説明

インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、インクジェット記録に用いられるプログラム及び立体印刷造形物

【課題】色が暗くならず、表面がきれいに着色された立体形状の形成を行うことが可能なインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、インクジェット記録に用いられるプログラム及び立体印刷造形物を提供すること。
【解決手段】複数色層1001を少なくとも1つ以上含む積層構造1000が形成される。積層構造1000を形成する複数色層1001は、第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を第2の色の光硬化型インクが囲う構造をしている。そして、複数色層1001の形成は、吐出された第1の色及び第2の色のインクを、光の照射によって硬化することでなされる。従って、複数色層1001を形成するために、第1の色の光硬化型インクの硬化と第2の色の光硬化型インクの硬化を一度に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクを用いて立体印刷を行うインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、インクジェット記録に用いられるプログラム及び立体印刷造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱や紫外線(Ultraviolet:UV)等によって硬化するインクを用いて、吐出媒体の表面に立体印刷を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、硬化性インクと着色インクとを用いて、立体印刷をする技術が開示されている。具体的には、特許文献1では、インク滴として吐出された硬化性インクが、平面状の被印刷体の表面に到達する。そして、この硬化性インクは、硬化手段によって硬化または予備硬化させることによって、被印刷体の表面に立体形状またはその前駆体を形成する。さらに、インク滴として吐出された着色インクが、被印刷体の表面への印字、および着色を行うことによって、前記表面に立体印刷がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−188826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、先ず、硬化性のインクを用いて立体形状が形成された後で、最後に着色されたインクを用いて立体形状が着色される。即ち、立体形状を形成される工程が行われた後で、別工程として立体形状を着色する工程が行われる。立体形状の形成と着色とが別工程のため、複雑な立体形状に対してきれいに着色を行うことが困難という問題があった。例えば、被印刷体から離れるに従ってサイズが大きくなる、換言すれば上側の形状が下側よりも大きい立体形状に対して着色が行われる場合、被印刷体に近い箇所(下側)での立体形状の表面は、上側の部分によって遮蔽されてしまうため、表面への着色が困難である。複雑な立体形状の表面をきれいに着色するために、立体形状自体を着色された硬化性のインクで作成する方法も考えられる。しかし、この場合は、立体形状の内部までが着色された硬化性のインクで形成されるので、色が重なった結果、色が暗くなると考えられる。
【0005】
本発明は、色が暗くならず、表面がきれいに着色された立体形状の形成を行うことが可能なインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、インクジェット記録に用いられるプログラム及び立体印刷造形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を反映した第1の課題解決手段は、吐出媒体を載置する載置台と、第1の色の光硬化型インクと、前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成されるインクジェットヘッド部と、前記インクジェットヘッド部を、前記載置台の上方に保持するフレームと、前記インクジェットヘッド部と前記載置台に載置された吐出媒体との相対位置を移動させる移動機構と、前記載置台の上方に設けられ、前記インクジェットヘッド部から吐出された光硬化型インクを硬化するために光を照射する光照射部と、前記インクジェットヘッド部が光硬化型インクを吐出する動作と、前記光照射部が光を照射する動作と、前記移動機構が前記相対位置を移動させる動作とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記インクジェットヘッド部に前記第1の色の光硬化型インクを吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記第2の色の光硬化型インクが前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、前記インクジェットヘッド部に前記第2の色の光硬化型インクを吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記吐出された第1の色及び第2の色の光硬化型インクを硬化するために前記光照射部に光を照射させることで、前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲が前記第2の色の光硬化型インクによって囲まれた複数色層を形成する複数色層形成手段と、前記複数色層形成手段を動作させることで、少なくとも1つ以上の前記複数色層が積層された積層構造を形成する積層形成手段と、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明を反映した第2の課題解決手段は、第1の課題解決手段において、前記制御部はさらに、前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記インクジェットヘッド部に前記第1の色の光硬化型インクを吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記吐出された前記第1の色の光硬化型インクを硬化するために前記光照射部に光を照射させることで、前記1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層を形成する単色層形成手段を有し、前記積層形成手段は、さらに前記単色層形成手段も動作させることで、前記複数色層及び前記単色層が複数積層された前記積層構造を形成する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明を反映した第3の課題解決手段は、第2の課題解決手段において、前記積層形成手段は、前記単色層形成手段を前記複数色層形成手段よりも多く動作させることで、前記単色層を前記複数色層よりも多く含む前記積層構造を形成する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明を反映した第4の課題解決手段は、第1〜第3の何れかの課題解決手段において、前記制御部はさらに、前記積層形成手段の動作後に、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って前記第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層を形成するように、前記インクジェットヘッド部に前記第2の色の光硬化型インクを前記積層構造の上面に対して吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記吐出された前記第2の光硬化性インクを硬化するために前記光照射部に光を照射させる上面層形成手段を有する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明を反映した第5の課題解決手段は、第4の課題解決手段において、前記上面層形成手段の動作後に、前記複数色層形成手段及び前記単色層形成手段を動作させない、ことを特徴とする。
【0011】
本発明を反映した第6の課題解決手段は、第1〜第5の何れかの課題解決手段において、前記インクジェットヘッド部は、無色透明の光硬化型インクと、前記無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成され、前記インクジェットヘッド部から前記無色透明の光硬化型インクを吐出可能か否かを判断する判断手段をさらに備え、前記制御部は、前記判断手段の判断結果が肯定の場合、前記無色透明の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定し、前記判断手段の判断結果が否定の場合、前記他の色の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定する第1の色決定手段をさらに有する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明を反映した第7の課題解決手段は、光硬化型インクを用いた吐出媒体へのインクジェット記録方法であって、第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクが囲う複数色層を形成する複数色層形成ステップと、前記複数色層形成ステップを実行することで、少なくとも1つ以上の前記複数色層を含む積層構造を形成する積層形成ステップとを備え、前記複数色層形成ステップは、第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記第1の色の光硬化型インクを吐出するとともに、前記第1の色の光硬化型インクが吐出される位置である第1吐出位置を移動する第1吐出ステップと、前記第2の色の光硬化型インクが前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、前記第2の色の光硬化型インクを吐出するとともに、前記第2の色の光硬化型インクが吐出される位置である第2吐出位置を移動する第2吐出ステップと、前記吐出された第1の色及び第2の色の光硬化型インクを硬化するために光を照射する第1硬化ステップとを有する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明を反映した第8の課題解決手段は、第7の課題解決手段において、前記1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層を形成する単色層形成ステップをさらに備え、前記単色層形成ステップは、前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記第1の色の光硬化型インクを吐出するとともに前記第1吐出位置を移動させる第3吐出ステップと、前記吐出された第1の色の光硬化型インクを硬化するために光を照射する第2硬化ステップとを有し、前記積層形成ステップは、さらに前記単色層形成ステップも実行することで、前記複数色層及び前記単色層を複数含む前記積層構造を形成する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明を反映した第9の課題解決手段は、第8の課題解決手段において、前記積層形成ステップは、前記単色層形成ステップを前記複数色層形成ステップよりも多く実行することで、前記単色層を前記複数色層よりも多く含む前記積層構造を形成する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明を反映した第10の課題解決手段は、第7〜第9の何れかの課題解決手段において、前記積層形成ステップの実行後に、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って前記第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層を形成する上面層形成ステップをさらに備え、前記上面層形成ステップは、前記第2の色の光硬化型インクが前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って拡がるように、前記第2の色の光硬化型インクを吐出するとともに、前記第2吐出位置を移動する第4吐出ステップと、前記吐出された第2の色の光硬化型インクを硬化するために光を照射する第3硬化ステップとを有する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明を反映した第11の課題解決手段は、第10の課題解決手段において、前記上面層形成ステップの実行後に、前記複数色層形成ステップ及び前記単色層形成ステップを実行しない、ことを特徴とする。
