説明

インホイールモータ駆動車輪の転舵装置

【課題】インホイールモータ駆動車輪の大転舵角を容易にする。
【解決手段】インホイールモータユニット2により駆動される車輪1の懸架は、アッパーアーム6と、ロアアーム7と、サードリンク8と、ショックアブソーバ9とによりユニット2のケース4を介して行う。アーム6,7の車幅方向内側基端6a,7aを車体に上下方向揺動可能に支持する。アーム6の遊端6bは、リンク8の上端に上下方向揺動可能に枢支し、リンク8の下端は、ショックアブソーバ9のピストンロッド9aに揺動可能に枢支する。ケース4の上側固定座11をリンク8に対し又、ケース4の下側固定座12をロアアーム7の遊端7bに対しキングピン軸線Kpの周りに揺動し得るよう取り付ける。車輪1および駆動ユニット2をキングピン軸線Kp周りに転舵させるための転舵機構21を、キングピン軸線Kp上であって車輪1よりも上方箇所に配置し、サードリンク8に取着して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を個々の電動モータにより駆動して走行可能な電気自動車に用いられる車輪ごとの駆動ユニット(インホイールモータ駆動ユニットと俗称される)を内蔵したインホイールモータ駆動車輪の転舵装置に関するもので、特に、この種の電気自動車において特長的なインホイールモータ駆動車輪のキングピン軸線周りにおける大転舵を容易にする改良提案に関わる。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータ駆動車輪をキングピン軸線周りに転舵させるための転舵機構としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが一般的に知られている。
この特許文献1で提案されているインホイールモータ駆動車輪の転舵装置は、車輪のナックルアームにタイロッドを連結し、これらタイロッドおよびナックルアームを介しステアリングホイールからの操舵力を車輪のキングピン軸線周りにおける転舵力に変換して、インホイールモータ駆動車輪の転舵を行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−062388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかるインホイールモータ駆動車輪の転舵装置にあっては、車輪の車幅方向内側にタイロッドが存在すると共に、下側のサスペンションアームであるロアアームが存在し、車輪が大きな転舵時にこれらタイロッドおよびロアアームと干渉する。
【0005】
従って、インホイールモータ駆動車輪の最大転舵角を設定するに際しては、当該タイロッドおよびロアアームの移動範囲を避けて設定せざるを得ず、車輪の最大転舵角がタイロッドおよびロアアームの存在による制約を受ける。
【0006】
このため、インホイールモータ駆動式の電気自動車において特長的な、インホイールモータ駆動車輪の例えば90度転舵による横走り走行などのための大転舵が困難であり、インホイールモータ駆動式電気自動車の特長の1つがスポイルされるという問題を生ずる。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、インホイールモータ駆動車輪の車幅方向内側に、車輪転舵系を成すタイロッドやロアアームのような他部品が存在することのないインホイールモータ駆動車輪の転舵装置を提供し、これにより当該車輪の90度転舵による横走り走行などのための大転舵を容易に可能ならしめるようにして上記の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明によるインホイールモータ駆動車輪の転舵装置は、これを以下のごとくに構成する。
先ず本発明の前提となるインホイールモータ駆動車輪の転舵装置を説明するに、これは、
専用の電動モータにより駆動されるインホイールモータ駆動車輪をキングピン軸線の周りに転舵するものである。
【0009】
本発明は、かかるインホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
操舵力を上記キングピン軸線周りの転舵トルクに変換してインホイールモータ駆動車輪に付与する転舵機構を、該キングピン軸線上であって、上記インホイールモータ駆動車輪よりも上方の箇所に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
かかる本発明によるインホイールモータ駆動車輪の転舵装置にあっては、転舵機構を、キングピン軸線上であって、インホイールモータ駆動車輪よりも上方の箇所に配置したため、
