説明

エストロゲン受容体調節剤

本発明は、化合物およびこれらの誘導体、これらの合成ならびにこれらのエストロゲン受容体調節剤としての使用に関する。本発明の化合物は、エストロゲン受容体に対するリガンドであることから、骨損失、骨折、骨粗鬆症、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、LDLコレステロールレベル上昇、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性ならびに癌、特に乳癌、子宮癌および前立腺癌などのエストロゲン機能に関係する各種状態の治療または予防において有用となり得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
天然および合成エストロゲンは、閉経後症状の緩和、アクネ治療、月経困難症および機能性子宮出血の治療、骨粗鬆症の治療、男性型多毛症の治療、前立腺癌の治療、顔面紅潮の治療ならびに心血管疾患の予防などの広い治療用途を有する。エストロゲンは治療的価値が非常に高いことから、エストロゲン反応性組織においてエストロゲン様挙動を模倣する化合物の発見がかなりの注目を集めてきた。
【0002】
エストロゲン受容体は、ERαおよびERβという2種類の形態を有することが認められている。これら2つの形態に対してリガンドは異なった結合を行い、各形態が結合リガンドに対して異なる組織特異性を有する。従って、ERαまたはERβに対して選択的であることから、特定のリガンドに対してある程度の組織特異性を与える化合物を有することが可能である。
【0003】
当業界で必要とされているのは、望ましくない副作用を起こすことなく、エストロゲン置換療法と同じ陽性応答を生じさせることができる化合物である。身体の異なる組織に対して選択的効果を発揮するエストロゲン様化合物も必要とされている。
【0004】
本発明の化合物は、エストロゲン受容体のリガンドであることから、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ページェット病、歯周病、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、LDLコレステロールレベル上昇、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏によって生じる抑鬱、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性および癌、特に乳癌、子宮癌および前立腺癌などのエストロゲン機能に関連する各種状態の治療または予防において有用となり得る。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、エストロゲン機能に関連する各種状態を治療または予防する方法に関する。本発明の1実施形態は、下記式Iの化合物ならびにその化合物の製薬上許容される塩および立体異性体を用いたエストロゲン関連障害の治療または予防によって示される。
【0006】
【化4】

【0007】
本発明は、エストロゲン機能に関係する各種状態の治療または予防方法に関するものである。本発明の1実施形態は、式Iの化合物ならびにその製薬上許容される塩および立体異性体を用いた疾患の治療または予防で示され、
【0008】
【化5】

[式中、
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素またはC(1−3)アルキルであり;
17は、水素、C(1−5)アルキル、C(1−5)アシル、C(2−5)アルケニルまたはC(2−5)アルキニルである。]
前記疾患は、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ページェット病、歯周病、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、抑鬱、閉経前後抑鬱、産後抑鬱、月経前症候群、躁鬱病、不安、認知症、強迫行動、注意力欠如障害、睡眠障害、興奮性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症、パーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性またはエストロゲン依存性の癌である。
【0009】
本発明の1実施形態では、
は水素、ハロ、メチルまたはシアノであり;
は水素、ハロ、メチルまたはシアノであり;
は水素、ハロ、メチルまたはシアノであり;
は水素またはC(1−3)アルキルであり;
17は水素、C(1−3)アルキル、C(2−3)アシル、C(2−3)アルケニルまたはC(2−3)アルキニルであり;この化合物の製薬上許容される塩および立体異性体が含まれる。
【0010】
本発明はまた、下記式の化合物:
【0011】
【化6】

[式中、
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
17は、水素、C(1−5)アルキル、C(1−5)アシル、C(2−5)アルケニルまたはC(2−5)アルキニルである。]およびその製薬上許容される塩および立体異性体;
ならびに有機ビスホスホン酸化合物;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体調節剤;アンドロゲン受容体調節剤;破骨細胞プロトンATPase阻害薬;HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンD類縁体;または選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬;またはこれらの製薬上許容される塩もしくは混合物を含む医薬組成物に関する。
【0012】
本発明は、下記式IIの化合物ならびにその製薬上許容される塩および立体異性体に関する。
【0013】
【化7】