【0017】
本発明を反映した第12の課題解決手段は、第7〜第11の何れかの課題解決手段において、前記第1の色の光硬化型インクとして無色透明の光硬化型インクを吐出可能か否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップの判断結果が肯定の場合、前記無色透明の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定し、前記判断ステップの判断結果が否定の場合、前記無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定する第1の色決定ステップとをさらに備える、ことを特徴とする。
【0018】
本発明を反映した第13の課題解決手段は、第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクが囲う複数色層を形成するために、前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記第1の色の光硬化型インクと、前記第2の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成されるインクジェットヘッド部に対して、前記第1の色の光硬化型インクを吐出させる指令を行うとともに、前記インクジェットヘッド部と吐出媒体との相対位置を移動させる移動機構に対し、前記相対位置を移動させる指令を行う第1吐出指令ステップと、前記第2の色の光硬化型インクが前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、前記インクジェットヘッド部に対して前記第2の色の光硬化型インクを前記吐出媒体に対して吐出させる指令を行うとともに、前記移動機構に対し前記相対位置を移動させる指令を行う第2吐出指令ステップと、前記吐出された第1の色及び第2の色の光硬化型インクを硬化するために、前記吐出媒体に対して光を照射可能な光照射部に対して、光を照射させる指令を行う第1照射指令ステップと、をコンピュータに実現させる。
【0019】
本発明を反映した第14の課題解決手段は、第13の課題解決手段において、前記1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層を形成するために、前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記インクジェットヘッド部に対して前記第1の色の光硬化型インクを吐出させる指令を行うとともに、前記移動機構に対し前記相対位置を移動させる指令を行う第3吐出指令ステップと、前記吐出された前記第1の色の光硬化型インクを硬化するために、前記光照射部に対して光を照射させる指令を行う第2硬化指令ステップと、を有する単色層形成指令ステップをさらに備え、前記積層形成指令ステップは、さらに前記単色層形成手段も動作させることで、前記複数色層及び前記単色層を複数含む前記積層構造を形成する、ことをコンピュータに実現させる。
【0020】
本発明を反映した第15の課題解決手段は、第14の課題解決手段において、前記積層形成指令ステップは、前記単色層形成指令ステップを前記複数色層形成指令ステップよりも多く実行することで、前記単色層を前記複数色層よりも多く含む前記積層構造を形成する、ことをコンピュータに実現させる。
【0021】
本発明を反映した第16の課題解決手段は、第13〜15の何れかの課題解決手段において、前記積層形成指令ステップの動作後に、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って前記第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層を形成するために、前記インクジェットヘッド部に対して前記第2の色の光硬化型インクを前記積層構造の上面に対して吐出させる指令を行うとともに、前記移動機構に対し前記相対位置を移動させる指令を行う第4吐出指令ステップと、前記吐出された第2の色の光硬化型インクを硬化するために、光照射部に対して光を照射する指令を行う第3硬化指令ステップと、を有する、上面層形成指令ステップを、さらにコンピュータに実現させる。
【0022】
本発明を反映した第17の課題解決手段は、第16の課題解決手段において、前記上面層形成指令ステップの実行後に、前記複数色層形成指令ステップ及び前記単色層形成指令ステップを実行しない、ことをコンピュータに実現させる。
【0023】
本発明を反映した第18の課題解決手段は、第13〜17の何れかの課題解決手段において、無色透明の光硬化型インクと、前記無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成される前記インクジェットヘッド部が、前記無色透明の光硬化型インクを吐出可能か否かを判断する指令を行う判断指令ステップと、前記判断指令ステップの判断結果が肯定の場合、前記無色透明の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定し、前記判断指令ステップの判断結果が否定の場合、前記他の色の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定する第1の色決定指令ステップとを、さらにコンピュータに実現させる。
【0024】
本発明を反映した第19の課題解決手段は、所定の範囲に亘って拡がる第1の色の光硬化型インクと、前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を覆う、前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクと、からなる複数色層と、所定の範囲に亘って拡がる前記1の色の光硬化型インクからなる単色層とが、前記単色層が前記複数色層よりも多くなるように積層された積層構造と、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って拡がる前記第2の色の光硬化型インクからなる上面層と、を備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0025】
本発明を反映した第1、第7及び第13の課題解決手段においては、少なくとも1つ以上の複数色層が積層された積層構造が形成される。積層構造を形成する複数色層は、第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を、第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクが囲う構造をしている。そして、複数色層の形成は、吐出された第1の色及び第2の色のインクを、光の照射によって硬化することでなされる。従って、複数色層を積層することで、外周の所定の範囲が第2の色の光硬化型インクで囲まれた積層構造、換言すれば表面がきれいに着色された立体構造の形成が可能になる。さらに、積層構造の内部は第1の色の光硬化型インクによって形成されるので、第2の色の光硬化型インクのみで立体形状を形成した場合に比べて、色が暗くならない。
【0026】
本発明を反映した第2、第8及び第14の課題解決手段においては、積層構造の中に、複数色層に加えて第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層も含まれる。吐出媒体上に形成された積層構造が観察される場合、紙面に対して垂直方向、換言すれば積層構造の積層方向から観察される場合が多い。この積層構造が積層方向から観察される場合、複数色層の外周の所定の範囲が第2の色の光硬化型インクによって囲われるため、積層構造の外周においては、第2の色を積層方向に重ねて見ることになる。即ち、積層方向に重ねる複数色層の数が増えるほど、積層構造の外周における積層方向の光学的厚さが増大することになる。換言すれば、積層方向に重ねる複数色層の数が増えるほど、積層構造の外周における色が暗く観察される。単色層は第1の色の光硬化型インクによって形成され、第2の色の光硬化型インクは第1の色の光硬化型インクよりも濃色である。そのため、積層構造の中に単色層を含むことによって、積層構造の層の数が増大しても、積層構造の外周における積層方向の光学的厚さの増大を緩和することが可能になる。その結果、積層構造の外周における第2の色が明るく観察される立体形状が形成可能になる。
【0027】
本発明を反映した第3、第9及び第15の課題解決手段においては、積層構造の中に、単色層の方が複数色層よりも多く含まれる。そのため、積層構造の外周における第2の色がより鮮明な立体形状が形成可能になる。
【0028】
本発明を反映した第4、第10及び第16の課題解決手段においては、積層構造の上面の所定の範囲に亘って、第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層が形成される。前記したように、積層構造が形成される際に、積層構造の外周の所定の範囲は第2の色の光硬化型インクによって囲われる。そして、その積層構造の上面に上面層が形成されることで、外側全体が第2の色で着色された立体形状が形成可能になる。
【0029】
本発明を反映した第5、第11及び第17の課題解決手段においては、上面層の上面には、複数色層及び単色層が形成されない。上面層が積層構造の最上面に設けられるので、上面層の色が複数色層及び単色層によって減衰されない。従って、外側全体が第2の色で着色された、さらに鮮やかな色彩の立体形状の形成が可能になる。
【0030】
本発明を反映した第6、第12及び第18の課題解決手段においては、無色透明の光硬化型インクが吐出可能な場合、無色透明の光硬化型インクが第1の色の光硬化型インクとして用いられる。一方、無色透明の光硬化型インクが吐出不可能な場合、無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクが第1の色の光硬化型インクとして用いられる。そのため、透明の光硬化型インクが吐出不可能な場合であっても、立体形状の形成が可能になる。
【0031】
本発明を反映した第19の課題解決手段においては、第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を第2の色の光硬化型インクが囲う複数色層と、所定の範囲に亘って拡がる前記1の色の光硬化型インクからなる単色層とを、前記単色層が前記複数色層よりも多くなるように含む積層構造が備えられる。そして、その積層構造の上面には、所定の範囲に亘って拡がる前記第2の色の光硬化型インクからなる上面層が設けられる。そのため、第2の色の光硬化型インクのみで形成された層を積層する場合に比べて、第1の色の光硬化型インクが用いられることにより、明るい色の積層構造を提供することが可能になる。また、単色層が複数色層よりも多く積層構造に含まれるため、積層構造の外周における第2の色がより明るく表わされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、印刷によって形成される積層構造1000を説明する図。
【図2】上記第1の実施形態に係る、インクジェット記録装置1の概要を示す模式図。
【図3】上記第1の実施形態に係る、印刷部10の拡大模式図。
【図4】上記第1の実施形態に係る、インクジェット記録装置1の電気的構成を示すブロック図。
【図5】上記第1の実施形態に係る、RAM420及びROM430に記憶される内容を示す図。
【図6】上記第1の実施形態に係る、印刷処理を説明するフローチャート。
