説明

エレベータの制御装置

【課題】複雑な構造を必要とせずに、LEDなどの発光素子を光源とした機器の交換時期を適切に判断して報知する。
【解決手段】エレベータの乗りかご14内に設置されたLED照明装置41の交換時期を判断する場合において、予めLED照明装置41の点灯時間と光束との関係を温度条件別に表した光束特性曲線64を用意しておく。制御装置61は、LED照明装置41の初期起動時から現時点までの点灯時間を計測し、この計測された点灯時間と予め指定された温度条件とに基づいて光束特性曲線64を参照して光束の低下率を求め、その光束の低下率から交換時期を推測する。そして、機器の交換時期が来た場合に、乗りかご14内に設置されたランプ34の点灯により、その旨を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば乗りかご内に設置されたLED(light emitting diode)照明装置など、発光素子を用いた機器の交換時期を判断する機能を備えたエレベータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータの乗りかご内の照明装置には蛍光灯が用いられている。蛍光灯は、放電で発生する紫外線を蛍光体に当てて点灯するものである。この蛍光灯は寿命が短く、頻繁に交換を要する欠点がある。
【0003】
従来、このような蛍光灯の交換時期を報知する方法として、例えば特許文献1が知られている。この特許文献1では、蛍光灯のソケット部付近に感熱スイッチを設けておき、フィラメントが断線したときの発熱を感熱スイッチで感知して、監視センタに対して発報することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−229770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、ソケット部付近に感熱スイッチを設置しておく必要があるため、照明装置の構造が複雑化する問題がある。特に、複数本の蛍光灯を用いた照明装置の場合には、各蛍光灯のそれぞれに対して感熱スイッチを必要とするため、部品点数が多くなり、コストもかかるなどの問題がある。
【0006】
一方、近年の省電力化に伴い、従来の蛍光灯からLED(light emitting diode)を用いた照明装置が主流になりつつある。LEDを用いた照明装置は、蛍光灯のように完全に点灯不可の状態になることは少なく、エポキシ樹脂の劣化を起因とした光束の低下によって寿命が判断される。通常、一般用照明機器の光源として使用する場合のLEDの寿命は、光束が初期時の70%に低下するまでの時間として定められている。
【0007】
上記特許文献1では、フィラメントの断線による発熱を感知する構成であるため、LEDのように徐々に光束が低下する特性を有する機器には適用することができない。
【0008】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、複雑な構造を必要とせずに、LEDなどの発光素子を光源とした機器の交換時期を適切に判断して報知することのできるエレベータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るエレベータの制御装置は、エレベータ施設内に設置され、発光素子を光源として点灯する機器と、予め上記機器の点灯時間と光束との関係を温度条件別に表した光束特性曲線のデータを記憶した記憶手段と、上記機器の初期起動時から現時点までの点灯時間を計測する点灯時間計測手段と、この点灯時間計測手段によって計測された点灯時間と予め指定された温度条件とに基づいて、上記記憶手段に記憶された光束特性曲線を参照して光束の低下率を求め、その光束の低下率から上記機器の交換時期を推測する交換時期推測手段と、この交換時期推測手段によって推測された上記機器の交換時期を報知する報知手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機器の点灯時間と温度条件から光束特性曲線を参照して交換時期を推測することにより、例えばLEDのように徐々に光束が低下する特性を有する機器の交換時期を適切に判断して報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータの全体構成を示す図である。
【図2】図2は同実施形態におけるエレベータの乗りかごの内部構成を示す図である。
【図3】図3は同実施形態におけるエレベータの乗場の構成を示す図である。
