説明

インバータ発電機

【課題】所望の電圧と位相の三相交流と単相交流を選択的かつ確実に出力可能とすると共に、出力する交流の周波数を変更可能として発電機の出力を十分に利用できるようにしたインバータ発電機を提供する。
【解決手段】第1、第2、第3インバータのスイッチング素子をオン・オフ制御する第1、第2、第3制御部22a2,22b2,22c2と、インバータに接続されて交流の出力をU相,V相、W相として出力する端子群などに接続される三相出力端子と単相出力端子と、切替機構と、ユーザの操作自在に設けられる三相/単相切替スイッチと周波数設定スイッチを備え、第1、第2、第3制御部は、第1インバータの出力を基準として第2、第3インバータの出力が周波数設定スイッチで設定された周波数で、かつ切替スイッチの出力に応じた三相交流あるいは単相交流となるようにスイッチング素子のオン・オフを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はインバータ発電機に関し、より詳しくは三相交流と単相交流を選択的に出力すると共に、出力する交流の周波数を変更できるようにしたインバータ発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
三相交流と単相交流を選択的に出力するようにしたインバータ発電機としては特許文献1記載の技術が知られている。特許文献1記載のインバータ発電機にあっては、3組(3個)の単相インバータ発電機を並列に接続すると共に、その出力から三相交流と単相交流を選択的に出力可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−206904号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のインバータ発電機にあっては1個のインバータ制御回路が3組の単相インバータ発電機のインバータ駆動回路を動作させて三相交流あるいは単相交流を選択的に出力するように構成している。
【0005】
ところで、三相交流はポンプや大型ファンなどの回転動力を必要とする機器の電源として有用であるが、特許文献1記載の技術にあっては出力する交流の周波数が固定されているため、発電機の出力を十分に利用できないうらみがあった。
【0006】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、所望の電圧と位相の三相交流と単相交流を選択的かつ確実に出力可能とすると共に、出力する交流の周波数を変更可能として発電機の出力を十分に利用できるようにしたインバータ発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、請求項1に係るインバータ発電機にあっては、エンジンで駆動される発電部に巻回される第1、第2、第3巻線と、前記第1、第2、第3巻線にそれぞれ接続されると共に、直流変換用と交流変換用のスイッチング素子を備え、前記直流変換用のスイッチング素子がオン・オフされるとき、前記第1、第2、第3巻線から出力される交流を直流に変換し、前記交流変換用のスイッチング素子が目標とする出力電圧波形の基準正弦波とキャリアを用いて生成されるPWM信号に基づいてオン・オフされるとき、前記変換された直流を目標周波数の交流に変換する第1、第2、第3インバータと、前記第1、第2、第3インバータの前記直流変換用と交流変換用のスイッチング素子のオン・オフを制御すると共に、相互に通信自在に接続され、前記第1インバータをマスタとして動作させる第1制御部と前記第2、第3インバータをスレーブとして動作させる第2、第3制御部と、前記第1、第2、第3インバータにそれぞれ接続されて前記交流の出力をU相、V相、W相のいずれかとして出力する端子群と前記端子群の中性端子とにそれぞれ直列接続される三相出力端子と、前記端子群に並列接続されると共に、前記中性端子に直列接続される単相出力端子と、前記三相出力端子と単相出力端子とを切り替える切替機構と、ユーザの操作自在に設けられる三相/単相切替スイッチと周波数設定スイッチとを備えると共に、前記第1、第2、第3制御部は、前記第1インバータの出力を基準として前記第2、第3インバータの出力が前記周波数設定スイッチで設定された周波数で、かつ前記切替スイッチの出力に応じた三相交流あるいは単相交流となるように前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成した。
【0008】
請求項2に係るインバータ発電機にあっては、前記第1制御部は前記周波数設定スイッチで設定された周波数の基準信号を生成すると共に、前記基準信号に対して所定の位相を有する同期信号を生成して前記第2、第3制御部に送信し、よって前記第1、第2、第3制御部は前記基準信号と同期信号に基づいて前記スイッチング素子のオン・オフを制御して前記前記第1、第2、第3インバータから前記設定された周波数の三相交流あるいは単相交流を出力させるように構成した。