【図7】上記第1の実施形態に係る、積層構造形成手段430cの実行を説明するフローチャート。
【図8】上記第1の実施形態に係る、単色層形成手段430bの実行を説明するフローチャート。
【図9】上記第1の実施形態に係る、複数色層形成手段430aの実行を説明するフローチャート。
【図10】上記第1の実施形態に係る、上面層形成手段430dの実行を説明するフローチャート。
【図11】上記第1の実施形態の実施例に係る、UV硬化型インクの組成を説明する図。
【図12】上記第1の実施例に係る、積層構造の特性を説明する図。
【図13】変形例に係る、インクジェットヘッド部1100の構造を示す模式図。
【図14】参考例及び比較例2を説明する図。
【0033】
本発明を反映した上記課題解決手段を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。上記課題解決手段は以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に説明する各構成において、所定の構成を省略することができる。また、以下に説明する各処理において、所定のステップを省略することができる。
【0034】
<第1の実施形態>
[積層構造の概要]
本発明は、UV硬化型インク等の光硬化型インクを用いて立体印刷を行うインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、プログラム及び立体印刷造形物に関する。本発明で形成される立体印刷造形物は、図1(A)〜(C)に示すような構造を積層することで得られる。ここでは、図1を用いて本発明で得られる立体印刷造形物の概要を説明する。
【0035】
図1(A)は、第1の色の光硬化型インクを用いて形成される単色層1001を示す。単色層1001は、硬化した第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる構造である。図1(A)においては、一例として、第1の色の光硬化型インクが矩形状に広がる。第1の色の光硬化型インクとしては、無色透明なUV硬化型のクリアインクが用いられる。しかし、UV硬化型のホワイトインク、イエローインク等の比較的淡色のインクが第1の色の光硬化型インクとして用いられても差し支えない。
【0036】
図1(B)は、第1の色及び第2の色の光硬化型インクを用いて形成される複数色層1002を示す。複数色層1002は、硬化した第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲が硬化した第2の色の光硬化型インクによって囲まれる構造である。ここで、第2の色の光硬化型インクは、第1の色の光硬化型インクよりも濃色である。図1(B)においては、一例として、第1の色の光硬化型インクが矩形状に広がり、その外周全てが第2の色の光硬化型インクによって囲まれる。但し、第2の色の光硬化型インクは、第1の色の光硬化型インクの外周の一部だけを覆っても差し支えない。第2の色の光硬化型インクとしては、例えばUV硬化型のイエローインク、シアンインク、マゼンダインク、ブラックインク及びこれらのインクの混合物などが利用可能である。
【0037】
ここで、第2の色の光硬化型インクが第1の色の光硬化型インクよりも濃色であるという言葉の説明をおこなう。定性的には、同量のインクを透かして背景を目視した場合に、背景の視認が困難なインク程、濃色であると定義する。定量的には、第1の色の光硬化型インクと第2の色の光硬化型インクとが共に色彩が定義可能な場合であれば、第2の色の光硬化型インクが第1の色の光硬化型インクよりも明度が低いことを意味する。しかし、前記した様に、第1の色の光硬化型インクとしてクリアインクが用いられる場合、クリアインクは無色透明であるため、色彩の定義が不可能である。そこで、本明細書中を通して、色彩が定義可能なインクは、クリアインクよりも濃色であると定義する。即ち、白色は全ての色の中で最も明度が高いが、ホワイトインクはクリアインクよりも濃色であるとされる。換言すれば、第1の色の光硬化型インクとしてクリアインクが用いられる場合、第2の色の光硬化型インクとしてホワイトインクが用いられても良い。
【0038】
図1(C)は、第2の色の光硬化型インクを用いて形成される上面層1003を示す。上面層1003は、硬化した第2の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる構造である。この上面層1003は、後記する積層構造1000の積層方向における最上面に設けられる。尚、図1(C)においては、上面層1003は、積層構造1000の積層方向における最上面の全面を覆う。しかし、上面層1003は、積層構造1000の積層方向における最上面の一部だけを覆っても差し支えない。
【0039】
図1(D)は、前記した単色層1001、複数色1002層及び上面層1003によって形成される積層構造1000を示す。この積層構造1000は、単色層1001を複数色層1002よりも多く含み、積層方向の最上面に上面層1003が設けられる。上面層1003が積層構造1000の最上面に設けられるので、上面層1003の色が複数色層1002及び単色層1001によって減衰されない。図1(D)においては、一例として、20層の単色層1001a、2層の複数色層1002a、20層の単色層1001b、2層の複数色層1002b、20層の単色層1001c、2層の上面層1003aの順番に積層した積層構造1000が示される。尚、図1(D)においては、複数色層1002において第2の色の光硬化型インクが積層方向に直交する方向に飛び出ているように見える。しかし、この表現は理解を容易にするためのものであり、実際に形成される単色層1001、複数色層1002及び上面層1003において、積層方向に直交する方向におけるサイズは略同一である。
【0040】
[インクジェット記録装置1の概要]
図2(A)は、上記した積層構造1000を形成するための、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置1の斜視図である。インクジェット記録装置1は、印刷部10と、光照射部20と、搬送部30とを有する。インクジェット記録装置1の外装は、筺体2によって覆われる。インクジェット記録装置1のY正方向側における、筺体2のフレームがZ方向正側に膨出した膨出箇所2aには、印刷部10が内蔵される。膨出箇所2aのX正方向側には、印刷部10に含まれるインクジェットヘッド部110に対して各色のインクを供給するための、イエロータンク111a、マゼンダタンク112a、シアンタンク113a及びクリアタンク114aが配置される。膨出箇所2aのY負方向側には、後記する光照射部20からのUV光が印刷部10へ到達しないように、遮光板2a−1が設けられる。この遮光板2a−1には、膨出箇所2aの内部に連通する開口箇所2dが設けられる。インクジェット記録装置1の膨出箇所2aに対してY負方向側には、一対の柱状箇所2bが、筐体2からZ正方向側に向けて立設される。一対の柱状箇所2bのZ正方向側の端部には、梁状箇所2cがX方向に平行に橋架される。この梁状箇所2cの内部には、光照射部20が内蔵される。梁状箇所2cのZ方向負側には、搬送部30が設けられる。この搬送部30は、Y方向に平行に設けられ、開口箇所2dを介して膨出箇所2aの内部に侵入する。搬送部の上面には、吐出媒体STが載置される。筺体2のY負方向側の側面には、ユーザからの電源ON/OFF等、様々な操作を受け付ける操作部500が設けられる。筺体2のX正方向側の側面には、インクジェット記録装置1とPC等の外部装置とを電気的に接続する外部I/F600が設けられる。
【0041】
図2(B)及び図3を用いて、印刷部10の説明を行う。図2(B)は、インクジェット記録装置1の、図2(A)でA−Aで示された箇所をY―Z平面で切断した断面模式図である。図3は、印刷部10の拡大模式図である。膨出箇所2aに内蔵される印刷部10には、インクジェットヘッド部110、インクジェットヘッド移動機構130、ガイドシャフト140及びインク吸引機構150が設けられる。インクジェットヘッド部110は、イエローの光硬化型インクを吐出可能なイエローヘッド111と、マゼンダの光硬化型インクを吐出可能なマゼンダヘッド112と、シアンの光硬化型インクを吐出可能なシアンヘッド113と、無色透明な光硬化型インクを吐出可能なクリアヘッド114とを有する。イエローヘッド111、マゼンダヘッド112、シアンヘッド113及びクリアヘッド114は、中空のチューブを介して、イエロータンク111a、マゼンダタンク112a、シアンタンク113a、クリアタンク114aに夫々接続される。ガイドシャフト140は、インクジェットヘッド部110を後記する載置台310の上方に保持する。ガイドシャフト140は、X方向に平行になるようにして、膨出箇所2aのX方向の両端に固定される。インクジェットヘッド部110は、このガイドシャフト140に沿って摺動可能に、ガイドシャフト140に取り付けられる。インクジェットヘッド移動機構130は、インクジェットヘッド部110を、ガイドシャフト140に沿って、X方向に移動させる。インクジェットヘッド移動機構130は、例えばタイミングベルトと、そのタイミングベルトを移動させるモーターによって構成される。インクジェットヘッド吸引部150は、ガイドシャフト140のX負方向側の端部の下に設けられる。インクジェットヘッド吸引部150は、非図示の昇降機構によってZ方向に昇降可能に構成される。インクジェットヘッド吸引部150はまた、非図示のポンプによって、キャップ150aの内部を吸引可能に構成される。インクジェットヘッド部110が、ガイドシャフト140のX負方向側の端部に移動したとき、インクジェットヘッド吸引部150はZ方向正側に上昇する。上昇したインクジェットヘッド吸引部150は、インクジェットヘッド部110のZ方向負側の面(下面)に密着し、各色のヘッド111〜114の下面に存在するノズルに各色のインクが達するまで吸引を行う。
【0042】
梁状箇所2cに内蔵される光照射部20は、前記したUV硬化型の各色のインクを硬化させるために、UV光を照射する。光照射部20には、UVランプ220が設けられる。UVランプ220としては、メタルハライドランプが用いられる。しかし、UV−LEDが用いられても差し支えない。
【0043】
搬送部30は、吐出媒体STが載置される載置台310と、その載置台310をY方向及びZ方向に移動させる載置台移動機構320(図3参照)によって構成される。載置台310は、例えばX方向に幅広のタイミングベルトで構成される。載置台移動機構320は、載置台310に載置された吐出媒体STを、インクジェットヘッド部110の下と、UVランプ220の下に移動する。載置台移動機構320はまた、インクジェットヘッド部110からインクが吐出される際には、インクジェットヘッド部110のインク吐出動作及びインクジェットヘッド移動機構130のX方向への移動と連動して、Y方向に微少移動を行う。載置台移動機構320はまた、インクジェットヘッド部110と吐出媒体STとの距離が一定に保たれる様に、Z方向に微少移動を行う。
【0044】
[インクジェット記録装置1の機能ブロック]
図4は、インクジェット記録装置1の機能的構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1の機能的構成は、印刷部10と、光照射部20と、搬送部30と、制御部40と、操作パネル500と、外部I/F600とを有する。これらの要素は、相互にバス700によって電気的に接続される。
【0045】
制御部40は、印刷部10が光硬化型インクを吐出する動作と、光照射部20が光を照射する動作と、印刷部10及び搬送部30がインクジェットヘッド部110と吐出媒体STとの相対位置を移動させる動作とを制御する。制御部40は、CPU410、RAM420及びROM430を有する。CPU410は、RAM420及びROM430と協動して、各種演算、処理を行う。RAM420は、CPU410で処理される各種プログラムや、CPU410が処理するデータを、そのアドレス空間に一時的に記憶する。ROM430は、インクジェット記録装置1を制御するための各種プログラムを記憶する。
【0046】
