説明

エポキシ樹脂組成物を用いるコンポジット製造方法

本発明は、エポキシ樹脂組成物を用いる、強化コンポジットの製造方法である。エポキシ樹脂組成物は、硬化剤としてgemジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカンを、促進剤として第3級アミン化合物、熱活性化触媒、またはこれらの混合物を用い、硬化される。このエポキシ樹脂組成物は、長いオープンタイムを有し、次いで、強化材の存在下において成形型内で迅速に硬化する。これらの硬化特性により、前記組成物は、樹脂トランスファー成形(RTM)、真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、シーマンコンポジット社の樹脂注入成形法(SCRIMP)および反応射出成形(RIM)のような製造方法において用いられるのに好都合である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月15日に出願された米国特許仮出願第60/934,756号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、エポキシ樹脂配合物(formulations)を用いる、コンポジット(composites)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂配合物は、強化コンポジットを形成するための、かなりの数の方法に用いられる。これらの方法には、例えば、樹脂トランスファー成形(resin transfer molding)(RTM)、真空アシスト樹脂トランスファー成形(vacuum-assisted resin transfer molding)(VARTM)、シーマンコンポジット社の樹脂注入成形法(Seeman Composites Resin Infusion Molding Process)(SCRIMP)および反応射出成形(reaction injection molding)(RIM)法として知られるもののような成形方法が含まれる。これらの方法が共通して有するのは、エポキシ樹脂配合物が強化材(reinforcing agent)に適用され、強化材の存在下において硬化されることである。強化材がその中に分散しているポリマー連続相(硬化したエポキシ樹脂から形成される)を有するコンポジットが形成される。
【0004】
様々な方法が広範な製品を製造するために用いられ得る。成形方法(例えば、RTM、VARTM、SCRIMPおよびRIM)は、例えば、椅子の張り皮(seating)、自動車の車体パネルおよび航空機部品に使用される高強度パーツを製造するために用いられる。RTM、VARTM、FRIおよびSCRIMP法では、織られた、またはマット状の繊維パーフォーム(perform)が成形型キャビティに挿入される。成形型は閉じられ、樹脂が成形型に注入される。樹脂は、コンポジットを形成するように成形型内で硬化し、次いで、脱型される。RIM法では、強化材は、上記のように前もって成形型に挿入されてもよい、あるいは、エポキシ樹脂組成物と一緒に成形型に射出できる。
【0005】
多くの他の製造方法がそうであるように、これらのコンポジット製造方法の経済性は、操業速度(operating rates)に大いに依存する。成形プロセスでは、操業速度は、しばしば、「サイクルタイム(cycle time)」によって表される。「サイクルタイム」は、成形型で1つのパーツを製造し、次のパーツを製造するために成形型を準備するのに要する時間を表す。サイクルタイムは、単位時間当たりに成形型で製造できるパーツの数に直接影響を及ぼす。より長いサイクルタイムは、製造される1つのパーツ当たりの間接費(overhead cost)(特に、設備および労力)がより大きいという理由で、製造コストを増加させる。より大きな生産能力が必要とされる場合、より多くの成形型および他の処理設備が必要であるため、資本コストもまた増加する。これらの理由で、可能である場合、サイクルタイムを短縮することが、かなり頻繁に求められる。
【0006】
エポキシ樹脂が、前記の成形プロセスに用いられるときに、サイクルタイムの支配的な要素は、樹脂が硬化するのに要する時間の長さである。特に、パーツが大きい、または複雑である場合、長い硬化時間がしばしば必要である。したがって、サイクルタイムおよび製造コストは、樹脂が硬化するのに要する時間が短縮できれば低減できる。
【0007】
より速い硬化は、触媒と、いくつかの場合には、非常に反応性の高い硬化剤(hardner)との使用を通じて促進され得る。これらのような、比較的速い硬化系に付随する別の問題が存在する。触媒および特殊な硬化剤は原材料の残りの部分に比べて価格が高い傾向があるので、1つの問題は単純にコストである。さらに、より迅速に硬化する系は、短い「オープンタイム(open time)」を有する傾向がある。「オープンタイム」は、ポリマー系が十分な分子量および架橋密度を確立し、それが液体としてもはや容易に流動できなくなる、成分が混合された後の時間を大まかに表し、その時間で、それは、合理的な条件では、もはや処理できない。オープンタイムは、2つの主な理由で、コンポジットの製造プロセスにおいて重要である。第1に、混合された成分は、成形型またはダイに移されなければならない。これは、増大するポリマーの分子量および架橋密度と共に粘度が増加するにつれて、困難または不可能になる。第2に、混合された成分は、それらが強化繊維または粒子の周りまたは間で容易に流動できるだけ十分に粘度が低くなければならない。ポリマー系の粘度が高すぎると、それは、強化材の周りで容易に流動できず、その結果得られるコンポジットは空隙(ボイド、voids)または他の欠陥を有するであろう。
【0008】
適切なオープンタイムの必要性は、より大きなパーツを製造するときに、これらの場合には成形型を充填するのに数分かかり得るので、益々重要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの問題の結果として、適切なオープンタイムを保ちながら硬化時間が短縮され、また良好な品質のコンポジットが形成される、エポキシ樹脂を用いるコンポジットの製造方法を開発することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、成形された強化コンポジットの製造方法であり、この方法は、エポキシ樹脂組成物および強化材を成形型に導入すること、および強化材の存在下において成形型内でエポキシ樹脂組成物を硬化させることを含み、ここで、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤および少なくとも1種の促進剤化合物を含み、硬化剤は、gem−ジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカンを含み、促進剤は、第3級アミン化合物、熱活性化触媒、またはこれらの混合物を含む。
【0011】
本発明の好ましい方法は、RTM、VARTM、RFI、SCRIMPおよびRIM法である。
【0012】
本発明の好ましい方法において、エポキシ樹脂は、1分子当たり平均で少なくとも0.1個のヒドロキシル基を含む。
【0013】
