説明

インクジェットヘッドおよびインクジェット装置ならびにそれらの製造方法

【課題】高い解像度と、強い吐出力とを有するインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】インクが流れるインク供給流路と;ノズルが形成された底面と、振動板から構成される上面とを有し、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って一列に配列された2以上のインク室と;前記インク室を仕切る隔壁と;前記2以上のインク室の上面それぞれを振動させ、一列に配列された2以上の積層ピエゾ素子と、前記積層ピエゾ素子間に配置された2以上の支柱と、が固定され、かつ前記インク室の上面上に配置されたピエゾプレートと;を有するインクジェットヘッドであって、前記インク室の上面を構成する振動板は、前記隔壁と前記支柱とによって挟まれ、隣接する2つの前記積層ピエゾ素子の間には、ギャップが大きい箇所と、ギャップが小さい箇所とが形成され、前記支柱は、前記ギャップが大きい箇所にのみ配置される、インクジェットヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドおよびそれを備えるインクジェット装置ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドロップオンデマンド型のインクジェットヘッドは、入力信号に応じて必要なときに必要な量のインクを塗布することができるインクジェットヘッドとして知られている。特に圧電(ピエゾ)方式のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドは、幅広い種類のインクを、細かく制御しながら塗布できることから、現在積極的に開発が行われている。ピエゾ方式のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドは、一般的に、インク供給流路と、インク供給流路に連通し、ノズルを有する複数のインク室と、インク室内に充填されたインクに圧力を加えるピエゾ素子と、を有する。
【0003】
ピエゾ方式のインクジェットヘッドでは、ピエゾ素子に駆動電圧を印加することによって生じるピエゾ素子の機械的歪みにより、インク室内のインクに圧力を加えて、ノズルからインクを吐出する。ピエゾ方式のインクジェットヘッドは、圧電素子の歪み方によって、シェアモード型、プッシュモード型、ベンドモード型の3つのタイプに大別されうる。特に積層構造のピエゾ素子を用いるベンドモードは、低い電圧で強い力を生み出せることから、高粘度のインクを用いる有機ELディスプレイや液晶パネルなどの電子デバイスの製造用に開発が期待されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図1は、特許文献1に開示されたインクジェットヘッド10の断面の一部拡大図である。図1に示されるようにインクジェットヘッド10は、インク供給流路(不図示)と、ノズル3aを有する複数のインク室2bと、積層ピエゾ素子5fおよび支柱5gを交互に有するピエゾプレート40とを有する。
【0005】
各インク室2bは隔壁2dによって区画されている。積層ピエゾ素子5fは、インク室2bの壁面を構成する振動板(ダイヤフラム)6aを振動させる。インクジェットヘッド10では、複数のインク室2bが1つのダイヤフラム6aを共有する。ダイヤフラム6aは、支柱5gおよび隔壁2dによって挟まれることで固定される。
【0006】
このようなインクジェットヘッド10では、積層ピエゾ素子5fがインク室2bの壁面を構成するダイヤフラム6aを振動させることで、インク室2b内のインクに圧力が加えられ、ノズルからインクが吐出される。
【0007】
また、インクジェットヘッド10では、ダイヤフラム6aが支柱5gと隔壁2dとに挟まれ、固定されている。このように、ダイヤフラム6aを固定することで、ダイヤフラム6aを通して、1のインク室2bにおける振動が、隣接するインク室2bに伝わること(クロストーク)が防止される。
【0008】
このようなインクジェットヘッド10を用いたプリンタの解像度は、ノズルの配置ピッチP1(以下単に「ノズルピッチ」とも称する)によって決定される。すなわちノズルピッチP1が大きいほど、解像度が低くなり、ノズルピッチP1が小さいほど解像度が高くなる。
【0009】
また、中空六角柱型の積層ピエゾ素子の内部空間をインク室として用いる技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、インクジェットヘッドの内部のインクにエアーが混入したり、インクジェットヘッドのノズルが目詰まりしたりして、適切なインク吐出ができないことがある。そこで、インクジェットヘッドのインクを循環させる(外部からインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェットヘッドからインクを排出する)ことで、エアー混入やノズルつまりを低減させることが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特願2008−87457号公報
【特許文献2】特願平8−85206号公報
【特許文献3】特開2008−254196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、有機ELディスプレイや液晶パネルなどの電子デバイスの製造のために、高い解像度と、強い吐出力とを有するインクジェットヘッドの開発が求められている。
