説明

インパルス信号およびインパルス信号列の検出装置並びに方法

【課題】多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためのインパルス信号およびインパルス信号列の検出装置および方法を提供する。
【解決手段】多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためにインパルス信号またはインパルス信号列を検出するインパルス信号検出装置は、受信アンテナを介して受信された極超短のインパルス信号から不要な周波数帯域を除去する帯域通過フィルターと、前記不要な周波数帯域が除去された多重経路によるインパルス信号列の包絡線を検出し、前記包絡線の立ち上がりエッジに基づいて前記包絡線に対するデジタル信号を出力するRF/アナログ部と、低速1ビットサンプリングで動作してデータを出力し、フレーム同期を探し或いはレージング遂行命令が検出されると、高速1ビットサンプリングを行ってインパルス信号の伝播時間を計算して出力する信号処理ベースバンド部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパルス信号検出装置およびこれを用いた無線距離測定方法に係り、より詳しくは、極超短のインパルス信号を用いて室内外多重経路環境で実時間無線位置認識システム応用のためのインパルス信号検出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、実時間無線位置認識技術は、ヒト、動物、物件の位置認識(追跡)、病院患者の管理、高価装備の管理を実時間でサービスすることができるため、最近、例えばジグビー(ZigBee)、無線LAN(WLAN)などの多様な方式でシステムを実現している。
【0003】
しかし、多重経路(Multipath fading)が存在する環境では精度を数メートル以上で適用することが非常に難しいため、新しい無線方式としての超広帯域インパルス信号を用いた実時間無線測位技術の開発に対する関心が非常に高い。
【0004】
超広帯域インパルス信号無線技術は、極超短の時間幅を有するパルス信号を用いるもので、2002年2月米国FCCでは超広帯域無線技術に対する周波数帯域を許容し、ヨーロッパ、日本、韓国においても関連技術に対する周波数帯域の使用を許容した。
【0005】
一方、インパルス信号は、周波数領域では数百MHz以上の信号帯域幅を有し、時間領域ではパルスの反復周期に比べて一層小さいナノ秒(10−9sec)以下のパルス幅を有する。よって、インパルス信号は、時間精密特性が非常に優れて精密距離の測定に活用できる。特に、2007年8月にIEEE802.15.4a標準化グループでは、インパルス信号基盤の低速、低電力、低複雑度の無線測位機能を有する近距離データ通信技術に対する事実上の国際標準を発表した。このため、全世界的に関連技術の開発に多くの努力が注がれている。また、国際標準化機関であるISO/IECでは、インパルス信号超広帯域技術を基とした実時間位置認識技術に対する標準を準備中である。以下、インパルス信号超広帯域技術を基とした実時間位置認識技術に対応する従来の技術について考察する。
【0006】
まず、1996年4月23日付でカリフォルニア大学(The Regents of the University of California)に許可された特許文献1(発明の名称:Time−of−flight radio location system)には、送信と受信が分離された構造に対してRFインパルスを使用し、最初到着パルスの位置を検出して非常に精密な位置を測定することが可能なシステムが開示されている。すなわち、ピーク検出器(peak detector)を用いて、最初に到着するパルスを取る方式である。ところが、多重経路環境の場合、インパルスは多重経路によって群れを成して入力され、最も近い視覚線(Line−of−sight)の大きさが多重経路フェーディング(Multi−path fading)された信号の重畳により一層小さく、正確なスレッショルドレベル(Threshold level)の選択が曖昧になる。すなわち、ピーク検出器による最初パルス検出方法が不可能になる。
【0007】
2005年4月19日付でマルチスペクトルソリューション社(Multispectral Solutions, Inc.)に許可された特許文献2(発明の名称:Object location and system and method)には、インパルスUWB信号を用いた位置認識システムが開示されている。すなわち、多重経路環境などで基準送信機(reference transmitter)を追加して受信機間の同期および多重経路環境におけるダイレクト経路(direct path)を探す方法が開示されている。しかし、パルスを探す方法に関する記載はない。特に、多重経路環境で直接パルスを探す方法に対する記載がない。
【0008】
タイムドメイン社(Time domain corporation)に許可された特許文献3(発明の名称:System and method for position determination by impulse radio)には、インパルス信号を用いた精密距離測定に関するアイディアが開示されている。すなわち、送受信機間のインパルス伝播時間の差異を用いて距離を測定する。受信のために相関器を使用する。ところが、このような距離測定方法は、既存のミキサー(mixer)などを必要とし、正確なタイミングおよび送信パルス情報を知らなければならないという欠点がある。
【0009】
非特許文献1には、直線経路信号の検出のためのアルゴリズムが開示されており、これを実現するためにミキサーと高速のサンプラーを使用したが、これはシステムの複雑度および価格を高める。
【0010】
また、非特許文献2には、インパルス信号検出のために高速の比較器を使用した構造が提案されている。この提案された構造は、多重経路環境による受信インパルスを高速の比較器を用いてそれぞれデジタル化させ、このデジタル化された信号は信号処理部で相関器を用いてシンボルを検出する。ところが、この提案された構造は、多重経路環境の場合、受信パルスの区間が長くてレージング誤差が増加するおそれがあるという欠点がある。
【0011】
また、非特許文献3には、一つの送信パルスに対して、受信されるインパルス信号を並列構造の積分器を用いて積分し、最も大きい出力を有する部分を探す方式が開示されている。ところが、このような方式を実現するためには、複数の積分器が必要であり、このような積分器によって電力消耗が増加するという欠点がある。
【0012】
このように、超広帯域インパルス信号無線技術は非常に優れた解像度を提供する。ところが、多重経路環境で極超短のインパルス信号の精密なタイミングを検出するための低複雑、低価格実現技術が依然として提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許登録第5,510,800号明細書
【特許文献2】米国特許登録第6,882,315号明細書