印刷部10は、インクジェットヘッド部110を用いたインクの吐出やインクジェットヘッド部110のX方向への移動を行う。印刷部10は、インクジェットヘッド部110と、インク吐出制御回路120と、インクジェットヘッド移動機構130と、インクジェットヘッド吸引機構150とを有する。インクジェットヘッド移動機構130は、CPU410からのヘッド移動信号に従って、インクジェットヘッド部110をX方向に移動する。インクジェットヘッド移動機構130に含まれるモーターは、エンコーダを内蔵するステッピングモータ等であり、回転角度と原点位置を検出可能である。インク吐出制御回路120は、CPU410からのインク吐出信号に従って、吐出すべきインクの色を決定する。決定された吐出すべきインクの色は、色選択信号としてインクジェットヘッド部110に送信される。インク吐出制御回路120はまた、インクジェットヘッド部110からのインク残量信号に従って、各色のヘッド111〜114から、各色のインクが吐出可能かどうかを判断する判断手段として働く。この判断による結果は、吐出可否信号として、CP410に対して送信される。インクジェットヘッド部110は、インク吐出制御回路120からの色選択信号に従って、吐出すべき色のヘッドからインクを吐出する。インクジェットヘッド部110はまた、インクに当てた光を光センサで受光する光学式や、インクの消費量を記憶するドットカウンター式等の方法を用いて、各色のインクの残量を検出可能に構成される。検知された各色のインクの残量は、インク残量信号としてインク吐出制御回路120に送信される。インクジェットヘッド吸引機構150は、CPU410からの吸引信号に従って、吸引動作とキャップ150aの昇降とを行う。インクジェットヘッド吸引機構150の昇降動作は、エンコーダを内蔵するステッピングモータを用いて行われる。そのため、インクジェットヘッド吸引機構150は、Z方向の移動量及び原点位置を検出可能である。
【0047】
光照射部20は、光源駆動回路210及びUVランプ220を備える。光源駆動回路210は、CPU410からの光源制御信号に応じて、UVランプ光源200の点灯、消灯、発光強度等を制御するための光源駆動信号を、UVランプ220に対して送信する。UVランプ220は、光源駆動回路210からの光源駆動信号に応じて、UV光を照射する。
【0048】
搬送部30は、載置台移動機構320を有する。載置台移動機構320は、エンコーダを内蔵するステッピングモータを有し、載置台310の移動量及び原点位置を検出可能である。載置台移動機構320は、CPU410からの搬送信号に応じ、載置台310をY方向及びZ方向に移動させる。
【0049】
操作パネル500は、インクジェット記録装置1の起動、停止、印刷開始等の操作をユーザから受け付けるための様々な入力ボタンを有する。操作パネル500に対して入力されたユーザからの操作は、操作信号としてCPU410に対して送信される。
【0050】
外部I/F600は、インクジェット記録装置1と外部との通信を行うための構成である。インクジェット記録装置1は、外部装置であるPC800から、この外部I/F600を介して必要な画像データを受信する。外部I/F600は、例えばUSB(UniversalSerial Bus)やIEEE1394等、周知のインターフェスによって構成可能である。
【0051】
図5(A)は、RAM420がそのアドレス空間に一時記憶する、データの内容を説明する図である。RAM420は、単色層画像データ420a、単色層印刷回数420b、複数色層画像データ420c、複数色層印刷回数420d、上面層画像データ420e及び上面層印刷回数420fを一時記憶する。これらのデータは全て、外部I/F600を介してPC800から受信される。単色層画像データ420aは、単色層1001(図1(A)参照)を印刷するための画像データである。単色層印刷回数420bは、後記する単色層形成処理(図8参照)において、単色層1001が印刷されるべき回数を示す値である。複数色層画像データ420cは、複数色層1002(図1(B)参照)を印刷するための画像データである。複数色層印刷回数420dは、後記する複数色層形成処理(図9参照)において、複数色層1002が印刷されるべき回数を示す値である。上面層画像データ420eは、上面層1003(図1(C)参照)を印刷するための画像データである。上面層印刷回数420fは、後記する上面層形成処理(図10参照)において、上面層1003が印刷されるべき回数を示す値である。
【0052】
図5(B)は、ROM430に記憶された各種処理手段の内容を説明する図である。これらの処理手段は、CPU410が、RAM420上で、ROM430に記憶されたこれらの処理手段のためのプログラムを実行することで行われる。ROM430には、大きく分けて、複数色層形成手段430a、単色層形成手段430b、積層構造形成手段430c、上面層形成手段430d及び第1の色決定手段430eを有する。以下、これらの処理手段の説明を行う。
【0053】
複数色層形成手段430aは、複数色層1002を形成する処理の際に実行されるプログラムである。複数色層形成手段430aは、第1吐出手段430a1、第2吐出手段430a2及び第1硬化手段430a3を含む。第1吐出手段430a1が実行されると、CPU410は、第1の色の光硬化型インクに相当するインクを吐出するように、インク吐出制御回路120に対して複数色層画像データ420cに基づいたインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、吐出される第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、複数色層画像データ420cに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。このとき、インクジェットヘッド移動機構130及び載置台移動機構320は協動して動作し、インクジェットヘッド部110と載置台310に載置された吐出媒体STとの相対位置を移動させることにより、第1の色の光硬化型インクが吐出される位置である第1吐出位置を移動する。第2吐出手段430a2が実行されると、CPU410は、第2の色の光硬化型インクに相当するインクを吐出するように、インク吐出制御回路120に対して複数色層画像データ420cに基づいたインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、吐出される第2の色の光硬化型インクが拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、複数色層画像データ420cに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。このとき、インクジェットヘッド移動機構130及び載置台移動機構320は協動して動作し、第2の色の光硬化型インクが吐出される位置である第2吐出位置を移動する。第1硬化手段430a3が実行されると、CPU410は、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310に載置された吐出媒体STを、既に点灯済みのUVランプ220の下に移動する。吐出媒体STは、吐出された第1の色及び第2の色の光硬化型インクが硬化するまで、UVランプ220の下に配置される。
【0054】
単色層形成手段430bは、単色層1001を形成する処理の際に実行されるプログラムである。単色層形成手段430bは、第3吐出手段430b1及び第2硬化手段430b2を含む。第3吐出手段430b1が実行されると、CPU410は、第1の色の光硬化型インクに相当するインクを吐出するように、インク吐出制御回路120に対して単色層画像データ420aに基づいたインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、吐出される第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、単色層画像データ420aに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。このとき、インクジェットヘッド移動機構130及び載置台移動機構320は協動して動作することで、第1吐出位置を移動する。第2硬化手段430b2が実行されると、CPU410は、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310に載置された吐出媒体STを、既に点灯済みのUVランプ220の下に移動する。吐出媒体STは、吐出された第1の色の光硬化型インクが硬化するまで、UVランプ220の下に配置される。
【0055】
積層構造形成手段430cは、単色層1001及び複数色層1002を積層する処理の際に実行されるプログラムである。積層構造形成手段430cが実行されると、CPU410は、単色層形成手段430b及び複数色層形成手段430aを複数回実行することで、複数色層1002及び単色層1001を複数含む積層構造1000を形成する。このとき、単色層1001が複数色層1002よりも多く積層構造1000に含まれる様に、積層構造形成手段430cは、単色層形成手段430bを複数色層形成手段430aよりも多く実行する。
【0056】
上面層形成手段430dは、上面層1003を形成する処理の際に実行されるプログラムである。上面層形成手段430dは、第4吐出手段430d1及び第3硬化手段430d2を含む。第4吐出手段430d1が実行されると、CPU410は、第2の色の光硬化型インクに相当するインクを吐出するように、インク吐出制御回路120に対して上面層画像データ420eに基づいたインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、吐出される第2の色の光硬化型インクが積層構造1000の上面の所定の範囲に亘って拡がるように、上面層画像データ420eに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。このとき、インクジェットヘッド移動機構130及び載置台移動機構320は協動して動作することで、第2吐出位置を移動する。第3硬化手段430d2が実行されると、CPU410は、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310に載置された吐出媒体STを、既に点灯されたUVランプ220の下に移動する。吐出媒体STは、吐出された第2の色の光硬化型インクが硬化するまで、UVランプ220の下に配置される。
【0057】
第1の色決定手段430eは、第1の色の光硬化型インクとして用いられるインクの色を決定する際に実行されるプログラムである。第1の色決定手段430eが実行されると、CPU410は、インクジェットヘッド部110からのインク残量信号に応じてインク吐出制御回路が送信する吐出可否信号を受信し、クリアヘッド114からクリアインクが吐出可能かどうかを判断する。クリアインクが吐出可能な場合、CPU410は、クリアインクを第1の色の光硬化型インクとして決定する。一方、クリアインクが吐出不可能な場合、CPU410は、吐出可能な色の中ではクリアインクの次に淡色であるイエローインクを、第1の色の光硬化型インクとして決定する。
【0058】
[印刷処理の流れ]
図6は、インクジェット記録装置1が行う印刷処理を説明するフローチャートを示す。図6に示される処理は、ユーザが操作パネル500を用いて電源ONの操作を行うことによって発生した操作信号を、CPU410が受信したときに開始される。CPU410は、ステップS10において、初期化処理を行う。この初期化処理で、CPU410は、RAM420に一時記憶される各種データをクリアする。CPU410は、インクヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、インクヘッド部110をX負方向側の端部に移動させる。そして、CPU410は、インクジェットヘッド吸引機構150に対して吸引信号を送信することで、インクジェットヘッド吸引機構150がインクジェットヘッド部110のZ方向負側の面(下面)に密着するように、インクジェットヘッド吸引機構150を上昇させる。密着したインクジェットヘッド吸引機構150は、各色のヘッド111〜114の下面に存在するノズルに各色のインクが達するまで吸引を行うことで、各色のヘッド111〜114を吐出可能な状態にする。CPU410はさらに、光源駆動回路210に光源制御信号を送信することで、UVランプ220を点灯させる。UVランプ220にはメタルハライドランプが用いられるため、光量が安定するまでに数分程度の時間が必要となる。そのため、UVランプ220は、図6に示される処理が実行される間、常時点灯される。その後、CPU410は、処理をステップS20に移行する。