【0013】
インクジェットヘッドの解像度を向上させるためには、ノズルピッチを縮めることが求められる。例えば、図1に示されるようなインクジェットヘッド10では、ノズル3aはインク室2bごとに配置される。このため、ノズルピッチP1は、インク室2bの配置ピッチによって決定される。さらに、インク室2bの配置ピッチは、ピエゾ素子5fの配置ピッチP2によって決定される。したがって、ノズルピッチP1を縮めるには、ピエゾプレート40における積層ピエゾ素子5fの配置ピッチP2を縮めることが求められる。
【0014】
図1に示されたインクジェットヘッド10において、積層ピエゾ素子5fの配置ピッチP2を縮めるには、積層ピエゾ素子5f間のギャップを狭めればよい。積層ピエゾ素子5f間のギャップを狭めるには、積層ピエゾ素子5fの幅D1を狭くしたり、支柱5gの幅D2を狭くしたりすることが考えられる。
【0015】
しかし、積層ピエゾ素子5fの幅D1を狭くすると、積層ピエゾ素子5fの可動面(ダイヤフラム6aを押す面)の面積も小さくなり、積層ピエゾ素子5fがダイヤフラム6aを振動させる力が減少する。ダイヤフラム6aを振動させる力が減少すると、インク室2b内のインクに充分な圧力を加えることができず、その結果、吐出力が減少してしまう。
【0016】
また、支柱5gの幅D2を狭くするには加工限界による限界があり、例えば、幅D2が30μm以下の支柱5gを形成することは困難である。
【0017】
一方、インクジェットヘッドの吐出力を向上させるためには、積層ピエゾ素子の可動面の面積を増大させることが求められる。図1に示されたインクジェットヘッド10において、積層ピエゾ素子5fの可動面の面積を増大させるには、積層ピエゾ素子5fの幅D1を広くすることが考えられる。しかし、積層ピエゾ素子5fの幅Dを広くすると、積層ピエゾ素子5fの配置ピッチP2およびノズルピッチP1が広がり、その結果、インクジェットヘッドの解像度が低下する。
【0018】
さらに、インクジェットヘッド10において、支柱5gを省略し、その分、積層ピエゾ素子5fの配置ピッチP2を縮めたり、積層ピエゾ素子5fの幅Dを大きくして、可動面の面積を増大させたりすることも考えられる。しかし、ダイヤフラム6aを固定する支柱を省略してしまうと、1のインク室2bの振動が、ダイヤフラム6aを通して、隣接するインク室2bに伝わり、クロストークが生じる。クロストークが生じると、インク室間で吐出するインクの量が不安定になったり、インクの吐出ピッチが不安定になったりする。このため、支柱5gを省略することは現実的ではない。
【0019】
このように、従来のインクジェットヘッドでは、「高い解像度を得るために、積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「強い吐出力を得るために、積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくすること」と、を両立させることができなかった。
【0020】
本発明の目的は、「積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくすること」と、を両立させることができるインクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1は、以下に示すインクジェットヘッドに関する。
[1]外部から供給されたインクが流れるインク供給流路と;前記インクを吐出するためのノズルが形成された底面と、振動板から構成される上面とを有し、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って一列に配列された2以上のインク室と;前記インク室を仕切る隔壁と;前記2以上のインク室の上面それぞれを振動させ、一列に配列された2以上の積層ピエゾ素子と、前記積層ピエゾ素子間に配置された2以上の支柱と、が固定され、かつ前記インク室の上面上に配置されたピエゾプレートと;を有するインクジェットヘッドであって、前記インク室の上面を構成する振動板は、前記隔壁と前記支柱とによって挟まれ、隣接する2つの前記積層ピエゾ素子の間には、ギャップが大きい箇所と、ギャップが小さい箇所とが形成され、前記支柱は、前記ギャップが大きい箇所にのみ配置される、インクジェットヘッド。
[2]前記積層ピエゾ素子間のギャップの最大値は、50〜140μmである、[1]に記載のインクジェットヘッド。
[3]前記積層ピエゾ素子は、六角柱状であり、前記六角柱状の積層ピエゾ素子の底面は、互いに対向し、かつ前記積層ピエゾ素子が配列された方向に平行な辺aおよび辺bを有し、それぞれの前記積層ピエゾ素子の辺aは、同一の直線に重なり、それぞれの前記積層ピエゾ素子の辺bは、同一の直線に重なる、[1]または[2]に記載のインクジェットヘッド。
[4]前記インク室の上面および底面は、六角形である、[3]に記載のインクジェットヘッド。
[5]2以上の前記インク室と連通し、前記インク室から排出されたインクが流れるインク排出流路をさらに有する、[1]〜[4]のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。
【0022】
本発明の第2は、以下に示すインクジェット装置に関する。
[6][1]〜[5]のいずれか一つ記載のインクジェットヘッドを有するインクジェット装置。
【0023】
本発明の第3は、以下に示すインクジェットヘッドの製造方法に関する。