【特許文献3】米国特許登録第6,133,876号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Joon−Yong Lee and Robert A. Scholtz, “Ranging in a dense multipath environment using an UWB Radio Link”, IEEE Journal on selected areas in communications, Vol. 20, No.9. December 2002.
【非特許文献2】Koichi KITAMURA and Yukitoshi SANADA,“ Experimental investigation of IR−UWB positioning system with comparators”, IEICE Trans. Fundamentals vol. E90−A, NO.11, November 2007.
【非特許文献3】Lucian Stoica, Alberto Rabbachin and Ian Oppermann, “A low−complexity noncoherent IR−UWB transceiver architecture with TOA estimation”, IEEE Trans. On Microwave theory and techniques, VOL. 54, No. 4, April 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上述した従来の問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためのインパルス信号およびインパルス信号列の検出装置を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前記インパルス信号検出装置を用いたインパルス信号検出方法、およびこれを用いた距離測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためにインパルス信号またはインパルス信号列を検出するインパルス信号検出装置は、受信アンテナを介して受信された極超短のインパルス信号から不要な周波数帯域を除去する帯域通過フィルターと、前記不要な周波数帯域が除去された多重経路によるインパルス信号列の包絡線を検出し、前記包絡線の立ち上がりエッジに基づいて前記包絡線に対するデジタル信号を出力するRF/アナログ部と、低速1ビットサンプリングで動作してデータを出力し、フレーム同期を探し或いはレージング遂行命令が検出されると、高速1ビットサンプリングを行ってインパルス信号の伝播時間を計算して出力する信号処理ベースバンド部とを含む。
【0018】
前記RF/アナログ部は、多重経路環境で受信されるパルスを増幅する低雑音増幅器と、増幅されたパルス全体の包絡線を検波する包絡線検波器と、低い信号レベルを増幅してDCから数百MHz周波数帯域のパルス特性を有する増幅信号を出力する可変利得増幅器(VGA)と、前記増幅された包絡線信号の立ち上がりエッジを検出し、前記増幅された包絡線信号を球形パルスに変換する比較器とを含む。
【0019】
前記比較器は、前記増幅された包絡線信号と基準電圧とを比較して前記基準電圧以上の包絡線信号に対するデジタル信号を出力する。前記基準電圧は可変できる。前記比較器は、最大電圧と最小電圧との間で互いに異なる基準電圧が設定された複数の比較器を含み、前記複数の比較器は、それぞれ前記増幅された包絡線信号と該当基準電圧とを比較し、前記増幅された包絡線信号に対するデジタル信号を出力し、前記増幅された包絡線信号が前記最小電圧以下または前記最大電圧以上の場合、前記複数の比較器が該当デジタル信号を出力しなければ、所定の制御手段によって前記低雑音増幅器と前記可変利得増幅器の増幅率を調整することができる。
【0020】
前記可変利得増幅器と前記比較器との間に配置された積分器をさらに含む。前記積分器は、インパルス性雑音の除去と信号増幅を行い、前記包絡線信号の期間をさらに長く延長させることができる。
【0021】
前記信号処理ベースバンド部は、デジタルパルスの存在を検出するための低速信号処理部、および前記デジタルパルスの検出タイミングを検出する高速信号処理部を含む。前記低速信号処理部は、前記デジタル信号を低速でサンプリングする低速サンプラーと、前記低速サンプラーによってサンプリングされたデジタル信号のシンボルを同期させるシンボル同期器と、前記シンボル同期器によって同期されたシンボルをフレーム別に同期させて前記デジタルパルスの存在を検出するフレーム同期器とを含む。
【0022】
前記高速信号処理部は、前記フレーム同期器から提供されるフレーム同期信号に応答して前記デジタル信号をサンプリングする高速サンプラーと、前記高速サンプラーによってサンプリング処理されたパルスからレージング用パルスを検出するレージング用パルス検出器とを含む。
【0023】
前記高速サンプラーは、外部から提供される所定のクロック信号を分周するクロック信号分周器と、前記RF/アナログ部から出力されるパルスを受け取り、前記クロック信号分周器から提供されるクロック信号に同期してパルスを出力するフリップフロップと、前記フリップフロップからパルスを出力するレジスタと、前記クロック信号分周器から出力されるクロック信号に応答して、前記レジスタから提供されるパルス信号をサンプリング処理して前記レージング用パルスを検出する並列信号処理器とを含む。前記レジスタは、前記フリップフロップからシリアルタイプでパルスを受け取り、パラレルタイプとして出力する。
【0024】
本発明の他の観点によれば、多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためにインパルス信号またはインパルス信号列を検出するインパルス信号検出方法は、インパルス信号を受信したか否かをチェックし、前記インパルス信号またはインパルス信号列が受信されたとチェックされると、不要な周波数帯域を除去する段階と、前記不要な周波数帯域が除去されたインパルス信号を増幅する段階と、増幅されたインパルス信号列の包絡線を検波し増幅する段階と、前記包絡線信号の立ち上がりエッジを検出し、デジタル信号に変換する段階と、低速サンプリングによって前記デジタル信号の開始点を検出する段階と、レージング遂行命令が検出された、或いはフレーム同期を探したとチェックされると、高速サンプリングでインパルス信号の伝播時間を計算する段階とを含む。前記包絡線を検波し増幅するとき、前記包絡線信号の高域成分を遮断する段階をさらに含む。
【0025】
TOAまたはTDOA方式による時間補正によって、前記インパルス信号またはインパルス信号列の到着時間とデジタル信号の検出時間間の絶対遅延時間とを測定して前記インパルス信号またはインパルス信号列発生地点までの距離を計算する段階をさらに含む。前記時間補正は周期的に行われる。前記TOA方式による時間補正は、予め定められた距離に設置されたタグからのインパルスをリーダーから受信し、インパルス信号の伝播距離

