説明

エストロゲン受容体構造

エストロゲン受容体リガンド、エストロゲン受容体ポリペプチド/リガンド複合体、エストロゲン受容体ポリペプチド/リガンド複合体の結晶、ならびに関連方法およびソフトウェアシステムが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン受容体リガンド、エストロゲン受容体ポリペプチド/リガンド複合体、エストロゲン受容体ポリペプチド/リガンド複合体の結晶、および関連方法とソフトウェアシステムに関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、出典明示により本明細書に一体化させた2005年1月19日提出の米国仮出願第60/644,897号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
17β−エストラジオール(E2)は、様々な生物学的な過程を調節するステロイドホルモンである。E2の生理的な効果の多くは、エストロゲン受容体アルファとエストロゲン受容体ベータなどのエストロゲン受容体(ERs)によって媒介される。エストロゲン受容体とE2の相互作用は、受容体の活性化を引き起こし、細胞質から核への移行を生じ、転写アクチベーターとして機能し得る。
【0004】
E2は、エストロゲン受容体アルファ(ERアルファ)との相互作用を介して、生殖組織を含む異なる組織の分化と維持を調節する。E2はまた、IL−1β誘発のNF−κBレポーター活性およびエストロゲン受容体依存性のIL−6発現を抑制できる。この作用は、in vivoにおけるE2の抗炎症作用と相互に関連する。
【発明の開示】
【0005】
(要約)
一の態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドおよび縮合環系を有するリガンドを包含する結晶化ポリペプチド−リガンド複合体を特徴とする。該縮合環系は、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を包含する。
【0006】
別の態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドおよびリガンドを含む結晶化ポリペプチド−リガンド複合体を特徴とし、該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を有し、縮合環の少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドとリガンドを含む結晶化ポリペプチド−リガンド複合体を特徴とする。該リガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくはヒトの子宮組織の増殖を促進しない。
【0008】
別の態様では、本発明は、結晶を含む組成物を特徴とする。該結晶は、エストロゲン受容体ポリペプチド、およびリガンドを含み、該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。
【0009】
別の態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドおよび縮合環系を有するリガンドを含む結晶を含む組成物を特徴とする。該縮合環系は、少なくとも2つの縮合環を包含し、そのうちの少なくとも1つは少なくとも2つのヘテロ原子を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドおよびリガンドを含む結晶を含む組成物を特徴とする。該リガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくはヒトの子宮組織の増殖を促進しない。
【0011】
別の態様では、本発明は、複合体の3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。該複合体は、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含み、エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有する。少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、複合体の3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。該複合体は、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含み、エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有する。少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、複合体の3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。該複合体は、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含み、エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない。
【0014】
別の態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドの3次元モデルを用いて、エストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法を特徴とする。
【0015】
別の態様では、本発明は、エストロゲン受容体ポリペプチドを含む結晶複合体の3次構造を用いて、合理的な薬物デザインを行うことにより薬剤を選択することを含む方法を特徴とする。該方法は、エストロゲン受容体ポリペプチドと薬剤を接触させ、エストロゲン受容体ポリペプチドに結合する薬剤の能力を検出することを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、組成物を形成するリガンドとエストロゲン受容体ポリペプチドを接触させ、該リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合した結晶複合体を形成する組成物を結晶化することを含む方法を特徴とする。該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。該結晶複合体は少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折する。
【0017】
別の態様では、本発明は、リガンドとエストロゲン受容体ポリペプチドを接触させて組成物を形成し、次いで、組成物を結晶化させて、リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合している結晶複合体を形成することを含む方法を特徴とする。該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。該結晶複合体は少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折する。
【0018】
別の態様では、本発明は、リガンドとエストロゲン受容体ポリペプチドを接触させて組成物を形成し、次いで、組成物を結晶化させて、リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合している結晶複合体を形成することを含む方法を特徴とする。該リガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくはヒトの子宮組織の増殖を促進しない。該結晶複合体は少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折する。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、コンピューターシステムに、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報を受容させる指令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。この情報から、該コンピューターシステムは、エストロゲン受容体ポリペプチドへの候補薬剤の結合特性を調べることができる。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。
【0020】
別の態様では、本発明は、コンピューターシステムに、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報を受容させる指令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。この情報から、該コンピューターシステムは、エストロゲン受容体ポリペプチドへの候補薬剤の結合特性を調べることができる。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。
【0021】
別の態様では、本発明は、コンピューターシステムに、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報および候補薬剤に関連する情報を受容させる指令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。この情報から、該コンピューターシステムは、エストロゲン受容体ポリペプチドへの候補薬剤の結合特性を調べることができる。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない。
【0022】
別の態様では、本発明は、複数の指令が記録されるコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムを特徴とする。該指令が1つ以上のプロセッサにより実行される場合、1つ以上のプロセッサは、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報および候補薬剤に関する情報を受容する。この情報から、1つ以上のプロセッサは、エストロゲン受容体ポリペプチドへの候補薬剤の結合特性を調べる。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。
【0023】
別の態様では、本発明は、複数の指令が記録されるコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムを特徴とする。該指令が1つ以上のプロセッサにより実行される場合、1つ以上のプロセッサは、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報および候補薬剤に関する情報を受容する。この情報から、1つ以上のプロセッサは、エストロゲン受容体ポリペプチドへの候補薬剤の結合特性を調べる。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。
【0024】
別の態様では、本発明は、複数の指令が記録されるコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムを特徴とする。該指令が1つ以上のプロセッサにより実行される場合、1つ以上のプロセッサは、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報および候補薬剤に関する情報を受容する。この情報から、1つ以上のプロセッサは、エストロゲン受容体ポリペプチドへの候補薬剤の結合特性を調べる。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない。
【0025】
一の態様では、本発明は、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容し、候補薬剤とERアルファポリペプチドの結合特性をモデルすることを含む方法を特徴とする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。該方法はソフトウェアシステムによって実行される。
【0026】
一の態様では、本発明は、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容し、候補薬剤とERアルファポリペプチドの結合特性をモデルすることを含む方法を特徴とする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。さらに、該方法はソフトウェアシステムによって実行される。
【0027】
一の態様では、本発明は、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容し、候補薬剤とERアルファポリペプチドの結合特性をモデルすることを含む方法を特徴とする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない。該方法はソフトウェアシステムによって実行される。
【0028】
別の態様では、本発明は、複数の指令が記録されるコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムを特徴とする。該指令が1つ以上のプロセッサにより実行される場合、1つ以上のプロセッサは、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容し、候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。
【0029】
別の態様では、本発明は、複数の指令が記録されるコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムを特徴とする。該指令が1つ以上のプロセッサにより実行される場合、1つ以上のプロセッサは、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容し、候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。
【0030】
別の態様では、本発明は、複数の指令が記録されるコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムを特徴とする。該指令が1つ以上のプロセッサにより実行される場合、1つ以上のプロセッサは、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容し、候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルする。該リガンドはNFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない。
【0031】
別の態様では、本発明は、コンピューターシステムに、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ、候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる指令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの窒素を含む縮合環系を有する。
【0032】
別の態様では、本発明は、コンピューターシステムに、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ、候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる指令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。エストロゲン受容体ポリペプチドに結合した該リガンドは、少なくとも2つの縮合環を含み、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも2つのヘテロ原子を含む縮合環系を有する。
【0033】
別の態様では、本発明は、コンピューターシステムに、リガンドに結合したエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容し、候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルすることを引き起こす指令を含むソフトウェアシステムを特徴とする。該リガンドは、NFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない。
【0034】
別の態様では、本発明は、患者のERアルファ活性を調節する方法を特徴とする。該方法は、合理的な薬物デザインを用いてERアルファ活性を調節可能な薬剤を選択するし、患者に該薬剤の治療上有効な量を投与することを含む。
【0035】
別の態様では、本発明は、ERアルファ活性に関連する状態にかかっている患者を治療する方法を特徴とする。該方法は、合理的な薬物デザインを用いてERアルファ活性を調節可能な薬剤を選択し、患者に該薬剤の治療上有効な量を投与することを含む。
【0036】
別の態様では、本発明は、ERアルファ活性に関連する状態になりやすい患者を予防的に治療する方法を特徴とする。該方法は、患者がERアルファ活性に関連する状態になりやすいことを調べ、合理的な薬物デザインを用いてERアルファ活性に効果をもたらし得る薬剤を選択し、患者に該薬剤の治療上有効な量を投与することを含む。
【0037】
本発明の1つ以上の具体例の詳細が、以下に添付した図面と明細書に記載される。本発明の他の特徴、目的および効果は、明細書と図面、および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0038】
(図面の簡単な説明)
図1は、化合物1、化合物2もしくは17β−エストラジオールの代表的なリガンドと複合体を形成したERアルファ二量体の構造を表すリボン図である。構造へリックスは、「H2」、「H3」、等で特定される。構造シートはS1およびS2で示される。
【0039】
図2は、ERアルファに結合される17β−エストラジオールと化合物1の構造を比較する棒状モデル(stick model)である。
【0040】
図3は、ERアルファに結合される17β−エストラジオールと化合物2の構造を比較する棒状モデルである。
【0041】
図4は、ERアルファに結合されるラロキシフェンと化合物1の構造を比較する棒状モデルである。丸括弧は、化合物1とラロキシフェンがERアルファに結合される時のへリックス12(H12)の位置を示す。
【0042】
図5は、ビヒクル、17α−エチニルエストラジオール(EE)、もしくは化合物2に対する子宮の重量(mg)の比較を表すグラフである。
【0043】
図6は、ヒトERアルファ受容体(配列番号1)のアミノ酸配列である。結晶化に用いられる配列(ERアルファリガンド結合ドメイン)は下線で示される。
【0044】
様々な図面における類似参照記号は類似要素を示す。
【0045】
(詳細な説明)
非ステロイドホルモンの化合物1(IUPAC名:4−[1−アリル−7−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾール−3−イル]ベンゼン−1,3−ジオール)および化合物2(IUPAC名:4−[(8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン−5(6H)−イル)スルホニル]フェノール)の各々に結合したヒトエストロゲン受容体アルファのリガンド結合ドメイン(ERアルファ−LBD)の構造がX線結晶解析によって決定され、本明細書に記載される。図1は、化合物1、化合物2、もしくは天然受容体リガンド、17β−エストラジオール(E2)の代表的なリガンドと複合体を形成されるERアルファ二量体の構造を表すリボン図である。図2および図3は、ERアルファ−LBDへの化合物1と化合物2各々の結合およびE2の結合の間の比較を表す棒状図である。リボン図と棒状図は、ヒトERアルファ−LBDに結合される化合物1もしくは化合物2の三次構造が、ERアルファ−LBDに結合したE2の三次構造に類似することを示す。それゆえ、ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体およびヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体の結晶構造(下記の表9と表10各々を参照)は、例えば、ERアルファ−LBDとも相互作用できる非ステロイドリガンドなどの他のリガンドを設計もしくは特定するのに有用であり得ると考えられる。
【0046】
化合物1の化学構造は、
【化1】