[7]積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備するステップと、前記積層ピエゾ素子および支柱上に振動板を積層するステップと、前記振動板上に隔壁およびノズルプレートを積層するステップと、を有する[1]〜[5]のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドを製造する方法であって、前記積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備する方法は、ピエゾプレートを準備するステップと、前記ピエゾプレートに圧電シートと導電シートとを積層し、長方体状の積層体を形成するステップと、前記長方体状の積層体の底面の長辺に対して傾いた2以上の溝Aを、一定ピッチで前記積層体に設けるステップと、前記長方体状の積層体の底面の長辺に対して、前記溝Aと逆方向に傾き、かつ前記溝Aと交差する2以上の溝Bを、一定ピッチで前記積層体に設け、前記積層ピエゾ素子と、前記支柱とを形成するステップと、を有する、インクジェットヘッドを製造する方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、積層ピエゾ素子の配置ピッチを確保したまま、積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくしたり;積層ピエゾ素子の可動面の面積を確保したまま、積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めたりすることができる。このため、本発明によれば高い解像度と強い吐出力を有するインクジェットヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のインクジェットヘッドの断面図
【図2】複数の積層ピエゾ素子と、支柱とが固定されたピエゾプレートの平面図
【図3】本発明のインクジェットヘッドの製造方法のフローを示す図
【図4】本発明のインクジェットヘッドの製造方法のフローを示す図
【図5】本発明の実施の形態1のインクジェットヘッドの斜視図
【図6】実施の形態1のインクジェットヘッドの断面図
【図7】実施の形態1のインクジェットヘッドにおけるピエゾプレートを示す図
【図8】本発明の実施の形態2のインクジェットヘッドの斜視図
【図9】実施の形態2のインクジェットヘッドの断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.本発明のインクジェットヘッドについて
本発明のインクジェットヘッドは、積層型のピエゾ素子(以下単に「積層ピエゾ素子」とも称する)を用いるベンドモード型のインクジェットヘッドである。本発明のインクジェットヘッドは、1)インク供給流路と、2)インク供給流路と連通した複数のインク室と、3)インク室を仕切る隔壁と、4)インク室の上面上に配置され、複数の積層ピエゾ素子と支柱とが固定されたピエゾプレートとを有する。
【0027】
本発明は、ピエゾプレートに固定された積層ピエゾ素子と支柱との構造および配置態様を工夫することで、「積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくすること」と、を両立させたことを特徴とする。以下、それぞれの構成要素について説明する。
【0028】
1)インク供給流路
インク供給流路は、外部から供給されるインクが流れる流路である。インク供給流路を流れるインクは、後述するインク室群のインク室に供給される。インク供給流路は、外部からインクが供給される導入口を有する。インク供給流路に供給されるインク供給量は、特に限定されず、数ml/minであっても、それ以上であってもよい。
【0029】
2)インク室
インク室は、インク供給流路と連通し、インクを収容するための空間である。インク室に収容されるインクの種類は、特に限定されず、製造物の種類によって適宜選択される。たとえば、製造物が有機ELパネルである場合、インク室に収容されるインクの例には、発光材料などの有機発光物質を含む高粘度の溶液が含まれる。
【0030】
本発明のインクジェットヘッドは、複数のインク室を有する。複数のインク室は、インク供給流路内をインクが流れる方向(以下単に「インクの流れ方向」とも称する)に沿って、一列に配列される(図5参照)。
【0031】
1のインク供給流路およびインク排出流路に連通するインク室の最大数は、通常1024個である。本発明のインクジェットヘッドが有するインク室の寸法は、通常全て同じである。
【0032】
各インク室は、ノズルが形成された底面と、弾性を有する上面とを有する。より具体的には、各インク室の底面はノズルプレートから構成され、各インク室の上面は、振動板(以下「ダイヤフラム」とも称する)から構成される。本発明では、複数のインク室が1枚のノズルプレートおよび振動板を共有する(図6A参照)。また、インク室の側面は後述する隔壁から構成される。
【0033】
各インク室の上面および底面は、後述する六角柱状の積層ピエゾ素子の形状に合わせて、六角形であることが好ましい(図6C参照)。
【0034】
ノズルとはインク室からインクを吐出するための吐出孔である。通常インクジェットヘッドは、1つのインク室に対して、1つのノズルを有する。インク室内のインクは、ノズルから外部に吐出される。ノズルの径は、特に限定されず、例えば10〜100μm程度であればよい。
【0035】