を数式

に基づいて計算する。ここで、

は補正の際にタグとリーダー間のインパルス往復時間、

は補正時のタグとリーダー間の距離、

はタグとリーダー間の実際測定されたインパルスの往復時間である。前記TDOA方式による時間補正は、予め定められた距離に設置されたタグからのインパルスを固定された第1リーダーおよび第2リーダーから受信し、

(タグから第1リーダーまでの伝播距離)と

(タグから第2リーダーまでの伝播距離)を数式




に基づいて計算する。ここで、

は補正の際にインパルスがタグから第1リーダーおよび第2リーダーに到着する絶対時間の差異、

は補正時の第1リーダーと第2リーダー間の距離、

はタグからインパルスを第1リーダーが検出するときの時刻、

はタグからインパルスを第2リーダーが検出するときの時刻、

はタグから第1リーダーまでの距離、

はタグから第2リーダーまでの距離である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のインパルス信号検出装置およびこれを用いた無線距離測定方法によれば、包絡線の先頭値または最初到着パルスの先頭値を探さず、包絡線の立ち上がりエッジ(leading edge)を検出することにより、別途の高速広帯域ADCおよびその制御とデータ処理のための複雑な構成とが不要である。特に、RF/アナログ部で検出された信号はデジタル信号であって、ベースバンドでは多様な方法で簡単に変換されたデジタルパルスの開始時間位置を検出することができる。受信された数ナノ秒単位の(周波数帯域数GHz以上)インパルス信号を直接サンプリングして無線距離(レージング)を計算せず、受信信号の包絡線を検出し、デジタル信号を復元してシステムの複雑度を改善することができる。また、レージングのために変換されたデジタル信号の正確な位置検出のために1ビット高速デジタルサンプラー(高速クロック)を使用し、信号処理のために高速デジタルサンプラーの出力を並列処理して複雑度を低めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に係るインパルス信号検出装置を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示した信号処理ベースバンド部で高速デジタルサンプリングのための高速サンプラーを説明するためのブロック図である。
【図3】単一パルス入力に対する図1のRF/アナログ部に備えられる素子の機能を説明するためにシミュレーション出力の例を示すグラフである。
【図4a】TOA方式の距離測定を説明するための図である。
【図4b】TDOA方式の距離測定を説明するための図である。
【図5a】多重経路環境で受信される入力信号に対してRF/アナログ素子部の構成要素別機能およびこれによるインパルス信号の検出を説明するための波形図である。
【図5b】図5aの領域Aを拡大した波形図である。
【図6a】本発明で使用した、帯域通過されたインパルス信号を説明するための波形図である。
【図6b】図6aに示したインパルス信号の正規化された電力密度関数を説明するための波形図である。
【図7】本発明に係るインパルス信号の伝播時間を計算する方法を説明するための流れ図である。
【図8】レージングのために使用した物理階層ヘッダー部分の構成を示す。
【図9a】本発明に係る方式を用いて室内環境で位置認識を行うために測定環境および仕様情報を説明するための表である。
【図9b】本発明に係る方式を用いて室内環境で位置認識を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を持つことができるので、特定の実施例を図面に例示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するためのものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されるべきである。
【0029】
第1、第2などの用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。例えば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名でき、第2構成要素も第1構成要素と命名できる。単数の表現は、文脈上明白に異ならない限りは複数の表現を含む。
【0030】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせが存在することを指定するものであり、一つ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。なお、別途定義されない限り、技術的または科学的な用語を含んで、ここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同一の意味を持っている。一般に使用される、事典に定義されているものなどの用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を持つものと解釈されるべきであり、本発明で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0031】
図1は本発明の一実施例に係るインパルス信号検出装置を説明するためのブロック図である。特に、低複雑超広帯域のインパルス信号を基とした実時間無線測位システムの受信部の構成を示す。図1を参照すると、本発明の一実施例に係るインパルス信号検出装置は、帯域通過フィルター100、RF/アナログ部200および信号処理ベースバンド部300を含む。
【0032】
前記帯域通過フィルター100は、受信アンテナANTを介して受信された極超短のインパルス信号から不要な周波数帯域を除去して前記RF/アナログ部200に提供する。前記RF/アナログ部200は、低雑音増幅器210、包絡線検波器220、可変利得増幅器230、積分器240および比較器250を含み、前記帯域通過フィルター100によって不要な周波数帯域が除去されたインパルス信号列をデジタル信号に変換して前記信号処理ベースバンド部300へ提供する。前記RF/アナログ部200は、アナログ素子制御器400から提供されるI2Cブロックによって制御される。
