説明

インプリント装置および物品の製造方法

【課題】インプリント装置において基板保持面またはモールド保持面に存在する異物を除去するために有利な技術を提供する。
【解決手段】基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント装置100は、前記基板を保持する基板保持部4と、モールド保持面MSで前記モールドを保持するモールド保持部3と、前記モールド保持部3に対して前記基板保持部4を相対的に移動させる駆動機構と、前記基板保持部4により前記基板の代わりにクリーニング部材12が保持されて前記クリーニング部材12と前記モールド保持面MSとが接触した状態で前記モールド保持部3に対して前記基板保持部4が相対的に移動するように前記駆動機構を制御し、これにより前記モールド保持面MSをクリーニングする制御部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および、それを用いて物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に樹脂を塗布し、その樹脂とモールドのパターン面とを接触させ、該樹脂に光または熱などのエネルギーを与えることによって硬化させることによってモールドのパターン面に形成されたパターンを基板に転写するインプリント装置が知られている。
【0003】
基板を保持する基板保持面に異物が存在すると、基板の平坦性が悪くなるので、基板に転写されるパターンに歪が生じるなどの転写不良が発生しうる。また、モールドを保持するモールド保持面に異物が存在すると、モールドが変形したり傾いたりしうるので、基板に転写されるパターンに歪が生じるなどの転写不良が発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−24441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、インプリント装置において基板保持面またはモールド保持面に存在する異物を除去するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント装置に係り、前記インプリント装置は、前記基板を保持する基板保持部と、モールド保持面で前記モールドを保持するモールド保持部と、前記モールド保持部に対して前記基板保持部を相対的に移動させる駆動機構と、前記基板保持部により前記基板の代わりにクリーニング部材が保持されて前記クリーニング部材と前記モールド保持面とが接触した状態で前記モールド保持部に対して前記基板保持部が相対的に移動するように前記駆動機構を制御し、これにより前記モールド保持面をクリーニングする制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インプリント装置において基板保持面またはモールド保持面に付着した異物を除去するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1乃至第3実施形態のインプリント装置を示す図。
【図2】本発明の第1実施形態のクリーニング動作を示す図。
【図3】本発明の第2実施形態のクリーニング動作を示す図。
【図4】本発明の第3実施形態のクリーニング動作を示す図。
【図5】クリーニングの進行の度合いを検出するための構成例を説明する図。
【図6】クリーニングの進行の度合いを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照しながら本発明の第1〜第3実施形態のインプリント装置100の構成および基本動作を説明する。ここでは、水平面をXY平面、鉛直方向をZ軸方向とするようにXYZ座標系が定義されている。インプリント装置100は、ウエハ等の基板2に樹脂を塗布し、その樹脂とモールド1のパターン面PSとを接触させ、該樹脂を硬化させることによってパターン面PSに形成されたパターンを基板2(あるいは樹脂)に転写する。ここで、樹脂の硬化は、樹脂に光または熱などのエネルギーを与えることによってなされうる。基板2に樹脂を塗布し、該樹脂にパターン面PSを接触させた状態で該樹脂を硬化させる処理をインプリント処理と呼ぶことができる。
【0010】
インプリント装置100は、基板2を保持する基板保持面SSを有する基板保持部4と、基板保持部4を駆動することによって基板2を駆動する基板駆動機構6とを備える。基板駆動機構6は、基板保持部4をX軸、Y軸、Z軸およびそれらの軸周りの6軸に関して駆動する機能を有しうる。ここで、基板保持部4または基板2の位置は、不図示の計測器(例えば、レーザ干渉計、エンコーダ)によって計測され、その位置計測の結果に基づいて不図示の基板位置制御部が基板駆動機構6を制御する。インプリント装置100はまた、モールド1を保持するモールド保持面MSを有するモールド保持部3と、モールド保持部3を駆動することによってモールド1を駆動するモールド駆動機構5とを備える。モールド駆動機構5は、モールド保持部3をX軸、Y軸、Z軸およびそれらの軸周りの6軸に関して駆動する機能を有しうる。ここで、モールド保持部3またはモールド1の位置は、不図示の計測器(例えば、レーザ干渉計、エンコーダ)によって計測され、その位置計測の結果に基づいて不図示のモールド位置制御部がモールド駆動機構5を制御する。基板駆動機構6およびモールド駆動機構5は、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させる駆動機構である。