ダイヤフラムは、例えば、金属膜や樹脂膜などの振動できる部材である。ダイヤフラムの振幅量は、約100nm以下に設定されることが好ましい。後述する積層ピエゾ素子の変位量が、最大200〜300nm程度であるからである。
【0036】
ダイヤフラムは、ヤング率Eと断面2次モーメントIとの積EIが2.9×10−19GPa・m〜6.2×10−15GPa・mの範囲に設定されることが好ましい。ヤング率Eは、物質固有の定数である。断面2次モーメントIは、I=b×h/12(b:膜の幅、h:膜の厚み)にて算出される。
【0037】
ダイヤフラムを構成する金属膜の例には、高さ20〜50μmの突起を有するニッケル膜(厚さ4〜6μm)やステンレス(ヤング率E=190〜220GPa)の膜などが含まれる。ステンレス膜の厚みは、断面2次モーメントの値が1.5×10―20〜2.8×10―16となるように調整されればよく、ステンレス膜の幅が約1mmである場合には、1〜25μm、例えば20μmであればよい。
【0038】
ダイヤフラムを構成する樹脂膜は耐薬品性の高い樹脂膜であることが求められ、例えばポリイミド(ヤング率E=3〜5GPa)や、ポリアリルエーテルケトンの膜などであるが、特に限定されない。
【0039】
また、ダイヤフラムは、後述する隔壁と支柱とに挟まれることで固定される。
【0040】
3)隔壁
隔壁は、インク室を仕切り、インク室の側面を構成する部材である。隔壁は、例えば、複数のステンレス(例えばSUS304ステンレス鋼)板を熱拡散接合によって貼り合わすことで製造されてもよい。隔壁はインク室の上面およびインク室の底面に貼り付けられている。
【0041】
4)ピエゾプレート
ピエゾプレートは、複数のピエゾ素子および支柱が固定された板である。ピエゾプレートの材料は例えばセラミックスである。ピエゾプレートの材料をセラミックスとすることで、ピエゾ素子とピエゾプレートの熱膨張係数を同じにすることができる。
【0042】
ピエゾプレートには、インクの流れ方向に沿って一列に配列されたピエゾ素子と、ピエゾ素子間に配置された支柱とが固定されている。ピエゾ素子と支柱とは互いに離間している。
【0043】
ピエゾ素子は、制御信号に応じて、インク室の上面を構成する振動板をそれぞれ振動させる。本発明におけるピエゾ素子は、伸縮可能な積層型のピエゾ素子(以下単に「積層ピエゾ素子」とも称する)であることを特徴とする。積層ピエゾ素子は、入力に対する出力応答が遅いが、大きい出力を有する。そのため積層ピエゾ素子は、強い力を発生させることができる。積層ピエゾ素子の非駆動時の高さ(積層方向の長さ)は、通常、100〜1000μmである。
【0044】
積層ピエゾ素子は、ピエゾプレートに固定される固定面と、インク室の上面を構成するダイヤフラムに接触する可動面とを有する。各積層ピエゾ素子の寸法は同一であることが好ましい。積層ピエゾ素子に駆動電圧を印加することで、積層ピエゾ素子の可動面がインク室の上面を振動させ、インク室内のインクに圧力が加わる。これにより、ノズルからインクが吐出される。
【0045】
支柱は、ダイヤフラムを固定するための部材である。具体的には、支柱は隔壁と共にダイヤフラムを挟むことで、ダイヤフラムを固定する(図6A参照)。これにより、1のインク室の振動が、ダイヤフラムを通して、隣接するインク室に伝わること(クロストーク)が防止される。支柱の形状はダイヤフラムを固定できるのであれば特に限定されないが、例えば三角柱である(図2、図7参照)。また、支柱の高さは、通常、積層ピエゾ素子と同じで、100〜1000μmである。
【0046】
上述のように本発明のインクジェットヘッドは、積層ピエゾ素子と支柱との構造および配置態様に特徴を有する。より具体的には、本発明では、隣接する積層ピエゾ素子の間に、ギャップが大きい箇所と、ギャップが小さい箇所とが形成される。積層ピエゾ素子間のギャップの最大値は、50〜140μmであり、最小値は、20〜50μmである(図7B参照)。隣接する積層ピエゾ素子の間に、ギャップが大きい箇所と、ギャップが小さい箇所とを形成する手段は、特に限定されないが、例えば、積層ピエゾ素子の形状を六角柱とすればよい(後述)。
【0047】
さらに本発明では、支柱が、ギャップが大きい箇所にのみ配置され、ギャップが小さい箇所に配置されないことを特徴とする。
【0048】
このように、隣接する積層ピエゾ素子の間のギャップに、一部支柱が配置されない領域を設けることで、積層ピエゾ素子間のギャップの面積を縮小させることができる。これにより、「積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくすること」と、を両立できる。
【0049】
以下、図面を参照しながら、隣接する積層ピエゾ素子の間のギャップに、一部支柱が配置されない領域を設けることと、本発明の効果(「積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくすること」と、を両立すること)との関係について説明する。
【0050】
図2Aは、積層ピエゾ素子41および支柱43が固定された従来のピエゾプレート40の、積層ピエゾ素子の可動面側からの平面図である。図2Aに示されるように、従来のピエゾプレート40には、一定のピッチ(P1)で、X方向に一列に配列された積層ピエゾ素子41と、積層ピエゾ素子41の間に配置された支柱43とが固定されている。積層ピエゾ素子41間のギャップ全体に支柱43が配置されている。
【0051】
