説明

インク吐出装置及びインク吐出制御方法

【課題】膜厚形状が均一で、品質が良好な膜を形成し、さらに、欠陥画素の修復時間を短縮することができるインク吐出装置及びインク吐出制御方法を提供する。
【解決手段】ヘッドの移動制御部22と、インク吐出領域認識部3と、インク吐出タイミング制御部23と、インク吐出液滴数演算部5とを備えていることにより、同一ノズル列内でインク吐出タイミングをずらし、インク吐出量を段階的に増加させることができる。これにより、インク着弾後のインク吐出領域の膜厚形状を全体として均一にすることができる。その結果、品質の良好な膜を形成することができる。また、ヘッド7は、複数のノズル10を有するノズル列を備えているので、欠陥画素の修復時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを備えるヘッドを用いて、媒体にインクを吐出するインク吐出装置およびその制御方法に関するものであり、特に、例えばカラーフィルタパネル(Color Filter Panel、以下「CFパネル」と記載する)の画素に対して、迅速かつ正確にインクを吐出することにより、高品質な画素塗布を行う用途に好適に用いることができるインク吐出装置及びインク吐出制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクを吐出する技術は、民生用のプリンタに転用されるのみならず、液晶用のCFパネル生産装置、その他の生産装置にも幅広く転用されるようになってきており、その用途が多様化している。その一例として、インクを吐出する技術を利用して、基板上にパターンを形成するインクジェットパターニング技術が挙げられる。インクジェットパターニング技術は、インク吐出装置から微量のインクを噴射し、基板上に直接微細なパターンを印字する技術である。このインクジェットパターニング技術は、従来のフォトリソグラフィーによる真空プロセスを用いたパターン生成方法に代わり、脱真空プロセスに使用可能な技術として注目が高まっている。
【0003】
そして、このインクジェットパターニング技術を用いたCFパネルを形成するためのインク吐出装置の開発が盛んに進められている。このインク吐出装置は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色からなるインクを、ガラス基板上に形成されているRGB用画素領域内に着弾させることによって各画素を埋め、CFパネルを形成する。このインク吐出装置は、特に、近年益々大面積化が進んでいる液晶用のCFパネル製造において用いられている。そして、このインク吐出装置は、その処理時間が厳重に管理され、一定の短時間で確実に処理を成し遂げることが要求される。さらに、液晶テレビ用途等では、特に高品質なCFパネルが要求される。
【0004】
また、インクジェットパターニング技術は、画素の全面印刷技術としてのみならず、夾雑物の混入又は付着に起因して生じる欠陥画素を修復するための技術としても広く用いられている。例えば、隣接画素間でのインクの混色等による欠陥画素の場合、混色が発生した欠陥画素のインク層をレーザ装置等により取り除き、その取り除いた部分に再度指定された色のインクをインクジェットパターニング技術によって吐出して修復する方法が用いられている。
【0005】
特許文献1では、画素にインク吐出して修復する際に、同一ノズルからインクをずらしながら重ねて吐出し、吐出されたインクの間隔を、吐出の前半部よりも吐出の後半部で狭める方法が示されている。具体的には、図9に示すように、吐出の前半部であるB−C間及びC−D間の幅を広くし、吐出の後半部であるD−E間及びE−F間の幅を狭くして吐出する方法が示されている。この方法により、先に吐出したインクドットに引き込まれるように後から吐出したインクドット液が吸い寄せられる現象を防止することが記載されている。
【特許文献1】特開平8−327816号公報(平成8年12月13日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインク吐出装置では、画素の印字方向としてノズルを画素短辺方向に走査させて画素内にインクを吐出する際に、画素内に多くのノズルを割り当てるため、複数のノズルを有するヘッドを用いてそのヘッドを傾けてインクを吐出する場合がある。その場合、画素に先に到着したノズルから先に吐出したインクに、後に到着した他のノズルから後に吐出したインクが引き付けられるため、インク着弾後の画素の膜厚形状が不均一になる。その結果、品質の良好な膜を形成することができないという問題点を有している。
【0007】
また、特許文献1に開示された方法は、画素の印字方向としてノズルを画素長辺方向に走査させて画素内にインクを吐出する際の、画素長辺方向の膜厚補正方法、すなわち、ノズルを走査させた方向の膜厚補正方法であるため、画素短辺方向に複数のノズルを有するヘッドを走査させる場合には、画素長辺方向の膜厚を補正することができない。
【0008】
さらに、インクジェットパターニング技術が用いられるインク吐出装置により生産されるCFパネルを備えた液晶表示装置は、近年益々大型化しているので、膜厚形状が均一で品質が良好な膜を基板上に形成し、かつ、欠陥画素に対しては正確に位置調整を行い欠陥を修復して、高画質な画像を実現することが求められている。さらに、欠陥画素にインクを吐出することにより欠陥画素を修復する時間を短縮することは極めて重要である。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、膜厚形状が均一で、品質が良好な膜を形成し、さらに、欠陥画素の修復時間を短縮することができるインク吐出装置及びインク吐出制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、膜厚形状が均一で品質が良好な膜を形成し、欠陥画素の修復時間を短縮するために、インク吐出装置及びインク吐出制御方法において、ヘッドの移動方向の制御、インク吐出タイミングの制御及びインクの吐出量の制御を可能とすることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るインク吐出装置は、上記課題を解決するために、インクの吐出対象物である媒体に対して相対的に移動可能であり、媒体に対してインクを吐出可能とする複数のノズルがノズル列として設けられるヘッドを備えるインク吐出装置であって、さらに、上記ヘッドの移動方向を、ノズル列の配列方向に対して非平行な方向に移動可能とする制御を行う移動制御手段と、上記ノズル列に含まれる連続して並ぶ複数のノズルからなるノズル群であり、かつ、媒体に対してインクを実際に吐出するノズル群である吐出対象ノズル群を決定する吐出対象ノズル決定手段と、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、順次インクの吐出タイミングを遅くするように、インクの吐出を制御するインク吐出タイミング制御手段と、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、先に吐出されるインクの吐出量よりも、後から吐出されるインクの吐出量が大きくなるように、順次インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出量制御手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記課題を解決するために、インクの吐出対象物である媒体に対して相対的に移動可能であり、媒体に対してインクを吐出可能とする複数のノズルがノズル列として設けられるヘッドから、インク吐出動作を制御するインク吐出制御方法であって、上記ヘッドは、ノズル列に対して非平行に移動可能になっているとともに、さらに、上記ノズル列に含まれる連続して並ぶ複数のノズルからなるノズル群であり、かつ、媒体に対してインクを実際に吐出するノズル群である吐出対象ノズル群を決定する吐出対象ノズル決定ステップと、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、順次インクの吐出タイミングを遅くするように、インクの吐出を制御するインク吐出タイミング制御ステップと、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、先に吐出されるインクの吐出量よりも、後から吐出されるインクの吐出量が大きくなるように、順次インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出量制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0013】
上記の発明によれば、ヘッドの移動方向が、ヘッドに設けられたノズル列の配列方向と非平行になっていることから、ノズル列のうち吐出対象ノズル群に決定された各ノズルの中で、インク吐出に先後が生じ、同一ノズル列内でインク吐出タイミングをずらし、インク吐出量を段階的に増加させることができる。これにより、先に吐出したインクに、後に吐出したインクが引き付けられたとしても、先に吐出したインクの量より後に吐出したインクの量の方が多いことから、インク着弾後のインク吐出領域の膜厚形状を全体として均一にすることができる。その結果、品質の良好な膜を形成することができる。
【0014】
また、上記の発明によれば、ヘッドは、複数のノズルを有するノズル列を設けているので、1つのノズルを設けたヘッドを用いる場合と比較すれば、欠陥画素の修復時間を短縮することができる。さらに、複数の各ノズルからのインク吐出量を少なくすることもできる。
【0015】
また、本発明に係るインク吐出装置は、さらに、上記媒体において実際にインクを吐出する領域であるインク吐出領域を認識するインク吐出領域認識手段を備えており、上記吐出対象ノズル決定手段は、上記ノズル列に含まれ、認識されたインク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、吐出対象ノズル群として決定し、上記インク吐出タイミング制御手段およびインク吐出量制御手段は、それぞれ、インク吐出領域に先に到着したノズルを、最初にインクを吐出するノズルと決定し、順次、連続して並ぶ順番で各ノズルのインクの吐出タイミングおよびインク吐出量の変化を制御することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、さらに、上記媒体において実際にインクを吐出する領域であるインク吐出領域を認識するインク吐出領域認識ステップを含んでおり、上記吐出対象ノズル決定ステップは、上記ノズル列に含まれ、認識されたインク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、吐出対象ノズル群として決定し、上記インク吐出タイミング制御ステップおよびインク吐出量制御ステップは、それぞれ、インク吐出領域に先に到着したノズルを、最初にインクを吐出するノズルと決定し、順次、連続して並ぶ順番で各ノズルのインクの吐出タイミングおよびインク吐出量の変化を制御することが好ましい。
【0017】
これにより、ノズル列のうちインク吐出領域に割り当てられたノズル群の中でインク吐出領域への到達に先後が生じ、同一ノズル列内でインク吐出タイミングをずらし、インク吐出量を段階的に増加させることができる。つまり、インク吐出領域に先に到着したノズルからは少量のインクを先に吐出させ、後に到着した他のノズルからは多量のインクを後に吐出させることができる。
【0018】
また、本発明に係るインク吐出装置は、上記インク吐出領域認識手段が、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方を認識可能としているとともに、上記インク吐出量制御手段は、上記吐出領域認識手段により認識された情報に基づいて、インク吐出量の変化を制御することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記インク吐出領域認識ステップが、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方を認識可能としているとともに、上記インク吐出量制御ステップは、上記吐出領域認識手段により認識された情報に基づいて、インク吐出量の変化を制御することが好ましい。
【0020】
これにより、インク着弾後のインク吐出領域の膜厚形状を全体として均一にすることができる。その結果、品質の良好な膜を形成することができる。
【0021】
また、本発明に係るインク吐出装置は、上記インク吐出量制御手段が、吐出されるインクの液滴量を変化させることで、インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出液滴数演算部であることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記インク吐出量制御ステップが、吐出されるインクの液滴量を変化させることで、インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出液滴数演算ステップであることが好ましい。
【0023】
これにより、インク吐出量をより正確な割合で変化させることができる。
【0024】
また、本発明に係るインク吐出装置は、上記移動制御手段が、ヘッドまたは媒体を、ノズル列の配列方向に対して傾斜する方向に移動する制御を行うことが好ましい。
【0025】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、ヘッドまたは媒体が、ノズル列の配列方向に対して傾斜する方向に移動可能となっていることが好ましい。
【0026】
これにより、ヘッドまたは媒体を、ノズル列の配列方向に対して直交する方向に移動させる場合と比較して、インク吐出領域に割り当てられるノズルの数を増加させることができる。その結果、欠陥画素の修復時間を短縮することができる。また、ヘッドまたは媒体を、インク吐出領域の短辺方向に移動させることで、インク吐出領域の長辺方向の膜厚補正をすることができる。その結果、ヘッドまたは媒体を、上記インク吐出領域の長辺方向に移動させて長辺方向の膜厚補正をする場合と比較して、欠陥画素の修復時間を短縮することができる。
