説明

ウォームギアユニットおよび画像形成装置

【課題】 ギア面におけるグリスの偏在を抑制する工夫がなされたウォームギアユニット、および、このようなウォームギアユニットを具備する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 所定方向へ回転する回転軸と、回転軸に固定され、回転軸の延在方向へ向かって螺旋状につながったギア溝を有するウォームと、ギア溝に噛合するギア歯を有するウォームホイールとを備え、ウォームは、回転軸が所定方向へ回転することでギア溝に沿って延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、ギア溝の延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰止める堰止部材を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーム、ウォームが固定されたウォーム軸、および、ウォームに噛合するウォームホイールを備えたウォームギアユニット、および、該ウォームギアユニットを具備する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一本のウォーム軸上にウォームを複数取り付け、これらウォームに、感光体ロールやレジストロールあるいは中間転写ベルトの駆動ロールなどの被回転駆動体の軸が連結されたウォームホイールを噛合させて駆動源のモータや軸本数の低減を狙ったウォームギアユニットが知られている。
【0003】
図1は、ウォームギアユニットの概略構成図である。
【0004】
図1(a)に示すウォームギアユニット100は、ウォーム軸101と、ウォーム軸101に取り付けられた4つのウォーム103と、これら4つのウォーム103と噛合するウォームホイール102とで構成されている。4つのウォームホイール102は、軸(不図示)を介してC、M、Y、K各色の感光体ロール上に形成された静電潜像を現像する現像ロールにそれぞれ連結されている。尚、ウォーム101は、いわゆるねじれ方向が右のものであり、ウォーム軸101が矢印Aの向きに回転すると、ウォームホイール102は、矢印Bの向きに回転する。
【0005】
図2は、図1に示すウォームギアユニットの一部分の拡大図である。
【0006】
図2(a)には、ウォームホイール102の軸方向からウォーム103とウォームホイール102とを見た場合の拡大図が示されており、図2(b)には、ウォーム103とウォームホイール102との噛合部分の外観斜視拡大図が示されている。
【0007】
ところで、図1および図2に示すようなウォームギアユニットでは、これらウォームおよびウォームホイールのギア面にグリスが供給され、これにより、これらの間では円滑な噛合が実現されている。
【0008】
ところが、このようなウォームギアユニットに供給されたグリスは、ウォーム103が回転することでウォーム103のギア溝を伝って、次第に図2(a)示すウォーム103の左端側や、また、ウォームホイール102が回転することでウォームホイール102のギア溝を伝って、次第に図2(b)示すウォームホイール102の右端側に追いやられることとなり、グリスがギア面から流れ出てしまうという問題がある。
【0009】
そこで、ギア面のギア歯の先端部分に、グリスを溜める溝を設ける提案がなされている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−226526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献1に記載されている提案では、加工に手間がかかるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑み、ギア面におけるグリスの確保が簡易に実現されたウォームギアユニット、および、このようなウォームギアユニットを具備する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明のウォームギアユニットのうちの第1のウォームギアユニットは、
所定方向へ回転する回転軸と、
上記回転軸に固定され、この回転軸の延在方向へ向かって螺旋状につながったギア溝を有するウォームと、
上記ギア溝に噛合するギア歯を有するウォームホイールとを備え、
上記ウォームは、上記回転軸が所定方向へ回転することで上記ギア溝に沿って上記延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、上記ギア溝の上記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の第1のウォームギアユニットは、回転軸が所定方向へ回転することでウォームのギア溝に沿って移動するグリスが向かう回転軸の延在方向一方側に、グリスを堰き止める堰き止め部材を有している。これにより、本発明の第1のウォームギアユニットでは、この堰き止め部材で移動してくるグリスを堰き止めることで、この堰き止め部材で堰き止められたグリスをウォームホイールに接触させている。したがって、本発明の第1のウォームギアユニットによれば、回転軸の延在方向一方側に追いやられたグリスはウォームホイールに確実に接触することによってウォームホイールに送られる。これにより、ギア面においてグリスを循環させることができる。
