説明

エッチング液組成物

【課題】インジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のエッチング液組成物は、組成物の総重量に対して、鉄化合物0.1重量%〜10重量%、硝酸0.1重量%〜10重量%、含フッ素化合物0.01重量%〜5重量%、及び水残部を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びフラットパネル表示装置、特に、TFT又はOLEDなどのゲート、ソース/ドレインアレイ配線用として用いられるインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜をエッチングすることが可能なエッチング液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置において、基板上に金属配線を形成する過程は、通常、スパッタリングによって金属膜を形成する工程、金属膜上にフォトレジストを塗布し、露光及び現像して選択的な領域にフォトレジストを形成する工程、及び金属膜をエッチングする工程から構成される。また、個別的な単位工程前後の洗浄工程などを含む。このようなエッチング工程は、フォトレジストをマスクとして用いて選択的な領域に金属膜を残す工程を意味する。エッチング工程としては、通常、プラズマなどを用いたドライエッチング、又はエッチング液を用いるウェットエッチングが使用される。
【0003】
一方、フラットパネル表示装置において、画素電極として、インジウム系金属膜からなる透明伝導膜が主に使用される。また、ソース/ドレイン電極としては、アルミニウム系金属膜、すなわちAl−La−X(X=Mg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Mo、Pt及びCから選択される金属)形態のアルミニウムランタン系合金膜が主に使用される。また、ソース/ドレイン電極の下部には、ソース/ドレイン電極と絶縁膜との接着のために、緩衝膜として、チタニウム又はモリブデンを含む金属膜が主に使用される。
【0004】
このようなフラットパネル表示装置の画素電極、ソース/ドレイン電極及び緩衝膜をエッチングするために、従来では各電極毎に異なるエッチング液組成物を使用しなければならなかった。例えば、特許文献1では、リン酸、硝酸、水溶性有機酸、エッチング活性剤、エッチング調節剤及び水を含むエッチング液組成物を開示している。ところが、前記組成物は、アルミニウム、ニッケル及び添加金属からなる単一膜には効果があるが、多重膜ではエッチング特性が発揮されない。
【0005】
よって、フラットパネル表示装置の画素電極、ソース/ドレイン電極及び緩衝膜を一括エッチングすることが可能な新しいエッチング液組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2006−0104926号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半導体装置及びフラットパネル表示装置で配線として用いられる、インジウムを含む金属膜、アルミニウムを含む金属膜、特にアルミニウムランタニウムニッケル合金膜、並びチタニウム又はモリブデンを含む金属膜からなる三重膜を一括エッチングすることが可能なエッチング液組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、エッチング工程を簡素化させ、生産性を向上させることができ且つエッチング特性に優れたエッチング液組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、高価の装備構成を必要とせず、大面積化に有利であって非常に経済的なエッチング液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、組成物の総重量に対して、鉄化合物0.1重量%〜10重量%、硝酸0.1重量%〜10重量%、含フッ素化合物0.01重量%〜5重量%、及び水残部を含むことを特徴とする、インジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物を提供する。
【0011】
好ましくは、本発明は、組成物の総重量に対して、鉄化合物1重量%〜7重量%、硝酸2重量%〜7重量%、含フッ素化合物0.1重量%〜2重量%、及び水残部を含むことを特徴とする、インジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記組成物にリン酸塩化合物0.1重量%〜5重量%をさらに含む、三重膜用エッチング液組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエッチング液組成物は、インジウムを含む金属膜、アルミニウムを含む金属膜、及びチタニウム又はモリブデンを含む金属膜からなる三重膜を一括エッチングすることができるため、エッチング工程を簡素化させ且つ生産性を向上させる。また、本発明のエッチング液組成物は、エッチング速度が速く、下部膜及び装備に対する損傷がなく、均一なエッチングが可能であってエッチング特性に優れる。また、本発明のエッチング液組成物は、高価の装備構成を必要とせず、大面積化に有利であって非常に経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のエッチング液組成物は、鉄化合物、硝酸、含フッ素化合物及び水を含む。
【0016】
本発明において、鉄化合物は、アルミニウム系金属膜及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜の表面を酸化させる役目をする。
【0017】
前記鉄化合物は、組成物の総重量に対して、0.1重量%〜10重量%で含まれることが好ましく、1重量%〜7重量%で含まれることがさらに好ましい。上述した範囲未満で含まれると、アルミニウムを含む金属膜のエッチング速度が低下し、これにより残渣が発生する。また、不均一なエッチング特性により、基板内に斑が発生する。上述した範囲を超過すると、過度なエッチング速度によって、アルミニウムを含む金属膜とチタニウム又はモリブデンを含む金属膜が消失してしまうおそれがある。
