説明

エレベータ及びエレベータのドア制御装置

【課題】ドアモータが消費する電力量を低減すること。
【解決手段】エレベータ1のドア制御装置としての制御装置14は、エレベータ1のカゴ10に設けられるカゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する乗客位置特定部14aを備え、カゴドア11から所定範囲に乗客がいる場合、カゴドア11が閉じている状態を維持するためにカゴドア11を駆動するドアモータが発生する戸閉保持トルクを、カゴドア11から所定範囲に乗客がいない場合よりも増加させる。これにより、制御装置14は、戸閉保持トルクが最適になるようにドアモータ12が発生するトルクを調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータのカゴに設けられるドアを駆動するドアモータが消費する電力量を低減できるエレベータ及びエレベータのドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータのカゴに設けられるドアは、一定の戸閉保持トルクによって閉じている状態が維持される。戸閉保持トルクとは、ドアを駆動するためのドアモータが発生するトルクであって、ドアが閉じている状態を維持するためのトルクである。よって、エレベータは、ドアが閉じている間も、ドアモータが電力を消費する。
【0003】
さらに、安全をより好適に確保するためには、乗客がドアをこじ開けようと試みるおそれを考慮しておく必要がある。よって、従来のエレベータでは、乗客がドアをこじ開けることができない大きさに戸閉保持トルクを設定している。これにより、従来のエレベータでは、ドアモータが消費する電力量が増加する傾向がある。そこで、例えば、特許文献1には、ドア着床ゾーンでカゴが停止している、かつ、エレベータが一定時間利用されない場合に、ドアモータが発生する戸閉保持トルクを低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−255369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、ドアモータは、エレベータ(カゴ)の走行中に一定の戸閉保持トルクを発生している。これにより、特許文献1に記載の技術では、カゴが走行する最中はドアモータが消費する電力量の低減が不十分となる。また、特許文献1に記載の技術は、カゴが停止してから一定時間が経過しないと戸閉保持トルクが低下しない。よって、特許文献1に記載の技術では、この一定時間の間はドアモータが消費する電力量の低減が不十分となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ドアモータが消費する電力量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るエレベータは、箱型のカゴと、前記カゴに設けられるドアと、前記ドアを駆動するドアモータと、前記ドアから所定範囲に乗客がいるか否かを判定して、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいる場合、前記ドアを駆動するドアモータが前記ドアを閉じている状態で維持するために発生する戸閉保持トルクを、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいない場合よりも増加させるドア制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るエレベータのドア制御装置は、エレベータのカゴに設けられるドアから所定範囲に乗客がいるか否かを判定し、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいる場合、前記ドアを駆動するドアモータが前記ドアを閉じている状態で維持するために発生する戸閉保持トルクを、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいない場合よりも増加させることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様としては、さらに、前記カゴ内に乗客がいるか否かを判定し、前記カゴ内に乗客がいる場合、前記戸閉保持トルクを、前記カゴ内に乗客がいない場合よりも増加させることが望ましい。
【0010】
本発明の好ましい態様としては、さらに、前記カゴの走行状態を判定し、前記カゴが走行期間中である場合、前記戸閉保持トルクを、前記カゴが走行期間中ではない場合よりも増加させることが望ましい。
【0011】
本発明の好ましい態様としては、前記カゴの床のうち前記ドア側に取り付けられて、前記ドア側の前記床に働く荷重を検出する荷重検出器が接続され、前記荷重検出器から出力される信号に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することが望ましい。
【0012】
本発明の好ましい態様としては、前記カゴ内に取り付けられて前記カゴ内を撮像する撮像装置が接続され、前記撮像装置が撮像した映像の情報を解析し、その解析結果に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様としては、前記カゴに取り付けられて前記所定範囲内に乗客がいるか否かで出力される信号が変化する非接触センサが接続され、前記非接触センサから出力される信号に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することが望ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記ドアに取り付けられて前記所定範囲内に乗客がいるか否かで出力される信号が変化する静電容量センサが接続され、前記静電容量センサから出力される信号に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ドアモータが消費する電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施形態1のエレベータを示す概念図である。