【図4】図4は同実施形態におけるLED照明装置の構成例を示す図である。
【図5】図5は同実施形態におけるLED照明装置の構成例を示す図である。
【図6】図6は同実施形態におけるLED照明装置のLEDの構造例を示す図である。
【図7】図7は同実施形態における制御盤の装置構成を示すブロック図である。
【図8】図8は同実施形態における光束特性曲線の一例を示す図である。
【図9】図9は同実施形態における周囲温度を考慮した点灯時間とLED温度との関係を示す図である。
【図10】図10は同実施形態における制御装置によるLED照明装置の点灯制御の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は同実施形態における制御装置によるLED照明装置の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【図12】図12は本発明の第2の実施形態に係る制御装置によるLED照明装置の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【図13】図13は本発明の第3の実施形態に係る記憶装置の構成を示す図である。
【図14】図14は同実施形態に係る制御装置によるLED照明装置の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【図15】図15は本発明の第4の実施形態に係る制御装置によるLED照明装置の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【図16】図16は同実施形態におけるLED照明装置のON時間を示す図である。
【図17】図17は同実施形態におけるLED照明装置のON時間の間の温度上昇の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るエレベータの全体構成を示す図であり、ビル11の内部に1台のエレベータ12が設置された例が示されている。
【0014】
エレベータ12は、昇降路13内を移動する乗りかご14(エレベータ施設)と、この乗りかご14とほぼ同じ重量を持つカウンターウエイト15と、乗りかご14とカウンターウエイト15にそれぞれの端部に接続されたロープ16と、このロープ16を巻き掛けて乗りかご14を駆動する巻上機17などから構成されている。
【0015】
また、このエレベータ12の制御盤18は、例えばビル11の最上部の機械室19に設置されている。この制御盤18は、エレベータ制御装置として存在し、巻上機17の駆動制御などを行う。
【0016】
なお、ここでは図示および説明を省略するが、昇降路13内の全昇降行程にわたりガイドレールが敷設されていて、エレベータ12の軌道として乗りかご14やカウンターウエイト15を導く。また同様に、ロープ16が切断しても乗りかご14が最下階まで落下してしまわないように、調速機により安全が確保されている。
【0017】
制御盤18には、通信回線20を介して遠隔地に存在する監視センタ21内の監視制御装置22が接続されている。監視センタ21では、エレベータ12の運転状態を常時監視しており、何らかの異常を検出した場合に保守員を現場に派遣するなどの対応を行う。
【0018】
図2はエレベータ12の乗りかご14の内部構成を示す図である。
【0019】
乗りかご14内には、乗場51と対向する面にかごドア31が開閉自在に取り付けられている。このかごドア31の横に表示装置32、操作パネル33、ランプ34などが配設されている。
【0020】
表示装置32は、乗りかご17の現在位置(階床数)や運転方向の表示、あるいは、お客様または保守員などへ何らかのメッセージを表示するために用いられる。操作パネル33には、行先階を指定するための行先階指定ボタン、戸開を指示するための戸開ボタン、戸閉を指示するための戸閉ボタンなどの各種操作ボタンが設けられている。ランプ34は、点灯により何らかの報知を行うためのものであり、ここではLED照明装置41の交換時期が来たときに点灯する。
【0021】
LED照明装置41は、かご室の天井面に室内を照らすように設置されている。このLED照明装置41は、基板42と、この基板42上に配列された複数のLED43と、これらを覆うカバー44とからなる。なお、このLED照明装置41の具体的な構成については、後に図4乃至図6を用いて説明する。
【0022】
また、かご室の天井面のLED照明装置41の近傍に温度センサ45が設置されている。この温度センサ45は、LED照明装置41の周囲の温度を検出して、後述する制御盤18内の制御装置61に送信する(図7参照)。
