説明

インクジェット記録装置

【課題】光照射装置による光照射面積を調整することのできるインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】インク吐出口が配設されている記録ヘッド8と、記録媒体Pと記録ヘッド8とを相対移動させる相対移動手段と、記録ヘッド8によって吐出されたインクに対して光を照射する光源12をインク吐出口に対応するように備える光照射装置10と、を備えるインクジェット記録装置において、光照射装置10には、ぞれぞれの光源12から照射された光の記録媒体P上での照射面積を記録ヘッド8によるインク吐出に対応するように調整する照射面積調整手段14が備えられているインクジェット記録装置の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特に、光硬化型インクを用いるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式などの製版を必要とする方式に比較して、簡便にかつ安価に画像を形成することができるという理由から、インクジェット記録装置が多く用いられるようになってきている。
【0003】
インクジェット記録装置を用いて商品や商品の包装に画像記録を行う分野では、記録媒体として樹脂や金属などのインク吸収性のない材料を用いることが多い。そして、このような記録媒体に対してインクを定着させるために、例えば、光を照射することによって硬化する光硬化型インクを記録ヘッドから吐出させ、記録媒体に着弾したインク液滴に対して光を照射させてインクを硬化させることによって画像記録を行うようなインクジェット記録装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、このようなインクジェット記録装置は、特許文献2及び特許文献3に示すように、カラー液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタの製造においても用いられている。特許文献2及び特許文献3では、透明な基板上に、通常は着色剤を吸収するが光を照射されることにより着色剤を吸収しなくなる被染色層を形成し、該被染色層を多数のフィルタ要素に区切って、その夫々を所定の色に着色することにより製造されるカラーフィルタの製造方法が記載されている。そして、前記フィルタを所定の色に着色する着色工程においてインクジェット記録装置の記録ヘッドを用いるようになっている。カラーフィルタを製造する場合、高い精度が要求されるが、インクジェット記録装置を着色工程に用いることにより精密なインク吐出が可能である。
【0005】
ここで、インクジェット記録装置を用いて画像記録を行う場合、着弾したインク液滴のドット径の差異を少なくするために、記録媒体を問わずにインク着弾後に大量の光を照射するようになっている。しかしながら、光を大量に照射した場合、その反射光や漏れた光によって記録ヘッドの表面に付着しているインクやノズル先端面におけるインクが硬化してしまい、ノズル欠が生じて画質の劣化を招いてしまうという問題があった。また、特許文献2又は特許文献3に記載のように、記録媒体がカラーフィルタの場合、ノズル欠による画質の劣化は影響が大きく、製品の信頼性の低下に繋がるおそれがあった。
【0006】
そこで、光をドットの位置に正確に照射するために、記録媒体上のドットの位置に応じて光照射することによる感光インク架橋方法が特許文献4などに示されている。特許文献4においては、記録媒体上のドットに応じて光を集中させたり照射方向を変更するようになっている。
【特許文献1】特開2001−310454号公報
【特許文献2】特開平7−174915号公報
【特許文献3】特開平8−82706号公報
【特許文献4】特表2002−504873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載の方法は、着弾した各ドットに応じて光照射することを特徴としており、記録媒体上のドット位置やドット径の正確かつ迅速な検出が必要であり、構成が複雑なものとなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、光照射装置による記録媒体上での光照射面積を記録ヘッドによるインク吐出に対応するように調整することのできるインクジェット記録装置を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
記録媒体に向けて光硬化型のインクを吐出するインク吐出口が配設されている記録ヘッドと、
前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させる相対移動手段と、
前記記録ヘッドによって吐出されたインクに対して光を照射する光源を前記インク吐出口に対応するように備える光照射装置と、
を備えるインクジェット記録装置において、
前記光照射装置には、ぞれぞれの前記光源から照射された光の前記記録媒体上での照射面積を前記記録ヘッドによるインク吐出に対応するように調整する照射面積調整手段が備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、光照射装置は、照射面積調整手段により、光源から照射された光の記録媒体上での照射面積を記録ヘッドによるインク吐出に対応するように調整するようになっている。従って、各光源からの光の照射面積は、記録ヘッドによるインク吐出とともに調整できるようになっている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置であって、