【図2】図2は、戸閉保持トルクの目標値を決定するために実施形態1の制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、各戸閉保持トルクの大小関係を示すグラフである。
【図4】図4は、変形例1のエレベータを示す概念図である。
【図5】図5は、戸閉保持トルクの目標値を決定するために変形例1の制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、変形例2のエレベータを示す概念図である。
【図7】図7は、戸閉保持トルクの目標値を決定するために変形例2の制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態2のエレベータを示す概念図である。
【図9】図9は、乗客位置特定部の判定に用いられる有効範囲を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態3のエレベータを示す概念図である。
【図11】図11は、実施形態4のエレベータを示す概念図である。
【図12】図12は、実施形態4のカゴドアを切って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のエレベータを示す概念図である。図1に示すように、実施形態1のエレベータ1は、箱型のカゴ10と、カゴドア11と、ドアモータ12とを備える。カゴ10は、乗客や荷物を内部に収納する。カゴ10は、乗客や荷物が乗り降りするための開口を有する。エレベータ1のドアには、カゴ10側に設けられるドアと、乗り場側に設けられるドアがある。ここでは、カゴ10側に設けられるドアをカゴドアという。カゴドア11は、カゴ10に設けられる。カゴドア11は、カゴ10の開口を覆うように設けられる。
【0019】
本実施形態のカゴドア11は、第1カゴドア11aと第2カゴドア11bとを含んで構成される。第1カゴドア11aと第2カゴドア11bとは、互いに近づく方向、及び、互いに離れる方向にスライドする。このようにして、カゴドア11は開閉する。ドアモータ12は、カゴ10に設けられる。ドアモータ12は、電動モータである。ドアモータ12は、電力が供給されると、供給された電流値に応じたトルクを発生する。これにより、ドアモータ12はカゴドア11を駆動する。
【0020】
エレベータ1は、さらに、荷重検知器13と、ドア制御装置としての制御装置14とを有する。荷重検知器13は、カゴ10の床部10aに取り付けられる。荷重検知器13は、検出した荷重の大きさが大きくなればなるほど、出力する信号(電流)が大きくなる。荷重検知器13は、本実施形態では床部10aの4隅に1つずつ、合計4つ取り付けられる。この4つの荷重検知器13のうち、カゴドア11側の2つを第1荷重検知器13a及び第2荷重検知器13bとする。また、4つの荷重検知器13のうち、残りの2つを第3荷重検知器13c及び第4荷重検知器13dとする。第1荷重検知器13a及び第2荷重検知器13bは、床部10aのうちドア側に働く荷重を検出する。
【0021】
制御装置14は、信号を入出力するI/O(Input/Output)を備える。制御装置14は、I/Oに荷重検知器13と、ドアモータ12とが電気的に接続される。制御装置14は、乗客位置特定部14aと、主処理部14cと、戸閉保持トルク制御部14dと、カゴドア制御部14eと、走行状態検出部14fと、乗客有無検出部14gとを含んで構成される。上記の各部は、各機能をそれぞれ実現する複数の装置が互いに電気的に接続されることで情報を各部間でやり取りできるように構成されてもよいし、1つの装置で各機能が実現されてもよい。本実施形態では、上記の各部は、1つのコンピュータによってそれぞれの機能が実現される。
【0022】
乗客位置特定部14aは、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。ここで、所定範囲とは、カゴ10内の乗客がカゴドア11をこじ開けようと試みることができる範囲である。所定範囲は、例えば、1mである。乗客位置特定部14aは、荷重情報処理部14bを含む。荷重情報処理部14bは、制御装置14が備えるI/Oを介して荷重検知器13から信号を取得する。荷重情報処理部14bは、荷重検知器13から取得した信号に基づいて、各荷重検知器13が取り付けられる部分に働く荷重を算出する。
【0023】
乗客位置特定部14aは、荷重情報処理部14bが算出した結果に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。具体的には、まず、荷重情報処理部14bは、第1荷重検知器13a及び第2荷重検知器13bから信号を取得して、床部10aのカゴドア11側に働く荷重を算出する。そして、乗客位置特定部14aは、算出した荷重の大きさが第1閾値よりも大きいか否かによって、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。第1閾値は、カゴドア11から所定範囲に乗客がいない場合に、床部10aのカゴドア11側に働く荷重の大きさである。
【0024】
主処理部14cは、エレベータ1の運転全体を統括して制御する。主処理部14cは、乗客位置特定部14aと、走行状態検出部14fと、乗客有無検出部14gとから情報を取得し、これらの情報に基づいて戸閉保持トルク制御部14dに必要な情報を受け渡す。戸閉保持トルク制御部14dは、カゴドア11が閉じている状態を維持するために、どの程度のトルクをドアモータ12に発生させるかを決定する。すなわち、戸閉保持トルク制御部14dは、ドアモータ12が発生する戸閉保持トルクを決定する。カゴドア制御部14eは、戸閉保持トルク制御部14dから戸閉保持トルクの情報を取得し、その戸閉保持トルクを実現するための電流をI/Oを介してドアモータ12に出力する。また、カゴドア制御部14eは、ドアモータ12に電流を供給するタイミングも調節する。
【0025】
