説明

エアバッグカバーおよびその製造方法

【課題】基材層の上に軟質の装飾的表面層を設けたインストルメントパネル一体化に好適なコの字形又はH字形破断予定部を有するエアバッグカバーであって、エアバッグ装置の作動時にはそのコの字形あるいはH字形破断予定線に沿って確実に破断するエアバッグカバーを提供する。
【解決手段】硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層される軟質樹脂製の表面層を有し、破断予定部は、破断したときヒンジ部に直角方向の側縁を形成することとなるコの字又はH字の縦方向破断予定部とヒンジ部に平行方向の横方向破断予定部からなり、縦方向は基材層に設けた有底溝と、その表面層側対応部設けた表面層に向かう突起と、該溝に対応する表面層における該溝の壁部に沿う隆起部から構成し、また横方向は基材層に設けた有底溝と、その表面層側対応部に設けた表面層に向かう突起から構成したエアバッグカバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグカバーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置は、自動車が衝撃を受けたときにその衝撃を感知してエアバッグを膨張、展開させて車体と乗員との間に介在させ、これによって乗員を保護するというものである。
近年急速に普及し、その配設箇所も運転席用のステアリングホイール、助手席用のインストルメントパネルだけでなく、乗員を側面部の衝撃から保護する側部用エアバッグが車体側部窓上部に配設されるようになった。
これらの中で、インストルメントパネルの内部に配設される助手席用エアバッグ装置においては、それをカバーするエアバッグカバーをインストルメントパネルとは別体として用意し、これをインストルメントパネルに設けた開口部に組みつけるというのが普通であったが、近年ではこれらを一体化してモジュール化して製造、組み立て作業の合理化を図ると共に、内装部品としてのインストルメントパネルの外観を向上させることが要望されている。
【0003】
そして、このようにエアバッグカバー体をインストルメントパネルに一体化したものもすでに提案されており、例えば特開平11−291069号(特許文献1)に記載のものは、インストルメントパネルをエアバッグ用開口部を設けずに射出成形し、このパネル裏面のエアバッグ収納位置に対応する箇所にレーザー加工を施し破断予定線を形成するというものである。
また、このようにパネル成形後にエアバッグカバー体を展開するための破断予定線を後加工することなく、成形時にこの破断予定線も形成するという成形方法の提案もされている(特開2002−234413、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、前者の破断予定線を後加工する方法は、このためのレーザー加工機を必要とする上に、成形後に微妙な加工作業を要する等コスト的にも、生産性の観点からも問題がある。
また、後者の成形方法は、後加工を要しない点で合理的な方法であるが、成形型内に破断予定線を形成するためのコアを進退自在に設けることが必要であり、金型も複雑となり、また成形方法も煩雑となる。
【0005】
また、インストルメントパネルは、内装部品であるので、その外観や触感も重要である。そのため、このパネルの表面層を軟質でソフト感のある材料で構成し、これを基材層の上に積層した2層構造のものも各種提案されている。
しかし、このような2層構造とした場合においては、所定の破断特性を安定的に得るのは技術的に難しい。すなわち、本発明者は、従来技術の教示するところに基づいた種々の試行結果から、基材層に設けた溝部の真上に向かって表皮層の破断を安定的に生起させるための技術手段が必要であるとの知見を得ている。これは、エアバッグカバーが下方のエアバッグから均一に押し上げられるとは限らず、段違い隆起による剪断力が掛かることで、真上方向に対して傾斜した方向に破断が起こりやすくなるからであると推定される。例えばシングルフラップ型(片開き型)のカバーでは、扉形成部とその周縁との関係において、ツインフラップ型(両開き型)のカバーではさらに隣り合うフラップ同士の関係において、不均一に押し上げられる関係がある。この破断角度はところにより真上方向にも類似した方向にもなり得、また、傾斜する場合の角度も一定とはなりにくい。そのため、所望の破断特性を得るための材料の選定、その特定材料の物性を安定的に利用できる成形加工条件の特定と厳密な品質管理を要することとなり、著しいコストアップが懸念されるところである。
【0006】