前記照射面積調整手段は、開口径が調整できる絞り環であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、光照射装置は、開口径が調整できる絞り環によって、光源から照射された光の記録媒体上での照射面積を調整するようになっている。従って、光源から照射される光束の外周を絞り環によって遮ることにより、記録媒体上の照射径を調整するようになっている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置であって、
前記照射面積調整手段は、前記光源との距離が調整できる集光レンズであることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、光照射装置は、光源との距離が調整できる集光レンズによって、光源から照射された光を集光するようになっている。従って、光源と前記レンズとの距離を調整することにより、記録媒体上での照射面積を調整するようになっている。
【0015】
請求項4に記載のインクジェット記録装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドによりインクを吐出させてから、前記相対移動手段により前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させ、前記光照射装置により光を照射させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて記録解像度を変更し、前記記録解像度の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、制御部は、記録条件に応じた記録解像度の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御するので、記録条件に応じてドット径を調整するとともに光の照射面積を調整するようになっている。
【0017】
請求項5に記載のインクジェット記録装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドによりインクを吐出させてから、前記相対移動手段により前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させ、前記光照射装置により光を照射させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて前記記録ヘッドからのインク吐出量を変更し、前記インク吐出量の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、制御部は、記録条件に応じた記録ヘッドからのインク吐出量の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御するので、記録条件に応じてドット径を調整するとともに光の照射面積を調整するようになっている。
【0019】
請求項6に記載のインクジェット記録装置は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドによりインクを吐出させてから、前記相対移動手段により前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させ、前記光照射装置により光を照射させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて前記相対移動手段による前記相対移動の速度を変更し、前記相対移動の速度の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、制御部は、記録条件に応じた記録媒体と記録ヘッドとの相対移動速度の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御する。相対移動速度を変更することにより、インク着弾後から光照射までの時間が変化するので、ドット径の調整をすることができるようになっている。従って、ドット径を調整するとともに光の照射面積を調整するようになっている。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体は、カラーフィルタであることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、記録媒体をカラーフィルタとすることにより、カラーフィルタの製造方法における各フィルタに着色剤を吐出してフィルタ要素を着色する工程を行うようになっている。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体としてのカラーフィルタと、記録された画像において欠陥部の発生を検出する欠陥検出部と、を備えており、
前記制御部は、前記欠陥検出部の検出結果に基づいて、前記記録ヘッドからのインク吐出を制御することを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の発明によれば、欠陥検出部により、記録媒体であるカラーフィルタの各フィルタに着色の欠陥が発生し着色不良フィルタが生じた場合、当該着色不良フィルタは欠陥部として検出される。従って、欠陥検出部により記録された画像において欠陥部の検出を行うとともに、当該欠陥部に対して記録ヘッドからインク吐出が行われるとともに照射面積を調整した光照射が行われるようになっている。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のインクジェット記録装置であって、
前記欠陥検出部は発生した欠陥部の面積を算出し、