【0023】
図3はエレベータ12の乗場51の構成を示す図である。
【0024】
エレベータ12の乗場51には、乗場ドア52が開閉自在に設けられている。この乗場ドア52は、乗りかご14が着床したときにかごドア31に係合して開閉する。この乗場ドア52の横に、乗場呼びを登録するための乗場ボタン53と、点灯により何らかの報知を行うためのランプ55が設けられている。また、かごドア31の上には、乗りかご17の現在位置(階床数)や運転方向の表示、あるいは、何らかのメッセージを表示するための表示装置54が設けられている。
【0025】
ここで、乗りかご14内に設置されたLED照明装置41の構成について説明する。
【0026】
LED照明装置41は、固体発光素子であるLED43を光源として用いた照明装置である。図4は複数のLED43を基板42上に一列に配列して細長の蛍光管形状としたものであり、これを2本並べてユニット化した例を示している。また、図5は複数のLED43を基板42上に格子状に配列してユニット化した例を示している。
【0027】
図6はLED照明装置41のLED43の構造例を示す図である。なお、ここでは、砲弾型の基本的な構造を示すが、本発明は特にこの構造に限定されるものではない。
【0028】
リードフレーム1上にLEDチップ2が実装され、その周りをエポキシ樹脂3で砲弾型にモールドされている。なお、4と5はリードフレーム1に接続された電極である。エポキシ樹脂3は、LEDチップ2を外部から保護すると共に、所定の屈折率を有して、LEDチップ2から発せられる光を効率良く取り出すものである。
【0029】
このような構成のLED照明装置41にあっては、一般的な蛍光灯に比べて、消費電力が約1/3であり、二酸化炭素も約60%削減できるといったメリットがある。さらに、水銀を使用しないため、環境面でも優れている。また、ガラス管を使用しないため、地震等で落下した場合でも割れにくい。このため、エレベータのかご室のように、狭い空間の真下に乗客が出入りするような環境下で使用する照明装置として最適である。
【0030】
ここで、LED照明装置41は、長寿命であることが最大の特長であり、一般的な蛍光灯に比べて5倍以上の寿命を有する。これは、LEDが固体発光方式のため、一般的な蛍光灯のようにフィラメントの消耗が生じないためである。しかし、LED照明装置41は、点灯時間の経過に伴い、使用材料の劣化により、光束が徐々に減少していく欠点がある。
【0031】
光束低下の原因となる使用材料とは、具体的には図6に示したエポキシ樹脂3である。このエポキシ樹脂3が劣化すると、透過性が低下して光束が減少する。特に、エポキシ樹脂3は熱に弱いため、温度が高い環境下では、すぐに劣化してしまい、LED照明装置41の寿命を急速に縮める。通常、初期時の光束から30%低下した状態が寿命と定められている。
【0032】
以下では、このようなLED照明装置41の交換時期を判断するための具体的な構成について説明する。
【0033】
図7はエレベータ12の制御盤18の装置構成を示すブロック図である。制御盤18には、制御装置61、通信装置62、記憶装置63が備えられている。
【0034】
制御装置61は、乗りかご14の運転制御などを含むエレベータ全体の制御を行う。この制御装置61には、乗りかご14内に設置されたLED照明装置41、温度センサ45、ランプ34などが接続されている。
【0035】
ここで、本実施形態において、この制御装置61は、LED照明装置41の交換時期(寿命)を判断するための構成要素として、利用状況検出部61a、駆動制御部61b、点灯時間計測部61c、交換時期推測部61d、報知部61e、平均温度算出部61fを備えている。
【0036】
利用状況検出部61aは、エレベータ12の利用状況を検出する。「エレベータの利用状況」とは、利用者がエレベータ12(乗りかご14)を利用している状況のことであり、例えば乗場ボタン53の押下状態から判断する。
【0037】
駆動制御部61bは、利用状況検出部61aによって検出されたエレベータ12の利用状況に応じて、乗りかご14内に設置されたLED照明装置41の駆動を制御するものであり、利用者なしの状況であれば、LED照明装置41を消灯して省電力化を図る。
【0038】
点灯時間計測部61cは、図示せぬタイマを用いて、LED照明装置41が初期起動時から現時点までに点灯した時間を計測する。
【0039】
交換時期推測部61dは、後述する光束特性曲線64を用いてLED照明装置41の交換時期を推定する。