【0027】
また、本発明に係るインク吐出装置は、さらに、上記ヘッドまたは媒体のいずれかの傾斜角度を調整する角度調整手段を備えていることが好ましい。また、本発明に係るインク吐出装置は、上記角度調整手段が、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方に基づいて、ノズル列の配列方向に対するヘッドまたは媒体の傾斜角度を調整するとともに、調整された傾斜角度に基づいて、上記インク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、上記吐出対象ノズル群として決定する吐出対象ノズル決定手段を兼ねていることが好ましい。
【0028】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、さらに、上記ヘッドまたは媒体のいずれかの傾斜角度を調整する角度調整ステップを含んでいることが好ましい。また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記角度調整ステップが、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方に基づいて、ノズル列の配列方向に対するヘッドまたは媒体の傾斜角度を調整するとともに、調整された傾斜角度に基づいて、上記インク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、上記吐出対象ノズル群として決定する吐出対象ノズル決定ステップを兼ねていることが好ましい。
【0029】
これにより、インク吐出領域に割り当てられるノズルの数を制御することができる。
【0030】
また、本発明に係るインク吐出装置は、さらに、少なくとも、上記角度調整手段により調整されるヘッドまたは媒体の傾斜角度と、上記インク吐出量制御手段により制御されるインク吐出量の段階的な変化とに基づき、インク吐出パターンを生成するインク吐出パターン生成手段を備えており、上記吐出対象ノズル群からのインクの吐出は、上記インク吐出パターンに基づいて行われることが好ましい。
【0031】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、さらに、少なくとも、上記角度調整ステップにより調整されるヘッドまたは媒体の傾斜角度と、上記インク吐出量制御ステップにより制御されるインク吐出量の段階的な変化とに基づき、インク吐出パターンを生成するインク吐出パターン生成ステップを含んでおり、上記吐出対象ノズル群からのインクの吐出は、上記インク吐出パターンに基づいて行われることが好ましい。
【0032】
これにより、生成したインク吐出パターンを用いてインク吐出タイミングを制御することができる。
【0033】
また、本発明に係るインク吐出装置は、上記インク吐出タイミング制御手段が、インクの吐出タイミングを遅くする制御に、上記インク吐出パターン生成手段により生成されるインク吐出パターンを用いるとともに、上記ヘッドが、インク吐出タイミング制御手段からの制御信号と上記インク吐出パターンとに基づいてインクを吐出することが好ましい。
【0034】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記インク吐出タイミング制御ステップが、インクの吐出タイミングを遅くする制御に、上記インク吐出パターン生成ステップにより生成されるインク吐出パターンを用いるとともに、上記ヘッドが、インク吐出タイミング制御ステップからの制御信号と上記インク吐出パターンとに基づいてインクを吐出することが好ましい。
【0035】
これにより、インク吐出タイミングおよびインク吐出量をより正確な割合で変化させることができる。
【0036】
また、本発明に係るインク吐出装置は、表示装置用カラーフィルタパネルの欠陥画素修復用に用いられることが好ましい。また、本発明に係るインク吐出装置は、上記カラーフィルタパネルが、液晶表示装置用であることが好ましい。
【0037】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、表示装置用カラーフィルタパネルの欠陥画素修復用に用いられることが好ましい。また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記カラーフィルタパネルが、液晶表示装置用であることが好ましい。
【0038】
液晶表示装置の用途では、特に高品質なCFパネルが要求されている。ここで、本発明に係るインク吐出装置およびインク吐出制御方法は、膜厚形状が均一で、品質が良好な膜を形成することができるので、液晶表示装置用CFパネルの欠陥画素修復用に用いることができる。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明に係るインク吐出装置は、上記ヘッドの移動方向を、ノズル列の配列方向に対して非平行な方向に移動可能とする制御を行う移動制御手段と、上記ノズル列に含まれる連続して並ぶ複数のノズルからなるノズル群であり、かつ、媒体に対してインクを実際に吐出するノズル群である吐出対象ノズル群を決定する吐出対象ノズル決定手段と、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、順次インクの吐出タイミングを遅くするように、インクの吐出を制御するインク吐出タイミング制御手段と、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、先に吐出されるインクの吐出量よりも、後から吐出されるインクの吐出量が大きくなるように、順次インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出量制御手段とを備えるものである。
【0040】
また、本発明に係るインク吐出制御方法は、上記ヘッドが、ノズル列に対して非平行に移動可能になっているとともに、さらに、上記ノズル列に含まれる連続して並ぶ複数のノズルからなるノズル群であり、かつ、媒体に対してインクを実際に吐出するノズル群である吐出対象ノズル群を決定する吐出対象ノズル決定ステップと、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、順次インクの吐出タイミングを遅くするように、インクの吐出を制御するインク吐出タイミング制御ステップと、上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、先に吐出されるインクの吐出量よりも、後から吐出されるインクの吐出量が大きくなるように、順次インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出量制御ステップとを含むものである。
【0041】
それゆえ、先に吐出したインクに、後に吐出したインクが引き付けられたとしても、先に吐出したインクの量より後に吐出したインクの量の方が多いことから、インク着弾後のインク吐出領域の膜厚形状を全体として均一にすることができる。その結果、品質の良好な膜を形成することができるという効果を奏する。