式中、
は水素、ハロ、C(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は水素またはC(0−3)アルキルであり;
17は水素、C(1−5)アルキル、C(2−5)アルケニルまたはC(2−5)アルキニルであり;
ただし、RとRが両方とも水素であることはない。
【0014】
本発明の例としては
19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=R=R=R17=H);
19−ノル−10β−ビニル−3β−ヒドロキシ−17β−メトキシ−アンドロスト−5−エン(R=R=R=R17=H;R=CH);
17α−エチニル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=R=R=H;R17=CCH);
17α−ビニル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=R=R=H;R17=CHCH);
17α−メチル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=R=R=H;R17=CH);
19−ノル−10β−(1−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=CH;R=R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(シス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=H;R=CH;R=R17=H);
19−ノル−10β−(トランス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=H;R=CH;R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(1−エチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=CHCH;R=R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(シス−2−エチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=H;R=CHCH;R=R17=H);
19−ノル−10β−(トランス−2−エチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=H;R=CHCH;R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(1−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=Cl;R=R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(シス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=H;R=Cl;R=R17=H);
19−ノル−10β−(トランス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=H;R=Cl;R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(1−フルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=F;R=R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(シス−2−フルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=H;R=F;R=R17=H);
19−ノル−10β−(トランス−2−フルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=H;R=F;R=R=R17=H);
19−ノル−10β−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=H;R=R=F;R=R17=H);
19−ノル−10β−(トリフルオロビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=R=F;R=R17=H);
17α−エチニル−19−ノル−10β−トリフルオロビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(R=R=R=F;R=R17=CCH)
ならびにこれらの製薬上許容される塩などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の範囲には、上記の式Iの化合物および製薬上許容される担体からなる医薬組成物も含まれる。本発明は、製薬上許容される担体および本願において具体的に開示されている化合物からなる医薬組成物を包含することも想到される。本発明はさらに、本発明の医薬組成物の製造方法に関する。本発明はさらに、本発明の化合物および医薬組成物を製造する上で有用な方法および中間体に関する。本発明の上記および他の態様は、本明細書に記載の内容から明らかになろう。
【0016】
用途
本発明の化合物は、エストロゲン受容体の選択的調節剤であることから、哺乳動物、好ましくはヒトにおけるエストロゲン受容体機能に関係する各種の疾患および状態の治療または予防において有用である。
【0017】
エストロゲン受容体機能が関係する各種の疾患および状態には、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ページェット病、歯周病、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、LDLコレステロールレベル上昇、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏によって生じる抑鬱、閉経前後抑鬱、産後抑鬱、月経前症候群、躁鬱病、不安、認知症、強迫行動、注意力欠如障害、睡眠障害、興奮性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症およびパーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性および癌、特に乳癌、子宮癌および前立腺癌などがあるが、これらに限定されるものではない。本願にて特許請求される化合物を用いてこのような状態を治療する場合、必要な治療量は具体的な疾患に応じて変動するものであり、当業者であればそれを容易に確認することができる。予防および治療の両方が本発明の範囲によって想到されるが、上記状態の治療が好ましい用途である。
【0018】
本発明はまた、本発明の化合物および医薬組成物の投与によって、処置を必要とする哺乳動物においてエストロゲン受容体調節効果を誘発する方法に関する。
【0019】
本発明はまた、本発明の化合物および医薬組成物を投与することによって、処置を必要とする哺乳動物においてエストロゲン受容体拮抗効果を誘発する方法に関する。エストロゲン受容体拮抗効果は、ERα拮抗効果、ERβ拮抗効果またはERαおよびERβ拮抗効果の混合であることができる。
【0020】
本発明はまた、本発明の化合物および医薬組成物を投与することによって、処置を必要とする哺乳動物においてエストロゲン受容体作働効果を誘発する方法に関する。エストロゲン受容体作働効果は、ERα作働効果、ERβ作働効果またはERαおよびERβ作働効果の混合であることができる。本発明の好ましい方法は、ERβ作働効果の誘発である。
【0021】
本発明はまた、本発明の化合物および医薬組成物を投与することによって、処置を必要とする哺乳動物においてエストロゲン機能に関係する障害、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ページェット病、歯周病、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、LDLコレステロールレベル上昇、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏によって生じる抑鬱、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性および癌、特に乳癌、子宮癌および前立腺癌を治療または予防する方法に関する。本発明の例には、抑鬱の治療または予防方法がある。本発明の例には、不安の治療または予防方法がある。本発明の例には、顔面紅潮の治療または予防方法がある。本発明の例には、癌の治療または予防方法がある。本発明の例には、心血管疾患の治療または予防方法がある。
【0022】
本発明の1実施形態は、本発明の化合物および医薬組成物を投与することによって、処置を必要とする哺乳動物において癌、特に乳癌、子宮癌または前立腺癌を治療または予防する方法である。乳癌、子宮癌または前立腺癌の治療におけるSERMの利用は文献で公知である(T. J. Powles, ″Breast cancer prevention,″ Oncologist 2002; 7(1) : 60-4; Park, W. C. and Jordan, V. C., ″Selective estrogen receptor modulators (SERMS) and their roles in breast cancer prevention.″ Trends Mol Med. 2002 Feb; 8(2): 82-8; Wolff, A. C. et al., ″Use of SERMs for the adjuvant therapy of early-stage breast cancer,″Ann N Y Acad Sci. 2001 Dec; 949: 80-8; Steiner, M. S. et al., ″Selective estrogen receptor modulators for the chemoprevention of prostate cancer,″ Urology 2001 Apr; 57 (4 Suppl 1): 68-72参照)。
【0023】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における転移性骨疾患の治療または予防方法である。転移性骨疾患の治療におけるSERMの利用は文献において公知である(Campisi, C. et al., ″Complete resoultion of breast cancer bone metastasis through the use of beta-interferon and tamoxifen,″ Eur J Gynaecol Oncol 1993; 14 (6): 479-83参照)。
【0024】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における女性化乳房の治療または予防方法である。女性化乳房の治療におけるSERMの利用は文献において公知である(Ribeiro, G. and Swindell R., ″Adjuvant tamoxifen for male breast cancer.″ Br J Cancer 1992; 65: 252-254; Donegan, W., ″Cancer of the Male Breast,″ JGSM Vol. 3, Issue 4, 2000参照)。
【0025】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における閉経後骨粗鬆症、糖質コルチコイド骨粗鬆症、悪性腫瘍の高カルシウム血症、骨損失および骨折の治療または予防方法である。骨粗鬆症、悪性腫瘍の高カルシウム血症、骨損失または骨折を治療または予防するためのSERMの使用は文献において公知である(Jordan, V. C. et al., ″Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer, osteoporosis and coronary heart disease,″ Natl Cancer Inst 2001 Oct; 93(19): 1449-57; Bjarnason, NH et al., ″Six and twelve month changes in bone turnover are realted to reduction in vertebral fracture risk during 3 years of raloxifene treatment in postemenopausal osteoporosis,″ Osteoporosis Int 2001; 12(11): 922-3; Fentiman I. S., ″Tamoxifen protects against steroid-induced bone loss,″ Eur J Cancer 28: 684-685(1992); Rodan, G. A. et al., ″Therapeutic Approaches to Bone Diseases,″ Science Vol 289, 1 Sept. 2000参照)。
【0026】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における歯周病または歯喪失の治療または予防方法である。哺乳動物において歯周病または歯喪失を治療する上でのSERMの使用は文献において公知である(Rodan, G. A. et al., ″Therapeutic Approaches to Bone Diseases,″ Science Vol 289, 1 Sept. 2000 pp. 1508-14参照)。
【0027】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物におけるページェット病の治療または予防方法である。哺乳動物においてページェット病を治療する上でのSERMの使用は文献において公知である(Rodan, G. A. et al., ″Therapeutic Approaches to Bone Diseases,″ Science Vol 289, 1 Sept. 2000 pp. 1508-14参照)。
【0028】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における子宮筋腫の治療または予防方法である。子宮筋腫または子宮平滑筋腫を治療する上でのSERMの使用は文献において公知である(Palomba, S., et al, ″Effects of raloxifene treatment on uterine leiomyomas in postmenopausal women,″ Fertil Steril. 2001 Jul ; 76(1): 38-43参照)。
【0029】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における肥満の治療または予防方法である。肥満を治療する上でのSERMの使用は文献において公知である(Picard, F. et al., ″Effects of the estrogen antagonist EM-652.HCl on energy balance and lipid metabolism in ovariectomized rats,″ Int J Obes Relat Metab Disord. 2000 Jul; 24(7): 830-40参照)。
【0030】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における軟骨変形、慢性関節リウマチまたは骨関節炎の治療または予防方法である。軟骨変形、慢性関節リウマチまたは骨関節炎を治療する上でのSERMの使用は文献において公知である(Badger, A. M. et al., ″Idoxifene, a novel selective estrogen receptor modulator, is effective in a rat model of adjuvant-induced arthritis.″ J Pharmacol Exp Ther. 1999 Dec; 291(3): 1380-6参照)。
【0031】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における子宮内膜症の治療または予防方法である。子宮内膜症を治療する上でのSERMの使用は当業界において公知である(Steven R. Goldstein, ″The Effect of SERMs on the Endometrium,″ Annals of the New York Academy of Sciences 949: 237-242 (2001)参照)。
【0032】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における尿失禁の治療または予防方法である。尿失禁を治療する上でのSERMの使用は当業界において公知である(Goldstein, S. R., ″Raloxifene effect on frequency of surgery for pelvic floor relaxation,″ Obstet Gynecol. 2001 Jul; 98(1): 91-6参照)。
【0033】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における心血管疾患、再狭窄、低LDLコレステロールレベルおよび血管平滑筋細胞増殖の阻害の治療または予防方法である。エストロゲンは、コレステロールの生合成および心血管の健康状態に対して効果を有するように思われる。統計的に、心血管疾患の発生率は、閉経後女性および男性でほぼ同等である。しかしながら閉経前女性の方では、男性より心血管疾患の発生率がかなり低い。閉経後女性ではエストロゲン欠乏状態であることから、エストロゲンが心血管疾患の予防において有用な役割を果たすものと考えられている。その機序については十分に解明されているわけではないが、エストロゲンが肝臓での低密度脂質(LDL)コレステロール受容体を上昇させることで、過剰のコレステロールを除去できることを示す証拠がある。心血管疾患、再狭窄、低LDLコレステロールレベルおよび血管平滑筋細胞増殖の阻害の治療または予防におけるSERMの用途は当業界において公知である(Nuttall, ME et al., ″Idoxifene: a novel selective estrogen receptor modulator prevents bone loss and lowers cholesterol levels in ovariectomized rats and decreases uterine weight in intact rats,″ Endocrinology 1998 Dec; 139(12): 5224-34; Jordan, V. C. et al., ″Selective estrogen receptor modulation and reduction in risk of breast cancer, osteoporosis and coronary heart disease,″ Natl Cancer Inst 2001 Oct; 93(19): 1449-57; Guzzo JA., ″Selective estrogen receptor modulators--a new age of estrogens in cardiovascular disease?,″ Clin Cardiol 2000 Jan; 23(1): 15-7; Simoncini T, Genazzani AR., ″Direct vascular effects of estrogens and selective estrogen receptor modulators,″ Curr Opin Obstet Gynecol 2000 Jun; 12(3): 181-7参照)。
【0034】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における認識機能障害または大脳変性障害の治療または予防方法である。モデルにおいてエストロゲンは、不安および抑鬱の改善ならびにアルツハイマー病の治療もしくは予防など、認識機能に対する有用な効果を有することが示されている。エストロゲンは、コリン作動性機能、ニューロトロフィンおよびニューロトロフィン受容体発現を増加させることで、中枢神経系に影響する。エストロゲンはまた、グルタミン酸シナプス伝達を増加させ、アミロイド前駆体タンパク質プロセシングを変化させ、神経保護を与える。このように、本発明のエストロゲン受容体調節剤は、認識機能の改善あるいは認識機能障害、注意力欠如障害、睡眠障害、興奮性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症およびパーキンソン病の治療において有用である可能性がある(Sawada, H and Shimohama, S, ″Estrogens and Parkinson disease: novel approach for neuroprotection,″Endocrine. 2003 Jun; 21 (1) : 77-9; McCullough LD, and Hurn, PD, ″Estrogen and ischemic neuroprotection: an integrated view,″Trends Endocrinol Metab. 2003 Jul; 14 (5): 228-35参照;これらはその全内容が参照によって本明細書に組み込まれる)。認識機能障害の予防におけるSERMの用途は当業界において公知である(Yaffe, K., K. Krueger, S. Sarkar, et al. 2001. Cognitive function in postmenopausal women treated with raloxifene. N. Eng. J. Med. 344: 1207-1213参照)。
【0035】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における抑鬱の治療または予防方法である。抑鬱の予防におけるエストロゲンの用途は当業界において報告されている(Carranza-Liram S., Valentino-Figueroa ML, ″Estrogen therapy for depression in postmenopausal women.″ Int J Gynnaecol Obstet 1999 Apr; 65(1): 35-8参照)。具体的には、エストロゲン受容体ベータ(ERβ)選択的作働薬は、単剤であるいは他の薬剤との併用で、抑鬱、閉経前後抑鬱、産後抑鬱、月経前症候群、躁鬱病、不安、認知症および強迫行動などの不安または抑鬱疾患の治療において有用であると考えられる。臨床試験で、各種形態の溶鬱疾患の治療における天然エストロゲンである17β−エストラジオールの効力が示されている(Schmidt PJ, Nieman L, Danaceau MA, Tobin MB, Roca CA, Murphy JH, Rubinow DR. Estrogen replacement in perimenopause-related depression: a preliminary report. Am J Obstet Gynecol 183: 414-20, 2000;およびSoares CN, Almeida OP, Joffe H, Cohen LS. Efficacy of estradiol for the treatment of depressive disorders in perimenopausal women: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial. Arch Gen Psychiatry. 58: 537-8, 2001参照;これらは参照によって本明細書に組み込まれる)。ベテア(Bethea)ら(Lu NZ, Shlaes TA, Gundlah C, Dziennis SE, Lyle RE, Bethea CL. Ovarian steroid action on tryptophan hydroxylase protein and serotonin compared to localization of ovarian steroid receptors in midbrain of guinea pigs. Endocrine 11: 257-67, 1999;参照によって本明細書に組み込まれる)は、エストロゲンの抗抑鬱剤活性に、背側縫線核に集中するセロトニン含有細胞におけるセロトニン合成の調節が介在している可能性があることを示唆している。
【0036】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物に対して治療上有効量の上記の化合物または医薬組成物を投与することによる、処置を必要とする哺乳動物における不安の治療または予防方法である。不安などの情緒的プロセス調節におけるエストロゲン受容体の寄与は当業界において報告されている(Krezel, W., et al., ″Increased anxiety and synaptic plasticity in estrogen receptor beta-deficient mice.″ Proc Natl Acad Sci USA 2001 Oct 9; 98(21): 12278-82参照)。
【0037】
本発明の別の実施形態は、炎症または炎症性腸疾患の治療または予防方法である。クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、腸管(腸)が炎症状態となって、多くの場合再発性の腹部痙攣および下痢を引き起こす慢性障害である。炎症および炎症性腸疾患の治療におけるエストロゲン受容体調節剤の使用は、当業界で報告されている(Harris, H. A. et al.,″Evaluation of an Estrogen Receptor-β Agonist in Animal Models of Human Disease, ″Endocrinology, Vol. 144, No. 10 4241-4249参照)。
【0038】
本発明の別の実施形態は、高血圧の治療または予防方法である。エストロゲン受容体ベータは、血管機能および血圧の調節において何らかの役割を有することが報告されている(Zhu, et al., ″Abnormal Vacular Function and Hypertension in Mice Deficient in Estrgoen Receptor β,″Science, Vol 295, Issue 5554, 505-508, 18 January 2002参照)。
【0039】
本発明の別の実施形態は、男性または女性での性機能不全の治療または予防方法である。性機能不全の治療におけるエストロゲン受容体調節剤の使用は、当業界で報告されている(Baulieu, E. et al., ″Dehydroepiandrosterone(DHEA), DHEA sulfate, and aging: Contribution of the DHEAge Study to a scociobiomedical issue,″PNAS, April 11, 2000, Vol. 97, No. 8, 4279-4282;Spark, Richard F.,″Dehydroepiandrosterone : a springboard hormone for female sexuality,″Fertility and Sterility, Vol. 77, No. 4, Suppl 4, April 2002, S19-25参照)。
【0040】
本発明の別の実施形態は、網膜変性の治療または予防方法である。エストロゲンは、進行型の加齢性黄斑症のリスク低減の有用な効果を有することが明らかになっている(Snow, K. K., et al.,″Association between reproductive and hormonal factors and age-related maculopathy in postmenopausal women,″Americal Journal of Ophthalmology, Vol. 134, Issue 6, December 2002, pp. 842-48参照)。
【0041】
本発明の例には、処置を必要とする哺乳動物における骨粗鬆症の治療または予防用の医薬製造での上記いずれかの化合物の使用がある。本発明のさらに別の例には、骨損失、骨吸収、骨折、転移性骨疾患またはエストロゲン機能に関連する障害の治療または予防用の医薬製造での上記いずれかの化合物の使用がある。
【0042】
本発明の化合物は、標準的な製薬上の実務に従って、単独で、あるいは医薬組成物において場合によってミョウバンなど公知の補助剤とともに製薬上許容される担体または希釈剤と組み合わせて、哺乳動物、好ましくは人に投与することができる。この化合物は、経口投与することができるか、あるいは静脈、筋肉、腹腔内、皮下、直腸および局所の投与経路のように非経口投与することができる。
【0043】
経口用錠剤の場合、一般に使用される担体には乳糖およびコーンスターチなどがあり、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤が加えられるのが一般的である。カプセルの形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には乳糖および乾燥コーンスターチなどがある。本発明による化学療法化合物の経口使用においては、選択された化合物を例えば錠剤もしくはカプセルの形で、あるいは水溶液もしくは水系懸濁液として投与することができる。錠剤またはカプセルの形態で経口投与する場合、活性薬剤成分を、乳糖、デンプン、ショ糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどの経口用で無毒性の製薬上許容される不活性担体と組み合わせることができる。液体の形での経口投与の場合、経口薬剤成分を、エタノール、グリセリン、水などの経口用で無毒性の製薬上許容される不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望または必要に応じて、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤および着色剤を、混合物に組み込むこともできる。好適な結合剤には、デンプン、ゼラチン、グルコースもしくはβ−乳糖などの天然糖類、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカントもしくはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成ガム類、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウ類などがある。これらの製剤で使用される潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどがあるが、これらに限定されるものではない。経口投与用に水系懸濁液が必要な場合、有効成分を乳化剤および懸濁剤と組み合わせる。所望に応じて、ある種の甘味剤または香味剤を加えることができる。筋肉投与、腹腔内投与、皮下投与および静脈投与する場合、有効成分の無菌溶液を調製するのが普通であり、溶液のpHを好適に調節および緩衝しなければならない。静脈投与の場合、溶質の総濃度を管理して、製剤を等張性としなければならない。
【0044】
本発明の化合物は、小単ラメラ小胞、大単ラメラ小胞および多ラメラ小胞などのリポソーム投与系の形態で投与することもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン類などの各種リン脂質から形成することができる。
【0045】
本発明の化合物は、化合物分子が結合した個々の担体としてのモノクローナル抗体を用いて投与することもできる。本発明の化合物は、ターゲティング能を有する薬剤担体としての可溶性ポリマーと結合させることもできる。そのようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチルアスパルタミド−フェノールまたはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキサイド−ポリリジンなどがあり得る。さらに本発明の化合物は、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロピラン類、ポリシアノアクリレート類およびヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロックコポリマーなどの、薬剤徐放を行う上で有用な種類の生物分解性ポリマーに結合させることができる。
【0046】
本発明の化合物は、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ページェット病、歯周病、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、LDLコレステロールレベル上昇、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、エストロゲン欠乏によって生じる抑鬱、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性および癌、特に乳癌、子宮癌および前立腺癌を治療または予防する上で有用な公知の薬剤と併用しても有用である。本明細書に開示の化合物と本明細書に開示の障害を治療または予防する上で有用な他の薬剤との組み合わせは、本発明の範囲に含まれる。当業界で通常の技術を有する者であれば、これら薬剤と関与する疾患の特定の特徴に基づいて、どの薬剤組み合わせが有用であるかを理解することができると考えられる。そのような薬剤には、有機ビスホスホン酸化合物;カテプシンK阻害薬;エストロゲンまたはエストロゲン受容体調節剤;アンドロゲン受容体調節剤;破骨細胞プロトンATPase阻害薬;HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;PTHなどの骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンDまたは合成ビタミンD類縁体;選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI);アロマターゼ阻害薬;ならびにこれらの製薬上許容される塩および混合物などがある。好ましい組み合わせは、本発明の化合物と有機ビスホスホン酸化合物である。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物とカテプシンK阻害薬である。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物とエストロゲンである。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物とアンドロゲン受容体調節剤である。別の好ましい組み合わせは、本発明の化合物およびと骨芽細胞同化剤である。
【0047】
「有機ビスホスホン酸化合物」には、下記の化学式の化合物などがあるが、それに限定されるものではない。
【0048】
【化8】