【0040】
報知部61eは、交換時期推測部61dによってLED照明装置41の交換時期が判断された場合に、乗りかご14内に設置されたランプ34の点灯により、その旨を報知する。
【0041】
平均温度算出部61fは、LED照明装置41の電源をONしている間のLED43の平均温度を算出する。
【0042】
通信装置62は、通信回線20を介して接続された監視センタ21内の監視制御装置22との間の通信を行う。
【0043】
また、記憶装置63は、プログラムを含む各種データを記憶している。この記憶装置63には、予めLED照明装置41の点灯時間と光束との関係を温度条件別に表した光束特性曲線64がデータ化されて記憶されている。
【0044】
図8はその光束特性曲線64の一例を示す図であり、横軸が点灯時間(h)、縦軸が光束(cd)を表わしている。上述したように、LED照明装置41に用いられているLED43は、エポキシ樹脂3の劣化により透過性が低下して光束が減少する特性を持つ。このエポキシ樹脂3は熱に弱く、温度が高い程、劣化が早く進み、それに伴い光束が急速に減少する。
【0045】
図8の例は、LED温度が40℃、50℃、60℃の場合の光束特性を表している。初期時の光束から30%減少した状態を寿命とすると、LED温度が40℃の場合には初期時からT3時間経過した時点で交換となる。また、LED温度が50℃の場合には初期時からT2時間経過した時点で交換、LED温度が60℃の場合には初期時からT1時間経過した時点で交換となる。T3>T2>T1である。
【0046】
ここで、通常、LED寿命は、室温25℃で使用した場合に4万時間とされている。つまり、1年で約8千時間使用としたとすると、5年間使用できる計算になる。ただし、これは室温25℃のときであり、実際にはLED照明装置41の使用環境(周囲温度)によってLED温度が変動する。
【0047】
図9は周囲温度とLED温度との関係を示す図であり、横軸が点灯時間(h)、縦軸がLED温度(℃)を表わしている。実線が周囲温度一定(例えば室温25℃)とした場合のLED温度の特性である。ここで、周囲温度が高くなると、点線で示すようにLED温度が急激に上昇する。逆に、周囲温度が低くなると、一点鎖線で示すようにLED温度が緩やかに上昇する。したがって、同じ時間だけ点灯しても、周囲温度が高い場合と小さい場合とでLED温度が異なることが分かる。
【0048】
記憶装置63には、このような周囲温度とLED温度との関係を示す温度テーブル65が予め記憶されている。
【0049】
次に、第1の実施形態としての動作を説明する。
なお、以下の各フローチャートで示される処理は、コンピュータである制御装置61が記憶装置63に記憶された所定のプログラムを読み込むことにより実行される。
【0050】
(a)LED照明装置の点灯制御
まず、乗りかご14内に設置されたLED照明装置41の点灯制御について説明する。
【0051】
図10は制御装置61によるLED照明装置41の点灯制御の動作を示すフローチャートである。
【0052】
いま、ビル11に設置されたエレベータ12が通常運転モードにあり、LED照明装置41を含む各機器のそれぞれに所要の電力が供給されて駆動されているものとする。ここで、制御装置61は、エレベータ12(乗りかご14)の利用状況を検出する(ステップA11)。その結果、エレベータ12が利用されている状況であれば(ステップA11のYes)、制御装置61は、LED照明装置41を点灯した状態にする(ステップA13)。
【0053】
なお、エレベータ12の利用状況は、各階の乗場51に設置された乗場ボタン53の操作状態から検出する。すなわち、乗りかご14が任意の階で停止して待機状態になったときに、所定時間の間、各階の乗場ボタン53のいずれもが押下されなかった場合には、エレベータが利用されていない状況であると判断する。
【0054】
なお、別の方法として、例えば各階の乗場51に図示せぬ人感センサを設置しておき、その人感センサの検出信号の有無によってエレベータ12の利用状況を判断することも可能である。この場合、乗りかご14が任意の階で停止して待機状態になったときに、所定の時間、荷重センサから検出信号が出力されなかった場合に、エレベータ12が利用されていない状況であると判断する。
【0055】
また、乗りかご14の底部に設置されている図示せぬ荷重センサを用いることでも良い。つまり、乗りかご14が任意の階で停止して待機状態になったときに、所定の時間、荷重センサによって積載荷重が検知されなかった場合に、エレベータ12が利用されていない状況であると判断する。