図2Aに示されるピエゾプレート40において、積層ピエゾ素子41の配置ピッチP1を縮めたり、積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくしたりするには、支柱43の幅43Wを縮めることが考えられる。しかし、支柱43の幅43Wを縮めるには、加工限界による限度がある。このため、支柱43の幅43Wを30μm以下にすることは困難である。
【0052】
支柱43の幅43Wを加工限界まで縮めた上で、さらに積層ピエゾ素子41の配置ピッチP1を縮めるためには、積層ピエゾ素子41の幅41Wを縮めざるを得ない。積層ピエゾ素子41の幅41Wを縮めると、積層ピエゾ素子41の可動面の面積が小さくなり、インクジェットヘッドの吐出力が低下する。
【0053】
また、幅43Wを加工限界まで縮めた上で、さらに積層ピエゾ素子41の可動面の面積を広げるためには、積層ピエゾ素子41の幅41Wを広げざるを得ない。積層ピエゾ素子41の幅41Wを広げると、積層ピエゾ素子41の配置ピッチP1が広くなり、インクジェットヘッドの解像度が低下する。
【0054】
一方、図2Bは、本発明におけるピエゾプレート140の、積層ピエゾ素子の可動面側からの平面図である。図2Bに示されるように、ピエゾプレート140には、一定のピッチ(P2)で、X方向に一列に配列された六角柱状の積層ピエゾ素子141と、積層ピエゾ素子141の間に配置された三角柱状の支柱143とが固定されている。
【0055】
六角柱状の積層ピエゾ素子141の底面(固定面)は、互いに対向し、積層ピエゾ素子が配列された方向(以下単に「配列方向」とも称する)Xに平行な辺aおよび辺bを有する。さらに、それぞれの積層ピエゾ素子141の辺aは、同一の直線Yに重なり、それぞれの積層ピエゾ素子の辺bは、同一の直線Zに重なる。このように、各積層ピエゾ素子の辺aおよび辺bをそれぞれ同一の直線上に配置することで、隣接する積層ピエゾ素子の間に、ギャップが大きい箇所βと、ギャップが小さい箇所αとを形成することができる。
【0056】
支柱143はギャップが大きい箇所βにのみ配置され、ギャップが小さい箇所αには配置されない。
【0057】
図2Bに示されるように、本発明では、隣接する積層ピエゾ素子の間のギャップに、一部支柱が配置されない領域(ギャップが小さい箇所α)が設けられている。このため、本発明の支柱143の幅143Wを加工限界(30μm)まで縮めたとしても、本発明の支柱143の水平投射面積は、図2Aに示される従来の支柱43よりも小さくなる。このため、本発明では、支柱143の水平投射面積が小さくなった分、積層ピエゾ素子141間のギャップの面積を縮小させることができる。これにより本発明では、積層ピエゾ素子141の配置ピッチP2をさらに縮めたり、積層ピエゾ素子141の可動面の面積をさらに増大させたりすることができる。具体的には本発明では、積層ピエゾ素子141の配置ピッチP1を165μm以下にすることができ、インクジェットヘッドの解像度を150dpiまで向上させることができる。また、本発明では、積層ピエゾ素子141の可動面の面積を、50000μm〜80000μmまで増大させることができる。
【0058】
このように、本発明では、積層ピエゾ素子の可動面の面積を確保したまま、積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めたり、積層ピエゾ素子の配置ピッチを確保したまま、積層ピエゾ素子の可動面の面積を増大させたりすることができる。このため、本発明によれば、「積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「積層ピエゾ素子の可動面の面積を確保すること」と、を両立させることができ、高い解像度と、強い吐出力とを有する本発明のインクジェットヘッドを提供することができる。
【0059】
また、本発明のインクジェットヘッドは、インク排出流路を有していてもよい(図8参照)。インク排出流路は、インク室群のインク室から排出されたインクが流れる流路であり、インクの流れ方向と平行な流路である。インク排出流路は、外部にインクを排出するための排出口を有する。インク排出流路には、インク室が連通する。インク排出流路を設けることで、インク室内に常に新しいインクを供給することができ、エアーの混入やインクよどみによる吐出不良を防止することができる。
【0060】
2.本発明のインクジェットヘッドの製造方法について
上述した本発明のインクジェットヘッドは、本発明の効果を損なわない限り任意の方法で製造される。本発明のインクジェットヘッドの製造方法の好ましい例は、1)積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備する第1ステップと、2)ピエゾプレートの積層ピエゾ素子および支柱上にダイヤフラムを積層する第2ステップと、3)ダイヤフラム上に隔壁およびノズルプレートを積層する第3ステップと、を有する。
【0061】
1)第1ステップでは、複数の積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備する。本発明の好ましい製造方法では、積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備(作製)するステップに特徴を有する。以下、図面を参照しながら、積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備する方法について説明する。
【0062】