車輪転舵系を成す他部品が、インホイールモータ駆動車輪の車幅方向内側に存在させる必要がなくなり、当該車輪の90度転舵による横走り走行などのための大転舵を容易に可能ならしめ、インホイールモータ駆動式電気自動車の特長の1つである車輪大転舵による利点を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例になる転舵装置を具えたインホイールモータ駆動車輪を、そのサスペンション装置および転舵システムと共に、車両後方から見て示す正面図である。
【図2】図1における転舵装置を具えたインホイールモータ駆動車輪を車両上方から見て示す平面図である。
【図3】図1における転舵装置を車両上方から見て示す拡大平面図である。
【図4】図3のA−A線上で断面とし、矢の方向に見て示す転舵装置の拡大縦断側面図である。
【図5】本発明の第2実施例になる転舵装置を、車両上方から見て示す平面図である。
【図6】図1〜4に示した第1実施例の転舵装置によるインホイールモータ駆動車輪の旋回軌跡を示す説明図である。
【図7】図5に示した第2実施例の転舵装置によるインホイールモータ駆動車輪の旋回軌跡を示す説明図である。
【図8】本発明の第3実施例になる転舵装置を、車両上方から見て示す平面図である。
【図9】本発明の第4実施例になる転舵装置のインホイールモータ駆動ユニットおよび上下固定座を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
【図10】本発明の第5実施例になる転舵装置のインホイールモータ駆動ユニットおよび上下固定座を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
【図11】本発明の第6実施例になる転舵装置のインホイールモータ駆動ユニットおよび上下固定座を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
【図12】本発明の第7実施例になる転舵装置のインホイールモータ駆動ユニットおよび上下固定座を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1,2は、本発明の第1実施例になる転舵装置を具えたインホイールモータ駆動車輪1を、そのサスペンション装置および転舵システムと共に示し、図1は、インホイールモータ駆動車輪1を車両後方から見て示す正面図、図2は、インホイールモータ駆動車輪1を車両上方から見て示す平面図である。
【0013】
車輪1は、個々のインホイールモータ駆動ユニット2を一体化して具え、このユニット2により個別に駆動される。
そのためインホイールモータ駆動ユニット2はユニットケース3内に、図1,2では図示していないが電動モータおよび減速機(変速機)を内蔵し、減速機の入力軸に電動モータを結合し、減速機の出力軸にホイールハブ4を結合する。
【0014】
ホイールハブ4には車輪1を結合すると共にブレーキディスク5を結合し、これにより電動モータからの動力を減速機による減速下で車輪1へ伝達することで車両を走行可能にし、ブレーキディスク5を、インホイールモータ駆動ユニット2に取着したブレーキキャリパ13(図2参照)により軸線方向両側から挟圧することで車両を制動可能にする。
【0015】
車輪1を車体に懸架するに当たっては、インホイールモータ駆動ユニット2のケース4を介して、以下のサスペンション装置により車輪1を懸架する。
サスペンション装置は図1に明示するごとく、ユニットケース4の上方において車幅方向へ延在する上側サスペンションアームであるアッパーアーム6と、ユニットケース4の下方において車幅方向へ延在する下側サスペンションアームであるロアアーム7と、サードリンク8と、ショックアブソーバ9(サスペンションスプリングを含む)とで概ね構成する。
【0016】
アッパーアーム6およびロアアーム7はそれぞれ、図1の左側(車幅方向内側)の基端6a,7aにおいて、車体に対し上下方向揺動可能に支持する。
アッパーアーム6の反対側(車幅方向外側)における遊端6bは、サードリンク8の上端に上下方向揺動可能に枢支し、サードリンク8の下端は、ショックアブソーバ9のピストンロッド9aに揺動可能に枢支する。
なおショックアブソーバ9は、インシュレータ10を介してシリンダ9bを車体に取り付ける。
【0017】
そして、インホイールモータ駆動ユニットケース4には、その上側面から上方へ延在する上側固定座11を突設すると共に、下側面から下方へ延在する下側固定座12を突設する。
上側固定座11の上端を、サードリンク8の上端近傍において、車輪1の転舵軸線であるキングピン軸線Kpの周りに揺動し得るよう取り付け、下側固定座12の下端を、ロアアーム7の車幅方向外側における遊端7bにおいて、上記キングピン軸線Kpの周りに揺動し得るよう取り付ける。
【0018】
上記のサスペンション装置により車体に懸架された車輪1は、インホイールモータ駆動ユニット2と共に、上下方向へバウンド、リバウンド可能であると共に、この間ショックアブソーバ9により上下振動を減衰され得る。
そして車輪1およびインホイールモータ駆動ユニット2は、キングピン軸線Kpの周りに転舵可能であり、車両の操向を行うことができる。