【0033】
前記低雑音増幅器210は、帯域通過フィルター100によって不要な周波数帯域が除去されたインパルス信号列を増幅した後、増幅されたインパルス信号列を包絡線検波器220に提供する。前記包絡線検波器220は、増幅されたインパルス信号列から包絡線信号を検出する。前記可変利得増幅器230は検出された包絡線信号を増幅する。
【0034】
前記積分器240は、増幅された包絡線信号の高域成分は遮断し、低域成分は通過させて比較器250へ提供する。前記積分器240はインパルス性雑音を除去し、所定の信号利得に応じて信号の大きさを増幅させることができ、前記包絡線信号の期間をさらに長く延長させることができる。
【0035】
本実施例では、包絡線信号の雑音に対する特性を改善するために、可変利得増幅器230と比較器250との間に積分器が採用されることについて説明したが、積分器は省略してもよい。
【0036】
前記比較器250は、可変利得増幅器230または積分器240から出力されて入力される、増幅された包絡線信号の立ち上がりエッジを検出し、基準電圧と比較して基準電圧以上の包絡線信号をデジタル信号(または球形パルス)に変換して信号処理ベースバンド部300へ提供する。前記比較器250は、入力信号(包絡線信号)のレベルが低い場合、所定の制御手段を介して前記低雑音増幅器210の増幅率(ゲイン)と前記可変利得増幅器230の増幅率(ゲイン)を増加させることができる。また、前記比較器250の基準電圧は所定の制御手段を介して可変できる。この際、前記比較器250の基準電圧は前記低雑音増幅器210の増幅率と前記可変利得増幅器230の増幅率に比例することができる。
【0037】
前記信号処理ベースバンド部300は、低速信号処理部320および高速信号処理部340を含み、低速1ビットサンプリング(200Msps以下)で動作してデータを出力し、フレーム同期を探し或いはフレームパケット内にレージング遂行命令が検出されると、高速1ビットサンプリングを行ってインパルス信号の伝播時間を計算して出力する。
【0038】
前記低速信号処理部320は、低速サンプラー322、シンボル同期器324およびフレーム同期器326を含み、変換されたデジタルパルスの存在のみを検出する。このようなデジタルパルスの存在のみを検出してシンボルを復元し、パケット(またはフレーム)情報を獲得することができる。また、レージング遂行有無に対する情報を獲得することができる。
【0039】
まず、低速信号処理部320において、低速サンプラー322は約60MHzの1ビット低速サンプリングを行い、シンボル同期器324はパケットのデータを復元し、フレーム同期器326はタグIDなどのパケット内のレージング遂行情報などを抽出する。これと共に、低速信号処理部320は、パケット内のレージングパルス区間を高速信号処理部340に知らせることにより、無線測位のための高速パルス検出が行われるようにする。
【0040】
前記高速信号処理部340は、1ビット高速サンプラー342およびレージング用パルス検出器344を含み、レージングのためにデジタルパルスの正確なタイミングを検出する。情報復元のためには、略数十ナノ秒のパルスを検出すればよいので、パルスの正確な位置を検出しなければならないレージングよりは低いクロックが使用される。ところが、レージングが必要な場合には、高速クロックを用いてパルスの正確な開始点を探してレージングとなるようにすることにより、信号処理ベースバンド部300の複雑度を低める。
【0041】
すなわち、高速信号処理部340は、レージング用パルス検出区間のみで作動するため、消費電力を減らすことができ、システムの維持費用を低めることができる。1ビット高速サンプラー342によってレージング用パルスが検出されると、検出時間を記録してレージング情報と共に無線測位サーバー(図示せず)へ伝達する。高速信号処理部340におけるパルス信号サンプリング周期は1ns(1Gsps)であり、これは電波が約30cm移動する時間である。製作される無線測位システムの測位解像度は約30cm以下となる。
【0042】
図2は図1に示した信号処理ベースバンド部における高速デジタルサンプリングのための高速サンプラーを説明するためのブロック図である。
【0043】
図2に示すように、1ビット高速サンプラー342は、フレーム同期器326から提供されるオン/オフ制御信号に応答して1Gspsのデータを16分周して演算を行う。前記クロック信号分周器342aは、外部から提供される1GHzのクロック信号(CLK)を16分周して前記フリップフロップ342bおよび前記並列信号処理器342dへ提供する。
【0044】
前記フリップフロップ342bは、前記RF/アナログ部200の前記比較器250から出力されるパルスを受け取り、クロック信号分周器342aからの16分周されたクロック信号に同期してレジスタ342cへ出力する。前記レジスタ342cは、前記フリップフロップ342bからシリアル形態で提供されるパルス信号を並列信号処理器342dへ提供する。本実施例において、前記レジスタ342cはシリアル形態で入力されるパルス信号を16個の出力チャネルへ並列出力する16SIPO(Serial In Parallel Out)レジスタである。
【0045】
前記並列信号処理器342dは、16分周されたクロック信号に応答して、レジスタ342cから提供されるパルス信号をサンプリング処理する。
【0046】
以上説明したように、信号処理ベースバンド部300は、比較器250の出力信号を受け取ってデータ復元(識別因子情報など)と精密なパルス遅延時間とを計算するために、パルス受信時間をナノ秒(ns)単位で記録する役割を果たす。信号処理ベースバンド部300では、無線測位システムの複雑度および費用を低めることができるように、データ復調のための低速信号処理部320とレージングパルス検出のための高速信号処理部340とに分離しており、高解像度および高速の複雑なアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用せず、1GHzの高速クロックを用いてシステムの低複雑化、低電力化および低価格化を達成した。
