インプリント方法
【課題】凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することの出来るインプリント方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のインプリント方法によれば、インプリントモールドを被転写材に接触させたのちにモールドの凹凸パターンを形成するため、予め凹凸パターンが形成されたモールドを被転写材に接触させる場合と比較してモールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることができ、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することが出来る。
【解決手段】本発明のインプリント方法によれば、インプリントモールドを被転写材に接触させたのちにモールドの凹凸パターンを形成するため、予め凹凸パターンが形成されたモールドを被転写材に接触させる場合と比較してモールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることができ、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントモールドを用いて3次元パターン構造体を形成するインプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途に応じて、特定の3次元形状パターン(以下、凹凸パターンと呼ぶ)を有する3次元パターン構造体を形成する方法が求められている。
【0003】
例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材(分析検査用チップ、マイクロニードルなど)、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイス、フォトマスク、などの用途が挙げられる。
【0004】
このような3次元パターン構造体を形成する方法として、インプリント法と呼ばれる凹凸パターン転写技術が提案されている。
【0005】
インプリント法は、所望する3次元パターン構造体のネガポジ反転像に対応する凹凸パターンが形成されたインプリントモールドと呼ばれる原型を、被転写材に型押しし、その状態で被転写材を硬化させることで、凹凸パターンの転写を行うものである。
【0006】
例えば、熱により被転写材を硬化させる熱インプリント法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
例えば、露光光により被転写材を硬化させる光インプリント法が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
一般的に、上述したインプリントモールドは、フォトリソグラフィ法などの微細加工技術により凹凸パターンが形成され、製造されている。
【0009】
例えば、電子線露光を用いてインプリントモールドを製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
以下、一例として、図1に従来のインプリント法を例示する。
まず、基板405に被転写材404を積層し、インプリントモールド400を対向して配置する(図1(a))。
次に、インプリントモールド400と被転写材404を接触させ、被転写材404に、インプリントモールド400に形成された凹凸パターンが反転した転写パターンを形成する(図1(b))。
次に、インプリントモールド400を基板405から離す(図1(c))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−335012号公報
【特許文献2】特開2000−194142号公報
【特許文献3】特開2009−226762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のインプリントモールドを用いたインプリント法では、インプリントモールドから被転写材へ転写する際、モールドの凹凸パターンにおける相対的な凹部に存在する空気が被転写材への良好な転写を阻害する問題があった。
【0013】
図1では、インプリントモールド400が被転写材404と接触したとき、凹凸パターンの凸部に囲まれた空間には空気が存在し(図1(b)を参照)、これがその部分への被転写材の浸入を妨げることにより、期待された転写が正常に行われず、全体として転写不良を引き起こすこと(図1(c)を参照)を示している。
【0014】
そこで、本発明は上述の課題を解決するために成されたものであり、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することの出来るインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態は、上下に可動するピンと、前記ピンを保持するピン支えと、を備え、前記ピンは、複数のピンが配列されたピンであり、複数の前記ピンの一部は、ピンの先端が他のピンの高さとは異なる位置で保持されることにより凹凸パターンを形成するインプリントモールドを用いたインプリント方法であって、前記インプリントモールドを被転写材に接触させる接触工程と、前記インプリントモールドと前記被転写材とを接触させた状態で、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させ、前記被転写材に転写パターンを形成する転写工程と、を含むことを特徴とするインプリント方法である。
【0016】
また、前記接触工程は、前記インプリントモールドの前記ピンの凹凸パターンの形状が、凹部を有しない仮パターンの形状を成した状態で接触させる接触工程であってもよい。
【0017】
また、前記仮パターンは、一部のピンの突出量を最高位とし、その周辺部に行くに従ってピンの突出量を小さくした山なりの形状を成したパターンであってもよい。
【0018】
また、前記仮パターンは、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成したパターンであってもよい。
【0019】
また、前記接触工程は、前記インプリントモールドの仮パターンのパターン平面と前記被転写材の表面とを、成す角θが0°<θ<90°の範囲で互いに接触させ、前記インプリントモールドブランクと前記被転写材との一部が接触状態を保ったまま、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、前記インプリントモールドを前記被転写材に接触させる接触工程であってもよい。
【0020】