【0042】
また、ヘッドは、複数のノズルを有するノズル列を設けているので、1つのノズルを設けたヘッドを用いる場合と比較すれば、欠陥画素の修復時間を短縮することができるという効果を奏する。さらに、複数の各ノズルからのインク吐出量を少なくすることができるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の一実施形態について図1ないし図8に基づいて説明すれば以下の通りである。
【0044】
図1は、本発明の実施形態を示すものであり、インク吐出装置1の要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、インク吐出装置1は、主として、インク吐出部2、インク吐出領域認識部(インク吐出領域認識手段)3、インク吐出順番決定部4、インク吐出液滴数演算部5、インク吐出パターン生成部(インク吐出パターン生成手段)6、ヘッドの角度制御部(角度調整手段)21、ヘッドの移動制御部(移動制御手段)22、インク吐出タイミング制御部(インク吐出タイミング制御手段)23を備えている。
【0045】
インク吐出部2は、CFパネル上に発生した複数個の欠陥画素に対してインクを吐出するためのものである。インク吐出部2の詳細な構成については後述する。
【0046】
インク吐出領域認識部3は、CFパネル上に発生した複数個の欠陥画素の形状と位置とを認識するためのものである。例えば、インク吐出領域認識部3は、観察用カメラ等の撮像部を用いることにより、欠陥画素の形状及び位置を認識する。具体的には、インク吐出領域認識部3が欠陥画素の形状及び位置を認識する方法として、実際に撮像部を用いて直接媒体上に点在した欠陥画素の形状、大きさ及び位置を認識する方法や、事前にファイル等を用いて欠陥画素の形状、大きさ及び位置を記述し、それらの情報を電子データとして入手する方法等がある。
【0047】
インク吐出順番決定部4は、インク吐出領域認識部3が認識した複数個の欠陥画素の形状と位置との情報に基づいて、複数個の欠陥画素を修復する順番を決定するためのものである。つまり、インク吐出順番決定部4は、複数個の欠陥画素の形状と位置との情報に基づいて、後述するヘッド7の走査回数を最小化し、処理時間を最短化することを目的として欠陥画素の修復順番を決定する。さらに、インク吐出順番決定部4は、ヘッド7の走査方向も決定する。
【0048】
インク吐出液滴数演算部5は、インク吐出順番決定部4によって決定された修復順番及び後述するヘッド7の走査方向に基づいて、欠陥画素に割り当てられた各ノズル10からのインク液滴量を決定するためのものである。つまり、インク吐出液滴数演算部5は、欠陥画素に割り当てられた各ノズル10のうち一端のノズル10から他の一端のノズル10に向けて、インク液滴量を段階的に増加又は減少させるようにインク液滴量を決定する。
【0049】
インク吐出パターン生成部6は、インク吐出領域認識部3が認識した欠陥画素の形状と位置、インク吐出順番決定部4によって決定された欠陥画素の修復順番並びに後述するヘッド7の走査方向、及び、インク吐出液滴数演算部5によって決定されたインク液滴量に基づいて、インクの吐出パターンを生成するためのものである。さらに、インク吐出パターン生成部6は、生成したインク吐出パターンをインク吐出タイミング信号としてインク吐出部2に出力する。そして、インク吐出部2の各ノズル10は、インク吐出パターン生成部6から出力されたインク吐出タイミング信号に基づいて、複数個の欠陥画素に対してインクを吐出する。
【0050】
ヘッドの角度制御部21は、インク吐出領域認識部3が認識した欠陥画素の形状と位置に基づいて、後述するヘッド7に備えられているノズル列の角度を算出し、ヘッド7に備えられているノズル列の角度の変更を行うためのものである。そして、インク吐出パターン生成部6は、より具体的には、インク吐出領域認識部3が認識した欠陥画素の形状と位置、インク吐出順番決定部4によって決定された欠陥画素の修復順番並びにヘッド7の走査方向、インク吐出液滴数演算部5によって決定されたインク液滴量、及び、ヘッドの角度制御部21によって決定されたヘッド7に備えられているノズル列の角度に基づいて、インクの吐出パターンを生成する。
【0051】
ここで、ヘッド7に備えられているノズル列の角度について、以下のことが考えられる。ヘッド7に備えられているノズル列の角度とは、ヘッド7の移動方向に対して斜めに傾けられた角度のことをいう。
【0052】
ヘッド7に備えられているノズル列の角度が大きい場合、例えば、45度以上の場合には、その角度が小さい場合に比べて、個々のノズル間での印字幅はより大きくなり、欠陥画素に割り当てられるノズルの数はより少なくなる。そのため、欠陥画素を充填するために必要なインク量を確保するためには、ヘッド7を低速で移動させて、ヘッド7が欠陥画素上を通過する時間を長くするか、または、印加する電圧等を制御して、インク吐出部2が大きな液滴を吐出するように制御することが必要となる。逆に、ヘッド7に備えられている両端のノズル間での印字幅はより大きくなるため、両端のノズルを割り当てることにより、大きな欠陥画素に対してもインクの充填が可能となる。
【0053】
一方、ヘッド7に備えられているノズル列の角度が小さい場合には、その角度が大きい場合に比べて、個々のノズル間での印字幅はより小さくなり、欠陥画素に割り当てられるノズルの数はより多くなる。そのため、ヘッド7を高速で移動させて、ヘッド7が欠陥画素上を通過する時間を短くしても、欠陥画素を充填するために必要なインク量を確保することが可能となる。逆に、ヘッド7に備えられている両端のノズル間での印字幅は小さくなるため、大きな欠陥画素に対しては両端のノズルを用いてもノズルを割り当てることができない。よって、インク充填時の十分なインクの広がり(濡れ性)が確保できない場合には、大きな欠陥画素に対してはインクの充填が不可能となる。
【0054】
したがって、ヘッド7に備えられているノズル列の好ましい角度は、主として欠陥画素の大きさによって左右される。つまり、欠陥画素が小さい場合には、欠陥画素に多くのノズルを割り当てることができるように、その角度を小さくすることが好ましい。
【0055】
一方、欠陥画素が大きい場合には、欠陥画素へのインク充填時のインクの広がり(濡れ性)にもよるが、その角度を大きくし、欠陥画素の端部にまでノズルを割り当てることが好ましい。
【0056】
ヘッドの移動制御部22は、インク吐出順番決定部4によって決定された修復順番及び後述するヘッド7の走査方向に基づいて、ヘッド7を移動させるためのものである。
【0057】
インク吐出タイミング制御部23は、ヘッドの移動制御部22によって後述するヘッド7が移動することにより欠陥画素の位置にヘッド7が到着したら、インク吐出パターン生成部6によって生成されたインク吐出パターンに基づいて、インク吐出部2にインク吐出タイミング信号を送るためのものである。そして、インク吐出部2の各ノズル10は、インク吐出タイミング制御部23から出力されたインク吐出タイミング信号に基づいて、複数個の欠陥画素に対してインクを吐出する。
【0058】