【0047】
図3は単一パルス入力に対する図1のRF/アナログ部200に備えられる素子の機能を説明するためにシミュレーション出力の例を示すグラフである。本実施例ではシミュレーションのためにRF集積回路シミュレーションツールを使用した。
【0048】
図3において、左のY軸値は比較器250と可変利得増幅器230の結果であり、右のY軸値は低雑音増幅器210の入力(LNA in)、低雑音増幅器210の出力(LNA out)、包絡線検波器220の出力(ED、Envelope Detection)である。
【0049】
増幅される前の信号は、増幅された信号に比べて非常に小さいため、まるで一直線のように見える。図3から分かるように、包絡線検波器220によって包絡線(ED)を検出し、可変利得増幅器230によって増幅される。検波された包絡線は、増幅されたインパルス信号の正確な包絡線ではなく、実際パルス包絡線よりやや緩やかな傾きを持つ。
【0050】
ところが、検波されたパルス信号の立ち上がり時間は約2ns以下であり、これに基づいて、実際包絡線信号周波数帯域は数百MHz以上である。このような検波された包絡線信号は、可変利得増幅器230を用いて、信号の大きさが小さい最初到着パルスおよび多重経路を介して受信されたパルス列の包絡線の大きさを増幅させ、入力されたインパルス信号の列の開始点を容易に区分することができる。可変利得増幅された信号は、比較器250に入力するために一定レベルのDCオフセットを有する。
【0051】
可変利得増幅のために、通常、受信信号の先頭値(またはピーク値)を検出する。ところが、検波された包絡線信号の帯域幅が数百MHz以上であってピーク値を探すために高解像度の高速アナログ−デジタル変換器(ADC)を使用しなければならないので、システムの複雑度が増加し、電力消耗および費用が幾何級数的に増加する。しかし、本発明によれば、検波された包絡線の先頭値を探さず、比較器250がトリガーリングレベル(基準電圧)との比較を介して包絡線信号に対するデジタル信号を検出することができる。
【0052】
すなわち、可変利得増幅器230を用いて増幅された信号が比較器250を介してデジタル信号に復元されるために、本実施例において、比較器250は2つの入力信号を有する。一つの入力はDCオフセットを有する可変利得増幅器230の出力信号であり、もう一つの入力は可変利得増幅器(VGA)230の出力信号との比較のための比較基準信号(トリガーリングレベル)である。比較器250は、基準電圧以上の入力信号(増幅された包絡線信号)に対してデジタル信号を出力する。基準電圧と可変利得増幅器230の増幅率は、復元されたデジタル信号の幅が10ns以上数十ns以下となるように調整できる。このような値は比較器250の基準電圧信号のレベルが先頭値の約1/2以下の場合である。
【0053】
ここで、トリガーリングレベル(基準電圧)がそれぞれ異なる複数の比較器250を備えることもできる。図1には比較器250が一つであることを図示したが、例えば、複数の比較器250を備え、各比較器の基準電圧をそれぞれ異ならせて設定することができる。例えば、複数の比較器250に設定される各比較電圧は、最大電圧と最小電圧との間で予め決定できる。この際、各比較器は該当基準電圧と包絡線信号とを比較して該当基準電圧以上の包絡線信号をデジタル信号(または球形パルス)に変換することができる。この際、デジタル信号を出力するいずれか一つの比較器の出力を信号処理ベースバンド部300に提供することができるが、複数の比較器250がいずれもデジタル信号を出力しなければ、すなわち、入力包絡線信号が最小電圧以下または最大電圧以上の場合には、所定の制御手段を介して前記低雑音増幅器210の増幅率と前記可変利得増幅器230の利得変換に対する増幅率を調整することができる。
【0054】
一方、図3には図1の比較器250を用いて受信されるパルスの検出位置が示されている。デジタル信号の立ち上がりエッジの位置は最初インパルス信号に比べて一定の時間遅延があることが分かる。本発明の実施例によれば、最初到着パルスの正確な位置を検出せず、包絡線を用いてインパルス信号の開始部を探す。すなわち、比較器250を用いて受信されるインパルス信号の包絡線の立ち上がりエッジを探す。
【0055】
図3に示すように、検出されたパルスの位置は最初パルス到着時点に比べて一定の時間間隔を持つ。このような最初到着パルスの先頭値とトリガーリング検出信号の時間間隔は増幅器の出力信号をトリガーリングする電圧レベルに応じて数百ピコ(10−12)秒以下の範囲で変動できる。
【0056】
一方、インパルス信号列の最初到着時間と比較器250のデジタル信号検出時間との差異が測定過程を介して時間補正(Calibration)によって補正できる。すなわち、時間補正によって、インパルス信号列の最初到着時間から、比較器250で変換されたデジタル出力信号の検出時間までの絶対遅延時間を測定することにより、所定の計算手段によってインパルス信号列発生地点からの実際距離が測定できる。また、インパルス信号の伝播チャネルが時間に応じて変更されるため、周期的な時間補正を行って絶対時間に対する誤差を減らすことができる。
【0057】
ここで、時間補正は、距離を正確に知っている地点にインパルス送信機(例えば、TAG)を設け、無線測位のためのサーバーで基準となるインパルス信号の伝播時間(基準伝播時間)を計算することにより行われ得る。これによる基準伝播時間に基づいて測定された伝播時間との差異から、インパルス信号の伝播距離が計算できる。例えば、TAGが2つのリーダーの中間に設置できる。
【0058】
例えば、図4aのようなTOA(Time of Arrival)方式または図4bのようなTDOA(Time Difference of Arrival)方式による時間補正によって、インパルス信号の伝播距離が計算できる。図4aおよび図4bにおいて、予め定められた距離にインパルス送信機(例えば、TAG)が設置され、無線測位のためのリーダーから受信する該当インパルスに基づいてサーバーにおいて時間補正によってインパルス信号の伝播距離が計算できる。図4aを参照すると、TOA方式に基づいた距離測定の場合、求めようとするインパルス信号の伝播距離