また、大気圧下で、インプリント方法を行ってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインプリント方法によれば、インプリントモールドを被転写材に接触させたのちにインプリントモールドの凹凸パターンを形成するため、予め凹凸パターンが形成されたインプリントモールドを被転写材に接触させる場合と比較してインプリントモールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることができ、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のインプリント方法の一例を示す概略工程図である。。
【図2】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図3】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図4】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図5】本発明のインプリント方法の実施の一例を示した概略工程図である。
【図6】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図7】本発明のインプリント方法の実施の一例を示した概略工程図である。
【図8】被転写材に平面パターンを接触させた場合における空隙の発生を説明する図である。
【図9】本発明のインプリント方法の実施の一例を示した概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のインプリント方法について、具体的に説明を行う。
【0024】
<接触工程>
まず、インプリントモールドを被転写材に接触させる。
【0025】
本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドは、上下に可動する複数のピンが配列され、ピンを所望の位置で保持することにより所望する凹凸パターンを形成する。
【0026】
ピンの形状は、複数のピンが配列されることから、配列したときに隙間が生じないような構造、形状が望ましい。具体的には、ピンの断面形状は平面充填が可能な形状であることが好ましい。例えば、ピンの断面形状は、正三角形、正方形、正六角形、平行四辺形、平行六辺形、三角形、四角形、などであってもよい。また、平面充填が可能な、異なる形状同士の組み合わせであってもよい。
また、ピンの先端形状は、所望する凹凸パターンに応じて、適宜設計し、決定してよい。例えば、ピンの先端形状は、平坦形状、錐形状、などであってもよい。
【0027】
また、複数のピンを配列するにあたり、各ピン同士の間の隙間を小さくすることが望ましい。各ピン同士の間の隙間が存在すると本発明のインプリントモールドを用いたインプリント法の実施にあって、該隙間に転写材料が充填され、所望する凹凸パターンを好適に転写することが出来ない。このため、各ピン同士の間の隙間は、インプリント法に用いる転写材料の粘度など、転写材料の物性に応じて適宜決定されることが好ましい。具体的には、転写材料の粘度が大きい場合、転写材料は各ピン同士の間の隙間に充填されにくいため、各ピン同士の間の隙間を大きくしても許容される傾向がある。
【0028】
ピンを構成する材料は、耐久性が高く、且つ、所望するピンの形状に加工を行いやすい材料を選定するとよい。また、ピンを構成する材料は、単一の物質であってもよいし、複数の物質を組み合わせた材料であってもよい。例えば、(1)シリコンナノピラーにダイヤモンドコーティングを行ったもの、(2)シリコンナノピラーにフッ素樹脂をコーティングしたもの、などであってもよい。
【0029】
上下に可動するピンの可動範囲(突出量)は、所望する凹凸パターンに応じて適宜決定してよい。
【0030】
また、複数の前記ピンは、高さが異なる位置が3種以上あってもよい。高さが異なる位置が3種以上ある場合、形成される凹凸パターンは段差が3段以上ある階段形状の凹凸パターンとなる。従来のフォトリソグラフィ法によるインプリントモールドの製造方法では、階段状の凹凸パターンを形成するには、レジストコート、露光、現像を形成する段差の分だけ繰り返す必要があった。本発明のインプリントモールドによれば、関与するピンの高さをそれぞれ必要な位置に調整するだけで階段状のパターンを形成でき、好適に階段形状の凹凸パターンを形成することが出来る。
【0031】
また、前記ピンの配列は、各ピンが単一のライン上に整列配置された配列であってもよい。ピンを単一のライン上に配列した場合、各ピンの突出量を変化させ、転写材料を連続的に移動させながらインプリント法の実施を繰り返すことで、連続的に処理を行うインライン方式のインプリント法の実施を行なうことが出来る。
【0032】
また、前記ピンの配列は、各ピンがマトリクス状に整列配置された配列であってもよい。各ピンをマトリクス状に配列した場合、面単位で凹凸パターンの転写が出来、凹凸パターン転写のスループットを向上させることが出来る。なお、各ピンをマトリクス状に配列した場合であっても、ピンを単一のライン上に配列した場合と同様にインライン方式のインプリント法の実施を行うことが出来る。
【0033】
ピン支えは、前記ピンを保持するために設けられる。ピン支えは、保持するピンの形状、材質、配列などに応じて適宜設計してよい。
【0034】
また、更に、前記ピンの突出量を制御するピン突出量制御機構と、を備えていてもよい。ピンの突出量を任意の位置に制御できるピン突出量制御機構を設けることにより、形成する凹凸パターンの形状を、高さ方向に自由に制御することができる。
【0035】
ピン突出量制御機構に用いる、ピンを突出及び収納させる方法としては、各ピンを上下に動作させることの出来る方法であればよく、電気的方法、熱的方法、磁気的方法、などを用いてよい。例えば、(1)電気的な方法としてピエゾ素子を用いた機構、(2)熱的な方法として熱電対を用いた機構、(3)磁気的な方法として電磁石を用いた機構、などであってもよい。
【0036】
また、本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドにおいて、ピン突出量制御機構にはピエゾ素子を用いることが好ましい。ピエゾ素子とは、圧電体に加えられた電圧を力に変換する素子である。電圧は定量的に制御・操作することが出来ることが知られており、ピンの突出量の制御を精度良く行うことが出来る。また、多数の圧電素子を重ねて棒状にした積層型のピエゾ素子は、厚み方向の変位を充分に利用することが出来ることから、特に、好ましい。
【0037】