により与えられる。
【0047】
化合物2の化学構造は、
【化2】

により与えられる。
【0048】
E2と同様に、化合物1および化合物2はERアルファに結合し、核因子−カッパB(NFκB)−誘発炎症現象を抑制可能である。しかし、E2と異なり、ERアルファへの化合物1もしくは化合物2の結合は女性化効果を促進しない。例えば、化合物1もしくは化合物2の投与は、子宮もしくは乳房組織の増殖を促進しない。
【0049】
一般的に、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの複合体は、所望するように調製され得る。いくつかの具体例では、かかる複合体は以下のように調製され得る。ヒトERアルファ−LBDはDNAプラスミドから発現される。該発現は誘導性プロモーターのごときプロモーターにより促進され得る。ヒトERアルファ−LBDは、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、myc、HA、ヘクサヒスチジン、もしくはFLAGタグのごとき適するタグの付いた融合タンパク質として発現され得る。該タグは細胞からのヒトERアルファ−LBDの単離を促進し得る。融合タンパク質は、ポリペプチドとタグの間の部位もしくはその近傍のごとき該融合タンパク質の改変プロテアーゼ部位において切断され得る。切断と精製後、該ヒトERアルファ−LBDは化合物1もしくは化合物2と接触され得る。例えば、該ヒトERアルファ−LBDが精製前(例、ポリペプチドタグの切断前)に化合物1もしくは化合物2と混合され得るか、又は該ヒトERアルファ−LBDが精製後に2つの化合物のどちらかと混合され得る。いくつかの具体例では、化合物1もしくは化合物2は、精製前および再度精製後に該ヒトERアルファ−LBDと混合され得る。特定の具体例では、ヒトERアルファ−LBDの構造は、リガンドの非存在下で評価され得る。
【0050】
ヒトERアルファ−LBDおよび化合物1もしくは化合物2の化合物は、ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体もしくはヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体のスペクトルデータを収集するため、これら2つの複合体のどちらかのNMRデータを収集するため、またはこれら2つの複合体のどちらかの結晶を育成するため、に溶液中で一緒にされ得る。例えば、ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体もしくはヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体は、塩(例、ナトリウム塩)、ポリマー(例、ポリエチレングリコール(PEG))、および/もしくは有機溶媒の存在下で結晶化され得る。結晶は、例えば、シッティングもしくはハンギングドロップ蒸気拡散法のごとき様々な方法により育成され得る。一般に、結晶化は、約4℃から約60℃まで(例、約4℃、約15℃、約18℃、約20℃、約25℃、約30℃、約32℃、約35℃、約37℃のごとき約4℃から約45℃まで)の温度で実施され得る。
【0051】
一般に、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの結晶は、約3.5Å以下(例、約3.2Å以下、約3.0Å以下、約2.5Å以下、約2.4Å以下、約2.3Å以下、約2.2Å以下、約2.1Å以下、約2.0Å以下、約1.9Å以下、約1.8Å以下、約1.7Å以下、約1.6Å以下、約1.5Å以下、約1.4Å以下)の分解能までX線を回帰できる。いくつかの具体例では、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの結晶は、約1.7Åから約2.5Åまで(例、化合物1に結合したERアルファ−LBDの結晶は約2.4ÅまでX線を回帰できる)の分解能でX線を回帰できる。
【0052】
一の具体例では、化合物1に結合したヒトERアルファ−LBDの結晶は、格子定数a=104.80Å、b=54.12Å、c=97.10Å、α=γ=90°、β=113.67°を有する空間群C2に属する。別の具体例では、化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの結晶は、格子定数a=104.80Å、b=54.12Å、c=97.10Å、α=γ=90°、β=113.67°を有する空間群C2に属する。該空間群は結晶の対称全てを意味し、点対称および空間対称を含む。特定の具体例では、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの結晶は、非対称単位のヒトERアルファ−LBDの2つの分子を含み得る。非対称単位は、結晶構造が空間群の対称操作を利用することによって生じ得る最小単位である。結晶は、一般に非対称単位上の空間群対称操作により決められるモチーフ、および結晶格子を介在するモチーフの翻訳物から構成される。
【0053】
結晶を描写する構造データは、例えば、X線回折によって得られことができる。X線回折データは、様々な源、X線波長および検出器によって採集され得る。いくつかの具体例では、回転陽極およびシンクロトロン放射源(カリフォルニア州、バークレイのAdvanced Light Source(ALS)、もしくはイリノイ州、アルゴンのAdvanced Photon Source(APS))がX線源として使用され得る。特定の具体例では、回折データを作成するX線は、約0.5Åから約1.6Åまで(例、約0.7Å、約0.9Å、約1.0Å、約1.1Å、約1.3Å、約1.4Å、約1.5Å、約1.6Å)の波長であり得る。いくつかの具体例では、面積検出器および/もしくは荷電結合デバイス(CCDs)が検出器として使用され得る。
【0054】
化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体の結晶のX線回折データは、該複合体中の原子の構造座標を得ることに使用され得る。該構造座標は、複合体中の他原子との関連における3次元空間の原子の局在を表すデカルト座標である。例えば、表9と表10に記載される構造座標は、各々、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの結晶複合体の構造座標である。これらの構造座標は、相互に関連するヒトERアルファ−LBDの原子局在、化合物1もしくは化合物2の原子に関連するヒトERアルファ−LBDの原子局在、ならびに相互に関連する化合物1もしくは化合物2の原子局在を表す。該複合体の構造座標は、反転あるいは整数加算もしくは引算のごとき数学的操作により修正され得る。このように、構造座標は相対的座標である。例えば、化合物1もしくは化合物2に結合したERアルファ−LBDの原子局在を表す構造座標は、表9および10各々の実際のx、y、およびz座標により特に限定されない。
【0055】
化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体の構造座標は、該複合体、該複合体の断片、ERアルファ−LBDもしくはERアルファ−LBDの断片の描写(2次元描写もしくは3次元描写)から導き出されて使用され得る。かかる描写は、例えば、ポリペプチド活性部位の視覚化、識別化および特性化を含む多くの応用に有用であり得る。特定の具体例では、3次元描写は、表9もしくは表10によるヒトERアルファ−炭素原子の構造座標を含み得るもので、アミノ酸のアルファ炭素原子からの2乗平均(rms)偏差は約1.5Å以下(例えば、約1.0Å以下、約0.5Å以下)である。RMS偏差は、平均値からの偏差の2乗の算術平均の平方根であり、構造座標からの偏差または変化を表現するやり方である。アミノ酸の保存置換(下記の議論を参照)は、記述された標準偏差内の構造座標を有する分子描写の結果となり得る。例えば、保存アミノ酸置換によりお互いに異なるポリペプチドの2つの分子モデルは、約1.5Å以下(例、約1.0Å以下、約0.5Å以下)のごとき記述された標準偏差内の骨格原子座標を有し得る。ポリペプチドの骨格原子は、アルファ炭素(CαもしくはCA)原子、カルボニル炭素(C)原子、およびアミド窒素(N)原子を含む。
【0056】
様々なソフトウェアプログラムは、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体、あるいはこれら複合体のうちの1つの断片、の描写を得るための一連の構造座標のグラフィック描写を可能にする。一般に、かかる描写は、(相対的および/もしくは絶対的な)構造座標、もしくは特徴間の距離もしくは角度のような構造座標由来の情報を正確に反映すべきである。いくつかの具体例では、該描写は立体2次元図のごとき2次元図である。特定の具体例では、該描写はインタラクティブ(interactive)立体2次元画像のごときインタラクティブ2次元画像である。インタラクティブ2次元画像は、例えば、回転させて、ポリペプチド、ポリペプチドの断片、複合体および/もしくは複合体の断片の異なる面を示すことが可能なコンピューター画像であり得る。いくつかの具体例では、該描写は3次元描写である。例として、3次元モデルは分子構造の物理的なモデル(例、球と棒状モデル)であり得る。別の例として、3次元描写は分子構造のグラフィック描写(例、コンピューター画像上に表される図面もしくは図)であり得る。2次元描写が、例えば、遠近法、陰影法の使用、あるいは観察者により近接する特徴による観察者からより離れた特徴の隠蔽のごとき3次元情報を反映する場合には、2次元グラフィック描写(例、図面)は3次元描写に一致し得る。いくつかの具体例では、描写は1つ以上のレベルでモデルされ得る。例として、3次元描写が化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体のごときポリペプチドを含む場合、該ポリペプチドは、1次構造(アミノ酸配列)、2次構造(例、α−へリックスとβ−シート)、3次構造(全体の折りたたみ)、および4次構造(オリゴマー形成)のごとき1つ以上の相違なるレベルの構造で表され得る。描写は異なるレベルの詳細を含み得る。例えば、該描写は、原子位置を特定することなくタンパク質の2次構造特性の相対的な局在を含み得るだろう。より詳細な描写は、例えば、原子の位置を含み得るだろう。
【0057】
いくつかの具体例では、描写は、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体の原子の構造座標に付加する情報を含み得る。例えば、描写は、溶媒接触可能表面の形態、モデル原子のファンデルワールス半径、および溶媒のファンデルワールス半径(例、水)に関する情報を提供できる。描写に由来し得る他の特性は、例えば、静電電位、巨大分子内の空隙もしくはポケットの局在、ならびに水素結合と塩橋の局在を含む。
【0058】
ヒトERアルファ−LBDと相互作用する薬剤は、ヒトERアルファ−LBDもしくはその断片の描写、又は化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体あるいはこれら複合体のどちらか一方の断片を使用することを含む方法により同定もしくは設計され得る。典型的な描写タイプは、上記で議論される描写を含む。いくつかの具体例では、該描写は、類似ポリペプチド、ポリペプチド断片、複合体もしくは複合体断片であり得る。該描写と相互作用する候補薬剤は、該描写と候補薬剤とのコンピューター適合解析を行うことにより設計もしくは同定され得る。一般に、薬剤は分子である。薬剤の例は、ポリペプチド、核酸(DNAとRNAを含む)、ステロイドおよび非ステロイド有機化合物を含む。ポリペプチド(例、ERアルファポリペプチド)と相互作用する薬剤は、ポリペプチドと一時的もしくは安定的に相互作用できる。該相互作用は、例えば、水素結合、静電気力、疎水性相互作用、およびファンデルワールス相互作用を含む、本明細書に特筆されるいずれかの力により介在され得る。
【0059】
上記に記載した通り、X線結晶解析は、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体の構造座標を得るために使用され得る。しかし、かかる構造座標はNMR技術を含む他技術を用いて得られ得る。さらなる構造情報は、スペクトル技術(例、旋光分散(ORD)、円二色性(CD))、ホモロジーモデリング、およびコンピューターによる方法(例、分子力学からのデータを含み得るコンピューターによる方法、動力学アッセイからのデータを含むコンピューターによる方法)から得られ得る。
【0060】
いくつかの具体例では、X線回折データは、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体あるいはそれらの断片の電子密度マップを構築するために使用され得、該電子密度マップは、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体あるいはそれらの断片の描写(例、2次元描写、3次元描写)を導き出すために使用され得る。電子密度マップの創作は、典型的にはX線分散位相に関する情報の使用に関連する。位相情報は、電子密度マップの構築を完成させるために、例えば、回折データもしくは補助回折実験のどちらかから抽出され得る。X線回折データから位相を算出する方法は、例えば、多波長異常散乱(MAD)、多重重原子同型置換法(MIR)、異常分散を考慮した多重同型置換法(MIRAS)、異常分散効果を利用した単一重原子同形置換法(SIRAS)、逆格子空間溶媒平坦化(reciprocal space flattening)、分子置換もしくはこれらのいずれかの組み合わせを含む。該位相の決定により、電子密度マップが構築され得る。該電子密度マップは、該電子密度マップとともに既知のポリペプチドもしくは既知の複合体(例、リガンドに結合したポリペプチドを包含する複合体)の3次元モデルを配列することによって複合体もしくはその断片の描写を作成することに使用され得る。例えば、ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体もしくはヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体に対応する電子密度マップは、アゴニスト(例、ジエチルスチルベストロール(タンパク質データバンク同定番号2erd))のごとき別の化合物と複合体を形成するヒトERアルファ−LBDに対応する電子密度マップと並べられ得る。他の具体例では、ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体もしくはヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体は、天然リガンド17β−エストラジオール(タンパク質データバンク同定番号1a52)もしくは4−ヒドロキシタモキシフェン(タンパク質データバンク同定番号3ert)のごときアンタゴニストと複合体を形成するヒトERアルファ−LBDに対応する電子密度マップと配列され得る。
【0061】
該配列工程は、算出された電子密度マップが既知のポリペプチドもしくは既知の複合体のモデルと異なる程度を示す比較モデルをもたらす。該比較モデルは、次に1サイクル以上(例、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクル、6サイクル、7サイクル、8サイクル、9サイクル、10サイクル)で精密化されることにより、より適した電子密度マップが作成される。CNS(Brungerら,Acta Crystallogr.D54:905−921,1998)のごときソフトウェアプログラムが使用されることにより、該モデルが精密化され得る。比較モデルの適合性は、例えば、Rwork値もしくはRfree値によって測定され得る。より小さい値のRworkもしくはRfreeは、一般的により適することを示す。比較モデルの不整合は、修正された比較モデルおよび低Rwork値もしくは低Rfree値を提供するように調整され得る。該調整は、ヒトERアルファ−LBD、化合物1もしくは化合物2、既知ポリペプチドおよび/もしくは既知の複合体に関する情報(例、配列情報)に基づいて行われ得る。例として、リガンドに結合したポリペプチドの既知複合体モデルが用いられる具体例では、調節は、化合物1もしくは化合物2と既知複合体中のリガンドを置換することを含む。別の例として、特定の具体例において、調節は、ヒトERアルファ−LBD中の対応部位のアミノ酸と既知ポリペプチド中のアミノ酸を置換することを含み得る。修正された比較モデルの調整が電子密度マップに対するベストフィットを満足する場合、生じるモデルは、X線データが得られたポリペプチドもしくは複合体(ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体もしくはヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体)を説明するために調べられるモデルであり得る。かかる工程の方法は、例えば、CarterとSweetら編,「Macromolecular Crystallography」in Methods in Enzymology,Vol.277,Part B,New York:Academic Press,1997、その中の項目、例えば、JonesとKjeldgaard,「Electron−Density Map Interpretation,」p.173、およびKleywegtとJones,「Model Building and Refinement Practice,」p.208.に開示される。
【0062】
上記の議論は、複合体の結晶に対応する新規に算出された電子密度マップと、既知ポリペプチドもしくは既知複合体の3次元モデルを配列することによって複合体の描写を得る方法である。このモデリング工程に用いられ得る1つの調整は、化合物1もしくは化合物2と既知複合体の描写の化合物を置換することを含む。
【0063】
コンピューターのごときマシーンは、該マシーンに接続された画面上で構造座標のグラフィック描写を作成できるプログラムと一緒に、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体の構造座標を有するメモリーにプログラムされ得る。代替的もしくは付加的に、ソフトウェアシステムが設計および/もしくは利用されることにより、構造座標が受容および記録され得る。該ソフトウェアシステムは、構造座標のグラフィック描写を作成可能であり得る。該ソフトウェアシステムはまた、外部データベースにアクセスすることにより、ヒトERアルファ−LBDと同様の構造特性の化合物(例、ポリペプチド)を同定し、および/もしくはヒトERアルファ−LBDと相互作用するような候補薬剤とされ得る特性の1つ以上の候補薬剤を同定することができる。