本発明の方法は、様々なタイプのコンポジット製品を形成するのに有用であり、いくつかの利点をもたらす。硬化時間は非常に短い傾向があり、Tのようなポリマーの性質は良好に発現する。このために、より短縮された脱型時間、およびより短いサイクルタイムが見込まれる。硬化の最初の段階において、反応混合物は、粘度が十分に低い傾向にあるので、それを成形型または樹脂槽に容易に移すことができ、そこで、それは強化粒子または繊維の周りで容易に流動して、空隙のほとんどない製品を製造する。粘度の比較的ゆっくりとした増加のために、用いられる操業圧力を比較的低くすることができる。いくつかの場合において、硬化の初期段階の間の比較的低い粘度のために、用いられる注入重量(shot weight)をより少なくすることができ、その結果、原材料コストが節減され、また結果的にコンポジットの表面特性が改善できる。これらの利点のために、本発明の方法は、広範なコンポジット製品の製造に有用であり、自動車および航空機の部品は、これらの製品の注目すべき例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において用いられるエポキシ樹脂は、1分子当たり少なくとも平均2.0個のエポキシド基官能基数を有する少なくとも1種の化合物または化合物の混合物を含む。エポキシ樹脂またはこれらの混合物は、1分子当たり平均4.0個までのエポキシド基を有し得る。それは、好ましくは、1分子当たり平均で2.0から3.0個のエポキシド基を有する。
【0015】
エポキシ樹脂は、約150から約1,000、好ましくは約160から約300、より好ましくは約170から約250のエポキシ当量を有し得る。エポキシ樹脂がハロゲン化されている場合、当量はいくらか大きくなり得る。
【0016】
エポキシ樹脂は、80℃以下、好ましくは50℃以下の融点を有するべきである。エポキシ樹脂は室温(約23℃)で液体であり得る。
【0017】
適切なエポキシ樹脂には、例えば、レソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールKおよびテトラメチルビスフェノールのような多価フェノール化合物のジグリシジルエーテル;脂肪族グリコールおよびポリエーテルグリコールのジグリシジルエーテル、例えば、C2〜24アルキレングリコール、およびポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのジグリシジルエーテル;フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル;アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂);フェノールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂;クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂およびジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂、ならびにこれらの任意の組合せが含まれる。
【0018】
多価フェノールの適切なジグリシジルエーテルには、構造(I)によって表されるものが含まれる。
【0019】
【化1】


式中、各Yは、独立に、ハロゲン原子であり、各Dは、−S−、−S−S−、−SO−、−SO、−CO−、−CO−、−O−、または、1から約10、好ましくは1から約5、より好ましくは1から約3個の炭素原子を適切には有する2価の炭化水素基である。各mは、0、1、2、3または4であってよく、pは、0から5の数である。pは、構造Iのエポキシ樹脂の1分子当たりに存在するヒドロキシル基の平均数に相当する。適切なエポキシ樹脂の例には、2価フェノール(例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールK、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビスフェノールAD、ならびにこれらの混合物)のジグリシジルエーテルが含まれる。このタイプの好ましいエポキシ樹脂は、pが少なくとも0.1であるもの、特に、pが0.1から2.5であるものであり、理由は、これらのタイプは、硬化の間に迅速に分子量および架橋が確立されることに寄与すると考えられる反応性ヒドロキシル基を含むためである。このタイプのエポキシ樹脂は市販されており、The Dow Chemical Companyによって、D.E.R.(商標)317、D.E.R.(商標)331、D.E.R.(商標)364、D.E.R.(商標)383、D.E.R.(商標)661、D.E.R.(商標)662、D.E.R.(商標)664およびD.E.R.(商標)667樹脂の商用名で販売されているような、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル樹脂が含まれる。
【0020】
構造Iに対応する臭素置換エポキシ樹脂(YがBrであり、少なくとも1つのmが少なくとも1である場合)は、The Dow Chemical Companyから、D.E.R.(商標)542およびD.E.R.(商標)560の商用名で市販されている。他の適切なハロゲン化エポキシ樹脂は、例えば、米国特許第4,251,594号、米国特許第4,661,568号、米国特許第4,710,429号、米国特許第4,713,137号、および米国特許第4,868,059号、ならびに、H. LeeとK. Nevilleによる、「The Handbook of Epoxy Resins」(1967年出版、McGraw−Hill、ニューヨーク)に記載されており、これらの全ては、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0021】
適切なエポキシ樹脂には、また、構造Iに対応する、ビスフェノールのジグリシジルエーテルの混合物(1分子当たり少なくとも3つのエポキシ基を含む少量の1種または複数の化合物を含む)も含まれる。この混合物は、2.1から2.5の平均エポキシド官能基数を有し得る。このタイプの市販の混合物の例は、The Dow Chemical Companyから入手可能なD.E.R.329である。
【0022】
本明細書において有用である、市販の、ポリグリコールのジグリシジルエーテルには、The Dow Chemical Companyによって、D.E.R.(商標)732およびD.E.R.(商標)736として販売されているものが含まれる。
【0023】
適切なエポキシノボラック樹脂には、クレゾール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックエポキシ樹脂、およびビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂が含まれ、D.E.N.(商標)354、D.E.N.(商標)431、D.E.N.(商標)438、およびD.E.N.(商標)439として、全てThe Dow Chemical Companyから市販されているものが含まれる。
【0024】
適切な他のエポキシ樹脂は脂環式エポキシドである。脂環式エポキシドは、次の構造IIによって示されるように、炭素環における2つの隣接原子に結合したエポキシ酸素を有する飽和炭素環を含む。
【0025】
【化2】


式中、Rは、脂肪族、脂環式および/または芳香族の基であり、nは1から10、好ましくは2から4の数である。nが1である場合、脂環式エポキシドはモノエポキシドである。ジ−またはポリエポキシドは、nが2以上である場合に形成される。モノ−、ジ−および/またはポリエポキシドの混合物が使用され得る。米国特許第3,686,359号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている脂環式エポキシ樹脂は、本発明において使用され得る。特に重要な脂環式エポキシ樹脂は、(3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル)−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシラート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジパート、ビニルシクロヘキセンモノオキシドおよびこれらの混合物である。