また、ピンの突出量の制御は、突出量を無段階で増減できるように設計することが望ましい。このような構成にすることで、転写材料が残るか残らないかの二者択一的なパターンのみならず、残る場合にどの程度の厚さで残るかを制御することができ、3次元の起伏に富む凹凸パターン形状をインプリントモールドに形成することができる。
【0038】
図2に、具体的に、本発明のピン突出量制御機構を有するインプリントモールド400の一例を示す。図2では、断面形状が四角形であり、先端形状が平坦であり、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けている。
【0039】
被転写材は、特定の操作をすると変形が困難になる特性を有する材料を用いる。また、所望する凹凸パターン、凹凸パターンが転写された3次元パターン構造体の用途などに応じて適宜選択してよい。例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、ゾルゲル材料などを用いても良い。
【0040】
<転写工程>
次に、インプリントモールドと被転写材とを接触させた状態で、ピンの突出量を調整して所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成し、前記被転写材に転写パターンを形成する。
【0041】
本発明のインプリント方法によれば、インプリントモールドを被転写材に接触させたのちにモールドの凹凸パターンを形成するため、予め凹凸パターンが形成されたモールドを被転写材に接触させる場合と比較してモールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることができ、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位、すなわち凹部を好適に転写することが出来る。
【0042】
また、本発明のインプリント方法によれば、被転写材とインプリントモールドの間の空気の影響を抑制することが出来るため、大気圧下でも好適に転写することが出来る。従来のインプリント方法は、被転写材とインプリントモールドの間の空気の影響を抑制するため、空気をある程度排除した真空中で実施されることが多い。しかしながら、本発明のインプリト方法の実施にあたっては、必ずしも真空下である必要はない。このため、大気圧下での実施は、本発明のインプリント法を実施するインプリント装置において、真空にするための設備を省くことができる。また、大気圧下での実施は、真空引きの時間が必要ないため、転写パターンを形成するためのスループットの向上も図れる。
【0043】
また、前記接触工程は、前記インプリントモールドの前記ピンの凹凸パターンの形状が、凹部を有しない仮パターンの形状を成した状態で接触させてもよい。
【0044】
凹部が存在しない仮パターンとして、一部のピンの突出量を最高位とし、その周辺部に行くに従ってピンの突出量を小さくした山なりの形状を成したパターンが挙げられる。具体的には、凸のみを有し山のように裾が広がっている円錐や角錐のような構造が挙げられる。ピンの突出量を変更して山なりの形状の仮パターンを成したインプリントモールドを被転写材に接触させると、ピンが最も突出した部位がまず接触し、被転写材の材料を押し退けながらやがて全体が接触するため、被転写材が流動して、間に気泡を含まない接触状態を好適に得ることが出来る。
【0045】
図3および図4に、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドについて例示する。
図3では、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けたインプリントモールド400において、中央部のピン401が線状に盛りあがり、山なりの形状を成している。
図4では、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けたインプリントモールド400において、中央部のピン401が点で盛りあがり、周辺部に行くに従ってピン401の突出量は小さくなることにより、山なりの形状を成している。
【0046】
図5に、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドを被転写材に接触させた、本発明のインプリント方法の実施の一例を示す。
【0047】
まず、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、基板405上に積層された被転写材404と、を対向して配置する(図5(a))。
【0048】
次に、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400を被転写材404と接触させる(図5(b))。このとき、ピンが最も突出した部位がまず接触し、被転写材の材料を押し退けながらやがて全体が接触するため、被転写材が流動して、間に気泡を含まない接触状態を好適に得ることが出来る。
【0049】
次に、各ピンにおいて突出量を各ピンで同じとし、被転写材と接触する側の面を平面とする(図5(c))。平面とすることにより、インプリントモールド400と基板405の間に存在する被転写材の層の厚みを一定とすることが出来、転写精度を向上させることが出来る。なお、被転写材の粘度が充分に低い場合には全てのピンを収納して転写面側を平面の状態にすることを省略してもよい。
【0050】
次に、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させた状態で被転写材404を硬化する(図5(d))。
【0051】
次に、インプリントモールド400を基板405から離し、転写パターンが形成された被転写材404を得る(図5(e))。
【0052】
また、凹部が存在しない仮パターンとして、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成したパターンが挙げられる。被転写材と接触する側の面を平面とすることで、モールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることが出来る。また、平面とすることにより、インプリントモールドと基板の間に存在する被転写材の層の厚みを一定とすることが出来、転写精度を向上させることが出来る。
【0053】
図6に、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成した仮パターンについて例示する。
図6では、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けたインプリントモールド400において、各ピン401の突出量が同じであり、平面を成している。
【0054】