【0064】
構造データを含むメモリーもしくはかかるデータを含むソフトウェアシステムを有するマシーンは、ERアルファアゴニストおよび/もしくはERアルファアンタゴニストの合理的デザインもしくは選択に役に立ち得る。例えば、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体に関する薬剤の能力の評価、あるいはERアルファ−LBDに対する構造もしくは配列のホモロジーに関連する化合物もしくはタンパク質のモデリング、に有用であり得る。本明細書で使用されるように、アゴニストは、少なくとも1つのE2の活性を模倣もしくは上昇する化合物を意味し、アンタゴニストは、少なくとも1つのE2の活性を抑制するか、もしくはE2の相反する活性を有する化合物を意味する。1つの化合物がある局面ではアゴニスト、別の局面ではアンタゴニストとして作用し得るか、もしくはある化合物がある局面ではアゴニストもしくはアンタゴニストとして作用し、別の局面では効果を有し得ない(陽性もしくは陰性どちらの効果もない)可能性がある。例えば、化合物1もしくは化合物2のような化合物は、エストロゲン受容体依存性NFκB誘導炎症現象を抑制することによりERアルファ−LBDのアゴニストとして機能でき、また、乳房もしくは子宮組織の増殖を促進するなどのエストロゲン受容体依存性女性化現象を抑制することによりアンタゴニストとしても機能できる。代替的に、化合物1もしくは化合物2のような化合物は、エストロゲン受容体依存性NFκB誘導炎症現象の抑制に関してERアルファ−LBDの作用を模倣することによりアゴニストとして作用し(模倣によるとは、該化合物が同一もしくは同一に近い作用を有することを意味する)、エストロゲン受容体依存性女性化現象に関して効果を有し得ない(陽性もしくは陰性どちらの効果もない)。
【0065】
該マシーンは、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの複合体、あるいはそれらの断片の描写(例、2次元描写、3次元描写)を作成可能である。ソフトウェアシステムは、例えば、該マシーンにかかる情報を作成することを引き起こす。該マシーンは、マシーン可読データをコードされたデータ記録材料を包含するマシーン可読データ記録媒体を含み得る。該マシーン可読データは、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体、あるいはそれらの断片の原子の構造座標を含み得る。マシーン可読記録メディア(例、データ記録材料)は、例えば、慣用的なハードドライブ、フローピーディスク、DATテープ、CD−ROM、DVD、ならびに他の磁気性、磁気光学、光学、およびマシーン(例、コンピューター)との使用に用いられ得る他のメディアを含む。該マシーンはまた、マシーン可読データを加工するための指令を記録するワーキングメモリ、ならびにワーキングメモリおよびマシーン可読データを所望する3次元描写に加工するためのマシーン可読データ記録媒体にカップルされた中央演算処理装置(CPU)を有する。画面は、使用者にとって視覚可能であるようにCPUに接続され得る。従って、データ使用用の指令をプログラムされたマシーンが使用される場合(例、本明細書で記述される1つ以上の種類のプログラムが搭載されたコンピューター)、該マシーンは、本明細書に記述されるいずれのポリペプチド、ポリペプチド断片、複合体、もしくは複合体断片のグラフィック描写(2次元グラフィック描写、3次元グラフィック描写)を表示することができる。
【0066】
画面(例、コンピューター画面)は、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体、あるいはこれらの複合体のどちらかの断片の描写を表わすことが可能である。使用者は描写を調べることができ、該描写から得られた情報を用いて、化合物1もしくは化合物2以外の薬剤を含む複合体もしくはその断片のモデルを作成し得る。該モデルは、例えば、ヒトERアルファ−LBD/化合物1複合体もしくはヒトERアルファ−LBD/化合物2複合体の既存の描写を変更することにより作成され得る。選択的に、該使用者は、化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBDの描写上に薬剤の3次元モデルを重ね合わせることが可能である。該薬剤は、ヒトERアルファ−LBDのアゴニスト(例、候補アゴニスト)もしくはヒトERアルファ−LBDのアンタゴニスト(例、候補アンタゴニスト)であり得る。いくつかの具体例では、該薬剤は既知の化合物もしくは化合物の断片であり得る。特定の具体例では、該薬剤は未知の化合物、もしくは未知の化合物断片であり得る。
【0067】
該薬剤が活性部位の形を補完する形を有することが所望され得る。該薬剤の原子とERアルファポリペプチドの原子間の好ましい距離もしくは距離の範囲があり得る。好ましい距離より長い距離は、薬剤と活性部位(例、ヒトERアルファ−LBD)間の弱い相互作用に関連するかもしれない。好ましい距離より短い距離は、薬剤とポリペプチド間の相互作用を弱め得る斥力に関連するかもしれない。原子間距離が非常に短い場合に立体的衝突が生じ得る。2つの原子局在が相互に不適切に近似する場合、例えば、2つの原子がそれらのファンデルワールス半径の合計より短い距離で離れる場合、立体的衝突が生じる。立体的衝突が存在する場合、使用者は、立体的衝突が軽減されるまでERアルファポリペプチドに対する薬剤の位置を調節可能である(例、薬剤の剛体並進もしくは剛体回転)。該使用者は、立体的衝突を軽減するために、薬剤近くにおける薬剤の立体配座もしくはERアルファポリペプチドの立体配座を調節可能である。立体的衝突はまた、薬剤の構造を変更すること、例えば、芳香環などの「巨大な基」からメチル基もしくはヒドロキシル基などのより小さな基への変更、あるいは固定性の基から柔軟性の基への変更など、立体的衝突を形成しない立体配座に修正することにより除去され得る。静電気力もまた、薬剤とリガンド結合ドメイン間の相互作用に影響し得る。例えば、静電気の特性は、薬剤とERアルファポリペプチド間の相互作用を弱め得る斥力に関連し得る。静電気の斥力は、薬剤の帯電を変更すること、例えば、正に帯電した基を中性の基に置換することで緩和され得る。
【0068】
化合物1もしくは化合物2およびヒトERアルファ−LBD間の結合の強さに影響を及ぼす力は、ポリペプチド/薬剤モデルで評価され得る。これらは、例えば、水素結合、静電気力、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、双極子間相互作用、π−スタッキング(stacking)力、および陽イオン−π相互作用を含み得る。該使用者は、水素結合に適する距離と角度に適合した水素結合供与体/受容体の組み合わせを記載することによりこれらの力を視覚的に評価できる。該評価に基づいて、使用者はモデルを変更することでERアルファポリペプチドと薬剤間のより好ましい相互作用を見出すことができる。モデルを変更することは、例えば、アミノ酸側鎖の立体配座もしくは骨格二面角を変更することにより、化学構造を変更することなくポリペプチドの3次元構造を変化させることを含み得る。該モデルを変更することは、上記に記述されるように、薬剤の位置もしくは立体配座を変更することを含み得る。モデルを変更することはまた、例えば、基を置換、付加、もしくは除去することにより薬剤の化学構造を変更することを含み得る。例えば、ERアルファポリペプチド上の水素結合供与体が薬剤上の水素結合供与体の近接に局在する場合、使用者は薬剤上の水素結合供与体を水素結合受容体に置換可能である。
【0069】
薬剤とERアルファポリペプチドの相対的な局在、もしくはそれらの立体配座は、ERアルファポリペプチドに対する特定の薬剤の最適な結合形状を見出すために調整され得る。最適な結合形状は、例えば、好ましい水素結合の距離と角度、最大の静電気引力、最小の静電気斥力、水性環境からの疎水性分子の隔離、および立体的衝突の不在で特徴付けられる。最適な形状は、ERアルファポリペプチド/薬剤複合体用の可能な形状のファミリーの最低算出エネルギーを有し得る。最適な形状は、例えば、分子力学もしくは分子動力学の計算を通して調べられ得る。
【0070】
異なる結合薬剤を有する化合物1もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD複合体の一連の描写が作成され得る。スコアは描写ごとに計算され得る。該スコアは、例えば、ヒトERアルファ−LBDと薬剤間の予想される相互作用の強さを記述可能である。該スコアは、結合の強さに影響する上記に記述される因子の1つを反映し得る。該スコアは1つ以上の因子を反映する総計スコアであり得る。異なる薬剤はこれらのスコアに従って位置付けられ得る。
【0071】
薬剤のデザイン工程は、マシーンにより自動化された方法で行われ得る。例えば、ERアルファ−LBDの描写は、候補薬剤の描写と一緒にマシーンにプログラムされ得る。該マシーンは活性部位への候補薬剤各々の最適な形状を見出し、スコアを計算して一連の薬剤のうちのどれがヒトERアルファ−LBDと最も強く相互作用かを決定し得る。
【0072】
ソフトウェアシステムは、これらの工程を容易にするために設計および/もしくは実行され得る。描写を作成するか、もしくは適する解析を実行するために使用されるソフトウェアシステム(例、コンピュータープログラム)は、例えば、Accelrys,Inc.(カリフォルニア州、サンディエゴ)からのMCSS,Ludi,QUANTA,Insight II,Cerius2,CHARMm,およびModeler;TRIPOS,Inc.(ミズーリ州、セントルイス)からのSYBYL,Unity,FleXX,およびLEAPFROG;AUTODOCK(カリフォルニア州、ラ・ホーヤのScripps Research Institute);GRID(英国、オックスフォードのオックスフォード大学);DOCK(カリフォルニア州、サンフランシスコのカリフォルニア大学);ならびにFlo+とFlo99(ニュージャージー州、モリスタウンシップのThistlesoft)を含む。他の有用なプログラムは、Openeye Scientific Software(ニューメキシコ州、サンタフェ)からのROCS,ZAP,FRED,Vida,およびSzybki;Schrodinger(オレゴン州、ポートランド)からのMaestro,Macromodel,およびGlide、LLC;MOE(ケベック州、モントリオールのChemical Computing Group)、Allegrow(マサチューセッツ州、ボストンのBoston De Novo)、ならびにGOLD(Jonesら,J.Mol.Biol.245:43−53,1995)を含む。構造座標はまた、MOLSCRIPT,RASTER3D,もしくはPyMOL(Kraulis,J.Appl.Crystallogr.24:946−950,1991;BaconとAnderson,J.Mol.Graph.6:219−220,1998;DeLano,The PyMOL Molecular Graphics System(2002)カリフォルニア州、サンカルロスのDeLano Scientific)を用いてERアルファポリペプチドの3次元構造を視覚化するために使用され得る。
【0073】
適するデータベースをスクリーニングすることにより選択され得る薬剤は、例えば、適するソフトウェアシステムと一緒に未結合ヒトERアルファ−LBDの立体的配座と帯電電位を解析することによりde novoで設計され、および/もしくはプロゲステロン受容体もしくは他のホルモン受容体の既知リガンドの特性を用いて設計され得る。該方法は、ヒトERアルファ−LBDのアゴニストもしくはアンタゴニストを設計もしくは選択するために使用され得る。ソフトウェアシステムは、データベース検索および/もしくは薬剤の選択とデザインを容易にするために設計および/もしくは実行され得る。
【0074】
薬剤が設計もしくは特定されると、生成もしくは合成され、さらにヒトERアルファ−LBD作用の効果が評価され得る。例えば、該薬剤は、ヒトERアルファ−LBDと接触されて、ポリペプチド活性上の薬剤の効果を測定することにより評価され得る。薬剤を評価する方法は、in vitroもしくはin vivoにおいて行われる活性アッセイを含み得る。活性アッセイは、例えば、細胞に基づいたアッセイであり得る。ヒトERアルファ−LBD上の薬剤作用によって、薬剤はヒトERアルファ−LBD活性のアゴニストもしくはアンタゴニストのどちらかとして作用可能である。薬剤はまた、ポリペプチドに対するプロゲステロンの結合を阻害するか否かを調べるために、プロゲステロンの存在下でポリペプチドと接触され得る。同定された薬剤に結合されるヒトERアルファ−LBDを含む結晶が育成され、構造はX線結晶解析により調べられ得る。第2の薬剤は、ヒトERアルファ−LBDと第1の薬剤との相互作用に基づいて設計もしくは同定され得る。
【0075】
様々な分子解析および合理的な薬物デザイン技術は、例えば、米国特許第5,834,228号、第5,939,528号、および第5,856,116号、ならびにWO99/09148として公開されたPCT出願第PCT/US98/16879号でさらに開示される。
【0076】
特定の具体例が記述されている一方で、他の具体例もまた実施される。
【0077】
例として、ヒトERアルファ−LBDおよび化合物1もしくは化合物2に関する具体例が記述されている一方で、本明細書の記載は、エストロゲン受容体ポリペプチドと縮合環のうちの少なくとも1つがヘテロ原子を含む少なくとも2つの縮合環を有するリガンドに、より一般的に指向される。
【0078】
エストロゲン受容体ポリペプチドは、ERアルファポリペプチドのアイソフォームの全長アミノ酸配列を含む、全長の成熟ポリペプチドであり得る。アイソフォームは一次構造において異なる数種類の多形態のタンパク質のいずれかである。
【0079】
エストロゲン受容体ポリペプチドは、リガンド結合ドメイン、DNA結合ドメイン、タンパク質相互作用ドメイン(例、活性化ドメイン)、もしくはそれらの組み合わせなどのERアルファ断片であり得る。
【0080】
エストロゲン受容体ポリペプチドは活性部位を有し得る。一般に、活性部位は、リガンド結合部位、またはリン酸化、グリコシル化、アルキル化、アシル化、もしくは他の共有結合的修飾の部位を含み得る。リガンド結合部位は、リガンドとの相互作用による活性に影響し得る結合の実際の部位に近接もしくは隣接する補助的な結合部位を含み得る。エストロゲン受容体ポリペプチドの活性部位は、配列番号1のアミノ酸(図6)を含み得る。例えば、ERアルファ−ポリペプチドの活性部位は、配列番号1のアミノ酸位置により定義されるような、アミノ酸Glu353、Arg394、Phe404、Met421、Leu425、およびHis524のうちの1つ以上を含み得る。
【0081】
ERアルファポリペプチドアミノ酸の番号付けは、本明細書で説明される番号付けと異なり、ERアルファポリペプチドの配列は、同一の3次元構造を生じる特定の保存アミノ酸置換を含み得る。例えば、ERアルファ−LBDの番号付けは図6で記載される番号と異なり、ERアルファ−LBDの配列は保存アミノ酸置換を含むが、表9と表10の座標で定義され、図1−4で表されるような同一の構造を生じ得る。他のアイソフォームもしくは類似物における対応アミノ酸と保存置換は、関連アミノ酸配列の視覚調査、もしくは市販のホモロジーソフトウェアプログラム(例、MODELLAR、カリフォルニア州、サンディエゴのMSI)を用いて容易に同定される。
【0082】
類似物は保存アミノ酸置換を有するポリペプチドである。保存置換は、類似の極性、類似の立体配列、あるいは同一クラスの類似性(例、疎水性、酸性もしくは塩基性)を伴って1つのアミノ酸から別のアミノ酸に置換することを含み得、分子置換解析および/もしくはホモロジーモデリングに関するものと同様に、ポリペプチド(例、ERアルファ−LBD)と相互作用する薬剤の同定と設計に関してERアルファポリペプチドの三次構造に対する重要でない影響を伴う置換を含む。
【0083】
ERアルファポリペプチドなどのエストロゲン受容体ポリペプチドは、非哺乳類もしくは哺乳類を起源とし得る。哺乳類のエストロゲン受容体ポリペプチドは、例えば、ヒトを起源とし得る。典型的な非ヒト哺乳類は、非ヒト霊長類(サルもしくは類人猿など)、マウス、ラット、ヤギ、雌ウシ、雄ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イノシシ、ラッコ、ネコ、およびイヌを含む。典型的な非哺乳類は、ニワトリ、シチメンチョウ、エビ、ワニおよび魚を含む。
【0084】
別の例として、具体例においては、化合物1もしくは化合物2がリガンドであるとして記述されている一方で、より一般的には、他の化合物もまたリガンドとして使用され得る。例えば、結晶複合体の構造に由来する、化合物1に結合したヒトERアルファ−LBD、もしくは化合物2に結合したヒトERアルファ−LBD、の描写に基づいて、理論に制約されることを望むことなく、化合物1のA環のヒドロキシル基は、(配列番号1のアミノ酸位置により規定されるような)ヒトERアルファ−LBDのGlu353とArg394の側鎖、およびこれら2つのアミノ酸間に位置する保存された水分子、と水素結合を形成する;化合物2のA環のヒドロキシル基は、ヒトERアルファ−LBDのGlu353の側鎖、およびGlu353とArg394間に位置する保存された水分子と水素結合を形成するが、Arg394と相互作用し得ない;化合物1と化合物2のフェニル基は、Phe404と相互作用し、ERアルファ−LBD結合ポケットのこの領域のパイ−エッジスタッキングに貢献する;化合物1および化合物2は、His524、Leu425、およびMet421あるいはERアルファと間接的に相互作用する;化合物1のインダゾール基および化合物2のフェナントリジン基は、結合ポケットと疎水性相互作用を形成する;ならびに化合物1のアリル基と化合物2のフェナントロリン基は、Met421領域におけるERアルファ−LBDの結合ポケットに深く入り込む:と考えられる。
【0085】
この情報に基づき、理論に制約されることを所望することなく、ヒトERアルファ−LBDとの1つ以上の類似相互作用を有し得る他の化合物はまた、ヒトERアルファ−LBDのリガンドとして作用可能であり得る。かかる化合物は、構造:
【化3】