こうした2層構造のエアバッグカバーにおいて、より小さい力で破断予定ラインを確実に破断させるための提案もされている。すなわち、特表2000−512953(特許文献3)には、滑らかな表面のカバー層を有するエアバッグのカバー体に、意図した破断ラインの端部を超えてカバー体が破れ続けることなく、カバー体がより小さい力により破断でき、視覚的及び/又は機械的特性を変更することなく、開く力及び破れる力を変えられるように構成した2層エアバッグカバー体の構成が提案されている。
これによれば、基材層の溝部において表面層と基材層とが互いの層の中に延びる部分の間のエッジで破断ラインを形成するとしている。
このような構成とすれば、この2層の接触面で破断されることになり、より確実に破断予定線に沿った設計どおりの破断が可能となるものと思われる。
【特許文献1】特開平11−291069号
【特許文献2】特開2002−234413
【特許文献3】特表2000−512953
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、2層構造の破断特性に関する問題点についてはすでに述べたが、破断予定部がコの字形あるいはH字形の場合には、前記の問題に加えて、コの字形あるいはH字形の縦方向破断予定部と横方向破断予定部(乗員側から見て)とで破断のし易さが異なるという問題もある。一般に縦方向破断予定部は、横方向破断予定部に比べて破断し難い。しかし、破断し難い縦方向の破断予定部が十分に開列しない状態でエアバッグが膨出するという事態は、エアバッグの所定の展開を妨げるおそれがあるので避けなければならない。
しかし、前記特許文献3においてはこうした問題認識は見られない。
【0008】
本発明は、こうした状況の下、基材層の上に軟質の装飾的表面層を設けたインストルメントパネル一体化に好適なコの字形あるいはH字形破断予定部を有するエアバッグカバーであって、エアバッグ装置の作動時にはそのコの字形あるいはH字形破断予定線に沿って確実に破断することができ、安全装置としての信頼性の高いエアバッグカバーを提供することを目的とするものである。
また、本発明は、そうしたインストルメントパネル一体化に好適なエアバッグカバーの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討した結果、軟質表面層を基材層の上に設けた構造のインストルメントパネル一体化に好適なエアバッグカバーにおいて、そのコの字形あるいはH字形破断予定部の構成として、相対的に破断し難いその縦方向破断予定部には基材層側に有底溝を設け、その表面層側対応部には表面層に向かう突起を設けるとともに、前記溝の壁部に沿って表面層側から隆起部を形成し、また、相対的に破断し易い横方向破断予定部には基材層側に有底溝を設け、その表面層側対応部には表面層に向かう突起を設けることが両破断予定部の破断のし易さをバランスさせ、前記の縦方向破断予定部が不十分な破断状態でエアバッグが膨出する懸念を払拭させる上で有効であることを知見し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成するコの字形あるいはH字形破断予定部を備えたエアバッグカバーであって、エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層される軟質樹脂製の表面層を有し、コの字あるいはH字形破断予定部は、破断したときヒンジ部に対して直角方向の側縁を形成することとなるコの字あるいはH字の縦方向破断予定部とヒンジ部に対して平行方向のコの字あるいはH字の横方向破断予定部からなり、縦方向破断予定部としては基材層のエアバッグ装置対向側に設けた有底溝と、その表面層側対応部に設けた表面層に向かう突起と、該溝に対応する表面層における該溝の壁部に沿う隆起部から構成し、また横方向破断予定部としては基材層のエアバッグ装置対向側に設けた有底溝と、その表面層側対応部に設けた表面層に向かう突起から構成したことを特徴とするエアバッグカバー。
(2) 隆起部が溝部の外側に形成されている前記(1)記載のエアバッグカバー。
(3) インストルメントパネルに一体化された前記(1)または(2)記載のエアバッグカバー。
(4) 前記(3)に記載のインストルメントパネル一体型のエアバッグカバーの製造方法であって、エアバッグ装置を係止する係止部を備えた壁部を有するインナー部材をあらかじめ結合させた前記基材からなるインサート材を、一方の金型に載置する工程、前記基材の突起と他方の金型との間に所定の間隔を有する薄いキャビティを確実に形成するように載置されたインサート材を金型側に引き寄せる工程、他方の金型を型閉めする工程、および形成されたキャビティ内に表面層形成用樹脂材料を射出する工程からなるエアバッグカバーの製造方法。
