説明

インクジェット記録装置

【課題】
記録ヘッド内に確実にインク導入を可能とすること、および記録ヘッドのオリフィス面の汚れを防止して、安定したインク塗布を継続させること。
【解決手段】
粒子が分散されたインクのほかに、粒子を含まない前記インクの溶媒のみのインク、および洗浄液を収容する液体ボトルを配置し、すべての液体ボトルから記録ヘッド内に液体を加圧して流入させる加圧手段と、前記記録ヘッド内部を適度な負圧に設定する手段を有する。また、記録ヘッドに接触してオリフィス列を覆うキャップを設け、キャップ内に洗浄液を搬送して、オリフィス面の汚れを洗い流す送液手段を有する。また、オリフィスから記録ヘッド内に洗浄液を吸い込み、回収ボトルに洗浄液を送る送液手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶媒と微小粒体を混合した液体(インク)を液滴として吐出するインクジェットヘッドおよびその制御手段と、塗布対象である基板とインクジェット記録ヘッドとの相対位置を制御するステージからなり、基板上へのインク塗布を目的としたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインクジェット記録装置は、情報処理システムの出力手段として利用されている。このインクジェット装置は微小な液滴をノズルから吐出させて文字や図形等の記録を行うもので、高精細な画像が記録できるという特徴がある。多色のインクを使用することによってカラー画像の印刷も可能であり、装置の小型化や画像の高解像度化も容易であることより、パーソナル向けの記録装置として非常に多くのインクジェット記録装置が市場に出回っている。最近は、各種基板上に金属配線を印刷したり、ディスプレイ用のカラーフィルタを印刷する産業用のインクジェット記録装置の数も増加している。
【0003】
このような産業用のインクジェット記録装置においては、インクジェット記録ヘッドの上方にインクボトルを接続し、記録ヘッド内に並ぶ微小なインク室に適切な圧力でインクを供給できるようになっている。適切な圧力とは、インク室内の圧力は大気圧に対して数百Paの負圧であり、その状態で上記インク室内のインクに対して瞬間的な大圧力が印加されることにより、インク室の壁面に開けられた微小な小孔(オリフィス)からインクは記録媒体に向けて吐出する。
【0004】
インク室に適切な圧力を印加する方法としては、特許文献1に示されているように、記録ヘッドに接続する第一インクボトルに負圧発生手段を設け、負圧量を調整できるようにする方法が開示されている。
【0005】
上記の方法などで適切な圧力でインク室にインクが供給されている状態では、インクは常時大気と接している。このため、インクを吐出しない状態が長くなると、オリフィス付近のインク溶媒が揮発することによってインク粘度が上昇し、吐出時の速度が低下したり、吐出方向が曲がるようになるために印刷画質が劣化する。
【0006】
印刷画質の低下を防止するためには、定期的にインクを記録媒体以外の位置に吐出させて粘度の増加を抑える方法や、記録ヘッドをキャップを突き当ててキャップ内を負圧にして、粘度が増加したインクをオリフィスから吸い出す方法がある。
【0007】
また、インクを吐出させながら記録媒体上を記録ヘッドが移動していると、記録ヘッドのオリフィス周辺に記録媒体上からの跳ね返りのインクが付着する。オリフィス周囲にインクが付着すると、そのインクに引き付けられるようにインクが飛翔するようになるので、インクの飛翔方向が曲がって画質劣化が発生する。
【0008】
上記の問題を防止する方法としては、特許文献2に記載されているように、オリフィス付近をゴムなどの弾性材料で擦ってインクを除去する方法や、特許文献3に記載されているように、インクの溶媒を湿らせた部材を使用してオリフィス付近のインクを拭き取る方法がある。
【0009】
【特許文献1】特開2006−62329号公報
【特許文献2】特開2006−26969号公報
【特許文献3】特開2003−211680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インクジェット記録装置が有する高精細印刷性能により、個人向けの記録装置だけでなく、最近は各種基板上に金属配線を印刷したり、ディスプレイ用のカラーフィルタを印刷する産業用のインクジェット記録装置など、様々な種類のインクジェット記録装置が市場に出ている。これらのインクジェット記録装置に使用されているインクは、粒子を含まない染料が液体に溶け込んでいるものと、直径0.1〜0.5μm程度の顔料が分散されているものが大部分を占めている。
