説明

インフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤

【課題】インフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤を提供する。
【解決手段】本発明は、インフルエンザウイルス感染を予防するための抗菌手洗い洗浄剤であって、
(a)ポリアルキレングリコールエーテル0.01〜5.0質量%及び
(b)ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩0.0001〜1.0質量%を含有し、
上記成分に加え、水、エタノール及びグリセリンを含有する泡立性の抗菌手洗い洗浄剤に関する。
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、ヒトインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果だけでなく、トリインフルエンザウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤に関するものであり、インフルエンザウイルスの感染を予防する効果が高く、安全性に優れ且つ洗い流す必要がなく、しかも拭き取る必要もない泡立性の抗菌手洗い洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗インフルエンザ薬が盛んに研究・開発され、タミフル(登録商標)やザナミヴィル(登録商標)等のインフルエンザウイルスの増殖を抑えることができる薬剤が開発されるに至っている。しかし、これらの抗インフルエンザ薬は、使用可能時期が狭い範囲に限られたり、また、副作用の観点から必ずしも汎用に適した薬剤といえるものではなく、更に、これらの抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスの増殖を個人レベルで抑える作用を持つものの、インフルエンザウイルス感染が拡大するのを予防し得るものではない。
そのため、インフルエンザウイルスの感染拡大を予防するために、手洗い、うがい、手の消毒等をまめに行うことが推奨されている。
【0003】
特開2006−1911号公報(特許文献1)は、ヒノキチオール、ヒノキチオールの塩又はヒノキチオールの錯体を殺菌成分として含有する、泡状殺菌・消毒・清浄剤用の組成物を開示する。
特開2006−1911号公報は、特定の界面活性剤を用いて泡状としたことにより、泡立ちが良好で極めて細かい泡を形成でき、しかも、手で擦りつけると比較的速く泡が消え、また、使用後にはべたつき感がないことを記載し、また、上記組成物が、種々の菌に対して殺菌・消毒・清浄効果を発揮することを記載する。
しかし、特開2006−1911号公報には、インフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤に付いては何らの記載もなされていない。
【特許文献1】特開2006−001911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、インフルエンザウイルスの感染を予防する効果が高く、安全性に優れ且つ洗い流す必要がなく、しかも拭き取る必要もない泡立性の抗菌手洗い洗浄剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、安全性に優れる天然素材であるヒノキチオール、若しくはその金属錯体又はそれらの塩及びポリアルキレングリコールエーテルを含む特定の組成物がインフルエンザウイルスの感染に対する優れた予防効果を示し、また、該組成物は泡立ちが良好で極めて細かい泡が形成でき、しかも、手で擦りつけると比較的速く泡が消え、また、使用後にはべたつき感がない、優れた泡立性の抗菌手洗い洗浄剤とすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)インフルエンザウイルス感染を予防するための抗菌手洗い洗浄剤であって、
(a)ポリアルキレングリコールエーテル0.01〜5.0質量%及び
(b)ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩0.0001〜1.0質量%を含有し、
上記成分に加え、水、エタノール及びグリセリンを含有する泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、(2)前記ポリアルキレングリコールエーテルのHLBが10以上である前記(1)記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
(3)前記ポリアルキレングリコールエーテルが、ポリオキシエチレンオレイルエーテルである前記(1)記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
(4)前記ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩が、ヒノキチオール、ヒノキチオールのアルカリ金属塩、ヒノキチオール亜鉛錯体、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物、ヒノキチオールアルミニウム錯体又はこれらの混合物である前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
