説明

エネルギ吸収構造

【課題】圧縮荷重の作用方向が車両前後方向と一致する場合だけでなく、車両前後方向に対して角度のある場合にも、エネルギ吸収が安定して行われるようにする。
【解決手段】フロントサイドメンバ12の中空内には、車両前後方向に並んで第一エネルギ吸収体14と第二エネルギ吸収体16とが配置されている。第一エネルギ吸収体14における車両前後方向後側には、テーパ凸部24が形成されており、第二エネルギ吸収体16は、テーパ凸部24が係合可能に挿入されたテーパ凹部30を構成している。この構成によれば、圧縮荷重Fの作用方向が車両前後方向と一致する場合だけでなく、車両前後方向に対して角度のある場合にも、テーパ凸部24及びテーパ凹部30によって、第一エネルギ吸収体14から第二エネルギ吸収体16への荷重の伝達方向が車両前後方向とされるので、エネルギ吸収を安定して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ吸収構造に係り、特に、長手状の中空体により構成されたフレーム部材の中空内にエネルギ吸収部が配置されたエネルギ吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエネルギ吸収構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1には、衝撃エネルギ吸収構造部材の例が開示されている。この衝撃エネルギ吸収構造部材では、中空部を有する外殻構造体に多孔質体が充填されており、この多孔質体の圧縮応力が負荷される側と相反する側には、貫通孔を有する隔壁が設けられている。そして、衝撃エネルギ吸収構造部材の圧潰変形時には多孔質体の一部が貫通孔から練り出て衝突エネルギが吸収される構成とされている。
【特許文献1】特開2003−184928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の衝撃エネルギ吸収構造部材では、圧縮荷重の作用方向が外殻構造体の長手方向と一致する場合には、エネルギ吸収を安定して行うことができるものの、圧縮荷重の作用方向が外殻構造体の長手方向に対して直交方向(例えば、車両上下方向又は車両幅方向)に角度のある場合には、エネルギ吸収を安定して行うことができない虞がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、圧縮荷重の作用方向がフレーム部材の長手方向と一致する場合だけでなく、フレーム部材の長手方向に対して直交方向に角度のある場合にも、エネルギ吸収を安定して行うことができるエネルギ吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のエネルギ吸収構造は、長手状の中空体により構成されたフレーム部材と、前記フレーム部材の中空内に配置され、前記フレーム部材の長手方向の荷重を吸収可能なエネルギ吸収部と、前記フレーム部材の中空内に配置されると共に、前記エネルギ吸収部における前記フレーム部材の長手方向一方側に設けられ、前記フレーム部材の長手方向他方側から一方側に向かうに従って前記フレーム部材の長手方向と直交方向の少なくとも両側に位置する壁面から前記フレーム部材の内側に離間するようにテーパ状に形成されたテーパ凸部と、前記テーパ凸部が係合可能に挿入されたテーパ凹部を構成し、前記エネルギ吸収部に対する前記フレーム部材の長手方向一方側に配置されると共に、前記フレーム部材に長手方向一方側への移動が制限されるように設けられた荷重受け部と、を備えている。
【0006】
請求項1に記載のエネルギ吸収構造では、エネルギ吸収構造におけるフレーム部材の長手方向他方側に対してフレーム部材の長手方向一方側に圧縮荷重が加えられると、フレーム部材が圧縮変形され、エネルギ吸収部がフレーム部材の長手方向一方側へ押し込まれる。
【0007】
この状態からフレーム部材がさらに圧縮変形されると、エネルギ吸収部がフレーム部材の長手方向一方側へさらに押し込まれてテーパ凸部がテーパ凹部に係合され、エネルギ吸収部と荷重受け部とが接触する。そして、荷重受け部は、フレーム部材に長手方向一方側への移動が制限されるように設けられているので、この状態からフレーム部材がさらに圧縮変形されると、エネルギ吸収部が潰れ、これにより、圧縮荷重のエネルギが吸収される。
【0008】
ここで、請求項1に記載のエネルギ吸収構造において、テーパ凸部は、フレーム部材の長手方向他方側から一方側に向かうに従ってフレーム部材の長手方向と直交方向の少なくとも両側に位置する壁面からフレーム部材の内側に離間するようにテーパ状に形成されている。また、このテーパ凸部は、テーパ凹部に係合可能に挿入されている。
【0009】