【0011】
しかし、通常30〜50μm径のオリフィスに対して1/10程度までの直径の粒子を分散したインクであっても、短期的には塗布が可能であることより、液晶ディスプレイ内の均一な厚さの液晶層を確保するためにガラス基板上に塗布されているスペーサ粒子の塗布も可能である。長期的な塗布を可能とするためには、インク中の粒子は時間とともに沈降しやすいので、染料インクや直径0.1〜0.5μm程度の顔料が分散されているインクよりも高粘度の溶剤に分散するなど、インク自体に工夫が必要である。粒子を分散させるための高粘度の溶剤としては、ジオール系溶剤と水の混合物などがあげられる。しかし、高粘度の溶剤に分散していても数十分から数時間の時間でインク中の粒子の沈降は発生する。この粒子を分散したインクを使用するインクジェット記録装置においては、以下の3つの問題が発生する。
【0012】
第一番目の問題は、高粘度のインクを使用するために、記録ヘッド内の微細な流路にインクを導入する際に空気が十分に除去できずに、インクの吐出が不十分になる現象が発生することである。また、インク中に溶解していた気体が析出した際にもインクの吐出が不十分になる現象が起こりやすいことである。
【0013】
第二番目の問題は、インク溶剤が乾燥して粒子が記録ヘッド内のインク室で凝集して、オリフィスが詰まるという問題が発生することである。
【0014】
第三番目の問題は、インクを吐出させながら記録媒体上を記録ヘッドが移動している際に、記録ヘッドのオリフィス周辺に記録媒体上からの跳ね返りのインクが付着する。染料インクや微粒径の顔料が分散されているインクを使用する場合は、特許文献2や特許文献3の例で上述したように、オリフィス付近のインクを拭き取ることができるが、数μmの粒子を分散したインクを拭き取ることを繰り返していると、やがてオリフィスを傷付けることとなり、記録ヘッドの寿命を短くするという問題がある。
【0015】
そこで本発明の目的は、数μmの粒子を含むインクを記録媒体上に塗布するインクジェット記録装置において、上記3つの問題を解決する手段を有し、安定した液体塗布が可能であるインクジェット記録装置を提供することである。つまり、記録ヘッド内にインクを導入する際、あるいはインク中に溶解していた気体が析出した際に、確実に気体を除去してインク導入を可能とする手段と、記録ヘッド内のインク室で凝集した際に凝集した粒子を除去する手段と、記録媒体上から跳ね返って記録ヘッドのオリフィス周辺に付着したインクを除去する手段とを有することにより、安定した液体塗布が可能であるインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、インクジェット記録装置を以下の構成とした。
【0017】
粒子が分散されたインクの他に、粒子を含まない前記インクの溶媒のみのインク、および前記インクよりも低粘度である洗浄液を収容する液体ボトルを配置し、すべての液体ボトルから記録ヘッド内に液体を加圧して流入させる加圧手段と、前記インクと洗浄液の記録ヘッドへの流入を切り替える切り替え手段と、記録ヘッドに接触してオリフィス列を覆うキャップと、前記加圧手段によって流入させた液体がオリフィスから前記キャップに漏れ出てくる際に、キャップ内に負圧を発生させて液体を吸引したり、非塗布時にオリフィスの目詰まりを解消するためにオリフィスからインクを吸引する吸引手段と、前記キャップ内に洗浄液を送り、洗浄液によってオリフィス周囲の液体を洗い流す送液手段と、前記送液手段によって送られた洗浄液をキャップに溜めた状態で、オリフィスから記録ヘッド内に洗浄液を吸い込み、別に設ける回収ボトルに洗浄液を送る送液手段を設ける。また、前記切り替え手段によって記録ヘッドと粒子が分散されたインクを収容するボトルが接続された際に、粒子が分散されたインクを収容するボトルの内圧を一定負圧に制御する制御手段を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粒子が分散された高粘度のインクを記録ヘッドに流入させる前に、洗浄液と粒子を含まないインクを流入させるので、記録ヘッド内に気泡が残ることがなく、粒子が分散された高粘度のインクを安定して吐出させることができるという効果がある。
