説明

エレベータ制御装置

【課題】経年変化に対しても、かごの位置や速度の検出精度を維持するとともにこの位置や速度に基づく信頼性の高いエレベータ制御装置を得る。
【解決手段】エレベータ制御装置は、エレベータの昇降路内を昇降するかごの位置や速度を検出する検出装置を備えるエレベータ制御装置において、上記かごを上記昇降路内のガイドレールに対して案内する支持装置と、上記かごに対して変位可能に支持されるととともに上記ガイドレールに案内され且つ上記検出装置を支持するレール保持体と、上記検出装置からの情報に基づいてエレベータの運転を制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かごの位置や速度などのかご情報を検出し、検出したかご情報に基づいてエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、かごの位置や速度を検出するために、昇降路内に設置されたガイドレールの形状や表面のパターンをCCD線形カメラによって記録する方法が提案されている。そして、CCD線形カメラは、ガイドレールに沿って昇降するかごに搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、かごの位置や速度を検出するために、昇降路内を昇降するかごに対して変位可能で、且つ昇降路内に設けられたガイドレールに案内されるレール保持体を有し、かごに設けられた支持装置、レール保持体に設けられるとともにかごの位置を検出するための検出装置、及び検出装置からの情報に基づいて、エレベータの運転を制御する制御部を備えている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−274765号公報
【特許文献2】国際公開第2007/063574号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の方法では、かご内の偏加重によってかごが傾いたり、かごが揺れたりして、CCD線形カメラが記録する画像の位置がずれることがあるので、かごの位置や速度の検出精度の向上を図ることが困難になってしまうという問題がある。
また、ガイドレールの表面の磨耗や油の付着によってガイドレールの表面のパターンが変化した場合には、誤検出の恐れもあり、かごの位置や速度の検出精度の向上を図ることがさらに困難になってしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載のエレベータの制御装置では、レール保持体が本来の案内装置を兼ねているので、経年的な精度の維持に問題がある。
【0007】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、経年変化に対しても、かごの位置や速度の検出精度を維持するとともにこの位置や速度に基づく信頼性の高いエレベータ制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベータ制御装置は、エレベータの昇降路内を昇降するかごの位置や速度を検出する検出装置を備えるエレベータ制御装置において、上記かごを上記昇降路内のガイドレールに対して案内する支持装置と、上記かごに対して変位可能に支持されるととともに上記ガイドレールに案内され且つ上記検出装置を支持するレール保持体と、上記検出装置からの情報に基づいてエレベータの運転を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベータ制御装置は、かごに対して変位可能で、且つかごガイドレールに案内されるレール保持体を有する支持装置がかごに設けられ、かごの位置を検出するための検出装置がレール保持体に設けられているので、例えばかご内の偏加重によってかごがかごガイドレールに対して傾いても、レール保持体及び検出装置がかごガイドレールに対して傾くことを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ制御装置が設けられたエレベータを示す正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1のエレベータの制御装置を示すブロック図である。
【図4】図3の運転制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態2に係るエレベータの制御装置の正面図である。
【図6】図5のエレベータの制御装置の側面図である。
【図7】図5の運転制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のエレベータ制御装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベータの制御装置が設けられたエレベータを示す正面図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。図3は、図1のエレベータの制御装置の構成を示すブロック図である。