【0026】
適切な他のエポキシ樹脂には、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンおよびこれらの混合物が含まれる。
【0027】
適切な他のエポキシ樹脂には、米国特許第5,112,932号に記載されているオキサゾリドン含有化合物が含まれる。さらに、D.E.R.(商標)592およびD.E.R.(商標)6508(The Dow Chemical Company)として市販されているもののような、新型の(advanced)エポキシ−イソシアナートコポリマーが使用され得る。
【0028】
硬化剤は、少なくとも1種のgem−ジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカン、すなわち、1つの炭素原子において2つのシクロヘキシルアミン基により置換されているアルカンまたは置換アルカンを含む。シクロヘキシル基は、好ましくは、3−または4−アミノシクロヘキシル基であり、シクロヘキシル基は、好ましくは、他の置換を含まない。このタイプの好ましい硬化剤は、構造IIIによって表すことができる。
【0029】
【化3】


式中、各Rは、独立に、水素、線状または分岐状アルキル(例えば、C〜C30アルキル、特に、C〜Cアルキル)、アリール(例えば、フェニルまたは置換フェニル)、あるいは、置換アルキルであり、各Rは、独立に、水素、アルキルまたはフェニルである。2つのR基は、一緒に環を形成していてもよい。適切な置換基には、不活性な原子および基、例えば、ハロゲン(特に、塩素または臭素)、ニトロ、エーテル、エステル、アリール、アルキル(Rがフェニルである場合)などが含まれる。このような置換基のいずれも、好ましくは、エポキシ樹脂との反応性がない。各Rは、好ましくは水素またはC〜Cアルキルである。各Rは、最も好ましくは水素である。各Rは、好ましくは、水素である。
【0030】
構造IIIにおいて、−NRH基は、3または4位で、好ましくは4位でシクロヘキサン環に好ましくは結合している。シクロヘキサン環は、−NRH基が付いている炭素原子に隣接する2つの位置において、好ましくは置換されていない。
【0031】
好ましい硬化剤は、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタンであり、最も好ましい硬化剤は、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンである。
【0032】
さらなる硬化剤が、gem−ジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカンと一緒に使用され得るが、仮に存在する場合、これらは、好ましくは少量で用いられる。例えば、さらなる硬化剤は、全硬化剤の50モルパーセントまで、より好ましくは全硬化剤の25モルパーセントまで、より一層好ましくは全硬化剤の10モルパーセントまでの量で使用され得る。適切なさらなる硬化剤は、1分子当たり平均で少なくとも2.0個のエポキシド反応性基を有する化合物、または化合物の混合物である。さらなる硬化剤は、1分子当たり、2.0から4.0、またはこれを超えるエポキシド反応性基を有し得る。さらなる硬化剤は、好ましくは、30から1000、より好ましくは30から250、特に30から150の、エポキシド反応性基1個当たりの当量を有する。
【0033】
エポキシド反応性基は、近接したエポキシドと反応して共有結合を形成する官能基である。これらの基には、フェノール、無水物、イソシアナート、カルボン酸、アミノまたはカルボナート基が含まれる。第1級または第2級アミノ基が好ましい。アミノ基は、脂肪族または芳香族であり得る。芳香族アミンは特に好ましい。
【0034】
適切な芳香族アミン硬化剤には、ジシアンジアミド、フェニレンジアミン(特に、メタ−異性体)、メチレンジアニリン、メチレンジアニリンとポリメチレンポリアニリン化合物の混合物(時に、PMDAと呼ばれ、Air Products and ChemicalsによるDL−50のような市販の製品が含まれる)、ジエチルトルエンジイソシアナート、およびジアミノジフェニルスルホンが含まれる。
【0035】
適切な脂肪族アミン硬化剤には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、アミノエチルピペラジン、および、The Dow Chemical CompanyからD.E.H.(商標)52として市販されているようなアミン−エポキシ樹脂アダクトが含まれる。
【0036】
適切なフェノール系硬化剤には、構造(IV)によって表されるものが含まれる。
【0037】
【化4】


ここで、各Y、m、およびDは、それぞれ、構造Iに関して上で記載された通りである。Dは、好ましくは、上で構造Iに関して記載された2価の炭化水素基である。適切なフェノール系硬化剤の例には、2価のフェノール、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールK、ビスフェノールF、ビスフェノールSおよびビスフェノールAD、ならびにこれらの混合物、ならびに、これらのモノ−、ジ−、トリ−およびテトラ−臭素化相当物が含まれる。
【0038】
3個以上のフェノール基を有するフェノール系硬化剤、例えば、テトラフェノールエタン、フェノールノボラックまたはビスフェノールAノボラックもまた使用され得る。
【0039】
別の有用な硬化剤の種類には、アミノ官能性ポリアミドが含まれる。これらは、Henkelから、Versamide(登録商標)100、115、125および140として、また、Air Products and Chemicalsから、Ancamide(登録商標)100、220、260Aおよび350Aとして市販されている。
【0040】
適切な無水物硬化剤には、例えば、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、フタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物およびテトラヒドロフタル酸無水物が含まれる。
【0041】
適切なイソシアナート硬化剤には、トルエンジイソシアナート、メチレンジフェニルジイソシアナート、水素化トルエンジイソシアナート、水素化メチレンジフェニルジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート(および、これらとメチレンジフェニルジイソシアナートとの混合物、一般に「ポリメリックMDIとして知られている」)、イソホロンジイソシアナートなどが含まれる。
【0042】
gem−ジ)シクロヘキシルアミン)置換アルカンと組み合わせて使用され得る他の硬化剤は、米国特許出願公開第2004/0101689号(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0043】
エポキシ樹脂組成物は促進剤(accelerator)を含む。促進剤には、第3級アミン化合物、熱活性化触媒、またはこれらの混合物が含まれる。他の促進剤は存在し得るが、通常、必要ではなく、無しで済ますことができる。
【0044】
第3級アミン促進剤は、好ましくは、アミンの水素をもっていない。適切な第3級アミン促進剤には、例えば、トリアルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリブチルアミン)、さらには、1つまたは複数のN,N−ジアルキルアミノアルキル基により置換されている芳香族化合物が含まれる。特に好ましい促進剤の1つのタイプは、第3級アミン置換フェノール系化合物である。このような化合物は、エポキシドと反応できる、フェノール性ヒドロキシル基を有することが注目される。この理由で、これらの材料は、硬化剤と触媒の両方として機能し得る。適切な第3級アミノ置換フェノール系化合物は、構造Vによって表すことができる。