が数式1のように計算できる。数式1において、

は補正時のタグとリーダー間のインパルス往復時間、

は補正時のタグとインパルスを受信するリーダー間の距離、

はタグと、インパルスを受信するリーダー間の実際測定されたインパルスの往復時間(信号処理ベースバンド部で計算するインパルスの伝播時間または到着時間に該当する)である。
【0059】
【数1】

図4bを参照すると、TDOA方式に基づいた距離測定の場合、求めようとするインパルス信号の伝播距離

(タグから第1リーダーまでの伝播距離)と

(タグから第2リーダーまでの伝播距離)が数式2のように計算できる。数式2において、

は補正の際にタグからインパルスが2つのリーダーに到着する絶対時間の差異、

は補正時の第1リーダーと第2リーダー間の距離、

はタグからインパルスを第1リーダー(Reader1)が検出するときの時刻、

はタグからインパルスを第2リーダー(Reader2)が検出するときの時刻(信号処理ベースバンド部で計算するインパルスの伝播時間または到着時間に該当する)、

はタグから第1リーダー(Reader1)までの距離、

はタグから第2リーダー(Reader2)までの距離である。ここで、第1リーダーと第2リーダーはクロック時間が同期されていると仮定する。
【0060】
【数2】




【0061】
一方、主に使用された既存の方式は、包絡線の先頭値または最初到着パルスの先頭値を探す方式であって、最初到着パルスの先頭値を探すためには高解像度高速ADCを使用し、データ量の増加によりデジタル信号処理ベースバンド部の構成が非常に複雑になるという欠点があった。しかし、本発明に係る検出方式は、多重経路環境で受信されたインパルス信号列の初期受信部が急激に変化しなければ、或いはインパルス伝播チャネルが時間に応じて急激に変化しなければ、検波される信号の初期部分は一定の立ち上がりエッジを有する。また、比較器250によって検出される位置も最初到着パルスと一定の時間間隔を持つ。すなわち、本発明に係る検出方式は、最初到着パルスまたは最初到着パルス信号に続いて入力される低レベルの入力信号の包絡線の立ち上がりエッジを検出するから、伝播チャネルが急激に変わらない場合、検出されるパルス位置は最初パルス到着時間とほぼ一定の時間差を持つようにすることができる。
【0062】
このように包絡線を検波する場合、最初到着パルス情報と相次ぐ受信されたインパルス信号の包絡線情報を用いるため、多重経路環境において良い特性を持つものと予想することができる。
【0063】
図5aは多重経路環境で受信される入力信号に対してRF/アナログ部200の構成要素別機能およびこれによるインパルス信号検出を説明するための波形図である。図5bは図5aの領域Aを拡大した波形図である。
【0064】
図5aにおいて、図面符号LNA inは低雑音増幅器210の入力信号、すなわち帯域通過フィルター100の出力信号であり、図面符号LNA outは低雑音増幅器210の出力信号である。図面符号EDは包絡線検波器(Envelope Detector)220の出力信号であり、図面符号VGAは可変利得増幅器(Variable gain amplifier)230の出力信号であり、図面符号COMPARATORは比較器250の出力信号である。左のY軸値は低雑音増幅器210に入力されるインパルス信号(LNA in)と低雑音増幅器210を介して増幅された信号(LNA out)とを示す。増幅される前の信号は、増幅された信号に比べて非常に小さいため、図5aではまるで一直線のように見える。また、増幅されたインパルス信号は、図3に示したような単一インパルス信号ではなく、多重経路反射によってインパルス信号が列の形態で受信される。連続的なインパルス信号列は、相殺干渉または補強干渉を介して信号の大きさが大きくなったり小さくなったりする。これにより、図5aに示すようにクラスター形態で現れる。
【0065】
図5aおよび図5bのシミュレーションのための仮想の入力信号を生成するために、図6aに示したような単一送信インパルス信号を使用した。
【0066】
図6aは本発明で使用した、帯域通過されたインパルス信号を説明するための波形図である。図6bは図6aに示したインパルス信号の正規化された電力密度関数を説明するための波形図である。
【0067】
図6aを参照すると、本発明で使用されたインパルス信号は1ns以下のパルス幅を有する。
【0068】
また、IEEE802.15.4a標準化グループから提示したチャネルモデル(A. F. Molisch et al., IEEE 802.15.4a channel Model−Final report Tech. Rep. Doc. IEEE 802. 15−04−0662−04−004a, 2005.)のうち、Residential LOS(Line−of−Sight)環境に対する伝播チャネルモデル資料を活用した。このようなモデリング資料に基づいて多重経路環境でインパルス信号伝播特性は、最初に到着するインパルス信号が相次ぐ多重経路フェーディング(Multi−path fading)による信号と比較して小さいことが分かる。
【0069】
図3で説明されたように可変利得増幅器230を介して増幅された受信パルス列信号の包絡線信号は、比較器250によってデジタル信号に復元される。図5aおよび図5bから分かるように、多重経路フェーディング環境の場合は、受信される信号がインパルス信号列形態であり、包絡線検波および増幅された信号も広い時間幅を有し、復元されたデジタルパルス信号も略40nsの幅を有する。
【0070】
ところが、単一パルスの場合と同様に、最初受信されるインパルス信号、検出された球形パルスおよび時間遅延が存在する。単一パルスの場合と比較して遅延時間が異なる。これは比較器250の基準電圧レベルをさらに低く取ったためである。ところが、大概の場合、時間遅延補正の後、比較器250の基準電圧レベルは大きく変化させないため、遅延時間はレージングを行う間にほぼ一定の値を有する。よって、インパルス伝播チャネルが頻繁に変わる場合、図4aまたは図4bのように時間遅延補正を周期的に行ってシステムの信頼度を向上させることができる。
【0071】
図7は本発明に係るインパルス信号の伝播時間を計算する方法を説明するための流れ図である。
【0072】
図7を参照すると、インパルス信号またはインパルス信号列が受信されたか否かをチェックし(段階S102)、インパルス信号が受信されたとチェックされると、不要な周波数帯域を除去する(段階S104)。
【0073】
次いで、不要な周波数帯域が除去されたインパルス信号を増幅し(段階S106)、増幅されたインパルス信号列の包絡線を検波し(段階S108)、検波された包絡線信号を増幅する(段階S110)。
【0074】
前記包絡線信号を検波し増幅するとき、包絡線信号の高域成分を遮断する(段階S112)。次いで、高域成分が遮断された包絡線信号の立ち上がりエッジを検出した後、これをデジタル信号(または球形パルス)に変換する(段階S114)。
【0075】