(i)
もしくは
【化4】

(ii)
を有し、A、B、CおよびDは環系を表し;化合物(i)のBとCは縮合環であり;化合物(ii)のB、C、およびDは縮合環であり;Lはリンカー部分であり、Xは置換基である。化合物(i)のYは10個以下の炭素原子の炭素鎖を含む。化合物(ii)のB/C/D環系において、環Bは環Cに、環Cは環Dに結合され、あるいは環Cと環Dは各々、環Bに結合される。
【0086】
一般に、化合物(i)と(ii)の環A、B、およびC、ならびに化合物(ii)の環Dは各々、少なくとも4個の原子(例、5個の原子、6個の原子、7個の原子、8個の原子、9個の原子、10個の原子、11個の原子、12個の原子、13個の原子、14個の原子)から独立して形成される。環A、B、Cおよび/もしくはDの1個以上の原子(例、1個の原子、2個の原子、3個の原子、4個の原子)は、独立してヘテロ原子(例、N、S、O)であり得る。例えば、いくつかの具体例では、環Bは1個もしくは2個の窒素原子を含み得る。化合物(i)では、B環とC環はインダゾールを形成可能である。化合物(ii)では、B、CおよびD環はフェナントリジンを形成可能である。いくつかの具体例では、環Aはフェ二ル、チオフェン、ピロール、もしくはメチルピロールであり得る。一般に、Xは、ヒドロキシ置換基、アミノ置換基、シアノ置換基、ニトロ置換基、メルカプト置換基、チオール置換基、アミド置換基、もしくはオキソ置換基であり得る。A環上のXの位置は変更できる。例えば、A環がフェノールである場合、Xはパラ位もしくはメタ位であり得る。2番目の置換基はA環上のいずれかの位置を占め得る。2番目の置換基は、例えば、ヒドロキシ置換基、アミノ置換基、シアノ置換基、ニトロ置換基、メルカプト置換基、チオール置換基、アミド置換基、オキソ置換基、もしくはハロゲン(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり得る。
【0087】
いくつかの具体例では、A環は別の環と結合して二環構造を形成し得る。
【0088】
いくつかの具体例では、化合物(i)と(ii)の環A、B、およびC、ならびに化合物(ii)の環Dは各々、1個以上(1個、2個、3個、4個)の置換基(例えば、水素結合、疎水性相互作用および/もしくは静電気的相互作用などのヒトERアルファ−LBDとの好ましい相互作用を提供する1個以上の置換基)を独立して含み得る。いくつかの具体例では、置換基自身はヒトERアルファ−LBDとの水素結合供与体もしくは受容体であり得る一方で、他の具体例では、該置換基は水などの1つ以上の溶媒分子を介してヒトERアルファ−LBDの一部分と水素結合を形成し得る。
【0089】
化合物(i)のB/C縮合環系および化合物(ii)のB/C/D縮合環系は、Met421、His524、およびLeu425の領域においてERアルファポリペプチドと疎水性相互作用を形成し得る。選択的に、縮合環系はMet421と直接的もしくは間接的に相互作用でき、該相互作用は環のうちの1つのヘテロ原子もしくは環のうちの1つの置換基によって介在され得る。化合物(i)と(ii)の環Bと環C、および化合物(ii)の環D上の置換基は疎水性であり得る。化合物(i)のB/C環系の環上、および特に化合物(i)の環C上の置換基(Y)は、10個より多い炭素原子を含まず、化合物(ii)のB/C/D環系の環上の置換基は5個より多い炭素原子を含まない。
【0090】
一般に、Lは直接的な化学結合であり得るか、もしくはLは、例えば、スルホニル部分、アルキル部分、アルケニル部分、アルキニル部分、エーテル部分、チオエーテル部分、アミド部分、もしくはカルボニル部分などの化学的な部分から形成され得る。いくつかの具体例では、Lは複数の部分から形成され得る(例、アルキル部分に結合されたスルホニル部分)。
【0091】
上記に記述される特性を有するリガンドが化合物1もしくは化合物2に類似する生理的な効果を有し得ると考えられる。例えば、該リガンドは核因子−カッパB(NFκB)−誘導炎症現象を抑制できるが、天然ERアルファリガンド17β−エストラジオールの特性である女性化効果を有し得ない。
【0092】
以下の実施例は例示であり、限定することを意図されない。
【実施例】
【0093】
実施例1.4−[1−アリル−7−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾール−3−イル]ベンゼン−1,3−ジオール(化合物1)の合成。
工程1:1−アリル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾールの合成。
ピリジン中の(2−フルオロ−3−置換−フェニル)(4−メトキシ−2−置換−フェニル)メタノン(1当量)、ヒドラジン水和物(10当量)およびDMAP(1当量)の溶液を100℃で24−48時間加熱した。冷却した反応混合物をEtOAcおよび1N HClで分離した。有機相をブラインで洗浄し、(NaSOで)乾燥させた。生じた残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製して中間物3−(4−メトキシフェニル)−7−置換−1−1H−インダゾールを得た。
【0094】
DMF中の中間物3−(2,4−メトキシフェニル)−7−トリフルオロメチル−1H−インダゾール(0.52g、1.6mmol)の溶液に水素化ナトリウム(油中で60%、0.065g、1.6mmol)を添加した。ガス発生が停止した後、臭化アリル(0.138mL、1.6mmol)を添加し、反応物を50℃の環境で一晩撹拌させた。冷却反応混合物をEtOAcと1N HClで分離した。有機相をブラインで洗浄し、(NaSOで)乾燥させた。生じた残渣を、メチル−t−ブチルエーテル/ヘキサン(勾配溶離1:9から1:1)と一緒に10mL/分の速度でシリカゲルカラム150X12mm(Biotage)を通すフラッシュクロマトグラフィーもしくはHPLCクロマトグラフィーにより精製して白色固体として1−アリル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾール(0.26g)を得た。H NMR(DMSO−d):δ3.73 (s,3H),3.80(s,3H),4.85(dd,1H,J=1.5及び14.65),5.1(m,3H),5.97−6.05(m,1H),6.39(dd,1H,J=2.32および6.14),6.64(s,1H),7.25(t,1H),7.35(d,1H),7.85−7.87(m,2H))。
MS(ESI)m/z363[M+H]+。
【0095】
工程2:4−[1−アリル−7−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾール−3−イル]ベンゼン−1,3−ジオール
−78℃で1.0mLのシクロヘキセン含有CHCl中の1−アリル−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−7−(トリフルオロメチル)−1H−インダゾールを三臭化ホウ素(0.136mL、1.4mmol)で処理し、常温までゆっくり温めた。反応物をCHOHの滴下によって急冷して冷却反応物とした。溶媒を減圧除去し、残渣をEtOAcと1N HClで分離した。有機相をブラインで洗浄し、(NaSOで)乾燥させた。溶媒の減圧除去は粗成物をもたらした。結晶化もしくは水脱活性化シリカゲルを介するフラッシュクロマトグラフィーによって純粋な生成物を得た。0.066gのサンプルを白色固体として得た。
【0096】
HPLC保持時間を以下の条件を用いて得た:
カラム: Keystone Aquasil C18(50x2mm、5u)、
溶媒系: A:95% 10mM NHOAc/5% アセトニトリル
B:95% アセトニトリル 5% 10mM NHOAc、
勾配: 0−15分間で0%Bから100%Bまで
流量: 0.8mL/分
検出: UV(様々な波長)
【0097】
生成物の特性
融点:114−115℃;
HNMR(DMSO−d):δ4.87(dd,1H,J=1.37および17.10Hz),5.31−5.08(m,3H),6.01−6.08(m,H),6.39(dd,1H,J=2.44および8.40Hz),6.46(s,1H),7.30(t,1H),3.78(d,1H),7.85−7.87(m,1H),8.14−8.19(m,1H),9.59(broad s,1H),9.82(broad s,1H)
MS(ESI)m/z335[M+H]+。
1713の解析計算値: C:61.08,H:3.92,N:8.38;実測値:C:61.02,H:3.76,N:8.28。
【0098】
実施例2.化合物1はマウスにおける抗リウマチ作用を有する
化合物1をHAECT−1細胞(不死化させたヒト大動脈内皮細胞系統)のアッセイでテストした。HAECT−1細胞に、2つのプラスミド、すなわちヒトERアルファ遺伝子を発現するプラスミドとレポーター遺伝子NFκB−ルシフェラーゼを発現するプラスミドをトランスフェクトした。レポーター遺伝子のプロモーターには、3コピーの主要適合組織抗原クラスIプロモーターのNFκB結合部位を含めた。次に細胞をIL−1betaおよび化合物1と16−18時間処理した。NFκBの転写レベルは、ルシフェラーゼの存在量に直接的に比例した。古典的なエストロゲン活性は、in vitroにおけるER介在の遺伝子発現およびクレアチンキナーゼ(CK)活性の不足によって特徴付けられる。化合物1はNFκB−ルシフェラーゼレポーターの発現を17β−エストラジオールと同程度まで抑制した。該化合物はクレアチンキナーゼのレベルに効果を生じなかった。
【0099】
古典的なエストロゲン活性は、in vivoにおける子宮の増殖促進により特徴付けられる。In vivoにおける化合物1の効果をアッセイするため、C57/BL/6マウスに高脂肪の飼料を5週間与えた。NFκB標的遺伝子MHC、VCAM−1、RANTES、およびTNF−アルファの発現をTAC−Manアッセイによって測定した。マウスに10もしくは5mg/kg/日の割合で化合物1を5週間与えた場合に、4つの遺伝子全ての発現を抑制した(表1)。
【0100】
表1、NFκB標的遺伝子発現における17α−エチニルエストラジオールと化合物1の効果
【表1】