前記制御部は、前記欠陥検出部の検出結果に基づいて、前記記録ヘッドからのインク吐出量を調整するよう制御することを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、欠陥検出部は画像欠陥の発生を検出すると当該画像欠陥部の面積を算出し、制御部はその検出結果に基づいて記録ヘッドからのインク吐出量を調整するようになっている。そして、記録ヘッドから画像欠陥部の面積に応じた量のインクが吐出されるとともに照射面積を調整した光照射が行われるようになっている。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記光源は、半導体レーザ又はLEDであることを特徴とする。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、光照射装置に備えられた光を照射する光源は半導体レーザ又はLEDからなるので、応答性の速い点光源となっている。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の発明によれば、記録ヘッドによるインク吐出に応じて記録媒体上での光の照射面積を調整することができるため、インク吐出の条件に応じて最も有効な照射面積で光を照射することができる。従って、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細な画像記録を行うことができる。
【0030】
請求項2に記載の発明によれば、光源から照射された光束の外周を照射面積調整手段である絞り環によって遮ることにより記録媒体上の照射径を調整することができるので、簡易な構成で光の照射面積を調整するとともに非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができる。従って、簡易な構成の光照射装置によって高精細な画像記録を行うことができる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、光源から照射された光を照射面積調整手段である集光レンズによって集光することにより記録媒体上での照射径を調整することができるので、正確に光の照射面積を調整することができる。従って、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を確実に防止して、高精細な画像記録を行うことができる。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、記録条件に応じてドット径を調整するとともに光の照射面積を調整することができるため、記録条件に応じて最も有効な照射面積で光を照射することができる。従って、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細な画像記録を行うことができる。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、記録条件に応じてドット径を調整するとともに光の照射面積を調整することができるため、記録条件に応じて最も有効な照射面積で光を照射することができる。従って、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細な画像記録を行うことができる。
【0034】
請求項6に記載の発明によれば、記録条件に応じて記録媒体と記録ヘッドとの相対移動速度を調整するとともに光の照射面積を調整することができるため、記録条件に応じて最も有効な照射面積で光を照射することができる。従って、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細な画像記録を行うことができる。
【0035】
請求項7に記載の発明によれば、フィルタ要素を着色する工程を行うことができるので、高精細な記録が必要とされるカラーフィルタの製造を容易に行うことができる。
【0036】
請求項8に記載の発明によれば、高精細な記録が必要とされるカラーフィルタの製造工程において、カラーフィルタ上に着色不良フィルタが生じた場合に、記録ヘッドからインクを吐出させるとともにカラーフィルタ上での光の照射面積を調整することができる。従って、カラーフィルタの欠陥補修においても、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細なカラーフィルタの製造を容易に行うことができる。
【0037】
請求項9に記載の発明によれば、高精細な記録が必要とされるカラーフィルタの製造工程において、着色されるカラーフィルタ上に画像欠陥が生じた場合に、記録ヘッドから画像欠陥部の面積に応じたインクを吐出させるとともに記録媒体上での光の照射面積を調整することができる。従って、カラーフィルタの確実な欠陥補修においても、光源から照射された光のエネルギーを有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細なカラーフィルタの製造を容易に行うことができる。
【0038】
請求項10に記載の発明によれば、光照射装置の光源は応答性が速く、照射された光は照射面積調整手段にほとんど全て入射するようになっている。従って、光源から照射された光のエネルギーをより有効に利用してインクを硬化させることができるとともに、非画像記録領域への光の入射による記録媒体の劣化を防止することができ、高精細な画像記録を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
[第一の実施形態]
以下に、本発明に係るインクジェット記録装置の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0040】
図1に示すように、本実施形態において、インクジェット記録装置1はシリアルプリント方式によるインクジェット記録装置1であり、このインクジェット記録装置1には平板状に形成され記録媒体Pを非記録面から支持するプラテン2が主走査方向Yに延在するように設けられている。