【0059】
ステップS20において、CPU410は、ROM440に記憶されている積層構造形成手段430c(詳細は図7を用いて後述)を実行する。即ち、CPU410は、単色層形成手段430b及び複数色層形成手段430aを複数回実行することで、複数色層1002及び単色層1001を複数含む積層構造1000を形成する。このとき、単色層1001が複数色層1002よりも多く積層構造1000に含まれる様に、積層構造形成手段430cは、単色層形成手段430bを複数色層形成手段430aよりも多く実行する。積層構造形成手段430cの実行が終了すると、CPU410は、処理をステップS30に移行する。
【0060】
ステップS30において、CPU410は、ROM440に記憶されている上面層形成手段430d(詳細は図10を用いて後述)を実行する。上面層形成手段430dの実行によって、図1(D)に示されるように、2層の上面層1003cを有する積層構造1000が形成される。そして、CPU410は、一連の印刷処理を終了する。
【0061】
[積層構造形成処理]
図7は、図6のステップS20として示される、積層構造形成処理を詳細に説明するフローチャートである。ステップS210において、CPU410は、ROM440に記憶されている単色層形成手段430b(詳細は図8を用いて後述)を実行する。ステップS210によって、図1(D)に示される、20層の単色層1001aが形成される。その後、CPU410は、処理をステップS220に移行する。
【0062】
ステップS220において、CPU410は、ROM440に記憶されている複数色層形成手段430a(詳細は図9を用いて後述)を実行する。ステップS220によって、図1(D)に示される、2層の複数色層1002aが形成される。その後、CPU410は、処理をステップS230に移行する。
【0063】
ステップS230において、CPU410は、ROM440に記憶されている単色層形成手段430bを実行する。ステップS230によって、図1(D)に示される、20層の単色層1001bが形成される。その後、CPU410は、処理をステップS240に移行する。
【0064】
ステップS240において、CPU410は、ROM440に記憶されている複数色層形成手段430aを実行する。ステップS220によって、図1(D)に示される、2層の複数色層1002bが形成される。その後、CPU410は、処理をステップS250に移行する。
【0065】
ステップS250において、CPU410は、ROM440に記憶されている単色層形成手段430bを実行する。ステップS230によって、図1(D)に示される、20層の単色層1001cが形成される。その後、CPU410は、積層構造形成処理を終了する。
【0066】
[単色層形成処理]
図8は、図7のステップS210、S230及びS250として実行される、単色層形成手段430bにて行われる処理を説明するフローチャートである。ステップS2101において、CPU410は、外部I/F600を介してPC800から受信された単色層画像データ420a及び単色層印刷回数420bが、RAM420に一時記憶されているか否かを判断する。ステップS2101における判断が肯定(Y)の場合、CPU410は、処理をステップS2102に移行する。一方、ステップS2101における判断が否定(N)の場合、CPU410は、単色層画像データ420a及び単色層印刷回数420bが外部I/F600を介してPC800から受信され、RAM420に一時記憶されるまで、ステップS2101を繰り返す。
【0067】
ステップS2102において、CPU410は、吐出媒体STをインクジェットヘッド部110の下に移動させるために、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310をY方向正側に移動させる。その後、CPU410は、処理をステップS2103に移行する。
【0068】
ステップS2103において、CPU410は、第1の色決定手段430eを実行する。具体的には、CPU410は、インクジェットヘッド部110からのインク残量信号に応じてインク吐出制御回路が送信する吐出可否信号を受信し、クリアヘッド114からクリアインクが吐出可能かどうかを判断する。この判断が行われることによって、クリアインクが吐出不可能な場合であっても、イエローインクが吐出可能であれば、単色層1001を形成することが可能になる。ステップS2103の判断結果が肯定(Y)の場合、CPU410は、クリアインクを第1の色の光硬化型インクとして決定し、処理をステップS2104に移行する。一方、ステップS2103の判断結果が否定(N)の場合、CPU410は、イエローインクを第1の色の光硬化型インクとして決定し、処理をステップS2105に移行する。
【0069】
ステップS2104において、CPU410は、第3吐出手段430b1を実行する。具体的には、CPU410は、単色層画像データ420aに基づいたクリアインクの吐出が行われるように、インク吐出制御回路120に対してインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、クリアヘッド114から吐出されるクリアインクが所定の範囲に亘って拡がるように、単色層画像データ420aに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。その後、CPU410は、処理をステップS2106に移行する。
【0070】
ステップS2105において、CPU410は、第3吐出手段430b1を実行する。具体的には、CPU410は、単色層画像データ420aに基づいたイエローインクの吐出が行われるように、インク吐出制御回路120に対してインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、イエローヘッド111から吐出されるイエローインクが所定の範囲に亘って拡がるように、単色層画像データ420aに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。その後、CPU410は、処理をステップS2106に移行する。
【0071】
ステップS2106及びS2107において、CPU410は、第2硬化手段430b2を実行する。具体的には、ステップS2106においてCPU410は、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310に載置された吐出媒体STを、既に点灯済みのUVランプ220の下に移動する。その後、CPU410は、処理をステップS2107に移行する。ステップS2107において、CPU410は、吐出されたクリアインク又はイエローインクが硬化するように、吐出媒体STをUVランプ220の下に配置する。具体的には、CPU410は、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、吐出されたクリアインク又はイエローインクがUV光の照射範囲に5秒間程度含まれるように、載置台310を移動する。UV光の照射範囲は、例えば載置台310においてY方向に50mm程度の拡がりを持つ。その後、CPU410は、処理をステップS2108に移行する。
【0072】
ステップS2108において、CPU410は、今までに印刷された単色層1001の数が、RAM420に一時記憶される単色層印刷回数420bと同じになったか否かを判断する。ステップS2108の判断が肯定(Y)の場合、CPU410は、単色層形成手段430bの実行を終了する。一方、ステップS2108の判断が否定(N)の場合、CPU410は、処理をステップS2102に戻す。即ち、単色層1001が単色層印刷回数420bと同じ数だけ形成されるまで、ステップS2102〜S2107の処理を繰り返すことで、単色層1001が順次積層される。例えば、図1(D)に示される積層構造1000が形成される場合、単色層印刷回数420bとして「20」がRAM420に一時記憶されるので、単色層1001の数が20層に達するまで、S2102〜S2107の処理が繰り返される。
【0073】
[複数色層形成処理]
図9は、図7のステップS220及びS240として実行される、複数色層形成手段430aにて行われる処理を説明するフローチャートである。ステップS2201において、CPU410は、外部I/F600を介してPC800から受信された複数色層画像データ420c及び複数色層印刷回数420dが、RAM420に一時記憶されているか否かを判断する。ステップS2201における判断が肯定(Y)の場合、CPU410は、処理をステップS2202に移行する。一方、ステップS2201における判断が否定(N)の場合、CPU410は、複数色層画像データ420c及び複数色層印刷回数420dが外部I/F600を介してPC800から受信され、RAM420に一時記憶されるまで、ステップS2201を繰り返す。
【0074】
ステップS2202おいて、CPU410は、吐出媒体STをインクジェットヘッド部110の下に移動させるために、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310をY方向正側に移動させる。その後、CPU410は、処理をステップS2203に移行する。
【0075】
ステップS2203において、CPU410は、図8のステップS2102と同様に、第1の色決定手段430eを実行する。この判断が行われることによって、クリアインクが吐出不可能な場合であっても、イエローインクが吐出可能であれば、複数色層1002を形成することが可能になる。ステップS203の判断結果が肯定(Y)の場合、CPU410は、クリアインクを第1の色の光硬化型インクとして決定し、処理をステップS2204に移行する。一方、ステップS2203の判断結果が否定(N)の場合、CPU410は、イエローインクを第1の色の光硬化型インクとして決定し、処理をステップS2205に移行する。
【0076】
ステップS2204において、CPU410は、第1吐出手段430a1を実行する。具体的には、CPU410は、複数色層画像データ420cに基づいたクリアインクの吐出が行われるように、インク吐出制御回路120に対してインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、クリアヘッド114から吐出されるクリアインクが所定の範囲に亘って拡がるように、複数色層画像データ420cに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。その後、CPU410は、処理をステップS2206に移行する。
【0077】
ステップS2205において、CPU410は、第1吐出手段430b1を実行する。具体的には、CPU410は、複数色層画像データ420cに基づいたイエローインクの吐出が行われるように、インク吐出制御回路120に対してインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、イエローヘッド111から吐出されるイエローインクが所定の範囲に亘って拡がるように、複数色層画像データ420cに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。その後、CPU410は、処理をステップS2206に移行する。
【0078】