【0056】
ここで、エレベータ12が利用されていない状況(つまり、利用者がいない状態)が所定時間(例えば10分)続いた場合に(ステップA12のYes)、制御装置61は、次にエレベータ利用が検出されるまでの間、LED照明装置41を消灯する(ステップA14)。具体的には、制御装置61から電源制御信号をLED照明装置41に出力して、LED照明装置41の電源をOFFする。これにより、エレベータ利用がない状態での無駄な電力の消費を抑えることができる。
【0057】
エレベータ12の運転が終了するまでの間(ステップA15のNo)、このようなLED照明装置41の点灯制御が繰り返される。そして、エレベータ12の運転が終了すると(ステップA15のYes)、制御装置61は、LED照明装置41を含む各機器の駆動を停止してエレベータ12を停止状態とする(ステップA16)。
【0058】
(b)LED照明装置の寿命判断
次に、乗りかご14内に設置されたLED照明装置41の寿命判断について説明する。
【0059】
図11は制御装置61によるLED照明装置41の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【0060】
エレベータ12の運転中において、制御装置61は、LED照明装置41の点灯時間を計測する(ステップB11)。上述したように、LED照明装置41は常時点灯しているわけではなく、エレベータ12の利用状況(利用者の有無)に応じて点灯/消灯が繰り返されている。したがって、LED照明装置41の初期起動時から実際に点灯している時間だけをカウントし、その時間を順次積算していく。
【0061】
ここで、第1の実施形態では、予めLED照明装置41の温度条件が保守員あるいはビル管理者によって任意の温度に指定されているものとする(ステップB12)。これにより、制御装置61は、LED照明装置41の初期起動時から現時点までの点灯時間と上記指定された温度条件に基づいて光束特性曲線64を参照して(ステップB13)、現時点での光束の低下率を求める(ステップB14)。
【0062】
この光束の低下率が予め設定された閾値に達していた場合に、制御装置61は、LED照明装置41に用いられているLED43が寿命であり、交換時期が来ているものと判断する(ステップB15)。なお、上記閾値は、初期時の光束から30%減の値に設定されている。
【0063】
交換時期と判断した場合には(ステップB15のYes)、制御装置61は、乗りかご14内に設置されたランプ34(図2参照)を点灯して、LED照明装置41の交換時期が来ていることを報知する(ステップB16)。なお、通常、LED照明装置41には複数のLED43が用いられているが、そのうちの1つでも寿命が来た場合には、LED単位での交換はできないため、基板ごと交換する必要がある。
【0064】
このように、点灯時間と温度条件から光束特性曲線64を参照して交換時期を推測することにより、LED43のように徐々に光束が低下する特性を有するLED照明装置41の交換時期を適切に判断して報知することができる。これにより、保守員やビル管理者が定期的にLED照明装置41のカバー44を外してLED43を点検しなくとも、ランプ34の点灯状態からLED照明装置41の交換時期を簡単に把握して対処することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0066】
上記第1の実施形態では、LED照明装置41の温度条件を任意に指定したが、第2の実施形態では、LED照明装置41の近傍に設置された温度センサ45を用いて周囲温度を検出し、その検出した周囲温度を元にして温度条件を設定する。
【0067】
なお、装置構成については上記第1の実施形態と同様であるため、ここでは、LED照明装置41の寿命判断の処理についてのみ説明する。
【0068】
図12は本発明の第2の実施形態に係る制御装置61によるLED照明装置41の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【0069】
エレベータ12の起動により運転が開始されると、制御装置61は、LED照明装置41の点灯時間を計測する(ステップC11)。上述したように、エレベータ12の運転中にLED照明装置41は常時点灯しているわけではなく、エレベータ12の利用状況(利用者の有無)に応じて点灯/消灯が繰り返されているので、LED照明装置41の初期起動時から実際に点灯している時間だけをカウントし、その時間を順次積算していく。