【0019】
また、キャップを記録ヘッドに接触してオリフィス列を覆い、吸引手段によってキャップ内を負圧にすることにより、オリフィス付近に残った気泡を除去できるので、インクを安定して吐出させる状態に記録ヘッドを復旧させることができるという効果がある。
【0020】
また、キャップ内に洗浄液を送り、洗浄液を記録ヘッドからに吸引することにより、インク溶剤が乾燥して記録ヘッド内で凝集した粒子を吸い出すことができるので、インクを安定して吐出させる状態に記録ヘッドを復旧させることができるという効果がある。
【0021】
また、キャップ内に洗浄液を送り、洗浄液によってオリフィス周囲の液体を洗い流すことができるので、オリフィス保護をしながら記録媒体上から跳ね返って記録ヘッドのオリフィス周辺に付着したインクを除去することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、発明の実施形態について図面に従って説明する。
【実施例1】
【0023】
まず、図2に本発明に関するインクジェット記録装置の概略の構成例を示す。
【0024】
本インクジェット記録装置は、ステージ101上にx方向移動機構を備えたxテーブル102と、ステージ101上に固定された2本の脚と、その脚にxテーブル102を跨ぐように、xテーブル102に対して所定の距離をあけて設けたフレームと、フレームの長手方向(y方向)にy方向移動機構を備えたyテーブル104が設けてある。さらに、yテーブル104に設けられz方向への移動させるためのz方向移動機構を備えたzテーブル(図示せず)と、zテーブルに設けられた記録ヘッド1とから構成されている。xテーブル102には基板103を吸着保持する基板保持機構が設けてある。この構成において基板103に所望のドットパターンを印字する装置となっている。なお、ドットパターンは、直径2〜5μmの粒子を含んだインクで形成される。
【0025】
zテーブルに固定されている記録ヘッド1はyテーブル104に固定した第一インクボトル4に接続してある。これにより、図示しないインク塗布コントローラの信号に従って、記録ヘッド1が基板103に対向した面に等間隔に並ぶオリフィスよりインクを吐出する。記録ヘッド1からのインク吐出に合わせて、xテーブル102に吸着された基板103がx方向移動機構を動作させることで+x方向に搬送されることによって、基板103上に一定幅の帯状のインクドットパターンが形成される。xテーブル102により1回の搬送が終わると、記録ヘッド1はy方向移動機構によってyテーブル104をy方向に一定の距離だけ移動する。その後、再度xテーブル102上に吸着された基板103が−x方向に搬送されることによって、基板103上に次のインクドットパターンが形成される。
【0026】
また、xテーブル102とyテーブル104の変位量は、図示しない各駆動機構内部に設けてあるエンコーダ等の検出手段で検出され、コントローラ等に取り込まれ、この検出結果に基づいてx及びy方向移動機構が制御される。
【0027】
本実施例のインクジェット記録装置には、ステージ101の下部に複数のボトル2,6,7が設置されている。また、記録ヘッド1のオリフィスを設けた側の表面を覆うことができるように配置されたキャップ8がステージ101に設けてある。さらに、記録ヘッド1でのインク吐出が最適となるように、図示しない上記ボトルからインクを記録ヘッド1に供給するインク供給系、及び記録ヘッド1の清掃等を行う記録ヘッドメンテナンス系が存在している。これらの機構については、別の図を用いて以下説明する。
【0028】
図1は本発明となるインクジェット記録装置のインク供給系、及び記録ヘッドメンテナンス系を示す図である。本実施例のインクジェット記録装置では6個の溶液ボトルが配置されている。洗浄液ボトル2には洗浄液が、溶媒ボトル3には粒子を含まないインク溶媒が、第一インクボトル4には粒子を含むインクが、第二インクボトル5にも粒子を含むインクが、第一回収ボトル6には洗浄液や、溶媒及び粒子を分散させたインクが、第二回収ボトル7にも洗浄液や溶媒、及び粒子を分散させたインクが蓄積される。各溶液ボトルからは配管が伸びており、エアーポンプ11〜16,ウォーターポンプ17,18,三方弁21〜25によってボトル内部の液体を移動し、記録ヘッド1へのインク供給と保全が行われる。なお、記録ヘッド1には複数のインク導入口または排出口が設けられている。また、第一インクボトル4と第二インクボトル5の内部には攪拌子41,51が入っており、常時内部のインクは攪拌されている。以下、インク供給方法,記録ヘッド保全方法について順次説明する。