その次、低速サンプリングによってデジタル信号の開始点を検出する(段階S116)。このようなデジタル信号の開始点の検出によってデジタルパルスの存在のみを検出することにより、シンボル復元、パケット(フレーム)情報、レージング有無に対する情報を確保する。
【0076】
次いで、レージング命令が検出されたか否か、或いはフレーム同期を探したか否かをチェックし(段階S118)、レージング命令が検出された、或いはフレーム同期を探したとチェックされると、高速サンプリングでインパルス信号の伝播時間(インパルス信号の到着時間)を計算する(段階S120)。
【0077】
これにより、図4aまたは図4bで説明したように、所定の計算手段によってTOAまたはTDOA方式でインパルス信号の到着時間とデジタル信号の検出時間間の絶対遅延時間とが測定でき、インパルス信号発生地点までの距離(インパルス信号の伝播距離)が高解像度で計算できる。
【0078】
図8はレージングのために使用した物理階層ヘッダー部分の構成を示す。
【0079】
図8を参照すると、物理階層ヘッダー部分には、プリアンブル(Preamble)、フレームの開始を知らせるフレームインフォ(Frame info)、レージング遂行の命令が含まれたレージングインフォ(Ranging info.)、および最後にレージングを行うレージング(Ranging)区間がある。
【0080】
図9aは本発明に係る方式を用いて室内環境で位置認識を行うために測定環境および仕様情報を説明するための表であり、図9bは本発明に係る方式を用いて室内環境で位置認識を行った結果を示すグラフである。位置認識性能を確認するために、測定環境内の位置を知っている点で測定される値を比較した。測定回数は各点毎に3000回のパケットを送って実測された結果を測定し、その平均を出し、標準偏差を得た結果である。
【0081】
図9aを参照すると、試験環境は9×11mのサイズを有する室内会議室であり、仕様周波数帯域は3.1〜4.9GHzであり、測位方式はTDOA(Time difference of arrival)を基とした。変調方式はオン/オフ・キーイング(on−off keying)方式を使用し、測位解像度は30cm以下(15cm以下可能)とし、レージングのための高速サンプラーのサンプリング速度は1Gspsであり、パルス反復周波数は1μs(10−6sec)である。図9bを参照すると、本発明に係る位置認識システムは、平均的に11cm以下の位置認識能力を有することを確認することができた。すなわち、インパルス信号を使用する場合、多重経路環境で数十cm以内の誤差を有する実時間位置認識の応用に非常に優れた特性を有することを確認することができる。
【0082】
ここで、図4bのようなTDOA方式による時間補正によってインパルス信号の到着時間と比較器250におけるデジタル信号の検出時間間の絶対遅延時間とを測定し、インパルス信号発生地点までの距離を計算することについて説明したが、図4aでも説明したように、TOA方式でも上記と同様にインパルス信号発生地点までの距離が高解像度で計算できる。
【0083】
以上、実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱することなく、本発明を多様に修正および変更させることができることを理解できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上述したように、本発明に係る方式は、アナログ部で入力インパルス信号を検出するものであって、入力インパルス信号を直接サンプリングせず、或いはデジタル信号処理のために別途の高解像度広帯域アナログ−デジタル変換器(ADC)を必要としない。特に、本発明に係る方式は、受信パルス検出のために到着パルスの正確な到着位置を探せず、到着パルス列の包絡線を検波し、一定のレベル以上をトリガーリングしてインパルス信号の存在有無を検出する。また、包絡線検波器の応答時間は入力パルスに比べて遅く反応するが、入力パルス列の特性を含む。しかし、インパルス信号検出はインパルス信号が到着する正確な時間を検出せず、一定の遅延した到着時間を検出してインパルス信号の伝播時間を計算することができる。
【0085】
また、デジタル部としての信号処理ベースバンド部では、高速サンプリングを必要とするレージングブロックが分離されているので、電力消耗を最小化することができ且つレージング用デジタル部の複雑度を低めることができる。このような原理とアルゴリズムを用いて、インパルス信号検出システムの解像度を、複雑なADC素子を使用したものと類似しながらも、非常に簡単に回路を実現することができる。
【0086】
本発明に係る構成およびアルゴリズムを活用したインパルス信号基盤の無線距離測定システムは、集積化が容易であって位置認識システムの価格を顕著に低めることにより、多様な応用分野に活用できる。特に、作業者安全管理のための位置認識システム(例えば、造船所、製鉄所、大単位組立工場など)、病院患者位置認識サービスおよび病院の高価装備資産管理、訪問客管理および保安施設管理、大型割引売場/大型百貨店の訪問客カート動線管理システム、並びに試験所における試料、検査対象の位置追跡などの多様な方面で活用できる。
【符号の説明】
【0087】
100 バンドパスフィルター
200 RF/アナログ部
300 信号処理ベースバンド部
210 低雑音増幅器
220 包絡線検波器
230 可変利得増幅器
240 積分器
250 比較器
320 低速信号処理部
340 高速信号処理部
322 低速サンプラー
324 シンボル同期器
326 フレーム同期器
342 1ビット高速サンプラー
342a クロック信号分周器
342b フリップフロップ
342c レジスタ
342d 並列信号処理器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためにインパルス信号またはインパルス信号列を検出するインパルス信号検出装置において、
受信アンテナを介して受信された極超短のインパルス信号から不要な周波数帯域を除去する帯域通過フィルターと、
前記不要な周波数帯域が除去された多重経路によるインパルス信号列の包絡線を検出し、前記包絡線の立ち上がりエッジに基づいて前記包絡線に対するデジタル信号を出力するRF/アナログ部と、
低速1ビットサンプリングで動作してデータを出力し、フレーム同期を探し或いはレージング遂行命令が検出されると、高速1ビットサンプリングを行ってインパルス信号の伝播時間を計算して出力する信号処理ベースバンド部とを含んでなることを特徴とする、インパルス信号検出装置。
【請求項2】
前記RF/アナログ部は、
多重経路環境で受信されるインパルス信号列を増幅する低雑音増幅器と、
増幅されたインパルス信号列から包絡線信号を検波する包絡線検波器と、
前記包絡線信号を増幅する可変利得増幅器と、
前記増幅された包絡線信号の立ち上がりエッジを検出し、前記増幅された包絡線信号を球形パルスに変換する比較器とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項3】