(5)更に、クエン酸及び/又はクエン酸のアルカリ金属塩を含む前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
(6)更に、エチレンジアミン四酢酸又はそのアルカリ金属塩を含む前記(1)ないし(5)の何れか1つに記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
(7)更に、エチドロン酸又はそのアルカリ金属塩を含む前記(1)ないし(6)の何れか1つに記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
(8)ポンプフォームタイプ用の組成物であることを特徴とする、前記(1)ないし(7)の何れか1つに記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、少量のヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩の使用においても、インフルエンザウイルスの感染を有効に予防することができるため、安全性が高く、また、実用性の高い洗浄用組成物となり得る。
特に、抗インフルエンザウイルス効果の高いヒノキチオールの金属錯体を用いれば、使用するヒノキチオールの量を削減できる。
【0008】
また、本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、ヒトインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果だけでなく、トリインフルエンザウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を有するため、ヒトインフルエンザウイルス感染を予防するためだけでなく、トリインフルエンザウイルス感染の予防にも有用である。
【0009】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、泡状であるため、水溶液タイプにおける問題がない。即ち、容器から一旦手に取り出した時には垂れることがなく、また、使用量が水溶液よりも少量となるので、手や適用部位がびしょびしょに濡れるということもなく、拭き取りや乾燥等を行う必要がない。また、適用部位に泡が消えるまで手で擦りつけて使用するため、適用部位に均一に接触させることができ、また水溶液タイプよりも接触面積が大きくなる。さらに、泡により抗ウイルス効果を発揮するので少量でもインフルエンザウイルス感染の予防効果が期待できる。
【0010】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤では、ノニオン界面活性剤であるポリアルキレングリコールエーテルを使用する。このことにより、泡立ちが良好でしかも極め細かい泡を形成できる。また、手で擦ると比較的速く泡
が消えるので、洗い流し、拭き取り等を必要としない。抗ウイルス成分として遅効性であるヒノキチオールまたはその金属塩もしくは金属錯体等を使用するため、洗い流しや拭き取り等を必要としないことが特に有効となる。さらには、使用後にべたつき感がない。
【0011】
泡立性の抗菌手洗い洗浄剤には、ポンプフォームタイプとエアゾールタイプがあり、エアゾールタイプは噴射剤の助けを借りて泡状とするが、ポンプフォームタイプでは、ノニオン界面活性剤自体の起泡性が特に良好であること要求される。上記のノニオン界面活性剤の起泡性は極めて良好であるため、本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤をポンプフォームタイプとした場合でも泡立ちは良好となる。
上記の界面活性剤としてHLBが10以上のものを使用すれば、水に対する溶解性が高くなるので、泡立ちはさらに良好となる。
【0012】
アニオン界面活性剤や両性界面活性剤は、起泡性が高すぎて手で擦ると泡が消え難く、そのため洗い流し、拭き取り等を必要とする。また、アニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤は、皮膚刺激性があるため洗い流し、拭き取り等を必要とする。本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤の何れも含有しないので、このような問題はない。
【0013】
エアゾールタイプの場合には、噴射剤としてフロンガス、石油液化ガス、窒素ガス、炭酸ガス等を使用するので、環境面や安全面における問題がある。本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤を、噴射剤を必要としないノンエアゾールタイプである、ポンプフォームタイプとすれば、このような問題はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、(a)ポリアルキレングリコールエーテル0.01〜5.0質量%及び
(b)ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩0.0001〜1.0質量%を含有し、
上記成分に加え、水、エタノール及びグリセリンを含有する。
【0015】
<成分(a)>