【0029】
まず、インク供給方法について図5を用いて説明する。図5は図1の配管図において、インク供給に関与する部分の配管を太く記載し直したものである。
【0030】
記録ヘッド1でのインク塗布を行う前に、まず洗浄液ボトル2に収容されている洗浄液を記録ヘッド1に導入する。このため、記録ヘッド1はステージ101に設けてあるキャップ8に近接する位置までz方向駆動機構により降下させる。洗浄液は粘度や表面張力が低く、粒子を分散させたインクの溶媒と反応しない液体であり、アルコール等が適している。洗浄液の役割は、記録ヘッド1内部に存在する気泡等を取り除くことである。洗浄液ボトル2の洗浄液が記録ヘッド1に入るように三方弁21,22,23を操作して洗浄液ボトル2から記録ヘッドまでの配管を接続する。洗浄液ボトル2に接続してあるエアーポンプ11を動作させ、洗浄液ボトル2内を加圧して洗浄液を記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24を操作して記録ヘッド1から第一回収ボトル6への排出配管を接続して、記録ヘッド1内を通過した洗浄液が第一回収ボトル6に流れるようにしておく。これによって、記録ヘッド1内から気泡を取り除くことができる。記録ヘッド1のオリフィスからも洗浄液が噴出するため、キャップ8で洗浄液を受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。
【0031】
次に、三方弁21を動作させて、溶媒ボトル3から記録ヘッド1までの配管を接続する。他の三方弁22,23は洗浄液を記録ヘッドに導入するときに動作させているので、この時はそのままにする。そして、溶媒ボトル3に接続されているエアーポンプ12を動作させて収容されている溶媒を記録ヘッド1に導入する。粒子を分散させたインクを導入する前に溶媒だけを導入する理由は、粘度の低い洗浄液とインクとを急に混合すると粒子が沈降し易くなり、記録ヘッド1の内部に粒子の凝集が発生するので、この凝集の発生を防止するためである。また、三方弁24の状態を変えずにインク溶媒が第一回収ボトル6に流れるようにして、記録ヘッド内から洗浄液を取り除く。記録ヘッド1のオリフィスからも溶媒が噴出するので、キャップ8で溶媒を受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。
【0032】
最後に、第一インクボトル4内に収容されているインクを記録ヘッド1に導入する。すなわち前記2種類の液体の導入と同様に、三方弁23を操作して第一インクボトルに接続されているエアーポンプ13を動作させ、第一インクボトル4内を加圧してインクを記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24の状態を変えずにインク溶媒が第一回収ボトル6に流れるようにして、記録ヘッド内を粒子が分散されたインクで満たす。記録ヘッド
1のオリフィスからもインクが噴出するので、キャップ8でインクを受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。なお、記録ヘッド1から三方弁24の間の配管内がインクに完全に置き換わった場合には、三方弁24を操作してインクを第二インクボトル5に導入してもよい。なお、インクを第二インクボトル5から第一インクボトルに導入する際、インク中に入った異物を除去するため、第二インクボトルと第一インクボトル間にフィルタ9を設けてある。
【0033】
この状態では、記録ヘッド1のオリフィス面にインクが付着しているので、この後、キャップ8を記録ヘッド1に密着させてインクをエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。
【0034】
以上の工程により、記録ヘッド1内にインクを導入することができる。この後、全オリフィスからのインク吐出を確認する。インク吐出の確認が終了すると記録ヘッド1を上昇させて基板103を塗布開始位置まで移動させる。
【0035】
図9は全オリフィスからのインク吐出を確認する方法を示す図である。
【0036】