【0041】
プラテン2の下方には、搬送方向Xに記録媒体Pを送るための搬送手段3(図6参照)が設けられている。搬送手段3は複数の搬送ローラ4,4などにより構成されており、搬送ローラ4を回転させることによって、記録媒体Pを搬送方向Xの上流側から下流側に間欠的に搬送するようになっている。
【0042】
プラテン2の上方には、プラテン2の長手方向に延在する棒状のガイドレール5,5が設けられている。ガイドレール5には、図2に示すような、キャリッジ6が支持されている。キャリッジ6には移動手段7(図6参照)が接続されており、ガイドレール5に沿って主走査方向Yに往復走査自在となっている。ここで、本実施形態において、記録媒体Pと後述する記録ヘッド8とを相対移動させる相対移動手段とは、搬送手段3及び移動手段7からなる。
【0043】
キャリッジ6には、本実施形態におけるインクジェット記録装置1で使用される各色(ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y))に対応した四つの記録ヘッド8…が搭載されている。各記録ヘッド8は外形が略直方体状になるように形成されており、その長手方向が搬送方向に沿って互いに平行となるように配置されている。記録ヘッド8の記録媒体Pに対向する面には、複数のインク吐出口9…(図3参照)が搬送方向に沿って等間隔に設けられている。
そして、記録ヘッド8は、入力された画像情報に基づいてインク吐出口9から各色のインク液滴を吐出させるようになっている。ここで、インクジェット記録装置1で使用されるインクの色はこれらに限定されず、例えば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)などの色を使用することもできる。この場合には、各色に対応した記録ヘッドがキャリッジに搭載されることとなる。
【0044】
図2に示すように、主走査方向Yにおける記録ヘッド8の両側には、光照射装置としての紫外線照射装置10,10が配設されている。ここで、図3に示すのは、記録ヘッド8及び紫外線照射装置10の底面図である。
【0045】
紫外線照射装置10は、記録媒体Pに向けて開口した外形略直方体形状のカバー部材11で被覆されている。紫外線照射装置10はカバー部材11により被覆されているので、記録媒体Pに対向する方向に紫外線が効率良く照射されるようになっている。カバー部材11の内部には、記録媒体Pに吐出されたインク液滴を硬化定着させる光としての紫外線の光束を照射する複数の紫外線光源12…が備えられている。各紫外線光源12…は半導体レーザ又はLEDからなる点光源であり、搬送方向Xに沿ってそれぞれのインク吐出口9と対応する位置に配設されている。
【0046】
図4は紫外線照射装置10の搬送方向Xに沿った縦断面図である。図4に示すように、カバー部材11には、各紫外線光源12の外周を被覆する円筒状の筒部材13が、記録媒体Pに対して略垂直となるように備えられている。筒部材13は紫外線領域の波長の光を反射又は遮蔽する素材からなり、紫外線光源12から照射された紫外線が外側の領域に出射することを防止するようになっている。
【0047】
また、紫外線照射装置10には、紫外線の照射面積を調整する照射面積調整手段14(図6参照)が備えられている。照射面積調整手段14には、照射される紫外線の光束を絞る絞り環15が、当該紫外線の光軸方向と略直交するように筒部材13の内周に備えられている。ここで、図5に示す図は絞り環15の平面図である。絞り環15は板状部材からなる複数の絞り羽根16…で環状に構成されており、内側が円形の穴部17となるように重ねられている。また、照射面積調整手段14には、絞り羽根16の位置を調整する位置調整手段(図示せず)が備えられており、隣接する絞り羽根16同士の重なり具合を適宜調整することができるようになっている。さらに、絞り羽根16は紫外線領域の波長の光を反射又は遮蔽する素材からなり、その開口径を調整することにより通過する紫外線の照射径を調整することができるようになっている。ここで、図5(a)は開口径を絞った状態であり、図5(b)は開口径を大きくした状態を示す図である。
【0048】
主走査方向Yにおける各紫外線照射装置10の外側には、記録された画像における画像欠陥部を検出する欠陥検出部18,18が備えられている。欠陥検出部18は、例えばレーザのような発光素子とセンサのような受光素子とからなり、発光素子から記録媒体Pに向けて出射された光の受光素子による検知の有無により、記録媒体P上における画像欠陥部の有無を検出するようになっている。
【0049】
ここで、本実施形態に用いられるインクは、光としての紫外線が照射されることにより硬化する性質を具備する光硬化型インクであり、主成分として、少なくとも重合性化合物(公知の重合性化合物を含む。)と、光開始剤と、色材とを含むものである。上記光硬化型インクは、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、この両系のインクが本実施形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能である。また、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。しかしながら、酸素による重合反応の阻害作用が少ない又は無いカチオン重合系インクの方が機能性、汎用性に優れるため、特に、カチオン重合系インクを用いることが好ましい。カチオン重合系インクは、少なくともオキセタン化合物,エポキシ化合物,ビニルエーテル化合物などのカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物である。
【0050】