例えば、インク吐出部2は、インク吐出タイミング制御部23からエンコーダ信号が入力され、エンコーダのカウント数が指定された数となった場合に、インクを吐出する仕組みとなっている。具体的には、まず、インク吐出タイミング制御部23は、欠陥画素の位置をエンコーダのカウント数に変換する。次に、インク吐出タイミング制御部23は、その変換した情報を、ヘッド7の移動に先立ってインク吐出部2に入力する。その後、ヘッド7の移動が開始する。最後に、インク吐出部2は、インク吐出タイミング制御部23から入力されたエンコーダのカウント数が指定された数に達したら、インクの吐出を開始する。
【0059】
なお、インク吐出タイミング制御部23が、タイミング信号をコンパレータとCPU(Central Processing Unit)等からなる制御部とに出力する構成としてもよい。ここで、コンパレータは、タイミング信号をゲート信号として検出信号をCPUに出力することになる。また、CPUは、コンパレータからの検出信号を判別できることになる。そして、CPUで判別された結果に基づいて、インク吐出部2の各ノズル10は、複数個の欠陥画素に対してインクを吐出する。
【0060】
図2は、インク吐出部2の構成を模式的に示す図である。インク吐出部2は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各色用の3個のヘッド7(ヘッド7R、ヘッド7G及びヘッド7B)を有している。各ヘッド7は、ノズル10を備えている。なお、本実施の形態では、インク吐出部2は、赤色(R)、緑色(G)又は青色(B)のいずれか一色又は二色のヘッド7のみを有していてもよい。なお、ヘッド7と、ヘッド7に備えられているノズル列とは、平行方向でなくてもよい。
【0061】
各ヘッド7のノズル10が段違いに配置されているのは、各ヘッド7を反時計周りに回転させ、主走査方向に対して斜めに傾けることで、各ヘッド7の両端のノズル10を各ヘッド7の主走査方向と同一方向の直線状になるようにするためである。なお、ヘッド7を主走査方向に対して斜めに傾けることで、各ヘッド7の両端のノズル10が各ヘッド7の主走査方向と同一方向の直線状にならない場合であってもよく、欠陥画素の形状と位置とに合わせてヘッド7の主走査方向に対する傾きを調整してもよい。
【0062】
図2に示すように、各ヘッド7を主走査方向(図2のV方向)又は副走査方向(図2のH方向)に対して斜めに傾けることによって、各ノズル10から吐出されたインクの間隔(図2のIg)は、斜めに傾けない場合に比べて小さくなる。つまり、各ヘッド7を主走査方向(V方向)又は副走査方向(H方向)に対して斜めに傾けない場合には、各ノズル10から吐出されたインクの間隔(Ig)は、各ヘッド7における各ノズル10の間隔そのものとなる。これに対して、各ヘッド7を主走査方向(V方向)又は副走査方向(H方向)に対して斜めに傾ける場合には、各ノズル10から吐出されたインクの間隔(Ig)は、各ヘッド7における各ノズル10の間隔よりも小さくなる。これにより、欠陥画素に対してより多くのノズルを割り当てることができる。その結果、割り当てられた各ノズル10からのインク吐出量を少なくすることができる。よって、インク吐出部2が高速で移動しても、その移動している間に、所定のインク液滴量を欠陥画素に対して吐出することができる。したがって、欠陥画素の形状と位置とに合わせて、各ヘッド7を主走査方向又は副走査方向に対して斜めに傾けることが望ましい。
【0063】
図3(a)は、ヘッド7の外観を示す斜視図であり、図3(b)は、ヘッド7と、ヘッド7の各ノズル10からインクを吐出される基板8(CFパネル)とを示す断面図である。また、基板8(CFパネル)は、フィルタ層8aとガラス層8bとの2層からなっている。
【0064】
図3(a)・(b)に示すように、ヘッド7は、ノズル10、筐体11、ノズルプレート12、インク吐出孔13、圧電部材14を備えており、インクを収容している。なお、ノズル10の数は、図2におけるノズル10の数と対応していないが、説明の便宜上、ノズル10の数を4個としている。
【0065】
具体的には、筐体11の開口は、ノズルプレート12によって防がれている。ノズルプレート12には、ノズル10が所定の間隔をあけて備えられている。ノズル10には、直径が約20μmであるインク吐出孔13が形成されている。筐体11の内部には、インク流路15を形成するように圧電部材14が備えられている。ノズル10から基板8にインクが吐出される際には、印加された電圧に応じて圧電部材14が振動することにより、インク流路15に沿って、ノズル10からインク滴16が基板8に吐出される。
【0066】
なお、インクジェットを連続的に使用していると、ヘッドやインクの経時変化もあって、ノズルが不吐出ノズルになる場合が発生する。ここで、不吐出ノズルとは、ノズル中への異物混入等によって、インクを吐出することができない状態に陥ったノズル、又は、吐出したインクの着弾精度が指定された範囲を超えるような不安定な吐出状態に陥ったノズルをいう。その場合、一般にはプライム処理やワイピング処理等の不吐回復処理を行い、安定した吐出状態となるようにする。
【0067】
図4は、インク吐出部2が欠陥画素に対して修復を行う際のインク吐出方法を説明する平面図である。図4において、図2に示したインク吐出部2が、CFパネルの画素に対して斜めに傾けられ、そのインク吐出部2が、CFパネルの画素短辺方向である図4での上方向に移動する。
【0068】
図4において、欠陥画素(インク吐出領域)17はCFパネルに発生した青色(B)の欠陥画素である。この欠陥画素17に対しては、インク吐出部2の青色用のヘッド7Bを用いてインクの吐出を行う。具体的には、青色用のヘッド7Bの一列に並んでいるノズル10のうち、この欠陥画素17の画素長辺方向幅Xに割り当てられた複数のノズル10から、欠陥画素17に対して、インク滴16を一定間隔で吐出する。
【0069】
ここで、図4に示すように、使用するインクとしてはCFパネルの各画素色に対応した赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の3色のインクとする。インク吐出部2に設けられたヘッド7R・7G・7Bは、各インクが内部でそれぞれ混じり合わないように、互いに分離して設けられており、互いに独立にインクの吐出を制御できる構成とする。また、CFパネルの画素は、略矩形領域形状をしており、インクを充填する画素内側はインクの濡れ広がりが良いように親水化が施され、画素の周囲は隣り合う画素にインクが流れ込まないように撥水化処理が施されて隣接画素間を分離している。
【0070】
図5は、図4においてインク吐出部2が欠陥画素17にインクを吐出して数秒経過した際の、欠陥画素17の画素長辺方向におけるインクの膜厚を示す断面図である。図5において、横軸は欠陥画素17の画素長辺方向の相対位置を示しており、縦軸はインクの膜厚を示している。また、画素はそれぞれ画素境界18によって区切られている。
【0071】