本発明においては、界面活性剤としてノニオン界面活性剤であるポリアルキレングリコールエーテルが使用される。これらのノニオン界面活性剤を配合することにより、本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤では、泡立ちが良好でしかも極め細かい泡が形成され、手で擦ると比較的速く泡が消えるので、洗い流し、拭き取り等が必要ではなく、使用後にべたつくことがない、という効果がある。
【0016】
本発明で使用するポリアルキレングリコールエーテルとしては、例えば、下記一般式(I)の化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって、それぞれ、水素原子、炭素数10〜20のアルキル基または炭素数10〜20のアルケニル基を表す。但し、R1が水素原子の
時、R2は水素原子ではない。R3は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。mは2〜50の整数を表す。)。
【0019】
上記一般式(I)において、R1およびR2における「炭素数10〜20のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は12〜18である。R1およびR2における「炭素数10〜20のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は12〜18である。また、R3における「炭素数1〜5のアルキル基」は直鎖状
でも分岐鎖状でもよく、好ましい炭素数は1〜3である。mは10〜30が好ましい。
【0020】
上記一般式(I)のポリアルキレングリコールエーテルにおいては、モノエーテル体とジエーテル体があるが、本発明においては、親水性がより高い点から、モノエーテル体が好適である。また、ポリアルキレングリコールエーテルの中でも、ポリエチレングリコールエーテル(即ち、R3が水素原子)が好適に使用される。ポリエチレングリコールモノ
エーテルの好適な具体例としては、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノベヘニルエーテル等が挙げられ、中でも、起泡性が特に優れている点から、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノイソステアリルエーテルが好適に使用されるが、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテルが特に好ましい。
【0021】
上記のポリアルキレングリコールエーテルは、そのHLBが10以上、特に10〜25であることが好ましい。HLBが10未満であると、水に対する溶解性が低くなるので、泡立ちが低下するおそれがある。
【0022】
上記のポリアルキレングリコールエーテルは、単独で使用しても、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤においては、ポリアルキレングリコールエーテルの含有量は0.01〜5.0質量%、特に0.1〜1.0質量%が好ましい。この含有量が0.01質量%未満であると、本発明の組成物は泡状にならない。逆に、5.0質量%を超えると、泡が濃密となり、消泡性が悪化するおそれがある。
【0024】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤においては、本発明の効果を阻害しない限り、その他のノニオン界面活性剤、例えば、レシチン、レシチン誘導体、アクリル系の高分子乳化剤等を併用してもよい。
【0025】
<成分(b)>
本発明で使用する、成分(b)としての、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩は、インフルエンザウイルス感染を予防するための有効成分として機能する。
本発明に使用するヒノキチオールは、タイワンヒノキ、ヒバ、アスナロ等の原料植物に由来する精油から抽出された天然物でもよく、化学合成品でもよい。また、市販品のヒノキチオールをそのまま用いてもよい。原料植物としては、入手容易性の観点から、ヒバが好ましい。原料植物からのヒノキチオールの抽出・精製は公知の方法により行うことができる。前記精油としてはヒバ油が好ましい。化学合成品も公知の方法により得ることができる。市販のものとしては、たとえば、高砂香料(株)や大阪有機化学工業(株)から販
売されているものを挙げることができる。
【0026】
ヒノキチオールの金属錯体としては、ヒノキチオールと、亜鉛、銅、鉄、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、バリウム、スズ、コバルト、チタン、バナジウム、ビスマスなどとの金属錯体が挙げられる。ヒノキチオールと金属との割合は、特に限定されるものではないが、通常、ヒノキチオール:金属のモル比が2:1のもの、あるいは3:1のものが好ましく用いられる。
ヒノキチオール若しくはヒノキチオールの金属錯体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;銅塩、亜鉛塩等の遷移金属塩;ジエタノールアミン塩、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モルホリン塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩等のヘテロ環アミン塩、アンモニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミン塩等の有機塩類等を挙げることができる。