【0045】
【化5】


式中、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基を表し;各Rは、独立に、アルキルまたは不活性置換されたアルキル基であり、qは、1から12の数であり、rは1から5の数である。各Rは、好ましくはエチルまたはメチル、最も好ましくはメチルである。qは、好ましくは1、2または3、特に1または2であり、rは、好ましくは1、2、または3、特に2または3、最も好ましくは3である。構造Vの範囲内に入る化合物の例には、モノ− ビス−、またはトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが含まれる。トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールは、特に好ましい触媒である。
【0046】
熱活性化触媒(heat-activated catalyst)は、第3級アミン触媒の代替として、またはそれに加えて使用され得る。熱活性化触媒は、室温(約23℃)では、ほとんど、または全く触媒活性を有さないが、いくらかより高い温度で分解または崩壊(degrades or decomposes)して触媒化学種を生成する物質である。熱活性化触媒は、好ましくは、35℃から150℃の温度で、より好ましくは50℃から100℃の温度で、より一層好ましくは50℃から90℃の温度で活性化状態になる。このような熱活性化触媒の例には、例えば、エチル−4−トルエンスルホナートおよびプロピル−4−トルエンスルホナートが含まれる。
【0047】
エポキシ樹脂組成物に1種または複数のさらなる促進剤を含めることは可能であるが、通常、好ましさは劣る。適切なさらなる促進剤には、例えば、米国特許第3,306,872号、米国特許第3,341,580号、米国特許第3,379,684号、米国特許第3,477,990号、米国特許第3,547,881号、米国特許第3,637,590号、米国特許第3,843,605号、米国特許第3,948,855号、米国特許第3,956,237号、米国特許第4,048,141号、米国特許第4,093,650号、米国特許第4,131,633号、米国特許第4,132,706号、米国特許第4,171,420号、米国特許第4,177,216号、米国特許第4,302,574号、米国特許第4,320,222号、米国特許第4,358,578号、米国特許第4,366,295号、および米国特許第4,389,520号(全て、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されているもののような、よく知られているエポキシ硬化触媒が含まれる。適切なさらなる促進剤の例は、イミダゾール、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび2−フェニルイミダゾール;ホスホニウム塩、例えば、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミドおよびエチルトリフェニル−ホスホニウムアセタート;アンモニウム塩、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドおよびベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド;ならびにこれらの混合物である。さらなる促進剤が用いられる場合、用いられるその量は、通常、エポキシ樹脂の重量に対して、約0.001から約2重量パーセントの範囲であるが、好ましくは、約0.5重量パーセント以下である。
【0048】
エポキシ樹脂組成物の好ましい一実施形態は、少なくとも1種の、フェノールのジグリシジルエーテル(このジグリシジルエーテルは、1分子当たり平均で0.1から5個のヒドロキシル基を含む)、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタンおよび/またはビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ならびに、少なくとも1種の第3級アミン置換フェノール系化合物を含む。別の好ましい実施形態において、エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(このジグリシジルエーテルは、1分子当たり平均で0.1から5個のヒドロキシル基を含む)、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタンおよび/またはビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ならびに、少なくとも1種の第3級アミン置換フェノール系化合物を含み、この組成物において、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタンおよび/またはビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンと、(1種または複数の)第3級アミン置換フェノール系化合物との重量比は、約94:6から80:20である。特に好ましい実施形態において、エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(これは、1分子当たり平均で0.1から2.5個のヒドロキシル基を含む)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ならびに、モノ−、ジ−またはトリ(ジメチルアミノメチル)フェノールを含み、ここで、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンと、モノ−、ビス−またはトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール化合物との重量比は、約94.9:5.1から80:20である。
【0049】
エポキシ樹脂組成物の別の好ましい実施形態は、少なくとも1種の、フェノールのジグリシジルエーテル(このジグリシジルエーテルは、1分子当たり平均で0.1から5個のヒドロキシル基を含む)、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタンおよび/またはビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ならびにエチル−4−トルエンスルホナートまたはプロピル−4−トルエンスルホナートを含む。特に好ましい実施形態において、エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(これは、1分子当たり平均で0.1から2.5個のヒドロキシル基を含む)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、およびエチル−4−トルエンスルホナートを含む。
【0050】
エポキシ樹脂組成物における別の好ましいが任意選択の成分は、内部離型剤(internal mold release agent)である。内部離型剤の組成は特に重要でなく、エポキシ樹脂組成物に有用であるどのような内部離型剤も、原則として、本発明において使用できる。内部離型剤の好ましいタイプには、様々なアミン塩、および脂肪酸のエステルが含まれる。エポキシ樹脂用途用に設計された内部離型剤には、KVS Eckert & Woelk GmbH(Welgesheim、ドイツ)によって、また、Axel Plastics Research Laboratories,Inc.(Woodside、ニューヨーク、米国)によって販売されているものが含まれる。