図7に、ピンの突出量を各ピンで同じとし、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドを被転写材に接触させた、本発明のインプリント方法の実施の一例を示す。
【0055】
まず、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、基板405上に積層された被転写材404と、を対向して配置する(図7(a))。
【0056】
次に、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400を被転写材404と接触させる(図7(b))。
【0057】
次に、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させた状態で被転写材404を硬化する(図7(c))。
【0058】
次に、インプリントモールド400を基板405から離し、転写パターンが形成された被転写材404を得る(図7(d))。
【0059】
また、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドを被転写材に接触させる場合、インプリントモールドの平面の平坦度または/及び被転写材表面の平坦度の精度によっては、インプリントモールドと被転写材とを接触させた時点で両者の界面に気泡を挟み込む場合がある(図8参照)。
【0060】
このため、前記接触工程にあって、前記インプリントモールドの仮パターンの転写側の面と前記被転写材の表面とが成す角θが0°<θ<90°の範囲で互いに接触させ、前記インプリントモールドブランクと前記被転写材との一部が接触状態を保ったまま、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、前記インプリントモールドを前記被転写材に接触させることが好ましい。インプリントモールドの転写側の面を被転写材の表面に対し傾けて接触させていくことで、界面に気泡を挟み込むことを抑制することが出来る。
【0061】
図9に、インプリントモールドの転写側の面を被転写材の表面に対し傾けて接触させていく、本発明のインプリント方法の実施の一例を示す。
【0062】
まず、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、基板405上に積層された被転写材404と、を対向して配置する。このとき、インプリントモールド400は基板405に対し、傾けて配置する(図9(a))。
【0063】
次に、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、被転写材404の一部とを接触させる。このとき、インプリントモールド400は被転写材404の表面に対し傾いているため、インプリントモールド400の転写面と被転写材404の表面とは、角度θで交わる(図9(b))。
【0064】
次に、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400を、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、被転写材404と接触させる(図9(c))。このとき、インプリントモールド400と被転写材404の間の空気は角θの開口方向へと抜けるため、界面に気泡を挟み込むことを抑制することが出来る。
【0065】
次に、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させ、凹凸パターンを形成した状態で被転写材404を硬化する(図9(d))。
【0066】
次に、インプリントモールド400を基板405から離し、転写パターンが形成された被転写材404を得る(図9(e))。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のインプリント方法は、3次元パターン構造体の形成に有用に用いることができる。例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材(分析検査用チップ、マイクロニードルなど)、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイスなどの製造方法において用いられる3次元パターン構造体の形成に有用に用いることが期待される。なお、上記の用途に本発明のインプリント方法の利用は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
400……インプリントモールド
401……ピン
402……ピン支え
403……ピン突出量制御機構
404……被転写材
405……基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントモールドを用いて3次元パターン構造体を形成するインプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途に応じて、特定の3次元形状パターン(以下、凹凸パターンと呼ぶ)を有する3次元パターン構造体を形成する方法が求められている。
【0003】
例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材(分析検査用チップ、マイクロニードルなど)、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイス、フォトマスク、などの用途が挙げられる。
【0004】
このような3次元パターン構造体を形成する方法として、インプリント法と呼ばれる凹凸パターン転写技術が提案されている。
【0005】
インプリント法は、所望する3次元パターン構造体のネガポジ反転像に対応する凹凸パターンが形成されたインプリントモールドと呼ばれる原型を、被転写材に型押しし、その状態で被転写材を硬化させることで、凹凸パターンの転写を行うものである。
【0006】
例えば、熱により被転写材を硬化させる熱インプリント法が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
例えば、露光光により被転写材を硬化させる光インプリント法が提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
一般的に、上述したインプリントモールドは、フォトリソグラフィ法などの微細加工技術により凹凸パターンが形成され、製造されている。
【0009】
例えば、電子線露光を用いてインプリントモールドを製造する方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
以下、一例として、図1に従来のインプリント法を例示する。