式中、nは0〜7の整数であり;AおよびXは独立に、H、OH、ハロゲン、NH、SH、フェニル、C1−30アルキル、C3−30分岐もしくはシクロアルキル、2個もしくは3個のNを含む二環式環構造、C1−30置換アルキル、C1−10アルキル置換NH、C3−10分岐もしくはシクロアルキル置換NH、C1−10ジアルキル置換NH、C1−10アルコキシ、C1−10アルキル置換チオ、チオフェニル、ハロフェニルチオ、C1−10アルキル置換フェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニルおよびベンジルからなる群から選択され;nが0の場合、AおよびXの両方がHやOHから選択されることはなく、あるいはAとXが、それらの結合している炭素原子と一体となってC3−10環を形成している。
【0049】
上記の化学式において、この化学式に十分な原子を選択するならば、アルキル基は直鎖、分岐または環状であることができる。C1−30置換アルキルは非常に多様な置換基を有することができ、その例にはフェニル、ピリジル、フラニル、ピロリジニル、イミダゾニル、NH、C1−10アルキルもしくはジアルキル置換NH、OH、SHおよびC1−10アルコキシからなる群から選択されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記の化学式は、AまたはX置換基について複雑な炭素環、芳香族およびヘテロ原子構造を包含するものでもあり、この例にはナフチル、キノリル、イソキノリル、アダマンチルおよびクロロフェニルチオなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ビスホスホン酸化合物の製薬上許容される塩および誘導体もこの場合には有用である。塩の例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩ならびにモノ−、ジ−、トリ−もしくはテトラ−C1−30−アルキル置換アンモニウムからなる群から選択されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアンモニウム塩からなる群から選択されるものである。より好ましいものはナトリウム塩である。誘導体の例には、エステル、水和物およびアミドからなる群から選択されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
留意すべき点として、本発明の治療薬について言及する際に本明細書で使用される「ビスホスホン酸化合物」および「ビスホスホン酸化合物類」という用語は、ジホスホン酸化合物、ビホスホン酸類およびジホスホン酸類、ならびにそれらの塩および誘導体をも包含するものである。ビスホスホン酸化合物またはビスホスホン酸化合物類について言及する際の具体的な命名法の使用は、別段の断りがない限り本発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
前記有機ビスホスホン酸化合物の例としては、アレンドロン酸化合物、クロドロン酸化合物、エチドロン酸化合物、イバンドロン酸化合物(ibandronate)、インカドロン酸化合物(incadronate)、ミノドロン酸化合物(minodronate)、ネリドロン酸化合物(neridronate)、オルパドロン酸化合物(olpadronate)、パミドロン酸化合物(pamidronate)、ピリドロン酸化合物(piridronate)、リセドロン酸化合物(risedronate)、チルドロン酸化合物(tiludronate)およびゾレドロン酸化合物(zoledronate)、ならびにそれらの製薬上許容される塩およびエステルなどがあるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいビスホスホン酸化合物は、アレンドロン酸塩であり、特にアレンドロン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩またはアンモニウム塩である。好ましいビスホスホン酸塩の例はアレンドロン酸のナトリウム塩、特にアレンドロン酸の水和ナトリウム塩である。この塩は、全モル数の水または非全モル数の水で水和されていることができる。好ましいビスホスホン酸のさらに別の例は、アレンドロン酸の水和ナトリウム塩であり、特にその水和塩がアレンドロン酸モノナトリウム・3水和物である場合である。
【0054】
有機ビスホスホン酸化合物の詳細な用量は、投与計画、選択される特定のビスホスホン酸化合物、哺乳動物もしくはヒトの年齢、大きさ、性別および状態、治療対象の障害の性質および重度、ならびに他の関連する医学的および身体的要素に応じて変動する。ヒトの場合、ビスホスホン酸誘導体の有効経口用量は、代表的には約1.5〜約6000μg/kgであり、好ましくは約10〜約2000μg/kgである。別の投与法では、ビスホスホン酸化合物の投与は、1日1回以外の間隔で行うことができ、例えば週1回投与、週2回投与、2週で1回投与および月2回投与などがある。週1回投与の投与法では、アレンドロン酸モノナトリウム・3水和物は、35mg/週または70mg/週の用量で投与されるものと考えられる。ビスホスホン酸化合物は、月1回、さらには6ヶ月に1回、年1回あるいはさらに低頻度で投与することもできる(WO 01/97788(2001年12月27日公開)およびWO 01/89494(2001年11月29日公開)参照)。
【0055】
「エストロゲン」には、天然エストロゲン類[7−エストラジオール(E)、エストロンE)およびエストリオール(E)]、合成抱合エストロゲン類、経口避妊薬および硫酸化エストロゲン類などがあるが、これらに限定されるものではない(Gruber CJ, Tschugguel W, Schneeberger C, Huber JC., ″Production and actions of estrogens″ N Engl J Med 2002 Jan 31; 346(5): 340-52参照)。
【0056】
「エストロゲン受容体調節剤」とは、機序とは無関係に、エストロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体調節剤の例としては、エストロゲン、プロゲストゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン(droloxifene)、ラロキシフェン(raloxifene)、ラソフォキシフェン(lasofoxifene)、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン(idoxifene)、LY353381、LY117081、トレミフェン(toremifene)、フルベストラント(fulvestrant)、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパン酸、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンおよびSH646などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
「カテプシンK阻害薬」とは、システインプロテアーゼであるカテプシンKの活性を妨害する化合物を指す。カテプシンK阻害薬の例はPCT公開WO 00/55126(Axys Pharmaceuticals)およびWO 01/49288(Merck Frosst CanadaおよびAxys Pharmaceuticals)に記載されている。
【0058】
「アンドロゲン受容体調節剤」とは、機序とは無関係に、アンドロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体調節剤の例としては、フィナステリドおよび他の5α−レダクターゼ阻害薬、ニルタミド(nilutamide)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、リアゾロール(liarozole)および酢酸アビラテロン(abiraterone)などがある。
【0059】
「破骨細胞プロトンATPase阻害薬」とは、破骨細胞の頂端膜に認められ、骨吸収プロセスで重要な役割を果たすと報告されているプロトンATPaseの阻害薬を指す。このプロトンポンプは、骨粗鬆症および関連する代謝疾患の治療および予防において有用である可能性がある骨吸収阻害薬の設計において有望な標的を代表するものである(Farina et al., ″Selective inhibitors of the osteoclast vacuolar proton ATPase as novel bone antiresorptive agents,″ DDT, 4: 163-172 (1999)(全内容が参照によって本明細書に組み込まれる)参照)。
【0060】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害薬を指す。HMG−CoAレダクターゼに対して阻害活性を有する化合物は、当業界で公知のアッセイを用いることで容易に確認することができる。例えば、米国特許第4231938号第6欄およびWO84/02131の30〜33頁に記載もしくは引用されたアッセイを参照する。「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」および「HMG−CoAレダクターゼの阻害薬」という用語は、本明細書で使用する場合には同じ意味を有する。
【0061】
使用可能なHMG−CoAレダクターゼ阻害薬の例としては、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標);米国特許第4231938号、4294926号、4319039号参照)、シンバスタチン(simvastatin;ZOCOR(登録商標);米国特許第4444784号、4820850号、4916239号参照)、プラバスタチン(pravastatin;PRAVACHOL(登録商標);米国特許第4346227号、4537859号、4410629号、5030447号および5180589号参照)、フルバスタチン(fluvastatin;LESCOL(登録商標);米国特許第5354772号、4911165号、4929437号、5189164号、5118853号、5290946号、5356896号参照)、アトルバスタチン(atorvastatin;LIPITOR(登録商標);米国特許第5273995号、4681893号、5489691号、5342952号参照)およびセリバスタチン(cerivastatin;リバスタチン(rivastatin)およびBAYCHOL(登録商標)とも称される;米国特許第5177080号参照)などがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で用いることができる上記および別のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬の構造式は、ヤルパニの報告(M. Yalpani, ″Cholesterol Lowering Drugs″, Chemistry & Industry, pp.85-89(1996年2月5日))の87頁ならびに米国特許第4782084号および4885314号に記載されている。本明細書で使用されるHMG−CoAレダクターゼ阻害薬という用語は、HMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の全ての製薬上許容されるラクトンおよび開環酸型(すなわち、ラクトン環が開環して遊離酸を形成している)ならびに塩およびエステル型を含むものであり、これに関してこのような塩、エステル、開環酸およびラクトン型の使用は本発明の範囲に含まれる。ラクトン部分とこの相当する開環酸型の図を構造式IおよびIIとして以下に示してある。
【0062】
【化9】