【0051】
様々な任意選択の成分が、反応混合物に添加され得る。これらには、例えば、1種または複数の溶媒または希釈剤、無機フィラー、顔料、酸化防止剤、保存剤、耐衝撃改質剤(impact modifiers)、湿潤剤などが含まれる。
【0052】
溶媒もまた使用され得るが、やはり、これを無しで済ますことが好ましい。溶媒は、エポキシ樹脂、または硬化剤、あるいは両方が、エポキシ樹脂および樹脂硬化剤が混合される温度で、可溶である物質である。溶媒は、重合反応条件下に、(1種または複数の)エポキシ樹脂あるいは硬化剤とは反応性がない。溶媒(または、混合物が用いられる場合、溶媒の混合物)は、好ましくは、重合を実施するのに用いられる温度に、少なくとも等しく、好ましくはより高い沸点を有する。例えば、適切な溶媒には、グルコールエーテル、例えば、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングルコールモノメチルエーテル;グリコールエーテルエステル、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート;ポリ(エチレンオキシド)エーテルおよびポリ(プロピレンオキシド)エーテル;ポリエチレンオキシドエーテルエステルおよびポリプロピレンオキシドエーテルエステル;アミド、例えば、N,N−ジメチルホロムアミド;芳香族炭化水素 トルエンおよびキシレン;脂肪族炭化水素;環状エーテル;ハロゲン化炭化水素;ならびにこれらの混合物が含まれる。用いられる場合、溶媒は、反応混合物の重量の75%まで、より好ましくは、反応混合物の重量の30%までをなし得る。より一層好ましくは、反応混合物は、5重量%以下の溶媒を含み、最も好ましくは、1重量%以下の溶媒を含む。
【0053】
適切な耐衝撃改質剤には、−40℃より低いTを有する、天然または合成のポリマーが含まれる。これらには、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、コア−シェル型ゴムなどが含まれる。好ましくは、ゴムは、コンポジットのポリマー相に分散している小さな粒子の状態で存在する。ゴム粒子は、エポキシ樹脂または硬化剤の中に分散させ、高温の反応混合物を形成させる前に、エポキシ樹脂または硬化剤と一緒に予熱することができる。
【0054】
本発明の方法において、エポキシ樹脂、硬化剤および促進剤、さらには前記の任意選択の任意の成分は、エポキシ樹脂組成物を形成するように混合され、次いで、この組成物は、強化材の存在下において反応して、コンポジットを形成する。望まれる場合、様々な成分は、全ての成分が一緒にされ、混合物を成形型に導入する前に、予備混合され得る。例えば、エポキシ樹脂および促進剤(特に、熱活性化タイプ)は、前もって一緒に配合され、次いで、使用時に硬化剤と混合され得る。
【0055】
反応は成形型内で実施される。好ましい方法は、樹脂トランスファー成形法(真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)法を含めて)、シーマンコンポジット社の樹脂注入成形法(SCRIMP)および反応射出成形法である。
【0056】
エポキシ樹脂組成物の混合物は、成形型が充填される前に反応混合物が高粘度にならない、または著しくゲルを形成しないように十分に迅速に、成形型に導入される。成形型への反応混合物のトランスファーは、エポキシ樹脂および硬化剤が最初に接触した時点から4分以内に終えることが通常好ましいが、任意のより短い時間が用いられてもよい。
【0057】
本発明の利点は、エポキシ樹脂組成物が、しばしば、かなりの「オープンタイム」(すなわち、全ての成分を一緒に混合した後、処理するには混合物があまりに高粘度になるまでの時間間隔)を有することである。オープンタイム内では、エポキシ樹脂組成物は、容易に処理されるのに、特に、プリフォームのフィラメントまたは他の繊維強化材の周りおよび間を流動する能力を保っているのに十分なだけ流動性がある状態に留まる。本発明でのオープンタイムは、通常、100から500秒の程度、またはこれを超える。
【0058】
粘度が最初にゆっくり増加することは、非常に大きな注入重量(例えば、>10kg)が必要であるときには特に、非常に重要な利点である。非常に大きな成形型が充填されているときには、成形型に樹脂組成物をトランスファーさせるのに数分を要することがある。組成物があまりに迅速に粘度を増大させる場合、樹脂組成物は、成形型充填過程の終わり近くに、非常に高粘度になる。結果的に、樹脂組成物を成形型に押し込むために、また成形型内の強化材の周りでそれが流動するようにするために、より大きな操業圧力が必要とされる。成形型充填過程を完了させるためには、しばしば、一定量のオーバーパッキング(overpacking)が必要とされる。本発明では、オープンタイムが通常、3〜4分程度、またはさらに長く、これは、非常に大きな成形型でさえ充填されることを可能にするのに十分である。この時間の間の低い粘度は、より低い操業圧力が用いられ得るということを意味する。いくつかの場合において、注入重量は、減らすことができる。
【0059】
長いオープンタイムのさらに別の利点は、成形型コンポジットが、やはり成形型充填過程の間の低い粘度のため(このために、樹脂組成物は、成形型の全ての区画により均一に流動し、それが硬化される前に、成形型の表面をより均一にウェットアウト(wet-out)する)、非常に良好な表面特性を有する傾向があるということである。
【0060】
エポキシ樹脂組成物は、成形型に組成物をトランスファーさせる前に、加熱され得る。これは、その粘度をいくらか低くするという利点を有し、このことは、強化材(reinforcement)の十分なウェットアウトに有利であるが、オープンタイムを短くする傾向があり得る。個々の成分(エポキシ樹脂、硬化剤など)は、完全な混合物を形成する前に、個別に、または部分的組合せとして加熱されてもよい。あるいは、完全に配合されたエポキシ樹脂組成物が、トランスファーの前に加熱されてもよい。この加熱が実施される場合、適切な温度は、35℃から160℃、特に50から90℃である。
【0061】
混合およびトランスファーの装置は、エポキシ樹脂、硬化剤および促進剤(ならびに、この時にやはり混合される任意選択の任意の成分)の非常に均質な混合物を生成し得る、どのようなタイプのものであってもよい。様々なタイプの機械的ミキサーおよび撹拌機が使用され得る。ミキサーの好ましい2つのタイプは、スタティックミキサーおよび衝突(impingement)ミキサーである。衝突混合(impingement mixing)は、エポキシ樹脂と硬化剤を混合する別のやり方である。配合されたエポキシ樹脂組成物は、様々なポンプおよびトランスファー装置を用いて、成形型または樹脂槽にトランスファーできる。あるいは、エポキシ樹脂組成物は、成形型にスプレーされてもよい。
【0062】
成形型は通常、金属の成形型であるが、それは、その成形型が成形プロセスの圧力および温度条件に耐えることができるという条件で、セラミックまたはポリマーコンポジットであってもよい。成形型は、(1つまたは複数の)ミキサーと液体連通し、反応混合物がそれを通して導入される、1つまたは複数の入口を含む。成形型は、反応混合物が注入されるにつれて、ガスが逃げられる排気口を含み得る。真空アシストプロセスでは、エポキシ樹脂組成物を注入する前に、成形型は真空に引かれる。
【0063】
成形型は通常、それが開閉されることを可能にし、充填および硬化作業の間、成形型が閉じられた状態を維持するように、それに圧力を加えることができるプレスまたは別の装置に保持される。
【0064】