この構成よれば、圧縮荷重の作用方向がフレーム部材の長手方向と一致する場合だけでなく、フレーム部材の長手方向に対して直交方向に角度のある場合にも、エネルギ吸収部から荷重受け部への荷重の伝達方向をフレーム部材の長手方向にすることができる。従って、圧縮荷重の作用方向がフレーム部材の長手方向と一致する場合だけでなく、フレーム部材の長手方向に対して直交方向に角度のある場合にも、エネルギ吸収を安定して行うことができる。
【0010】
請求項2に記載のエネルギ吸収構造は、請求項1に記載のエネルギ吸収構造において、前記荷重受け部が前記フレーム部材の長手方向の荷重を吸収可能とされている、構成である。
【0011】
請求項2に記載のエネルギ吸収構造によれば、エネルギ吸収部だけでなく、荷重受け部もフレーム部材の長手方向の荷重を吸収可能とされているので、エネルギ吸収率をより向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載のエネルギ吸収構造は、請求項2に記載のエネルギ吸収構造において、前記荷重受け部が、前記フレーム部材と別体で構成されると共に、前記フレーム部材における前記荷重受け部に対する長手方向一方側の一部が前記長手方向と直交方向に狭められて構成された狭部によって、前記フレーム部材に対する長手方向一方側への移動が制限されている、構成である。
【0013】
請求項3に記載のエネルギ吸収構造によれば、フレーム部材の一部を直交方向に狭めて狭部を形成するという簡単な構成により、荷重受け部のフレーム部材に対する長手方向一方側への移動を制限することができる。
【0014】
また、フレーム部材に狭部を形成することにより、フレーム部材に対して圧縮荷重が加えられたときには、フレーム部材が長手方向だけでなく狭部において直交方向(断面縮小方向)にも変形されるので、エネルギ吸収率をさらに向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載のエネルギ吸収構造は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造において、前記テーパ凸部が前記エネルギ吸収部に一体に形成されている、構成である。
【0016】
請求項4に記載のエネルギ吸収構造によれば、テーパ凸部がエネルギ吸収部に一体に形成されているので、例えば、テーパ凸部がエネルギ吸収部と別体に形成された場合に比して、部材点数の増加を抑えることができ、組付工数及びコストの増加を抑制できる。
【0017】
請求項5に記載のエネルギ吸収構造は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造において、前記エネルギ吸収部及び前記荷重受け部が樹脂により形成されている、構成である。
【0018】
請求項5に記載のエネルギ吸収構造によれば、エネルギ吸収部及び荷重受け部が樹脂により形成されているので、エネルギ吸収部及び荷重受け部が金属により形成された場合に比して、軽量化できると共に、エネルギ吸収率をより一層向上させることができる。
【0019】
請求項6に記載のエネルギ吸収構造は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造において、前記エネルギ吸収部及び前記荷重受け部が前記フレーム部材に固定されている、構成である。
【0020】
請求項6に記載のエネルギ吸収構造によれば、エネルギ吸収部及び荷重受け部がフレーム部材に固定されているので、例えば、フレーム部材に振動が加えられた場合でも、エネルギ吸収部及び荷重受け部のフレーム部材に対するガタつきを抑制できる。
【0021】
請求項7に記載のエネルギ吸収構造は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造において、前記エネルギ吸収部と前記荷重受け部とが互いに固定されている、構成である。
【0022】
請求項7に記載のエネルギ吸収構造によれば、エネルギ吸収部と荷重受け部とが互いに固定されているので、エネルギ吸収部と荷重受け部とのガタつきを抑制できる。
【0023】
また、例えば、エネルギ吸収部と荷重受け部とをフレーム部材への組付前に互いに固定しておけば、エネルギ吸収部及び荷重受け部をフレーム部材に別々に組み付ける場合に比して、エネルギ吸収部及び荷重受け部のフレーム部材への組付性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、本発明によれば、圧縮荷重の作用方向がフレーム部材の長手方向と一致する場合だけでなく、フレーム部材の長手方向に対して直交方向に角度のある場合にも、エネルギ吸収を安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明のエネルギ吸収構造を例えば乗用自動車等の車両の前部に適用した実施形態について説明する。
【0026】