【0063】
開環酸型が存在し得るHMG−CoAレダクターゼ阻害薬では、塩型およびエステル型は好ましくは開環酸から形成することができ、このような型は全て、本明細書で使用される「HMG−CoAレダクターゼ阻害薬」という用語に含まれる。好ましくはHMG−CoAレダクターゼ阻害薬は、ロバスタチンおよびシンバスタチンから選択され、最も好ましくはシンバスタチンである。本明細書において、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬に関しての「製薬上許容される塩」という用語は、好適な有機もしくは無機塩基と前記遊離酸とを反応させることで製造される本発明で用いられる化合物の無毒性の塩を意味し、特にナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛およびテトラメチルアンモニウムなどのカチオンから形成されるもの、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、1−p−クロロベンジル−2−ピロリジン−1′−イル−メチルベンズイミダゾール、ジエチルアミン、ピペラジンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどのアミンから形成される塩がある。塩の形のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬のさらに別の例としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、ブロマイド、エデト酸カルシウム塩、カムシル酸塩、炭酸塩、クロライド、クラブラン酸塩、クエン酸塩、ジヒドロクロライド、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨージド、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)および吉草酸塩などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
上記のHMG−CoAレダクターゼ阻害薬化合物のエステル誘導体は、温血動物の血流中に吸収されると、薬剤形を放出してその薬剤が改善された治療効力を与えることができるような形で開裂し得るプロドラッグとして働く場合がある。
【0065】
本明細書で使用する場合の「インテグリン受容体拮抗薬」とは、生理的リガンドのαβインテグリンへの結合を選択的に拮抗、阻害または妨害する化合物;生理的リガンドのαβインテグリンへの結合を拮抗、阻害または妨害する化合物;生理的リガンドのαβインテグリンおよびαβインテグリンの両方への結合を拮抗、阻害または妨害する化合物;ならびに毛細管内皮細胞上で発現される特定のインテグリンの活性を拮抗、阻害または妨害する化合物を指す。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリンの拮抗薬をも指す。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβおよびαβインテグリンのいずかの組合せの拮抗薬をも指す。ロードら(H. N. Lode and coworkers, PNAS USA 96: 1591-1596 (1999))は、自然腫瘍転移の根絶における抗血管新生αインテグリン拮抗薬および腫瘍特異的抗体−サイトカイン(インターロイキン−2)融合蛋白との間の相乗効果を認めている。その結果は、この組み合わせが癌および転移腫瘍成長の治療における効力を有することを示唆するものであった。αβインテグリン受容体拮抗薬は、現在入手可能ないずれの薬剤のものとも異なる新たな機序で骨吸収を阻害する。インテグリン類は、細胞−細胞相互作用および細胞−基質相互作用に介在するヘテロダイマー膜横断付着受容体である。αおよびβインテグリンサブユニットが、非共有結合的に相互作用し、2価カチオン依存的に細胞外基質に結合する。破骨細胞で最も豊富なインテグリンはαβであり(>10個/破骨細胞)、細胞移動および分極に重要な細胞骨格機構において律速的役割を果たすように思われる。αβ拮抗効果は、骨吸収阻害、再狭窄阻害、黄斑変性阻害、関節炎阻害、癌および転移成長の阻害から選択される。
【0066】
「骨芽細胞同化剤」とは、PTHなどの骨を形成する薬剤を指す。副甲状腺ホルモン(PTH)またはそのアミノ末端断片および類縁体の間歇投与が、動物およびヒトにおいて、骨損失を予防、停止、部分逆転させ、骨形成を刺激することが明らかになっている。詳細については、文献を参照する(D. W. Dempster et al., ″Anabolic actions of parathyroid hormone on bone, ″Endocr Rev 14: 690-709 (1993))。研究から、骨形成の刺激による骨量および骨強度の上昇において、副甲状腺ホルモンが臨床的に有用であることが示されている。結果はネールらが報告している(RM Neer et al., New Eng J Med 344 1434-1441 (2001))。
【0067】
さらに、THrP−(1−36)などの副甲状腺ホルモン関連蛋白断片または類縁体は、強力な抗カルシウム尿効果を示している[M. A. Syed et al., ″Parathyroid hormone-related protein-(1-36) stimulates renal tubular calcium reabsorption in normal human volunteers: implications for the pathogenesis of humoral hypercalcemia of malignancy,″ JCEM 86: 1525-1531 (2001)参照)。
【0068】
カルシトニンは、カルシウム代謝およびリン代謝に関与することが知られている主として甲状腺によって産生される32アミノ酸ペプチドである。カルシトニンは、破骨細胞の活性を阻害することで骨吸収を抑制する。従ってカルシトニンにより、骨芽細胞はより効果的に働き、骨を構築することができるようになる。
【0069】
「ビタミンD」には、ビタミンDのヒドロキシル化生理活性代謝物の天然生理不活性前駆体であるビタミンD(コレカルシフェロール)およびビタミンD(エルゴカルシフェロール);1α−ヒドロキシビタミンD;25−ヒドロキシビタミンDおよび1α,25−ジヒドロキシビタミンDなどがあるが、これらに限定されるものではない。ビタミンDおよびビタミンDは、ヒトにおいて同じ生理的効力を有する。ビタミンDまたはDが循環系に入ると、それはシトクロムP450−ビタミンD−25−ヒドロキシラーゼによってヒドロキシル化されて、25−ヒドロキシビタミンDを与える。その25−ヒドロキシビタミンD代謝物は生理的に不活性であり、腎臓においてシトクロムP450−モノオキシゲナーゼ、25(OH)D−1α−ヒドロキシラーゼによってさらにヒドロキシル化されて、1,25−ジヒドロキシビタミンDを与える。血清カルシウムが減少すると、カルシウム恒常性を調節し、25−ヒドロキシビタミンDの1,25−ジヒドロキシビタミンDへの変換を増加させることで血漿カルシウムレベルを上昇させる副甲状腺ホルモン(PTH)の産生が増加する。
【0070】
1,25−ジヒドロキシビタミンDは、カルシウムおよび骨代謝に対するビタミンDの効果を担当すると考えられる。1,25−ジヒドロキシ代謝物は、カルシウム吸収および骨格完全性を維持するのに必要な活性ホルモンである。カルシウム恒常性は、1,25ジヒドロキシビタミンDによって、単球性幹細胞が分化して破骨細胞となるのを誘発し、カルシウムが正常範囲内に維持されるようにすることで維持され、これによってカルシウムヒドロキシアパタイトが骨表面に沈着することで骨石化を生じる(Holick, MF, Vitamin D photobiology, metabolism, and clinical applications, In: DeGroot L, Besser H, Burger HG, eg al., eds. Endocrinology, 3rd ed., 990-1013 (1995)参照)。しかしながら、1α25−ジヒドロキシビタミンDのレベルが上昇すると、血中のカルシウム濃度上昇、ならびに骨代謝によるカルシウム濃度の異常制御を生じるために、高カルシウム血症を生じる場合がある。1α,25−ジヒドロキシビタミンDはさらに、骨代謝において破骨細胞活性を間接的に調節し、レベル上昇は骨粗鬆症において過度の骨吸収を増加させると予想することができる。
【0071】
「合成ビタミンD類縁体」には、ビタミンDに似た活性を示す非天然化合物などがある。
【0072】
選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、脳におけるセロトニン量を増加させることで作用する。抑鬱の治療においては、米国において過去10年間にSSRIが使用されて奏功している。SSRIの例には、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン(sertraline)、シタロプラムおよびフルボキサミンなどがあるが、これらに限定されるものではない。SSRIはまた、月経前症候群および月経前異形障害などのエストロゲン機能に関係する障害を治療するのにも用いられている(Sundstrom-Poromaa J, Bixo M, Bjorn I, Nordh O., ″Compliance to antidepressant drug therapy for treatment of premenstrual syndrome,″ J Psychosom Obstet Gynaecol 2000 Dec; 21(4): 205-11参照)。
【0073】
本明細書で使用される場合、「アロマターゼ阻害薬」という用語は、アロマターゼを阻害する能力を有する化合物を含むものであり、例えばアミノグルテミド(CYTANDREN(登録商標))、アナストラゾール(ARIMIDEX(登録商標))、レトロゾール(FEMARA(登録商標))、フォルメスタン(LENATRON(登録商標))、エクセメスタン(AROMASIN(登録商標))、アタメスタン(1−メチルアンドロスタ−1,4−ジエン−3,17−ジオン)、ファドロゾール(4−(5,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[1,5−a]ピリジン−5−イル)−ベンゾニトリル・1塩酸塩)、フィンロゾール(Finrozole;4−(3−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシ−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−プロピル)−ベンゾニトリル)、ボロゾール(6−[(4−クロロフェニル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル]−1−メチル−1H−ベンゾトリアゾール)、YM−511(4−[N−(4−ブロモベンジル)−N−(4−シアノフェニル)アミノ]−4H−1,2,4−トリアゾール)などの市販の阻害薬がある。
【0074】
固定用量として製剤する場合、そのような組合せ薬は、下記の用量範囲内の本発明の化合物および承認された用量範囲内での他の製薬上活性な薬剤を用いる。組合せ製剤が不適切である場合には別法として、本発明の化合物を、公知の製薬上許容される薬剤と順次使用することができる。
【0075】
本発明の化合物に関しての「投与」およびその派生表現(例:化合物の「投与」)は、処置を必要とする動物の系への、前記化合物または前記化合物のプロドラッグの導入を意味する。本発明の化合物またはこの化合物のプロドラッグが1以上の他薬剤(例:細胞毒剤など)との組合せで提供される場合、「投与」およびその派生表現はそれぞれ、前記化合物もしくはそのプロドラッグおよび他薬剤の同時および順次導入を含むものと理解される。本発明はその範囲に、本発明の化合物のプロドラッグを含む。概してそのようなプロドラッグは、インビボで必要な化合物に容易に変換可能な本発明の化合物の官能基誘導体である。このように、本発明の治療方法においては、「投与」という用語は、具体的に開示されている化合物または具体的に開示されていないが患者に投与した後にインビボで特定の化合物に変換される化合物を用いる前記の各種状態の治療を包含するものとする。好適なプロドラッグ誘導体の選択および製造に関する従来の手順については、文献に記載されている(例:″Design of Prodrugs″, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985;これの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。)。これらの化合物の代謝物は、本発明の化合物を生体環境に導入すると生成する活性化学種を含む。
【0076】
本発明はさらに、骨粗鬆症その他の骨障害の治療において有用な医薬組成物であって、製薬上許容される担体または希釈剤と併用して、あるいは併用せずに、治療上有効量の本発明の化合物を投与するものを包含するものである。本発明の好適な組成物には、本発明の化合物および薬理的に許容される担体(例:pHレベルが例えば7.4の生理食塩水)を含む水溶液などがある。この溶液は、局所ボラス注射によって患者の血流に導入することができる。
【0077】
本発明による化合物をヒト患者に投与する場合、1日用量は通常、個々の患者の年齢、体重および応答ならびに患者の症状の重度に応じて用量を変動させて、処方医によって決定される。
【0078】
ある使用例では、好適な量の化合物を、治療を受けている哺乳動物に投与する。適応の効果に使用される場合に本発明の経口用量は、約0.01mg/kg/日〜約100mg/kg/日、好ましくは0.01〜10mg/kg/日、最も好ましくは0.1〜5.0mg/kg/日の範囲である。経口投与の場合、組成物は好ましくは、治療を受ける患者に対する用量の対症的調節を行うために、有効成分0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100および500mgを含む錠剤の形で与える。医薬品は代表的には、有効成分約0.01mg〜約500mg、好ましくは有効成分約1mg〜約100mgを含む。静脈投与では、最も好ましい用量は、定速注入時で約0.1〜約10mg/kg/分の範囲である。有利には本発明の化合物は1日1回投与で投与することができるか、あるいは総1日用量を1日2回、3回または4回の分割用量で投与することができる。さらに、本発明の好ましい化合物は、好適な経鼻媒体の局所使用を用いて経鼻的に、あるいは当業者に公知の経皮貼付剤の形のものを用いて経皮経路で投与することができる。経皮投与系の形で投与するには、当然のことながら、その投与法を通じて投与は間歇的ではなく連続的なものとなる。
【0079】
本発明の化合物は、エストロゲン介在状態を治療する上で有用な他の薬剤と併用することができる。このような組み合わせの個々の成分は、分割または単一の組み合わせ形態で、治療の途中の異なる時点で別個に、あるいは同時に投与することができる。従って本発明は、そのような同時投与または交互投与の投与法を包含するものと理解すべきであり、「投与」という用語はこれに従って解釈すべきである。本発明の化合物とエストロゲン介在状態の治療に有用な他薬剤との組み合わせの範囲は原則として、エストロゲン機能化に関連する障害の治療に有用なあらゆる医薬組成物とのあらゆる組み合わせを含むことは明らかであろう。
【0080】
従って本発明の範囲は、有機ビスホスホン酸化合物;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体調節剤;アンドロゲン受容体調節剤;破骨細胞プロトンATPase阻害薬;HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンD類縁体;選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬;ならびにこれらの製薬上許容される塩および混合物から選択される第2の薬剤との併用での本願特許請求の化合物の使用を包含するものである。
【0081】
本発明の上記および他の態様は、本明細書の記載から明らかになろう。
【0082】
定義
本明細書で使用される「組成物」という用語は、所定の成分を所定量で含むもの、ならびに直接または間接に所定量での所定の成分の組み合わせによって得られるものを包含するものである。
【0083】
「治療上有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床関係者が追求する組織、系、動物またはヒトでの生理的または医学的応答を誘発する活性化合物または医薬の量を意味する。
【0084】
本明細書で使用される疾患の「治療」という用語は、疾患の予防、すなわちその疾患に曝露されるかその疾患の素因を有する可能性があるが、その疾患の症状をまだ経験したり示していない哺乳動物において、その疾患の臨床症状を発症させないようにすること;疾患の阻害、すなわちその疾患またはその臨床症状の進行を停止または軽減すること;あるいは疾患の改善、すなわち疾患またはその臨床症状の退行を生じさせることなどがある。
【0085】
本明細書で使用される「骨吸収」という用語は、破骨細胞が骨を分解するプロセスを指す。
【0086】
「アルキル」という用語は、直鎖または分岐非環状飽和炭化水素から1個の水素原子が脱離したと考えて誘導される置換基としての1価基を意味するものとする(すなわち、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CHCH(CH、−C(CHなど)。
【0087】
「アルケニル」という用語は、直鎖または分岐非環状不飽和炭化水素から1個の水素原子が脱離したと考えて誘導される置換基としての1価基を意味するものとする(すなわち、−CH=CH、−CH=CHCH、−C=C(CH、−CHCH=CH、など)。
【0088】
「アルキニル」という用語は、炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分岐非環状不飽和炭化水素から1個の水素原子が脱離したと考えて誘導される置換基としての1価基を意味するものとする(すなわち、−C≡CH、−C≡CCH、−C≡CCH(CH、−CHC≡CHなど)。
【0089】
「アシル」という用語は、上記の「アルキル」基の結合炭素上の2個の水素をカルボニル基に置き換えることで誘導される置換基としての1価の基を意味するものとする(すなわち、−COH、−COCH、−COCHCH、−COCHCHCH、−COCH(CH、−COCHCHCHCH、−COCHCH (CH、−COC(CHなど)。
【0090】
「ハロ」という用語は、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素を含むものとする。
【0091】
「置換(された)」という用語は、指定の置換基による複数の置換を含むものと考えられる。複数の置換基部分が開示または特許請求されている場合、その置換化合物は、1箇所もしくは複数箇所で1以上の開示または特許請求の置換基部分によって独立に置換されていることができる。独立に置換されているとは、(2個以上の)置換基が同一でも異なっていても良いことを意味している。
【0092】
本発明は、式Iの化合物のN−オキサイド誘導体および保護誘導体をも含む。例えば、式Iの化合物が酸化可能な窒素原子を有する場合、その窒素原子は当業界で公知の方法によってN−オキサイドに変換することができる。式Iの化合物がヒドロキシ、カルボキシ、チオールまたは窒素原子を含む基などの基を有する場合も、これらの基は好適な保護基で保護することができる。好適な保護基の総合的なリストは、グリーンらの著作に記載されている(T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. 1981;その開示は、全内容が参照によって本明細書に組み込まれる)。式Iの化合物の保護誘導体は、当業界で公知の方法によって製造することができる。
【0093】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸およびキラル面を有することができ(E. L. Eliel and S. H. Wilen, Stereo-chemistry of Carbon Compounds, John Wiley & Sons, New York, 1994, pp.1119-1190に記載のもの)、ラセミ体、ラセミ混合物および個々のジアステレオマーとして得られる場合があり、光学異性体を含む全ての可能な異性体およびこれらの混合物は本発明に包含される。さらに本明細書に開示の化合物は、互変異体として存在する場合があり、片方のみの互変異構造が描かれている場合であっても、両方の互変異体が本発明の範囲に含まれるものとする。例えば下記の化合物Aに対する特許請求は、互変異構造Bを含むものであり、この逆も当てはまり、しかもこれらの混合物も含むものと理解される。
【0094】
【化10】