【0009】
請求項3に係るインバータ発電機にあっては、前記第1、第2、第3制御部は、前記周波数設定スイッチで設定された周波数から予め設定された特性を検索して得られる電圧となるように前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るインバータ発電機にあっては、エンジンで駆動される発電部に巻回される第1、第2、第3巻線にそれぞれ接続されると共に、直流変換用と交流変換用のスイッチング素子を備える第1、第2、第3インバータと、それらの直流変換用と交流変換用のスイッチング素子のオン・オフを制御すると共に、相互に通信自在に接続され、第1インバータをマスタとして動作させる第1制御部と第2、第3インバータをスレーブとして動作させる第2、第3制御部と、第1、第2、第3インバータにそれぞれ接続されて前記交流の出力をU相、V相、W相のいずれかとして出力する端子群と端子群の中性端子に接続される三相出力端子と単相出力端子とを切り替える切替機構と、ユーザの操作自在に設けられる三相/単相切替スイッチと周波数設定スイッチとを備えると共に、第1、第2、第3制御部は、第1インバータの出力を基準として第2、第3インバータの出力が周波数設定スイッチで設定された周波数で、かつ切替スイッチの出力に応じた三相交流あるいは単相交流となるようにスイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したので、ユーザの操作自在に設けられる切替スイッチの出力に応じて所望の電圧の三相交流と単相交流を選択的かつ確実に出力することができて発電機の出力を十分に利用することができる。
【0011】
また、ユーザの操作自在に設けられる周波数設定スイッチで設定される周波数の交流となるようにスイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したので、ユーザの指示に応じて周波数を確実に変更することができ、ポンプや大型ファンなどの回転動力を必要とする機器の電源として使用するとき、回転速度を微細に調整したり、回転速度を低下させて消費エネルギを低減させたりすることが可能となって発電機の出力を十分に利用することができる。
【0012】
請求項2に係るインバータ発電機にあっては、第1制御部は設定された周波数の基準信号を生成すると共に、基準信号に対して所定の位相を有する同期信号を生成して第2、第3制御部に送信し、よって第1、第2、第3制御部は基準信号と同期信号に基づいてスイッチング素子のオン・オフを制御して前記第1、第2、第3インバータから設定された周波数の三相交流あるいは単相交流を出力させるように構成したので、上記した効果に加え、ユーザの指示に応じて周波数を確実に変更することができる。
【0013】
請求項3に係るインバータ発電機にあっては、第1、第2、第3制御部は、周波数スイッチで設定された周波数から予め設定された特性を検索して得られる電圧となるようにスイッチング素子のオン・オフを制御するように構成した構成したので、上記した効果に加え、回転動力を必要とする機器の電源として使用するときの使い勝手を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施例に係るインバータ発電機を全体的に示すブロック図である。
【図2】図1のインバータ発電機のエンジンのクランクケースの平面図である。
【図3】図1のインバータ発電機のインバータ部の構成を詳細に示す回路図である。
【図4】図1のインバータ発電機のインバータ部の動作を説明する説明図である。
【図5】図1のインバータ発電機のフィルタ部の構成を詳細に示す回路図である。
【図6】同様に図1のインバータ発電機のフィルタ部の構成を詳細に示す回路図である。
【図7】図1のインバータ発電機のエンジン制御部の動作を説明する説明図である。
【図8】図1のインバータ発電機の動作をより具体的に示すブロック図である。
【図9】図8の構成で使用される基準信号と同期信号を説明するタイム・チャートである。
【図10】図1のインバータ発電機の三相から単相出力への切り替えを示す波形図ある。
【図11】図1のインバータ発電機の単相から3相への切り替えを示す波形図である。
【図12】図1のインバータ発電機の動作を説明する、図8と同様のブロック図である。
【図13】図1のインバータ発電機などの周波数に対する発電電圧の特性を示す説明図である。
【図14】図1のインバータ発電機の、電圧(の振幅)を増加させた場合の周波数の上昇を示すタイム・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に即してこの発明に係るインバータ発電機を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0016】