ステップS2206において、CPU410は、第2吐出手段430a2を実行する。具体的には、CPU410は、複数色層画像データ420cに基づいて、イエローヘッド111、マゼンタヘッド112及びシアンヘッド113の少なくとも1つから第2の色の光硬化型インクに相当するインクが吐出されるように、インク吐出制御回路120に対してインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、吐出される第2の色の光硬化型インクが拡がるクリアインク又はイエローインクの外周の所定の範囲を囲うように、複数色層画像データ420cに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。その後、CPU410は、処理をステップS2207に移行する。尚、図9においては、第1吐出手段430a1(S2204又はS2205)が実行された後で、第2吐出手段430a2(S2206)が実行される。しかし、実際にはこれらの動作は並行して行われており、時間的な順序は存在しない。
【0079】
ステップS2207及びS2208において、CPU410は、第1硬化手段430a3を実行する。この処理は、前記した第2硬化手段430b2(図8のS2106及びS2107を参照)と略同様の処理であるので、詳細は省略される。複数色層1002を形成するために、クリアインクの硬化と第2の色の光硬化型インクの硬化が一度に行われるため、効率良く積層構造1000の形成を行うことが可能になる。ステップS2207及びS2208の完了後、CPU410は、処理をステップS2209に移行する。
【0080】
ステップS2209において、CPU410は、今までに印刷された単色層1001の数が、RAM420に一時記憶される単色層印刷回数420bと同じになったか否かを判断する。ステップS2209の判断が肯定(Y)の場合、CPU410は、複数色層形成手段430aの実行を終了する。一方、ステップS2209の判断が否定(N)の場合、CPU410は、処理をステップS2202に戻す。即ち、複数色層1001が複数色層印刷回数420dと同じ数だけ形成されるまで、ステップS2202〜ステップS2208の処理を繰り返すことで、複数色層1002が順次積層される。例えば、図1(D)に示される積層構造1000が形成される場合、複数色層印刷回数420dとして「2」がRAM420に一時記憶されるので、複数色層1002の数が2層に達するまで、S2202〜S2208の処理が繰り返される。
【0081】
[上面層形成処理]
図10は、図6のステップS230として実行される、上面層形成手段430dにて行われる処理を説明するフローチャートである。ステップS2301において、CPU410は、外部I/F600を介してPC800から受信された上面層画像データ420e及び上面層印刷回数420fが、RAM420に一時記憶されているか否かを判断する。ステップS2301における判断が肯定(Y)の場合、CPU410は、処理をステップS2302に移行する。一方、ステップS2301における判断が否定(N)の場合、CPU410は、上面層画像データ420e及び上面層印刷回数420fが外部I/F600を介してPC800から受信され、RAM420に一時記憶されるまで、ステップS2301を繰り返す。
【0082】
ステップS2302において、CPU410は、吐出媒体STをインクジェットヘッド部110の下に移動させるために、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信することで、載置台310をY方向正側に移動させる。その後、CPU410は、処理をステップS2303に移行する。
【0083】
ステップS2303において、CPU410は、第4吐出手段430d1を実行する。具体的には、CPU410は、イエローヘッド111、マゼンタヘッド112及びシアンヘッド113の少なくとも1つから第2の色の光硬化型インクに相当するインクが吐出されるように、インク吐出制御回路120に対して上面層画像データ420eに基づいたインク吐出信号を送信する。そして、CPU410は、吐出される第2の色の光硬化型インクが積層構造1000の上面の所定の範囲に亘って拡がるように、上面層画像データ420eに基づいて、インクジェットヘッド移動機構130に対してヘッド移動信号を送信し、載置台移動機構320に対して搬送信号を送信する。その後、CPU410は、処理をステップS2304に移行する。
【0084】
ステップS2304及びS2305において、CPU410は、第3硬化手段430d2を実行する。この処理は、前記した第2硬化手段430b2(図8のS2106及びS2107を参照)と略同様の処理であるので、詳細は省略される。ステップS2304及びS2305の完了後、CPU410は、処理をステップS2306に移行する。
【0085】
ステップS2306において、CPU410は、今までに印刷された上面層1003の数が、RAM420に一時記憶される上面層印刷回数420fと同じになったか否かを判断する。ステップS2306の判断が肯定(Y)の場合、CPU410は、上面層形成手段430dの実行を終了する。一方、ステップS2306の判断が否定(N)の場合、CPU410は、処理をステップS2302に戻す。即ち、上面層1003が上面層印刷回数420fと同じ数だけ形成されるまで、ステップS2302〜S2305の処理を繰り返すことで、上面層1003が順次積層される。例えば、図1(D)に示される積層構造1000が形成される場合、上面層印刷回数420fとして「2」がRAM420に一時記憶されるので、上面層1003の数が2層に達するまで、S2302〜S2305の処理が繰り返される。
【0086】
<第1実施例>
ここでは、実際にUV硬化型インクを用いて形成された積層構造1000(図1(D)参照)の特性を計測する。
【0087】
[UV硬化型インクの組成]
図11(A)は、本実施例で用いられるUV硬化型インクの組成を説明する図である。本実施例で用いられるUV硬化型インクは、UV硬化型樹脂と、インクの色に対応した各種顔料と、顔料分散剤と、光カチオン重合開始剤とを含有する。
【0088】
UV硬化型樹脂としては、多官能エポキシ化合物と、オキセタン化合物とが含有される。具体的には、顔料を含有しないクリアインクは、多官能エポキシ化合物として、ダイセル化学工業社の「セロキサイド2021P」を19.5重量%、ダイセル化学工業社の「セロキサイド3000」を58重量%含み、オキセタン化合物として、東亞合成社の「OXT−213」を19.5重量%含む。顔料を含有するマゼンダインク、イエローインク及びシアンインクは、多官能エポキシ化合物として、ダイセル化学工業社の「セロキサイド2021P」を17.5重量%、ダイセル化学工業社の「セロキサイド3000」を56重量%含み、オキセタン化合物として、東亞合成社の「OXT−213」を17.5重量%含む。
【0089】
本実施例で用いられるUV硬化型インクには、各色に対応した顔料が用いられる。マゼンダインクは、顔料としてクラリアント社の「トナーマゼンダE02」を1.8重量%と、顔料分散剤としてLubrizol社の「Solsperse24000」を1.2重量%含有する。イエローインクは、顔料として東洋インキ製造社の「LIONOGEN YELLOW 1010」を1.8重量%と、顔料分散剤としてLubrizol社の「Solsperse24000」を1.2重量%含有する。シアンインクは、顔料として東洋インキ製造社の「LIONOL BLUE FG−7351」を1.8重量%と、顔料分散剤としてLubrizol社の「Solsperse24000」を1.2重量%含有する。尚、クリアインクは顔料及び顔料分散剤を含有しない。
【0090】
光カチオン重合開始剤としては、ダウケミカル社の「UVI−6992」が、クリアインクには3重量%、顔料を有する各色のインクには6重量%含有される。
【0091】
[UV硬化型インクの調製]
本実施例で用いられるUV硬化型インクは、図11(A)に示される各成分を暗室にて前記した所定の割合で容器に採取し、攪拌後、孔径2μmのポリフロンフィルターにてろ過することで調製される。但し、顔料を含むイエロー、シアン、マゼンダのインクに関しては、前もって顔料分散が行われる。具体的には、ビーズミルを用いて図11(B)に示される割合で直径1mmのジルコニアビーズとともに2時間攪拌して顔料分散を行った後、図11(A)の割合になるようにインクが調製される。尚、ビーズミルとしては、RED DEVIL EQUIPMENT社の「ペイントコンディショナー」が用いられる。
【0092】
[UV硬化型インクの印刷]
図11(A)に示される組成にて調製されたインクを用いて、図2(A)に示されるようなインクジェット記録装置1にて印刷を行う。本実施例で用いられるUV硬化型インクの粘度は約10[mP・s]で、一般のインクジェットプリンタで用いられるインクよりも高い。そのため、インクジェットヘッド部110としては、この粘度のインクを吐出可能なピエゾ式インクジェットヘッドが用いられる。例えば、一般に市販されているXaar社の「Xaar1001/GS6」等が利用可能である。また、本実施例において、UVランプ220としては、メタルハライドランプが用いられる。具体例としては、ウシオ電機社の「ユニキュアシステム UVH−0252C」等が利用可能である。この場合、電源ユニットとして、ウシオ電機社の「スイッチングレギュレーター式電源 VB−12501BY」を用いるのが良い。吐出媒体STとしては、裏面にすでに接着物質が塗布されたシール状のラベルが用いられる。ラベルに対して印刷を行うことで、積層構造1000を携帯電話・ネイル・携帯音楽プレーヤーなどのデコレーションとして使用可能となる。本実施例では、吐出媒体STとして、Maxell社のモノクロ・カラーレーザー用全天候型ラベル「CL71777−10」が用いられる。
【0093】
図12(A)は、図11(A)に示される組成にて調製されたインクを用いて、図1(D)に示される積層構造1000のL表色系における色彩の測定結果である。具体的には、図1(D)に示される積層構造1000において、20層の単色層1000a、1000b、1000cがクリアインクを用いて形成され、2層の複数色層1002a、1002bがクリアインクと各色のインクを用いて形成され、2層の上面層1003aが各色のインクを用いて形成される。尚、「L」は明度を表す。明度Lが高いほど、明るい色と言える。「a」及び「b」は、色相と彩度とを表す。具体的には、「a」が正の値の場合は赤方向、「a」が負の値の場合は緑方向、「b」が正の値の場合は黄方向、「b」が負の値の場合は青方向、をそれぞれ表す。また、「C」は彩度を表す。彩度Cは、C={(a+(b1/2で求められる。彩度Cが大きいほど、鮮やかな色と言える。第1の色の光硬化型インクとしては、クリアインクが用いられる。第2の色の光硬化型インクとして、図12(A)に示される各色のインクが用いられる。尚、色彩の測定は、グレタグマクベス社の「SpectroEye」を用いて、光学条件D50 2゜にて行われた。
【0094】
図12(B)は、比較例1として、複数色層1002を有さない積層構造のL表色系における色彩の測定結果である。この積層構造は、具体的には、第1の色の光硬化型インクとしてクリアインクを用いた単色層1001を20層積層し、その上に第2の色の光硬化型インクとして各色のインクを用いた上面層1003を2層積層する工程を、3回繰り返すことで得られる。換言すれば、20層の単色層1001、2層の上面層1003、20層の単色層1001、2層の上面層1003、20層の単色層1001、2層の上面層1003、の順番に積層された構造である。
【0095】
図12(A)に示される実施例の積層構造1000は、目視の結果、側面と上面がと同様に着色されていた。図12(B)示される比較例1の積層構造も同様に、側面と上面とが着色して見える。しかし、積層方向から目視した場合、比較例1の積層構造の方が、色が濃く暗く見える。具体的に図12(C)を用いて、実施例と比較例1とを定量的に比較する。シアンが第2の色の光硬化型インクとして用いられる場合、比較例1では明度Lが「35.44」であるのに対し、実施例では明度Lが「49.97」であった。マゼンダが第2の色の光硬化型インクとして用いられる場合、比較例1では明度Lが「35.13」であるのに対し、実施例では明度Lが「49.73」であった。イエローが第2の色の光硬化型インクとして用いられる場合、比較例1では明度Lが「66.55」であるのに対し、実施例では明度Lが「67.19」であった。即ち、実施例と比較例1との比較から分かるように、積層構造に複数色層1002を含むことによって、明度Lが高く、明るい色彩の積層構造が得られる。また、イエローが第2の色の光硬化型インクとして用いられる場合は、実施例の明度Lと比較例1の明度Lとの間に大きな差はない。これは、イエローが複数積層されても、明度Lはそれほど減少しないことを意味する。従って、クリアインクの代わりにイエローインクが用いられたとしても、十分に明るい色彩の積層構造を提供することが可能になる。
