミックは、割れや欠けが発生し易く、薄板化が難しい。したがって、本実施の形態1では、誘電体4として、生マイカ(きマイカ)やセラミックは使用せずに、上述した集成マイカ板を使用する。
【0057】
集成マイカ板からなる誘電体4の両面に形成される2つの放電電極2および誘電電極3には、ステンレスや銅箔、銅蒸着や金蒸着品などを用いている。
【0058】
誘電体4の一方の面に形成された誘導電極3の形成面は、放電を放電電極2の側でのみ生じるよう絶縁体5にて覆われている。2つの放電電極2と誘導電極3との間の絶縁破壊電圧を考えると、絶縁体5の厚みは、最低0.1mmが必要である。また、複数個の電極パターンが形成された誘電体4を後に切断して複数のイオン発生装置を作製する場合には、量産性の面からは、絶縁体5の厚みを0.5mm以下にすると最適である。
【0059】
一方、誘電体4の他方の面に形成された2つの放電電極2の形成面は、放電による劣化防止を図るために放電電極2の表面と誘電体4の表面が無機質のコーティング剤6にてコーティングされている。例えば、シリカ系の無機質のコーティング剤6を2〜10μmコーティングすると、このコーティング剤6により放電電極2の放電による摩耗防止の働きと、同時に誘電体4である集成マイカ板の放電による劣化防止が図れ、イオン発生装置1の寿命を大幅に向上できる。
【0060】
上述したように構成されたイオン発生装置1において、2つの放電電極2と誘導電極3との間に周波数が数百Hz〜数百kHz、波高値1〜5kボルトの駆動用交流電圧7が印加されると、放電電極2から放電が起こる。
【0061】
次に、イオン発生装置1に放電が発生した場合の様子について、図4を参照して説明する。
【0062】
図4に示すように、2つの放電電極2から放電が起こると、放電領域9において電極間の空気がイオン化されてこの付近に正と負のコロナイオンが発生する。発生したコロナイオンは放電電極2に直流バイアス電圧8が印加されることにより取り出される。
【0063】
ここで、直流バイアス電圧8に負の電圧が印加されている場合には、イオン発生装置1からは負イオン10のみが取り出され(図2参照)、一方、直流バイアス電圧8に正の電圧が印加されている場合は、イオン発生装置1からは正のイオンのみが取り出される。
【0064】
放電領域9では、コロナイオンとともにオゾン等の有害ガスが生成される。放電領域9においては、特に明るく発光する沿面ストリーマコロナ9aとそれ以外の膜状コロナ9bとが発生している。オゾン等の有害ガスは沿面ストリーマコロナ9aにおいて特に多く生成され、この沿面ストリーマコロナ9aの進展を抑制することが、オゾン低減に効果があることが実験等により判明した。
【0065】
そこで、この実施の形態1では、図3に示すように、誘電体4の投影面(放電電極2側から誘電体4側を投影したときの投影面)に対して、2つの放電電極2の櫛歯状突起部2aを取り囲むように誘導電極3を配設した。すなわち、2つの放電電極2は、それぞれ櫛歯状突起部2aが形成されており、一方、誘導電極3は、放電電極2側から誘電体4側へ投影したときに、2つの放電電極2と重なることなく、かつ2つの放電電極2の櫛歯状突起部2aを取り囲むように形成されている。
【0066】
これにより、放電電極2の櫛歯状突起部2aから放出される沿面ストリーマコロナ9aが横方向に拡がることを防止でき、オゾンの発生量(生成量)を大幅に抑制することができる。
【0067】
ここで、誘電体4の投影面に対して、2つの放電電極2と誘導電極3とが重なる部分が存在すると、その部分の静電容量が大きくなってしまい、その結果、放電に関与しない無駄な交流電流を必要とするために放電効率が極端に低下するので、本実施の形態1の如く放電電極2と誘導電極3とが重ならないようにすることが好ましい。
【0068】
また、図3に示すように、本実施の形態1では放電電極2の櫛歯状突起部2aの長さLを櫛歯状突起部2aの幅Wより長く設定している。これにより、沿面ストリーマコロナ9aの横方向への進展を抑制する効果を向上させて、オゾンの発生量(生成量)を大幅に抑制することができる。
【0069】
さらに、図3に示すように、本実施の形態1では、誘電体4の投影面に対して、誘導電極3の外側に放電電極2を配設し、2つの放電電極2の櫛歯状突起部2aが内側を向くように配設している。すなわち、誘導電極3は、放電電極2側から誘電体4側へ投影したときの投影面の内側に配置され、放電電極2は、当該櫛歯状突起部2aが前記投影面の内側に向いて配置されている。
【0070】
これにより、2つの放電電極2の櫛歯状突起部2aから放出される沿面ストリーマコロナ9aの放出方向が内側になるようにして、沿面ストリーマコロナ9aが外に広がることを防止することにより、オゾンの発生量(生成量)を更に抑制することができる。
【0071】
なお、上記実施の形態1では、2つの放電電極2に櫛歯状突起部2aを形成するようにしているが、本発明はこれに限定されることなく、2つの放電電極2に複数の山歯状突起部を形成するようにしても良い。
【0072】
以上説明したように、実施の形態1によれば、次の(1)〜(6)の作用効果を期待することができる。
(1)放電効率を低下させることなく、オゾンを多く生成する沿面ストリーマコロナの進展を防止することにより、オゾン発生量を大幅に抑制することができる。
(2)放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部から放出される沿面ストリーマコロナの放出方向が内側になるようにして、沿面ストリーマコロナが外に広がることを防止することにより、オゾン発生量を更に抑制することができる。