図1,図2には、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10が示されている。なお、これらの図及び以下に説明する図3〜図5において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、このエネルギ吸収構造10が適用された車両の車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0027】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10は、フロントサイドメンバ12と、このフロントサイドメンバ12と別体で構成された第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16とを主要な構成要素として備えている。
【0028】
フロントサイドメンバ12は、金属製とされており、車両前後方向に長手状に延在され、且つ、断面四角状の閉断面を有する中空体により構成されている。
【0029】
第一エネルギ吸収体14は、フロントサイドメンバ12の中空内における車両前後方向前側に配置されており、図2に示されるように、フロントサイドメンバ12との間に介在された接着材20によってフロントサイドメンバ12に固定されている。この第一エネルギ吸収体14は、その全体が樹脂により形成されており、且つ、例えばハニカム構造体や発泡体により構成されることで車両前後方向の荷重を吸収可能とされている。
【0030】
この第一エネルギ吸収体14における車両前後方向後側には、円錐台状のテーパ凸部24が一体に形成されている。このテーパ凸部24は、図1に示されるように、車両前後方向前側から後側に向かうに従ってフロントサイドメンバ12の壁面12A〜12Dからフロントサイドメンバ12の内側(中空内の中央側)に離間するようにテーパ状に形成されている。
【0031】
第二エネルギ吸収体16は、フロントサイドメンバ12の中空内における第一エネルギ吸収体14に対する車両前後方向後側に配置されており、図2に示されるように、フロントサイドメンバ12との間に介在された接着材26によってフロントサイドメンバ12に固定されている。また、この第二エネルギ吸収体16は、その全体が樹脂により形成されており、且つ、例えばハニカム構造体や発泡体により構成されることで車両前後方向の荷重を吸収可能とされている。
【0032】
さらに、この第二エネルギ吸収体16には、上述のテーパ凸部24と同様な円錐台状のテーパ凹部30が形成されている。つまり、テーパ凹部30は、図1に示されるように、車両前後方向前側から後側に向かうに従ってフロントサイドメンバ12の壁面12A〜12Dからフロントサイドメンバ12の内側(中空内の中央側)に離間するようにテーパ状に形成されている。そして、このテーパ凹部30には、テーパ凸部24が係合可能に挿入されている。
【0033】
また、このテーパ凹部30を構成する第二エネルギ吸収体16は、図2に示されるように、テーパ凹部30とテーパ凸部24とが接着材32によってそれぞれ接着されることで、第一エネルギ吸収体14と固定されている。さらに、第二エネルギ吸収体16は、フロントサイドメンバ12に形成されたビード部36によってフロントサイドメンバ12に対する車両前後方向後側への移動が制限されるようになっている。
【0034】
ビード部36は、フロントサイドメンバ12における第二エネルギ吸収体16に対する車両前後方向後側の一部が車両上下方向及び車両幅方向に狭められて構成されたものであり、例えば、フロントサイドメンバ12が板金により形成される際に形成されるものである。
【0035】
なお、本実施形態では、フロントサイドメンバ12が本発明におけるフレーム部材に相当し、第一エネルギ吸収体14が本発明におけるエネルギ吸収部に相当する。また、第二エネルギ吸収体16が本発明における荷重受け部に相当し、ビード部36が本発明における狭部に相当する。
【0036】
さらに、本実施形態では、車両前後方向が本発明におけるフレーム部材の長手方向に相当し、車両上下方向又は車両幅方向がフレーム部材の長手方向と直交方向に相当する。また、車両前後方向後側が本発明におけるフレーム部材の長手方向一方側に相当し、車両前後方向前側が本発明におけるフレーム部材の長手方向他方側に相当する。
【0037】
次に、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10の作用及び効果について説明する。
【0038】
図3〜図5には、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10における圧縮荷重が加わったときの変形状態が示されている。
【0039】
本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10では、図3に示されるように、例えば、車両の全面衝突等に伴って、エネルギ吸収構造10における車両前後方向前側に対して車両前後方向後側に圧縮荷重Fが加えられると、フロントサイドメンバ12が圧縮変形され、接着材20が剥がれて第一エネルギ吸収体14が車両前後方向後側へ押し込まれる。