【0011】
ここで、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させることには、モールド保持部3が静止した状態で基板保持部4を移動させること、基板保持部4が静止した状態でモールド保持部3を移動させることを含む。また、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させることには、モールド保持部3と基板保持部4との相対位置が変化するようにモールド保持部3と基板保持部4との双方を移動させることを含む。
【0012】
インプリント装置100はまた、基板2に樹脂を塗布する塗布機構8と、基板2に塗布された樹脂にモールド1が接触した状態で該樹脂にエネルギーを与えて該樹脂を硬化させる硬化ユニット14と、制御部20とを備える。硬化ユニット14は、例えば、基板2に塗布された樹脂に光(例えば紫外光)または熱を与えるように構成されうる。光は、例えば、モールド1を介して樹脂に与えられうる。モールド駆動機構5は、除振機構を介して支持された支持体9によって支持されうる。
【0013】
インプリント装置100の内部空間(インプリント処理がなされる空間)では、空気以外の気体が使用されてもよい。例えば、モールド1と樹脂とを接触させて該樹脂を硬化させるときに、パターン面PSの周囲の雰囲気を空気以外の気体で置換することでインプリント処理におけるパターン欠陥が減少することが知られている。気体としては、例えば、ヘリウム、窒素、各種の機能性ガスなどが使用されうる。インプリント装置100は、インプリント処理がなされる空間の気体を置換するために、環境制御部7を備えうる。環境制御部7は、例えば、インプリント処理がなされる空間に気体を供給する供給部と、該空間から気体を吸引する吸引部とを含みうる。
【0014】
インプリント装置100は、基板2を基板保持部4に搬送したり基板保持部4から基板2を回収したりする基板搬送機構11と、モールド1をモールド保持部3に搬送したりモールド保持部3からモールド1を回収したりするモールド搬送機構10とを備えうる。インプリント処理は、制御部20による制御の下で、次のような手順で実行されうる。まず、基板2のショット領域が塗布機構8の直下に位置決めされるように基板駆動機構6によって基板保持部4を駆動し、塗布機構8によって該ショット領域に樹脂を塗布する。次いで、該ショット領域がモールド1の直下に配置されるように基板駆動機構6によって基板保持部4を駆動する。次いで、該ショット領域に塗布されている樹脂にモールド1のパターン面PSが接触するようにモールド駆動機構5によってモールド保持部3を駆動する。次いで、硬化ユニット14によって該樹脂にエネルギーを与えて該樹脂を硬化させ、これによりパターン面PSに形成されているパターンを基板2(樹脂)に転写する。その後、次のショット領域に対して同様の処理が実行される。
【0015】
モールド1や基板2に異物が付着すると、基板2に転写されるパターンに不良が発生しうる。そこで、インプリント装置100は、その本体部分が筐体15内に配置されうる。筐体15の内部空間には、送風機からフィルターを通して空気が供給されうる。筐体15の内部空間は、外部空間より圧力が高くなるように、即ち陽圧に維持されうる。これにより、筐体15にわずかな隙間があっても、筐体15の内部空間から外部空間へ向かって空気が流れ出るため、外部空間から内部空間に異物が侵入することが防止される。このような構成により、筐体15の内部空間は、インプリント装置100が設置されるクリーンルームより清浄に維持される。
【0016】
モールド保持部3のモールド保持面MSに異物が存在すると、モールド1が変形したり傾いたりしうるので、基板2に転写されるパターンに歪が生じるなどの転写不良が発生しうる。また、基板保持部4の基板保持面SSに異物が存在すると、基板2の平坦性が悪くなるので、基板2に転写されるパターンに歪が生じるなどの転写不良が発生しうる。しかも、モールド保持面MSおよび/または基板保持面SSに異物が存在すると、それが除去されるまで、全ての基板について転写不良が生じうる。
【0017】
そこで、以下で説明する本発明の実施形態では、モールド保持面MSおよび/または基板保持面SSに存在する異物がクリーニング部材を使って除去される。図2を参照しながら本発明の第1実施形態のクリーニング動作を説明する。第1実施形態では、クリーニング部材12を使ってモールド保持部3のモールド保持面MSがクリーニングされる。具体的には、制御部20は、基板保持部4に基板2の代わりにクリーニング部材12を保持させる。クリーニング部材12は、基板搬送機構11によって基板保持部4に搬送され、基板保持部4によって真空吸着、静電吸着または機械的な固定機構等によって保持されうる。次いで、制御部20による制御の下で、クリーニング部材12とモールド保持面MSとが接触するようにモールド駆動機構5によりモールド保持部3がZ軸方向に駆動される。次いで、クリーニング部材12とモールド保持面MSとが接触した状態で、モールド保持部3に対して基板保持部4が相対的に移動するように、制御部20によって基板駆動機構6および/またはモールド駆動機構5が制御される。この相対的な移動は、例えば、基板保持部4および/またはモールド保持部3をXY平面に沿って移動させること、または、Z軸に平行な軸の周りで回転させることを含みうる。これにより、クリーニング部材12との摩擦によってモールド保持面MSがクリーニングされる(即ち、モールド保持面MSから異物が除去される)。