【0070】
ここで、第2の実施形態では、制御装置61は、温度センサ45を通じて周囲温度を検出する(ステップC12)。なお、周囲温度は定期的に検出して、その平均値を用いるものとする。
【0071】
制御装置61は、その周囲温度と点灯時間とに基づいて温度テーブル65を検索してLED温度を算出する(ステップC13)。制御装置61は、この算出されたLED温度を温度条件として設定し、LED照明装置41の初期起動時から現時点までの点灯時間との関係から光束特性曲線64を参照して(ステップC14)、現時点での光束の低下率を求める(ステップC15)。この場合、温度条件が変わる毎に光束の低下率も変動するので、その都度、光束特性曲線64から得られる光束の低下率を逐次積算しながら、最終的な値を求めるものとする。
【0072】
この光束の低下率が予め設定された閾値に達した場合に、制御装置61は、LED照明装置41に用いられているLED43が寿命であり、交換時期が来ているものと判断する(ステップC16)。なお、上記閾値は、初期時の光束から30%減の値に設定されている。
【0073】
交換時期と判断した場合には(ステップC16のYes)、制御装置61は、乗りかご14内に設置されたランプ34(図2参照)を点灯して、LED照明装置41の交換時期が来ていることを報知する(ステップC17)。
【0074】
このように、温度センサ45を用いて周囲温度を検出することにより、LED照明装置41の使用環境を考慮した温度条件を設定することができる。これにより、LED照明装置41の交換時期をより正確に判断して、報知することができる。
【0075】
また、温度センサ45はLED照明装置41の近傍に少なくとも1つだけ設置しておけば良い。したがって、部品点数の大幅な増加やLED照明装置41の構造改良などを必要とせずに簡易に実現することができる。
【0076】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0077】
例えば、季節や地域によって気候条件(湿度等)が変わると、LED温度に対する光束の減少特性が異なることがある。そこで、第3の実施形態では、図13に示すように、記憶装置63に記憶された複数の光束特性曲線64a,64b,64c…を適宜選択的に使用して、LED照明装置41の寿命判断を行うことを特徴とする。これらの光束特性曲線64a,64b,64c…は、予め季節や地域などの環境条件を変えて、点灯時間と光束との関係を温度条件別に調べた結果から作成されている。
【0078】
今、環境条件として「地域」を想定して、第3の実施形態としての動作を説明する。
【0079】
図14は本発明の第3の実施形態に係る制御装置61によるLED照明装置41の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【0080】
保守員あるいはビル管理者が制御装置61に接続された図示せぬスイッチや端末装置などを操作して、エレベータ12が設置されているビル11の地域(例えば「東京」)を環境条件として指定する(ステップD11)。この場合、記憶装置63には、複数の異なる地域毎に点灯時間と光束との関係を温度条件別に表した複数の光束特性曲線64a,64b,64c…が記憶されている。
【0081】
ここで、制御装置61は、光束特性曲線64a,64b,64c…の中から上記環境条件として指定された地域に対応した光束特性曲線を選択する(ステップD12)。例えば、光束特性曲線64aが選択されたとすると、以後、制御装置61は、この光束特性曲線64aを用いて、上記第1または第2の実施形態で説明したような寿命判断処理を行い、LED照明装置41の交換時期に乗りかご14内に設置されたランプ34(図2参照)を点灯して報知する(ステップD13)。
【0082】
なお、ここでは環境条件として「地域」を例にして説明したが、例えば「季節」や「ビルの規模」などを環境条件として設定するような構成であっても良い。
【0083】
このように、環境条件毎に複数の光束特性曲線を用意しておき、LED照明装置41の使用環境に応じて、各光束特性曲線を適宜選択的に使用することで、より正確な交換時期を判断して報知することができる。
【0084】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0085】
第4の実施形態では、LED照明装置41をONしている間だけのLED温度に着目ししたものである。
【0086】