記録ヘッド1をキャップ8近くに配置されるロール状の樹脂フィルム401上に移動させ、樹脂フィルム401上に向けて全オリフィスからインクを吐出させる。フィルム401上に塗布された液滴列403を、カメラ402を移動させながら撮影して吐出状態を確認する。全オリフィスからのインク吐出ができていない場合には、もう一度、キャップ8を記録ヘッド1に密着させて、インクの加圧導入すると共に、インク吸引を実行する。尚、カメラ402は記録ヘッド1と同じyテーブルに取り付けておいても良いし、別設しても良い。
【0037】
以上のインク導入方法をまとめると図10のようになる。図10に示すように、インク塗布を開始する前に記録ヘッドに洗浄液を加圧導入する(ステップ500)。洗浄液が記録ヘッド及び配管内に行き渡ると、洗浄液の供給を停止する。次にインク溶媒を加圧導入する(ステップ501)。インク溶媒が記録ヘッド及び配管内に行き渡るとインク溶媒の供給を停止する。次に、インクを加圧導入する(ステップ502)。インクを加圧導入しながら、キャップ8においては記録ヘッドのオリフィスからインクを吸引する(503)。記録ヘッドからのインクの吐出状態をチェックする(ステップ504)。吐出状態が正常であればインクの塗布を開始する(ステップ505)。インクの吐出状態が異常状態である場合はインク加圧導入(ステップ502)に戻り、インクの加圧導入を行う。以上のような工程を行うことによって、インク塗布が可能となる。
【0038】
次に、通常のインク塗布状態におけるインク供給方法、および記録ヘッドメンテナス系について、図6を用いて説明する。
【0039】
図6は図1の配管図において、インク供給に関与する部分の配管を太く記載し直したものである。
【0040】
記録ヘッド1でのインク塗布を開始する際には、記録ヘッド1内部の圧力を記録ヘッド1のオリフィスからインクが垂れない程度の負圧に設定する。そのために、三方弁23を操作して第一インクボトル4と記録ヘッド1を接続し、エアーポンプ13で第一インクボトル4内を減圧して記録ヘッド1内の圧力を所定の圧力になるようにする。そして、図2を用いて説明したように、インク塗布コントローラの信号に従って、記録ヘッド1が基板103に対向した面に等間隔に並ぶオリフィスよりインクを吐出させる。記録ヘッド1からのインク吐出に合わせて、xテーブル102に吸着された基板103がx方向移動機構を動作させて搬送されることによって、基板103上に一定幅の帯状のインクドットパターンが形成される。このような動作を繰り返している間に、記録ヘッド1内ではインク中の粒子の沈降が始まってくる。粒子の沈降が発生すると、一滴中に含まれる粒子数が大きく変化する。また場合によっては、オリフィスの目詰まりが発生する。このため、記録ヘッド1内のインクを定期的に一定値以上の流速で流す必要がある。
【0041】
記録ヘッド1内にインクの流れを形成する場合は、オリフィスからインクが漏れるため、基板103全体へのインク塗布が終了した時点などの非塗布状態で行う。エアーポンプ13で第一インクボトル4内を加圧してインクを記録ヘッド1に押し込む。この際、三方弁24をインクが第二インクボトル5に入るように操作すると共に、エアーポンプ16によって第二インクボトル5に入るように内の圧力を大気圧、もしくは減圧してインクが第二インクボトル5内に流れるようにする。記録ヘッド1のオリフィスからもインクが噴出するので、この処理を行うときは、記録ヘッド1をキャップ8に近接させて行う。すなわち、キャップ8でオリフィスからのインクを受けて、エアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。また、定期的に第二インクボトル5のインクをウォーターポンプ17によって、第一インクボトル4に戻してもよい。その際、インク中に入った異物を除去するためのフィルタ9を通す。
【0042】
記録ヘッド1内のインクを定期的に一定値以上の流速で流すことにより、記録ヘッド1内に粒子が沈降することを防止することができるので、常に安定してインク塗布を行うことができる。
【0043】
次に、上記とは別の記録ヘッド1のメンテナンス方法について説明する。
【0044】