図1はこの発明の実施例に係るインバータ発電機を全体的に示すブロック図である。
【0017】
図1において符号10はインバータ発電機を示す。インバータ発電機10はエンジン(内燃機関)12を備え、5kW(交流100Vで50A)程度の定格出力を有する。エンジン12はガソリンを燃料とする、火花点火式の空冷エンジンである。
【0018】
エンジン12の吸気管12aにはスロットルバルブ12bとチョークバルブ12cが配置される。スロットルバルブ12bはステップ(スロットル)モータ12dに接続される。またチョークバルブ12cもチョークモータ(同様にステップモータからなる)12eに接続される。
【0019】
エンジン12は12V程度の容量を有するバッテリ14を備え、ステップモータ12dとチョークモータ12eはバッテリ14から通電されるとき、スロットルバルブ12bとチョークバルブ12cを駆動して開閉する。エンジン12は発電部(「ALT」と示す)16を備える。
【0020】
図2は図1に示すエンジン12のクランクケース12fの平面図である。
【0021】
図示の如く、発電部16はクランクケース12fに固定されたステータ16aと、その回りに回転自在に配置される、フライホイールを兼用するロータ16bからなる。
【0022】
ステータ16aは30個の突起を備え、そのうちの27個には3組のU,V,W相からなる三相の出力巻線(メイン巻線)18が巻回されると共に、3個には1組の同様にU,V,Wからなる三相の出力巻線(サブ巻線)20が巻回される。3組の出力巻線18は18a,18b,18cからなる。
【0023】
ステータ16aの外側に配置されるロータ16bの内部には、出力巻線18,20と対向するように複数対の永久磁石16b1が径方向に着磁された磁極を交互させて取着される。
【0024】
発電部16においては、ステータ16aの回りをロータ16bの永久磁石が回転することにより、27個の三相の出力巻線18(より具体的には18a,18b,18c)からU相、V相、W相からなる交流電力が出力(発電)されると共に、3個のサブ巻線20からも同様に各相の交流電力が出力される。
【0025】
図1に戻って説明を続けると、この実施例に係るインバータ発電機10は、大別すると、発電部16に巻回された出力巻線18と、インバータ部(「INV」と示す)22と、フィルタ部(「Filter」と示す)24と、出力部(「OUT」と示す)26と、エンジン制御部(「ECU」と示す)28と、制御パネル部(「Control Panel」と示す)30を備える。ECU(Electronic Control Unit)は電子制御ユニットを意味し、後述するようにCPUを備える。
【0026】
図示の如く、この実施例に係るインバータ発電機10において特徴的なことは、3組(3個)の単相インバータ発電機(インバータ)を並列に接続すると共に、その出力から所望の電圧と位相の三相交流と単相交流を選択的かつ確実に出力可能としたことにある。
【0027】
即ち、インバータ発電機10は、並列接続された、第1、第2、第3の出力巻線18a,18b,18cからなる3組の巻線と、第1、第2、第3インバータ(第1、第2、第3インバータ部あるいはインバータ発電機)22a,22b,22cからなる3組のインバータを備えたインバータ部22と、第1、第2、第3フィルタ24a,24b,24cからなる3組のフィルタを備えたフィルタ部24と、三相出力端子26eと単相出力端子26fとを備えた出力部26と、エンジン12の動作を制御するエンジン制御部28と、1個の制御パネル部30とを備える。
【0028】
インバータ部22などは具体的にはエンジン12の適宜位置に設けられたケース内に収容されたプリントボード上に搭載された半導体チップなどから構成されると共に、制御パネル部30はエンジン12の適宜位置に設けられる半導体チップとそれに接続されるパネルから構成される。
【0029】
それぞれ3組からなる、出力巻線18とインバータ部22とフィルタ部24と出力部26は、図示の如く、共通する添え字a,b,cを付された組同士が対応して接続されるように構成される。
【0030】
インバータ部22を構成する第1、第2、第3のインバータ22a,22b,22cはそれぞれ、FET(電界効果トランジスタ)とSCR(サイリスタ)一体型のパワーモジュール22a1,22b1,22c1と、32ビットのCPU22a2(第1制御部)、22b2(第2制御部)、22c2(第3制御部)と、発電出力の電圧と電流を検出する電圧・電流センサなどの各種のセンサ(図示せず)を備える。CPU22a2,22b2,22c2は通信線28dで相互に通信自在に接続される。
【0031】
図3はインバータ部22の構成を詳細に示す回路図である。以下、組aを例にとって説明するが、各組の構成は基本的には同じであるので、組aについての説明は組b,cについても妥当する。