【0095】
いずれかの可変因子(例:R、R、Rなど)が、いずれかの構成要素に複数個存在する場合、各場合についてのそれの定義は、他のいずれの場合からも独立である。さらに、置換基および可変因子の組合せは、そのような組合せによって安定な化合物が得られる場合にのみ許容される。置換基から環系内に引かれた線は、示された結合が置換可能ないずれの環炭素原子にも結合可能であることを示している。環系が多環式である場合、その結合は、近位の環のみにある好適な炭素原子に結合するものとする。
【0096】
当業者が本発明の化合物の置換基および置換パターンを選択することで、化学的に安定で、容易に入手可能な原料から当業界で公知の方法ならびに下記の方法によって容易に合成可能である化合物を提供できることは明らかであろう。ある置換基がそれ自体複数の基で置換されている場合、安定な構造が得られる限りにおいてこの複数の基は、同一炭素上または異なる炭素上にあることができることは明らかである。「1以上の置換基で置換されていても良い」という表現は、「少なくとも1個の置換基で置換されていても良い」という表現と等価であると解釈すべきであり、このような場合には好ましい実施形態は0〜3個の置換基を有する。
【0097】
本発明の化合物を選択するに当たって、当業界で通常の技術を有する者であれば、各種置換基、すなわちR、R、R、RおよびR17は化学構造の連結性について公知の原理と一致するように選択すべきであることは明らかである。
【0098】
代表的な本発明の化合物は代表的には、αおよび/またはβ−エストロゲン受容体に対してサブミクロ量の親和性を示すのが普通であり、好ましくはβ−エストロゲン受容体に対して作働作用を行うのが普通である。従って本発明の化合物は、エストロゲン機能に関連する障害を患う哺乳動物を治療する上で有用である。
【0099】
本発明の化合物は、ラセミ型または個々のエナンチオマーとして入手可能である。簡便のため、一部の構造は単一のエナンチオマーとして図示されているが、別段の断りがない限り、ラセミ型とエナンチオマー的に純粋なものの両方を含むものである。シスおよびトランス立体化学が本発明の化合物において示されている場合、留意すべき点として、この立体化学は別段の断りがない限り相対的なものと解釈すべきものである。例えば、(+)または(−)の指定は、示されている絶対立体化学を有する指定の化合物を表すものと理解すべきである。
【0100】
ラセミ混合物は、多くの従来法のいずれかによって個々のエナンチオマーに分離することができる。この方法には、キラルクロマトグラフィー、キラル補助剤による誘導体化とそれに続くクロマトグラフィーまたは結晶化による分離、ならびにジアステレオマー塩の分別結晶などがある。プロキラル中間体アニオンのエナンチオマープロトン化などの脱ラセミ化法も使用可能である。
【0101】
本発明の化合物は、エストロゲンが介在する状態を治療する上で有用な他薬剤と併用することができる。このような組み合わせの個々の成分は、治療の途中の異なった時点で別個に投与することができるか、あるいは分割もしくは単一の併用製剤で同時に投与することができる。従って、本発明はこのような同時投与法もしくは交互投与法を全て含むものであると理解すべきであり、「投与」という用語はこれに従って解釈されるべきものである。エストロゲン介在状態を治療する上で有用な他の薬剤と本発明の化合物との組み合わせの範囲が、基本的にはエストロゲン機能に関係する障害を治療する上で有用な医薬組成物とのあらゆる組み合わせを含むことは明らかであろう。
【0102】
本発明の化合物を使用する投与法は、患者の種類、動物種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療すべき状態の重度;投与経路;患者の腎臓および肝臓機能;ならびに使用される特定の化合物またはその塩に応じて選択される。通常の技術を有する医師、獣医または臨床関係者は、状態の予防、抑制または進行停止に必要な薬剤の有効量を容易に決定および処方することができる。
【0103】
本発明の方法では、本明細書に詳細に記載の化合物が有効成分を形成することができ、代表的には所期の投与形態、すなわち経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、シロップなどに関して好適に選択され、従来の製薬上の実務と一致する好適な医薬用の希釈剤、賦形剤または担体(本明細書においては、総称して「担体」材料と称する。)と混合して投与される。
【0104】
本発明の化合物の製薬上許容される塩には、無機または有機酸から形成される本発明の化合物の従来の無毒性塩などがある。例えば従来の無毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸から製造される塩などがある。上記の製薬上許容される塩および他の代表的な製薬上許容される塩の製造については、ベルグらの報告(Berg et al., ″Pharmaceutical Salts,″ J. Pharm. Sci., 1977: 66: 1-19;参照によって本明細書に組み込まれる。)に詳細な説明がある。本発明の化合物の製薬上許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性部分または酸性部分を有する本発明の化合物から合成することができる。一般的には塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによって、あるいは好適な溶媒または各種組合せの溶媒中、化学量論量または過剰量の所望の塩を形成する無機もしくは有機酸と遊離塩基とを反応させることで製造される。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機または有機塩基との反応によって形成される。
【0105】
本発明の化合物は、適切な材料を用いて下記の一般図式に従って製造することができ、後述の具体的な実施例によって例示される。しかしながら、下記実施例に記載の化合物は、本発明と見なされる唯一の属を形成するものと解釈すべきではない。当業者であれば、以下の製造手順の条件および工程についての公知の変更を用いてこれら化合物を製造できることは容易に理解できよう。別段の断りがない限り、温度はいずれも摂氏単位である。
【0106】
本発明の化合物は全合成によって製造することができるが、一般には市販のステロイド類を修飾する方がより実際的である。デヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロステンジオールが特に簡便な出発原料であるが、他の市販のステロイド類も使用可能である。C−19での官能化は、当業者には公知の多くの方法によって行うことができる。下記の図式に示したある簡便な方法は、C−19での酸化を可能とする手掛かりとしてアンドロステンジオールの5,6−オレフィンを用いる。当業者には公知の標準的な手順を用いて、アンドロステンジオールのC−3およびC−17ヒドロキシル基を最初に、酢酸エステル、シリルエーテル、THPエーテルまたは別の好適な保護基として保護する。5,6−オレフィンの官能化は、過塩素酸などの水系酸の存在下にN−ブロモアセトアミド、N−ブロモコハク酸イミドなどの臭素源で保護ジオール中間体を処理することで行う。この反応の生成物は、ステロイド核のC−6にアキシャルのヒドロキシル基を有し、それがC−19メチル基の酸化における手掛かりとなる。これを行うことができる一つの方法は、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒中でアルコール、ヨードベンゼンジアセテートおよびヨウ素の混合物を光分解することによるものである。得られた環状エーテルを活性化亜鉛粉末で還元することで、5,6−二重結合を再生し、19−ヒドロキシステロイドを得る。19−ヒドロキシステロイドを、当業者には公知である多くの酸化法によって主要なアルデヒド中間体Aに酸化することができる。この変換を行う上でのある有用な方法では、モレキュラーシーブスの存在下、塩化メチレンまたはクロロホルムなどの溶媒中、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(TPAP)およびN−メチルモルホリンN−オキサイド(NMO)とアルコールとを反応させる。このアルデヒドは、当業者には公知のウィティッヒ、ピーターソンまたはテッベ反応などの多くのオレフィン化反応の基質として働き得る。次に、標準的な条件を用いたヒドロキシル保護基の脱離によって図式に示した最終生成物が得られる。
【0107】
【化11】