【0096】
<変形例>
本発明は、今までに述べた実施形態に限定されることは無く、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形・変更が可能である。以下にその変形の一例を述べる。
【0097】
前記した実施形態において、印刷部10と光照射部20とは別体に構成される。しかし、これらは一体に構成されても良い。図13は、インクジェットヘッド部1100の構造を示す模式図である。インクジェットヘッド部1100は、X方向の両端にUVランプ2200が設けられる点において、前記した実施形態のインクジェットヘッド部110と相違する。このUVランプ2200としては、メタルハライドランプ、UV水銀ランプ、UV−LED等が利用可能である。この場合も、UVランプ2200は、ガイドシャフト140及びインクジェットヘッド部1110を介して、載置台310の上方に設けられる。さらには、UVランプ2200として光ファイバー等の光導波路を用いて、インクジェットヘッド部1100とは別体に設けられるUV光源から、UV光を導光するような構成もあり得る。
【0098】
インクジェットヘッド部1100が用いられることで、以下の様な有利な効果がある。先ず、インクジェットヘッド部1100が用いられることによって、図1に示される光照射部20のような、印刷部10の外部に存在する光を照射するための構成は不要となる。前記した実施形態においては、インクの吐出前に載置台310がインクジェットヘッド部110の下に移動する処理(図8のS2102、図9のS2202、図10のS2302参照)が行われ、インクの吐出後に載置台310がUVランプ220の下に移動する処理(図8のS2106、図9のS2207、図10のS2304参照)が行われる。しかし、インクジェットヘッド部1100が用いられれば、これらの載置台310を移動する処理が不要になる。さらには、インクの吐出を行いながらUV光を照射することで、インクの吐出と硬化とを並行して行うことが可能になる。換言すれば、図8において、第2硬化手段430b2の実行(S2106及びS2107)は、第3吐出手段430b1(S2104又はS2105)の実行後に行われているが、インクジェットヘッド部1100が用いられることで、第2硬化手段430b2と第3吐出手段430b1とを並行して実行することが可能になる。図9においても同様に、インクジェットヘッド部1100が用いられることで、第1吐出手段430a1及び第2吐出吐出手段430a2と第1硬化手段430a3とを並行して実行することが可能になる。勿論、図10においても同様に、第4吐出手段430d1と第3硬化手段430d2とを、並行して実行することが可能になる。
【0099】
前記した実施形態において、図1(D)に示される積層構造1000は、単色層1001を複数色層1002よりも多く含む。しかし、積層数や積層順等は適宜変更されて良い。例えば、複数色層1002の積層数が単色層1001の積層数より多くても差し支えない。また、複数色層1002のみで積層構造が形成されても差し支えない。さらに、上面層1003aのさらに上面に、クリアコートとして単色層1001が何層か積層されても差し支えない。あるいは、上面層1003aが省略されても差し支えない。また、単色層1001、複数色層1002及び上面層1003は、説明の簡素化のため、何れも平面視矩形の構造として図1に示されている。しかし、単色層1001、複数色層1002及び上面層1003は、他の如何なる形状に形成されても良い。また、積層構造1000は、積層方向に沿って、積層方向に直交する方向のサイズが変化する形状であっても良い。即ち、一例を挙げれば、角錐状の積層構造や、半球状の積層構造などでも良い。特に、吐出媒体STから離れるに従って、積層方向に直交する方向のサイズが大きくなるような形状であっても、複数色層1002が積層されることで、表面がきれいに着色された積層構造1000が得られる。
【0100】
前記した実施形態において、インクジェットヘッド部110は、イエローヘッド111と、マゼンダヘッド112と、シアンヘッド113と、クリアヘッド114とを有する。しかし、これら各色のヘッドに加えて、さらに別の色を吐出するヘッドがインクジェットヘッド部110に設けられても良い。例えば、インクジェットヘッド部110は、ブラックの光硬化型インクを吐出するブラックヘッドを備えて良い。この場合、ブラックヘッドにインクを供給するブラックタンクも同時に必要になる。尚、ブラックの光硬化型インクは、第2の光硬化型インクとして吐出される。
【0101】
前記した実施形態において、クリアインクが第1の色の光硬化型インクとして用いられ、クリアインクの吐出が不可能な場合に、イエローインクが第1の色の光硬化型インクとして用いられる。しかし、例えばクリアインクを備えないインクジェット記録装置であっても、本発明の実施は可能である。例えば、イエローインク、マゼンダインク、シアンインク、ブラックインクの4色が吐出可能なインクジェット記録装置の場合、第1の色の光硬化型インクとしてイエローインクが用いられれば良い。
【0102】
前記した実施形態において、インクジェットヘッド移動機構130と載置台移動機構320とが協働することによって、吐出媒体STとインクジェットヘッド部110との相対位置が移動される。しかし、例えばインクジェットヘッド部110のみがX方向、Y方向及びZ方向に移動可能な構成や、載置台移動機構320のみがX方向、Y方向及びZ方向に移動可能な構成であっても良い。要は、吐出媒体STとインクジェットヘッド部110との相対位置が移動されれば良い。
【0103】
<参考例>
前記した実施形態において、イエローインクがクリアインクの代わりに第1の色の光硬化型インクとして用いられても良い旨の説明を行った。例えば、単色層形成手段430bにおいて、クリアインクが吐出不可能の場合、イエローインクが第1の色の光硬化型インクとして用いられる(図8のS2105参照)。ここでは、イエローインクが積層された場合と、イエローインクよりも濃色のインクが積層された場合とを比較することで、イエローインクが第1の色の光硬化型インクとして用いられても、十分に明るい色彩の積層構造を提供することが可能であることを説明する。
【0104】
図14(A)は、参考例としての積層構造2000を示す図である。積層構造2000は、第1の色の光硬化型インクとしてイエローインクが用いられた50層の単色層2001aと、その単色層2001aの上面に、第2の色の光硬化型インクとして各色のインクを用いた2層の上面層2003aが設けられる。図14(B)は、比較例2としての積層構造3000を示す図である。積層構造3000は、第2の色の光硬化型インクとして各色のインクを用いた10層の上面層2003aにより形成される。
【0105】
図14(A)に示される参考例の積層構造2000は、目視の結果、上面が着色されており、側面がイエローであった。図14(B)に示される比較例2の積層構造3000は、側面と上面とが着色されて見えるものの、積層方向から目視した場合、参考例の積層構造200よりも色が暗く見える。具体的に図14(C)を用いて、参考例と比較例2とを定量的に比較する。グリーンが第2の色の光硬化型インクとして用いられる場合、比較例2では明度Lが「28.10」であるのに対し、参考例では明度Lが「37.50」であった。レッドが第2の色の光硬化型インクとして用いられる場合、比較例2では明度Lが「24.87」であるのに対し、参考例では明度Lが「38.04」であった。即ち、参考例と比較例2との比較から分かるように、イエローが複数積層されても、明度Lはそれほど減少しない。即ち、イエローインクが第1の色の光硬化型インクとして用いられたとしても、十分に明るい色彩の積層構造を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0106】
1 インクジェット記録装置
2 筺体
2a 膨出箇所
2a−1 遮光板
2b 柱状箇所
2c 梁状箇所
2d 開口箇所
10 印刷部
20 光照射部
30 搬送部
40 制御部
110,1100 インクジェットヘッド部
111 イエローヘッド
111a イエロータンク
112 マゼンダヘッド
112a マゼンダタンク
113 シアンヘッド
113a シアンタンク
114 クリアヘッド
114a クリアタンク
120 インク吐出制御回路
130 インクジェットヘッド移動機構
140 ガイドシャフト
150 インクジェットヘッド吸引機構
150a キャップ
210 光源駆動回路
220,2200 UVランプ
310 載置台
320 載置台移動機構
410 CPU
420 RAM
430 ROM
500 操作部
600 外部I/F
700 バス
800 PC
1000,2000,3000 積層構造
1001,1001a,1001b,1001c,2001a 単色層
1002,1002a,1002b 複数色層
1003,1003a,2003a,2003b 上面層
ST 吐出媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出媒体を載置する載置台と、
第1の色の光硬化型インクと、前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成されるインクジェットヘッド部と、
前記インクジェットヘッド部を、前記載置台の上方に保持するフレームと、
前記インクジェットヘッド部と前記載置台に載置された吐出媒体との相対位置を移動させる移動機構と、
前記載置台の上方に設けられ、前記インクジェットヘッド部から吐出された光硬化型インクを硬化するために光を照射する光照射部と、
前記インクジェットヘッド部が光硬化型インクを吐出する動作と、前記光照射部が光を照射する動作と、前記移動機構が前記相対位置を移動させる動作とを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記インクジェットヘッド部に前記第1の色の光硬化型インクを吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記第2の色の光硬化型インクが前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、前記インクジェットヘッド部に前記第2の色の光硬化型インクを吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記吐出される第1の色及び第2の色の光硬化型インクを硬化するために前記光照射部に光を照射させることで、前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲が前記第2の色の光硬化型インクによって囲まれた複数色層を形成する複数色層形成手段と、
前記複数色層形成手段を動作させることで、少なくとも1つ以上の前記複数色層が積層された積層構造を形成する積層形成手段と、
を有する、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部はさらに、
前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記インクジェットヘッド部に前記第1の色の光硬化型インクを吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記吐出される前記第1の色の光硬化型インクを硬化するために前記光照射部に光を照射させることで、前記1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層を形成する単色層形成手段を有し、