【0019】
<転舵装置>
車輪1およびインホイールモータ駆動ユニット2をキングピン軸線(Kp)周りに転舵させるための転舵機構21を、図1,2に示すごとくサードリンク8に取着して設けるが、キングピン軸線Kp上に配置して、インホイールモータ駆動車輪1よりも上方の箇所に配設する。
この転舵機構21は図3,4に明示するような構成とし、図3は、転舵機構21を上方から見て示す平面図、図4は、図3のA−A線上で断面とし、矢の方向見て示す詳細断面図である。
【0020】
これら図3,4に基づき転舵機構21を詳述するに、22は筐体を示し、この筐体22内に円環状のフェースギヤ23およびこれに噛合するピニオンギヤ24を収納して設ける。
フェースギヤ23は、上側固定座11の上端から図4のごとくにキングピン軸線Kpを提供するよう突設した転舵軸25にキー26で(またはスプラインで)軸線方向変位可能に係着し、この転舵軸25と共にキングピン軸線Kpの周りに回転自在となす。
【0021】
ピニオンギヤ24は、キングピン軸線Kpを横切るよう筐体22内に回転自在に横架した入力軸27上に一体回転可能に固着し、その固着位置は、ピニオンギヤ24がフェースギヤ23に噛合する位置とする。
入力軸27は図示しなかったが、運転者が車両の操向に当たって操作するステアリングホイールに機械的に連結する。
かくしてステアリングホイールからの操舵力は、入力軸27からピニオンギヤ24および円環状フェースギヤ23を経て転舵軸25に達し、上側固定座11を介してインホイールモータ駆動ユニット2および車輪1をキングピン軸線Kpの周りに転舵することができる。
【0022】
転舵軸25にキー26で軸線方向変位可能に係着したフェースギヤ23は、転舵軸25に巻装したコイルバネ28によりピニオンギヤ24に向け附勢し、これによりこれらフェースギヤ23およびピニオンギヤ24間の噛合部におけるバックラッシュを減ずる。
従ってコイルバネ28は、本発明における弾性手段を構成する。
【0023】
<第1実施例の効果>
上記した転舵機構21を具える本実施例の転舵装置によれば、転舵機構21を、キングピン軸線Kp上であって、インホイールモータ駆動車輪1よりも上方の箇所に配置したため、
転舵機構21の入力軸27とステアリングホイールとの間における部品を含む、車輪転舵系の他部品を、インホイールモータ駆動車輪1の車幅方向内側に存在させる必要がなくなり、当該車輪の90度転舵による横走り走行などのための大転舵を容易に可能ならしめる。
よって、インホイールモータ駆動式電気自動車の特長の1つである車輪大転舵の利点が損なわれることがないようにし得る。
【0024】
なお従来の一般的な考え方によれば、転舵機構で車輪を転舵する場合は当該転舵機構を車体に取着し、転舵機構の出力メンバを車輪のナックルに連結するのが普通であり、そのため車両の走りを満足させながら転舵ジオメトリを要求通りのものにするのが困難であった。
而して本実施例では、転舵機構21を車輪1よりも上方位置でキングピン軸線Kp上に配置し、サスペンションメンバの1つであるサードリンク8上に取着するため、車両の走りを満足させながら転舵ジオメトリを要求通りのものにするのが容易である。
【0025】
また、フェースギヤ23をコイルバネ28によりピニオンギヤ24に向け附勢して両者間のバックラッシュを減らす工夫をしたため、転舵機構21が異音を生じたり、噛み合い不良を生ずるなどの問題を回避することができる。
【0026】
<第2実施例の構成>
図5は、本発明の第2実施例に成る転舵装置の転舵機構21を車両上方から見て示す平面図で、
本実施例においては転舵機構21のフェースギヤ23を、図3,4に示すような等速フェースギヤではなく、不等速フェースギヤで構成したものである。
【0027】
それ以外は、サスペンション装置を含めて図1〜4につき前述したと同様な構成とし、ステアリングホイールからの操舵力が、左右転舵機構連結軸29および等速自在継手30を経て転舵機構21の入力軸27に伝達されることで、第1実施例と同様に機能して、同様な効果を奏し得る。
【0028】
<第2実施例の効果>
図5に示した本実施例による転舵装置のそれ以外の効果を、図6,7に基づき以下に説明する。
【0029】
転舵機構21のフェースギヤ23を図3,4に示すような等速フェースギヤで構成した場合、インホイールモータ駆動車輪1の転舵時に図6に示すごとく旋回方向内外輪とも同じ舵角α=βだけ転舵されることになるため、旋回方向内外輪の旋回中心がOi,Ooのように異なる。
このため特に大転舵時に、インホイールモータ駆動輪1が路面との間で大きくスリップして、摩擦によるタイヤ摩耗や異音を発生する。
【0030】
しかし本実施例においては、転舵機構21のフェースギヤ23を図5に示すような不等速フェースギヤで構成するため、当該不等速フェースギヤの適切な設計によって、インホイールモータ駆動車輪1の転舵時に図7に示すごとく旋回方向内外輪の旋回中心が同じOとなるよう、旋回方向内外輪の舵角α,βを異ならせることができる。