図5に示すように、インク吐出部2が画素短辺方向に移動する際、欠陥画素17の中で先にインクを吐出された部分Aはインクの膜厚が厚くなり、後にインクを吐出された部分Bはインクの膜厚が薄くなる。つまり、インク吐出の時間差により、後に吐出されたインクが、先に吐出されたインクに引き付けられて、画素内で膜厚が不均一になるという問題を生じる。具体的には、部分Aと部分Bとの膜厚のバラツキは±10%になる。
【0072】
上記問題を解決する方法として、図6(a)・(b)に示すインク吐出方法が考えられる。図6(a)・(b)は、図4と同様に、インク吐出部2が欠陥画素17に対して修復を行う際のインク吐出方法を説明する平面図である。図4に示すインク吐出方法は、インク吐出部2の各ノズル10から吐出されるインク液滴数を一定としているのに対して、図6(a)・(b)に示すインク吐出方法は、インク吐出部2の各ノズル10から吐出されるインク液適数を、欠陥画素17の画素長辺方向幅Xに割り当てられた複数のノズルのうち、一端のノズル10Aでは減少又は増加させ、他端のノズル10Bでは増加又は減少させる。
【0073】
ここで、図6(a)・(b)に示すインク吐出方法を詳細に説明する。図6(a)は、欠陥画素17に対して斜めに傾けたインク吐出部2が、CFパネルの画素短辺方向である図6(a)での上方向に移動し、欠陥画素17にインク吐出をして欠陥修復を行っていることを示している。図6(a)において、インク吐出部2の各ノズル10のうち、ノズル10Aは欠陥画素17を最初に通過するノズルであり、ノズル10Bは欠陥画素17を最後に通過するノズルを示す。また、ノズル10Aからノズル10Bの間のノズルは、欠陥画素17の画素長辺方向幅Xに割り当てられた複数のノズルを示す。
【0074】
各ノズル10から吐出されるインク液滴数については、例えば、欠陥画素17を最初に通過するノズル10Aからのインク液滴数は6滴とし、ノズル10Aとノズル10Bとの間に位置するノズル10からのインク液滴数は9滴とし、最後に通過するノズル10Bからのインク液滴数は11滴とするというように、各ノズル10から吐出するインク液滴数を段階的に増加させる。
【0075】
図6(b)は、欠陥画素17に対して斜めに傾けたインク吐出部2が、図6(a)とは逆の走査方向、つまり、CFパネルの画素短辺方向である図6(b)での下方向に移動し、欠陥画素17にインク吐出をして欠陥修復を行っていることを示している。図6(b)において、インク吐出部2の各ノズル10のうち、ノズル10Bは欠陥画素17を最初に通過するノズルであり、ノズル10Aは欠陥画素17を最後に通過するノズルを示す。また、ノズル10Bからノズル10Aの間のノズルは、欠陥画素17の画素長辺方向幅Xに割り当てられた複数のノズルを示す。
【0076】
各ノズル10から吐出されるインク液滴数については、例えば、欠陥画素17を最初に通過するノズル10Bからのインク液滴数は6滴とし、ノズル10Bとノズル10Aとの間に位置するノズル10からのインク液滴数は9滴とし、最後に通過するノズル10Aからのインク液滴数は11滴とするというように、各ノズル10から吐出するインク液滴数を段階的に増加させる。
【0077】
なお、本実施の形態では、各ノズル10から吐出するインク液滴数を増加させることで各ノズル10から吐出するインク液滴量を増加させたが、各ノズル10から吐出するインク液滴数を一定として、インク1滴当たりの液量を増加させることで各ノズル10から吐出するインク液滴量を増加させてもよい。
【0078】
図7は、図6(a)・(b)においてインク吐出部2が欠陥画素17にインクを吐出して数秒経過した際の、欠陥画素17の画素長辺方向における膜厚補正前及び膜厚補正後のインクの膜厚を示す断面図である。図7において、図5と同様に、横軸は欠陥画素17の画素長辺方向の相対位置を示しており、縦軸はインクの膜厚を示している。また、画素はそれぞれ画素境界18によって区切られている。
【0079】
図7に示すように、インク吐出部2が画素短辺方向に移動する際、欠陥画素17を最初に通過するノズルから欠陥画素17を最後に通過するノズルに向かって吐出するインク液滴数を段階的に増加させることにより、膜厚のバラツキが大きく低減していることが分かる。つまり、欠陥画素17の中で先にインクを吐出された部分A’において、補正前はインクの膜厚が厚くなっていたが、補正後はインクの膜厚が厚くなっていることはない。また、欠陥画素17の中で後にインクを吐出された部分B’において、補正前はインクの膜厚が薄くなっていたが、補正後はインクの膜厚が薄くなっている程度が低減されている。そして、部分A’と部分B’とのインクの膜厚のバラツキが大きく低減している。
【0080】
本発明のインク吐出制御方法について図8のフローチャートに基づいて説明すれば以下の通りである。
【0081】
ステップ1で、インク吐出領域の認識を行う。
【0082】
ステップ2で、インク吐出領域の形状及び大きさの少なくとも一方に基づき、ヘッド角度及び吐出液滴数を算出する。
【0083】
ステップ3で、算出したヘッド角度及び吐出液滴数に基づき吐出パターンを生成する。
【0084】
ステップ4で、全てのインク吐出領域について吐出パターンを生成したかを判断する。吐出パターンを生成した場合(YESの場合)には、後述するステップ5に進む。一方、吐出パターンを生成していない場合(NOの場合)には、ステップ2に戻る。
【0085】
ステップ5で、CFパネルに対するインク吐出順番の決定を行う。
【0086】
ステップ6で、インク吐出順番に基づく吐出パターンの累積を行う。
【0087】
ステップ7で、吐出パターン及びインク吐出タイミングをインク吐出部に入力する。
【0088】
ステップ8で、インク吐出順番に基づき、ヘッドがCFパネルの吐出位置へ移動する。
【0089】
ステップ9で、インクを吐出する。
【0090】
ステップ10で、次の吐出位置があるかを判断する。次の吐出位置がある場合(YESの場合)には、ステップ8に戻る。一方、次の吐出位置がない場合(NOの場合)には、インク吐出動作が終了する。
【0091】
以上のように、本実施形態のインク吐出装置を採用することにより、適切なインク吐出液滴量を設定することが可能となり、その結果、色ムラのない鮮明な画素のCFパネルを製造することができ、かつ、欠陥画素の修復時間を短縮することができる。
【0092】
また、前述した実施の形態では、CFパネルに生じた欠陥画素の例を説明したが、本発明はこれに限定されない。マトリクス状又はストライプ状に並んだ複数のインク被吐出部を有するエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の製造についても本発明を適用することができる。また、プラズマ表示装置の背面基板の製造についても本発明を適用することができ、電子放出素子を備えた画像表示装置の製造及び配線の製造についても本発明を適用することができる。
【0093】
本実施の形態において、インク吐出装置1は、ヘッドの移動制御部22を備えているとしたが、ヘッドの移動制御部22の代わりに媒体の移動制御部を備えていてもよい。つまり、インク吐出装置1は、媒体が移動する構成であってもよい。その場合、ヘッドの移動制御部22以外の構成は、前記実施の形態と同じであり、適宜実施の形態の図面も参照する。
【0094】