走行状態検出部14fは、カゴ10が走行期間中か否かを判定する。ここで、走行期間とは、カゴドア11が閉じてから、カゴ10が走行し、カゴドア11が開くまでの期間である。つまり、カゴ10が走行し始める直前や、カゴ10が走行し終えた直後、カゴ10は走行していないが、この場合も、カゴ10は走行期間中であるものとして取り扱う。走行状態検出部14fは、例えば、ドアモータ12を動作させるための信号に基づいて、カゴドア11が閉じたか否かを判定する。次に、走行状態検出部14fは、カゴ10を走行させるためのモータからパルス信号を取得し、その信号に基づいてカゴ10が走行しているか否かを判定する。そして、走行状態検出部14fは、ドアモータ12を動作させるための信号に基づいて、カゴドア11が開いたか否かを判定する。これらの判定により、走行状態検出部14fは、カゴ10が走行期間中か否かを判定する。走行状態検出部14fは、カゴ10が走行期間中か否かの判定結果を主処理部14cに受け渡す。
【0026】
乗客有無検出部14gは、制御装置14が備えるI/Oを介して荷重検知器13から信号を取得する。この信号に基づいて乗客有無検出部14gは、カゴ10内に乗客がいるか否かを判定する。具体的には、乗客有無検出部14gは、第1荷重検知器13aと、第2荷重検知器13bと、第3荷重検知器13cと、第4荷重検知器13dとから信号を取得して、各荷重検知器13が取り付けられる部分に働く荷重を算出する。そして、これら複数の部位に働く荷重のうちの少なくとも1つが第2閾値よりも大きいか否かによって、カゴ10内に乗客がいるか否かを判定する。第2閾値は、カゴ10内に乗客がいない場合に、各荷重検知器13が取り付けられる部分に働く荷重の大きさである。
【0027】
図2は、戸閉保持トルクの目標値を決定するために実施形態1の制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。図2に示すステップST101で、図1に示す乗客有無検出部14gは、荷重検知器13から信号を取得する。ここで、乗客有無検出部14gは、前記信号から各荷重検知器13が取り付けられる部分に働く荷重を算出する。次に、ステップST102で、乗客有無検出部14gは、カゴ10内に乗客がいるか否かを判定する。具体的には、乗客有無検出部14gは、各荷重検知器13が取り付けられる部分に働く荷重の少なくとも1つが、第2閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0028】
乗客有無検出部14gがカゴ10内に乗客がいると判定した場合(ステップST102、Yes)、ステップST103で、図1に示す乗客位置特定部14aの荷重情報処理部14bは、図1に示す第1荷重検知器13a及び第2荷重検知器13bから信号を取得する。ここで、荷重情報処理部14bは、前記信号から床部10aのカゴドア11側に働く荷重を算出する。次に、ステップST104で、乗客位置特定部14aは、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。具体的には、乗客位置特定部14aは、第1荷重検知器13a及び第2荷重検知器13bが取り付けられる部分に働く荷重が、上述の第1閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0029】
図3は、各戸閉保持トルクの大小関係を示すグラフである。ここで、本実施形態では、戸閉保持トルクの候補は、図3に示すように、戸閉保持トルクAと、戸閉保持トルクBと、戸閉保持トルクCとがある。各値は、戸閉保持トルクAが最も大きく、戸閉保持トルクCが最も小さい。戸閉保持トルクAは、乗客によるカゴドア11のこじ開けを抑制できる値である。戸閉保持トルクBは、カゴ10が走行する際の振動でカゴドア11が開かないようにカゴドア11を維持できる値である。戸閉保持トルクCは、カゴ10が走行しない場合に、カゴドア11を閉じている状態を維持できる値である。戸閉保持トルクCは、可能な限り小さく設定される。
【0030】
図2に示すステップST104で、乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいると判定した場合(ステップST104、Yes)、ステップST105で、戸閉保持トルク制御部14dは、戸閉保持トルクの目標値を戸閉保持トルクAに設定する。次に、ステップST106で、カゴドア制御部14eは、ドアモータ12が発生するトルクが戸閉保持トルクの目標値になるように、ドアモータ12に供給する電流を調節する。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクAが与えられ、カゴドア11が閉じている状態が戸閉保持トルクAで維持される。よって、エレベータ1は、カゴドア11が乗客によってこじ開けられるおそれを抑制できる。
【0031】
次に、他のステップを説明する。乗客有無検出部14gがカゴ10内に乗客がいないと判定した場合(ステップST102、No)、ステップST107で、図1に示す走行状態検出部14fは、カゴ10が走行期間中であるか否かを示す情報を主処理部14cから取得する。次に、ステップST108で、走行状態検出部14fは、カゴ10が走行期間中であるか否かを判定する。カゴ10が走行期間中ではないと走行状態検出部14fが判定した場合(ステップST108、No)、ステップST110で、戸閉保持トルク制御部14dは、戸閉保持トルクの目標値を戸閉保持トルクCに設定する。次に、ステップST106で、カゴドア制御部14eは、ドアモータ12が発生するトルクが戸閉保持トルクの目標値になるように、ドアモータ12に供給する電流を調節する。
【0032】
これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクCが与えられる。この場合、カゴ10内には乗客がいない。よって、制御装置14は、カゴドア11が乗客によってこじ開けられるおそれを考慮する必要がない。また、カゴ10は、走行もしない。以上により、カゴドア11は、戸閉保持トルクCが与えられれば、閉じた状態を維持できる。ここで、図3に示すように、戸閉保持トルクCは、戸閉保持トルクA及び戸閉保持トルクBよりも小さい。よって、ドアモータ12が戸閉保持トルクCを発生させている間、制御装置14は、ドアモータ12が消費する電力量を最も低減できる。