強化材は、特定の方法および製品に応じて、いくつかの形態のいずれかを取り得る。連続した平行繊維、織られた、もしくはマット状の繊維プリフォーム、短繊維が、また低アスペクト比の強化材さえ、本発明の様々な実施形態において使用され得る。成形プロセスにおいて、特に適切な強化材は、繊維プリフォームである。あるいは、連続繊維ロービング、カットファイバーまたはチョップトファイバーを含めて、他の様々なタイプの繊維強化材が使用されてもよい。非繊維強化材もまた使用できるが、それらは通常、クラスAの自動車表面を生成することが望まれるいくつかの事例を除いて、好ましさは劣る。
【0065】
強化材は熱的に安定であり、高い融点を有するので、強化材は成形プロセスの間に分解または溶融しない。適切な繊維材料には、例えば、ガラス、石英、ポリアミド樹脂、ボロン、カーボンおよびゲル紡糸ポリエチレン繊維が含まれる。非繊維強化材には、重合条件下に固体のままである粒子材料が含まれる。それらには、例えば、ガラスフレーク、アラミド粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、様々なクレー(例えば、モンモリロナイト)、および他の無機フィラー(例えば、ウォラストナイト、タルク、マイカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、フリント粉末、カーボランダム、ケイ酸モリブデン、砂など)が含まれる。ウォラストナイトおよびマイカは、クラスAの自動車表面を必要とする自動車の車体パーツのような、高い鮮映性(distictness of image、DOI)を有するパーツの製造するときに、それらだけでも、または、繊維強化材と一緒にしても、好ましい強化材である。
【0066】
いくつかのフィラーは、いくらか導電性であり、コンポジット中にそれらが存在すると、コンポジットの電気伝導度が増大し得る。いくつかの用途、特に自動車用途では、いわゆる「e−コート(e-coat)」法(この方法では、コンポジットが荷電され、コーティングがコンポジットに静電的に引き付けられるようになっている)を用い、コンポジットにコーティングが付けられ得るように十分に、コンポジットが導電性であることが好ましい。このタイプの導電性フィラーには、金属の粒子(例えば、アルミニウムおよび銅)ならびに繊維、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイトなどが含まれる。
【0067】
好ましいタイプの強化材は、繊維プリフォーム、すなわち、繊維のウェッブまたはマットである。繊維プリフォームは、連続フィラメントマットから作り上げることができ、このマットでは、連続フィラメントは、互いに、織られている、絡み合わされている、または接着させられて、最終のコンポジット物品(または、強化を必要とするその一部分)の大きさおよび形状に近いプリフォームを形成する。あるいは、より短い繊維が、絡み合いまたは接着法を通じてプリフォームに形成されてもよい。連続繊維またはより短い繊維の複数のマットが、必要である場合、通常、タッキファイヤ(粘着付与剤、tackifier)の助けにより、一緒に積み重ねられ、プレスされて、様々な厚さのプリフォームを形成し得る。
【0068】
プリフォームを調製する(連続繊維またはより短い繊維のいずれかから)のに適する接着剤(「タッキファイヤ(tackifiers)」として知られていることもある)には、例えば、米国特許第4992228号、米国特許第5080851号および米国特許第5698318号に記載されているような熱軟化性(heat-softenable)ポリマーが含まれる。タッキファイヤは、ポリマーと強化繊維との間に良好な接着性があるように、コンポジットのポリマー相と、相溶性(compatible)、および/または反応性(react)でなければならない。米国特許第5698318号に記載されているように、熱軟化性エポキシ樹脂、または硬化剤とこれの混合物は特に適している。タッキファイヤは、他の成分、例えば、1種または複数の触媒、熱可塑性ポリマー、ゴム、または他の改質剤(modifiers)を含み得る。
【0069】
繊維プリフォームは通常、エポキシ樹脂組成物を導入する前に、成形型に入れられる。エポキシ樹脂組成物は、成形型に混合物を注入することによって、プリフォームの入った閉じられた成形型に導入でき、そこで、組成物はプリフォームの繊維の間に浸透し、次いで、硬化されてコンポジット製品を形成する。反応射出成形および/または樹脂トランスファー成形装置は、このような場合に適する。あるいは、プリフォームが、開いた成形型に置かれ、高温の反応混合物がプリフォーム上に、また成形型内にスプレーされてもよい。成形型がこのように充填された後、成形型は閉じられ、反応混合物が硬化される。いずれの手法においても、前記のように反応混合物の温度を保つために、成形型およびプリフォームは、それらを反応混合物に接触させる前に、好ましくは加熱される。
【0070】
短繊維は、繊維プリフォームの代わりに、またはそれに加えて、使用され得る。短繊維(長さ約6インチまで、好ましくは長さ2インチまで、より好ましくは長さ約1/2インチまで)は、エポキシ樹脂組成物にブレンドでき、高温反応混合物と共に成形型に注入できる。このような短繊維は、反応混合物を形成する前に、例えば、エポキシ樹脂または硬化剤(あるいは両方)とブレンドされ得る。あるいは、短繊維は、エポキシおよび硬化剤が混合されると同時に、あるいは、その後であるが成形型に混合物を導入する前に、反応混合物に添加されてもよい。
【0071】
短繊維は、成形型内にスプレーされ得る。このような場合には、短繊維がスプレーされると同時に、またはその後で、エポキシ樹脂組成物もまた成形型内にスプレーされ得る。繊維およびエポキシ樹脂組成物が同時にスプレーされる時には、それらは、スプレーする前に、一緒に混合されてもよい。あるいは、繊維およびエポキシ樹脂組成物は、成形型内に、別々にであるが同時に、スプレーされてもよい。特に重要なプロセスでは、長繊維が、短い長さに切断され、これらのチョップトファイバーが、エポキシ樹脂組成物がスプレーされると同時に、またはその直前に、成形型にスプレーされる。
【0072】
他の粒子フィラーは、短繊維に関して記載されたと同様に、反応混合物に組み入れられ得る。
【0073】
様々なタイプのコンポジットパーツが、エポキシ樹脂組成物を導入する前に成形型に他の成分を組み入れることによって製造できる。例えば、様々なタイプのインモールド(in-mold)コーティングが、特定の所望の表面特性(例えば、色および/または光沢)をもたせるために、成形型表面の一方または両方に配置され得る。このようなインモールドコーティングの例には、様々なタイプのポリエステル、エポキシおよび/またはポリウレタンのインモールドコーティングが含まれる。さらに、合成皮革、ビニルおよび/または布が、別のタイプの表示表面を提供するために、成形型に挿入され得る。金属プレートまたは棒のような強化材が、コンポジットの物理的性質を向上させるために、成形型に挿入され得る。様々なタイプのポリマー発泡体が、用途に特異的な目的のために、成形型に挿入され得る。例えば、輸送業界では、このような発泡体により、断熱および/または防音性が提供され得る。ポリマー発泡体は、熱可塑性(例えば、ポリオレフィン)または熱硬化性(例えば、エポキシもしくはポリウレタン)タイプであり得るし、連続気泡または独立気泡であり得る。ポリマー発泡体は、特定の用途に応じて、硬質、半硬質、または軟質タイプであり得る。
【0074】