最初にこの発明に係るエレベータ制御装置に関する部分のエレベータを説明する。
昇降路1内には、一対のかごガイドレール2a、2bおよび図示しない一対の釣合おもりガイドレールが設置されている。かごガイドレール2a、2b間に、かごガイドレール2a、2bに沿って移動されるかご3が配置されている。
また、釣合おもりガイドレール間に、釣合おもりガイドレールに沿って移動される図示しない釣合おもりが配置されている。
【0012】
昇降路1の上部には、かご3及び釣合いおもりを昇降させるための図示しない巻上機が設けられている。かご3及び釣合おもりは、巻上機の駆動シーブに巻き掛けられた複数本の主索4により昇降路1内に吊り下げられている。かご3及び釣合おもりは、駆動シーブの回転により昇降される。
【0013】
次に、この発明の実施の形態1に係るエレベータ制御装置を説明する。
かご3の上部には、各主索4の一端部が接続されたかご綱止め装置5が設けられている。かご綱止め装置5には、各主索4の破断の有無を検出するための主索切れ検出装置6が設けられている。この例では、主索4の破断の有無は、主索4のヒッチエンドのかご綱止め装置5に対する変位の大きさによって検出される。
【0014】
かご3の上部の一方のかごガイドレール2b側には、かご3の位置を検出するための検出装置7及びその検出装置7を支持する支持装置8が設けられている。以下の説明では、支持装置8は、かご3をガイドレール2bに沿って移動させるガイド装置としてかご3に設けられている。
なお、かご3の上部の他方のかごガイドレール2a側及びかご3の下部の各かごガイドレール2a、2b側には、かごガイドレール2a、2bに案内されながら、かご3をガイドレール2a、2bに沿って移動させるガイド装置9a、9b、9cがそれぞれ設けられている。
【0015】
支持装置8は、かごガイドレール2bに案内されるレール保持体11を有している。
レール保持体11は、かご3の奥行き方向(各かごガイドレール2a、2bを含む平面に対して垂直な方向)へ延びる水平軸を中心に回動可能にかご3に設けられている。即ち、レール保持体11は、かご3に対して変位可能になっている。以下の説明では、レール保持体11は、図示しないヒンジを介してかご3に取り付けられている。
【0016】
レール保持体11は、支持体10と、支持体10に設けられるとともにかごガイドレール2bに当接されながら転動される一対の案内ローラ13a、13bとを有している。
レール保持体11は、下部ベース部材14と、上部ベース部材15と、下部ベース部材14と上部ベース部材15の間に配置されるとともに案内ローラ13a、13bがそれぞれ取り付けられた一対のローラ取付部材16a、16bと、を有している。
【0017】
下部ベース部材14は、図示しないヒンジを介してかご3に取り付けられている。
また、ローラ取付部材16a、16bは、例えば図示しないばね等の弾性体により互いに近づく方向へ付勢されている。
各案内ローラ13a、13bは、各ローラ取付部材16a、16bに取り付けられた1対の回転軸17a、17bを中心にそれぞれ回転可能になっている。以下の説明では、各回転軸17a、17bは、互いに平行に配置されている。案内ローラ13a、13bは、かごガイドレール2bの突出部に押圧されている。これにより、レール保持体11のかごガイドレール2bに対する過度な傾きが防止される。
【0018】
検出装置7は、レール保持体11に設けられている。また、検出装置7は、かご3の位置を連続的に検出するための連続位置検出部としてのエンコーダ21と、昇降路1内の設定基準位置にかご3があるときに昇降路1内に固定された図示しない被検出体を検出可能な基準位置検出部としての近接センサ22と、を有している。
【0019】
エンコーダ21は、一方の案内ローラ13aの回転軸17aに設けられている。また、エンコーダ21は、一方の案内ローラ13aの回転に応じた信号を発生するようになっている。かご3の位置は、エンコーダ21からの信号によって累積的に積算されるかご3の移動距離に基づいて算出される。
【0020】
近接センサ22は、上部ベース部材15に設けられている。かごガイドレール2bは、複数の図示しない単位レールを図示しないボルトにより繋ぎ合わせて作製されている。従って、以下の説明では、近接センサ22は、単位レールを繋ぎ合わせるボルトを被検出体として検出するようになっている。なお、被検出体としては、ボルトの他に、かごガイドレール2bを支持するブラケットや乗り場の敷居、レールの継ぎ目等が挙げられる。
また、レール保持体11には、かご3の加速度を検出するための加速度検出装置としての加速度センサ23が設けられている。以下の説明では、加速度センサ23は、上部ベース部材15に設けられている。
【0021】