【0033】
次に、他のステップを説明する。乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいないと判定した場合(ステップST104、No)、または、カゴ10が走行期間中であると走行状態検出部14fが判定した場合(ステップST108、Yes)、ステップST109で、戸閉保持トルク制御部14dは、戸閉保持トルクの目標値を戸閉保持トルクBに設定する。次に、ステップST106で、カゴドア制御部14eは、ドアモータ12が発生するトルクが戸閉保持トルクの目標値になるように、ドアモータ12に供給する電流を調節する。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクBが与えられる。
【0034】
乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいないと判定した場合(ステップST104、No)、カゴ10内に乗客はいるが、その乗客はカゴドア11の近傍にいない。よって、制御装置14は、カゴドア11が乗客によってこじ開けられるおそれを考慮する必要がない。これにより、カゴドア11は、戸閉保持トルクBが与えられれば、閉じた状態を維持できる。なお、カゴ10は、内部に乗客がいるため走行することになるが、カゴドア11には戸閉保持トルクBが与えられている。戸閉保持トルクBは、上述のようにカゴ10が走行してもカゴドア11が閉じた状態を維持できる値である。よって、制御装置14は、カゴ10が走行してもカゴドア11が閉じた状態を維持できる。ここで、図3に示すように、戸閉保持トルクBは、戸閉保持トルクAよりも小さい。よって、ドアモータ12が戸閉保持トルクBを発生させている間、制御装置14は、ドアモータ12が消費する電力量をドアモータ12が戸閉保持トルクAを発生させている間よりも低減できる。
【0035】
カゴ10が走行期間中であると走行状態検出部14fが判定した場合(ステップST108、Yes)、カゴ10内に乗客はいないが、カゴ10は走行することになる。戸閉保持トルクBは、上述のようにカゴ10が走行してもカゴドア11が閉じた状態を維持できる値である。また、カゴ10内には乗客がいないため、制御装置14は、カゴドア11が乗客によってこじ開けられるおそれを考慮する必要がない。以上により、カゴドア11は、戸閉保持トルクBが与えられれば、閉じた状態を維持できる。ここで、図3に示すように、戸閉保持トルクBは、戸閉保持トルクAよりも小さい。よって、ドアモータ12が戸閉保持トルクBを発生させている間、制御装置14は、ドアモータ12が消費する電力量をドアモータ12が戸閉保持トルクAを発生させている間よりも低減できる。
【0036】
カゴドア制御部14eがステップST106を実行した後、制御装置14は、一連の手順の実行を終了する。制御装置14は、以上の一連の手順を、エレベータ1が運転されている間、繰り返し実行する。以上により、戸閉保持トルク制御部14dは、カゴ10内に乗客がいるか否かと、カゴ10が走行期間中であるか否かと、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かとに基づいて、戸閉保持トルクの目標値を戸閉保持トルクA、B、Cの中から選択して設定できる。よって、制御装置14は、カゴドア11が閉じた状態を維持するために必要な戸閉保持トルクを確保しつつ、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0037】
(変形例1)
図4は、変形例1のエレベータを示す概念図である。図5は、戸閉保持トルクの目標値を決定するために変形例1の制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。変形例1のドア制御装置としての制御装置14Aは、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かのみに基づいて、戸閉保持トルクの目標値を設定する点に特徴がある。図4に示す変形例1のエレベータ1Aは、制御装置14Aを備える。制御装置14Aは、図1に示す制御装置14から走行状態検出部14fと、乗客有無検出部14gとを省いた構成である。制御装置14Aは、図5に示す一連の手順を実行する。ここで、図5に示す一連の手順には、図2に示す手順と同一の手順が含まれる。よって、図2に示す手順と共通の手順には、図2に示す手順と同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
まず、図4に示す乗客位置特定部14aの荷重情報処理部14bが、図5に示すステップST103を実行する。次に、乗客位置特定部14aがステップST104を実行する。乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいると判定した場合(ステップST104、Yes)、戸閉保持トルク制御部14dはステップST105を実行する。次に、カゴドア制御部14eは、ステップST106を実行する。この場合、カゴ10内の乗客は、カゴドア11をこじ開けようと試みることができる場所にいる。よって、制御装置14Aは、ドアモータ12に戸閉保持トルクAを発生させる。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクAが与えられる。よって、制御装置14Aは、カゴドア11が乗客によってこじ開けられるおそれを抑制できる。
【0039】
乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいないと判定した場合(ステップST104、No)、戸閉保持トルク制御部14dはステップST109を実行する。次に、カゴドア制御部14eは、ステップST106を実行する。この場合、カゴ10内に乗客が乗っていたとしても、カゴ10内の乗客は、カゴドア11をこじ開けようと試みることができない位置にいる。よって、制御装置14Aは、ドアモータ12に戸閉保持トルクBを発生させる。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクBが与えられる。よって、制御装置14Aは、カゴドア11が仮に走行したとしても、カゴドア11が閉じた状態を維持できる。また、図3に示すように、戸閉保持トルクBは、戸閉保持トルクAよりも小さい。よって、ドアモータ12が戸閉保持トルクBを発生させている間、制御装置14Aは、ドアモータ12が消費する電力量をドアモータ12が戸閉保持トルクAを発生させている間よりも低減できる。
【0040】
カゴドア制御部14eがステップST106を実行した後、制御装置14Aは、一連の手順の実行を終了する。制御装置14Aは、以上の一連の手順を、エレベータ1Aが運転されている間、繰り返し実行する。以上のように、制御装置14Aは、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かのみに基づいて、戸閉保持トルクの目標値を戸閉保持トルクAとBから選択して設定する。この場合であっても、制御装置14Aは、カゴドア11が閉じた状態を維持するために必要な戸閉保持トルクを確保しつつ、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0041】
(変形例2)
図6は、変形例2のエレベータを示す概念図である。図7は、戸閉保持トルクの目標値を決定するために変形例2の制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。変形例2のドア制御装置としての制御装置14Bは、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かと、カゴ10が走行期間中であるか否かとに基づいて、戸閉保持トルクの目標値を設定する点に特徴がある。図6に示すエレベータ1Bは、制御装置14Bを備える。制御装置14Bは、図1に示す制御装置14から乗客有無検出部14gを省いた構成である。制御装置14Bは、図7に示す一連の手順を実行する。ここで、図7に示す一連の手順には、図2に示す手順と同一の手順が含まれる。よって、図2に示す手順と共通の手順には、図2に示す手順と同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
まず、図6に示す乗客位置特定部14aの荷重情報処理部14bが、図7に示すステップST103を実行する。次に、乗客位置特定部14aがステップST104を実行する。乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいると判定した場合(ステップST104、Yes)、戸閉保持トルク制御部14dはステップST105を実行する。次に、カゴドア制御部14eは、ステップST106を実行する。この場合、カゴ10内の乗客は、カゴドア11をこじ開けようと試みることができる位置にいる。よって、制御装置14Bは、ドアモータ12に戸閉保持トルクAを発生させる。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクAが与えられる。よって、制御装置14Bは、カゴドア11が乗客によってこじ開けられるおそれを抑制できる。
【0043】
乗客位置特定部14aがカゴドア11から所定範囲に乗客がいないと判定した場合(ステップST104、No)、走行状態検出部14fは、ステップST107を実行する。次に、走行状態検出部14fは、ステップST108を実行する。カゴ10が走行期間中であると走行状態検出部14fが判定した場合(ステップST108、Yes)、戸閉保持トルク制御部14dはステップST109を実行する。次に、カゴドア制御部14eは、ステップST106を実行する。
【0044】
この場合、カゴ10内に乗客が乗っていたとしても、カゴ10内の乗客は、カゴドア11をこじ開けようと試みることができない場所にいる。よって、制御装置14Bは、ドアモータ12に戸閉保持トルクBを発生させる。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクBが与えられる。よって、カゴ10が走行しても、カゴドア11は、閉じた状態を維持できる。また、図3に示すように、戸閉保持トルクBは、戸閉保持トルクAよりも小さい。よって、制御装置14Bは、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0045】
カゴ10が走行期間中ではないと走行状態検出部14fが判定した場合(ステップST108、No)、戸閉保持トルク制御部14dはステップST110を実行する。次に、カゴドア制御部14eは、ステップST106を実行する。これにより、カゴドア11は、ドアモータ12から戸閉保持トルクCが与えられる。この場合、カゴ10は、走行しない。よって、カゴドア11は、戸閉保持トルクCが与えられれば、閉じた状態を維持できる。ここで、図3に示すように、戸閉保持トルクCは、戸閉保持トルクA及び戸閉保持トルクBよりも小さい。よって、ドアモータ12が戸閉保持トルクCを発生させている間、制御装置14Bは、ドアモータ12が消費する電力量を最も低減できる。
【0046】
カゴドア制御部14eがステップST106を実行した後、制御装置14Bは、一連の手順の実行を終了する。制御装置14Bは、以上の一連の手順を、エレベータ1Bが運転されている間、繰り返し実行する。以上のように、制御装置14Bは、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かと、カゴ10が走行期間中であるか否かとに基づいて、戸閉保持トルクの目標値を戸閉保持トルクA、B、Cの中から選択して設定する。この場合であっても、制御装置14Bは、カゴドア11が閉じた状態を維持するために必要な戸閉保持トルクを確保しつつ、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0047】
(実施形態2)