硬化は、コンポジットのポリマー相が十分に硬化して、恒久的にコンポジットを変形させることなく脱型できるコンポジットが形成されるまで、成形型内で実施される。好ましくは、硬化は、ポリマー相が少なくとも120℃、好ましくは少なくとも135℃のTに達するまで続けられる。成形型内でTを直接測定することは難しいので、ほとんどの場合、特定の反応系、装置および硬化の条件に関して、必要とされる成形型内滞留時間が経験的に確立されるであろう。硬化したポリマーは、コンポジットを脱型する前に、そのガラス転移温度より低く、特に、ガラス転移温度より少なくとも25℃低い温度に、好ましくは冷却される。
【0075】
成形型の内容物は、硬化をより迅速にするために、加熱され得る。70℃から200℃またはこれを超える温度が用いられ得る。好ましい温度は、特定の用途にいくらか依存するが、多くの用途にとって好ましい成形型温度は、75から160℃、より好ましくは80から120℃である。
【0076】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、いくらか長くなったオープンタイム、その後の迅速な硬化を有することが見出された。オープンタイムが長くなったにも拘らず、全体としての硬化時間は、例えばアミノエチルピペラジン/イソホロンジアミン硬化系を用いる類似の系よりかなり短い傾向がある。特定の用途での硬化時間は、言うまでもなく、様々な要因、例えば、パーツの大きさ、成形型の温度、存在する強化材の量などに応じて決まるであろう。しかし、通常、硬化時間は、アミノエチルピペラジン/イソホロンジアミン硬化系により得られるものに比べて、本発明により20〜40%短縮される。
【0077】
本発明の方法は、様々なタイプの自動車パーツを含めて、広範なコンポジット製品を製造するのに有用である。これらの自動車パーツの例には、垂直および水平車体パネル、自動車およびトラックの車台部品、およびいわゆる「ボディ−イン−ホワイト(body-in-white)」構造部品が含まれる。他の例には、トラックの工具箱、トラックのトップ−スリーパー(top-sleeper)などが含まれる。
【0078】
車体パネル用途には、フェンダー、ドアスキン、フード、ルーフスキン、デッキリッド、テールゲート(tailgate)、ウィンドディフレクターなどが含まれる。車体パネルは、高い鮮映性(DOI)を有する表面をしばしば必要とする。本発明の別の利点は、脱型されたパーツが、しばしば、優れた表面品質を有し、再加工(rework)をほとんど必要としないことである。これは、これらの車体パネル用途では、特に重要である。多くの車体パネル用途におけるフィラーには、マイカ(mica)またはウォラストナイト(wollastonite)のような材料が含まれるであろう。さらに、これらのパーツは、しばしば、いわゆる「e−コート」法でコーティングされ、この理由で、いくらか導電性でなければならない。したがって、前記導電性フィラーが、パーツの電気伝導性を増すために、車体パネル用途に使用され得る。前記補強剤は、パーツを強靭にするために、車体パネル用途に使用され得る。
【0079】
本発明により製造される、自動車およびトラックの車台(chassis)部品は、スチールに比べて、かなりの重量減をもたらす。この利点は、大きなトラック用途において最も重要であり、この用途では、重量の切り詰めは、車両のより大きな最大積載量(payload)に転換される。自動車の車台部品は構造強度をもたらすだけでなく、多くの場合において(例えば、フロアモジュール)、振動および音の軽減をもたらす。スチールのフロアモジュールおよび他の車台パーツに、パーツを通しての音および振動の伝達を減らすために、減衰材料の層を付けることが一般的である。このような減衰材料は、本発明により製造されるコンポジットフロアモジュールに同じ様にして付けることができる。
【0080】
記載されたように、本発明は、注入時間が1分程度またはこれを超える傾向があり、しばしば、2〜4分の範囲にある、大きな成形体の製造に特に利点をもたらす。これらの場合において、注入重量は、しばしば、10kgを超え、15〜50kgの範囲にあり得る。
【0081】
以下の実施例は、本発明を例示するために記載されるが、その範囲を限定しない。全ての部数およびパーセンテージは、特に断わらなければ、重量による。
【実施例1】
【0082】
100部のビスフェノールAジグリシジルエーテル(nが約0.15であり、各mがゼロである前記の構造Iに対応する)を、3部の灰色顔料、および0.8部の内部離型剤とブレンドする。この混合物を樹脂槽に投入し、撹拌しながら70℃に加熱する。
【0083】
90部のビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、および10部の2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの混合物を槽に投入し、撹拌しながら30℃に加熱する。
【0084】
約25ミクロンの不飽和ポリエステルゲル−コート(BUFAによるOldopal−ortho/NPG 717−7838)を、トラックのウィンドディフレクターの排気口付き成形型の上面側に手動でスプレーし、約2分間乾燥させる。次いで、450g/mの重量を有するガラス繊維強化材マットプリフォームを、手動で、成形型の中に配置し、成形型を閉じる。
【0085】
スタティックミキサーの分液装置を通じて、エポキシ樹脂混合物および硬化剤を成形型に注入する。空気は、成形型の上側排気口から取り除く。エポキシ樹脂混合物と硬化剤の比は、100/30である。注入時間は180秒である。成形型は80℃に予熱し、硬化過程の間、その温度に保つ。脱型時間は、注入の終了から約22分である。脱型されたパーツは、パーツ自体または硬化したゲル−コートの収縮をほとんど示さない。パーツは優れた表面特性を有する。このようにして製造された典型的なパーツのポリマー相のTは約140℃である。パーツの厚さは約4mmである。
【0086】
エポキシ樹脂組成物を、異なる様式のトラックウィンドディフレクターを製造するために用いたとき、類似の結果になる。この場合、10mmのポリウレタン発泡体コア、および2つの層の前記ガラス強化マットを成形型に入れ、樹脂組成物を注入し、前記のように硬化させる。
【0087】
比較のために、さらなるパーツを、異なるエポキシ樹脂組成物を用いて製造する。この場合のエポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであり、これは、nが0.1未満であり、各mがゼロである上の構造Iに対応する。それを、前記のように、内部離型剤および顔料とブレンドする。このブレンドを、アミノエチルピペラジンとイソホロンジアミンの重量で50/50の混合物により、硬化させる。この系は、32分より短い時間には脱型できない。これらのパーツの典型的なTは134℃であり、表面品質はいくらか劣る。
【実施例2】
【0088】
この実施例では、トラックのトップ−スリーパーユニットを、反応射出成形法で形成する。A−側は、実施例1に記載の、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。この混合物は、樹脂槽に投入され、撹拌しながら70℃に加熱する。B−側は、90部のビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、および10部の2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの混合物であり、この混合物は撹拌しながら30℃に予熱する。
【0089】
ガラス繊維強化材マットを、トラックのトップ−スリーパー成形型に、手動で配置し、成形型を閉じる。エポキシ樹脂混合物および硬化剤を、RIM機を用いて、成形型に注入する。注入重量は約35kgである。充填された成形型の上面側を88℃に加熱し、底面側を84℃に加熱する。脱型時間は、注入終了後、23分である。脱型されたパーツは、ほとんど収縮を示さず、優れた表面特性を有する。脱型時のパーツのショアD硬度は、84〜87であり、このことは、完全な架橋および良好な硬化を示している。