基板103全面へのインク塗布が終了すると、次の基板103が搬送されてくるまでの待機時間が存在する。その間の粒子沈降を防止するために、キャップ8を記録ヘッド1に押し当ててオリフィスからインクを吸引する。この工程の頻度は、インクの粘度,粒子の直径,粒子の含有濃度によって異なるが、一枚から十枚程度の基板103全体へのインク塗布が終了した時点行う。同時に全オリフィスからのインク吐出を確認する。確認する方法は、図9を用いて上述した通りである。
【0045】
以上のように、定期的に記録ヘッド1のメンテナンスを行うので、常に安定してインク塗布を行うことができる。
【0046】
次に、上記とは別の記録ヘッド1のメンテナンス方法を説明する。
【0047】
インクを吐出させながら記録媒体上を記録ヘッド1が移動していると、記録ヘッドのオリフィス周辺に記録媒体上からの跳ね返りのインクが付着する。インクが付着していると、インクの吐出方向が曲がるようになるので、記録ヘッド1のオリフィス面を清掃する必要がある。
【0048】
オリフィス面の清掃頻度は、インクの粘度,粒子の直径,粒子の含有濃度によって清掃の頻度は異なるが、塗布する基板の枚数でほぼ決定される。例えば、数枚から数十枚の基板103へ塗布した後で行う。つまり、前述したキャップ8を用いた吸引によるメンテナンスよりも長い周期で行う。
【0049】
オリフィス面の清掃方法について、図7を用いて説明する。図7は図1の配管図において、オリフィス面の清掃に関与する部分の配管を太く記載し直したものである。
【0050】
記録ヘッド1のオリフィス面の洗浄は、洗浄液ボトル2内に収容されている洗浄液を使用する。洗浄液がキャップ8に入るように三方弁21,22を操作して、エアーポンプ
11で洗浄液ボトル2内を加圧して洗浄液をキャップ8に導入する。z方向移動機構を動作させて、記録ヘッド1をキャップ8に接近させ、その状態でキャップ8に洗浄液を導入することによってオリフィス面を洗浄する。洗浄方法を図3と図4を用いて説明する。
【0051】
図3はキャップ8の構造を示している。キャップ8は内側容器8aと外側容器8bとで構成される。配管201は内側容器8aに洗浄液を導入するための配管である。また、配管202は内側容器8aからオーバーフローした洗浄液を排出するための配管である。配管203は内側容器内のインクを排出するための配管である。配管202,203は三方弁25で第二回収ボトル7との接続を切り替えることができる。
【0052】
図4には記録ヘッド1のオリフィス面の洗浄方法を示している。図4(a)は、記録ヘッド1がキャップ8に接近している状態を示している。オリフィス面を洗浄するためには、まず、記録ヘッド1をキャップ8の内側容器8aに接近させ、配管201を使用して内側容器8aに洗浄液を流す。内側容器8a容積以上の洗浄液300は、記録ヘッド1のオリフィス面を洗浄しながらオーバーフローして外側容器8b内に入る。洗浄液300の流れによって、オリフィス面に付着した粒子は除去される。インク外側容器8b内の洗浄液は、第二回収ボトル7に接続されたエアーポンプ15によって吸引されて、配管202及び三方弁25を介して第二回収ボトル7に移動する。オリフィス面の洗浄が終了した後、内側容器8a内の洗浄液は三方弁25を配管203側に接続して第二回収ボトル7に移動する。
【0053】
以上のような洗浄を行うことにより、オリフィス面を擦ることなく洗浄できるので、オリフィス面をインク中の粒子で傷付けることが無い。従って、記録ヘッド1の寿命を縮めることなく使用することができる。
【0054】
図4(b)はキャップ8の内側容器8aを記録ヘッド1が接近する側から見た図である。内側容器8a内に洗浄液の流れが発生するように、配管201は内側容器8aの中心から外れた位置につながっている。また、内側容器8a内に洗浄液の流れを強めるように、キャップ8全体を振動させる。このように、内側容器8a内での洗浄液の流れを大きくすることによって、オリフィス面の洗浄性能を向上させることができる。
【0055】
なお、オリフィス面の洗浄の後は、上述した粒子が分散されているインクを記録ヘッド1に導入する工程を行う。
【0056】
次に、上記とは別の記録ヘッド1のメンテナンス方法について説明する。
【0057】