前記積層形成手段は、さらに前記単色層形成手段も動作させることで、前記複数色層及び前記単色層が複数積層された前記積層構造を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。

【請求項3】
前記積層形成手段は、前記単色層形成手段を前記複数色層形成手段よりも多く動作させることで、前記単色層を前記複数色層よりも多く含む前記積層構造を形成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部はさらに、
前記積層形成手段の動作後に、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って前記第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層を形成するように、前記インクジェットヘッド部に前記第2の色の光硬化型インクを前記積層構造の上面に対して吐出させるとともに前記移動機構に前記相対位置を移動させ、前記吐出される前記第2の光硬化性インクを硬化するために前記光照射部に光を照射させる上面層形成手段を有する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記上面層形成手段の動作後に、前記複数色層形成手段及び前記単色層形成手段を動作させない、
ことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクジェットヘッド部は、無色透明の光硬化型インクと、前記無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成され、
前記インクジェットヘッド部から前記無色透明の光硬化型インクを吐出可能か否かを判断する判断手段をさらに備え、
前記制御部は、
前記判断手段の判断結果が肯定の場合、前記無色透明の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定し、前記判断手段の判断結果が否定の場合、前記他の色の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定する第1の色決定手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
光硬化型インクを用いた吐出媒体へのインクジェット記録方法であって、
第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクが囲う複数色層を形成する複数色層形成ステップと、
前記複数色層形成ステップを実行することで、少なくとも1つ以上の前記複数色層を含む積層構造を形成する積層形成ステップとを備え、
前記複数色層形成ステップは、
第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記第1の色の光硬化型インクを吐出するとともに、前記第1の色の光硬化型インクが吐出される位置である第1吐出位置を移動する第1吐出ステップと、
前記第2の色の光硬化型インクが前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、前記第2の色の光硬化型インクを吐出するとともに、前記第2の色の光硬化型インクが吐出される位置である第2吐出位置を移動する第2吐出ステップと、
前記吐出される第1の色及び第2の色の光硬化型インクを硬化するために光を照射する第1硬化ステップとを有する、
ことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層を形成する単色層形成ステップをさらに備え、
前記単色層形成ステップは、
前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記第1の色の光硬化型インクを吐出するとともに前記第1吐出位置を移動させる第3吐出ステップと、
前記吐出される第1の色の光硬化型インクを硬化するために光を照射する第2硬化ステップとを有し、
前記積層形成ステップは、さらに前記単色層形成ステップも実行することで、前記複数色層及び前記単色層を複数含む前記積層構造を形成する、
ことを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記積層形成ステップは、前記単色層形成ステップを前記複数色層形成ステップよりも多く実行することで、前記単色層を前記複数色層よりも多く含む前記積層構造を形成する、
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記積層形成ステップの実行後に、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って前記第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層を形成する上面層形成ステップをさらに備え、
前記上面層形成ステップは、
前記第2の色の光硬化型インクが前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って拡がるように、前記第2の色の光硬化型インクを吐出するとともに、前記第2吐出位置を移動する第4吐出ステップと、
前記吐出される第2の色の光硬化型インクを硬化するために光を照射する第3硬化ステップとを有する、
ことを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記上面層形成ステップの実行後に、前記複数色層形成ステップ及び前記単色層形成ステップを実行しない、
ことを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記第1の色の光硬化型インクとして無色透明の光硬化型インクを吐出可能か否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップの判断結果が肯定の場合、前記無色透明の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定し、前記判断ステップの判断結果が否定の場合、前記無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定する第1の色決定ステップとをさらに備える、
ことを特徴とする請求項7〜11の何れかに記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がり、その外周の所定の範囲を前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクが囲う複数色層を形成するために、
前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記第1の色の光硬化型インクと、前記第2の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成されるインクジェットヘッド部に対して、前記第1の色の光硬化型インクを吐出させる指令を行うとともに、前記インクジェットヘッド部と吐出媒体との相対位置を移動させる移動機構に対し、前記相対位置を移動させる指令を行う第1吐出指令ステップと、
前記第2の色の光硬化型インクが前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を囲うように、前記インクジェットヘッド部に対して前記第2の色の光硬化型インクを前記吐出媒体に対して吐出させる指令を行うとともに、前記移動機構に対し前記相対位置を移動させる指令を行う第2吐出指令ステップと、
前記吐出される第1の色及び第2の色の光硬化型インクを硬化するために、前記吐出媒体に対して光を照射可能な光照射部に対して、光を照射させる指令を行う第1照射指令ステップと、
を有する複数色層形成指令ステップと、
前記複数色層形成指令ステップを実行することで、少なくとも1つ以上の前記複数色層を含む積層構造を形成する積層形成指令ステップと、
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項14】
前記1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がる単色層を形成するために、
前記第1の色の光硬化型インクが所定の範囲に亘って拡がるように、前記インクジェットヘッド部に対して前記第1の色の光硬化型インクを吐出させる指令を行うとともに、前記移動機構に対し前記相対位置を移動させる指令を行う第3吐出指令ステップと、
前記吐出される前記第1の色の光硬化型インクを硬化するために、前記光照射部に対して光を照射させる指令を行う第2硬化指令ステップと、
を有する単色層形成指令ステップをさらに備え、
前記積層形成指令ステップは、さらに前記単色層形成手段も動作させることで、前記複数色層及び前記単色層を複数含む前記積層構造を形成する、
ことをコンピュータに実現させるための請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記積層形成指令ステップは、前記単色層形成指令ステップを前記複数色層形成指令ステップよりも多く実行することで、前記単色層を前記複数色層よりも多く含む前記積層構造を形成する、
ことをコンピュータに実現させるための請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記積層形成指令ステップの動作後に、前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って前記第2の色の光硬化型インクが拡がる上面層を形成するために、
前記インクジェットヘッド部に対して前記第2の色の光硬化型インクを前記積層構造の上面に対して吐出させる指令を行うとともに、前記移動機構に対し前記相対位置を移動させる指令を行う第4吐出指令ステップと、
前記吐出される第2の色の光硬化型インクを硬化するために、光照射部に対して光を照射する指令を行う第3硬化指令ステップと、
を有する、上面層形成指令ステップを、
さらにコンピュータに実現させるための請求項13〜15の何れかに記載のプログラム。
【請求項17】
前記上面層形成指令ステップの実行後に、前記複数色層形成指令ステップ及び前記単色層形成指令ステップを実行しない、
ことをコンピュータに実現させるための請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
無色透明の光硬化型インクと、前記無色透明の光硬化型インクよりも濃色である他の色の光硬化型インクとを少なくとも吐出可能に構成される前記インクジェットヘッド部が、前記無色透明の光硬化型インクを吐出可能か否かを判断する指令を行う判断指令ステップと、
前記判断指令ステップの判断結果が肯定の場合、前記無色透明の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定し、前記判断指令ステップの判断結果が否定の場合、前記他の色の光硬化型インクを前記第1の色の光硬化型インクとして決定する第1の色決定指令ステップとを、
さらにコンピュータに実現させるための請求項13〜17の何れかに記載のプログラム。
【請求項19】
所定の範囲に亘って拡がる第1の色の光硬化型インクと、前記拡がる第1の色の光硬化型インクの外周の所定の範囲を覆う前記第1の色の光硬化型インクよりも濃色である第2の色の光硬化型インクと、からなる複数色層と、
所定の範囲に亘って拡がる前記1の色の光硬化型インクからなる単色層とが、
前記単色層が前記複数色層よりも多くなるように積層された積層構造
と、
前記積層構造の上面の所定の範囲に亘って拡がる前記第2の色の光硬化型インクからなる上面層と、
を備えることを特徴とする立体印刷造形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−73163(P2011−73163A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224231(P2009−224231)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】