まず、基板405に被転写材404を積層し、インプリントモールド400を対向して配置する(図1(a))。
次に、インプリントモールド400と被転写材404を接触させ、被転写材404に、インプリントモールド400に形成された凹凸パターンが反転した転写パターンを形成する(図1(b))。
次に、インプリントモールド400を基板405から離す(図1(c))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−335012号公報
【特許文献2】特開2000−194142号公報
【特許文献3】特開2009−226762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のインプリントモールドを用いたインプリント法では、インプリントモールドから被転写材へ転写する際、モールドの凹凸パターンにおける相対的な凹部に存在する空気が被転写材への良好な転写を阻害する問題があった。
【0013】
図1では、インプリントモールド400が被転写材404と接触したとき、凹凸パターンの凸部に囲まれた空間には空気が存在し(図1(b)を参照)、これがその部分への被転写材の浸入を妨げることにより、期待された転写が正常に行われず、全体として転写不良を引き起こすこと(図1(c)を参照)を示している。
【0014】
そこで、本発明は上述の課題を解決するために成されたものであり、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することの出来るインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態は、上下に可動するピンと、前記ピンを保持するピン支えと、を備え、前記ピンは、複数のピンが配列されたピンであり、複数の前記ピンの一部は、ピンの先端が他のピンの高さとは異なる位置で保持されることにより凹凸パターンを形成するインプリントモールドを用いたインプリント方法であって、前記インプリントモールドを被転写材に接触させる接触工程と、前記インプリントモールドと前記被転写材とを接触させた状態で、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させ、前記被転写材に転写パターンを形成する転写工程と、を含むことを特徴とするインプリント方法である。
【0016】
また、前記接触工程は、前記インプリントモールドの前記ピンの凹凸パターンの形状が、凹部を有しない仮パターンの形状を成した状態で接触させる接触工程であってもよい。
【0017】
また、前記仮パターンは、一部のピンの突出量を最高位とし、その周辺部に行くに従ってピンの突出量を小さくした山なりの形状を成したパターンであってもよい。
【0018】
また、前記仮パターンは、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成したパターンであってもよい。
【0019】
また、前記接触工程は、前記インプリントモールドの仮パターンのパターン平面と前記被転写材の表面とを、成す角θが0°<θ<90°の範囲で互いに接触させ、前記インプリントモールドブランクと前記被転写材との一部が接触状態を保ったまま、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、前記インプリントモールドを前記被転写材に接触させる接触工程であってもよい。
【0020】
また、大気圧下で、インプリント方法を行ってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインプリント方法によれば、インプリントモールドを被転写材に接触させたのちにインプリントモールドの凹凸パターンを形成するため、予め凹凸パターンが形成されたインプリントモールドを被転写材に接触させる場合と比較してインプリントモールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることができ、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位を好適に転写することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のインプリント方法の一例を示す概略工程図である。。
【図2】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図3】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図4】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図5】本発明のインプリント方法の実施の一例を示した概略工程図である。
【図6】本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドの一例を示した概略図である。
【図7】本発明のインプリント方法の実施の一例を示した概略工程図である。
【図8】被転写材に平面パターンを接触させた場合における空隙の発生を説明する図である。
【図9】本発明のインプリント方法の実施の一例を示した概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のインプリント方法について、具体的に説明を行う。
【0024】
<接触工程>
まず、インプリントモールドを被転写材に接触させる。
【0025】
本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドは、上下に可動する複数のピンが配列され、ピンを所望の位置で保持することにより所望する凹凸パターンを形成する。
【0026】
ピンの形状は、複数のピンが配列されることから、配列したときに隙間が生じないような構造、形状が望ましい。具体的には、ピンの断面形状は平面充填が可能な形状であることが好ましい。例えば、ピンの断面形状は、正三角形、正方形、正六角形、平行四辺形、平行六辺形、三角形、四角形、などであってもよい。また、平面充填が可能な、異なる形状同士の組み合わせであってもよい。
また、ピンの先端形状は、所望する凹凸パターンに応じて、適宜設計し、決定してよい。例えば、ピンの先端形状は、平坦形状、錐形状、などであってもよい。
【0027】
また、複数のピンを配列するにあたり、各ピン同士の間の隙間を小さくすることが望ましい。各ピン同士の間の隙間が存在すると本発明のインプリントモールドを用いたインプリント法の実施にあって、該隙間に転写材料が充填され、所望する凹凸パターンを好適に転写することが出来ない。このため、各ピン同士の間の隙間は、インプリント法に用いる転写材料の粘度など、転写材料の物性に応じて適宜決定されることが好ましい。具体的には、転写材料の粘度が大きい場合、転写材料は各ピン同士の間の隙間に充填されにくいため、各ピン同士の間の隙間を大きくしても許容される傾向がある。