このため本実施例においては、大転舵時においてもインホイールモータ駆動輪1が路面との間でスリップすることがなく、摩擦によるタイヤ摩耗や異音の発生を防止することができる。
【0031】
なお、インホイールモータ駆動車輪1の転舵時に図7に示すごとく旋回方向内外輪の旋回中心が同じOとなるようにするための旋回方向内外輪の舵角α,βは、前後輪軸間距離(ホイールベース)をLとし、左右輪間隔(トレッド)をWとすると、次式を満足するような舵角である。
W/L=cotβ−cotα
従って本実施例においては、ホイールベースLおよびトレッドWから上式の演算により求めた旋回方向内外輪の舵角α,βが得られるよう、左右インホイールモータ駆動車輪1に係わる転舵機構21の不等速フェースギヤ23を設計することは言うまでもない。
【0032】
<第3実施例の構成>
図8は、本発明の第3実施例に成る転舵装置の転舵機構21を車両上方から見て示す、図5と同様な平面図で、
本実施例においては、転舵機構21のフェースギヤ23を図5につき上述した第2実施例と同様な不等速フェースギヤで構成するほか、ピニオンギヤ24の中心軸線、従って転舵機構21の入力軸27を不等速フェースギヤ23の回転軸線であるキングピン軸線Kpに対し、ショックアブソーバ9から遠ざかる方向へオフセットさせたものである。
【0033】
それ以外は、サスペンション装置を含めて図1〜4につき前述したと同様な構成とし、ステアリングホイールからの操舵力が、左右転舵機構連結軸29および等速自在継手30を経て転舵機構21の入力軸27に伝達されることで、第1,2実施例と同様に機能して、これら実施例におけると同様な効果を奏し得る。
【0034】
<第3実施例の効果>
図8に示した本実施例による転舵装置にあっては、第1,2実施例による効果以外に以下の効果をも奏することができる。
つまり、転舵機構21の入力軸27(ピニオンギヤ24の中心軸線)を不等速フェースギヤ23の回転軸線(キングピン軸線Kp)からオフセットさせたため、転舵機構21の入力軸27は勿論のこと、これに等速自在継手30を介して駆動結合した左右転舵機構連結軸29がショックアブソーバ9から遠ざかって、これらのレイアウトに関する設計の自由度を高めることができる。
【0035】
<第4実施例の構成>
図9は、本発明の第4実施例に成る転舵装置におけるインホイールモータ駆動ユニット2を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
本実施例においてもインホイールモータ駆動ユニット2は、ユニットケース3内に、図1,2では図示を省略した電動モータ2aおよび減速機(変速機)2bを同軸に内蔵し、減速機2bの入力軸に電動モータ2aを結合し、減速機2bの出力軸にホイールハブ4を結合したものとする。
【0036】
また、インホイールモータ駆動ユニット2の上部における上側固定座11および下部における下側固定座12をそれぞれアッパーアーム6(図1,2参照)およびロアアーム7(図1,2参照)に取り付けて、インホイールモータ駆動ユニット2を車輪1と共にキングピン軸線Kpの周りに転舵可能にすることも第1実施例と同様である。
【0037】
ところで本実施例においては、インホイールモータ駆動ユニット2のケース3を減速機2bの箇所で軸線方向に分割し、当該分割したケース部分3a,3bのうち、車輪1に近い方のケース部分3bに上側固定座11および下側固定座12をそれぞれ一体的に設ける。
【0038】
<第4実施例の効果>
図9に示した本実施例による転舵装置にあっては、第1,2,3実施例による効果以外に以下の効果をも奏することができる。
つまり、インホイールモータ駆動ユニットケース3の上記分割したケース部分3a,3bのうち、車輪側ケース部分3bに上側固定座11および下側固定座12をそれぞれ一体的に設けたため、
減速機6b、上側固定座11および下側固定座12のような重い部材をホイールハブ4の近くに位置させることになり、ハブベアリングの耐圧性を向上させることができる。
【0039】
<第5実施例の構成>
図10は、本発明の第5実施例に成る転舵装置におけるインホイールモータ駆動ユニット2を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
本実施例においては、インホイールモータ駆動ユニット2のケース3内に、電動モータ2aおよび減速機(変速機)2bを内蔵するが、ホイールハブ4を結合する減速機(変速機)2bの出力軸を電動モータ2aからオフセットさせる。
【0040】
なお、インホイールモータ駆動ユニット2の上部における上側固定座11および下部における下側固定座12をそれぞれアッパーアーム6(図1,2参照)およびロアアーム7(図1,2参照)に取り付けて、インホイールモータ駆動ユニット2を車輪1と共にキングピン軸線Kpの周りに転舵可能にすることは第1実施例と同様である。