主索切れ検出装置6、エンコーダ21、近接センサ22、及び加速度センサ23のそれぞれからの情報は、制御部としての運転制御装置25に入力される。運転制御装置25は、主索切れ検出装置6、エンコーダ21、近接センサ22及び加速度センサ23のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの運転を制御する。
【0022】
運転制御装置25は、主索切れ検出装置6、エンコーダ21、近接センサ22及び加速度センサ23のそれぞれからの情報を処理する処理部26と、処理部26からの情報に基づいて、エレベータの運転についての指令を発する指令発生部27とを有している。
【0023】
処理部26には、エンコーダ21からの情報が常時入力される。処理部26は、エンコーダ21からの情報に基づいて、かご3の移動距離を求め、求めた距離に基づいて、かご3の位置の値を算出する。
また、処理部26には、被検出体が近接センサ22によって検出される時のかご3の位置の値が設定基準位置の値としてあらかじめ記憶されている。
【0024】
処理部26は、近接センサ22が被検出体を検出した時に、エンコーダ21及び近接センサ22のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの異常の有無の判定を行う。即ち、処理部26は、近接センサ22が被検出体を検出した時に、エンコーダ21からの情報に基づいてかご3の位置の値として算出した連続検出部算出値としてのエンコーダ算出値と、近接センサ22により検出された被検出体に対応する設定基準位置の値とを比較し、各値の差があらかじめ設定された閾値以下である時に正常判定を行い、各値の差が閾値を越えているときに異常判定を行う。
【0025】
また、処理部26は、正常判定を行った時に、かご3の位置の値をエンコーダ算出値から設定基準位置の値に置換する。運転制御装置25は、置換後のかご3の位置の値に基づいて、エレベータの運転を制御する。
また、処理部26は、主索切れ検出装置6及び加速度センサ23の少なくともいずれ一方からの情報に基づいても、エレベータの異常の有無の判定を行う。即ち、処理部26は、主索切れ検出装置6が各主索4のうち少なくともいずれか一本が破断したことを検出した時、または加速度センサ23からの情報により得られたかご3の加速度が設定許容範囲を外れている時に、異常判定を行う。
また、処理部26は、全ての主索で破断が検出されておらず、且つ、かご3の加速度が設定許容範囲内にある時に、正常判定を行う。
【0026】
指令発生部27は、処理部26が正常判定を行っている時に、エレベータの通常運転を行うための制御指令をエレベータの機器に出力し、処理部26が異常判定を行っている時に、エレベータの異常時の運転を行うための制御指令をエレベータの機器に出力する。
エレベータの異常時の運転としては、かご3を最寄階に停止させる運転、巻上機の駆動シーブの回転を強制的に停止させるブレーキ装置を動作させる運転、かご3の落下を強制的に停止させる非常止め装置を動作させる運転、またはあらかじめ設定された基準階にかご3を移動させる運転等が挙げられる。
【0027】
次に、動作について説明する。
かご3が移動されると、かご3の移動に応じて各案内ローラ13a、13bがかごガイドレール2b上を転動する。これにより、案内ローラ13aの回転に応じた信号がエンコーダ21から運転制御装置25へ出力される。
運転制御装置25では、エンコーダ21からの情報に基づいて、かご3の位置及び速度が算出される。この後、算出されたかご3の位置及び速度に基づいてエンコーダ21の運転が運転制御装置25により制御される。
かご3が昇降路1内の設定基準位置に達すると、近接センサ22がかごガイドレール2bのボルトを検出し、検出信号が近接センサ22から運転制御装置25へ出力される。
【0028】
図4は、図3の運転制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
ステップS101で、運転制御装置25がエンコーダ21からの情報とともに近接センサ22からの検出信号を受ける。
ステップS102で、運転制御装置25が、エンコーダ21からの情報に基づいてかご3の位置の値として算出されたエンコーダ算出値と、近接センサ22により検出された被検出体に対応する設定基準位置の値とを比較し、その差があらかじめ設定された閾値以下であるか否かを判定する。差が閾値以下の場合ステップS103に進み、差が閾値を超える場合ステップS106に進む。
【0029】
ステップS103で、運転制御装置25が正常判定を行う。
ステップS104で、運転制御装置25がかごの位置の値としてエンコーダ算出値から設定基準位置の値に置換する。これにより、かごの位置の値についての累積的な誤差が解消される。
ステップS105で、置換後のかごの位置に基づいて、エレベータの運転が運転制御装置25により制御され、通常運転が継続される。
【0030】
ステップS106で、運転制御装置25が異常判定を行う。