本発明のインクジェット記録装置は、粒子を分散したインクを塗布する装置であるので、インク溶剤が乾燥して粒子が記録ヘッド内のインク室で凝集することがある。その場合は染料インクを塗布するインクジェット記録装置と比較して、記録ヘッドの復旧が困難となる。インク中に分散している粒子が凝集すると、記録ヘッドのオリフィスから凝集物を排出させることが難しい。その場合は、キャップ8を使用したインク吸引だけでは全オリフィスからのインク吐出ができなくなる。キャップ8を使用したインク吸引で全オリフィスからのインク吐出ができない場合は、オリフィス側から記録ヘッド内に向けて洗浄液を吸い込んで記録ヘッド1の排出流路から凝集物を排出する必要がある。凝集物の排出方法を、図8を用いて説明する。
【0058】
図8は図1の配管図において、記録ヘッド1のメンテナンス方法に関与する部分の配管を太く記載し直したものである。記録ヘッド1内部の凝集物を排出させるためには、洗浄液ボトル2内に収容されている洗浄液を使用する。
【0059】
記録ヘッド1の排出流路から凝集物を排出させる工程は、まず、記録ヘッド1内のインクを溶媒に置換えすることから始める。これは、粘度の高いインクと粘度の低い洗浄液を混合すると、インク中の粒子の凝集が起こるためである。溶媒が記録ヘッド1に入るように三方弁21,22,23を操作して、エアーポンプ12で溶媒ボトル3内を加圧して溶媒を記録ヘッド1に押し込む。記録ヘッド1のオリフィスからも溶媒が噴出するので、キャップ8で溶媒を受けてエアーポンプ15で第二回収ボトル7内に吸引する。この後、三方弁21,22を操作して、エアーポンプ11で洗浄液ボトル2内を加圧して洗浄液をキャップ8に導入する。記録ヘッド1をキャップ8に押し当てて、洗浄液とオリフィス面を接触させる。キャップ8への洗浄液の供給を継続させながら、三方弁24を操作して記録ヘッド1から第一回収ボトル6への配管がつながるようにし、エアーポンプ14によって第一回収ボトル6内を負圧にして、キャップ8内の洗浄液を第一回収ボトル6内に吸引する。その際、三方弁23は記録ヘッド1と他のボトルがつながらないように操作しておく。洗浄液によって記録ヘッド1内の固着物は溶解して外部に排出される。
【0060】
以上の工程の後は、上述した洗浄液,粒子を含まないインク溶媒,インクの順に液体を記録ヘッド1に導入する工程を行い、インク塗布ができるような状態にする。
【0061】
次に、本インクジェット記録装置の終了動作について説明する。
【0062】
インクジェット記録装置を終了させる場合は、インク中の粒子の沈降を防止するため、インク供給方法とは逆の順番で液体を記録ヘッド1に導入する。つまり、粒子を含まないインク溶媒の加圧導入、次いで洗浄液の加圧導入を行い、洗浄液が記録ヘッド1に導入された状態でインクジェット記録装置の稼動を終了させる。
【0063】
以上説明したインク導入方法、および記録ヘッドメンテナンス方法を実行することによって、安定した液体塗布が可能であるインクジェット記録装置を実現することができる。
【実施例2】
【0064】
実施例1の説明では、洗浄液としてアルコールの例を示したが、記録ヘッド1内の洗浄を強化するために、水に表面活性剤を溶かした液体を有するボトルを別に配置してもよい。
【0065】
水に表面活性剤を溶かした液体(以下、表面活性剤水と記載)は、主に記録ヘッド1内の洗浄目的であるので、オリフィス側から記録ヘッド内に向けて洗浄液を吸い込んで記録ヘッド1から凝集物を排出する際に使用する。
【0066】
まず、記録ヘッド1をキャップ8の内側容器8aに接近させ、内側容器8aに表面活性剤水を流す。内側容器8a容積以上の表面活性剤水は、記録ヘッド1のオリフィス面を洗浄しながらオーバーフローして外側容器8b内に入る。表面活性剤水の流れによってオリフィス面に付着した粒子は除去される。インク外側容器8b内の表面活性剤水は、エアーポンプ15によって吸引されて配管202を通して第二回収ボトル7に移動する。洗浄が終了した後、内側容器8a内の表面活性剤水は配管203を通して第二回収ボトル7に移動する。
【0067】
この洗浄の後は、実施例1と同じように、第一インクボトル4内に収容されているインクを記録ヘッド1に導入する工程を行い、インク塗布が可能な状態にする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例であるインク供給手段および記録ヘッドメンテナンス手段を示す図である。
【図2】本発明を適用するインクジェット記録装置の概要を示す図である。
【図3】本発明の一実施例である記録ヘッドのキャップを説明する図である。
【図4】本発明の一実施例である記録ヘッドのオリフィス面を洗浄する方法を示す図である。
【図5】本発明の一実施例である記録ヘッドへのインク導入方法を示す図である。