【0090】
比較のために、さらなるパーツを、アミノエチルピペラジンおよびイソホロンジアミンまたは1,2−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルピペラジンおよび1,3−シクロヘキサンジメタンアミンの様々な混合物により硬化させるエポキシ樹脂を用いて、製造する。いくつかの場合に、エポキシ樹脂組成物は、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含む。これらの系は全て、促進剤が存在するかどうかに関らず、それらを脱型できる前に、約35分の硬化時間を必要とする。さらに、これらの系は全て、これらの組成物が、成形型充填過程の間に急速に粘度を増大させ、繊維および成形型の表面を完全にウェットアウトするのに、より多くの樹脂を成形型に押し込まなければならないので、より大きな注入重量(約1500〜1800グラムの差)を必要とする。これらのパーツの表面特性は、本発明のものより明らかに劣り、結果的に、塗装の前に、パーツのより多くの再加工(rework)を必要とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物および強化材を成形型に導入すること、および強化材の存在下において成形型内でエポキシ樹脂組成物を硬化させることを含み、エポキシ樹脂組成物が、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の硬化剤および少なくとも1種の促進剤化合物を含み、硬化剤がgem−ジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカンを含み、促進剤が、第3級アミン化合物、熱活性化触媒、またはこれらの混合物を含む、成形された強化コンポジットの製造方法。
【請求項2】
エポキシ樹脂がフェノールのジグリシジルエーテルを含み、該ジグリシジルエーテルが1分子当たり平均で0.1から5個のヒドロキシル基を含み、gem−ジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカンが、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはこれらの混合物であり、促進剤が少なくとも1種の第3級アミン置換フェノール系化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはこれらの混合物と、(1種または複数の)第3級アミン置換フェノール系化合物との重量比が、約94:6から80:20である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはこれらの混合物が、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の硬化剤であり、(1種または複数の)第3級アミン置換フェノール系化合物が、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の促進剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含み、該ジグリシジルエーテルが1分子当たり平均で0.1から2.5個のヒドロキシル基を含み、gem−ジ(シクロヘキシルアミン)置換アルカンが、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンであり、促進剤が、少なくとも1種のモノ−、ジ−またはトリ(ジメチルアミノメチル)フェノールを含み、さらに、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンと、モノ−、ビス−またはトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール化合物との重量比が、約94.9:5.1から80:20である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンが、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の硬化剤であり、モノ−、ビス−またはトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の促進剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
エポキシ樹脂が、フェノールの少なくとも1種のジグリシジルエーテルを含み、該ジグリシジルエーテルが1分子当たり平均で0.1から5個のヒドロキシル基を含み、硬化剤が、ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはこれらの混合物を含み、促進剤が、エチル−4−トルエンスルホナートまたはプロピル−4−トルエンスルホナートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ビス−(3−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンまたはこれらの混合物が、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の硬化剤であり、エチル−4−トルエンスルホナートまたはプロピル−4−トルエンスルホナートが、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の1種または複数の促進剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを含み、該ジグリシジルエーテルが1分子当たり平均で0.1から2.5個のヒドロキシル基を含み、硬化剤がビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを含み、促進剤がエチル−4−トルエンスルホナートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンが、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の硬化剤であり、エチル−4−トルエンスルホナートまたはプロピル−4−トルエンスルホナートが、エポキシ樹脂組成物中に存在する唯一の1種または複数の促進剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
強化材が繊維である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
樹脂トランスファー成形(RTM)、真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、シーマンコンポジット社の樹脂注入成形法(SCRIMP)または反応射出成形(RIM)法である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
エポキシ樹脂組成物が5重量%未満の溶媒を含む、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2010−530022(P2010−530022A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512133(P2010−512133)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/022541
【国際公開番号】WO2008/153542
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】