積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備する方法は、A)まず、ピエゾプレート上に圧電シートと導電シートとを複数積層して、積層体を作製するAステップ(図3Aおよび図3B)と、B)積層体を分割し、積層ピエゾ素子および支柱を形成するBステップとを有する(図4Aおよび図4B)。
【0063】
A)図3Aおよび図3BはAステップを示す。図3Aおよび図3Bに示されるようにAステップでは、ピエゾプレート140上に圧電シート(例えば、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)のシート)145と導電シート146とを複数積層して(図3A参照)、積層体147を作製する(図3B参照)。積層された圧電シート145および導電シート146に、接着処理および焼成処理を施すことで、圧電シート145および導電シート146が一体化し、長方体状の積層体147が形成される。
【0064】
B)図4A〜図4CはBステップを示す。図4Aは図3Bに示される積層体147の平面図である。図4A〜図4Cに示されるように、Bステップでは、積層体147を分割し、ピエゾ素子141および支柱143を形成する。本発明は、Bステップにおいて積層体147を分割する方法に特徴を有する。
【0065】
Bステップはさらに、積層体147の底面の長辺に対して傾いた溝149Aを、積層体147に、所定のピッチで設けるステップ(図4B)と、積層体147の底面の長辺に対して、溝149Aとは逆方向に傾いた溝149Bを、積層体147に所定のピッチで設けるステップ(図4C)とを有する。溝149Aおよび溝149Bを設けるピッチは、積層ピエゾ素子の配置ピッチと同じにする。
【0066】
溝149Aおよび溝149Bは、例えば、回転ブレードが組み込まれたダイシング装置などで、積層体147を切断することで設けられる。このように形成された溝149Aおよび溝149Bの幅は、通常20〜40μmである。
【0067】
また、溝149Aの、積層体147の底面の長辺に対する傾斜角度θAおよび溝149Bの、積層体147の底面の長辺に対する傾斜角度θBは、同じであり、30〜60°であることが好ましい。
【0068】
図4Cに示されるように、溝149Aと、溝149Bとは、交差する。その結果、六角柱状の積層ピエゾ素子141と、三角柱状の支柱143とが形成される。積層ピエゾ素子141の外部に露出した面Pには、積層ピエゾ素子に電圧を印加するための電極が接続される。一方、三角柱状の支柱には、電極が接続されない。これにより、積層ピエゾ素子141がダイヤフラムを振動させるアクチュエータとして機能し、支柱がダイヤフラムを固定する部材として機能しうる。
【0069】
このように、本発明では、積層ピエゾ素子141と、三角柱状の支柱143とを同時に形成することができるので工程数が少なく歩留まりが高い。
【0070】
2)第2ステップでは、ピエゾプレートの積層ピエゾ素子および支柱上にダイヤフラムを積層する。ダイヤフラムは、積層ピエゾ素子および支柱と接着されることが好ましい。
【0071】
3)第3ステップでは、ダイヤフラム上に隔壁とノズルプレートとを積層する。これにより、底面、側面および上面を有するインク室が構成される。
【0072】
ダイヤフラムと隔壁、および隔壁とノズルプレートとは、接着剤によって貼り付けられたり、溶接によって貼り付けられたりしてもよいが、熱拡散接合(熱圧着)によって貼り付けられてもよい。
【0073】
3.本発明のインクジェット装置について
本発明のインクジェット装置は、前述のインクジェットヘッドを具備することを特徴とするが、それ以外は公知のインクジェット装置の部材を適宜有する。例えば、インクジェットヘッドを固定する部材や、インクを塗布する対象物を載置して移動するための移動ステージなどを有する。
【0074】
インクジェットヘッドがインク排出流路を有する場合、インクジェットヘッド装置は、インク循環装置を具備してもよい。インク循環装置は、インクに駆動圧力を加えることでインクを循環させる。インクに駆動圧力を加えるには、ポンプを用いてもよいが、圧縮空気を利用して圧力を供給するレギュレータを用いることが好ましい。レギュレータを用いることで駆動圧力が一定になり、インクの循環速度が安定するからである。
【0075】
インクジェット装置は、インクジェットヘッドのインクを、装置作動中に絶えず循環させてもよいし、断続的に循環させてもよい。
【0076】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施の形態により限定されない。
【0077】
(実施の形態1)
図5は、本発明の実施の形態1のインクジェットヘッド100の斜視図である。図5に示されるようにインクジェットヘッド100は、インク供給流路101と、インクの流れ方向Xに沿って配列された複数のインク室110とを有する。インク供給流路101はインク供給口103を介してインクタンク105に接続している。
【0078】
図6Aは、図5に示されたインクジェットヘッド100のA線による断面図である。図6Bは、図5に示されたインクジェットヘッド100のB線による断面図である。図6Cは、図5に示されたインクジェットヘッド100のC線による断面図である。
【0079】
図6A〜図6Cに示されるように、インク室110は、ノズル111を有する。インク室110は、ノズル111から吐出させるためのインクを収容している。また、図6Bに示されるように、インク室110は、インク連通孔107を介してインク供給流路101と連通している。