【0041】
ところで本実施例においては、インホイールモータ駆動ユニット2のケース3を減速機2bの箇所で軸線方向に分割し、当該分割したケース部分3a,3bのうち、車輪1から遠い方のケース部分3aに上側固定座11を一体的に設け、車輪1に近い方のケース部分3bに下側固定座12を一体的に設ける。
【0042】
<第5実施例の効果>
図10に示した本実施例による転舵装置にあっては、第1,2,3実施例による効果以外に以下の効果をも奏することができる。
つまり、インホイールモータ駆動ユニットケース3の上記分割したケース部分3a,3bのうち、車体側ケース部分3aに上側固定座11を一体的に、また車輪側ケース部分3bに下側固定座12を一体的に設けたため、
減速機(変速機)2bの出力軸を電動モータ2aからオフセットさせる場合において、両者間のオフセット量を大きくとることができ、車輪1の上下移動量が大きくなってもロアアーム7(図1,2参照)の干渉を防止することができる。
【0043】
<第6実施例の構成>
図11は、本発明の第6実施例に成る転舵装置におけるインホイールモータ駆動ユニット2を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
本実施例においては第1実施例と同様、インホイールモータ駆動ユニット2のケース3内に、電動モータ2aおよび減速機(変速機)2bを同軸に内蔵し、インホイールモータ駆動ユニット2の上部における上側固定座11および下部における下側固定座12をそれぞれアッパーアーム6(図1,2参照)およびロアアーム7(図1,2参照)に取り付けて、インホイールモータ駆動ユニット2を車輪1と共にキングピン軸線Kpの周りに転舵可能にする。
【0044】
ところで本実施例においては、上側固定座11および下側固定座12を一体的に構成し、これら一体化した上側固定座11および下側固定座12に対しインホイールモータ駆動ユニット2のケース3を取り付ける。
【0045】
<第6実施例の効果>
図11に示した本実施例による転舵装置にあっては、第1,2,3実施例による効果以外に以下の効果をも奏することができる。
つまり、上側固定座11および下側固定座12を一体的に構成して、両者の一体化ユニットに対しインホイールモータ駆動ユニットケース3を取り付けるため、
上側固定座11および下側固定座12で構成される車輪転舵用のナックルメンバと、インホイールモータ駆動ユニット2とが別部品として構成されることとなり、これらを他の車両にも共用することが容易となってコスト上有利である。
【0046】
<第7実施例の構成>
図12は、本発明の第7実施例に成る転舵装置におけるインホイールモータ駆動ユニット2を、図1と同じ方向から見て示す正面図である。
本実施例においては、インホイールモータ駆動ユニット2のケース3内に、電動モータ2aおよび減速機(変速機)2bを内蔵するが、ホイールハブ4を結合する減速機(変速機)2bの出力軸を電動モータ2aからオフセットさせる。
【0047】
なお、インホイールモータ駆動ユニット2の上部における上側固定座11および下部における下側固定座12をそれぞれアッパーアーム6(図1,2参照)およびロアアーム7(図1,2参照)に取り付けて、インホイールモータ駆動ユニット2を車輪1と共にキングピン軸線Kpの周りに転舵可能にすることは第1実施例と同様である。
【0048】
ところで本実施例においては、上側固定座11および下側固定座12を一体的に構成し、これら一体化した上側固定座11および下側固定座12に対しインホイールモータ駆動ユニット2のケース3を取り付ける。
【0049】
<第7実施例の効果>
図12に示した本実施例による転舵装置にあっては、第1,2,3実施例による効果以外に以下の効果をも奏することができる。
つまり、上側固定座11および下側固定座12を一体的に構成して、両者の一体化ユニットに対しインホイールモータ駆動ユニットケース3を取り付けるため、
上側固定座11および下側固定座12で構成される車輪転舵用のナックルメンバと、インホイールモータ駆動ユニット2とが別部品として構成されることとなり、これらを他の車両にも共用することが容易となってコスト上有利である。
【符号の説明】
【0050】
1 インホイールモータ駆動車輪
2 インホイールモータ駆動ユニット
2a 電動モータ
2b 減速機(変速機)
3 ユニットケース
3a,3b ケース部分
4 ホイールハブ
5 ブレーキディスク
6 アッパーアーム(上側サスペンションアーム)
7 ロアアーム(下側サスペンションアーム)
8 サードリンク
9 ショックアブソーバ
10 インシュレータ
11 上側固定座
12 下側固定座
13 ブレーキキャリパ
Kp キングピン軸線
21 転舵機構
22 筐体
23 フェースギヤ
24 ピニオンギヤ
25 転舵軸
26 キー
27 入力軸
28 コイルバネ(弾性手段)
29 左右転舵機構連結軸