【0018】
前記鉄化合物は、特に限定されないが、例えば、FeCl、Fe(NO、Fe(SO、NHFe(SO、Fe(ClO、FePO、Fe(NH)-(Cなどを挙げることができ、これらをそれぞれ単独で或いは2以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明において、硝酸は、アルミニウム系金属膜とチタニウム系又はモリブデン系金属膜の表面を酸化させる役目をする。
【0020】
前記硝酸は、組成物の総重量に対して、0.1重量%〜10重量%で含まれることが好ましく、2重量%〜7重量%で含まれることがさらに好ましい。上述した範囲未満で含まれると、アルミニウム系金属膜とチタニウム系又はモリブデン系金属膜のエッチング速度低下が発生する。また、基板間のエッチング速度差を誘発してチタニウム系又はモリブデン系金属膜にテーリング(tailing)現象のエッチングを発生させることにより、斑が生ずるおそれがある。上述した範囲を超過すると、PRクラック発生による薬液浸透によってアルミニウム系金属膜とチタニウム系又はモリブデン系金属膜が短絡する現象が発生するおそれがある。さらに、過エッチングによってアルミニウム系金属膜とチタニウム系又はモリブデン系金属膜が消失し、或いは金属配線としての機能を喪失するおそれもある。
【0021】
本発明において、含フッ素化合物は、酸化したインジウム系金属膜、酸化したアルミニウム系金属膜、及び下部のチタニウム系又はモリブデン系金属膜をエッチングする役目をする。
【0022】
前記含フッ素化合物は、組成物の総重量に対して0.01重量%〜5重量%で含まれることが好ましく、0.1重量%〜2重量%で含まれることがさらに好ましい。上述した範囲未満で含まれると、アルミニウム系金属膜が低いエッチング速度を有し、基板内で不均一なエッチング特性として誘発できる。上述した範囲を超過して含まれると、アルミニウム系金属膜が過度なエッチング速度によって消失してしまうおそれがあり、下部膜としてのチタニウム系又はモリブデン系金属膜が損傷するおそれがある。
【0023】
前記含フッ素化合物は、特に限定されるものではなく、好ましくはフッ素イオン又は多原子フッ素イオンに解離できる化合物である。例えば、前記含フッ素化合物はフッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、重フッ化アンモニウム、重フッ化ナトリウム、及び重フッ化カリウムなどを使用することができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上混合して使用可能である。
【0024】
本発明において、水は脱イオン水を意味する。前記水としては、半導体工程用を使用し、好ましくは18MΩ/cm以上の水を使用する。前記水は、組成物の総重量に対して、本発明のエッチング液組成物の総重量が100重量%となるように残部として含まれる。
【0025】
本発明のエッチング液組成物は、前記必須成分の他に、リン酸塩化合物をさらに含んでもよい。本発明の組成物がリン酸塩化合物を含む場合には、下部膜がモリブデン系金属膜である三重膜の一括エッチングにさらに適する。
【0026】
本発明において、リン酸塩化合物は、テーパープロファイルを良好にし、アルミニウム系金属膜及びモリブデン系金属膜のエッチング速度を調節する役目をする。
【0027】
前記リン酸塩化合物は、組成物の総重量に対して、0.1重量%〜5重量%で含まれることが好ましく、0.1重量%〜2重量%で含まれることがさらに好ましい。上述した範囲を満足すると、アルミニウム系金属膜及びモリブデン系金属膜のエッチング速度を調節することが容易であり、均一なエッチング特性を実現することができる。
【0028】
前記リン酸塩化合物は、リン酸において水素がアルカリ金属又はアルカリ土金属で1個〜3個置換された塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましいが、これに限定されるものではない。具体的に、前記リン酸塩化合物としては、リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate)、リン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen phosphate)、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択できる。
【0029】
また、本発明のエッチング液組成物は、前述した成分の他に、エッチング調節剤、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、腐食防止剤などのその他の添加剤を1種又は2種以上含有することができる。
【0030】
一方、本発明において、インジウム系金属膜は、透明伝導膜であって、例えばインジウム亜鉛酸化膜(IZO)、インジウム錫酸化膜(ITO)などを挙げることができる。
【0031】
また、アルミニウム系金属膜はアルミニウム単一膜、又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金膜を意味する。前記アルミニウム合金膜はアルミニウム−ランタニウム合金膜であることが好ましい。ここで、前記アルミニウム−ランタニウム系合金膜は、アルミニウム90原子%以上、La10原子%以下、及び他の金属(X)残部を含むAl−La又はAl−La−Xを意味する。前記他の金属(X)は、Mg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Ti、Pt及びCよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
【0032】
また、前記チタニウム系金属膜はチタニウム単一膜又はチタニウム合金膜であることを意味する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び試験例によって本発明をさらに詳細に説明する。ところが、本発明の範囲はこれらの実施例及び試験例によって限定されるものではない。