【0040】
この状態からフロントサイドメンバ12がさらに圧縮変形されると、図4に示されるように、第一エネルギ吸収体14が車両前後方向後側へさらに押し込まれてテーパ凸部24がテーパ凹部30に係合され、第一エネルギ吸収体14と第二エネルギ吸収体16とが接触する。また、接着材26が剥がれて第二エネルギ吸収体16が車両前後方向後側へ押し込まれ、この第二エネルギ吸収体16がビード部36に当接される。
【0041】
そして、この状態からフロントサイドメンバ12がさらに圧縮変形されると、図5に示されるように、ビード部36によって後退できなくなった第二エネルギ吸収体16と、この第二エネルギ吸収体16に当接された第一エネルギ吸収体14とが潰れ、これにより、圧縮荷重Fのエネルギが吸収される。
【0042】
ここで、エネルギ吸収構造10において、テーパ凸部24は、車両前後方向前側から後側に向かうに従ってフロントサイドメンバ12の壁面12A〜12Dからフロントサイドメンバ12の内側(中空内の中央側)に離間するようにテーパ状に形成されている。また、このテーパ凸部24は、テーパ凹部30に係合可能に挿入されている。
【0043】
この構成よれば、圧縮荷重Fの作用方向が車両前後方向(フロントサイドメンバ12の長手方向)と一致する場合だけでなく、車両前後方向に対してこれと直交方向に角度のある場合、すなわち、車両上下方向に角度のある場合(例えば、圧縮荷重F1,F2である場合)、又は、車両前後方向に対して車両幅方向に角度のある場合、若しくは、車両前後方向に対して車両上下方向且つ車両幅方向に角度のある場合にも、第一エネルギ吸収体14から第二エネルギ吸収体16への荷重の伝達方向を車両前後方向にすることができる。従って、圧縮荷重Fの作用方向が車両前後方向と一致する場合だけでなく、車両前後方向に対してこれと直交方向に角度のある場合にも、エネルギ吸収を安定して行うことができる。
【0044】
また、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10によれば、第一エネルギ吸収体14だけでなく、第二エネルギ吸収体16も車両前後方向の荷重を吸収可能とされているので、エネルギ吸収率をより向上させることができる。
【0045】
さらに、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10によれば、フロントサイドメンバ12の一部を車両上下方向及び車両幅方向に狭めてビード部36を形成するという簡単な構成により、第二エネルギ吸収体16のフロントサイドメンバ12に対する車両前後方向後側への移動を制限することができる。
【0046】
また、フロントサイドメンバ12にビード部36を形成することにより、フロントサイドメンバ12に対して圧縮荷重Fが加えられたときには、フロントサイドメンバ12が車両前後方向だけでなくビード部36において車両上下方向及び車両幅方向(断面縮小方向)にも変形されるので、エネルギ吸収率をさらに向上させることができる。
【0047】
また、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10によれば、テーパ凸部24が第一エネルギ吸収体14に一体に形成されているので、例えば、テーパ凸部24が第一エネルギ吸収体14と別体に形成された場合に比して、部材点数の増加を抑えることができ、組付工数及びコストの増加を抑制できる。
【0048】
また、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10によれば、第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16が樹脂により形成されているので、第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16が金属により形成された場合に比して、軽量化できると共に、エネルギ吸収率をより一層向上させることができる。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造10によれば、第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16がフロントサイドメンバ12に接着されているので、例えば、車両の走行に伴ってフロントサイドメンバ12に振動が加えられた場合でも、第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16のフロントサイドメンバ12に対するガタつきを抑制できる。
【0050】