【0028】
ピンを構成する材料は、耐久性が高く、且つ、所望するピンの形状に加工を行いやすい材料を選定するとよい。また、ピンを構成する材料は、単一の物質であってもよいし、複数の物質を組み合わせた材料であってもよい。例えば、(1)シリコンナノピラーにダイヤモンドコーティングを行ったもの、(2)シリコンナノピラーにフッ素樹脂をコーティングしたもの、などであってもよい。
【0029】
上下に可動するピンの可動範囲(突出量)は、所望する凹凸パターンに応じて適宜決定してよい。
【0030】
また、複数の前記ピンは、高さが異なる位置が3種以上あってもよい。高さが異なる位置が3種以上ある場合、形成される凹凸パターンは段差が3段以上ある階段形状の凹凸パターンとなる。従来のフォトリソグラフィ法によるインプリントモールドの製造方法では、階段状の凹凸パターンを形成するには、レジストコート、露光、現像を形成する段差の分だけ繰り返す必要があった。本発明のインプリントモールドによれば、関与するピンの高さをそれぞれ必要な位置に調整するだけで階段状のパターンを形成でき、好適に階段形状の凹凸パターンを形成することが出来る。
【0031】
また、前記ピンの配列は、各ピンが単一のライン上に整列配置された配列であってもよい。ピンを単一のライン上に配列した場合、各ピンの突出量を変化させ、転写材料を連続的に移動させながらインプリント法の実施を繰り返すことで、連続的に処理を行うインライン方式のインプリント法の実施を行なうことが出来る。
【0032】
また、前記ピンの配列は、各ピンがマトリクス状に整列配置された配列であってもよい。各ピンをマトリクス状に配列した場合、面単位で凹凸パターンの転写が出来、凹凸パターン転写のスループットを向上させることが出来る。なお、各ピンをマトリクス状に配列した場合であっても、ピンを単一のライン上に配列した場合と同様にインライン方式のインプリント法の実施を行うことが出来る。
【0033】
ピン支えは、前記ピンを保持するために設けられる。ピン支えは、保持するピンの形状、材質、配列などに応じて適宜設計してよい。
【0034】
また、更に、前記ピンの突出量を制御するピン突出量制御機構と、を備えていてもよい。ピンの突出量を任意の位置に制御できるピン突出量制御機構を設けることにより、形成する凹凸パターンの形状を、高さ方向に自由に制御することができる。
【0035】
ピン突出量制御機構に用いる、ピンを突出及び収納させる方法としては、各ピンを上下に動作させることの出来る方法であればよく、電気的方法、熱的方法、磁気的方法、などを用いてよい。例えば、(1)電気的な方法としてピエゾ素子を用いた機構、(2)熱的な方法として熱電対を用いた機構、(3)磁気的な方法として電磁石を用いた機構、などであってもよい。
【0036】
また、本発明のインプリント方法に用いるインプリントモールドにおいて、ピン突出量制御機構にはピエゾ素子を用いることが好ましい。ピエゾ素子とは、圧電体に加えられた電圧を力に変換する素子である。電圧は定量的に制御・操作することが出来ることが知られており、ピンの突出量の制御を精度良く行うことが出来る。また、多数の圧電素子を重ねて棒状にした積層型のピエゾ素子は、厚み方向の変位を充分に利用することが出来ることから、特に、好ましい。
【0037】
また、ピンの突出量の制御は、突出量を無段階で増減できるように設計することが望ましい。このような構成にすることで、転写材料が残るか残らないかの二者択一的なパターンのみならず、残る場合にどの程度の厚さで残るかを制御することができ、3次元の起伏に富む凹凸パターン形状をインプリントモールドに形成することができる。
【0038】
図2に、具体的に、本発明のピン突出量制御機構を有するインプリントモールド400の一例を示す。図2では、断面形状が四角形であり、先端形状が平坦であり、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けている。
【0039】
被転写材は、特定の操作をすると変形が困難になる特性を有する材料を用いる。また、所望する凹凸パターン、凹凸パターンが転写された3次元パターン構造体の用途などに応じて適宜選択してよい。例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、ゾルゲル材料などを用いても良い。
【0040】
<転写工程>
次に、インプリントモールドと被転写材とを接触させた状態で、ピンの突出量を調整して所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成し、前記被転写材に転写パターンを形成する。
【0041】
本発明のインプリント方法によれば、インプリントモールドを被転写材に接触させたのちにモールドの凹凸パターンを形成するため、予め凹凸パターンが形成されたモールドを被転写材に接触させる場合と比較してモールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることができ、凹凸パターンの凸部に囲まれた部位、すなわち凹部を好適に転写することが出来る。
【0042】
また、本発明のインプリント方法によれば、被転写材とインプリントモールドの間の空気の影響を抑制することが出来るため、大気圧下でも好適に転写することが出来る。従来のインプリント方法は、被転写材とインプリントモールドの間の空気の影響を抑制するため、空気をある程度排除した真空中で実施されることが多い。しかしながら、本発明のインプリト方法の実施にあたっては、必ずしも真空下である必要はない。このため、大気圧下での実施は、本発明のインプリント法を実施するインプリント装置において、真空にするための設備を省くことができる。また、大気圧下での実施は、真空引きの時間が必要ないため、転写パターンを形成するためのスループットの向上も図れる。
【0043】
また、前記接触工程は、前記インプリントモールドの前記ピンの凹凸パターンの形状が、凹部を有しない仮パターンの形状を成した状態で接触させてもよい。
【0044】
凹部が存在しない仮パターンとして、一部のピンの突出量を最高位とし、その周辺部に行くに従ってピンの突出量を小さくした山なりの形状を成したパターンが挙げられる。具体的には、凸のみを有し山のように裾が広がっている円錐や角錐のような構造が挙げられる。ピンの突出量を変更して山なりの形状の仮パターンを成したインプリントモールドを被転写材に接触させると、ピンが最も突出した部位がまず接触し、被転写材の材料を押し退けながらやがて全体が接触するため、被転写材が流動して、間に気泡を含まない接触状態を好適に得ることが出来る。