【0027】
また、錯体として、アルミニウム化合物とヒノキチオールとの錯化合物であってもよい。ここで上記のアルミニウム化合物としては、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、カリウムミョーバン、アンモニウムミョーバン、ナトリウムミョーバン等の無機アルミニウム化合物が挙げられる。また、以下の有機アルミニウム化合物も使用することができる。例えば、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、グルコン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム等の一塩基性または二塩基性カルボン酸のアルミニウム塩;ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等の脂肪酸のアルミニウム塩;グルタミン酸アルミニウム、アスパラギン酸アルミニウム、システィン酸アルミニウム、サルコシン酸アルミニウム、β−アラニン酸アルミニウム等のアミノ酸のアルミニウム塩;その他、アシルグルタミン酸アルミニウム、アシルメチルタウリンアルミニウム、アシル−β−メチルアラニンアルミニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸アルミニウム、スルホコハク酸アルミニウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルミニウム、リン酸エステルアルミニウム、アルキル硫酸アルミニウム、あるいはアルギン酸、コンドロイチン硫酸、フミン酸、ヒアルロン酸、グリチルリチン酸、ポリアクリル酸、デキストラン硫酸等の有機系高分子化合物のアルミニウム置換体等が挙げられる。
【0028】
なお、ヒノキチオールとアルミニウム化合物との錯化合物は、WO97/002025号に開示されているように、使用するアルミニウム化合物の種類やpHにより、ヒノキチオールのアルミニウム塩、ヒノキチオールとアルミニウム化合物との錯化合物またはこれらが共存した状態となる。その製造方法としては、WO97/002025号に開示されているように、例えば、常温下でヒノキチオールまたはその塩をエチルアルコール、水等との混合溶液とし、この混合溶液をアルミニウム化合物の水溶液または流動パラフィン等の非水溶液、あるいはこれらの混合溶液中に注加、混合することにより行われる。
【0029】
これらのヒノキチオール若しくはその金属錯体又はこれらの塩は、1種類だけ単独で含有されていてもよいし、2種類以上併用してもよく、2種以上の金属が使用されるのが好ましい。
また、好ましくは、前記金属はナトリウム、亜鉛、アルミニウム又はこれらの混合物である。
成分b)としては、ヒノキチオール、ヒノキチオールのアルカリ金属塩、ヒノキチオー
ル銅錯体、ヒノキチオール亜鉛錯体、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物、ヒノキチオールアルミニウム錯体、ヒノキチオールビスマス錯体又はこれらの混合物が好ましく、ヒノキチオール、ヒノキチオールのアルカリ金属塩、ヒノキチオール亜鉛錯体、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物、ヒノキチオールアルミニウム錯体又はこれらの混合物がより好ましい。
【0030】
また、ヒノキチオールの金属錯体又は金属錯体の塩は、耐光性がヒノキチオールよりも優れているので、耐候性が要求される場合には、ヒノキチオールの金属錯体又は金属錯体の塩を用いることが好ましい。
更に、ヒノキチオールの金属錯体又は金属錯体の塩は、ヒノキチオールよりも低い濃度(例えば、1/10程度の濃度)で同等の効果を示すことから経済的な面からも好ましい。
【0031】
尚、溶液中に、ヒノキチオールと金属塩の両方が存在すると、ヒノキチオールは溶液中の条件により、該金属塩の金属と錯体又は塩を形成するため、例えば、溶液中にヒノキチオールとアルカリ金属水酸化物の両方が存在する場合、該溶液はヒノキチオールとヒノキチオールアルカリ金属塩を含むものに相当し、溶液中にヒノキチオールと亜鉛化合物の両方が存在する場合、該溶液は、ヒノキチオールとヒノキチオール亜鉛錯体を含むものに相当し、また、溶液中にヒノキチオールとアルミニウム化合物の両方が存在する場合、該溶液は、ヒノキチオールとヒノキチオールアルミニウム錯体を含むものに相当する。
【0032】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤における成分b)の含有量は、使用する成分b)の種類にもよるが、0.0001〜1.0質量%、特に0.01〜0.5質量%が好ましい。この含有量が0.0001質量%未満であると、効果が期待できず、逆に、1.0質量%を超えると、皮膚に対する安全性に問題を生じるおそれがある。
【0033】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、成分(a)、(b)に加えて、水、エタノール及びグリセリンを含有する。
本発明で使用する水は、蒸留水であることが好ましい。本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤においては、水の含有量は、上記の成分(a)ノニオン界面活性剤や成分(b)が上記の範囲となるように適宜調整される。