同様に、第一エネルギ吸収体14と第二エネルギ吸収体16とも互いに接着されているので、例えば、車両の走行に伴って第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16に振動が加えられた場合でも、第一エネルギ吸収体14と第二エネルギ吸収体16とのガタつきを抑制できる。
【0051】
また、例えば、第一エネルギ吸収体14と第二エネルギ吸収体16とを接着材32によってフロントサイドメンバ12への組付前に互いに接着しておけば、第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16をフロントサイドメンバ12に別々に組み付ける場合に比して、第一エネルギ吸収体14及び第二エネルギ吸収体16のフロントサイドメンバ12への組付性を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0053】
例えば、上記実施形態において、テーパ凸部24及びテーパ凹部30は、互いに係合可能な円錐台状に形成されていたが、図6に示されるように、車両前後方向前側から後側に向かうに従ってフロントサイドメンバ12の壁面12A〜12Dからフロントサイドメンバ12の内側(中空内の中央側)に離間する傾斜面を有する多角錐台状に形成されていても良い。また、テーパ凸部24及びテーパ凹部30は、円錐台状又は多角錐台状の他に、円錐状又は多角錐状に形成されていても良い。
【0054】
このように構成されていても、圧縮荷重Fの作用方向が車両前後方向(フロントサイドメンバ12の長手方向)と一致する場合だけでなく、車両前後方向に対してこれと直交方向に角度のある場合、すなわち、車両上下方向に角度のある場合、又は、車両前後方向に対して車両幅方向に角度のある場合、若しくは、車両前後方向に対して車両上下方向且つ車両幅方向に角度のある場合にも、第一エネルギ吸収体14から第二エネルギ吸収体16への荷重の伝達方向を車両前後方向にすることができる。
【0055】
また、テーパ凸部24及びテーパ凹部30は、図7,図8に示されるように構成されていても良い。すなわち、図7,図8に示される変形例において、テーパ凸部24は、一対の傾斜面24A,24Bにより構成されており、車両前後方向前側から後側に向かうに従ってフロントサイドメンバ12の車両上下方向両側に位置する壁面12A,12Bからフロントサイドメンバ12の内側(中空内の中央側)に離間するようにテーパ状に形成されている。
【0056】
一方、テーパ凹部30は、一対の第二エネルギ吸収体16,18にそれぞれ形成された一対の傾斜面30A,30Bによって形成されており、このテーパ凹部30には、テーパ凸部24が係合可能に挿入されている。
【0057】
このように構成されていると、圧縮荷重Fの作用方向が車両前後方向に対して車両上下方向に角度のある場合に、エネルギ吸収を安定して行うことができる。
【0058】
なお、この図7,図8に示される変形例において、エネルギ吸収構造10は、車両平面視において図8で示される構成とされていても良い。このように構成されていると、圧縮荷重Fの作用方向が車両前後方向に対して車両幅方向に角度のある場合に、エネルギ吸収を安定して行うことができる。
【0059】
また、この図7,図8に示される変形例において、第二エネルギ吸収体16,18は、別体に構成されていたが、一体に構成されていても良い。
【0060】
また、上記実施形態において、エネルギ吸収構造10は、図9に示されるように、第二エネルギ吸収体16の代わりに、テーパ凹部30を構成すると共にフロントサイドメンバ12に一体に形成された荷重受け部40を備えた構成とされていても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、第一エネルギ吸収体14における車両前後方向後側にテーパ凸部24が一体に形成されていたが、図10に示されるように、第一エネルギ吸収体14における車両前後方向後側に、テーパ凸部24を有するテーパ部材44が別体で設けられていても良い。
【0062】
また、図10に示されるように、例えば、第一エネルギ吸収体14がフロントサイドメンバ12の長手方向に長く形成されることで第一エネルギ吸収体14のエネルギ吸収ストロークSを長く確保できる場合には、テーパ部材44がエネルギ吸収機能を有しない構成とされていても良く、また、第二エネルギ吸収体14の代わりに、エネルギ吸収機能を有しない荷重受け部材46が設けられていても良い。
【0063】
また、上記実施形態において、エネルギ吸収構造10は、フロントサイドメンバ12について適用されていたが、例えば、車両前後方向に延在するリアサイドメンバについて適用されても良く、また、車両幅方向に延在するクロスメンバについて適用されても良い。
【0064】