【0032】
図3に示す如く、パワーモジュール22a1は、3個のSCR(サイリスタ(直流変換用のスイッチング素子))とDI(ダイオード)がブリッジ接続された混合ブリッジ回路22a11と、4個のFET(電界効果トランジスタ(交流変換用のスイッチング素子))がHブリッジ接続されたHブリッジ回路22a12から構成される。
【0033】
発電部16に巻回された出力巻線18aのU相端子18a1,V相端子18a2,W相端子18a3から出力(発電)された三相の交流電力は対応する第1インバータ22aに入力され、そのパワーモジュール22a1の混合ブリッジ回路22a11においてSCRとDIの中点に入力される。
【0034】
混合ブリッジ回路22a11においてSCRのゲートはドライバ回路(図示せず)を介してバッテリ14に接続される。バッテリ14からのドライバ回路を介しての通電(オン。導通(点弧))と通電停止(オフ(非導通))はCPU22a2によって制御される。
【0035】
即ち、CPU22a2は、電圧・電流センサなどの各種のセンサの出力に基づき、SCRのゲートを目標とする出力電圧に応じた導通角(点弧角)で導通(点弧)し、出力巻線18aから入力される交流を目標とする出力電圧の直流に変換する。
【0036】
混合ブリッジ回路22a11からの直流出力はFETのHブリッジ回路22a12に入力される。Hブリッジ回路22a12にあっては、FETがバッテリ14に接続されると共に、CPU22a2によってその通電(オン(導通))と通電停止(オフ(非導通))が制御されることで、入力された直流出力を所定周波数(例えば50Hzあるいは60Hzの商用周波数)の交流に変換する。
【0037】
図4は、Hブリッジ回路22a12の動作を説明する説明図である。
【0038】
即ち、CPU22a2は、同図に示す如く、目標とする出力電圧波形の所定周波数(即ち、商用周波数50Hzあるいは60Hz)の基準正弦波(信号波。上部に実線で示す)を生成し、生成された基準正弦波を入力してコンパレータ(図示せず)でキャリア(例えば20kHzの搬送波)と比較してPWM(Pulse Width Modulation。パルス幅変調)信号を生成し、生成されたPWM信号に基づいてHブリッジ回路22a12のFETをオン・オフする。
【0039】
図4において下部の破線が目標とする出力電圧波形を示す。尚、PWM信号(PWM波形)の周期T(ステップ)は実際には遥かに短いが、理解の便宜のため、同図では誇張して示す。パワーモジュール22a1の動作については後述する。
【0040】
インバータ部22はフィルタ部24に接続される。
【0041】
フィルタ部24は高調波除去用のLCフィルタ(ローパスフィルタ)24a1,24b1,24c1とノイズ除去用のノイズフィルタ24a2,24b2,24c2を備え、インバータ部22で変換された交流出力は、LCフィルタ24a1,24b1,24c1とノイズフィルタ24a2,24b2,24c2に入力されて高調波やノイズが除去される。
【0042】
図5にLCフィルタ24a1の回路構成を、図6にノイズフィルタ24a2の回路構成を示す。図示は省略するが、LCフィルタ24b1,24c1とノイズフィルタ24b2,24c2の回路構成も同様である。
【0043】
インバータ部22は、フィルタ部24を介して出力部26に接続される。
【0044】
図1に示す如く、出力部26は、第1、第2、第3インバータ22a,22b,22cにそれぞれ接続されて交流の出力をU相、V相、W相のいずれかとして出力する端子群26a,26b,26cと端子群の中性端子(中性点)26dとにそれぞれ直列接続される三相出力端子26eと、端子群に並列接続されると共に、中性端子に直列接続される単相出力端子26fとを備える。
【0045】
より具体的には、出力部26は、第1、第2、第3インバータ22a,22b,22cにそれぞれ接続されて交流の出力をU相、V相、W相のいずれかとして出力する端子群26a,26b,26cと端子群の中性端子(中性点)26dとにそれぞれ直列接続される三相出力端子26eと、端子群に並列接続されると共に、中性端子に直列接続される単相出力端子26fとを備える。
【0046】
より具体的には、出力部26は、第1インバータ22aに接続されて交流の出力をU相として出力するU相端子26aと、第2インバータ22bに接続されて交流の出力をV相として出力するV相端子26bと、第3インバータ22cに接続されて交流の出力をW相として出力するW相端子26cと、中性のO相端子(中性点)26dとにそれぞれ直列接続される(4線の)三相出力端子26eを備える。
【0047】
さらに、出力部26は、U相端子26aとV相端子26bとW相端子26cに並列接続されると共に、前記O相端子26dに直列接続される(2線の)単相出力端子26fと、三相出力端子26eと単相出力端子26fとを切り替える切替機構26gとを備える。