【0045】
図3および図4に、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドについて例示する。
図3では、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けたインプリントモールド400において、中央部のピン401が線状に盛りあがり、山なりの形状を成している。
図4では、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けたインプリントモールド400において、中央部のピン401が点で盛りあがり、周辺部に行くに従ってピン401の突出量は小さくなることにより、山なりの形状を成している。
【0046】
図5に、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドを被転写材に接触させた、本発明のインプリント方法の実施の一例を示す。
【0047】
まず、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、基板405上に積層された被転写材404と、を対向して配置する(図5(a))。
【0048】
次に、山なりの形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400を被転写材404と接触させる(図5(b))。このとき、ピンが最も突出した部位がまず接触し、被転写材の材料を押し退けながらやがて全体が接触するため、被転写材が流動して、間に気泡を含まない接触状態を好適に得ることが出来る。
【0049】
次に、各ピンにおいて突出量を各ピンで同じとし、被転写材と接触する側の面を平面とする(図5(c))。平面とすることにより、インプリントモールド400と基板405の間に存在する被転写材の層の厚みを一定とすることが出来、転写精度を向上させることが出来る。なお、被転写材の粘度が充分に低い場合には全てのピンを収納して転写面側を平面の状態にすることを省略してもよい。
【0050】
次に、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させた状態で被転写材404を硬化する(図5(d))。
【0051】
次に、インプリントモールド400を基板405から離し、転写パターンが形成された被転写材404を得る(図5(e))。
【0052】
また、凹部が存在しない仮パターンとして、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成したパターンが挙げられる。被転写材と接触する側の面を平面とすることで、モールドと被転写材との間に空気を挟んで転写不良となる頻度を下げることが出来る。また、平面とすることにより、インプリントモールドと基板の間に存在する被転写材の層の厚みを一定とすることが出来、転写精度を向上させることが出来る。
【0053】
図6に、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成した仮パターンについて例示する。
図6では、格子配列で配列された、複数のピン401を囲うようにピン支え402を設け、ピン401の突出量を制御するピン突出量制御機構403をピン401下部に設けたインプリントモールド400において、各ピン401の突出量が同じであり、平面を成している。
【0054】
図7に、ピンの突出量を各ピンで同じとし、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドを被転写材に接触させた、本発明のインプリント方法の実施の一例を示す。
【0055】
まず、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、基板405上に積層された被転写材404と、を対向して配置する(図7(a))。
【0056】
次に、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400を被転写材404と接触させる(図7(b))。
【0057】
次に、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させた状態で被転写材404を硬化する(図7(c))。
【0058】
次に、インプリントモールド400を基板405から離し、転写パターンが形成された被転写材404を得る(図7(d))。
【0059】
また、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールドを被転写材に接触させる場合、インプリントモールドの平面の平坦度または/及び被転写材表面の平坦度の精度によっては、インプリントモールドと被転写材とを接触させた時点で両者の界面に気泡を挟み込む場合がある(図8参照)。
【0060】
このため、前記接触工程にあって、前記インプリントモールドの仮パターンの転写側の面と前記被転写材の表面とが成す角θが0°<θ<90°の範囲で互いに接触させ、前記インプリントモールドブランクと前記被転写材との一部が接触状態を保ったまま、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、前記インプリントモールドを前記被転写材に接触させることが好ましい。インプリントモールドの転写側の面を被転写材の表面に対し傾けて接触させていくことで、界面に気泡を挟み込むことを抑制することが出来る。
【0061】
図9に、インプリントモールドの転写側の面を被転写材の表面に対し傾けて接触させていく、本発明のインプリント方法の実施の一例を示す。
【0062】
まず、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、基板405上に積層された被転写材404と、を対向して配置する。このとき、インプリントモールド400は基板405に対し、傾けて配置する(図9(a))。
【0063】
次に、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400と、被転写材404の一部とを接触させる。このとき、インプリントモールド400は被転写材404の表面に対し傾いているため、インプリントモールド400の転写面と被転写材404の表面とは、角度θで交わる(図9(b))。
【0064】
次に、被転写材と接触する側の面を平面とした形状を成した仮パターンを形成したインプリントモールド400を、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、被転写材404と接触させる(図9(c))。このとき、インプリントモールド400と被転写材404の間の空気は角θの開口方向へと抜けるため、界面に気泡を挟み込むことを抑制することが出来る。