次に、図6を参照しつつ、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の制御構成について説明する。
【0051】
図6に示すように、インクジェット記録装置1には、入力部19、移動手段7、搬送手段3、記録ヘッド8、紫外線光源12、照射面積調整手段14、欠陥検出部18などに電気的に接続されるとともにこれらを制御する制御部20が設けられている。制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、各種の処理プログラムなどを格納するROM(Read Only Memory)、画像データなどの各種データなどを一時記憶するRAM(Random Access Memory)など(いずれも図示せず)からなり、ROMに記録された処理プログラムをRAMの作業領域に展開してCPUによりこの処理プログラムを実行するようになっている。
【0052】
入力部19は、例えばキーボードや操作パネルからなり、記録媒体Pの種類や画像記録条件などを制御部20に入力するようになっている。ユーザは入力部19を操作することにより、画像記録に用いる記録媒体Pや所望の画像記録速度などに応じたインク吐出量、記録ヘッドと記録媒体との相対移動速度及び記録解像度などを選択、設定することができるようになっている。制御部20は、操作者によりインク吐出量、記録ヘッドと記録媒体との相対移動速度及び記録解像度などの選択、設定が無い場合は、入力された条件や画像データの情報量に基づいてこれらの値を決定するようになっている。
【0053】
制御部20は、前述のようにして決定したインク吐出量、記録ヘッドと記録媒体との相対移動速度及び記録解像度の値と、図示しない外部装置から送られてきた記録画像に関する画像データと、に基づいてインク吐出口9からインクを吐出させるように各記録ヘッド8を制御するようになっている。
【0054】
また、制御部20は、前述のようにして制御される記録ヘッド8からのインク吐出に基づいて照射面積調整手段14を制御するようになっている。具体的には、制御部20は、隣接する絞り羽根16の重なり具合を位置調整手段により調整させて、絞り環15の穴部17の口径を調整させて、透過する紫外線の照射径を調整するようになっている。
【0055】
さらに、制御部20は、紫外線光源12を制御して記録媒体P上に着弾したドットに対して所定量の紫外線を照射するようになっている。ここで、本実施形態において紫外線光源12から照射された紫外線の光束は、照射面積調整手段14によりその照射径を調整されるので、記録媒体P上での紫外線の照射面積は調整されるようになっている。
【0056】
またさらに、制御部20は、キャリッジ6を主走査方向Yに往復走査させるように移動手段7を制御するとともに、キャリッジ6の移動方向切換の際には記録媒体Pを搬送方向Xに所定量ずつ間欠搬送させるように搬送手段3を制御するようになっている。そして、制御部20は、欠陥検出部18を制御して記録された画像における欠陥部の発生の有無を調べさせるとともに、当該欠陥部の面積を算出させるようになっている。欠陥検出部18による検出結果は制御部20に送られ、制御部20は前述したように、インク吐出量、記録ヘッドと記録媒体との相対移動速度及び記録解像度に加えて、当該検出結果も考慮して記録ヘッド8からのインク吐出を制御するようになっている。
【0057】
次に、本実施形態におけるインクジェット記録方法について説明する。
【0058】
図示しない外部装置から入力された画像データがインクジェット記録装置1に送られると、送られた画像データは制御部20のRAMに記憶される。そして、ユーザにより入力部19から画像記録を開始する信号、記録媒体Pの種類及び記録モードなど各種の画像記録条件が入力されると、制御部20は、入力された情報など各種の条件に適合するように、インク吐出量、記録ヘッドと記録媒体との相対移動速度及び記録解像度を決定する。そして、制御部20は、照射面積調整手段14により紫外線の照射面積を調整させてから画像記録を開始させる。
【0059】
まず、制御部20は、搬送手段3を制御することにより記録媒体Pを記録開始位置まで搬送させる。続いて制御部20は、移動手段7を制御することによりキャリッジ6を記録媒体Pの上方で主走査方向Yに移動させる。すると、キャリッジ6に追従して記録ヘッド8が移動するので、制御部20は、入力された画像データや制御部20により決定されたインク吐出量、記録ヘッドと記録媒体との相対移動速度及び記録解像度に基づいて、記録ヘッド8のインク吐出口9から所定量のインク液滴を吐出させ記録媒体Pに着弾させてドットを形成させる。
【0060】
その後、制御部20は、形成されたドットに対して紫外線を照射するために紫外線光源12から紫外線を照射させる。この際、照射された紫外線の光束は、筒部材13よりも外側に出射することなく、絞り環15に入射する。絞り環15の開口径は既に調整されているので、照射された紫外線のうち穴部17に入射した紫外線の光束のみが直下の記録媒体Pに入射する。このようにして、記録媒体Pに形成されたドットのみに紫外線が入射し、インクが硬化して画像が記録される。
【0061】
ここで、制御部20は、欠陥検出部18により記録媒体P上における画像の欠陥部の有無を適宜検出させるとともに、欠陥部を検出した場合その面積を算出させる。その検出結果は制御部20に送られ、制御部20は欠陥部を補修するように、当該検出結果に基づいてインク吐出を行わせるように各構成を制御する。従って、画像欠陥部が発生した場合、その画像欠陥部に応じたインク吐出量が算出され、その算出結果に基づいて絞り環15の開口径が調整されてから、記録ヘッド8によりインクが吐出されて紫外線光源12により紫外線が照射される。このようにして、本実施形態においては画像の欠陥部が発生した場合でも、その補修を行うことができる。