なお、装置構成については上記第1の実施形態と同様であるため、ここでは、LED照明装置41の寿命判断の処理についてのみ説明する。
【0087】
図15は本発明の第4の実施形態に係る制御装置61によるLED照明装置41の寿命判断の動作を示すフローチャートである。
【0088】
エレベータ12の起動により運転が開始されると、制御装置61は、LED照明装置41の点灯時間を計測する(ステップE11)。上述したように、エレベータ12の運転中にLED照明装置41は常時点灯しているわけではなく、エレベータ12の利用状況(利用者の有無)に応じて点灯/消灯が繰り返されているので、LED照明装置41の初期起動時から実際に点灯している時間だけをカウントし、その時間を順次積算していく。
【0089】
ここで、第3の実施形態において、制御装置61は、温度センサ45を通じてLED照明装置41がONされている間の周囲温度を検出すると共に、温度テーブル65を参照して、その間に上昇するLED温度の平均値を算出する(ステップE12)。
【0090】
図16および図17にその様子を示す。
今、図16に示すように、時間t1〜t2の間にLED照明装置41がONされて点灯したものとする。このとき、LED温度は時間t1から徐々に上昇し、時間t2でピークに達した後、徐々に降下する。この場合、図17に示すように、時間t1〜t2の間に30℃まで上昇したとすると、その間の平均温度は25℃となる。
【0091】
次に、制御装置61は、上記平均温度を温度条件として設定し、LED照明装置41の初期起動時から現時点までの点灯時間との関係から光束特性曲線64を参照して(ステップE13)、現時点までの光束の低下率を求める(ステップE14)。この場合、温度条件が変わる毎に光束の低下率も変動するので、その都度、光束特性曲線64から得られる光束の低下率を逐次積算しながら、最終的な値を求めるものとする。
【0092】
この光束の低下率が予め設定された閾値に達した場合に、制御装置61は、LED照明装置41に用いられているLED43が寿命であり、交換時期が来ているものと判断する(ステップE15)。なお、上記閾値は、初期時の光束から30%減の値に設定されている。
【0093】
交換時期と判断した場合には(ステップE15のYes)、制御装置61は、乗りかご14内に設置されたランプ34(図2参照)を点灯して、LED照明装置41の交換時期が来ていることを報知する(ステップE16)。
【0094】
このように、LED照明装置41をONしている間だけの温度に着目することで、エレベータ12の利用状況に応じて点灯/消灯を繰り返すLED照明装置41の交換時期をさらに適切に判断して報知することができる。
【0095】
なお、上記各実施形態では、乗りかご14内に設置されたLED照明装置41を例にして説明したが、例えば乗りかご14内の操作パネル33や表示装置32(図2参照)、さらに、乗場51に設置された乗場ボタン53や表示装置54(図3参照)など、エレベータ施設内でLEDの発光素子を使用可能な機器であれば、上記同様の手法にして、これらの機器の寿命を判断して適切な時期に交換することができる。
【0096】
乗場51に設置された乗場ボタン53や表示装置54などの機器を監視対象とした場合には、図3に示すように、乗場51に設置されたランプ55の点灯により交換時期を報知するものとする。
【0097】
また、ランプ34、55は、それぞれ操作パネル33内、乗場ボタン53内に配置されていても構わない。この場合には、ランプと操作パネルまたは乗場ボタンがユニット化されることで、省スペースや据付時間の短縮が可能となる。
【0098】
また、報知方法としてはランプの点灯に限らず、表示器を用いて交換を促すメッセージを表示したり、ブザー音を鳴らすなどの方法であっても良い。
【0099】
また、ビルの管理室などに各機器に対応したランプ等の報知機器を設置して、ここで各機器の交換時期を一元管理するような構成であっても良い。
【0100】
また、機器の交換時期が来たときに、その旨を制御装置61から通信回線20を介して監視センタ21に報知することでも良い。この場合、監視センタ21に設置された監視制御装置22に、上記報知を受けて該当機器の交換部品を自動発注する仕組みを設けておくことも可能である。
【0101】