このように、本発明に係るインク吐出装置及びインク吐出制御方法は、例えば、ヘッドまたは媒体を相対的に移動させる手段を有するインク吐出装置であって、該ヘッドあるいはノズル列が上記インク吐出装置の移動方向に対して斜めに傾けられ、かつノズルの一端から他端に向かってインク吐出量を段階的に増大あるいは減少させる吐出手段を有するという構成を有しているものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0095】
また、本発明に係るインク吐出装置及びインク吐出制御方法は、例えば、前記媒体は基板であり、基板上の略短形形状の所定領域に吐出するインク吐出装置であって、該所定領域の長手方向は上記インク吐出装置の移動方向とほぼ直角に形成するという構成であってもよい。
【0096】
また、本発明に係るインク吐出装置及びインク吐出制御方法は、例えば、前記インク吐出装置は、前記基板の所定領域に対して、該所定領域長手方向の横幅に割り当てられた前記傾けたノズル列のうち所定領域に早く到着し吐出するノズルからのインク吐出量を減少させ、遅く吐出するノズルからのインク吐出量を増加させる吐出手段を有するという構成であってもよい。
【0097】
また、本発明に係るインク吐出装置及びインク吐出制御方法は、例えば、前記ヘッドあるいはノズル列の上記基板搬送方向に対して斜めに傾けられた角度は、上記所定領域長手方向の長さによって調整するという構成であってもよい。
【0098】
また、本発明に係るインク吐出装置及びインク吐出制御方法は、例えば、前記基板が、液晶表示装置用CFパネルであるという構成であってもよい。
【0099】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、CFパネルに生じた欠陥画素の修復に利用することができる。また、本発明は、マトリクス状又はストライプ状に並んだ複数のインク被吐出部を有するEL表示装置の製造についても利用することができる。また、本発明は、プラズマ表示装置の背面基板の製造についても利用することができ、電子放出素子を備えた画像表示装置の製造、及び、配線の製造についても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施形態におけるインク吐出装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるインク吐出部の構成を示す模式図である。
【図3】(a)は、本発明の一実施形態におけるヘッドの外観を示す斜視図であり、(b)は、本発明の一実施形態におけるヘッドとCFパネルを形成した基板との外観を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるインク吐出方法を説明する平面図である。
【図5】本発明の一実施形態におけるインク吐出方法によるインク吐出後の膜厚を示す断面図である。
【図6】(a)・(b)は、本発明の一実施形態におけるインク吐出方法を説明する平面図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるインク吐出方法によるインク吐出後の膜厚を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態におけるインク吐出制御方法の要部構成を示すフローチャートである。
【図9】特許文献1におけるインク吐出方法を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0102】
1 インク吐出装置
2 インク吐出部
3 インク吐出領域認識部(インク吐出領域認識手段)
4 インク吐出順番決定部
5 インク吐出液滴数演算部
6 インク吐出パターン生成部(インク吐出パターン生成手段)
7 ヘッド
7R ヘッド
7G ヘッド
7B ヘッド
8 基板
8a フィルタ層
8b ガラス層
10 ノズル
11 筐体
12 ノズルプレート
13 インク吐出孔
14 圧電部材
15 インク流路
16 インク滴
17 欠陥画素(インク吐出領域)
18 画素境界
21 ヘッドの角度制御部(角度調整手段)
22 ヘッドの移動制御部(移動制御手段)
23 インク吐出タイミング制御部(インク吐出タイミング制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの吐出対象物である媒体に対して相対的に移動可能であり、媒体に対してインクを吐出可能とする複数のノズルがノズル列として設けられるヘッドを備えるインク吐出装置であって、
さらに、上記ヘッドの移動方向を、ノズル列の配列方向に対して非平行な方向に移動可能とする制御を行う移動制御手段と、
上記ノズル列に含まれる連続して並ぶ複数のノズルからなるノズル群であり、かつ、媒体に対してインクを実際に吐出するノズル群である吐出対象ノズル群を決定する吐出対象ノズル決定手段と、
上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、順次インクの吐出タイミングを遅くするように、インクの吐出を制御するインク吐出タイミング制御手段と、
上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、先に吐出されるインクの吐出量よりも、後から吐出されるインクの吐出量が大きくなるように、順次インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出量制御手段とを備えることを特徴とするインク吐出装置。
【請求項2】
さらに、上記媒体において実際にインクを吐出する領域であるインク吐出領域を認識するインク吐出領域認識手段を備えており、
上記吐出対象ノズル決定手段は、上記ノズル列に含まれ、認識されたインク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、吐出対象ノズル群として決定し、
上記インク吐出タイミング制御手段およびインク吐出量制御手段は、それぞれ、インク吐出領域に先に到着したノズルを、最初にインクを吐出するノズルと決定し、順次、連続して並ぶ順番で各ノズルのインクの吐出タイミングおよびインク吐出量の変化を制御することを特徴とする請求項1に記載のインク吐出装置。
【請求項3】
上記インク吐出領域認識手段は、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方を認識可能としているとともに、
上記インク吐出量制御手段は、上記吐出領域認識手段により認識された情報に基づいて、インク吐出量の変化を制御することを特徴とする請求項2に記載のインク吐出装置。
【請求項4】
上記インク吐出量制御手段は、吐出されるインクの液滴量を変化させることで、インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出液滴数演算部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク吐出装置。
【請求項5】
上記移動制御手段は、ヘッドまたは媒体を、ノズル列の配列方向に対して傾斜する方向に移動する制御を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク吐出装置。