【0018】
クリーニングは、例えば、コンソールを介してオペレータから与えられる指令に基づいて実行されうる。あるいは、クリーニング動作は、設定された枚数の基板の処理が終了した時点または予め設定された時刻に実行されうる。あるいは、クリーニング動作は、インプリント処理を実行していない時間帯に実行されうる。
【0019】
図3を参照しながら本発明の第2実施形態のクリーニング動作を説明する。なお、第2実施形態として特別に言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第2実施形態では、クリーニング部材12を使って基板保持部4の基板保持面SSがクリーニングされる。具体的には、制御部20は、モールド保持部3にモールド1の代わりにクリーニング部材12を保持させる。クリーニング部材12は、モールド搬送機構10によってモールド保持部3に搬送され、モールド保持部3によって真空吸着、静電吸着または機械的な固定機構等によって保持される。次いで、制御部20による制御の下で、クリーニング部材12と基板保持面SSとが接触するようにモールド駆動機構5によりモールド保持部3がZ軸方向に駆動される。次いで、クリーニング部材12と基板保持面SSとが接触した状態で、モールド保持部3に対して基板保持部4が相対的に移動するように、制御部20によって基板駆動機構6および/またはモールド駆動機構5が制御される。この相対的な移動は、例えば、基板保持部4および/またはモールド保持部3をXY平面に沿って移動させること、または、Z軸に平行な軸の周りで回転させることを含みうる。これにより、クリーニング部材12との摩擦によって基板保持面SSがクリーニングされる(即ち、基板保持面SSから異物が除去される)。
【0020】
図4を参照しながら本発明の第3実施形態のクリーニング動作を説明する。第3実施形態は、第2実施形態の変形例として理解することができ、第3実施形態として特別に言及しない事項は、第2実施形態に従いうる。第3実施形態では、塗布機構8によって、クリーニング対象の基板保持面SSの上にクリーニング液19が供給される。クリーニング液は、例えば、アルコールでありうるが、その他の種々の液体でもよい。ここでは、クリーニング液を基板保持面SSに供給する供給機構として塗布機構8を代用することを説明したが、供給機構を塗布機構8とは別個に設けてもよい。
【0021】
以下、第1〜第3事項に共通な事項を説明する。以上の第1〜第3実施形態において、モールド1と基板2、または、クリーニング部材12をモールド保持面MS、または、クリーニング部材12と基板保持面SSとを接触させるためにモールド保持部3をZ軸方向に駆動している。しかし、これは一つの実施形式に過ぎず、基板保持部4をZ軸方向に駆動してよいし、モールド保持部3および基板保持部4の双方をZ軸方向に駆動してもよい。
【0022】
クリーニング部材12を基板保持部4またはモールド保持部3に保持させてモールド保持面MSまたは基板保持面SSをクリーニングする構成は、クリーニング部材12を駆動するための付加的な駆動機構が不要である点で優れている。クリーニング部材12は、インプリント装置100の筐体15の内部空間で保管されてもよいし、外部空間で保管されてよい。クリーニング部材12がインプリント装置100の外部空間で保管される構成は、筐体15の小型化に有利である。クリーニング部材12の搬送を基板搬送機構11またはモールド搬送機構10によって行うことにより別個の搬送機構が不要となる。
【0023】
クリーニング部材12のクリーニング面(クリーニング対象に接触する面)は、例えば、同心円状の溝、等間隔の直交する溝、螺旋状の溝の少なくとも1つを含みうる。当該溝の断面は、例えば、V字、U字形状を有しうる。クリーニング部材12は、例えば、基板2を収容するカセット、または、クリーニング部材12を収容するための専用のカセットに収容されうる。クリーニング効果(例えば、溝の形状に応じてクリーニング効果が異なりうる)が異なる複数のクリーニング部材12をカセットに収容しておき、複数のクリーニング部材12を選択的に使用してもよい。この場合において、例えば、基板保持部4を駆動する際の駆動パターン(駆動軌跡)、または付着する異物の種類(例えば、使用する樹脂に応じて付着する異物が異なりうる)に応じてクリーニング部材12を選択することができる。
【0024】
クリーニング部材12は、基板搬送機構11とは異なる搬送機構(例えば、クリーニング部材12を搬送するための専用の搬送機構、または、前述のモールド搬送機構10)によって搬送されてもよい。クリーニング部材12の形状は、基板2と同様の形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。あるいは、クリーニング部材12の形状は、円形であってもよいし、矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0025】