本発明で使用するエタノール、グリセリンは、洗浄剤の起泡性が低下しない範囲で添加するのが好ましい。
【0034】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、更に、クエン酸及び/又はクエン酸のアルカリ金属塩を含むのが好ましい。クエン酸のアルカリ金属塩としてはクエン酸ナトリウムが好ましい。
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、更に、エチレンジアミン四酢酸又はそのアルカリ金属塩を含むのが好ましい。エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩が好ましく、また、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウムが好ましい。
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、更に、エチドロン酸又はそのアルカリ金属塩を含むのが好ましい。エチドロン酸のアルカリ金属塩が好ましく、また、エチドロン酸4ナトリウムが好ましい。
【0035】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤においては、本発明の効果を阻害しない限り、他の成分を配合してもよく、例えば、ジグリセリン、ジグリセリン誘導体(例えば、ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(14)ジグリセリルエーテル)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、砂糖、マルチトール、トレハロース、グルコシルトレハロース等の保湿剤、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、キチン、キトサン、アロエエキス、オウレンエキス等の薬効成分、オウゴンエキス、酵母エキス、ユーカリエキス、クジンエキス、ローズマリーエキス、チョウジエキス、アスパラサネリアスエキス、クマザサエキス、イラクサエキス、緑茶エキス、紅茶エキス、ウーロン茶エキス、甘茶エキス、柿エキス等の消臭エキス等が配合可能である。
【0036】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤の好ましい態様としては、以下が挙げられる。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.0001〜1.0質量%のヒノキチオール、水、エタノール及びグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.0001〜1.0質量%のヒノキチオールナトリウム塩、水、エタノール及びグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.0001〜1.0質量%のヒノキチオール亜鉛錯体、水、エタノール及びグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.0001〜1.0質量%のヒノキチオール塩化亜鉛混合物、水、エタノール及びグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.0001〜1.0質量%のヒノキチオールアルミニウム錯体、水、エタノール及びグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.0001〜1.0質量%のヒノキチオール、ヒノキチオールナトリウム塩、ヒノキチオール亜鉛錯体及びヒノキチオールアルミニウム錯体の混合物、水、エタノール並びにグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
0.01〜5.0質量%の上記のポリアルキレングリコールエーテル、0.5ないし5%のヒノキチオールと金属塩の混合物(ヒノキチオール、水酸化ナトリウム、塩化亜鉛及び塩化アルミニウムからなる)、水、エタノール及びグリセリンを含む泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【0037】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤カチオン界面活性剤を含有しない。このことにより、手で擦ると泡が消え、また皮膚刺激性もないので、洗い流し、拭き取り等を必要としない。
【0038】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、上記の成分a)、成分b)水、エタノール及びグリセリン、必要に応じて他の成分を加えて、これらを混合することにより調製される。
【0039】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、ヒトインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果だけでなく、トリインフルエンザウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を有するため、ヒトインフルエンザウイルス感染を予防するためだけでなく、トリインフルエンザウイルス感染を予防するためにも使用することができる。