ステップS107で、エレベータの運転が異常時の運転とされ、例えばかご3を最寄り階に停止させるなどの運転が行われている。
また、エレベータの運転時には、加速度センサ23からの情報に基づいて、かご3の加速度が運転制御装置25により常時算出されている。かご3の加速度が設定許容範囲内にある時には、運転制御装置25により正常判定が行われ、設定許容範囲外にある時には、運転制御装置25により異常判定が行われる。
【0031】
また、すべての主索4の破断が主索切れ検出装置6によって検出されていない時に、運転制御装置25により正常判定が行われ、主索4の破断が検出された時には、運転制御装置25により異常判定が行われる。
運転制御装置25が主索切れ検出装置6または加速度センサ23からの情報に基づいて正常判定または異常判定を行った後の動作は、上記と同様である。
【0032】
このようなエレベータ制御装置では、かご3に対して変位可能で、且つかごガイドレール2bに案内されるレール保持体11を有する支持装置8がかご3に設けられ、かご3の位置を検出するための検出装置7がレール保持体11に設けられているので、例えばかご3内の偏加重によってかご3がかごガイドレール2bに対して傾いても、レール保持体11及び検出装置7がかごガイドレール2bに対して傾くことを防止することができる。
【0033】
これにより、例えばかごガイドレール2bに固定された被検出体を検出装置7が検出する場合に、かご3が傾いた時や振動した時の検出装置7の被検出体に対するずれを小さくすることができ、検出装置7が被検出体をより確実に検出することができる。これにより、検出装置7による測定誤差も小さくすることができ、かご3の位置の検出精度の向上を図ることができる。
また、支持装置8は、かご3をかごガイドレール2bに沿って移動させるガイド装置とされているので、検出装置7の設置スペースの増大を防止することができる。
【0034】
また、運転制御装置25は、近接センサ22が被検出体としてのボルトを検出した時に、エンコーダ21及び近接センサ22のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの異常の有無の判定を行うようになっているので、複数の情報を比較することができ、例えばエンコーダ21の故障等のようなエレベータの異常を検出することができる。従って、誤ったかご3の位置に基づいてエレベータの運転が行われることを防止することができる。
【0035】
また、運転制御装置25は、エンコーダ21からの情報に基づいてかご3の位置の値として算出されたエンコーダ算出値と、近接センサ22が検出した被検出体に対応する設定基準位置の値との差が閾値以下である時に、かご3の位置の値をエンコーダ算出値から設定基準位置の値に置換するようになっているので、エンコーダ21からの情報によるかごの位置の値の累積誤差の増大を防止することができ、かご3の位置の検出精度の向上をさらに図ることができる。
【0036】
また、運転制御装置25は、かご3の加速度を検出するための加速度センサ23からの情報に基づいて、エレベータの運転を制御するようになっているので、例えば主索4が破断してかご3が落下する場合等には、かご3の位置や速度が異常になる前に、かご3の加速度が異常になり、エレベータの異常をより早期に検出することができる。
また、検出されたかご3の加速度を積分することにより、かご3の速度や位置を求めることができるので、かご3の加速度から求めたかご3の位置や速度と、エンコーダ21からの情報に基づいて算出されたかご3の位置や速度とを比較することにより、かご3の位置や速度の検出精度の向上をさらに図ることができる。
【0037】
また、運転制御装置25は、主索4の破断の有無を検出するための主索切れ検出装置6からの情報に基づいて、エレベータの運転を制御するようになっているので、主索4が破断してかご3が落下する場合には、かご3の速度や加速度が異常になる前に、エレベータの異常を早期に検出することができる。
【0038】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係るエレベータ制御装置の正面図である。図6は、図5のエレベータ制御装置の側面図である。
支持装置8Bは、かご3をガイドレール2bに沿って移動させるガイド装置としてかご3に設けられている。
支持装置8Bは、かごガイドレール2bに案内されるレール保持体11Ba、11Bbを有している。レール保持体11Ba、11Bbは、それぞれ軸17a、17bによって回転する。そして、レール保持体11Ba、11Bbの部材は、それぞれ上下をばねによって、かご3と一体の筐体に対して弾性支持されている。レール保持体11Ba、11Bbは、それぞれ独立にかご3と一体の筐体に対して回転可能になっている。
【0039】
レール保持体11Ba、11Bbは、それぞれローラ取付部材16a、ローラ取付部材16b、かごガイドレール2bに当接されながら点動される一対の案内ローラ13a、13bを有している。