クリーニング部材12は、例えば、セラミックスによって形成されうる。クリーニング部材12は、粘着テープのような粘着性をもった部材を含んでもよい。粘着性をもった部材を含むクリーニング部材12を使う場合は、モールド保持部3および/または基板保持部4を上下動させて、モールド保持部3とクリーニング部材12(または基板保持部4)とを接触させてもよい。このような動作によっても、モールド保持部3(または基板保持部4)のクリーニングを行うことができる。
【0026】
環境制御部7は、モールド保持部3のモールド保持面のクリーニングによって該モールド保持面から除去された異物を吸引するように、あるいは、不図示の回収部に向けて吹き飛ばすように構成されてもよい。
【0027】
インプリント装置100は、モールド保持面MSまたは基板保持面SSのクリーニングの進行の度合いを検出する検出部を更に備えうる。検出部は、クリーニング時に基板保持部4またはモールド保持部3に水平方向(XY平面に沿った方向)に加わる力を検出するように構成されうる。検出部は、例えば歪ゲージを含み、クリーニング時にクリーニング対象(モールド保持部3または基板保持部4)に対するクリーニング部材12の相対運動で基板駆動機構6またはモールド駆動機構5が受ける力を検出する。この力の変化に基づいてクリーングの進行の度合い、例えば、クリーニングの終了を検出することができる。
【0028】
制御部20は、モールド保持面MSのクリーニングの際に、クリーニングの進行の度合いが所定基準よりも遅い場合に、クリーニング部材12とモールド保持面MSとの接触圧力を増加させる。あるいは、制御部20は、基板保持面SSのクリーニングの際に、クリーニングの進行の度合いが所定基準よりも遅い場合に、クリーニング部材12と基板保持面SSとの接触圧力を増加させる。クリーニング部材12とモールド保持面MSとの接触圧力の調整およびクリーニング部材12と基板保持面SSとの接触圧力の調整は、モールド駆動機構5および/または基板駆動機構6によってなされうる。
【0029】
あるいは、制御部20は、モールド保持面MSのクリーニングの際に、クリーニングの進行の度合いが所定基準よりも遅い場合に、使用していたクリーニング部材12を他のクリーニング部材12の交換する処理を実行してもよい。あるいは、制御部20は、モールド保持面MSのクリーニングの際に、クリーニングの進行の度合いが所定基準よりも遅い場合に、基板保持部4および/またはモールド保持部3の駆動パターンを変更してもよい。更に、制御部20は、一定時間のクリーニングの前後における力の変化の大小に基づいてクリーニング部材12の寿命(摩耗)を判定してもよい。
【0030】
以下、図5を参照しながらクリーニングの進行の度合いを検出するための他の構成例を説明する。ここでは、基板保持部4の位置を制御する制御系内の情報に基づいてクリーニングの進行の度合いを検出する例を説明するが、モールド保持部3の位置を制御する制御系内の情報に基づいてクリーニングの進行の度合いを検出することもできる。基板保持部4の位置を制御する制御系は、基板駆動機構6と、基板駆動機構6を制御する基板位置制御部50とを含む。基板位置制御部50は、偏差演算器51、補償器52およびドライバ53を含む。基板駆動機構6は、リニアモータ等のアクチュエータを含み、該アクチュエータは、ドライバ53から供給される電流を機械的な力に変換し、基板保持部4を駆動する。偏差演算器51は、制御部20から提供される目標位置指令値と不図示の計測器から提供される基板保持部4の位置である計測位置との差、即ち制御偏差を演算する。補償器52は、制御偏差に基づいて電流指令値CIを決定する。ドライバ53は、電流指令値CIにしたがって基板駆動機構6に電流を供給する。
【0031】
図6(a)に例示的に示すように、クリーニング対象(モールド保持部3または基板保持部4)とクリーニング部材12との間の摩擦力が大きいと、それを相殺するためにドライバ53に対して提供される電流指令値CIが大きくなる。また、クリーニング対象(モールド保持部3または基板保持部4)とクリーニング部材12との間の摩擦力は、クリーニング対象に対する異物の付着の程度に依存する。つまり、当該摩擦力は、クリーニング対象に対する異物の付着が多量または強固であれば大きくなる。そこで、検出部55は、電流指令値CIに基づいてクリーニングの進行の度合いを検出することができる。ここで、ドライバ53に対して提供される電流指令値CIと、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させるために必要な力とは、次元が異なるが、等価な物理量(換算可能な物理量)である。よって、電流指令値CIに基づいてクリーニングの進行の度合いを検出する動作は、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させるために必要な力に基づいてクリーニングの進行の度合いを検出する動作の一例である。ここで、電流指令値CIが大きいことは、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させるために必要な力が大きいことを意味するとともに、クリーニングの進行の度合いが低い(進行が遅い)ことを意味する。逆に、電流指令値CIが小さいことは、モールド保持部3に対して基板保持部4を相対的に移動させるために必要な力が小さいことを意味するとともに、クリーニングの進行の度合いが高い(進行が速い)ことを意味する。即ち、クリーニングの進行の度合いは、電流指令値CTによって評価することができる。