【0040】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、泡状であるため、容器から一旦手に取り出した時には垂れることがなく、また、使用量が水溶液よりも少量となるので、手や適用部位がびしょびしょに濡れるということもなく、拭き取りや乾燥等を行う必要がない。また、適用部位に泡が消えるまで手で擦りつけて使用するため、適用部位に均一に接触させることができ、また水溶液タイプよりも接触面積が大きくなる。さらに、泡により抗ウイルス効果を発揮するので少量でもインフルエンザウイルス感染の予防効果が期待できる。
【0041】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、噴射剤の助けを借りて泡状とするエアゾールタイプと、噴射剤を使用としないノンエアゾールタイプであるポンプフォームタイプのいずれも適用可能である。ポンプフォームタイプでは界面活性剤自体の起泡性により泡状となるが、本発明で使用する上記のノニオン界面活性剤の起泡性は極めて良好であるため、ポンプフォームタイプとすることも可能となる。このポンプフォームタイプでは、噴射剤を必要としないので、エアゾールタイプのような環境面や安全面における問題が生じない。
【実施例】
【0042】
以下の実施例により本発明をより詳しく説明する。但し、実施例は本発明を説明するためのものであり、いかなる方法においても本発明を限定することを意図しない。
実施例1
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(EO:20、HLB=17.0)0.5質量%、ヒノキチオール0.025%の他、エタノール、グリセリン、水酸化ナトリウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、クエン酸、クエン酸ナトリウム、エチドロン酸4ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウムを含む水溶液として泡立性の抗菌手洗い洗浄剤を調製した。
【0043】
上記で得られた泡立性の抗菌手洗い洗浄剤をポンプフォーマー(大和製罐製)に充填し、以下の方法により評価試験を行なった。その結果を表1に示した。
<評価方法>
1.泡立ち
ポンプフォーマーを1プッシュ(0.4g)して泡を手に取り出し、これを以下の4段階の基準により目視による評価を行った。
◎:泡の形成が多く、かつ泡がクリーミーである。
○:泡の形成が多く、かつ泡がややクリーミーである。
△:泡の形成が少なく、かつ泡が粗い。
×:泡が立たない。
2.消泡性
ポンプフォーマーを1プッシュ(0.4g)して泡を手に取り出し、これを手で擦りあわせた。この時の消泡性について、以下の4段階の基準により評価を行った。
◎:手で擦ると15秒以内で消える。
○:手で擦ると30秒以内15秒未満で消える。
△:手で擦ると1分以内30秒で消える。
×:1分より長く手で擦っても消えない。
3.使用感
ポンプフォーマーを1プッシュ(0.4g)して泡を手に取り出し、これを手で擦りあわせた。この時の使用後のベタツキ感について、以下の3段階の基準により評価を行った。
○:使用後ベタツキ感がない。
△:使用後ベタツキ感が少しある。
×:使用後ベタツキ感がある。
【0044】
表1から明らかなように、実施例1で調製されたインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、泡立ち、消泡性および使用感において、何れも優れたものであることがわかる。
【表1】

【0045】
試験例1:ヒトインフルエンザウイルス(PR−8株)に対する抗ウイルス効果
1.検体
実施例1で得た泡立性の抗菌手洗い洗浄剤を被検溶液とした。
2.試験目的
上記で調製した検体のインフルエンザウイルス(PR−8株)に対する不活性化試験を行う。
3.試験概要
検体にインフルエンザウイルス液を添加・混合して作用液とした。室温で60分間転倒混和を行い、作用後に作用液のウイルス感染価を測定した。尚、対照として30%エタノール水溶液及びリン酸緩衝液(PBS)を用いた。
4.試験方法
1)試験ウイルス
インフルエンザウイルス(PR−8株)(Infuluenz virus PR8 strain)(発育鶏卵に接種、2日後に回収したもの HA:2048)
2)使用細胞
MDCK細胞(理研バイオリソースセンター)
3)使用培地
(1)細胞増殖培地
ダルベッコ変法MEM(シグマ社)にカナマイシン(0.05mg/mL)及びウシ胎児血清(10%)を加えたものを使用した。
(2)細胞維持培地
ダルベッコ変法MEM(シグマ社)にカナマイシン(0.05mg/mL)、トリプシン及びBSA(0.1%)を加えたものを使用した。
4)ウイルス浮遊液
試験ウイルス液をPBSにて100倍に希釈して用いた。
5)試験操作
検体0.5mLにウイルス浮遊液0.5mLを添加・混合し、作用液とした。室温で60分間転倒混和により作用させた後、作用液を0.1%BSA/PBSにて10倍段階希釈した。
6)ウイルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、使用細胞をマイクロプレート(96穴)に単層培養した後、細胞増殖培地を除き、MEMにて2回洗浄した後に、作用液の各希釈液0.1mLを4穴づつに接種し、36℃の炭酸ガス(5%)インキュベーターにて1時間反応後、希釈液を取り除き、0.1mLの細胞維持培地を各穴に加え、36℃の炭酸ガス(5%)インキュベーターにて5日間培養した。培養後、倒立顕微鏡にて細胞変性の有無を観察及び培養液のHAの有無をニワトリ赤血球を用いて確認し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出した。