【0108】
C−19での炭素置換基(R)は、下記の図式に示したように、アルデヒド中間体Aをグリニャル試薬またはアルキルリチウム試薬などの炭素求核剤と反応させることで導入することができる。次に、当業者には公知の多くの利用可能な酸化試薬のいずれかを用いて、得られた2級アルコールを酸化することで、ケトン中間体Bが得られる。ケトンBのオレフィン化とそれに続くヒドロキシル保護基の脱離によって、C−19置換類縁体が得られる。
【0109】
【化12】

【0110】
C−17での炭素置換基(R17)は、下記の図式に示したように、前記図式の生成物(C)をさらに反応させることで導入することができる。シリルエーテル、THPエーテルなどの適切な保護基でCのC−3で比較的小さいヒドロキシル基を選択的に保護し、次に当業者には公知の多くの入手可能な酸化試薬のいずれかを用いてC−17ヒドロキシル基を酸化することで、ケトン中間体Dを得る。グリニャル試薬またはアルキルリチウム試薬などの適切な炭素求核剤とC−17ケトンを反応させることで、R17基を導入する。その後、標準的な技術を用いてC−3ヒドロキシル保護基を脱離させることで、C−17置換類縁体Eを得る。
【0111】
【化13】

【0112】
実施例
製造1
13β,17β−アンドロスト−5−エンジオール・2酢酸エステル
【0113】
【化14】

【0114】
段階1:3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
デヒドロエピアンドロステロン(25.0g、0.0867mol)のメタノール(870mL)溶液を冷却したもの(0℃)に、水素化ホウ素ナトリウム(3.28g、0.0867mol)を、等量ずつ4回に分けて加えた(約2分間の間隔を設けて)。冷却浴を外し、濁った白色混合物を室温で90分間攪拌した。反応混合物を氷浴で冷却しながら、2N HCl(173mL、0.346mol)を滴下した。得られた混合物を真空下に濃縮して、湿った白色固体を得た。水(500mL)を加え、混合物を超音波処理し、濾過した。回収した固体を水(100mL)で洗浄し、真空デシケータで終夜乾燥させて、標題化合物を白色固体として得た。
【0115】
段階2:3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール・2酢酸エステル
3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(15.0g、0.05165mol)のピリジン(200mL)溶液に、無水酢酸(19.5mL、0.2mol)を加え(注意:添加は軽い発熱を伴う)、次に4−ジメチルアミノ−ピリジン(0.63g、0.00516mol)を加えた。得られた黄色溶液を室温で5.5時間攪拌し、ほとんどの溶媒を真空下に除去した。残留黄色−白色スラッジを、酢酸エチル(450mL)と1N HCl(450mL)との間で分配した。有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、溶媒留去してオフホワイト固体を得た。その粗生成物をヘキサン(500mL)から再結晶して、標題化合物を白色結晶性固体として得た。再結晶からの母液を濃縮してオフホワイト固体を得たが、それを再結晶したところ、第2の生成物塊を得ることができた。
【0116】
製造2:
19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール−2酢酸エステル
【0117】
【化15】

【0118】
段階1:5α−ブロモ−6β−ヒドロキシ−3β,17β−アンドロスタンジオール・2酢酸エステル
70%過塩素酸(0.79mL)の水溶液(水6.8mL)を、3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール・2酢酸エステル(4.17g、0.011mol)のジオキサン(56mL)および水(3.4mL)溶液に5℃で加えた。N−ブロモアセトアミド(2.25g、0.016mol)を少量ずつ20分間かけて加えた。得られた混合物を5℃で30分間攪拌し、室温で30分間攪拌してから、1%チオ硫酸ナトリウム溶液0.5mLを含む水に投入した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加えることで懸濁液をpH8に調節し、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して白色泡状物を得た。残留物を、先のバッチからの粗生成物0.296gと合わせ、アセトン/ヘキサンからの再結晶によって精製して、標題化合物を異性体の5β,6α副生成物約20%を含む白色固体として得た。
【0119】
段階2:5α−ブロモ−6β,19−エポキシ−3β,17β−アンドロスタンジオール2酢酸エステル
ヨウ化ベンゼン・2酢酸エステル(1.23g、0.0057mol)を、段階1の生成物(1.8g、0.0038mol)のシクロヘキサン(250mL)中懸濁液に加え、次にヨウ素(0.97g、0.0038mol)を加えた。得られた混合物を200W太陽光ランプで45分間照射し(注意:その間に、混合物の温度が約80℃まで上昇)。反応混合物を冷却して室温とし、氷/水に投入した。得られた混合物をエーテルで抽出した。有機層を2%チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をヘキサンから再結晶して、オフホワイト固体を得た。
【0120】
段階3:3β,17β,19−アンドロスト−5−エントリオール3,17−2酢酸エステル
活性化亜鉛末(11.1g、0.17mol;HCl水溶液で短時間処理し、次に水およびアセトンの順で洗浄し、真空乾燥することで使用前に活性化)および段階2の生成物(1.50g、0.0032mol)のテトラヒドロフラン(75mL)および水(7.5mL)中混合物を、65℃で1時間攪拌した。反応混合物を冷却して室温とし、濾過した。回収した固体をエーテルで洗浄し、合わせた濾液を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、淡黄色泡状物を得た。残留物をアセトン/ヘキサンから再結晶して、標題化合物を淡黄色固体として得た。母液の濃縮および再結晶によって、比較的純度の低い第2の生成物塊を淡黄色固体として得た。
【0121】
段階4:19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル
段階3の生成物(0.500g、0.00128mol)およびN−メチルモルホリンN−オキサイド(NMO、2.43g、0.0207mol)の塩化メチレン(10mL)溶液を冷却したもの(0℃)に、活性化4Åモレキュラーシーブス(4.2g)を加えた。得られた混合物を0℃で15分間攪拌してから、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(0.030g、0.0000854mol)を加えた。得られた混合物を0℃で90分間攪拌し、エーテルで希釈し、濾過した。回収固体をエーテルで洗浄した。合わせた濾液を亜硫酸ナトリウム水溶液および硫酸銅水溶液の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して白色固体を得た。残留物を、95:5塩化メチレン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を淡黄色固体として得た。
【0122】
製造3
19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール3,17−ビス−O−テトラヒドロピラニルエーテル
【0123】
【化16】