(5) 前記金型を引き寄せる工程がインサート材に結合したインナー部材の前記係止部にクランプを係合することによりインサート材を一方の金型に引き寄せることからなる(4)記載のエアバッグカバーの製造方法。
に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、インストルメントパネル一体型エアバッグのコの字形あるいはH字形破断予定部の構成として、相対的に破断し難いその縦方向破断予定部には基材層側に有底溝を設け、その表面層側対応部には表面層に向かう突起を設けるとともに、前記溝の壁部に沿って表面層側から隆起部を形成し、また、相対的に破断し易い横方向破断予定部には基材層側に有底溝を設け、その表面層側対応部には表面層に向かう突起を設けることが両破断予定部の破断のし易さをバランスさせ、前記の縦方向破断予定部が不十分な破断状態でエアバッグが膨出する懸念を払拭させ、かつエアバッグ装置が作動してエアバッグが下方からエアバッグを押し上げる際に、その破断予定部に剪断力が生じた場合であっても、破断予定位置のずれを極力抑制することができ、実質上破断予定位置にて確実にエアバッグカバーを破断し、エアバッグを展開することができる。
【0012】
また、本発明のエアバッグ製造方法によれば、破断予定部において表面層側に突起を設けた構造の基材にあらかじめエアバッグ装置を係止するインナー部材を一体化しておき、これを金型内にインサートし、前記インナー部材の係止部を利用して、係合部材によりインサート材を金型側に引き寄せ、前記突起と他方の金型との間に間隔を確実に確保することができるので、この突起部に対応する表面層の極めて薄い部位も所定の厚み寸法に均一に形成することができる。したがって、この部位において突起が金型と接触して損傷したり、あるいは表面層が欠けたり、極端に薄くなるなどして所定の破断特性の発現を妨げることがなく、また外観を損なうこともない。また、破断時において、突起周辺の表面層が飛散するおそれも解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のエアバッグカバーは、上記のように、基材層とその上に積層された表面層から構成されている。
基材層は、厚み2.5〜4.0mmで、比較的硬質な材料、例えばポリプロピレンをタルクなどで補強したPPC樹脂で構成することが好ましい。また、その上に積層される表面層は、厚み0.5〜3.0mmで、軟質の材料、例えばポリウレタンで構成することが好ましい。無論これらの材料に制限されるというものではない。要は、基材層がより硬質でエアバッグカバーとしての必要な強度を保持でき、また表面層はより軟質で、好ましくは弾性を有し、表面外観、触感を向上させる材料であればよい。
【0014】
本発明のエアバッグカバーは、その破断予定線を形成するコの字形あるいはH字形の詳細な構造が重要である。
すなわち、相対的に破断しにくい縦方向の破断予定部においては、基材層に設けた溝部に対応する表面層側においてその表面層に向けて突起を設けて表面層に薄肉部を形成するとともに、その溝部の外側に表面層の隆起部を設けて表面層を厚肉とする。換言すれば、基材層の溝部の壁に薄肉部を設ける。一方、相対的に破断しやすい横方向の破断予定部には基材層に溝部を設け、その表面層側対応部に表面層に向かう突起を設ける。溝部の壁に沿う薄肉部は設けなくてもよいが、縦方向破断予定部との破断のし易さを調整する意味で、薄肉部を設けることもできる。
このような構造とすることにより、縦方向破断予定部と横方向破断予定部との破断のし易さをバランスさせ、エアバッグの膨出によるエアバッグカバーの破断・開裂を設計どおりに十分にかつスムースに行うことことができる。
なお、横方向破断予定部における基材層の突起は、基材層の溝部直上よりも溝部の表面層への延長線に沿うように、乗員側あるいはウインド側に寄せて設ける方が好ましい。また、縦方向破断予定部における突起は、溝部の直上に設けることが好ましい。
【0015】
以下に、破断予定部の構造について更に説明する。
まず、前記溝部は有底溝である。有底溝とすることにより、エアバッグ膨出によるエアバッグカバー破断時における段違い隆起の抑制に寄与させ、また、成形時に表面層用の成形材料が溝内に入り込むのを防止させる。
また、該溝部は、基材層においてエアバッグ装置側から、好ましくは溝残厚0.4〜0.8mmとなるように設けられる。その溝部の外側に表面層の厚肉部を設ける場合には、溝上方の壁部に沿って、表面層が厚肉部を形成し、表面層がその部分で、好ましくは0.5〜1.5mmの隆起部を形成していることが好ましい。