ローラ取付部材16a、16bには、それぞれ案内ローラ13a、13bが取り付けられている。かご3には、レール保持体11Bから突出した軸をローラ取付部材16a、16bのブラケットに差し込むことで取り付けられている。図では、レール保持体11Ba、11Bbから突出した二本の軸をローラ取付部材16a、16bの2個のブラケットに差し込むことで取り付けられている。
また、ローラ取付部材16a、16bは、例えばばね等の弾性体により互いに近づく方向へ付勢されている。
【0040】
案内ローラ13a、13bは、それぞれローラ取付部材16a、16bに取り付けられた一対の回転軸17a、17bを中心にそれぞれ回転可能になっている。以下の説明では、回転軸17a、17bは、互いに平行に配置されている。案内ローラ13a、13bにより、かごガイドレール2bの突出部が押圧されている。これにより、レール保持体11Ba、11Bbのかごガイドレール2bに対する過度な傾きが防止される。
【0041】
検出装置7Bは、レール保持体11Baに設けられている。また、検出装置7Bは、かごの位置を連続的に検出するための連続位置検出部としての2個のエンコーダ21と、昇降路1内の設定基準位置にかご3があるときに昇降路1内に一定の間隔で固定された複数の図示しない被検出体を同時に2個検出可能な基準位置検出部としての2個の近接センサ22とを有している。
【0042】
2個のエンコーダ21は、両方の案内ローラ13a、13bの回転軸17a、17bに設けられている。また、エンコーダ21は、案内ローラ13a、13bの回転に応じた信号を発生するようになっている。かご3の位置は、エンコーダ21からの信号によって累積的に積算されるかご3の移動距離に基づいて算出される。
【0043】
近接センサ22は、上部ベース部材15に設けられている。かごガイドレール2bは、複数の単位レールをボルトにより繋ぎ合わせて作製されている。従って、以下の説明では、近接センサ22は、単位レールを繋ぎ合わせるボルトを被検出体として検出するようになっている。近接センサ22は、一定の間隔で固定された複数の被検出体を同時に2個検出するため、被検出体と同じ幅で設置されている。被検出体としては、ボルトの他に、かごガイドレール2bを支持するブラケットや乗り場の敷居等が挙げられる。
【0044】
また、レール保持体11Bbには、かご3の加速度を検出するための加速度検出装置としての加速度センサ23が設けられている。以下の説明では、加速度センサ23は、上部ベース部材15に設けられている。
【0045】
主索切れ検出装置6、エンコーダ21、近接センサ22、及び加速度センサ23のそれぞれからの情報は、制御部としての運転制御装置25Bに入力される。運転制御装置25Bは、主索切れ検出装置6、エンコーダ21、近接センサ22及び加速度センサ23のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの運転を制御する。
運転制御装置25Bは、主索切れ検出装置6、エンコーダ21、近接センサ22、及び加速度センサ23のそれぞれからの情報を処理する処理部26Bと、処理部26Bからの情報に基づいて、エレベータの運転についての指令を発する指令発生部27Bとを有している。
【0046】
処理部26Bには、2個のエンコーダ21からの情報が常時入力される。処理部26Bは、エンコーダ21からの情報に基づいて、かご3の移動距離を求め、求めた距離に基づいて、かご3の位置の値を算出する。
また、処理部26Bには、複数の被検出体の内の2個が2個の近接センサ22によって同時に検出される時のかご3の位置の値が設定基準位置の値としてあらかじめ記憶されている。
【0047】
処理部26Bは、2個の近接センサ22が2個の被検出体を同時に検出した時に、エンコーダ21及び近接センサ22のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの異常の有無の判定を行う。即ち、処理部26Bは、2個の近接センサ22が2個の被検出体を同時に検出した時に、エンコーダ21からの情報に基づいてかご3の位置の値として算出した連続検出部算出値としてのエンコーダ算出値と、近接センサ22により検出された被検出体に対応する設定基準位置の値とを比較し、各値の差があらかじめ設定された閾値以下である時に正常判定を行い、各値の差が閾値を越えているときに異常判定を行う。
【0048】
また、処理部26Bは、正常判定を行った時に、かご3の位置の値をエンコーダ算出値から設定基準位置の値に置換する。運転制御装置25Bは、置換後のかごの位置の値に基づいて、エレベータの運転を制御する。
【0049】
また、処理部26Bは、主索切れ検出装置6及び加速度センサ23の少なくともいずれか1つからの情報に基づいて、エレベータの異常の有無の判定を行う。即ち、処理部26Bは、主索切れ検出装置6が主索4のうち少なくともいずれか1本が破断したことを検出した時、または加速度センサ23からの情報により得られたかごの3加速度が設定許容範囲を外れている時に、異常判定を行う。