【請求項6】
さらに、上記ヘッドまたは媒体のいずれかの傾斜角度を調整する角度調整手段を備えている請求項5に記載のインク吐出装置。
【請求項7】
上記角度調整手段は、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方に基づいて、ノズル列の配列方向に対するヘッドまたは媒体の傾斜角度を調整するとともに、
調整された傾斜角度に基づいて、上記インク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、上記吐出対象ノズル群として決定する吐出対象ノズル決定手段を兼ねていることを特徴とする請求項6に記載のインク吐出装置。
【請求項8】
さらに、少なくとも、上記角度調整手段により調整されるヘッドまたは媒体の傾斜角度と、上記インク吐出量制御手段により制御されるインク吐出量の段階的な変化とに基づき、インク吐出パターンを生成するインク吐出パターン生成手段を備えており、
上記吐出対象ノズル群からのインクの吐出は、上記インク吐出パターンに基づいて行われることを特徴とする請求項6または7に記載のインク吐出装置。
【請求項9】
上記インク吐出タイミング制御手段は、インクの吐出タイミングを遅くする制御に、上記インク吐出パターン生成手段により生成されるインク吐出パターンを用いるとともに、
上記ヘッドは、上記インク吐出タイミング制御手段からの制御信号と上記インク吐出パターンとに基づいてインクを吐出することを特徴とする請求項8に記載のインク吐出装置。
【請求項10】
表示装置用カラーフィルタパネルの欠陥画素修復用に用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインク吐出装置。
【請求項11】
上記カラーフィルタパネルが、液晶表示装置用であることを特徴とする請求項10に記載のインク吐出装置。
【請求項12】
インクの吐出対象物である媒体に対して相対的に移動可能であり、媒体に対してインクを吐出可能とする複数のノズルがノズル列として設けられるヘッドから、インク吐出動作を制御するインク吐出制御方法であって、
上記ヘッドは、ノズル列に対して非平行に移動可能になっているとともに、
さらに、上記ノズル列に含まれる連続して並ぶ複数のノズルからなるノズル群であり、かつ、媒体に対してインクを実際に吐出するノズル群である吐出対象ノズル群を決定する吐出対象ノズル決定ステップと、
上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、順次インクの吐出タイミングを遅くするように、インクの吐出を制御するインク吐出タイミング制御ステップと、
上記吐出対象ノズル群の中で、最初にインクを吐出するノズルから次にインクを吐出するノズルに向かって、先に吐出されるインクの吐出量よりも、後から吐出されるインクの吐出量が大きくなるように、順次インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出量制御ステップとを含むことを特徴とするインク吐出制御方法。
【請求項13】
さらに、上記媒体において実際にインクを吐出する領域であるインク吐出領域を認識するインク吐出領域認識ステップを含んでおり、
上記吐出対象ノズル決定ステップは、上記ノズル列に含まれ、認識されたインク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、吐出対象ノズル群として決定し、
上記インク吐出タイミング制御ステップおよびインク吐出量制御ステップは、それぞれ、インク吐出領域に先に到着したノズルを、最初にインクを吐出するノズルと決定し、順次、連続して並ぶ順番で各ノズルのインクの吐出タイミングおよびインク吐出量の変化を制御することを特徴とする請求項12に記載のインク吐出制御方法。
【請求項14】
上記インク吐出領域認識ステップは、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方を認識可能としているとともに、
上記インク吐出量制御ステップは、上記吐出領域認識手段により認識された情報に基づいて、インク吐出量の変化を制御することを特徴とする請求項13に記載のインク吐出制御方法。
【請求項15】
上記インク吐出量制御ステップは、吐出されるインクの液滴量を変化させることで、インク吐出量を段階的に変化させるインク吐出液滴数演算ステップであることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載のインク吐出制御方法。
【請求項16】
ヘッドまたは媒体は、ノズル列の配列方向に対して傾斜する方向に移動可能となっていることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載のインク吐出制御方法。
【請求項17】
さらに、上記ヘッドまたは媒体のいずれかの傾斜角度を調整する角度調整ステップを含んでいる請求項16に記載のインク吐出制御方法。
【請求項18】
上記角度調整ステップは、インク吐出領域の形状および大きさの少なくとも一方に基づいて、ノズル列の配列方向に対するヘッドまたは媒体の傾斜角度を調整するとともに、
調整された傾斜角度に基づいて、上記インク吐出領域に対応する複数のノズルからなるノズル群を、上記吐出対象ノズル群として決定する吐出対象ノズル決定ステップを兼ねていることを特徴とする請求項17に記載のインク吐出制御方法。
【請求項19】
さらに、少なくとも、上記角度調整ステップにより調整されるヘッドまたは媒体の傾斜角度と、上記インク吐出量制御ステップにより制御されるインク吐出量の段階的な変化とに基づき、インク吐出パターンを生成するインク吐出パターン生成ステップを含んでおり、
上記吐出対象ノズル群からのインクの吐出は、上記インク吐出パターンに基づいて行われることを特徴とする請求項17または18に記載のインク吐出制御方法。
【請求項20】
上記インク吐出タイミング制御ステップは、インクの吐出タイミングを遅くする制御に、上記インク吐出パターン生成ステップにより生成されるインク吐出パターンを用いるとともに、
上記ヘッドは、インク吐出タイミング制御ステップからの制御信号と上記インク吐出パターンとに基づいてインクを吐出することを特徴とする請求項19に記載のインク吐出制御方法。
【請求項21】
表示装置用カラーフィルタパネルの欠陥画素修復用に用いられることを特徴とする請求項12〜20のいずれか1項に記載のインク吐出制御方法。
【請求項22】
上記カラーフィルタパネルが、液晶表示装置用であることを特徴とする請求項21に記載のインク吐出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−68193(P2008−68193A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248556(P2006−248556)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】