30 等速自在継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
専用の電動モータにより駆動されるインホイールモータ駆動車輪をキングピン軸線の周りに転舵するための装置において、
操舵力を前記キングピン軸線周りの転舵トルクに変換して前記インホイールモータ駆動車輪に付与する転舵機構を、該キングピン軸線上であって、前記インホイールモータ駆動車輪よりも上方の箇所に配置したことを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載された、インホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
前記転舵機構は、前記操舵力を入力されるピニオンギヤと、該ピニオンギヤに噛合して操舵力を前記キングピン軸線周りの転舵トルクに変換する不等速フェースギヤとから成るものであることを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。
【請求項3】
請求項2に記載された、インホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
前記転舵機構は、前記不等速フェースギヤを前記ピニオンギヤに向け附勢してバックラッシュを減ずる弾性手段を具えたものであることを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された、インホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
前記転舵機構は、前記ピニオンギヤの中心軸線を前記不等速フェースギヤの回転軸線に対しオフセットさせたものであることを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。
【請求項5】
前記車輪を駆動するインホイールモータ駆動ユニットが、前記電動モータからの回転を変速して前記車輪の駆動に供する変速機をも内包するものであり、該インホイールモータ駆動ユニットの上部における上側固定座および下部における下側固定座をそれぞれ上下のサスペンションアームに取り付けて前記車輪をキングピン軸線の周りに転舵可能となした、請求項1〜4のいずれか1項に記載された、インホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
前記インホイールモータ駆動ユニットのケースを前記変速機の箇所で軸線方向に分割し、該分割したケース部分のうち、前記車輪に近い方のケース部分に前記上側固定座および下側固定座をそれぞれ一体的に設けたことを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。
【請求項6】
前記車輪を駆動するインホイールモータ駆動ユニットが、前記電動モータからの回転を変速して前記車輪の駆動に供する変速機をも内包し、これら電動モータおよび変速機の中心軸線を相互にオフセットさせたものであり、該インホイールモータ駆動ユニットの上部における上側固定座および下部における下側固定座をそれぞれ上下のサスペンションアームに取り付けて前記車輪をキングピン軸線の周りに転舵可能となした、請求項1〜4のいずれか1項に記載された、インホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
前記インホイールモータ駆動ユニットのケースを前記変速機の箇所で軸線方向に分割し、該分割したケース部分のうち、前記車輪に近い方のケース部分に前記下側固定座を、また前記車輪から遠い方のケース部分に前記上側固定座をそれぞれ一体的に設けたことを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。
【請求項7】
前記車輪を駆動するインホイールモータ駆動ユニットが、該インホイールモータ駆動ユニットの上部における上側固定座および下部における下側固定座をそれぞれ上下のサスペンションアームに取り付けて前記車輪をキングピン軸線の周りに転舵可能となした、請求項1〜4のいずれか1項に記載された、インホイールモータ駆動車輪の転舵装置において、
前記上側固定座および下側固定座を一体的に構成し、これら一体化した上側固定座および下側固定座に対し前記インホイールモータ駆動ユニットのケースを取り付けたことを特徴とするインホイールモータ駆動車輪の転舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−103665(P2013−103665A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250213(P2011−250213)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】