発現のパーセント抑制
0.01mg/kg/日の割合でEEを与えたことによる抑制と比較された発現のパーセント抑制
化合物1は表1に記述されるマウスにおいて子宮の湿重量の増加を引き起こさなかった。
【0101】
アジュバント誘発関節炎(AIA)の疾患モデルにおいて、化合物1は濃度依存的な経口投与により有効であることが見出された。ラットにフロインド完全アジュバント(CFA)を注射し、足根関節の滑膜炎をモニターした。注射後8日目からマウスに化合物1を経口で2週間処置した。足根関節は、1もしくは0.3mg/kg/日の用量で6日後において正常に回復した。0.1mg/kg/日の用量が活性であることは、表2の組織学的なスコアで示される(後述の表4も参照)。
表2.化合物1と経口で2週間処理されたアジュバント誘発関節炎にかかっている動物の足根関節の滑膜炎の組織学的なスコア
【表2】

【0102】
実施例3.4−[(8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン−5(6H)−イル)スルホニル]フェノール(化合物2)の合成
工程1:N−(4’−フルオロビフェニル−2−イル)アセトアミド
テトラヒドロフラン(1.5L)中の2−ヨードアニリン(32.6g、149mmol)と4−フルオロフェニルボロン酸(20.8g、149mmol)の撹拌溶液を、ジクロロメタン(2.20g、2.69mmol)および5N 水酸化ナトリウム(60mL)と一緒に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)複合体と窒素雰囲気下で処理した。反応混合物を還流下で12時間加熱し、室温まで冷却し、溶媒を減圧除去した。残渣を酢酸エチル(250mL)に溶解し、飽和させた水性塩化ナトリウム水溶液(100mL)で抽出した。水相を酢酸エチルでさらに抽出した(2x50mL)。一緒にした有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して茶色の油状物を得た。茶色の油状物を酢酸エチル−ヘキサン(1:4)の混合物で溶離して、シリカゲルの短カラムを通して濾過した。溶媒の減圧蒸発後、ジクロロメタン(75mL)中の粗成物4’−フルオロ−ビフェニル−2−イルアミンの溶液をピリジン(27.7mL、343mmol)、無水酢酸(15.5mL、164mmol)、および4−(N,N−ジメチルアミン)ピリジン(0.55g、4.5mmol)で処理した。室温で12時間撹拌後、反応物を飽和水性塩化アンモニウム溶液(250mL)で急冷した。分離させた水相をジクロロメタンで抽出し(3x75mL)、一緒にした有機相を0.1N 塩酸溶液(2x50mL)、および飽和水性重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で連続的に洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して2番目の茶色の油状物を得た。トルエンを添加して減圧除去した後(3x)、生じた茶色の固体を酢酸エチル−ヘキサンから結晶化させて所望する生成物である最初のクロップ(19.0g)を得た。母液を酢酸エチル−ヘキサン(1:4)で溶離して、シリカゲルのフラッシュカラムクロマトグラフィーにより濃縮および精製して2番目のクロップ(5.0g)を得た。
【0103】
一緒にしたクロップを均一な無色の結晶固体(24.0g、70%)として表題化合物を得た。
融点: 123−124℃;
MS[(+ESI),m/z]: 230[M+H]
H NMR(500MHz,DMSO−d)δ: 9.24(s,1H),7.44−7.23(m,8H),1.87(s,3H);
1412FNOの解析計算値: C,73.35;H,5.28;N,6.11. 実測値:C,73.09;H,5.20;N,5.89。
【0104】
工程2:8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン
N−(4’−フルオロビフェニル−2−イル)アセトアミド(18.5g、80.7mmol)をポリリン酸(250g)と混合し、激しい撹拌とともに120℃で48時間加熱した。高温の反応混合物を氷上に注ぎ、均一になるまで激しく撹拌した。pHが8以上になるまで水酸化アンモニウム(28−30%、水性)を添加した。白い沈殿物を濾過し、酢酸エチル(250mL)に溶解し、再度濾過した。一緒にした濾過物を飽和水性塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧蒸発させて茶色の固体を得た。茶色の固体を酢酸エチル−ヘキサンの混合物から結晶化により精製して白色の結晶固体(15.9g、94%)として表題化合物を得た。
融点:92−93℃;
MS[(+ESI),m/z]:212[M+H]
HNMR(500MHz,CDCl)δ:8.63(dd,J=9.0,5.4Hz,1H),8.49(dd,J=8.2,1.0Hz,1H),8.10(dd,J=8.1,1.1Hz,1H),7.84(dd,J=9.6,2.6Hz,1H),7.71(m,1H),7.65−7.57(m,2H),3.01(s,3H);
HNMR(400MHz,DMSO−d)δ:8.89(dd,J=9.1,5.6Hz,1H),8.70(dd,J=8.1,1.3Hz,1H),8.05(dd,J=10.1,2.5Hz,1H),7.97(dd,J=8.1,1.3Hz,1H),7.80(m,1H),7.70(m,1H),7.63(m,1H),3.01(s,3H);
1410FN・0.10HOの解析計算値:C,78.93;H,4.83;N,6.57。実測値:C,78.90;H,4.57;N,6.58。
【0105】
工程3:4−(クロロスルホニル)フェニルエチルカルボナート
1.25N 水酸化ナトリウム水溶液(170mL、213mmol)中の4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム二水和物(50.0g、215mmol)の溶液にクロロギ酸エチル(20.6mL、215mmol)で滴下処理した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。混合物を0℃まで冷却後、反応条件下で形成された白色沈殿物を濾過した。固体を70℃で減圧乾燥させた。白色固体(40.0g)をトルエン中(350mL)で懸濁させ、N,N−ジメチルホルムアミド(6.0mL)と塩化チオニル(22.0mL、298mmol)で処理し、生じた混合物を100℃で12時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を珪藻土に通して濾過した。濾過物を減圧濃縮し、生じた油状物を静置によって固体化させた。固体化させた油状物を酢酸エチル−ヘキサン(1:4)に溶解して、シリカゲルの短カラムを通して濾過し、溶媒を減圧除去して白色固体(34.8g、61%)として塩化スルホニルを得た。
融点: 74−76℃;
HNMR(400MHz,DMSO−d6)δ:7.60(d,J=8.7Hz,2H),7.14(d,J=8.8Hz,2H),4.23(q,J=7.1Hz,2H),1.26(t,J=7.1Hz,3H)。
【0106】
工程4:エチル4−[(8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン−5(6H)−イル)スルホニル]フェニルカルボナート
テトラヒドロフラン(152mL)中の8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン(8.00g、37.9mmol)の撹拌溶液を新鮮な粉砕された水素化ホウ素ナトリウム(7.16g、189mmol)で処理した。トリフルオロ酢酸(11.7mL、152mmol)を適切な速度の液滴により添加してガス発生と発熱反応状態を調節した。トリフルオロ酢酸の添加が完了した後、異種性の反応混合物を、反応物が室温になるまで撹拌し、次に14時間再加熱によって還流させた。室温まで冷却後、飽和水性重炭酸ナトリウム水溶液(250mL)をゆっくり添加した。混合物をグラスウールのプラグを通して濾過し、ジエチルエーテルで抽出した(4x75mL)。一緒にした有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して薄茶ペーストとしてジヒドロフェナントリジンを得た。ジクロロメタン(38mL)中の粗成物ジヒドロフェナントリジンの溶液をトリエチルアミン(31.7mL、227mmol)と4−(クロロスルホニル)フェニルエチルカルボナート(12.0g、45.3mmol)で処理し、室温で14時間撹拌した。反応物を0.1N 水酸化ナトリウム(150mL)で急冷し、ジクロロメタンで抽出した(6x50mL)。一緒にした有機抽出物を2N 塩酸溶液で洗浄し(2x40mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して粘性茶色油状物を得た。茶色油状物をヘキサン(25mL)と練和して薄茶固体を得た。薄茶の固体を酢酸エチル−ヘキサンの混合物から結晶化により精製して所望する生成物の最初のクロップを得た。母液を減圧濃縮し、酢酸エチル−ヘキサン(1:4)で溶離して、シリカゲルのプラグを介した濾過により精製して2番目のクロップを得た。一緒にしたクロップから白色結晶固体(15.2g、91%)として表題化合物を得た。
融点: 136−138℃;
MS[(+ESI),m/z]:442[M+H]
HNMR(500MHz,DMSO−d)δ:7.77(d,J=7.6Hz,1H),7.63(d,J=7.8Hz,1H),7.48−7.39(m,3H),7.19(dd,J=9.0,2.6Hz,1H),7.09(d,J=8.7Hz,2H),6.98(d,J=8.7Hz,2H),6.93(td,J=8.7,2.6Hz,1H),5.48(q,J=7.0Hz,1H),4.21(q,J=7.1Hz,2H),1.25(t,J=7.1Hz,3H),1.15(t,J=7.0Hz,3H);
2320FNOSの解析計算値:C,62.57;H,4.57;N,3.17。実測値:C,62.51;H,4.47;N,2.96。
【0107】
工程5:4−[(8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン−5(6H)−イル)スルホニル]フェノール
メタノール(5.0mL)中のエチル4−[(8−フルオロ−6−メチルフェナントリジン−5(6H)−イル)スルホニル]フェニルカルボナート(0.45g、1.02mmol)の溶液を1N 水酸化ナトリウム(5.1mL)水溶液で処理し、75℃で14時間加熱した。室温まで冷却後、メタノールを減圧蒸発させた。生じた混合水溶液を1N 塩酸水溶液で酸性にし、飽和水性塩化ナトリウム水溶液(100mL)で希釈し、ジクロロメタンで抽出した(5x15mL)。一緒にした有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して白色固体を得た。固体物を酢酸エチルで溶離したシリカゲルの短カラムを介した濾過によって精製して均一な白色結晶固体(0.34g、89%)として表題化合物を得た。
融点: 188℃;
MS[(−ESI),m/z]:368[M−H]
HNMR(500MHz,DMSO−d)δ:10.24(brs,1H),7.76(dd,J=7.6Hz,1.5,1H),7.60(dd,J=7.8,1.4Hz,1H),7.52(dd,J=8.7,5.0Hz,1H),7.41(m,1H),7.37(m,1H),7.17(dd,J=9.2,2.7Hz,1H),6.96(td,J=8.7,2.7Hz,1H),6.86(d,J=8.9Hz,2H),6.38(d,J=8.9Hz,2H),5.41(q,J=7.0Hz,1H),1.13(d,J=7.0Hz,3H);
2016FNOSの解析計算値:C,65.03;H,4.37;N,3.79。実測値:C,64.77;H,4.31;N,3.76。
【0108】
実施例4.化合物2は抗リウマチ作用を有する。
8−10週齢の42匹の雄ルイスラットを標準的な施設の操作手順で飼育した。それらに不断の餌と水による標準的な管理を行った。各動物を計画群を示すケージカードおよび動物番号により識別した。各ラット番号を尻尾上に消えないインクマーカーでマークした。フロイント完全アジュバント(Freund’s Adjuvant−Complete)(ミズーリ州、セントルイスのSigma Immuno Chemicals)を使用して関節炎を誘導した。各mLには、加熱滅菌されて乾燥された1mgの結核菌、0.85mLのミネラルオイルおよび0.15mLのマニーデモノオレート(mannide monooleate)(ロット番号084H8800)を包含した。
【0109】
ラット尻尾の付け根に0.1mLのフロイント完全アジュバントを皮内注射した。これらの動物を6匹のラットを含む7つの群に無作為に分けた。これらの群に、ビヒクル(2% Tween80、0.5% メチルセルロース)、または1.0mg/kg、0.3mg/kg、もしくは0.1mg/kgの化合物2を経口により毎日与えた。アジュバント注射後8日からこれらのラットに処置を開始した。
【0110】
関節炎の重症の程度を以下の疾患指標に関して毎日モニターした:後肢の紅斑、後肢の膨張、関節の圧痛、および動作と姿勢。0から3の整数スケールを用いて紅斑(0=正常の肢、1=軽度の紅斑、2=中程度の紅斑、3=重度の紅斑)と膨張(0=正常の肢、1=軽度の膨張、2=中程度の膨張、3=後肢の重度な膨張)のレベルを数値化した。1日あたりの最大スコアは12である(表3)。
表3.肢の膨張における化合物2の効果
【表3】