【0014】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置のうちの第1の画像形成装置は、
回転機構を備え、この回転機構を作用させて、像担持体上に形成された静電潜像を現像剤担持体上に担持した現像剤で現像して現像像を形成しこの現像像を最終的に記録媒体に転写および定着することでこの記録媒体上に画像形成を行う画像形成装置において、
上記回転機構が、
所定方向へ回転する回転軸と、上記回転軸に固定され、この回転軸の延在方向へ向かって螺旋状につながったギア溝を有するウォームと、上記ギア溝に噛合するギア歯を有するウォームホイールとを備え、上記ウォームが、上記回転軸が所定方向へ回転することで上記ギア溝に沿って上記延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、上記ギア溝の上記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであるウォームギアユニットを具備するものであることを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するための本発明のウォームギアユニットのうちの第2のウォームギアユニットは、
螺旋状につながったギア歯を有するウォームと、
所定方向へ回転自在な回転軸と、
上記回転軸に固定されたものであって、上記ギア歯に噛合する、この回転軸の一端側からこの一端に対する他端側へ向かって延びたギア溝を有するウォームホイールとを備え、
上記ウォームホイールは、上記回転軸が所定方向へ回転することで上記ギア溝に沿って上記回転軸の延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、上記ギア溝の上記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2のウォームギアユニットは、回転軸が所定方向へ回転することでウォームホイールのギア溝に沿って移動するグリスが向かう回転軸の延在方向一方側に、グリスを堰き止める堰き止め部材を有している。これにより、本発明の第2のウォームギアユニットでは、この堰き止め部材でグリスを堰き止めることで、この堰き止め部材にグリス溜まりを意図的に作りウォームに接触させている。したがって、本発明の第2のウォームギアユニットによれば、回転軸の延在方向一方側に追いやられたグリスをウォームに接触させることによって回転軸の延在方向一方側の反対側の他端に送ることができ、これにより、ギア面においてグリスを循環させることができる。
【0017】
上記目的を達成するための本発明の画像形成装置のうちの第2の画像形成装置は、
回転機構を備え、この回転機構を作用させて像担持体上に形成された静電潜像を現像剤担持体上に担持した現像剤で現像して現像像を形成しこの現像像を最終的に記録媒体に転写および定着することでこの記録媒体上に画像形成を行う画像形成装置において、
上記回転機構が、
螺旋状につながったギア歯を有するウォームと、所定方向へ回転自在な回転軸と、上記回転軸に固定されたものであって、上記ギア歯に噛合する、この回転軸の一端側からこの一端に対する他端側へ向かって延びたギア溝を有するウォームホイールとを備え、上記ウォームホイールは、上記回転軸が所定方向へ回転することで上記ギア溝に沿って上記回転軸の延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、上記ギア溝の上記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであるウォームギアユニットを具備するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のウォームギアユニットによれば、ギア面におけるグリスの偏在を抑制することができ、このようなウォームギアユニットを具備する画像形成装置によれば、画像品質の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図3は、本発明の第1のウォームギアユニットおよび本発明の第2のウォームギアユニットの共通の一実施形態を具備する、本発明の第1の画像形成装置および本発明の画像形成装置の共通の一実施形態の概略構成図である。
【0021】
図3に示すように、本実施形態のプリンタ1には、4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kが備えられており、各画像形成部には、それぞれ、矢印Aの向きに回転する感光体11Y、11M、11C、11K、帯電器12Y、12M、12C、12K、露光器13Y、13M、13C、13K、矢印Bの向きに回転する現像ロール14Y、14M、14C、14K、および、一次転写ロール15Y、15M、15C、15Kが備えられている。このプリンタ1では、フルカラー印刷が可能となっており、上記の各構成要素の末尾に付された符号Y、M、C、およびKは、それぞれイエロ、マゼンタ、シアン、および黒の画像形成用の構成要素であることを示している。