図8は、実施形態2のエレベータを示す概念図である。図8に示す実施形態2のエレベータ2は、撮像装置23と、ドア制御装置としての制御装置24とを備える。制御装置24は、撮像装置23が撮像した映像に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する点に特徴がある。撮像装置23は、カゴ10内に取り付けられて、カゴ10内を撮像する。ここで、撮像装置23は、画像を連続して動画を撮像するいわゆるビデオカメラでもよいし、静止画像を撮像する撮像装置でもよい。撮像装置23は、例えば、一般的なエレベータにも取り付けられている撮像装置、いわゆる監視カメラである。エレベータ2は、監視カメラとは別に新たな撮像装置がカゴ内に取り付けられてもよいが、監視カメラを撮像装置23として流用された方が好ましい。これにより、エレベータ2は、必要な装置の数を低減できる。
【0048】
制御装置24は、制御装置24が備えるI/Oに撮像装置23が電気的に接続される。制御装置24は、乗客位置特定部24aと、映像処理部24bとを備える。乗客位置特定部24aは、映像処理部24bを含む。映像処理部24bは、制御装置24が備えるI/Oを介して撮像装置23から映像情報を取得する。映像処理部24bは、撮像装置23から取得した映像情報を解析する。乗客位置特定部24aは、映像処理部24bによる解析結果に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。
【0049】
具体的には、映像処理部24bは、カゴドア11から所定範囲に該当する映像情報を撮像装置23から取得した映像情報から抽出し、その映像情報を比較用の映像情報と比較することによって、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。比較用の映像情報は、カゴドア11から所定範囲に乗客がいない場合に撮像装置23から出力される映像情報のうち、カゴドア11から所定範囲に該当する映像情報である。
【0050】
ここで、乗客がカゴ10内に乗っていなかった場合でも、例えば照明の明るさが変化することによって、撮像装置23が撮像する映像は変化することがある。よって、映像処理部24bは、撮像装置23から取得した映像情報と、比較用の映像情報とが、完全に一致するか否かを判定するのではなく、撮像装置23から取得した映像情報と、比較用の映像情報との差異が、乗客の有無に起因する差異であるか否かを判定する。例えば、撮像装置23が撮像する撮像範囲に乗客が侵入すると、撮像装置23が撮像する映像は、比較用の映像情報が示す映像とは異なる色が存在することになる。映像処理部24bは、例えば、この色の違いの有無を判定することにより、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。
【0051】
図9は、乗客位置特定部の判定に用いられる有効範囲を示す説明図である。ここで、例えば、図9に示すように、乗客P1と、乗客P2と、乗客P3とがカゴ10内に乗っているとする。乗客P1は、撮像装置23側に位置する。乗客P2は乗客P1よりもカゴドア11側に位置する。乗客P2は、カゴドア11から1m以内に位置する。乗客P3は、カゴドア11から十分に離れた位置で、乗客P1の隣に位置する。乗客P2が撮像装置23と乗客P1との延長線上に位置すると、乗客P2が乗客P1に隠れるおそれがある。この場合、映像処理部24bは、カゴドア11側に位置する乗客P2を検出しにくい。
【0052】
そこで、図8に示す映像処理部24bは、図9に示すように有効範囲を設定する。有効範囲とは、カゴ10内の領域のうち、乗客位置特定部24aが判定に用いる範囲である。第1カゴドア11aの第2カゴドア11bとは反対側の端部と撮像装置23とを結ぶ仮想線を第1の仮想線V1とする。第2カゴドア11bの第1カゴドア11aとは反対側の端部と撮像装置23とを結ぶ仮想線を第2の仮想線V2とする。有効範囲は、第1の仮想線V1と、第2の仮想線V2との間に形成される領域である。映像処理部24bがこの領域に乗客がいると判定した場合、乗客位置特定部24aは、所定範囲に乗客がいる可能性があると判定する。図9では、乗客P1と乗客P2が有効範囲にいるため、乗客位置特定部24aは、乗客が所定範囲にいると判定する。
【0053】
制御装置24が実行する一連の手順は、図2に示す一連の手順と類似する。よって、相違点のみ説明する。映像処理部24bは、ステップST103に代えて、撮像装置23から映像情報を取得してその映像情報を解析する。そして、乗客位置特定部24aがステップST104を実行する。すなわち、乗客位置特定部24aは、映像処理部24bによる解析結果に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。このような一連の手順を実行することにより、制御装置24は、ドアモータ12に発生させる戸閉保持トルクを戸閉保持トルクA、B、Cから選択する。これにより、制御装置24は、カゴドア11が閉じた状態を維持するために必要な戸閉保持トルクを確保しつつ、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0054】
(実施形態3)
図10は、実施形態3のエレベータを示す概念図である。図10に示す実施形態3のエレベータ3は、非接触センサ33と、ドア制御装置としての制御装置34とを備える。制御装置34は、非接触センサ33から出力される信号に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する点に特徴がある。非接触センサ33は、例えば赤外線センサである。なお、非接触センサ33は、赤外線センサに限定されず、所定範囲に乗客がいるか否かを非接触で判定できるものであればよい。非接触センサ33は、カゴ10に取り付けられる。非接触センサ33は、例えば、カゴ10の天井10bのうち、カゴドア11近傍に取り付けられる。非接触センサ33は、例えば、カゴドア11から1m以内に取り付けられる。非接触センサ33は、カゴドア11から所定範囲に乗客が侵入した場合に、出力する信号が変化する。
【0055】