【0111】
Abacus Concepts Super分散分析(カリフォルニア州、バークレイのAbacus Concepts, Inc.)を用いて統計解析を行った。目的の全てのパラメーターを群間のダンカンの新多範囲事後検定を伴う分散分析の条件下にした。データを平均±標準偏差(SD)として表し、p<0.05の場合に差異を有意と判断した。
【0112】
関節のスコアについては、各化合物の濃度応答実験の結果を表3で表す。化合物2による処置後に肢の膨張と紅化の減少を観察した。これらは濃度応答性であると示唆された。ビヒクル処理ラットが肢の膨張と紅化を伴う重症の関節炎であることは明らかであった。
【0113】
研究の終了時点のラットをCOにより安楽死させ、後肢を解剖で除去し、10%の緩衝化ホルマリンで固定し、足根関節を脱灰し、パラフィンで包埋した。組織切片をヘマトキシリンとエオシン染色あるいはサフラニンO−ファストグリーン(Saffranin O−Fast Green)染色で染色した。
【0114】
試験者が処理群に左右されないためにスライドを符号化した。足根関節由来の滑膜組織を、滑膜の肥厚、炎症細胞の浸潤、およびパンヌス形成に基づいて評価した(表4を参照)。関節軟骨と骨をマンキンの組織学的グレーディングシステムを用いて評価した。滑膜軟骨の生化学的異常および代謝の異常を骨関節炎のヒトの腰由来のものと同様にして評価した(J.Bone Joint Surg(AM)53A:152−153を参照)(表5)。
表4.滑膜炎スコア
【表4】

表5.マンキンスコア
【表5】

【0115】
以下の表6と表7で表すように、化合物の処置後に滑膜と軟骨両方のスコア改善が観察された。化合物2はテストされた全ての濃度(下は0.1mg/kgまで)で滑膜と軟骨のスコア全体を有意に改善した。これは、該化合物が関節炎治療の重要な要素である疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)として機能し得ることを示す。
【表6】

平均±標準偏差
有意<ビヒクル
#有意<化合物2、0.1mg/kg
t有意<化合物2、0.1mg/kg
【表7】

平均±標準偏差
有意<ビヒクル
#有意<化合物2、0.1mg/kg
t有意<化合物2、0.1mg/kg
【0116】
コラーゲン誘導関節炎モデルにおける評価
関節炎がII型コラーゲンに対して産生されるモノクローナル抗体とリポ多糖(LPS)により誘導された、6−8週齢のBALB/cマウスにおいて化合物2を評価した。動物に0日目で合計4mg/マウスとなる4つの異なるmAbの組み合わせで静脈内投与し、続いて72時間(3日)後に25mgのLPSの静脈内投与を行った。3日目のLPS投与1時間後に、テスト化合物を経口のより1日1回15日間与えた。各動物において、0、5、7、10、14および17日目に両後肢体積の増加を水セル(12mm平方)による足容積測定装置を用いて測定した。後肢浮腫の30%以上の減少を有意と判断した。
【0117】
化合物2は、2.5mg/kgで経口投与される場合、実験を通じて脚の浮腫の30%以上を有意に抑制した。
【0118】
実施例5.化合物2は子宮の湿重量に影響しない
化合物の選択性を示す対照として、化合物2を、2.0% Tween80(w/v)/0.5%メチルセルロース(w/v)のビヒクルに50mg/kgの濃度で未成熟雌ラット(n=6/処理)に経口で与えた。動物を強制飼養により1日1回3日間処置した。4日目(最後の投薬後24時間)の安楽死の後に子宮を除去し、残存する脂肪と腸間膜をはぎ取って重量を測定した。化合物の用量(50mg/kg)は上記実験の効果のある用量より500倍高かった。図5のグラフで示されるように、1.5mg/kg(EC80)で与えられた17α−エチニルエストラジオール(EE)が子宮の重量を有意に促進する一方で、化合物2は子宮の湿重量の増加を示さなかった。
【0119】
実施例6:ERアルファ−LBD/化合物1とERアルファ−LBD/化合物2の結晶構造を調べた。
ヒトERアルファ−LBD(図6)をpET16b発現ベクター(ウィスコンシン州、マディソンのNovagen,Inc.)にクローン化し、タンパク質をBiostat C−10バイオリアクター(ペンシルベニア州、アレンタウンのB.Braun Biotech)における大腸菌BL21DE3−RP細胞(カリフォルニア州、ラ・ホーヤのStratagene)の高密度培養により過剰発現させた。培養液を1.0mM IPTG(最終濃度)によって37℃で3時間誘導した。細胞ペレットを−80℃でストックする前に液体窒素で急速凍結した。
【0120】
細胞ペレットを100mM Tris−HCl pH8.5、100mM KCl、1mM EDTAおよび4mM DTTの緩衝液中で再懸濁した。細胞懸濁液をミクロフルイダイザー(Model 110Y、マサチューセッツ州、ニュートンのMicrofluidics Corpt)に5回通して分離した。4℃で30分間遠心(13,000xg)後、ペレットを同一緩衝液中の4M 尿素で抽出した。遠心後、尿素抽出物をエストラジオール−セファロース高速流動カラムに適用した。最初にカラムを前記緩衝液中の1M 尿素で洗浄し、次に、1)50mM Tris−HCl、pH8.5、700mM KCl、1mM EDTAおよび1mM DTT;2)10% ジメチルホルムアミド中の50mM Tris−HCl、pH8.5、250mM NaSCN、1mM EDTA、および1mM DTT;ならびに3)10mM Tris−HCl、pH8.0で連続的に洗浄した。ERアルファ−LBDがまだエストラジオール−アフィニティーカラムに結合されている間に、カラムを10mM Tris−Hcl中の5mM ヨード酢酸、pH8.0、4℃で一晩平衡化して、カルボキシメチル化を行った。カルボキシメチル化されたERアルファLBDをNaSCN含有緩衝液中のリガンドと一緒に溶離した。異なるリガンド含有の溶離緩衝液は、100μM 17β−エストラジオール、または200μM 化合物1もしくは200μM 化合物2を含有した。リガンド結合受容体の存在をSDS−PAGEで調べた。リガンド結合ERアルファ−LBDを含む画分をプールし、Millipore Ultrafree centrifugal filtration deviceにより濃縮した。リガンド結合ERアルファ−LBDを含む濃縮溶液を、50mM 重炭酸アンモニウム、pH7.5で平衡化されたBioRadの使い捨て脱塩カラムで脱塩し、結晶化試験に使用した。
【0121】
リガンドと複合体を形成したERアルファ−LBDの結晶化条件を、Hamptonの結晶化スクリーン(crystallization screen)(カリフォルニア州、アリソ・ヴィージョのHampton Research)を用いて調べた。1回のスクリーンにおいて、3mlのタンパク質溶液(10mg/ml)を3mlの沈殿剤(20% PEG3350、0.15M 塩化リチウム、pH7.5で0.1M Hepes、および4% ベンズアミジン塩酸)と混合し、18℃で1mlの沈殿溶液に対して平衡化した。結晶は3日後に出現し始め、最大0.3x0.2x0.08mmの大きさまで育成した。
【0122】
30.0−2.4Åにおける分解能データをAdvanced Light Source(ALS)(カリフォルニア州、バークレイ)のQuantum 4 CCD面積検出器(area detector)を用いて収集した。データを−130℃で収集し、DENZOとSCALEPACK(OtwinowskiとMinor,Methods Enzymol.276:307−326,1997)を用いて処理した。ERアルファ/化合物1とERアルファ/化合物2両方の共結晶は、非対称単位あたり2分子を有する空間群2に属する。
【0123】
ERアルファ分子は、AmoRe(Navaza,Acta Crystallogr.A50:157−163,1994)による回旋と翻訳の研究における2erd.pdb(Shiauら,Cell 95:927−37,1998)由来の2量体モデルを用いて位置付けられる。構造のリファインメントを30から2.4Åまでの分解能全てのデータを用いてCNS(Brungerら,Acta Crystallogr.D54:905−921,1998)により実行した。両構造において、リガンドの位置とヘリックス12の位置を3Fo−2FcとFo−Fc電子密度マップを使用して同定した。再構築、最小化、および個々のB因子リファインメントのサイクル後、RworkとRfree因子は、ERアルファ−LBD/化合物1複合体構造において24.1%と27.5%まで、およびERアルファ−LBD/化合物2複合体構造において26.7%と30.5%まで収束した。最終モデルは、2コピーのタンパク質(残基307−546、そのうち、残基333−340、459−471および528−535を無秩序であるために除いた)、2つのリガンド、および水分子を含む。表8はデータ収集パラメーターと結果を集約する。
【表8】