【0022】
また、このプリンタ1には、矢印Cの方向に循環する中間転写ベルト30、中間転写ベルト30が懸架されたテンションローラ32、および二次転写ロール31も備えられている。
【0023】
このプリンタ1の基本的な画像形成動作について説明する。
【0024】
このプリンタ1では、先ず、イエロの画像形成部10Yによるトナー像形成が開始され、矢印Aの向きに回転する感光体11Yの表面に、帯電器12Yにより所定の電荷が付与される。次に、露光器13Yにより生成されたイエロ画像に相当する露光光が感光体11Yの表面に照射され、静電潜像が形成される。その静電潜像は矢印Bの向きに回転する現像ロール14Yによりイエロのトナーで現像されて感光体11Y上にイエロのトナー像が形成される。そのトナー像は一次転写ロール15Yにより中間転写ベルト30に転写される。
【0025】
中間転写ベルト30は、中間転写ベルト30上に転写されたイエロのトナー像が次の色の画像形成部10Mの一次転写ロール15Mに到達するタイミングに合わせて、次の色のマゼンタのトナー像が一次転写ロール15Mに到達するように、マゼンタの画像形成部10Mによるトナー像形成が行なわれる。こうして形成されたマゼンタのトナー像は、一次転写ロール15Mにおいて中間転写ベルト30上のイエロのトナー像の上に重ねて転写される。
【0026】
続いて、シアンおよび黒の画像形成部10C、10Kによるトナー像形成が上記と同様のタイミングで行なわれ、一次転写ロール15C、15Kにおいて中間転写ベルト30のイエロおよびマゼンタのトナー像の上に順次重ねて転写される。
【0027】
こうして、中間転写ベルト30上に転写された多色トナー像は、二次転写ロール31によって最終的に記録用紙200に二次転写され、多色トナー像は用紙200とともに矢印D方向に搬送され、不図示の定着器により定着されることにより用紙200上にはカラー画像が形成される。
【0028】
図4は、本発明の第1のウォームギアユニットおよび本発明の第2のウォームギアユニットの共通の一実施形態の概略構成図である。
【0029】
図4に示すウォームギアユニット2は、ウォーム軸21、ウォーム軸21に取り付けられた4つのウォーム23、および、これら4つのウォーム23と噛合する4つのウォームホイール22で構成されており、4つのウォームホイール22は、ウォーム軸21が矢印Aの向きに回転することで矢印Bの向きに回転するものであり、図3に示す4つの現像ロール14K、14C、14M、14Yに不図示の軸を介してそれぞれ連結されている。
【0030】
4つのウォーム23には、グリスを堰き止めるウォーム堰止部材231が図4における左端側にそれぞれ備えられ、4つのウォームホイール22にも、グリスを堰き止めるウォームホイール堰止部材221が図4における奥側に備えられている。
【0031】
図5は、図4に示すウォームギアユニットの一部の拡大図である。
【0032】
図5(a)および図5(b)には、ウォーム23とウォームホイール22との噛合部分の、正面拡大図および外観斜視拡大図が示されている。
【0033】
図5(a)には、ギア面に供給されたグリスが、ウォーム上の地点Aを経てウォーム堰止部材231の根元部分である地点Bに溜まることで次第に地点Bにおけるグリスの嵩が増し、嵩が一定量以上になるとオーバー分のグリスがウォームホイール22のギア面Cに移行する。ギア面Cに移行したグリスは、ウォームホイール22の矢印Bの向きの回転によりウォーム上の地点Dに運ばれる。このようにして、このウォームギアユニット2では、ギア面に供給されたグリスのうち、ウォーム23のギア溝を伝って地点B側に追いやられたグリスを意図的に循環させることができる。
【0034】
図5(b)には、ギア面に供給されたグリスが、ウォームホイール上の地点Aを経てウォームホイール堰止部材221の根元部分である地点Bに溜まることで次第にグリスの嵩が増し、嵩が一定量以上になるとオーバー分のグリスがウォーム23のギア面Cに移行する。このようにして、このウォームギアユニット2では、ギア面に供給されたグリスのうち、ウォームホイール22のギア溝を伝って地点Bに追いやられたグリスを意図的に循環させることができる。したがって、このウォームギアユニット2を具備するプリンタ1では、ギア面におけるグリスの偏在を抑制することができることから画像品質の劣化を抑制することができる。
【0035】
尚、以上に説明したウォームギアユニット2では、ウォーム23およびウォームホイール22それぞれに堰止部材を備えた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、ウォーム23とウォームホイール22のうちのいずれか一方に備えるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ウォームギアユニットの概略構成図である。