ここで、一般的なエレベータでは、乗客がカゴドア11へ引き込まれるおそれを考慮して、安全確保用の非接触センサが取り付けられている。安全確保用の非接触センサは、検出範囲に障害物が進入すると、引き込まれ注意を促して、カゴドア11の開閉動作の速度を低下させるための安全装置である。非接触センサ33は、このような一般的なエレベータに取り付けられている安全確保用の非接触センサでよい。エレベータ3は、安全確保用の非接触センサとは別に新たな非接触センサがカゴ10に取り付けられてもよいが、安全確保用の非接触センサが非接触センサ33として流用された方が好ましい。これにより、エレベータ3は、必要な装置の数を低減できる。
【0056】
制御装置34は、制御装置34が備えるI/Oに非接触センサ33が電気的に接続される。制御装置34は、乗客位置特定部34aを備える。乗客位置特定部34aは、非接触センサ検出部34bを含む。非接触センサ検出部34bは、制御装置34が備えるI/Oを介して非接触センサ33から信号を取得する。乗客位置特定部34aは、非接触センサ33から非接触センサ検出部34bが取得した信号に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。具体的には、乗客位置特定部34aは、非接触センサ33から取得した信号が、比較用の信号と異なるか否かを判定する。比較用の信号は、カゴドア11から所定範囲に乗客がいない場合に非接触センサ33から出力される信号である。
【0057】
制御装置34が実行する一連の手順は、図2に示す一連の手順と類似する。よって、相違点のみ説明する。非接触センサ検出部34bは、ステップST103に代えて、非接触センサ33から信号を取得する。そして、乗客位置特定部34aがステップST104を実行する。具体的には、乗客位置特定部34aは、非接触センサ33から取得した信号が、比較用の信号と異なるか否かを判定する。このような一連の手順を実行することにより、制御装置34は、ドアモータ12に発生させる戸閉保持トルクを戸閉保持トルクA、B、Cから選択する。これにより、制御装置34は、カゴドア11が閉じた状態を維持するために必要な戸閉保持トルクを確保しつつ、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0058】
(実施形態4)
図11は、実施形態4のエレベータを示す概念図である。図12は、実施形態4のカゴドアを切って示す断面図である。図11に示す実施形態4のエレベータ4は、静電容量センサ43と、ドア制御装置としての制御装置44とを備える。制御装置44は、静電容量センサ43から出力される信号に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する点に特徴がある。静電容量センサ43は、カゴドア11に取り付けられる。静電容量センサ43は、例えば、第1カゴドア11aに1つ、第2カゴドア11bに1つ、合計2つ取り付けられる。静電容量センサ43は、カゴドア11から所定範囲を検出範囲とし、検出範囲内の対地静電容量の変化によって出力が変化する。この検出範囲に乗客が侵入すると、検出範囲内の対地静電容量は変化する。よって、静電容量センサ43は出力する信号が変化する。
【0059】
ここで、一般的なエレベータでは、乗客がカゴドア11へ挟まれるおそれを考慮して、安全確保用の静電容量センサが取り付けられている。静電容量センサ43は、このような一般的なエレベータに取り付けられている安全確保用の静電容量センサでよい。エレベータ4は、安全確保用の静電容量センサとは別に新たな静電容量センサがカゴ10に取り付けられてもよいが、安全確保用の静電容量センサが静電容量センサ43として流用された方が好ましい。これにより、エレベータ4は、必要な装置の数を低減できる。
【0060】
制御装置44は、制御装置44が備えるI/Oに静電容量センサ43が電気的に接続される。制御装置44は、乗客位置特定部44aを備える。乗客位置特定部44aは、静電容量センサ検出部44bを含む。静電容量センサ検出部44bは、制御装置44が備えるI/Oを介して静電容量センサ43から信号を取得する。乗客位置特定部44aは、静電容量センサ43から静電容量センサ検出部44bが取得した信号に基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。具体的には、乗客位置特定部44aは、静電容量センサ43から取得した信号が、比較用の信号と異なるか否かを判定する。比較用の信号は、カゴドア11から所定範囲に乗客がいない場合に静電容量センサ43から出力される信号である。
【0061】
制御装置44が実行する一連の手順は、図2に示す一連の手順と類似する。よって、相違点のみ説明する。静電容量センサ検出部44bは、ステップST103に代えて、静電容量センサ43から信号を取得する。そして、乗客位置特定部44aがステップST104を実行する。具体的には、乗客位置特定部44aは、静電容量センサ43から取得した信号が、比較用の信号と異なるか否かを判定する。このような一連の手順を実行することにより、制御装置44は、ドアモータ12に発生させる戸閉保持トルクを戸閉保持トルクA、B、Cから選択する。これにより、制御装置44は、カゴドア11が閉じた状態を維持するために必要な戸閉保持トルクを確保しつつ、ドアモータ12が消費する電力量を低減できる。
【0062】
上述のように、各実施形態で説明した荷重検出器や、撮像装置や、非接触センサや、静電容量センサは、一般的なエレベータに既に備えられている場合が多い。例えば、荷重検出器は、カゴ内の総荷重が荷重制限内であるか否かを判定するために備えられている。また、撮像装置は、監視カメラとして備えられている。また、非接触センサは、乗客がドアに引き込まれることを抑制するために備えられている。また、静電容量センサは、乗客がドアに挟まれることを抑制するために備えられている。
【0063】