【0062】
このようにして画像記録を行って、キャリッジ6の主走査方向Yの移動が終了すると、一旦キャリッジ6は移動を停止し、搬送手段3は記録媒体Pを所定量搬送する。その後、引き続きキャリッジ6の主走査方向Yへの移動に伴う記録ヘッド8による画像記録と、記録媒体Pの搬送と、を繰り返して画像記録を完了させる。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、紫外線光源12から照射された紫外線の光束が絞り環15によって絞られるので、各インク吐出口に対応させて照射面積の調整を容易に行うことができるようになっている。従って、照射面積と吐出されたドットの面積とを略同等に調整することにより、記録媒体Pに形成されたドットのみに向けて紫外線を照射することができる。つまり、記録媒体Pの非画像記録領域には紫外線が入射しないことになるので、記録媒体Pの劣化が防止でき、高精細な画像記録を行うことができる。
さらに、紫外線の光路は筒部材13より外側に出射しないので、紫外線光源12から照射された紫外線のエネルギーを有効に利用することができるとともに、非画像記録領域への光の入射を防止できるので、記録ヘッド8やインク吐出口9に付着したインクの硬化が防止できる。従って、ノズル欠などの発生を防止するとともに着弾したインクに確実に紫外線を照射することで、高精細な画像記録を行うことができる。
【0064】
なお、本実施形態における記録媒体Pとしては、普通紙、再生紙、光沢紙などの各種紙、各種布地、各種不織布、樹脂、金属、ガラスなどの種々の材質からなる記録媒体が適用可能である。このような記録媒体Pの形態としては、ロール状、カットシート状、板状などの各種形態が適用可能である。
そして、本実施形態においては記録媒体として、カラー液晶ディスプレイなどに用いられるカラーフィルタの適用も可能である。前述の通り、カラーフィルタの製造において、R,G,Bの三色をカラーフィルタに着色させる工程においてインクジェット記録装置を用いることが従来より提案されているが、本発明に係るインクジェット記録装置をカラーフィルタの着色工程に用いることにより、インクを硬化させるために照射される紫外線が各フィルタ要素以外の場所に照射されることがないので、照射された紫外線エネルギーを有効に利用することができるとともにフィルタ要素以外の場所の紫外線照射による劣化を防止することができるので、高精細なカラーフィルタを製造することができる。
また、従来よりカラーフィルタとしては高精度のものが必要とされており、一つのフィルタ要素に欠陥があっても製品として利用できないという問題があった。しかしながら、本実施形態においては欠陥検出部18を備えることにより、高精度のカラーフィルタの製造が可能であり、かつフィルタ要素の欠陥検査に用いることも可能である。
【0065】
また、本実施形態においてはインクジェット記録装置1はシリアルプリント方式のものとしたが、記録媒体の幅方向に延在する記録ヘッドを用いるラインプリント式のものにも適用可能である。その場合、記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とは、記録媒体を搬送方向に搬送させる手段のことを示す。
【0066】
[第二の実施形態]
次に、本発明に係る第二の実施形態のインクジェット記録装置について説明する。
本実施形態におけるインクジェット記録装置の構成と第一の実施形態におけるインクジェット記録装置1の構成とは、照射面積調整手段の構成のみが異なっている。よって、以下、本実施形態の照射面積調整手段について説明する。
【0067】
図7は、本実施形態における紫外線照射装置21の搬送方向に沿った縦断面図である。図7に示すように、紫外線照射装置21には、第一の実施形態と略同様の紫外線光源12及び筒部材13と、紫外線の照射面積を調整する照射面積調整手段22(図8参照)と、が備えられている。照射面積調整手段22は、照射される紫外線の光束を集光する凸状の集光レンズ23,23と、集光レンズ23の紫外線光源12に対する距離を調整する位置調整機構(図示せず)と、からなる。各集光レンズ23は、紫外線光源12から照射される紫外線の光軸方向と略直交するように備えられており、紫外線光源12との距離を調整することによって記録媒体P上の照射面積が調整できるようになっている。ここで、集光レンズ23の数は二枚に限られず適宜変更可能である。
【0068】
本実施形態の制御部は、図8に示すように、第一の実施形態と略同様の制御構成であり、照射面積調整手段22により照射面積の調整を行うようになっている。具体的には、制御部は、各集光レンズ23の紫外線光源12との距離を位置調整手段により調整するようになっている。各集光レンズ23が紫外線光源12との距離を変更すると、記録媒体P上の集光スポットはその照射面積が変化するようになっている。
【0069】
本実施形態におけるインクジェット記録方法においては、照射面積調整手段22は記録ヘッド8からのインク吐出量や記録ヘッド8と記録媒体Pとの相対移動速度及び記録解像度などに基づいて、各集光レンズ23の紫外線光源12との距離を調整させて照射面積を調整する。そして、紫外線光源12から紫外線照射を行って画像記録を行わせるようになっている。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、紫外線光源12から照射された紫外線を集光する集光レンズ23の位置を調整することができるので、各インク吐出口に対応させて照射面積の調整を容易に行うことができるようになっている。従って、照射面積と吐出されたドットの面積とを略同等に調整することにより、記録媒体Pに形成されたドットのみに向けて紫外線を照射することができる。つまり、記録媒体Pの非画像記録領域には紫外線が入射しないことになるので、記録媒体Pの劣化が防止でき、高精細な画像記録を行うことができる。