【0048】
三相出力端子26eと単相出力端子26fはコネクタ(図示せず)などを介して電気負荷32に接続される。
【0049】
エンジン制御部28は同様に32ビットのCPU28cを備えてエンジン12の動作を制御すると共に、インバータ22a,22b,22cのCPU22a2,22b2,22c2とCAN(Control Area Network)BUS(バス)28aとCANI/F(Interface)28bを通じてCPU22a2,22b2,22c2(第1、第2、第3制御部)に通信自在に接続される。前記した出力巻線(サブ巻線)20の出力は、これらCPU22a2,22b2,22c2,28cに動作電源として供給される。
【0050】
エンジン制御部28は、出力巻線18cを発電機(ジェネレータ)としての動作に加えてエンジン12の始動装置(スタータ)として動作させる、スタータ・ジェネレータ・ドライバ(STG DRV)28dを備える。即ち、この実施例においては出力巻線18a,18b,18cのいずれか(例えば出力巻線18c)に通電して発電部16を電動機としても動作させるように構成される。
【0051】
スタータ・ジェネレータ・ドライバ28dは、DC/DCコンバータ28d1を備える。DC/DCコンバータ28d1は、後述するようにCPU28cの指示に従い、バッテリ14の出力を200V程度に昇圧して出力巻線18cに通電し、発電部16のロータ16bをステータ16aに対して回転させることでエンジン12を始動する。
【0052】
エンジン制御部28はさらに、ステータ16aとロータ16bの間に配置された磁気ピックアップからなるパルサ(図示せず)の出力からTDCを検出するTDC回路(図示せず)と、出力巻線18cのU端子に接続されてその出力からエンジン12の回転数を検出する回転数検出回路28eを備える。
【0053】
エンジン制御部28はさらに、通信(COM)I/F28fと、センサ(Sensor)I/F28gと、ディスプレイ(DISP)I/F28hと、SW(スイッチ)I/F28iと、ステップモータ12dを駆動するためのドライバ回路28jと、チョークモータ12eを駆動するためのドライバ回路28kと、点火装置(図示せず)を駆動する点火ドライバ回路28lを備える。
【0054】
CPU28cは、電気負荷32に供給すべき交流出力に応じて算出される目標回転数となるようにスロットルバルブ12bの開度を決定し、ドライバ回路28jを介してステップモータ12dに供給し、その動作を制御する。
【0055】
制御パネル部30は、エンジン12と別体に設けられてユーザが持ち歩き可能なリモートコントロールボックス(図示せず)に無線(あるいは有線)を介して接続されるリモート(Remote)I/F30aと、LED30bと、LCD30cと、ユーザの操作自在に設けられる、インバータ発電機10の運転(始動)・停止を指示するKEYスイッチ(メインスイッチ)30dと、インバータ発電機10の出力の三相交流と単相交流の間の切替を指示する三相/単相の切替スイッチ(SW1)30eと、通常(固定)の電圧・周波数と可変の電圧・周波数(VVVF)の間の切替を指示する切替スイッチ(SW2)30fと、回転方向が右(U,V,Wの順)か左(例えばUWVの順)の間の切替を指示する切替スイッチ(SW3)30gと、周波数と電圧を設定(指示)する周波数・電圧設定スイッチ30hと、タッチパネルなどの表示手段30iを備える。
【0056】
スイッチ30hは、周波数と電圧を連続的な値の中の任意の値を選択して指示するアナログ的なボリュームでも良く、あるいは幾つかの値の中から選択して指示するデジタル的な切替スイッチでも良く、さらには任意な値を指示できる限り、どのような構造であっても良い。
【0057】
制御パネル部30とエンジン制御部28は無線(あるいは有線)を介して通信自在に接続され、エンジン制御部28は制御パネル部30のKEYスイッチ30dと切替スイッチ30eの出力をスイッチI/F28iを介して入力し、ディスプレイI/F28hを介して制御パネル部30のLED30bとLCD30cの点滅を制御する。
【0058】
図7はエンジン制御部30の動作を説明する説明図である。
【0059】
以下説明すると、この発明は前記したように所望の電圧と位相の三相交流と単相交流を選択的かつ確実に出力可能としたことから、この実施例にあってはインバータ部22を3組の単相インバータ(第1、第2、第3インバータ)22a,22b,22cから構成すると共に、エンジン制御部28のCPU28cは、切替スイッチ30eの出力に応じて出力部26の切替機構26gを動作させて三相出力端子と単相出力端子を切り替えるようにした。
【0060】