【0080】
インク室110の底面はノズルプレート120によって構成され、インク室110の上面はダイヤフラム123によって構成され、インク室110の側面は隔壁125によって構成される。また、複数のインク室110は、1枚のノズルプレート120および一枚のダイヤフラム123を共有する。また、ダイヤフラム123は、隔壁125と支柱143とに挟まれることで、固定される。
【0081】
図6Cに示されるように、インク室110の上面および底面は六角形である。したがって、本実施の形態ではインク室110は六角柱状の空間である。インク室110の長さ(インクの流れ方向に垂直方向の長さ)110Lは、通常500〜1500μmであり、インク室110の幅(インクの流れ方向に平行な長さ)110Wは、通常50〜180μmである。
【0082】
図6Aおよび図6Bに示されるように、ダイヤフラム123上には、積層ピエゾ素子141と支柱143とが固定されたピエゾプレート140が配置される。以下、積層ピエゾ素子141と支柱143とが固定されたピエゾプレート140について詳細に説明する。
【0083】
図7Aは、積層ピエゾ素子141と支柱143とが固定されたピエゾプレート140の斜視図であり、図7Bは、積層ピエゾ素子141と支柱143とが固定されたピエゾプレート140の平面の一部拡大図である。
【0084】
図7Aに示されるように、ピエゾプレート140には、方向Xに沿って一列に配列された六角柱状の積層ピエゾ素子141と、積層ピエゾ素子141間に配置された三角柱状の支柱143とが固定されている。
【0085】
積層ピエゾ素子141の可動面の長さ(配列(インクの流れ)方向Xと垂直方向の長さ)141Lは、300〜800μmであり、積層ピエゾ素子141の可動面の幅(配列方向Xの長さ)のうち最も広い幅141W1が80〜180μmであり、最も狭い幅141W2が30〜100μmである。さらに、支柱143の幅(配列方向Xの長さ)143Wは、30〜100μmである(図7B参照)。
【0086】
図7Bに示されるように、隣接する積層ピエゾ素子141の間には、ギャップが小さい箇所αと、ギャップが大きい箇所βとが形成される。隣接する積層ピエゾ素子141の最も小さいギャップG1の大きさは、20〜50μmであることが好ましく、最も大きいギャップG2は、50〜140μmであることが好ましい。
【0087】
また、支柱143は、ギャップが大きい箇所βにのみ配置され、ギャップが小さい箇所αに配置されない。このように、隣接する積層ピエゾ素子141の間に、ギャップが小さい箇所αと、ギャップが大きい箇所βとを形成し、そして支柱143を、ギャップが大きい箇所βにのみ配置することで、積層ピエゾ素子141間のギャップの面積を縮小させることができる(図2B参照)。これにより「積層ピエゾ素子の配置ピッチを縮めること」と、「積層ピエゾ素子の可動面の面積を大きくすること」と、を両立させることができる(図2B参照)。
【0088】
次に、実施の形態1のインクジェットヘッド100の動作について説明する。
【0089】
まず、インクタンク105からインク供給流路101にインクを供給する。インク供給流路101に供給されたインクは、インク連通孔107を通って各インク室110に供給される(図6B参照)。
【0090】
次に、ピエゾ素子141に駆動電圧を加える。これにより、積層ピエゾ素子141の可動面が、インク室110の上面を構成するダイヤフラム123を振動させる。これにより、インク室110内のインクに圧力が加わる。その結果、インクがノズル111から吐出される。
【0091】
上述のように、本実施の形態では、積層ピエゾ素子141の可動面の面積が大きい。このため、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、強い力でインク室内のインクに圧力を加えることができ、粘度の高いインクでも吐出することができる。
【0092】
また、本実施の形態のインクジェットヘッド100では、インク室110間のダイヤフラム123が支柱143と隔壁125とに挟まれることで、固定されているので、1のインク室110の振動が、他のインク室110に伝わること(クロストーク)を防止することができる。
【0093】
(実施の形態2)
実施の形態2では、インク排出流路を有するインクジェットヘッドについて説明する。
【0094】
図8は、実施の形態2のインクジェットヘッド200の斜視図である。実施の形態2のインクジェットヘッド200は、インク排出流路102を有する以外は、実施の形態1のインクジェットヘッド100と同じ基本構造を有する。実施の形態1のインクジェットヘッド100と同一の構成要素については同一の符号を付し説明を省略する。
【0095】
図8に示されるように、インクジェットヘッド200は、インク排出流路102を有する。インク排出流路102には、各インク室110が連通している。また、インク排出流路102は、インク排出口104を有する。図9Aは、図8に示されたインクジェットヘッド200のA線による断面図である。図9Bは、図8に示されたインクジェットヘッド200のB線による断面図である。図9Aおよび図9Bにおける矢印は、インクジェットヘッド200内をインクが流れる方向を示す。
【0096】
図9AおよびBに示されるように、インクジェットヘッド200にインク排出流路102を設けることで、インクをインク供給流路101からインク室110内を通ってインク排出流路102に流すことができ、インク室110内のインクを循環させることができる。これにより、インク室110内のインクのよどみやエアーなどを抑制することができ、安定したインクの吐出が可能になる。