前記比較器は、前記増幅された包絡線信号と基準電圧とを比較して前記基準電圧以上の包絡線信号に対するデジタル信号を出力することを特徴とする、請求項2に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項4】
前記基準電圧は可変されることを特徴とする、請求項3に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項5】
前記比較器は、最大電圧と最小電圧との間で互いに異なる基準電圧が設定された複数の比較器を含み、前記複数の比較器は、それぞれ前記増幅された包絡線信号と該当基準電圧とを比較して、前記増幅された包絡線信号に対するデジタル信号を出力し、
前記増幅された包絡線信号が前記最小電圧以下または前記最大電圧以上の場合、前記複数の比較器が該当デジタル信号を出力しなければ、所定の制御手段によって前記低雑音増幅器と前記可変利得増幅器の増幅率を調整することを特徴とする、請求項2に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項6】
前記可変利得増幅器と前記比較器との間に配置された積分器をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項7】
前記積分器は、インパルス性雑音の除去と信号増幅を行い、前記包絡線信号の期間をさらに長く延長させることを特徴とする、請求項6に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項8】
前記信号処理ベースバンド部は、デジタルパルスの存在を検出するための低速信号処理部、および前記デジタルパルスの検出タイミングを検出する高速信号処理部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項9】
前記低速信号処理部は、
前記デジタル信号を低速でサンプリングする低速サンプラーと、
前記低速サンプラーによってサンプリングされたデジタル信号のシンボルを同期させるシンボル同期器と、
前記シンボル同期器によって同期されたシンボルをフレーム別に同期させて前記デジタルパルスの存在を検出するフレーム同期器とを含むことを特徴とする、請求項8に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項10】
前記高速信号処理部は、
前記フレーム同期器から提供されるフレーム同期信号に応答して前記デジタル信号をサンプリングする高速サンプラーと、
前記高速サンプラーによってサンプリング処理されたパルスからレージング用パルスを検出するレージング用パルス検出器とを含むことを特徴とする、請求項9に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項11】
前記高速サンプラーは、
外部から提供される所定のクロック信号を分周するクロック信号分周器と、
前記RF/アナログ部から出力されるパルスを受け取り、前記クロック信号分周器から
提供されるクロック信号に同期してパルスを出力するフリップフロップと、
前記フリップフロップからパルスを出力するレジスタと、
前記クロック信号分周器から出力されるクロック信号に応答して、前記レジスタから提供されるパルス信号をサンプリング処理して前記レージング用パルスを検出する並列信号処理器とを含むことを特徴とする、請求項10に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項12】
前記レジスタは、前記フリップフロップからシリアルタイプでパルスを受け取り、パラレルタイプとして出力することを特徴とする、請求項11に記載のインパルス信号検出装置。
【請求項13】
多重経路環境で実時間無線位置認識システムの応用のためにインパルス信号またはインパルス信号列を検出するインパルス信号検出方法において、
インパルス信号またはインパルス信号列の受信有無をチェックし、前記インパルス信号が受信されたとチェックされると、不要な周波数帯域を除去する段階と、
前記不要な周波数帯域が除去されたインパルス信号列を増幅する段階と、
増幅されたインパルス信号列の包絡線を検波し増幅する段階と、
前記包絡線の立ち上がりエッジを検出し、デジタル信号に変換する段階と、
低速サンプリングで前記デジタル信号の開始点を検出する段階と、
レージング遂行命令が検出された、或いはフレーム同期を探したとチェックされると、高速サンプリングでインパルス信号の伝播時間を計算する段階とを含むことを特徴とする、インパルス信号検出方法。
【請求項14】
前記包絡線を検波し増幅するとき、前記包絡線の高域成分を遮断する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のインパルス信号検出方法。
【請求項15】
TOAまたはTDOA方式による時間補正によって、前記インパルス信号またはインパルス信号列の到着時間とデジタル信号の検出時間間の絶対遅延時間を測定して前記インパルス信号またはインパルス信号列発生地点までの距離を計算する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のインパルス信号検出方法。
【請求項16】
前記時間補正は周期的に行われることを特徴とする、請求項15に記載のインパルス信号検出方法。
【請求項17】
前記TOA方式による時間補正は、
予め定められた距離に設置されたタグからのインパルスをリーダーから受信し、インパルス信号の伝播距離

を数式

に基づいて計算し、
ここで、

は補正時のタグとリーダー間のインパルス往復時間、

は補正時のタグとリーダー間の距離、

はタグとリーダー間の実際測定されたインパルスの往復時間であることを特徴とする、請求項15に記載のインパルス信号検出方法。
【請求項18】
前記TDOA方式による時間補正は、
第1リーダーおよび第2リーダーの中間に設置されたタグからのインパルスを受信し、

(タグから第1リーダーまでの伝播距離)と

(タグから第2リーダーまでの伝播距離)を
数式




に基づいて計算し、
ここで、

は補正の際にタグからインパルスが第1リーダーおよび第2リーダーに到着する絶対時間の差異、

は補正時の第1リーダーと第2リーダー間の距離、

はタグからインパルスを第1リーダーが検出するときの時刻、

はタグからインパルスを第2リーダーが検出するときの時刻、

はタグから第1リーダーまでの距離、

はタグから第2リーダーまでの距離であることを特徴とする、請求項15に記載のインパルス信号検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公開番号】特開2011−130404(P2011−130404A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105647(P2010−105647)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(500581814)コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティチュート (14)
【Fターム(参考)】