(3)沿面ストリーマコロナの進展を抑制する効果を増大させて、オゾン発生量を大幅に抑制することができる。
(4)誘導電極側での不用な放電を防止することができ、また、放電による放電電極や誘電体の劣化を防止することができる。
(5)上記(1)〜(4)の作用効果を有する画像形成装置を提供することができる。
(6)オゾン発生量を大幅に抑制することで、健康に配慮したイオン発生装置およびこのイオン発生装置を有する画像形成装置を提供することができる。
【0073】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の形態2におけるイオン発生装置の構成を示す図、図6は図5に示したイオン発生装置における誘電体を放電電極側から投影した図、図7は図5に示したイオン発生装置に放電が発生した様子を示す図である。
【0074】
この実施の形態2のイオン発生装置も、上述した実施の形態1の場合と同様に、図1に示した画像形成装置の帯電装置(帯電手段)101、転写チャージャ(転写手段)106、剥離チャージャ107および除電装置としての消去ランプ(除電手段)109に使用することができる。
【0075】
さて、図5に示すイオン発生装置40は、図2に示した実施の形態1のイオン発生装置1の構成において、放電電極2および誘電電極3を放電電極20および誘電電極30に代替した構成になっている。図5において、図2に示した構成要素と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付している。
【0076】
図5に示すように、誘電体4の一方の面に2つの誘導電極30を形成するとともに、誘
電体4の他方の面に放電電極20を形成している。また、放電電極20側から誘電体4側へ投影したときに、2つの誘電電極30と放電電極20とが並行して、かつ2つの誘導電極30が放電電極20と重なることなく配置されている。
【0077】
放電電極20は、図6に示すように、櫛歯状突起部20aが形成されているとともに、放電電極20側から誘電体4側へ投影したときの投影面の内側に配置されている。2つの誘導電極30は、放電電極20を挟み込むように並行して配置されている。
【0078】
図5および図6において、イオン発生装置40の放電電極20と2つの誘導電極30との間に周波数が数百Hz〜数百kHz、波高値1〜5kボルトの駆動用交流電圧7が印加されると、放電電極20から放電が起こる。
【0079】
次に、イオン発生装置40に放電が発生した場合の様子について、図7を参照して説明する。
【0080】
図7に示すように、放電電極20から放電が起こると、放電領域50が形成される。この放電領域50において、特に明るく発光しオゾン等の有害ガスを多く発生する沿面ストリーマコロナ50aは、誘電体4における放電電極20と接する面もしくは放電電極20が形成されている面において、誘電電極30の投影に近接する部分までである。それより遠方の、誘電体における放電電極20と接する面上の誘導電極30の投影上部分は、オゾン生成が比較的少ない膜状コロナ50bが占めていることが実験等により判明した。
【0081】
そこで、この実施の形態2では、図6に示すように、誘電体4の投影面(放電電極2側から誘電体4側を投影したときの投影面)に対して、放電電極20の単位長さあたりの面積S1を、一方の誘導電極30の単位長さ当りの面積S2aおよび他方の誘導電極30の単位長さ当りの面積S2bと比較して、S1<S2aかつS1<S2bの関係が成立するように、放電電極20と2つの誘導電極30を配設している。
【0082】
これにより、オゾン生成が比較的少ない膜状コロナ50bの領域を増加させることで、オゾン発生量も増加するものの、それ以上に生成されるコロナイオンの量が増加するため、コロナイオン生成量に対するオゾン発生量を相対的に減少させることができる。
【0083】
ここで、誘電体4の投影面に対して、放電電極20と2つの誘導電極30が重なる部分が存在したり、面積S2aまたは面積S2bが大きくなりすぎると、静電容量が大きくなり、このため放電に関与しない無駄な交流電流を必要とするために放電効率が極端に低下するので、本実施の形態2の如く放電電極20と2つの誘導電極30とが重なることなく、面積S2aと面積S2bはそれぞれ面積S1の5倍以内であることが好ましい。
【0084】
以上説明したように、実施の形態2によれば、上述した実施の形態1の(1)〜(6)の作用効果に加えて、次の(7)および(8)の作用効果を期待することができる。
(7)放電領域における沿面ストリーマコロナの割合を減少させることにより、コロナイオン生成量に対するオゾン発生量を相対的に減少させることができる。
(8)放電に関与しない無駄な交流電流を抑制することにより、放電効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、オゾン発生量を大幅に抑制することのできるイオン発生装置を提供することができるので、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置は勿論のこと、イオン発生装置を有する全ての装置に適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置を有する画像形成装置の構成を示す構成図
【図2】本発明の実施の形態1におけるイオン発生装置の構成を示す図
【図3】図2に示したイオン発生装置における誘電体を放電電極側から投影した図
【図4】図2に示したイオン発生装置に放電が発生した様子を示す図
【図5】本発明の実施の形態2におけるイオン発生装置の構成を示す図