【0034】
(実施例1〜実施例8及び比較例1〜比較例7):エッチング液組成物の製造
下記表1に記載された成分及び組成比によって、エッチング液組成物が180kgとなるように製造した。
【0035】
【表1】

【0036】
(試験例):エッチング液組成物の特性評価
<エッチング特性評価>
試験用基板としては、ガラス上にITO/Al−La−Ni/Ti又はITO/Al−La−Ni/Mo三重膜が蒸着されており、一定形態の模様にフォトレジストがパターニングされたものを使用した。噴射式エッチング方式の実験装備(SEMES社製、モデル名:ETCHER(TFT))内に前記実施例1〜8及び比較例1〜7のエッチング液組成物を仕込み、温度を30℃にセットして加温した。その後、温度が30±0.1°に到達した後、エッチング工程を行った。総エッチング時間をEPDを基準として30%にした。試片を入れて噴射を開始し、エッチングが完了すると、取り出して脱イオン水で洗浄した後、熱風乾燥装置を用いて乾燥させ、フォトレジスト(PR)剥離器(stripper)を用いてフォトレジストを除去した。洗浄及び乾燥の後、電子走査顕微鏡(SEM:HITACHI社製、モデル名:S−4700)を用いてエッチングプロファイルの傾斜角、サイドエッチ(CD:critical dimension)損失、エッチング残留物及び下部膜の損傷を評価した。その結果を下記表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
[エッチングプロファイルの評価基準]
◎:極めて優秀(CD Skew:≦1μm、テーパー角:40°〜80°)
○:優秀(CD Skew:≦1.5μm、テーパー角:40°〜80°)
△:良好(CD Skew:≦2μm、テーパー角:40°〜80°)
×:不良(金属膜の消失及び残渣発生)
【0039】
表2を参照すると、実施例1〜8のエッチング液組成物は、エッチングプロファイルに優れるうえ、下部膜の損傷及び残渣がないエッチング特性を示した。
【0040】
ところが、比較例1及び比較例3のエッチング組成物の場合は、エッチングプロファイルが良くなく、下部膜としてのチタニウム系又はモリブデン系金属膜がエッチングされない結果を得た。また、比較例2及び比較例4のエッチング液組成物の場合は、エッチングプロファイルが良くなく、下部膜の損傷がある良くない結果を得た。比較例5のエッチング液組成物の場合は、硝酸がなくて下部膜の損傷はなかったが、エッチングプロファイルが良くなく、残渣が発生した。比較例6のエッチング液組成物の場合は、下部膜の損傷又は残渣はなかったが、過エッチングによってエッチングプロファイルが非常に良くなかった。また、比較例7のエッチング液組成物の場合は、過量の含フッ素化合物によって下部膜の損傷が非常に大きかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総重量に対して、
鉄化合物0.1重量%〜10重量%、
硝酸0.1重量%〜10重量%、
含フッ素化合物0.01重量%〜5重量%、
及び水残部を含むことを特徴とする、インジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。
【請求項2】
組成物の総重量に対して、
鉄化合物1重量%〜7重量%、
硝酸2重量%〜7重量%、
含フッ素化合物0.1重量%〜2重量%、
及び水残部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。
【請求項3】
前記鉄化合物は、FeCl、Fe(NO、Fe(SO、NHFe(SO、Fe(ClO、FePO、およびFe(NH)-(Cよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。
【請求項4】
前記含フッ素化合物は、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、重フッ化アンモニウム、重フッ化ナトリウム及び重フッ化カリウムよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。
【請求項5】
前記エッチング液組成物はリン酸塩化合物0.1重量%〜5重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。
【請求項6】
前記リン酸塩化合物は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる1種であることを特徴とする、請求項5に記載のインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。
【請求項7】
前記アルミニウム系金属膜は、アルミニウム90原子%以上、La10原子%以下、及び他の金属(X)残部を含むAl−La又はAl−La−Xで表されるアルミニウム−ランタニウム系合金膜であり、ここで、前記他の金属(X)はMg、Zn、In、Ca、Te、Sr、Cr、Co、Mo、Nb、Ta、W、Ni、Nd、Sn、Fe、Si、Ti、Pt及びCよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、 請求項1に記載のインジウム系金属膜、アルミニウム系金属膜、及びチタニウム系又はモリブデン系金属膜からなる三重膜用エッチング液組成物。

【公表番号】特表2013−510425(P2013−510425A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536650(P2012−536650)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006956
【国際公開番号】WO2011/055915
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(511312322)ドンウ ファイン−ケム カンパニー.,リミティド. (6)
【Fターム(参考)】