【図2】図1に示すウォームギアユニットの一部分の拡大図である。
【図3】本発明の第1のウォームギアユニットおよび本発明の第2のウォームギアユニットの共通の一実施形態を具備する、本発明の第1の画像形成装置および本発明の画像形成装置の共通の一実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明の第1のウォームギアユニットおよび本発明の第2のウォームギアユニットの共通の一実施形態の概略構成図である。
【図5】図4に示すウォームギアユニットの一部の拡大図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プリンタ
2 ウォームギアユニット
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
11Y、11M、11C、11K 感光体
12Y、12M、12C、12K 帯電器
13Y、13M、13C、13K 露光器
14Y、14M、14C、14K 現像ロール
15Y、15M、15C、15K 一次転写ロール
21 ウォーム軸
22 ウォームホイール
221 ウォームホイール堰止部材
23 ウォーム
231 ウォーム堰止部材
30 中間転写ベルト
31 二次転写ロール
32 テンションロール
200 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向へ回転する回転軸と、
前記回転軸に固定され、該回転軸の延在方向へ向かって螺旋状につながったギア溝を有するウォームと、
前記ギア溝に噛合するギア歯を有するウォームホイールとを備え、
前記ウォームは、前記回転軸が所定方向へ回転することで前記ギア溝に沿って前記延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、前記ギア溝の前記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであることを特徴とするウォームギアユニット。
【請求項2】
回転機構を備え、該回転機構を作用させて、像担持体上に形成された静電潜像を現像剤担持体上に担持した現像剤で現像して現像像を形成し該現像像を最終的に記録媒体に転写および定着することで該記録媒体上に画像形成を行う画像形成装置において、
前記回転機構が、
所定方向へ回転する回転軸と、前記回転軸に固定され、該回転軸の延在方向へ向かって螺旋状につながったギア溝を有するウォームと、前記ギア溝に噛合するギア歯を有するウォームホイールとを備え、前記ウォームが、前記回転軸が所定方向へ回転することで前記ギア溝に沿って前記延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、前記ギア溝の前記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであるウォームギアユニットを具備するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
螺旋状につながったギア歯を有するウォームと、
所定方向へ回転自在な回転軸と、
前記回転軸に固定されたものであって、前記ギア歯に噛合する、該回転軸の一端側から該一端に対する他端側へ向かって延びたギア溝を有するウォームホイールとを備え、
前記ウォームホイールは、前記回転軸が所定方向へ回転することで前記ギア溝に沿って前記回転軸の延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、前記ギア溝の前記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであることを特徴とするウォームギアユニット。
【請求項4】
回転機構を備え、該回転機構を作用させて像担持体上に形成された静電潜像を現像剤担持体上に担持した現像剤で現像して現像像を形成し該現像像を最終的に記録媒体に転写および定着することで該記録媒体上に画像形成を行う画像形成装置において、
前記回転機構が、
螺旋状につながったギア歯を有するウォームと、所定方向へ回転自在な回転軸と、前記回転軸に固定されたものであって、前記ギア歯に噛合する、該回転軸の一端側から該一端に対する他端側へ向かって延びたギア溝を有するウォームホイールとを備え、前記ウォームホイールは、前記回転軸が所定方向へ回転することで前記ギア溝に沿って前記回転軸の延在方向一方側へ移動するグリスが供給されるものであって、前記ギア溝の前記延在方向一方側端部に、移動してきたグリスを堰き止める堰止部材を有するものであるウォームギアユニットを具備するものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−78840(P2006−78840A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263733(P2004−263733)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】