結果を表2に纏めた。
【表2】

【0046】
上記の成績から、実施例1で得た手洗い洗浄剤を用いた場合、ヒトインフルエンザウイルスは検出されず、これにより、実施例1で得た手洗い洗浄剤がヒトインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果を有することが確認された。
【0047】
試験例2:鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果
1)鳥インフルエンザウイルス
1983年大槻等が島根県に飛来したコハクチョウの糞から分離した弱毒のH5亜型ウイルスであるA/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)株を、ヒナで継代することにより、強毒化させることに成功した。該強毒化させたウイルスを以下の実験に使用した。
2)SPF10日齢発育鶏卵
栃木県青木種鶏場から有精卵を購入し、孵卵して実験に供した。
3)試験
実施例1で得た手洗い洗浄剤を被検溶液とした。
上記で調製した被検溶液にウイルス液を等量加えよく混合した。陰性対象として、50%エタノール水溶液を用い、同様にウイルス液を等量加えよく混合した。
それぞれの溶液を室温にて10分間静置した後、速やかに被検溶液−ウイルス混合液をPBSで10倍段階希釈し、希釈毎に3個の10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に0.2mLづつ接種した。
接種を受けた発育鶏卵は37℃で48時間培養した後、0.5%鶏赤血球凝集(HA)試験により、漿尿液中でのウイルスの増殖の有無を確認した。残存ウイルス価はReed
and Muenchの方法により算出した。
各被検溶液−ウイルス混合液における累積陰性数、累積陽性数及び累積陽性率を表3、4に示し、ウイルス力価を表5に纏めた。
【表3】

【表4】

【表5】

【0048】
上記の成績から、実施例1で得た手洗い洗浄剤と鳥インフルエンザウイルスとの室温での10分間の接触により、検査した限りウイルスの生残は認められず、少なくとも1000分の1以下にウイルスが不活化されたことが明らかとなった。実施例1で得た手洗い洗浄剤は、鳥インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果を有することが確認された。
【0049】
試験例3:抗菌効果試験
<各被験試料>
実施例1のフォーム:実施例1の組成物をポンプフォーマー(大和製罐製)に充填したもの
コントロールフォーム:実施例1でヒノキチオールの代わりに蒸留水を配合した組成物(ノニオン界面活性剤0.5重量%)をポンプフォーマー(大和製罐製)に充填したもの
エタノールジェル:フマキラー社製ハンド用清潔ジェル
(エタノール含量70% アロエエキス配合)
70%エタノール。
【0050】
<使用菌株>
大腸菌 Escherichia coli FMK1254
病原性大腸菌 Escherichia coli O157H7堺株
黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus ATCC25923。
<寒天培地>
MacConkey Agar(Difco):
大腸菌E.coli FMK1254および
病原性大腸菌E.coli O157H7堺株に使用
Nutrient Agar(Difco):
黄色ブドウ球菌S.aureus ATCC25923に使用。
<実験操作>
1)各菌株をTSBにて37℃で1晩培養した。菌液を生理食塩水で希釈し、約104
FU/mlの菌液を調製した。
2)ポリシャーレに各被験試料をそれぞれ4.5gずつ加え(実施例1のフォームとコントロールフォームは、泡状として加えた)、上記1)の菌液を0.5mlずつ各シャーレに接種して十分混合した、各被験試料につき2セットずつ作製した。
3)各試験液について、菌液の接種直後、並びに37℃で1時間および2時間保温した後
に菌数を測定した。保温は孵化器中でシャーレのふたを少し浮かせた状態で行った。菌数の測定は、菌液0.1mlを2枚の寒天培地にコンラージした後、それぞれ37℃で24時間培養してコロニー数を計測し、平均値を算出した。
4)上記2)で作製した2セット目の試料液については、菌液の接種後に37℃で2時間保温し、再び菌液を0.5ml接種して十分に混合した。その後、上記3)と同様の方法により、菌液の再接種直後、並びに37℃で1時間および2時間保温した後に菌数を測定
した。
【0051】
これらの抗菌効果試験の結果を表6〜8に示す。
【表6】

【表7】

【表8】

なお、表6〜8中の「B」は菌液と各被験試料との混合液における計算上の菌数を示し、「*」は再接種した時点を示す。
【0052】
表6〜8から明らかなように、実施例1のフォームについては、いずれの菌に対しても接種後2時間でまた再接種後2時間でも優れた抗菌効果が認められた。これに対して、コントロールフォーム(ヒノキチオール配合なし)では、いずれの菌に対しても抗菌効果があまり認められなかった。このことから、実施例1の優れた抗菌効果はヒノキチオールによるものであることがわかる。