本発明に係るエレベータ及びエレベータのドア制御装置は、このような既存の装置を用いて、ドアから所定範囲内に乗客がいるか否かの判定を行う。そして、本発明に係るエレベータ及びエレベータのドア制御装置は、この判定結果に基づいてドアモータの戸閉保持トルクを調節する。よって、本発明に係るエレベータ及びエレベータのドア制御装置は、ドアモータが消費する電力量を低減できる。また、本発明に係るエレベータ及びエレベータのドア制御装置は、ドアモータに流れる電流を低減できるため、ドアモータの劣化を抑制できる。結果として、本発明に係るエレベータ及びエレベータのドア制御装置は、ドアモータの寿命の低下も抑制できる。
【0064】
ここで、制御装置は、実施形態1から実施形態4の各実施形態の制御装置が備える、乗客位置特定部14a及び荷重情報処理部14b、乗客位置特定部24a及び映像処理部24b、乗客位置特定部34a及び非接触センサ検出部34b、乗客位置特定部44a及び静電容量センサ検出部44bの少なくとも1つを備えればよく、例えば、すべてを備えてもよい。この場合、乗客位置特定部は、図1に示す荷重検知器13から取得した信号と、図8に示す撮像装置23から取得した映像情報と、図10に示す非接触センサ33から取得した信号と、静電容量センサ43から取得した信号とに基づいて、カゴドア11から所定範囲に乗客がいるか否かを判定する。乗客位置特定部は、例えば、各装置から取得した信号や情報のうち、少なくとも1つが、カゴドア11から所定範囲に乗客がいると判定できるものであった場合に、カゴドア11から所定範囲に乗客がいると判定する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明に係るエレベータ及びエレベータのドア制御装置は、ドアモータが発生するトルクを調節する技術に有用であり、特に、ドアモータが消費する電力を低減することに適している。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B、2、3、4 エレベータ
10 カゴ
10a 床部
10b 天井
11 カゴドア
11a 第1カゴドア
11b 第2カゴドア
12 ドアモータ
13 荷重検知器
13a 第1荷重検知器
13b 第2荷重検知器
13c 第3荷重検知器
13d 第4荷重検知器
14、14A、14B、24、34、44 制御装置
14a、24a、34a、44a 乗客位置特定部
14b 荷重情報処理部
14c 主処理部
14d 戸閉保持トルク制御部
14e カゴドア制御部
14f 走行状態検出部
14g 乗客有無検出部
23 撮像装置
24b 映像処理部
33 非接触センサ
34b 非接触センサ検出部
43 静電容量センサ
44b 静電容量センサ検出部
A、B、C 戸閉保持トルク
P1、P2、P3 乗客
V1 第1の仮想線
V2 第2の仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱型のカゴと、
前記カゴに設けられるドアと、
前記ドアを駆動するドアモータと、
前記ドアから所定範囲に乗客がいるか否かを判定して、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいる場合、前記ドアを駆動するドアモータが前記ドアを閉じている状態で維持するために発生する戸閉保持トルクを、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいない場合よりも増加させるドア制御装置と、
を備えることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
エレベータのカゴに設けられるドアから所定範囲に乗客がいるか否かを判定し、
前記ドアから前記所定範囲に乗客がいる場合、前記ドアを駆動するドアモータが前記ドアを閉じている状態で維持するために発生する戸閉保持トルクを、前記ドアから前記所定範囲に乗客がいない場合よりも増加させることを特徴とするエレベータのドア制御装置。
【請求項3】
さらに、前記カゴ内に乗客がいるか否かを判定し、
前記カゴ内に乗客がいる場合、前記戸閉保持トルクを、前記カゴ内に乗客がいない場合よりも増加させることを特徴とする請求項2に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項4】
さらに、前記カゴの走行状態を判定し、
前記カゴが走行期間中である場合、前記戸閉保持トルクを、前記カゴが走行期間中ではない場合よりも増加させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項5】
前記カゴの床のうち前記ドア側に取り付けられて、前記ドア側の前記床に働く荷重を検出する荷重検出器が接続され、
前記荷重検出器から出力される信号に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項6】
前記カゴ内に取り付けられて前記カゴ内を撮像する撮像装置が接続され、
前記撮像装置が撮像した映像の情報を解析し、その解析結果に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項7】
前記カゴに取り付けられて前記所定範囲内に乗客がいるか否かで出力される信号が変化する非接触センサが接続され、
前記非接触センサから出力される信号に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項8】
前記ドアに取り付けられて前記所定範囲内に乗客がいるか否かで出力される信号が変化する静電容量センサが接続され、
前記静電容量センサから出力される信号に基づいて前記ドアから前記所定範囲に乗客がいるか否かを判定することを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のエレベータのドア制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−144021(P2011−144021A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7195(P2010−7195)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】