【0097】
また、本実施の形態では、図9Bに示されるように、インク室110がインク排出流路102に向かって絞り込まれることが好ましい。
【0098】
インクジェットヘッドがインク排出流路102を有すると、図9Bに示されるように、インク室110では、インク供給流路101からインク排出流路102方向にインクが流れる。このため、積層ピエゾ素子141の駆動によって生じた力が、インクの流れに沿って、インク排出流路102側に逃げることがある。
【0099】
しかし、本実施の形態のように、インク室110がインク排出流路102に向かって絞り込まれていると、積層ピエゾ素子141の駆動によって生じた力が、インク排出流路102側に逃げにくくなる。このため、積層ピエゾ素子141の駆動によって生じた力を効率的に吐出力に変換でき、吐出力の減衰を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のインクジェットヘッドは、高い解像度と強い吐出力を有するので、例えば有機ELディスプレイパネルなどの電子デバイスの製造における有機発光材料を塗布形成するためのインクジェットヘッドとして好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0101】
100、200 インクジェットヘッド
101 インク供給流路
102 インク排出流路
103 インク供給口
104 インク排出口
105 インクタンク
107 インク連通孔
110 インク室
111 ノズル
120 ノズルプレート
123 振動板(ダイヤフラム)
125 隔壁
140 ピエゾプレート
141 積層ピエゾ素子
143 支柱
145 圧電シート
146 導電シート
147 積層体
149 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給されたインクが流れるインク供給流路と;
前記インクを吐出するためのノズルが形成された底面と、振動板から構成される上面とを有し、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って一列に配列された2以上のインク室と;
前記インク室を仕切る隔壁と;
前記2以上のインク室の上面それぞれを振動させ、一列に配列された2以上の積層ピエゾ素子と、前記積層ピエゾ素子間に配置された2以上の支柱と、が固定され、かつ前記インク室の上面上に配置されたピエゾプレートと;を有するインクジェットヘッドであって、
前記インク室の上面を構成する振動板は、前記隔壁と前記支柱とによって挟まれ、
隣接する2つの前記積層ピエゾ素子の間には、ギャップが大きい箇所と、ギャップが小さい箇所とが形成され、
前記支柱は、前記ギャップが大きい箇所にのみ配置される、インクジェットヘッド。
【請求項2】
前記積層ピエゾ素子間のギャップの最大値は、50〜140μmである、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記積層ピエゾ素子は、六角柱状であり、
前記六角柱状の積層ピエゾ素子の底面は、互いに対向し、かつ前記積層ピエゾ素子が配列された方向に平行な辺aおよび辺bを有し、
それぞれの前記積層ピエゾ素子の辺aは、同一の直線に重なり、
それぞれの前記積層ピエゾ素子の辺bは、同一の直線に重なる、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記インク室の上面および底面は、六角形である、請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
2以上の前記インク室と連通し、
前記インク室から排出されたインクが流れるインク排出流路をさらに有する、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
請求項1に記載のインクジェットヘッドを有するインクジェット装置。
【請求項7】
積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備するステップと、
前記積層ピエゾ素子および支柱上に振動板を積層するステップと、
前記振動板上に隔壁およびノズルプレートを積層するステップと、を有する請求項1に記載のインクジェットヘッドを製造する方法であって、
前記積層ピエゾ素子および支柱が固定されたピエゾプレートを準備する方法は、
ピエゾプレートを準備するステップと、
前記ピエゾプレートに圧電シートと導電シートとを積層し、長方体状の積層体を形成するステップと、
前記長方体状の積層体の底面の長辺に対して傾いた2以上の溝Aを、一定ピッチで前記積層体に設けるステップと、
前記長方体状の積層体の底面の長辺に対して、前記溝Aと逆方向に傾き、かつ前記溝Aと交差する2以上の溝Bを、一定ピッチで前記積層体に設け、前記積層ピエゾ素子と、前記支柱とを形成するステップと、を有する、請求項1に記載のインクジェットヘッドを製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−235251(P2011−235251A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110254(P2010−110254)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】