【0124】
段階1:19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル(0.40g、0.00103mol)および10%水酸化カリウムのメタノール(20mL)中混合物を室温で6時間攪拌した。ほとんどの溶媒を減圧下に除去し、残留物を水と5%メタノール/塩化メチレンとの間で分配した。水層を塩化メチレンで抽出し(2回)、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、標題化合物をオフホワイト固体として得た。
【0125】
段階2:19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール3,17−ビス−O−テトラヒドロピラニルエーテル
19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(0.292g、0.00096mol)、ジヒドロピラン(1.0mL、0.011mol)およびトシル酸ピリジニウム(0.061g、0.00024mol)のテトラヒドロフラン(12mL)中混合物を室温で終夜攪拌した。ほとんどの溶媒を減圧下に除去し、残留物を水と塩化メチレンとの間で分配した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物を、メタノール/水から再結晶して、標題化合物を黄色固体として得た。NMR分析は、ジアステレオマーの混合物を示した。
【実施例1】
【0126】
19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
【0127】
【化17】

【0128】
段階1:19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル
メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.503g、0.0014mol)のテトラヒドロフラン(5mL)懸濁液を冷却したもの(0℃)に、n−ブチルリチウム(1.63Mヘキサン溶液0.80mL、0.0013mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で1時間攪拌し、19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル(0.182g、0.000469mol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加えた。混合物を0℃で4時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応停止した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し(2回)、合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、ガム状黄褐色固体を得た。NMR分析では、生成物と脱アセチル化生成物の混合物が示された。精製を容易にするため、粗生成物混合物を再度アセチル化し(塩化メチレン(2mL)に溶かし、次に4−ジメチルアミノピリジン(結晶数個)、ピリジン(0.020mL)および無水酢酸(0.074mL、0.00074molを加えた)、室温で終夜攪拌し、酢酸エチルで希釈し、希HCl水溶液、水およびブラインの順で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、ガム状琥珀色固体を得た。得られた粗生成物を、9:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を無色油状物として得た。
【0129】
段階2:19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
段階1の生成物(0.193g、0.0005mol、いくつかのバッチの生成物を合わせたもの)および1N水酸化ナトリウム(2mL、0.002mol)のメタノール(5mL)中混合物を室温で3時間攪拌し、1N HClを加えることで中和した。ほとんどの溶媒を減圧下に除去し、残留物を水で希釈し、濾過した。回収固体を水で洗浄し、メタノールに溶かし、濾過して、不溶物を除去した。メタノールを減圧下に除去し、残留物をアセトン/ヘキサンから再結晶して、標題化合物を白色固体として得た。母液の濃縮および再結晶によって、第2の標題化合物塊を白色固体として得た。主要なH NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ5.65(1H、dd、J=11,17Hz)、5.28(1H、dd、J=2,11Hz)、4.95(1H、dd、J=2,17Hz)、3.61(1H、t、J=9Hz)、0.65(3H、s)。
【実施例2】
【0130】
19−ノル−10β−(シス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
【0131】
【化18】

【0132】
段階1:19−ノル−10β−(シス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル
エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.373g、0.001mol)のテトラヒドロフラン(6mL)懸濁液を冷却したもの(0℃)に、n−ブチルリチウム(1.63Mヘキサン溶液0.60mL、0.00096mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で1時間攪拌し、19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル(0.130g、0.000335mol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加えた。混合物を0℃で4時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応停止した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し(2回)、合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、ガム状黄褐色固体を得た。NMR分析では、生成物と脱アセチル化生成物の混合物が示された。精製を容易にするため、粗生成物混合物を再度アセチル化し(塩化メチレン(2mL)に溶かし、次に4−ジメチルアミノピリジン(結晶数個)、ピリジン(0.050mL)および無水酢酸(0.053mL、0.00053molを加えた)、室温で終夜攪拌し、酢酸エチルで希釈し、希HCl水溶液、水およびブラインの順で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、ガム状琥珀色固体を得た。得られた粗生成物を、9:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物をオフホワイト固体として得た。少量の純度が低いトランス異性体が副生成物として単離された。
【0133】
段階2:19−ノル−10β−(シス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
段階1の生成物(0.025g、0.0000625mol)および1N水酸化ナトリウム(0.25mL、0.00025mol)のメタノール(1mL)中混合物を室温で3時間攪拌し、1N HClを加えることで中和した。ほとんどの溶媒を減圧下に除去し、残留物を水で希釈し、濾過した。回収固体を水で洗浄し、メタノールに溶かし、濾過して、不溶物を除去した。メタノールを減圧下に除去し、残留物をアセトン/ヘキサンから再結晶して、標題化合物を白色固体として得た。主要なH NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ5.61(1H、dq、J=12,7Hz)、5.08(1H、dq、J=12,2Hz)、3.63(1H、t、J=9Hz)、1.70(3H、dd、J=2,7Hz)、0.70(3H、s)。
【実施例3】
【0134】
19−ノル−10β−(シス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオールジオールおよび19−ノル−10β−(トランス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
【0135】
【化19】

【0136】
段階1:19−ノル−10β−(シス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステルおよび19−ノル−10β−(トランス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル
クロロメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(0.170g、0.00049mol)のテトラヒドロフラン(7mL)懸濁液を冷却したもの(−45℃)に、n−ブチルリチウム(1.63Mヘキサン溶液0.30mL、0.000489mmol)を加えた。得られた混合物を−45℃で1時間攪拌し、19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール2酢酸エステル(0.050g、0.000129mol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加えた。混合物を−45℃で10分間攪拌し、昇温させて室温とした。得られた混合物を室温で3時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応停止した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し(2回)、合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、ガム状黄褐色固体を得た。粗生成物について、9:1ヘキサン:酢酸エチルで最初に溶離し、溶離液を徐々に3:2ヘキサン:酢酸エチルに変える(勾配溶離)シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー精製を行って、シス:トランスの4:1オレフィン異性体混合物である無色油状物としての標題化合物を得た。
【0137】
段階2:19−ノル−10β−(シス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオールおよび19−ノル−10β−(トランス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
段階1の生成物(0.038g、0.00009mol)および1N水酸化ナトリウム(0.50mL、0.0005mol)のメタノール(1mL)中混合物を室温で終夜攪拌し、1N HClを加えることで中和した。ほとんどの溶媒を減圧下に除去し、残留物を水に懸濁させ、塩化メチレンで抽出した(3回)。合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、無色油状物を得た。粗生成物を他の3回のバッチの生成物と合わせ、4:1塩化メチレン:酢酸エチルを溶離液とするフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物をオレフィン異性体の混合物として得た。そのオレフィン異性体を、91:9ヘプタン:エタノールを溶離液とするキラルセル(Chiralcel)OJカラムでの分取HPLCによってさらに精製して、標題化合物を単独のオレフィン異性体として得た(オレフィンの幾何学はNMR分析によって決定)。シス異性体についての主要なH NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ6.28(1H、d、J=8Hz)、5.56(1H、d、J=8Hz)、3.55(1H、t、J=9Hz)、0.70(3H、s);トランス異性体についての主要なH NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ5.87(1H、d、J=14Hz)、5.84(1H、d、J=14Hz)、3.55(1H、t、J=9Hz)、0.66(3H、s)。
【実施例4】
【0138】
19−ノル−10β−(シス−2−ブロモ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
【0139】
【化20】

【0140】
段階1:19−ノル−10β−(シス−2−ブロモ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール−3,17−ビス−O−テトラヒドロピラニルエーテルおよび19−ノル−10β−(トランス−2−ブロモ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール−3,17−ビス−O−テトラヒドロピラニルエーテル
ブロモメチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(6.45g、14.8mmol)のテトラヒドロフラン(6mL)懸濁液を冷却したもの(0℃)に、カリウムtert−ブトキシド(1M THF溶液14.0mL、14mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で2時間攪拌し、19−オキソ−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール3,17−ビス−O−テトラヒドロピラニルエーテル(1.0g、2.1mmol)を加えた。混合物を終夜還流攪拌し、冷却して室温とし、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることで反応停止した。得られた混合物を酢酸エチルで抽出し(3回)、合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、暗琥珀色ガム状物を得た。粗生成物を、最初に9:1ヘキサン:酢酸エチルで溶離し、溶離液を徐々に4:1ヘキサン:酢酸エチルに変えていく(勾配溶離)シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を無色油状物として得て、これはシスおよびトランスのオレフィン異性体混合物であった。追加の取得物をモノ−THPエーテルとして単離し、所望に応じてビス−THPエーテルに再利用可能であると考えられる。
【0141】
段階2:19−ノル−10β−(シス−2−ブロモ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
段階1の生成物(300mg、0.55mmol;いくつかのロットの生成物を合わせたもの)およびトシル酸ピリジニウム(360mg、1.4mol)のメタノール(5mL)溶液を室温で終夜攪拌し、酢酸エチルで希釈し、水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮して、黄褐色固体を得た。粗生成物を、3:2ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して標題化合物を得た(オレフィンの幾何学はNMR分析によって決定した)。主要なH NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ6.34(1H、d、J=8Hz)、5.90(1H、d、J=8Hz)、3.63(1H、t、J=9Hz)、0.72(3H、s)。相対的に活性が低いトランス生成物も粗生成物から単離することができた。ただし、誘導体化と大がかりなクロマトグラフィーが必要であった。
【実施例5】
【0142】
19−ノル−10β−ビニル−17α−メチル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
【0143】
【化21】