またインバータ部22においては、3組の単相インバータ22a,22b,22cの一つ、例えば22aをマスタ、残りをスレーブとし、エンジン制御部28のCPU28cからの通信に応じ、3組の単相インバータ22a,22b,22cのCPU22a2,22b2,22c2は、三相交流を出力するとき、図7に示す如く、マスタ側のU相端子26aからの出力を基本としてスレーブ側の26b,26cからのV相、W相出力が位相をそれぞれ120度ずらすようにインバータ部22の動作を制御する。
【0061】
他方、単相交流への切替が指示されていると判断されるとき、CPU28cからの通信に応じ、CPU22a2,22b2,22c2は、マスタ側のU相端子26aからの出力を基本としてスレーブ側の26b,26cからのV相、W相出力が位相において一致するようにインバータ部22の動作を制御して単相出力端子26fから単相交流を出力する。
【0062】
図8はそれら3組のCPU22a2,22b2,22c2の動作をより具体的に示すブロック図、図9は図8の動作で使用される基準信号と同期信号を説明するタイム・チャートである。
【0063】
図示の如く、マスタ側の第1インバータ22aのCPU22a2は、周波数・電圧設定スイッチ30hで設定された周波数の基準信号(図9に示す)を生成する基準信号生成部22a21と、図4のPWM信号に従ってPWM制御するPWM制御部22a22と、スレーブ側の出力の位相をマスタ側のそれに同期させるための(基準信号に対して所定の位相を有する)同期信号1,2(図9に示す)を生成してCPU22b2,22c2に送信する同期信号制御部22a23と、通信線22dを介して生成された同期信号の送受信(通信)を制御する通信制御部22a24とを備える。
【0064】
スレーブ側の第2、第3インバータ22b,22cも、基準信号生成部を除くと、同様のPWM制御部22b22,22c22と、同期信号制御部22b23,22c23と、通信制御部22b24,22c24とを備える。
【0065】
同期信号制御部22a23は、切替スイッチ30eを介して三相交流が指示される(切り替えられる)とき、周波数が通常(固定)の場合(図9(a))でも、周波数が例えば低下された場合(同図(b))でも、基準信号に対して常に位相が120度ずつずらされた(換言すれば基準信号に対して所定の位相を有する)同期信号1,2を生成して送信する。
【0066】
また、単相交流への切替が指示されていると判断されるとき、CPU22a2は、CPU22b2,22c2に通信してU相端子26aからの出力を基本として26b,26cからのV相、W相出力が位相において一致するようにインバータ部22の動作を制御して単相出力端子26fから単相交流を出力させる。
【0067】
即ち、CPU22a2は、周波数・電圧設定スイッチ30hで設定された周波数の基準信号を生成すると共に、基準信号に対して所定の位相(より正確には同一の位相)を有する同期信号を生成してCPU22b2,22c2に送信し、よってU相端子26aからの出力を基本として26b,26cからのV相、W相出力が位相において一致するようにインバータ部22の動作を制御して単相出力端子26fから単相交流を出力させる。
【0068】
図10はこの実施例における三相から単相出力への切り替えを示す波形図、図11はその逆の場合の切り替えを示す波形図である。
【0069】
図12は同様にインバータ部22の動作を説明する、図8と同様のブロック図である。
【0070】
図7から図9を参照して説明した特徴に加え、この実施例にあっては、エンジン制御部28を通じて通信される周波数・電圧設定スイッチ30hの出力に応じ、CPU22a22はCPU22b2,22c2に通信によって協調しつつ、出力する三相交流または単相交流の電圧が目標値となるように、フィードバック制御則などを用いて制御して混合ブリッジ回路22a11,22b11,22c11のSCRのゲートを目標とする出力電圧に応じた導通角で導通し、出力巻線18a,18b,18cから入力される交流を目標とする出力電圧の直流に変換する。
【0071】
これは、一つには国内で三相と単相は出力電圧が若干異なり、三相は相電圧が115V(線間電圧230V)、単相は100Vに設定されている不都合があるため、上記の如く、ユーザから指示される発電出力電圧を目標電圧とし、巻線18から出力される交流を直流に変換するとき、変換される直流電圧を増減するようにした。二つには、発電出力を一定に保つには、周波数の変更に応じて出力電圧(の振幅)も変更する必要があるからである。
【0072】
図13は周波数に対する発電電圧の特性を示す説明図、図14は電圧(の振幅)を増加させた場合の周波数の上昇を示すタイム・チャートである。
【0073】