また、上記実施形態において、第二エネルギ吸収体16は、フロントサイドメンバ12に形成されたビード部36によって車両前後方向後側への移動が制限されていたが、フロントサイドメンバ12の壁面12A〜12Dから突出する突起部によって車両前後方向後側への移動が制限されていても良い。
【0065】
また、上記実施形態において、フロントサイドメンバ12は断面四角状に形成されていたが、断面円形状に形成されていても良い。
【0066】
また、上記実施形態において、エネルギ吸収構造10は、乗用車等の車両に適用されていたが、例えば、二輪車、鉄道、航空機、船舶等の乗り物に適用されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の構成を示す側面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造における圧縮荷重が加わったときの変形状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造における圧縮荷重が加わったときの変形状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造における圧縮荷重が加わったときの変形状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の変形例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の変形例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の変形例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るエネルギ吸収構造の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 エネルギ吸収構造
12 フロントサイドメンバ(フレーム部材)
14 第一エネルギ吸収体(エネルギ吸収部)
16,18 第二エネルギ吸収体(荷重受け部)
24 テーパ凸部
30 テーパ凹部
36,38 ビード部(狭部)
40 荷重受け部
44 テーパ部材(テーパ部)
46 荷重受け部材(荷重受け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状の中空体により構成されたフレーム部材と、
前記フレーム部材の中空内に配置され、前記フレーム部材の長手方向の荷重を吸収可能なエネルギ吸収部と、
前記フレーム部材の中空内に配置されると共に、前記エネルギ吸収部における前記フレーム部材の長手方向一方側に設けられ、前記フレーム部材の長手方向他方側から一方側に向かうに従って前記フレーム部材の長手方向と直交方向の少なくとも両側に位置する壁面から前記フレーム部材の内側に離間するようにテーパ状に形成されたテーパ凸部と、
前記テーパ凸部が係合可能に挿入されたテーパ凹部を構成し、前記エネルギ吸収部に対する前記フレーム部材の長手方向一方側に配置されると共に、前記フレーム部材に長手方向一方側への移動が制限されるように設けられた荷重受け部と、
を備えたエネルギ吸収構造。
【請求項2】
前記荷重受け部は、前記フレーム部材の長手方向の荷重を吸収可能とされている、
請求項1に記載のエネルギ吸収構造。
【請求項3】
前記荷重受け部は、前記フレーム部材と別体で構成されると共に、前記フレーム部材における前記荷重受け部に対する長手方向一方側の一部が前記長手方向と直交方向に狭められて構成された狭部によって、前記フレーム部材に対する長手方向一方側への移動が制限されている、
請求項2に記載のエネルギ吸収構造。
【請求項4】
前記テーパ凸部は、前記エネルギ吸収部に一体に形成されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造。
【請求項5】
前記エネルギ吸収部及び前記荷重受け部は、樹脂により形成されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造。
【請求項6】
前記エネルギ吸収部及び前記荷重受け部は、前記フレーム部材に固定されている、
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造。
【請求項7】
前記エネルギ吸収部と前記荷重受け部とは、互いに固定されている、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のエネルギ吸収構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−255865(P2009−255865A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110178(P2008−110178)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】