【0032】
図6(b)には、電流指令値CIとクリーニングの経過時間との関係を例示されている。制御部20は、検出部55による検出結果、即ちクリーニングの進行の度合いが所定基準CTよりも遅い場合に、クリーニング部材12とクリーニング対象(モールド保持部3または基板保持部4)との接触圧力を増加させるように構成されうる。
【0033】
以下、本発明のインプリント装置の応用例として物品の製造方法を説明する。ここでは、物品の製造方法の一例としてデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法を説明する。デバイスの製造方法は、前述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板等)にパターンを転写(形成)するステップを含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された前記基板をエッチングするステップを含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングステップの代わりに、パターンを転写された前記基板を加工する他の加工ステップを含みうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
モールド保持面で前記モールドを保持するモールド保持部と、
前記モールド保持部に対して前記基板保持部を相対的に移動させる駆動機構と、
前記基板保持部により前記基板の代わりにクリーニング部材が保持されて前記クリーニング部材と前記モールド保持面とが接触した状態で前記モールド保持部に対して前記基板保持部が相対的に移動するように前記駆動機構を制御し、これにより前記モールド保持面をクリーニングする制御部と、
を備えることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記モールド保持面のクリーニングの進行の度合いを検出する検出部を更に備え、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて前記モールド保持面のクリーニングを終了させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記モールド保持部に対して前記基板保持部を相対的に移動させるために必要な力に基づいて前記クリーニングの進行の度合いを検出する、
ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記クリーニングの進行の度合いが所定基準よりも遅い場合に、前記クリーニング部材と前記モールド保持部との接触圧力を増加させる、
ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項5】
基板に塗布された樹脂とモールドのパターン面とを接触させて該樹脂を硬化させるインプリント装置であって、
基板保持面で前記基板を保持する基板保持部と、
前記モールドを保持するモールド保持部と、
前記モールド保持部に対して前記基板保持部を相対的に移動させる駆動機構と、
前記モールド保持部により前記モールドの代わりにクリーニング部材が保持されて前記クリーニング部材と前記基板保持面とが接触した状態で前記モールド保持部に対して前記基板保持部が相対的に移動するように前記駆動機構を制御し、これにより前記基板保持面をクリーニングする制御部と、
を備えることを特徴とするインプリント装置。
【請求項6】
前記基板保持面のクリーニングの進行の度合いを検出する検出部を更に備え、
前記制御部は、前記検出部による検出結果に基づいて前記基板保持面のクリーニングを終了させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記モールド保持部に対して前記基板保持部を相対的に移動させるために必要な力に基づいて前記クリーニングの進行の度合いを検出する、
ことを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記クリーニングの進行の度合いが所定基準よりも遅い場合に、前記クリーニング部材と前記基板保持部との接触圧力を増加させる、
ことを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記基板保持面に対してクリーニング液を供給する供給機構を更に備えることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板に樹脂のパターンを形成する工程と、
前記工程でパターンが形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−186390(P2012−186390A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49604(P2011−49604)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】