さらに、紫外線の光路は筒部材13より外側に出射しないので、紫外線光源12から照射された紫外線のエネルギーを有効に利用することができるとともに、非画像記録領域への光の入射を防止できるので、記録ヘッド8やインク吐出口9に付着したインクの硬化が防止できる。従って、ノズル欠などの発生を防止するとともに着弾したインクに確実に紫外線を照射することで、高精細な画像記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第一の実施形態におけるインクジェット記録装置の要部構成を示す平面図である。
【図2】第一の実施形態におけるキャリッジの側面図である。
【図3】第一の実施形態における記録ヘッド及び紫外線照射装置の底面図である。
【図4】第一の実施形態における紫外線照射装置の縦断面図である。
【図5】第一の実施形態における照射面積調整装置の平面図である。
【図6】第一の実施形態におけるインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図7】第二の実施形態における紫外線照射装置の縦断面図である。
【図8】第二の実施形態におけるインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0072】
1 インクジェット記録装置
3 搬送手段
7 移動手段
8 記録ヘッド
9 インク吐出口
10,21 紫外線照射装置
12 紫外線光源
13 筒部材
14,22 照射面積調整手段
15 絞り環
16 絞り羽根
17 穴部
18 欠陥検出部
20 制御部
23 集光レンズ
P 記録媒体
X 搬送方向
Y 主走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に向けて光硬化型のインクを吐出するインク吐出口が配設されている記録ヘッドと、
前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させる相対移動手段と、
前記記録ヘッドによって吐出されたインクに対して光を照射する光源を前記インク吐出口に対応するように備える光照射装置と、
を備えるインクジェット記録装置において、
前記光照射装置には、ぞれぞれの前記光源から照射された光の前記記録媒体上での照射面積を前記記録ヘッドによるインク吐出に対応するように調整する照射面積調整手段が備えられていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記照射面積調整手段は、開口径が調整できる絞り環であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記照射面積調整手段は、前記光源との距離が調整できる集光レンズであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドによりインクを吐出させてから、前記相対移動手段により前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させ、前記光照射装置により光を照射させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて記録解像度を変更し、前記記録解像度の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドによりインクを吐出させてから、前記相対移動手段により前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させ、前記光照射装置により光を照射させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて前記記録ヘッドからのインク吐出量を変更し、前記インク吐出量の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドによりインクを吐出させてから、前記相対移動手段により前記記録媒体と前記記録ヘッドとを相対移動させ、前記光照射装置により光を照射させるように制御する制御部を備え、
前記制御部は、記録条件に応じて前記相対移動手段による前記相対移動の速度を変更し、前記相対移動の速度の変更に応じて前記照射面積調整手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体は、カラーフィルタであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体としてのカラーフィルタと、記録された画像において欠陥部の発生を検出する欠陥検出部と、を備えており、
前記制御部は、前記欠陥検出部の検出結果に基づいて、前記記録ヘッドからのインク吐出を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記欠陥検出部は発生した欠陥部の面積を算出し、
前記制御部は、前記欠陥検出部の検出結果に基づいて、前記記録ヘッドからのインク吐出量を調整するよう制御することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記光源は、半導体レーザ又はLEDであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−224337(P2006−224337A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37876(P2005−37876)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】