さらに、発光素子としてはLEDに限らず、例えばEL(electro luminescence)などであっても良い。すなわち、温度依存性のある発光素子を用いた機器であれば、そのすべてに適用可能であり、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…リードフレーム、2…LEDチップ、3…エポキシ樹脂、4,5…電極、11…ビル、12…エレベータ、13…昇降路、14…乗りかご、15…カウンターウエイト、16…ロープ、17…巻上機、18…制御盤、20…通信回線、21…監視センタ、22…監視制御装置、31…かごドア、32…表示装置、33…操作パネル、34…ランプ、41…LED照明装置、42…基板、43…LED、44…カバー、51…乗場、52…乗場ドア、53…乗場ボタン、54…表示装置、55…ランプ、61…制御装置、61a…利用状況検出部、61b…駆動制御部、61c…点灯時間計測部、61d…交換時期推測部、61e…報知部、61f…平均温度算出部、62…通信装置、63…記憶装置、64,64a,64b,64c…光束特性曲線、65…温度テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ施設内に設置され、発光素子を光源として点灯する機器と、
予め上記機器の点灯時間と光束との関係を温度条件別に表した光束特性曲線のデータを記憶した記憶手段と、
上記機器の初期起動時から現時点までの点灯時間を計測する点灯時間計測手段と、
この点灯時間計測手段によって計測された点灯時間と予め指定された温度条件とに基づいて、上記記憶手段に記憶された光束特性曲線を参照して光束の低下率を求め、その光束の低下率から上記機器の交換時期を推測する交換時期推測手段と、
この交換時期推測手段によって推測された上記機器の交換時期を報知する報知手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの制御装置。
【請求項2】
上記機器の近傍に設置され、上記機器の周囲温度を検出する温度センサを備え、
上記交換時期推測手段は、
上記温度センサによって検出された周囲温度と上記点灯時間計測手段によって計測された点灯時間とに基づいて上記機器の発光素子の温度を算出し、その算出された温度から上記光束特性曲線を参照して上記機器の交換時期を推測することを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項3】
上記記憶手段は、予め環境条件が異なる複数の光束特性曲線のデータを記憶しており、
上記交換時期推測手段は、
指定された環境条件に基づいて上記各光束特性曲線を選択的に用いて、上記機器の交換時期を推測することを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項4】
上記機器の電源をONしている間の上記機器の発光素子の平均温度を算出する平均温度算出手段を備え、
上記交換時期推測手段は、
上記平均温度算出手段によって算出された平均温度から上記光束特性曲線を参照して上記機器の交換時期を推測することを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項5】
エレベータの利用状況を検出する利用状況検出手段と、
この利用状況検出手段によって検出されたエレベータの利用状況に応じて上記機器の駆動を制御する駆動制御手段とを備え、
上記点灯時間計測手段は、
上記駆動制御手段によって駆動される上記機器の初期起動時から現時点までの点灯時間を計測することを特徴とする請求項1記載のエレベータの制御装置。
【請求項6】
上記機器は、少なくとも乗りかご内の天井面に設置されたLEDを用いた照明装置を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずかれに記載のエレベータの制御装置。
【請求項7】
上記乗りかご内に設置されたランプを備え、
上記報知手段は、上記交換時期推測手段によって推測された上記照明装置の交換時期を上記ランプの点灯により報知することを特徴とする請求項6記載のエレベータの制御装置。
【請求項8】
監視センタとの間の通信を行う通信手段を備え、
上記報知手段は、上記交換時期推測手段によって推測された上記照明装置の交換時期を上記通信手段を介して上記監視センタに報知することを特徴とする請求項6記載のエレベータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−126635(P2011−126635A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285117(P2009−285117)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】