また、処理部26Bは、主索4の全ての破断が検出されておらず、且つ、かご3の加速度が設定許容範囲内にある時に、正常判定を行う。
【0050】
指令発生部27Bは、処理部26Bが正常判定を行っている時に、エレベータの通常運転を行うための制御指令をエレベータの機器に出力し、処理部26Bが異常判定を行っている時に、エレベータの異常時の運転を行うための制御指令をエレベータの機器に出力する。
エレベータの異常時の運転としては、かご3を最寄階に停止させる運転、巻上機の駆動シーブの回転を強制的に停止させるブレーキ装置を動作させる運転、かご3の落下を強制的に停止させる非常止め装置を動作させる運転、またはあらかじめ設定された基準階にかご3を移動させる運転等がある。
【0051】
次に、動作について説明する。
かご3が移動されると、かご3の移動に応じて案内ローラ13a、13bがかごガイドレール2b上を転動する。これにより、案内ローラ13a、13bの回転に応じた信号がエンコーダ21から運転制御装置25Bへ出力される。
運転制御装置25Bでは、エンコーダ21からの情報に基づいて、かご3の位置及び速度が算出される。エンコーダ21が2個取り付けられているので、各エンコーダ21の位置・速度の差を算出し、各値の差があらかじめ設定された閾値以下である時に正常運転を行い、各値の差が閾値を越えているときに異常判定を行う。この後、算出されたかごの位置及び速度に基づいてエンコーダ21の運転が運転制御装置25Bにより制御される。
【0052】
かご3が昇降路1内の設定基準位置に達すると、2個の近接センサ22がかごガイドレール2bの被検出体としてのボルトを検出し、検出信号が2個の近接センサ22から運転制御装置25Bへ出力される。
運転制御装置25Bでは、2個の近接センサ22からの情報に基づいて、かご3の位置が算出される。かご3の位置を算出する際に、近接センサ22が1個の場合、ブラケット等、被検出体以外のかごガイドレール2b上の物体を誤検出したり、昇降方向に対して垂直な方向のかご揺れによりかごガイドレール2bを誤検出したりしてしまう恐れがある。
一方、2個の近接センサ22が被検出体を検出した時の位置を設定基準位置とすることにより、被検出体以外の物体の誤検出やかご揺れによる誤検出を防止することができる。
【0053】
また、被検出物検出直前、検出終了直後の昇降方向のかご揺れにより、同じ被検出物を二度検出してしまう二重検出が発生する恐れがある。そのため、検出直前と検出終了直前のエンコーダ21の速度符号を参照し、同じであれば、被検出物を検出したと判断し、検出時の処理を行う。速度符号が異なる場合、二重検出であると判断し、検出時の処理を行わずに通常運転を継続する。
【0054】
図7は、運転制御装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
ステップS201で、運転制御装置25Bが2個のエンコーダ21からの情報を受信する。
ステップS202で、運転制御装置25Bが2個のエンコーダ21からの情報に基づいて算出したかご3の位置の2個の値を比較し、その差があらかじめ設定された閾値以下であるか否かを判定する。差が閾値以下の場合ステップS203に進み、差が閾値を超える場合、ステップS20 に進む。
【0055】
ステップS203で、近接センサが被検出体を検出可能な正常状態で動作していることを確認するため、運転制御装置25Bが、2個のエンコーダ21からの情報に基づいて算出された2個のエンコーダ算出値の平均値と、近接センサ22により前回検出された被検出体より昇り側または降り側に位置する被検出体の設定基準位置の範囲とが比較され、エンコーダ算出値の平均値が範囲内であるか否かを判定する。エンコーダ算出値の平均値が設定基準位置の範囲内である場合ステップS204に進み、エンコーダ算出値の平均値が設定基準位置の範囲外である場合ステップS211に進む。
【0056】
ステップS204で、運転制御装置25Bが2個の近接センサ22からの検出信号を受信する。
ステップS205で、運転制御装置25Bが2個の検出信号を受信したか否かを判定する。2個の検出信号を受信した場合、ステップS206に進み、1個の検出信号を受信した場合、ステップS213に進む。
ステップS206で、被検出物の検出開始直前または検出終了直前の昇降方向のかご揺れにより同じ被検出物を二度検出してしまう二重検出が発生する恐れがあるので、運転制御装置25Bが、検出開始直前と検出終了直前のエンコーダ21の速度符号を判定し、同じであれば、ステップS207に進み、異なる場合ステップS213に進む。
【0057】
ステップS207で、運転制御装置25Bが、2個のエンコーダ21の情報から算出されたエンコーダ算出値の平均値と、2個の近接センサ22により同時に検出された被検出体に対応する設定基準位置の値と、を比較し、その差があらかじめ設定された閾値以下であるか否かを判定する。差が閾値以下の場合ステップS208に進み、差が閾値を超える場合ステップS211に進む。