前記突起は、高さ0.1〜0.5mmが好ましく、この部分の表面層の肉厚を0.5〜0.9mmとすることが好ましい。
表面層隆起部7の形状は、その断面が略半円状であっても、矩形リブ状であってもよく、これらは溝部5の外側に設けても、また内側に設けても、更に、両側に設けてもよい。しかし、外側にのみ設けることが好ましい。
また、表面層隆起部は、溝部5に沿って連続的に設けるほか、適宜間隔をあけて間欠的に設けてもよい。
【0016】
破断予定線をこのような構造とすることにより、すでに述べた縦横方向の破断し易さのバランスをとるとともに、破断予定部のズレを実質防止することができる。すなわち、エアバッグ装置の作動時に下方から膨出しようとするエアバッグの押し上げによる剪断力がかかる場合においても、前記破断予定部の構造によりそこに応力集中できるので、破断予定部に沿ってエアバッグカバーを確実に展開することができる。
なお、表面層には、線状突起による薄肉部が形成され、その影響によりエアバッグカバーの表面外観を損なうおそれがあるので、表面層には例えばしぼ等を加工することが好ましい。
本発明のエアバッグカバーは特にインストルメントパネル一体化に好適であるが、これに制限されるものではない。
【0017】
本発明のエアバッグカバーは、インナー部材をあらかじめ一体化した基材を金型内にインサートして成形されるが、金型に載置した後、基材に設けた突起部と上型との間に所定の間隔を保持するように、インサート材を載置した金型側に引き寄せる。この操作を欠く場合には、突起部が上型と接触し損傷する、上型に塗布したインモールドコートが剥離する、あるいは上型との間隔が所定の厚みを確保できない、といった問題が発生し、所定の均一な厚みの薄肉部を形成することができない。
その後、上型を型閉めして、次いで、インサート材の上に表面層をポリウレタンの反応射出成形法により形成することができる。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、本発明のインストルメントパネルに一体に成形したエアバッグカバーの分解斜視図である。図1中、1はポリウレタン表面層、2はPPC樹脂製基材層、3はエアバッグ装置を支持するTPO樹脂製のインナー部材、4はエアバッグ装置、5は基材層のエアバッグ装置側に設けた溝部、6は基材層の表面層側に設けたH字形の突起、7は基材層において対向する突起6の外側に沿って設けた凹部で、表面層の隆起部に対応する部位である。縦方向破断予定部は溝部5、凹部7、および突起6から構成される。また、横方向破断予定部は溝部5および突起6により構成される。しかし、縦方向破断予定部との破断のし易さを調整するためにここに凹部を形成してもよい。縦方向破断予定部においては基材層の溝部5およびその外側に凹部7を設けることにより、基材層の溝部を薄くして破断しやすくするとともに、その凹部を表面層の隆起部(厚肉部)として、かつ溝部直上部を表面層に突きだして薄肉としているので、結局、応力集中が溝部直上部に生じて、確実に破断することができる。また、縦方向よりも破断しやすい横方向では凹部を設けなくても溝部5に応力集中させて突起6に沿ってスムースに破断することができる。このように突起はこのH字形の破断をより確実にするのに寄与するものである。なお、図1中、9はエアバッグ装置を係止する係止部10を備えた壁部である。
【0019】
図2は、図1A−A線断面図で、エアバッグ装置がインナー部材の係止部(孔)に支持されている。図2中、11は溝部でエアバッグカバー破断・開裂時にヒンジ部を形成する。図3は、図1B−B線断面図であり、これは縦方向破断予定部の構造を示している。この破断部の構造により、すでに述べているように、溝部5の底部が表面層側に突きだして突起を形成するため、その部位で表面層は肉厚が非常に薄くなり、一方その突起の外側に形成された基材層の凹部7に対応する表面層の隆起部(厚肉部)との関係から、表面層の薄い溝部直上部に応力集中させて、エアバッグの押し上げの際、この溝部5の直上部位で確実に破断することができる。また、図4は、図2に示す溝部5と突起6からなる横方向破断予定部の説明図である。この破断部の構造により、すなわち、基材層の溝部5の底部に応力が集中されて破断し、表面層においては基材層から表面層に突きだした突起6に沿って両層の界面にて破断が進行する。こうしてH字状に所定の破断・開裂を実現することができる。なお、図9はH字状破断予定部が開裂した状態の説明図である。
【0020】