【表9】

【0124】
化合物1および化合物2に結合したERアルファ−LBDの結晶構造の構造座標をそれぞれ表9と表10に表す。表において、「#」の列は、座標が寄与される各原子にインデックスを割り当てる。「名」の列は、原子のタイプを示し、「残基」の列は、原子が属するアミノ酸残基のタイプを示す。「鎖」は、原子が属するポリペプチドを示す。「残基#」は、原子の残基数を与える。例えば、表9の一行目の原子番号1はLeu306のβ炭素(CB)である。x、y、およびzの構造座標を各々、X、Y、およびZの列で与える。「occ」の列は、原子が占める占有率(1.00=全て占有)を表し、「B」の列は、Å単位におけるB因子(もしくは温度因子)を提供する。表9における結合化合物1の座標を、残基の列の項目「916」で表示し、表10における結合化合物2の座標を、残基の列の項目「132」で表示する。水は「HOH」による表9と10で表示される。
【0125】
化合物1および化合物2と複合体を形成したERアルファの全体構造は、以前に報告されたERアルファ構造(Brzozowskiら,Nature 389:753−8,1997)と非常に類似する。逆平行α−へリックスと短β−リボンの三層から形成される(図1)。両構造において、リガンドは、へリックスH3、H6、H7、H8、H11の側鎖、および鎖S1により形成される疎水性空洞内に配置される。非結晶学的二量体は、へリックスH10とH11によって形成される広い接触面を有する。N末端の5つの残基(H1)およびH11とH12を結ぶループは電子密度マップでは観察できない。
【0126】
図2と図3は、化合物1と化合物2およびERアルファの天然リガンド、17β−エストラジオールの結合様式における類似性と相違性を示す。全ての共構造において、リガンドは、それらのフェノールがGlu353の塩橋および空洞の一端の構造的に保存された水分子と水素結合を形成するような様式で配置される。化合物1はまた、空洞の先端近傍のArg394塩橋と水素結合を形成する。しかし、へリックスH11の近傍では、化合物1のトリフルオロメチル基と化合物2のフルオロ基がHis524を直接指し示すにもかかわらず、化合物1と化合物2はHis524のイミダゾール側鎖に結合する水素を欠落する。リガンドとの疎水性相互作用に関するアミノ酸残基の立体配座は、その他の点では、ERアルファ/17β−エストラジオール複合体で確かめられた立体配座に近い。
【0127】
ERアルファ/ラロキシフェン構造との比較(図4)は、H12の適正な組立とNR−ボックス結合を立体的に阻害するラロキシフェンと異なり、化合物1と化合物2の結合様式が明確な直接的な立体障害が全くないことを表す。それにもかかわらず、へリックスH12はリガンド結合部位上の特徴的な位置から離され、共アクチベーターのペプチド結合部位を占める。それゆえ、構造の観点から、これらの2つのリガンドがH12を誘導してアンタゴニストに類似した位置を利用すると示唆される。
【0128】
【表10】

【0129】
【表11】

【0130】
【表12】

【0131】
【表13】

【0132】
【表14】

【0133】
【表15】

【0134】
【表16】

【0135】
【表17】

【0136】
【表18】

【0137】
【表19】

【0138】
【表20】

【0139】
【表21】

【0140】
【表22】

【0141】
【表23】

【0142】
【表24】

【0143】
【表25】

【0144】
【表26】

【0145】
【表27】

【0146】
【表28】

【0147】
【表29】

【0148】
【表30】

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【表31】

【0150】
【表32】

【0151】
【表33】

【0152】
【表34】

【0153】
【表35】

【0154】
【表36】

【0155】
【表37】

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【表38】

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【表39】

【0158】
【表40】

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【表41】

【0160】
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【表49】

【0168】
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【0170】
【表52】

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【表70】

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【表72】

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【0200】
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【0210】
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【0218】
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【表101】

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【表103】

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【0225】
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【0226】
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【表109】

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【0229】
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【表120】

【0239】
【表121】

【0240】
【表122】

【0241】
【表123】

【0242】
【表124】

【0243】
【表125】

【0244】
【表126】

【0245】
【表127】

【0246】
【表128】

【0247】
【表129】

【0248】
【表130】

【0249】
【表131】

【0250】
【表132】

【0251】
【表133】

【0252】
【表134】

【0253】
【表135】

【0254】
【表136】

【0255】
【表137】

【0256】
【表138】

【0257】
【表139】

【0258】
他の具体例は特許請求の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】化合物1、化合物2もしくは17β−エストラジオールの代表的なリガンドとの複合体であるERアルファ二量体の構造を表すリボン図である。構造へリックスは、「H2」、「H3」、等で表される。構造シートはS1およびS2によって示される。
【図2】ERアルファに結合される17β−エストラジオールと化合物1の構造を比較する棒状モデル(stick model)である。
【図3】ERアルファに結合される17β−エストラジオールと化合物2の構造を比較する棒状モデルである。
【図4】ERアルファに結合されるラロキシフェンと化合物1の構造を比較する棒状モデルである。丸括弧は、化合物1とラロキシフェンがERアルファに結合される時のへリックス12(H12)の位置を示す。
【図5】ビヒクル、17α−エチニルエストラジオール(EE)、もしくは化合物2に対する子宮の重量(mg)の比較を表すグラフである。
【図6】ヒトERアルファ受容体(配列番号1)のアミノ酸配列である。結晶化に用いられる配列(ERアルファリガンド結合ドメイン)は下線で示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲン受容体ポリペプチド;および
少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有するリガンドであって、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの窒素を含むリガンド
を含む、結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項2】
エストロゲン受容体ポリペプチド;および
少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有するリガンドであって、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つは少なくとも2つのヘテロ原子を含むリガンド
を含む、結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項3】
少なくとも2つのヘテロ原子のうちの少なくとも1つが窒素である、請求項2の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項4】
エストロゲン受容体ポリペプチド;および
リガンド;
を含む、結晶化ポリペプチド−リガンド複合体であって、該リガンドがNFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくはヒトの子宮組織の増殖を促進しない、結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項5】
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を包含する縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を含む、請求項4の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項6】
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を包含する縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を含む、請求項4の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項7】
少なくとも2つの縮合環のうちの1つが置換アリール基である、請求項1ないし3、5もしくは6のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項8】
置換アリール基が、ハロ置換基、もしくはさらにハロで置換されたアルキル置換基を含む、請求項7の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項9】
該リガンドがインダゾールを含む、請求項1ないし6のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項10】
該リガンドが4−(インダゾール−3−イル)−フェノールを含む、請求項9の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項11】
該リガンドが3つの縮合環を含む、請求項1ないし8のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項12】
該リガンドがフェナントリジンを含む、請求項1、4もしくは5のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項13】
該リガンドがヒドロキシル置換基、メルカプト置換基、もしくはアミノ置換基を含む、請求項1ないし12のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項14】
該リガンドが構造:
【化1】


[式中、A、B、およびCは環系を表し、BおよびCは縮合環であり、Lはリンカー部分であり、Xはヒドロキシル置換基、メルカプト置換基、もしくはアミノ置換基であり、Yは、10個以下の炭素を含む炭素鎖である]
を有する、請求項1もしくは請求項4の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項15】
リガンドが構造:
【化2】

[式中、A、B、C、およびDは環系を表し、Lはリンカー部分であり、Xはヒドロキシル置換基、メルカプト置換基、もしくはアミノ置換基であり、ここで、
(a)BはCに縮合し、CはDに縮合するか、もしくは
(b)CとDは各々、Bに縮合する]
を有する、請求項1もしくは請求項4の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項16】
該リガンドが構造:
【化3】

を有する化合物1であるか、あるいは構造:
【化4】

を有する化合物2である、請求項1もしくは請求項4の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項17】
空間群C2を有する、請求項1もしくは請求項4の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項18】
格子定数a=104.803Å、b=54.124Å、c=97.102Å、およびβ=113.668゜を有する、請求項17の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項19】
格子定数a=105.128Å、b=52.927Å、c=95.534Å、およびβ=113.247゜を有する、請求項17の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項20】
エストロゲン受容体ポリペプチドがリガンド結合ドメインを含む、請求項1ないし19のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項21】
リガンドがリガンド結合ドメインに結合される、請求項20の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項22】
エストロゲン受容体ポリペプチドが哺乳類由来である、請求項1ないし21のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項23】
エストロゲン受容体ポリペプチドがヒト由来である、請求項22の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項24】
エストロゲン受容体ポリペプチドが非哺乳類由来である、請求項1ないし21のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項25】
エストロゲン受容体ポリペプチドが配列番号1に定義されるようなアミノ酸301−554を含む、請求項1ないし21のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項26】
複合体が少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折可能である、請求項1ないし25のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項27】
エストロゲン受容体ポリペプチドがERアルファポリペプチドである、請求項1ないし26のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項28】
複合体が表9もしくは表10の構造座標を含み、アルファ炭素原子の±2乗平均偏差が1.5Å以下である、請求項16の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項29】
リガンドが配列番号1のアミノ酸位置で定義されるERアルファポリペプチドのGlu353と相互作用する、請求項27の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項30】
リガンドが配列番号1のアミノ酸位置で定義されるエストロゲン受容体ポリペプチドのGlu353およびArg394と相互作用する、請求項27の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項31】
リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合する、請求項1ないし30のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項32】
リガンドが抗炎症作用を有する、請求項1ないし31のいずれか1項の結晶化ポリペプチド−リガンド複合体。
【請求項33】
エストロゲン受容体ポリペプチド;および
少なくとも2つの縮合環を包含する縮合環系を有するリガンドであって、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を含むリガンド
を含む結晶を包含する組成物。
【請求項34】
エストロゲン受容体ポリペプチド;および
少なくとも2つの縮合環を包含する縮合環系を有するリガンドであって、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を含むリガンド
を含む結晶を包含する組成物。
【請求項35】
エストロゲン受容体ポリペプチド;および
NFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくはヒトの子宮組織の増殖を促進しないリガンド
を含む結晶を包含する組成物。
【請求項36】
該リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合する、請求項33ないし35のいずれか1項の組成物。
【請求項37】
エストロゲン受容体ポリペプチドがエストロゲン受容体アルファポリペプチドである、請求項36の組成物。
【請求項38】
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法であって、
該リガンドが少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を含む方法。
【請求項39】
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法であって、
該リガンドが少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を含む方法。
【請求項40】
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法であって、
該リガンドがNFκB転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない方法。
【請求項41】
エストロゲン受容体ポリペプチドがERアルファポリペプチドである、請求項38ないし40のいずれか1項の方法。
【請求項42】
3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチドのリガンド結合ドメインを含む、請求項38ないし41のいずれか1項の方法。
【請求項43】
3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチド原子の構造座標を含む、請求項38ないし42の方法。
【請求項44】
構造座標が実験的に決定された座標である、請求項43の方法。
【請求項45】
3次元モデルがリガンドの構造座標を含む、請求項38ないし44のいずれか1項の方法。
【請求項46】
該モデルのリガンドを変更することをさらに含む、請求項45の方法。
【請求項47】
リガンドを変更することがリガンドの構造座標を変えることを含む、請求項46の方法。
【請求項48】
リガンドを変更することがリガンドの化学構造を変えることを含む、請求項46の方法。
【請求項49】
3次元モデルが配列番号1のアミノ酸位置で定義されるようなエストロゲン受容体ポリペプチドのアミノ酸Glu353、Arg394、Phe404、Met421、およびHis524の原子から成る群から選択される原子の構造座標を含む、請求項38ないし48のいずれか1項の方法。
【請求項50】
エストロゲン受容体ポリペプチドの原子と薬剤の原子の間の距離を算出することをさらに含む、請求項38ないし49のいずれか1項の方法。
【請求項51】
リガンドとエストロゲン受容体ポリペプチド間の相互作用と、薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチド間の予測相互作用を比較することをさらに含む、請求項38ないし51のいずれか1項の方法。
【請求項52】
エストロゲン受容体ポリペプチドを包含する組成物を提供することをさらに含む、請求項38ないし51のいずれか1項の方法。
【請求項53】
該組成物がエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を含む、請求項52の方法。
【請求項54】
エストロゲン受容体ポリペプチドと薬剤の相互作用を実験的に調べることをさらに含む、請求項53の方法。
【請求項55】
エストロゲン受容体ポリペプチドと薬剤の相互作用を、エストロゲン受容体ポリペプチドと第2の薬剤の相互作用と比較することをさらに含む、請求項54の方法。
【請求項56】
エストロゲン受容体ポリペプチドの3次元モデルを用いてエストロゲン受容体ポリペプチドと相互作用する薬剤を設計することを含む方法。
【請求項57】
エストロゲン受容体ポリペプチドがエストロゲン受容体アルファポリペプチドである、請求項56の方法。
【請求項58】
該3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合したリガンドを含む、請求項56もしくは57の方法であって、
該リガンドが少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含する方法。
【請求項59】
該リガンドがインダゾール誘導体である、請求項58の方法。
【請求項60】
該3次元モデルがリガンド原子の構造座標を含む、請求項58もしくは59の方法。
【請求項61】
該3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合されるリガンドを含む請求項56もしくは57の方法であって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含する方法。
【請求項62】
3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合されるリガンドを含む請求項56ないし61のいずれか1項の方法であって、
該リガンドがNFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない方法。
【請求項63】
該3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチドのリガンド結合ドメインを含む、請求項56ないし62のいずれか1項の方法。
【請求項64】
該薬剤がNFκBの転写活性を抑制する、請求項56ないし63のいずれか1項の方法。
【請求項65】
該3次元モデルがエストロゲン受容体ポリペプチド原子の構造座標を含む、請求項56ないし64のいずれか1項の方法。
【請求項66】
該構造座標が実験的に調べられた座標である、請求項65の方法。
【請求項67】
該構造座標が表9もしくは表10のものであり、アルファ炭素原子の±2乗平均偏差が1.5Å以下である、請求項66の方法。
【請求項68】
該3次元モデルが、配列番号1のアミノ酸位置で定義されるエストロゲン受容体ポリペプチドのアミノ酸Glu353、Arg394、Phe404、Met421、およびHis524の原子から成る群から選択される原子の構造座標を含む、請求項56ないし66のいずれか1項の方法。
【請求項69】
エストロゲン受容体ポリペプチドを含む結晶複合体の3次元構造の合理的な薬物デザインを行うことで薬剤を選択すること;
エストロゲン受容体ポリペプチドと薬剤を接触させること;次いで
エストロゲン受容体ポリペプチドに結合する薬剤の能力を検出すること
を含む方法。
【請求項70】
エストロゲン受容体ポリペプチドがERアルファポリペプチドである、請求項69の方法。
【請求項71】
該薬剤がコンピューターモデリングを介して選別される、請求項69もしくは70の方法。
【請求項72】
該薬剤を合成することをさらに含む、請求項69ないし71のいずれか1項の方法。
【請求項73】
NFκBの転写活性を抑制する薬剤の能力を検出することをさらに含む、請求項72の方法。
【請求項74】
In vivoにおける炎症を抑制もしくは軽減する薬剤の能力を検出することをさらに含む、請求項72の方法。
【請求項75】
エストロゲン受容体ポリペプチドと薬剤を含む補助結晶複合体を得ること;
補助結晶複合体の3次元構造を調べること;
補助結晶複合体の3次元構造を有する合理的な薬物デザインを行うことによって第2の薬剤を選別すること;
エストロゲン受容体ポリペプチドと第2の薬剤を接触させること;次いで
エストロゲン受容体ポリペプチドに結合する第2の薬剤の能力を検出すること
をさらに含む、請求項72ないし74のいずれか1項の方法。
【請求項76】
第2の薬剤がコンピューターモデリングを介して選択される、請求項75の方法。
【請求項77】
第2の薬剤を合成することをさらに含む、請求項75もしくは76の方法。
【請求項78】
NFκBの転写活性を抑制する第2の薬剤の能力を検出することをさらに含む、請求項77の方法。
【請求項79】
In vivoにおける炎症を抑制もしくは軽減する第2の薬剤の能力を検出することをさらに含む、請求項77の方法。
【請求項80】
リガンドとエストロゲン受容体ポリペプチドを接触させて組成物を形成し;次いで
組成物を結晶化させて、リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合している結晶複合体を形成すること
を含む方法であって、
該リガンドが少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含し、
該結晶複合体が少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折可能である、方法。
【請求項81】
エストロゲン受容体ポリペプチドがERアルファポリペプチドである、請求項80の方法。
【請求項82】
ハンギングドロップ蒸気拡散の使用を含む、請求項80もしくは81の方法。
【請求項83】
該リガンドがNFκBの転写活性を抑制可能である、請求項80ないし82のいずれか1項の方法。
【請求項84】
該リガンドがin vivoにおける炎症を抑制もしくは軽減可能である、請求項80ないし83のいずれか1項の方法。
【請求項85】
リガンドが、構造:
【化5】