エタノールジェルについては、接種後2時間では、いずれの菌に対しても優れた抗菌効果を示したが、再接種後2時間では、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対しては優れた抗菌効果を示したものの、病原性大腸菌に対しては抗菌効果があまり認められなかった。70%エタノールについては、接種後2時間では、いずれの菌に対しても優れた抗菌効果を示したが、再接種後2時間では、黄色ブドウ球菌に対しては抗菌効果があまり認められず、大腸菌および病原性大腸菌に対しては抗菌効果が全く認められなかった。70%エタノールの再接種後2時間の抗菌効果がエタノールジェルよりも劣っている主な要因としては、エタノールが蒸発してしまったことが考えられる。
【0053】
試験例4:安全性試験
実施例1で得た手洗い洗浄剤に付き、以下に示す安全性試験を実施した。
i)ラットを用いる28日間混餌投与毒性試験
ii)ラットにおける急性経口投与毒性試験
iii)ウサギを用いる皮膚刺激性試験
iv)ウサギを用いる眼刺激性試験
v)細菌を用いる復帰突然変異試験
結論として、実施例1で得た手洗い洗浄剤の毒性は、安全性の高いヒノキチオールと変わらないことが判った。尚、全試験において異常は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、ヒトインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果だけでなく、トリインフルエンザウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を有するため、ヒトインフルエンザウイルス感染を予防するためだけでなく、トリインフルエンザウイルス感染を予防するためにも使用することができる。
また、本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、洗い流し、拭き取り等を必要とせず、手で擦りつけるだけでよいため、どのような場所でも使用できる。特に、水がない場所や水が汚染されている場所では利用価値が非常に高い。また、携帯用としても便利なものである。また、水溶液タイプと比較して、適用部位に均一に接触でき、接触面積が大きく、少量でも殺菌効果が期待できる。従って、本発明のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤は、産業上、非常に有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザウイルス感染を予防するための抗菌手洗い洗浄剤であって、
(a)ポリアルキレングリコールエーテル0.01〜5.0質量%及び
(b)ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩0.0001〜1.0質量%を含有し、
上記成分に加え、水、エタノール及びグリセリンを含有する泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコールエーテルのHLBが10以上である請求項1記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコールエーテルが、ポリオキシエチレンオレイルエーテルである請求項1記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項4】
前記ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩が、ヒノキチオール、ヒノキチオールのアルカリ金属塩、ヒノキチオール亜鉛錯体、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物、ヒノキチオールアルミニウム錯体又はこれらの混合物である請求項1ないし3の何れか1項に記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項5】
更に、クエン酸及び/又はクエン酸のアルカリ金属塩を含む請求項1ないし4の何れか1項に記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項6】
更に、エチレンジアミン四酢酸又はそのアルカリ金属塩を含む請求項1ないし5の何れか1項に記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項7】
更に、エチドロン酸又はそのアルカリ金属塩を含む請求項1ないし6の何れか1項に記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。
【請求項8】
ポンプフォームタイプ用の組成物であることを特徴とする、請求項1ないし7の何れか1項に記載のインフルエンザウイルス感染を予防するための泡立性の抗菌手洗い洗浄剤。

【公開番号】特開2012−20938(P2012−20938A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289001(P2008−289001)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(593170702)株式会社ピーアンドピーエフ (27)
【出願人】(501382063)株式会社ジェイシーエス (14)
【Fターム(参考)】