従って、図12の処理においてCPU22a2と(CPU22a2の指示の下に)CPU22b2,22c2は、切替スイッチ30gの出力に応じ、周波数・電圧設定スイッチ30hで設定された周波数に応じて図13に示すような特性に従って混合ブリッジ回路22a11のSCRのゲートを変更すべき出力電圧に応じた導通角で導通し、出力巻線18a,18b,18cから入力される交流を目標とする出力電圧の直流に変換する。これによって図14に示すような電圧の増加に応じて周波数を上昇させることができる。
【0074】
上記の如く、この実施例にインバータ発電機10にあっては、エンジン12で駆動される発電部16に巻回される第1、第2、第3巻線(出力巻線18a,18b,18c)と、前記第1、第2、第3巻線にそれぞれ接続されると共に、直流変換用と交流変換用のスイッチング素子(混合ブリッジ回路22a11,22b11,22c11のSCR,Hブリッジ回路22a12,22b12,22c12のFET)を備え、前記直流変換用のスイッチング素子(SCR)がオン・オフされるとき、前記第1、第2、第3巻線から出力される交流を直流に変換し、前記交流変換用のスイッチング素子(FET)が目標とする出力電圧波形の基準正弦波とキャリアを用いて生成されるPWM信号に基づいてオン・オフされるとき、前記変換された直流を目標周波数の交流に変換する第1、第2、第3インバータ22a,22b,22cと、前記第1、第2、第3インバータの前記直流変換用と交流変換用のスイッチング素子のオン・オフを制御すると共に、相互に通信自在に接続され、前記第1インバータをマスタとして動作させる第1制御部と前記第2、第3インバータをスレーブとして動作させる第2、第3制御部(CPU22a2,22b2,22c2)と、前記第1、第2、第3インバータ22a,22b,22cにそれぞれ接続されて前記交流の出力をU相、V相、W相のいずれかとして出力する端子群26a,26b,26cと前記端子群の中性端子26dとにそれぞれ直列接続される三相出力端子26eと、前記端子群に並列接続されると共に、前記中性端子に直列接続される単相出力端子26fと、より具体的には前記第1インバータ22aに接続されて前記交流の出力をU相として出力するU相端子26aと、前記第2インバータ22bに接続されて前記交流の出力をV相として出力するV相端子26bと、前記第3インバータ22cに接続されて前記交流の出力をW相として出力するW相端子26cと、中性のO相端子26dとにそれぞれ直列接続される三相出力端子26eと、前記U相端子26aとV相端子26bとW相端子26cに並列接続されると共に、前記O相端子26dに直列接続される単相出力端子26fと、前記三相出力端子26eと単相出力端子26fとを切り替える切替機構26gと、ユーザの操作自在に設けられる三相/単相切替スイッチ30eと周波数設定スイッチ30hとを備えると共に、前記第1、第2、第3制御部(CPU22a2,22b2,22c2)は、前記第1インバータ22aの出力を基準として前記第2、第3インバータ22b、22cの出力が前記周波数設定スイッチ30hで設定された周波数で、かつ前記切替スイッチ30eの出力に応じた三相交流あるいは単相交流となるように前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したので、ユーザの操作自在に設けられる切替スイッチ30eの出力に応じて所望の電圧の三相交流と単相交流を選択的かつ確実に出力することができて発電機の出力を十分に利用することができる。
【0075】
また、ユーザの操作自在に設けられる周波数設定スイッチ30で設定される周波数の交流となるようにスイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したので、ユーザの指示に応じて周波数を確実に変更することができ、ポンプや大型ファンなどの回転動力を必要とする機器の電源として使用するとき、回転速度を微細に調整したり、回転速度を低下させて消費エネルギを低減させたりすることが可能となって発電機の出力を十分に利用することができる。
【0076】
また、前記第1制御部(CPU22a2)は前記周波数設定スイッチ30hで設定された周波数の基準信号を生成すると共に、前記基準信号に対して所定の位相を有する同期信号を生成して前記第2、第3制御部(CPU22b2,22c2)に送信し、よって前記第1、第2、第3制御部(CPU22a2,22b2,22c2)は前記基準信号と同期信号に基づいて前記スイッチング素子のオン・オフを制御して前記前記第1、第2、第3インバータ22あ、22b、22cから前記設定された周波数の三相交流あるいは単相交流を出力させるように構成したので、上記した効果に加え、ユーザの指示に応じて周波数を確実に変更することができる。
【0077】
また、前記第1、第2、第3制御部(CPU22a2,22b2,22c2)は、前記周波数設定スイッチ30hで設定された周波数から予め設定された特性を検索して得られる電圧となるように前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したので、上記した効果に加え、回転動力を必要とする機器の電源として使用するときの使い勝手を一層向上させることができる。