を有する化合物1であるか、もしくは、構造:
【化6】

を有する化合物2である、請求項80ないし84のいずれか1項の方法。
【請求項86】
リガンドとエストロゲン受容体ポリペプチドを接触させて組成物を形成し;次いで
組成物を結晶化させて、リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合している結晶複合体を形成すること
を含む方法であって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含し、
該結晶複合体が少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折可能である方法。
【請求項87】
エストロゲン受容体ポリペプチドがエストロゲン受容体アルファポリペプチドである、請求項86の方法。
【請求項88】
リガンドとエストロゲン受容体ポリペプチドを接触させて組成物を形成し;次いで
組成物を結晶化させて、リガンドがエストロゲン受容体ポリペプチドに結合している結晶複合体を形成すること
を含む方法であって、
該リガンドが、NFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進せず、
該結晶複合体が少なくとも約3.5Åの分解能までX線を回折可能である方法。
【請求項89】
エストロゲン受容体ポリペプチドがエストロゲン受容体アルファポリペプチドである、請求項88の方法。
【請求項90】
コンピューターシステムに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関する情報を受容させ;
候補薬剤に関する情報を受容させ;そして
エストロゲン受容体ポリペプチドに対する候補薬剤の結合特性を決定させる
指令を含む、ソフトウェアシステムであって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含し、
該決定が、リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報、および候補薬剤に関連する情報に基づくものである、ソフトウェアシステム。
【請求項91】
コンピューターシステムに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関する情報を受容させ;
候補薬剤に関連する情報を受容させ;そして
エストロゲン受容体ポリペプチドに対する候補薬剤の結合特性を決定させる
指令を含む、ソフトウェアシステムであって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含し、
該決定が、リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報、および候補薬剤に関連する情報に基づくものである、ソフトウェアシステム。
【請求項92】
コンピューターシステムに:
リガンドに結合されるエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報を受容させ;
候補薬剤に関連する情報を受容させ;そして
エストロゲン受容体ポリペプチドに対する候補薬剤の結合特性を決定させる
指令を含む、ソフトウェアシステムであって、
該リガンドが、NFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進せず、
該決定が、リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報、および候補薬剤に関連する情報に基づくものである、ソフトウェアシステム。
【請求項93】
1つ以上のプロセッサで実行される場合に、1つ以上のプロセッサに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;
候補薬剤に関連する情報を受容させ;そして
エストロゲン受容体ポリペプチドに対する候補薬剤の結合特性を決定させる
記録された複数の指令を有するコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムであって、
ここで、該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含し、
該決定が、リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報、および候補薬剤に関連する情報に基づくものである、コンピュータープログラム。
【請求項94】
1つ以上のプロセッサで実行される場合に、1つ以上のプロセッサに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容させ;
候補薬剤に関する情報を受容させ;そして
エストロゲン受容体ポリペプチドに対する候補薬剤の結合特性を決定させる
記録された複数の指令を有するコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムであって、
ここで、該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含し、
該決定が、リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報、および候補薬剤に関連する情報に基づくものである、コンピュータープログラム。
【請求項95】
1つ以上のプロセッサで実行される場合に、1つ以上のプロセッサに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関する情報を受容させ;
候補薬剤に関する情報を受容させ;そして
エストロゲン受容体ポリペプチドに対する候補薬剤の結合特性を決定させる
記録された複数の指令を有するコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムであって、
ここで、該リガンドがNFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進せず、
該決定が、リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドの構造に関連する情報、および候補薬剤に関連する情報に基づくものである、コンピュータープログラム。
【請求項96】
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容し;次いで
候補薬剤とERアルファポリペプチドの結合特性をモデリングすること
を含む方法であって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含し、
該方法がソフトウェアシステムで実行される方法。
【請求項97】
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容し;次いで
候補薬剤とERアルファポリペプチドの結合特性をモデリングすること
を含む方法であって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含し、
該方法がソフトウェアシステムで実行される方法。
【請求項98】
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容し;次いで
候補薬剤とERアルファポリペプチドの結合特性をモデリングすること
を含む方法であって、
該リガンドがNFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進せず、
該方法がソフトウェアシステムで実行される方法。
【請求項99】
1つ以上のプロセッサで実行される場合に、1つ以上のプロセッサに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;そして
候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる
記録された複数の指令を有するコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムであって、
該リガンドが少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含するものである、コンピュータープログラム。
【請求項100】
1つ以上のプロセッサで実行される場合に、1つ以上のプロセッサに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;そして
候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる
記録された複数の指令を有するコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムであって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含するものである、コンピュータープログラム。
【請求項101】
1つ以上のプロセッサで実行される場合、1つ以上のプロセッサに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;そして
候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる
記録された複数の指令を有するコンピューター可読媒体を搭載するコンピュータープログラムであって、
該リガンドが、NFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しないものである、コンピュータープログラム。
【請求項102】
コンピューターシステムに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;そして
候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる
指令を含むソフトウェアシステムであって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含するものである、ソフトウェアシステム。
【請求項103】
コンピューターシステムに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;そして
候補薬剤とエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる
指令を含むソフトウェアシステムであって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含するものである、ソフトウェアシステム。
【請求項104】
コンピューターシステムに:
リガンドに結合するエストロゲン受容体ポリペプチドを含む複合体の構造に関連する情報を受容させ;そして
候補薬剤とのエストロゲン受容体ポリペプチドの結合特性をモデルさせる
指令を含むソフトウェアシステムであって、
該リガンドが、NFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しないものである、ソフトウェアシステム。
【請求項105】
合理的な薬物デザインを用いてERアルファ活性を調節可能な薬剤を選別し;次いで
患者に薬剤の治療上有効な量を投与すること
を含む、患者のERアルファ活性を調節する方法。
【請求項106】
該薬剤がNFκB活性を抑制可能である、請求項105の方法。
【請求項107】
該薬剤がin vivoにおける炎症を抑制もしくは軽減可能である、請求項105の方法。
【請求項108】
該合理的な薬物デザインが、ERアルファポリペプチドを包含する結晶複合体の3次元構造を使用することを含む、請求項105の方法。
【請求項109】
結晶複合体がリガンドをさらに含む請求項108の方法であって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの窒素を包含する方法。
【請求項110】
結晶複合体がリガンドをさらに含む請求項108の方法であって、
該リガンドが、少なくとも2つの縮合環を含む縮合環系を有し、少なくとも2つの縮合環のうちの少なくとも1つが少なくとも2つのヘテロ原子を包含する方法。
【請求項111】
結晶複合体がリガンドをさらに含む、請求項108の方法であって、
該リガンドがNFκBの転写活性を抑制し、マウスもしくは子宮組織の増殖を促進しない方法。
【請求項112】
合理的な薬物デザインを用いてERアルファ活性を有効にし得る薬剤を選別すること;次いで
それを必要とする患者に該薬剤の治療上有効な量を投与すること
を含む、ERアルファ活性に関連する状態にかかっている患者を処置する方法。
【請求項113】
患者がERアルファ活性に関連する状態になりやすいことを調べること;
ERアルファ活性をもたらすことが可能である薬剤を選別する合理的な薬物デザインを使用すること;次いで
患者に該薬剤の治療上有効な量を投与すること
を含む、ERアルファ活性に関連する状態にかかりやすい患者を予防的に処置する方法。
【請求項114】
該薬剤がNFκBの転写活性を抑制可能である、請求項112もしくは113の方法。
【請求項115】
該状態が炎症疾患である、請求項112もしくは113の方法。
【請求項116】
該炎症疾患が関節疾患である、請求項115の方法。
【請求項117】
該関節疾患が関節リウマチである、請求項116の方法。
【請求項118】
ERアルファ活性に関連する状態を処置もしくは予防する医薬品の製造において、ERアルファ活性に効果をもたらし得る合理的な薬物デザインによって選別される薬剤の使用。
【請求項119】
該薬剤がNFκBの転写活性を抑制可能である、請求項118の使用。
【請求項120】
該状態が炎症疾患である、請求項118の使用。
【請求項121】
該炎症疾患が関節疾患である、請求項120の使用。
【請求項122】
該関節疾患が関節リウマチである、請求項121の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−527045(P2008−527045A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552236(P2007−552236)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/001761
【国際公開番号】WO2006/078733
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】