ステップS208で、運転制御装置25Bが正常判定を行う。
ステップS209で、運転制御装置25Bが2個のエンコーダ算出値の平均値をかごの位置の値に置換する。
ステップS210で、運転制御装置25Bが、置換後のかごの位置の値に基づいてエレベータの運転を制御し、通常運転を継続する。
【0058】
ステップS211で、運転制御装置25Bが異常判定を行う。
ステップS212で、エレベータの運転が異常時の運転とされ、例えばかごを最寄り階に停止させるなどの運転が行われる。
ステップS213で、運転制御装置25Bが二重検出と判定する。
ステップS214で、検出時の処理を行わずに通常運転を継続する。
【0059】
また、エレベータの運転時には、加速度センサ23からの情報に基づいて、かご3の加速度が運転制御装置25Bにより常時算出されている。かご3の加速度が設定許容範囲内にある時には、運転制御装置25Bにより正常判定が行われ、設定許容範囲外にある時には、運転制御装置25Bにより異常判定が行われる。
【0060】
また、すべての主索4の破断が主索切れ検出装置6によって検出されていない時に、運転制御装置25Bにより正常判定が行われ、設定許容範囲外にある時には、運転制御装置25Bにより異常判定が行われる。
また、すべての主索4の破断が主索切れ検出装置6によって検出されていない時に、運転制御装置25Bにより正常判定が行われ、主索4の破断が検出された時には、運転制御装置25Bにより異常判定が行われる。
運転制御装置25Bが主索切れ検出装置6または加速度センサ23からの情報に基づいて正常判定あるいは異常判定を行った後の動作は、上記と同様である。
【0061】
このようなエレベータ制御装置では、かご3に対して変位可能で、且つかごガイドレール2bに案内されるレール保持体11Ba、11Bbを有する支持装置8Bがかご3に設けられ、かご3の位置を検出するための検出装置7Bがレール保持体11Ba、11Bbに設けられているので、例えばかご3内の偏加重によってかご3がかごガイドレール2bに対して傾いた場合であっても、レール保持体11Ba、11Bb及び検出装置7Bがかごガイドレール2bに対して傾くことを防止することができる。
【0062】
それゆえ、例えば、かごガイドレール2bに固定された被検出体を検出装置7Bが検出する場合に、かご3が傾いた時や振動した時の検出装置7Bの被検出体に対するずれを小さくすることができ、検出装置7Bが被検出体をより確実に検出することができる。このため、検出装置7Bによる測定誤差も小さくすることができ、かご3の位置の検出精度の向上を図ることができる。
また、支持装置8Bは、かご3をかごガイドレール2bに沿って移動させるガイド装置とされているので、検出装置7Bの設置スペースの増大を防止することができる。
【0063】
また、運転制御装置25Bは、近接センサ22が被検出体としてのボルトを検出した時に、エンコーダ21及び近接センサ22のそれぞれからの情報に基づいて、エレベータの異常の有無の判定を行うので、複数の情報を比較することができ、例えばエンコーダ21の故障等のようなエレベータの異常を検出することができる。従って、誤ったかご3の位置に基づいてエレベータの運転が行われることを防止することができる。
【0064】
また、運転制御装置25Bは、エンコーダ21からの情報に基づいてかご3の位置の値として算出されたエンコーダ算出値と、近接センサ22が検出した被検出体に対応する設定基準位置の値との差が閾値以下である時に、かご3の位置の値をエンコーダ算出値から設定基準位置の値に置換するので、エンコーダ21からの情報によるかご3の位置の値の累積誤差の増大を防止することができ、かご3の位置の検出精度の向上をさらに図ることができる。
【0065】
また、運転制御装置25Bは、かご3の加速度を検出するための加速度センサ23からの情報に基づいて、エレベータからの運転を制御するので、例えば主索4が破断してかご3が落下する場合等には、かご3の位置や速度が異常になる前に、かご3の加速度が異常になり、エレベータの異常をより早期に検出することができる。
【0066】
また、検出されたかご3の加速度を積分することにより、かご3の速度や位置を求めることができるので、かご3の加速度から求めたかご3の位置や速度と、エンコーダ21からの情報に基づいて算出されたかご3の位置や速度とを比較することにより、かご3の位置や速度の検出精度の向上をさらに図ることができる。
【0067】
また、運転制御装置25Bは、主索4の破断の有無を検出するための主索切れ検出装置6からの情報に基づいて、エレベータの運転を制御するので、主索4が破断してかご3が落下する場合には、かご3の速度や加速度が異常になる前に、エレベータの異常を早期に検出することができる。
【0068】