【0065】
次に、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させ、凹凸パターンを形成した状態で被転写材404を硬化する(図9(d))。
【0066】
次に、インプリントモールド400を基板405から離し、転写パターンが形成された被転写材404を得る(図9(e))。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のインプリント方法は、3次元パターン構造体の形成に有用に用いることができる。例えば、半導体デバイス、光学素子、配線回路、データストレージメディア(ハードディスク、光学メディアなど)、医療用部材(分析検査用チップ、マイクロニードルなど)、バイオデバイス(バイオセンサ、細胞培養基板など)、精密検査機器用部材(検査プローブ、試料保持部材など)、ディスプレイパネル、パネル部材、エネルギーデバイス(太陽電池、燃料電池など)、マイクロ流路、マイクロリアクタ、MEMSデバイスなどの製造方法において用いられる3次元パターン構造体の形成に有用に用いることが期待される。なお、上記の用途に本発明のインプリント方法の利用は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
400……インプリントモールド
401……ピン
402……ピン支え
403……ピン突出量制御機構
404……被転写材
405……基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に可動するピンと、
前記ピンを保持するピン支えと、を備え、
前記ピンは、複数のピンが配列されたピンであり、
複数の前記ピンの一部は、ピンの先端が他のピンの高さとは異なる位置で保持されることにより凹凸パターンを形成するインプリントモールドを用いたインプリント方法であって、
前記インプリントモールドを被転写材に接触させる接触工程と、
前記インプリントモールドと前記被転写材とを接触させた状態で、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させ、前記被転写材に転写パターンを形成する転写工程と、
を含むことを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記接触工程は、前記インプリントモールドの前記ピンの凹凸パターンの形状が、凹部を有しない仮パターンの形状を成した状態で接触させる接触工程であること
を特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記仮パターンは、一部のピンの突出量を最高位とし、その周辺部に行くに従ってピンの突出量を小さくした山なりの形状を成したパターンであること
を特徴とする請求項2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記仮パターンは、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成したパターンであること
を特徴とする請求項2に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記接触工程は、
前記インプリントモールドの仮パターンの転写面と前記被転写材の表面とを、成す角θが0°<θ<90°の範囲で互いに接触させ、
前記インプリントモールドブランクと前記被転写材との一部が接触状態を保ったまま、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、前記インプリントモールドを前記被転写材に接触させる接触工程であること
を特徴とする請求項4に記載のインプリント方法。
【請求項6】
大気圧下で行うこと
を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインプリント方法。
【請求項1】
上下に可動するピンと、
前記ピンを保持するピン支えと、を備え、
前記ピンは、複数のピンが配列されたピンであり、
複数の前記ピンの一部は、ピンの先端が他のピンの高さとは異なる位置で保持されることにより凹凸パターンを形成するインプリントモールドを用いたインプリント方法であって、
前記インプリントモールドを被転写材に接触させる接触工程と、
前記インプリントモールドと前記被転写材とを接触させた状態で、所望する転写パターンが反転した形状の凹凸パターンを形成するようにピンを突出させ、前記被転写材に転写パターンを形成する転写工程と、
を含むことを特徴とするインプリント方法。
【請求項2】
前記接触工程は、前記インプリントモールドの前記ピンの凹凸パターンの形状が、凹部を有しない仮パターンの形状を成した状態で接触させる接触工程であること
を特徴とする請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記仮パターンは、一部のピンの突出量を最高位とし、その周辺部に行くに従ってピンの突出量を小さくした山なりの形状を成したパターンであること
を特徴とする請求項2に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記仮パターンは、ピンの突出量を各ピンで同じとする平面形状を成したパターンであること
を特徴とする請求項2に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記接触工程は、
前記インプリントモールドの仮パターンの転写面と前記被転写材の表面とを、成す角θが0°<θ<90°の範囲で互いに接触させ、
前記インプリントモールドブランクと前記被転写材との一部が接触状態を保ったまま、θが0°になる方向へ角度を変更させることにより、前記インプリントモールドを前記被転写材に接触させる接触工程であること
を特徴とする請求項4に記載のインプリント方法。
【請求項6】
大気圧下で行うこと
を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインプリント方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−201102(P2011−201102A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69572(P2010−69572)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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