また、図5〜図8は、本発明のエアバッグカバーの成形方法を説明する図で、前記図2と同様な断面方向での金型内説明図である。図5は、あらかじめインナー部材3を振動溶着などにより基材2の裏面に結合したインサート材を金型(下型)に載置した状態の説明図で、図6は、次いでクランプ用シリンダー12からインナー部材3のエアバッグ装置係止部(孔)を利用してそこにクランプ13を係合させてインサート材を金型側に引き寄せて位置決めした状態の説明図である。クランプは、インナー部材の長手方向壁に設けたウインドシールド側の略中央部に位置する1箇所の係止部(孔)と、乗員側の両端側に位置する2箇所の係止部(孔)に位置させるのが好ましい。
図7、8は、インサート材の金型側への引き寄せを別の機構で行う実施例であって、アクチュエーターを使用した場合の説明図である。図7はクランプ前、図8はクランプ後の状態の説明図である。
【0021】
こうしてインサート材を金型に位置決めした後、上型を型閉めして、表面層用のキャビティを形成する。型閉め前にインサート材を下型へ引き寄せ位置決めしているので、型閉めの際に基材層に設けた突起が上型に接触することはなく、所定の間隔を確実に保持することができる。次いで、ポリウレタン反応成形材料を射出して本発明のエアバッグカバーを成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のインストルメントパネルに一体に成形したエアバッグカバーの分解斜視図。
【図2】図1A−A線断面図。
【図3】図1B−B線断面図。
【図4】図2に示す溝部5と突起6からなる横方向破断予定部の説明図。
【図5】本発明の成形方法の説明図でインサート材を金型に載置した状態の説明図。
【図6】本発明の成形方法の説明図でインサート材を金型側に引き寄せて位置決めした状態の説明図。
【図7】同上成形方法の説明図でアクチュエーターを利用した場合におけるクランプ前の状態説明図。
【図8】同上クランプ後の説明図。
【図9】H字状破断予定部が開裂した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1:表面層
2:基材層
3:インナー部材
4:エアバッグ装置
5:溝部
6:突起
7:基材層に設けた凹部
8:表面層の裏側に設けたH字状破断予定部
9:インナー部材の壁部
10:壁部9に設けたエアバッグ装置を支持する孔
11:ヒンジ部
12:クランプ用シリンダー
13:クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納されたエアバッグを組み込んだエアバッグ装置のエアバッグ膨出方向を覆いエアバッグの展開によって扉部を形成するコの字形あるいはH字形破断予定部を備えたエアバッグカバーであって、エアバッグ装置側に配置される硬質樹脂製の基材層と、該基材層に積層される軟質樹脂製の表面層を有し、コの字形あるいはH字形破断予定部は、破断したときヒンジ部に対して直角方向の側縁を形成することとなるコの字あるいはH字の縦方向破断予定部とヒンジ部に対して平行方向のコの字あるいはH字の横方向破断予定部からなり、縦方向破断予定部としては基材層のエアバッグ装置対向側に設けた有底溝と、その表面層側対応部に設けた表面層に向かう突起と、該溝に対応する表面層における該溝の壁部に沿う隆起部から構成し、また横方向破断予定部としては基材層のエアバッグ装置対向側に設けた有底溝と、その表面層側対応部に設けた表面層に向かう突起から構成したことを特徴とするエアバッグカバー。
【請求項2】
隆起部が溝部の外側に形成されている請求項1記載のエアバッグカバー。
【請求項3】
インストルメントパネルに一体化された請求項1または2記載のエアバッグカバー。
【請求項4】
請求項3に記載のインストルメントパネル一体型のエアバッグカバーの製造方法であって、エアバッグ装置を係止する係止部を備えた壁部を有するインナー部材をあらかじめ結合させた前記基材からなるインサート材を、一方の金型に載置する工程、前記基材の突起と他方の金型との間に所定の間隔を有する薄いキャビティを確実に形成するように載置されたインサート材を金型側に引き寄せる工程、他方の金型を型閉めする工程、および形成されたキャビティ内に表面層形成用樹脂材料を射出する工程からなるエアバッグカバーの製造方法。
【請求項5】
前記金型を引き寄せる工程がインサート材に結合したインナー部材の前記係止部にクランプを係合することによりインサート材を一方の金型に引き寄せることからなる請求項4記載のエアバッグカバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−36149(P2006−36149A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222752(P2004−222752)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】