なお、運転制御装置25Bが正常判定を行った時に、2個のエンコーダ21のそれぞれからの情報によって算出された2つのエンコーダ算出値の平均値に基づいて、エレベータの運転が制御されているが、算出された2つのエンコーダ算出値のうちのいずれかに基づいて、エレベータの運転が制御されるようにしてもよい。
【0069】
また、エンコーダの信号は調速機または巻上機に設定したエンコーダの信号でもよい。この場合、調速機または巻上機またはローラのエンコーダの情報を運転制御装置に入力し、各エンコーダから算出された位置を比較し、正常/異常の判定を行ってもよい。
【0070】
また、上記実施の形態2では、1つの支持装置のみがかごに設けられているが、複数の支持装置をかごに設けてもよい。この場合、各支持装置のレール保持体には、検出装置がそれぞれ設けられる。また、運転制御装置は、各検出装置からの情報に基づいて、エレベータの運転を制御する。
【0071】
また、各上記実施の形態では、支持装置は、かごをガイドレールに沿って移動させるガイド装置としているが、ガイド装置とは別に支持装置をかごに設けてもよい。この場合、例えばかごの側部とかごガイドレールとの間などに支持装置が配置される。
また、各上記実施の形態では、ボルトなどの被検出体が近接センサによって検出されるようになっているが、被検出体を検出可能なものであれば近接センサに限られず、例えば光センサや撮像装置などであってもよい。
また、各上記実施の形態では、複数の近接センサは上部ベース部材に設けられているが、下部ベース部材に設けても、上下ベース部材に別々に設けてもよい。
また、近接センサはかごに直接設けてもよい。
【0072】
また、各上記実施の形態では、加速度センサの数は1つであるが、複数であってもよい。
また、各上記実施の形態では、加速度センサが支持装置に設けられているが、加速度センサをかごに直接設けてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 昇降路、2a、2b ガイドレール、3 かご、4 主索、5 かご綱止め装置、6 主索切れ検出装置、7、7B 検出装置、8、8B 支持装置、9a、9b、9c ガイド装置、10 支持体、11、11Ba、11Bb レール保持体、13a、13b 案内ローラ、14 下部ベース部材、15 上部ベース部材、16a、16b ローラ取付部材、17a、17b 回転軸、21 エンコーダ、22 近接センサ、23 加速度センサ、25、25B 運転制御装置、26、26B 処理部、27、27B 指令発生部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの昇降路内を昇降するかごの位置や速度を検出する検出装置を備えるエレベータ制御装置において、
上記かごを上記昇降路内のガイドレールに対して案内する支持装置と、
上記かごに対して変位可能に支持されるととともに上記ガイドレールに案内され且つ上記検出装置を支持するレール保持体と、
上記検出装置からの情報に基づいてエレベータの運転を制御する制御部と、
を備えることを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
上記検出装置は、
上記かごの位置を連続的に検出する少なくとも1つの連続位置検出部と、
上記昇降路内の設定基準位置に上記かごがある時に上記昇降路内に固定された被検出体を検出可能な基準位置検出部と、
有し、
上記制御部は、上記連続位置検出部及び上記基準位置検出部の情報に基づいて、エレベータの異常の有無の判定を行うとともに上記判定に基づいて上記エレベータの運転を制御することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記基準位置検出部が上記被検出体を検出した時に、上記連続位置検出部からの情報に基づいて上記かごの位置の値として算出した連続検出部算出値と上記設定基準位置の値とを比較し、各値の差があらかじめ設定された閾値以下である時に、上記かごの位置の値を上記連続検出部算出値から上記設定基準位置の値に置換し、置換後の上記かごの位置の値に基づいて上記エレベータの運転を制御することを特徴とする請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
上記かごを吊り下げる主索の破断の有無を検出するための主索切れ検出装置を備え、
上記検出装置は、上記かごの加速度を検出する加速度検出装置を有し、
上記制御部は、上記加速度検出装置または上記主索切れ検出装置の少なくともいずれか一方からの情報に基づいて、上記エレベータの運転を制御することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275078(P2010−275078A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130327(P2009−130327)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】