【0144】
段階1:3−β−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−19−ノル−10β−ビニル−17β−ヒドロキシ−アンドロスト−5−エン
19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール(119mg、0.39mmol)、イミダゾール(170mg、2.5mmol)およびtert−ブチルジメチルシリルクロライド(219mg、1.4mol)のジメチルホルムアミド(3mL)溶液を室温で30分間攪拌し、酢酸エチルと水との間で分配した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。粗生成物を、3:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を白色固体として得た。
【0145】
段階2:3−β−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−19−ノル−10β−ビニル−17−オキソ−アンドロスト−5−エン
段階1の生成物(74mg、0.18mmol)およびN−メチルモルホリン−N−オキサイド(330mg、2.8mmol)の塩化メチレン(3mL)溶液を活性化4Åモレキュラーシーブスとともに室温で攪拌しながら、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム(5.9mg、0.017mmol)を加えた。得られた混合物を室温で終夜攪拌し、エーテルで希釈し、濾過した。濾液を減圧下に濃縮し、粗生成物について、9:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによる精製を行って、標題化合物を白色固体として得た。
【0146】
段階3:3−O−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−19−ノル−10β−ビニル−17−α−メチル−17−β−ヒドロキシ−アンドロスト−5−エン
段階2の生成物(26mg、0.062mmol)のテトラヒドロフラン(0.6mL)溶液を、メチルマグネシウムヨージド溶液(3Mテトラヒドロフラン溶液0.2mL、0.6mmol)に加えた。得られた混合物を室温で終夜攪拌し、水で反応停止し、酢酸エチルと飽和塩化ナトリウム水溶液との間で分配した。水層を酢酸エチルで抽出し(2回)、泡得た有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。粗生成物を、3:1ヘキサン:酢酸エチルで溶離を行うシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を白色固体として得た。
【0147】
段階4:19−ノル−10β−ビニル−17−α−メチル−3−β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
段階3からの生成物(14mg、0.032mmol)およびフッ化テトラブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液0.2mL、0.2mmol)のテトラヒドロフラン(0.4mL)溶液を室温で終夜攪拌した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物を、3:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を得た。主要なH NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ5.67(1H、dd、J=11,18Hz)、5.29(1H、dd、J=2,11Hz)、4.96(1H、dd、J=2,18Hz)、1.20(3H、s)、0.77(3H、s)。
【実施例6】
【0148】
19−ノル−10β−ビニル−17α−エチニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
【0149】
【化22】

【0150】
段階1:3−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−19−ノル−10β−ビニル−17−α−(2−トリメチルシリルエチニル)−17−β−ヒドロキシ−アンドロスト−5−エン
トリメチルシリルアセチレン(0.1mL、0.71mmol)の脱水テトラヒドロフラン(0.2mL)溶液に、tert−ブチルリチウム(1.7Mペンタン溶液0.37mL、0.63mmol)を加えた。次に、3−β−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−19−ノル−10β−ビニル−17−オキソ−アンドロスト−5−エン(実施例5の段階2参照)(26mg、0.062mmol)のテトラヒドロフラン(0.6mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で終夜攪拌し、水で反応停止し、5%メタノール/塩化メチレンで抽出した(3回)。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮した。粗生成物をNMRによって同定し、精製せずに次の段階で用いた。
【0151】
段階2:19−ノル−10β−ビニル−17−α−エチニル−3−β,17−β−アンドロスト−5−エンジオール
段階1の生成物(32mg、0.062mmol)およびフッ化テトラブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液0.3mL、0.3mmol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を室温で2時間攪拌し、追加のフッ化テトラブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液0.6mL、0.6mmol)を加え、溶液を室温で終夜攪拌した。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物を、3:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を得た。主要な1H NMRデータ:(CDCl、600MHz)δ5.66(1H、dd、J=11,18Hz)、5.28(1H、dd、J=2,11Hz)、4.96(1H、dd、J=2,18Hz)、2.56(1H、s)、0.76(3H、s)。
【実施例7】
【0152】
3β−ヒドロキシ−17β−メトキシ−19−ノル−10β−ビニル−アンドロスト−5−エン
【0153】
【化23】

【0154】
段階1:3−β−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17β−メトキシ−19−ノル−10β−ビニル−アンドロスト−5−エン
3−β−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17β−ヒドロキシ−19−ノル−10β−ビニル−アンドロスト−5−エン(75mg、0.18mmol)の脱水ジメチルホルムアミド(2mL)溶液に、水素化ナトリウム(オイル中60%分散品14mg、0.36mmol)をに加える。得られた混合物を室温で10分間攪拌してから、ヨウ化メチル(255mg、1.8mmol)を加える。得られた混合物を55℃で終夜攪拌し、酢酸エチルと水との間で分配する。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた抽出液を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、減圧下に濃縮する。粗生成物を精製せずに次の段階で用いる。
【0155】
段階2:3β−ヒドロキシ−17β−メトキシ−19−ノル−10β−ビニル−アンドロスト−5−エン
3−O−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−17β−メトキシ−19−ノル−10β−ビニル−アンドロスト−5−エン(43mg、0.1mmol)およびフッ化テトラブチルアンモニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液0.5mL、0.5mmol)のテトラヒドロフラン(1.5mL)溶液を室温で終夜攪拌する。溶媒を減圧下に除去し、粗生成物を、3:1ヘキサン:酢酸エチルを溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を得る。
【0156】
エストロゲン受容体結合アッセイ
エストロゲン受容体リガンド結合アッセイを、トリチル化エストラジオールおよび組換え発現エストロゲン受容体を用いるシンチレーション近接アッセイとして計画する。全長組換えヒトER−αおよびER−β蛋白をバキュロウィルス発現系で産生させる。ER−αまたはER−β抽出物を6mM α−モノチオールグリセリンを含むリン酸緩衝生理食塩水で1:400に希釈する。希釈した受容体調製液200μLずつを、96ウェルのフラッシュプレート(Flashplate)の各ウェルに加える。プレートをサランラップ(Saran Wrap)で覆い、4℃で終夜インキュベートする。
【0157】
翌朝、10%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水20μLずつを96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で2時間インキュベートする。次に、プレートを20mM Tris(pH7.2)、1mM EDTA、10%グリセリン、50mM KClおよび6mM α−モノチオールグリセリンを含む緩衝液200μLで洗浄する。これらの受容体でコーティングしたプレートでのアッセイの準備を行うため、96ウェルプレートの各ウェルに同じ緩衝液178μLを加える。次に、H−エストラジオールの10nM溶液20μLをプレートの各ウェルに加える。
【0158】
0.01nM〜1000nMの濃度範囲にわたり、被験化合物を評価する。被験化合物原液は、アッセイでの試験に望まれる最終濃度の100倍濃度で100%DMSO中で調製しなければならない。96ウェルの試験ウェルでのDMSOの量は1%を超えてはならない。アッセイプレートへの最終添加物は、100%DMSO中で調製された被験化合物2μLずつとする。プレートを密封し、室温で3時間経過させて平衡状態とする。96ウェルプレートのカウンティングを行うためのシンチレーションカウンタでプレートのカウンティングを行う。
【0159】
実施例1〜3の化合物は、IC50=75〜>10000nmの範囲でエストロゲン受容体α−サブタイプに対する結合親和性を示し、IC50=5〜250nmの範囲でエストロゲン受容体β−サブタイプに対する結合親和性を示す。
【0160】
医薬組成物
本発明の具体的な実施形態として、実施例1の化合物25mgを、十分な微粉砕乳糖とともに製剤して総量580〜590mgを得て、サイズ0の硬ゼラチンカプセルに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効量の下記式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくは立体異性体
【化1】

[式中、
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素またはC(1−3)アルキルであり;
17は、水素、C(1−5)アルキル、C(1−5)アシル、C(2−5)アルケニルまたはC(2−5)アルキニルである。]を哺乳動物に投与することによる、処置を必要とする哺乳動物での疾患の治療方法であり、
前記疾患は、骨損失、骨折、骨粗鬆症、転移性骨疾患、ページェット病、歯周病、軟骨変形、子宮内膜症、子宮筋腫、顔面紅潮、心血管疾患、認識機能障害、大脳変性障害、再狭窄、女性化乳房、血管平滑筋細胞増殖、肥満、失禁、不安、抑鬱、閉経前後抑鬱、産後抑鬱、月経前症候群、躁鬱病、不安、認知症、強迫行動、注意力欠如障害、睡眠障害、興奮性、衝動性、怒り管理、多発性硬化症、パーキンソン病、炎症、炎症性腸疾患、性機能不全、高血圧、網膜変性またはエストロゲン依存性の癌である前記方法。
【請求項2】
が水素、ハロ、メチルまたはシアノであり;
が水素、ハロ、メチルまたはシアノであり;
が水素、ハロ、メチルまたはシアノであり;
が水素またメチルであり;
17は水素、C(1−3)アルキル、C(2−3)アシル、C(2−3)アルケニルまたはC(2−3)アルキニルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が顔面紅潮である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が抑鬱である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患がエストロゲン依存性癌である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、
19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−ビニル−3β−ヒドロキシ−17β−メトキシ−アンドロスト−5−エン;
17α−エチニル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
17α−ビニル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
17α−メチル−19−ノル−10β−ビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(1−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(シス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(トランス−2−メチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(1−エチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(シス−2−エチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(トランス−2−エチル−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(1−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(シス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(トランス−2−クロロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(1−フルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(シス−2−フルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(トランス−2−フルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(2,2−ジフルオロ−ビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
19−ノル−10β−(トリフルオロビニル)−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール;
17α−エチニル−19−ノル−10β−トリフルオロビニル−3β,17β−アンドロスト−5−エンジオール
またはこれらの製薬上許容される塩もしくは立体異性体から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
下記式の化合物:
【化2】

[式中、
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は、水素、ハロ、C(1−3)アルキル、CO(1−3)アルキルまたはシアノであり;
17は、水素、C(1−5)アルキル、C(1−5)アシル、C(2−5)アルケニルまたはC(2−5)アルキニルである。]または該化合物の製薬上許容される塩もしくは立体異性体;
ならびに有機ビスホスホン酸化合物;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体調節剤;アンドロゲン受容体調節剤;破骨細胞プロトンATPase阻害薬;HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンD類縁体;または選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬;またはこれらの製薬上許容される塩もしくは混合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
有機ビスホスホン酸化合物;カテプシンK阻害薬;エストロゲン;エストロゲン受容体調節剤;アンドロゲン受容体調節剤;破骨細胞プロトンATPase阻害薬;HMG−CoAレダクターゼ阻害薬;インテグリン受容体拮抗薬;骨芽細胞同化剤;カルシトニン;ビタミンD;合成ビタミンD類縁体;または選択的セロトニン再取り込み阻害薬;アロマターゼ阻害薬;またはこれらの製薬上許容される塩もしくは混合物から選択される別の薬剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
下記式IIの化合物または該化合物の製薬上許容される塩もしくは立体異性体。
【化3】

[式中、
は水素、ハロ、C(1−3)アルキルまたはシアノであり;
は水素またはC(0−3)アルキルであり;
17は水素、C(1−5)アルキル、C(2−5)アルケニルまたはC(2−5)アルキニルであり;
ただし、RとRが両方とも水素であることはない。]
【請求項10】
請求項9に記載の化合物を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2007−512361(P2007−512361A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541578(P2006−541578)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/039050
【国際公開番号】WO2005/097141
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】