【図6】図5に示したイオン発生装置における誘電体を放電電極側から投影した図
【図7】図5に示したイオン発生装置に放電が発生した様子を示す図
【符号の説明】
【0087】
1,40 イオン発生装置
2,20 放電電極
2a,20a 櫛歯状突起部
3,30 誘導電極
4 誘電体
5 絶縁体
6 コーティング剤
7 駆動用交流電圧
8 直流バイアス電圧
9,50 放電領域
9a,50a 沿面ストリーマコロナ
9b,50b 膜状コロナ
10 負イオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と、該誘電体の一方の面に形成された誘導電極と、前記誘電体の他方の面に形成された放電電極とを備え、前記誘導電極と前記放電電極との間に交番電圧を印加することにより、前記放電電極近傍に沿面放電に伴って荷電粒子を生成するイオン発生装置であって、
前記放電電極は、
櫛歯状または複数の山歯状の突起部が形成され、
前記誘導電極は、
前記放電電極側から前記誘電体側へ投影したときに、前記放電電極と重なることなく、前記放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部を取り囲むように形成されている
ことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記誘導電極は、
前記放電電極側から前記誘電体側へ投影したときの投影面の内側に配置され、
前記放電電極は、
当該櫛歯状または複数の山歯状の突起部が前記投影面の内側に向いて配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記放電電極の櫛歯状または複数の山歯状の突起部の長さは、当該突起部の幅の最大値よりも長く設定されていることを特徴とする請求項1または2記載のイオン発生装置。
【請求項4】
誘電体と、該誘電体の一方の面に形成された誘導電極と、前記誘電体の他方の面に形成された放電電極とを備え、前記誘導電極と前記放電電極との間に交番電圧を印加することにより、前記放電電極近傍に沿面放電に伴って荷電粒子を生成するイオン発生装置であって、
前記放電電極側から前記誘電体側へ投影したときに、前記誘電電極と前記放電電極とが並行して、かつ前記誘導電極は前記放電電極と重なることなく配置され、
前記放電電極側から前記誘電体側へ投影したときの投影面における、前記誘電電極および前記放電電極の並行する方向の単位長さあたりの面積に関し、前記誘電電極の面積は前記放電電極の面積よりも広く設定されている
ことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項5】
前記誘導電極の面積は、前記放電電極の面積の約5倍以内であることを特徴とする請求項4記載のイオン発生装置。
【請求項6】
前記誘電体は、
前記誘導電極が形成されている面が絶縁体で覆われていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のイオン発生装置。
【請求項7】
前記誘電体における前記放電電極が形成されている面および前記放電電極の表面が無機質のコーティング剤でコーティングされている
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のイオン発生装置。
【請求項8】
前記誘電体は、
偏平なマイカ鱗片を集成した集成マイカに接着剤を含浸させて半硬化したシートを積層して硬化した集成マイカ板であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のイオン発生装置。
【請求項9】
感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を前記静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段と、を有し、
前記帯電手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を前記静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段と、を有し、
前記転写手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
感光体を所望の帯電レベルまで帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段によって帯電した感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
トナーを所望の極性に帯電させた現像剤を前記静電潜像に電気的に付着させてトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を転写媒体に転写して当該転写媒体上にトナー画像を形成する転写手段と、前記転写手段による転写が終了した後に、前記感光体に対する除電を行う除電手段と、
を有し、
前記除電手段は、請求項1〜8の何れか一項に記載のイオン発生装置を有していることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−47642(P2006−47642A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227953(P2004−227953)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】