【図6】本発明の一実施例であるインク塗布時における記録ヘッドへのインク供給方法を示す図である。
【図7】本発明の一実施例である記録ヘッドのオリフィス面の洗浄手段を示す図である。
【図8】本発明の一実施例である記録ヘッドの洗浄手段を示す図である。
【図9】本発明の一実施例であるインクの吐出状態を確認する方法を示す図である。
【図10】本発明の一実施例である記録ヘッドへのインク導入工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 記録ヘッド
2 洗浄液ボトル
3 インク溶媒ボトル
4 第一インクボトル
5 第二インクボトル
6 第一回収ボトル
7 第二回収ボトル
11〜16 エアーポンプ
17,18 ウォーターポンプ
21〜25 三方弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する搬送装置と、粒子が分散されたインクを収容するインクボトルと、前記インクを基板上に塗布する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを移動させるキャリッジを有するインクジェット記録装置において、
前記インクの溶媒を収容した溶媒ボトルと、洗浄液を収容した洗浄液ボトルと、前記各ボトル内を加圧して各液体を記録ヘッド内に流入させる加圧手段と、前記記録ヘッドに接続され記録ヘッドから液体を排出させる排出配管と、前記排出配管を介して排出された液体を収容する第一回収ボトルと、前記各ボトルから記録ヘッドへの各液体の供給を切り替える切り替え手段と、記録ヘッドに接触して前記記録ヘッドのオリフィス列を覆うキャップと、前記キャップ内に負圧を供給する吸引手段と、前記吸引手段により吸引されたキャップ内の液体を収容する第二回収ボトルとを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記キャップは内側の容器と外側の容器が接合された構造であり、内側容器は前記洗浄液ボトルから洗浄液が送られる配管が接続され、外側容器には液体を回収するため第二回収ボトルに接続する配管が設けられていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、洗浄液,インク溶媒,インクの順に記録ヘッドに加圧充填する工程と、記録ヘッドにキャップを接触させて記録ヘッド内部の液体を吸引する工程と、前記キャップ内に洗浄液を送り、キャップと記録ヘッドを接近させて記録ヘッドのオリフィス面を洗浄する工程と、前記キャップ内に洗浄液を送り、キャップと記録ヘッドを接触させてキャップ内の洗浄液を記録ヘッド側に吸引する手段により、記録ヘッド内を洗浄する工程とを有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、キャップ内に洗浄液を送り、キャップと記録ヘッドを接近させて記録ヘッドのオリフィス面を洗浄する工程の後に、インクを記録ヘッドに加圧充填する工程を実行することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、キャップと記録ヘッドを接触させて記録ヘッドから洗浄液を吸引する手段により記録ヘッド内を洗浄する工程の前に、粒子を含まないインク溶媒,洗浄液の順に記録ヘッドに加圧充填する工程を実行することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、キャップと記録ヘッドを接触させてキャップ内の洗浄液を記録ヘッドから側に吸引する手段で記録ヘッド内を洗浄する工程の後に、洗浄液,粒子を含まないインク溶媒,インクの順に記録ヘッドに加圧充填する工程を実行することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、記録ヘッドのオリフィス面を洗浄する工程でキャップを振動させることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−272996(P2008−272996A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117911(P2007−117911)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】