【0078】
尚、上記においてインバータ部22のスイッチング素子としてFETを用いたが、それに限られるものではなく、IGBT(insulated gate bipolar transistor)などであっても良い。
【符号の説明】
【0079】
10 インバータ発電機、12 エンジン(内燃機関)、14 バッテリ、16 発電部、16a ステータ、16b ロータ、18 出力巻線(メイン巻線。巻線)、18a 第1巻線、18b 第2巻線、18c 第3巻線、20 出力巻線(サブ巻線)、22 インバータ部、22a 第1インバータ、22a1 パワーモジュール、22a11 混合ブリッジ回路(のSCR(直流変換用のスイッチング素子))、22a12 Hブリッジ回路(のFET(直流変換用のスイッチング素子))、22a2 CPU(第1制御部)、22b 第2インバータ、22b1 パワーモジュール、22b11 混合ブリッジ回路(のSCR(直流変換用のスイッチング素子))、22b12 Hブリッジ回路(のFET(直流変換用のスイッチング素子))、22b2 CPU(第2制御部)、22c 第3インバータ、22c1 パワーモジュール、22c11 混合ブリッジ回路(のSCR(直流変換用のスイッチング素子))、22c12 Hブリッジ回路(のFET(直流変換用のスイッチング素子))、22c2 CPU(第3制御部)、24 フィルタ部(フィルタ)、26 出力部、26a U相端子、26b V相端子、26c W相端子、26d O相端子、26e 三相出力端子、26f 単相出力端子、26g 切替機構、28 エンジン制御部、28c CPU、30 制御パネル部、30d KEYスイッチ、30e 切替スイッチ、30f スイッチ、32 負荷(電気負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで駆動される発電部に巻回される第1、第2、第3巻線と、前記第1、第2、第3巻線にそれぞれ接続されると共に、直流変換用と交流変換用のスイッチング素子を備え、前記直流変換用のスイッチング素子がオン・オフされるとき、前記第1、第2、第3巻線から出力される交流を直流に変換し、前記交流変換用のスイッチング素子が目標とする出力電圧波形の基準正弦波とキャリアを用いて生成されるPWM信号に基づいてオン・オフされるとき、前記変換された直流を目標周波数の交流に変換する第1、第2、第3インバータと、前記第1、第2、第3インバータの前記直流変換用と交流変換用のスイッチング素子のオン・オフを制御すると共に、相互に通信自在に接続され、前記第1インバータをマスタとして動作させる第1制御部と前記第2、第3インバータをスレーブとして動作させる第2、第3制御部と、前記第1、第2、第3インバータにそれぞれ接続されて前記交流の出力をU相、V相、W相のいずれかとして出力する端子群と前記端子群の中性端子とにそれぞれ直列接続される三相出力端子と、前記端子群に並列接続されると共に、前記中性端子に直列接続される単相出力端子と、前記三相出力端子と単相出力端子とを切り替える切替機構と、ユーザの操作自在に設けられる三相/単相切替スイッチと周波数設定スイッチとを備えると共に、前記第1、第2、第3制御部は、前記第1インバータの出力を基準として前記第2、第3インバータの出力が前記周波数設定スイッチで設定された周波数で、かつ前記切替スイッチの出力に応じた三相交流あるいは単相交流となるように前記スイッチング素子のオン・オフを制御するように構成したことを特徴とするインバータ発電機。
【請求項2】
前記第1制御部は前記周波数設定スイッチで設定された周波数の基準信号を生成すると共に、前記基準信号に対して所定の位相を有する同期信号を生成して前記第2、第3制御部に送信し、よって前記第1、第2、第3制御部は前記基準信号と同期信号に基づいて前記スイッチング素子のオン・オフを制御して前記前記第1、第2、第3インバータから前記設定された周波数の三相交流あるいは単相交流を出力させることを特徴とする請求項1記載のインバータ発電機。
【請求項3】
前記第1、第2、第3制御部は、前記周波数設定スイッチで設定された周波数から予め設定された特性を検索して得られる電圧となるように前記スイッチング素子のオン・オフを制御することを特徴とする請求項1または2記載のインバータ発電機。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−244698(P2012−244698A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110574(P2011−110574)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】